寂寞はかぎりなく透明で、透き通るようなあお。(作者 みしおりおしみ
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#UDCアース  #外なる邪神 


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 朧げな意識が薄い膜を纏ったまま浮き上がる。
 揺れる横倒しの薄い視界は暗く、頬に触れる畳の熱は体温と同じで生暖かい。
 おとうさん。おかあさん。
 口を動かそうとしても、震えるだけで動かない。
 喉から出る声はもう掠れた音しか出ない。
 帰ってきてないかな。
 出かけてからどのくらい経ったっけ。
 瞳の先にある閉じた襖をぼんやりと見つめる。
 ・・・。
 雨の音がする。
 ぽつぽつと静かに降っていた。
 静かで、静かで…。
『……。』
 頭に優しく手が乗った。後ろに気配がする。
(ともちゃん……。)
 わたしのともだち。さびしいときになぐさめてくれるやさしいひと。
 撫でてくれるその手に安心感を覚えて、目蓋が落ちていく。
 そっかひとりぼっちじゃないんだった。
 つぎにめがさめたときは、おとうさんとおかあさんが……。


「レッドアラート案件~? 多分。」
 今日の酔っ払いはいつもに比べて酔いが薄い。で、多分?
「多分レッドアラート。たぅん。」
 規模が大きいほど、影響が強いほど間違えようが無くなるだろうに、ましてやレッドアラートっほどの物であれば多分など付くような案件ではないはずだが。
「わたしの感覚としては『不可思議な色彩』なんだけど……影響範囲が狭すぎるんだよ~。アパートの部屋一つだけ。それだけが異常範囲。」
 レッドアラートの不可思議な色彩。それは外なる邪神の肉片であり、それに中てられたこの世の全て、それこそ有機無機問わずすべてを発狂させ街一つ容易く発狂させる最優先対処事項だ。
 それがアパートの一部屋だけが影響範囲。
「多分の意味わかった? 疑問だよ。本当にレッドアラート案件なのか。
 とは言え感覚は不可思議な色彩の到来を告げてるし、慢心なんてしていられないよね。
 だから、何があってもいいように警戒はして~。」
 酔っ払いは紙を取り出して概要を話し始める。
「まず、アパートの部屋の中の事は外からじゃ観測は不可能だねぇ。広さとしては広くはないね。玄関入ったら短い廊下ですぐにダイニング。で、その隣に襖を隔てて和室が一つ。トイレとかお風呂は言及必要ないよね。」
 で、と指を一本立てる。
「起こっているであろう異常なんだけど、おそらく一つ目は異次元化。空間の拡張や隔絶、言ってみればアパートその物の広さなんて当てにならないし、中で起こった事は外部に異常を知らせる事はないだろうね。同時に、一度入れば容易に外に逃げる事も出来なくなる。気を付けて。」
 二本目の指を立てる。
「二つ目は色彩による精神的影響なんだけれど、これは言ってみないとわからないな。念頭に入れといてとしかここでは言えないね。」
 三本目。
「これは異常って訳じゃ無いけれど、知っておいた方がいい事。要救助者がいるよ。子供。けれどさっき言った通り一度入れば簡単に外には出られなくなるから、どうするにしても事件の解決を優先しなきゃいけないよ。」
 そして、酔っぱらいは言葉を切る。これで事件についての説明は終わりのようだ。
「さ、行くかどうかは君の選択だよ。」


みしおりおしみ
 色彩二作目―。
 前回とは雰囲気違う感じでね。
 戦闘が重視ではない感じになるかもね。知らんけど。

●重要ではない情報
 場所:二階建てアパート:築20年程度で古さが出てる。
 目的の部屋:建物二階の2号室。

●要約情報
 ・部屋の広さは変化します。
 ・一度入ると出るのは難しいです。ほぼ不可能。
 ・何らかの精神への影響があるよ。
 ・一般人要るよ。
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第1章 冒険 『ループ』

POWループを引き起こしている元凶を排除する
SPDループが起きる条件を満たさぬよう切り抜ける
WIZループが起きる法則を見極めて潜り抜ける
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ぽつぽつと雨が降る中、アパートの前に立つ。
 汚れが張り付いた壁面。錆が所々に浮いた水道管。
 ありふれた年季の入った建物にしか見えない。
 UDCのそういった気配を感じようと感覚を研ぎ澄ませども一向に感じられない。
 本当にこの建物なのかと疑問を覚えるも、示された建物はこのアパートで間違いない。
 部屋は、2階の202。二部屋目。
 確認する方が早い。とんとんと軽い金属音を立てながら階段を上り、少し進んで扉の前に立つ。息を吐き、ノブを回す。するりと回った。
 抵抗も無く扉が開き、その内を晒す。
 突き当りまで難無く目が届く。やはり、何の変哲もない。
 予知は勘違いか、場所が違うのか。
 玄関へ一歩、足を踏み入れる。
 拡張する。広大する。天井が高くなる。廊下の幅が広がる。
 まるで自分が縮んだかのような錯覚に陥る。
 そう、錯覚だ。自分の体を確認すればすぐに分かる。
 背後を見れば扉は閉まっていた。ノブを回してみる。回った。
 押して開いてみれば、そこは……廊下。そして突き当りまで目が届く部屋。
 ゆっくりと扉を閉める。
 ここに居たりやっと足を伝って気配が上ってくる。
 異常。異変。氷室の冷気の様に、何かが心に立ち込める。
 部屋の中へ足を踏み出す。一歩、一歩警戒しながら歩を進めるとすぐに以上に行き当たった。
 短いはずの廊下が、3歩歩けば終わる廊下が伸びていく。
 歩く。早く歩く。駆けだす。
 終わらない。終わらない。辿り着けない。
 足を止める。振り返る。何も変わらない。
 怖くなる。もしこれが永遠となったなら。
 もう誰にも会えなくなったのなら。世界が広くなった気がする。
 怖ろしい程に自分が一人だと自覚しそうになる。孤独感。


『外に出るな。』
 そう何度も言われてきた。
 扉を見ていたら頭を叩かれたこともある。
 だから、そこはわたしが近づいちゃいけない場所。
 おとうさんとおかあさんがでかけた後も、近づいてない。
 手をのばせばきっと届いた。けれど、それはとっても遠い距離。

●色彩の狂気は『孤独感』
 誰かを、何かを、心を包む温もりを。

・1章では世界が繰り返されます。それはその部屋のルールとUDCの呪縛、そして世界の発狂により作られた歪んだ異次元の膜。
 越える方法は、いつの間にか心に巣食った『親からの命令』を破る事。
もしくは、越えられる様に心を押す、手を引く『何か』『誰か』が居る事。現実か心か問わずに。
 世界や次元を壊す力があるのならそれもありでしょう。
ディ・アルカード
ーーーーーで、住んどるやつらの情報はそれだけかいな?

雨がぱらつく曇天の下
傘を指しながらスマホで話しながらUDCに調べさせた情報を確認していく

はぁ、、、
ホンマ、何日帰っとらへんのや、、、

満杯の郵便受け、中身を見て
育児放棄、虐待ー、、、碌でもないのは予想できよる

居るであろう救助者の名前を確認してから通信を切り、202の扉の前に立ちます

おとんとおかんには後々報いは受けてもらうとしてや

扉を開け一歩奥に進み、声を張り上げます

○○ちゃん居るんやろ!!
ちょっとまっとれ
今助けたる

この現象がUDCの能力やったら
「審判」でぶち破ったる

銃を構えて
バキバキと封印を解いて形を変える
オレのノックは優しないぞ!!


『ーーーーーで、住んどるやつらの情報はそれだけかいな?』
『それだけだよぉ。』
 それはディ・アルカード(【D】・f34040)が転移される前に交わされたグリモアとの短い問答。
 子の情報。親の情報。環境。それが抜けた予知の話。それを問うた答えがその短い返答であった。
 それは今回の『猟兵の仕事』は『それだけ』だと言うニュアンスも含んでいるように感じられる言い方だった。
 とは言え、止めもしなかったのだからアフターサービスは個人の裁量次第と言った事なのだろう。
 そう考えたディはさっさとスマホでUDCにコンタクトを取り部屋の住人の情報を抜いてもらった。
 UDC職員は最初疑問そうに理由を聞き、そしてそれが不可思議の色彩の可能性がある事件だと話されるとやにわに電話の向こうが騒がしくなり、それほど時間が掛かる事も無くスマホに情報が送られてきた。
 傘と雨が擽る様なテンポを響かせる下で、送られてきた情報をスクロールしながら歩を進める。
 向けたのは階段ではなく纏められて設置されている郵便受け。
「はぁ…ホンマ、何日帰っとらへんのや……。」
 つい、呆れた呟きが漏れる。
 少ないとはいえ号室を数える必要も無く見れば分かった。
 一つだけ、口からチラシをはみ出させた郵便受け。
 表札は『待町(まつまち)』
 ついでにディは封のされた郵便を一つ引き抜き宛名を確認する。送られてきた情報と名前に違いはない。齟齬はないようだ。
 帰ってきていない理由。いくつかの可能性がその思考に浮かぶが…
「碌でもないのは予想できよる。」
 事故とかそんなものではないだろう、とそう薄く笑う。
 確認したいものは確認したと、ディは202号室の前に立つともう一度部屋にいるであろう子供の名前を確認してスマホをしまう。
 ここからが、本番。
 ノブは容易に回り、扉は引き開けられる。
 温んだ空気だけが顔を出し、それ以外に何の反応も無い。
 一歩、足を踏み入れる。そして声を張り上げる。
「茉理ちゃんいるんやろ!! ちょっとまっとれ今助けたる!」
 声は吸い込まれるように消え、何の返事も聞こえない。
 承知の上だ。廊下に踏み込み早足に進む。
 ぐらりと、視界が狂う。
 奥に見える壁がぶつかるほどの勢いで目の前に近づいたかと思えば、今度は100mはあろう程に遠ざかる。
 瞳孔の急激な調整に脳が混乱し、不快に目を閉じる。
 言っていた空間の異常。異次元化。それに遠近感が狂わされた。
 目を再び開けたそこにあるのは普通の空間だけ。けれど数歩進んでも距離は変わらない。
「はっ、この現象がUDCの能力やったら『審判』でぶち破ったる。」
 理由も理論もわからないが異常なのだからとりあえずぶち込め。
 何もなければそれはその時。
「そう言えば部屋入るんやったらノックが必要やったな。けどオレのノックは優しないぞ!!」
 拳銃が開き、曲がり、形を変えてゆく。赤く、黒く、色を走らせる。
 引き金に指をかけた時、頭の中を×が埋め尽くし掛けた力が緩む。
 育ての親にダメだと強く言われたような感覚。
 錯覚だ。ここに居ないのだから。
「おとんとおかんには後々報いは受けてもろたる。」
 力を込め引き金を引き切る。
 銃弾は飛び、飛び、掻き消える様に消失した。
 空間に変化はない。
「能力やないんか。」
 ディがそう呟き、そして口にし終えた時には歩いた覚えもないのに廊下の終端に、ダイニングの目の前に移動していた。
 振り返ればそこに変わらず暗い廊下がある。
 少しだけ目を開き驚くが、結果は突破できたのだ。
 頭を切り替え前を向く。

 その行動は、親からの命令を振り切った。
成功 🔵🔵🔴

春乃・結希
うん…今度はきっと大丈夫
他の誰も居なくなっても、withさえ居れば私は
孤独を感じることなんて無いから

試しに部屋を歩き回ってみる
はー。ほんとに出られん…
ここでずっとwithと暮らす…誰にも邪魔されずに…それもあり?with、どうかな?
…うーん、でも、私は旅人だから、同じ所に居るなんてらしくないし
それに、思い出も、もっともっと、いっぱい集めたいなぁ

そうだ、子供。この部屋に居るんだよね
ちゃんとおとーさんのおかーさんの言う事聞いて、えらい子なんじゃね
でも、世界はどこまでも広いのに、ここに居るのは勿体無いと思う
会えたら私の旅のお話をしてみようかな
それでどうするかは、その子の意思に任せるけど


「うん…今度はきっと大丈夫。」
 アカい世界を思い出しながら呟いた声は、不自然なほどに吸い込まれ、溶ける様に消えていく。それを耳にしながら春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は廊下に立っていた。
 数歩行けば途切れる長さ。その短い距離が終わらない。
「他の誰も居なくなっても、withさえ居れば私は孤独を感じることなんて無いから。」
 この空間に入ってなんとなく感じる寂寞感。けれどそれは春乃自身にではなくこの空間に対して感じていた。
 雨の音だけが小さく聞こえる、それ以外の音が溶けていく世界。
 明るいとも暗いとも言えない薄明るい世界。
 廃墟のよう、そんな考えが頭に浮かぶ。
 ともあれ、色彩の影響は前回ほど警戒する物でもない。
「そういえば容易に出られん言ってたけど…。」
 春乃は何となく入ってきた玄関のドアを開けてみる。部屋の廊下が続いていた。
 はー、と何か感心した様に扉を閉め、壁に手を滑らせながら廊下を進んでみる。
 壁のざらざらとした感触が手を伝い感じる。
 確かに進んでいるのに進まない。奥の空間に近づかない。
 動く歩道を逆走している様なその出来事に春乃は、
「はー。ほんとに出られん…。」
 なんというか、未知との遭遇や珍しい出来事に行き会った様な表情であった。
 仕舞いには、
「ここでずっとwithと暮らす…誰にも邪魔されずに…それもあり? with、どうかな?」
 なんて少し笑顔を見せながら相棒に語り掛けていた。
 珍しい体験に少し上機嫌になりながらその不可思議な感覚を楽しむ。
 けれど、変わらない景色にはいつか飽きるのだ。
「…うーん。でも、私は旅人だから同じ所に居るなんてらしくないし。それに、思い出も、もっともっと、いっぱい集めたいなぁ。」
 いつか、生きる地を定めるとしても、今はまだ歩み足りない。

 。ゆれる

「そうだ、子供。居るんだよね。」
 グリモアが要救助者と言っていた子供。色彩は倒すとしてどうしようか。
 春乃が思った事としては単純で。
(ちゃんとおとーさんのおかーさんの言う事聞いて、えらい子なんじゃね。)
 素直なのか従順なのか。とは言え子供なのだからそんなものかとも思うも、やはり春乃の在り方としては不自由だと思ってしまう。
「世界はどこまでも広いのに、ここに居るのは勿体無いと思う。会えたら私の旅のお話をしてみようかな。それでどうするかは、その子の意思に任せるけど。」
 春乃が話すそのお話はきっと御伽噺に聞こえることだろう。
 けれど、過去に描かれた御伽噺の様な冒険小説に心を動かされた人々が居るのだから、それもまた一つの切欠になりうるのだろう。
「ん…。」
 気づくように『それ』を認識して足を止めた。
 透明が、揺らめいていた。
 気づいて見渡せば、廊下は水の内にいるかの様に周囲に透明が揺らめいていた。
 見えないのに、揺らめきが視える。
 そして廊下の先を見れば、水面の様な揺らめきの壁があった。
 それがゆっくりと泡が弾けるように消えていく。
「もしかして…。」
 足を進める。確かめる様に一歩二歩と。
 そして、廊下を抜けた。

 あなたは誰かと共に在る人
 そして、背中を押せる人
成功 🔵🔵🔴

尾守・夜野
(異界化ね…)
「…情報はこんだけ
外界から見て取れる情報はなし
…ぶち壊したらどうなるのかって情報は…冗談だよ冗談
んなことしたら漏れ出すかもしれんし」
まぁなら後は入るだけ
ノックもせずに入ると目眩
開けて振り向くも…

「…んな顔も覚えてねぇ誰かのなんてなぁ」
煩わしく過る誰かから受けた外に出てはいけないという強迫観念
「んじゃ入るなら構わんわけだ」
だからより奥へと歩みを進めようと
まぁ進めもせんのだが

だから異界を異界で塗りつぶす
ルールなんてものは書き換え全体に対する攻撃と仮定義
目の前から飛んでくるのでもねぇならそれすなわち遠距離攻撃

見通しがよくも悪いここなら人探しもある程度は楽だろうさ


(異界化ね…)
 アパートの前で、赤い傘をさした尾守・夜野(墓守・f05352)はその端々に視線を巡らせていた。
 夜野の目からしても普通の建物。怪しい部分など目に着かず…。
「…情報はこんだけ。外界から見て取れる情報は無し。」
 なら、とアパートに手のひらを向ける。夜野の瞳の上でアパートに手が被さり隠す。
 そして、くしゃりと手を握り締める。
「…ぶち壊したらどうなるのかって情報は………冗談だよ冗談。んなことしたら漏れ出すかもしれんし。」
 軽く笑いながら掌を解き、誰に言うでも無く弁明する。
 そして、手をふらふらと振りながら歩きだす。
「まぁなら後は入るだけ。言ってた通りにな。」
 じゃ、と特に気負いも無くノブを回し扉を開け…視界が落ちかける。
 眩暈の様なその感覚はすぐに引きはしたが、その時には扉は閉じ、夜野は玄関の内側に足を踏み入れていた。
 ふん…、と息を吐き軽く首を振りながら調子を確かめる
(精神に影響だとかなんだかいってたっけか。)
 特に不調はない…けれど、どこか違和感を感じた。
 少し考えるがその正体が掴めない。
「まぁいいか。」
 適当に思考を切り上げる。立ち止まって考えているよりも歩きながら考えた方が考えも纏まりそうだし、犬も歩けば棒に当たった方が情報も集まるというものだ。
 そう思いさっさと奥へと歩き出す。
 奥へ奥へ。進み進んで。足を止める。
「まぁ進めもせんのだが。」
 何より心が冷え込んでいく。
「ま、異界なら異界で塗りつぶせば通れるだろ。出口がないなら出口のある異界にな。」
 そうして詠唱を舌に乗せかけた時、どうしようもない忌避感を覚えた。
 してはいけないと言う感情。危険とか虫の知らせの様なものではなく、もっと漠然とした常識としての様な忌避感。
 それは、小さな子が親に言われたダメをそれが正しいと妄信する様な…。
「…んな顔も覚えてねぇ誰かのなんてなぁ。」
 夜野は何となく忌避感を覚えた物の、悩む事無く詠唱を再開した。
 それが同いう物なのかこちらも何となくで察したと言う事もあるが判断が早かった。
「四(死)を徒らに歪ませ重ね、時すらも曖昧に。全て全て紅蓮と宵闇の狭間に…。」
 壁が変わっていく。床が変わっていく。廊下は四辻へ変わっていく。
「さて、出口出口っと。」
 終わりなき廊下は出口のある四辻へ。
 四辻の終わりが出口となった。
大成功 🔵🔵🔵

ヴァシリッサ・フロレスク
――Knock,Knock.

Hey Girl?
ンな陰気なトコとッとと抜け出して、オネーサンとアソビにいかないかい?

ッと。
グリモアのネーチャンの言ってた通り。こりゃ愉快なアトラクションだねェ?
ッてか、あのコとは仲良くなれそうな気がするよ、フフッ。

スキットルでウォッカを呷る。

脚が棒になる様な行軍も、悪路走破も自信が有るケド、コイツは一体どンなカラクリだい?

――とーさん、かーさん、ねェ。

血の因果は。逃れ難い、その梏桎の如き束縛は。
噎せ返る程に知っている。

決してアルコールで灼けた訳では無い。

忌むべき血胤。

だが。

アタシは。アタシだ。

もう一口呷り、進む。

アタシの進む路は。他でもない。アタシが決めた路だ。


 ――Knock,Knock.
 赤い髪の女が、まるで舞台かドラマの様に、気取ってすかした風に扉を叩く。
 様子だけ見れば王子様。けれどあの口角を変に上げた下手な笑顔は狼役。
 狼役でこのお話が童話なら、中にいる子供は食べられる運命。
 このお話は…
「Hey Girl? ンな陰気なトコとッとと抜け出して、オネーサンとアソビにいかないかい?」
 ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は高らかに謳い上げる。
 続いて確実に近所迷惑になる勢いで扉を勢いよく開き、子供を遊びに誘う。
 このお話は喜劇なのかもしれない。

「ン~~~っと。」
 早々に、ヴァシリッサは顎に手を添え首を傾げていた。
 靴を脱いで上がった方がイイかどうかで悩んでいる訳ではなく、と言うか既にずんずんがんがん前へ進んで行ったあとであり、普通に土足である。
 なので悩み事は分かりやすく、進めども変わらない景色を前に特に危機感も無く悩んでいた。
「グリモアのネーチャンの言ってた通り。こりゃ愉快なアトラクションだねェ?」
 焦る様子など微塵もなく、その顔に不敵な笑みを浮かべている。
 とは言え、だ。現状焦りも何もないが疑問はある。
「脚が棒になる様な行軍も、悪路走破も自信が有るケド、コイツは一体どンなカラクリだい?」
 脱け出す条件は何か。ひたすら歩くだけなら何の問題も無いが条件があるなら面倒だ。ホントに。
 そう考えながらヴァシリッサは懐から銀色のスキットルを取り出し、とりあえずウォッカを呷った。
 ……ウォッカを呷った。
「素面で思いつかないンなら、酒を入れれば思い付く事もあるのサ。そういえば…。」
 酒の匂いにつられてあのグリモアの酔っ払いの酒の匂いを思い出す。
「あのコとは仲良くなれそうな気がするよ、フフッ。」
 そして、それにつられてグリモアが視た予知を思い出す。
 もう一度ウォッカを呷り、歩き出す。
(――とーさん、かーさん、ねェ。)
 口の端が一文字に横になる。
 優しさとか、暖かさとか、甘さとか、そう言ったものが感じられなかった。
 きっとあの子供はヴァシリッサと同じなのだ。
 生まれた世界は違う。境遇も違う。似た部分など一つもないだろう。
 けれど血の因果は。親と子のその因果は。
 逃れ難い、その梏桎の如き束縛は…。
  首筋に手を当てる。脈打つ音が手に伝わる。熱せられた様な熱い血を、その手に感じる。
 噎せ返る程に…知っている。

 忌むべき血胤。

 ドクリと心臓が跳ねる。
 アルコールで火照った心の隙間に冷気が忍ぶ。
 父と母は殺された、弟も死んだ。残った血族纏めてその手で殺した。
 叛軍の道具として。
 背後から、父親と母親が耳元で囁く。
『×××××。』
 ……。

 もう一口、呷る。そして口元をぬぐって踏み出す。
「アタシは。アタシだ。」
 血など関係なく、親など関係なく。
「アタシの進む路は。他でもない。アタシが決めた路だ。」
 我が道を行く。その肩に偽りの親の気配はすでになく。
「おや?」
 その足は長い廊下を抜けていた。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『おぞましき異形の群れ』

POW ●わかってください、わかって?
【醜い異形の姿】【狂気的思考】【奇怪な言動】を披露した指定の全対象に【恐怖】【嫌悪】【忌避】に基づく【敵対】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD ●みとめてください、みとめて?
【自分達を否定されると、暴走状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ ●こたえてください、こたえて?
対象への質問と共に、【対象の周囲のあちこち】から【おぞましき異形の群れ】を召喚する。満足な答えを得るまで、おぞましき異形の群れは対象を【話し相手にする】が、限界に達すると【全力】で攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこは
 
 片付いた部屋だった。  /  汚らしい部屋だった。
 テーブルの上には不要な物はなく、  /  テーブルの上には食器やゴミが溢れ、
 床には汚れや埃も無かった。  /  床にも物が積み上がり汚いシミが目立った。

 何より目を引いたのは、

 『セーラー服・学ラン・ブレザー・夏服・冬服・私服』を着た『男子・女子』が立っていた事だった。  /  二つの黒い影だった。体が大きく威圧感を覚える影と、細いのに髪の様な物が蠢く影。どちらも天井にまで頭が付きそれでも足りず前のめりになる様にしていた。

《  》が満ちている。

 それをみてほっと、安心感を覚えた。 / それを見てほっと、安心感を覚えた

 それはおかしい。違う。そう思うのはおかしい。
 理解できる。自覚できているのに、目の前の存在が自分の内で怖ろしい程に大きな存在になっていく。それは『依存』と呼べるほどのものに…。
 孤独は去り、依存へ繋がる。それが居なければ狂ってしまう。

《色彩》が満ちている。
 事物構わず狂わせる《色彩》が世界に満ちている。

 『彼・彼女』があなたを認めた。 / 影が、あなたを見つけた。
 『彼・彼女』は少しだけ悲しそうな顔をして、言った / 影が迫り、声を出す
 『殺してください…。』 / 『×××××××××………』(理解できない声)
 『私・俺はもう忘れられてる部分だから、』 / 『✕✕✕✕✕✕✕✕✕!』(同上)
 『声をかける事も、触れる事ももうできない』 / 『バツバツバツバツ』(〃)
 『それでも、これが出来る事だから。』 / 『罰罰罰罰』(略)
 『だから、お願いします。』 / 『――———』


 ダイニングルーム
 ここでは『何か』:左 か 『影』:右と遭遇します。

 『何か』:服装や年齢は大体、学生程度で単体です。どんな者に会うかは特に指定が無ければこちらで決めます。攻撃しません。

『影』:自身の倍以上ある背丈の影のヒトガタです。太く巨大で威圧感のある影と、細い体だが長い髪の様な蠢く影の二体ワンセット。攻撃的です。攻撃は大体UC

《上記の『どちらか』にのみ遭遇します。要はどちらか片方にのみ対応したプレイングを書いて頂ければ大丈夫です。》

・異次元の色彩:空間に見えない異次元の色彩が満ちています。
 目の前の存在への渇望するほどの依存心が沸き起こります。
 狂気的な献身と挺身すら覚える相手を、どうします?
●『何か』の姿は特に異常な部分などはなく一般人的です。
尾守・夜野
■何かと遭遇
先程までいた廊下とはまた空気が違うな
疑問に思っていると人影を発見
「…あんたがここの子供か?」
人の姿だし完全に救出対象だと思い込んでるぞ
人が拠点としてるからか?

「殺してって…
こちとらお前さんを助ける依頼を受けてんだがなぁ」
(むしろ殺して欲しいのはこっちだ
人に罪背負わせる気はねぇが)

言葉を交わせているようで
言いたい事だけいう平行線
違和感は感じるのに確定は出来ず言葉を交わす度過去と今が混ざり毒(ネガティブオーラ)が満つ

皆といるのが幸福だった
…一人置いていかれた
もう置いていかれたくない
また一人にしないで…

…もうだめだった
皆(剣)を手に取り首筋に一閃
…でも慣れすぎてて
倒れた視界には相手が…


「空気が違う…。」
 窓が近いせいか廊下よりも明るいという事もあるが、それを抜きにしてもどこか気を抜いてしまうほどに心に安堵感が芽生えた。
 無意識に気を張っていたのか、深く息を吐く。
「いや、ダメだ。」
 気を抜いてはいけない。『危機感』を与える怪物よりも、『安心感』を与える怪物の方が性質が悪いのだから。
 気を取り直してダイニングを見渡せば、綺麗なフローリング、綺麗なテーブルと椅子、整頓されたキッチン、曇り空が覗く曇りのない窓。
 そして、窓から差す薄明りで半身を照らされながら、こちらを見ている一人の少女。
 中学生ほどの髪の短い女の子。
「…あんたがここの子供か?」
 この子がグリモアが言っていた要救助者の子供かと思った。
 そうとしか思えなかった。

 警戒心が、色彩の依存によって希釈される。

 警戒していた。気を張っていた。けれどそれが救助者かと思った、見つけたかと思った、その感覚が一瞬の内に確信に置き換わり、その安心に『依存』した。
 何より、廊下で無意識で感じていた孤独感を、これで感じなくて済むと、その安心に頼った。
「子供はこれで見つけたし、後はここから……。」
「私を殺してください。」
 出る方法を見つけるだけ…と、口にし終える前に少女がそう口にした。
 夜野は少しだけ訝し気にしながら、逸らし掛けた視線を少女に戻す。
 その顔は、小さく微笑んでいる様にも、涙を流さずに泣いている様にも見えて。
「殺してって…、こちとらお前さんを助ける依頼を受けてんだがなぁ。」
 少し混乱はするが、もしかしたら事件の影響なのかもしれない。
「私はもう忘れちゃった部分だから。」
 夜野の言葉が聞こえていない様に少女は続ける。
「もうあの子に声をかける事も、触れる事もできなくなっちゃったから。」
 夜野の心に違和感が浮かぶ。この子は違うのかもしれないと、浮かぶ。
 けれど、だとしても助ける対象と言う考えが確固として消えない。
 一般人と言う考えが消えない。
「自殺に協力する気はねぇよ…。」
(むしろ殺してほしいのはこっちだ。そんなの許されねぇけれど。)
 まるで独り言のように続けられる言葉に、少しだけ苛立つ。
「それでも、そんな私が最後にできるのがこれだから。」
「だから俺はっ…。」
 夜野の声が強くなる。はっきりとわかる。違和感がはっきりと自覚できる。
 心の中で個体と化してると感じるほどに、その存在が形となっている。
 なのに、分からない。確定できない。目の前に存在するのに、それが何なのか理解しているはずなのに、言葉にできずそれと理解する事を頭が拒んでいる様な矛盾思考。
「だから、お願いします。」
 混ざる。混ざる。混ざる。混ざる。混ざる。混ざる。混ざる。混ざる。混ざる。
 矛盾が思考を混ぜる。
 交ざる。交ざる。交ざる。交ざる。交ざる。交ざる。交ざる。交ざる。交ざる。
 過去の光景が今と交ざる。
『殺してください。』
 いきすぎた孤独が、行き過ぎた依存が、狂気に昇華する。

「皆といるのが幸福だった。」(…一人置いていかれた。)
 夜野の目から光が消える。
「もう置いていかれたくない。」(また一人にしないで…。)
 少女はただ、静かに待つ。
「……。」
 夜野は剣を手に取り…、少女にではなく自分の首に当てた。
 頭に渦巻く矛盾思考の簡単な止め方であり、自殺衝動の発露。
 そして、刃が滑らせたその時、少女が目を大きくするのを見た。
 夜野は首から血が飛び出る感覚と共に、意識が暗くなりながら頭が冷えていくのを感じた。
 横に倒れたまま、薄い意識の視界の中で、少女が倒れる姿が映った。
 摂食変換。
 それは、無意識と慣れの自身の自殺の対処だ。
 傷と痛みは地産地消で治癒に変換する。
 けれど、今回のその自殺の理由はどうであったとしても、その相手との会話が端を発していた。
 摂食変換は、回復と共に『攻撃への抗体を身につけ、有効なものを刻印から表に出す』。
 少女の体には赤い棘が幾つも刺さっていた。
 抗体は、狂気に至る原因の抹消。有効な物は、原因を消す凶器。

 未だぼうとする夜野の意識。
 けれど噴き出した血はとうに止まり、傷も塞がっていた。
 なに、少しも経たない内に意識もはっきりする。
 そしてその時にはもう、少女の形はどこにもない。
大成功 🔵🔵🔵

ディ・アルカード
長時間居ったら頭おかしくなりそうやで

茉理ちゃんの名前を呼びながら
異界と化しているダイニングの探索を続けます

気配を感じて銃を構えて振り向くと
ソコには顔見知りの姐さん(ヴァシリッサ・f09894)が
姐さん?
この件に来てたんですか…?
まて、もしかしたら偽物かもしれへん…
もし姐さんやったら―…

その言いまわし、ほんまもんやね

確かな存在が傍に居るだけで安心するし頭が回る

やっぱおかしい
こんな世界を作れる邪神やろ
拒絶するなら永遠に廊下から出さなければいい
わざわざ招き入れたとなると…別個の意識が存在しとるような気がする

…そこんとこどうなん?
オマエはオレらに何をさせたいんや?

『何か』に銃口を向けながら声を掛けます


ヴァシリッサ・フロレスク
Mr.D(f34040)とばったり遭遇

覚えの有る聲と後姿を追跡
ま、こンな場所じゃどーだか分かンないケドね

クルースニクを後手に、音も無く軽やかにスキップしつつ近付き
――あ?バレちまったかい?
物騒だねェ、そンなモン向けないでおくれよ?
クルースニクをクルクル弄び

銃の構えを見て彼が自身の店に来た時と同じ指摘をする

てか
『リキみ過ぎて固くなって』ンよ?
ソレじゃ当たるモンも当たらないサ

フフッ
でもやっぱ確かめるにゃ味見しないとねェ?
首筋に咬み付く素振り

Dの言葉に同意
あァ
ホント何考えてンだか

振り返ると、小綺麗な装いの、弟の姿

子供騙しは狂気耐性で見切り

またね
UCで“さよならのキス”だ

ンなハンパな覚悟じゃねェンだわ


 片付いたダイニング。そうと言われても異常事態の最中とは思えないような、日常の普通の部屋。
 異常の一欠片も無いようなその部屋の中で、頭の中が警告で埋まる。危険信号が鳴り響く。
 この空間に長時間留まるのは…
「頭おかしくなりそうやで…。」
 そう、ディ・アルカード(【D】・f34040)は面倒そうに呟いた。
 まるで霧の様に実態が掴めないと言うのに、身体に水滴が張り付くように何かを感じさせる。
「茉理ちゃん。」
 早く仕事を終わらせようと名前を呼ぶ。
 広くない部屋、大きな声でなくても襖を隔てた和室にも届くだろう。
 ダイニング自体広いわけでもなく、片付いている為子供を探すのに時間はかからない。
 そう思って二歩足を進めた時、反射的に銃を引き抜き背後に突きつけながら振り返った。
「姐さん?」
 そこには見知った赤髪の女性、ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)がいつもの笑みで立っていた。

 
 ヴァシリッサにとってそれは奇妙な出来事だった。
 先ほどまで目の前には誰も居なかった。と言うのに、数歩先にいつの間にか知った背中がそこにあった。唐突と言う感覚も無く、ただ奇妙。
「茉理ちゃん。」
 その知った背中、ディが名前を呼ぶ。
 知らない名前だ。けれどまぁこんな場所で呼ぶのはおそらく救助者の名前だろう。
 どう考えても覚えのある姿と声。けれどそれが本物かと言えば…
(ま、こンな場所じゃどーだか分かンないケドね。)
 首を傾けながら1秒だけ思考して答えを出した。
 とりあえず、器用と言うか神業の域に達していそうな、忍び足ほどの進行速度で音も無くスキップしながら近づくと言う行動に出た。
 背中に回した手にクルースニク。トレンチナイフを握りながら。
 そうして
「――あ?バレちまったかい?」
 ディに銃を突き付けられた現状に至る。
「この件に来てたんですか…? まて、もしかしたら偽物かもしれへん…。」
 ディの表情はこんな場所で知人に会った驚きから、変な行動をしていたことに対する呆れ、そして真偽を疑う警戒へと微妙な変化を連続して起こした。
「物騒だねェ、そンなモン向けないでおくれよ?」
 銃を突き付けられたそんな状態で、ヴァシリッサは常と変わらずに愉しんでいるかのように笑みを崩さない。
 さらに余裕を見せ付けるかのように両手を上げ、右手の人差し指でクルースニクをくるくると回している。
 沈黙が横たわる。警戒と様子見と言う違いはあるが。
「もし姐さんやったら―…。」
「てか。」
 ディが何かを言いかけた時、ヴァシリッサが愉快な様子は十分に見たと言う様にその言葉に割り込む。
「『リキみ過ぎて固くなって』ンよ? ソレじゃ当たるモンも当たらないサ。」
 その言葉にディが反応する。それは覚えがある言葉。
 あの時あの場所に居なければ知り得ない、二人の会話の一つ。
「その言いまわし、ほんまもんやね。」
 ディが銃を下ろし、肩から力が抜ける。
 この異常な空間では、確かな存在が居るだけで安心する。……常より増して。
 ヴァシリッサ自身、先ほどの言葉に対するディの反応で本物と判断したのかクルースニクをしまうと情報の共有…ではなく。
「フフッ、でもやっぱ確かめるにゃ味見しないとねェ?」
 ワキワキ指を動かしながら血を吸おうとするようににじり寄る。
「これは絶対にほんまもんや!? それ以上はSTOP!?!?」
 緊張感が完全にどこかにすっ飛んでいっているのは、この空間の影響なのか、それともただ単にこの二人の通常営業なのか……それは分からない。
「やっぱおかしい。」
 少しの間そんな事してて、両手でヴァシリッサを押し返しながら考えていたディが口にする。
「あん?」
 おふざけを止め聞く態勢に入りながらヴァシリッサが先を促す。
「こんな世界を作れる邪神やろ。拒絶するなら永遠に廊下から出さなければいい。わざわざ招き入れたとなると…別個の意識が存在しとるような気がする。」
「あァ……ホント何考えてンだか。」
 邪神の考えなぞ人が推し量れるものか…と言う考え方もあるが、なんとなく分からなくもない考えであった。
「そこんとこ…。」
 ディがテーブルの下へ銃を向けながらそれに問いかける。
「どうなん? オマエはオレらに何をさせたいんや?」
 その先には、テーブルの影に隠れる様に、7か8程度の男の子が小さく三角座りをしていた。
 ディが持つ情報では茉理ちゃんは女の子だ。なら、この子は…。
「お前…。」
 予想外の場所から反応があった。
 ヴァシリッサがその少年を見て、驚いた様に目を開いていた。
 ヴァシリッサの目には、その子が弟に見えた。弟だと思った。弟とダブった。
 きっとそれは空似。けれど、依存がその思いで認識を補正する。
 一歩、踏み出し掛ける。けれど、
「助けてあげて。」
 少年が声を出す。伸ばそうと、上げかけたヴァシリッサの手が止まる。
「あの子を助けて…。」
 テーブルの影で、少年の顔は見えない。
「ボク達は、忘れられる事が怖いんだ。怖くて、恐ろしくて、憎くて、悲しくて、胸が張り裂けそうなくらい寂しくて、狂うんだ。」
 少年期特有の高い声が続く。
「ぼくはもうあの子に忘れられてる。大声で泣いちゃいそうなくらい、寂しくて悲しいけれど……。」
 テーブルの影から小さな手が差し出される。
「けれど、友達が死んじゃうほうがとっても寂しくって、悲しいんだ。」
 だから、
 ぼくを殺して
 ともだちを助けて。

 それは、理解しがたい頼み事だった。
 UDCが、人を助けてと願う。
 UDC-Pと言う訳でもなく、そう願う。
 だからきっとこれも狂気なのだ。誰かを思いやる狂気。

「はぁー。」
 動いたのはヴァシリッサだった。
 テーブルの前に跪き、しっかりと少年を見る。
 ダブる、弟の姿。
 少年の手を取って、口を近づける。
「ンなハンパな覚悟じゃねェンだわ。だから」
 口付ける様に、手の甲に歯を立て自分の血を流しこむ。
 それはサヨナラの、別れのキス。
 けれど口にするのは、「またね。」
 たとえ本物であろうと偽物であろうと、変わらない。
 そうして、ヴァシリッサは立ち上がり、背を向ける。
 もうテーブルの下に男の子の影はない。
 
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

春乃・結希
依存。それが持つ力も、どうしようも無い弱点になってしまう事も、よく知ってる
私が私で居るために必要なものだから

見下ろす影を真っ直ぐ見つめ返す
ふたり…もしかしたら、依存してるのは子供やなくて、おとーさん、おかーさんの方なのかな
だってこんな寂しい場所に閉じ込めて、自分達だけのものにしようと思ってるんやもん
…でも、私も同じようなものかも
withは私だけのもので、他の誰にも絶対に渡したく無いもん

異形のUCも、私はどこか冷めた気持ちで眺めて
怖くなんか無いよ。私は最強だから
否定したりしないよ。全部思い出にするから
私の心はもう、withでいっぱいだから
あなたを寄る辺にしなくても大丈夫
忘れないよ、絶対


 依存。
 部屋に入ってから呼吸する度に、胸の内にあるそれが大きくなったり小さくなったりするのが、手で触れる様に自覚できた。
「それが持つ力も、どうしようも無い弱点になってしまう事も、よく知ってる。」
 それ以外見えなくなりそうな程の感覚。
 それ以外不要と思ってしまいそうな程の感情。
 それしか必要ないと思ってしまいそうな自覚。
「私が私で居るために必要なものだから。」
 今日は、いつも以上に相棒の存在を感じられる。

 かつんと、床に落ちていた空き缶に足が当たり、からからと空虚な音を立てて転がる。
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は巨大な影の前に、立っていた。
 影が春乃を見下ろす。その目は子供が黒い紙に白いクレヨンでぐりぐりと丸を描いたようで、感情が伺えない。
 二つの影に覆いかぶさる様に見下ろされれば、春乃の視界は影だけで埋まった。
 影が見えない口を開く。
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!』
『×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××!!!?』
 絶叫が響いた。それとも怒号だったのだろうか。
 部屋のどこかからガラスが割れる音がした。
 部屋全体がカタカタと揺れる。
 その声の衝撃が春乃の髪を揺らす。
「……。」
 春乃は怯む事も、後退る事も無く、影を真っ直ぐ見つめ返していた。
 何でも無いかのように、その様を冷めた視線で見つめながら考える。
(ふたり…もしかしたら、依存してるのは子供やなくて、おとーさん、おかーさんの方なのかな。)
 どうだろうか。少なくとも、この二つの影は父親と母親だろう。
(だってこんな寂しい場所に閉じ込めて、自分達だけのものにしようと思ってるんやもん。)
 閉じた小さい世界。カーテンで閉じられた窓。
 見ようによっては確かに独占欲も感じられる。
 けれど、けれどだ。
 ゴミが広がる部屋。散らかったままの部屋。暗い部屋。
 その依存に愛はあるだろうか。好意はあるのだろうか。
 withを握る手に力が込もる。
 独占欲の依存であるのなら、
「それは、私も同じようなものかも。」
 withは私だけのもので、他の誰にも絶対に渡したく無い。
 けれど。
「withは私の最愛の恋人だから。」
 少なくともこんな場所に置いていくような存在じゃない。

 影の、怪物的なその姿は、
「怖くなんか無いよ。私は最強だから。」
 
 影の、その理解不明な絶叫と行動は、
「否定したりしないよ。全部思い出にするから。」

 部屋に満ちる色彩の依存なんて、
「私の心はもう、withでいっぱいだから。」
 そんなものはいつも傍にある。
「あなたを寄る辺にしなくても大丈夫。」
 浮気なんてしないから。
 絶叫が止む。
 withを振り上げた春乃のその瞳には、影が小さくなっている気がした。
「忘れないよ、絶対。」
 最愛が風を切る。
 そして、轟音と共に纏めて影を叩き散らす。

 それは子供が視た幻影。子供が作り上げた幻灯。
 現実を見ない為の、幻逃。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 ボス戦 『忘却恐れし偶像少女』

POW ●どうかまたわたしを、愛してくれますか?
【再び愛されたいと願う抱擁】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD ●違うわたし、本物になれないわたし『たち』
【在り得たかもしれない別の自分たち】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ ●あなたの望む、わたしのカタチ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【胸部に刻まれた傷口へと取り込み】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ユエイン・リュンコイスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 和室へと続く襖を開くと、雨の音がはっきりと耳に届いた。
 開いた窓から湿った空気が漂ってきている。
「ああ、来てくれた。」
 部屋の隅から声がした。静かで、落ち着いた、安堵した声。
 そちらを向けば、横たわる十歳程度の女の子と、その横に少女の頭を優しく撫でるセーラー服を着た少女が座っていた。
 けれど女の子よりも、声よりも、姿よりも、惹き付けられたのはその胸の傷口。
 そこに『それ』があった。無色、透明、永遠に続く透明、白すら存在しない透明。
 見つめ続ければ、猟兵すら染めてしまう異彩の狂気。
 今まで感じた漂う色彩の原色。外なる邪神の肉片がそこに収まっていた。
 意識して、色彩を見る。意識を、向けてしまった。
 水に落ちるような感覚。深く沈みながら、水面に揺蕩う光を見た気がした。
 無理やりに視線を背ける。その一瞬で心が底冷えする様な感覚に陥った。
 足元が崩れる様な、自身の確固とした地盤が消えてしまうような感覚。
「間に合ってくれてよかった。私じゃあどうにもならないから。」
 猟兵のその様子を知ってか知らずか、セーラー服の少女は話を続ける。
「これを中に入れておくのも大変だし…この子も私がこうして顕現してる以上、危ないから。」
 胸元に手をやりながら少女は立ち上がり、女の子から数歩離れると貴方達を招く様に手を広げる。
「これが私の最初で最後の献身。あの子が死んで私が完全に狂ってしまう前に、色彩ごと私を消してください。」

●特殊
・『UDC(セーラー服の少女)ごと色彩を討伐する』、もしくは『色彩の実を狙い攻撃する』が存在します。

『UDCごと』の場合、反撃はありません。

『色彩のみ』の場合、色彩を意識して目標にする為、色彩の影響を受けて攻撃する事になります。(目を閉じたり逸らしたりしても意味はありません)
・【色彩の影響】:影響下にある間、貴方の記憶と言う記憶を消し去り、喪失したと言う強い感覚だけを残す。

暫定勝利条件:『UDCごと色彩の破壊』もしくは、『色彩の破壊及び女の子の生存の確定』

備考:空間に満ちる色彩の影響はありません。
(色彩を狙わない限り色彩の影響を受けません)



 わたしのお家にはお化けが居る。
 黒くておっきいお化けが二匹。
 時々扉の影からのぞき込んできたり、時々痛くしてくる。
 そんな怖い時、いつもともちゃんが慰めてくれた。
 優しい手、優しい温もり、優しい声。
 ずっと、ずっと傍に居て…。
 いつからだったっけ…。
 
ディ・アルカード
他の猟兵と合流

人の為に死にたいね…
普通はそんな事いわへんての
やっぱどうも敵とは思えんな

100%信じた訳やないけど
有益なUDC-Pの可能性があるし
何より茉理ちゃんのことを考えても生かした方が良さそうや

悪いけど、こっちの我儘を押し通させて貰うで

メインアタッカーは2人に任せ
念の為、喪失しても攻撃できるサブ要因は準備

メイン【魔術師】
(状態異常耐性向上)
敵として認識した対象を自動で攻撃する
プログラムを組込んだ
バスケットボール大の空中浮遊する補助ゴーレムを作成

サブ【教皇】
(戦闘中)
味方に意識を向け
特殊弾を撃ち込み味方へのバフ付与
(戦闘後)
味方、少女のUDC、茉理ちゃんの回復に使用しますちょっと待って


尾守・夜野
ディ、ヴァシリッサ、春野と

「どいつもこいつも己を殺せと…集団自殺でも流行ってやがるのか?」
痛む気のする首筋をさすりつつそう溢す
心情的にも殺したくねぇが
色彩を知覚してるのに狂いきってない特殊性の観点からして、現状を打破出来る可能性からも何とか助けたい

他の皆も理由は違えど同じ考えのようだな

色彩に視線を向けると喪失感が
欠けてる物が多過ぎて無くした事も分からず喪失感だけが
だからUC【狂:捨荷苦祭】にてその感傷を無くす
元より人格変わった直後は思いだそうとしないと直前の記憶ない
だから自分の体制から次の行動は推測して動いてる

迷うだけの感情も記憶ない
だからいつも通り迷わず指定UCを
動きを止め助けるだけの一撃を


ヴァシリッサ・フロレスク
Dと、合流したハルノ、オガミ達と

Hey y'all♪
とまァ、同志との挨拶もソコソコに、漸くヒロインの御出座しだね

ンで
ドッチがヒロインなンだ?

HA,泣けるねェ
悪いケド、アタシゃベッタベタのハッピーエンドが好みなンでね
ミンナはどうだい?

――!
絶望的な喪失感
Hm?コイツが出しモノッてワケか

Ya,
アタシが先に行くよ
何、失くすダケだろ?もう喰い飽きたよ
失くした分だけ
この手で奪り返しゃイイのさ

味方の援護を頼りに真直ぐ切り込み
狂気耐性で敵の手の内を見切りUC発動
色彩に向け伸ばした右腕から全身が紅い浄火に変化

紅はただ等しく邪のみを燬き
狙いは色彩だけ焼き切り抉り出す事

カノジョから切り離せりゃ、後は同志に任せるサ


春乃・結希
ディさん、尾守さん、ヴァシリッサさんと

…しんでも生き返るとか、忘れても構わないとか、もともと忘れてるからどうでも、とか…
ここにいる猟兵さんたちはみんな、すごい覚悟やなって思う
私が旅して集めた思い出。例え一時的にでも、思い出せなくなるなんて絶対いやだ
今日初めて会うUDCと女の子の為にそこまで出来るほど、私は優しくないんよ

寝ている女の子の側に座って--UDCに邪魔されないなら、部屋の隅まで運びたい
UC発動
拒絶の焔で自身と女の子を包み障壁代わりに

お化けも、あの子も、あなたの想いが生み出してるのかな
今日は私達が海に還すけど、また生まれてしまうかはあなた次第なのかも
翼の外が見たいなら、見せてあげるよ


 四人。今迄この小さな空間の中で、出会っていて当たり前であったはずなのに、その姿すら互いに見る事が無かった猟兵たちが、一堂に揃っていた。
 出会う事が無かった理由はおそらく…女の子、少女、そして色彩のそれぞれの『孤独』が合わさり影響を及ぼしたからだ。
 ならどうして今、同じ場所に四人が揃い立っている。
 縁か。少女の計らいか。それとも、この場で彼らの心が同じ地平を、同じ望みを持ったのか。
 四人は初めチラリとお互いに目をやり、初めに動いたのは春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)だった。
 移動させる為に、横たわる女の子に近づく。UDCに敵意の様な物はない…と思うも、それでも多少の警戒を向けながら女の子の体の下に手を入れ、部屋の隅に移動させる為に持ち上げる。
(軽…。)
 近づいて、触れて、感じて、よくわかる。
 自分が猟兵の力を持っている事を差し引いても、その体は細く、軽い。
 息も、小さく胸が上下しているが、か細いと呼べるものであった。
 春乃は女の子と共に部屋の隅まで退避すると、
「そっちは、頼みます。」
 そう残りの三人に告げると、自身と女の子を守る様に拒絶する焰の壁を創り出し被害が飛んでこない様に障壁を展開す。
 創り出す刹那、こくりと…UDCが感謝する様に小さく頭を下げるのが、焔の隙間から見えた。
「Hey y'all♪」
 春乃の準備が終わるまで黙っていたヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)が軽快に声を上げた。
 そして、
「ンで、ドッチがヒロインなンだ?」
 そう野暮な事を聞いてますよと語っている表情で問いかけた。
「その子。だから、ほら。」
 少女が当たり前と言う様に、焔の向こうの女の子を視線で示し、だから早くと身を晒す。
「HA,泣けるねェ。悪いケド、アタシゃベッタベタのハッピーエンドが好みなンでね。ミンナはどうだい?」
 知ってた知ってたとでも示す様に手を叩きながら、両脇に居る白と黒の二人に面白そうに眼で促す。
「「んー。」」
 白い方、ディ・アルカード(【D】・f34040)は
「100%信じた訳やないけど、有益なUDC-Pの可能性があるし……何より茉理ちゃんのことを考えても生かした方が良さそうや。」
 そう、警戒と合理を上げながらも、感情を答えた。
 黒い方、尾守・夜野(墓守・f05352)は、
(どいつもこいつも己を殺せと…集団自殺でも流行ってやがるのか?)
 少女のその頼みごとに一つ前の部屋の出来事を思い出し、痛みを思い出せる首に手をやり呆れるような思いが浮かぶも、
「ま、心情的にも殺したくねぇが、色彩を知覚してるのに狂いきってない特殊性の観点からして、現状を打破出来る可能性からも何とか助けたい。」
 感情を上げながらも、合理で答えた。
「何を…言ってるの?」
 少女が理解できないと言う様に首を振る。
「違う…私はそんないい物じゃないの。私の狂気は忘れられる事への恐怖。この世界が閉じているのだって、私の狂気のせい。私を創り出したあの子が生きているから狂っていないだけ…。それに、あの子の運命が死から離れれば、私が生まれた理由は消えて消滅するもの。」
 まだ、狂っていないだけだと。けれど、UDCの特性は既に顕在化しているのだと訴える。そして、危険を冒す意味はないのだと。
「だったらさよなら程度言っておけ。」
 夜野が面倒くさげに理由を作り上げた。
「そう言う事、悪いけど、こっちの我儘を押し通させて貰うで。」
「そうそう、言ったジャないか。ハッピーエンドが好みってサ。それじゃ、」
 チリとヴァシリッサの指先に焔が灯る。
「アンタも覚悟はイイかい?」
 少女へ、否、色彩へ踏み込む。
 『名前を思い出せない顔が頭をよぎる。』
 指先から腕へ、そして全身を紅い浄化の焰に変異させ、少女の傷口へと差し入れ色彩を掴む。
 焔は色彩を燬く。
「っ。」
 少女は人の為を願う。誰かの為を望む。けれど、たとえそれでもその本質はUDCであり、善でも、正でもなく、邪なる存在だ。けれど、焼かれながら焔を受け入れた。
 『顔を思い出せない名前が頭に浮かんだ。』
 少女から色彩を抉り出す為に力を込める。
「ダメ!」
 少女が力を込め色彩を抑える。
 『思い出の場所が思い出せない。』
 少しづつ、色彩が引き抜かれていく。
 『家族の事が思い出せない。』
(Hm?コイツが出しモノッてワケか…。)
 自覚できる喪失。忘れる、なんて普通であればいつかふとそう言えばと忘れた事を思い出すようなものだ。けれどこれはそれを突き付けてくる。
 『楽しかったあれは、何時で、どこで、誰との事だったか。』
 段々と焔であると言うのに薄ら寒いような感覚を覚え始める、自分が消えていく、自分が無くなっていく。
 それでも、ヴァシリッサは心の中で笑う。余裕か、それとも強がりか。
「何、失くすダケだろ? もう喰い飽きたよ。失くした分だけ……この手で奪り返しゃイイのさ!」
 焔の腕を思い切り引く。
「あ…。」
 まるで涙が零れる様に、傷口から透明な色彩が引き抜かれ、
 『赤い髪、灰の瞳、あのニヤついてるのは誰だ? いや、アタシって…誰だ?」
 勢い余り、色彩が手から離れる。
 手から離れた色彩は宙を進み、静止する。
 そして…。


 ヴァシリッサが突撃している時、ディも準備を開始していた。
 畳に手を付き、その構成要素の最小単位に至るまで分析し、分解し、そして眷属として再構成する。
 もしもの保険としての小型ゴーレム。
 それに攻撃対象を、色彩をインプットしようとした時、がらりと頭の中で何かが砕け落ちるような感覚がした。
「これでも影響出るんかっ…。」
 急いでプログラムを組み入れ、ちゃんと動作するように祈りながら待機モードでセットしておく。
 色彩の影響がプログラムにまで及ぶかどうかは分からないが、仕事のタイミングまで起動しないのが吉であろう。
 組み込み終われば、すぐさま意識を色彩から仲間へと向ける。
 色彩から意識を逸らせば、砕けた記憶が湧き上がってくる。
「はっ…。」
 思い出して分かる。消えた記憶は直近の記憶。少女が自分を消してくださいと願った姿と声。思い出し、反復すればその記憶はより強く定着する。
「人の為に死にたいね…。普通はそんな事いわへんての。やっぱどうも、あの子は敵とは思えんな…。」
 そう呟きながら口元に手をやる。
「けど……これは、いい感覚やないなぁ…。」
 記憶が消えて、それがすぐ戻る。体験して分かったがなんとも気持ち悪い感覚だった。
「サポートせんと…。」
 気を取り直し、特殊弾が込められたハンドガンをヴァシリッサに向けた時、ヴァシリッサの腕が傷口から引き抜かれ、その体が焔から元に戻っていく。
 反射的に引き金を引き、ヴァシリッサに特殊弾を撃ち込み治療する。
 そして…色彩は宙を舞い、静止する。
 それはまるで宙に浮かぶ手のひら大の雫のようで。
 けれどそれは光を飲み込み、自らだけが透明(色彩)を放つため、雫を透かして見ればその向こうは景色が消え透明に見えた。
(あれが色彩…。外なる邪神の肉片。)
 ディは機械的に夜野へと視線を向け特殊弾を撃ち込む。
 次の瞬間、色彩を煙が覆い隠し、ディは背後に引っ張られながらその視界が焔で一杯になった。
 
●:春乃・結希
 焔の向こうで戦いが始まった。
 春乃自身、女の子を守ると言う表向きの理由と、俗にいう部位狙いというものが苦手と言う理由はあったが、それ以上に…。
「今日初めて会うUDCと女の子の為にそこまで出来るほど、私は優しくないんよ。」
 起きない女の子の髪を、UDCの少女の様にそっと撫でる。
 もちろん、春乃自身その助けたいと言う思いは分かる。
 一番に思った事も、色彩だけをどうにかするにはどうすればいいかだった。
 けれど。
「ここにいる猟兵さんたちはみんな、すごい覚悟やなって思う。」
 春乃にはできない『そこまで』が、つまりは
「…しんでも生き返るとか、忘れても構わないとか、もともと忘れてるからどうでも、とか……。」
 今日初めて会う子の為に、命も『記憶』も投げだせる。
「私が旅して集めた思い出。例え一時的にでも、思い出せなくなるなんて絶対いやだ。」
 春乃だって時には死なない程度に命だって投げだせるだろう。
 だから、これは明確な価値観の違いであった。
 それを『記憶』と呼ぶのか、『思い出』と呼ぶのかと言う。
「あ、やば…。」
 唐突に感じたそれは何となくの感覚だった。
 拡げていたそれが絶望を拒絶する焔であったからなのか、それを撫でる感覚に危機感が反応した。違うけれど、なんとなく覚えがある感覚。
 そうだ。これが色彩。あのアカい空と同じ、世界を狂わせる気配。
 咄嗟に焔に映る一番近い影に腕を伸ばしながら、焔を一部解除し引き込むとすぐさま一部の隙も無く再度完全に展開する。
 壁の向こうは間違いなく、色彩に満ちていた。


 ヴァシリッサによって色彩が摘出された。
「おし、後詰だ。」
 夜野は事前に色彩の影響を受けないために、閉じていた瞳を開けた。
 それを認識した途端元から穴あきチーズだった記憶にさらに穴が開いていく。
「記憶の欠けが多い自覚はあったけど、なんか気持ち悪いな。」
 消える記憶もあるが、時々空いた穴を撫でられるような気持ち悪さもある。
 喪失感と嫌悪感の同居。
 けど今は、今やるべきことを覚えていればいい。
 ざわつく心を翼狼を一匹召喚して喰わせて平静を保つ。
「そんで…」
 『今』にまで侵食し始める記憶の喪失。
「真っ直ぐ行ってぶっぱだ!」
 ディからの特殊弾が当たり、放たれる毒煙がより強化される。
 呪詛が、腐敗毒が、侵食毒が、直接その存在を蝕む毒が、少しずつではあるが色彩を崩していく。
 けれど、それは同時だった。
 外なる邪神の肉片が蠢動した。色彩が影響を拡げる。
 色彩が放たれる。空間に色彩が満ちる。
 災厄が本領を発揮する。最優先対処事項と呼ばれる所以が目を覚ます。
 夜野の残っていた記憶がごっそりと消失し、色彩の記憶が消失する。
 瞬間、頭の中に色彩によって消えていた記憶が全て同時に復活し、脳を圧迫する。
「…ぁ!」
 翼狼に記憶も集積させ余裕を生ませるも、それも一時凌ぎだ。
 記憶が少なくなれば色彩を忘れるまでの感覚も短くなる。
 記憶の喪失は記憶への執着を与え、記憶の復活は精神への圧迫と、より鮮明な記憶の再生と喪失時の執着を強くさせる。
「はっ…時間が経てば毒で消えるだろうが…、その時には共倒れか?」
 決定打がない。
 さっさと決着をつける決め手がない。
「夜野! 姐さん!」
 近くの炎の壁の向こうから声がした。
(……誰だったか。)
 夜野には既にその記憶がなかったが、それ以上に反応すべきことがあった。
 小型ゴーレムが起動し、飛びあがったと思えば色彩の真上から自爆特攻をかまして地面近くまで叩き下ろした。毒煙から出てきたその色彩は、既に透明ではなく、その輪郭が分かるほどに濁っていた。
 今…。
(どうすればいいんだ?)
 すでに思い出せる事の方が少ない。何かをしようとしていた、けれどいつもこの体勢の時はどうしていた?
 体が硬直しかけた、はずなのに滑る様に体が剣を抜き、色彩に振るっていた。
(お節介よ。)
 頭に響いたその声はどの自分だったか。
 色彩が斬られた衝撃で滑る様に飛ばされる。
 その先に…。
「まだ、焔え尽きやしないよ――燬き尽くす迄は!!」
 もう少女を気にする必要もない、全力の焔と化したヴァシリッサが待ち構え、そして飛んできた色彩を上から抑え込む様に畳へ叩き突け、燃やし尽くす。
「有言実行サ。」
 記憶は返してもらった、と。
 色彩の気配が吹き消すように消えていく。
 外なる邪神の肉片は消え去った。
 


 空間から色彩は消え去った。けれど、未だ空間は閉じている。
「ほら……、見てよ。結果は同じ。」
 少女が力無く、茉理から少し離れて座り込んだその姿は、少しづつ泡が弾けるように消え始めていた。
「倒さなくとも、こいつが死の運命から離れればお前は消える…か。」
「出来るなら生きて茉理ちゃんの傍に居る。そうなって欲しかったんやけど…。」
 夜野が呟き、ディが【教皇】の血を少しだけ茉理の口に注いでいるのを見る。
「自分の命差し出して願ったンならさ、サヨナラが言うくらいおつりが来るンじゃない? 何ならサヨナラの、別れのキスでもアリじゃないかい?」
 半ば唆す様に、壁に凭れ掛かり片目を閉じてながらヴァシリッサが言う。
「……。」
 少女は何も答えない。
「ねぇ、茉理さん。お化けも、この子も、あなたの想いが生み出してるのかな。」
 春乃が細かった呼吸が安定しだした茉理に声をかける。
 春乃が出会ったあの二つの影。あれはきっと茉理が心の自衛のために、怖くて恐ろしい時の両親を、両親じゃないと思い込み生み出した空想の怪物。
 そして彼女が、愛されたいと、一人は嫌だと言う思いが作り出した…
「空想上の友達。ともちゃん。」
 少女が、ともちゃんがピクリと震える。
「もしもこのままなら、今日は私達が海に還すけど。けれど、また生まれてしまうかはあなた次第なのかも。」
 次が、またこんな特異な状況とは限らない。
 次は、狂気に満ちた怪物であるかもしれない。
 どうすればなんて分かりはしない。
「翼の外が見たいなら、見せてあげるよ。」
 親が隠した外を、どう感じるかは分からない。
 今、目蓋を開いてみる光景が、正しいかどうかなんてわからない。
「だから、目を覚まして。」
 けれど、春乃はその方がいいと思った。正しいかどうかではなく、いいと。
 茉理の目蓋が小さく震え、細く開く。
「……誰?」
 少しだけ焦点を結ぶのに時間がかかる揺れる瞳が、猟兵たちの顔を彷徨う。
 猟兵はその呟きには答えず、ディが女の子の体を起こす。
「ともちゃん…。」
 その視線の先に、少し怯えたようで、寂しそうに、そして強く安堵したような表情があった。
「あは、どうしたのともちゃん…。そんな顔初めて見たなぁ…。」
 いつも笑顔だったから。そう言いながら体を動かそうとしてうまくいかないのか、少し足が震えていた。
「あれ、なんでだろ…。また、おとうさんとおかあさんに叱られるかな…。」
 茉理がゆっくりと腕を持ち上げて、少女へと手を差し出す。
 けれどそれはすぐに力が抜け、落ちかけた手を、弾かれる様に少女が掴んだ。
「なんか、あったかいね。」
 それは、茉理が手の温もりを知らなかったから。
「泣いてる顔初めて見た。」
 だって茉理が作ったのは一緒に泣く友達じゃない。
「いつもみたいに、頭、撫でて。」
 自我を持ってから、それはすぐ叶う事は無い願いだって、思ってた。
「ふふ。」
 嬉しそうに笑うその顔が見たくって、大切で。けれど、私が生まれた時点で茉理の体力は殆ど無くて、意識も無くて。私には、消されるしか出来る事が無くて…。
「…ともちゃん、どうしたの。」
 少女が茉理を抱きしめる。少女の瞳から止めどなく透明な雫が零れていた。
「言いたかったことが…言えないと思ってた……事がっ、あるの。」
「抱きしめられるのってあったかいね。うん、なに。」
 少女の体は既に多くが光に消え、薄く消えかけている。
「ずっと、ずっと、話したかった! 目を見て、笑って! 私がそう思える様になって、そう願えるようになったのに! 寂しいよ…。」
「……。」
「大好きだから。だから……またね。ずっと傍に居るから。忘れても、きっと。」
 ぱちんと、弾けるように少女の体が小さな光になって散る。
 茉理は目を開いて、視線が光の粒を追って、そこが体力の限界だったのか目蓋が落ちてゆき、また眠ってしまった。

「玄関から外出られるようになったぞ。」
 少女が消えたのを確認してからすぐ確認に動いたのか、玄関の方から夜野の声が響いた。
「オヤ、仕事が早い。じゃ、撤退だね。」
「茉理ちゃんをUDCにお願いしないといけんし、帰るにはもう少し時間かかると思いますけどね。」
 ヴァシリッサとディも、茉理を抱きかかえると玄関へと移動を始めた。
「…。」
 春乃は、人が居なくなった部屋を見渡す。
 湿気が感じられる空気。物が散乱したダイニング。
 ほんの数歩で終わる廊下とも呼べない通路。
「忘れない…。うん、忘れないよ、絶対。」
 これもwithと一緒の思い出だから。



 待町・茉理
 年齢11
 UDC預かりで病院に入院。
 脱水症状や栄養失調などが見られたが持ち直している。

 待町・良弥:待町・都鞠
 消息不明。UDCは調査継続。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年08月11日
宿敵 『忘却恐れし偶像少女』を撃破!
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