流し悪魔はじめました
●こおりのあくまの日記
○月○日。
対魔界の住人用の氷のデスゲーム、流し悪魔が完成したわ!
落ちたら死んじゃう高さの空中に作った、氷の滑り台と氷のブロックだけを通らない限り抜け出せない空間よ。宝の噂でも流して、ここに魔界の住人を呼び寄せ、閉じ込めて殺しまくってあげる。
○月△日。
早速、デビルスケルトンが1匹かかったわ。
氷の滑り台を曲がり切れずに落ちていったのは、滑稽だったわね。
○月◇日。
今日はデビルスケルトンを3匹閉じ込めてやったわ。
何故か初見で槍で勢いを殺すことを思いついたみたいだけど、結局スピードが足りなくて、氷のブロックに飛び移れないで落ちて人型の穴になったわ。ざまあ。
○月@日。
今日は10匹も落としてやったわ。
でも変ね。何で日に日に、デビルスケルトンが増えてるのかしら? あいつら、こんなに数が多かったっけ? まさか流し悪魔から脱走してるとか?
いいえ。そんな筈ないわ。流し悪魔が滑るように水を流してるから配水管は外に通じてるけど、あんなところ通れない筈だもの。
それに、落ちたら死ぬんだし。死んでるわよね?
○月$日。
見ちゃったわ。落ちたデビルスケルトンが、人型の穴から這い出てくるのを。何であの高さで落ちても死なないのよ。あいつらおかしい。
しかも繰り返し来てるみたいで、もう数えるのも面倒なくらい押し寄せてきてるし、だんだんと流し悪魔のゴールに近づいてるのよね。
こうなったら、流し悪魔をもっと危なくバージョンアップして……2つめのステージも、急いで作らないと行けないわね!
●致死率ほぼ0%でもデスゲームと呼ぶのだろうか
デビルキングワールド。
魔界とも呼ばれる世界の住人である悪魔達は、結構強い。
どのくらい強いかと言うと、オブリビオンの中には、悪魔達と直接戦うのを避けて、悪魔達を閉じ込めて惨殺するためのデスゲーム会場を作ると言う、一計を案じるものが出て来るくらいだ。
「その1人、こおりのあくまが作ったのが『流し悪魔』と言う、氷のデスゲームだ」
ルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)が集まった猟兵達に告げたそのデスゲームは、その名の通り悪魔が流される。
空中に浮かぶ、ウォータースライダーのような氷の滑り台と氷のブロック。
氷の上を流されつつ、滑り台からブロックへ、ブロックから滑り台へ飛び移るのを繰り返さなければ抜け出せない。
滑り過ぎて飛び出したり、飛び移れなかったりしたら、落ちるのみ。
セーフティネットなどない、デスゲーム。
デスゲームの筈だった。
「でも、その程度じゃ彼らは死なないんだよね」
これが他の世界の住人だったら、デスゲームになっただろう。
だが悪魔達は死なない。それどころか、こおりのあくまの想定外の所から脱走し、仲間を呼んで戻って来る始末である。
これ、介入する必要ある?
「理由は2つあるよ。まず1つは、悪魔が死ぬ可能性もなくはない」
こおりのあくまの方も必死だ。
最初は真っすぐな滑り台のみだった『流し悪魔』も、曲がりくねった危険度の高い滑り台に作り替え、数も増やし後ろに戻ってしまう滑り台も作り、ブロックの上も雪玉が飛んでくるNOT安全地帯にするなど、何とか悪魔達を仕留めようとしている。
「それがまた、悪魔達のリピーターを呼んでるんだけどね」
高過ぎぃ! 危険度パネェ!
勢いつき過ぎて殺意を感じる! ワルい!
進んだと思ったら元の場所に戻っていた! ズリい!
だからみんなで楽しもう!
と言った具合である。エスカレートする内に、本当にデスゲームになってしまう可能性も一応、なくはない。
「で、もう1つの理由なんだけど。正直、面白そうじゃない?」
おい。
「流し素麺の、素麺の気分を味わえるかもしれないよ」
味わいたいかぁ? それ。
「まあそんなわけで、適当に悪魔達を蹴落としながら『流し悪魔』を突破して、こおりのあくまを倒してきて欲しい。文字通り蹴落とす程度なら、悪魔達、死なないからさ」
などと、しれっと言いながら、ルシルは転移の準備に取り掛かるのだった。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
そろそろ素麺が美味しい季節が近づいていますね。
流し素麺は食べたことないですが!
今回はデビルキングワールドで、オブリビオンが作ったデスゲーム……今のところ誰もデスしてないけどデスゲームを突破して、オブリビオンを倒すお仕事です。
1章の冒険は、流し悪魔です。氷のウォータースライダーと氷のブロックが空中に浮かんでいるスリル満点のアスレチック的な空間です。一応デスゲームです。適当に悪魔を蹴落としつつでも、悪魔そっちのけで楽しんでもいいので、突破してください。
2章は集団戦ですが、相手はオブリビオンではありません。魔界の一般住人です。ここまで残った住人を、死なない程度に蹴落とすステージです。
3章はオブリビオン戦です。
プレイング受付は、6/28(月)8:31~とさせて頂きます。
締め切りは、今回も別途告知します。
再送は人数と状況でお願いすることもあるかもしれません。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 冒険
『立体迷宮』
|
POW : 段差や奈落の向こう側まで味方をぶん投げる
SPD : ジャンプ力もしくは何らかの飛行能力で段差や奈落を越える
WIZ : マッピングを行い、迷路の構造を把握する
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鬼頭・黎
……オレがよく知っているデスゲームとは、何だか様子が違う気がするんですが。この世界の悪魔達だからでしょうか……?
でも今後大きな被害が出る可能性もありますし攻略しますか
氷上で滑らないように、あらかじめ滑り止めがついたブーツを履いておく
【クロックアップ・スピード】で反応速度やスピードを上げて、タイミングよく足場に飛び移ったり、可能なら最短コースで駆け抜けていきます
足場の距離に応じてジャンプも調節していきます
もし勢いが付きすぎたら、持っている武器を氷に刺すなどして弱めましょうか
できるだけ悪魔達は避けていきますが、どうしても避けられないようなら蹴落とします。……運が悪かったと思ってもらいましょう
●最初の踏破者
(「踏み切りが早すぎるような」)
氷の上でデビルスケルトンが膝を沈めるのを見た瞬間、鬼頭・黎(薄明に羽ばたく黒翼・f16610)は思わず胸中で呟いていた。
「やっぱ届かねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
数秒後、黎が予想した通り、氷のブロックに届かなかったデビルスケルトンは空中で行き場を失い、成す術なく真っ逆さまに落ちていった。
「うわ、また落ちた」
「やっぱ容赦ないなーここ」
「だが、それが良い!」
同族が落ちたと言うのに、黎の前後から聞こえる声に悲惨さはない。むしろ、そんなコースの危険さを楽しみにしているものばかりだ。
(「……オレがよく知っているデスゲームとは、何だか様子が違う気がするんですが」)
この世界の悪魔だからだろうか?
きっとそうだろう。
だってズドンッと響いた落下音の中に、黎はポキッと言う何かが折れたような小さな音が混ざっていたのを聞いた気がした。
「おいおい、オマエ肋骨少し折れてるぞ」
「お前だって、頭蓋骨にヒビいってるじゃねーか」
それが気のせいではないと示すような会話も、ちらほら黎の耳に届いている。
デスゲームである事は、間違いないのだ。
多分。
「っと」
氷の上に乗るなり、ツィーッと滑った足元に黎は咄嗟にバランスを取り直す。
黎は底に滑り止めのついたブーツを履いていたが、水も流れている氷の上では、完全に滑らないというわけにはいかなかった。
とは言え、それだけならバランスを取ればなんとかなる。
問題は、デビルスケルトン達だ。
「うぉぉっ、滑るっ! 滑る!」
「おいバカ捕まるんじゃねえ」
「止まるな、邪魔だ!」
1コースに1人ずつなんて、お行儀の良い滑り方をしている筈がない。
今も黎の進む先には、3人のデビルスケルトンが互いに足を引っ張り合っていた。はっきり言って、邪魔だ。
「仕方ない……これ、疲れるんですけどね」
氷の上を滑りながら、黎はパチンッと一つ指を鳴らした。
その音が、動作が。
黎の中の何かを切り替える。
クロックアップ・スピード。
「お先に」
「なっ、速……!」
高速戦闘モードに入った黎は、邪魔なデビルスケルトン達を追い越して、目にも止まらぬ速度で氷の上を駆け抜けていった。
足元が滑る前に次の一歩に進んでいれば、氷の上を滑らずに走る事も出来る。爆発的に増大したスピードと反応速度なら、そんな芸当も可能だ。
「氷の上を……走ってるだとぉ!?」
「あ、おいバランスを崩すなぁぁぁぁぁ」
驚いたデビルスケルトンがバランスを崩していたような気もしたが、それで落ちてしまっても不可抗力と言うものだ。
(「……運が悪かったと思って貰いましょう」)
黎は胸中で呟いて、氷の道を駆けていく。
何人ものデビルスケルトンが落ちていった大きく弧を描くカーブは、その手前で道の外に飛び出す事で、カーブ自体を避けて最短を駆ける。
下り坂にも最速で真っすぐに駆け込んで――ダンッ!
デビルスケルトン達よりも強い踏み込みの音を響かせ、黎は跳んだ。
氷のブロックまでの飛距離は充分。
「駄目だ! ありゃあ、勢いがつき過ぎてて……滑って落ちるぞ!」
デビルスケルトンの誰かがそんな声を上げると同時に、空中の黎の手元で蒼く静かな月光を思わせる神秘的な輝きが閃いた。
ザリィィッ!
着地と同時に黎が氷に突き立てた光の短剣『Blue moon』が、氷を削る音が響く。それで幾らか速度が和らいだ短い時間で、今の黎には充分だった。氷のブロックを蹴って、次のコースに飛び移るには。
そうして、黎はデビルスケルトン達が逆立ちしても出来ない速さで、空中の氷の道を踏破してみせたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
悪魔と協力するって選択肢ははなから無いのね!?
じゃあ真正面から突っ切るわ!!
うらあああああああ!!(下り滑り台を全速ダッシュでひた走る魔女)
悪魔が邪魔してくるなら片っ端から属性魔法で爆破しつつ
曲がりくねった道はそのまま飛んでショートカットできる所はショートカットして減速がどうしても必要なら足場氷じゃ難しいし悪魔を踏みつけて何とか曲がるわね!
氷ブロックへのジャンプまでに適当に悪魔を一匹焦がして首根っこ掴みつつダッシュして気合いと怪力でオラアアッ!って氷ブロックに投げつけて氷に突き刺すか氷の上にビターンさせてそこに着地するわよ!どこかで落ちそうになればUC使用よ!雪玉は悪魔を盾にすればいいわね!
●※他の世界でやってはいけません(その1)
「一応聞くけど……アンタ達、私達に協力する気ってあるの?」
「あるわけない!」
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の問いに、デビルスケルトン達から力強い答えが返ってきた。
「協力プレイなんて、良い子のする事じゃないか!」
協力して障害を乗り越えると言うのは、この世界的に、悪魔らしくないようだ。
これはもう、どうしようもない。
「そーゆーことなら、真正面から突っ切ってやるわ!」
色々諦めたフィーナは、声高に宣言し――。
「うらあああああああ!!」
下り坂スタートのコースに、全速ダッシュで飛び込んだ。
「「また氷の上を走ってるー!?」」
いきなり氷の上を走り出したフィーナに、驚くデビルスケルトンさん達。
「だが、さっきの人ほど速くないぞ」
「どう言う事だ!?」
それほど速いわけではないフィーナの走りに、デビルスケルトン達が、不思議そうにカタンと首の骨を傾けた。
秘密は、フィーナの足元にある。
デビルスケルトン達からは見えていなかっただろうが、フィーナの足元は、小さな魔法陣が浮かんでいた。
魔法陣足場――フィーナが走っているのは氷ではなく、乗れる魔法陣の上。だから滑り易い曲がり角も、氷のブロックまでのジャンプも無視して、最短で真っすぐに何もない空中を悠々と走り抜けていく。
だがそんな魔法陣も、連続で展開できる数には限界がある。
その限界が、折しも2つ目のカーブで訪れようとしていた。
「ちょっと、背中借りるわよ!」
「お、俺を踏み台にしただとぉ!?」
しかしフィーナはそこら辺にいたデビルスケルトンを躊躇なく踏みつけ、再び魔法陣足場を展開し、その上を駆け抜けていった。
更にしばらく進んだ所で、フィーナは足を止めた。
しばし、魔法陣足場の上で考え込むように腕を組んでいたかと思うと、何か思いついたのか、ニヤリと笑みを浮かべて愛用の杖を構える。
「ほいっ」
「ぐはぁっ!?」
そして、手近なデビルスケルトンの背中にフィーナの炎が炸裂した。
「な、何故……」
衝撃で意識を失って崩れ落ちるデビルスケルトンの首根っこの骨を、フィーナの手がむんずと掴んで止める。ほんのり焦げてる程度で済んでいる辺り、これでも火力は抑えたのだろう。
「お、おい……焼かれたぞ」
「焼かれたな」
「邪魔だったからか……?」
観戦してるデビルスケルトンがざわつく中、フィーナはデビルスケルトンを片手でひょいっと持ち上げて――。
「オラアアッ!」
ぶん投げた。
「「な、投げたー!!!!??」
ぶん投げられた同族が頭から氷のブロックに突き刺さるのを見て、観戦してるデビルスケルトン達に、流石に衝撃が走る。
「流石落ちても死なない悪魔。丈夫じゃないっ! これなら乗っても大丈夫ね!」
ますますざわつくギャラリーを尻目に、フィーナは悠々と空中を歩いて渡り、氷に突き刺さったデビルスケルトンを足場に氷のブロックに降り立った。
「そ、そうか……!」
「だから攻撃して、気絶させたのか!」
「ああ。足場にするなら、動かない方が都合がいい」
それを見たデビルスケルトン達は、フィーナの攻撃がデビルスケルトンを足場にするためのものだったと気付く。
ここはデビルキングワールド。
悪い奴はカッコいい、欲望は素晴らしいという「悪魔の道徳」をまとめた「デビルキング法」が制定された世界。
「なんてワルい姐御なんだ……」
「やべえ……カッケえ……」
「俺達は、まだまだだな……」
氷から引っこ抜いたデビルスケルトンを雪玉の盾にしつつ、ゴールへ駆けていくフィーナの背中に、デビルスケルトン達は羨望の眼差しを向けていた。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
別の場所では夏真っ盛りだってのにスノースポーツでござるか?イイネッ!
ただ滑るだけじゃ面白くないでござるね…なのでこうだ!
素早く近くの悪魔を張り倒して地面に伏せさせる!すかさず飛び乗ってボード代わりに!そして滑走!
超絶テクで魅せますぞ! 氷の滑り台をハーフパイプめいてエアターン!二回転三回転といつもより多く回ってますぞ!氷のブロックを見ればどでかくオーリーしてショートカットとばかりに次々と飛び移る!
最後は華麗にジャンプと360°回転キメながら氷を撒き散らしつつゴォォォォル!いい汗かいたぜ!
ゴール後に使った悪魔は地の底に蹴落としておく!遊んだ後のお片付けをしないとでござるからネ!拙者との約束だ!
●※他の世界でやってはいけません(その2)
「この時期にスノースポーツでござるか。イイネッ!」
空に浮かぶ氷の道を見やり、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)は髭で隠れた口元に小さな笑みが浮かべていた。
確かに別の世界では、そろそろ夏真っ盛りになろうと言う頃合いに、氷の道と言うのはなんとも目に涼しい光景である。(※デスゲームです)
「けど、ただ滑るだけじゃ面白くないでござるね……」
場を盛り上げようと、エドゥアルトは、今まさにスタートしようとしているデビルスケルトンの背後に足音を殺して忍び寄る。
「あらよっと」
「うおっ!?」
そして、すぱーんっと張り倒すと同時に足を払って、すっ転ばした。
「不意打ちだー!?」
「あのおっさん、背後からやりやがった!」
「場外乱闘だとぉ!」
転ばせたデビルスケルトンの背中を踏んで抑えるエドゥアルトの背に、何やらあらぬ疑いの声が聞こえて来る。
「デュフフフ!!」
エドゥアルトはその声に敢えて答えず、足元を蹴って氷の道に滑り出した。
踏んづけていた、デビルスケルトンごと。
その背中の上に仁王立ちして。
「ドゥフフフ! ゲヒヒヒヒ!」
飛び乗ったデビルスケルトンの上で仁王立ちしたエドゥアルトの笑いが、滑走するにつれて遠ざかっていく。
「の、乗ったー!?」
「ボード代わりだと!?」
悪魔をボード代わりに滑っていくエドゥアルトに、デビルスケルトン達はあごの骨が外れる個体も出るくらい戦慄していた。
だが、エドゥアルトはそれだけで終わらない。
「お次は超絶テクで魅せますぞ!」
エドゥアルトは敢えて、急な下り坂の直後に大きく沿ったカーブが続くコースに滑走していく。下り坂で体重をかけて加速しつつ、カーブに入った所で勢いそのまま、空中へ飛び出した。
「よっと」
エドゥアルトは空中で膝を引き付けるように身を縮めつつ、ボード代わりのデビルスケルトンの顎に手をかけグイっと引っ張る。
その体勢で身をよじり、2回、3回と空中回転――エアターンを決めてコースに復帰してみせた。
「世界が……世界が回った……」
「おっと、目が回ったでござるか? だが、ボードは急に止まれない!」
既に目がぐるぐるしているデビルスケルトンを容赦なく操縦し、途切れた道の先の氷のブロックへ、ダンッと力強く踏み込んだ。
「ひゃっほう!」
オーリーと呼ばれる跳躍技の要領で、エドゥアルトは氷のブロックを次々と飛び移っていく。デビルスケルトンはボード程のしなりが無いように見えるが、なんで同じことが出来るのだろうか。紳士と言う名の変態だからかな。
「……」
ついに足元のデビルスケルトンが静かになった頃、エドゥアルトの目にゴールが見えて来る。
「最後は華麗に決める!」
今まで以上に勢いをつけたジャンプからの360°回転。
ズシャァァッと骨で氷を削り散らしながら、着氷を決めるエドゥアルト。
「ゴォォォォル! いい汗かいたぜ!」
ふぅ、と額の汗を拭ったエドゥアルトは、口から魂的な何かが抜けかけているデビルスケルトンの上から降りて――蹴落とした。
「遊んだ後のお片付けをしないとでござるからネ! 拙者との約束だ!」
「ま、まさに悪魔的な所業!」
「外道だ……外道がおる……」
やり切った感のあるいい笑顔で親指立てるエドゥアルトに、デビルスケルトン達がまたしても羨望の眼差しを向けていた。
大成功
🔵🔵🔵
駒鳥・了
SPD
こーゆーのいいねっ!
オレちゃんことアキが水着で乗り込むよ!
デビスケは手荒く扱ってもダイジョーブだよね
死ぬかもしんないのは先の話で今じゃないもんね!
ってコトでスライダーへゴー!
安全性完全無視なんてUDCのリゾートじゃーお目に掛かれないっ!
勢いが付きすぎてコースアウトしたら「猫の手」を
流し台?やブロックに引っ掛けて反動とか上手く利用して戻るよ!
勢い余って滑ってる途中のデビスケ踏んづけたりしたらそのまま利用しよ
さすがに氷水で冷えてきたからサーフボード代わりにしてみたりね
操縦は任せろ!
勢いが足りなくてもつきすぎても、何でも踏みつけ&
猫の手を使った空中戦の要領で踏破しちゃお!
●氷上の深山鴉
僅かに差し込む光を浴びて、キラキラ輝く氷の道。
その上を、結構な勢いで水が流れている。
「こーゆーのいいねっ!」
そんなウォータースライダーさながらの光景に、駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)は、鮮やかな明るい緑を基調とした水着姿で、アキの人格で乗り込んでいた。
肩には浮き輪! 額にはサングラス!
遊びに来た感満載である。
デスゲームですよ、ここ。
「よお、人間の姉ちゃん」
「そんな装備で大丈夫か?」
「肩とかお腹とか冷えても知らねえぞ!」
デビルスケルトン達も、そんな了の恰好に無遠慮な視線を向けて声をかける。「デビルキング法」には、水着の女性を見たらセクハラっぽいことを言っておけとか、そんな法律でもあるんだろうか。
「ダイジョーブ、ダイジョーブ」
微妙に悪ぶり切れてないデビルスケルトン達をさらりと受け流し、了は肩にかけていた浮き輪を降ろす。
「それにいざとなったら、デビスケも使わせて貰うし?」
「デビスケ……って、俺達の事か?」
了の言葉の意図が判らず、デビルスケルトン達はカタンと首の骨を傾ける。
使わせて貰うとは一体?
「ん? だって、デビスケは手荒く扱ってもダイジョーブだよね」
「既に扱いがヒドい!」
「ここにもワルい姉ちゃんがいた!」
「一体、どう手荒く扱われるんだ……!」
了がしれっと告げた言葉は、デビルスケルトン達の何かを撃ち抜いたようだ。
「それは扱われて見てのお楽しみってコトで! オレちゃん、ゴー!」
そんなデビルスケルトン達に笑って返して、了は浮き輪に乗って水が流れる氷の道へと飛び込んでいった。
「おお、おおおおっ?」
ぐいん、ぐいんっと。浮き輪の上で、了の身体が左右に揺れる。気を抜いたらコースアウトしそうな勢いに、了の手に思わず力が籠る。
だが、気を抜かなくてもコースアウトの危機は向こうからやって来た。流れる水が、途切れた氷の道から滝のように流れ落ちている。
ジャンプでもしなければ、絶対落ちる設計。
「安全性完全無視なんてUDCのリゾートじゃーお目に掛かれないっ!」
だが、そんな光景を目の当たりにしても、了は怯えるどころか楽しそうに口元に笑みを浮かべて、氷の道から飛び出した。
飛距離は――足りない。
しかし了は空中で浮き輪から手を離し、『猫の手』を構える。
投げ放たれた三ツ爪型フックの先端が氷のブロックに突き刺さり、繋がった鋼糸が落下する筈の了の身体を空中で支えた。
そのまま氷のブロックの下まで差し掛かった所で、了の身体が一瞬、空中で静止し、振り子の現象で背中の方に戻り出す。
「せーのっと!」
了はそこに、電動リールの巻き取りを合わせた。
一気に上昇し、巻き取りが完了したところで両腕を振り下ろし、『猫の爪』で氷を蹴るように飛び出す了。
滑って飛び出した勢いもついていた反動を利用した動きだ。次の氷の道まで飛ぶには充分な勢い――と言うか、充分すぎた。
次の氷の道の起点を少し飛び越した了の着地地点には、何とか跳びきって一息ついているデビルスケルトンが。
「あ。このままじゃ勢い余ってデビスケ踏んじゃう……ま、いっか!」
軽く片づけて、了はデビルスケルトンを上から踏んづける形で着氷した。
「ぐはぁっ!?」
踏まれたデビルスケルトンの方は、何が何だかわからない。
「さっき浮き輪落としちゃったし、さすがに氷水で冷えてきたからさ。サーフボード代わりに借りるね」
流石に水着で氷水は、冷たかったようだ。
――手荒く扱うってこれか……!
そんな周りからの、畏敬の念が籠った声を浴びながら、了は氷の道が途切れるまで、コースアウトする事無くデビルスケルトンを見事に乗りこなしてみせた。
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
デスゲームに参加って言うから
「今から殺し合いをしてもらいます」系を期待していたのに
そっち系じゃなかったかぁ、ちょっと残念
零に乗せてもらい、氷上の旅の始まり
わぁ、遊園地のウォーターライドみたいで結構楽しいねコレ
道中で結構派手に轢かれていってるけどケロッとしている悪魔達
うーん、ギャグ補正って強い
俺達の故郷には無いものだね…
このアトラクションの関門の一つは滑り台とブロックの行き来
ブロックが見えてきたら、Phantomをブロック向けて放ちUC発動
決して抜けない、壊れない、頑丈な命綱の完成
それを念動力で手繰り寄せて掴んでおけば、地面に真っ逆さまは防げる
セーフティネットが無ければ作ればいいのさ
乱獅子・梓
【不死蝶/2人】
いや、そこを残念がるのはどうなんだ
仮にそっち系のデスゲームだったとしても
多分お前の求めるような殺し合いにはならない気がする
なんてったってこの世界だし
氷の上を渡るならこいつの出番だな、零!
零は氷竜、つまり氷の扱いもお手の物
成竜に変身させて綾と共に乗り込み
ペンギンみたいな腹這いポーズですいーっと滑り進んでいく
綾、振り落とされないようにしっかり掴まってろよ!
進路上にいる悪魔達は申し訳ないが吹っ飛ばす
無理に避けようとしてコースアウトしたら本末転倒だし
ブロックに乗り移れたら、飛んでくる雪玉に向かって
UCで強化した焔のブレス攻撃を浴びせて纏めて溶かし
勢いが弱まった隙に一気に駆け抜けるぞ!
●ギャグ補正のあるデスゲームとは
猟兵達の訪問は、デビルスケルトン達の行動に変化をもたらした。
彼らは、知ってしまったのだ。
自分達の身体が、氷の道を滑る道具になるのだと。
その結果、何が起こったのかと言えば――背中の奪い合いである。
「お前にはボードになって貰う。悪く思うなよ」
「返り討ちにしてやるぜ!」
お互いに相手をボード代わりにしようと、睨み合うデビルスケルトン達。
その背後に、それぞれ別のデビルスケルトンが忍び寄る。
「背中が!」
「お留守だぜ!」
「「ぐはぁっ!!」」
2人のデビルスケルトンが背中からの不意打ちで倒れされ、その背中をデビルスケルトンが踏みつける。
「デスゲームっぽくなってきたじゃないか」
「いや、そこで面白がるのはどうなんだ」
そんな仁義なき戦いが広がる光景に笑みを浮かべる灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)に、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)がツッコミを入れる。
「いやあ。デスゲームって言うから『今から殺し合いをしてもらいます』系を期待してたらそっち系じゃなかったからさ。ちょっと残念だったんだ」
笑う綾の赤いサングラスの奥の瞳に、秘めた戦狂いの気質が垣間見える。
「多分、お前が求めるような血腥い殺し合いにはならない気がするぞ」
恐らくそれに気づいたであろう梓が、綾の肩にぽんと掌を置いた。
「だってほら」
梓が指さした方に、綾も視線を向けてみる。
「暴れんな! 滑りにくいだろう!」
「うるせえ! ワルくてカッコいい人間ならいざ知らず、同族に踏まれて足を引っ張らない理由はねえ!」
デビルスケルトンonデビルスケルトンが、バシャバシャと水を撒き散らし、氷の道の上で暴れていた。背後から襲いながら加減もしていたようで、襲った方も襲われた方も、どちらも元気そうである。
「……わぁ。やられた方も元気だね」
「なんてったってこの世界だし」
やっぱり足りないデスゲームに肩を落とす綾の背中を、梓が笑って叩いていた。
「氷の上を渡る手本を見せてやろうぜ。出番だぞ、零!」
『ガウ!』
梓の背中で青い仔竜が一声鳴いて、パタパタと羽ばたき飛び上がる。
「零、成竜化だ!」
『ガウガウ!』
更に梓が声を上げれば、応えた零が大人の氷竜に変化した。
「ド、ドラゴン!」
「カッケェ……」
周囲のデビルスケルトン達もその大きさに思わず見惚れる威容だが、零のこの姿は一時的な変化に過ぎない。
「伏せ」
『ガーウ!』
梓が一声追加すれば、零はあっさりとぺちゃんと腹這いになった。
「よっと」
「俺も頼むな、零」
その青い背中に、梓と綾が乗り込んでいく。
「綾、振り落とされないようにしっかり掴まってろよ!」
「おう」
そして2人を乗せた零は、腹這いのまま、すいーっと氷の道に滑り出していった。
スタート直後の坂をシャーッと滑り降りて、続くカーブもついーっと危なげなく曲がっていく。広げた翼と長い尾で、バランスを取っているためだ。
デビルスケルトン達には出来ない芸当である。
「わぁ、遊園地のウォーターライドみたいで結構楽しいねコレ」
頬に感じる水しぶきと風を切って滑走する感覚に、綾も裏のない笑顔を見せる。
「零は氷竜。つまり氷の扱いもお手の物だからな」
『ガウガウッ!』
梓に首筋を撫でられ、零は嬉しそうに翼をパタパタさせる。
氷竜と言うより、ペンギンっぽい。
だがその滑走は流石と言うべきか、ギャーギャーと言い合いをしているデビルスケルトン達よりも、遥かに速い。
やがて、2人の前に先行したデビルスケルトン達が見えてきた。
「梓。前に悪魔達見えて来たけど、どうする?」
「んー? 無理に避けようとしてコースアウトしたら本末転倒だし」
背中に聞こえた綾の問いに振り向かずに返しながら、梓は零の首をぽんと叩いた。
『ガウッ!』
一声鳴いた零が大きく羽撃いて、加速する。
「おい、ちゃんと滑れよ! ……ん?」
「だが断る! ……ん?」
デビルスケルトン達が気づく頃には、時すでに遅し。
「申し訳ないが吹っ飛ばす」
「「あーっ!」」
避ける暇もなく吹っ飛ばされるデビルスケルトン達。氷の道の上に倒れた彼らは、起き上がる前に零の腹の下に消えていった。
「派手に轢いたね」
零の腹の下から、パキッポキッとか言う不穏な音が聞こえた気がして、綾が思わず後ろを振り向く。
ゆらりと身を起こしたデビルスケルトン達が、全身の青い炎を燃え上がらせていた。
「道を譲れとも言わずに轢かれたし!」
「なんてワルい竜捌き!」
しかもその炎の燃え上がりは、復讐の念とかそう言う類じゃなく、なんかワルさに感動して燃え上がっているらしい。
つまり、元気だ。
「うーん、ケロッとしてるなぁ」
これが故郷の世界になかった『ギャグ補正』と言うものだろうかと、綾は感心したように目を細める。
「綾。後ろより前を見てくれ」
梓の声に綾が身体の向きを前に戻せば、進行方向で氷の道が途切れていた。
ここはデスゲーム会場。
速さでデビルスケルトン達を上回ったくらいで、安心できる環境ではない。
「このアトラクションの関門の一つだね」
「デスゲームをアトラクション扱いしてやるなよ」
綾につっこみながら、梓は身を低くする。
その後ろから綾が腕を伸ばす。開いた掌が紅く輝き、紅く光る蝶の群れが生まれた。蝶の群れは、氷の道の先へ飛んで行き、宙に浮かぶ氷のブロックにひらりと舞い降りる。
「離してあげないから、覚悟してね」
綾の掌と氷のブロックが紅い光で繋がった瞬間、光が鎖に変じた。
――ロンサム・ファントム。
綾が飛ばした蝶の群れは、綾のオーラが作り出したもの。故に氷に凍る事もなく、鎖と変えれば氷のブロックにも突き刺さる。
「セーフティネットが無ければ作ればいいのさ」
それは決して抜けず、壊れない、頑丈な命綱。
「梓、いいよ」
「よし。零……跳べ!」
『ガウッ!』
途切れた氷の道から、2人を乗せた零が飛び立つ。そして綾が念動力で手繰る鎖に引かれ、危なげなくブロックの上に降り立った。
「よし、それじゃ次はあっちの道に行こうか」
綾は鎖を一度解除して、次の氷の道へ向けて腕を伸ばす。その掌から、再び紅い蝶の群れが飛んで行き――。
ヒュルルルルッ!
そこに飛来する、巨大な雪玉。
「俺を落とそうってのかな?」
「させねえよ。焔!」
動けない綾に代わって、梓が赤い炎の仔竜を呼ぶ。
「紅き竜よ、世界を喰らえ!」
為虎添翼――ベルセルクフレイム。
焔の口から放たれた炎が、雪玉と空中でぶつかる。
そして、ジュッとあっけなく雪玉が溶けた。梓の業によって威力が高められていた焔の炎は全然勢いが衰えず、そのまま先へと飛んでいく。
「ん? 何だ……ってファイヤー!?」
「雪玉諸共とかワルすぎぃ!」
たまたまそこにいたデビルスケルトン達が、炎に吹っ飛ばされて落ちていった。
3倍に増幅は、ちょっと火力過剰だったかもしれない。
「……」
「……」
梓と綾は、どちらからともなく無言で顔を見合わせて――。
「行くか」
「そうだね」
見なかった事にして、ゴールを目指すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミネルバ・レストー
あらあら、まあまあ
日記つけてまで自分の悪事を振り返るだなんて、ワルい子だこと
そりゃあ、魔界の住人のハートをガッチリキャッチでしょうよ
感心してる場合じゃないわね、せっかくだからわたしも遊び…
こほん、お仕事しましょうか
確認だけど、氷のルートさえ通ればあとは何でもアリよね?
じゃあ来なさい!【氷竜天翔・六花繚乱】!
うちのクソダサドラゴンに乗ってスイスイ攻略させてもらうわよ
コイツはちっちゃくても飛ぶし、氷属性だから地形の利用にもなるでしょ
…なるわよね?
ふふ、ご自慢のデスゲームをエンジョイされる気分はどう?
他の悪魔たちはどうしようかしら、気が向いたら構ってあげてもいいけど
え?そんな余裕ない?ウソでしょー!
●ワルさの基準
「まったく。日記つけてまで自分の悪事を振り返るだなんて、ワルい子だこと」
ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)が何の気なしに零した呟きに、周りにいたデビルスケルトン達の背中の奪い合いが、ピタリと止まった。
「な、なによ……」
グリンッと首の骨を回転させてきたデビルスケルトン達に、、ミネルバは思わず後ずさりしかけて踏み留まらせる。
「日記……今そう言ったな」
「誰の日記だ?」
ミネルバをはじめ、猟兵達はこのデスゲームを作ったオブリビオンが日記をつけている事を知っている。どこぞのエルフの情報にあったからだ。
だが、デビルスケルトン達がそんな事を知る由もある筈がなかった。
でもそれって、別に隠す情報でもないよね?
「つけてるのよ。このデスゲームを作った張本人が」
しれっとミネルバが告げてみれば、しかしデビルスケルトン達が目の色を変えた。
「日記……そうか、日記があるのか!」
「これは是が非でもゴールしてみせねば!」
「そして日記を見てやる!」
「他人の日記を勝手に見るのは、極上のワル!」
どうやら、そういう事らしい。
「あらあら、まあまあ。魔界の住人のハートをガッチリキャッチね」
燃え上がるデビルスケルトン達を、ミネルバは他人事のように眺めていた。
「っしゃー! 行くぜ!」
「日記が俺を待っている!」
日記を盗み見ると言う目的に情熱を燃やし、デビルスケルトン達が氷の道に滑り出していく。
それを何回か見送った所で、ミネルバは我に返った。
「感心してる場合じゃないわね、せっかくだからわたしも遊び……」
デスゲームです、ここ。
「こほん、お仕事しましょうか」
一つ咳払いして、ミネルバは片手を掲げる。
「来なさい! クソダサドラゴン!」
掲げた掌から生まれた氷の結晶が、吹雪のように吹き荒れ、渦を巻く。氷の渦は次第に収束し、その中から深い青の鱗と氷に覆われた竜が現れた。
氷竜天翔・六花繚乱――ドラゴンライド・ライトバージョン。
3m程の氷竜『アイストルネードドラゴン』が、ミネルバの前に現れた。
「またドラゴンだ……!」
「やっぱカッケェ……」
それを見たデビルスケルトン達が、ざわつきだす。ミネルバが言うほど、ダサいと言う評価ではないらしい。
「召喚しといてクソダサ呼ばわりとか……何という口のワルさ!」
「ああ、そこもカッケェな」
「うっさいわよ、骨悪魔共」
そんなドラゴンをクソダサと呼ぶ所に勝手にワルさを見出すデビルスケルトン達を、ミネルバが容赦なくぶった切る。
「氷のルートさえ通れば、後は何でもアリよね?」
デビルスケルトンをスルーして、ミネルバは頭上を見上げて言い放つ。
答える声はない。
だが、こおりのあくまが日記をつけていたのなら、このデスゲームの様子をどこからか見ている筈なのだ。
「まあ、他の猟兵も氷の竜を使ってたの見てたしね。うちのクソダサドラゴンだってちっちゃくても飛ぶし、氷続映だから地形の利用にもなるでしょ……なるわよね?」
だから、ミネルバの言葉に返事がないと言う事は、つまり諸々アリと言う事だ。
「行きなさい、クソダサドラゴン。スイスイ攻略するのよ。骨悪魔達も、気が向いたら構ってあげても……え? そんな余裕ない?」
背中によじ登りながら、ミネルバは氷竜と意思を疎通する。
「今日もキリキリ働いて頂戴?」
割と一方通行だった。
ノソノソと動き出した氷竜が、ミネルバを乗せて氷の上を滑っていく。
「ふふ、ご自慢のデスゲームをエンジョイされる気分はどう?」
やっぱり返事はなかった。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
まつりん、流しそうめんのそうめんの気持ちになれる
すごいね、早くなりたいね(そわそわ
どきどきしながら浮き輪を装着し、縄を括り、まつりんに縄の片端を手渡し
ん、これで落ちても一蓮托生(こく
ごー、まつりん
ひゅうううぅぅ(直線
うひゃ(曲がる
ひゃひゃひゃう(連続曲がり
はははははぉぉーーーーーー!!!(ジャンプ
!
何かぶつかるのは反射的に怪力で破壊したりぽいっとしたり
ん、次は何が…
!!
こ、これは流しそうめんの醍醐味、くるくる回転ゾーン
気合いを入れ(まつりんを力一杯ぎゅう)、いざ
はほぉぉおぉぉぉぉぁ~~~~(回転
そうめんは毎日がスリリング
これからは尊敬の念を持って食させて頂く
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー。
わあ、氷の滑り台、つるつるだー♪
なるほど、流し素麺。頑張る!
よし、疾走発動♪(ホンキと書いて真面目と読む)
どこまででも、きっと! 滑り続けるゼ!
ぴょいんと飛び出し、滑り台に沿って……びよーんと引っ張られ。
あれ、アンちゃんどしたの?
え、縄?
わかった!(よいお返事)
何かの叫び声が背後から聞こえるケド、気にせず飛んでー♪
何かの破壊音も(以下同文)
ときどき空中に浮かんだりするケド、基本は表面を滑り落ち。
わー、雪玉涼しいー♪
素麺のラストは笊で掬う……だケド、あれ?
え、なんでぐるぐる回ってるのー?(フィギュアスケートペアの如く)
ふー。
素麺になるのは大変だったよ!(にぱ)
●流し素麺ごっこ
「ボードにな、れ、よ!」
「い、や、だ、ね!」
両手でがっぷり四つに組んで、相手を倒そうとするデビルスケルトン達。
「うら、転べ!」
「そっちが転べ!」
或いは足を払い転ばせようと、ローキックの応酬を繰り広げるデビルスケルトン達。
「わあ、氷の滑り台、つるつるだー♪」
「まつりん、ここで、流しそうめんのそうめんの気持ちになれるんだって」
そんなデスゲームの様相が少し濃くなったデスゲーム会場でも、木元・祭莉(マイペースぶらざー・f16554)と木元・杏(シャー・オブ・グローリー・f16565)の双子は、何だか楽しそうにしていた。
まあ、獅子は我が子を崖から突き落とすを地で行く両親を持つ2人だ。デスゲームくらいで怯むような、柔な育ちではない。
「すごいね、早くなりたいね、そうめん」
「なるほど、流し素麺。頑張る!」
既に浮き輪装着してドキドキそわそわしている杏の言葉に、祭莉がぐっと拳を握る。
どうやら2人とも、どっかのエルフが言った流し素麺気分を、真に受けてしまっているらしい。素直な良い子達である。
「よし! ホンキで疾走発動♪ 走るよ!」
ぐっと片膝を沈めて走り出そうと身構える祭莉の身体を、白い炎が覆っていく。
風輪の疾走――ホワイトラッシュ・オブ・ウインド。
燃え上がる白炎は、祭莉に飛翔能力を与える炎の翼。その勢いが、祭莉のホンキが真面目なホンキである事を物語っていた。
「どこまででも、きっ――」
「まつりん、待って」
しかし勢い良く飛び出そうとした祭莉の襟首が、杏の手でびよーんと引っ張られる。
「あれ、アンちゃんどしたの?」
「ん」
祭莉の前に差し出される、縄。
その先は、こくりと頷いた杏の腰にきゅっと括りつけられている。
「これで落ちても一蓮托生」
「わかった!」
意訳すると『落ちる時は一緒ね』と言っている事にもなる杏の言葉に、祭莉は良いお返事で頷き返す。
「お互いを結ぶ……その手があったか」
「あれなら、ボード役が暴れても安定するぞ!」
2人のやり取りを、何か誤解して理解するデビルスケルトン達。
「ごー、まつりん」
「どこまででも、きっと! 滑り続けるゼ!」
そんなデビルスケルトン達を放っといて、今度こそ白炎を纏った祭莉がぴょいんと氷の道に飛び出し、少し遅れて杏が縄に引っぱられて行った。
「わーお! 滑る滑るー!」
水も流れててツルツル滑る氷の道。その緩やかな上り坂を、白炎を纏った祭莉が猛スピードで駆けていった。
同じ速度で引っ張られた杏が、坂の終わりで一瞬、ふわっと宙に浮いた。
「ひゅうううぅぅ!」
着氷を待たずに引っ張られ、杏が思わず変な声を上げる。
でも楽しそうなので、問題なさそうだ。
「カーブはちょっと減速して……もっかいダッシュ!」
ズシャァァッ!
祭莉は次のカーブに、スライディングの要領で滑り込む。そしてカーブの真ん中辺りで身を起こして、再ダッシュをかけてカーブを駆け抜けた。
自ら走っている祭莉と縄で繋がっている杏とでは、こうしたカーブでかかる反動が同じとは限らない。今の2人は、振り子が自走している様なものだ。
縄の長さの分、遅れてカーブに入った杏は、祭莉よりも大きく横に振れた。
「うひゃ」
あわや氷の道から飛び出しそうになって、杏は咄嗟に氷の縁をむんずと掴む。
バキッ。
氷、あっけなく割れた。
氷の道が脆いのではない。杏が見た目にそぐわぬ怪力なだけだ。
「ぐねぐねだー! 右! 左! 右! 左!」
その音は聞こえていた筈だが、祭莉は前だけを見て、蛇の背中のように連続で曲がりくねった氷の道を素早く駆け抜けていく。
「ひゃひゃひゃう」
バキッ! ガシャッ! バキッ! ガシャッ!
杏も右に左に振られてぶつかりそうになり、その度に氷の道が破壊されていた。
「こんな所に穴だとぉぉぉぉぉっ!」
「こんなの避けられるかぁぁぁっ!」
直前に作られた穴を避けられる筈もなく、後続のデビルスケルトン達が氷の道の下に落ちていった。
「何か叫び声とか破壊音とか色々聞こえるケド、オイラ気にしなーい♪」
聞こえてた音を右から左に聞き流して、祭莉はむしろ加速する。
「アンちゃん、飛ぶよー♪」
祭莉は下り坂を減速せずに駆け下りて、氷のブロック目掛けて飛び出した。
「はははははぉぉーーーーーー!!!」
空中に響く、杏の奇声。
祭莉は飛翔能力で空中にふわりと浮かんだが、杏はそうはいかない。
ズシャァァッと氷のブロックの上を滑って、そのままではブロックから飛び出しかねない所で、杏は咄嗟に手を付いた。
ドンッと、ブロックが陥没した。
「……」
「わー、雪玉涼しいー♪」
陥没した氷の中に納まった杏の頭上を雪玉が飛び交い、一部は祭莉に当たる直前に白炎にかき消されていく。
「流れるような手際で、無邪気にコース破壊しとる……」
「何てワルい子供たちなんだ!」
「将来、良い悪魔になれそうだな……」
勝手にワルい方に解釈して、戦慄する観戦組のデビルスケルトン達。
「アンちゃん、次いっくよー」
その声もやっぱり聞き流して、祭莉は次の氷の道へ飛んでいく。
それは、入る前から連続カーブが続いているのが見えている道だった。
さっきの蛇行している道とは違う。螺旋階段のように、同じ方向にぐるぐる曲がり続けている。滑り台ならスパイラル式とか呼ばれるタイプのものである。
「こ、これは流しそうめんの醍醐味、くるくる回転ゾーン」
空中でそれに気づいた杏は、縄をぐいぐい引っ張る。
「素麺のラスト、笊で掬うに向けて……あれ?」
「気合いを入れ、いざ」
再び白炎を燃え上がらせ、膝を沈めた祭莉が、背中に感じる重み。気づいた時には、杏が背中にいて、力一杯ぎゅうと掴まっていた。
足元は氷の道の上を滑り出している。
そして――。
「え、なんでぐるぐる回ってるのー?」
「はほぉぉおぉぉぉぉぁ~~~~」
何がどうなってそうなったのか。一蓮托生ロープの仕業だろうか。祭莉と杏は、何故か2人とも回転しながら、螺旋状のくるくる回転ゾーンを滑り降りていった。
それでも2人ともコースアウトしなかったのは、流石と言うべきだろう。
くるくる回転ゾーンは、見るも無残な状態になっていたけれど。(大体杏のせい)
「ふー。素麺になるのは大変だったよ!」
「そうめんは毎日がスリリング。これからは尊敬の念を持って食させて頂く」
ゴールで顔を合わせた知人に、2人は笑顔と真顔でそう告げたそうである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユディト・イェシュア
これが氷のデスゲーム…
悪魔たちに犠牲が出ていないのはなによりです
ゲームと名のつくものは
つい攻略したくなってしまうので
悪魔たちが熱中して通ってしまうのはわかります
まずは他の悪魔たちの動きを見て
どう突破するのが良いか考えましょう
ジャンプするタイミングが重要そうですね
メイスの下に滑り止めを施して棒高跳びのように飛ぶというのもあり…?
悪魔たちに邪魔されないように
一人で挑戦できる頃合いを見計らって開始です
それでも邪魔してきそうなら
大きな怪我をする前に気絶攻撃を仕掛けて脱落してもらいましょう
これを攻略するにはコースの分析と運動神経
頭脳と体力が必要そうですね
羅針盤戦争以降も筋トレを続けていてよかったです…
●筋肉は裏切らない
「これが氷のデスゲーム……」
デスゲーム会場に幾つも浮かぶ氷の道。
そこにデビルスケルトン達が滑り出していくのを、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、何をするでもなく視線を向けていた。
「悪魔達に犠牲が出ていないのは、なによりです」
デビルスケルトン達を案じつつも見守るような、穏やかなユディトの言葉。
だが向けている視線は、実のところ穏やかとは程遠い。
凝視している、と言っても良いだろう。ユディトは彼らの動きを、観察しているのだ。このデスゲームをどう突破すれば良いのかを考える足掛かりにする為に。
(「挑むなら、攻略したいですからね」)
例えそれがデスゲームであっても、ユディトはゲームと名の付くものは、つい攻略したくなってしまう性分であった。
デビルスケルトン達が、何度落ちても脱走して仲間を連れて戻って来るくらい通い詰めてしまうのも、わかると言うものだ。
そして見ている内にわかったのは、デビルスケルトン達が最も多く落ちているのは、やはり氷の道からブロックに飛び移るところだった。
槍を棒のように使ったりと彼らも工夫しているのだが、飛距離が足りない事が多い。
「ジャンプするスピードとタイミングが重要そうですね」
ユディトは愛用のメイス『払暁の戦棍』を手に取り、その先端に視線を向ける。
「滑り止めを施して、棒高跳びのように飛ぶのもアリですかね?」
問題は、滑り止めを施せそうなものがないと言う事だ。
「まあ頭脳と体力で何とかしましょう」
そうと決まれば、そろそろ観察は充分だ。
ユディトは辺りを見回し、氷の道の一つへ足を進めていく。
「出来れば、悪魔達に邪魔されたくはありませんからね」
邪魔をされるなら応戦する気はあるが、出来れは手を出したくはない。
1人で挑戦できるようにと、ユディトが選んだ氷の道は、デビルスケルトン達が誰もいない氷の道であった。
それもその筈。
その氷の道は、あちこち欠けたり穴開いたり陥没したりしているのだから。
「悪魔も避ける難所。攻略のし甲斐がありそうですね」
先に入った猟兵達が通りながら破壊していった跡が残る氷の道に、ユディトはそれがハードモード的なものと思って飛び込んでいった。
「……このカーブは膨らまないようにしませんと」
外側の縁が欠けているカーブはインコースを取って。
「今度は両側の縁がランダムに欠けて……」
危険なS字カーブの連続は、コースの中央を保って。
穴だらけの氷の道を、ユディトはメイスを舵代わりに滑り抜けていく。
「正攻法で攻略されそうだと……!」
「いや、まだだ! まだあの場所がある!」
派手さはないが普通に上手いユディトの動きに、落ちてみせたのは何だったのかと焦るデビルスケルトン達。
だがユディトの前に、氷の道が途切れる地点が近づいていた。その先にある氷のブロックまで跳ぶしかない。
「滑らないと良いんですが」
氷の道の終わりで、ユディトはメイスの先端を斜めに突き立てた。そのまま、メイスを使って身体を押し上げると同時に両足で氷を蹴って、逆立ちの状態で跳び上がる。
先に言っていた通りの、棒高跳びのような跳び方。
「よっと」
空中で態勢を直し、ユディトはすり鉢状に陥没した氷ブロックの中に、危なげなく着氷してみせた。
「せ、成功しただと!?」
「一体どうやって……!」
自分達も同じような方法を取って、何度も落ちた経験を持つデビルスケルトン達が、ユディトの跳躍にざわつき出す。
「必要なのは頭脳と体力ですよ。筋トレをすれば、きっと出来ます」
そんなデビルスケルトン達に、ユディトは穏やかに告げて、次の氷の道に飛び移って先へと進んで行く。
「筋肉かー……」
「ないなー……」
「俺達スケルトン族だもんなー……」
残るデビルスケルトン達に、諦めると言う選択肢が浮かびはじめていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『デビルスケルトン』
|
POW : デビルスピア
【槍の穂先】が命中した対象を燃やす。放たれた【槍から伸びる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ボーンフレイム
対象の【骨】に【炎】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[骨]を自在に操作できる。
WIZ : デビルファイア
レベル×1個の【青色に輝く魔】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:させぼのまり
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●氷上を流れるスイカ
滑り台のような氷の道と、氷のブロック。
空中に配され、半ばアトラクション扱いされたそれを越えた先には、何やらただっ広い氷の広間が広まっていた。
猟兵達以外にも10人ちょっとのデビルスケルトン達もデスゲームを越えてきたが、その全員が余裕で集まれる広い氷だ。
そして猟兵達とデビルスケルトン達以外の姿がないと言う事は、まだデスゲームは終わっていないと言う事だ。
『氷のデススライダーは攻略されてしまったみたいね。でも、デスゲームはまだ終わりじゃないわよ!』
そこに、年若そうな女性の声が降って来た。
このデスゲーム会場の仕掛人、こおりのあくまの声だろう。
今度はこの広い氷の上で、何をさせようというのか。
『これからあなた達には、魔界的にスイカを割り合って貰うわ!』
……。
……はい?
――スイカ割り。
その名の通り、スイカを割る遊びである。
特にUDCアースでは、スイカの旬が夏な事もあり、流し素麺と並ぶ夏の風物詩として知られている。
だがここは、デビルキングワールド。
UDCアースのように、目隠しをして周りの声や己のカンでスイカを割ると言うスタイルが成り立つ筈がない。
「もう少し右」とか「そのまま前に」とか、そういう声が嘘塗れになるのだ。
その内『これ目隠しとか要らないんじゃね?』と言う事になった末、魔界式スイカ割りなるものが考案された。
「とにかく沢山スイカを割った奴が勝ちってゲームだ!」
「勿論妨害アリだぜ! ワルいだろー?」
いやもうこれ、ただの合戦ゲームだよね?
――などとつっこむ暇もなく、氷の広間に大量のスイカが転がり落ちてきた。
「早速割ったるでぇ!」
デビルスケルトンの一人が、スイカを割ろうと槍を振り上げる。
だがここは、氷の上なのだ。
転がり落ちたスイカは氷の上をツイーッと滑って流れて行き、デビルスケルトンが振り下ろした槍は空しく空を切る。
バキンッ!
代わりに、彼の足元の氷があっさりと砕けていた。
『ああ、気を付けなさい。あなた達が立っている氷、3センチもないから』
手抜きかな?
『落とす為! これはデスゲームなの!! だから氷の下のプールも、渦を巻く流れを作ってあるし! 雑食の魔界ピラニアも放流しといたし!』
プールの上だったんだ、ここ。
『精々、落ちないように頑張りなさい?』
強くスイカを叩き過ぎれば割れかねない、薄氷の上。
その下の水は冷たく、渦を巻き、さらには獰猛な魚も待っていると来た。
デスゲーム度の上がったフィールドに、デビルスケルトン達は――。
「やっべ、俺、骨齧られちゃうのかな」
「こんな危険なスイカ割りがあったのか……!」
「全員で遊べないのが、残念でならないな!」
めっちゃ目をキラキラさせて、青い炎を燃え上がらせていた。
全然死にそうにないですね!
『ちなみに場外に落ちたら、スタート地点まで流され悪魔コースだからね』
いっそ落とした方が、死なない程度に退場させるには手っ取り早いかもしれない。
====================================
というわけで、2章は氷の上でのスイカ割りです。
ここでは、デビルスケルトン達を死なない程度に蹴落として下さい。
魔界流スイカ割りは、兎に角スイカを多く割った者勝ちです。
他のルールはないです。
スイカは沢山あります。
落ちて戻って来れなかったら多分アウト。妨害上等。落としてOK。
わざと目を回したり目隠しする必要はありません。しても良いけど。
勿体ない? 後で魔界ピラニアが美味しくいただいてくれますよ。(雑食)
まあデビルスケルトン達は、魔界ピラニアにかじられても大丈夫です。だってあいつら骨しかないから。
プレイング受付は7/10(土)8:31~7/14(火)23:59の予定です。
====================================
ミネルバ・レストー
まあ、ワカサギ釣りでもなし、氷が薄いのはデスゲームらしいわよね…
いいわ、ここまで来たならとことんノってあげる
わたし渾身の【こおりのむすめ】発動で地獄を見せましょう
具体的には、人間らしさを放棄してデビルスケルトンの腕の骨あたりを
もぎ取ってはそれでスイカを割ってを…繰り返す!
パーツが取れたスケルトンたちはひとでなしらしく捨て置くわね
ついでに攻撃した時の冷気でスイカもひんやりよ、最高だわ
骨をもぎ取る(部位はこの際どこでもいいわね)
それでスイカを叩き割る
スケルトンたちを蹴落としてスイカも割りまくる
不敗の化身、常勝の女神、ここに復活よ!
(実は:負けず嫌い)
震えて待ってなさいな、次はあんたがこうなる番よ
●こおりのむすめは負けず嫌い
「ふーん?」
――コンコン。
ミネルバ・レストーがしゃがんで足元の氷を拳で軽く叩いてみれば、確かに重厚さと言うものが感じれない音が返って来た。
「まあ、ワカサギ釣りでもなし、氷が薄いのはデスゲームらしいわよね……」
ちなみに、氷に穴を空けるワカサギ釣りの場合、湖によっては氷の厚さが30センチはないと釣りの許可が出ないと言う所もあるらしい。
「いいわ、ここまで来たならとことんノってあげる!」
その10分の1程度の厚みしかない氷の上で、ミネルバはすくっと立ち上がった。
例えそこがどんなフィールドだろうが、かつてのトップランカーのアバターとしてゲームで負けるわけにはいかない。
グッと拳を固めたミネルバの足元を、ツイーッとスイカが滑っていった。
「ん? なんだ?」
何かくすぐったい感触にデビルスケルトンが振り向いてみれば、にこやかな笑みを浮かべたミネルバが鎖骨から上腕骨に指を滑らせていた。
「なにかな?」
「中々持ちやすそうな骨じゃない。部位はこの際どこでも良いと思ってたけど、どうせなら持ちやすい方が良いわよね」
驚いたようなデビルスケルトンを無視して、ミネルバはその上腕骨をがしっと力強く握り締める。
「えい」
ポキャッ。
「あーっ!」
問答無用で、ミネルバはデビルスケルトンの上腕骨をもぎ取った。関節を綺麗に破壊している。脱臼みたいなもんだ。嵌めれば治るさ。
「ほ、骨を奪い取るだと……」
「しかも、手際に迷いがなかった!」
「口がワルいだけじゃなかったのか……」
ざわつくデビルスケルトン達の声は、氷の上を歩くミネルバには響かない。
「わたしは戦うためだけに生まれたもの、感情も感傷も不要よ」
こおりのむすめ――ブリザード・ミュージック。
友情や愛情と言った心を一時的に手放す事で、ミネルバがPvPネットゲームのトップランカーのアバターであった頃のかつての力を取り戻す業。
今のミネルバは、薄氷の上を歩く恐怖すら感じていない。
心を代償に全身から冷気が迸らせ、ミネルバは奪った骨を振り上げる。
「一体何をする気だ……」
「おい、まさか……」
ますますざわつくデビルスケルトン達を無視して、ミネルバは骨を振り下ろした。
ゴシャァッと、スイカが凍って砕け散る。
「た、叩いたーっ!!」
「凍って割れたー!?」
「俺の骨がスイカ割の道具に!?」
湧き立つ、デビルスケルトン達をよそに、ミネルバは凍って割れたスイカの欠片をひとつ拾い上げた。
「ついでに冷気でスイカもひんやりよ、最高だわ」
ミネルバは、シャーベット状になったスイカの味に小さく笑みを浮かべ、一口だけ食べたスイカともぎ取った骨を、同時にぽいっと投げ捨てる。
「さあ。誰でも良いから次の骨をよこしなさい。拒否してももぎ取るけど」
まさに氷のような笑みを浮かべて、ミネルバはデビルスケルトン達に向き直る。
「あんた達を脱落させつつ、スイカを割りまくってやるわ」
すっかりPvPモードに戻ったミネルバは、デビルスケルトンの1体から新たな骨を容赦なくもぎ取った。
――不敗の化身、常勝の女神、ここに復活。
(「震えて待ってなさいな、次はあんたがこうなる番よ」)
奪い取った骨を掲げて、ミネルバは胸中で呟く。
「ワッルぅぃ……」
「俺達は未来のデビルクィーンに出会ってしまったのかもしれない」
そんなミネルバに、デビルスケルトン達は怯えるよりも見惚れていた。
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
落ちたらピラニアの餌になっちゃうのかぁ
なんかこういうのB級映画で見たことある気がする
デスゲーム感増してきて興奮してきたよ
Emperorでぶんぶん素振りして準備運動しつつ
この状況にぴったりな、チート級に便利なUCの出番だね
UC発動し、Emperorに「氷」を透過する性質を与える
これでどれだけ力任せにスイカを叩き割っても氷を傷付けることは無い
手当たり次第、のびのびとスイカを割っていくよー
梓のドラゴンたちがスイカを固定してくれるおかげで狙いも定めやすい
ふと思いつき、割ったスイカを手に取ってぱくり
おぉ、氷の上に置かれていたからかよく冷えてて美味しい
せっかくだからお土産に一玉持って帰ろうかな
乱獅子・梓
【不死蝶】
アトラクション扱いされたりB級映画扱いされたり
どんどん主催者が不憫に思えてくるな…
綾がスイカ割り担当をしてくれるようなので
俺はそれをサポートするとしよう
UCで氷属性のドラゴンたちを召喚!
動きやすいように可愛らしいミニサイズ
ミニドラゴンたちに指示して
スイカと氷との接地面に氷のブレスを浴びせ
スイカが滑って転がっていかないようにがっちり固定
他には、悪魔が割ろうとしているスイカを転がしたり
体当たりを食らわせ場外落ちさせたりして妨害していく
こんな妨害行為は正直良心が痛むが…
許せ、ここでお前たちを蹴落とすことが
結果的にお前たちを救うことになるんだ…!
と、自分にも言い聞かせつつ見守る
●低予算と言う意味では確かにB級なデスゲーム
ぶん! ぶん!
灰神楽・綾が愛用のハルバード『Emperor』を振るたびに、空気が薙ぎ払われる音が薄氷の上に響く。
「……楽しそうだな?」
楽し気に準備運動に勤しむ綾に、乱獅子・梓が声をかける。
「うん。落ちたらピラニアの餌になっちゃうかもなんて、デスゲーム感増してるよね。興奮してきた」
ぶぉんっ!
次第に大きくなる素振りの音が、綾の興奮を表している。
――うお、重量級武器。
――当たったら骨がヤバい。
――邪魔するなって事か。
――脅しかぁ。ワルいねぇ。
その音の迫力に、デビルスケルトン達はちょっと引いたり、勝手にワルい方向に解釈して感心したりしている。
「それに、こういうのB級映画で見たことある気がする」
「アトラクション扱いされたり、B級映画扱いされたり、どんどん主催者が不憫に思えてくるな……」
そんな周りの反応に気づいてか気づかずか、綾は笑顔で素振りを続け、梓はこおりのあくまの不憫さに溜息を零していた。
●チートも数の暴力も、ここでなら許される
「集え、そして思うが侭に舞え!」
梓の足元から、周囲に光が広がっていく。光の中から、何か小さなものがムクムクといくつも現れ、小さな翼を広げた。
『プ?』
『プギャ』
竜飛鳳舞――レイジングドラゴニアン。
任意の属性を持つドラゴンを召喚する梓の業で現れたのは、氷竜の零をぎゅっと小さくしたような小振りのドラゴン達。
「え、その数ズルくね?」
「でもそのズルさにしびれる」
「だな」
デビルスケルトン達もしびれて憧れるその数、なんと109体。
「スイカ割りは綾が担当するみたいだから、皆は手伝いを頼む」
梓の指示を受け、ミニドラゴン達は氷の上をポテポテ歩いていく。その様子は、やっぱりドラゴンと言うよりペンギンのようである。
『プーププッ!』
『プギャギャッ!』
しかしそこは小さくてもドラゴンだ。
ペンギンには出来ない芸当――氷のブレスを浴びせ、氷の上を滑って転がり回っているスイカを凍らせ、氷に固定させていく。
そうしてスイカが動かなくなったなら、綾の出番だ。
「梓もミニドラゴンたちもお疲れさん」
素振りを繰り返していた『Emperor』を、綾が大上段に振りかぶる。
「固定してくれたおかげで、狙いも定めやすいね」
『Emperor』は斬、打、突の3種の攻撃を可能とするハルバード。綾はそのハンマー部分を天に向ける形で構えていた。スイカを叩き割ろうと言うのか。
「ありゃあ、落ちたな」
「あんなハンマー、スイカごと氷も割れるに決まってらぁ!」
「落ちたくないならやめときな!」
それを見たデビルスケルトン達から、ヤジが飛ぶ。
或いは、綾を諦めさせてライバルを減らそうと言うのか。
だが、彼らも気づく事に綾自身が気づいていない筈がない。スイカだけを割る手段があるのだ。だから、梓も何も言わない。
「何処にいても、君を捕まえる」
短く呟いて、綾は『Emperor』を振り下ろした。
ハンマーがスイカに当たり、グシャッと叩き潰して、そのまま真下の氷を――。
「「「ハァッ!?!?!?」」」
信じられないその光景に、ヤジを飛ばしていたデビルスケルトン達から、間の抜けた声が上がった。
綾の攻撃は、氷を砕かなかった。
『Emperor』の先は、氷の中に吸い込まれたように消えている。実際、綾が『Emperor』を持ち上げれば、氷の中から槍斧とハンマー部分が現れた。
なのに、氷には亀裂ひとつ入っていない。
ディメンション・ブレイカー。
任意の物体を透過する性質を武器に与える業で、綾は『Emperor』を氷を透過する性質を与えたのだ。
「つまり、これでどれだけ力任せにスイカを叩き割っても氷を傷付けることは無い武器になってるのさ。便利だよね」
「はぁぁぁ? そんなのチートじゃねえか! カッケェ!」
「羨ましいぜ! 寄越せ!」
綾の言葉に、デビルスケルトン達は地団駄踏んだり、率直に羨ましがったりと、色々な反応を見せて来る。
「やーだよ」
デビルスケルトンの素直な要求を笑い飛ばして、綾はにこやかに『Emperor』を振り回りドッカンドッカンとスイカを割っていく。
「おい……やるか?」
「ああ……ここは悪魔らしく」
どうしても綾の武器が欲しいデビルスケルトン達が、顔を見合わせ頷き合う。
だが、何かお忘れではないだろうか。
「悪魔らしく悪巧みしてくれて良かったよ。少しは良心が痛まないで済みそうだ」
『プギィッ!』
『プププゥッ!』
梓のミニドラゴン達である。
「ドラゴンたち、GO」
そんな大雑把な梓の指示で、ミニドラゴン109体が一斉に悪巧みを考えていたデビルスケルトン達に体当たりしていった。
「うぉぉぉっ!?」
「ちょ、数多っ」
押し倒されたデビルスケルトンの上にミニドラゴンが飛び乗って、デビルスケルトン達は、そのまま氷の上を押し流されていく。
「もう駄目だー! 落ちる!」
「高さやっべえ! 楽しー!」
「振り出しに戻るのかー!」
(「許せ、ここでお前たちを蹴落とすことが、結果的にお前たちを救うことになるんだ……!」)
割と大丈夫そうに落ちていくデビルスケルトン達の悲鳴(?)を、梓は心を鬼にして聞き流していく。
「ん?」
そうして静かになった所で、梓は視線を感じた。
感じた方向に視線を向ければ、まだ落ちてないデビルスケルトンが、何やら熱い視線を向けているではないか。
「何て躊躇のない落としっぷり!」
「名のあるワルだろ? サインくれ!」
「……」
デビルスケルトン達の勢いに、梓は思わず押し黙る。
ミニドラゴン109体で既に憧れ的なものを抱かせていた梓は、その落としっぷりに残るデビルスケルトン達の羨望を一身に集める事になっていた。
「ドラゴンたち、GO」
「なにもしなくても落とされる!」
「やっぱすげぇワルだ!」
しかし梓は怯まず、デビルスケルトン達をミニドラゴン達で落としていく。
「梓、大人気だね」
大きく息を吐いた梓の背中に、綾の声がかかった。
振り向けば、笑いをこらえ切れていない綾が、真っ二つに割れたスイカの半分を片手に立っていた。
「ふと思い立って、斧の方で半分に割ってみたんだ。氷の上に置かれていたからか、よく冷えてて美味しいよ」
もう半分を、綾は既に食べたのだろう。その物言いと、そこらの氷の上に散らばる種で明らかだ。
もうツッコむ気にもなれずに梓がスイカを食べてみれば、確かに良く冷えていて甘味もあり、普通に美味しいスイカだった。
「……魔界でも、スイカは美味いんだな」
「せっかくだからお土産に一玉持って帰ってもいいかもな」
溜息交じりに呟く梓と笑う綾の足元で、ミニドラゴン達が褒美をせがむように、プギャプギャと鳴いていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
駒鳥・了
割れればオッケーね!
ならばと早速1コ拾って振りかぶりーの
うりゃっとデビスケちゃん後頭部目掛けてぶん投げる!
割れればラッキー!
割れなくてもそのままスイカドッチボール続行!
な-ぜーなーらーそのまま場外落ちしてくれても美味しいから!
逆にスイカが飛んで来たらルーンソードでぶった切る!
ほーらキレイに割れたよ!
妖剣は後でスミちゃん(別人格)に怒られそーだから使わないどく
お返しにこっちからもスイカ乱れ撃ちならぬ乱れ投げ!
つっても拾って投げるのスゴイ効率わっる
ここは拾うオレちゃんと投げるオレちゃんで
分担しよーねっと(UC発動
まー分担は臨機応変にね
さー同一人物による追い込みに勝てるデビスケちゃんは居るかなー?
●ルールなんか元々なかった
ゴシャァッ!
それは突然、飛んで来た。
「な、なんだぁ?」
デビルスケルトンの後頭部に当たって砕け散る、緑と黒。そして赤。彼らが今追いかけているのとまったく同じスイカである。
「何でスイカが……」
「見ろ、あそこだ!」
デビルスケルトンが気づいたのは、スイカを抱えた駒鳥・了であった。
「さっすがー。デビスケちゃん、頭蓋骨硬いね」
いい笑顔で言いながら、了はスイカを両手で振りかぶる。
「うりゃっ!」
そして投げた。
スイカを。
「うぉっ!」
ドッヂボールよろしく了の投げた第2球ならぬ第2スイカを、デビルスケルトンは咄嗟に槍で叩き落す。
「流石にラッキーは続かないか」
氷の上に落ちたスイカを待たず、了は別のスイカを拾い上げた。
「さあ、どんどん続けよう! スイカドッチボール!」
「「「ちっがあぁぁぁぁぅ!」」」
悪びれない了の言葉に、流石にデビルスケルトン達からツッコミの声が上がる。
『勝手に条件変えないで!?』
それどころか、この場にいないオブリビオンからすらツッコミが入る。
「え、でも割れればオッケーって言ったの、デビスケじゃん」
――とにかく沢山スイカを割った奴が勝ちってゲームだ!
言ってたね。
「スイカを投げて割っちゃダメとも言ってないよね? というわけで、オレちゃんはスイカを投げる! いいよね?」
ここはデビルキングワールド。
「オッケー!」
「ルール改造とか、ワルさパネェ!」
「着いてくぜ!」
穴だらけなルールの穴を畳みかけるように突いてきた了に、デビルスケルトン達は不満を言うでもなく、むしろ目を輝かせていた。
『……』
オブリビオンも、何も言えなくなっていた。
「おりゃっ!」
「なんのっ!」
了が勢い良く投げたスイカを、デビルスケルトンが抱える様に受け止める。
だが、ここはグラウンドや体育館ではない。氷の上だ。
「おおおお? 滑っ……滑る! 止まらねぇぇぇ!?」
勢いまでは抑えきれず、デビルスケルトンはスイカごと氷の上を滑っていき――そのままフィールド外に落ちていった。
(「よしっ」)
胸中で、了は拳をぐっと握る。了がスイカドッヂをああも強く主張したのは、こうした場外落ちも狙っていたからだ。
「なら、ワルい姉ちゃんも落ちちまいな!」
デビルスケルトンも、負けじとスイカを投げて来る。
スパーンッ!
「ほーらキレイに割れたよ!」
「スイカ割りに戻ったぁ!?」
「どっちもアリか!」
「見事なルールブレイカーっぷりだ!」
スイカを真っ二つにぶった切った直刀の魔法剣『kaleido sword』を掲げる了に、再び上がるツッコミと賞賛の声。
だが、了は次第に押されるようになった。
スイカを拾う、投げる、飛んで来たら切る。ひとりでそれを全部やろうとするのは、とても効率が悪い事だ。
まして、デビルスケルトン達は数がいる。
「ここは拾うオレちゃんと投げるオレちゃんで、分担しよーねっと」
だから了は、もうひとりの自分――オルタナティブ・ダブルを召喚した。
「オレちゃんタッグ結成! さー、同一人物による追い込みに勝てるデビスケちゃんは居るかなー?」
了がスイカをぶった切る隙に、もうひとりの了がスイカを拾ってぶん投げる。
どちらも了なのだから、臨機応変な分担も難しくない。
了の周りからデビルスケルトンがいなくなるまで、あまり時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
死のアトラクションは攻略できたか。次の出し物は…スイカ割り?
おお、次々と氷の上を滑ってくるぞ。よく育っていて、美味そうだ。
お土産に、持って帰らねば…。
くっ、スケルトンの奴らめ。炎を体に灯しおって…熱で
氷が溶けるじゃないか。よし、メカたまこ。あいつの後ろからそっと
近づきなさい。悟られぬようそっと近づいて、コケーと《大声》で
おどろかせて動揺を誘う。その隙に【烈紅閃】を放ち、
宇宙カラテと《功夫》の合わせ技で下へ蹴り落とすぞ。
滑るスイカはスラッシュストリングを《念動力》で振るい、
《斬撃波》を乗せてスタイリッシュにパカッと両断。
手ごろな三日月サイズにカットしたら、クーラーボックスに
詰めてお持ち帰りだ。
●ここまでのダイジェスト
「これなら宇宙と変わらない動きができそうだ!」
最近体得した、仙術の応用で重力を制御する飛行法で、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は最初のデスゲーム――氷の滑り台と氷のブロックの、アスレチックのようなコース――を悠々と飛んで越えた。
「ちょ、おい、飛ぶって!」
「自分の進むところが道だと言わんばかりの飛びっぷり!」
「痺れる程に卑怯な手段!」
「そのワルさに憧れざるを得ない!」
デビルスケルトン達の羨望と賞賛の声を浴びながら飛ぶガーネットは、この時は思いもしなかった。この後で、炎上案件が待っているなどとは。
●手荒にいくワケ
炎上案件と言っても、物理的な炎である。
「……これは少し拙いか」
目の前で燃え盛る炎の壁に、ガーネットが臍を噛む。
ただの炎なら、ガーネットがそんな顔をすることもなかっただろう。
だがこの炎。動くのだ。
「くっ、スケルトンの奴らめ。炎を体に灯しおって……」
燃え上がっているのは、ボーンフレイム――デビルスケルトン達が、自分の骨に生やした炎なのだから。
「熱で氷が溶けるじゃないか」
ガーネットの懸念は、既に氷の上に幾つかの穴となって現われていた。
「姐御なら飛べるから、問題ねえよなぁ?」
「氷が無くても、落ちねえだろぉ?」
どうやら、それがデビルスケルトン達の狙いらしい。
「ふっふっふ。この炎を出していれば、こっちも骨を自在に操れるからな!」
「頑張れば、氷が無くても少し浮いてるくらいは出来る!」
(「悔しかったら修行しなさい――なんて煽るんじゃなかったかな」)
自ら氷を溶かして作った穴の上に、かなり頑張って浮かんでみせるデビルスケルトンの様子に、ガーネットは胸中で溜息交じりに呟く。
実の所、煽ったのは何も問題ない。
ガーネットがこんな状況に置かれているのは、飛んだからだ。デビルスケルトン達には真似できない速度で、置き去りにした。
それは、直接的な手出しはしなかった、と言い換えられる。
「ワルい妨害だろー!」
「妨害楽しー!」
要するに、ガーネットなら妨害しても攻撃されないだろうと、デビルスケルトン達は高を括っているのだ。
だがそれは――慢心と言うものである。
コッケェェェ!
「「「うおっひゃぁっ!?」」」
背後に響いた大きな鳴き声に、デビルスケルトン達の肩がびくっと跳ね上がる。
振り向けば、そこにいたのは金属製のニワトリが鈍色の翼を広げていた。
にわとり型ドローン、メカタマコEXである。
ガーネットがこっそりと飛ばして、デビルスケルトン達の背後に回らせたのだ。
そしてデビルスケルトン達が驚いた隙に、ガーネットは動いた。
「多少手荒にいかせてもらうぞ」
デビルスケルトン達の頭上まで跳躍したガーネットの脚が、鮮血のように紅いエーテルに覆われる。
「穿ち、砕く」
――烈紅閃。
纏う炎をものともせずにガーネットが叩き込んだ紅い蹴りが、デビルスケルトンを氷の穴に蹴り落とす。
「げぶっ! つ、冷て!」
氷の下のプールに落ちたデビルスケルトンとは逆に、ガーネットは蹴った勢いで更に高く跳躍していた。
「これが宇宙カラテだ。お前達は功夫が足りないな」
鮮紅の蹴撃が降るたびに、デビルスケルトンが1体ずつ蹴落とされていく。
周りにいたデビルスケルトンを全て蹴落として、ガーネットは氷の上に降り立った。
「しまった。氷が溶けかけで、つるつる滑って上がりにくい!」
氷の上に這い上がろうとするデビルスケルトン達は無視して、ガーネットは別の方向に向き直る。
その赤い瞳が見据えるのは――次々と氷の上を滑ってくるスイカ。
「ふっ」
ガーネットが腕を振るうと、まだ遠かったスイカが一瞬で割れた。
「うむ。よく育っていて美味そうなスイカだ」
切り口から見える綺麗な赤い果肉に、ガーネットは満足気に頷く。
「これは、お土産に持って帰らねば」
宇宙怪獣さえ斬りさくワイヤーブレード『スラッシュストリング』で食べ易い三日月型に8等分にしたスイカを、ガーネットはいそいそとクーラーボックスに詰めて回る。
氷が溶ける事を気にしていたのも、こうしてスイカを拾いたかったからだ。
氷に穴が開いてしまえば、スイカはそこに落ちていくのだから。
「氷が……滑っ!」
「あ、ピラニアが! あ、噛まれる!」
「この危なさ……新感覚!」
その氷の穴に落ちたデビルスケルトン達は、放っといても大丈夫そうな感じに元気に藻掻いていた。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
やっぱヤーパンの夏はスイカ割りでござるな!
主催者もよくわかっている!
めちゃんこ上がった身体能力を全力で活かしスケルトンよりも先にスイカに向かってダッシュ!
落ちてるスイカを拾ったら全力でスケルトン目掛けて投擲!命中!吹き飛ぶスケルトン!しゃあっストライック!
つまりよぉ…スケルトンのドタマをスイカでかち割ればいいんだろ?
スイカをウェーイウェーイと投げていたがここで拙者ある事に気がつく
わざわざスイカ拾わなくても良くない?スケルトンでスケルトン殴れば良くない?
得物はそこらでのびてるスケルトンでいいでござるな!のびてなきゃのせばいいしな
両足掴んでジャイアントスイング!スケルトンの群れ目掛けてそぉい!
●変態疾走
「くそう! スイカ丸いから滑るな! ズリぃぞ!」
「じたばたするんじゃねえ!」
氷の上を滑るスイカを捉えて割ろうと、デビルスケルトン達が槍を振り回す。
だがそのスイカを狙っているのは、彼らだけでない。
「デュフフフ!」
エドゥアルト・ルーデルが、独特な笑いを上げて氷の上を駆けていた。
なんで氷の上を走れるんだろうこの人。
「デュフフだ、デュフフが来たぞー!」
「外道のお手並み、拝見だな」
エドゥアルトの容赦のなさを知っているデビルスケルトン達が、羨望と期待の混じった視線を向けながら道を開ける。
「ドゥフフフ!」
そんな骨たちの前で、エドゥアルトはビーチフラッグみたいにヘッドスライディングしながらスイカをキャッチ。
「ゲヒヒヒヒ!」
更に器用にもスイカ抱えて、エドゥアルトは跳ね起きる。
「なにあの動き、コワイ」
「ワルくなれば、俺にも出来るかな?」
そんなエドゥアルトの動きに、ざわつくデビルスケルトン達。
本当に、慣性とかどうなってるのだろうと言う感じのだが、これ敵より変態的だと色々能力が上がるユーベルコードの成せる業なので、まあ何でもありだ。
紳士と言う名の変態に、追いつけるツッコミは不在である。
「ウェイ! ウェーイ!」
「――え?」
そして陽気なノリと不穏な笑みを同居させたエドゥアルトは、固唾を飲んで見守っていたデビルスケルトンの一体に、空中回転決めながらスイカを全力でぶん投げた。
砕けるスイカ!
吹き飛ぶデビルスケルトン!
「しゃあっストライック!」
ボウリングじゃない。
「やっぱヤーパンの夏はスイカ割りでござるな! 主催者もよくわかっている!」
シュタッと着氷したエドゥアルトは、丁度滑って来たスイカを拾い、ギラーンッと目を輝かせた。
「つまりよぉ……スケルトンのドタマをスイカでかち割ればいいんだろ?」
「割られるのこっちぃ!?」
「どうしてそうなった!?」
「さすが外道……理解が及ばねえ……」
エドゥアルトの発言に、デビルスケルトン達は戦慄するばかり。
だが――この時のエドゥアルトは、まだ大人しい方だったのである。
「わざわざスイカ拾わなくても良くない?」
エドゥアルトがそれに気づいたのは、近くに拾えるスイカがなくなって、手持無沙汰になった時だった。
スイカがないなら――?
「スケルトンでスケルトン殴れば良くない?」
どうしてそうなる。
「得物はそこらでのびてるスケルトンでいいでござるな!」
お誂え向きに、エドゥアルトの周りにはスイカぶつけられてぶっ倒れたデビルスケルトンが転がっているではないか。
「デュフフフ! ドゥフフフ! ゲヒヒヒヒ!」
その両腕をがしっと掴むと、エドゥアルトまた変態ちっくな笑いを上げながら、氷の上で回り始めた。
「ジャイアントスイングそぉい!」
エドゥアルトに遠心力たっぷりつけてぶん投げられたデビルスケルトンは、成す術なく他のデビルスケルトン達に向かって飛んでいく。
「あれはちょっと楽しそうかもぉぉ!」
「外道には敵わないなー」
投げられた方とぶつかった方がぶつかり、ぐしゃぁっとスイカも巻き込んで。数体のデビルスケルトン達が場外に吹っ飛ばされていった。
大成功
🔵🔵🔵
鬼頭・黎
……どこからツッコミを入れればいいんでしょうか。まあゲームの仕掛人と戦うためですからしっかりやりますか
素手でもいいんですが、何か棒のような物があれば楽そうですね……。他の人もやってましたし、オレも便乗させてもらいましょうか
【無法者の剛力】で手頃なところにいるスケルトンを掴んで棒の代わりにします。その後は振り回してスイカを割ったり、スケルトンをぶっ飛ばすのに使います。それと炎を防ぐために盾としても使えそうですね
止まっていると的になりそうなので動き回るようにします。足元には常に注意しておく
終わったら掴んでいたスケルトンを投げ捨てます。片付けはちゃんとしないといけませんからね
●朱に交われば赤くなる
「……どこからツッコミを入れればいいんでしょうか」
鬼頭・黎が独り言ちた呟きは、氷の上に響く喧噪にかき消された。
既に氷の上で、鬼頭・黎は独り言ちていた。
既に、あちこちでスイカ割りと言う体すら崩れかけている。もう、なんだか様子が違うどころの話ではない。
「まあゲームの仕掛人と戦うためですからしっかりやりますか」
だから黎は、ツッコミを諦めて無骨な黒いガントレット『After dark』を嵌めた拳をぐっと握った。
「ふむ……」
呟く黎の視線の先には、所々赤くなった『After dark』。その赤は、何度かスイカを叩き割った証である。
「素手でもいいんですが、割りにくいですね」
そもそも、スイカって素手で割れるものだっけ。
「何か棒のような物があれば楽そうですね……」
自分がツッコミを入れられそうな事を言っているのに気づいてか気づかずか、黎は棒のようなものを探して視線を彷徨わせた。
そして、気づく。
棒のようなものなら――骨が沢山あると言う事に。
「他の人も遠慮なくやってましたし、オレも便乗させてもらいましょうか」
黎は手近なデビルスケルトンに近寄ると、その足の骨をむんずと掴む。
「お? なんだぁぁぁぁぁぁぁ?」
訝しかけた所で急に世界が回って、デビルスケルトンが奇声を上げる。世界が回ったと彼が感じたのは、実際に回ったからだ。
「思っていたより軽いですね」
黎に、ひょいっと持ち上げられて。
無法者の剛力――ラフィアン・フォース。
その名の通り、人外の剛力を得る業。
「ですが持ち易さは思っていたより良いです」
「あぶ、あぶぶぶっ!?」
黎に軽々を振り回される、デビルスケルトン。
デビルスケルトン1体の重さが何Kgであるかは定かではないが、81t以上と言う事はないだろう。そんなにあったら、3センチ程度の薄氷なんてとっくに割れている。
「強度の方は……」
掴み心地を確かめた黎は、デビルスケルトンをそのままスイカに振り下ろした。
グシャッと、スイカが砕け散る。
「スイカ程度、問題ないですね。なら次は……」
黎はデビルスケルトンを勢い良く振るい、別のデビルスケルトンに叩きつけた。
「あばばばばっ!」
「これまた容赦なくワルい攻撃!?」
棍棒代わりのデビルスケルトンを叩きつけられた方のデビルスケルトンが、あっさりとフィールドの外まで吹っ飛ばされた。
「骨同士も行けますね。炎を防ぐための盾にも使えそうですね」
「目が回りそうなんだが……」
満足げな黎に、スイカ塗れになったデビルスケルトンが声を上げる。
その反応に、黎は足の骨をしっかり掴んだままデビルスケルトンに視線を向けた。
「骨をもぎ取られたり、ぶん投げられたりするより、掴んで振り回されるだけの方が良くありません?」
「割と究極の選択だー!!!」
黎は見ていた。
他の猟兵達が、デビルスケルトン達をどうしているか。
ここだけの話ではない。この前の、最初のデスゲームでもだ。
そして悟っていた。不可抗力の範囲で済ませようとしていた自分は、とても扱いが優しい方だったと。もっと容赦なく扱っても、大丈夫だと。
「片付けはちゃんとしないといけませんね」
だから黎は棍棒代わりに振り回したデビルスケルトンが完全に目を回した所で、フィールドの外にぽいっと投げ捨てる。
「悪魔的な所業が増えた……」
「新たなワルが誕生してしまったか……」
デビルスケルトンの羨望の眼差しを浴びるくらい、場に染まった――とも言う。
大成功
🔵🔵🔵
ユディト・イェシュア
次のステージは…
スイカ割りですか?
見たところ風情というものが感じられませんが
これはデスゲーム
攻略に燃えてしまいますね…!
あまり動くと滑ってしまいそうですし
動かずその場でスイカを割りましょう
氷を割らないように気を付けて
すくいあげるように転がってきたスイカをメイスで割っていきます
義姉に食べ物は粗末にしてはいけないと教わったのですが…
あ、雑食の魔界ピラニアが食べてくれるんですね
安心しました
というわけでどんどん割っていきましょう
彼らのゲームに対する執念とも呼べる情熱に敬意を示しつつも
デビルスケルトンたちも適度に氷から落とします
すみません…でもきっとこっちの方が安全なんです
あとは俺たちに任せてください
●スイカの色はスイカ色
「スイカ割りの風情と言うものは感じられませんが、デスゲームと考えると、攻略に燃えてしまいますね……!」
氷の上で、ユディト・イェシュアは静かに燃えていた。
だが一方で、その頭の中は氷のように冷静に状況を捉えようと努めている。
「あまり動くと滑ってしまいそうですね」
それは、スイカを追いかけようとして一緒になって滑っていくデビルスケルトン達を見れば明らかだ。
氷の上では滑る。
それは猟兵でも、同じ事が起こり得る現象。
そして、スイカにも起こる現象だ。
「ふむ」
ユディトの足元を、ツイーッとスイカが滑って流れて行った。
「これ、あまり動く必要がないのでは?」
そこに気づいたユディトは、払暁の戦棍を再び先端を下に向けて両手で構えた。
だが今回は、氷に突き立てはしない。
「氷を割らないように、気を付けて……」
メイスを先端が足元の氷に触れるか否かのぎりぎりの高さに保ち、こちらに向かって滑って来るスイカを見据える。
「俺には視えます……スイカ色が」
――黎明の導き。
ユディトは、他人のオーラが見える。時には、オーラから敵の弱点も見抜ける。だが、スイカのオーラは、幾ら見ても中の果肉と同じ赤だった。
弱点らしい弱点もない。だが、問題ない。
スイカの接近に合わせて、ユディトはメイスをスイカと逆方向に振り上げ――。
「ふっ!」
振り下ろし、そのまま振り上げた。掬い上げるようなフルスイング。
まるでゴルフのような動きだが、ユディトが持っているのはゴルフクラブではなくメイスであり、叩いた方もボールではなくスイカである。
パァンッと、スイカが見事に粉砕されていた。
しかし、その光景にユディトは眉を顰める。
「これは……食べ物を粗末にしている気が」
義姉に散々教わった、食べ物は粗末にしてはいけないと言う言葉が脳裏に蘇る。
「食べ物で遊ぶなんて、ワルいだろ~」
「だが安心するんだな!」
「魔界のピラニアは雑食だ!」
そんなユディトに、デビルスケルトン達が声をかけてきた。
「なるほど。それなら安心ですね」
無駄にならないのなら、それでいい。
ユディトは安堵の笑みを浮かべて、転がって来るスイカに合わせて少し立ち位置を変えて、メイスの柄を握り直す。
「さあ、どんどん割っていきましょう」
再びのフルスイングが、スイカを粉砕した。
順調にスイカ割りのスコアを増やしていくユディトに、デビルスケルトン達が焦りを覚えるのは当然であろう。
そして、彼らは考えた。考えて――。
「このスイカは渡さねぇぇぇぇ!」
ユディトが待ち構えるスイカを追って、ヘッドスライディングの要領で氷の上を滑っていくと言う行為に出た。
しかも骨に炎を生やす事で、全身を滑りやすくして加速している。
「兄さんよぉ? 俺ごとスイカを、砕けるかなぁ?」
「なるほど。まさに身体を張った作戦と言うわけですか」
デビルスケルトンの意図を察し、そしてオーラから執念とも呼べる情熱を感じ取り、ユディトは敬意に似た感情を抱く。
同時に、メイスを強く握り締めた。
あれほどの情熱、手加減するのが失礼と言うものだ。
「すみません……でもきっとこっちの方が安全なんです!」
パァンッ!
「ぶげらっ!?」
ユディトのフルスイングで、スイカが砕け、デビルスケルトンが吹っ飛ばされる。
「ス、スイカごとやりやがった……」
「あの人もワルだったか……」
ついに、ユディトにもデビルスケルトン達の羨望の眼差しが向けられた。
大成功
🔵🔵🔵
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー!
スイカ割りかー、夏ってカンジ!
ボスの人、きっとイイ人だね!(大喜び)
アンちゃん、コッチは任せたー。
さてと、割ったスイカはおいらのモノ。
やぶさか☆2で鍛えたフィギュアダンスを披露するゼ♪
くるりん回って、ゆべこ発動!
(如意な棒 カチンとセット)
夏はウキウキ☆ 西瓜ドキドキ★(歌う)
おいらミラクル☆キミもグルグル★(ジャンプ)
棒を下段に構え、衝撃波と共に凪ぎ払い。
スピン披露しながら、小粋なステップで進むよ♪
ときどきデビすけさん巻き込んだケド。
ちゃんと吹き飛んでくれてるから、だいじょぶ!(にぱ)
飛び立つピラニアも叩き落し。お刺身は美味しいよね♪
いぇい、一等賞!(びし)
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
美味しそうなスイカを沢山割るが勝利
……割ったスイカは割った人のもの
まつりん、勝利(スイカ)を我が手に
ざっと一面を見渡し転がり出るスイカの位置を確認
そうね…まずはライバルを蹴落とす
スイカに槍を向けるデビすけ(スケルトンのこと)達に向け【白銀の仲間】
透明の狼さん達、デビすけに突撃し、槍の軌道をデビすけ達の足元へと逸らそう
焼きスイカは好みでないから、足元の氷を溶かして自滅して頂く
ふう、スイカは守った
では
滑ってきたスイカを1つ手に取り、スイカ溜まりに目掛けてボーリング・フル・スイング!!
割れたスイカは漏れなく回収
まつりん、そちらはどう?
1箇所に集めて美味しく頂こう
●ニワトリロボと白銀の狼――そして破壊へ
ツルツルとした氷の上を、スイカが滑って転がっていく。
それを追って、デビルスケルトンもシャーッと滑っていく。
「……」
そんな賑やかな光景に、木元・杏がいつになく真剣な眼差しを向けていた。
「アンちゃん。何で狩猟モード?」
木元・祭莉は、杏がどういう時にこういう眼差しになるか知っている。
例えば、いつぞやの火山地帯でチキンの群れと相対した時にも見せた表情だと。
「いい、まつりん。美味しそうなスイカを沢山割るが勝利」
杏は狩人の目のまま、祭莉の肩に両手を置いて告げる。
「なら……割ったスイカは割った人のもの」
「なるほど。つまり、割ったスイカはおいらのモノ」
杏の言わんとする事を察して、祭莉はこくんと頷いた。
――要するに。
この2人の中では、スイカを割れば割った分のスイカを食せる、という事になっているようなのだ。
……そう言う事だろうか。
「よーし! アンちゃん、コッチは任せたー!」
「んむ。まつりん、勝利(スイカ)を我らが手に」
まあ、2人ともとっても獲(や)る気になってるようなので、何よりです。
「さてと、やぶさか☆2で鍛えたフィギュアダンスを披露するゼ♪」
氷の上でくるりんと回りながら、祭莉は如意みたいな棒をグイっと伸ばした。足元から顔に届くくらいの長さでカチっと止めて、自分もぴたりと止まる。
「明るく、楽しく、行こうっ! 夏ってカンジで、スイカサマーの歌!」
「なんだなんだ?」
「なにが始まるんだ?」
何事かと視線を向けて来るデビルスケルトン達をびしっ指差して、祭莉は深く大きく息を吸い込む。
そして――。
「夏はウキウキ☆ 西瓜ドキドキ★」
歌い出した。
「おいらミラクル☆ キミもグルグル★」
ぴょんっと氷の上で跳び上がって、祭莉はマイクスタンド代わりの如意みたいな棒を空中で構えた。着地と同時に下段の構えに移行し、ぐるんと振り回す。
棒から放った衝撃波が、デビルスケルトン達のお留守になっていた足元をスパーンッと薙ぎ払った。
「デビすけさん☆ 巻き込んでゴメン★」
更に祭莉は倒れたデビルスケルトン達の間を小粋なステップで駆け抜けて。
「でもちゃんと吹き飛んでくれてるから☆ だいじょぶ!」
ギュルルッとスピンしながら、再び棒を振るって薙ぎ払う。
「歌って踊りながらの妨害か!」
「こんな不意打ちもあるんだな」
「やはりワルい子だったか!」
賞賛やら感心やらが混ざった言葉と視線を祭莉に向けながら、デビルスケルトンが氷の上に身を起こす。
「え? 違うよ? そろそろ来るよ♪」
だが、そんな彼らに祭莉は歌いながらそう返した。
「来る?」
「なにが……?」
首を傾げたデビルスケルトン達の背後に、何かが現れる。
陽光の舞歌。
祭莉が舞い歌っていたのは、ある種の儀式のようなものだ。
戦闘用ニワトリ型ロボを召喚するための。
「……ニワトリ」
「……いや、何かでかくね?」
「って言うかロボだこれー!?」
それがロボだとデビルスケルトン達が気づいたのは、突進で氷の外まで吹っ飛ばされた後の事だった。
「良く考えたら、スイカを追いかける必要なくね?」
「あ、そっか」
「俺達にはこのデビルスピアがあった!」
スイカを追いかけ回していたデビルスケルトン達の数人が、ふと足を止めて、ずっと持っていた槍に視線を向ける。
「……」
その穂先に炎が灯るのを、杏が少し離れた所で眺めていた。
「静かにね」
目を閉じて、杏はそれだけ呟く。
「おい、あれって……」
「ああ、コース破壊魔だな」
デビルスケルトン達も、杏の存在には気づいていた。
「でも動かないな?」
「流石にここの氷は壊せないんだろ。落ちるし」
気づいていて、その場から動かない杏を脅威ではないとみなす。
「よし、氷を突いて……」
「炎を伸ばす!」
それが致命的なミスだったと気づかず、デビルスケルトン達は槍を構えた。穂先に灯った炎が膨れ上がって、伸びていく。
だが――。
「お、おい。どこに槍を向けてるんだよ」
「お、お前こそ」
突然、彼らの構えた槍が動かなくなった。伸びる炎が、足元の氷に当たる角度で。
「どうなってんだ……!」
「槍が動かねえ……!」
伸びる炎に焦るデビルスケルトン達。炎の角度を変えようにも、火元の槍はびくともしない。まるで何かに固定されたかのように。
実際、固定されていた。
彼らには見えない、白銀の狼の牙によって。
――白銀の仲間。
杏にしか見えないシロガネの動物を放つ術。
見えないが故に、デビルスケルトン達は気づかなかった。自分達の槍に、静かに近づいてきた白銀の狼が噛みついている事に。
「こ、氷が溶け――」
ついにデビルスケルトンの1体が、足元の氷を失い、その下のプールに消えた。
(「焼きスイカは好みでないから、このままデビすけには自滅して頂く」)
作戦通りにデビルスケルトンを落として、杏は胸中で拳を握る。あとは、じわじわとデビルスケルトン達の足元の氷が溶けるのを待つばかり。
(「……え?」)
だがその直後に、杏は予想外の光景に目を丸くすることになった。
「ふーっ、あぶね」
「炎消せば良かったな」
デビルスケルトン達の槍から伸びる炎は、彼らの意志で消せるのだ。
自滅を待つという杏の目論見に気づいたわけではない。だが、目の前で氷が溶けて同族が落ちれば、消せる炎を消すのは当然の事だ。
「しかし動けないな」
「どうしたものか……」
とは言え、彼らは未だ杏の術中にある。炎を消したからとて、デビルスケルトン達が見えない白銀の狼に気づくことはないのだ。
「……まつりん、こっちも」
「ん、おっけー♪」
そして、動けないデビルスケルトン達を祭莉のニワトリ型ロボが蹴散らした。
その直後。
――ミシッと言う、不穏な音が響いた。
「では」
その音に気づいた風もなく、杏は満足げにスイカを1つ拾い上げる。
怪力の握力でメキッとスイカの皮に指の穴を開けると、杏はスイカをボーリングの玉のように構えた。
狙うは、スイカが放出されている地点。
「!!!」
白銀の狼が、そこに集めてくれたスイカ目掛けて、杏は構えたスイカを全力のフルスイングで、ぶん投げた。
――ミシッ。
ところで、祭莉が召喚したのは、戦闘用ニワトリ型ロボである。
そしてここは、薄氷の上である。
ニワトリ型とは言え戦闘用ロボが乗って、薄氷は大丈夫であろうか。
――ミシッ。
そんな筈はない。
既に耐荷重オーバーで割れるぎりぎりだった氷の上で、杏がスイカをぶん投げた。スイカとスイカがぶつかって砕け散った衝撃が、薄氷にトドメを刺す。
ピシッ――バキバキッバキンッ!
「こ、氷が砕け……!」
「お、落ちる……!」
薄氷にヒビが走り、デビルスケルトン達の足元で氷が割れて、傾いていく。
「あ、危ない!」
そんな中、杏はひょいっと大きな氷の欠片を持ち上げた。
「ふう、スイカは守った。まつりん、そちらはどう?」
割れたスイカで真っ赤に染まった氷の欠片を頭上に掲げ、杏は後ろを振り向く。
「ピラニアのお刺身は美味しいよね♪ いぇい、一等賞!」
見れば、祭莉は割れた氷の下から飛び出してきたピラニアを、歌いながら棒を振り回して氷の上に叩き落していた。
「んむ。安全な所で、美味しく頂こう」
「さんせー。ボスの人、きっとイイ人だね!」
大量のスイカとピラニアを抱え、杏と祭莉はまだ氷が割れそうにない安全地帯へすたこら駆けていく。
「また破壊してった……」
「破壊魔だったな……」
「将来が楽しみだぜ……」
そんな2人に、デビルスケルトン達が冷たい水の中でピラニアに齧られながら戦慄と期待の混じった眼差しを向けていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
スイカを割るなんてとんでもないわ!!
え、そもそも何で割るのよ!?割ったスイカ地面にべしゃーってなるわけよね!?魔界ピラニアが食べる?私が食べれないじゃない!!
というわけでスイカは回収するわ!デビルスケルトン?競争相手が全部いなくなればスイカは割らずに済むんじゃないかしら!間違いないわ!食べられない、持てない分は仕方ないわね!ほんと仕方ないわね!涙を流して割るわ!
というわけでさっそく杖に乗って空を飛んでひょいひょい飛び回りながら足場を溶かしていくわ!
適当に火の海にすればいいんじゃないかしら!
仲間猟兵は強い子だからたぶん勝手になんとかするわ!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
●たーまやー
「そっちに滑って行ったぞ!」
「回り込め!」
氷の上を滑るスイカを、デビルスケルトン達が追っている。
どうやら数人でスイカを囲んで捕まえようとしているようだ。
「よし、もう少しだ」
次第に、スイカ包囲の輪が狭まっていく。
「スイカを割るなんて――」
そこに、声が降って来た。
「とんでもないわ!!」
「うぼぁっ!?」
続いて降って来た声の主――フィーナ・ステラガーデンが、デビルスケルトンの背中に飛び蹴りで突っ込んできた。
――やばい、魔女の姐御だ!
――近寄るな! 焼かれるぞ!
ズザァッ!
前のステージの問答無用な焼き入れっぷりの印象が強いデビルスケルトン達が、フィーナを怖れて距離を取る。
「えっと……姐御は何が気に入らないんで?」
「そもそも何でスイカ割るのよ!?」
「最初っからぁ!?」
そして恐る恐る訊ねたデビルスケルトンが、スイカ割りの根本に対するフィーナのツッコミに頭を抱える。
「割ったら、スイカ地面にべしゃーってなるわけよね!?」
実際、べしゃーってなった赤い跡が、氷の上に幾つも残っていた。
「どうすんのよ、これ」
「魔界ピラニアが氷ごと食べるんじゃね?」
「あいつら、雑食だもんな」
それを見たデビルスケルトン達が、顔を見合わせる。
「……じゃない」
だが、それこそが、フィーナにとって『とんでもない』ことであった。
「魔界ピラニアが食べたら、私が食べれないじゃない!!」
「自分の為ー!?」
「清々しいほどに自己中!」
ドきっぱりと言い切ったフィーナに、デビルスケルトン達が顎の骨が外れそうな勢いで大口を開けていた。でも目が輝いてるから、これ羨望だな。
「というわけでスイカは回収するわ!」
フィーナは背中の黒マントをバサッと氷の上に広げると、その上に回収したスイカを並べられるだけ並べて、風呂敷の要領できゅっと包み込んだ。
更にトレードマークになっている黒いとんがり帽子も脱いで、中にぎゅむぎゅむとスイカを詰め込み出す。
「「「自由だぁ……」」」
スイカ割りもデスゲームも知ったこっちゃないと言わんばかりのフィーナに、デビルスケルトン達も何も言えなくなる。
「俺らはあっちで割ろう」
「そうだな……」
そして彼らは、フィーナからそっと離れていく。
「「ちぃっ! これ以上は限界ね。あとは食べられるだけ食べるとして……」
そして、スイカでパンパンになった帽子を抱えたフィーナが、持ちきれも食べきれないスイカを割るしかないかと涙を飲もうとして――気づいた。
スイカ割りを再開しているデビルスケルトン達に。
「あいつら全員落ちて競争相手がいなくなれば、誰もスイカ割らずに済むんじゃないかしらね? うん、間違いないわ!」
そう自己完結したフィーナは、マントで包んだスイカを背負い、スイカを詰めた帽子を抱えて、杖に乗ってふわりと空中に浮かんで行く。
「ってことで、ここ、火の海にするから」
「「「へ?」」」
そしてデビルスケルトン達の頭上に、フィーナのそんな言葉が降って来た。
(「他の猟兵は、何とかするわよね。皆強いし」)
根拠のない信頼を胸に、フィーナは火球を空に放った。
ヒュルルルル~と音を立てて、火球がどんどん上がっていく。
そして、パァンとまるで花火のように、火球は弾けた。
炎の雨。
フィーナが放った術の名の通り、分裂した小さな火球が雨の如く薄氷に降り注ぐ。
「うわっ、あちゃちゃちゃっ」
「結局焼かれる!?」
「氷も溶ける!?」
丁度その時、炎の雨の圏外でも氷が一気に割れだしていた為、デビルスケルトン達に残された安全な逃げ道は、場外に飛び込む事しか残されていなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『こおりのあくま』
|
POW : 狙った相手は逃さない
【ステッキ】を向けた対象に、【氷の魔法】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : 得意な地形に変えるのもお手の物
【雪】を降らせる事で、戦場全体が【雪原】と同じ環境に変化する。[雪原]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : 形から入るのも大事
【理想とするデビルクイーンの姿】に変身し、武器「【ステッキ】」の威力増強と、【舞い散る雪の結晶】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
イラスト:蒼夜冬騎
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ミネルバ・レストー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●finalステージはクローズドサークル
デビルキングダムの悪魔達は、結構強くて、頑丈だ。
だからこそ、こおりのあくまはデスゲームを仕掛けた。
強い悪魔達と正面から戦うのはオブリビオンと言えどリスクがあるので、自分は安全圏にいながら殺す為と考えた作戦だった。
そんなこおりのあくまが、悪魔達を乗ったり投げたり吹っ飛ばしたりと、割と手荒に手玉に取りながらデスゲームからの脱落で済ませてきた猟兵達と、正面切って戦おうとするなんて事があるだろうか。
ある筈がない。
――ヒュゴォォォォォッ!
色々あって半分以上が溶けたり崩壊したりした薄氷ステージの先に進んだ猟兵達の前に広がっていたのは、雪景色であった。
一面の銀世界……などと言えればよかったが、これはただの吹雪の雪原である。
さっきまでのサマー感が、一気に吹っ飛んでしまった。
『よくも来たわね、猟兵!』
吹雪の何処かから、こおりのあくまの声が響いて来た。
姿は見えないが、気配は近くに感じられる。
『なーに? この景色に文句あるの?』
誰も訊いていなのに、こおりのあくまが勝手に喋り続ける。
『わたし、言ってないわよ。一言も。デスゲーム突破してきたら正々堂々戦うなんて』
そうだっただろうか。
そうかもしれない。
『わたしは、こおりのあくま。雪と氷はわたしの手にある。こう言う得意な地形に変えるのはお手の物よ。そしてゲームのフィールドの地形を好きなように設定するのは、デスゲーム主催の特権よ!』
姿も見せずに、いけしゃあしゃあと言ってくるこおりのあくま。
『ちゃーんと救済措置は用意したわよ? 幾つか小屋を作ってあげたから』
目を凝らせば、このスタート地点からでも、それらしいシルエットが見えた。
『でも吹雪で山小屋……何も起きない筈、ないわよねぇ?』
どうせ何かトラップでも仕掛けてるんだろう。デスゲームっぽく。
『悔しかったら、わたしを捕まえてごらんなさい。出来るもんならね』
そんなフラグめいた言葉を残し、こおりのあくまの気配は薄れていった。
そして、吹雪の中に猟兵達だけが残される。
理不尽な部分はあるが、何はともあれ、デビルスケルトン達を排除して、猟兵達だけでこおりのあくまとの対決には持ち込めた。
――さあ、最後のデスゲームを始めよう。
====================================
3章、こおりのあくまとのボス戦です。
だがこれはデスゲームシナリオ。
普通に戦うなんて、OPにも書いていないのです。
状況をまとめますと、こおりのあくまが、SPDのユベコ【得意な地形に変えるのもお手の物】を一度使用した結果、と言うのが吹雪な雪原になります。
雪原で戦う場合、視界は良くないです。
点在する小屋の中に入れば、雪原の影響はなくなります。
全ての小屋には何故か煙突があるようです。そう言う事だ。
なお、重ねて使えないと言う条件は特にないので、【得意な地形に変えるのもお手の物】は再度使ってくるかもしれません。判定次第です。
雪原で戦うもよし、小屋の中に入って待つもよし。
なお小屋にはトラップがあるのを示唆している記述がありますが、トラップはプレイングで好きに書いて頂いて構いません。むしろ書いてきて。
プレイングは、今回はこの導入公開後から受付ます。
締切は別途告知しますが、7/21(水)頃までは受付出来ると思われます。
====================================
鬼頭・黎
やっと主催者のお出ましか。正々堂々と戦うなんて柄じゃないから丁度いい。思いっきりやっつけるとするか
戦闘場所は小屋の中。あらかじめ照明等を壊しておいて室内を真っ暗にする。……所々落とし穴があるな。これはぱっと見た感じだとわからそうだ、なら隠れて遠距離攻撃すれば問題ない
敵が来たら闇に紛れた上で【不可視な魔の手】を使って攻撃を仕掛ける。こちらは暗視があるし、攻撃が飛んで来た方を狙えば当たるだろうしな。直接攻撃するだけではなくて、小屋の中にある物もUCで投げればより混乱させられそうだ。側まで来たら容赦なくグラップルで捕まえる
ずるい?それは褒め言葉だ。あと自分が好き勝手に決めたものが通ると思うなよ
●正々堂々なんて柄じゃない
「ふぅ」
肩にかかった雪を払い落とし、鬼頭・黎が小さく息を吐く。
その息は、外で吐いたように白くはならなかった。
パチパチッと焚き木が爆ぜる音に視線を向ければ、黎が何もしていないのに、暖炉には火が灯っている。
「……意外としっかりしてますね」
暖かな空気に、黎は緩みそうになる気を引き締める。
この暖かさ自体が、恐らくはトラップだ。
「……所々落とし穴がありますね」
そうして暖かさで気を緩めさせておいて、落とす算段だったのだろう。
ぱっと見た感じで判らないように、木目に沿って作られている。
だが――黎は見破った。
「向こうがそう来るなら、丁度いい」
黎は一度外に出ると、雪を抱えて小屋の中に戻る。そして落とし穴を避けて暖炉に近づいて、煌々と燃える炎に雪をかけた。
「思いっきりやっつけるとするか。オレのやり方でな」
消えた炎の残り香が漂い暗くなった小屋の中で、黎は口元に笑みを浮かべていた。
「ふぅん?」
煙突から登っていた煙が細くなり、消えていく。
暖炉の火が消えた事に気づいて、こおりのあくまが目を細めた。
少し前に、猟兵が入って行くのを見た。暖炉の火を消したのも、その猟兵だろう。
「暗くして不意打ちするつもりね?」
その猟兵――黎の狙いをそう読んだこおりのあくまは、余裕の笑みを浮かべた。そして表情を変えないまま小屋に近づいて、無警戒にドアを開け放つ。
「氷よ!」
同時にステッキを向けて、中に氷の魔法を放った。
放たれた氷柱は、しかし誰もいない壁に突き刺さる。
「外れたけど、次!」
それを気にした風もなく、こおりのあくまは次の氷の魔法を放っていた。
「また外れね! 次!」
2発目が外れても構わず、次の魔法を放つ。
「どこかに隠れてるのはわかってるのよ! だから、当たるまで攻撃し続ければいつか当たるわ!」
(「成程、そう来たか。悪くはない……けど、攻撃する事で、自分の居場所を教えているんだが」)
当てずっぽうに魔法を放ち続けるこおりのあくまを見下ろして、黎は胸中で呟く。
闇に紛れた黎がいるのは、屋根を支える梁の上だ。こおりのあくまは気づいていないようだが、当てずっぽうでも矛先を頭上に向ければ、当れられる可能性はある。
(「その前に叩く」)
不可視な魔の手――インビジブル・ハンド。
黎がオーラで作った見えない手が、音もなく椅子を持ち上げる。
「出てきなさい! 隠れたまま、氷漬けになりた――っ!」
氷柱を放ち続けるこおりのあくまの背中に、飛んで来た椅子がぶつかった。
「後ろ? ――え?」
こおりのあくまが振り向いても、そこには誰もいない。
「ど、どういう事?」
(「どこから来るか、分からないだろう?」)
困惑するこおりのあくまへ、黎は見えない手で家具を掴んでは、投げていく。
正々堂々と戦う。
こおりのあくまが、保障なんかしてなかったと言ったその戦い方を、全ての猟兵が得意としているわけではない。
むしろ黎は、そうではない戦い方の方が得意だ。
「むぐぐ……出てきなさいよ! 隠れるなんて、ずるいじゃない!」
(「ずるい? それは褒め言葉だ」)
こおりのあくまの声に胸中で返して、黎は見えない手の形を変える。ついに投げる家具も尽きて来たので、張り手の形に。
(「自分が好き勝手に決めたものが通ると思うなよ」)
ビシッバシッベシッ。
「ぎゃんっ」
見えない張り手に張り倒されて、こおりのあくまは小屋の外にぽーいと押し出されて転げ落ちていった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
よっしゃ可愛い子キタ!色々捗るので助かる
早速近くの小屋に入り…ません!扉だけ開けて入ったふりでござる
近づいてくるまでお外で待機しますぞ、なのでこうだ!
【流体金属生命体】と拙者、合体!メタルと化したクロヒゲ
生身ならいざ知らず、流体金属の身体なら体温とか問題ないでござる
扉近くで流体化して潜伏、こおりのあくまちゃんがのこのこ近づいたら足元の雪から湧き出て全身拘束!YESタッチ!
もう逃げられないゾ♥拙者はねぇ君みたいな可愛い子が大好きなんだ!
うんうん今から拙者とデスゲームしようや…手始めに小屋の中で脱出ゲームを
(小屋の中程まで踏み込んだ瞬間にトラップ発動、小屋全体が爆発四散!全てが吹き飛んだのだった)
●あれ? どっちが悪役だっけ?
――バタンッ。
閉じた扉が、外の吹雪と周囲を隔絶する。
吹雪の雪原ステージに用意された小屋のひとつに入ったエドゥアルト・ルーデルがまず行ったのは、人間をやめる事だった。
「拙者の体を貴様に貸すぞ!」
『うム、相変ワらず実ニよク馴染む』
「拙者達は……」
『ワカり会えタ……』
「『判り合ウ事ガできタ』」
オウガメタル――Spitfire。
意思を持つ謎の流体金属生命体と一時的に融合するユーベルコード『Innovator』を発動したエドゥアルトは、メタル黒髭とでも言うべき存在へ変貌した。
「さてさて、お外で待機しますぞ」
人間の形態をあっさりと放棄したエドゥアルトは、アメーバ的な動きで壁を這いずり暖炉から煙突へ抜けていく。
(「生身ならいざ知らず、流体金属の身体なら雪の中も問題ないでござる!」)
そして文字通り煙突から外へ流れ出ると、エドゥアルトは小屋の周りの雪の中に潜りこんで身を潜めた。
それから、ややあって。
「おかしいわね?」
エドゥアルトが入った小屋に、こおりのあくまが首を傾げながら近づいていた。
「確かに猟兵が中に入ったのを見たのに、まだトラップが発動してない……あの髭男、デビルスケルトン相手にも容赦がなかった猟兵だし、何をしててもおかしくないわね」
そう警戒しながらも、こおりのあくまは、エドゥアルトが小屋に入ったフリをして外の雪に潜んでいる事に気づけていなかった。
まあ、何をしてもおかしくないとは言え、まさか人間やめるとは思うまい。
それに、こおりのあくまは、ひとりだ。他の猟兵達の様子も伺っている間に煙突から流れ出るのを見逃したのも、仕方ないと言えば仕方ないかもしれない。
「……」
「ヒャッハァァァァッ!」
自分がトラップにかからないようにそーっとドアを開けようとするこおりのあくまの足元から、ザァッと雪を掻き分けエドゥアルトが飛び出した。
「ひゃぁぁぁぁっ!? ばけものっ!?」
「おふぅっ」
うなじに感じる冷たい感触。それがにゅるんと絡みつく寸前で、こおりのあくまは反射的に背後にステッキを向け、氷の魔法でエドゥアルトを後ろに押しやる。
「よっしゃ! 予想通り可愛い子キタ! 色々滾るね!」
『うむ。可愛イ女の子ダ。さすガだナ』
「ふふふ。拙者ほどの紳士になれば声だけでわかるもんでござる」
しかしエドゥアルトは、どう聞いても紳士とかけ離れた事を流体金属生命体と語り合いながら、小屋の中に後退るこおりのあくまへと、にじり寄る
「な、なんなのよあんた!」
「拙者はねぇ、君みたいな可愛い子が大好きな、メタルと化したクロヒゲでござる」
こおりのあくまは更に氷の魔法を放つも、エドゥアルトは流体金属の身体をウゾウゾ動かし内側と外側を入れ替える事で、完全凍結を防いでいた。
「もう逃げられないゾ」
じりじり後退するこおりのあくまを小屋の中に追い詰め、エドゥアルトは伸ばした身体の一部で背後の扉を閉じる。
「うんうん今から拙者とデスゲームしようや……手始めに小屋の中で脱出ゲームを」
正確に文字で表すのがちょっと難しい変態顔を浮かべ、エドゥアルトはメタルな身体のアチコチから、触手的な何かをいくつも生やしていく。
どこからどう見ても、モンスターです。
「デュフフフ! Let's拘束! YESタッチ!」
「はぁ……仕方ないわ。捕まったらロクな目に合わない予感しかしないし、ダメージ受ける方がマシね」
エドゥアルトの魔手が届く寸前、こおりのあくまはテーブルの下の床を踏んだ。
次の瞬間、小屋があった地点が雪がクレーターになる程の大爆発が、全てを有耶無耶にして吹っ飛ばしていた。
大成功
🔵🔵🔵
ユディト・イェシュア
なるほど
都合が悪くなると主催者側が有利なようにルールを設定するものですね
雪原では視界も悪く分が悪そうです
山小屋へ向かいましょう
山小屋にはなぜか金魚すくい一式が
流しそうめんにスイカ割り…
夏の風物詩にこだわりがあるのでしょうか
やってきたこおりのあくまには
UCを用いて金魚すくい対決を挑みましょう
あ、水を凍らせるのはなしですよ
ちゃんとポイですくってください(笑顔
俺も上手ではないですが
金魚のオーラを視て
動きを止めた瞬間にすくいあげましょう
主催者側もゲームに参加するのはお約束です
そして大抵は負けるものなのです
彼女が勝負を投げ出してもダメージを与えられますし
俺が勝負に勝てば負けを認めてくれるかもしれませんね
●決闘の法
「これは、一体……?」
吹雪の中を探し歩いて見つけた山小屋の中で、ユディト・イェシュアは困惑した様子で首を傾げていた。
吹雪の雪原は視界が悪く、戦うのは分が悪いから小屋を探した。だが、こおりのあくまが、ただの救済措置を用意する筈がない。
ならば、目の前にある『金魚にしては少し大きいが金魚に見える魚が泳ぐ大きめのゴムプール』はどんなトラップなのかと、ユディトはしきりに首を傾げる。
「流しそうめんにスイカ割りと続いて、どう見ても金魚すくい……夏の風物詩にこだわりがあるのでしょうか」
「ぶーっ! 不正解!」
ユディトが考え込んでいると、小屋の中に別人の声が響いた。
同時に、小屋の中の空気が急に冷たくなる。
「っ!」
ユディトが振り向けば、くすくすと笑うこおりのあくまが、いつのまにか小屋の中に佇んでいた。
「これはね。デスゲームよ!」
「デスゲーム?」
びしっとプールを指差したこおりのあくまに、ユディトが更に首を傾げる。
「これは金魚すくいじゃないわ。魔界ピラニアすくいよ!」
デビルスケルトン用に考えて、骨だけのあいつらだと齧られても痛いで済んじゃうんじゃないかと没ったデスゲームらしい。
「ふふんっ。指を食いちぎられたくなかったら、このわたしに屈服しなさ――」
「え、する訳ないじゃないですか」
こおりのあくまのことばを食い気味に否定し、ユディトは片手の手袋を外す。
「ピラニアならそれで結構。ピラニアすくい勝負を申し込みます」
そして、ぺいっと手袋を投げた。
「え、いやよ。何でわたしが……痛っ!」
勝負を否定しようとしたこおりのあくまを、頭痛が走った。
――デュエリスト・ロウ。
手袋を投げた対象にルールを宣告し、それを破ったらダメージを与える業。
勝負を申し込んだ事自体が、既にユディトのルールの宣告だ。
「主催者側もゲームに参加するのはお約束でしょう?」
「お約束なんて破るためにあ……痛っ! いたたたっ、わかった、わかったわよ!」
ルールを破る痛みに耐えかねて、こおりのあくまは勝負を受け入れた。
「でも、このわたしに水が関わる勝負を挑むなんて、良い度胸じゃない。自分がどれほど無謀な勝負を挑んだか、思い知らせてあげ――」
「あ、水を凍らせるのはなしですよ。ちゃんとポイですくってください」
気を取り直してステッキを構えたこおりのあくまの言葉をまたまた食い気味に、笑顔のユディトが新しいルールを告げる。
「……」
思いっきり図星だったらしいこおりのあくまは、ステッキを構えたまま硬直した。
「……」
ピラニアが泳ぐ水面を、ポイを構えたユディトがじっと見つめる。見ているのは、水でもピラニアでもなく、ピラニアのオーラだ。
勝負を挑んだものの、ユディトは金魚すくいが別に得意と言うわけではない。
だから、魚のオーラを視て動きが止まる瞬間を狙う。
「今です!」
スパァンッ!
ユディトの振るったポイが水を切って、ピラニアをすくいあげる。
「遅い遅い! こっちは二匹目よ!」
しかし、こおりのあくまはユディトよりも早くピラニアをすくっていた。
このあくま、勿論ズルをしている。水を凍らせなければいいのだろうと、ポイをキンキンに凍らせたのだ。
「この勝負、貰ったわ!」
ユディトとの差が2匹、3匹と開いて、こおりのあくまが勝利を確信した、その時。
「っっっ~~~~っ!?!?」
突然の頭痛が、こおりのあくまを襲う。
「凍らせたポイを使い続けたら、水が凍るに決まってるじゃないですか」
こおりのあくまがのたうち回っている内に、ユディトは次々とピラニアをすくいあげていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
うわぁ、さっきまで涼しげで良かったのに
一気に真冬になっちゃった
へぇ、中は結構広いんだね
あ、見て見て梓、ふかふかそうなベッドがあるよ
疲れたし、ちょっと一休みしてもいいよねー
ベッドにダーイブ…しようとしたら焔に先を越された
……低反発枕ならぬ、猛反発ベッドだ
自分の可愛いドラゴンたちを犠牲にして
トラップを探していく梓…もしかしてかなりのワルなのでは?
と思いつつも止めない
山小屋内の探索の間、煙突内にこっそりとPhantomを忍ばせておく
しびれを切らしたこおりのあくまが
煙突から侵入しようとした瞬間、UC発動
鎖へと変化した蝶がこおりのあくまを捕縛
それはもう漫画のようにぐるんぐるんに縛り上げる
乱獅子・梓
【不死蝶】
うおっ、寒っ!?
このまま戦うのは分が悪いな
いったん山小屋へ入るぞ!
こら!寝てる場合じゃな……
(我先にとベッドに思いっきりダイブする焔
(その瞬間、ベッドが激しくスプリングして吹っ飛ばされる焔
……
よし、いいこと思い付いた
UCで元気なミニドラゴンたちを召喚
お前たち!この山小屋内を探索だ!
するとまぁトラップが出るわ出るわ
落とし穴があったり、壁からトゲトゲが飛び出してきたり
椅子の上にとりもちが仕掛けられていたり
まぁドラゴンたちのおかげで俺たちは無傷なわけだが
お前たちがひどい目に遭ったのは
全部そいつの仕業だ(こおりのあくま指差し
存分に仕返ししてやりな!
ドラゴンたちの一斉体当たりで吹っ飛ばす!
●ミニドラゴンと鎖とフラグ回収
「うおっ、寒っ!?」
思わず上げた声と同時に乱獅子・梓の口から出た吐息が、白い蒸気となる。
突然の吹雪の雪原。
ガラッと変わったステージの気温に驚き、梓は思わずコートの襟を立てていた。
「うわぁ、さっきまで涼しげで良かったのに。一気に真冬になっちゃった」
一方、すぐ隣にいる灰神楽・綾は吹雪にもあまり驚いてなさそうだった。
やはり吐息は白い蒸気になっているが、そこまで寒そうでもない。首元のモフモフの分の差だろうか。
――よくも来たわね、猟兵!
そこに響いて来る、こおりのあくまの声。
「どうしようか?」
「……このまま戦うのは分が悪いな」
綾の問いに、梓は周囲を見回し始める。寒さは我慢できるが、聞こえてきた声によればこの吹雪は、敵に有利な環境。
ならば留まるのは良い手段とは言えない。
「いったん山小屋へ入るぞ!」
「うん、それがいいね」
梓と綾は、用意されているという小屋を探して、雪の中を駆け出した。
肝心の小屋は、割とあっさりと見つかった。
あまりにあっさり過ぎて、怪しすぎるくらいだ。
「ドアを開けるなり爆発……って事はないみたいだな」
「へぇ、中は結構広いんだね」
トラップを警戒してそっとドアを開けて、ゆっくりと中に入っていく梓の後ろから、綾が迷う素振りもなく続いていく。
「もう少し用心をだな……」
「梓が調べて大丈夫なら大丈夫でしょ」
綾のそれは無警戒――と言うよりは、梓に対する信頼だろう。
程なく2人は小屋の中央に到達した。
ぐるりと見回せば、中々快適そうな空間だった。暖炉には予め火が入っているし、ソファやテーブルと言った基本的な家具も揃っている。
しばらく過ごすには充分な空間と言えよう。
「あ、見て見て梓、ふかふかそうなベッドがあるよ」
壁際にベッドを見つけ、綾が声を弾ませた。
「疲れたし、ちょっと一休みしてもいいよねー」
「こら! 寝てる場合じゃな――」
ふら~っとベッドに吸い寄せられそうになった綾の肩を、梓が掴んで止める。だがその瞬間、2人の間から小さな影が飛び出した。
『キュ、キューッ♪』
炎の仔竜、焔である。
「あー! こら、焔! ストーップ!」
梓の静止も聞かず、焔はベッドへ向かって飛んでいった。
『キュゥゥ♪』
「あ、ダメだ。全然聞こえてない」
「まあ炎竜の焔には、外の吹雪はきつかったんだろうね」
溜息を零す梓の肩を軽く叩いて、綾は、先越されちゃったと笑って焔を見送る。そんな2人の見ている前で、焔がベッドにダイブして――。
消えた。
『キュッ!?』
「「ん?」」
梓も綾も、思わず目を疑った。消えたと錯覚する勢いで、焔がベッドの上に吹っ飛ばされたのだ。
「うわ、なんだこれ。スプリング強すぎ」
「……低反発枕ならぬ、猛反発ベッドだ」
梓と綾がベッドに手を置いてみれば、ちょっと押しただけで反動が感じられるほどにスプリングが効いていた。トランポリンか。
『キュゥゥゥゥ~……』
成す術なく天井に頭ゴッツンした焔が、ふらふらと降りてくる。
「……よし。いいこと思いついた」
腕の中にすっぽりと納まった焔を見下ろし――梓がニヤリと笑みを浮かべた。
(「あ、なーんか思いついたな」)
察した綾が見ている前で、梓の足元から光が広がっていく。
「集え、そして思うが侭に舞え!」
『プ!』
『プギャゥ』
竜飛鳳舞――レイジングドラゴニアン。
「お前たち! この山小屋内を探索だ!」
前のステージでも使った業で再び召喚したミニドラゴン110体の群れを、梓は小屋の中に解き放つ。
するとまぁ、出るわ出るわ。
『ププギャゥッ!?』
床をポテポテ歩いていたミニドラゴンが、落とし穴に落ちていき。
『プー? プギャッ!?』
壁をよじ登っていたミニドラゴンが、壁から飛び出したトゲに吹っ飛ばされる。
『プギュプギュ……プッ!?』
椅子によじ登ってみれば、座面はトリモチだらけだし、足は簡単に折れる始末。
「みんなー、がんばれー」
次々とトラップを発見していくミニドラゴン達に、梓は声援を送り続ける。
(「梓……もしかしてかなりのワルなのでは?」)
自分で召喚した可愛いドラゴンたちを犠牲にしてトラップを探していく梓の姿に、綾はそう胸中で呟いていた。
とは言え、止める気もない。
小屋に入ってからミニドラゴンが召喚されるまで、梓も綾もトラップにひとつもかからずに済んだのは、幸運と言わざるを得ないだろう。
そしてその後無事なのは、間違いなくミニドラゴン達のお陰だ。
綾は戦闘狂ではあるが、こういう所で身体を張る気はない。
『ププギャヮゥ!』
「それよりも……っと」
ミニドラゴン達が落ちて来た暖炉に、綾は赤く輝く蝶の群れを飛ばしていった。
「……うそぉ……」
その頃、こおりのあくまは言葉を失っていた。
梓と綾が入った小屋に入って行くのを、どこからか伺っていた。トラップに慌てて小屋から出てきた所に一撃くらわせてやろうと待っていたのだが、二人とも一向に出てくる気配がない。と言うか、なんか小屋の中が騒がしい。
それで小屋の中を伺ってみれば――予想もしていなかった手段で、トラップがモリモリ発見されているではないか。
「あの小さい竜……前のステージでも召喚してたやつよね? 自分で召喚して犠牲にするなんて……まさか、実はすっごいワルなんじゃない?」
思わず口走ったその考えを、こおりのあくまはかぶりを振って否定する。
「……冗談じゃないわ。未来のデビルクィーンに相応しいのは、わたしよ!」
それを教えてやらねばならない。
方針を変えたこおりのあくまは、屋根の上まで浮上する。物音を立てないように煙突に入り込み、煙を僅かな冷気で流しつつ、静かにゆっくりと降下して――。
(「ん? 何よこれ」)
「かかった!」
煙突の中に満ちる赤い光をこおりのあくまが訝しむと同時に、小屋の中で綾がぐっと拳を握っていた。
「離してあげないから、覚悟してね」
――ロンサム・ファントム。
オーラで作り出した赤い蝶の群れを、紅い鎖へと変える業。最初のステージで、綾はそれを命綱の代わりと使ったが、本来の用途は異なる。
「な、なんなのよこれぇぇぇ!」
本来の用途は、紅い鎖は敵を捕らえる為のものだ。
ぐるぐるに縛られた、こおりのあくまのように。
「ねえ……捕まえてごらんなさい、とか言ってたら捕まったね。今どんな気持ち?」
こおりのあくまには鎖が破壊不可能だと知っているが故に、綾はすごくイイ笑顔を浮かべて問いかける。
「ね、ねえ。ちょっと待って……?」
だが、こおりのあくまは、それに答えられる余裕はなかった。
注がれているのは、綾の視線だけではない。
110体のミニドラゴンの視線もだ。
「お前たちがひどい目に遭ったのは、全部そいつの仕業だ」
「だから待って!? それおかしいわよ! あんたが自分で呼び出して指示してたの、わたし見てるんですけど!?」
そんな抗議の声を無視して、梓は縛られてるこおりのあくまをびしっと指差す。
「存分に仕返ししてやりな!」
『『『『プププゥッ!』』』』
「数で攻めるとかずるいわよぉぉぉっ!」
そして――110体のミニドラゴンが、こおりのあくまに襲い掛かった。
飛び乗られて踏み踏みされたり、短い尻尾でペチペチされた挙句、一斉体当たりで小屋の外まで吹っ飛ばされる、こおりのあくま。
「こ、こ、このくらいにしといてあげるわ! ふんっ!」
それでも震える足で立ち上がると、こおりのあくまは負け惜しみ全開でそう言い残し、這う這うの体で吹雪の中に消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
迷わず小屋に突撃
(罠内容一覧
・ドアが実は引戸
・入室一歩目に振って来る金タライ
・フローリング柄の布の下に敷かれているバナナの皮
・暖炉に備え付けのマッチの赤い部分が全部もぎ取られている
・コーヒーがあるものの塩と砂糖のラベルが反対
・煙突は詰まっている
・冷蔵庫の中の食材は全てプラスチック製
一通りかかる)
あらかた怒りゲージが溜まったら(故意では無い)
爆発してUCを発動するわ!
むっちゃわんこに雪の中探させてで氷の小娘を戦いの場へ引き釣りだすわよ!
わんこが引っ張ってきたらお仕置きタイムね!
(元々お任せ多めのプレイングですがアレンジアドリブ連携大歓迎!)
●スイカは骨に預けて来た。この戦いには耐えられないだろうから
吹雪の中を、フィーナ・ステラガーデンはひた走っていた。
「っしゃぁ! 着いたわ!」
目指した小屋に辿り着くなり、フィーナは雪を蹴って跳び上がる。
「ふぎゃっ」
蹴破ろるつもりで突っ込んだら、ドアがびくともせず雪の中に跳ね返された。
「どうなってんのよ!」
雪塗れで立ち上がったフィーナが良く見れば、ドアノブがなかった。
「……もしかして?」
フィーナがドアに両手を着いて横に押してみれば、ズズズッと重たい音を立てて、ドアは横にスライドしていった。
変則引き戸で、トラップは終わらなかった。
ゴーンッ!
「ったぁぁ~っ!」
小屋に一歩入った所で、降って来た金ダライがフィーナの頭を直撃した。衝撃にふらついた先でバナナの皮に足を取られて、後頭部を床にゴッツン。
「暖炉を……」
入れようとした薪は、ブッシュドノエル的なケーキだった。
「美味しいけどコレジャナイ!」
口の中がパサパサになったので、潤そうと冷蔵庫を開ければ、氷漬けのコーヒー豆がずらりと並んでいるばかり。
「薪が無ければ燃やせないと思った? お生憎ね!」
椅子を薪代わりに魔法で火をつけ、フィーナは氷を溶かしてコーヒー豆をゲットし、ついでにお湯も沸かす。
「ふー……」
たっぷり砂糖を入れたつもりのコーヒーを一口すすれば、苦みと塩味がフィーナの口に広がった。
隣の塩の瓶と砂糖の瓶と、ラベルを入れ替えられていたようだ。
しかもその頃には、小屋の中は煙が充満していた。煙突が詰まっているようで、煙が外に出て行かないのだ。
「ふ……ふふふ……っ」
ピシッ。
フィーナの手の中で、コーヒーカップにヒビが入る。
「後悔させてやるわ!!」
我慢の限界に達した怒りを表すかのような猛烈な勢いで、フィーナの足元から炎が吹き荒れた。
「……ぷっ……あはははははっ!」
その頃、こおりのあくまは、臆面もなく吹雪の中で笑い転げていた。
最初のドアノブ付きの引き戸に始まり、フィーナが悉くトラップにかかるのを離れたところから見ていたのだ。
「まさか……っ、あんな、全部引っかかるなんて笑わせてくれるじゃない! まさに、草生えるってやつね!」
トラップを仕掛けた方としては、それにかかるのを見て愉悦に浸るこおりのあくまの反応はある意味正しいと言えるだろう。
だが――そんな余裕は、ドォンッと響いた爆音と共にかき消された。
「……変ね? あの小屋には爆発するようなトラップはなかったは……ず……」
訝しみながら音の方を見たこおりのあくまが、絶句する。
小屋のあった場所では、まるで噴火した火山の様に炎の魔力が猛り狂っていた。
「いけ、わんわんお!」
――噛ミ焦ガス眷属。
飛び出してきた炎は、イラ立ちの感情を糧にフィーナが生み出した101体の炎狼。
「っやばっ!」
炎狼は、慌てて身を翻したこおりのあくまに、真っすぐに向かっていく。炎狼はどこまでも負い続ける。糧とした感情を与えた相手を。
「あうっ!」
逃げるこおりのあくまの脚に、ひとつ、ふたつと炎の牙が届いて、ついにこおりのあくまは雪の上に引き摺り倒される。
「見つけたわよ、氷の小娘! お仕置きタイムね!」
炎狼が敵を捕らえたのを察したフィーナが、魔力を猛らせる。
「いきなさい、ビッグわんこ!」
「フォームチェンジ、クィーン!」
フィーナの声に応えて炎狼の半数以上が集う。合体巨大化した炎狼が前脚を振り下ろした直後、その足元から舞い散る雪と氷の結晶が飛び出した。
氷の王冠を頂き、成長させた身体に妖艶なドレスを纏った『理想とするデビルクィーン』に変身したこおりのあくまが、空に飛び退る。
「こ、今回はこのくらいにしといてあげるわ!」
巨大な炎狼の口から炎の渦が放たれそうなのを見て、こおりのあくまは、負け惜しみ全開の台詞を残し、吹雪の向こうに逃げていった。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
【かんにき】
アキ、ガーネット!
雪玉投げて合流のご挨拶
雪景色、人数増えた、ならばやる事は雪合戦一択
投げて投げられ、避けられて
ふふ、楽しいが沢山
そして、楽しいとお腹も空く
む、小屋
入ると並ぶ肉料理
ガーネット、い、頂いてもよい?
秘蔵のスモークビーフも取り出し、わたしも食すので遠慮なく食卓に並べて
さ、皆でお食事しよう
ん…辛味がイケる
まつりん辛いのダメ?お水どうぞ?
箸置きにこちらのステーキを…ん、美味しい
少し炙ると煙突にも美味しいかおりが漂うかな
んむ、ほふひえばこほひのはふまほおにくたふぇる?
(ごくん)
ん、こおりのあくまもお肉をどうぞ
辛い?食せない?食べ物を粗末にする子はお仕置
ていっ>怪力で雪玉投げつけ
ガーネット・グレイローズ
【かんにき】
やあ、君たちも来てたのか?
いつもの仲間と合流し、今は山小屋で休憩中だ。
?カモシカの剥製が、こちらを見ている…危ないっ!
ガラス玉のような目が不気味に光った瞬間、
怪光線が発射される!【イデア覚醒】による《第六感》強化で
光線を見切り、難を逃れる。皆、大丈夫か?
あっ、まつりん。見知らぬ食べ物は危険だぞ。罠じゃないか?
…あちゃー。
一通り小屋の中を調べたら、今度は迎撃の準備だ。
題して、「ブレーメンの音楽隊」作戦だ。
メカたまこを《闇に紛れる》で梁の上に待機させ、こおりのあくまが
テーブルのチキンに手を伸ばした瞬間、《大声》で鳴いて驚かせる!
よし、今だ。みんなで一斉に雪玉を投げつけるぞ、ファイエル!
木元・祭莉
【かんにき】合流だっ!
あれ、夏は?
キレイな姉ちゃんはドコへ?
むー。(雪原眺め)
えー、山小屋しかないのー?
屋台はー? やーたーいー!(むくれて雪玉投げる)
ちぇー、お腹空いたなー。
あれ、山小屋の煙突から……
いい匂いがする!(人狼の鼻)
わあ、ご馳走だ!
やっぱりボスさんイイ人かも?
いっただきまー 辛ぁっ!?
やっぱワルいヤツだ……(涙目)
迎え撃つなら、おいらも頑張るよ!
三機神、カモン!
ぴよこは煙突の下。
ひなこは入口の側。
まっきーはトイレで待機ね?
待ち伏せ作戦からのー。
さるかに合戦!(ぴよふわがう)
え、違う?
あれ、なんでたまこ来てるの?
え、おいらは違うよ、ワルい子はあっち!
こっちくんなー!
わーん!(泣)
駒鳥・了
【かんにき】
遊べる気配でいつメ揃ってんの笑う!
吹雪じゃ雪合戦はツラそーだよ
むしろかまくら作ってビバーグする方がーって小屋?
ちょう怪しいね!
狭いトコでの戦闘用に雪玉がっつり作って入口にでも積んで置く
ってかナニこのイイニオイ
小屋が焦げたよーなニオイもするけど
うんカオスだ
とりま怪しげに見えるトコに情報収集かけて罠探そ
熊の剥製の腹ん中のコレはダイナマイト?発煙筒?
外の雪に埋めとこ
杏ちゃん祭莉くん、オレちゃんの肉も残しといてね?
辛いなら雪食べた方が冷たくて落ち着きそーじじゃね?
迎撃の直前はUCで隠れてよ
メカタマコ&グレちゃんの合図で一斉攻撃!
雪玉の合間にナイフが混じってるのはオレちゃんだからってコトで!
●いつの間にか集まる、かんさつにっき
吹雪の中、ガーネット・グレイローズと駒鳥・了は、ばったりと顔を合わせていた。
「……寒そうだな?」
「寒いよ!」
水着姿と言う吹雪に合わない了の出で立ちに苦笑するガーネットに、了は両手で肩を抱くようにしながら声を張り上げる。
「最初のステージのウォータースライダー感に釣られたら、この様だよ。オレちゃんとしたことが……」
「それはまた……」
明るい緑を基調とした水着姿も、今となっては寒々しい。
「グレちゃん暖めて!」
「ああ。とりあえずこれを……」
了に渡そうと、ガーネットがコートの袖から腕を抜いていく。
ヒュッ――バスッ!
そこに、木陰から飛んで来た雪玉が2人の頭に直撃した。
「アキ! ガーネット!」
一拍遅れて、木元・杏がザカザカ雪を掻き分け姿を現す。
「やっほー」
「ねえ、杏ちゃん? なんで? オレちゃん何でいきなり雪投げられたの?」
ぱたぱた手を振る杏に、了が頭に着いた雪を払いながら詰め寄る。
「ご挨拶」
了に微笑みを向けながら、杏は足元の雪を手の中でギュッと丸めて固めていく。
「雪景色、人数増えた、ならばやる事は雪合戦一択」
「吹雪じゃ雪合戦はツラいよー! しかもオレちゃん水着!」
雪遊びする気満々な杏に、了は更に詰め寄った。
「大丈夫よ、アキ。雪合戦すれば、身体暖まる」
「……」
「杏らしいと言えばらしいな」
ネタとかではなく、杏が本気で言っているのが判って言葉を失う了の肩に、ガーネットがコートをかける。
諦めろ。杏はこう見えて、野生児だ。
「ところで杏。今日は珍しくひとりか?」
「ん。まつりんなら、そこ」
ガーネットの問いに、杏は出てきた背後の方を指差す。
「むー……」
木元・祭莉が、ぶすっとむくれていた。
「「?」」
らしくない表情に、ガーネットと了が思わず顔を見合わせる。
「冬なんだもん」
むくれたまま、祭莉が口を開いた。
「夏は? キレイな姉ちゃんはドコへ?」
流し素麺に、スイカ割りと続いて、次はどんな夏の遊びが待っているんだろう。
祭莉が抱いていたであろうそんな期待は、吹雪に打ち消されていた。
「屋台はー? やーたーいー!」
「仕方ないなー。やるからには遠慮しないよ、祭莉くん!」
むくれたままの祭莉が両手に雪玉握るのを見て、了も足元に雪に手を伸ばす。
「こんな季節に雪合戦か」
「ふふ、楽しいが沢山」
ガーネットも苦笑浮かべつつ雪玉を握るのを見て、杏は楽しそうに微笑みながら、ぎゅむむっと雪玉を固める手に力を込めていた。
●怪しい山小屋と美味しい匂い
「さむーい!」
吹雪の中に響いた了の切実な叫びが、雪合戦を止めさせた。
「こんな雪の中でも、いつメ揃って遊んでんの笑えるけど! オレちゃんは寒い! かまくら作ってビバーグする方が、暖まれそうだよー!」
ガーネットにコートを借りたとは言え、今の了の服装では、吹雪の寒さが人一倍身に染みると言うものだろう。さもありなん。
「かまくらも良いが、小屋に入る方が楽じゃないか?」
「「「小屋?」」」
ガーネットの提案に、3人が揃って首を傾げる。
「ああ、近くにあるぞ。メカタマコに探らせた」
ガーネットの案内で、4人は雪の中を歩き出す。
程なくして、小屋のシルエットが雪の向こうに見えてきた。
「山小屋しかないのー? 屋台はー?」
「残念ながら、屋台ではなさそうだな」
まだ不服そうな祭莉の声に、ガーネットは先頭を歩きながら返す。
「ちぇー、お腹空いたなー」
祭莉がわざと蹴り上げた雪が、ザッと音を立てて飛んでいく。
だがそこから一歩進んだところで、祭莉の嗅覚はそれに気づいた。
「あれ、山小屋の方から……」
吹雪の中に混ざる、ご飯の匂い。
「煙突だ! 煙突からいい匂いがする!」
人狼の嗅覚で嗅ぎ分けた匂いに釣られて、祭莉が雪を掻き分け駆けていく。
「まつりんが反応した。これは美味しいものの予感」
その嗅覚を迷わず信じて、杏まで祭莉の後に続いて駆けていくものだから、ガーネットと了も、雪中を進む速度を上げる。
「あ、確かにナニカこう、イイニオイがするね」
「ああ。香ばしい類の……」
小屋の外観も見えるくらいになると、了とガーネットにも、その匂いが判るようになっていた。
「小屋が焦げたよーなニオイもするような? うん、カオス!」
「あの2人、怪しいとは思ってないだろうな」
警戒や危惧の念を抱く了とガーネットの見ている前で、先行した祭莉が迷わずドアを開けて小屋に突入していった。
少し遅れて、杏も小屋に飛び込んでいく。
「わぁぁぁーっ!」
「おぉーっ!」
祭莉と杏の歓声が響いて来る小屋の中に駆け込めば、了とガーネットを暖かな空気と焼けたお肉の香が出迎えた。
「ご馳走だー!」
チキンの丸焼きに、ローストビーフの様な肉の塊。焚火でぐるぐるしながら焼いたような骨付き肉。奥のテーブルに並ぶ湯気の立つ料理に、祭莉が目を輝かせる。
「やっぱりボスさんイイ人かも?」
「お肉……」
狼の尾をゆらゆらと左右に揺らした祭莉と、肉の目になった杏が、ふらふらと料理に吸い寄せられる。
「まつりん、杏、待った」
その首根っこを、ガーネットが掴んで止めた。
「怪しくないか?」
「ちょう怪しいね!」
ガーネットの言葉を、了が首肯する。
2人が怪しんでいるのは、小屋のあちらこちらに飾られた剥製だ。特に壁には、シカやクマ、トラと言った獣の頭部の剥製がずらりと並んでいる。
「?カモシカの剥製が、こちらを見ているような……」
訝しんだガーネットは、3人の一歩前に出て、目を閉じた。
――イデア覚醒。
物事の本質と先行きを瞬時に知る力が、ガーネットに剥製の中に隠された攻撃的トラップの存在を知らせた。
「危ないっ!」
ガーネットが警戒の声を上げると同時に、カモシカの剥製の瞳が輝く。ガラス玉の様な目から放たれた二条の光が、4人が飛び退いた床に穴をあけていた。
「あぶないなー!」
了の掌で、刃が増える。投げ放ったバタフライナイフは、鋼の蝶――『dancing Butterfly』の名の如く宙を舞い、カモシカの剥製の瞳を貫いた。
「アキ。次は向こうのトラだ」
「はいはい。杏ちゃん祭莉くん、オレちゃんの肉も残しといてね?」
2人の食欲を知ってる了は軽く釘を刺しておいて、ガーネットが暴いたトラップに、増やした鋼の蝶を投げて破壊していく。
「そして、最後が……あのクマなんだが」
「腹ん中のコレはダイナマイト? 発煙筒?」
最後に2人が取り掛かろうとしたのは、大きなヒグマの剥製。口から腹の中を覗けば、如何にもな感じのタイマーが点滅している。
「配線が複雑だな」
「じゃあ、腹ごと切って外の雪に埋めとく?」
これまでのトラップの様にナイフひとつで壊すというわけにもいかず、どうしたものかとガーネットと了が難しい表情で顔を見合わせる。
「2人とも窓開けて! ここはアンちゃんにおまかせだよ!」
そこに、祭莉がソワソワしながら、壁と同じ高さのバルコニーの窓を指差した。
「んむ。おまかせあれ」
そして杏は、ひょいっとヒグマの剥製を持ち上げる。
意図を察した2人が窓を開けると、まるでボールの様な気軽さで、爆弾入りのヒグマの剥製が、ぽーんっと投げ捨てられた。
●念願のお肉
「さ、皆でお食事しよう」
秘蔵のスモークビーフを食卓に追加し、杏が手を合わせる。
「いっただきまー!」
ガーネットと了は杏のスモークビーフに手を伸ばす中、祭莉は最初から置かれていた一番大きなお肉を切り分け、食いついていた。
「あっ、まつりん。見知らぬ食べ物は危険だぞ。罠じゃないか?」
ガーネットが発した警告は、時すでに遅し。
「辛ぁっ!?」
予想だにしていなかった辛味が、祭莉の舌の上で暴れていた。
「まつりん辛いのダメ? お水どうぞ?」
「辛いなら、雪食べたら冷たくて落ち着きそーじじゃね?」
その様子に、杏はコップを取りに行き、了は外の雪を取りに行く。
「うー。あんがと」
特に疑いもせずに、祭莉は雪を含んで水を飲む。
「ゴフッ!?」
だが、直後にむせかえって撃沈した。
辛味成分の多くは、油溶性であり、水には溶けにくい性質を持つ。食べる前であれば雪で口を冷やして感覚を麻痺させるという手もあったが、食べてしまったあとでは、水も氷も辛味を広げることにしかならないのだ。
雪の欠片が喉奥にスポーンっと入ってしまいでもすれば、猟兵と言えど、その辛味に耐えるのは容易ではない。不意を突かれれば、祭莉のようになるのは必定と言うものだ。
「……あちゃー」
「えー。これ食べて大丈夫なのあるの?」
ガーネットは思わず天を仰ぎ、了は安全な料理があるのかと視線を彷徨わせる。そんな中、杏は祭莉が撃沈されたのと同じ肉料理に、迷わず手を伸ばした。
「ん……辛味がイケる」
そして平然ともぐもぐ食べてみせる。
辛さへの耐性って、人それぞれである。
「次はこちらのステーキを……ん、これは辛くもなく美味しい」
毒味役を買って出た形になった杏だが、単にお肉に対する食欲が我慢できなかっただけの事ではなかろうか。
「ほんとだ! てかこのステーキ、ちょう柔らかい! 溶ける!」
「うむ。これは中々に良い肉だ。悪魔も良いもの食べてるじゃないか」
おかげで了とガーネットが安全にお肉食べられたので、結果オーライである。
「むー。やっぱボスは、ワルいヤツだ……」
復活した祭莉も眉間を寄せながら、安全なステーキをもぐもぐ食べ始めた。
何か忘れている?
いや、彼らはちゃんとわかっていた。だから、こおりのあくまへの対策は、いただきますをする前に、済んでいるのである。
その名も「ブレーメンの音楽隊」作戦。
●作戦、開始
一方、その頃。
「うん?」
それを雪原の中に見つけて、こおりのあくまは首を傾げた。
何処かの小屋に設置した筈の、爆弾入りのヒグマの剥製だ。他の剥製とは仕掛けを変えたので、油断した猟兵をこれでドカーンとやる予定だった。そこに猟兵達が入って行くところまでは見ていたが、その後は他の猟兵と戦っていた。
「何でこんな所に……?」
ドーンッ!
こおりのあくまが訝しんだ瞬間、ヒグマが爆発した。
「どうしてこうなるのよ!」
爆発に巻き込まれてちょっぴり焦げたこおりのあくまは、慌てて剥製を置いた筈の小屋の様子を覗いてみた。
「――うそでしょ!?」
そして見たのは、囮のつもりだった食事に舌鼓を打つ猟兵達の姿。
「フォームチェンジ、クィーン!」
氷の王冠を頂き妖艶なドレスを纏った『理想とするデビルクィーン』に変身したこおりのあくまは、雪と氷を舞い散らし、雪降る空へ飛びあがる。
そして――。
「こらこらこらこらー!」
ガシャーンッ!
窓を突き破って、こおりのあくまが4人のいる小屋に飛び込んだ。
「ちょっと、何してくれてんのよ!」
この時点で、こおりのあくまは気づくべきだった。
見えているのは3人。小屋に入った時に見た人数と、違うと言う事に。
hide & seek――カクレンボ。
念じる事で透明化するユーベルコードで、了は姿を隠していた。それに気づかず、こおりのあくまは小屋の中にズンズン入って行く。
「んむ、ほふひえばこほひのはふまほおにくたふぇる?」
「……はい?」
そして、お肉を口いっぱいに頬張った杏の言葉に、思わず毒気を抜かれた。
「ん、こおりのあくまもお肉をどうぞ」
「どうぞも何も、それ元々わたしが用意した……あ。何でもない」
自分が用意したようにお肉を勧めて来る杏に食ってかかりかけたこおりのあくまだが、肝心のお肉が辛味トラップ用のものと気づいて、目を背ける。
「辛いのは食せない? 食べ物を粗末にする子はお仕置」
(「……何なのよ、この子!」)
お肉を拒否された杏の迫力に、こおりのあくまが飲まれかける。
その隙を、ガーネットが見逃さなかった。ポケットの中の端末のボタンを、手探りで操作する。
『クォッケェェェェェッ!』
「ひゃうっ」
梁の上に潜ませていたメカタマコが響かせた大音量に、こおりのあくまの背中がびくんっと跳ね上がる。
「よし、今だ。みんなで一斉に雪玉を投げつけるぞ、ファイエル!」
ガーネットの合図に、了が玄関の扉を開き、杏が冷凍庫に駆け寄る。
(「まーだだよ」)
胸中で呟き念じながら、了は作って外に置いておいた雪玉を次々と投げていく。
「雪玉が勝手に……え、なにこれコワイ」
こおりのあくまはステッキで雪玉を叩き落とすが、了が透明化したままなので、雪玉がひとりでに飛んで来ているように見えた。
そして――見えていないものもあった。
「っ……ナイフ!?」
了が雪玉に混ぜて投げた、鋼の蝶。こおりのあくまがそれに気づいたのは、肩に突き刺さった痛みと同時。
「秘する力よ……ていっ」
そこに、杏が冷凍庫の中に置いておいた怪力全開で固めた雪玉を、これまた怪力全開でぶん投げた。
――お肉のチカラ。
「うぼふっ」
テーブルに出した秘蔵のスモークビーフを代償に複雑な軌道を与えられた特性雪玉が、こおりのあくまを直撃する。
雪玉らしからぬその衝撃で、こおりのあくまは自ら割った窓から、小屋の外まで吹っ飛ばされた。
それを追って、祭莉も小屋から飛び出す。
「ぴよこ、ひなこ、まっきー! 三機神、カモン!」
煙突の下から雌鶏ロボが、入口の側から向日葵ロボが、トイレから狼ロボが、祭莉の周りに転移してきた。
――守護神来臨。
「待ち伏せ作戦からのー。さるかに合戦!」
――ぴよ!
――ふわ~。
――がう!
祭莉の声に応えた3体の戦闘用ロボが、別の世界の民話よろしく、こおりのあくまに飛び掛かる。
「まさか……わたしの方が、待ち伏せされたって言うの!?」
やっとその可能性に気づいたこおりのあくまは、3体のロボに押し潰され、雪の中に消えていった。
「ふー。さて、もっとお肉食べよ」
気が済んだのか、祭莉は踵を返し小屋に戻って行った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミネルバ・レストー
他者がもがき苦しむ様を高みの見物して楽しむ…
デスゲーム主催者ならではの悦楽だったでしょうね
悪いけど、せっかく吹雪の雪原なんていうフィールドに変えてもらったなら
逆に「わたし」がそれを避ける道理はないワケ
かつて「こおりのむすめ」と呼ばれ恐れられたこのわたしと
「こおりのあくま」を名乗るあんたと
どっちがつよつよでワルワルか、白黒つけようじゃない!
…って言っても出てこないなら【絶対零度の口撃】を解放よ
ふん、そうやって理屈こねて姿ひとつ見せられないだなんて
もしかして、もしかしてだけどぉ
ビビってるんですかあぁぁ?(ねっとりと大声で)
ブチ切れてのこのこ出てきたらこっちのモノよ
引っぱたいておしまいにしましょう
●こおりの矜持
――ヒュゴォォォォォッ!
吹き荒ぶ吹雪の風に、桜色の髪が靡いている。
多くの猟兵が吹雪を避けて小屋で戦う事を選ぶ中、ミネルバ・レストーはひとり、吹雪の中に佇んでいた。
「せっかく吹雪の雪原なんていう、自分が得意なフィールドに変えたのに悪いけど。こんな環境に変えて貰ったら、逆に『わたし』がそれを避ける道理はないワケ!」
どこかで見ている、こおりのあくまに聞こえるように。
ミネルバは確りと背筋を伸ばし、吹雪の風に負けじと、声を張り上げる。
ミネルバには退けない理由があった。
「かつて『こおりのむすめ』と呼ばれ恐れられた、このわたしと! 『こおりのあくま』を名乗るあんたと! どっちがつよつよでワルワルか、白黒つけようじゃない!」
「……そんなの、比べるまでもないじゃない」
ミネルバの宣戦布告に、こおりのあくまの声が返って来るまで、少し間があった。
「ワルワルなのは、このわたし、こおりのあくまに決まってるんだから!」
しかし、響いて来るのは声ばかり。
(「……ま、これも予想通りね」)
姿を現そうとしないこおりのあくまに、ミネルバは胸中で溜息を零す。
だったら、出て来たくなるようにするだけだ。
「ふん、そうやって理屈こねて姿ひとつ見せられないだなんて……もしかして、もしかしてだけどぉ」
再び声を張り上げたミネルバは、そこで一度言葉を切る。すぅっと大きく息を吸い込む動作をして――今まで以上に声を張り上げた。
「ビビってるんですかあぁぁ?」
「誰が、誰がビビってるってのよ!」
精一杯ねっとりと嫌味を効かせたミネルバの声にまんまと釣られ、こおりのあくまが姿を現す。
蒼銀と桜色、色の違う髪を共に左右で束ねた、服装もどこか似ている2人の『こおりのむすめ』が、ついに雪の中に対峙した。
「他者がもがき苦しむ様を高みの見物して楽しむしか出来ないんでしょう? デスゲーム主催ならではの悦楽を邪魔して悪いわね」
「悪いなんて、欠片も思ってないくせに……!」
ニヤニヤと笑って見せるミネルバに、こおりのあくまが歯ぎしりする。
「いいわ。お望み通り、白黒つけてあげるわよ。フォームチェンジ、クィーン!」
こおりのあくまが掲げたステッキから、雪と氷の結晶が舞い散った。
頭上で渦巻く結晶が氷の王冠となり、ファー付きのコートは雪と氷と融け合い妖艶さが漂うドレスへと変化する。それを纏うこおりのあくま自身も、先ほどまでの少女ではなく成長した姿に変わっていた。
「このデビルクィーンの姿を見ても、まだ減らず口が叩けるかしら?」
『理想とするデビルクィーン』に変身したこおりのあくまは、ステッキに氷の魔力を集めて、ミネルバに振り下ろす。
「……叩けるに決まってるじゃない?」
それを片手で受け止めて、ミネルバは静かに口を開いた。
「なによその変身。クィーンだからって、ドレスに王冠って。安直にも程があるんじゃない? ひねりがなさ過ぎて、逆にイタイタしいんだけど? それに、どうして大人の身体に変えちゃったの。いくつ年齢盛ったわけ? それって、今の自分に自信がないって事じゃない」
氷よりも冷たい声で、しかし高圧的に。
傍若無人とすらいえる遠慮のないミネルバの言葉と威圧感に、こおりのあくまは、ステッキを振り下ろしたまま固まっていた。
絶対零度の口撃――パーフェクト・フリーズ。
「わたしは、このままで理想のわたしよ」
とあるPvPネットゲームでトップランカーとして活躍していたアバターキャラが、ミネルバだ。この姿こそが、かつての最強の域にいた証だ。
それを捨てて得られる強さなど、ミネルバにはない。
「今よりも成長しなければ理想に届かないあんたに、負ける気なんかしないわ!」
だから――片手が凍り付こうと、負けられない。
固まったこおりのあくまの頬を、ミネルバが引っぱたく。
倒れたこおりのあくまに、白金の銃口が突き付けられた。
「そんなだから負けるのよ……おばかさん」
冷たい声のまま、告げて。ミネルバの指が引き金をひく。
パンッと小さな銃声が響いて――氷の王冠が落ちて、雪の中に消えた。
●エピローグ~デビスケ達
こうして、こおりのあくまのデスゲーム計画は、猟兵達によって幕を閉じた。
巻き込まれたデビルスケルトン達も、骨が折れたり外れたりしたくらいで、無事だ。それを無事と言って良いのかと思うかもしれないが、この世界なら大丈夫だ。
その証拠に――。
「なあ、あの暗闇の中でどうやってたんだ? ワルい事したんだろ? な?」
「すごかったぜ、デュフフ! 人間やめっぷり最高だ!」
「破ったら痛い目を見るルールとか、ズルいって! ルールって破りたくなるじゃん」
「竜を躊躇なく犠牲にするなんて、やっぱすげぇワルだったな」
「あの鎖、ナイスな縛りっぷりだったぜ」
「姐御、お預かりしてたスイカ、冷やしなおしときました!」
「宇宙カラテって、雪合戦にも強いんだな」
「だから言っただろ、そんな装備で大丈夫かって?」
「破壊魔は、小屋、壊すと思った……」
「俺も思ってた……」
「最後の悪口、ワルワルだ。俺も罵られたい……」
デスゲームを終わらせて出てきた猟兵達は、最後のデスゲームを観戦して興奮冷めやらぬ様子のデビルスケルトン達に、囲まれる事となったのである。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年07月23日
宿敵
『こおりのあくま』
を撃破!
|