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鮫と人魚と猫と竜巻

#グリードオーシャン #猟書家の侵攻 #猟書家 #すきゅりん #鮫魔術士

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●さらなる鮫を求めて
 グリードオーシャン全土を巻き込んだ羅針盤戦争より早4カ月。あの時自分は何かできたか。それについてははっきりと言える。何もできなかったと。
 そして羅針盤戦争が終わってグリードオーシャンは平和になったか。これもまたはっきりと言える。否であると。
 七大海嘯配下たちは統制を失い好き勝手暴れ始めたし、そうでないコンキスタドールたちも発生が収まる様子はない。そしてさらに、七大海嘯とはまた別の強力なコンキスタドール軍団の跳梁さえ噂され始めている。
 それ故に、今こそ新たなる力を得るべき時だと判断した男は、かつての修行場である鮫魔術士の集まる島へと赴いていた。
「なんだこりゃあ……」
 だが男を出迎えたのは、懐かしきあの島ではない。島をすっかり覆い隠した巨大竜巻、そしてその麓で享楽的に歌う魚の下半身を持った女たち。
「イカが滅びて羽衣残り」
「鮫魔の奥義は嵐に飲まれ」
「風が荒れればお祭り騒ぎ」
「我ら(オケアニス・シレーネス)は歌うよ楽し哀しく」
「女王は言った『わらわに力を』」
「女王は言った『わらわは美よ』」
「女王は叶えた『わらわに力が』」
「女王は嘆いた『わらわの美が』」
 楽し気に歌うその人魚たちは、歌いながら嵐の中に身を躍らせた。人魚たちはまるで水の中でもあるかのようにその竜巻を泳いでいく。
 男は荒れる潮風に三色の毛皮を撫でられ、その姿を金の瞳で油断なく睨みつけるのであった。

●鮫は全てを解決する
「あなたのメルでございます。皆様お集まりいただきありがとうございます」
 メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)がそう言って猟兵たちにフカヒレスープを配る。なお予算の関係かよく見ないと分からない程度にしかフカヒレは入っていない。
「本日はグリードオーシャンにて、偽猟書家の後継者と戦っていただきます。元となっていたのは『すきゅりん』ですね」
 羅針盤戦争で各地の海域に現れては電光竜巻を巻き起こし、戦後には偽猟書家ともなったコンキスタドール。彼女自身は既に倒されているが、やはり偽とはいえ猟書家らしくその後継者が現れ活動を継いでいるという。
「実際に戦っていただくのは『混沌鮫魔女王デビルオーシャン』とその配下『歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』』。どちらも人魚型のコンキスタドールですね。彼女たちはすきゅりんの遺品である『電光の羽衣』を使い、竜巻である島をすっかり隔離してしまいました。その中でデビルオーシャンは島の人々を皆殺しにしようとしているようで」
 島自体は鮫魔術士の修行場のような場所だが、突然の強力なコンキスタドールの襲来によって浮足立ちまともに戦えぬ状況になってしまっているらしい。
「この竜巻はあまりに強く、鉄甲船で乗り込むことすらできません。ですが、この竜巻を乗りこなす術が一つだけあります。それは『鮫』」
 何を言っているのだ……というツッコミも最早入らない。グリードオーシャンに置いて鮫は最古の魔術にして万事に通じる解決法なのだ。
「幸い、島の外に一人の鮫魔術士がいます。彼に協力を依頼し、こちらも鮫に乗って嵐に乗ることで嵐の中の相手と対等に戦うことができます」
 騎乗、操縦系の能力があるならそれを活かしても良いし、安定感ある鮫を出してもらい確かな足場とするのも良いだろう。
「鮫魔術士さんは猟兵と面識のある方で、細かい説明もいりません。彼自身決して弱くはないので、サポート役としては十分戦力になってくれるでしょう」
 細かい話が要らないのは有り難い。必要なことだけ説明し、力となって貰おう。
「ボスのデビルオーシャンはかつては美しい人魚だったそうですが、鮫魔術の奥義と引き換えに醜い姿となってしまったそうで、その呪いを解くために多くの命を虐殺せねばならないようです。配下の人魚たちはそれを歌にしているようですが……正直楽しんでる感があります」
 かつてはその成就寸前までいったが、あと僅かというところで退治されたらしい。そしてコンキスタドールとして蘇った今、再びその大願をなそうとしているとのことだ。
「知っての通り偽猟書家のリーダーであるレディ・オーシャンはグリモアベースへの侵攻を企てています。それを許してしまえば即座に我々の敗北。彼女に連なるたくらみは全て潰していかねばなりません。どうか皆様、ご武運を」
 メルはそう言って鉄甲船の舵を取り、問題の島へと船を回頭させた。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。鮫が空を飛ぶのはもはや常識の範疇な気がしてきました。
 今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス(全章共通)……サメに乗って飛ぶ』

 敵は竜巻の中を自在に泳ぐように飛び回ることができるので、こちらも鮫魔術士の協力を得て、鮫に乗って竜巻の中に飛び込んで戦っていただきます。
 基本的には乗り物または足場扱いで構いません。サーフィン等何かしら乗りこなす技能があればそれを使えますし、なくても最低限しがみついて嵐に飛ばされないようにはできます。上手く鮫を使い、嵐を征してください。

 第一章では『歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』』との集団戦。彼女たちは基本的に歌ってばかりですが、その歌でこちらの戦意を喪失させたり、武器である嵐や巻き込まれた岩や家屋の瓦礫などを強化してきます。基本的に享楽的な性格で戦闘も遊び感覚でやってきます。ボスへの忠誠もあるのかどうか疑わしく、歌を歌えればとりあえずそれでいいようです。

 第二章では『混沌鮫魔女王デビルオーシャン』とのボス戦。外見は化け物じみた鮫人魚です。彼女は氷の礫の射出や海水の壁による防御の他、極めた鮫魔術によってこちらよりさらに屈強な鮫を召喚してきます。一時的にかつての美しい姿に戻ることもできますが、あくまで一時的ということでそれで満足することはありません。

 以下、協力してくれる鮫魔術士詳細。
 キンメ・レッドスナッパー(37、男) 三毛猫ケットシーの鮫魔術士×マジックナイト。元アルダワ魔法学園の島『カリコシャ島』を拠点とする海賊団『サバカン団』の副長。島で起こった事件(島名でタグ検索可。読まなくても支障はなし)の中で猟兵と面識があり、強い信頼を寄せている。慎重派で思慮深いが少々細かく口うるさい。今回は修行のため一人島にやってきた。

 配下、ボス共に猟書家としての役目より自分の目的を優先している節がありますが、だからと言って話して何とかなるようなことはありません。きっちり戦って撃破してください。

 それでは、鮫もぶっとぶプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』』

POW   :    楽曲番号一番「黒海のネレウス」
【ご機嫌な仲間たちと共に魂へと響き渡る歌】を披露した指定の全対象に【この歌を聴きながらお祭り騒ぎしたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    楽曲番号八番「紅海のアプスー」
戦闘力のない【愉快に歌う海の音楽隊】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【魂へと響き渡る歌を共に楽しく奏でること】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ   :    楽曲番号二四番「死海のエーギル」
【活気ある仲間と魂へと響き渡る歌を奏でた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。

イラスト:芋川

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ああ哀れなるデビルオーシャン」
「玉肌鮫肌、豊満肥満」
「65535(あまた)の命が喰われたら」
「デビルオーシャンに美貌が戻る」
 どうにも歌詞が物騒な方向に流れている。この竜巻と言いあの女たちの姿と言い、これもまたグリードオーシャンに起こり続ける乱の一つと見て間違いないだろう。
「よく分からないが、自力で通って確かめるしかないってことかね。それじゃ遠慮なく……話聞かねぇ娘の相手は慣れ切ってるんでね!」
 金の目をぎらりと光らせバブルワンドを構えるケットシーの鮫魔術士キンメ・レッドスナッパー。その杖から湧き出た泡が形を作り、一匹の鮫へと姿を変えた。
 その鮫に飛び乗りつつ嵐の様子をキンメは観察し、飛び込む最良のタイミングを見極めている。
 さあ、彼と共に鮫に乗り、グリードオーシャンに再び現れた嵐の中に飛び込むのだ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
おや、珍しい場所でお会いしましたねぇ。
この度は、宜しくお願い致しますぅ。

『FBS』を四肢に嵌め緊急時に備えた上で、跨がれるサイズの鮫さんに乗せて頂きましょう。
そして[結界術]で「バンド状の結界」を展開し両脚を固定、転落を防止して向かいますねぇ。

無事に戦域まで到達しましたら、【乳焔海】を発動し『乳白色の波動』を放射、彼女達を纏めて焼き払いましょう。
その際、歌う為に開いた『口内』を焼いてしまえば、それ以上歌うことは出来ません。
その間の通常攻撃や、キンメさんに向かう攻撃が有れば『FMS』のバリアで防御、『FRS』『FSS』の[砲撃]も内部で可能な限り重ね早急に仕留めますねぇ。



 巨大な竜巻を前にじっと状況を窺う鮫魔術士キンメ・レッドスナッパー。その後ろから、彼にとっては思いがけない声がかかった。
「おや、珍しい場所でお会いしましたねぇ。この度は、宜しくお願い致しますぅ」
 その声に後ろを振り返ると、そこにいたのは夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)。彼女の姿を見たキンメはその目を丸くし、そして喜びの声を上げる。
「こりゃまた意外なところで! 何でここに……と聞くのも多分野暮なんでしょうな。情けない話ですが、また甘えなきゃならないようで」
 幾度か起きた事件の中で彼女と面識のあるキンメは、今回も彼女の登場を有難いことと素直に受け入れる。そして猟兵が来たということはこの件は自分の手に余る大事だということも、彼は経験から理解していた。
「ええ、ですが、今回は特にキンメさんにもお手伝いいただきたく……これくらいの鮫をご用意いただけますかぁ?」
 るこるはそう言って自分が跨れる程度の、ビーチ用品によくあるフロート程度の大きさを手で示す。その言葉に従い、バブルワンドを振って鮫を作り出すキンメ。その鮫にるこるはまたがり、ごく小規模の結界を自身の手に纏わせることで手綱代わりも兼ねての固定具とし、それを引っ張って鮫を浮かせて嵐の中へと向かっていった。
「嵐の中に鮫が舞う。なんてことないいつもの光景」
「鮫の上には肉が乗る。肉を食べない奇異なる光景」
 即興詩のように歌い、その鮫を迎え撃つオケアニス・シレーネスの人魚たち。その歌は楽しく明るく、調子だけ聞けば一緒に歌い踊りたくなるようなものでさえある。
 だが、その明るさこそが曲者なのだと、事前の情報からるこるは分かっていた。人魚たちの歌は心を躍らせ、お祭り騒ぎへと誘う。それは役目も、戦いも、全てを忘れ遊び狂う破滅の享楽。歌い遊べればそれでいい、その刹那の快楽を突き詰めた彼女たちと同じに落とされるわけにはいかない。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その裁きの理をここに」
 るこるは【豊乳女神の加護・乳焔海】を発動、波動に連れて現れる乳白色の炎が人魚たちを取り巻いた。
「や、熱っ!?」
「なにこれ、ひどいわひどいわ」
 炎の熱さから逃げるように嵐の中を飛び回る人魚たち。その勢いでか、炎はつく端から少しずつ小さくされていく。使用者の意思によって自在に消せる炎ではあるが、他の手段で全く消せないわけではないということか。
 だが、消えたのならまたつければいい。るこるは人魚たちを追うように、鮫に乗って嵐の中を舞った。強烈な風が鮫を揺さぶるが、その大きさにそぐわず鮫はバランスを崩すことはなく風を乗りこなしていく。
「なかなかお上手ですな!」
 自身も鮫に乗ったキンメが隣を飛びながら声をかける。その動きは、やはり本業の鮫魔術士なだけあって軽快だ。一応振り落とされた時のことを考え自分でも飛べるよう浮遊兵装を身に着けていたるこるだが、グリードオーシャンの竜巻の中というごく限られた場所に置いては、鮫に勝るものなしということなのか。
 ともあれ、その鮫を味方につけているのだから相手を追うことは容易い。るこるは飛び交う人魚に先回りするよう大きく回り込むと、歌を歌うその口の中に再度波動をばらまいた。
「あがっ!?」
 その口の中、喉を焼け爛れさせ声を封じるるこる。享楽的に歌うことだけが望みという彼女たちからその唯一の望みを奪い去る無慈悲な攻撃だが、相手はオブリビオン、容赦してやる必要などどこにもない。人魚の一部は喉をかきむしりながら自棄を起こしたように尾びれを振り回し叩きつけようとするが、それも鮫の周りに取り付けた防御用の兵装が防いでいく。もちろんキンメの方の防御もばっちりだ。そのまま燃える体に兵装から砲撃を叩きつけ、渦の内側へと押し返していく。
 やがて口からの炎が全身に回り、泳ぐのをやめて渦に飲まれるようにぼとぼとと下に落ちていく人魚たち。渦の中心まで落ちて言ったその体はオブリビオンの常として消えていくが、まるでそれは大渦に負けて押し潰されたようでもある。
 その恐るべき嵐の中を鮫に乗ったまま悠々と、るこるとキンメは風を乗りこなして舞うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ

協力してくれる鮫魔術師ってキンメの事だったのね。
宜しくお願いするわ

私が守護霊として救済したオブリビオンの中には人魚や鮫魔術師も居る。
サメと意思疎通し、乗りこなすのも朝飯前♪
【ドーピング・動物と話す・騎乗・空中戦】

素敵な歌声ね。
私へのラブソングをリクエストするわ♥

人魚達が歌った時間に応じて行動の成功率を上げてくるなら
行動自体を封じるだけ。
【念動力・マヒ攻撃・範囲攻撃】で金縛りにしつつ引き寄せ
『狂愛』で108人に分裂し【怪力】で纏わりつき
彼女達の貝殻ビキニを【盗み】
胸の先端のピンクパールを舌で【慰め・生命力吸収】
歌声を喘ぎ声に変えてアゲル♥

もっと聞かせて?
貴女達の可愛らしい声を♥



 渦巻く嵐の中で一戦を終え、一旦その外へ離脱する鮫魔術士キンメ。そこにはまたしても彼の知る、意外な人物が待ち構えていた。
「協力してくれる鮫魔術師ってキンメの事だったのね。宜しくお願いするわ」
 そう声をかけるドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の姿を見たキンメは驚いたように、そして嬉しそうに眼を見開く。
「あなたも来て下さったんですか……こりゃ下手は打てませんな」
 彼女もまた、キンメが初めて猟兵と関わることになった事件から幾度か彼と顔を合わせたことのある猟兵であった。彼が所属する海賊団の団長の失態を責め、そして覚悟を見定めてくれた彼女の登場に、キンメも冗談交じりに緊張した様子を見せる。
「で、どのような鮫をご所望で?」
 先の一戦で、この戦いには鮫が不可欠だということは彼にも分かっている。求められている協力はその方だろうと察し、その問いを投げるキンメ。それに対しドゥルールは自分の望む特徴を持った鮫を告げる。
「こりゃまたけったいな……まぁ、できなくはないですがね」
 キンメがバブルワンドを振って泡から鮫を出す。それは巨大ながら肌がひび割れ、頭にはチェーンソーまで突き刺さったゾンビの如き奇怪な鮫であった。
 その不気味な鮫に、躊躇することなくドゥルールは飛び乗っていく。
「私が守護霊として救済したオブリビオンの中には人魚や鮫魔術師も居る。サメと意思疎通し、乗りこなすのも朝飯前♪」
 その言葉通り自身の体に鮫魔術士である、自身と似た名と髪形のコンキスタドールの霊を宿し、その力を持って鮫を操作、騎乗して嵐の中へ飛び込むドゥルール。その鮫を、嵐の中の人魚たちはまた面白いものが来たとでもいうように迎え入れた。
「死んでも跳ぶのは鮫の特権。動く鋸は鮫殺しの英雄の証」
「鮫を切っても食われるが、食われた鋸は腹切ってばぁ」
 ゾンビ鮫をまるであって当然のもののように歌う人魚たち。その歌声はまるで嵐の中チェーンソー一本で立ち向かっていく馬鹿げた……もとい勇敢な男を称えるかの如く活気に満ちたものであり、その歌声を聞けば何事にも不可能はないと思わずにはいられないほどの生気が嵐の中に満ちていくようにも見える。
 否、ようにもではない。オケアニス・シレーネスの歌う【楽曲番号二四番「死海のエーギル」】は、歌った時間に応じて次の行動の成功室を上げるユーベルコード。ただ楽しく歌っていれば全てを成功に導ける、歌うことだけを望む彼女たちの理想を詰め込んだかの如きユーベルコードであった。
 それが分かっているから、ドゥルールは鮫の上でその対策を取らんとする。
「人魚達が歌った時間に応じて行動の成功率を上げてくるなら行動自体を封じるだけ」
 鮫に乗って移動しながら、歌い続ける彼女たちに金縛りの念動力を放つ。
 この嵐の中振り回されているのだ、通常なら例え非物理の力であっても到底狙いは定まらず、大した効果は得られないことだろう。だが、いまはグリードオーシャン最古の力たる鮫に搭乗している状態。その上ではこの大嵐ですら乗りこなすのも容易いさざ波程度でしかなく、狙った相手を拘束し、自らに引き寄せることも容易い。げに恐ろしきは鮫の力。サメはそこにいるだけですべてを可能にすると言うのも、この場に限れば過言ではないのかもしれない。
「あぁん、もう我慢できない!!」
 そして人魚たちが冷めに磔になった時、ドゥルールは【狂愛】を用いて自身の体を108の小さな分身体へと変化させた。そのまま鮫に纏わりついた人魚たちに一斉に群がるドゥルール。
「や、ちょ、なにこれぇ!?」
「とりあえず、鮫からは逃げましょう! 鮫はヤバい、これ真理!」
 藻掻くように動き、鮫から離れる人魚たち。歌の影響か、鮫からの離脱は難なく成功した。だが、それと引き換えにドゥルールから逃れるための一手は残っていない。
 まとわりついたまま人魚のビキニをはぎ取り、そのしたの『ピンクパール』から生命力を吸い上げるドゥルールたち。
「歌声を喘ぎ声に変えてアゲル♥」
「あひゃいぃぃぃぃ!?」
 奇妙な嬌声を上げ体をよじるが、もともと歌に全ての力を集約している人魚たち。他の武器は外部頼みかせいぜい尾びれくらいしかなく、インファイトにはとことん弱い。
「もっと聞かせて? 貴女達の可愛らしい声を♥」
「ひゃうぅぅぅぅ!!」
 そのまま淫らな歌い手かあるいは楽器の如く、鮫の元に戻らねば吹き飛ばされるというその時までドゥルールは人魚たちを奏で続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
今日もグリードオーシャンは絶好のサメ日和だね
あのヒトが鮫魔術士のキンメさんだね、こんにちはボクはあの嵐を止めるために来た猟兵です、協力してもらえませんか?
よし、サメさんよろしくね
まずは偽猟書家の部下を倒さないとね
反抗の加護あり
重力領域で嵐の中でも重力を調整して安定して飛べるよ、歌は護りの蒼焔の力で効果を薄める、ボクの反抗の意志はこんなもんじゃ封じられないよ
反抗の雷装で確実に敵の数を減らして行くよ
さあ反抗開始だよ!



 嵐の中で人魚たちは次々倒されていくが、まだそれが止む気配はない。だが全てを吹き飛ばす荒れ狂う竜巻こそが相応しい、そんな気候もあるのだ。
「今日もグリードオーシャンは絶好のサメ日和だね」
 ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)の言葉通り、渦巻く嵐は鮫を飛ばすに絶好の日和。穏やかな海より風吹き荒ぶ空こそが鮫のフィールド。これもまたグリードオーシャンでは一笑に付されることはない道理なのだ。
 そしてその鮫を操る者の力を借りることが今回の戦いにおいて必要なこと。
「あのヒトが鮫魔術士のキンメさんだね。こんにちは、ボクはあの嵐を止めるために来た猟兵です、協力してもらえませんか?」
 ニクロムは嵐を見るキンメに近づき、協力を要請した。既に猟兵の事を知りここにもまた助太刀に来てくれているということを理解しているキンメは、それをすんなりと受け入れる。
「そちらも猟兵さんですか。お初にお目にかかります。どうぞお好きな鮫をお申し付けください」
 初見の相手が自分の名を知っていることにももう驚かず、早々に協力の姿勢を見せるキンメ。それに対しニクロムは自身の能力の影響を受けづらい小型の鮫を希望し、出現したそれに飛び乗った。
「よし、サメさんよろしくね」
 一戦での相棒となるその鮫に一声かけてから、竜巻の中へ乗り込んでいくニクロム。その彼女を、嵐の中で歌う人魚たちが出迎えた。
「小さな体と小さな鮫、大きな嵐に潰されるのかな」
「潰されたってつまらない、一緒に歌って遊びましょう」
 明るく誘うような歌声で、まるでニクロムを歓迎するかのような態度をとる人魚たち。だが、どういった姿勢出迎えられようと相手の立場は変わらない。
「まずは偽猟書家の部下を倒さないとね……反抗の加護あり」
 相手は倒すべき敵の配下、そこを見間違えることはなく、【貴女に反抗の竜チタノの加護を】の力を纏い敵へ向かうニクロム。その反抗の力が満ちた瞬間、鮫の動きは嵐を切るが如く鋭く、早くなり嵐の中をすべるように進んでいった。
 反抗の力の一つ、重力領域が鮫を支え、宙を舞うその力を補佐する。猛スピードとそれに振り回されぬ安定性によって鮫は的確に相手を捕らえ、ニクロムを一瞬のうちにその懐へと切り込ませた。だがそこまで近づけば、当然相手の歌声は大きく耳に届くことになる。
「ここまで来たら仲間入り。貴女に出来るのはもう歌うだけ」
「うるさいね、ボクの反抗の意志はこんなもんじゃ封じられないよ」
 聞くほどに心を享楽に染める破滅の明るさ、それがニクロムの耳から心を侵さんと鳴り響くが、それは自分に護りの蒼焔をまとって押し返す。ぼうぼうと耳元でなる耳障りな炎の音。だがそれは安易な享楽に逆らい、反抗のための戦意を燃やす猛き雑音。堕落に整う歌を犯行に乱れる音で防ぎ、ニクロムは己の剣を抜き、人魚の一体に切りつけた。
「きゃっ!」
 ダメージによってその人魚の歌が止まる。周りを囲む他の仲間はそれでもなお歌い続けるが、その歌が心に届く前に、荒々しく戦わんとニクロムは重力に取り巻かれた鮫を操り次の敵へ向かう。
「さあ反抗開始だよ!」
 守るための炎を貫き、その外側へと反抗の雷装が纏われた。こちらは従う価値なき者を撃ち貫く攻めの雷。それを自身の武器に纏い、ニクロムは雷の玉となってもう一体人魚を貫いた。
「ああっ……!」
 やはり歌を止めて、嵐の下へ落ちていく人魚。そしてそれを気にかけることもなく、雷鳴となって嵐をかける鮫とニクロム。それはかつてすきゅりんがグリードオーシャン各地で発生させた電光竜巻を再現するかの如き激しき雷光だが、あくまで暴風を泳ぎ回る力のみを持った人魚たちは電光竜巻には適応などできない。
「その楽しさに、反抗する!」
 重力の移動、蒼焔の防御、雷装の攻撃という三つの要素を的確に使い分けたニクロムが嵐の中をかけ、次々と人魚たちの歌声をかき消していく。その荒れ狂う炎雷の中に、もはや人魚たちが楽しく歌える場所など残されることはないのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイク・リー
アドリブOK

傷んだ黒衣で顔すら見せず、僅かに口元が見えるだけ。
弱り切った動作を見せつつも、敵と対峙する。
閻羅刀による早業の居合以外に黒銀竜の魔爪による爪撃を繰り出す。
オメガ・アームズを具現化させ、翼を広げた竜の装飾がされた剣を出して二刀流で殲滅を狙う。
召喚された方を優先的に狙い、衝撃波を斬撃波にした範囲攻撃を繰り出す。
ジャストガードからのカウンターにる切断を狙ったりもする。



 次にキンメの隣に現れたのは、およそ戦いに来たとは思えぬ男であった。傷んだ黒衣で顔すら見せず、僅かに口元が見えるだけ。そのような風体の者は猟兵には珍しくないが、さすがに足元もおぼつかず、鉄甲船から降りてくるのもやっと、今にも海に沈みそうな程ともなれば、これから戦いに行くものの姿としては到底相応しいとは言い難い。
「あ、その……旦那? 来てくれたのは嬉しいんですが、ご無理はなさらず……」
 その姿に流石のキンメも心配そうに言うが、黒衣の男はそれに構わず鮫を出すよう促す仕草を見せる。それに従いキンメが不安げに鮫を出し、男はそれに飛び乗って嵐の中へと飛び込んでいった。
「あの旦那……まさか……?」
 それを見送るキンメ。あまりにもボロボロのその姿がなぜか自分の知る男と重なったが、まさかあの強靭な男がとその想像を自ら否定するしかできないのであった。
 しかし、その想像は当たっていた。男の名はジェイク・リー(終末の竜器使い・f24231)。キンメの所属する海賊団が根城とする島に幾度も現れ、事件解決に手を課した男。その時に彼や団長に畏怖さえ抱かせた強靭さは今は消え失せ、今にも倒れそうなその体で鮫に乗り、ようやく嵐の中を進んでいくその姿を、人魚たちは嘲笑うかのような歌声で出迎えた。
「ゆらゆらふらふら風に乗り」
「ふわふわくらくら風に飛び」
「哀れ枯れ葉は風の外」
 その嘲笑させ楽しむかのような、いっそ愉快ささえ感じさせる歌が風に乗って嵐の中に響き渡る。そしてその歌に煽られたかのように、嵐の中に混ざって飛んでいた瓦礫が突如として数と勢いを増し始めた。
 恐らく家屋の一部であったのだろう巨大な石塊がジェイク目がけて勢いよく飛来する。それはふらふらと揺らめくジェイクを一撃で吹き飛ばす……
「…………」
 その瞬間、一瞬の早業で『閻羅刀』を居合抜きしてその石塊を両断するジェイク。その魔剣の扱いは依然と変わらず鋭く冴えており、弱り切っていても戦えぬわけではないことを如実に表していた。
 だが、まるで休む間を与えぬかの如く石や木片、看板や小舟に至るまでの様々な島から巻き上げられたものがジェイク目がけて吹き飛ばされて来た。
 明らかに風に流されただけではないその動きは、もちろん自然のものではない。【楽曲番号八番「紅海のアプスー」】によって彼女たちの武器として強化された吹き飛ばされたものたちが、明確な攻撃の意思を持ってジェイクに襲い掛かっているのだ。
 それは一つでも弱ったジェイクを軽く打ち倒してしまいそうな勢いだが、それでもジェイクは鮫の上、妖刀『オメガ・アームズ』を翼を広げた竜の装飾がされた剣として出現させ、二刀流を振るい決して致命傷は受けることなくそれらを叩き落とし続けていく。ただ闇雲に武器を振るっているのではない。攻撃して落とせるものは落とし、間に合わぬならば無駄なくジャストガードを決めて最小限のダメージで受け流し、しかる後にカウンターで切り裂いていく。
 そして危険物の飛来が緩めば、その瞬間によろける体を大きく振るい、強烈な斬撃波を飛ばして人魚たちを切り裂いていく。
「ひえっ!?」
 すんでのところで人魚たちはそれを避けるが、その代わりと言わんばかりに後ろで彼女たちの歌を彩っていた音楽隊が切り刻まれた。
「死なない、死ねない、死にたくない?」
「あなたはどうしたいの? 何がしたいの? 教えて欲しいの、してあげるから」
 傷ついた体に鞭打って戦うジェイクにさらに歌いかけ、瓦礫をけしかける人魚たち。その歌声に、ジェイクは決して答えない。ただ今にも倒れそうな、だが決してただの悪あがきではない動きで飛来する者とその元凶たちを切り裂いていくのみ。
「なるほどな」
 そして声が途切れ、飛び来るものが途切れたその一瞬。一刀の切っ先が人魚を捕らえ、そして間を置かず【暗殺者の戦術】が相手の体を深く刺し貫いた。
 ただ歌うばかりで自身が攻めかかるわけではない、その彼女たちの行動パターンを突くかの如く鋭い一撃が人魚を抉り、そしてそのまま渦の下へと落としていった。
 相手の骸を確認する間もなく、ジェイクは足元の鮫を踏みしめる。いかに戦えたとはいえ、この鮫から離れてしまえば自分も今の人魚と同じ場所へ落ちかねない。男はかつて自分が手助けした者の出した鮫に、今はただその弱った体を預けるしかないのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヒナ・ランスター
サメさんにしがみついて竜巻の中に飛び込む!
ひゃっほー!

目には目を歯には歯を、そして歌には歌をだよ!
こっちも負けじと[歌唱]で歌って歌勝負に持ち込む
…フリをして人魚が歌ってるスキに[全力魔法]で【エレメンタル・ファンタジア】で炎の竜巻を起こして一気にやっつける!
暴走覚悟でいっくよー!
って、サメさんまで巻き込んだら可哀想だからほどほどにねー!



 嵐の中に響く楽し気な歌声。だがそれは明日を省みず、ただ今日の享楽に耽り一切をあざ笑う破滅の声。それを知る者にとってその歌は、決して明るくも楽しくも聞こえないものであった。
 そんな明るく暗い歌が響く嵐の海に、それを吹き飛ばす純粋に明るい声が響き渡った。
「いっくよー!」
 その声と共に飛び出してきたのはヒナ・ランスター(鳳凰の術士・f32311)。好奇心と知識欲の赴くままに強欲の大海へと飛び出すその姿は、やはり底抜けに明るい物。少し飽きっぽく興味がアルダワ学園での成績には今一つ繋がらないものの、それは今の享楽だけに溺れぬ未来ある明るさ。
 そして今その興味の対象であるその大渦の中へと向かう彼女の足元に、キンメは慌てて鮫を呼び出した。
「お嬢ちゃん、落ちるんじゃないぞ!」
「ありがとね! それじゃサメさんいくぞー!」
 その鮫にしがみつき、嵐の中へとヒナは舞い込んでいく。そのヒナを、活気ある歌声が出迎えた。
「いらっしゃい次の鮫さん、今日のおかずはスズメさん?」
「スズメじゃないよ! フェニックスなんだからね!」
 知ってか知らずか、ヒナの気にするところを乗せた歌声にヒナはむっとして反論する。だがすぐに表情を戻し、今回の相手に相応しい戦い方をと相手を見据える。
「目には目を歯には歯を、そして歌には歌をだよ!」
 そう宣言し、声を張り上げ歌い出すヒナ。突如歌合戦を挑まれた人魚たちは、望むところとばかりに声を張り上げた。
「歌いたいならこちらにどうぞ、私と一緒に歌いましょう。昨日も明日も忘れましょう」
 誘うような歌声が嵐の中に満ちる。その歌はそのまま力となり、人魚たちに次の成功の力を与えていく。先を考えず刹那に生きる人魚たちの次の望みは、ヒナを自らの側に引き寄せることであろうか。そしてその声に対するヒナの返歌は。
「ヒナはスズメじゃないんだから。炎の中から何度でも舞い上がる……」
 歌声に乗せての今一度の主張。その声に応えるようにヒナの周りの空気が揺らぎ。
「フェニックスなんだから!」
 炎の竜巻となって、嵐の中に獄炎を撒き散らした。まさにフェニックスの生まれる炎の如き火炎竜巻を、ヒナは【エレメンタル・ファンタジア】で呼び出したのだ。
 歌うために大口を上げ息を吸っていた人魚たちは熱された空気を思い切り吸い込み、喉を焼かれてしまう。その人魚たちにも構わず、炎の竜巻はヒナの制御さえ振り払い嵐を赤く染めんばかりに荒れ狂っていく。
 相手が真面目に戦うつもりがないのが分かっているから、それに乗るふりをして隙を作ってから一気に攻めかかろうという作戦は当たり、緩み切っていた人魚たちを一気に炎の中へと飲み込んでいった。
「暴走覚悟でいっくよー!」
 もとより制御の難しい力。無理に抑えつけるよりは多少手に余っても全力でぶつけた方が良いと、あえて力の手綱を手放すヒナ。荒れ狂う炎の中で人魚たちは声を上げることすらできずに、次々灰になって落ちていった。
「って、サメさんまで巻き込んだら可哀想だからほどほどにねー!」
 それでも、出会ったばかりとはいえ仲間であり協力者の鮫まで焼くわけにはいかない。せめてそこだけはと鮫を取り巻く炎だけは何とか制御しつつ、ヒナはかつては電光に染まった竜巻を炎で包み続けた。
 荒れ狂う炎の中輝きつづけるヒナの姿。それはまさに炎の中で永遠の命を得るフェニックスそのものに他ならなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
サメならボクの出番だね!
【操縦】で華麗にサメを乗りこなして人魚相手に【空中戦】!
ウィーリィくん、ちゃんとついて来てね?

ビーム銃の【範囲攻撃】+【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で人魚たちの歌を邪魔しながら竜巻の中を飛び回って【罠使い】+【ロープワーク】で人魚たちの周りにワイヤーを張り巡らせてまとめて絡め取って一か所にまとめ、ウィーリィくんのUCと連携して【ワールド・タイフーン】で包囲殲滅!


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
まぁ、鮫は万能だから仕方ないな。
(相棒の方を見ながら)
とは言え、俺は鮫を乗りこなせるほど器用じゃないから【軽業】でバランスを取りながら【足場習熟】で鮫の背中に乗って足場として利用する。
嵐の中を飛び回りながら大包丁の斬撃の【衝撃波】で奴らの近くに浮かんでいる瓦礫を破壊し、その音で歌を邪魔すると同時にシャーリーの仕掛けた罠から注意を逸らす。
歌の影響を受けそうになったら【気合】で耐える。
そして奴らがシャーリーの罠に絡め取られたところでシャーリーと同時に【飢龍炎牙】を放って奴らをまとめて片付ける。



 今、一つの島を取り囲み荒れ狂っている嵐。これは自然現象ではない。グリードオーシャンの秘宝メガリスの一つ『電光の羽衣』によって巻き起こされた超自然の竜巻だ。
 当然並の力ではそれに対抗することは出来ず、羅針盤戦争での酷使やサムライエンパイアからの次元を超えた航海にすら耐えた鉄甲船を持ってしてもその中を突っ切ることは不可能であった。
 これを乗り越える方法はただ一つ。グリードオーシャン最古にして万事に通じる解決法を用いるより他にない。その方法とは。
「サメならボクの出番だね!」
 シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)の弁通り、鮫こそがこの世界に置いてあらゆる障害に抗し得る万能の力なのである。シャークトルネードの二つ名を持つ彼女にとってこの状況はまさに自分が呼ばれたも同然。シャーリーは意気揚々と出された鮫に飛び乗って嵐に向かっていく。
「まぁ、鮫は万能だから仕方ないな」
 そんな姿を、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)はやや投げやり気味にそう言いながら、生温い目で見つめていた。
 正直鮫に対しそこまで造詣が深いわけでもない彼は器用に鮫を乗りこなせる自信はない。
「ウィーリィくん、ちゃんとついて来てね?」
 シャーリーは巧みに鮫を操縦して早々に嵐の中に乗り込んでいってしまうが、ウィーリィは小型の鮫を複数用意してもらい、生来の身の軽さを活かして足場としてうまくわたりながら嵐の中を着々と進んでいった。
「いらっしゃいませ次の方。鮫に乗っての愛の飛行」
「鮫の上なら邪魔は入らぬ、脱がして触って乱れませ」
 二人を活気あるご機嫌な歌が出迎える。ともに享楽に耽りたくなる魅了の歌と、次の成功裡をを高める魂に響く歌の二重奏が二人の心をとらえ、この場に享楽と共に釘付けにせんとそれを揺さぶった。
「おっと、今は歌ってる場合じゃないんだよね!」
 その歌が心をとらえる前にと、シャーリーは素早く銃を抜いてあたりに打ちまくる。広さと速さを重視した射撃だが、元々戦闘能力は高くない人魚たちは上手く避けることができずに撃たれていくが、流石にコンキスタドールとあって一撃で致命傷には至らずなおも声を張り上げようとする。
「こっちも忘れないでくれよ!」
 だがその歌に、ウィーリィが大包丁を振りかざすことでさらに妨害をかけた。鮫を確かな足場とした力強い振り下ろしは嵐にも負けぬ衝撃波となり、人魚たちを纏めてなぎ払う。
「ああひどい、これじゃ声が聞こえない!」
 衝撃波そのものには人魚も耐えるが、周囲に待っている瓦礫が大きな音を立てて次々と壊されていく。それによって人魚の歌声は乱され、特にシャーリーに向けられていた催眠の効果も薄れていく。さらにそれの強化に成功の力を裂いていたこともあり、瓦礫の耐久性はさほどでもなく流れ弾の威力も猟兵なら決して耐えられないレベルではなかった。
「だったら、あなたから楽しみましょ」
「襲って、食べて、鮫の様に」
 今度はウィーリィに向けて催眠の歌を放つ人魚たち。それは獰猛な獣欲をそそるような歌声だが、ウィーリィは懸命にそれを耐え、人魚たちの前に立ちはだかり続けた。
「そんな歌、聞かないからな!」
 気合で持ってその洗脳を耐えるウィーリィ。今ここで欲に従いシャーリーに襲い掛かるなどあってはならないことだ。それは互いの関係のためにも、そしてもっと直接的な目の前の事のためにも。
「ありがと、おかげで動き回れたよ!」
 耐えるウィーリィの隣に、シャーリーが姿を見せる。その登場はまるで今まで嵐の中を飛び回っていたかのように、猛スピードで底に突っ込んで着ての急制動だ。そしてシャーリーが鮫と共に一回転すると、突如として人魚たちが嵐の中心近くに一気に纏めて移動した。
「きゃっ!?」
「何々、動けない!?」
 人魚たちは藻掻くが手やひれの先が僅かに動くだけで、しかもその体は何か細いものが無数に食い込んでいる。
 ウィーリィが相手の歌を止め、それを一身に受けている間にシャーリーは嵐の中を飛び回り辺り一面にワイヤートラップを仕掛けていたのだ。人魚たちが享楽に溺れさせるまでもなく、二人はすでに心を繋いで連携を取っていたということである。
 その過去も未来もある繋がりによって戒められた人魚に、鮫に乗った二人からの次なる連携が見舞われる。
「喰らい尽くせ、炎の顎!」
「さぁ、世界サメ大戦の勃発だよ!」
 嵐の中にウィーリィの【飢龍炎牙】が紅蓮の竜巻を巻き起こし、その中をシャーリーの【ワールド・タイフーン】の鮫たちが飛び回る。
 すきゅりんの用いた電光鮫竜巻とは違う、二人の紅蓮鮫竜巻が人魚たちを包囲し、そのまままとめて殲滅していった。
「サメが竜巻の中を泳ぐ……うん、やっぱり常識だね!」
「……そうだな」
 この勝利も光景も当然のことと鮫上でどんと胸を張るシャーリー。それに対しウィーリィはただ暖かく、そしてどこか棒読みな答えを返すのみであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ホーク・スターゲイザー
アドリブOK

「目が覚めましたか」
デュークの馬車の中、揺れと声で目を覚まして状況を整理する。
黒衣の男に襲われて刺し貫かれた所までは覚えていると。
「貴方を刺し貫いたのはオメガ・バハムートの力の結晶。本来なら魂は消滅するのですが」
何かを知っている様子に聞こうとするが到着する。
「お前は何者なんだ?」
「私自身、存じかねます」
降りれば失楽園を手にして戦闘に入る。
複数の鮫を軽業で移動しつつ攻撃を仕掛ける。
(気配がする。あの男もここに)
斬撃波を飛ばしたり、見切りからのカウンターを繰り出す。
「これは」
ポケットに入れられたタロットを見つけ、力を感じ取る。
「デューク、一体何者なのか」



 次に現れた男を見た時、鮫魔術士キンメは不思議そうに首を傾げた。
「おや、旦那……?」
 その先に続く言葉を聞かぬうち……あるいは聞かぬ様に、男はキンメを手で制する。
「小さな鮫をたくさん出して欲しい。できるか?」
 その要求を聞き、キンメはバブルワンドを振っていくつもの泡を出す。泡の一つ一つが弾けその中からイヌザメ程度の小さな鮫がたくさん出てくると、男はその一つに飛び乗り他の鮫を伴って嵐の中へと飛び込んでいった。
「いらっしゃい、お帰りなさい、あなたは誰? 誰でもいいわ、落ちれば同じ」
 飛び込んできた男を人魚の歌声が出迎える。その歌を聞き、男の脳裏にはこの戦場にたどり着く直前の事が浮かび上がってきた。

「目が覚めましたか」
 馬車の中目覚めた男は、御者台に座る黒人の男に声をかけられていた。彼はデューク、見知った男だ。
 黒衣の男に襲われ背を刺し貫かれたところまでは覚えている、それをげると、デュークは答える。
「貴方を刺し貫いたのはオメガ・バハムートの力の結晶。本来なら魂は消滅するのですが」
 何を知っているのか。それを聞こうとするが、それより早く到着したとデュークは告げ降りるよう促して来る。
「お前は何者なんだ?」
「私自身、存じかねます」
 結局何も分からぬ会話を終え、『失楽園』を構え目的の地に降り立った。そしてその場にいた鮫魔術の男が、自分を見て首を傾げた……

 小型の鮫を次々と飛び回りながら、黒と青銀の二振りの光刃で切り払う男。その一刀は素早く人魚たちを切り伏せていき、さらに強化されて飛び掛かる瓦礫ももう一刀で切り払う。
「どうしてそんなに頑張るの? どうしてここにまたきたの?」
 初対面のはずの男になぜかそう語り掛ける人魚たち。戦況的には劣勢のはずなのだが、それよりもそう歌いかけることの方が楽しく大事と言わんばかりに、男を愚弄するかの如く歌を繰り返す。
 その歌声を黙殺しきれず、過剰に力が籠り人魚を深く切りつけ、その勢いで崩れたバランスで瓦礫を受け損ねてしまう男。だがそのダメージよりも、男には気にかけることがあった。
(気配がする。あの男もここに)
 何かの気配、それが男の頭をクリアにしたか、雑念を払うかのごとくに斬撃波を放ち周囲の瓦礫を纏めてなぎ払う。
「ねぇ、あなた……誰かしら?」
 最後の人魚が紡ぐ最後の一小節。それの答えはこれだとばかり、振り回された尾びれにカウンターの斬撃を放ち人と魚の部分を両断した。
 歌声が止んだ嵐の中、男はポケットに違和感を覚え手を入れる。
「これは」
 そこにあったのはタロットカード。ただのカードではない。何かの力を感じる。そしてそこに描かれたアルカナは。
「デューク、一体何者なのか」
 彼は【守護者召現】で呼ばれた英霊で己はホーク・スターゲイザー(過去を持たぬ戦士・f32751)。その事実は、嵐の中今にも吹き飛ばされそうに揺れていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『混沌鮫魔女王デビルオーシャン』

POW   :    オーシャン・メイクアップ
【テンションを上げて一時的に元の人魚の姿】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【威力の、触れると海水になる氷の飛礫】を放ち続ける。
SPD   :    インビジブル・ノーチラス
非戦闘行為に没頭している間、自身の【周囲に溢れる膨大な海水】が【深海並みの水圧を持った障壁となり】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    シャーキング・デスブレイク
召喚したレベル×1体の【屈強な鮫】に【相手を捕らえる頑丈な縄】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アコニィ・リードです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 渦巻く嵐の中歌声はやみ、『歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』』の享楽の宴は閉幕となった。だがその代わりと言わんばかりに、強大な怒気と殺意が嵐の中に満ちる。
「愚か者どもめ。無知故と不敬も許してやっておいたが、壁になる役割すら果たせぬとは」
 先の人魚たちもかくやという程の美声。その言葉と共に嵐の中に一つの巨体が現れた。その姿は、言うなれば鮫を無理矢理人魚の形にしたような醜悪な化け物。オケアニス・シレーネスより豪華な装飾を身に着けてはいるものの、マントの留め具が重なった鰓が垂れた乳房のようにも見え、かろうじて外見の女性性を保ちつつもそれゆえの醜さも同時に醸し出している。
「この醜き姿を見たそなたらを生かして返しはせぬぞ。だが喜ぶがよい。この島の鮫魔術士ともども、わらわの美を取り戻すための贄としてやろう。そしてこの島を喰らい尽くし、わらわは晴れて美と力を極めた究極の女王となるのだ!」
 宣言と共にきしゃあと奇声を上げると、嵐の中に大量の海水が舞い、そしてもう一つの力が嵐を満たす。
「なんだ、こりゃあ……!」
 キンメはその嵐に満ちた力に震えあがる。これは間違いなく鮫魔術の力。それもこの島の修行者たちも極め尽くせぬほどの最高峰のもの。
 その説明を受け猟兵たちは確信する。あの醜き怪物こそが『混沌鮫魔女王デビルオーシャン』、鮫魔術の奥義と引き換えに美を失い、それを取り戻さんがため虐殺を企てる偽猟書家後継であると。
 猟兵よ、この外見以上に心醜き女王に、その心に相応しき結末を与えてやるのだ!
ニクロム・チタノ
アナタが偽猟書家の後継者だね?これ以上好きにはさせないよ!
見た目はどうあれ美しい心を持ったヒト達はたくさんいたよ、でもアナタは見たまんまそうなった理由も因果応報だね!
あとは骸の海に帰すだけ
ボクの真の名紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
チタノヤタテは八つの蒼焔の盾と八つの重力槍を持つ、敵が召喚して来た鮫や縄を蒼焔の盾で防ぎつつ重力槍を展開して貫いてあげる、縄は蒼焔で焼けちゃうしね?
重力槍はまだ残ってる次はアナタを貫く番だ!
自分勝手な圧政者に反抗の鉄槌を見舞ってあげるよ!


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
それをさせるわけには参りませんので?

キンメさんに鮫の用意を要請、サイズは先程と同程度で、出来る限り体重とパワーの有る個体をお願いしますぅ。
そして[結界術]によるバンド状の結界で足を留め【耀衣舞】を発動、騎乗状態で『光速の突撃』を行いますねぇ。
『FMS』は[結界術]で強化しキンメさんの保護に、残る『F●S』各種は『光の結界』の強化に回せば、威力の弱い『氷の飛礫』は防げますし、『光速突撃』であれば人魚さんの飛行速度を上回れますぅ。

威力が不足する様なら『体型反動』を許容して胸に回し、その重さと鮫さんの体重を活かして『光速突撃』の角度を上からに調整、[重量攻撃]を加えましょう。



 嵐の中現れた鮫人魚の怪物。それを前に鮫に乗った猟兵たちは引くことなく相手を見据える。
「アナタが偽猟書家の後継者だね? これ以上好きにはさせないよ!」
 ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)が決然として言うと、その怪物は外見に合わぬ美しい女声を発し答えた。
「猟書家? ああ、そういえばそれも役目であったな。別にやめろと言うならやめてやってもよいぞ? わらわはこの島の者どもを皆殺しにし、美と力を備えた究極の体となれればそれでよい」
 平然と言う怪物。『混沌鮫魔女王デビルオーシャン』の名の通り鮫魔の王位に君臨できるほどの奥義を持つ彼女は、それと引き換えに己の美を失っている。そんな彼女にとっては力を失わず美を取り戻すための虐殺こそが本意であり、猟書家の使命など物のついでということなのだろう。
 だが、その答えにも夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は冷たく返す。
「それをさせるわけには参りませんので?」
 何が目的であろうと、その手段に虐殺を用いるならば許容することなどできない。最初から妥協点など存在しないのだ。そう言いながら自分の手に纏ったごく小さな結界を強め、自分の跨る鮫とのつながりを強めるるこる。
 そして自分たちが跨る鮫を出した鮫魔術士、キンメにも軽く目をやり、頷き合う。キンメはバブルワンドを振って泡で全員の乗る鮫を包み、その体にさらなる耐久力を施した。その証としてか、とくにるこるの乗るものは胴回りが太くなり、肉厚の重量級鮫となる。
 そうして肥えた鮫を見たデビルオーシャンは、その姿に過剰なまでのいら立ちの視線を向け歯噛みする。
「矮小なる鮫魔術師風情が、わらわを愚弄するか! その罪死を持って償うがよい! オーシャン・メイクアップ!」
 別段誰もそんなつもりなどなかったであろうに、肥えた鮫を自身のヘア手付と取っ手勝手に怒りだしたデビルオーシャン。その肥えた体から光があふれ、その身を包んだ。それが止み中から現れたのは、オケアヌス・シレーネスも及ばぬほどの美しき人魚であった。
「これがわらわの美であるぞよ。わらわはこの姿を永遠に取り戻すのだ!」
 美しさと怜悧さを兼ね備える目や蠱惑的な唇、豊かな胸とくびれた胴という抜群のスタイルは怪物の姿とは似ても似つかぬが、纏ったマントや装飾にたなびく青い髪、そしてこれだけは変わらぬ美声が目の前の相手がデビルオーシャンであると如実に物語っていた。
 そして鮫魔術を極めた、と言う名乗りに違わぬ大量の屈強な鮫を、腕の立ったひと振りで嵐の中に大量に召喚するデビルオーシャン。
「見た目はどうあれ美しい心を持ったヒト達はたくさんいたよ、でもアナタは見たまんま。そうなった理由も因果応報だね!」
 外見と心が連動せぬなど分かり切ったこと。安易に力を求め醜くなった姿こそが彼女の内外を貫く本質なのだと、ニクロムはそう断じ彼女を迎え撃つ。
「ボクの真の名紅明日香の名を以て」
 【其の真名を以て反抗せよ】と、その鮫を蒼焔の盾を持って受け止めるニクロム。強靭な鮫たちはその盾を力任せに突破し、さらには体から縄を生やしニクロムを戒めようとするがその縄も蒼き炎で焼かれニクロムには届かない。
「鮫や縄は蒼焔で焼けちゃうしね?」
 鮫魔術とて魔術の一環。属性の相関には逆らえぬだろうと、炎を持って魔術を押し返すニクロム。そしてその盾を乗り越え、デビルオーシャン本体へはるこるが向かっていく。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう」
 接近しながら、るこるは【豊乳女神の加護・耀衣舞】を発動した。だがそれに合わせるように、デビルオーシャンも自らの魔力を氷の礫と変えて辺りに撒き散らす。
「わらわの力が鮫を呼ぶのみと思うたか! 纏めて削られよ!」
 小さな氷が嵐に乗り、戦場全体へと飛び散った。それはるこるのみならず、後方にいるニクロムやキンメへすら無数に襲い掛かっていく。
 だが、相手の攻撃が戦場全域に届くと言うのは知っていたこと。そして避けられないのならば、止めてしまえばいい。るこるの配置した円盤『FMS』がバリアを張り、後ろの仲間たちに礫が届くのを防いでいた。
「それでは、このままぁ」
 そしてるこるは自身を結界で覆い、そのままデビルオーシャンへと光速の突進を仕掛けた。もちろん礫を浴びながらの突進となるが、礫そのものの攻撃力は弱い。触れたものを削り海水に変える礫であっても、結界に触れてしまえばその脆さ故ただ霧散していくしかなかった。
 そのまま抉るような体当たりがデビルオーシャンの体をとらえる。
「お、おのれぇっ!」
 嵐の中大きく揺らぐデビルオーシャン。鮫魔術士でありながらこの一撃を受けて揺らぐだけで済んでいるのは、彼女の力が口先だけのものではないということの表れだろう。
「ならば我が魔力全てぶつけてくれるわ!」
 氷と鮫の力を凝縮し、るこるにぶつけんとするデビルオーシャン。如何な光速突進とはいえこれを貫けるかは怪しいもの……
「重力槍はまだ残ってる、次はアナタを貫く番だ! キンメさんよろしく!」
「アイサー!」
 ならば力を化そうと、ニクロムはキンメに指示し自分の鮫を高速で前進させた。そしてその勢いに乗り、チタノヤタテのもう一つの力、八つの超重力槍をデビルオーシャンに叩きつける。
「ぐっ……だが守りを出たのだ、すぐに削られよう!」
 全身を戒められたデビルオーシャンはこれ以上の追加攻撃は難しい。だが、すでに出された鮫と氷は動き続けてくれる。我慢比べになれば己に分があると、デビルオーシャンはそう踏んでいた。
「自分勝手な圧政者に反抗の鉄槌を見舞ってあげるよ!」
「分かりました、お任せをぉ」
 ならばその守りを貫こう。ニクロムの声を受け、るこるは自身の体を膨れ上がらせ、さらにその重さを鮫に託し今一度の突進を見舞った。それはデビルオーシャンをとらえる超重力にも乗り、より威力の増した肉の鉄槌となってその体を顔面から打ち据えた。
「わらわの、わらわの美しい顔がぁぁぁぁぁっ!」
 今度こそ大きく吹き飛ばされ、魔力が切れたか元の丸く肥えた怪物に戻りながら嵐の奥へ吹き飛ばされるデビルオーシャン。
 それを見送るるこるの体もまた悪く言えば『力の代償で肥えた異形』。だがそれを醜いなどはニクロムもキンメも微塵も思わない。
 力とは、美とは、ここにあるその答えの一つはデビルオーシャンには理解できないだろうと、その場の誰もが思うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヒナ・ランスター
いくら美しくなっても心が醜かったら意味ないよね?
そんなやつのえじきになんかならないよーっだ!

サメさんにしがみついたまま召喚された敵のサメから逃げながらデビルオーシャンの周りを飛び回り、敵のサメとデビルオーシャンをまとめて巻き込むようにして[全力魔法]で【エレメンタル・ファンタジア】で今度は氷の竜巻を起こして敵の周りの海水ごとまとめて凍り付かせちゃう!
ちょっとヒナも寒いけどがまんがまん!
敵が凍り付いたらエレメンタルロッドからの[誘導弾]で粉々にしちゃうんだから!



 戦闘中一時的に元の姿に戻ったデビルオーシャン。その姿は、事前の話や自称に違わぬ美しいものであった。だが、例えどのような姿であろうと、それが称えられることはこの場では決してない。
「いくら美しくなっても心が醜かったら意味ないよね? そんなやつのえじきになんかならないよーっだ!」
 ヒナ・ランスター(鳳凰の術士・f32311)の言う通り、いかに外見を変えようとその心根が変わらぬ限り彼女は醜い怪物である。そんな怪物に負けるいわれなどないと、ヒナはオケアヌス・シレーネス戦からの相棒である鮫にしっかりと捕まりながら嵐の中でデビルオーシャンと向かい合った。
「そのような虚弱な鮫でわらわに挑むとは。審美だけでなく力を見る目もないようだな。真の鮫魔術というものを見せてくれよう。シャーキング・デスブレイク!」
 デビルオーシャンが鰭のような手を一振りすると、それに呼ばれるように嵐の中に巨大な鮫が大量に現れる。鮫たちはヒナを人睨みすると、その巨大な口を開けて一斉に彼女に迫った。
「そんなのに捕まらないもんね!」
 その食いつきを、ヒナは鮫を駆って嵐を飛んで避ける。たった一戦とはいえ共に戦った仲間だ。その動きは極めたという鮫魔術で呼ばれた巨大鮫にも容易には捕まらぬ、意思の繋がった当意即妙な動きを見せる。
「喰らうばかりが能と思うてか。捕えよ、鮫ども!」
 デビルオーシャンの命令と共に、敵の鮫たちの体から頑丈な荒縄が生えた。縄はまるでそれにも意思があるかの如くヒナの方へと伸び、その体を乗る鮫諸共捕らえんとする。
 鮫に何かを生やすのは鮫魔術では基本的なこと。だがデビルオーシャンほどの極まった力ともあれば、その生やした縄の強さも段違いなのは明白である。そしてその追尾性もまた高く、乗る鮫自体の地力の差もありいつまでも逃げ切れるものではないのは明らかだ。
 ならば、今こそ攻める時。ヒナは鮫を反転させ、自身を追ってくる屈強な鮫たちと術者であるデビルオーシャンを纏めて視界に捕らえた。
「さっきは炎だったけど……こんどはこっちだよ!」
 そこに向けて放たれる、【エレメンタル・ファンタジア】。先の戦いでは炎の竜巻を起こし人魚たちを焼き払ったその力は、今度はその真逆、氷の大竜巻となって嵐の中にもう一つの嵐を巻き起こした。
 氷の嵐は風に乗って一気に鮫とデビルオーシャンに張り付き、その体を白く凍らせ動きを鈍らせていく。同時に鮫から生えた縄も凍り付いて柔軟性を失い、鈍く動くだけの歪な棒のように成り果てた。
「小癪な真似を……鮫どもよ、この程度その身で跳ね飛ばせ!」
 デビルオーシャンが鮫たちに喝を入れ、さらなる魔力を送る。それに答えるように鮫は巨体を動かし自身を戒める氷を砕いて動こうとするが、ヒナもまたそれをさせじと属性竜巻の制御をあえて緩め暴走状態にさせた。
 荒れ狂う氷の嵐が鮫たちとデビルオーシャン、さらには術者たるヒナまでもを襲い全てを氷の中に閉ざさんとする。自身の手を離れた氷に己の体さえ凍てつかされそうになるが、ヒナは鮫にしがみつき懸命にそれに耐える。
「ちょっとヒナも寒いけどがまんがまん!」
 そしてもう一つ、嵐が強まったことで周囲の海水さえ巻き上げられ、それは鮫やデビルオーシャンにも取り付いて凍てつき始めた。海水は真水より凍り辛いとされるが、暴走する氷嵐の前ではそんなもの誤差でしかない。
「鮫どもを道連れにでもするつもりか? こんなものいくらでも呼び出せるわ、冥途の土産に……」
 やはり地力はここにいるものの中で最も高いのか、最後に残るのは自分だとヒナが凍り付くのを待つ構えを見せるデビルオーシャン。だが、ヒナは全てが凍るのを有徴に待つつもりなどなかった。
「骸の海に還るのはあなた一人だけだよ、粉々にしちゃうんだから!」
 ヒナは己の体を鼓舞し、全力を振り絞って自身を取り巻く氷を跳ね飛ばした。その姿は消えぬ炎を宿す不死鳥の如くであり、その身は極寒の嵐の中でもその身は決して倒れることはない。
 そしてエレメンタルロッドを振るい、そこから魔力の玉を幾筋も打ち出した。
 属性の乗らぬ純粋なエネルギーの塊だが、誘導性を持ったそれは次々と鮫に直撃し、その体を凍った海水ごと粉々に砕いていく。
「わらわの鮫が!?」
「その醜い心ごと砕けちゃえ!」
 極めたと思っていた鮫魔術を打ち破られたデビルオーシャンに、魔法の誘導弾が容赦なく襲い掛かる。氷ついた体に強烈な衝撃が幾度となく叩きつけられ、その肉体に甚大な損傷を与えていった。
 得た力に胡坐をかき悠長に相手の自滅を待ったデビルオーシャン。その身と醜きプライドは、己の力を己で克服し羽ばたいた鳳凰の一撃に砕かれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
POW

美を代償にしてまで力を得たのに
猟兵に敗れるなんて悲しいわね。
私が貴女の望みを叶えてあげる

引き続き【騎乗・動物と話す・空中戦】で鮫を乗りこなすも
変身した彼女の攻撃を【第六感・見切り】で察知し
【念動力】で氷の飛礫を私に引き寄せて鮫を守るのが精一杯

貴女の真の姿、とても美しいわ。
私は無限に死と再生を繰り返す。
貴女の呪いが解けるまで殺され続けてあげる

【激痛耐性・気合い】で笑顔を絶やさず
『永劫火生』で何度でも強化復活

世界から爪弾かれる者達を救う。
それが私の在り方だから

彼女の呪いが解けたら
今までの強化復活で効力の増した【誘惑・催眠術】で魅了し
美しい姿のまま【慰め・生命力吸収】で永遠の救済を



 かつては美しい姿を持っていたというデビルオーシャン。戦闘中一時的に見せたその姿は、彼女の言葉がただの自称でも妄想でもない真実であることを証明していた。
 そしてまた新たなる敵の出現に、デビルオーシャンは己の戦意と力を高めその姿を再度露にする。
「美を代償にしてまで力を得たのに猟兵に敗れるなんて悲しいわね。私が貴女の望みを叶えてあげる」
 その姿を見たドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は彼女にそう言うが、それは即ちデビルオーシャンの攻撃にその身を曝け出すということだ。
「良い心がけである。ならば氷に削られ消えよ!」
 相手の言葉を挑発とでも取ったのであろう。美しい人魚の姿を高速で嵐の中に躍らせ、風に乗せて氷の礫を辺り一面にばらまくデビルオーシャン。ドゥルールは跨った鮫を指揮しその礫をかわそうとするが、やはり真の姿を現したその魔力は本物であり、それなりの実力があるはずのキンメの呼んだ鮫であってもどうにか逃げ回るのが精一杯であった。
 その鮫と自分の周りに、ドゥルールは念動力の壁を展開する。だがそれは氷の礫を弾き返すものではなく、ただその飛来する方向を曲げ、鮫を完全に守る代わりに自分がそれを全て受ける形にするという生命を削っての機動力確保に留まるような範囲のものであった。
 その傲慢な口調に偽りなくデビルオーシャンの力は本物、ユーベルコードならともかくそうでない力で完全に防ぐのは不可能と見切っての事でもあるが、それとは別にもう一つ。
「貴女の真の姿、とても美しいわ。私は無限に死と再生を繰り返す。貴女の呪いが解けるまで殺され続けてあげる」
 体が削られ海水になって散っていく激痛に耐え、鮫の上でドゥルールはデビルオーシャンに笑顔を向ける。
「下らぬ強がりを……そのままわらわの糧となれ」
 そのまま一気に仕留めるべく、デビルオーシャンは氷の礫を強める。その礫はそのままドゥルールの体を削り、やがてドゥルールの体は全てが礫に飲まれたかの如く霧散した。
「一つ……まだわらわの美を取り戻すには遠いわ」
 敵を倒し力も静まったか、怪物の姿に戻りながら言うデビルオーシャン。そしてこちらもとどめをさそうと無人となった鮫を見るが、その背から聞こえぬはずの声が聞こえた。
「私は過去も未来も超越した、永遠の女神」
 海水となって消えたはずのドゥルールの声。その声と共に、鮫の背に張り付いていた白い物が盛り上がり、人の形を取った。その姿は、たった今デビルオーシャンが削り消したはずのドゥルールそのもの。
「生きていたか……体を変じさせ逃れたとでもいうか?」
「いいえ、ちゃんと殺されてあげたわ。これからも何度でも」
 そう言ってデビルオーシャンが再び人魚の姿となって差し向けた氷の礫を、ドゥルールはまたもその身に受けた。そしてやはりその氷に削られるようにドゥルールは消滅し、そして鮫の背に付着した白い物……灰からその体を蘇らせる。
「いかな絡繰りか知らぬが、そなたの考えに乗ってやるのも面白うない。ならばその矮小な鮫の方から消えよ!」
 ドゥルールの復活を原理は分からねど相手の策と見たデビルオーシャンは、足場であり灰の受け皿である鮫を滅さんとそちらを中心に礫を放つ。だがその礫は鮫の前で急速に方向を変えドゥルールへと向かい、そして同じように彼女の体を削り灰へと変えた。
 ドゥルールの復活、それは瀕死をきっかけに古い体を捨てる【永劫火生】によるもの。即死するほどの大きなダメージならともかく、弱い礫が大量に差し向けられ少しずつ生命力が削られる状況なら発動ラインも見極めやすい。そして強化された力を使えば礫をより自分に集めることも容易。そうしてドゥルールは幾度となく自分の体をデビルオーシャンに殺させ、そして再生を繰り返したのだ。
 そして何度も繰り返された復活の果て、流石に力を使い過ぎたかデビルオーシャンも嵐の中で息を切らす。
「世界から爪弾かれる者達を救う。それが私の在り方だから」
「触れるな無礼も……むぐっ!?」
 動きの止まったデビルオーシャンを、ドゥルールは対に自ら動いて抱き寄せた。そしてその『唇』に口づけてそこから生命力を吸い上げる。
 力を使いテンションの下がったデビルオーシャンは、本来なら怪物の姿に戻っているはずである。しかし今の彼女は、疲れ果ててなお美しき人魚のままであった。
 捨てた肉体とはいえ何度となくデビルオーシャンは彼女を『殺した』。それ故に完全解除とはいかなくとも多少なりと呪いは緩み、その姿を長く保っていられるようになったということか。
 そのまま誘惑の催眠を施しながら生命力を吸収するドゥルール。その勢いは常より強く、復活による強化が存分に乗っているのが見て取れる。
「ぐむっ……ぐっ……!」
 デビルオーシャンは藻掻くが、その抵抗はやや弱い。それが魅了の効果か今の姿から戻りたくないという意思か。ともあれ吸収された中で元の姿で救われればと、ドゥルールは言葉通り美しきその身から生命を啜り続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ホーク・スターゲイザー
ジェイクと行動

「邪魔だ」
ジェイクの中に巣くう闇を失楽園で浄化する。
「何か縁があるのだろうが、今は」
対峙する相手は同じと共闘する。
「破壊する術……こいつか?」
あのタロットカードを抜き、魔力を込めて呼び出す。
「破壊せよ、傲慢なる精神を!ザ・タワー!」
呼び出すのは塔を思わせる数十メートルの石像。
動きが非常に鈍いが爆撃の様な範囲攻撃、頑強な耐久力を持つタワーを操り対処。
斬撃波を飛ばすなどして応戦する。


ジェイク・リー
ホークと行動

苦しみ内なる闇を抑えつけ斬らせる。
「まあ、後で説明する。今は」
目の前の敵を倒す、その共通の目的で共闘。
「見切れるか!」
拳を握り赤い光爪を出した黒銀竜の魔爪とジヴァ・アラスの覇気で作り出した幻影二体と共に早業による猛撃を繰り出す。
第六感などを駆使して動きを読みつつ、相手の動きを探る。
「一掃」
限界突破によるリミッター解除を行い、剣に形成したオメガ・アームズと閻羅刀による連撃を繰り出す。
誘導が主でタワーの一撃を撃ち込ませるために注意を引く。



 渦巻く嵐の中、二人の黒き男が対峙していた。
 そのうちの一人は何かに苦しむよう蹲り、そしてもう一人は彼に武器を向けていた。
「邪魔だ」
 そして、その武器で蹲る男を無造作に切り払う。その武器は男の体を通り抜け……そして切られた男は、まるで何かの障りが消えたかのように体を起こした。
「何か縁があるのだろうが、今は」
 切った側の男、ホーク・スターゲイザー(過去を持たぬ戦士・f32751)が聞きたいことがあるかの如く言い。
「まあ、後で説明する。今は」
 己の内なる闇を切らせたジェイク・リー(終末の竜器使い・f24231)もその答えを知るかのように言う。
 だが、互いに共通した言葉が示した通り、今はその答えを確かめ合うよりも先に成すべきことがある。
 対峙する相手は同じ、目の前の敵を倒す。その共通の目的を果たすべく、二人の男は共闘の構えを取った。
「くだらぬ茶番は終わったか。ならばわらわの糧となる時を待て」
 その様子を見守っていたデビルオーシャンが、分厚い海水の幕の中で尊大に言う。彼女も二人の様子を黙って見ていたわけではない。非戦時に自身を守る【インビジブル・ノーチラス】の海水を、深海並みの水圧となるまで凝縮し身を守る障壁としていたのだ。
 そして相手の戦意を確認しながらもデビルオーシャンは自ら動こうとはしない。圧巻の守りを誇る海水の幕を維持し自ら攻めぬことで、相手の疲弊を待つつもりなのだ。
 その水の膜に向けてジェイクとホークは同時に仕掛けてみるが、その守りは固く並の手段では撃ちぬけないのは明らかであった。
「これを破壊する術がいるな」
「破壊する術……こいつか?」
 その守りをみたジェイクの言葉に、ホークは思い当たるところがあり一枚のカードを取り出した。それはここに来るとき、いつの間にか持っていた一枚のタロットカード。まさかこの状況を見越して持たされていたのか。だがどうあれ、今はこの力を使うべき時。
「破壊せよ、傲慢なる精神を! ザ・タワー!」
 掛け声と共に振りかざされたそのカードは破壊や破滅を暗示し、どの場所でどう出ても凶兆となる大アルカナ最悪のカード『塔』。それに呼ばれるように現れたのは、塔を思わせる数十メートルの高さを持つ石造であった。
 その石像は鈍い動きで水の壁を殴りつける。破壊の一切を遮断する水の壁はそれでも崩れはしないが、爆撃の如き攻撃の余波で周囲の竜巻の方が乱れ、その気流さえも掻き消されかけた。そのままタワーの名を持つ石像は暴れ続け、この場にいるデビルオーシャン以外の全てを破壊せんばかりに破壊の嵐をばらまいていく。
「ふ、ふざけるな! わらわの計画を壊すつもりか!」
 猟書家としての役目に熱心でないとはいえ、電光の羽衣による嵐は狩場を作るのには最高の能力。それを破壊されてはかなわぬと、デビルオーシャンは水の守りを解きタワーを止めにかかった。
「見切れるか!」
 その守りの解けた一瞬に、拳を握り赤い光爪を出した黒銀竜の魔爪とジヴァ・アラスの覇気で作り出した幻影二体を伴ったジェイクが猛襲をかけた。デビルオーシャンはとっさに水の中に戻ろうとするが、直感的にそれを察したジェイクが回り込み再び守りに入ることを阻害する。
 覇気で作り出した幻影たちはデビルオーシャンの抵抗するような鰭打ちに阻まれるが、ジェイク本人まではさすがのデビルオーシャンも対処しきれずその赤き光爪に切り裂かれる事となった。
 いっぽうで広いが狙いの荒いタワーの攻撃は、デビルオーシャンが出てきたとてそこに性格に当てるのは難しい。だがそれならばと、ホークはタワーの操作を一旦止めて勝手に暴れるに任せ自身の武器『失楽園』を振るい斬撃波を飛ばした。ジェイクの体を蝕むものを切った時の非殺傷モードとは違う、明確に傷つける意思を込めたその刃は鋭くデビルオーシャンを切り裂いて浅からぬ傷を負わせていく。
「一掃」
 そうして揺らいだところに、さらにジェイクが剣に形成した『オメガ・アームズ』と『閻羅刀』による連撃を繰り出した。それは先ほどまで今にも倒れそうな程に弱っていた体が繰り出す者とは思えぬほどに鋭く、完全に体を復調させた……あるいはそう錯覚するほどにリミッターを外し、体に限界以上の無理をさせているのが見て取れるものであった。
 そしてデビルオーシャンが完全に身を守れぬ状態となったのを確信し、ジェイクはホークを方をちらりと見る。それの意図を察し、ホークは再びタワーの操作に専念した。
「おのれ、わらわにこのような無礼を……!」
 守りは非戦闘状態でこそ盤石となる。ここまで激戦となっては再びその状態に戻ることは難しく、かといって手を変えようとしてもその間も与えずジェイクが攻め立ててくる。そのジェイクの猛攻が一瞬止んだ。その瞬間。
「力を貸してくれ」
 ゆっくりと時間をかけ、荒い狙いを十分につけたタワーの一撃がデビルオーシャンに叩きつけられた。嵐をかき消すほどの力が一点に集中されたその威力は、まさに天地貫く塔さえ砕く破壊の一撃。
 その一撃の下、デビルオーシャンは嵐の最下層まで叩き落とされていく。
「……聞かせて欲しい」
「……」
 敵が嵐の下へ消えた今こそがその時だと、再び話を始める二人。その内容が如何なものかは、今だ消えぬ暴風に遮られ外に漏れることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
自業自得の結果を他人の犠牲でリカバーしようと考えてる時点で性根の醜さもお察しって感じだよね!
やっちゃお、ウィーリィくん!

サメを【操縦】してボスの召喚したサメ相手に【空中戦】を演じながら【ロープワーク】でサメから生えた縄同士をロープで繋いで【制圧射撃】+【フェイント】+【罠使い】でサメをボスの方に追いやってその縄でボスをがんじがらめにする
あとは全部まとめて【ワールド・タイフーン】で一網打尽!


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
同じ鮫でも俺のパートナーとは大違いだな。
「上辺だけ取り繕ったって中身が醜ければ同じ事だぜ?」
【軽業】と【足場習熟】で鮫から鮫へと飛び移りながら女王を挑発し、その注意をこっちに向ける事でシャーリーの仕込みがバレないようにする。
当然こっちにも鮫の群れが襲いかかってくる訳だけど、こっちを捕らえようとする縄を【見切り】で回避しながら【厨火三昧】の炎で迎撃する。
彼女の準備が整ったらその動きに合わせて【フェイント】で鮫を女王の方に誘導して女王を捕縛。
そして彼女のUCに合わせて【厨火三昧】の炎を集中させて一気に焼き払う。
焼いても食えそうにないけどな、こいつら。



「おのれ、おのれ……わらわの美を、わらわの力を、なぜ妨げるか!」
 自身の力を振りかざし、その代償として得た美しさを取り戻さんとするデビルオーシャンの目論見は、ここまで猟兵に悉く阻まれて来た。それに怒りをあらわにし声を上げる彼女だが、その姿勢に答えるのは猟兵の冷ややかなる視線の身であった。
「同じ鮫でも俺のパートナーとは大違いだな」
 鮫使いのパートナーをもつウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は、まるで鮫使いそのものの評判を下げるかの如きデビルオーシャンの姿勢に眉を顰める。そのパートナーであるシャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)も、それに応えるようにデビルオーシャンへと言い放った。
「自業自得の結果を他人の犠牲でリカバーしようと考えてる時点で性根の醜さもお察しって感じだよね! やっちゃお、ウィーリィくん!」
 今嵐に包まれている島は鮫魔術士の修行島。彼らのような地道な研鑽を積まず、一足飛びに奥義を得た代償として失った姿を他人の血で贖おうとする、その怠惰な心こそが真の醜さなのだという言葉は、やはりデビルオーシャンには届かない。
「わらわに対してのその無礼、許して置かぬぞ! わらわの鮫魔術の秘奥、全て見せてくれよう! この力に相応しき美こそ我が真の姿なのだ!」
 巨体を誇る縄の生えた鮫を大量に召喚するデビルオーシャン。彼女の怒りも相まってか、その鮫たちは一匹ずつが圧倒的な威圧感を持ち、ずらりと並んだ牙を剥いてその狂暴性を余すところなく見せつけてくる。その威に全く屈することなく、ウィーリィが無数の小型の鮫を引き連れ、それらを足場として素早く飛び移りながらデビルオーシャンへと迫った。
「上辺だけ取り繕ったって中身が醜ければ同じ事だぜ?」
 例え元の姿を取り戻そうと、その醜い性根は決して変わらない。あるいは今の怪物の如き姿こそその内面に相応しいというウィーリィの言葉に、デビルオーシャンは怒りに燃えて鮫を二人の方へとけしかけた。
「その減らず口叩けぬ様にしてくれるわ!」
 号令のもと迫る鮫を、ウィーリィは軽やかに飛んで躱す。彼の乗る鮫は大きさならばデビルオーシャンの使役するものと比べるべくもないが、小さな足場をしっかりとらえ舞う技能を持つ彼にとっては仰々しい大きさなど必要ない。
 そのウィーリィをとらえようと鮫たちは縄をのたうたせるが、その縄もウィーリィは躱し、反撃にと自らの従える炎を構える。
「極めた火工は、原初の火さえも従える!」
 【厨火三昧】の炎が、ウィーリィに迫る縄とその根元の鮫を諸共に包みこんだ。縄は瞬く間に灰となり、鮫も火に撒かれてのたうち回る。
「おっきいばかりじゃね!」
 炎から逃れた巨大ザメの間は、シャーリーが自らの鮫に乗って駆け抜けた。やはりこちらも大きさで言えば搭乗者であり豊満な体のシャーリー込みでもデビルオーシャンの鮫に劣るが、それ故に相手の隙間を潜り抜け、嵐の中をまさに泳ぎ回るように上へ下へと飛び回ることができていた。
「そのような小魚、飲み込んでしまえ!」
 デビルオーシャンは生き残りの鮫を差し向けシャーリーをとらえようとするが、鮫たちはその巨体が邪魔しあい器用に追うことは出来ない。ならば拘束してくれようと、鮫たちは細かな動きで縄を伸ばしシャーリーを追った。
「おのれ……小癪な!」
「怒りに任せて振りまわしてるだけじゃ、力を手に入れた意味もないな!」
 高い力を持てどそれを全開で振り回すことしかしないデビルオーシャン。使い方のバランスを考えられないのも力だけを不当に得た代償か、あるいはそこを身に着けるためにこそ修行というものがあるのかもしれない。
 ウィーリィはそこを突きながら、自身に迫る鮫をいなしつつデビルオーシャンへと迫っていく。
「わらわ一人で戦えぬと思ったか!」
「そう言うわけでもないさ……よし!」
 そう言って迎撃に鰭をなぎ払うデビルオーシャンのその寸前で、ウィーリィはちらりと上空を見る。そこには鮫の縄に取り巻かれながらも鮫の体を撃ち、縄をとるシャーリーの姿が。
 その姿を確認し、ウィーリィは自身もまた鰭を一撃をかわして上空へと飛んだ。
 そこを食らうように上にいた鮫の数匹が突進をかけるが、突如としてその動きは乱れ嵐の中暴れ回った。
「ありがと、ウィーリィくん! さあ、自分が呼んだ鮫に捕まっちゃえ!」
 彼とすれ違うように急降下してくるシャーリー。その後ろには、縄同士が繋がれ自由に身動きが取れなくなりながらも、命令に従い愚直にシャーリーを追う巨大鮫たちの姿が。
 そのままシャーリーはデビルオーシャンの横をすれ違うように駆け抜け、その絡んだ縄の中にデビルオーシャンを巻き込んだ。
 お互い引っ張り合う鮫の力強さがそのまま高速の強さとなり、デビルオーシャンを自縄自縛に捕らえ動けなくする。
「放せ、この愚か者どもが!」
 自分の鮫を罵倒し拘束を解こうとするデビルオーシャン。仕方なく鮫を縄諸共消そうとするが、その動けなくなった一瞬こそが二人で示し合わせ作り出したものだ。
「さぁ、世界サメ大戦の勃発だよ!」
「焼いても食えそうにないけどな、こいつら」
 ウィーリィの炎の嵐の中を、シャーリーの【ワールド・タイフーン】で巻き起こる1070の鮫エネルギーが飛ぶ。それはすきゅりんの電光竜巻も、デビルオーシャンの嵐も超える強烈な鮫嵐。
 一兆一世紀に得たものではなく、時間をかけて培われた二人の技と絆が起こす大きな力が、安直な秘奥に頼った醜き女王を逃げ場なく取り囲んだ。
「こんな、こんなはずはない! わらわは最強たる鮫魔術士の女王ぞ! わらわは誰よりも強く、美しく……!」
 現実を認められぬデビルオーシャンの言葉は、最後まで言い切ることなく炎と鮫の嵐の中へと消えた。そして二人がその技を解除すると同時に、それにつられるよう島を取り巻いていた大嵐も消え失せ、何もない穏やかな晴天へと瞬く間に戻っていった。
「晴れたねー!」
「ってことは……うぉ!?」
 鮫を浮かせていた風が止んだことで、二人は鮫諸共海へ落ちていく。そのまま海面に叩きつけられると思われた瞬間、柔らかな泡が二人を優しく受け止めた。
「大丈夫ですかい?」
 バブルワンドを構えたキンメが、クッションとなった泡の横で二人に声をかける。
「毎度、皆さん方にはご迷惑をおかけします。少しでも足を引っ張らないように、俺はこれから修行のし直しでさぁ」
 そう言ってキンメは自分の乗る鮫を今しがた解放されたばかりの島へと向ける。
 奥義だけを抜き出して得た力、今だけしか見ない享楽、それが何を産むかは今しがたまざまざと見せつけられたのだ。何も失わず力を得るため、彼は小さな努力をこれから積んでいくのだろう。
 そして猟兵も、一つずつ、一人ずつ、事件を解決し猟書家を倒していくしか骸の月から世界を守る方法はないのだ。確実に前に進むための戦いは、今日もまた続いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月18日


挿絵イラスト