●グリモアベース:予知者、ムルヘルベル・アーキロギア
「ここのところ、封神武侠界で、少し変わったタイプのオブリビオンが現れておる。
もともと存在しているオブリビオンに別の思念体が憑依し、乗っ取るというものだ。
しかもその思念体は、三国時代に活躍した武将の魂ばかりだという話でな。
ワガハイが予知したのも、その思念体……「魂縛武将」の悪事に関するものなのだ」
ムルヘルベルはグリモアを操作し、戦場となる人界の都を背後に投影した。
「敵の首魁、つまり魂縛武将となったのは、「魏延」という武将の魂である。
三国志に詳しい者なら、名前に聞き覚えがあろう。有名な逸話もあるゆえな」
かの諸葛亮孔明の死後、反旗を翻した魏延に武将・楊儀はこう言う。
『"わしを殺す勇気がある者はおるか"と三度叫ぶ勇気があるなら、漢中を譲ってやろう』
魏延はこの挑発に乗り、その通りに自ら叫んだ。
そこをもうひとりの武将・馬岱が「此処に居るぞ」と返し斬り殺した、というものだ。
「オブリビオンというものは、概して生前の人格と一致しないことが多い。
魏延の魂を宿したこのオブリビオンも、生前の魏延その人そのままではなかろう。
しかし少なくとも、己の不死不敗を信じる蛮勇は演技のそれを超えているようだ」
魂縛武将・魏延は多数の配下を率い、人界の都を包囲しつつある。
都の兵力では抗いようがない。ゆえに、まず都を防衛し敵襲を凌がねばならない。
「敵主力が前線に来たところで打って出て、将を陥とすのが最速最善であろう。
相手は三国時代の武将、指揮官としてもひとりの英傑としても戦闘力は高い。
が、オヌシらならば、都に一切の被害を出すことなく撃破することが可能なはずだ」
そう言って、ムルヘルベルは本を閉じた。
「しかし、これまで現れなかった武将の魂が、このような形で蘇るとは。
封神武侠界でも、異変は少しずつ進行しておるようだな……まったく、悩ましい」
眉間を揉んで気を取り直すと、ムルヘルベルは転移を始めた。
唐揚げ
本シナリオは都市防衛→雑魚撃破→敵将襲撃の3章仕立てです。
魏延は三国志の登場人物ですが、オブリビオン化しているため、
同一人物と言い難い状態です。つまり予備知識は不要ってことです。
本シナリオは早ければ24日から執筆を開始します。
プレイングが送れなくなるまでは、いつ送ってもらってもOKです。
なるべく採用できるようにがんばります。よろしくお願いします。
第1章 冒険
『王都防衛』
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POW : 正規軍・義勇兵を鍛える/最前線に立ち敵と戦う
SPD : 防衛の為の装備を備える/後方支援で味方を助ける
WIZ : 負傷者や市民を介抱する/敵を術中に嵌めて混乱させる
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒珠・檬果
三国志マニア、ここにあり。まず都市防衛ですね、OKわかりました。やる気が出ます。
さて、できるだけ高い位置に陣取りまして。なければ、オレンジライト・スピードキャバリア(O.L.S.C.)呼び出して、その手の平にでも。よく見えますね。
七色竜珠を合成して、白日珠へと変化させまして。
【箭、休むことなし】発動。さあいきましょうか、『袁紹』殿。
有効射程が10kmですからね…わりとどこに射ても当たるんですよ。高所に陣取れば、なおさら。
私の所持UC、いくつかは憑装とか…それこそ魂縛と発想は同じで。
冠している『絹芳将』というのは、契約の際に私がつけました。
●三国志マニア、ここにあり
かの大国が誇るもっとも有名な史実にして創作物、それが三国志と言っていい。
どんな国にも熱心なファンはいるもので、それは猟兵も同じこと。
高い塔のてっぺんにシャーマンズゴースト……荒珠・檬果だってそのひとりだ。
「ふふふ、やる気が出ますね。血が騒ぐというものです」
現代のUDCアース文化をたいへんに謳歌する檬果は、歴史もサブカルも嗜む。
そんな檬果にとって、この封神武侠界はなかなかにご褒美な世界であった。
そこに魂縛武将なる相手。実に、滾る!
「ふむ、よく見えますね……たしかに数が多い」
檬果は手でひさしを作り、都に近づいてくるオブリビオンの軍勢を見た。
鎧を身につけた騎兵隊の軍勢だ。一斉突撃で門を破るつもりか。
「さあいきましょうか……『袁紹』殿!」
はたして檬果が発動したユーベルコードは、名を「箭、休むことなし」と云う。
実のところこれは、サムライエンパイアで用いられる「憑装」と同じタイプの発想から生まれたユーベルコードだ。
つまり檬果が挙げたその名は、雰囲気付けや気分で吹いた法螺などではない。
彼女に憑依し力をもたらすのは、曹操と争ったかの人の叡智なのである!
「この矢が届くはおよそ3里……これだけ見晴らしがよければどこに射ても当たりましょう!」
『白日珠』を变化させた弓を大きく引き、檬果は天地の狭間を射抜くように矢を放った。
すると放たれた矢は空中で無数の矢に変わり、たちまち鏃の雨と化す。
まっすぐと都に向かって猛進していた騎馬の群れは、降り注ぐ無数の矢を防ぐ術を持たない!
「目には目を、魂縛には魂縛を……とでもいったところでしょうかね?」
いまの檬果には、遠くまで敵がよく見える。
その矢は必殺にして必中、それが数百数千にも分かれて降り注ぐのだ。
敵にとって、これ以上恐ろしい攻撃もないだろう。
成功
🔵🔵🔴
ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
なんか強いやつが蘇っちゃったってことらしいぜ
まァ、相手だって戦のプロだ
俺たちもナメてかかっちゃァ痛い目みるだろうな、エコー
しかも今回はただ暴れればいいってもんでもない
まァ、なんせ一応「魏延」だ
相手だって能無しの筋肉馬鹿じゃないってことよ――防衛する側ができることは
その「攻め手」をよく見ることだな
【GENIUS】
ガジェットを起動したら、俺は器用に動かして見せるぜ
なにせ頭がいいもんで
破られそうな扉があるなら助太刀しちゃうよ
俺?あー、俺自身はできれば高いところで見物したいもんだ
戦況や人の動きを見たいンでね
エコーにはガジェットを一機つかせて
俺からの指示と実況もお届けだ
――お掃除開始といこうぜ
エコー・クラストフ
【BAD】
……そうだね。忌々しいオブリビオンだけど、元が強ければ当然強い
甘く見てかかって敗北、なんて事態は何としても避けたい
それにしても、エマ(=ハイドラのこと)はその武将とかいうやつ知ってるの? 結構詳しいよね
【贖罪来たりて】
戦だって言うならこちらも数を揃えないとね。地獄から来た有刺鉄線人形たちだ
こいつらはただ数の力を増すだけじゃなく、組み合わさって巨大化もできるしその外見で恐怖を与え敵軍を躊躇わせることもできる
ボク自身はこいつらと共に前線へ向かう。有効な使い方はエマ、君に指揮してほしい
ボクがドーン!ってやるよりきっと有効に使ってくれると思うしね。よろしく頼んだよ、名軍師さん
●戦の作法
「進めぇ! 都を蹂躙し、火を放つのだぁ!」
「「「うおおおおおっ!!」」」
地を揺るがすほどの鬨の声と、無数の蹄の音。
向こうより来たるは無数の騎馬隊。そのあとに続くのは弓兵の列である。
一体一体はさほどの力も持たぬオブリビオンだが、問題はその数か。
姿見えぬ武将とやらの指揮もあってか、その戦意は厄介なほどに高い。
「騒がしくて暑苦しい連中だな。それにやかましい」
エコー・クラストフはうんざりした様子で零した。
「まあ、いいさ……数を揃えるならやりようはある。エマはどうする?」
「俺は今回は高みの見物、といこうかね」
ハイドラ・モリアーティは、都の外縁部にそびえる塔を親指で示した。
「ふうん……別にいいけど、どうして?」
「相手は戦のプロって話だろ? なにせあの魏延、だからねぇ」
「……エマは、例の武将とやらを知ってるの?」
「詳しいってほどじゃねえけど、一応な。つまりそれだけ有名ってわけだ」
すなわち、名が知れるほど強い、ということでもある。
史実にその名を刻んだかの時代の武将のひとりとなれば、ハイドラが警戒するのは当然。
負けるつもりは毛頭ないが、油断して寝首をかかれるのは雑魚の証明である。
ハイドラは己の強さをわきまえているからこそ、決して敵をみくびらないのだ。
「ってなワケで、ガジェットはつけとくよ。前は任せるぜ、エコー」
「ん、わかった。任されよう」
九つ首の竜のガジェットがひとつ、分離してエコーに追従する。
エコーは文句を言うでもなくこくりと頷いて、敵軍の真ん前へと降りていった。
ハイドラがそうであるように、エコーも決して敵を見くびったりはしない。
どんなオブリビオンも全力で叩き潰す。油断もなく、徹底的に。
その上で彼女が敵を弱敵と嘲ることがあるとすれば、それは皮肉や見栄などではない。
事実として、敵対者がその程度の力量でしかないということだろう。
……彼女らは強い。敵が強い以上に、厳然たる事実としてそれは横たわる。
はたして、エコーの召喚した有刺鉄線人形と敵騎馬隊が激突した。
数はおよそ100、向こうから来る敵軍の総数に比べればはるかに頼りない。
しかし。エコーが自らの魔力を込めて喚ばったそれらは、いわば精鋭の兵たち。
その恐るべき見た目がもたらす威圧感は、意気軒昂たる兵士どもの心さえ挫く!
「お、臆するな! 攻め込めぇっ!!」
「ふうん、ためらいはすれど止まりはしない、か。根性は見上げたものだね。
――でも、本当に強い兵士なら、挑むべき相手は見定めるべきだと思うけど」
エコーは冷たく言い、土煙の中をくぐるようにして低く走った。
騎馬をすれ違うたびに呪剣がひょう、と空気ごと骨と肉を引き裂く。
たちまち戦場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。もっとも、叫び喚くのは敵だが。
「こ、この人形! ただの人形じゃない、突いても穿っても倒れん!」
騎馬隊が槍で串刺しにしようが、後続の弓兵たちが無数の矢を放とうが。
地獄より来たりし人形たちは倒れも止まりもせず、鉄の茨で肉を抉り引き裂く。
血風逆巻く戦場をエコーは縦横無尽に駆け回り、赤い雷で敵を灼いた。
「突撃力を奪われれば、騎馬隊もこんなものか……エマ、次はどこへいけば?」
『西門は破られそうだ。そっちの援護を頼むぜ』
「了解」
ガジェットを通じて届くのは、場を俯瞰するハイドラの指示である。
エコーはハイドラの手となり足となり、不平不満を零すことなく東奔西走する。
ハイドラの指示は的確であり、そうであることをエコーは知っている。
ゆえに、文句など言わない。彼女の後ろには最強の"軍師"がいるのだから。
「しっかしまあ派手だねぇ! この都とやらに怨みでもあんのかね、魏延サマは。
……ま、そんなもんなくてもこんだけのことやらかすのがオブリビオンか」
ハイドラ自身も場を俯瞰するだけでなく、ガジェットを操作して戦場を制御。
騎馬隊が門を破るのに乗じてはしごをかけようとする歩兵隊を吹き飛ばし、
弓兵が火矢を放とうとすれば、先んじて潰すかあるいは火矢を空中で呑む。
たったふたりの精鋭は、数百倍を超える猛兵の群れを完全に圧倒していた。
「しつこい汚れはきちんとお掃除しねえと。なぁ? エコー」
『同意見だよ。こいつらは強いかもしれないけど――ただの、ゴミだ』
伝わってくる冷たい声に、ハイドラはけらけらと笑った。彼女も同意見だ。
過去の残骸という、世界にこびりつく穢れを、圧倒的暴力で"掃除"する。
これは戦いではない。それほどまでに、彼女らは武でも知でも優れていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルヴトー・シフトマン
なるほど、そんな事象が
この世界の歴史そのものと対峙しなければならない、というわけですか
どんな強者が来ようと、俺には関係ありません
必ず撃滅する──それ以外に無いのですから
さて、天狼で派手に暴れるには地形が良くないですね
都市にダメージを与えるような真似はしたくありません
ここは定点射撃で迎え撃つとしましょう
<飛天揺光>と<黒鉄之雨>の二丁持ちで行きます
正確かつ手数の多い射撃で敵を減らしましょう
誤射は許されない 特に慎重にやります
飛び道具の類は積極的に撃ち落としておきます
酷な話ですが、敵がどう出てきてどんな攻撃をするかは──『先駆け』で視えてます
そのアドバンテージがある限り、俺の『集中』は揺るがない
●歴史と対する
ドン、ドン――と、時を刻むかのように規則正しい声が響き渡る。
それは時を告げる鐘ではない。ルヴトー・シフトマンの"天狼"の射撃音だ。
「ぐあっ!!」
銃弾が地形を穿つと、そこに居ないはずの隠密部隊が突如として現れた。
いや、「隠れていた」というべきである。ルヴトーはそれを見切っていたのだ。
そして、地形ごとふっとばした。左手に握られた『飛天揺光』の精密な狙撃。
一方で、右手に握られた『黒鉄之雨』は、騎馬隊の戦列を吹き飛ばす。
「どこに部隊を潜ませようが、無駄だ――すべて『視えてる』からな」
ルヴトーが"先駆け"で『視た』通り、都市東部を狙うように新たな騎馬隊が出現。
猛烈なスピードで門を破らんとする部隊を、機関銃の砲火が迎え撃った。
「な、なぜだ、こちらの伏兵が読まれているのか!?」
「ええい、弓兵隊を前に出せ! あのデカブツから仕留めるのだ!」
部隊長の命令により、中列に控えていた弓兵部隊が前線に躍り出た。
数はざっと50を超えるだろう。もちろん、護衛用の重装部隊もいっしょだ。
「飛び道具には飛び道具を、か……それもすべて『視えて』いる……ッ!」
ルヴトーは目を見開き、わずかな先の刻の風景に集中した。
無数の矢が、こちらを正確に狙い定めて降り注ぐ絶望的光景である。
いかな天狼の装甲とて、この数の矢を受ければ撃墜といかねど不調に陥る。
『黒鉄之雨』をマウントし、迎撃する……ルヴトーはすべての鏃を撃ち落とす気だ!
「放てぇ!」
シュパパパパ! と、鋭い矢が一斉に弓から放たれた。
ひとつひとつは小さく細い。だが、矢の雨となったそれらは猛攻である。
「俺のほうが先に動く――そして、俺のほうが正確だッ!」
BRATATATATATA!! ひとつ、ひとつ、またひとつ。
ジグザグに、地面と平行に、雨と雨とが絡み合い空中で相殺、爆発。
街あるいは天狼に降り注ぐはずの矢は、そのすべてが四散し消え果てた!
「ばっ、バカな……! これだけの数の部隊の攻撃をすべて……!?」
これはもう、先読みとかそういうレベルの話ではない。
あらゆる"犠牲"を認めぬ気高き心が生んだ、必然の奇跡というべき事象。
つまりは、雑兵には太刀打ちできぬ、次元の違う戦士の技――!
「……二度目は、させない」
ハンドキャノンの弾頭が、重装備部隊ごと弓兵どもを吹っ飛ばした。
尋常の戦いであれば、戦場を制するのは数と練度である。
しかして常識を超えた一は、それだけで多数を圧倒する個となりえるのだ。
成功
🔵🔵🔴
渡塚・源誠
さて、発見から暫くだけど、事態が動きつつあるようだね。
ゆるりと旅をするのはひとまず置いといて、手助けさせてもらうよ。
まずは防衛戦ってことだけど……これを使うとしようかな。
(指先から生成される魔糸)
イメージ元の鋼糸さながらの切れ味はそのまま、細くして【目立たない】状態にしたのを張り巡らせるよ。
糸による【切断】攻撃と、UC効果での速度低下が狙いだよ。
ただ、無限に生成できないから、カバーできる範囲は限りがあるんだよねぇ…。
…ってことで、現地の人から【情報収集】して、【地形の利用】が一番効きそうな一角に罠を集中させようかな。
上手いこと包囲に穴ができて、戦況がこっちに有利になるかもしれないからね。
●都の人々
「す、すげえ数の軍隊だ、一体どうしてこの都を攻めてきたんだ……!?」
都に居るのは猟兵だけではない……当然、そこに住む人々だっている。
そして彼らにしてみれば、この敵襲は寝耳に水もいいところだった。
近年、人界の治安は悪化の一途をたどり、あちこちで混乱が起きている。
それでも、自分たちの住む場所が巻き込まれれば、誰だって困惑するものだ。
猟兵たちの奮戦により第一・第二の攻撃は防がれていたが、まだ都の人々は効果的な防衛策を打ち出せていなかった。
「やあ、慌てているところにすまないね。ちょっといいかな」
右往左往する兵士らに話しかけたのは、渡塚・源誠だった。
「あ、あなたは? もしやこの都を防衛してくださっている方々ですか!」
「その応援、ってところかな。いくつか聞きたいことがあってね」
源誠は帽子のつばをあげて、穏やかに笑った。
「敵はこちらを包囲してる。あちこちの方角で猟兵が迎撃しているわけだが……。
罠を仕掛けるのに一番いい場所を教えてもらえるかい。できるだけ入り組んだ地形がいい」
そう言う源誠の指先に、何か細いものがきらりと光った。
「複雑で攻めがたい地形ほど、防衛戦では手薄になりがちだからね――」
それは源誠の指先から生成された、魔力で出来た糸である。
この都をぐるりと囲む土地のなかには、凸凹で騎馬には向かぬ難所があった。
そこに潜み静かに這い寄るのは、少数精鋭の気功術を修めた隠密部隊である。
軽功を使えば、この程度の悪路など多少荒れた道となんら変わりない。
仮面で顔を隠した隠密が、物凄い速度で都の城壁へ近づく――と、その時!
「ぐあああっ!?」
ひとりの隠密が悲鳴をあげた。見れば、片腕と片足が欠損している。
「何!」
「罠か!?」
然り。奴の手足を奪ったのは、源誠が張り巡らせた魔糸の罠だ。
隠密たちは足を止め、内功を練り上げながら周囲を警戒した。
だが、視えぬ――常の糸より細く、かつ魔術的に隠蔽された糸は目では捉えられない。
そこかしこに罠があるような錯覚。これでは攻めるどころの話ではない……!
「罠っていうのは、そこに「ある」だけで効果を発揮するものさ」
ひときわ高く聳える岩山の上に身を潜め、源誠はふっと笑った。
「種も仕掛けもないこの糸の罠、たっぷり楽しんでくれると嬉しいねぇ。
気功の力で飛んだりするにしても、鳥みたいに雲の上とはいかないだろう?」
疑心暗鬼は足を鈍らせる。かといって闇雲に突撃すればそれこそお陀仏だ。
源誠の仕掛けた危険という名の網は、敵の身体ではなく心を絡め取っていた。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
へぇー、昔の強者がねぇ
俺ぁそういう歴史に興味は無いんだが、ちと厄介そうなのは確かだ
昔はブイブイ言わせてたかもしれんが、現在はそうはいかない
歴史に負けてやる趣味も無いんでな…始めようか
で、最初は防衛すりゃいいわけね
そいつはいいな──俺は守るよりも待つ方が好きなんだ
必死に手を伸ばす間抜けに、絶望をくれてやる
まずは場を整えるぞ…『Sanctuary』
ちょいと俺好みに書き換えさせてもらう
【ハッキング】で防衛に必要な設備を作成
状況を見る為のカメラは当然として、トラップも敷き詰めよう
急速にせり出す壁、強酸の落とし穴、セントリーガン…
アリ地獄のような吸い込みトラップに爆弾をプラスしてもいいな
さぁ、越えてみろ
ロク・ザイオン
(縄張りの為に、番う為に
己は此処だと、鬨の声を上げるものは森にも多いのだ)
……向こうは、すごく、やる気だってことだな。
(会敵までは都中を巡ろう
【地形利用】出来そうな場所を探して目星を付けながら
怪我人を見つけたら「生まれながらの光」で治し
戦える者を一人でも多く、増やしてゆこう
鍛えるにしろ街の備えを固めるにしろ、大小の怪我は付き物なのだろうし
……猟兵は時々、何てったっけ、あれあれ)
……すぱるた……
(そんな感じのやつだ)
……ああ。
少し疲れるから、食べ物と酒が欲しいな。
鳴宮・匡
都市設備や簡単な設備を使って防衛線を構築
現地の住民たちにひとつひとつ教えながら、協力してやっていくよ
実際のところ何をどうしたところで、俺たちは部外者だ
この都市を守るのは、そこに暮らすやつらの手であるべきだろう
設備の方が問題ないようなら後方援護に回る
といってもこちらも優先するのは住民たちへの助言と支援
得物は弓だとか、それこそ大砲や何かでもいいし
術師みたいなのがいるなら術だろうが構わない
「遠くを狙える」って技術さえあれば
それを最大限に生かすような戦い方を教えてやれる
……大丈夫、どうにもならないところはこっちで援護する
目はいいんだ、敵影ひとつ取りこぼしやしないさ
安心して、できることをやってみてくれ
●民を生かし、兵を活かす
にょきにょきと、まるで草木が萌え出るように壁が「生えて」きた。
「す、すごい……! 我々が築いた城壁よりも高い壁が、何もない場所から!」
槍を手にした兵士が、高く聳える白い壁を見上げて唖然と呟く。
壁の天辺に立つのは、誰であろうヴィクティム・ウィンターミュートである。
「この高さなら、矢を放とうが空を飛ぼうがそうそう越えられはしねえよ。
だが油断するなよ。飛び道具で駄目なら、連中は突っ込んでくるはずだからな」
ヴィクティムがゴーグルを装着すると、遠くの地平線に視点がズームした。
彼の予想通り、敵は大量の騎兵を一塊にし、防壁を物理的に突破するつもりだ。
もちろん、そのための備えも忘れていない。地面には無数のトラップ。
古代中国の光景には不似合いな、セントリーガンまで生えてくる始末だ。
「俺は守るよりも待つほうが好みなんだ。お礼に盛大に出迎えてやるぜ」
ヴィクティムは嬉々として、都をぐるりと一周して防衛設備を築いていく。
人々は彼の電脳魔術に圧倒されるばかりだが、それだけでは終わらない。
「……ヴィクティム、張り切ってるな」
「こういうシチュエーションは、あいつの十八番だからな」
壁で守られる都中、ロク・ザイオンと鳴宮・匡は言葉を交わす。
彼らの目当ては、武装ではなく都の人々……つまり現地住民との交流だ。
交流、といっても、呑気に語らっていられるような状況ではない。
つまり彼女らがやろうとしているのは、民を匿い兵士を戦わせるための準備。
襲撃で負傷した怪我人を集めたり、戦術を指南する、といった裏方仕事だ。
「向こうは、すごく、やる気だ。これだけの設備でも……足りないかもな」
ロクは壁を見上げて言った。
ヴィクティムの腕前を軽んじているわけではないが、敵は大軍である。
この規模の都を、彼ひとりの電脳魔術で完全にカバーするのは難しいだろう。
もし万が一防衛を突破された時、戦えるのはこの都の人々なのだ。
「……それもあるけど」
匡は呟いた。
「俺たちは結局のところ、部外者だからな。"これから"を考えるなら、この方がいい」
いくつもの世界で、そこに住む人々とともに戦ってきた匡なりの考えだった。
ロクの『生まれながらの光』が、戦列を離れた兵士たちの傷を癒やす。
匡の的確な助言が、敵の物量に気圧された人々に戦う力を与える。
弓矢、大砲、あるいはこの世界ならではの術……遠間を攻める手段は多数ある。
近づかれる前に敵を殲滅するのが、防衛戦でもっとも重要なことだ。
「百発百中させろってわけじゃない。当たらなくても射つだけで意味があるんだ」
匡は、弓を手に不安げにする人々に言った。
「矢が放たれれば、敵はそれを躱すか防ぐかせざるを得ない。
馬なら一箇所に集まるだろうし、重装備の兵士なら盾なりで防ぐだろう。
そうすれば、敵は足が止まったり一塊になる。そうすれば隙が生まれるんだ」
「し、しかし……敵を留めたとて、我々にはあれほどの数を迎え撃つ方法は」
「もちろん、どうにもならないところはこっちで援護するさ」
『そういうことだ! ま、迎撃するまでもなく落とし穴にドボン、だがな』
ドローンからヴィクティムの声が聞こえた。
『どこを狙い、どう誘導するか。そいつはすべて俺が指示してやる。
こっちには最強の目がついてるんだぜ。匡の目は掻い潜れやしねえよ』
「……あんまり持ち上げられても困るけどな。まあ、取りこぼしやしないさ」
匡はにこりとも笑わず頷く。彼らなりのじゃれ合い方だ。
「だから、みんなは安心して出来ることをやってみてくれ。最初はそれでいい。
……自分たちの住む都は、自分たちの手で守りたいだろ?」
人々は言葉を呑んでうなずいた。
「ありがとうございます、これでまた戦えます!」
「うん。戦ってくれ。でも、無理はしなくていい」
ほのかな光に包まれたロクは、感謝を告げる兵士にこくんと頷く。
「猟兵は……えっと、時々……なんだっけヴィクティム」
『ここで俺に振るのかよ? いきなり言われても……あー、スパルタ、か?』
「そう、それ。そんな感じのやつ。すぱるた」
ロクはドローンにこくこく頷いた。
「戦って死ね、なんて言わないけど、でも、出来ることはやってもらう。
おれたちはキミたちを守るけど、ここはキミたちの縄張りなんだから」
縄張りを守るのは、そこに住む生き物の最低限の仕事だ。
――と、ロクは兵士たちに言った。
「向こうが来るのは、縄張りを広げるためでも、食べ物のためでもない。
あいつらは、殺すために殺す。森に広がる火みたいに、理由なんて、ない。
……だけど、負けるな。どうしようもないからって負けたら、それで、終わりだ」
理不尽にこそ抗え。声をあげろ。
森番の教えはプリミティブで、だからこそ彼らの力を引き出す。
「……あと、食べ物と酒を用意しておいてくれると、うれしい」
体力回復は大事だ。彼女の光は体力を使う。だが理由はもうひとつ。
「――全部おわったあとは、食べて騒ぐのが流儀、だろ」
ロクは、少年めいたにやりと笑った。
●激突
――BRATATATA1 BRATATATATATATA!!
「よぉーし、いいぞ! ここで弓兵は矢を放て! 連中の突撃ラインを潰すんだ!
中央に集めりゃあとは一網打尽だ。匡は左翼を、ロクは右翼を頼むぜッ!」
「ああ」
「わかった」
セントリーガンが火を吹き、匡のスナイプが敵兵を潰し、ロクの声が兵を動かす。
すべてはヴィクティムの描いた通り、不気味なほどに都合よく進む。
敵が門を突破しようと騎馬隊を前に出せば、矢の雨が馬を怯えさせる。
牧羊めいて集められた道の先にあるのは、強酸が煮え立つ巨大な落とし穴だ。
ならばと敵が弓兵隊を押し出せば、それこそ匡のいい的である。
敵が大盾を構えようが全身を鎧で固めようが、死神の目は守りを穿つ。
城壁に設えられた大砲が轟音をあげて、敵の横列を地形ごと吹っ飛ばす。
「な、なぜだ……あんな装備があるなどと、斥候の情報にはなかったぞ!」
敵の部隊長は慌てふためいた。まったくご愁傷さまというほかない。
無いものを生み出し、文明水準も何もかも自分勝手に書き換えてしまう。
それが、ヴィクティムの電脳魔術なのだから。
「……そろそろ、打って出よう。あっちは、めちゃくちゃになってる」
ロクはもぐ、と肉を飲み込むと、山刀を手に兵士たちを振り向いた。
「攻めることも、守ることだ。全部倒してしまえば、キミたちの縄張りは守られる。
……火も矢も、おれたちが切って捨てる。だから、安心して前に進め」
うおおおお……と、地を揺るがすほどの鬨の声が応えた。
敵軍があげたものではない、都の人々、兵士たちのあげた雄叫びが。
ロクは頼もしげに、そして不敵に笑い、低く伏せる。
「――行くぞ。反撃の時間だ」
かくして趨勢は逆転し、攻める側が変わり、敵軍は潰走した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『刀刃拳門下生』
|
POW : 刃化
【剣と拳を組み合わせた拳法、刀刃拳の技】が命中した対象を切断する。
SPD : 舞刃演武
自身の【体を一振りの剣に見立て、空を舞う剣】になり、【舞う様に攻撃する】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ : 鍛磨
【身を鍛え、心を研ぎ技の切れ味を磨いた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
イラスト:ばんどー
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●反撃
魏延の遣わせた雑兵を蹴散らした猟兵たちは、反撃に打って出た。
魂縛武将を討たぬ限り、おそらくこの軍勢は尽きることがない。
敵の手勢が削げた今こそが、大将首を穫れる唯一のチャンスだからだ。
当然、敵も黙って迎え入れるわけがない。
猟兵らの前に立ちはだかったのは、魏延が親衛隊めいて従えていた拳士部隊だ!
「あれほどの数の攻め手を潜り抜けてきたか、猟兵ども。まったく忌々しい!
だが、数だけが強みの兵どもと、精兵たる我らを同じに見てくれるなよ!」
どうやら連中の得物は剣である。それも、達人ほど極まった練度ではあるまい。
されど、敵兵個々のレベルは明らかに雑兵と一線を画す。
加えてこちらもやはり、姿視えぬ魂縛武将の指示のもと、まるで一個の生き物めいて軍勢が動き、攻めれば退いて退けば押すといったところ。
荒野に降り注ぐは矢に非ず、冷酷無慈悲なる剣の雨!
都の兵らの支援を背に受けて、立ちはだかる刀刃をへし折り荒野を駆けろ。
荒珠・檬果
ふむふむ、次なる敵はあなた方。
憑依させる将を変えまして。さあ、行きましょうか『司馬朗』殿。憑依させる将の中で、(現時点で)一番晋に縁深き人を。
白日珠は…そうですね、剣にしておきましょうか。
身を鍛えるというのならば、それをさせなければいい。
この瘴気はあらゆる病を起こすんですから、『眠り病』や『弛緩させる病』の疫病もあるんですよね。
あなた方は、全てを鍛え研ぎ澄ませるからこそ。だから、そのこと全てが無にきせば…ええ、成功率もなにもないですよね。
そうなったら最後。剣でトドメを刺すだけですよ。
まあもともとこのUCって、司馬朗殿の最期あたりからきてますからね…。
●次なる将、その銘・慈狼将
「……ふむふむ、なるほど。身の回りに従えるは数ではなく質、と」
寄せ手の姿を視認した荒珠・檬果は、大きな目をぱちくりさせて頷いた。
敵は直剣の扱いに卓越した精鋭だ。遠間の矢ではおそらくすべて切り払われる。
そういう常識では考えられない現象を可能とするのが、達人というもの。
連中は達人の域に到達していないとはいえ、"もどき"ではある。
「ならば――行きましょうか、司馬朗殿。推しの力をお借りしましょう!」
檬果の手にある弓が剣に変じた。白日珠の形状は変幻自在だ。
「来たな猟兵! 我らこの身を鋼のごとく鍛え、心を刃とし阻むものなりッ!」
「いい意気ですね。ですが、この瘴気の中でそんな悠長を言ってられますか!」
檬果が剣を振るうと、不可思議にも剣風は瘴気となって溢れ出た。
民にした慕われたかの武将の最期は、流行り病に見舞われたもの。
己のぶんの薬すら民草や配下に分け与えたという、まさしく慈の人である。
その逸話になぞらえたこの『禍は大気に満ちれども、恵雨あり』は、
あらゆる病を引き起こす暗く昏き瘴気によって、対手を静かに蝕む……!
いくら鍛えようと、心を細くしようと、病は生命の前に平等だ。
どんな達人でさえ、体内に巣食う病魔相手には形無しになるもの。
いわんやその途上にある精鋭では、瘴気を内息で無効化することは出来ぬ。
「な、なんだこれは……か、身体の力、が……ッ!」
あるものは血反吐撒き散らす喉を押さえ、
あるものはがくがくと白目を剥きながら泡を吹き、
あるものは指先や目から血を流して崩れ落ちた。
見るもおぞましく残酷な風景だが、戦争といはこういうもの。
檬果は効き目を目で確かめると剣を振るい、首を差し出すように倒れたそれらに慈悲の最期をもたらした。
「これ、やろうと思えば逆に恵雨を降らせることも出来るんですけどねぇ。
立ちはだかるというならば、こうするしかありません。目的はあなたたちの後ろにありますので」
ひゅん、と剣の血を払い、檬果は淡々と言った。
技巧や膂力で劣るとしても、戦い方はひとつではないということだ。
成功
🔵🔵🔴
渡塚・源誠
ここを突破すれば敵大将さんにたどり着けそうだね
さっきよりも手強そうだけど、まあ、気張らずにいかせてもらうよ
最初は【ダッシュ】と【逃げ足】で距離を取りつつ様子見
探っておきたいのは、敵さんの攻撃の間合い、脚とかでも技が出せるか
…あと、こっちの言動にのせやすい相手を一人、見当をつけておくよ
様子見の後は、見当をつけた一人を、前に出させて技を振らせるよう【言いくるめ】るね
すかさず魔法手のパンチで応戦…
…するのは【フェイント】で、アームを明後日の方向に曲げて相手さんの攻撃を回避
そのまま相手のUC解除も儘ならない位の【早業】で相手さんを掴んで、思いっきりぶん回して仲間の所に【投擲】(かえ)してあげようかな
●戦に幾重に罠を張れ
まるでフィクションの忍者が放つ手裏剣めいて、無数の剣が降ってきた。
渡塚・源誠は目を細め、ひとつひとつの軌道を予測し、最小限の動きで躱す。
これらはすべて布石であり、本命は剣を放ったオブリビオンの斬撃にある。
物量を警戒して大きく飛び退れば、そこに本体が降ってくるというわけだ。
「さすがに、さっきよりは手強いみたいだね。気張りたくはないんだけどねぇ」
源誠はあえて敵のほうへ近づく形で剣の雨を躱し、ある地点で反転する。
まんまと弾幕――いや刃幕とでも呼ぶべきか――に嵌まったように見せかけ、
敵の攻撃を引き寄せた上で回避する。言葉と裏腹に目ざとい動きだった。
「おのれ、ちょこまかと! 我らの刃を見くびるなよ」
剣を振り下ろしざまに着地したオブリビオンは、すぐさま身構え剣を向けた。
源誠はすぐに飛び込むようなことをせず、包囲されないように横に動く。
敵は四方にそれぞれ四人。陣形を組もうとするが、源誠がそれをさせない。
「見くびってるつもりはないよ。ただまあ、負けるつもりもないけれどね」
「舐め腐ったことをほざく! ええい、逃すなよ!」
源誠は軽口を叩きつつ、時折フェイントをかけて敵の迎撃を強制した。
四方の敵と常に一定の距離を取り、止まらず、そして完全な包囲もさせない。
後ろに回った敵が不意打ちを仕掛けようとしても、そもそも届かせない。
目が6つ8つもあるかのような、付かず離れずの油断ならぬ立ち回りだ。
(……さて、だいたいわかってきたかな)
そうして源誠が何を探っているかというと、ずばり敵の辛抱強さである。
現状源誠は距離を保てているが、一度包囲が完成してしまえば逃れられなくなる。
その前に敵のコンビネーションを乱さねばならない。そのために必要なのは……。
「ねえそこの君、さっきの剣の雨はすごかったね。まあ避けたんだけど」
「……!」
「もう一度試してみるかい? その剣でボクを斬れるかどうか。相手になるよ。
といっても、仲間が許してくれないかな。君ひとりじゃ荷が重そうだもんね」
「……貴様ッ!」
敵のひとりが飛び出した。源誠は薄く笑みを浮かべる。
「おい、待て! 陣形を――」
別の敵が突出を咎めようとするが、もう遅い。すでに策は成った。
敵がこちらを包囲しようとしているなら、挑発でその連携を乱せばいい。
オブリビオンは怒りのままにざんっ!! と突撃し、拳打と斬撃を織り交ぜた連続攻撃で源誠を仕留めようとする!
「我が刀刃拳を侮るなよ猟兵! うおおおおっ!!」
「おっと、これはさすがに……」
源誠は巨大化させた魔法手のパンチで、オブリビオンを迎え撃とうとした。
「バカめ! 我らの刀刃拳は攻防一体が真髄よ! 遅いわッ!」
見え透いた動きだ。敵は拳を潜り抜けようとする……が!
「はい、捕まえた」
「!?」
頭上を通過するはずの拳は、潜り抜けようとした門下生を掴み取っていた。
事ここに至って、敵はようやく己がハメられたことに気付く。
「言わんこっちゃない!」
「いや、ほんとにねぇ。ほら、そそっかしいお仲間さんを投擲(おかえし)するよ!」
源誠はひょうきんに言い、捕まえたオブリビオンを思い切り振り回す!
「う、うわああああっ!?」
「「「な――!!」」」
足並みを乱された敵は、振り回される味方"で"薙ぎ払われた。
地面を転がるオブリビオンどもに、掴んだ敵を投げつければ……あとはもう、"相殺"だ。
「あーあ、ひどい有様だねこりゃ」
派手に飛び散った血と残骸に、源誠はたいして気にした風もなく肩をすくめた。
成功
🔵🔵🔴
エコー・クラストフ
【BAD】
ん、移動ね。了解……大丈夫? 迎えに行こうか? いらない? じゃあ気をつけてね
陣形か……道理で変な形で突っ込んでくるわけだ。それなら……ボクにもいい手があるよ
【底知れぬ処の穴】
罪人を裁くこの世界で、お前たちオブリビオンがのさばる事は決してない
湧き出す鉄線はお前たちの足を絡め取り、番犬たちはお前たちに襲いかかる
狂気に侵され、罰に苦しめられる中で、いつまで陣形なんて気にしていられるかな?
さて……綻びは生まれた。出陣と行こう、エマ
既に殆どは戦力にならないが、散発的な戦力は残っていると見ていい
だが心配には及ばない。ボクには幸運の女神が……そしてお前たちには不幸の女神が憑いているんだからな
ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
まったく、うじゃうじゃ湧いてくる
エコー、そっちに移動するよ
大丈夫。俺の脚早いの知ってるだろ?モードチェンジ、『FLOW』で
不幸のお届けしちゃおうかな
昔ゆずりの戦い方ってのは
陣形ってのがあるわけよ
隊列とかもある
――そういうのを崩したら、全部おじゃんになっちゃうよね
【FAITH】
あーらら。俺が通ってったところの皆さん
おかしくなっちゃって滅茶苦茶だな
傾国の美女?いいや、勝利の女神だな
どういうわけだか俺は攻撃をなぜか避けちゃう
今日の俺はラッキーガールだからね
で、エコーのラッキーアイテムでもある
俺を連れてる限りお前も幸運!
さて、――大当たりの一騎当千、ぼろ儲けといこうじゃないの
●その女どもは地獄を生む
荒野に蔓延るは草木に非ず、萌え出て絡みつくのは鉄の茨だ。
降り注ぐのは血の雨であり、蒸気発するほどの高熱が地獄を濡らした。
「な、なんだこれは! 空が赤々と染まっている……!」
オブリビオンをして、この激変には唖然とするほかない。
連中はまだ理解していないのだ、"底知れぬ処の穴"は、もう間口を広げていることを。
「ここは罪人を裁く世界、お前たちみたいな連中には似合いの地獄だ」
鉄線が絡み合って伸びた"大木"の天辺で、エコー・クラストフは言った。
"大木"の枝はざわざわと生きた蛇めいて蠢き、そして延びる。
罪人の脚に絡みついて鉄の茨でずたずたにし、逃げられぬようにするために。
「や、奴がこのユーベルコードの元凶か! 奴を叩……がぼっ」
オブリビオンは、後ろから襲いかかった番犬に喉を噛みちぎられて死んだ。
「なんだこいつらは!?」
「言っただろう、ここは地獄なんだ。番犬だって居るに決まってるじゃないか。
ボクを殺そうとするのは勝手だが、死にたくないなら逃げたほうがいいよ」
もっとも、血の雨はどこまでも広がり続けている。
地獄の番犬は罪人を逃さぬ。つまり、どうあがいても終わりなのだ。
エコーはただ眺めるだけ。彼女が手を下す必要は、もうないのだから。
「か、身体が焼ける! 助けてくれ!」
「畜生め、狗風情が……ぎゃあああ!」
「あの女だ、あの女さえ殺せばいいんだ! あの女を仕留めるぞッ!」
まだ正気を保つオブリビオンどもが、エコーに剣を向けようとした。
……だが。
「ひ、ひひ、はははははッ!」
「うげッ!?」
陣頭指揮を執ろうとしたオブリビオンを、別の個体が不意打ちした。
そいつは狂ったように――いや、事実狂った笑い声をあげ、剣を振り回す。
まさか味方に襲われると思っていなかった拳士は、心臓を貫かれて死んだ。
「な、何を、して……がふっ」
地獄がもたらす狂気。それもある。しかし原因はもうひとつ。
「あーらら、どいつもこいつもおかしくなっちゃって、滅茶苦茶だな」
平然とした様子で駆けつけたハイドラ・モリアーティ――あるいはエマ・クラストフ――は、わざとらしくおどけてみせた。
「死ねェ、猟兵ィッ!!」
「おかしくなってりゃこっちにも来る、か。おっかないねえ」
後ろからの不意打ちは、ハイドラが避けるまでもなかった。
ちょうどよく地面から生えた鉄の茨が、オブリビオンを絡め取ってしまったからだ。
ハイドラは悶えるオブリビオンの首を一薙ぎで刎ね、振り返らず歩き出した。
地獄に蔓延る鉄線は、いちいちエコーが制御しているわけではない。
これらはランダムに生まれ、とにかく手近にいるモノを絡め取る自動的な拷問具といっていい。
血の雨は敵味方を区別しない――なのにそもそも、ハイドラは血に濡れてすらいない。
鉄線が彼女を戒めることも、敵の剣も拳も届くことがない。
狂気が伝搬するのに従って、その幸運は強化されていく。
「今日の俺はラッキーガールだ! お前の運勢もうなぎのぼりだぜ、エコー」
「向こうにしてみれば、幸運の女神どころか不幸の女神だろうけどね」
「アハハハッ! そりゃ言い得て妙だ」
狂気を与え運気を奪う。それが、ハイドラのユーベルコード『FAITH』。
地獄で罪人が救われることはない。あるのは終わりなき苦痛と恐怖だけだ。
「昔ゆずりの戦いってのは、陣形ってのがあるわけよ。もしくは隊列、かな。
……けど、こんな有様じゃ、そんなもんは全部おじゃんだよなあ。かわいそ」
「作戦を立てておいてよく言うよ。別に奴らを憐れむ気なんかないけどね」
エコーは鉄線の大木から降り立ち、ハイドラの隣に立った。
地獄は広がり、狂気は伝搬する。それでもしぶとい害虫というのはいるものだ。
「あそこらへんが"巣"かな。さっさと駆除しようか」
「ああ。大当たりの一騎当千、ボロ儲けといこうじゃないの」
かろうじて正気を保つオブリビオンどもが、群れをなしてやってくる。
エコーは無表情に、ハイドラはにたりと笑みを浮かべて、これを迎え撃つ。
その女どもは地獄を生む。彼女らに挑むということは地獄に挑むということ。
わかっていて挑むのはまったく哀れで愚かだが、連中にはそうするしかない。
「頼りにしてるよ、ボクの幸運の女神」
「たっぷり加護を与えちゃうぜぇ? ハハ」
ここは地獄であり――ふたりにとっての狩場なのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ロク・ザイオン
(市中の人々の手に負えない敵が現れたなら、ここからは己たちの仕事だ)
お前たちをこの先へは進ませない。
……うまい酒と、ごはんがあるからな。
(向こうが刃と拳で打って出るならば
己は"閃煌・烙""雷華"二刀で相手取ろう)
……流派?
知らない。
おれは、そういうものではないから。
(接近戦になるのなら「燹咬」の間合いだ
切断されるより速く【早業】で【焼却】
【薙ぎ払い】道を抉じ開けて【ダッシュ、ジャンプ】
全速力でこの群れの源へ!)
(ひとの生み出した、きれいに刀や拳を使う様)
(それは、好ましいと思うのだ)
……お前たちが、骸の海のものでなければ良かったのにな。
鳴宮・匡
都のやつらも十分に戦おうとしてる
ここからは、こっちの領分だな
【影装の牙】で武装
敷設した設備を使って都から狙撃を狙えるようなら
移動の利便性を捨てて射程を強化
打って出る必要があるなら機動力は殺せない
防御を犠牲に攻撃力を高める
いずれの場合も、捕捉されないか
されても相手からは手を出しにくい位置取りを心がけておく
生憎と戦場全体を視るのは得意なんだ
相手の意識の死角や、目の届きにくい場所
ちゃんとわかってるよ
やることは、どちらの場合でも変わらない
周囲の味方の死角をカバーすること
浮いた駒、弱った個体から落とすこと
指揮系統を担っているやつなんかがいれば優先的に墜としたいな
頭を落とすだけで、随分と楽にはなるだろうし
ヴィクティム・ウィンターミュート
おっと、多少はマシな奴らが出てきたか
そうやって戦力の出し方を間違うから、いつまで経ってもテメェらは勝てないんだよ
そら、御自慢の武とやらを見せてみな
まさかこんな悪ガキに、負けそうだなんて思ってねえよな?
おっ、それが武功の真髄か
なるほど、素晴らしいものがあるが…
はい、『運命転換』
連弾にして広範囲にかけてやる
ひっくり返しちまったよ、全部な
随分とノロマになっちまったなぁ、体調でも悪いのかい?
それとも、やっぱ悪ガキ一人相手するのも嫌だってか?
さーて、武人じゃなくてもその速度なら、首を狩れそうだ
一人ずつ、確実に 迅速にやる
おう野朗ども!弓でも撃ってな!
避けられそうも無いみてーだし、今ならフリーでやれるぜ!
ルヴトー・シフトマン
よし、この場なら天狼も十全に動ける
さっきよりは強そうですが、俺の歩みを止められるほどでは無い
いかに武を磨いたとて、一度は滅びた過去なのですから
さて、一気に戦列を崩しましょう
個人の実力もそうですが、軍勢の動かし方がしっかりしてる
乱せばそれだけ有利になるはず
敵の一人に狙いを定め、攻撃の隙をついて引っ掴む
高所からの速度と重さ、そして力を全て乗せ、軍勢のド真ん中へ飛びながら叩きつける!!
衝撃、混乱、破壊
それが場を支配してる間に、暴れます
〈崩砦一擲〉をぶん回して、自分の周囲を薙ぎ払いながら進撃
人の身には少々ヘビーでしょうが、死ぬ覚悟くらいは出来てるのでしょう?
加減するつもりはないので、全力でどうぞ
●四・傑・猛・攻
戦場は混迷していた。
「進め! 後ろに下がれば、それだけ残してきた家族が危険になると思え!」
「「「うおおおおおっ!!」」」
猟兵たちの勢いに乗り、一気呵成の攻めを見せる都の兵士たち。
「猟兵どもめ……此処から先には決して通さん! 者ども、剣を構えよ!」
「「「えェいッ!!」」」
対してオブリビオンの配下たちは、宙を舞い剣を振るってこれを留める。
数も練度もあちらが上。覆しうるのは超特記戦力たる猟兵のみだ。
「右翼に回り込まれかけてるから気をつけてくれ。死角はこっちで押さえるよ」
鳴宮・匡はその知覚力で敵の動きを予測し、兵士たちに警告した。
火力を高めた突撃銃で敵を牽制し、不意打ちを喰らわないように彼らを護る。
「多少はマシな奴らが出てきて嬉しいぜ、相手がヘボくちゃ一流の名折れだ。
が、戦力の出し方を間違えてる奴らにゃ、いつまでたっても勝ちは拾えねえよ!」
ヴィクティム・ウィンターミュートはナイフとクロスボウを巧みに操り、同時に味方の動きを電脳上で把握して、遊撃と指揮役の両方を務める。
「お前たちをこの先へは進ませない。……うまい酒と、ごはんがあるからな」
"閃煌・烙"と"雷華"の二刀を携えたロク・ザイオンは、飛来する剣を叩き落とす。
いずれも一騎当千の猟兵たちだ。その働きは一個一個が軍隊にすら匹敵しよう。
そこらじゅうで剣と剣が、あるいは弾丸が、鏃が打ち合い火花を散らす!
「……よし、この場なら天狼も十全に動ける。遅れましたが、援護に入ります!」
そこへさらに駆けつけたのは、ルヴトー・シフトマンの駆るキャバリア『天狼』だ。
5メートルの巨躯が物理的な盾となり、猛進する兵士たちを守った。
刀刃拳門下生の生み出した気の剣が弾幕めいて飛来するが、その程度で揺らぐ装甲ではない。
「なんだあれは、宝貝か!?」
「範囲攻撃も出来るのか……けど、攻撃の広さならこっちも負けてないぞッ!」
ルヴトーは武装・崩砦一擲を振り回し、スパイクホイールで地面をズタズタに薙いだ。
巻き上がった土埃が一種の煙幕めいて味方を護り、敵はたじろがざるを得なくなる。
「行くぞ、天狼ォッ! このまま突っ込んで、敵陣を打ち崩すッ!」
天狼は一気にブースターを噴射し加速、最前線に躍り出る!
「その声、ルヴトーか」
同じく最前線で大立ち回りを繰り広げていたロクは、キャバリアから響いてきた声に気づき、ぴくりと耳を震わせた。
「……ありがたいな。ヴィクティムが敷設した設備が使えないから、こっちとしては防御が少し不安だったんだ」
ルヴトーと面識のある匡は、ロクともども状況を即座に理解し、天狼の突撃に合わせて戦線を押し上げた。
「おふたりとも、失礼します! 俺のほうは気にせず、やりたいようにやってしまってください!」
「言われなくてもそうするよ。合わせられるぐらいの技量はあるだろ」
匡はそう言って、ちらりとヴィクティムのほうに視線を向けた。
「ハハッ、となりゃあ俺の出番だな。こういうカオスを調律してこその俺ってもんだからなあ!」
ヴィクティムのサイバーゴーグル上に、天狼を加えた戦場データが三次元マップとして投影される。
膨大なデータが彼のニューロンに流れ込み、解析され、支援データという形で天狼のコクピットへと送り込まれた。
「これは……! 助かります、これならもっと効果的に動ける……!」
「俺はお前らほど切った張ったが出来るわけじゃねえが、"こういうこと"なら負けるつもりはねえさ」
ヴィクティムは不敵な笑みを浮かべ、顔面ギリギリを掠めた気の剣を首を傾げるようにして避けた。
「が、突破するにはもうひとつふたつ策が要るな……ここは悪ガキらしく、悪ささせてもらおうじゃねえか」
ヴィクティムはクロスボウをしまうと、一枚の霊符を取り出した。
そしてわざと突出し、電脳魔術で声量を増幅した上で敵軍に呼びかける。
「ようノロマども、お前ら武術の真髄ってのを体得した達人なんだろ?
だったらこの俺に、その神秘のカンフーってやつを見せてみてくれよ!
それともまさか、こんな悪ガキに負けそうだなんて思ってねえよな?」
「貴様……我らの武功をナメるなよ!!」
この挑発はよく効いた。敵はざっと横列を組み、独特の呼吸法で気息を整え剣を構える。
「「「我ら刀刃拳の真髄、見せてくれる! これぞ舞刃演武よッ!!」」」
己の身体を剣に見立て、軽気功ですさまじい速度を出し空を舞う敵軍!
ざざざざざざ! と目にも止まらぬ早さで飛翔するさまは、飛仙の如しだ!
「あいつら、すごい疾いぞ。当てるの苦労しそうだ」
「俺も動きを"視"ていますが、これは……!」
ロク、そしてルヴトーは敵の驚異的なスピードに翻弄されかかっていた。
「ハッ、心配いらねえよ。こいつは素晴らしいものがあるが――そこまでだ」
ヴィクティムは人差し指と中指の間に挟んだ霊符を放った。
すると電脳魔術のコードを加えられた霊符は光り輝き、空中で飛散。
破魔の氷弾がパァン! と爆ぜ、投網めいて空中のオブリビオンを飲み込んだ!
「苦し紛れの弾幕か? この程度、見切れぬ我らでは……」
「――避けさせるわけにはいかないな」
BRATATATA! すかさず匡のインターラプトが、破魔氷弾を躱そうとしたオブリビオンを狙い撃ちにする。
匡はヴィクティムの策を知っていたわけではないが、彼の知覚力なら予兆を感じ取ることで先んじることは十分に可能だ。
「今のコンビネーションを即興で……!?」
異能により数秒先を"視"ることの出来るルヴトーでも、これほどの完璧な連携はそうそう簡単にはこなせない。ゆえに、彼は驚愕の声を漏らした。
さておき、氷弾で撃たれたオブリビオンどもは当然地上へと叩き伏せられる。
しかし氷弾の効果は、ダメージよりも電脳魔術によるユーベルコードの反転にこそあるのだ。
「か、身体の動きが、鈍い……!?」
「気の流れが乱されているのか、これは!」
体内の経絡をめちゃくちゃにされた敵軍は、乗り物酔いあるいは酩酊めいた違和感にめまいを憶えた。
「ひっくり返しちまったんだよ、全部な。体調が悪そうじゃねえか、ええ?」
ヴィクティムはことさら皮肉げな笑みを浮かべ、3人に言った。
「これでもう、連中はちょこまか飛べやしないぜ。着実に刈り取ろうじゃねえか」
「……わかった」
「はい!」
匡の援護射撃を受け、天狼とロクは並んで駆け出した。
敵軍はふたりのチャージを迎え撃とうとするが、『運命転換』におる"反転効果"は重い。決断的なその動きに対抗することが出来ない!
「おのれ……貴様ら、どこの流派か! 武人ならば名乗るがいい!」
「……流派? 知らない。おれは、そういうものではないから」
ロクはきょとんとした顔で首を傾げ、天狼を見上げた。
「ルヴトーはどうだ」
「お、俺も奴らほどかっちりとした武人というわけではないんですが……」
「そうか……ちょっと聞いてみたかったんだけどな」
なぜかしょんぼりと耳を伏せるロク。ルヴトーはなんとも言えない面持ちで苦笑した。
「! ロクさん、来ます!」
しかし彼の"ズレた"視界に、敵の猛攻が映ると、ルヴトーは警告を発した。
ロクもまた野生の勘で敵の攻撃を察し、表情を狩猟者のそれに変えて振り返る。
「「「かかれえっ!!」」」
「おれは、そう簡単に狩れはしないぞ――"此処"は、おれの間合いでもある」
迅雷じみた速度で放たれた剣戟を二刀で弾き、ロクは即座に逆手持ちに切り替えるとその刃でオブリビオンの鎖骨を同時に串刺しにした。
まるで猛虎が獲物を食い殺すかのような、型もなにもない獰猛で無慈悲な剣。
ロクは突き刺したオブリビオンを刃の熱で灼き、黒焦げになった死体を盾にすることで視界を妨げ、身を低く伏せて縦横無尽に荒野を駆ける!
「俺と天狼の突撃、止められるものなら止めてみろッ!!」
ルヴトーは未来視で知覚した敵の攻撃を装甲で防ぎ、突出した敵のひとりを鷲掴みにすると……思い切り叩きつけた!
「ぐべッ!!」
マヌケな悲鳴を上げてバラバラに飛び散った敵の死体、その無惨さが意気軒昂たるオブリビオンをすら怯ませる。
「うおおおおッ!!」
再びスパイクホイールが乱舞した。人の身には過ぎた暴力が、人ならざる過去の残骸を引き裂き、穿ち、ミンチに変えていく!
あっという間に趨勢は猟兵・兵士軍が有利となり、敵陣は一気に後退した。
「陣形を崩すな! 魏延様が到着されるまでなんとしてでも持ちこたえろ!」
ある一体のオブリビオンが、気の剣を放ちながら味方を鼓舞する。
その動きは、当然匡の死神の目と耳にはお見通しだった。
「ダメ押し、させてもらうぜ」
匡は、"影"で作り出した突撃銃をスナイパーライフルに変形させる。
普通であれば、こんな乱戦状態のど真ん中で狙撃銃を構えて、しかも身軽に動く敵を狙い撃つことなど到底不可能だ。
だが、匡の目、そして射撃能力は普通どころか異常の域をすら飛び越えている。
さらにヴィクティムの運命転換で、敵の機動力が大きく削がれた今ならば……!
「防戦に徹すればこちらに利が――ッ!?」
指揮役を担っていたオブリビオンの頭部に大きな穴が空き、後頭部から脳漿と弾丸が飛び出した。
仰向けに倒れて櫓から落下する敵は、ロクとルヴトーの撒き散らす破壊に呑まれて見えなくなる。
「お見事だな匡。こっちも"掃除"はいい調子だ」
「ああ、俺も数を減らすのに専念するよ。前は任せてよさそうだからな」
ヴィクティムの言葉に、匡は無表情で頷き、再び影の形を突撃銃へと再構成。
足並みを乱され総崩れとなった敵軍の、浮いた駒をふたりがかりで徹底的に刈り取っていく。
もはや戦いは終わっていた。これは一方的な狩り、あるいは掃除だ。
いかに優れた武術を修めた連中とて、連携を乱されてはどうしようもない。
対する猟兵たちは、即興でありながらこれほどのコンビネーションを見せている!
「おう野郎ども! 弓でも撃ってな! 今ならフリーでやれるぜ、戦功が欲しけりゃ稼ぎどきだ!」
「「「うおおおおおっ!!」」」
ヴィクティムの激に兵士たちは勢いづき、矢の雨を降らせて敵軍を追討する。
「優れた味方がいてくれると、まったく楽が出来てありがたいな」
匡は三人の姿を遠くに見つめ、ひとりごちた。
数多の戦場を生き延びた彼ですら、これほどの快勝はそうそう味わったことがないだろう。
それもまた、四人の猟兵がいかに秀でた戦士であるかを、悠然と物語っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『死者英傑』
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POW : 無尽槍兵団
レベル×1体の【精鋭僵尸槍兵】を召喚する。[精鋭僵尸槍兵]は【突】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 戦場の覇者
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【方天画戟】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ : 孤影再起
全身を【己を英傑たらしめる闘気】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:あなQ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……忌々しい」
英傑の肉体を乗っ取った魂縛武将・魏延は、馬上で呻いた。
もはや戦の趨勢は猟兵たちの圧倒的有利であり、数に任せて集めた兵士たちは半数以上が討ち取られている。
奴の周りにもいくらか精兵はいるが、それがユーベルコード使いの戦闘においてどれほどの助けになろう?
「二度も討たれるつもりはなし! 来たれ、精鋭僵尸槍兵!!」
どん! と戟の石突で地面を撃てば、地より立ち上がるは秘中の秘。
2百を超える極めつけの精鋭――すなわち死してなお魏延に従う三国時代の猛者たち――が、槍を携え現出した。
「こんなところで、儂の戦いを終わらせてたまるか。目に物見せてくれるぞ猟兵ども!
さあ、貴様らの中に儂を殺せるものが在るというなら……この首めがけて挑むがいい!!」
目を血走らせ殺気立つさまは、まさしく天下に混迷もたらす反骨の相。
戦求めて荒ぶる狂戦士の魂を、その肉体もろともに滅ぼし骸の海へと送り返せ!
荒珠・檬果
憑依させる将が動きやすいよう、真の姿へ。
ふむ、その意気やよし。妾もこの姿にてお相手いたそう。
赤兎馬を呼び出して。いこうぞ、赤兎。
赤兎『心得た』
…ところでな、妾、おぬし特効を三人ほど知っておるのじゃ。
一、孔明殿。二、楊儀殿。そして…三、此度の憑依させる将。
白日珠は長剣だの。
さて、おぬしは一度でも必要なことを言ってくれたでの。だからこそ、こう応えよう。
【吾敢殺汝】
地形を利用し、赤兎の機動力にて回り込み、さらには結界術で兵たちの攻撃をいなす。
全ては、おぬしの死角に回り込むため。
妾に攻撃しようとしても、見切りて避けよう。
闘気も見事よな…だが、当たってやる必要はないのじゃ。
●その問いは一度で十分なり
シャーマンズゴーストであるはずの荒珠・檬果は、その姿を一変させていた。
それは過去の幻影。UDCと変わった、おそらくはどこかの誰か。
「ふむ……その意気やよし。さあいこうぞ、赤兎」
『――心得た』
気高き猛将の相棒は、言葉でなく心の声によって応え、彼女を背に誘う。
互いに騎馬一体、魏延は底知れぬ気配を漂わす檬果を睨みつけた。
「あえて儂を相手に斯様な騎馬を召喚するとは……つまり儂を、この魏延をいかなる将か知った上で相対すというか、女!」
「いかにも。ゆえに妾は、おぬしに特に"効く"輩を3人ほど知っておる」
瞑目したまま、檬果は言った。
「一、孔明殿。二、楊儀殿」
名を挙げられると、魏延は鬼の如き形相で檬果をにらみつけるが、檬果は意に介さない。
「――そして、三。これより妾がこの身に憑依させる将よ」
「貴様、まさか……!」
「おぬしは問うたな。一度でも必要なことを言ってくれたでの、ゆえに応えよう」
檬果の口元に、亀裂めいた笑みが浮かんだ。
此 処 に 居 る ぞ 。
『 吾 敢 殺 汝 』
「……貴様、その気配! その魂!! おおおおおおッ!!」
降ろされたるモノの気配を魂によって察した魏延は、吠えた。
獣の如き雄叫びが地を揺らす。そして、騎馬の姿が一瞬で消える。
風のごとき、あるいは迅雷じみた速度の突撃。戟が首を刈ろうと薙いだ!
……しかし!
「見事な闘気よ。その身体だけの力ではあるまい。仮にも三国武将たる魂の力とでも言うべきか」
檬果は、悪鬼の斬撃よりもなお疾く、その懐に回り込んでいた。
「だが、当たってやる必要はないのじゃ。おぬしは魏延だからこそ、我が一撃を避けられまい?」
然り――すでに、長剣はその身を貫いていた。
「ごぼ……ッ」
檬果に降ろされたる将、すなわち馬岱。誰であろう魏延を討ったその人。
奇しくも繰り出された一撃もまた、かつてと同じ背中からの斬撃だった。
されど、その一撃が届いたのは、けして将の力あってこそのものでhない。
魏延が、己の乗っ取った英傑の肉体の力を利用していたように。
檬果もまた、赤兎馬を従え、一体となって駆け、猛将の虚を突くだけの経験と技量を有していた。
これは馬岱の勝利でもあり、同時に檬果の勝利でもある。
彼女の意気と実力こそが、三国武将を欺き、見事に超えてみせたのだ……!
大成功
🔵🔵🔵
渡塚・源誠
さてと、いよいよ大詰めだね
大将さんを倒して、都に平和を届けようじゃあないか
…それにしても、魏延が方天画戟かぁ
UDCアース育ちのボクには、ちょっとミスマッチに見えちゃうというか
まぁ、敵さんの攻撃が苛烈なことには変わりないから、ここはひとつ大盤振る舞いさせてもらうよ
基本は【ダッシュ】と【逃げ足】を駆使して距離を取るよ
さっきよりは相手に距離を詰められるのと、姿を見失うことが無いよう気を付けていきたいかな
狙うのは当然UCによる攻撃封じだよ
敵さんに悟られるのを防ぐ、かつ発動成功時の動揺を大きくする為に、
攻撃を避けるのに精いっぱいっていう【演技】しながら、必要な攻撃を小出しで、方天画戟を狙って当てていくね
●微笑みの裏に己を隠し
どうやら魏延に憑依された英傑は、方天画戟を巧みに操る猛将だったらしい。
UDCアースの史実としての三国志を知る渡塚・源誠は、少々違和感が拭えなかった。
「あんたの武器はそっちじゃない気がするんだけどねぇ……それとも、こっちの世界の史実ではむしろそれを使ってたのかな?」
「何をたわけたことを、戦場ぞ! ほざく余裕があるてか、若造めッ!!」
魏延は恐るべき速度で方天画戟を振り回し、源誠の首を刈りに来た。
彼の知る武将と細部は異なるとしても、それは紛れもなく三国を生き抜いた将。
肉体の精強さもあって、スピードも膂力も決して油断ならない強さだ。
「おっと……! やれやれ、これじゃあそう簡単に近づけそうにないなあ」
源誠はうそぶきつつも、決して間合いを詰めさせないように小刻みに駆け回り、緩急をつけた動きで敵の間合いを狂わせ魏延を苛立たせた。
まるでちょこまかと動き回るネズミのような立ち回りに、魏延は怒りを募らせる。
「どうした小僧、怖気づいたか? この儂に勝てぬと怯え竦んだか!」
「まあ、なめているつもりはないよ。そもそもボクは根っから臆病なものでね。
戦場に生き、戦場に果てた武将さんからすれば、気に食わないのも当然さ」
「また戯言を……! その首を叩き切って黙らせてやる!!」
ぶん、ぶおん! と、空気を切り裂いて薙ぎ払われる方天画戟。
源誠はその攻撃のスピードと、敵が振りがちな角度をつぶさに観察していた。
無論源誠も、何の策もなしにちょこまか逃げ回っているわけではない。
まるで精一杯というような演技をしながら、微笑みの裏に己を隠している。
「もういい加減に飽いたわ……! ここで終いだ、小僧ッ!!」
痺れを切らした魏延が、ひときわ大きく一歩を踏み込み方天画戟を振り上げた。
回避を許さぬ確実な処刑斬撃。そこに生まれた隙こそが源誠の待っていたもの!
「こいつは避けられそうにないねぇ……だから、こうさせてもらうよッ!」
「!?」
魏延の死角から放たれた金属札が、かきん! と方天画戟に突き刺さった。
「何を小賢しい真似を、この程度――!?」
魏延は困惑した。振り上げた方天画戟を、振り下ろすことが出来ぬ!
「な、これは……!」
「気付いてなかったのかい? 逃げながらボクが魔糸を張っていたのを」
よく見れば、方天画戟の柄には細い魔糸ががっしりと絡みついていた。
魏延は力任せに引きちぎろうとするが、そう簡単に裂けるほどやわではない。
「その武器はおっかないからねぇ。封じさせてもらったよ」
「き、貴様……!!」
「――で、ボクはすでに、ナイフも抜いてるわけだけど」
源誠の手は空だ。ならば、すでに放たれたナイフというのは!
魏延は咄嗟に背後を振り向いた。
だが魔糸で操られたナイフは、上と下から虎の牙めいて魏延の身体を貫く!
「が……ッ!?」
源誠はくすりと微笑む。その目元は帽子で隠れて定かならない。
臆病者を演じながら、必殺の布石を打つ。それが、猛将さえ欺く源誠の策謀!
大成功
🔵🔵🔵
ロク・ザイオン
(向こうが咆えるのなら)
────ああァァアアア!!!
(【恐怖を与える】耳障りな【大声】で
獣のように喧嘩を売ろう
向こうの目が此方に向けば尚良し!)
どんなに闘気を纏おうが、お前は古い屍だ。
お前の戦いは、とっくに終わっている。
……おれは、そういうものを、土に還す森番だ。
(「不落」
己は番人。既にこの地は己の縄張りだ
致命傷のみ【野生の勘】で躱しながら
一歩と退かずに【早業】で斬り込む
目障りな己に気を取られるのなら────隙を突ける仲間は、この戦場に幾らでもいるだろう)
首を取るのは誰かひとりじゃない。
おれたち猟兵も。街の者も。
ここに生きる全てが、お前を殺すよ。
ヴィクティム・ウィンターミュート
そんなに逸るなよ
いい年こいてみっともないぜ?
ちゃんとここにいっからさァ
お先に遺書でも書いておいたほうがいいんじゃない?
待っておいてやるよ
……ハッハー、怒ったかい?んじゃ、やろーか
受けて立ってやるよ、英傑殿
すげぇ闘気してるじゃねえか
あいにく俺は卑しい獣なもので、これしか無いんだが……『Hyena』
奪ってやるぞ、全部をな
ナイフを二刀にして接近戦
魏延の攻撃は【見切り】と【早業】で受け流す
今の俺の防御能力は高い上に、打ち合えば戦闘能力を奪い取れる
長くなるほどに俺が優位に立てるわけだ
さらに隙を晒せば、俺の腕がさらなるものを奪うだろう
武器もユーベルコードも、俺の物にしてやるからさ
存分に殺し合ってみようぜ?
ルヴトー・シフトマン
儂を殺せる者、か
此処に居るぞっ!!
俺とこの天狼が、お前を再び地獄に落とす
名のある武人であろうと、現在を侵すのであれば怨敵とみなす
我が名はルヴトー!誇り高き狼の頭である!
お前は強い その闘気を感じれば嫌でも思い知る
だが俺を打倒にするには足りない
────『殺界』
若造と侮るなよ この重圧に、抗えるか
王に抗えるかッ!!戦士よッ!!
<烈震砕牙>の柄を伸ばす
なるほど…方天画戟のように使ってみようか
圧倒的質量を武器に、パワーとスピードで押し切る
この重圧に抗っても、俺はお前の2秒先を視ている
故に弾く、避ける、突破できる!
傷を負えば強くなると言うのなら、渾身の一撃で終わらせるまで
フルスロットルで振りかぶるッ!
鳴宮・匡
さて、ようやく道が開けたか
狙うのは首魁一人だ
どうあれそいつを落とさなきゃ、終わりはないわけだからな
とはいえ、邪魔をされるのは巧くはない
射線上にいる敵や、こちらの妨害へ向かってくる敵は排除
その時に必要であれば、他の猟兵の支援も行うよ
その間も首魁から意識は外さず、好機の到来を待つ
攻撃の挙動から、目線の動き、呼吸のひとつまで逃さずに観察し
必要なら射撃での牽制を交え
避け得ない一瞬を作り出す
……ひとつ勘違いしてるようだけど
お前の戦いはもう、終わってるんだよ
世界に焼き付いたただの残骸には、もう一度、なんてない
――だから終わらせてやるよ
【終の魔弾】は、お前の滅びを逃さない
影さえ残さず、潰えてもらう
●流血死闘
「ぬおおおおおッ!!」
がぎん!! と、方天画戟と巨大なヒートハチェットがぶつかりあった。
余剰エネルギーが魏延の足を通じて地面に伝搬し、ばごん!! と地面がひび割れる。
驚くべきことに、魏延は己の身の丈ほどもあるハチェットの威力に耐えた。
それどころか目を血走らせてハチェットを押し返し、ぐるんと方天画戟を構える!
「ぐ……ッ!」
天狼を駆るルヴトー・シフトマンは、強烈な衝撃を歯を食いしばってこらえた。
2秒先の未来が見える――方天画戟による、コクピットを狙った追撃。
「若造が……串刺しにしてくれる!」
「若造と侮るなよ、戦士よッ! 我が名はルヴトー! 誇り高き……狼の、頭だァッ!!」
ルヴトーは強引に機体の体勢を立て直し、ハチェットで刺突を受けた。
キャバリアをして吹き飛ばされかねないほどの威力が、みしみしと大気を震わせる。
魏延は追撃を――仕掛けない。血走った目が背後を振り返った。
「おっと!」
横薙ぎに振るわれた方天画戟を間一髪回避し、背後に忍び寄っていた影……ヴィクティム・ウィンターミュートはナイフを晒しておどけてみせた。
「目ざといな。それも武将のカンってやつかい? 厄介だねぇ、英雄殿」
「ぬうんッ!!」
「ハ! 凄まじい闘気じゃねえか、だが俺は捕らえられないな……!」
二度、三度。追い打ちの横薙ぎを躱し、ヴィクティムは大きく距離を取った。
入れ替わりに飛び込んだのは、獣じみて牙を剥き出しにしたロク・ザイオンである。
「――ああァァアアアアッ!!」
恐怖を与える耳障りな大声が大地を揺るがし、逆手に構えた刃が猛獣の牙じみて魏延の首を狙う。
魏延は刺突をあえて肩で受けることで致命傷を回避し、ぐるりと一回転させた方天画戟の石突でロクの鳩尾を突いた。
だが、ロクは離れぬ。突き刺した刃で抉るように力を込め、刃が赤熱して魏延の体内を灼いた……!
「ぬう、ううう……!! 槍兵ども、援護せいッ!」
地面から立ち上がった屍人兵士どもが、ロクを引き剥がそうとする。
ロクは咄嗟に傷口から刃を引き抜き、大気焦がす円弧を描いて敵を圧倒した。
魏延は自由になり、傷を筋肉の緊張で強引に塞ぐと、方天画戟を振り上げる!
しかし、振り上げられたそれが降ろされることはなかった。
「! 小癪なッ!!」
鳴宮・匡による射撃だ。攻撃前の一瞬の隙を狙った、見事な狙撃だった。
魏延は片腕を盾めいて掲げて銃弾を受け、常人であれば心臓が停止しそうなほどの形相で遠間の匡を睨む。
「もはや、儂は背後から不意打ちで殺されたりはせんぞ……!!
この新たな身体で戦乱を呼び込み、今度こそ己の戦いを貫いてくれるわ!」
「……ひとつ勘違いしてるようだけど」
匡は自分に突進してくる屍人兵士の刺突を躱し、横っ飛びに屍人兵士の頭部を撃ち抜くと、照準を魏延に戻して言った。
「お前の戦いはもう、終わってるんだよ。世界に焼き付いたただの残骸には、"もう一度"なんてない」
「黙れッ!! 我は此処にあり。死してなお黄泉帰ったことこそ、再びその名を轟かせよという天の采配に違いなし!」
「そうやって武力で覇を唱える時代は、とっくに終わったんだ」
魏延が騎馬にまたがり、匡めがけて猛烈なチャージを仕掛けた。
匡は冷静に騎馬の前足を狙撃し、馬体を崩させ、横にわずかに動くことで方天画戟の斬撃を躱す。
「ええい、小賢しい!!」
「だから、俺たちが終わらせてやるよ。お前の生も、その叶わない夢も」
魏延は匡を間合いに捉えていたが、やはり追撃は出来なかった。
ヴィクティムとロクのインタラプトである。合わせて三刀の刃が、立ちはだかる屍人兵士をまっぷたつに切り裂きながら迫る!
「そんなに逸るなよ、いい歳こいてみっともないぜ英雄殿!」
「邪魔を、するなッ!!」
「そうもいかねえ。あいにく俺は卑しい獣なもんでな」
ヴィクティムのナイフと打ち合うたび、己の中の活力が「奪われて」いるのを魏延は感じていた。
それがヴィクティムのユーベルコードによるものであることは、確認するまでもない。
「匡も言ってる。お前は、どれだけ強かったとしても、古い屍だ。
もう終わった戦いを、おれは認めない。おれは、お前のようなものを、土に還す森番だ……!!」
戦闘者の熱と熱がぶつかりあい、空気は飴のようにどろりと濁った。
この立ち回りに割り込んだ屍人兵士は、バラバラのクズ肉に変じて野ざらしになるがさだめ。
しかして魏延もさすがは猛将か、傷つき疲弊すればするほど、むしろその力は逆に増しているように思えた。
「……認めてやるよ、魏延。お前はたしかに強い。名だたる武将なだけはある」
ルヴトーが言った。
「だがッ! 己の領分を定めず、現在を侵す者を、俺たちは認めない!
名のある武人だろうと……いや、だからこそ、全身全霊で地獄へ落とす!」
「出来るか! 若造どもが! この儂を殺せると言うか!?」
四人はそれぞれに言った。
「ああ、此処に居るぞッ!!」
「おれは、そのためにここへ来た」
「存分に殺し合いをしようじゃねえか」
「影さえ遺さず、消えてもらう」
闘争の空気が張り詰め、限界を超え、どこかで破裂音が響いた。
魏延は獣そのものの雄叫びをあげ、死の旋風めいて方天画戟を振るう!
「おおおおおッ!!」
「ボロボロの有様でよくやりやがる――けどよ、隙だらけだよなァ!」
ヴィクティムは、荒れ狂う嵐をこそ掻い潜り一撃を撃つことを得意とする。
方天画戟の薙ぎ払いを潜り抜け、ナイフが×字に猛将を切り裂いた!
「がは……!!」
簒奪の力が、魏延の身体から活力を奪う。攻撃の勢いが削がれた。
「おれだけじゃない。おれたちも、街の者も、ここに生きるすべてがお前を殺すッ!!」
想像を絶するほどの闘気を切り裂いて、ロクの鋼の牙が再び煌めいた。
上から下へ放たれた剣閃に遅れ、どばっ!! と大量の動脈血が吹き出す。
滝のような量の血を浴びて、ロクの青瞳は炯々と輝いていた。
「小娘ェ……!!」
「おれは森番だ。けど、お前の敵はおれだけじゃない」
魏延は隙を晒した――さきほどのとは違う、防御しようのない隙を。
ロクとヴィクティムが切り開いたそこに、匡の影の魔弾がするりと入り込んだ。
まるで計算され尽くした彫刻、あるいはジグソーパズルめいて、積み重ねた必然の末の滅びが来る。
「開いた道は、無駄にはしないさ」
破滅の因果引き寄せる弾丸が貫いたのは、奇しくも魏延がかつて馬岱に斬られ、そしてその霊を憑依させた女が貫いた傷口でもあった。
魏延はぞっとするような量の血を吐き出す。無防備だった。
傷の重さもある。収奪の力もある。滅びの因果によるものも、ある。
だが魏延を動けなくさせていたのは、王狼の放つすさまじいプレッシャー。
「俺は、お前の2秒先を視ている――過去に執着するお前では見れない未来を」
赤熱するハチェットが、大きく振りかぶられた。
「……猟、兵……!!」
呪うべき天敵の名を、猛将が呟いた。
そして誇り高き狼の牙が、ぞぶりと英傑の身を裂いた。
過去を踏みしめて歩く者どもの意地が、過去を繰り返そうとする残骸へ届いたのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エコー・クラストフ
【BAD】
死体の軍勢ねぇ。死体仲間としてシンパシーを感じないでもないが、邪魔になるなら殺すしかないな
エマと共にしばらく軍勢からの攻撃の回避に専念。大丈夫、エマのことは何があっても守るから
当たってしまいそうな攻撃はこちらの剣で弾いておく
お前は肉体に憑依した魂のオブリビオンだったな
なら新たな技の実験台にちょうどいい
【Σκότωσε την Ψυχή】
魂を削り取る一撃だ。海より来たる生命の力が、肉体を残して魂だけを攻撃する
生命の力を振るう死体というのもおかしな話だが……ボクは死体である前に海賊でね。海はボクにとっての味方なのさ
さあ。仲間が沈んだ冥海へと、後を追うがいい
ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
あンまり嬉しくねェ光景だなぁ
いやー、なんか死体の軍勢相手ってフクザツだよ
スヤスヤ寝てたいだろうに
お喋りターンだけど攻撃はかわすよ。FLOWで曲芸みたいにね
エコーの腕掴んで引き寄せて二人一緒に跳んじゃう
ひゅーう、馬鹿力
お名前に違わぬ素晴らしい腕前ってやつ
油断してるんじゃないよ、結構ビビってる
息を忘れちまいそうだから喋ってるだけ
あと、時間稼ぎ
跳んで跳ねてウサギごっこしてるわけじゃない
一番高く跳んで、軍勢をできる限り見下ろす
エコー、手を放すぜ
準備はいい?
さて、――冥海へご案内
【Ἀποκάλυψις】!
戦場から僵尸を一旦消し飛ばしたら
あとは処刑人の出番だ
夢の終わりを見せてやるよ、魏延
●魂縛独刀
死してなお魏延に従う彼らは、ひとりひとりが勇猛な戦士だったのだろう。
もはや彼らは言葉を発することさえなく、あるじの命に従い淡々と殺すのみ。
「……死体仲間としてシンパシーを感じないわけでもないけど」
エコー・クラストフの声に、抑揚はなかった。
「邪魔するなら、殺すしかないな」
彼女は、立ちはだかる敵を相手に感傷を抱くことなどないからだ。
「あンまり嬉しくねェ光景だよ。死体だってスヤスヤ寝てたいだろうに」
そんな死人(デッドマン)を伴侶とする女――ハイドラ・モリアーティの台詞は、はたして皮肉かまったき本心か。
言いつつもふたりは屍人槍兵の槍を躱し、騎馬を叩きのめし、決して軍勢に呑まれぬよう軽妙に立ち回った。
「エコー、跳ぶぜ!」
「うん」
ハイドラはエコーの腕を掴み、抱きしめるように引き寄せて、地を蹴った。
まるでライムライトに照らされ踊るダンサーのように、あるいは風に乗る曲芸師のように。
ふたり揃って屍人どもを飛び越えて、ぐるんと回って身をひねり、穂先を躱し、突き出された槍の柄を足場にひょいひょいと駆け抜ける。
「ハハ! いいリズムだ、楽しくなってきた!」
「あんまりはしゃいだら怪我をするよ、エマ」
「心配いらないッて。エコーが護ってくれンでしょ?」
「それは、もちろん」
ハイドラを狙う槍はエコーの剣が弾き飛ばし、決して触れさせない。
まるで見えない巨大な壁があるかのように、ふたりは槍衾のなかで無傷で、自由で、そして見た目以上に結びついていた。
ふたりの目指す先は、軍勢に守られた最中心――すなわち、魏延である。
「ワオ。あれでまだ立ってんの、すげェね」
ハイドラが思わずそう揶揄するほど、魏延の有様はすさまじかった。
屍人であるはずの兵士たちのほうが、まだしも見た目はまともなほどである。
全身におびただしい戦傷を浴び、身体中の血を流して、まだ立っている。
そしてその目。形相。戦いを諦めた者の顔ではなかった。
「……儂を殺せるものは、あるか」
魏延は地獄の底から響くような声で言った。
「儂を! 殺せる者は! あるかッ!!」
ぎらりと双眸が光を発し、壊れかけた方天画戟が力任せに振るわれた。
間合いに飛び込もうとしていたハイドラは、コミックめいて両足でブレーキを踏み身をかがめ、胴体両断間違い無しの猛烈な斬撃をかろうじて躱す。
「ひゅーう、馬鹿力。お名前に違わぬ素晴らしい腕前ってやつ?」
まるで油断しているような言葉だが、ハイドラは決して相手を見くびっていない。
三国を生き、戦場に果てた武将。英傑の身体が合わさればそれは無双となる。
それでもハイドラが軽口を叩いて飛び跳ねるのは、時間稼ぎのためだ。
エコーの腕を掴んだまま、踊るように身を跳ねさせて、一度ステップを間違えればおしまいのダンス・マカブルに酔いしれる。
「殺せるものがあるか、か。もう一度死んでるだろうに」
「そいつは言わないお約束だろ――それで、エコー? 準備はいい?」
ふたりの視線がお互いだけを写した。
周囲は屍人に囲まれ、逃れる道はなし。もう曲芸飛行は許されまい。
鬼気迫る魏延の斬撃は、一撃ごとにふたりの動きに追従している。
「ああ」
「じゃあ、手を放すぜ」
ふたりの腕が、離れた。エコーのガラスめいた瞳が鬼の形相を映し出す。
「ボクは戦士じゃない。そして死体でもあるが、それ以前に海賊なんだ」
呪剣を構える。方天画戟が、エコーの脳天めがけて突き出された。
同時に屍人兵士。ふたりを槍衾にしようと矛を構える。
しかし、それらは消えてしまった。
出し抜けに足元に生えた竜の牙が、まるで手品みたいに奴らを飲み込んでしまったのだ。
「30秒経過だ。冥府へご案内してやるぜ、団体さん」
竜の牙は慈悲でもあった。もう戦わなくてよいのだと。
牙が屍人を噛み砕く――血と肉の残骸が飛び散り、酸鼻な光景の中でハイドラは目を輝かせていた。
その瞳は、エコーの姿だけを映している。
「儂は、死なぬ……!!」
「もう死んでいるんだよ、お前もボクも。だからお前は、もう冥海に還るがいい」
呪剣は方天画戟を弾き、その柄をレールのように利用して刺突を繰り出した。
肉を抉るのでも、骨を断つのでも、心臓を貫くのでもない。
海より来たる生命力と魔力でもって、魂のみを打ち砕くデッドエンド。
狙い過たず剣は胸部中央を貫いて、魏延は目を見開いた。
「…………ああ、そうか」
魏延の足元に竜の牙が生まれる。
「儂の夢は、とうに終わっていたのか」
魂を砕かれた残骸は、部下たちの後を追うように闇へと沈んだ。
「……終わりだな。実験台としてもちょうどよかった。この技は使い勝手がありそうだ」
呪剣で血を払い、エコーは言った。
そして彼女が振り向けば、ハイドラは――エマは、にこりと微笑み言った。
「かっこよかったぜ、エコー」
「ん」
終わっていた夢がまた終わり、その先に続くのは生者たちの時間。
片割れが屍人とて、前に進む意志を持つならばそれは例外ではない。
彼女たちの旅路は、こんなところでは終わらないからだ。
大成功
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