「そう。そうよ。とってもじょうず」
きり、きり。ぱき。
木組みの匣が、ぼくの手の中で震えながら音をたてる。
「つぎは、うえの部分よ。……ほら。ここに継ぎ目がみえるでしょう。ここをまわして……そう、そのまま手前に」
ぱきん。
するり、ずるり。
「ほら、ひらいた。……それじゃあ、儀式をはじめるわ」
「……」
開かれた匣の中には、僅かな隙間にみっしりと詰まった×××××が覗く。
血腥く脈動するその悍ましい姿に、思わず吐き気が込み上げる。
「やることはとっても簡単よ。あなたの指でそれに触れながら、願うの」
恐ろしい、と思った。
「……」
しかし、あとにも引けない、とも思った。
「『わたしは、のろいます』って」
そしてなにより、ぼくはもう、彼女に逆らうことはできないだろう。
机越しにぼくの顔を覗き込みながら、そうして彼女は悪戯のように笑った。
「おしごとの時間よ」
ロスタ・ジーリード(f24844)は、猟兵たちへと告げる。
「みんなには、今からUDCアースにむかってもらうわ」
ロスタは手元の端末を操作し、用意したモニターへと映像を映し出した。
『狐捕場(ことりば)中学校』。
関東近郊の片田舎に建つ、公立中学である。全校生徒約300人。今年で創立112年を数える、歴史ある学校だ。
「いま、この学校ではへんな事件がたくさん起こっているのよ。具体的に言うと、ここ一ヶ月でおおきな怪我につながる事故や、原因不明の体調不良が頻発してるの。えーっとね、統計的には例年の50倍の件数、なんですって」
……既に事件は始まっている。
不幸中の幸いというべきか、現段階ではまだ死者や行方不明者は出ていない状況だ。だが、これを捨て置けば凄まじい惨劇に繋がるであろうことは想像に難くない。
「というわけで、みんなにはこの学校を調査してもらうわ。現象の原因になっている『なにか』を突き止めて、排除してちょうだい」
ロスタはそこまで言ったところで一度言葉を切り、一拍置いてから再び口を開いた。
「これらの事件のうらには、まちがいなく神格級UDCにかかわるたくらみがひそんでいるはずよ。このまま放っておいたら、たぶん、『降りて』くるわ」
だから、そうなる前に止めてほしい。
……というのが、今回の案件の概要である。
「まずは異変の原因になっているものがなんなのかを調べてちょうだい。謎の儀式かもしれないし、なにかの怨念かもしれないし、あるいはー……呪物かも。たぶん、それが広げていくことで学校を中心に呪染された領域をつくりだす計画のはずよ」
そうして異変の発生源を突き止めれば、敵が正体を現すはずだ。……そうしたら、あとは出てきた黒幕を討てばいい。そこから先は、いつもの猟兵としての仕事だ。
「というわけで、話をまとめると……こうね」
そして、ロスタはモニターを示した。
1.学校で起こっている異変の発生源を探し、それを排除する。
2.敵の眷属・あるいは黒幕が現れるため、それを撃破する。
以上である。
「こー書いちゃうと簡単そうに見えるわね。でも、調査中は敵の妨害が入ってくる可能性があるしー、活動を始めたとかんがえられる時期からすでに何週間か経過してるわ。完全、とはいわなくても、それなりに敵は力をためこんでるはずよ。実際に相対するときだって、楽に勝てる相手じゃないとおもうわ」
そうして、そこまで言い終えたところでロスタは猟兵たちをみた。
「あたしはいったことがないからよくわかんないんだけど……学校って、いろんな情動がうずまいてるんでしょ。きっと、敵はそのネガティブな部分を利用しようとしてここを狙ったんだとおもうの」
どこか遠くを見るような目をして、独白めいてロスタは呟いた。
「でも、学校にあるものって、きっとそれだけじゃないんでしょ?」
あたしごほんで読んだから知ってるわ。そう付け加えて、ロスタは微笑んだ。
「きっとね。どこかに、敵の思いもよらない反撃の一手があるとおもうわ。……たぶんね」
本気とも冗談ともつかない言葉を最後に、ロスタはその手の中に光を灯した。
「それじゃ、いってらっしゃい」
かくして。
猟兵たちは、現場へと赴くのであった。
無限宇宙人 カノー星人
ごきげんよう、イェーガー。お世話になっております。カノー星人です。
よろしくお願いいたします。
☆当シナリオには、2章目以降(戦闘フラグメント)に際してプレイングボーナス要項があります。
プレイングボーナス……学校であることを活かす。(学校にあるものを利用したり、学生や教員の協力を得るなど)
第1章 冒険
『UDC召喚阻止』
|
POW : UDCの発生原因となりそうなものを取り除く
SPD : 校内をくまなく調べ、怪しげな物品や痕跡がないか探す
WIZ : 生徒達に聞き込みを行い、UDCの出現条件を推理する
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
狐捕場中学校の異変は、5月の頭から始まったのだという。
まず、野球部の3年生が6人。部活時間中に激しく血を吐き、そのまま病院へ搬送された。
翌日、同じく野球部の1年生が校舎内で血を流して倒れているのが発見される。
数日後、2年生の女子4名が授業時間中に突如恐慌し、校舎3階の窓から飛び降りる。
またその翌日、同学級の女子1名が血を吐き昏倒する。
サッカー部の男子1名が倒れた。翌日女子生徒1名が血を流して倒れていた。英語教師が原因不明の高熱で倒れた。翌日男子生徒1名が階段から落下した。1年生の学級で男子生徒5名が錯乱しながらハサミやカッターで切り付け合い重軽傷を負った。翌日同学級の男子生徒1名が廊下で血を流して倒れているのが発見された。男子が3名翌日女子が1名女子が2名翌日1名男女7名翌日女子1名血を流し血を流し血を流し血を流し血を流し血を流し血を流し血を流し――
――そうして現在に至るまで、およそ全校生徒300名のうち、100名以上が既になんらかの事件に巻き込まれていた。
当然ながら警察関係者が出入りし、調査へと乗り出しているものの――通常の捜査方法とあっては、事態の究明には至っていないのが実情だ。
そのような状況の中、生徒たちの間では、このような噂がまことしやかに囁かれていた。
――だれかが、呪いをばらまいている、と。
化野・花鵺
「ちうがく…せぇふくぱらだいすヒャッホゥ!」
狐、話半分だった
「ちうがくがある世界でこの匂い…UDCかぁ!つまりぃ、排除か救出ぅ!」
「ち、ち、ちうがく厨二でせぇふく~」
鼻をスンスンした狐、スキップした
「未コレクションゲットぉ!」
狐、UCと化術でその学校の新聞部眼鏡制服っ娘に変化した
「カヤこの前転校してきてぇ、新聞部に入ったのぉ。お手柄スクープほしくってぇ…最近気になるネタなぁい?夏向けミステリとか怪談とかうれしぃなぁ」
「カヤもそれ体験したぁい。噂の内容とか場所とか時間とかぁ、教えてぇ?」
狐、男女構わず誘惑した
「逢魔が時の旧校舎か倉庫かと思うたが…さて」
狐、式神放ち野生の勘頼りで目的地目指した
「ちうがく……せぇふくぱらだいす!ヒャッホゥ!」
化野・花鵺(f25740)は快哉をあげた。
――花鵺は制服という概念に強烈なフェティシズムをもつ猟兵である。
この仕事に志願したのも、制服姿の少年少女にいくらでも出会うことができるこの学校というシチュエーションに惹かれた部分が大きい。
はっきり言って――グリモア猟兵の説明も、話半分だった、らしい。
「で、えーっと……確認確認。これはー……ちうがく!」
花鵺は校門前で指差し確認した。
『狐捕場(ことりば)中学校』――。――本来は妖狐の眷属である彼女にとって、『狐を捕る』などという名前はあまり歓迎できるものではなかったが、それよりも制服に出会える喜びの方が大きく勝った。
「ちうがくがある世界でこの匂い……」
そして花鵺は現状把握に努める。
「……なるほどー!ここはUDCかぁ!つまりぃ……カヤのおしごとは、排除か救出ぅ!」
すん、と鼻を鳴らして、花鵺は行動の指針を定めた。
「ち、ち、ちうがく厨二でせぇふく~♪」
そして――足取り軽く、校内へと足を向ける。
「……んん?」
だが、ここで花鵺は気づく。――どろりと粘つくような、空気の重さ。身体を縛るほどではないにせよ、若干の煩わしさをおぼえる術的干渉。
呪詛。――UDC怪物の放つ独特の気配だ。呪という概念に対する耐性をもつが故に、彼女はそれを気取り、そして半ば無視して進むことができた。
「ふーむ……」
花鵺は鋭く目を細めた。――仄かに、彼女の纏う空気が変わる。
「式よ」
『ぴきゅ』
そして、花鵺は式神を放つ。
「暫しここらを巡れ。障りがあればすぐ妾のところへ戻り知らせよ。よいな」
『きゅ』
花鵺は開封した式神を飛ばす。放たれた式は不可視の霊体となりながら、学校の敷地内を走り出す。
「……よしっ」
そして、その姿を見送った花鵺は再び表情を緩め、校舎内へと向けて歩き出す。
――彼女の調査は、ここより始まるのである。
「ねぇねぇ、せーんぱいっ!」
「……えっ?」
新聞部2年。川良・伴蔵(かわら・ばんぞう)は、新聞部の部室で次回の校内新聞の内容について検討していたところであった。
そこへ突然現れた訪問者の声。伴蔵は驚きながら振り返る。
「……誰?」
「はーいっ。カヤはねぇ、カヤっていうのぉ。この前転校してきたばっかのぉ、一年生でーす!」
伴蔵が視線を向けたその先に佇んでいたのは――花鵺であった。彼女は学校に侵入を果たすと同時に、その持ち前の化術を用いてこの学校の生徒へと化けたのだ。肩書は『新聞部の眼鏡制服っ娘』。情報収集をしても怪しまれないポジションである。
伴蔵の疑問に激しくまくし立て、花鵺はぐいと押し込んだ。急接近して伴蔵との距離を詰める。
「それでねぇ、せんぱぁい。カヤ、さっきここに入部させてもらったところなんだけどぉ……」
「あっ、うん……はい……」
突然の急接近に戸惑う伴蔵。その反応に『イケる』と確信した花鵺は更に押し込む!
「ね、せんぱぁい。さっそくなんだけど、カヤお手柄スクープほしくってぇ……最近気になるネタなぁい?夏向けミステリとか怪談とかうれしぃなぁ」
「さ、最近気になる……怪談?」
――引っ掛かった。後輩女子の接近によるドキドキとは明らかに別の、怯えを含んだ感情の色。それを見逃すことなく花鵺は付け入る。
「あるんですぅ?」
「そ、そりゃあ……まあ……」
「おしえてぇ?」
「……」
誘惑するように甘い声で囁く花鵺。――それに押し切られたように、伴蔵は静かに口を開く。
「記事に、できないような……ゴシップで、よければ」
「うん!ききたぁい!」
「……」
短い溜息をひとつ吐き出して。
伴蔵は、口を開いた。
「……噂、なんだけどね。花鵺くん。例の件は知っているだろう。いま、この学校で起きてる事件だ……それは、ぜんぶ、呪いのせいだって」
「うんうん」
「で、さ。僕も気になって調べていたんだ。……そうすると、面白いことがわかってね」
伴蔵曰く。
「最初の事件は6人。“その翌日に1人”。次は4人。更に“翌日に1人”。1人倒れて“翌日1人”。1人倒れて“翌日1人”。5人倒れて“翌日1人”――」
「……えーっと。『誰かが被害にあった次の日に、かならず1人被害にあってる』?」
「そう。……で、これば僕が独自に調べた情報なんだけど――」
――“翌日の1人”は、必ず前日に倒れた被害者とかかわりのある人物である。
たとえば、『野球部の1年生』は、先輩である3年生たちに必要以上に過酷なしごきを受けていたとか。
たとえば、『2年生の女子1名』は、同クラスの女子グループに嫌がらせを受けていただとか。
たとえば、女子生徒はサッカー部の男子と破局していただとか。たとえば、男子生徒は英語教師にいびられていただとか。
たとえば、たとえば、たとえば――。
「……つまり」
「「呪う理由があった」」
伴蔵と花鵺は、異口同音にそれを呟いた。
「……って、ことさ」
「ふーん……なるほど。……自衛手段もしらないよーな子たちが呪いなんかに手を出しちゃったら、そりゃあそういう目にあっちゃうよねぇ」
「花鵺くん?」
「あっ、なんでもないよぉ!」
訝しむ伴蔵の視線を振り切って、花鵺は一歩下がる。
「それじゃせんぱぁい、おしえてくれてありがとっ。じゃあカヤはもーいくね!」
「ああ、うん――僕もそろそろ帰るよ。花鵺くん、家はどっちの方だい。送って――」
「だいじょーぶ!ひとりでかえれるよぉ!」
伴蔵の申し出を断りつつ、花鵺は部室を飛び出した。
――この話だけで、花鵺は既に半ば確信めいた考えをもつに至っていた。
恐らく、この事件の被害者の内の何割かは伴蔵の推察のとおり、『呪詛をおこなった者』であろう。だが、呪詛に耐性をもたぬ者が生半可に呪いに触れたことで、呪詛返しに似た状況に至ってしまったか、あるいは代償を払うことになったのだ。
しかして、そのような本格的な効力をもつ呪詛が突然学園中に広まるなどということは極めてレアケースだ。……そう、それを仕組んだ何者かが存在しない限りは。
すなわち――花鵺の至った結論は、『この学校の生徒たちの中から、『恨みをもつ者』を探し、そして呪いの手段を広めている『何者か』が存在する』ということである。
「……なら、そやつを探し出して締め上げるのが一番話が早かろうな」
既に彼女の表情は敵を追いつめる猟兵のそれへと変じていた。
そして、花鵺は静かに校舎を往く――。学園に蔓延る、呪詛の根源を探して。
成功
🔵🔵🔴
朱酉・逢真
心情)おや新鮮。つってもこの《宿(*身)》は病毒のカタマリ、物理接触は害しかない。ならば《宿》捨て影となろうか。学校は暗がりの宝庫だろう。机・椅子・教卓・ロッカー・図書室資料室職員室階段他いろいろ。学校はうわさの宝庫だろう。いとけない秘密・内緒話・先生の噂に生徒の噂。そして、ああ。秘密は暗がりに溶けるものさ。
行動)暗がりに溶け込み噂を聞いて、出どころ根っこを調べよう。関係ない噂はさっくり忘れる。暗がりは隠れ場吐き出し場、救いも反応も返らぬものさ。それとォ…眷属ども(《獣》からネズミ・《虫》から色色と)を駆けさせて。反応があったり消えたりしたなら、そこらが本丸と目をつけよう。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
名前からして気になる場所ですけどねー?この学校。
学校に何度か猟兵仕事で来てますけど、巨大な箱だなーって悪霊視点が。
結界張りやすいんですよねぇ…。
さて、地縛鎖刺しましてー。呪いの痕跡を探しましょうかー。
それに加えて、悪霊として惹かれる場所があれば…そこを調べましょう。複合型悪霊として惹かれるということは、そこは呪力とか溜まっている、ということですからねー。
本当に…子どもたちが犠牲にならずに、済むように。止められるなら、止めてみせますよー。
「……ああ、こいつは良くないな。ひどい空気じゃないか」
「ええ、同感ですねー……。ここまで濁っているのも珍しい」
朱酉・逢真(f16930)は、僅かに眉を顰める。
異様な気配を気取ったのは、馬県・義透(f28057)も同様であった。
――2人は、今回の事件の解決のためにここ狐捕場中学校へとやってきた猟兵である。
そして、そのどちらもが『呪い』にまつわる案件のスペシャリストと言っていい在り様の存在であった。
逢真は神性の一柱である。司る概念は『病毒』。それはひとを害するものであるという点で呪詛という存在に通ずる。
一方、義透は悪霊であった。――4人の人間の残滓が混ざり合って構成される、複合型の悪霊である。彼もまた、悪霊と呼ばれる存在として現世にあるがゆえに、そうした霊的干渉である呪いという概念についても理解が深い。
2人は見遣った校舎の様子に、それぞれ短く嘆息した。
「どう見る?」
「うーん……そうですねー。まー、まず。名前からして気になる場所ですけどねー?この学校」
「……狐捕場(ことりば)か」
狐捕場。
ここを訪れるにあたって調べた由来では、かつて江戸時代にこの地域一帯を荒らした邪悪な狐妖怪を徳高い僧が捕らえ、それを退治したという伝説が残るが故であるという。
「狐の怨念、というセンはどうでしょうかねー?敵の正体」
半ば冗談めいて。義透は校舎を仰ぎながら呟いた。
「いいや、そっちはないだろう。狐の仕業にしては――獣臭さがない」
逢真は緩く首を振って、それを否定した。
逢真は既に自らの一部を校内へと遣わせていたのである。――【暗夜の細波】。彼は自身の肉体を『暗がり』そのものへと変えて、校舎の中の影に潜ませていたのだ。
そうして彼の一部が学校内へと忍び込み、そして抱いた印象は――『血腥さ』であった。
「まあ、そうでしょうねー……おっと」
ぱち、っ。
――弾ける音が、突如として義透の手元で鳴った。
「どうした?」
「うん。向こうも既に手を打っていたようですねぇ。……反発がありました。恐らく、結界でしょう」
義透の手の中で、握った鎖がざらりと音をたてる。――地縛鎖。大地に突き刺すことで自身の霊体と土地を繋ぎ、その地の記憶を吸い上げるための術具である。
義透はこれを用いて大まかな調査を進めようとしていたところであったが、その干渉力を跳ね除けようとする『敵意』を感じ取ったのだ。――こちらが来ることを想定して、『敵』も備えていたということか。義透は僅かに苦笑する。
「なかなか力が強いようですねぇ……。やはりこの学校という立地は曲者かもしれません」
「学校がか」
「ええ。学校に何度か猟兵仕事で来てますけど……、毎度思うのは、巨大な箱だなー、というところですかねぇ」
『学校』という空間は、外側と隔絶された一種の閉鎖空間である。――それはすなわち、その内側で行われるあらゆるおこないが、外に漏れだしにくい、ということだ。それは霊的・術的な視点においても同様であり、区切られた空間の内側はそれそのものが天然の霊的結界であると言っても過言ではない。
「結界、張りやすいんですよねぇ……」
その性質を利用すれば、そこに自らの干渉力を注ぎ込むことで学校そのものを包み込む結界を作り出すこともそう難しいことではない。
「敵が既に『張っている』ということだな。ネズミどもの声が遠いのもそのせいか」
逢真が目を細めた。――彼は自らの一部をもって校内の調査を試みていたが、それと同時に彼の眷属たる獣や虫たちもまた走らせていたのである。
しかして、放ったそれらが彼の耳朶へと伝える声は本来聞こえるはずのそれよりも幾分にか細い。――それもまた、学校全体を満たすように敵が展開した領域が術式へと干渉しているが故か。得心のいった逢真は静かに頷く。
「やれやれ。まるで電波妨害ですねぇ……。どうにも向こうの影響が濃いようです。ここからでは少々分が悪いですねー」
ここで義透は一度地縛鎖を引き抜いた。短くため息を吐いてから、あらためて校舎の方へと視線を遣る。
「……なら、やはり乗り込むしかないようだ。俺もすこし本腰を入れるとしよう」
一方で、逢真は薄らと笑みを浮かべながら、その身を解く。
――逢真の身体は、《宿》である。それは本来神性である彼が現世で活動するために拵えた《器》だ。逢真はその身体を一度脱ぎ捨てることで霊的な力を高め、そして自らの本体そのものまでもを『暗がり』へと変えたのである。
『俺は直接行って中を探ってみるよ。……ああ。秘密は暗がりに溶けるものさ』
「では、私も行きましょうかねー……。ここで足踏みしているわけにもいきません」
逢真が『暗がり』と化すのと同時に、義透は校舎へ向けて進み出した。
『多分、どこかに敵が根城にしているような場所……敵の本丸があるはずだ』
「ええ。呪力の痕跡を追ってみましょう。これほど大規模に動いているのなら、跡を残さずにやることは不可能でしょうからね」
『そうだ。こっちもその方向性で探してみるさ。わかり次第連絡する』
「では、うまくやりましょう」
するりと校舎内に向かって流れてゆく暗闇――逢真へと一度頭を下げ、義透は昇降口へと至る。
仰ぎ見た校舎は薄暗く、そこにあるべき活気はいまはまるで失せている。
――学校そのものが生きる力を失っているかのように、義透の目には映った。
「本当に……子どもたちが犠牲にならずに、済むように。止められるなら、止めてみせますよー」
その口の端から零れたのは、決意の言葉。
ほんの少し表情を引き締めた義透は、かくしてこれより校舎内へと足を踏み入れる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メフィス・フェイスレス
きな臭い話ね
時間もなさそうだし一人ずつの聞き込みじゃ効率が悪いわね
校内への潜入は生徒か教師の血を採って成り代わる?
…誰が敵かも分からない
私が関係者に直接接触したり堂々校門から入るは危険かしら
(チラリと野良猫が目に入り)
よし、こうしましょう
「肉体改造」で猫になる
にゃーん。……なんてね
あー、流石に窮屈ね。さっさと用をすませましょ
校舎裏の隙間から素早く校舎に忍び込む
どこか人目に付かない場所…屋上辺りに陣取るわ
そこで元の姿に戻り、【飢渇】を「集団戦術」で大量に出して「迷彩」で透明化させて学校中に散らす
生徒や教師が教室に集まっている授業中に【飢渇】で全員から少量ずつ「吸血」を行いUCで情報収集する
「……随分と、きな臭い話ね」
メフィス・フェイスレス(f27547)は、校舎より少し離れた場所から学校の全体を見下ろす。
――生温く吹く風に混ざるのは、血腥さ。それは、彼女のよく知る臭いでもある。
「ああ、これ……まずいわね」
血の匂い、というのは――捨て置けば、広がってゆくものだ。いかなる世界においても。彼女はそれをよく知っている。
この『血腥さ』は放置すればここから更に拡大し、拡散するだろう。その根源をより強く、より大きくしながら。
「っていうことは、時間もなさそうだし……」
メフィスは思考する。
――どのようにして情報を揃えるのが最善手か。生徒一人一人への聞き込み?否、それでは『当たり』を引き当てるまでに時間を要する。効率の悪い方法だ。
――それに、潜入の手段もどうする?
メフィスはその身に宿すユーベルコードの力によって、他者の血肉を取り込むことでそれに擬態する力を持つ。では、そのようにして関係者に擬態して潜入するのがよいか。
否、これも難しい。――誰が敵かもまだわかってはいないのだ。メフィスは慎重に検討を重ねる。
勇敢と蛮勇はまるで異なるのだということを、彼女はよく理解していた。理性を保ち、思考を重ね続けることこそが、彼女がアイデンティティを保つためのもっとも重要なことであると、彼女は何よりもよく知っていた。
そう。仮に関係者の誰かの血を採ったとして――そこで運悪く『敵』を引き当ててしまったら、それは大きなあまりにも危険な状況に直面することになる。否、そもそもが関係者への接触行動そのものが危険であるとも考えられるのだ。
「……なら、どうするのが正解かしらね――あら」
その時である。
思索を続けるメフィスの横を、一匹の野良猫が横切った。
「よし、こうしましょう」
そして、メフィスは閃いたのであった。
「にゃあん」
かくして、メフィスはヒトのかたちより逸脱する。
少々“吸わせて”もらった血の味から、彼女は猫のかたちへと変じていた。
(あー……でもこれは流石に窮屈ね)
とはいえ、メフィスと猫では質量に大きな差がある。本来の自身の肉体を強引に縮小させて猫のかたちの器へと押し込んだ状態だ。あまり長時間は保てまい。
メフィスは素早く人目を忍び、校舎内へと駆けこんだ。猫の敏捷性を活かし、素早く校舎を駆けあがって人気のない屋上まで侵入する。
「……っは!」
ここでメフィスは変身を解いた。……猫の姿を取っていたが故に、見咎められることなくここまで入り込むことができた。
しかし、重要なのはここから先だ。メフィスは次なる一手を打つ。
「ハァー……っ」
その肉体からにじみ出るように、粘つく躯体の異形がいくつもまろび出た。――飢渇に喘ぐもの。それは、彼女の身体から生み出された『眷属』たちである。
「……もうちょっと小さくした方がいいわね」
メフィスは並べた『飢渇』たちへと手を加える。――自身の肉体を改造するのと同様に、彼女は眷属たちのかたちを自由に変えることができるのだ。これらを見咎められずに活動できるよう、小さく目立たぬように作り変えてゆく。
「よし……行ってきなさい」
そうして虫ほどのサイズまで押し込んだ『飢渇』たちを、メフィスは放った。
――メフィスは彼らのことを『眷属』と呼ぶが、実質的には『端末』と言い換えてもいい。そのほとんどを、彼女は自在に操ることができる。
「いまは……授業時間、かしらね」
そうして走らせた『飢渇』の群を、メフィスは教室へと忍び込ませてゆく。
「……少しでいいわ。血を採ってきなさい」
そして、メフィスは『眷属』たちへと命じた。
――そうして、『飢渇』たちを走らせてから、およそ1時間後。
メフィスは彼らを自らのもとへ呼び戻す。そうして吸い上げた学校関係者の血液から記憶をたどり、情報を探る腹積もりなのだ。
「お帰りなさい。それじゃ、早速……?」
メフィスは手を伸ばし、帰還した眷属たちを自らの身体へ戻そうとしたが――ここで、違和に気づいた。
少ないのだ。戻ってきた『飢渇』たちの数が。――戻ってきたのは、およそ8割といったところか。彼女の一部とも言える『眷属』たちは決して無能ではない。それらが欠けて戻ってきたということは――
「……敵もこっちの手に感づいている、ってことかしらね」
敵に手を打たれた、ということだろう。ならば、多くの情報は望めないか。
半ば諦観に近い気持ちがメフィスの胸中で首をもたげる。――しかし、決して成果をゼロにするわけにはいかない。
「とにかく、戻ってきた分だけでもね」
かくして、メフィスは『飢渇』たちを自らの内へと戻した。
――呪いがあれば。
――あれがあれば。
――あの匣が。
――あいつを。
――あいつらを。
――苦しめてやれる。
――いやだ。
――怖い。
――そんなおそろしいこと。
――やらない、そんなこと、しない。
――『いいえ。いいえ。やるのよ。あなたにはその権利があるの』
――『さあ』
――『あしたの放課後、×××××で待っているわ』
――断片的な記憶が、彼女の脳裏によぎる。
それは、『飢渇』たちが得た生徒たちの記憶の中の一片だ。
それは――『何者かによって、『呪い』を行うように導かれている』光景であった。
「……間違いないわね」
メフィスの脳裏に再生されたその記憶の断片は、きわめて重要な情報に違いない。
即ち――『呪いを行うように導く何者か』が間違いなく存在しているという確固たる証拠だ。
断片的な記憶の欠片の中に見えたその姿は曖昧でおぼろげであったが、それでもヒントには違いない。
「……他の連中にも伝えて……敵を追わなくちゃ、ね」
かくしてメフィスは立ち上がる。
ここにひとつの指針は得られた。――そして、メフィスは動き出す。この事件を仕組んだ、見えざる敵の姿を追って。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
この世界で『肩書』は騎士の剣より余程強力ですからね
UDC組織支援で資格偽装
『違和感与えぬ異能』でスクールカウンセラーとして潜入
良く不安をお話してくれましたね
休まず登校し発表会へ向けて練習…この大変な時期では勇気がいることです
ええ、すでに本番への胆力は十分です
最近、何か気になる噂など耳にしたことは?
私もこの件を何とかしたいと考えていまして
…さて、表の次は裏ですね
通信回線ハッキング
SNSや学校裏サイトを瞬間思考力で超高速閲覧情報収集
見ていて愉快でなくとも生徒達の不安の対象を割り出せます
本命であれば良し
疑心暗鬼の濡れ衣着せられた子であればケアの為に把握と接触は猶の事急務です
少し、お話いたしませんか?
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
あまりにも事件が多すぎると、
感覚まで麻痺してくるのかねぇ……
いや、マヒさせられてるのかもな。
呪物か眷属か、どっちが原因かまではまだ読み切れないけど、
ガキが食い物にされるのは寝覚めが悪いんでね。
さっさと抑えにかからせてもらうよ。
学校出入りの教材業者に『変装』し、物を運び込む体で大っぴらに校舎内へ踏み込む。
対応してくれた先生と『コミュ力』で打ち解けて、それとなく細かな事件の概要を聞きながら『情報収集』。
生徒以外……大人に被害があったのか、も気になるからね。
何せここは名前がよろしくない。
狐捕場の読みが、さ。
なんで「子取り」場とも読めるんだか……細工箱なんか無いだろうね?
「失礼しまーっす。コピー用紙のお届けに伺いましたーッ」
「ありがとうございます。そこに置いといてくだ――おや?」
「あッ!」
スクールカウンセラー室。
現代の学校においては欠かせなくなったスクールカウンセラー――すなわち教員でも家族でもない第三の大人が常駐し、悩みを持つ生徒を受け入れるための部屋である。
そこにおいて、臨時職員として潜入したトリテレイア・ゼロナイン(f04141)と、学校に出入りする業者を装ってきた数宮・多喜(f03004)は顔を見合わせて絶句した。
2人はともにこれまでいくつもの修羅場を潜り抜けて来た歴戦の猟兵であり、そしてお互いに――『戦友』だとか『冒険仲間』だとは思う程度の付き合いがある、いわば顔見知りであった。
「……あんた、どうやってこんなところに」
その一方、校舎内への潜入どころか職員として違和感なくおさまっているトリテレイアの姿に、多喜は驚きを隠せなかった。
「ユーベルコードの応用ですよ。この世界で『肩書』は騎士の剣より余程強力ですからね」
トリテレイアはしれっと言ってのける。トリテレイアは職員用の椅子に――随分窮屈そうに――座りながら、冗談めかして頷いた。
「かーっ、そんなやり方があったってのかい……。まあいいや、ここで会ったのも何かの縁だろ。情報共有といこうじゃないか、センセイ?」
搬入物を指定の場所へと置いた多喜は、配達員衣装の帽子を直してトリテレイアへと詰め寄る。
「ええ、そうですね。……私も数日前からここに潜入して調べていましたが、こちらとしてもそろそろ他の方とも話しておきたかったところです」
「それじゃ、丁度よかったってことだね。……で、もうアタリはついてるのかい?」
「早速ですか」
「茶飲み話をしに来たワケじゃないからね」
安物のパイプ椅子をセッティングして、多喜は腰を下ろす。
「何よりガキが食い物にされるのは寝覚めが悪い。こっちとしちゃさっさと抑えにかかりたいところなんだけど」
「それは私も同感です。……逆に質問しますが、数宮様は今回の案件についてどうお考えです?」
「なんだいそりゃ。……そうだね。まず思ったのは――ここは、空気が悪い」
多喜は眉根にしわを寄せながら、そして天井を仰いだ。
「なんつーか……『超次元の渦』ってあったろ」
「……邪神の領域でしたね」
「ここの空気、それに似てるんだよね。あれほど重いってわけじゃないけどさ――なにかまとわりついてくる感じの」
超次元の渦。
それは、UDCアースを狙う神格級UDCがこの世界を狙うために潜んでいた異界の領域である。
「やはり何者かが呪いを振り撒く……『撒かせる』ことで、この学校を中心とした一体の異界化を目論んでいるとみていいでしょう」
「そうやってここに何かしら『降ろす』腹積もりってことだろうね。……で、重要なのはその『呪い』の正体だよ。……なんだと思う?」
「……眷属を遣わしたか、あるいは呪物を用いたか」
「そこだ」
ここで、多喜が鋭く指摘した。
「なあ。あんた。……ここの名前、どう思う?」
「突然ですね。……どう、とは」
トリテレイアはスペースシップワールド出身の猟兵である。
であるが故に――異世界の文化習俗に完全に通じている、というわけではない。――特に、その世界の文化独特の『言葉遊び』などは。
「『狐捕場(ことりば)』……って名前さ。……『子取り』……『間引き』とも読めるじゃないか」
「……『子供を取る』ということですか」
「ああ。……『そういう由来の有名な呪物』ってのも、この世界にはあるからさ」
――木組みの細工箱なんか、ないだろうね。
半ば冗談めいて多喜は付け加える。
「……噂程度には、聞き及んだことがあります」
『×××××』。
間引きなどの理由によって命を絶たれた子供を材料として作るといわれる、この界隈では有名過ぎるほどに知られた呪物だ。――それに類する呪物を仕立て上げ、利用するUDC信奉者も少なくないのだという。
トリテレイアは静かに頷いた。
「その読み、『当たり』かもしれませんよ」
「……なんだって?」
予期していなかったトリテレイアの返答に、多喜は声をあげて立ち上がった。
「落ち着いて。これを見てください」
トリテレイアはその手に通信端末を持ち、それを素早く操作する。
――『学校裏サイト』。
それは、現代の学校社会の中にも存在すると言われる生徒同士の隠されたコミュニケーション空間だ。
だが、匿名性を伴ったその空間においては、日々の生活の中で育った闇が首をもたげている。
『3年の××、死ね』『野球部の××と××、ウザい』『2年X組の×××は(見るに堪えない罵詈雑言)』。――そうしたネガティブな文言が飛び交うのもまた日常茶飯事だ。
この狐捕場中学校の『学校裏サイト』も、例に漏れることなくそうした心の闇がさらけ出される場となっていた。
「重要なのはこれです」
「どれどれ……?」
トリテレイアはその中からひとつのトピックをピックアップした。
『シアワセノハコを開けよう!』
『学校でわたしをみつけられたひとには、『シアワセノハコ』をあける権利をあげちゃいます!』
『『シアワセノハコ』をあけられたら、いいことあるかもよ!』
――多喜が覗き込んだ画面に表示されていたのは、そのような文言であった。
「おい、これ……」
「……恐らくは」
『恨み』。
『学校裏サイト』。
『呪物』。
『シアワセノハコ』。
『呪いを撒く何者か』。
『『シアワセノハコ』をあける権利をあげる』。
――多くの要素が繋がるポイントが、ここに在った。
「なら……この書き込みをした奴を探せばたどり着く、ってことか!」
「そのようですね。しかし一人で行動するのは危険です。私も同行いたしますので、少々――」
立ち上がる多喜を諫めるように、トリテレイアが立ち上がる――しかし、その時である。
「しつれいしまーす。トリテレイアせんせい、いますかー?」
「はい、開いていますよ。どうぞ――」
ノックの音とともに投げかけられる少女の声。一拍置いて、開けられる引き戸。そこには女生徒がひとり立っていた。
「せんせー!今日も話きいてくださいよーッ!センパイったらひっどいんですー!!わたしのトロンボーンがみんなのメロディを乱してるー、だなんて」
入室と同時に始まるマシンガントーク!――彼女は吹奏楽部の女子である。ここ何日か、こうして部活の後に愚痴を言うためにスクールカウンセラー室を訪れては長々と喋り倒していく、こうるさいタイプの女子であった!
「ああ、はい――わかりました、わかりました。聞きます、聞きますから座ってください。……というわけで数宮様、来客なので暫しお待ちを――」
「はいはい、わかったよ。んじゃ、アタシは昇降口で待ってるからね。終わったら来てくれ」
「なーにいまのひと!?ひょっとしてトリ先のカノジョ!?」
「違います」
「またまたー!このー!恋愛にはキョーミナイみたいな顔してスミに置けないんだからー!あっ、コイバナっていえばさー!トリ先きーてくださいよー!おなじクラスのアミがね、カレシできたってジマンすっごいウザくてー!!アタシだってアーッ恋してー!って毎日毎日思ってるのに――」
「はい、はい。そうですか。そうですか――」
「……」
閉めたドアの向こうから漏れ聞こえる女生徒とトリテレイアのトークに思わずこみ上げかけた笑いをかみ殺しながら、多喜はゆっくりと廊下を進み始めた。
――とにかく。指針を掴むことはできた。
あとは――『呪いを撒いている何者か』を見つけ出し、そして叩くだけだ。
これ以上、無辜の人々を危険に晒し続けるわけにはいかない。その決意を込めて、多喜は再び顔を上げたのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティオレンシア・シーディア
この手の呪詛って大体時間かけたらかけただけ強力でタチ悪くなるのよねぇ…
もう結構な時間経っちゃってる以上、ちょっと強硬手段やむ無しかしらぁ?
事件は学校の敷地内に限定されてるみたいだし、元凶が内部にあることはほぼ確定。…なら、余計な余波とか残滓とか、いったんまとめて祓っちゃいましょうか。
使うルーンはアンサズ・オセル・ラグ。●酖殺を展開して「神言」にて「領域」を「浄化」するわぁ。灰色の紙より白い紙のほうが黒い汚れは見つけやすいでしょぉ?
邪魔なのを消し飛ばしたらカノ(叡智)とラド(探索)で底上げして探索しましょ。
…実習生として潜入するのも、我ながらそこそこ慣れてきたわねぇ…
九重・灯
人格は「わたし」です。
UC【幼心の魔法】。中学生相当に姿を変えて潜入します
『化術』
ラムネ菓子を口に含んで考えを巡らせる
他の猟兵からの情報を聞くと、『何者か』は恨みを持つ者の情報を何らかの方法で集めて、一人ずつ同じ手順で処理しているように思えます。淡々と、工場の流れ作業みたいに……
オカルト部とか怪談好きそうな子に話を訊く
「最近話題になっている『呪い』について。わたし、ちょっと興味があるんですよ」
関係ありそうなウワサを知りませんか? 誰かを呪うにはこうすれば良いとか。あと、ここ一ヶ月程度にいきなり流行りだしたおまじないとか。
攻撃を受けたら『結界術5』でガード。これで引いてくれると助かりますね
「んー……」
九重・灯(f17073)は、思考を巡らせた。
口に含んだラムネ菓子が、唾液に溶けてゆっくりと消えてゆく。舌先から摂取されたブドウ糖が彼女の脳髄へと活力を与え、そしてその思索を活性化させた。
「……」
そして、情報を整理する。
――この学校に現在蔓延る呪染は、明らかに何者かの意志によって拡散されている。
『何者か』は、恨みを持つ者の情報を何らかの情報によって集め、そして一人ずつ同じ手順で処理しているように思える。
それは――感情を介さぬ機械めいて。淡々と。工場の流れ作業のように。
「……どしたの、あかりん?」
「おいおい、今更怖気づいたっつーのかァ?」
思案する彼女に声をかけたのは、狐捕場中学校オカルト同好会のメンバーだ。池上・仁恵子(いけがみ・にえこ)と雲津・捧(くもつ・ささぐ)の2人である。
2人はいまの狐捕場中学校を包むこの状況を何者かの呪いの産物であると断定し、その調査と称して日夜校内の巡回を行っていたのである。
情報収集を行うために有益であると判断した灯は、彼らに同行を申し出、そして校内の探索に加わっていたのである。
「まさか。そんなことはありません」
「おうおう。じゃあさっさと行こうぜ」
「そうだね。……で、なんのハナシだったっけ?」
灯はオカると同好会の2人とともに校舎をゆく。
時刻は既に黄昏時。部活動の時間も終わり、校内放送で帰宅を促す声が響く頃合いだ。
しかしてこの時間は黄昏。――すなわち、陰のものの気配がもっとも色濃くあらわれる時間帯でもある。
「最近話題になっている『呪い』について……ですね」
「ああ、そうだったそうだった。えーっと、どこまで話したっけ?」
「そうそう、ズバリ!私の推理ではー……『シアワセノハコ』が絶対怪しいと思うんだよね!」
『シアワセノハコ』。
それは、しばらく前からこの学校で囁かれ始めたという噂――否。噂にも満たない与太話である。
およそ一月半前より狐捕場中学校の学校裏サイトに書き込まれ始めたというその怪文は、しかしてその書き込まれた時期と『呪い』が始まったタイミングとで一致しているのだという。
「この『シアワセノハコ』をもってる人に会えたらー、それを使った儀式で幸せになれる、って書いてるんだけどさ」
「どう考えても怪しいよなあ。あからさま過ぎるっつか」
「……」
――学校裏サイト。
他の猟兵達から聞いた情報の中にも存在したものだ。
なるほど、たしかにそうしたクローズドな空間であれば多くの悪意が吐き出され、その中から呪詛を行うほどに強い害意を見つけ出すことも可能だろう。
すなわち、それこそが敵の『狩り場』だったに違いない。――灯はそのように類推した。
「だからね、私達が見つけるべきは、その『シアワセノハコ』の儀式をしよーっていう現場を押さえることだと思うんだ」
ぎゅっと拳を握って、仁恵子が熱っぽく語る。
「ああ。そいつを見つけることができれば呪いの正体も掴めるって――」
それに追随するように頷いた捧であったが――その言葉と足が、不意に止まった。
「あらぁ……。それはいけないわねぇ」
――進む廊下の先に、人の姿を見つけたからだ。
「げっ……たしかアレ」
「うっ、あいつ……教育実習生!」
「もう下校時間はとっくに過ぎてるわよぉ?……学校探検、なんてトシでもないでしょ。全員、すぐに帰りなさぁい」
『教育実習生』――ティオレンシア・シーディア(f04145)は、灯とオカルト同好会の2人へと帰宅を促した。
「ちぇっ、しょうがねーな……」
「はーい、かえりまーす。それじゃあかりんも――」
実習生と言えど、教員に帰宅を促されれば2人も従わざるを得ない。仁恵子と捧はため息をつきながら、灯を伴って廊下を戻ろうと振り返り――。
「あ――いーえぇ。その子は別の用事があるわぁ。2人は先にお行きなさい」
そこで、灯はティオレンシアに呼び止められた。
「……?」
灯が怪訝な顔をして首を傾ぐ。
ティオレンシアは素早くその耳元に顔を寄せ、かすかな声で囁いた。
「猟兵でしょぉ。――わかるわよぉ。あたしもそうなんだから。……ここは協力しましょ?」
「……わかりました」
刹那に交わされたやり取りは、灯に協調を促すには十分であった。
先に行ってて、と灯はオカルト同好会の2人に示し、そして帰らせる。――2人の姿が廊下の先に消えたことを確認してから、灯はティオレンシアを振り返った。
「あなたも……『呪い』の件で?」
「ええ。同じ案件で来てるなら、説明の必要はないわねぇ?」
ティオレンシアはゆっくりと歩きだす。灯もそれに続いて廊下を進み出した。
「この学校、もう随分呪染されてるわぁ」
「それは……わたしも感じていました」
魔術の徒であるティオレンシアと、同じく我流でありながら魔術師に近い技術をもつ灯は、どちらも校舎を重苦しく包み込む呪力を感じ取っていた。――左腕の印をとおして、なにかがざわめくのを、灯は敏感に感じ取っている。
「この手の呪詛って大体時間かけたらかけただけ強力でタチ悪くなるのよねぇ……もうだいぶ積み重なってるみたいだし」
「そうですね……そこらじゅうに力の痕跡が残っているせいで、探すのも難しくなっていますし」
「……なら、ちょっと強硬手段やむ無しかしらぁ?」
「強硬手段?」
「えぇ」
ティオレンシアは灯とともに校舎内を進んでゆく。
そして、そうしながら――術式を紡いだ。
「――ナウマク・サンマンダ バ・サラ・ダン・センダ……」
真言。
それはUDCアースにおいても広く知られる、魔を祓い浄める力をもつと言われる呪のひとつである。
からり。
真言と同時に、ティオレンシアはポケットから引き出した輝石を握る。そこに刻まれたのは彼女の得手とするルーンの魔術文字。アンサズ/防衛・オセル/保守・ラグ/浄化の三つである。
ティオレンシアは、そこに意識を収束し、そしてその三つの輝石を砕いた。それと同時に溢れ出したルーンの魔力が真言を唱える声と折り重なり合い、校舎内に響き渡る。
【酖殺/リージョン】。ティオレンシアはここに、浄化の力を広げるための複合魔術を構築したのだ。
「……随分と派手にやりますね」
学校の敷地内を満たす重苦しく暗い気配が、目に見えて掃われてゆくのを灯は感じた。
「灰色の紙より白い紙のほうが黒い汚れは見つけやすいでしょぉ?」
――なるほど。たしかにこれで空気はクリアになった。ティオレンシアの物言いに、灯は納得しかける。
「ですが……ここまでやったら、この状況を仕込んだ『何者か』も、流石に放っておかないのでは?」
しかして、この作戦が有効である反面、同時にリスクの高いものでもあると灯は指摘する。――灰色に塗り潰した画板を、突然白紙に還されれば、努力を水泡に帰された敵も黙ってはいまい。
「むしろ望むところでしょぉ?……最終的に、ブッ飛ばすのは決まってるんだから――っとぉ!」
ティオレンシアが口の端を緩く吊り上げた――その瞬間である。
――強烈な敵意と害意、そして殺気が綯い交ぜになった強力な呪詛塊!
赤黒く蠢動する“何か”が、廊下の隅から飛び出したのをティオレンシアは視た。
「……ほら、やっぱり!」
その瞬間、灯はほとんど反射的に左腕を突き出していた。
腕に刻まれた刻印を通じて、灯は領域外のものと精神を繋げる。奔る燐光。朱色の光が床面に円を描き、そこに簡易的な結界を素早く構築する!
『い、いいぃいいいぃいいぃ』
赤黒い何かは朱色の光に阻まれその動きを止める。
「だから言ったでしょぉ」
そこを見逃すことなくティオレンシアは素早くホルスターの銃を抜き放った。45口径オブシディアン。その筒先を掲げ、そして即座に引き金を引く!
「想定内だ、ってねぇ」
『みいいいぃぃぃぃいいいぃ』
ぱん、と音を立てて呪詛塊が爆ぜ散った。ティオレンシアは銃を携えたまま、周囲へと視線を巡らせる。
「……これで引いてくれると助かります、が」
「そうはいかないでしょうねぇ」
2人は廊下の先へと視線を向けた。
――しかして、彼女たちの視線の奥の先の闇より返ってくるのは、刺すような殺気と激しい呪詛の念ばかりだ。それはティオレンシアが空間の穢れを祓ったことにより、術的な感覚野を持たぬ者であっても感じ取れるほどに鮮明化している。
「どれにせよ、こそこそ探し回る時間はこれで終わりってことよぉ。……あとはわかりやすくいきましょ?」
そして、ティオレンシアは一度手の中でくるりと銃を回し、そして再び廊下を進み出した。
「でしたら……とにかく、敵を探しましょう」
「特徴は?」
「シアワセノハコ……たぶん、呪いを撒くのに使ってた、『箱』の呪物を持ってるはずです」
「わかったわぁ。……それじゃ、『箱』を持つ子を探して、叩く。それでいいわねぇ?」
確認するティオレンシアに、灯は頷いた。
――かくして。
状況が動き出す。敵は猟兵たちによる追跡に間違いなく気付いているだろう。それを妨害するべく、迎撃の手を差し向けてくるはずだ。
猟兵たちよ。君達はそれを掻い潜り、敵の喉元を目指さなくてはならない!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『棄テラレシ可能性』
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POW : 未来捕食
戦闘中に食べた【敵対者の血肉】の量と質に応じて【醜怪な姿へと成長を遂げ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 現在汚染
【周辺同位体の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【恐怖と絶望に塗れた腐敗性瘴気】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ : 過去顕現
【悍ましさや痛(悼)ましさ】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象の喪った存在の幻影】から、高命中力の【憎悪を感染させる精神波】を飛ばす。
イラスト:オペラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「あ」
西陽指す教室の中で、『井戸入・もなか』は、不意に顔を上げた。
「ど、どうしたの、もなかさん」
彼女に向き合っていた女子生徒が、不安げに『もなか』を見る。
「……そうね。予定が変わっちゃったの」
「予定?」
問われる『もなか』は、口の端を緩く歪めて頷いた。
「もうちょっと先にするつもりだったんだけど……仕方ないわね」
『もなか』は、机の上に置いた小箱を引き上げた。
「ごめんね羊子ちゃん。きょうの『儀式』は中止よ」
「……?」
そして、指先でその箱を叩く。
「あ」
瞬間。
そこから溢れ出たのは、濃密な呪詛塊と瘴気であった。
『あああああああああああ』
『おおおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおんんんんんん』
『いいいいいいいいいいぃいぃぃぃいいぃいいいいいい』
『まあああああああまああああああああああああ』
『おおおおおおおかああああああああぁあああぁああさああああぁああああんんんん』
瘴気。瘴気瘴気瘴気瘴気瘴気。
呪詛を孕んで爆発的に拡散する濃密な瘴気は、その中に実体をもつ呪詛塊までもを作り上げる。
『シアワセノハコ』――否。そうと称して『もなか』が広めていた呪物の真名は、『霊座の匣(たまくらのはこ)』という。
木組の箱の中に×××××を詰めて封をすることできわめて強力な呪詛を吐き出す呪核を完成させ、箱の開閉によってそれを制御する呪物だ。
『入井戸・もなか』は、猟兵たちの接近を察してそれを解放したのである。
「うわ……っ!?なに、なにこれっ!?」
『いいいいぃぃぃぃいいぃ』
「やめろ!仁恵子から離れ……ぎゃあああああああっ!!」
「みんな、逃げろっ!こっちに……わあっ!?」
『かあああわあああああってえええええええええええ』
『かあああらああだあああああをおおおおおおおおおお』
『くうううだあああさああああああああいいいいいい』
「……ふふ」
満ちる悲鳴。恐慌する生徒と教員たちが、校舎内を逃げ惑う。
その混乱に乗じるように、『入井戸・もなか』は箱を手にしながら悠然と歩き出した。
かくして。
狐捕場中学校は半ば異界と化し、一転して混沌の坩堝へと塗り替えられた。
瘴気に満たされた校舎内のそこかしこで呪詛塊が実体を伴って顕現し、下校間際だった生徒たちや詰めていた教職員たちを襲い始めている。
そして、それを目論んだ者はこの混乱に乗じて何処かへ姿を眩まそうとしているのだ。
猟兵たちよ。
君たちがやるべきは、この事態をおさめ、そして『敵』を追い詰めることである。
朱酉・逢真
心情)呪詛とは此岸を侵す病。"いのち"を傷める毒。感情とはヒトに因をなし、ヒトへ果を還すもの。正であれ負であれ同じこと。悍さ痛ましさ感じやしない。これもヒトの足跡、いとしいモンだ。
行動)俺の《宿(*からだ)》は触れるだけで有害、おまけに身体能力は低い。直接戦うもかばうもムリだ。だから眷属にやらせよう。《獣》から狼出して背に乗ろう。眷属なら触っても平気だからな。ナーガにナーギ、俺の《仔》らよ。"いのち"を守れ。いまを生きる者すべてを俺は慈しむ。ゆえに減らさすなよ。そォさな、教室に追い詰めろ。学校ならたくさんあるだろう。窓閉め戸締めて密室だ、結界張って閉じ込めよう。あとは移動しながら繰り返す。
馬県・義透
…こうなると、彼が適任になりますかー。
交代
第二『静かなる者』霊力使いの武士、唯一の破魔使い
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
任されました。
さて、ここは学校…区切りの壁はいくつでもありますね。
広目の教室に、破魔の結界術を張りまして。ええ、一時的な安全地帯ですよ。
実体を持った呪詛塊は追いかけてくるでしょうから、【それは水のように】にて攻撃を。呪詛塊というのならば、これこそ特効となりましょう。矢は尽きることがありません。
それと、血肉もやりませんし、そもそも普通に血肉といえるのか不明ですよ、我らは。
一応、防御は四天霊障のオーラ防御で行いますが。
我らにとって、瘴気は動きやすい場所なのですよね。
メフィス・フェイスレス
【血反吐】
チッ、気取られた以上何かしら動きを見せるとは思ったけど
予想以上に形振り構わないのね…大丈夫?アンタ
生徒に飛び掛かる敵を腕で受ける
敵に喰いつかれた腕が【顎門】と化し「捕食」して返り討ちにする
私?正義の化け物ってとこね
あの悪い化け物を喰い荒らしに来たの
校舎内に放った「飢渇」が逃げ遅れた生徒達を護衛し、時に体内に取り込んで安全圏に逃げていく
一方、獣の姿を取った「飢渇」の群れが敵に襲いかかり
化け物同士の凄惨な喰い合いが展開されている
敵はまだ近くにいる 探しなさい
楽しんでいる奴が「敵」よ
鳥群の姿を取った「飢渇」の別働隊で上空から【鬼眼】で生徒や教師を観察させ、「敵」を捜索する
『いいいいいぃぃぃいいいぃいぃい』
『おおおおおかあああああああぁあああぁさあああぁああああんんんんんん』
『あああああああああああ』
呪詛。呪詛。呪詛。呪詛。呪詛呪詛呪詛呪詛呪詛呪詛呪詛呪詛。
狐捕場中学校校舎を満たした濃密な瘴気は、その中に実体をもつ呪詛塊を生み出しながら爆発的に広がっていた。
「げほ、っ!」
「がっ、かは、っ」
満ち満ちる瘴気は、ただそこに在るだけで命を蝕む。抵抗力を持たない尋常の人間がその中に取り込まれれば、長くはもたないだろう。既に何人かが身体を蝕まれ、血を吐きだしている。
「まずいですねー。このままでは」
「呪詛とは此岸を侵す病。"いのち"を傷める毒……。捨て置けば多くが失われる。さっさと手を打つぞ」
馬県・義透(f28057)と朱酉・逢真(f16930)は瘴気満ちる校舎内へと踏み込みながら、廊下を進んだ。
「……こうなると、彼が適任になりますかー」
「テがあるのか?」
「ええ。一旦“代わり”ますよー」
義透は一度静かに息を吸い込み、そしてひとたび瞑目した。
――そして、再び双眸を開く。
同時に、義透の纏う気配が一変した。――人格交代。四つの魂魄の集合体である義透は、肉体の主導権を別人格へと譲り渡すことでその力を変える。
「任されました」
「ああ。なるほど……随分変わったな」
得心のいった様子で逢真が頷く。見た目こそ変わらないが、人格交代は霊的視野を通せばその変化を見通すことができる。
義透が交代した別人格『静かなる者』は、破魔の霊力を扱う武人であった。
「ええ、この場は私は適任です。……まずは陣地を確保しましょう。安全地帯が必要です」
義透は長弓を引き出した。白雪林。義透は手にしたその弓の弦に指をかけ、そして鳴らす。――鳴弦。弓の弦が鳴らす音に乗せ、魔を祓う力を広げる技術である。
響く弦の音が一時的に周囲の空間より呪詛の瘴気を退けた。続けて手近な教室の扉を開き、室内へと踏み込みながら再び鳴弦。音と共に広がる破魔の力が、室内を浄化する。
「わかった。なら、そっちはお前さんに任そう」
『ああああああああああああいいいいい』
その一方、逢真は現れる呪詛塊に襲われていた。
「っと……!」
赤黒い異形の肉塊としての実体をとった呪詛が、逢真に飛び掛かる。逢真はこれをすんでのところで躱し、そしてその身の内で力を高めた。
「……随分と激しいじゃないか」
『ああああああああああああああああああああああ』
吼える肉塊は呪詛になるまでに凝縮された悲嘆と憎悪という負の情動の塊だ。尋常の人間であれば、それを目の当たりにしただけで飲み込まれてしまうだろう。
だが、逢真はそうではない。
「感情とはヒトに因をなし、ヒトへ果を還すもの。正であれ負であれ同じこと――ああ。俺はお前を悍ましいなんて思わない。これもヒトの足跡、いとしいモンだ」
神性としてヒトに向き合う逢真は、その闇ですら慈しむ。
「だが――おっと?」
「があああああああああああああああッ!!」
続けて逢真が手を打とうとした――その時である。
『ぎいいいいいいい!』
「があッ!」
廊下の先から、激しい咆哮と共にふたつの影が彼の前へと飛び出してきたのである。
それは口腔を開き震えながら瘴気を吐き散らす呪詛塊と、それに向けて爪牙を突き立てるメフィス・フェイスレス(f27547)であった。
「がああアァッ!」
『いいいいぃぃいいいいいいいい――!!』
ぶぢ、ッ!喰らいついた牙が激しく呪詛塊を食い千切り、ずたずたに引き裂いて塵に還す。
「はア――ッ!ハァ…………まったく……。気取られた以上何かしら動きを見せるとは思ったけど、予想以上に形振り構わないのね」
メフィスは手の甲で血を拭いながら立ち上がり、そして振り返った。
「……随分派手にやったな」
「どうも。……アンタも猟兵ね。今の状況は?」
逢真とメフィスは顔を見合わせる。
「こっちも今動き出したところだ。向こうで味方が陣地を確保してる」
逢真が廊下を振り返り、教室の扉を示した。――扉の前では義透が矢を放ちながら瘴気を祓い、迫り来る呪詛塊を退けている。
「渡りに船ね。丁度逃げ込める場所を探してたのよ」
ここでメフィスが今来た廊下の先を振り返る。つられて逢真は視線を向けた――そこから気配。どたどたと乱暴な足音と共に2人のもとへとやってくるのは異形の獣――メフィスの身体より生み出された眷属である『飢渇』たちと、不安げな表情を浮かべた生徒たちや教員のグループである。
「なるほど。そういうことか」
「ええ。……アンタたち、こっちよ!そこの教室なら今は安全だから!」
メフィスは校舎内を回り、敵を駆逐しながら逃げ遅れた学校関係者の救助に回っていたのだ。
義透が安全地帯を確保できていたのは僥倖であった。メフィスは教室内へと学校関係者たちを誘導する。
「あの……なにが、おきてるの?……それに、あなたたちは……?」
誘導される生徒たちの中から、誰かが猟兵たちへと尋ねた。
「私?正義の化け物ってとこね」
メフィスは冗談めかしてその異形の腕を掲げてみせる。
「あの悪い化け物を喰い荒らしに来たの。……悪いことは言わないわ。アンタたちはそこでじっとしてなさい」
「……はい」
そうして頷いた生徒たちが、教室へと逃げ込んだ。猟兵たちは扉を閉ざし、そしてあらためて廊下の先の気配を探る。
「くくく。化け物か。俺から見りゃお前さんもヒトに見えるがな」
「そりゃどうも」
「それで、ここからどうしますか」
ここで義透が2人へと問うた。
「手分けして動きましょう。アンタはこのままここの安全圏を維持。私は――こいつらと一緒にそこらじゅう回って、逃げ遅れた連中を守りながら敵を探すわ」
『ぎゅ』
メフィスはかたわらに呼び寄せた『飢渇』を示して頷きあう。
メフィスの眷属たる『飢渇』は既に校舎内に散らばりながら動き回っている。彼らは敵を見れば排除し、ユーベルコード力を持たない者を見つけたら救助してメフィスのところへ連れてくるように命令を受けていた。
校舎内を駆け回る『飢渇』の群は、かたちを成した呪詛塊へと襲い掛かり、互いに喰らい合う凄惨な戦いをそこかしこで展開している。
「わかった。そんなら俺は敵の足止めでもやらせてもらうとしよう。――出番だぞ、ナーガ。ナーギ」
《――》
《御意に》
その一方で、逢真は新たに眷属を招聘する。【竜蛇の神精/ナーガ・ナーギ】。多頭の蛇、あるいは半人半蛇の身体をもつ大蛇たちである。その姿が闇の中から浮かび上がった。
「俺の《仔》らよ。"いのち"を守れ。いまを生きる者すべてを俺は慈しむ」
《――》
しゅうしゅうと独特の音を鳴らしながら、多頭の蛇が首を垂れた。
「減らさすなよ。……そォさな、部屋に追い詰めろ。そうしたらあとは俺がやる」
逢真はいま校舎内に溢れ出た呪詛の群ですら、慈しむべきいのちであると捉えている。――それを滅ぼすのもまた忍びない。であるが故に、彼は呪詛塊を部屋に追い詰め、封じることでその攻勢を抑えようと考えたのだ。
《承知》
半人半蛇の眷属が頷いて、這うように校舎を進み出した。逢真は彼らと共に動き出し、作戦を開始する。
「なら、私達も行くわよ。……いいわね、アンタたち。敵はまだ近くにいる。探しなさい」
『ぎ』
「……楽しんでいる奴が『敵』よ」
そして、メフィスが再び走り出す。
「では、こちらはお任せください。――お二人とも、お気をつけて」
そうして義透は生徒たちを守るべく、教室の扉の前で再び矢をつがえる。
放たれた矢が、またひとつ呪詛塊を射抜いた。
――かくして、猟兵達の戦いは始まったのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
化野・花鵺
「人の嘆きざわめきが邪魔なら、それを発する者を消せば良い。簡単な理屈じゃの」
狐、面倒臭そうに呟いた
UCで校内の人間をドンドン眠らせまだ騒ぎが残っている方向へ走る
「悪夢じゃろうが回復する、悪夢じゃろうが叫ぶことも出来ぬ。悪夢であったがゆえに後に全てを夢と思い込んで忘れようとする。ふふ、完璧じゃの。組織の手間を省いたのじゃ、今回は追加で金一封、いや近隣校のせぇふく一式を貰い受けても良いほどじゃ」
狐、嘯いた
「ヌシらがいくら憎悪で人を操ろうと思うても、寝た人間は動かぬ。後はヌシらを消しながら残る騒ぎの元を追えば良い」
敵の攻撃をオーラ防御と耐性で防いだ狐、破魔込めた衝撃波で敵をドンドン弾き飛ばし嗤った
九重・灯
人格が「オレ」に替わる。中学生に化けてた「化術」を解く。
UC【呪装変転】。移動力×5、射程÷2
オカルト同好会の悲鳴が聞こえたような気がしたから向かう。一応世話になったしな。道中の邪魔な敵を剣、アザレアで斬り払いながら走る。
『ダッシュ5、なぎ払い10、怪力7、切断6』
同好会とその他を助けたら、教室を浄化し結界を張って待避させる。
学校は生徒達の日常の象徴だ。こんなコト許されるワケねえだろ。と、この場の持つチカラを借りる。
『浄化3、結界術5、祈り3』
「あかりんって言うな! ってそうじゃねえ。オレはアイツの姉妹みたいなモンだ」
コレを引き起こしたヤツは頭が狂っただけのシロウトじゃねえ
オレたちの『敵』だ!
悲鳴。
濃密な血の気配。響く化生の咆哮。
おおおおん。おおおおおおおん。るうぅううおおおおおおおぉぉんんんんん。
しにたくないしにたくないしにたくないしにたくない
たすけてくださいたすけてくださいたすけてくださいくださいくださいくださいくださいちとにくとほねとからだをくださいくうううううだあああさあああいいいいいいいい
かわってえええええええええかあああわああああってえええええええええええええわああああたしいいいいいいいとおおおおおおおとおおりいいいかえてえええええええ
「……クソ、いきなり派手におっぱじめやがった!」
その呪詛を断つように、赤く刃は閃いた。
九重・灯(f17073)はその手に握った剣を薙ぎ、道を塞ぐ赤黒い呪詛塊を切り伏せる。
『ああああああああああああああううううううううううぅううぅいいいいいぃぃ』
「づ、ッぐ……!」
だが側面!教室の扉を叩き壊しながら、巨大な呪詛塊が飛び出したのだ。不意を打たれるかたちで灯が襲撃を受ける!
――しかし、その時である!
「なるほど。これはなかなかの大騒ぎじゃの」
『おおおおおおおおおおおおぉぉぉ』
激突!衝撃にたわむ呪詛塊の躯体。――その身体は、灯に激突する手前で押し止められたのだ。化野・花鵺(f25740)が構築した破魔の障壁である。
「はっ!」
裂帛!続けざまに花鵺は氣を放った。衝撃波として物理的な干渉力を伴って爆ぜた破魔の力が、更に呪詛塊を押しのける。
「今じゃ。ゆけ!」
「ああ――助かった!」
そして、その一瞬が灯に再び好機を与えた。灯は床を蹴立てて跳ねるように飛ぶと、半ば回転しながら再び剣を閃かせる。アザレアの刃が呪詛塊を両断!その呪詛を霧散させる!
「うむ。なかなかやるの。よい腕じゃ。お主も猟兵じゃな?」
「ああ。アンタもだな?」
態勢を立て直す灯へと花鵺は駆け寄り、そして所属を確かめた。頷きあう二人。――この状況で猟兵が邂逅したならば、協力して任務に取り掛かるほかに選択肢はあるまい。2人は無言のうちに連携をとるように意識を向けながら、瘴気満ちる廊下の先へと視線を向けた。
「とにかく先にいくぞ。どうも向こうに残ってる連中がいるらしい」
さっき声が聞こえた――たぶん、知り合いだ。灯は剣を手にしたままに歩きだす。
「うむ。よいじゃろ。妾も人の子らが害されるのを捨て置こうとはおもわぬ」
そして、花鵺は追随するように進み出した。
「やめろーっ!!捧を離せぇっ!」
「ぐあああああああっ!!」
『くださいくださいくださいくださいちをにくをほねをめをみみをはなをくちをからだをくださいあしたをくださいみらいをくださいかわってくださいくださいくださいくださいくださいください』
『ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい』
『なああああああああああああんんでええええええええええ』
地獄めいた光景であった。
ずるずると蠢く赤黒い呪詛塊は、哀れな犠牲者となる生徒を押さえつけ、そしてその腕の先から呑み込もうと口腔を開いている。
ごぎ、ッ――。歯のような部位に挟み込まれた大腿の骨格がきしむ音がした。男子生徒が苦悶に叫ぶ。
「うおおおおおおおおッ!!」
だが――その時!
彗星めいて流れる赤い剣筋!激しく踊る斬閃が、瞬く間に男子生徒を捉えた呪詛塊たちを切り伏せる!
『ぎいいいい!』
悲鳴!斬り散らされた呪詛塊が霧散する!
「……オレのツレに手ェ出そうなんざ、100年早ェ」
そして血振りの動作。灯は刃を振って、剣を一旦鞘へと納めた。
「おい、お前ら。大丈夫か」
「え、っ。……あ、はい。ありがとう、ございます」
そして灯は床に倒れた男子生徒――狐捕場中学校オカルト同好会、雲津・捧を助け起こした。
「捧!……あれっ!?おねえさん、私とどこかで――」
そこに駆け寄る池上・仁恵子。しかして仁恵子は灯の姿を見た瞬間に困惑した。
――ここで説明しよう。
九重・灯は多重人格者であり、本来の肉体年齢は18歳。ティーンエイジャーの範疇ではあれど、既に高校を卒業した年齢だ。
しかし彼女はこの狐捕場中学校に潜入するにあたって、化術を用いて自らの姿を中学生相当に化かしていたのである。
現在の灯は戦闘形態へと移行したこともあって、本来の姿を晒している。
そして――ここで邂逅したオカルト同好会の二人は、灯の化けた姿のみを知っているのだ。非現実的でオカルティックなシチュエーションの中で友人によく似た人物が現れたことで、彼らは情報量の波についてゆくことができる困惑していた。
「ひょっとして……あかりんのおねえさん!?」
そうして、仁恵子が素っ頓狂な声をあげたのであった。
「うるせえ!あかりんっていうな!!」
しかしそれ以上に素っ頓狂な声で怒鳴ったのは灯本人である。
「わっひゃあ!?」
悲鳴をあげて驚く仁恵子!
「そろそろ落ち着いたらどうじゃ」
ここで横から花鵺が諫めた。肩を叩かれた灯が、一度静かに息を吐いて一旦落ち着く。
「……ああ、そうだった。そうだった。――で、だ。お前ら。オレはアイツの姉妹みたいなモンだ」
「みたいなもん……?」
「気にすんな。いいからお前ら、そこの教室入れ」
そして、灯はごまかすように促した。
「あ、はい」
促されるまま同好会の2人が教室へと入り込む――そこで、灯はアザレアの柄を握り、そして短く息を吐いた。
灯は高めた超常の力を、剣を通して拡散させる。簡易的な浄化の儀式であった。
学校とは、生徒たちにとっての日常の象徴である。特に教室は彼らがおおくの時間を過ごす場所であり、そうした『平穏』を過ごす場所であると多くの人に認識される空間である。
灯は教室に残留するそうした想念のイメージを利用し、生徒たちが日常に戻るための砦としてこの教室に結界を展開したのである。
「うむうむ。よい手管じゃ。では、次は妾の仕事じゃな」
ここで花鵺がぴょいと飛び出した。
そして同時に床を蹴ってくるりと宙返りする――その所作は、妖力を行使する際に妖狐が行うとされる仕草である。
とんぼ返りを術式起動の鍵として、花鵺は幻術を放った。――【狐の化かし】。他者を眠りへと誘う術だ。
「……あふぅ」
術的抵抗力をもたない常人であるオカルト研究部の2人は、それによって即座に眠りへと落ちた。
「……なんだそりゃ」
「妾の妖術よ。これで奴らはしばらく目覚めることもあるまい」
そして、それは同時に眠りに落ちている間、彼らへと癒しをもたらす超常の力でもある。
「まあ、ちょいとうなされるかもしれぬが……それでも傷は癒えよう。そして悪夢じゃろうが眠っている以上叫ぶこともできぬゆえ、敵を呼び寄せることもない。そして悪夢であったがゆえに、醒めればすべてをただの夢を思い込んで忘れようとする……うんうん。組織の連中の記憶処理の手間を省いてやったぞ」
「ふーん……便利なもんだな」
「じゃろ~。ふふ、完璧じゃの。これはかなりいい仕事のはずじゃ。今回は追加で金一封……いや、近隣校のせぇふく一式を貰い受けても良いほどじゃ!」
花鵺は誇らしげな顔で胸を張った。その脳内では既に皮算用が成されている。そう、この近くにはかなりレベルの高いカワイイ制服があったはずだ。ぜひコレクションに入れたいと思っていた一品――!
「あー……まあ、上に掛け合っておくわ」
一方、その様子を見守りながら灯は眉間にしわを寄せた。
――余談であるが、灯は今しがた花鵺が言及した『組織』の人間である。灯はこの戦いを終えた後にどうやって上司へとこの『追加報酬』の申請をしたものかと思案したのであった。
「……なぬ!お主組織の者じゃったか!よーしよしよし、それはいいところにおったわ。ならば妾の活躍を最前線で見るがよい!でもって報酬のことは何卒よろしく頼んだぞ!」
「善処はすっけどよ……」
花鵺の脳内では、今回の任務で10着は新たなせぇふくコレクションを増やせる目算であった。
その野望を満たすため、出資元となる組織には可能な限り恩を売り、そして活躍を見せつけておかねばなるまい。ぎゅっと拳を握った花鵺は廊下の先に敵の気配を探し、そしてその身の内で霊力を高めたのであった。
「よし、ならばゆくぞ。逃げ遅れた者たちは安全な場所まで誘導して妾が寝かす」
「で、道中オレとアンタで敵を潰してく、でいいか?」
「うむ。そうやって校舎内にあるものどもを減らしてゆけば、最終的には『敵』のもとへたどり着くはずじゃ」
「……敵、ね」
花鵺の言葉に、灯が一度小さく頷いた。
「ああ。そうだな。今回のこの件……これだけの規模だ。コレを引き起こしたヤツは頭が狂っただけのシロウトじゃねえ」
未だ校舎内に満ち満ちた膨大な瘴気と呪詛の念――。
これほどの『異界』を現世に作り出すことは、気が狂っただけの常人ではいかなる呪具の力を借りたとて不可能だ。
「それは妾も考えておった。ここまで強く、濃い呪詛の力……“偶然”ではこうもなるまい」
「ああ。そうだ。――間違いねえ。この事件の黒幕は、オレたちの『敵』だ!」
そして灯は廊下の先を鋭く睨む。
――靄のように揺れた瘴気の霧の中で、何者かが哂ったような気がした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
やってくれたものです…!
出撃させた機械妖精達と自前のマルチセンサーで校舎の映像、音声●情報収集
同時並行●操縦する妖精の頭部レーザー乱れ撃ちスナイパー射撃で人々襲い捕食試みる怪物を牽制、攻撃しつつ現場へ急行
(脚部スラスターの推力移動と怪力による地形破壊でショートカット)
お下がり下さい!
人々かばいつつ近接戦
妖精レーザーで撃ち抜き動きを止めた敵を大盾や剣で排除
装甲に噛み付かれても意に介さず引き裂き
…生憎、肉などありませんので
ご無事ですか?
教員の方々は生徒の避難引率を願います
この妖精…ドローンが安全な場所への案内を務めます
カウンセラー…?
いえいえ、私は皆様の心身護る騎士でして
…木箱持つ者を探さなくては
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
ちいッ、やっぱり「箱」がトリガーだったのかよ!
まだ避難とかが済んでないタイミングで、やってくれたね……!
こうなりゃ変装も演技も抜きだ、さっさと避難誘導に移るよ!
とりあえずは広く人数が集まれる場所へ学校関係者が集まれるよう、
教職員を『鼓舞』して動いてもらう。
その間にアタシは呪詛の塊に対して電撃の『属性攻撃』を込めた
『衝撃波』で応戦する。
幻影が見えたとしても、結局は幻影だろ。
『呪詛耐性』で『見切り』、逆にサイキックの波動で掻き散らす。
そうして避難を進めさせながら校舎内を静電で満たし、
【超感覚領域】にまで昇華させるよ!
もなか、だったか。猟兵に気付いたのが、運の尽きさ!
ティオレンシア・シーディア
【血反吐】
あらま、随分ド派手に始めちゃったわねぇ。
…まあ、仕込み終わったから解放したというよりは大混乱の隙に有耶無耶にしてやろうって雰囲気だけど。
形を持ってしまった以上、さっきみたいに全域浄化で祓う、ってのは本職じゃないあたしにはちょっと厳しいわねぇ。それじゃ、直接〇浄化ぶつけましょうか。
ラグ(浄化)とエオロー(結界)で〇狂気・毒耐性のオーラ防御を展開、●鏖殺・狂踊の○乱れ射ち。幸いここは屋内、しかも狭い廊下の多い構造。あたしの一番得意な戦場ねぇ。弾丸には各種明王印の詰め合わせ。呪詛や怨霊なら〇破魔や除霊は覿面でしょぉ?
え?生徒や教師?やぁねぇ、一般人(障害物)に当てるようなヘマしないわよぉ。
「やってくれたものです……!なんということを!」
トリテレイア・ゼロナイン(f04141)は義憤に声をあげる。
校内が瘴気で満ち満ちたその瞬間に敵の行動開始を察知したトリテレイアは、すぐさま状況を確認し、そして作り出された異界に呑まれた生徒たちを助け出すためにカウンセラー室を飛び出していたのだ。
「ウワーーーッなにこれ!!トリ先!!トリ先!!すっごいよこれ!!」
「わかりました!わかりましたからすこし大人しく!いい子ですから、ね!」
――そして、その時カウンセラー室を訪れていた吹奏楽部の女性とも彼にくっついてきてしまっていた。トリテレイアは半ば悲鳴めいた叫びをあげながら、女生徒を制する。
その瞬間である――!
『みいいいぃぃぃいいぃいぃ』
『かあああらあああだあああああああ』
『くううううだあああさああいいいいいいいいいいい』
「……しまった!」
呪詛塊!赤黒く蠢動する巨大な肉塊として顕現した濃密な瘴気の塊が、校舎の外から窓を突き破って急襲したのだ!
「ぎゃーーーっ!」
現れた異形の姿に女生徒がトリテレイアへと取り付き絶叫する!デッドウェイトを抱えたトリテレイアは迎撃の手を打つのに一手遅れてしまった――!
しかし!
「あらま、随分ド派手に始めちゃったわねぇ」
『ぴぎッ』
「ったく、なりふり構わずきやがった……って感じだな!」
『ぎゃぶ!』
爆発めいた衝撃音。同時に轟く電光石火の銃声――!ふたつの攻撃を同時に浴びせられ、呪詛塊たちが爆ぜて霧散した!
「はぁい。ごきげんいかがかしらぁ?」
「大丈夫か、二人とも」
そして、異形どもの駆逐された通路を通ってトリテレイアのもとへと姿を見せたのは――ティオレンシア・シーディア(f04145)と、数宮・多喜(f03004)であった。
「ありがとうございます。助かりました、お二人とも」
「なに。猟兵同士は助け合いってもんさ」
お互い様、ってね。多喜は快活な笑みを見せながら、そして振り返った。
「で、アンタは――なんだい、“封殺(キリングカウンター)”じゃねーか!」
「そういうあなたは――“銀盾(シールドバッシャー)”ねぇ?」
三日月めいた眦でティオレンシアは笑みを浮かべる。
――余談であるが、2人はキマイラフューチャーにおいてプレイされるTCG・『ヴァンキッシュ!』のプレイヤーであった。
幾度となく繰り広げられたオブリビオンとのカードバトルは2人をキマイラフューチャーでも知られる『ヴァンキッシュ!』のトップランカーへと押し上げ、そして“二つ名”を贈られていたのである。無論、ヴァンキッシュの世界に身を置くヴァンキッシャーとして、2人は互いにその存在を認識しあいいずれ決闘の卓に着くこともあるだろうと考えていた。
だがそれは今ではない。話を戻そう。
「……ともかく、ここからどうするか、ですか」
「決まってるだろ。さっさと避難誘導に移るよ!」
「そうねぇ。犠牲が出るのはこっちとしても不本意だし」
3人はここで頷きあい、行動の指針を定めてゆく。
「では、校舎内に溢れた敵を駆逐しながら要救助者を探し、救出していきましょう」
「ああ。……それから、『敵』もだ。いきなりこんな仕掛けをしてくるなんて、一体どうしたのか――」
「考えられるのは、『仕込み』が終わったか……あるいは、『気付かれたから騒ぎを起こして逃げよう』って魂胆かしらねぇ」
猟兵たちは言葉を交わしながらも警戒を怠らない。廊下の先から顔を覗かせた呪詛塊を、ティオレンシアが撃ち抜いた。
――屋内の戦場は、ティオレンシアのもっとも得意とするところだ。取り回しの利く拳銃は屋内戦闘に適しており、受ける側にとっては狭い廊下の多い学校という構造上回避を困難にする。
加えてティオレンシアはこうした呪詛や怨念によって構成される敵への対策を得手としていた。彼女の扱う45口径オブシディアンの弾倉には、破魔の印を刻んだ明王印の弾頭を装填している。続けて放った弾丸が、またしても呪詛塊を仕留めた。
「……まあ、仕込み終わったから解放したというよりは大混乱の隙に有耶無耶にしてやろうって雰囲気だけど」
「つまり、ここから逃げ延びようとしている……ということでしょうか」
「そりゃ厄介だね……。そう考えたら、ますます逃がすわけにはいかないよ!」
先頭をゆくトリテレイアもまた、引き抜いた剣で呪詛塊を薙ぎ、多喜の放つ超常の力とティオレンシアの撃ち込む弾丸が次々に呪詛塊を仕留めてゆく。
――この程度の呪念であれば、数多の修羅場を潜り抜けて来た彼女たちにとっては文字通り雑魚同然だ。鎧袖一触に敵を打ち払いながら、猟兵たちは校舎内を進んだ。
「それで、――目標はぁ?」
「……『ハコ』だ!『箱』を持ってる奴!それがトリガーだったはず!」
「ええ。……恐らく、ターゲットは『シアワセノハコ』と称して呪物の力を広げていたはずです……木箱持つ者を探さなくては」
「OK。それならこっちの情報とおんなじねぇ」
ティオレンシアは頷いた。
3人の認識は一致している。今回のこの事件、裏で糸を引いていたのは『シアワセノハコ』を詐称して呪いを振り撒いていた者だ。
そこに秘められた力を解放したからこそ、今のこの状況がもたらされている。
すなわち、そのハコを持つ者こそ今回の事件の首謀者であり、猟兵として屠らねばならぬオブリビオンだということである。この事件を終わらせるためには、その者を見つけ出さなくてはならない。
「……どーなってんの?トリ先、カウンセラーさんじゃなかったの?」
目の前で次々と展開される理解を越えた超常の光景に、ここまでついてきていた吹奏楽部の女生徒が呟いた。
「カウンセラー……?いえいえ、私は皆様の心身護る騎士でして」
「ふえー……よくわかんないけどすっごいね!」
「感心するのは結構ですが、そろそろあなたも避難を……おや?」
その時である。
通路を進むトリテレイアであったが、そのセンサーは奇妙な感覚を捉えた。
計器が示すのは異常な数値。彼のマルチセンサーは進む通路の先に“なにか”の反応を捉えていた。
その数、“386”。――トリテレイアの視野は、前方50メートル内の空間に『386人分の人間に似たなにかの生体反応』を捉えていたのである。
「この以上な計測数値――もしや!」
「……あぁ、そっちも気づいてるぅ?」
「なんだ、2人もかい?……ってことは、アタシの気のせいじゃないってことだ」
3人は互いに目配せしあった。
ティオレンシアもまた術的な知覚力において気配を気取ったのだ。多喜もまた、研ぎ澄ました超感覚でもってそれを察知したのである。
「……あっ、みんなちょっと待って!あれ友達!おんなじクラス!」
そして――それを理解できぬのは、ただ一人ついてきただけの女生徒ばかりである。
猟兵たちの警戒を知ってか知らずか、彼女は廊下の先に見えた人影へと手を振った。
「おーーい!もなちゃーん!」
「――あら」
かくして。
『入井戸・もなか』は、猟兵たちと邂逅する。
「まあ、まあ、まあ――たいへん。たいへんね」
『入井戸・もなか』は、困ったような苦笑いに表情を緩く歪めると、その手にした『霊座(たまくら)の匣』を掲げた。
そこに膨大な瘴気が満ちる。
「じゃ、死んでちょうだい」
「む……っ!」
「……まずいッ!!」
「やぁねぇ……早速かしらぁ」
猟兵たちは瞬間的に動き出していた。
トリテレイアは素早く前に出ると、展開したシールドを前面に構える。それと同時に多喜は念動力を収束し、トリテレイアの盾に重ねるように念動防壁を展開した。
更にティオレンシアはほとんど反射的に輝石を投げ放つ。刻まれたルーンはラグ/浄化とエオロー/結界。これで都合3重の対魔防壁は張られたことになる。
猟兵たちを極めて強力かつ膨大なエネルギーの呪撃が襲ったのは、その瞬間であった。
凄まじい思念波と呪詛の念が猟兵たちを呑み込もうと押し寄せる。――だが、拮抗。3人がかりで固めた防壁は、それをなんとか凌ぎ切った。
「まあ。げんきね」
そして。
彼らに対峙しながら、少女は――この一連の事件のすべてを引き起こしていた黒幕である、『入井戸・もなか』は嗤った。
「でもわたし、おしごとがあるからここでけんかはしたくないの。――ねえ、おたがいに見なかったことにして、ここでさよならしない?」
「……ここまで好き勝手やっといて、そんな都合のいい話が通るかよ!」
「ええ。無辜の生徒たちの感情を利用し、呪詛を振り撒いたその行い……見逃すわけにはまいりません」
「そういうことねぇ――いい加減、観念して卓に着きなさい。ここまできたら、勝負を降りるなんてできないわよぉ」
トリテレイアが剣を構える。敵を睨めつける多喜の周囲で、空気がぱちりと音をたてた。
そして――ティオレンシアの手の中で、45口径オブシディアンの銃口が『入井戸・もなか』を捉える。
「残念ね」
対峙する『入井戸・もなか』は、薄ら笑みを浮かべながら短く呟くと――再び、その手の中の匣を掲げた。
かくして、ここに猟兵たちは此度の事件の首謀者を捉えたのである。
だが――それは同時に、オブリビオンとの決戦が始まるということを意味するのである。
これより、猟兵たちの任務は最終段階へと移る。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『『ジーリードの姉妹・長女もな』』
|
POW : 呪染打撃術
【『匣』より解き放った呪詛を纏う拳】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 呪染領域展開
【呪詛】を降らせる事で、戦場全体が【異界】と同じ環境に変化する。[異界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : 『霊座の匣(たまくらのはこ)』
【『霊座の匣』に囚われた犠牲者】の霊を召喚する。これは【嘆きと憎悪の念】や【死に至る呪詛】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:ほや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ロスタ・ジーリード」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「残念ね。とってもざんねん。もうちょっとだったんだけどな」
『入井戸・もなか』――否。女生徒の姿をしたオブリビオンは、歌うように呟く。
その手の中で震える『霊座の匣』が、静かに鳴動した。
「ほら見て。わたし、とってもたくさんあつめたのよ。くらい情動。いかりうらみつらみねたみにくしみなげき。それからいのちのちから」
匣が黒く瘴気を吐く。
それはそこに在るだけで世界を呪い、空間を呪染し、そして異界を呼び込む悪意の塊だ。
「ここはとってもいい場所だったのに。……この地にのこる"畏れ"がおしえてくれたわ。ここにはね。わたしがくる前からたくさんの呪詛がみちていたの。そうよ。言ってしまえばそもそも、ここはもとから呪染されてるの。わたしはそれを『収穫』したかっただけ……」
『入井戸・もなか』は語る。
しかして猟兵たちであれば察知できるだろう。目の前のオブリビオンはその躯体の内側で渦巻く強大な負の霊力を膨れ上がらせていることを。
――すなわち、もはや戦闘態勢に移っているのだ。
「ねえ、よくかんがえてみて?ほんとにわたし、なあんにもしてないのよ。のろったのはあのこたち。ささげたのもあのこたち。わたしは、だれものろってないわ」
嘯く一方で、『入井戸・もなか』の負の霊力は高まり続ける。
「わたしをしりぞけても無駄よ。なんの解決にもならないわ。匣がなくても別の方法できっとまただれかがだれかをのろうし、この地のよどみはきえないし、みんな、憎み合うことをやめられないわ」
そして。
「ここに希望はないのよ。ねえ、それでもたたかう?」
『入井戸・もなか』は微笑んだ。
化野・花鵺
「ヌシの言いたいことはそれだけか」
狐、つまらなそうに欠伸した
「戦乱の間の、短い平和に意味があるか。ヌシの問いは全くそれと同じじゃな。意味はある。その間に人が増え、次は同じ過ちをせんと夢を見る。実際にそれが活かせるかは別の話じゃがの。ヌシを倒し、束の間この地の呪いを鎮静させる。それ以外は別の話じゃ。妾はそのために来ておるからの」
「ところで。ヌシの辞世の句は、さっきの世迷い言で終わりかの」
狐、竹筒の蓋を開けた
「それ、餌じゃ。喰らい尽くせ、管狐」
UCで匣共々もなかを塵一つ残さず喰い尽くさせる
悪霊は破魔の衝撃波で消滅させる
敵の攻撃は野生の勘で避けオーラ防御で防ぐ
「ところでせぇふく一式はいつ貰えるかの」
朱酉・逢真
心情)憎み呪い争い殺す。そンなはヒトの営みだ、いッくらだってするがいい。地獄極楽はヒトの中にある、滅べど赦し慈しもう。だがお前さん、《過去》だろう。"いま在るもの"を収穫する権利は、"いま在るいのち"だけにある。ヒトの獲物に手を出しちゃダメさ。
行動)眷属ども。この地を駆け、這い回らせた《獣》に《虫》ども。いまこの場に呼ばう《鳥》どもよ。場はお前らの餌場、あらゆる負の念を喰らい反転させろ。敵には衝撃、味方にゃ回復。体が弱くてね、飛んだり走ったりは出来ンのだ。俺に向かうものは眷属どもを盾にして避けよう。マ・地に染み付いてるぶんもちったァ減るンじゃないかね。浄化し尽くす気はさらさらないが。
馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
安全地帯とした教室には、破魔+UCで強化した結界術にて守りを施してあります。
その関係で、まだ私が表に出ているのです。
ええ、戦いますよ。対処をせねばいけない事柄ではありますので。しかし、やはりここは呪われた地でしたか。
異界にしようとも、まあ『我ら』も悪霊なので。適応します。
氷雪属性+破魔つきの矢を射かけましょう。それも間断なく。
ああ、少しだけなら四天結縄に呪詛は封じれますので、我らの力にもできますよ。
何度ここに呪詛が集まろうと。対処をしていくだけです。
それは、悪霊が引き寄せられるということですから。
九重・灯
【血反吐】
ハッ、そんなコト言いながらヤル気満々じゃねえか。実はイラついてんのかクソガキ?
ムカついてんのはコッチもだがな。
剣、アザレアで敵の拳とかち合う。
あん? 近くで見るとコイツ、あのグリモア猟兵と似てるような……って今はそんな場合じゃねえ。
UC【朱の王】。自身の血を贄に、契約印から喚んだ朱の魔炎を四肢と剣に纏う。
「――我ら、狂気を以て狂気を討つ!」
燃える剣で斬り、刺し貫く。魔炎は相手に絡みつき、その生命を喰らい火勢を増す。
『属性攻撃15、呪詛6、怪力7、切断6、串刺し8、生命力吸収3、継続ダメージ4』
呪詛を扱う者は呪詛に囚われる。その一部になっちまう。難儀なモンだよなあ。
「――さ、どうするのかしら?」
そして、『入井戸・もなか』は嗤った。
「ヌシの言いたいことはそれだけか」
しかして。
――僅かばかりも怯むことなく、化野・花鵺(f25740)が切り返す。
「戦乱の間の、短い平和に意味があるか。ヌシの問いは全くそれと同じじゃな」
「そうね。戦争。争い。憎しみと呪い。わたしがいなくなっても、きっとまたここの子たちはこの地を憎しみと呪いでいっぱいにするわ……ニンゲンって、そういういきものでしょ?」
「だからヌシを倒しても意味がない、とでも言う気か。……意味はある。戦が終わればその間に人が増え、次は同じ過ちをせんと夢を見る」
「それでもまたあやまちを起こすわ」
「じゃろうな。それでも、現状を捨て置くよりはいくらかマシじゃろう」
花鵺はその手に管狐の竹筒を握る。――交錯する視線。互いの敵意が絡み合い、そして張り詰める。
「憎み呪い争い殺す。そンなはヒトの営みだ、いッくらだってするがいい」
その最中、朱酉・逢真(f16930)は口の端を歪めて嗤う。
「……へえ?」
「地獄極楽はヒトの中にある。……憎み合い殺し合うもまたヒトの生き様よ。滅べど赦し慈しもう」
「面白いことを言うのね、あなた」
「こちとら尋常のヒトじゃないもんでね。……そっちだってそうだ。お前さん、《過去》だろう」
逢真の背後に闇が蠢く。――獣たちが唸りをあげ、虫どもがぎちぎちと音を鳴らした。
「“いま在るもの”を収穫する権利は、“いま在るいのち”だけにある。ヒトの獲物に手を出しちゃダメさ」
「なぁにそれ。……ヘンな理屈ね」
「いいや。筋は通ってるさ」
「――どの道、私たちは戦いますよ」
その時である。
淡い燐光と共に青白く光る矢が一条、廊下の先から飛来したのだ。
「ふぅん」
『もなか』は咄嗟に身を反らして躱す。それから、矢の飛んできた場所――いまだ瘴気に満ちる通路の先の闇の中へと視線を向けた。
「自然発生の災いであるならばともかく、今回の事件はあなたに仕組まれた……対処をせねばいけない事柄ではありますので」
そこから姿を見せたのは、馬県・義透(f28057)であった。
「あなたを仕留めることが、今のこの事態をおさめるには必要なことです。……容赦は致しませんよ」
「うむ。……結局のところ、今回の件はヌシが子供らを手引きしたのが原因じゃろ。ヌシを倒し、束の間じゃろうがこの地の呪いを鎮静させる。それ以外は別の話じゃ。妾たちはそのために来ておるからの」
「……まあ。まあ。まあ。どうしても戦うつもりなのね。…………わたしを斃したって、なにもかわらないのに」
嘲るように笑いながら、『もなか』は緩々と首を振った。
「ハッ。冗談も大概にしやがれよ。そんなコト言いながらヤル気満々じゃねえか」
――だが、それを揶揄うように九重・灯(f17073)は鼻で笑う。
「……」
『もなか』の瞳孔が僅かに細まった。――焦れるような敵意を含んだ眼差しが、睨むように灯を向く。
「ハハ。いい目すんじゃねえの。実はイラついてんのかクソガキ?」
「わたし、あなたみたいに品のない子って嫌いよ」
「図星じゃねえか。……ムカついてんのはコッチもだ。テメエをブチのめして、このしみったれたくだらねえ事件も全部終わりにさせてもらうぜ!」
灯は剣を抜き放つ。
アザレアの刃を赤く光らせながら、灯は敵へと対峙した。
「うむ。もはや問答も必要あるまい。ゆくぞ、報酬のせぇふくが妾を待っているからの!」
花鵺は手にした竹筒の蓋を開く。――その内へと封じられていた彼女の式、管狐たちがその顔を覗かせる。
「ああ。そうしよう。……これ以上茶番に付き合ってられないからな」
逢真の後ろで、闇が膨れ上がった。彼の眷属たる《獣》と《虫》の群が動き出したのだ。
「そういうことです。ここが如何に呪われた地であろうと、あなたの行いは目に余りますからね」
そして、義透が再び弓へと矢をつがえる。
「ふぅん。……残念ね」
けんかはしたくなかったんだけどなあ――。『もなか』は嘯いて、それから猟兵たちを見た。
そして、その身を覆うように纏った負の霊力を増大させる。
「じゃあ、ころすわ」
次の瞬間、『もなか』は床面を蹴立てて疾走していた。
「せぇの――っ」
「づ、ッ!」
刹那。『もなか』の姿は灯の真正面にあった。驚愕的な加速度によって一気に間合いを詰めた『もなか』が、素早く灯を捉えたのだ。
灯は咄嗟に掲げた剣の腹で放たれた打撃を受け止める。ガァン、ッ!重い衝撃に灯の躯体が揺さぶられる!その矮躯からは想像もできない威力の拳に、灯はぎりと歯噛みする。
「なんつうパワー……こいつ、“何”だ!?」
「ああ、そういえばまだ言ってなかったわね」
追撃!放たれる二撃目の拳打!灯は咄嗟に床を蹴ってバックステップで間合いを開いた。
「わたしは『もな』。『ジーリードの姉妹』の一番……おねえちゃんのもなよ」
「……『ジーリード』ぉ?」
その名乗りに灯は眉根を顰めた。
その名は――彼女をこの現場に送り込んだグリモア猟兵の名だったはずだ。あらためて近くでその顔を見れば、対峙するこの敵はあのグリモア猟兵に似ているような気がする――
「……いや、今はそんな場合じゃねえ」
浮かびかけた疑問を払うように灯はかぶりを振った。
「はっ!」
その間隙へ捻じ込むように、もなは更なる攻勢をかける。再び握った拳に呪詛塊を纏わせながら、拳打の間合いへと踏み込んだ。
だが――その瞬間である!
「調子に乗るのもそこまでじゃ」
「ああ。そろそろ大人しくしてもらいたいな」
「む……っ!」
側面!もなの行く手を遮るように、“群れ”が押し寄せた!それは花鵺の【管狐の召喚】!そして逢真の【凶神の寵児/アンダル】たちである。
「……まあ、まあ、まあ!」
「それ、餌じゃ。喰らい尽くせ、管狐」
『きゅい』
「さあ、お前達もたらふく喰らうがいい」
『ぎいいい』
獣と虫と管狐の群は一塊となってオブリビオンへと襲い掛かる――!
「……なめられたものね?」
だが――爆ぜる!
もなはその身に纏った負の強念を爆発的な出力で撃ち放ったのだ。その供給源である霊座の匣からうめき声と赤黒く血が溢れる。物理的な衝撃すら伴って放たれたその一撃が、眷属たちを振り払ったのである。
瞬間、生じた好機を逃すことなくもなは跳ね飛ぶように床を蹴立てて加速した。――間合いを詰める。瞬く間に駆け抜けたもなが至るのは花鵺の眼前!
「はッ!」
『おおおおおお』
「むう、っ!」
鋭く一閃!呪詛を纏った蹴り足のつまさきが花鵺を捉えた!花鵺は咄嗟に破魔の印を結び、霊力を放射した。もなの蹴り足が纏う呪詛念を打ち払ってその威力を弱めつつ、霊力による障壁を同時に構築したのである。――衝撃!受け止めた花鵺の躯体が軋む!
「まあ。随分つらそうね。楽にしてあげましょうか?」
耐える花鵺を見下ろすようにしながら、もなは嗤った。
「……は。戯言を」
しかして花鵺は一歩も退くことなく対峙する。――それを愉しむかのように、もなは口の端を歪めその笑みを深めた。
「いつまで強がってられるかしら――」
「のう。おヌシ」
「なにかしら?」
もなが態勢を立て直す。素早い体捌き――追撃の構えだ。続く一撃に再び殺気と呪詛を乗せ、今度こそ花鵺に致命的な一撃を叩き込もうと――
「ところで。ヌシの辞世の句は、さっきの世迷い言で終わりかの」
「……なんですって?」
――した、次の瞬間である。
「管狐!」
『きゅい』
「……!」
死角より再び押し寄せた管狐の群が、もなの身体へと噛り付いたのである。先の交錯で振り払われていた管狐たちが態勢を立て直したのだ。
「そら今じゃ!」
「ええ――逃しません」
「……!」
風切の音。矢羽根が空気を切り裂いて、光と共に空間を貫いて奔る!
義透だ。彼はここまで矢を射かけるべき機会を伺い、そして管狐によって敵が足止めされたこの瞬間こそが好機であると判じて弓を引いたのである。
それも一本や二本ではない。義透は次々に矢を番えては放ち、もなへと浴びせかけた。
「ぎ……っ!」
肩口を貫く!傷口から溢れ出る乳白色の人工血液!
「……白い血?」
「ほぉ……どうも尋常の人間じゃなかろうかと思ってはいたが……お前さん、『つくりもん』だな?」
「ッ……ああああああっ!」
もなは答えることなく、突き立った矢を力任せに引き抜きながら側面へと強引に飛んで逃れた。廊下の角を曲がり、矢の射線から外れる!
「傷……っ!傷!傷!傷!傷!あああ!!わたしの、わたしのからだに傷が!お父様に叱られる……お父様に叱られる!」
悲鳴めいた声と共に、もなは走った。匣を握る手の指先に力を込める。放つ負の霊力がまとわりついた管狐たちを再び引きはがす!
「……イェーガー、イェーガー!いぇーがぁっ!」
絶叫。その叫び声と同時に、霊座の匣は再び赤黒く瘴気を吐き出した。絶大な出力の呪詛が再びもなを中心に拡散され、世界を呪染し異界へと染め上げてゆく――。尋常の生命であれば、もはや数秒で呪死に至る高濃度の呪染環境だ。
「呪染を強めましたか」
――だが、義透は瘴気の中を突っ切って前進する。
馬県・義透という男は――、否、正しくいえば、馬県・義透という“男たち”は、悪霊である。人ならざる在り方をする『彼ら』であれば、この環境に適応することは難しいことではない。
「ここは私が対処しましょう」
義透はもなを追って廊下を走った。
濃密な霧めいて広がる瘴気の先に、義透は再び敵の姿を捉える。――そして、もう一度矢を射た。
「同じ手が……何度もっ!」
だが――迎撃!義透は視界の先で薙がれる蹴り足を見た。放たれた鋭い蹴りが、矢を叩き落としたのだ。
「そンなら――こっちはどうだ、クソガキッ!!」
「な――ッ!」
しかし、次の瞬間である!爆轟!轟音とともに教室の扉が蹴破られ、そこから炎が飛び出した!
「おおォォォ、ッ!らァ!」
薙ぎ払う炎は魂をも灼く魔炎――灯が繋がる【朱の王】が、彼女の血を対価として貸し与える炎の権能である。
「いいいいいいいッ!」
切っ先がもなの肌を灼き、そして傷を刻み込む。濁った悲鳴を吐き出しながら、オブリビオンは苦悶に呻いた。
「……よ、くもォッ!わたしに、こんな傷をぉぉ!」
しかし――逆上!傷を刻まれながらも、もなは絶叫と共に反撃に打って出た。もなは激昂しながら灯の首元に掴みかかり、零距離に間合いを詰める。その勢いのまま、振りかぶった頭を――灯の額に叩きつけた!強烈なヘッドバットである!
「ぐあ……、ッ!こい、つッ!」
衝撃に脳を揺さぶられながらも、しかして灯は踏みとどまった。ぎり、と歯を食いしばり、仰け反らされた頭を――振りかぶる!灯はそのまま額を叩きつけにかかった!意趣返しめいた反撃のパチキだ!
「ぎ……ッ!!……い、えええええがああああああッ!!」
「ちッ!こいつ、ツラの割にいい根性してやがる!」
「だまれ、だまれッ!黙りなさいイェーガー……!よくもわたしにこんな傷をっ!叱られる、叱られる、叱られる!お父様に叱られる!お父様に叱られる!」
「ああクソ、前言撤回!やっぱイカれてやがる!……なら、黙るまでブン殴ってやるっきゃねえな!」
再び間合いをとり直し対峙する灯ともな。もなは更に霊座の匣より負の力を引きずり出し、一方灯はその精神を更に【朱の王】へと同調させてその力を引き出す。
「――我ら、狂気を以て狂気を討つ!」
「あああああ!」
そして、再び交錯。
「おお、おお、こいつは随分と燃えてンねぇ」
――そこへ、逢真は到着する。
「……タイマン張るなら見届けてやるのが粋ってもんなンだろうが……しかし、今回はそうはいかねえんだ。許してくれよな?」
《きゅるるるる》
その肩の上には、一羽の鳥が囀る――これもまた、彼の眷属である。
「さあさあ歌え歌え。餌はたらふく喰わせたんだ。働いてもらうぞ」
《きゅるるるる》
逢真は指揮者めいて指先を上へと向けて伸ばした。それと同時に、鳥の眷属が喉を鳴らす。
《ぴい》《ぴい》
重なるように、更なる囀り――校舎内を羽ばたいて、同じく鳥の眷属たちが参じたのだ。
「なに、これは」
「おおおおおッ!」
囀りにのせて広がったのは、他者の傷を塞ぐ陽の氣を乗せた波動である。
毒を司る神格である逢真の権能のひとつだ。――病の根源となるものは、命を奪う一方で命を救う手立てとなる場合もある。
その性質が示すように、その力はまさしく“毒にも薬にもなる”のである。
「だァッ!!」
「ぎ……ッ!」
その力によって傷を塞がれた灯の腕に、再び力が籠もる。
力強く薙ぎ払う炎の剣!燃ゆる刃が捉えた敵の身体を叩き、強烈な威力でもって打ち払う!
「あああああああああッ!!」
まともに受けたもなは勢いに押し込まれ、廊下の床を二度跳ねてから転がった。
「……だいぶ追い詰めたようですね」
――ここで、義透と花鵺が合流する。2人はここに至るまで、破魔の力をもって校舎内に満たされた瘴気を打ち払いながら来たのだ。満ちていた瘴気も、気付けばだいぶ薄まっていた。
「ああ。随分な」
「うむ。なら、もはや妾らの勝ちではないか。……のう、組織の者よ。これでせぇふく一式は貰えるんじゃよな?」
「……上に聞くから待ってろっつうの。……それより、まだだ!」
灯は剣を掲げたまま、油断なく床に付した敵の姿を睨む。
「……」
ゆらゆらと揺らめきながら、オブリビオンが立ち上がる。
その躯体には無数の傷が刻まれ、既に満身創痍と言える状態であったが――それでも、未だその心臓は動き続けていた。
「がフッ」
白濁した人工血液を吐き捨てながら、もなは態勢を立て直す。
「……ええ。そうよ。まだよ。まだ。まだ終わってないわ」
その双眸に映るのは、燃え滾るような敵意と戦意。そして憎悪であった。
「……のろうわ。わたしは、のろう。わたしのじゃまをするあなたたちをゆるさない…………ゆるさない」
そして。
「わたしは……のろいます」
その手の中に握りしめた霊座の匣が、静かに震えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
メフィス・フェイスレス
【血反吐】
ロスタ…?いや、違うわね
ま、詳しい事は後で問い質せばいい話ね
お陰で転移前のあの子の言葉を思い出したわ
何処かの御伽話にあったわね
絶望に満ちた筺を好奇心で開け放ってしまう話
此処は、あの筺は。その御伽話の筺と本質的に同じモノじゃないの?
そういえばあの御伽話の結末は何だったかしら、確か――
狂気、激痛、呪詛、毒、空腹耐性を使用
敵の筺と、この学校全域と、此処の生徒全員に触手をUCの触手を伸ばして
そこに宿る負の情念を「捕食」し根絶する
具体的な打開策があった訳じゃないわ、ただの勘よ
けどやってみる価値はあると思ったの
――余計なもんが全て除かれたなら、此処の筺に残るモノもきっと同じなんじゃないか、って
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
は?
この「場」が、原因だって……?
ここが、呪詛を集めやすい場所だから?
ある意味嘘はついてない、とは思うけれど参ったね。
……それが本当なら、あの姿になるのが一番手っ取り早いからさ。
本当は成りたくねぇんだけどな、チクショー。
もなか、ここには希望がないってアンタはそう言った。
けどな、それは違うだろ。
のろいとまじないは同じ「呪い」って字だ。
その本質は「望む事」、つまりは同じ根源さ。
だから……アタシがその想いを、陽転させて一帯に振りまくよ!
そうして呪詛を反転させて降らせりゃ、普通の学校、体育館裏に戻るだろ。
アタシの姿への感想は言うな!
NGワード言った奴は問答無用でぶん殴るよ!
ティオレンシア・シーディア
【血反吐】
完全におまいう案件ではあるけれど、このさいそこは置いといて。
今回の仕事は「領域の破壊と元凶の討伐」であって「原因の排除」じゃないのよねぇ。
というか人間の感情が原因な以上そっちはあたしじゃどうしようもないし。正直そこまで責任持てないわぁ。
〇狂気・呪詛耐性のオーラ防御を継続、各種明王・菩薩印を乗せて●鴆殺を撃ちまくるわぁ。戦場はさっきと変わらないし、相手の主力は呪詛や怨霊。破邪顕正やら怨霊調伏やらの権能が当たれば当然効果絶大だし外れても〇破魔・浄化・除霊の領域で浸食できるもの、〇援護射撃には十分よねぇ?
好む好まざるは別として。現状維持や先延ばしも、十分一種の「解決」なのよぉ?
トリテレイア・ゼロナイン
刀身砕かれつつも拳を剣で武器受けし防ぎつつ
なんにもしていないとはご冗談がお上手で
未来を知りつつ火薬庫の傍での火遊びを唆す者の事を悪人と呼ぶのですよ
そして、人の憎しみの際限の無さは良く知っております
殺意…害意の洗練の歴史が生んだ人型戦闘兵器
呪具とウォーマシンは違う道歩んだ兄弟です
剣の柄を●投擲し視界塞ぐよう●目潰し
マルチセンサーでの情報収集と瞬間思考力で先の攻防から解析した敵の挙動を●見切って大盾殴打
盾の破損引き換えに拳使わせ
ですが、人は優しさも備えています
憎しみだけなら私を生み出す程に歴史を重ねる事も出来ません
それを脅かすならば、騎士として永劫戦い続けましょう!
匣ごと体躯を貫くようにUC放ち
「……」
生温く湿った風が吹いた。
――猟兵たちとの戦いで傷を負いながらも、『入井戸・もなか』は、猟兵達を睨めつける。
「わたしをころしてもむだよ。もとからここは呪いで満ちていたの。……ここが、この『場』がわたしを呼び寄せたのよ」
「は? ……この『場』が、原因だって……?」
数宮・多喜(f03004)は困惑に顔を歪ませた。
「そうよ。もういちどいうわ。……わたしをころしたってむだ。むだよ。何度でもここは呪詛に呑まれるわ。……だって、わたし。なあんにもしてないもの。呪いを願ったのはここの子たち。呪いを育てたのもここの子たち。わたしがいなくたって、遅かれ早かれここには呪いが飽和していたわ」
「……なんにもしていない、とは。ご冗談がお上手で」
だが、トリテレイア・ゼロナイン(f04141)は怯まない。
その機械の双眸に光を灯しながら、トリテレイアは敵の姿を真正面から見据えた。
「未来を知りつつ火薬庫の傍での火遊びを唆す者の事を悪人と呼ぶのですよ」
「まったくねぇ……。完全におまいう案件ではあるけれど、このさいそこは置いといて」
そして、ティオレンシア・シーディア(f04145)が銃を抜く。
「今回の仕事は『領域の破壊と元凶の討伐』であって『原因の排除』じゃないのよねぇ。……だから、あなたを見逃す理由はないのよぉ?」
ティオレンシアは手にした銃の照星の先に、敵の姿を捉えた。
「というか人間の感情が原因な以上そっちはあたしじゃどうしようもないし。正直そこまで責任持てないわぁ」
「いっ、ひ。……ひ!……ああ、ああ、ああ。そう。そうよね。やっぱりそう。……おためごかしは効かないわよね」
しかして――オブリビオンは、嗤う。
「じゃあもうしんでもらうしかないわ。しんでもらうしかないわ」
そして、その赤い双眸でもって猟兵たちの姿を見据えた。
「……ロスタ?」
その最中、メフィス・フェイスレス(f27547)は呟く。
ロスタ・ジーリード。メフィスの所属する旅団に時折顔を出す猟兵であり、今回の案件へと猟兵たちを送り出したグリモア猟兵そのひとである。
此方を見据える敵の瞳の色は、彼女のそれによく似ていた。
「……『ロスト』?」
しかし、刹那。
その双眸の中に、怒りの色が沸き起こる。
「いま、あなた。わたしのことを、『ロスト』って……『ロストナンバー』って言ったわね?」
「……いや。違――」
「違わないわ」
オブリビオンは、その身に纏う空気の熱量を変えた。
即ち――怒気を孕み激昂の熱を帯びた、敵意の色濃く出たそれである。
「このわたしを……お父様に愛された長女のこのわたしを、出来損ないのロストナンバー扱いだなんてッ!」
「言っていることはよくわからないけど……ま、いいわ。詳しいことはあとで問い質せばいい話ね」
半ば狂乱と言ってもいい取り乱し方を見せる敵とは対照的に、メフィスは冷静であった。
「あらあら。高いところから見下ろしてるようなこと言っといて……いざ自分の気に入らないことがあればすぐに癇癪?」
そして、ティオレンシアがじりじりと間合いを測る。
「……それでよくもまあこの学校の子たちを笑えたものよねぇ?」
「結局のところ、この事件を仕組んだ彼女自身もまた彼女のいうところの『おろかなにんげん』と変わらなかった、ということでしょう。……ええ、わかります。怒りも憎しみも、多くの人がもつ感情ですからね」
トリテレイアは静かに頷く。
――人の憎しみの際限のなさは、彼自身、よく知っている。
戦いの――突き詰めてしまえば、他者を滅ぼそうとする殺意、害意の洗練の歴史こそが、ウォーマシンという種族を生み出し、いまここに立つトリテレイアを作り出した元凶だ。
「それがわかっているなら、無駄なことなどやめてしまえばいいわ」
僅かに平静を取り戻した『入井戸・もなか』は、トリテレイアを睨む。
「いいえ。無駄ではありません。……ここで私たちが貴方に立ち向かうのは、決して無駄ではないのです」
しかして、トリテレイアは顔を上げた。その手の中に、輝く剣を握りしめる。
「なぜならば」
交錯する視線。トリテレイアは真っ直ぐに告げる。
「人の心にあるのは、それだけではないからです」
「……戯言よ。世迷言よ。ほんとうにそうだったとしたら、ここまで瘴気が育つことだってなかったはずよ」
「何処かの御伽話にあったわね。……絶望に満ちた筺を、好奇心で開け放ってしまう話」
此処も、そうだったのではないか。――ここは、その御伽話の筺と、本質的に同じモノなのではないか、
「ああ……その話ならアタシも知ってるよ。たしか、最後に残るのが――」
「くだらないわ。……エルピスなんてありはしない。ここにあるのは憎しみと呪いだけよ。だからわたしがきたの。だからみんなが匣をあけた」
「それでも、です。……私は信じているのです。人は憎しみ合う生き物である一方、互いに慈しみ思い合う優しさも備えているのだと」
憎しみだけならば。本当にそれだけならば――今、ここに立つ我々が生まれ出るこの今日という日まで、歴史を重ねることだってできなかったはずだ。
「ですから――私は、信じます。そして、それを脅かす悪意があるのならば、私は騎士として永劫戦い続けましょう!」
「そういうわけよ。……そんな口先で私達を止められるなんて思わないでもらいたいわね」
「ああ。とにかく、お前をぶっ飛ばしてこの学校と生徒のみんなを助けるのが今のアタシたちのやるべきことさ!」
「……それじゃ、そろそろお喋りの時間もお終いにしましょうねぇ?」
かくして、猟兵たちはそれぞれの得物を手に、『入井戸・もなか』を追い詰める。
――呪いの元凶が語る苦し紛れの言い逃れに惑わされる猟兵など、この場には一人たりともいはしないのだ。
「……あーあ。ざんねん。ざんねんね。平和的なかいけつはできないのね」
半ばあきらめたような声音で、、オブリビオンは緩々とかぶりを振った。
「じゃあ――ころすわ。みんなみんなみんなしんでもらうわ」
そして。
ひどく冷たい声色で紡がれた言葉に端を発するように、ふたたび呪染が広がる。
「死んで」
だん、ッ。
たちまち校舎を埋め尽くした莫大な量の瘴気の中で、爆裂的な打擲の音とともに入井戸・もなかは床を蹴った。
爆発的な加速。まばたきひとつの刹那で一気に間合いを詰めながら蹴り足を放つ。
「ちい、ッ……!」
ご、ッ!その矮躯からは想像もつかぬ絶大な威力に、受け止めたメフィスの腕が軋み悲鳴をあげた。
「死んで」
「がふッ」
追撃。
バレエダンサーめいた所作で回転する入井戸・もなかの蹴り足が、再びメフィスを叩いた。二度目の衝撃に耐え切れず、その身体が弾き飛ばされて教室の扉を突き破る。教壇と学習机を巻き込みながら、メフィスの身体は激しく転がった。
「つぎ」
「それ以上、あなたの思うようにはさせませんッ!」
次なる攻め手を繰り出される前に、トリテレイアは走った。――だが、もなかの方が身軽な分、速い。素早く身を反転させたもなかは次なる獲物と定めたトリテレイアへと距離を詰めた。瞬天。呪詛を纏うその腕がトリテレイアを捉える。
「死んで」
「むう、――ッ!!」
ぎゃんッ!トリテレイアは咄嗟に剣の腹でその打撃を受け止めた――しかし、受けたそのあまりの威力に、携えた剣の刀身にひびが入る。
「死んで」
「くっ!」
続けざまの拳打!しかしトリテレイアは怯まない。続けて構えた大盾でそれもまた受け止めてみせる――だが、衝突のショックは殺しきれない。揺らぐ躯体がたたらを踏んだ。
「……死んで」
もなかは更なる追撃へと移る!もう一度跳んだその躯体は。今度こそトリテレイアへと致命傷を与えるべく宙を舞い――
「そうはいかないのよねぇ」
「……!」
しかして、頬を掠めた45口径弾頭に遮られる!
「なに……これは!?」
灼けるような苦痛がもなかを苛んだ。
掠めただけだ。それだけのはずだ。
しかして、その微かなかすり傷たったひとつが、その躯体に与えた影響は甚大であった。
『入井戸・もなか』は――呪染環境対応型人型呪詛運用兵器『ジーリードの姉妹』が一番機、『モナ』は、その体内に無数の術式を刻まれた人造人間である。
その身体を構成する術式に用いられているのは、夥しい量の魔術回路である。――そして、その中には“邪法”や“外法”の謗りを免れぬ非合法かつ非人道的なものも決して少なくはない。
対し、ティオレンシアが撃ち込んだのは魔と邪を祓う明王印を刻んだ弾丸である。――破邪顕正。怨霊調伏。そうした属性を与えられた彼女の弾丸は、『モナ』を構成する術式に無視できないダメージを与えたのである。それこそが、魔を弑するべく磨き抜いたティオレンシアの戦術のひとつ。【鴆殺/ピュリファイ】であった。
「わ、たしの……わたしの、身体が、っ!あつい――あつい!あつい、っ!」
「あらぁ――覿面みたいねぇ」
悲鳴をあげながら身をよじるオブリビオンの姿へと、ティオレンシアは容赦なく筒先を向ける。
「可愛そうだとは思わないわぁ。……大人しく、骸の海に還りなさい?」
そして、引き金を引いた。
――しかし。
「ああああああああああああああああッ!!」
激昂。咆哮。
『モナ』が再び床を蹴る。転げるように強引な回避機動をとりながら二発目の明王印弾頭を躱し、そしてもう一度床面を蹴立て加速した。――突っ込む先はまっすぐにティオレンシアへ。3度目の引き金よりも速く、獣めいた速度でもなはティオレンシアに激突し、掴みかかりながら押し倒す!
「……っ!」
「よくも……よくもッ!よくもこのわたしに!薄汚い聖印などッ!……下衆でッ!低俗でッ!!蒙昧でッ!!愚鈍なッ!!破魔の術などをッ!!!」
そして、馬乗りの体勢からティオレンシアを殴りつけた。衝撃に脳が揺さぶられる――だが、ティオレンシアはこれを耐え切る。もなはもう一発殴りつけた。再びの衝撃。ティオレンシアの視界が赤く染まる。
「ああああああ乱れてるッ!!わたしの、わたしのからだが、こんなにぐちゃぐちゃにされてるっ!!叱られる、叱られる!お父様に叱られる!あなたたちのせいで、あなたたちのせいでッ!!」
『モナ』はもう一度拳を振り上げた。その腕にもう一度赤黒く呪詛の力を纏う。
そうして――
「もうよせよ。……もう、終わってんだ。もう負けてんだよ、お前はさ」
――その腕を、多喜が掴んで、止める。
「なに、を……」
入れられた横槍に、もなかが振り返った。
「なあ。……もなか、だったな。お前さ……言ったよな。ここは呪いを集める場所だって。ここに希望なんかないって」
「そうよ。……ないわよ、希望なんて」
「いや。……それは違うだろ」
もなの手を取ったまま、多喜は言葉を続ける。
「たしかここは呪いで満ちてるのかもしれない……けど、『呪い』ってのはさ。『まじない』でもあるんだろう」
「……なにを」
呪い。まじない――それは、特に子供たちの間ではおまじない、という言葉で使われるものだ。
それは同じ「呪」の文字を用いたものでも、「のろい」とは決定的に異なるものがある。
「その本質は『望む事』、つまりは同じ根源さ。……おなじ『呪』だって、希望をねがう『おまじない』だってあるわけじゃないか」
「……なにが言いたいの」
「わかんないか。……じゃあ、教えてやるよ」
もなが睨んだその先で、多喜はその身体に光を宿す。――そうして、その身の内で高めたユーベルコード出力を励起したのだ。
「アタシが、ここに満ちたその想いを……ぜんぶ、陽転させてやるのさ!」
「……なにを、馬鹿げたことを。そんなこと――」
「あら。できるわよ。……たぶんね」
多喜の行動を否もうとしたもなの言葉を、メフィスの声が遮った。
「なに……?あなた、一体――!」
「やっつけたと思ってわたしのことを捨て置いたのが悪かったわね。……『集めて』きたわよ。私が見つけられたぶんは全部ね」
崩れた椅子や机の山の中から立ち上がったメフィスは、その傍らに彼女の一部でもある黒い異形を連れていた。――ひどく膨れ上がった『飢渇』は、静かに震えながらゆっくりと前進する。
「なんだいそいつは」
「私の一部……みたいなもんよ。学校中にばらまいて、呪詛だの瘴気だのなんだの、手当たり次第に食わせてきたってわけ」
「へえ……。掃除機みたいに吸い込んで集めてきた、ってことかい?そりゃ面白い。どういう作戦で?」
「具体的な打開策があった訳じゃないわ、ただの勘よ。……けど、やってみる価値はあると思ったの」
メフィスは膨れ上がった『飢渇』を小突く。ぎゅいぎゅい、と妙な獣のように唸りながら、異形はゆっくりと進み出た。
「……で、やってくれるんでしょ。エルピスの役。これぜんぶ任せるから好きにして」
「わかった。それならやらせてもらうぜ」
そして多喜は『飢渇』を掴む。
「さ――させない、っ!そんな、こと……やめなさい。やめなさい!」
一方、もなは金切り声をあげながら多喜へと手を伸ばした。
「そんなことしたって一時凌ぎよ……すぐまたここは穢れるわ。何もかもむだよ、そんなこと――」
「……黙って見てなさいよぉ」
――だが。その指先を、銃弾が遮る。
ティオレンシアだ。多喜やメフィスが注意を引きつけている間に僅かながら回復の時間を得たティオレンシアは、反撃の機会を伺っていたのである。
「好む好まざるは別として。現状維持や先延ばしも、十分一種の「解決」なのよぉ?」
「ざ、……ざれごと、ぉっ!」
半ば狂乱とも言える叫びと共に、震える指先でもなはティオレンシアの首元へと手を伸ばした。
「いいえ、これは戯言でも冗談でも、ましてや虚言の類でもありません!」
「……ッ!」
だが、伸ばした手は届くことなく再び遮られる――トリテレイアが横合いから飛び込んだのだ!その膂力をもって、オブリビオンを強引にティオレンシアから引きはがす!
「もう一度言いましょう、オブリビオン。いかにあなたが嘲笑い否定しようとも。いかにあなたが見下し蹂躙しようとも。人の心にはたしかに優しさやまごころが、互いに互いを思い合う心があるのです!」
「そんなはず――そんなはずないッ!!」
「いいや、そいつの言う通りさッ!今ならお前にも聞こえるはずだよ!」
オブリビオンの叫びを打ち崩すように、多喜は全霊で叫び、そして光を放った。
夥しい量の穢れをため込んだメフィスの『飢渇』にその光を流し込み――その内側に籠もった呪詛を、陽転させてゆく。
『ぎゅい』
そして、『飢渇』が爆ぜた。
砕け散ったその躯体の中から、多喜の干渉によって陰より陽へと反転した超常の光が広がる――
――みんなは……先生が、護ります!
――大丈夫か、仁恵子。
――うん。ありがとう。捧こそ、怪我はない?
――トリ先、がんばって!
――大丈夫か、いま助けるぞ!
――こっちにまだ倒れてる子いるよ!はやく応急処置!
「なに……なん、なの、これは」
拡散した光を通じて、この場にいる誰もがそれを幻視した。
それは、今まさにこの異常事態と化した空間の中であって尚互いに手を取り合い助け合う、生徒や教師たちの声と姿であった。
「なくなったからよ。余計なもんが全て」
「そして箱の中には、最後に希望が残っていましたとさ――ってね」
見えた光景に困惑するもなへ、メフィスと多喜が告げる。
「信じないわ。……わたしは、信じない。こんなこと……こんな、呪われた土地で!こんなこと――!」
「認めてください。希望は、どこにだってあるのです」
「……」
諭すように、トリテレイアは語り掛けた。
しかし――もなは、その顔を歪めながら未だ尽きぬ敵意と共にトリテレイアを睨む!
「み、とめ、ない、ぃッ!!」
そして、再び跳ねた。
握りしめた霊座の匣から、尚も呪詛を引きずり出そうとしながら――トリテレイアを襲う!
「ならば……呪いが、悪意が、人々を苛み続けるのならば――私は、それに抗い続けましょう!」
しかし、トリテレイアはその襲撃を読み切っていた。
その身体に残ったエネルギーの全てをトリテレイアは腕部マニピュレーターへと収束させる。
飛び掛かるオブリビオンの機動をここまでの戦闘データから推測し、最適なコンバット・シークエンスを選定――迎撃する。
「あ、いッ」
刹那。
【鋼の手槍】が、もなの躯体を貫いた。
「お、とう、さ――」
――かくしてその存在核を貫かれたオブリビオンは、とうとうその仮初の命に終焉をもたらされ骸の海へと還る。
灰化して崩れ去る身体のその指先から、木組みの匣がごとりと落ちて転がった。
だん、ッ。
そして炸裂する。――聖別された45口径弾頭が、残された呪詛の匣を完全に破壊し、無力化したのだ。
「……はぁい、これで任務完了……ってとこかしらぁ?」
当然ながら、それを打ち放ったのはティオレンシアである。
45口径オブシディアンをその手の中でくるりと回し、そしてホルスターへと納めたのであった。
かくして。
ここに呪詛の元凶たるオブリビオンは討たれ、狐捕場中学校における事件には決着がつけられた。
だが――戦いの全てが終わったわけではないのだろう。再びこの地に呪いが蔓延ることも、あり得ないとは言い切れない。
しかし、それでも――その度に、猟兵たちは戦うのだ。
最後に必ずあるはずの、希望を信じ続けて。
成功
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