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動き出した反抗の意志

#ダークセイヴァー #【Q】 #闇の救済者

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#ダークセイヴァー
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#【Q】
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#闇の救済者


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 村の中に、剣戟の音とともに叫び声が響き渡った。
 村人が手にしたナイフを真っ黒な鎧を着た黒騎士が弾き飛ばす。
「あ、あ、あ……」
 ナイフを奪われ、腰を抜かした村人相手に、黒騎士は手にした剣を振り下ろした。
「ぎゃあぁぁっ!」
 一閃のもとに黒騎士に首を刎ねられ、絶命する村人。
「ハッハッハ。領主様に逆らうからこうなるのだ!」
「逆らうものには容赦せんぞ!」
 村を闊歩する黒騎士たちは、生きて動く者全てを、手にした剣で斬り捨てた。

 歯向かう村の男たちだけではない。泣き叫ぶ赤子、命乞いをする女、逃げ遅れた老婆。
 村に生きるすべての命を、黒騎士たちは虫けらのように蹂躙する。

「この村は見せしめだ! これ以上逆らうものが出ないように、徹底的に斬り捨ててくれる!」
 そうして黒騎士たちは、村の中から動くものが居なくなるまで、村に存在したすべての命を狩り尽くしていった。

 村の様子を見ていた男は、慌ててアジトにしていた薄暗い洞窟の中へと駆け出していた。
「おい、前から接触してた村の奴らが、事を起こしちまった!」
「なんだって!?」
 洞窟に転がり込むと同時にもたらされた言葉に、洞窟の中に居た男たちがざわついた。
 あの村には、確かに共に立ち上がろうと声を掛けていた。
 けれど、それは今ではなかった。時を待ち、力を溜めてからのはずだった。
 そんな焦りが、洞窟の中に充満する。けれど今は、そんな事を考えている場合ではなかった。
「あいつらだけでどうにかなるもんじゃないだろ。くそっ、俺たちも急いで向かうぞ!」
 今から行って間に合うとは思えない。けれども自分たちは、『闇の救済者(ダークセイヴァー)』を名乗る組織だ。
 だからといって数も多くないし、力だって強くはない。
 それでも向かわなければ、村人たちは皆殺しにされてしまう。
 人々を救済する組織、『闇の救済者』を名乗っているのだからと、蹂躙されている村人たちを救うべく、件の村へと急ぐ。

 その先に、自らの破滅さえ待ち受けてるのを知りながら。


「ダークセイヴァーで事件が起きた。皆にはその解決に当たって欲しい」
 グリモア猟兵のコーダ・アルバート(無力な予知者・f02444)が、集まってきた猟兵に対して声を掛ける。
「事件が起きたのは、ダークセイヴァーに存在する一つの村。名をメディス村という」
 この村は元々、この近くの洞窟を拠点とし、人々をオブリビオンから救済しようとする『闇の救済者(ダークセイヴァー)』達が、領主に隠れて救済活動を繰り広げていた村の一つだった。
 村人も最初はそれほど感心はなかった。どうせ出来っこない。逆らうだけ無駄だと、諦めの気持ちが圧倒的に占めていた。
 どれだけ『闇の救済者』たちが声を掛けても、その言葉は村人たちには届かなかったのだ。
 だが、最近立ち上がった『闇の救済者』たちが力を合わせ、オブリビオンたる領主を討伐せしめたとの話を聞いて、メディス村の中でも、『闇の救済者』の話を聞く者が増えてきた。
 自分たちにも、現状を変えられるのかもしれないと思う者が出始めていた。
 事件が起きたのは、そんな矢先のことだった。
「一人の男が、村の中で堂々と領主を批判したんだ」
 村人一丸となって『闇の救済者』と共に、領主を倒そうと声高々に演説してしまったのだ。
「それを聞いた領主の部下は、当然激怒。男は配下によって処刑される」
 そしてその話を聞いていた者、演説を止めなかった周囲の者も反逆罪で殺されてしまう。
 結果、村は全滅。村人は周囲の村への見せしめのために、全員処刑された。
 助けに向かった『闇の救済者』組織も、待ち受けていたオブリビオンの群れの反撃に合い全滅。

 そうしてこの地方の反乱の芽は、完全に潰されてしまうのだった。

「だから皆には、村人が動き出す前に『闇の救済者』たちと共にメディス村へと向かい、男の演説を止めてほしい」
 男の周囲には、他でも出来たのだから自分たちも出来ると思いこんでいる者たちも居る。
 その男たちに実力不足を思い知らせ、今すぐの反乱を思い留まらせてほしいと、コーダは続ける。
「けれど演説を止めたとしても、騒ぎを起こした事で領主の配下は、状況を確認するために姿を見せるだろう」
 もしも現れた配下を逃がせば、反乱を企てていたことが領主に知られてしまう。そうすれば、更に大規模な戦力を投下され、この村は滅ぼされてしまうだろう。
 それだけは、絶対に阻止しなければならない。
 逆に、現れた配下を全滅させてしまえば、領主にこの地のことを伝えるものは居なくなる。
 そうすれば、ようやく育ってきたこの地の解放運動も、これからも芽を伸ばせるだろう。
「ああ、そうだ。できればこの事件、できるだけ『闇の救済者』たちの力で解決してほしいんだ」
 この地を支配するオブリビオンに対抗するには、猟兵の力だけではどうにもならない。
 それは、他の地で起きている反攻作戦を見ても明らかだ。
「立ち上がった彼らだけだは、この件は失敗する。そんな彼らをどうか助けてやってくれ。この件、よろしく頼む」
 コーダはそれだけ告げると、準備のできた猟兵たちを現地へと転移していくのだった。


早瀬諒

 やってなかった『闇の救済者』関連シナリオ……どうも早瀬諒です。
 久しぶりのダークセイヴァーです。
 少し停滞している間に、情勢は思い切り動いてました。
 なので一つの村を舞台に、色々書いていけたらなぁ……と考えております。

 第1章:冒険『そのままでは実らぬ抵抗』
 タイトル通り、無謀な行動を起こそうとしている村人を止めましょう。
 選択肢は存在しますが、止められるならどんな手段を用いても、一応は大丈夫です。

 第2章:集団戦『怪物に堕ちた黒騎士の群れ』
 領主の配下となる黒騎士たちとの戦いです。
 村人は猟兵の支持に従って、大人しくしてます。
 逃がすと領主に報告に行ってしまうので、確実に仕留めてください。

 第3章:日常『慈悲なき世界に安らぎを』
 今までに犠牲となった村の人を弔います。
 墓を作るも、魔物退治に勤しむも、猟兵の皆さん次第です。

 各プレイングの受付開始や締切は、マスターページ及びタグで確認をお願いします。
 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『そのままでは実らぬ抵抗』

POW   :    実力を見せつけるなどで説得する

SPD   :    村人に不足する要素を指摘するなどで説得する

WIZ   :    代替案を考えるなどで説得する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちが転移したのは、『闇の救済者』組織がアジトにしている薄暗い洞窟の近くだった。
「あの村、最近話を聞いてくれるようになりましたね」
「そうだな。けど、油断は禁物だ。慎重に行かないとな」
 洞窟の入口に立つ見張り兵の声が聞こえた。話している内容は、これから事件が起こる村の話だろう。
「ん、誰か居るのか?」
 気配を感じ取ったのか、武器を構える見張りの男たち。
 けれども姿を見せた相手が猟兵だと知ると、ホッとして武器を下ろした。
「ああ、ビックリした……何で猟兵の皆さんがここに……」
 言い掛けて、男はハッとする。
 猟兵が姿を現すのは、いつだって事件が起きるときだ。
 オブリビオンと戦う猟兵の姿に憧れて、『闇の救済者』を名乗りだした彼らが、それに気づかぬはずはない。
「ちょ……シグルドさーん!!」
 その事に感づいた男が、洞窟の中へ叫びながら戻っていく。
 そんなに時間を掛けずに姿を見せた、リーダーらしき男に話を通す。
「メディス村に、そんな事が……」
 猟兵から話を聞かされた『闇の救済者』組織のリーダー・シグルドは、驚愕した表情を浮かべる。
 それでも驚いている時間はない。シグルドは即座にそう判断すると人員を揃え、村人を助けるために即座に村へと向かった。

 メディス村。
 領主の配下の圧政に虐げられながら、細々と自給自足で生計を立てている村。
 健康な若い男たちは領主の兵となるべく連れて行かれた。
 村に残っているのは女子供と、怪我や病で戦えなくなった男たちのみ。
 そんな村だったからこそ、中々反乱の芽は生まれなかった。
「なあ、聞いたか? 遠くの村で領主が『闇の救済者』によって討たれたって」
「ああ……俺たちにも、出来るのかな……」
 片腕を無くした男の言葉に、火傷で顔がただれた男が俯きながら呟いた。

 この地では、まともな食料は手に入らない。畑を耕し、狩りに出れるほどの丈夫な男が居ないからだ。
 村の至る所に、腹を空かせ餓死した人間の死体がゴロゴロと転がっている。
 それなのに領主は、また増税を課してくるというのだ。

 今までは逆らうだけ無駄だと、色々なことを諦めてきた。
 逆らわずに、細々と生きながらえようと思ってきた。
 なのに他の地では、立ち上がった者たちの力で、領主が討たれたという。

「……今まで我慢してきたのは、何のためだったんだろうな……」
 はは、と乾いた笑いを浮かべる男。
 逆らわず、我慢して、じっと耐えてきた。
 理不尽に与えられる死を、黙って受け入れてきた。
 逆らっていれば、何かが違ったのだろうか?
 これでは、今まで死んだ人間だって浮かばれやしない。
「……なあ、人を集めようぜ」
「は……?」
 顔のただれた男の言葉に、腕をなくした男が驚愕の声をあげる。
「どうせ死ぬんだ。それなら最期に一矢報いてやろうぜ」
 それがやけっぱちな行動だと男も分かっている。
 それでも、何もせずに死ぬのは嫌だった。
 腕をなくした男も、同じことを思ったのかすぐさま同意した。

 動き出した男たちは、まだ知らない。
 自身が軽はずみに起こしたそれが、村に絶望を招くのだということを……。
ユリウス・リウィウス
力なき正義を絵に描いたようだなぁ。なぁ、おい。

とりあえず、俺はお前達の勇気を試させてもらおうか。
「恐怖を与える」死霊の霧を展開。
霧の中で見え隠れする人影は何だろうな?
今にも、後ろから刺されるかもしれないぞ?
視界を塞がれただけで、人はこうも容易く、不安に足を取られる。
領主への反逆を考えるのは、この程度の児戯を悠々と乗り越えられるようになってからだ。分かったか、領民諸君。

講義が終わったら、俺は村の造りを把握するために一通り歩いておこう。やがて来る領主の配下は、どこから村に入ってきてどう動くか。「戦闘知識」と照らし合わせて頭に入れておこう。
正面から来るだろうが、斥候を先駆けにしないとも限らん。




「どうせ死ぬんだ。それなら最期に一矢報いてやろうぜ」
 男の言葉に、腕をなくした男もそれに頷く。やられっぱなしではいられたくないと。
 人を集めに駆け出そうとした行く手を、「闇の救済者」とともに村へと降り立ったユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)が阻んだ。
「力なき正義を絵に描いたようだなぁ。なぁ、おい」
「だっ、誰だ!」
 ユリウスは呆れ半分といった感じで男たちの足を止める。何者かと問われても、男たちの問い掛けには答えない。
 代わりに自身が何者であるかを、言葉以上に示す手段を持ち合わせている。戦う者の力を、オブリビオンの圧政に抗う力がどれほどのものかを示すために、ユリウスはその力を開放する。
「苦しみのうちに斃れた死霊達よ。その怨念をもって憎き命をとり殺せ」
 言葉とともにユリウスの体から発せられる冷たい霧が、ユリウスと男たちの周囲を覆った。
 虐殺された死者の怨念をはらんだ冷たい霧の中から……生者を憎む怨念たちから、男たちに向けて殺気が飛ばされる。
「霧の中で見え隠れする人影は何だろうな?」
「ヒッ!」
 霧の中でゆらゆらと揺れる黒い影をユリウスが顎で示す。影から男たちへと向けて放たれる殺気に、男たちは足がすくんだように立ち竦む。
 こんな感情は知らないと、男たちは怯えたまま周囲の影を視線で追いかける。
 村人たちとて、今までオブリビオンに命を奪われそうになったことは何度もあった。
 だがそれは、ただ娯楽の一環として行われてきたもの。無邪気な子供が、虫を殺す様に弄ばれていただけで、そこにはどんな感情も含まれてはいなかった。
 けれど今、霧の中に見える影から向けられる感情は、明らかに男たちに向けて殺意を放っている。
 初めて感じる明確な「自分を殺そうとするものの意志」を感じて、男達の背中を嫌な汗が伝う。
「今にも、後ろから刺されるかもしれないぞ?」
「うわぁっ!」
 脅すようにユリウスが言葉を掛ければ、男たちはそのまま地面へとへたり込んでしまう。
「……視界を塞がれただけで、人はこうも容易く、不安に足を取られる」
 ここが戦場であれば、座り込んだお前たちの首は刎ねられているぞと続けながら、ユリウスは死霊の霧を霧散させた。
 霧が晴れ、影が見えなくなっても地面に震えながらへたり込む男たち。
 一矢報いる。そう言いながらも地面に座り込む姿を見て、ユリウスはふん、と息を吐く。
「領主への反逆を考えるのは、この程度の児戯を悠々と乗り越えられるようになってからだ。分かったか、領民諸君」
 怯える男たちを見て、死の恐怖が……本当の殺し合いの場に立つという事がどういう事かを伝えられただろう。
 やるべき事を果たしたユリウスは、座り込んだままの男に背を向けて、村の中を進んでいった。

 ユリウスなりの男たちへの説得は済んだ。となれば、次にすべきは村の把握だ。
(村の造りを把握するために一通り歩いておこう)
 やがて来る領主の配下は、どこから村に入ってきてどう動くか。自身の持つ知識と照らし合わせながら村の中を見回るユリウス。
「正面から来るだろうが、斥候を先駆けにしないとも限らんからな」
 敵が正面から来るならばどう立ち回るか、背後から奇襲をかけてきたら村人を人質にするか?
(それとも……既に村に入り込んでいるのか?)
 ちらりと村の中に存在する、一番大きな建物に目を向ける。
 まるで村を見張るかのように存在する、小高い丘の上にある屋敷。貧しい村であるにも関わらず、あれだけ大きな屋敷が存在する理由などそう多くはない。
 そこから出てくるのならば話は早い。敵が近寄る前に、村人を避難させる。そして、猟兵が出てきたオブリビオンを倒すだけだ。
 他にも抜け道があるかもしれない。確実に敵を潰すために、ユリウスは抜け道一つ残さぬようにと、村の中を散策していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・イオア
うーん、これは止めてあげないとね。

カリスマ全開、癒しの力全開で語り掛けていきましょう。

自分たちで何かしようと思ってくれたことは嬉しいよ。
でも自分達が誰と戦うかちゃんと考えてる?
連れていかれた人たちが兵士になっているんでしょう?
彼らと戦うことになるのは……誰も救われないと思うな。
だからね、戦い方を変えてみようよ。
敵の目を引くことは避けて
配下の人数とか嗜好、村に来る時間とかの情報を収集して提供すること。
『闇の救済者』たちが動きやすくなれば解放運動もきっとうまくいく。

今すぐ、現状を変えることができないのは辛いけど
全てを捨てて突撃するのはやめてほしい。

実力行使は避けたいけど必要なら力を見せます。




 猟兵のユーベルコードの効果によって、腰を抜かし座り込む男たち。
「うーん、これは止めてあげないとね」
 状況を見ていたシホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)は、苦笑しながら男たちの様子を見る。
 初めて誰かの殺意に触れたのだ。体は震え、立ち上がる力すらもない。
 けれど立ち向かおうとしている相手の殺意は、こんなものでは済まされない。
 本気で抗うつもりなら、これを超えたその先へ向かわなければならないのは事実だ。
 だからといって、これを教訓に無理をされても困る。
 あくまでも、自分たちだけでは出来ることに限界があること。
 そして、救済のために立ち上がった彼らと協力すること。
 それを理解した上で立ち上がってもらわなければ、結局動きを察した領主に潰されてしまうだけなのだから。

 それを分かってもらわなければ、この先に待つのは破滅しか無い。
 シホは小さな羽を羽ばたかせ、そっと男たちに近寄った。
「自分たちで何かしようと思ってくれたことは嬉しいよ。でも自分達が誰と戦うかちゃんと考えてる?」
 光を纏いながら、ふわふわと男たちの視線に合わせて飛翔するシホ。
「え……?」
 突然目の前に現れた、宙を飛ぶ光に包まれた存在に男たちは言葉を失った。
 闇に包まれた地で、光に満ちた存在に会うとは思っていなかったようだ。
 シホの話を聞いているのかいないのか。返事がないことにむぅっと膨れながら、シホは言葉を続けた。
「連れていかれた人たちが兵士になっているんでしょう? 彼らと戦うことになるのは……誰も救われないと思うな」
「あ……」
 シホの言葉に、男たちが何かを感じたように声を上げる。
 シホが伝えたい言葉は、今度こそ男たちに届いたようだ。

 領主に抗って、反抗して。
 武器を手に領主の屋敷へ乗り込んだとして、真っ先に接触するのは村から連れて行かれた村人だろう。
 同じ村の人間に、武器を向けられるのか?
 先程味わったばかりの殺気を、同じ村人である彼らに向けるのか?
 それに、真っ向から潰しあえば、連れて行かれた村人だってただでは済まない。
 自分たちの反乱が失敗すれば、村から連れて行かれた者たちも、反逆の責任を取らされて処刑されるかもしれないのだから。

 男たちはようやく、そこまで思いが至ったようで、どんどんと顔を青くしていく。
 最悪の結末を理解した男たちに、シホは息を吐いてから、優しく声を掛ける。
「だからね、戦い方を変えてみようよ」
 シホの言葉に、男たちは俯いていた顔を上げる。
 敵の目を引くことは避けて。配下の人数とか嗜好、村に来る時間とかの情報を収集して提供すること。
 外から来た猟兵や、「闇の救済者」たちには詳しい情報は分からないから。
「『闇の救済者』たちが動きやすくなれば、解放運動もきっとうまくいくから」
 だから、自分たちだけで何かをしないでと、シホは男たちに告げる。
 自分たちだけで何かをしようと動くのは危険すぎるから。
「今すぐ、現状を変えることができないのは辛いけど、全てを捨てて突撃するのはやめてほしい」
「…………」
 重ねて告げられたシホの言葉に、男たちは項垂れる。
 自分たちだけでは何も出来ない。そんなことは分かっている。本当の殺意に晒されたのだって、今が初めてなのだ。
 猟兵と会うことで痛感する自分たちの力不足。
 無力な自分を受け入れて、「闇の救済者」と手を合わせることが最良なのだと、男たちにも理解は出来ている。

 けど、それでも。
 自分は無力なのだと。突きつけられた現実を、男たちはまだ受け入れられずにいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

おやまあ。焦るのはわかりますけどねー。時は今ではないんですよー。

念のため、強化した結界術で防音しましてー。問いかけましょう。
ふふふ、時が満ちぬ今動いて、あなたが死んだとしますねー?
…死はそこで終わりますかね?この村、残ると思います?
何だかんだ理由つけて、死は続きますよねー?それは、あなた方が一番知ってると思いますー。

んー、納得がいかないなら、拳でも農具でもいいんです、私に一撃を与えてみなさいなー。見切りますけれどー。
一撃を与えられないのなら…それは、力が足りないということなんですから。




「どうするよ……」
「なぁ……」
 猟兵の言葉に迷う男たち。進むべきか引くべきか。
 村に来た「闇の救済者」と手を組んで向かい合うべきか。
 それが最良だとは分かっている。猟兵と相対して、自分たちの実力不足も分かっている。
 それでも、と思ってしまう。自分たちの手で何かを成したい。それが滅亡に繋がっているのだとしても。
 無力なままであっても何かをしたいと思うのは間違いなのか。
 座り込んだままの男たちから伝わる悲壮な思いを感じ取って、様子を見ていた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が男たちへと近寄った。
「おやまあ。焦るのはわかりますけどねー。時は今ではないんですよー」
 話し声を聞かれないようにするための結界術を展開し、男たちと自身の周囲を包み込んだ。
「な、なんだ!?」
 周囲の音が遮断され、男たちが声を上げる。けれどどれだけ声を上げようとも、男たちの声は結界の外には響かない。
 何が起きたのだと困惑する男たちを前に、義透はマイペースに話を続けた。
「ふふふ、時が満ちぬ今動いて、あなたが死んだとしますねー?」
 のほほんとした空気を纏ったまま内緒話をするように、口元に人差し指を立てた義透が口を開く。
「……死はそこで終わりますかね? この村、残ると思います?」
「! それ、は……」
 のんびりとした空気とは裏腹に突きつけられた鋭い問いかけに、男は義透から視線を逸らして俯いた。
 答えは彼らも分かっている。死はこれからも続いていく。きっとこの村全てが滅びるまで終わらないだろうと。
 悔しさから唇を噛みしめる男たち。男たちとて分かっているのだ。言葉にできぬ思いを受け取って、義透は言葉を続けた。
「何だかんだ理由つけて、死は続きますよねー? それは、あなた方が一番知ってると思いますー」
「っ……!」
 男たちの脳裏によぎったであろう言葉を述べれば、男たちはぐっと拳を握る。彼らも頭では理解しているのだろう。
 それでも、引くわけには行かない。引きたくない。抗いたい。
 そんな葛藤を見て、義透はやれやれと言ったように肩をすくめた。
「んー、納得がいかないなら、拳でも農具でもいいんです、私に一撃を与えてみなさいなー」
「は!?」
 唐突に告げられた言葉に、男たちは驚愕の声を上げた。
 見切りますけれどーと軽く告げる義透に、男たちは顔を見合わせる。
 男たちとて、猟兵の力は十分すぎるほど知っている。本気で向かった所で、一撃を与えるなどできないだろう。

 けれど、それよりも。
 男たちは知らなかった。

 誰かに危害を加えるということへの恐怖を。
 誰かの命を奪うために、武器を手にすることの覚悟を。

「ああ、農具じゃ腕のない方は辛いかもしれませんねぇ。……これ、使いますー?」
「ヒッ!」
 躊躇う男に義透が懐から取り出して差し出したのは、愛用する棒手裏剣・漆黒風。
 猟兵から見たそれは、武器の一つでしかないだろう。けれど男から見たそれは、誰かの命を奪うためのもの。
 武器が怖ければ、拳で殴りかかってくればいい。
 それすら出来ない男たちに、義透は差し出した漆黒風を懐に仕舞うと、ふぅと息を吐いた。
「これで分かったでしょう? 一撃を与えられないのは、それは力が……覚悟が足りないということなんですから」
 抗うということがどういうことか、相手を倒すということがどういうことか、男たちもこれで分かっただろう。
 無理はしないで、『闇の救済者』と猟兵に力を貸してください。
 そう義透が告げれば、男たちの目からは涙がこぼれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
無謀は我等の始まり
ですが幾百の屍を重ねても地下に潜り、幾千の屍を我等が怨念として呑み込み牙を研ぎ続けるのが我等
自棄になっただけの烏合の衆では牙を得る前に潰されるだけです

【行動】POW
巨大な蛇である黒酸漿を顕現、興奮する集団に恐怖を与える事で強制的に鎮めてから接触

非戦闘時では押さえている殺気+呪詛に満ちた怨念の炎を抑えず纏い恐怖を与えつつ、逃げないように黒酸漿に見張らせる
村人に自分一人でこの有り様では反抗は不可能だと説く

これまで目にしてきたヴァンパイアの驚異や非道、人の心理を巧みに利用した所業を話し、その恐怖と犠牲を踏み越え時に親しい者の屍すら礎に戦い続けられるか覚悟を問う




 自分たちと猟兵との違い。猟兵が示した敵と戦う覚悟、誰かを傷つける覚悟、何かを守る覚悟。
 それを感じ取ったのか、男たちは項垂れる。
 自分たちが持っていないそれはきっと、抗うことを決意した「闇の救済者」を名乗る彼らも持ち合わせているのだろう。
 戦うための実力差はあれど、持っている覚悟だけで見るのならば、猟兵と「闇の救済者」の間にきっと差はない。

 刃物を手にして誰かを殺める。一瞬の躊躇いはそのまま自身の、誰かの死に繋がる。
 自分たちは迷いなくそれを相手に突き刺せるのか。
 相手の命を奪う覚悟があるのならば、反逆のその先へと進めるのだろうか。

 そんな葛藤を抱えたまま、男たちは無造作に置かれた農具へと意識を向けた。作物を刈り取るための鎌でも、人は殺せる。畑を耕すための鍬でも、生物の命は奪える。
 それを手にすれば、それを武器として振るえるのならば、無力な自分たちでも抗うことができるのだろうか。
「黒酸漿、あれを封じろ」
 無意識に男たちの手が農具へと伸ばされる。無力な者が自棄になりながら武器に手を伸ばす様を見て、西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)が口を開く。
 織久の声に従い、導かれた巨大な蛇が男たちの眼前へと姿を現した。
「あ、あわわわ……」
 急に現れた巨大蛇を前に、我に返った男たちは声にもならない悲鳴を上げる。
「フシャァァ……」
「ひぃぃっ!」
 鳴き声を上げ男たちを威嚇する黒酸漿。長い舌が男たちの頬を舐め、尾が男たちへと纏わりつけば、まさに蛇に睨まれた蛙のごとく男たちはその場にへたり込んだ。
「そんなざまで、一体何をなそうというのか。自身に危害を加える相手が俺一人しか居ないこの状況にも関わらずその有様では、領主に対する反抗などとても不可能でしょう」
 殺気と呪詛に満ちた炎を身に纏いながら、織久は腰を抜かした男たちを見下しながら声を掛けた。
「ここが戦場であるならば、動かなくなったその隙に、首を刎ねられても文句は言えませんよ」
「なっ!」
 炎を纏い見下す織久の言葉に、男たちはカッとなって反論しようと顔を上げ、織久へと視線を向ける。けれど殺気を放ちながら射抜くような視線を向ける織久と目が合うと、男は怯えるようにして織久から視線を逸らした。
「けっ、けど、武器を手に立ち向かうだけの覚悟があればいいんだろ!?」
「武器を手にする覚悟……?」
 織久と黒酸漿の殺気を受けて、それでも反抗の意思が消えない男は怯えながらもそう声を上げるが、そんな男の言葉に織久は眉をひそめた。
「必要なのは、そんな覚悟ではありませんよ」
 勘違いをしている男たちに、織久は淡々と言葉を紡いでいく。

 戦場で見聞きしたヴァンパイアの脅威を。
 全てを飲み込む程の暴虐の限りを尽くした非道さを。
 人心を惑わし人間同士の殺し合いを楽しむ残忍さを。

 自らの愉悦のために、娯楽のために、意味もなく人々を弄び命を奪っていく。
 猟兵が、「闇の救済者」たちが相手にしているのは、そういう相手だ。

「故にヴァンパイアと戦うために必要な覚悟とは、武器を手に誰かを傷つけるとか、そんな簡単なものでは済みません。奴らの残虐な行為を前にしても、その恐怖と犠牲を踏み越え、時に親しい者の屍すら礎に戦い続けられるか……そういうことです」
「っ……」
 覚悟を決めろとよく言うが、その具体的な意味など考えても居なかったのだろう。猟兵や「闇の救済者」たちが持つ覚悟……その意味を織久から聞かされた男たちは絶句する。
 家族や村人、愛するもの。そういった存在を奪われ、時にはそういった相手と戦い、殺し合う。
 それでも自我を貫き、自身の守るものの為に戦えるのか。この先に連なれるのは、そういう覚悟を持ったものだけだと織久は告げた。
「自棄になっただけの烏合の衆では牙を得る前に潰されるだけです」
 勇気と無謀は違うと諭す織久の耳に、カツンと何か硬いものが地面を踏みしめる音が届く。
 目的のものが現れたと、織久の第六感が告げる。足音に意識を向ければ、その数はそう少なくはない。
「無謀は我等の始まり……ですが幾百の屍を重ねても地下に潜り、幾千の屍を我等が怨念として呑み込み牙を研ぎ続けるのが我等」
 待ち続けていた相手の気配を感じ取って、織久は男たちに背を向けた。淡々としていた織久の表情に、どこか楽しげな、闇を孕んだような笑みが浮かぶ。
 それをきっかけとして、織久の纏う空気が変わる。穏やかで物静かな青年から、狂気に駆られた好戦的な戦士へと変貌する織久。その変化を目の当たりにして怯える男たちを、傍で様子をうかがっていた「闇の救済者」たちが避難させて行った。
 織久の意識の中に、もう男たちの存在はない。これよりは狩るべき相手を狩るだけだ。

 オブリビオンを狩る。それこそが西院鬼の至上目的であり、存在意義なのだから。
 迫る足音に、織久は武器を構える。
「来い、オブリビオン……貴様たちを狩る。我等はその為に戦い、その為だけに存在するのだ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『怪物に堕ちた黒騎士の群れ』

POW   :    リピート・ナイトアーツ
【正気を失いなお残る、磨かれた騎士の武技】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    無数の飢牙
【鎧】から【無数に伸びる蛇や狼、竜の首】を放ち、【噛み付きによる攻撃をし、拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    鎧装転生・鋼獣群集
自身の【五体と生命力】を代償に、【吸収してきた生命の形をした鋼の生物たち】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い探知能力の下、生命力を吸収する牙や爪】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

西院鬼・織久
漸くお出ましですか
説得などと慣れない事はするものではありません
お陰で俺も黒酸漿も待ちきれず餓えてきました

鎧の一欠片、血肉の一滴も逃さず喰らい尽くしてくれよう

【行動】POW
五感と第六感+野生の勘を働かせ戦闘知識+瞬間思考力を基に常に変化する状況を把握

第一陣の背後に先制攻撃+UCを走らせ範囲攻撃で爆破、怨念の炎を宿したUCで後列を吹き飛ばし継続して燃える炎で蝕む
同時に第一陣が背後の爆撃のあおりで体勢を崩した所ダッシュしなぎ払い+切断の範囲攻撃。鎧も砕く黒酸漿の追撃で捕食させ自身は後列へ

残像+フェイントで敵攻撃を誘発して回避
UC+範囲攻撃で纏めて片付け、生き残った敵はなぎ払い+切断でとどめ


ユリウス・リウィウス
ふん、ヴァンパイアの狗どものお出ましだなあ、なあ、おい。
現状を隠匿するには、奴ら全てを討滅せにゃならん。面倒くせぇ。

それじゃ始めるか。亡霊騎士団喚起。
「戦闘知識」で亡者達に指示を出す。数だけなら、悪くて互角。敵を後方へ通さぬよう、広く薄く包囲陣を作れ。包み込んで袋叩きにしろ。

俺は方位の弱いところへ向かって、オブリビオンの群に「切り込み」、「カウンター」を交えつつ、「生命力吸収」「精神攻撃」の双剣で騎士どもの首を刎ねていくか。

この先へは絶対に進ませねぇ。所詮は主命を受諾するだけの木偶人形だ。自分で考える頭はなかろう?
その哀れな境遇から解放してやろうってんだ。大人しくそっ首差し出せよ、なあ、おい?




 村の中に響く足音。ヒッと息を呑む村人の視線を追って振り返れば、そこには見回りにやってきたらしい黒騎士たちの姿があった。
「なんだあ?」
「おいおい、猟兵が居るなぁ」
「ハハ。領主様を裏切るつもりかぁ?」
 猟兵の姿を見つけて集まりだす黒騎士たち。カラカラと乾いた笑い声を上げるも、鎧の隙間から見える瞳には、全く生気を感じない。
「くそっ、こっちへ」
 群れて集まりだしたオブリビオンの姿を見て、闇の救済者たちは周囲の村人の避難を始めた。
「おいおい、逃がすかよ」
 この場から立ち去ろうとする村人を追いかけようと、黒騎士たちも動き出す。
「ふん、ヴァンパイアの狗どものお出ましだなあ、なあ、おい」
「漸くお出ましですか」
 だが、その進行方向を塞ぐように、ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)と西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)が立ちはだかる。
「説得などと慣れない事はするものではありませんね。お陰で俺も黒酸漿も待ちきれず餓えてきました」
 大鎌を手に呟く織久の声に同意するように、黒酸漿も黒騎士を前に威嚇するような唸り声を上げる。
「鎧の一欠片、血肉の一滴も逃さず喰らい尽くしてくれよう」
 獲物を前に待ちきれない織久は、ようやく現れた獲物を狩らんとばかりに駆け出した。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
 先制攻撃とばかりにユーベルコードを発動する織久。織久から伸びた黒い影が一体の黒騎士へと絡みつき、爆発を起こす。
「ぐあっ」
 爆発に体勢を崩した黒騎士目掛けて駆け出すと、手にした大鎌・闇焔で周囲の敵を薙ぎ払った。

「現状を隠匿するには、奴ら全てを討滅せにゃならん。面倒くせぇ」
 織久を見送ったユリウスもやれやれといった相貌を浮かべるが、それでも敵から意識は逸らさない。
「それじゃ始めるか。亡霊騎士団喚起」
 織久が敵を狩る横からすり抜けてくる黒騎士を前にして、ユリウスもユーベルコードを発動する。
 ユリウスに喚び出され、地面からボコボコと姿を現す亡霊騎士団。長剣を手にしたゾンビと長槍を手にしたスケルトンの数は、視界に入る黒騎士の数にも劣らないように見える。
 数だけなら、悪くて互角。それでも複雑な指示が出来ない分、戦力としてはややマイナスだろうか。
「広く薄く包囲陣を作れ。包み込んで袋叩きにしろ」
 だが、自分たちだけで全てを倒す必要はない。自分の前に居る敵を逃さなければいいだけのこと。
 ユリウスが端的に指示を出せば、言葉通りに動き出す亡霊騎士団。
 先行した織久の動線に重ならないように敵を包囲して、その剣と槍で黒騎士たちの動きを封じていく。
「この先へは絶対に進ませねぇ。所詮は主命を受諾するだけの木偶人形だ。自分で考える頭はなかろう?」
 亡霊騎士団の包囲網が弱いところへ向かって、切り込んでいくユリウス。
 黒騎士たちの鎧から伸びる狼を斬り捨てながら、ユリウスはその剣に精神攻撃も乗せて振るっていく。
「その哀れな境遇から解放してやろうってんだ。大人しくそっ首差し出せよ、なあ、おい?」
 斬り捨てた剣で別の黒騎士へと斬りかかる。生命力を吸収していけば、黒騎士たちはガシャンと崩れ落ちていった。
「我等が怨念尽きる事なし」
 織久の殺意の炎が黒騎士たちを飲み込む。燃え盛る炎が黒騎士を包み込み、それを黒酸漿が喰らいつく。
 黒騎士の首をユリウスの剣が刎ね、織久の大鎌が胴体を真っ二つに切り裂く。
 ちらりとユリウスが周囲に視線を向ければ、黒騎士たちの数はだいぶ削れたように思える。
 それでもまだそこに存在する敵を屠るべく、ユリウスと織久は眼前の敵を倒すべく突き進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東天・三千六(サポート)
僕は瑞獣×悪霊×寵姫の男子です
いつも笑顔で人懐っこく友好的です
猟兵になったのは人の役にたちたいから…
でも他者を呪いたいって衝動が抑えきれないんです
とはいえ他の猟兵の迷惑になるのは嫌です
多少の怪我は厭わず行動して事態の解決に尽力しますね
容姿や立ち位置を生かしての弱者演技や泣き真似など躊躇しませんよ

UCは状況に適した物をどれでも使用します
武器は霊剣と縄
呪いの縄で縛る、誘惑で怯ませるなど
敵にデバフ与えるのだーいすきなので積極的に行動の邪魔しにいきます
斬撃波や呪殺弾での遠距離攻撃を好んでいます

公序良俗に反する行動はしませんっ
アドリブ連携歓迎です
よろしくお願いします


ジェイソン・スカイフォール(サポート)
おもに「衛生小隊」を使ってメイン参加者を援護したり、救護したりします。

▼行動例

「自分たちが援護をします。総員戦闘配置!」
敵の数が多い/敵が優勢のとき、衛生小隊を率いて登場。援護射撃を行い、猟兵が行動するチャンスを生み出すほか、敵の足止めや味方の撤退支援などを行う。

「避難は任せてください。さあ、みなさんはこちらへ!」
現場に一般人がいるとき、避難誘導や救助を行う。必要に応じて炊き出しなども可。




 激しい戦闘を繰り広げる猟兵と黒騎士の戦いを、呆然と眺める村人たち。
「これが、猟兵の戦いなのか……」
「皆さん急いで! ここは危険です!」
 闇の救済者たちが村人を避難させようと声を上げる。直ぐ側で行われる戦闘に、いつオブリビオンの目がこちらに向くか分かったものじゃない。
「おいおい、逃さないっての」
 虚ろな瞳の黒騎士が剣を手に村人の姿を見つけて、歩き出す。
 逃げ遅れた親子へと振り下ろされる剣を、ジェイソン・スカイフォール(界境なきメディック・f05228)が受け止める。
「自分たちが援護をします。総員戦闘配置!」
 召喚した衛生小隊を率いて登場したジェイソンの姿を見て、村人の目に安堵が浮かぶ。ジェイソンに率いられた衛生小隊の援護射撃を受けて、闇の救済者たちも村人の避難を進めていく。
「僕も手伝いますよ」
 撤退するジェイソンとすれ違うように、東天・三千六(春雷・f33681)が後を追いかけてくる黒騎士へと相対する。
 手にした喪逢傘から呪詛を含む雨雲がモクモクと沸き起こり、まるで血のような赤い雨が戦場へと降り注いだ。
「グ……ア……?」
 麻痺毒を含んだ雨に濡れた黒騎士たちが、その毒に痺れて動けなくなるのを、三千六は楽しげに眺めていた。
「あはは、ずぶ濡れですねえ。痺れて蕩けてしまうくらいに、僕の呪詛が浸み込んだ雨……ご堪能いただけました?」
 ピクピクと蠢く黒騎士を、ジェイソンの衛生小隊の銃が貫いた。
「ちょっとだけびりびりしますよお」
 三千六の喚び出す、降りしきる毒雨と落雷が黒騎士たちを屠るのを見て、追撃を懸念していたジェイソンの意識は、撤退中の村人たちへと戻される。
「避難は自分たちに任せてください。さあ、みなさんはこちらへ!」
 猟兵たちの戦いをまざまざと見せつけられ、項垂れる男たちを励ますようにジェイソンが声を掛ける。
「戦うって……抗うって、こういうことなんだな……」
 ポツリと呟かれる言葉に、ジェイソンは軽く笑みを浮かべる。
 敵を倒すだけが猟兵の戦いではない。力なきものを守るのもまた、猟兵の仕事なのだと告げれば、男たちは納得したように頷いた。
 敵を倒すだけでなく、自分にできることをする。一人ひとりの力は小さくとも、多くの人間のその力が集まったときにこそ、オブリビオンへの反乱は成功するのだ。
 無謀に抗おうとしていた男たちも、今度こそそれを理解できたのだろう。
 先程までの無謀さは鳴りを潜め、まっすぐに前を見つめている。
 これでもう大丈夫だろう。村人を高台へと避難させて、闇の救済者とともに村へと戻る。
 残ったオブリビオンを倒し、村に安寧を取り戻すのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シホ・イオア
奪いながら、失いながら戦い続ける哀れな騎士よ。
シホはその魂の傷を癒すよ。
貴方達が代償にしてきたものも、
吸収してしまった生命も、
全部癒して鎮めてみせる!

「世界を癒せ、シホの光!」
怪物になった騎士を元に戻すことはできないかもしれない。
でもそれでも祈り、邪な力を浄化し、取りつく魔を破り、
シホの光で慰めて癒す。
騎士であった人達ををこれ以上汚させはしない。

武器は持ってるけど、今回はUCに集中。
防御は霞の残像と空中戦による回避で対応。
アドリブ連携歓迎。


馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

さてー、ここは「闇の救済者 」との共闘ですかねー?結界で弾けるようにしておきましょう。
いいときに攻撃してくださいなー。

【四悪霊・『解』】にて、相手方の運を地の底へ。さらに生命力吸収してますから、活力も低下しますねー。
そこで漆黒風を投擲。

ふふ、『私』だけを拘束しても無駄ですよー?
迂闊に近づけば…『私たち』は四人で一人。内部三人が、四天霊障による押し潰しするでしょうねー。
近づかぬとも…影から這い出た陰海月と霹靂が突撃しますからねー?
生命力吸収で、そうそう長く続かない気もしますけどねー。


陰海月「ぷきゅ」
霹靂「クエッ」(ダクセ初めて)




「ははは……領主様の邪魔するやつは死ねぇ!」
 黒騎士の虚ろな声とともに鎧から無数に放たれる狼の首。真っ直ぐに猟兵を狙うその首を、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の投擲した漆黒風が切り落とす。
 ドサリとその首をどれだけ落としても、構わないとばかりに執拗に義透へと伸びていく。
「ふふ、『私』だけを拘束しても無駄ですよー?」
 狼の首に追いかけ回されながらも、どこか楽しげに言う義透。漆黒風を躱した狼の首が、義透を喰らおうとばかりにその口を大きく開いた。
 狼の牙が義透へと届く前に、見えない霊障が横から挟み込むかのように、狼の首を押し潰した。
「ああ、言い忘れてました。『私たち』は四人で一人。『私』を捕まえようとしても、内部三人が四天霊障で押し潰すでしょうねー」
「ちぃ……」
「だからって距離を取っても駄目ですよー? 近づかぬとも……影から這い出た陰海月と霹靂が突撃しますからねー?」
 距離を取った男に告げた言葉の通り、義透の影の中から大きなミズクラゲの陰海月とヒポグリフの霹靂が、声に導かれるように姿を現した。
「ぷきゅぷきゅ」
「クエェッ!」
 影から勢いよく飛び出し、空中をふよふよ飛んでは黒騎士たちをビリビリと痺れさせる陰海月。
 ダークセイヴァーに訪れるのが初めてな霹靂は、眼下に広がる闇に包まれた世界に少し驚いたようだったが、初めての世界であってもやることは変わらない。上空へと舞い上がり、急降下して陰海月が痺れさせた黒騎士をその嘴で貫いた。
 黒騎士の動きが鈍った所を狙って、漆黒風で纏めて薙ぎ払う義透の頭上を、シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)が飛び交う。
「奪いながら、失いながら戦い続ける哀れな騎士よ。シホはその魂の傷を癒すよ」
 戦場を蠢く狼の首を空中で回避しながら、シホはユーベルコードを発動する。
 戦場に降り注ぐシホの癒やしの光。黒騎士たちは脱力し、黒騎士に生み出された鋼の生物たちも癒やしの光を浴びると、その姿は地に溶けていった。
(……怪物になった騎士を元に戻すことはできないかもしれない)
 黒騎士に生み出される鋼の生物たちは、空中を舞うシホへとその爪を振るう。
(それでも祈り、邪な力を浄化し、取りつく魔を破り、シホの光で慰めて癒すよ!)
 ひらりとその爪を躱し、シホは上空から蠢く騎士たちへと光を放った。
「貴方達が代償にしてきたものも、吸収してしまった生命も、全部癒して鎮めてみせる!」
 黒で埋め尽くされた戦場を、シホの癒やしの光が降り注ぐ。
 シホだって、武器を手に戦うことはできる。
 けれど、怪物に堕とされた騎士たちの魂を救いたいから。
 鎧から伸びる狼の牙を躱し、鋼の生物たちの爪を空中を飛び交う事で避ける。
 武器でただ倒すのではなく、癒やしの光で怪物に堕とされた黒騎士たちに救いを。
 ひらりと宙を舞って、シホは何度目かのユーベルコードを発動する。
「世界を癒せ、シホの光!」
 騎士であった人達の魂を、これ以上汚させはしない。
 自身の光が騎士たちを少しでも救えるようにと祈りを込めて、シホはユーベルコードを発動させた。
 戦場を包むシホの光が、黒騎士たちから力を奪う。そこへ先程から連携を見せていた陰海月と霹靂が突撃していった。

 数を減らしていく黒騎士たち。その残数が数えられるようになってきた頃、武器を手にした影が戦場へと姿を見せる。
「おや、お帰りですかー」
 義透がのほほんとした空気のまま声を掛ける。戦場に姿を現したのは、村人の避難を終え戻ってきた「闇の救済者」たち。
 残ったオブリビオンの数はそう多くはない。これならば猟兵より実力の劣る彼らであっても倒せるだろう。
「さてー、ここからは『闇の救済者』との共闘ですかねー?」
 義透の言葉に、闇の救済者たちの手に力がこもる。
 残っているオブリビオンは、シホのユーベルコードで弱体化してあるが、念には念を入れてと、義透もユーベルコードを発動する。
 四悪霊が封じてきた呪詛を解放し、残されたオブリビオンの運気や生命力を奪っていく。
 これで、闇の救済者たちのまぐれ当たりや咄嗟の回避も期待できるだろう。それでも敵の攻撃がないとは言い切れない。
 彼らを守るための結界術の準備をも整えて、義透は笑みを浮かべた。
「結界で弾けるようにしておきましょう。いいときに攻撃してくださいなー。」
「何かあっても、シホの光で癒やしてあげるね!」
「お、おう!」
 悪霊と妖精に励まされて、オブリビオンへと向かっていく闇の救済者たち。
 前もって弱体化させてある黒騎士へと闇の救済者の一人が剣を振り下ろせば、その身体は簡単に二つに裂けた。
 シホの光が戦場を包み、義透の呪詛が敵の生命力を奪う。
 陰海月と霹靂も、黒騎士を屠る闇の救済者の動線に掛からないように、あるいは彼らを庇うように戦場を駆け抜けた。
 闇の救済者たちは、猟兵の協力を得ながら一体一体、その手でオブリビオンを狩っていった。

 抗う力を持たなかったはずの彼らにとっての、初めての反抗。
 猟兵と闇の救済者たちの初めての共闘。規模は小さくとも、この世界の住人がオブリビオンへの反旗を翻した瞬間だった。
 オブリビオンへと変貌した黒騎士を斬り捨てた闇の救済者たちが、剣を振るっていた手を止める。
 猟兵たちも、その意識を周囲へと向ける。
 村を支配していたオブリビオンの姿はなくなっていた。

 闇の救済者たちを筆頭とした反逆の狼煙は、確かにこの地にも上がったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『慈悲なき世界に安らぎを』

POW   :    死者を運び、埋葬する。屍肉を狙う獣を追い払う。

SPD   :    棺や墓石の製作。埋葬中の警戒。屍肉を狙う獣を追い払う。

WIZ   :    司祭として死者に祈りを捧げる。屍肉を狙う。獣を追い払う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちの活躍で、領主の部下へと成り果てた黒騎士たちは殲滅した。
 けれど、この村の救済はまだ終わらない。
 闇の救済者たちと共に抗うことを決めたはいいが、この村にはまだ色々なものが足りなすぎる。
 装備を整えること、人員を揃えること、食料を確保すること、拠点とするための防備を整えること。
 それよりも何よりも、まずは死者を弔うことだろう。

 村のあちこちに転がる、病や飢餓で死んだ村人の亡骸をどうするか話し合う村人たち。 
 バタバタと村の中を駆け回り、屍肉を狙う狼などの獣の討伐隊を編成する「闇の救済者」のメンバーたち。

「ちょっと良いだろうか」
 一気に慌ただしくなった村の中から、闇の救済者のリーダーが猟兵へと声を掛ける。
「まずは村を解放してくれてありがとう。流石は猟兵だな」
 緊張から開放されたらしいリーダーは、軽く笑みを浮かべながら猟兵に頭を下げた。
「それで、頼みがあるんだが……もし、手が空いているようだったら、手伝ってほしいことがあるんだ」

 生き残った村人が先に進めるように、死者の埋葬を。
 もしくは屍肉を求めて、村に集まりつつある獣の討伐を手伝って欲しいと。

「無理にとは言えない。だが、俺達にとっての救世主でもある猟兵に手伝ってもらえたら、皆の士気も上がると思う。どうか、頼まれてはもらえないだろうか?」
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
簡単に言うと
『腸食われたこの四人(と故郷の人々)、未だ弔われてない』
『獣もオブリビオンの餌食』
『自分の身体がどうなっていくのか見ていた』

ああ、わかりましたー。では、獣を追い払いましょうかー。
ええ、私たちならば、人手も増やせますしね?

そうですよー。気持ち整理しつつ追い返しをしたかったのでー。



第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林

私を呼んだのは、同じく後衛に属するからですね?
ええ、我らに弔いは荷が重い。なされなかったことをなすのは…。

我らが骸は荒らされず、未だ野の上に。


陰海月と霹靂、前で獣討伐頑張ってる。ぷきゅっ、クエッ。
二人の空気を読んだ二匹。




「無理にとは言えない。だが、俺達にとっての救世主でもある猟兵に手伝ってもらえたら、皆の士気も上がると思う。どうか、頼まれてはもらえないだろうか?」
「ああ、わかりましたー。では、私たちは獣を追い払いましょうかー」
 闇の救済者リーダー・シグルドからの頼みを、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は笑顔で快諾する。
「有り難い。村の西側が手薄なんだ。援軍はそんなに送れないんだが、そちらを任せてもいいだろうか」
「ええ、私たちならば、人手も増やせますしね?」
「ぷきゅっ」
「クエッ」
 シグルドの言葉に、傍を舞う二匹へと視線を向けながら返事をする義透。
 ふよふよと宙を浮くミズクラゲの陰海月と、義透の傍でリーダーを見下ろすヒポグリフの霹靂。義透が二匹に視線を向ければ、視線につられるようにシグルドも視線を向けた。
 見上げてくるシグルドの視線を受けた二匹は、任せろと言わんばかりに声を上げた。
「そうか、有り難い。それではよろしく頼む」
 力強く返事をする二匹と快諾した義透からの返事を聞いてシグルドは頭を下げると、他に指示を待つ仲間の元へと駆け出していった。
「…………」
 義透がその背を見送れば、シグルドの指示で、打ち捨てられたままの遺体を高台の墓地へと運んでいく村人たちの姿が視界に入る。
 悲しみに暮れながら作業を進めていく村人たちを背にして、義透は複雑な心境のまま、頼まれた村の西側へと歩を進める。

 脳裏に浮かぶのは、オブリビオンに腸食われた自分たち四人の最期と、同じように殺された故郷の人々。
 誰にも弔われず、地に転がったまま朽ちていった自分たち。

 義透は歩を進めながら、静かにユーベルコードを発動した。
 淡い光から姿を現すのは、ユーベルコードで具現化したもう一人の自分。
「……あの地では、獣ですらもオブリビオンの餌食でしたからねー……」
『ええ、我らに弔いは荷が重い。なされなかったことをなすのは……』
 義透と、もう一人の義透――義透の中に居る人格のうちの一人、「静かなる者」と呼ばれる霊力使いの武士――はぽつりと呟いた。

 生き残った村人たちが、亡くなった村人たちを弔うためにその遺体を運び出していく。
 穴を掘り、遺体を埋葬する。その死を悼んで、弔ってくれる。
 オブリビオンに蹂躙され、全滅してしまった故郷では、そんなことをしてくれる人はいなかった。

『我らが骸は荒らされず、未だ野の上に……』
 オブリビオンに殺され、獣に喰われることもなくそのまま野晒しにされた肉体は、時の流れとともに朽ちていった。
 その骨は今も地に還る事を許されていないのだろう。
 そこにあるにも関わらず、誰にも弔われず、故郷と共にただ存在を忘れられるだけ。

 その時の思いは、悪霊として存在する今でも忘れはしない。
 否、悪霊になるほどの強い思いだったからこそ、今でも覚えているのだろうか?

 あの時の悲しみが、怒りが、嘆きが脳裏を占める。肉体が朽ちていくのを、ただ見ているしか出来なかったかつての記憶。
 重苦しい想いを吐き出すように、『義透』が息を吐いた。
『私を呼んだのは、同じく後衛に属するからですね?』
「そうですよー。気持ちを整理しつつ追い返しをしたかったのでー」
『そうですか。それでは……おや?』
 話に夢中になっていた二人がふと顔を上げると、先程まで隣りにいたはずの二匹は、だいぶ先へと進んでいた。
「ぷきゅきゅっ!」
「クエェェッ!」
 村に近寄る獣たちの討伐を頑張る陰海月と霹靂。
 しんみりとした二人の空気を察したのか、二匹だけで村の外へ先行し、先程覚えた連携を駆使して、獣の群れを村に近寄らせまいとしていた。
 そんな二匹を見て、二人の表情にも笑みが浮かぶ。
「それじゃお手伝いしますかー」
『任せっぱなしには出来ませんからね』
 それぞれの手には漆黒風と白雪林。先行した二匹を追うように戦場へと向かう。

 あの日、誰にも看取られずに朽ちた記憶は消えないけれど。
 誰かに弔ってもらえるそれを、妬ましく思う気持ちもあるけれど。
 それでも誰かに同じ思いをしてほしいとは思っては居ないから。

 義透がちらりと『義透』へ視線を向ければ、『義透』もまたこちらを見ていて。
 いつか自分たちを弔いに帰ろう。
 そんな日を願いながら、義透は手にした漆黒風を放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
周りが死んで行く様を見ている事しかできない無念と慙愧の念が積もり積もって今回の暴走に繋がったのもあるのでしょう
埋葬ができれば少しは落ち着くのでしょうか?

【行動】
UC+範囲攻撃で獣を追い払い、黒酸漿の匂いを周辺につけて村人が獣避けを完成させるまでの時間稼ぎにする

自身は埋葬行為に意味があるかどうかは理解していないが、これまでの経験から必要な物と判断して手伝う
埋葬時はUCの怨念の炎が持つ呪詛の力を逆に利用し、遺体に残る病の原因になるものや無念、怨念、恐怖と言ったものの残滓と共に炎で焼いて昇華する
怨念を取り込み力にしてきただけに、一かけらも残らないよう念入りに


ユリウス・リウィウス
俺は屍術師だ。屍人を喚起することも多いが、同時に死者を眠らせる祭儀も修めている。そちらで俺の知る流儀で進めさせてもらおう。
幸い同じ世界でのことだ。俺の知るやり方で大丈夫だろう。

死者が蘇らぬよう、柩の中の遺体の額に香油を塗って、骸の海で休らうよう、祈りを込める。
同時に、蘇ったときにすぐに首を落とせるよう、二本の鎌を首元で交差させて刃を肌に触れさせる。
一つ一つの棺の手筈が終われば、死者と遺族に向けて祈禱文を読み上げよう。
死の顎にかかりし者達に、永遠の安息を――

墓地には獣除けの柵がほしいな。墓穴も深い方がいい。墓石の用意は出来ているか?

さあ、最後にとむらいの鐘を鳴らそう。どこまでも響き渡るように。




 村人が、かつて墓地があったという場所へと遺体を運んでいく。
 村を一望できる高台に存在する領主の配下の屋敷は、元々は村の共同墓地だったという。
 今ではただの拓けた荒れ地でしかないが、それでも村人にとってはここが村の墓地なのだ。
「さて、それじゃ始めるか」
 数名の遺体を墓地に運び終えたところで、ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)が他の村人へと声を掛ける。
「まず墓地には獣除けの柵がほしいな。墓穴も深い方がいい。墓石の用意は出来ているか?」
「は、はい。ただいま準備させます」
 ユリウスの言葉を受けて、数名の村人たちが動き出す。
「では俺はそちらを手伝うことにしましょう」
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)も、動き出した村人について柵作りに協力する。
 墓地の幅を確認し、等間隔に死者を埋葬する穴を掘り始める村人を横目に、ユリウスは柩で眠る死者を確認する。
「幸い同じ世界でのことだ。俺の知るやり方で大丈夫だろう」
「あの……息子に何を……?」
 柩の中の遺体に二本の鎌を首元にあてがった時、老人が恐る恐るユリウスに声を掛けた。
「俺は屍術師だ。屍人を喚起することも多いが、同時に死者を眠らせる祭儀も修めている。そちらで俺の知る流儀で進めさせてもらおう」
「ああ、左様でしたか……どうか息子を眠らせてやってください」
 そういう仕様だと伝えれば、老人はユリウスの手付きを眺めるように近寄ってきた。
 死者が蘇らぬようにと、柩の中の遺体の額に香油を塗る。そして骸の海で休らえるように、祈りを込める。
 死者が目覚めぬのを確認してから、ユリウスは柩を埋めるようにと村人に指示を出した。
「さて、次は……まだまだあるな、なあ、おい」
 並べられる柩の数は多く、運ばれてくる柩はまだある。
 それでも一度始めたこと、死した村人が骸の海で眠れるようにと、ユリウスは次の遺体へと手を掛けた。

「我等が怨念尽きる事なし」
 織久の言葉とともに、ゴォッと怨念を宿した炎が巻き起こる。
 炎は村の周囲を取り囲んでいた獣たちを包み込み、その身をあっという間に炭へと変えた。
 獣避けの柵を村人が作成していく傍を、赤い目で周囲を威嚇する黒酸漿が通り過ぎていく。
(獣は匂いで相手を把握するという。黒酸漿の匂いを撒いておけば、やすやすとは近寄っては来ないでしょう)
 織久が黒酸漿の動きに意識を向ければ、黒酸漿が通った後の場所では、獣たちは唸り声を上げるものの近寄っては来なかった。
 周囲を見渡せば、村人たとは黙々と柵を作る作業を進めていた。

(……周りが死んで行く様を、見ている事しかできない無念と慙愧の念が積もり積もって、今回の暴走に繋がったのもあるのでしょう)

 静かに死者のために作業を進める村人からは、死んででもオブリビオンに一矢報いようと躍起になっていた姿は思い浮かばない。それを見て、織久は今回の事件の原因に一つの答えを出した。
「埋葬ができれば少しは落ち着くのでしょうか?」
 死ねばただの肉塊になるだけ。死者を想っては先へ進めないと思っている織久には、その行為にどれほどの意味があるのか分からない。
 それでも、村の者たちにはそれが必要らしい。それだけを理解して、織久も淡々と獣退治を進めていく。
 炎で焼き払い、黒酸漿の威嚇に怯えた獣たちが周辺から居なくなったのを確認して、織久も墓地へと戻る。
 ユリウスが一人ひとり埋葬準備を進めていくのを、村人たちが見守っていた。織久がふと近くにあった亡骸を見れば、どれもが苦悶の表情を浮かべていた。
「…………」
 この行為に意味などない。それでも死者が少しでも安らげるならと、織久は炎を呼び起こす。
 焼き払うのは、遺体に残る病の原因になるものや無念、怨念、恐怖と言ったものの残滓。そんなものに捕らわれたまま、黄泉への旅路を進む必要はないと、その身に残された負の思いを炎で昇華する。
 黒い炎が燃え盛る。一見すれば遺体も柩も何もかも焼け焦げてしまうが、呪詛から生み出される黒い炎は肉体も柩も燃やしはしない。焼き尽くしているのはあくまでも、肉体に残る負の感情だけだ。
 炎が消えると、そこには柩の中で穏やかな表情で目を閉じる村人の亡骸だけが残っていた。

 最後の柩に眠る遺体の額に、ユリウスが香油を塗った。掘られていた穴に最後の柩を埋めて墓石を建てる。
 出来上がった墓地を前に、村人の間からすすり泣く声が聞こえる。
「さあ、最後にとむらいの鐘を鳴らそう。どこまでも響き渡るように」
 ユリウスの言葉を聞いて、一人の村人が墓地の鐘を鳴らす。
 この鐘の音は墓地だけでなく、村にも届いているだろう。その場に居たものは、そっと目を閉じて黙祷を捧げた。
「死の顎にかかりし者達に、永遠の安息を――」
 ユリウスの祈祷が、鐘の音が鳴り響く墓地に溶けて消えた。

 願わくば、死者が安らかに眠れるようにと願いを込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シホ・イオア
ふむ、色々足りてないから手伝ってほしいと。
亡骸を運ぶのはシホだと難しそうだし、
ちょっと派手だけどやっぱりアレかな?

とりあえずは獣の排除を手伝って
聖者として生者と死者を癒すために祈る。

その後はアレのお時間です。
「輝石解放、ゴールド。 おいでませ妖精の宿!」
宿と言いつつ建物なら何でも作れるので拠点つくりのお手伝い。
やりすぎると困るだろうから村人や闇の救済者のリーダーから話を聞くよ。
死んだ人達のためのチャペルや村人たちの家や防壁。
何なら城塞だってOK。
でも内装とか武装とかは自分たちでお願いね。

アドリブ連携歓迎。




 死者を弔う鐘が村の中に鳴り響く。
 亡骸を運ぶのは小さな自分では難しそうだと判断し、獣の排除に当たっていたシホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)も、その鐘の音を聞いて静かに黙祷を捧げる。
 聖者として生者と死者を癒すための祈りを捧げるシホ。小さな体でもやれることはあると、周囲を飛び回っては出来ることを探していた。

 高台で死者を埋葬していた村人たちが村へと戻ってくる。
 死者の埋葬は終わった。それならば次にすることは、生き残った人たちがこれから生きていくための手段を整えることだ。
「ふむ、色々足りてないから手伝ってほしいと。シホに出来ることと言ったら、ちょっと派手だけどやっぱりアレかな?」
 今この村に足りていなくて、自分が出来ることを思案する。小柄な自分でも出来る、そして村を立て直すにはアレは必要なものだろう。
 けれど、あまり派手すぎて領主に目をつけられても困る。どんなものがいいかは、やはりこれから使っていく人に聞くのが一番だと判断して、シホは高台から降りてきた村人に話を聞こうと飛び立った。

「リーダーさーん!」
 村の中心で指示を出すシグルドの姿を見つけたシホは、自らの提案を伝えるためシグルドの目の前に飛翔した。
「これは猟兵殿。どうかしましたか?」
「あのね、シホのユーベルコードにどんな建物でも作れちゃうのがあるんだけど、どんなのが必要かな?」
 シホに対し恭しく頭を下げるシグルドに、シホは目線を合わせるようにホバリングしながら問いかける。
「建物を作れる……そんな凄い力があるんですか」
 シホの提案にシグルドは考える素振りを見せるが、シグルドが口を開く前に話を聞いていた村人が先に声を上げた。
「だったら、俺たちの家を建ててくれるか? 領主に見つからないようにひっそりとしたのでいいんだが」
「まっかせてー!」
 村人の提案に、シホは快諾する。どんな家を造ればいいのか、参考までに今住んでいる家の構造を見せてもらう。
 外装は石造りの小さな家だが、家の中には隙間風が入り込んでいて寒々しく、雨漏りがするのかどこかカビ臭い。こんな家に住んでいては、病にかかるのは必至だ。
「分かった。それじゃあ行くよ! 『輝石解放、ゴールド! おいでませ、妖精のお宿!』」
 この村の家の状態を確認したシホは、新しい家を建てるためにユーベルコードを発動させる。
 ぽんと現れる小さな家。見た目こそ周囲の家と変わらないように見えるが、中に入れば雨も風も通さない、保温性も高いしっかりとした造りになっていた。
「おお、すげぇ……」
「内装とか武装とかは自分たちでお願いね。それで、次は何を作る?」
 生み出された家を前にして感嘆の声を上げる村人たちに、シホは満足気に声を掛ける。その言葉につられて、村人や闇の救済者のメンバーから次々と意見が出された。

 死んだ人達のためのチャペルを。
 家とも言えないような家に住む村人たちのために、雨風を防げる頑丈な家を。
 蔓延した病を治すために必要な、広めの診療所を。
 闇の救済者たちの拠点となれるような屋敷と、日頃使うであろう鍛錬場を。
 周囲に蔓延るオブリビオンや獣から村を守るための防壁をと、様々な意見がシホに伝えられた。

 その一つ一つにシホは頷いて、村人の望むままにユーベルコードを使って建物を造りあげる。
「おおお……これでちゃんと眠れる……!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!!」
 建物を建てるたびに、それを見ていた村人から驚きの声と感謝の声が沸き起こる。
 ユーベルコードの連発で流石に疲労も溜まるけれど、それでもシホは望まれるままに力を発揮していく。

 この村が、この地方の反逆の拠点となれるように。
 この場所が、オブリビオンの圧政に苦しむ人々を救うための場所になれるように。


 道端に棄て置かれていた遺体を埋葬し、新たな住居を手に入れた村人たち。
 自棄になって事を起こそうとした結果、滅びを迎えるはずだった人々を救えたことで、猟兵たちの間にも安堵の息が漏れる。
「本当にありがとうございます。自分たちだけではこんなに上手く事は進まなかったでしょう。何とお礼を言ったらいいか……」
 シグルドが、村人を代表して猟兵に頭を下げるが、礼は要らないと、猟兵の誰かが答えた。

 今回の戦いで領主の圧政から解放できたのは、あくまでもこの村だけ。
 領主の圧政に苦しめられている村はこの村だけではない。その村々をも救い、この地方の領主を倒して真の解放を得なければ、今日の戦いも無意味なものになってしまう。

「はい。真の解放を目指して、俺たちはこれからも戦い続けていきます」
 情勢が決して覆ったわけではないことは、彼もちゃんと把握していたのだろう。猟兵の言葉を聞いて、シグルドは強く頷いた。

 メディス村は解放した。
 だが、抗うために必要なものは、まだ足りない。
 村を守る防壁は猟兵が与えた。けれど、それだけだ。
 生きていくための食料も、オブリビオンと戦うための武器も人も、何もかもが足りていない。

 そしてその全てを猟兵が整える訳にもいかない。
 それはこの地を生きる人々が、不条理に抗う覚悟を持った人々が、自分の力で手にしなければならないものだ。
 猟兵の誰かが村を振り返る。活気に満ち、理不尽に抗おうとする意志が、そこにはあった。

 この村はもう大丈夫だろう。
 この地で芽生えた領主への反逆は、確かに成功したのだ。
 明るい未来を望む人々の思いを見届けて、猟兵たちはグリモアベースへと帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月28日


挿絵イラスト