9
とてもすてきなはくぶつかん

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




■素敵なおとぎ話を館にて紡ごう
 むかしむかしのできごとでした。
 そのひとは、ものをあつめるのがだいすきでした。
 うつくしい女性のドレスに、自分をたおそうとおそいかかってきた剣士の剣。
 そのひとは、ものをあつめることがだいすきでした。
 そのひとにとって、ひともものも、すべてがだいすきでした。
 他の仲間が食い漁り、血反吐を流し関節があらぬ方向に捻じ曲げられ投げ捨てられた人形も、とてもすてきな宝物。

 そのひとは過去から蘇り、素敵なものが全て無くなっていることに気が付きました。
 屋敷でずっとずっと泣いた後、そのひとは思いつきました。
 こんどこそ、素敵な素敵な博物館を作りたい。
 腐りかけの子供たちをバラバラにして1人の子に。
 ざくざく槍で貫かれた兵士はそのままに。
 くず肉たちに命じたオブビリオンの蒐集は止まらない。
 
 美しく、楽しくそこにある博物館。美しく、綺麗になっていく展示品。
 オブビリオンは展示品として飾るため自ら真っ赤な絵本を丁寧に運ぶ。
 真っ赤な絵本から滴り落ちるのは。

■グリモアベース
「ダークセイヴァーのとある街にとんでもない悪趣味な屋敷ができてるのじゃー!」
 グリモア猟兵氷長・霰はぷんぷんと頬を膨らませた。
「オブリビオンによって支配され虐げられる人々。悲しい話であるがこの世界では日常の光景じゃ。しかし!よりにもよってそのオブビリオンは、手下に襲撃させたり、連れ去った住民達の遺品、そして遺体まで『展示品』にして館を博物館にしておる。悪趣味の極みであるのじゃ!」
 しかも最近は生きたまま連れてきた住民を拷問器具や罠が仕掛けられている博物館に放ち『展示品』になっていく光景を楽しんでいる。その光景を予知したと言った所で霰は振り返る。
「いかに日の差さぬ、未来など見えぬ世界であろうとも、これ以上の悲劇を見過ごすわけにはいかぬ。まずは博物館へと侵入し、手下を倒し、オブビリオンの討伐をよろしく頼むのじゃ。光となりて、物語を終わらせおくれ」
 オブビリオンが博物館としているの根城は近隣の住民達をかつて統治していた領主の屋敷。正面から堂々と。もしくは窓を割って入るか。窓や裏口から侵入、それとも死体や人間をオブビリオンに献上する等関係者を装って潜入するか。近隣の住民者関係者から屋敷の情報を得る、屋敷の図面を入手するのもいい。
 霰は思いつく考えを猟兵達に伝えた後頭を下げた。


硅孔雀
 ここまで目を通して頂きましてありがとうございます。硅孔雀です。
 ダークセイヴァー世界で語られておりますおとぎ話へのご案内です。
 おとぎ話といいますのは、
 今回のリプレイに関しては全ての章で『絵本風』に描写を致します。

 例:わらわは正面から堂々と入るのじゃ!
 霰はゆっくりと扉をあけました。すると、生臭い匂いが漂っています。
 何本も地面から生えた手。男性、女性……子供に老人。
『色とりどりの招き入れ』と血で書かれた看板が置いてありました。
 ぐらりといっぽんの手が倒れました。血がどくどくと噴き出しています。
 切りたて注意、と霰は血で書かれた字が床にあることに気が付きました。
 鮮血。腐っていく肉の黒。赤と青白い手と黒、腐りはて剥き出しになった骨の白。

 といった感じです。とてもメルヘンな絵本ですね。
 それでは皆様おとぎ話に終焉を。
70




第1章 冒険 『悪趣味な博物館』

POW   :    正面から堂々と入る、窓を割って入る

SPD   :    窓や裏口から侵入、関係者を装って潜入

WIZ   :    関係者から屋敷の情報を得る、屋敷の図面を入手

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

阿紫花・スミコ
「まあ、この世界に理性なんてけど・・・これはこれは、悪趣味の極みだね。」

スミコは、元はといえば、この世界の人形繰りの家系。この世界の狂気については幼心によく知っていた。

「まずは、情報だ。できれば屋敷の図面がほしいけど。」

オブリビオンが異次元から召喚したんじゃないなら、この建物を建てた人間がいるかもしれない。かたっぱしから関係者を聞きまわり、この屋敷の情報を探る。

また、ドローンを飛ばし、屋敷の外観、部屋数、ある程度の構造など、外部から視認できる情報は得ておこう。サーマルスキャナで熱源の観察を行えば、建物の中の生物の有無なども調べられるはずだ。
(コミュ力、やさしさ、言いくるめ、情報収集、暗視)



【にん●●つかいのおはなし】
 阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)の生まれ故郷では、人形繰りは沢山沢山いました。そして、その沢山が彼女を猟兵へと導くきっかけになりました。
 それが幸せか不幸かは分かりませんが、ガジェットの整備をしながらスミコは思い出します。幼い自分に否応なく突き付けられた現実。
 人という存在など、この世界においてはオブビリオンにとっては血と内臓と骨と叫びと脳漿でできただけの人形です。4足歩行の袋です。
 人形遣いが人形遣いへと挑むお話が始まります。
 いや、人形を遣うか人間を使うかの違いの話なのかもしれません。
 スミコはまず、図面の屋敷を探すことにしました。
 街の皆の顔はどれも青白く、屋敷の話をするだけで泣き叫ぶ者までいました。
「まあ、この世界に理性なんてないけれど……これはこれは、悪趣味の極みだね」
 元は鍛冶屋を営んでいたという男が見せた設計図には、金属の棘と拘束道具で出来ている『絶叫椅子』、くるくる回すだけで簡単に人間の中身が見える『人体観察機』の文字が並んでいました。
 屋敷なら昔は領主さまと一緒に皆で集まってはパーティーをしていたんだよ。
 鍛冶屋さんは弟達を自分が作った道具の実例として博物館の主に見せた話と交互に嗚咽交じりに語りながら教えてくれました。
 複数の人の話をきいたスミコは、空からドローンを飛ばして外から屋敷を探ってみることにしました。この世界にはまだ空を飛ぶものなどオブビリオン以外にいません。屋敷からはなんの追っ手も来ませんでした。
 そして、熱源の観察を行えば中に生きているか、それとも冷たくなっている人がいるかは分かります。ゴーグル型ガジェットの『サーマルスキャナー』でスミコは屋敷の一角を覗き込みます。
 幾つもの熱源がゆらゆらと動き、そして、動かなくなったかと思うと熱は失われていきます。
 それはつまり、命の炎が消えた瞬間でありました。
 捕まえられた人間達が自害したのか、博物館の展示物になったのか、それを考えるより先にスミコは地図を作りました。
 こうして、屋敷への入り口が増えました。
 その先では人間はどうなっているのか。
 人形か、玩具か、それとも。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘭・七結
随分と悪趣味なミュージアムね。
惨状は見慣れているけれど。これらを美しいだなんて、ナユには分からないわ。
バッドエンドでは終わらせないわ。この凄惨で趣味の悪い物語を、ナユたちが書き換えてあげましょう。

屋敷外にて〝白き災厄よ来たれ〟を使用。
ナユのおトモダチの白蛇のイルルに協力を仰ぐわ。
イルルと五感を共有している間は、ナユは敵に発見されにくい場所で待機。イルルには僅かな隙間や通路から屋敷内へ侵入してもらいましょう。
ナユの身体にも、イルルにも。周囲への警戒を解かないよう、注意をしながら屋敷の中を巡回。
一通りの屋敷内の情報を得たあとは、ナユたちが侵入できるような裏口を探すわ。





【しろとあかと●●のおはなし】
 蘭・七結(恋一華・f00421)の頭には冠のように真紅の牡丹の花が1輪咲いていました。ミュージアムのチケットは無けれども、その道は猟兵によって開かれました。
 ナユは屋敷を見上げます。
「この中にある美しさなど、理解、してはいけない」
 ナユは扉から入り博物館を見学する気などありませんでした。
 しかしそれでは物語はバッドエンドになってしまいます。物語を書き換えられるのは、そのペンを執ることが出来るのは猟兵達のみです。
 実際、ナユは決してそのペンを手放したりなどしませんでした。暗闇の中、屋敷の外まであるいたナユは呟きます。
「おいで、愛しい子」
 暗闇とナユの灰色、牡丹の赤だけが存在していた空間に白い蛇が現れました。ナユのおトモダチの白蛇のイルルはナユの腕にしゅるりと絡みつき、そして地面にそっと下りました。
「ありがとう、イルル。ナユの五感はイルルの五感。さあ、忌まわしきミュージアムへ行きましょう」
 ナユはその身を安全な場所へと隠し、ルルは音を立てず屋敷の見取り図に従って屋敷へと動きはじめました。
 これはしろとあかの物語。しろい●●が、●●くなるまでの物語。

 イルルは屋敷をぐるりと回ると、キイキイと軋んだ音を立てて開いている扉を見つけました。地面には赤黒い染みがあり、濃厚な、あの匂いが漂ってきます。
 イルルが扉を潜りたどり着いたのはは恐らくは厨房らしき場所でした。かまどがあり、食材が積まれた籠や酒樽がありました。木のテーブルの上にはぴかぴかに磨かれた真鍮の鍋が並び、壁には幾つものフライパンがかけられています。
 それはとても奇妙な光景でした。厨房の役目は、お客様に料理を振る舞うためにあります。そこには料理人がいて、忙しく誰かが働いているはずです。
 ごぽりと音がしました。古くなった酒樽から中身が毀れだします。黒く変色し、濃く、腐ったような濃厚なにおいを発するそれ。
 そして、料理人たちはいました。彼らの時はとっくに止まっていました。自らの腕を切り刻んだまま、立ったまま絶命している者。赤い水の中に顔を突っ込み、お玉でそれを掬うような仕草で絶命している者。
 彼等の中身は皆、ぴかぴかの鍋の中に入っていました。
 命の灯が消えた彼らを支えているのはフォークやナイフ、余った鍋や調理器具たち。空っぽの中身を支えるように、または調理器具が調理人を料理しているかのように、スプーンが、フォークが、ナイフが。抉り、突き刺していました。何十もの調理器具と命なき死体が作り出す展示物。
【調理道具による料理人フルコース作成中】
 展示会の案内板らしき綺麗な金のプレートにはそう刻まれていました。
『調理人』達に群がるネズミ。湯気が立っているティーカップの中身。
(あか…あかい、あかくて、濃くて、その匂いは)
 必死にイルルは、ナユは意識を保ちます。屋敷の内部を深く見てはいけない。そう言い聞かせながら屋敷の内部をイルルははい回り、屋敷の内部の構造を記憶します。
 ナユの元へ帰ってきたイルルは、その身を赤く染めたまま、ナユの髪の毛の中に潜り込みました。ナユ髪が赤く、赤くまだら模様に変わっていきました。
 真紅の牡丹の花と今自分が染まっていく赤。
 この違いは何でしょうか?
 赤は広がっていく。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ロルフ・ロートケプヒェン
全く、話に聞くだけでも趣味の悪い博物館だな……
むかっ腹は立つが、怒ってばっかいたって、なにも変えられやしねぇ
まずは乗り込むことからだ

だけど、無策で乗り込むのも流石に不味いよな……

事前に『コミュ力』も使って近隣住民や、『動物と話す』事でも、よく使われてる出入り口や、出入りするニンゲン、内部についての『情報収集』をするぞ

領主にしろ、その手下にしろ、連れ去られた住人しろ、最近誰かが博物館の中を歩いた筈だ
『追跡』でその痕跡を探ろう

罠なんかは『聞き耳』『野生の勘』で看破してやろう
もし仮に、まだ助かる目がある住人が居たら、簡単にでも手当てをしてから一旦外に連れ出すぜ


※他猟兵との絡み、プレ外の言動大歓迎



【けものと●●●にされたもののおはなし】
 むかしむかし、『赤ずきんの一族』という名前を聞いてその身を震わせる人間はいませんでした。しかしオブビリオンがダークセイヴァーを踏み荒らし、人狼特有の狂月病により一族は崩壊してしまいました。
「無策で乗り込むのも流石に不味いよな……にしても中々うまくいかないなぁ」
 帰る家をもうもたぬ赤ずきんの一族の四男、ロルフ・ロートケプヒェン(赤ずきんクン・f08008)はため息をつきました。真っ赤なケープから覗く耳と、鋭い爪。帰る家のある街の人はロルフが怖くて声をかけても逃げていくばかり。途方に暮れていると
『どうしたの?お腹が空いたの?僕美味しいお肉がある場所知ってるよ!』
 と声が聞こえてきました。それは、ロルフにしか聞こえない声です。
『尻尾と耳が素敵だね、僕とお友達になりませんか?』
 声の主は犬でした。自分は人狼ですが野犬にしては丸々とした彼の言葉に耳を傾け考えます。何も考えずにで乗り込むのは危険ですし、野犬の様子から見ると彼の知っている場所は安全そうに思えました。
『それはありがてえ。もしかして、餌のある場所ってあの屋敷か?』
『うん、そうだよ!一緒に行こう!あのね、人が餌をくれる場所を知っているの』
 こうしてロルフは博物館の裏口へとたどり着きました。

 そこには人だったものが切り刻まれ、食い荒らされ、地面に転がっていました。
『わーい!これは新鮮だ!ロルフさん、今日は出来立ての餌を食べられるよ!』
 尻尾をぶんぶんと振って喜ぶ野犬に、帰ったら食べると言い残しロルフは血の跡を追ってある部屋に入りました。
 慎重に扉を開けると、その部屋には何もなく。真っ黒く塗りつぶされた何かに座らされた少女が一人だけいます。よく見ると、少女が座っている場所は高く、まるでに浮いているかのようです。
 ロルフが部屋に恐る恐る入ると、ぺちゃりと何が頬にあたりました。それは太い紐のようでいて、しかし温かく。
「おいおい……なんだよこれ」
 少女が座っている場所を中心に、腹から引きずり出された腸が何本も何本も放射線状に伸びています。そして、網目模様を描いて作られたそれには美しい服が何枚も何枚も所々に駆けられています。新鮮な餌。温かい腸。ロルフは慌てて少女が生きているか確かめに走りました。
「う。う、うー!」
 少女からくぐもぐった声があげられます。そして、それはまるでロルフに気を付けてと叫びかける様でした。
「え、――っ!」
 天井から確実にロルフの体を切り刻まんと飛び出した鋼の糸の空を切る音をその耳は効き漏らさず、軽々と避けました。
「大丈夫か!?ありがとな」
 無事に罠を避け、舞台の上に座っている少女をロルフは降ろします。
 その口は縫い合わされていました。そして、何本もの手足が無理やり縫いつけられていました。少女が首に下げている金のプレートには【少女蜘蛛の巣】と書かれています。
「……息は、しているし、この子は」
 それはとても幸運でした。少女は蜘蛛の巣にも、蜘蛛の巣に引っかかった服だけにも、用済みになった餌にもされず、ただ口を縫い合わされ体に手足を縫いつけられただけです。お医者さんに見せればきっとその糸は外せるでしょう。
 腐っていた腕を慎重に爪で抉り、少女にかかる負担を減らしながらロルフは一旦外に出ることにしました。
 これは赤ずきんの物語、もしくは●いけものの物語。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

クロウ・タツガミ
他猟兵と連携、アドリブ歓迎だ

【POW】

力技で罷り通らせてもらう

【三位龍装】を用い、攻撃力を強化し、サカホコ(ハルバート)をてに正面から堂々と入らせてもらう。周囲の【情報収集】をしながら、真っ直ぐ奥へと進んでいくつもりだ

囮として、他の猟兵への注意が少しでも減ればよいが

敵がいれば、【戦闘知識】を用い【怪力】による【2回攻撃】で斬り、突き、叩き潰していくつもりだ。敵の攻撃はガンドレットによる【盾受け】で防ぎ、近くに猟兵がいれば【かばう】ことも考えなくてはな

どうやら悪趣味な館のようだが、さて、本命はどこにかな



【●●にまみれたせんしのおはなし】
 クロウ・タツガミ(昼行灯・f06194)の物語は2匹の翼の生えた蛇のような小龍達と共に始まります。白いサカホコと黒いマガホコがぐるぐるとクロウの周りをまわる中、漆黒の瞳でクロウは屋敷の入り口にを見つめます。
 扉は重厚で、礼儀正しく金属の取っ手を鳴らし、屋敷の主の使いを呼ばなければ通さぬといわんばかりです。しかし、クロウはそんな重厚な扉は気にせず、感じ取ります。この扉の向こうの先に広がるのは漆黒。いや、漆黒へと変わりつつある赤。
「酒は飲ませる、サカホコ、マガホコ。力を寄越せ」
 黒い外套の中からクロウは小さな酒ビンを取り出しました。サカホコマガホコはお互い美味しい層にチロチロと酒を舐めています。
「今回は……マガホコ、お前は懐にでも入ってくれ」
 マガホコがペロリと酒を飲み終え外套にはいると、サカホコはクロウの元へと近寄ります。
「お前は利口だな。そうだ、力を貸してくれ」
 サカホコはハルバートへと姿を変えました。そして、そのハルバートは扉を破りました。悪趣味な屋敷に何故礼儀正しい挨拶がいるのでしょうか?
 そうです、力技でクロウは真正面から道を作りました。

 屋敷の入り口は事前に伝えられていた通りでした。真っすぐと長い廊下を歩き、クロウは奥へと進んでいきます。廊下は真っ赤な絨毯がひかれ、煌びやかな絵や窓がここが立派な屋敷であることの証明であるかのように見せつけている。クロウはそう感じました。真っすぐ真っすぐ歩みは止まらず。
 ふと気が付くと装飾品と思われる甲冑が立ったまま向かい合わせに並んでいます。
「これは元々置いてあった像って所か?」
 そうクロウが呟いた時でした。
 甲冑の隙間から勢いよく火が噴き出します。そして、甲冑たちは動き始めます。がちゃがちゃとお互いにぶつかり合いながら、よろけながら一歩一歩手に取った剣や斧、槍がクロウに向けられます。
 クロウはまず考えました。何の仕組みで突然動き始めたのかは知りませんが、甲冑たちの様子はまるで人形の様でした。誰かが操っている操り人形、それもひどく出来が悪いものです。見当違いの方向に向かって武器を振っています。
「なんだか知らないが、力技で罷り通らせてもらう」
 強化された自分の力、怪力で振り回されるハルバード。人形の糸を切るのなんて簡単でした。斬り、突き、叩き潰して転がる甲冑たち。
 そして、転がったのは甲冑だけではありません。甲冑の隙間から炭がばらばらぼろぼろに飛び出していきます。
 よくよくクロウがその場を見渡していると、甲冑達のいた場所には【燃焼可動式自動兵士一覧】と書かれた金のプレートが置かれていました。炎となって、燃えて、燃料となり、炭となったのはいったい何だったのでしょうか?いや、『生きていた誰かか死体だった誰か』が正しいかもしれません。
「……どうやら悪趣味な館のようだ」
 あくまでも冷静に、クロウは思い出し考えます。魔法的な要素で自然に燃え上がったのではなく、自分がこちらへと向かったから誰かが火をつけた。
 悪趣味なその主を探すためにクロウが立ち上がると、マガホコがスルリと飛び出し羽をパタパタと動かし一点を見つめました。その視点の先には、真っ黒な何かを頭からかぶり、手に松明を持った何かがいました。廊下の奥へと消えていきます。
「マガホコ、お前もお利口さんだ」
 ハルバートを手にクロウは進んでいきます。
 それは戦士と敵の物語。戦士が●●へ近づく物語。

成功 🔵​🔵​🔴​

柳沼・芽唯
【人格:メイ】
……なんて、悪趣味な。
でも、このまま放置するのはもっと不快です。

【オルタナティブ・ダブル】使用
お化粧でそれぞれ別人に見えるようになりすまして、展示品として人間を運び込むふりをして潜入します。
「気絶しているふりをして、じっとしていてくださいね」

運び込む途中に見たグロテスクな光景に、たいへん気持ちが悪くなってしまいます(一般人メンタル)
転がる死体や聞こえてくる悲鳴。まるでこの世の地獄です。
そう、あの時のような。あの事件のような……

「……メェ」
メイが過去のトラウマを喚起されそうになったらヤギに人格交代
以降メェメェ鳴くヤギとして行動



【ひとりとふたりと●●のおはなし】
 柳沼・芽唯(サガシモノ少女とスケープゴート・f11582)は1人であり、2人の少女です。 1つの体に2つの心。もうひとつの心をメイは猟兵の力をもって体を与えました。
 もう1人のメイが目を開けた時、目の前には自分と同じ顔が見えました。しかし、もう1人のメイには顔を理解することはできませんでした。
 メイが2つの心を持った理由。そこに至るまでの道は別の物語で語られるべきであるかもしれません。
「……メェ」
 メイの心を蝕む痛み、それを受け入れた心はもはや永久に蝕まれ、囚われ。
「ヤギ、これからお屋敷の中に入るから静かにしていてください」
「メェ?」
 ヤギは終わらない狂気の舞台の上、或いは中で、自らを気性の荒い暴れ山羊として踊っていました。
 メイはヤギにお化粧をして、別人になりすましその手を引いて屋敷の裏口に入っていきました。
 きっと私、いや、私達を見たら展示品を運び込んでいるように思われるかもしれません、メイはそう自分に言い聞かせ屋敷を歩きます。
「気絶しているふりをして、じっとしていてくださいね」
 屋敷に入る前そうメイ声をかけられたヤギはじっと目をつむり、メイに背負われています。暗い暗い屋敷の中、火が揺らめいていています。きっとこの屋敷で働いている『人』がいるのかもしれません。メイは思い切って話しかけてみることにしました。近づいていくと。『人』はその顔が見えないほど大きな黒い布をかぶっています。
「お頼みのありました子を連れてまいりました」
 メイの問いかけに『人』は何も答えません。無視をされたのか、敵と思っているのか。そうメイが考えていると、じっとしていた『人』が歩き始めます。きっと無口な方で、ここまで連れてこいという合図だと思ったメイは部屋の扉を開けました。

 その部屋は、とてもとても綺麗なお部屋でした。
 天井には太陽のように輝くシャンデリア。綺麗な木材で丁寧に造られた柵。
 柵の向こうには様々な緑色の服や敷物がまるで牧草のように広げられています。
 そして、その柵の向こうには人がいるように見えました。
『人』が松明を柵の方へと向けたので、メイは恐る恐る柵へと近寄ります。
 柵の中では人が飼われていました。四つん這いではい回る人間。しかしどうして皆傾いているのでしょうか?
 手足をでたらめに切り取られ前のめりになり動けなくなっている女性。
 口からよだれを流し歩くたびに転がってしまう男性。
 部屋の片隅に置かれた真っ赤な餌を貪り、キラキラと光る指輪を加えて喜ぶ子供。
 誰もが皆、その手足の先には綺麗な蹄鉄が無理やりはめ込まれていました。
蹄鉄というのは誰かの靴だったり、本物の蹄鉄だったりと様々です。そこから壊死が始まり、はい出した虫たちを競い合うように貪りあう動物達。
「あ、あ、あ」
 ヤギに押し付けた、あの時の全てがここに再現されたとメイは思い出します。
 あの時、あの時。いやだ。死体。いやだ。地獄。悲鳴。地獄。貢物。白くない山羊。黒い山羊。地獄。

『まあ素晴らしい、最初から本物の動物を展示できるとは』
『これはそのまま入れておきましょう』
 【牧場】の柵の中に理性を持った声の『それ』はメイを丁寧に入れました。
 メイの物語はこうして●●として始まり、●●へと続いていくのでしょうか。
 お友達に挨拶をするメイ、あるいはヤギはそれを理解しているのかは分かりません。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜


まったくこの世界の悪党どもはこういう悪趣味なのばっかりなのかねぇ。
とはいえ、こいつはとりわけ胸糞悪そうだね?
アタシは近くの街で服と趣味悪い拷問器具を借りて、
道具を収めに来た使者に変装して探ろうとするよ。
とにかく腰は低く、こびへつらうように接する。
ま、どこまで入れてくれるかは分からないけども
相手に会えるだけでも重畳さ。

御目通しが叶ったらその相手に【超感覚探知】を使って、
想いや考えを掴もうとするよ。
どこまで探れるかは分からないけど、
元の屋敷にはない秘密の部屋とか作ってたりしないだろうねぇ?
ここまで堂々とやってるならその心配はないだろうけど、
ちょっと気がかりだね。



【●●へとかけるおはなし】
 数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)が扉を開けると女主人はじろりと数宮を睨みつけます。
「あ、あのさ、服をちょっと借りたいんだけど……」
「ここには針子しかしないよ。仕立て屋なんざとっくに逃げ出したよ。布の仕入れやってた一家はそのまま屋敷行きさ。あんたそんな髪の毛見せてると、美しい髪の女がいるなんて言われちまうよ」
 女主人はため息交じりに自分の古着だというシミだらけの粗末なカートルを渡し、店の奥に消えていきました。
「なんか暗い街だねえ……」
 数宮はついでに渡された頭巾をかぶり町はずれにある鍛冶屋まで駆け足で移動します。女主人があそこの鍛冶屋は酷いもんさという愚痴を聞き、咄嗟に場所を聞いのです。町はずれ、川が流れる鍛冶屋からは火の赤がちらちらと見えます。
「あ、あの」
 鍛冶屋の男は数宮を見るなりうんざりとした顔で鉄でできた何かを投げつけるように渡します。
「お前も自分の命が惜しくて、これを代わりに売るんだろ?ご主人様からたんまり設計図は貰っているんだ。造る俺も外道、運ぶお前も外道だな」
 数宮が受け取ったのは万力でした。しかし、万力にしては少し大きいように見えました。

 数宮は屋敷の扉のアンカーを打ち鳴らしながら下卑た笑いを浮かべる練習をします。
(あたしは道具を収めに来た使者)
 街の人々の顔がちらついたところで、扉がぎいと大きな音を立てます。
「あ、あの、頼まれていたものをお預かりいたしましたものでして。素晴らしいですねえ」
 数宮は扉を開けた者に媚び諂った笑みを浮かべ万力を差し出します。しかし、松明を手に取った、黒い服を着た従者らしき何かは何も答えません。
「お、お気に召さなかったのでしょうか?」
 くるりと振り返り、屋敷の奥へと消えていく何か。数宮はとっさに何かと思考を繋げます。数宮の目的は勿論屋敷への潜入ではありましたが、屋敷内の調査をより深くすることも目的でした。
 しかし、数宮が何かから読み取れた物は、なにもありませんでした。つまり、何も考えず、目の前の何かは動いています。
 精巧な人形ではないことは確かです。松明を取っている手は自分と同じ肌をしています。【耐久学習室】と書かれた金のプレートが張られている扉の前で何かは止まりました。
「あ、あの入ってもよろしいでしょうか?」
 何かは松明を下げます。ここに置けという事でしょうか、と尋ねても勿論返事はありません。
(つち……いたい……これは……私の)
 不意に数宮の脳裏にノイズのような言葉が流れてきました。
 しかし、扉を開けた別の何かが数宮のそれを片手で持ち、再び部屋の奥へ入ると絶叫が響き渡り、ノイズをかき消しました。
「頭、頭をつぶすのだけはやめてください!ゆ、ゆびならまだ3本残っていますから!おねがいです!」
 人形とは違う●●●。絶叫。
 数宮の真実と●●を求める物語は悲鳴と共に始まりました。

成功 🔵​🔵​🔴​

明智・珠稀
私、アート作品は大好きなのです。
想像力が生み出す美しさは何物にも替えがたい…!(うっとり)
ですが。
人々に勘当を与えぬ自己満足は芸術と呼ぶに値しません。
…非道なオブリビアンを退治してみせましょう、ふふ…!

■行動
UC【どちらがお好みですか?】で出現させた女体化明智を生け贄として連れてきた業者を装い潜入。
自身は【変装】で業者のような怪しさを見せるローブ姿に。
「イキの良いものを欲していると伺いまして。いかがでしょう?」
ねむるな女明智を献上し
「ついでに、博物館も観覧させていただきたいですね。えぇ、私アートが大好きなのです、ふふ…!」
恍惚とした表情を見せ
「あぁ、これは凄い…!」
感心したふりで内部を探る





【しんの●をもとめあうおはなし】
 明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)は今、猟兵の力をもってもう1つの美である明智を生み出しました。彼と彼女はとても美しい芸術品でした。
 明智は、粗末なローブに身を纏い生贄として屋敷の人間に彼女を渡すふりをして屋敷へと入ろうとしています。明智は女性の明智の美を頭、胴、そして脚全て見せつけるかのように横抱きし、扉の奥から出てきた松明を持った黒い布を纏った従者らしき何かに語り掛けます。
「この女をぜひ献上したく遠路より参りました」
 何かは松明を女性の明智を向けると部屋の奥へと歩いていきます。随分無口な方でありますね、と明智は思いました。

 そこは屋敷の隅にある粗末な部屋でした。木製のクローゼットの中には様々な小物が詰められ、地面には服が積み上げられています。
 リネンのローブ、ベルベットに綺麗な刺繍が施されたドレス、シルクのブリオー、綿織物でできた華やかな外套。どの身分、男性女性関係なく積み上げられたそれはまるで衣装の置き場所の様でした。
 それはつまり、その数だけ人から奪われた証でもあります。
 明智は部屋の奥の扉に気が付きます。部屋に入ってきたときは粗末な扉でしたが、向こうにある扉は大きく、心なしか立派なつくりをしているようです。
「ここは衣裳部屋でしょうか?」
 勿論返事はありません。何かは衣装の横に立ったまま動きません。
 明智は従者からもう女性の自分の姿を隠すように、赤い胸元の空いたドレスを着せ転がっていた鈴のついたプーレーヌを履かせました。
「博物館も観覧させていただきたいですね。えぇ、私アートが大好きなのです、ふふ…!」
 まだ明智は博物館の展示品をみていません。
 何かは松明で扉をさしました。きっと向こうが博物館の1室なのでしょう。再び女性の明智を横抱きにした明智の代わりに何かは扉を開けます。

「あぁ、これは凄い…!」
 恐らくは舞踏会のために特別に作られたのでしょう。白い美しいタイルの床、音が響き渡る用高い天井。部屋の四隅にいる何か達。
 明智は恍惚とした表情を見せ、踊っている人々に近づきます。
 美しい男女たち、くるりくるり。翻るドレスの裾、その度に吹き上がる赤いそれ。
 男性も女性も離れられないように、その手は縫い合わされていました。
 青白い顔をした彼女の目は白く濁り、必死に踊り倒れ込む2人。いや、もはや死んでいた1人とこれから死んでいく1人。それを片隅にへと運んでいく何か。
『さあさ、貴方も参加してくださいな。美しき美しき私の展示品【美しき舞踏会】を見ていただいたお礼です。美しきものをつれてきた貴方も美しいと思っています』
 突然、部屋に声が響きます。恐らくは、この屋敷の主人の声でしょう。
「ええ、わかりました。それでは着替えてまいります。彼女と揃いの美しい衣装を着たいので着替え室には従者の方は」
『ああすみません。さあさ、この舞踏会は永遠に続きます。衣装をお選びください』

 衣裳部屋まで戻ってきた明智は女性の明智を下ろします。
「あれが美しさでしょうか」
「いいえ、あれは感動など与えぬ、只の自己満足」
 芸術と呼ぶに値しません。倒すべき存在。明智は屋敷の内部を探りに粗末な扉を開けました。
 こうして明智の●●●を求める物語は始まります。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイシス・リデル
きれいなもの、すてきなものを集めるのは、わたしも好きだよ
だって、わたしにはないものだから
だけど……
……こんなの、ぜんぜんきれいじゃない。すてきじゃない、よ

まずは追跡体のわたしたちで、屋敷の中を調べるね
ちっちゃくてブラックタールのわたしたちなら、ほんのちっちゃな隙間からでも、中を見てこれると思う
わたしはその間、見つからないように隠れてる、よ
こっそり中に入る方法がわかったら、わたしも、屋敷の中に行くね

……もし展示物の中に武器があったら、こっそり、持ってくね
本当なら、展示物を持ってくのは悪いことだと思うけど……しらないもん

おこる、おこってるのは、わたしたちのほう、だよ



【うつくしさの●●を●うおはなし】
 汚泥のようなブラックタールの身を持つアイシス・リデル(下水の国の・f00300)は自分にはないきれいなもの、すてきなものを集めるのが好きでした。
 しかし、美というものは形だけではなく魂にも存在するものです。
「……こんなの、ぜんぜんきれいじゃない。すてきじゃない、よ」
 そうつぶやくアイシスはとてもとても、自分の宝物よりも美しい物を持っていました。アイシスの物語が始まった瞬間です。真の●を●●するための物語です。
 アイシスはその身から小さなアイシスを生み出します。
「いってらっしゃい、わたし」
「いってきます、わたし」
 アイシス自身は身を隠し、アイシス達は誰にも気が付かれることもなく、しゅるりしゅるりと屋敷を探っていきます。アイシスはアイシス達の中のアイシスが扉を見つけたことを知ると早速アイシス達の作ってくれた道に従い屋敷の奥に入っていきました。
 
 アイシスが入ろうとしている扉には、金のプレートが飾られていて【栄光までの到達】と書かれています。まずは中を見てみないと分かりません。
 松明が揺れ、何かが近づいていく気配を感じ慌てて扉を開けました。
 部屋の中は死体でいっぱいでした。
 石の壁には血が跳ね返り、天井には太陽と青空を描いたような装飾。横たわる死体はどれも粗末な甲冑を着ています。
「すてきじゃない、すてきじゃない」
 アイシスは恐る恐る部屋を探っていきます。
 まるでこの部屋の中では戦いが起こっており、彼らはその様子を絵画にした時『倒れた兵士』とした役として置かれた存在なのではないか。そう考えてしまいます。
 アイシスは恐る恐る死体を踏みつけないように歩きながら考えていました。
 そして、倒れていない真っすぐな何かを見つけました。
 それは屈強な男達。当然死んでいました。沢山の武器がその身に突き刺されたまま尚仁王立ちで向かい合う彼ら。
 頭頂部に広がる美しい赤のガレアを被り、鎖帷子から覗く手足には槍や弓、あらゆる武器が突き刺さっています。それでも手に取ったままの大剣は恐らく年代物なのでしょう。
 この部屋は、この世界の住民達が読んでいたであろう物語の中。
 昔々勇敢に散っていった兵士たちのお話を再現した絵画を再現した部屋。
「本当なら、展示物を持ってくのは悪いことだと思うけど……しらないもん」
 アイシスは兵士の1人の心臓を貫いている槍を引き抜きました。
 そして、兵士たちの首にプレートが掲げられ、字が刻まれていることに気が付きます。『25本目でおしまい。うめき声がうるさい』『子供を死体役にといったら10本まで耐えた』『最初にまんなかだとすぐにおわる。お腹もまたしかり』
 栄光への到達。兵士たちにとっての誉れ。即ちそれは最期まで戦場に立つ。
「おこる、おこってるのは、わたしたちのほう、だよ」
 アイシスの怒りは槍を抜いた瞬間、魂の美しさを屋敷から取り戻しました。
 彼女は最初、展示品を持っていくのは悪いことかもしれないと思っていました。
 しかし、それは救いになったのです。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・ルイゾン
【WIZ】
アドリブ歓迎。

虐げられる人々も、無残な死も、珍しいものではございませんけれど
与えられる死に際して、苦痛を最低限のものとすべく生み出されたのがわたくしという存在ですもの。
わたくしが救って差し上げましょう。

屋敷に関わりのある住民を探しますわ。
かつての領主や屋敷に関わりのあった方、近くにお住いの方
博物館の主と関わりのあった方
知り合いを博物館に連れていかれた方。

些細な情報も助けになるかもしれませんもの。

礼儀作法を弁えたご挨拶の後
コミュ力と誘惑と言いくるめを駆使して情報収集を行います。
お話をしながらよく相手を観察し
学習力と第六感で会話の流れを優しく導き
より多くの情報を得られるといいですわね。



【●●へとてをひくおはなし】
 ダークセイヴァーの世界、屋敷のある街に降り立った時からシャルロット・ルイゾン(断頭台の白き薔薇・f02543)の物語は始まります。
 虐げられる人々も、無残な死も、珍しいものではなけれども。産婆が優しく生を迎えるように、シャルロットは与えられる死に際して、苦痛を最低限のものとすべく生み出された存在として、全ての●●を救うために存在しています。
 シャルロットは真珠色の髪の毛を靡かせて街を歩いていました。
 街には死の匂いが充満しているように感じられました。しかもその死へいたる道は血と暴虐に塗れ、尊厳など蹴散らかされ。すれ違う住民の顔には絶望の色が満ちています。
 シャルロットは、自然と街の中でも比較的裕福な人達が住んでいるような地区へといました。石畳の広場には噴水があり、僅かながら花が咲いています。
 鉄の椅子に腰を掛けた、身なりのいい女性が嗚咽をあげ泣いている姿をシャルロットは見過ごせませんでした。
「失礼マダム。泣いていらっしゃるものを見かけてしまいました。よろしければお傍にいてもよろしいでしょうか?」
 泣いている女性のその姿を他人に晒すわけにはいかない。シャルロットの心遣いに女性は段々と泣くのをやめ、ありがとうございますと腫れた目でシャルロットに礼をします。
「ごめんなさい。どうしても、どうしても私は私を許せないのです。私があの屋敷にさえいかなければ」
 ああ死んでしまいたい。女性の嘆きにシャルロットは女性の手を握ります。
「わたくしで宜しければ、その後悔をお聞きします。それで心穏やかに進んでください」
 女性は目をぱちくりさせました。
「貴方は一体」
「無礼を承知でお聞きいたします。わたくしは、あの屋敷を滅ぼす者。お話を聞きたいのです」

 女性は語り始めます。シャルロットは屋敷の『今の主人』でも絵本の怖い死神でもないナニカ、そう思ったからです。
『私には子が2人子がおりました。とてもやんちゃな双子で、いつも喧嘩をしていました』
『黒い布を被った何か達が松明を持ち子供たちを連れて行きました。彼らは何一つ喋らず”仲良しの展示品のために”と書かれた手紙を渡されました』
『町の皆は屋敷の主人には逆らえません。私は、私の身が怖く』
『そしてある日”展示品【仲良し双子】をご覧ください”という手紙と共に、屋敷へ連れていかれました』
『私が見たものは、子供達が目の前でばらばらにされる姿。ママ。ママ。助けてママ、もう喧嘩しないよ、ママを困らせないよ、ずっと仲良しでいたいよ。痛いよ。痛いよ!』
『あの子達……あの子達は、縫われ、一つになっていました』
『その時、誰かの声が聞こえたのです。これで展示品はおしまいです、と』
 
「……ありがとうございました」
「いえ、愚かな女の告白を聞いてくださりありがとうございます。私も、あの子達と同じ苦しみを背負って死ぬべきなのでしょうか?」
 うつむいた女性とは対照的に、立ち上がったシャルトットは再度女性の手を握ります。
「あなたさまの行く末が、幸福であることをわたくしは祈っております。そして、これ以上の悲劇は起こさせません」

 喋らない従者、理性的に喋り姿を現さない主人。
 シャルロットの足は屋敷へと向けられます。
 ●●●を与えるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

向坂・要
こりゃひでぇ

趣味嗜好なんざ人それぞれですがね…
ちょいとオレの趣味じゃぁねぇですね

(防腐処理だなんだと随分と保管方法は雑なご様子で

悲劇も惨劇も知るが故
許容する訳でも良しとする訳でもないが激しい嫌悪感がある訳でもなく

ヒトも残酷なもんですからね
なんて苦笑めいたものすら覚えつつ

頭ん中に叩き込んだ見取り図など得た情報を元に裏口から侵入

万が一発見された時の為に迷い込んだ旅人の偽装して

見つからない様に周囲の気配にや罠に気をつけつつ内部探索
危険な箇所や罠と思しき箇所は分体も使い
罠の解除より場所や特性の把握など、情報収集を優先
ついでに領主様の情報もあ」ばいいんですがね

変装
第六感
暗視
目立たない
など利用



【●●しながらそれでも●●るおはなし】
 向坂・要(黄昏刻・f08973)は像に魂が宿り人間の肉体を得た存在です。
 嫉妬、裏切り、復讐、戦争。ヒトのあらゆる面を見てきても、それもまたヒトの姿であると彼は自らの生き方を選びました。それはとてもとても自由な生き方です。
 その寛大さを変わり者と自称する向坂は、それでも屋敷の中で繰り広げられている趣味嗜好には苦笑めいたものすら覚えつつ屋敷の中へと侵入していきました。
 向坂が自我を持つ前、そして持った後も悲劇や惨劇はいつでもどの世界でも、雑草がどこからか生えてくるかのように日常的に起きる話です。物語は無数にあります。
 きっとこの惨状もおおきなおおきな目で見れば、この世界ではごく自然なことかもしれません。
 だからといって、目の前の物語を許容する訳でも良しとする訳でもありません。しかし、激しく許せない、嫌悪感を覚える訳でもなく、物語は静かに始まります。
 片方の目で見たそれと、もう片方の目でみた●●。そして目の前にある現実。
 ヒトの形をした彼の、お話が始まりました。それはきっと、●●が●●を●●ために手を差し伸べる物語であるかもしれません。

 彼の頭の中には、他の猟兵よりもたらされた情報、見取り図や展示品の『悪趣味』さが詰まっています。裏口から屋敷へと侵入した向坂の服装は街を渡り歩く旅人そっくりです。
「どこかで誰かにあったら迷いましたごめんなさい……といっても、口がきけないっていうんじゃなあ」
 既に腐り落ち、白い骨をみせつつあるそれを避けながらつい独り言を言ってしまいます。
 すると突然、目の前に松明の明かりが目に入ります。例の従者、何かでしょうか。目立たない位置に慌てて移動しますが、やはり従者は向坂には気が付きません。
 ころりと何かが通り過ぎた後、向坂はそれを拾いあげます。
 それは白く濁った眼球でした。
「これは、残酷ってやつですねぇ。ヒトはここまでできる……まぁ。ヒトが主人じゃない」
 つくづくこの屋敷はオレの趣味じゃぁねぇですね。そう内心向坂は思いました。
 グリモア猟兵の話を思い出しますと、屋敷は罠まで仕掛けられているという悪趣味の極みでできたモノ。向坂は慎重に周囲の気配を読み取り暗闇の中を歩きます。
 カチリ、とその音と同時に向坂はするりとそれから抜け出します。
 ガシャンと音を立てて、屋敷の廊下の天井と、床から槍のような鋭利な鉄の棒が降り注ぎます。
 槍の1本1本に金細工で装飾された文字を向坂はじっと見つめます。【天然檻。自然の造形美添え】
「これもまた、展示品って奴ですと」

 逃げ惑う人間達の最期を檻に閉じ込め展示品に見立てるその悪趣味さ。
 罠を解体しながら向坂は一つため息をつきました。

成功 🔵​🔵​🔴​

コモフォ・グリード
●グリード
素敵な博物館だってねぇ~是非とも愉しませて欲しいねぇ?
…芸術作品っていうのは作者の心そのものを表現しているからねぇ
だから作品を見つめて行けば作者の深層心理や考え方も掴めるかなぁ?
ゆっくり見学させてもらおうねぇ。
…でもこういう場所に来ると食べ歩きしながら散策したくもなるよねぇ?。
●コモフォ
グリードが何かしらを閃くか、ただ単に物見遊山で済ませるかは、まぁ自由にさせておけばいいだろう…
だがグリードの奴の事だ…欲喰らいの行軍が辺り一帯への侵食を既に進めているはずだ…
その間に私は拠点内の警戒だ、罠や敵の位置を探り出しつつ施設の破壊工作を進めておく。
この博物館の道筋を判り易く作り変えてやろう…。



【おはなしを●●されるおはなし】
 コモフォ・グリード(欲望喰らい・f05224)は1人で2人。そうです、1つの体にその魂は2つあります。 ですので1人で2人の名前はコモフォとグリード。
 物語は屋敷から始まります。それは、狂気を●●で●●する物語。

「何だろう、とっても愛情がこもっていて見ていて飽きないなぁ」
 物言わぬ松明を持った従者に、甘く甘く声をかけるのはグリードでした。返事が返ってこないことなど分かっています。その言葉は確かにグリードの感想でした。
 人の尊厳が踏みにじられ、悲鳴と血だまりが満ちて、でも綺麗に装飾され、壊れないように掃除や手入れがされている展示品の数々。グリードはその1つ1つを従者と共に見て回っていました。
 この屋敷の主人はもしかしたらただただ人を愛しているのではないか。
 人の全て。体、洋服、魂、内臓。骨。悲鳴。絶望。
 主人の夢の世界を具現化したのが屋敷を改装したのが博物館ではないか。
 主人の考えを読み取っていると食べ歩きでもしたいなあ、とグリードは思い口にします。従者はその言葉に反応したかはわかりませんが、グリードを案内するように動き始めました。
 従者が歩みを止めた重厚な扉には金で彩られた美しい模様が描かれています。
 金のプレートには【理想の部屋でお寛ぎを】と書かれていて、ここで食事ができるかとグリードは思い、扉を開けてもらいました。
 ふかふかの椅子に、綺麗なテーブル。花瓶にはお花が咲き誇り。床は勿論特注の絨毯で歩くと独特の音がします。ふかふかの椅子に合わせて作られたであろう机の上にはお茶菓子。
「……うん、美味しそうだねぇ。ありがとう」
 花瓶やお皿はとてもとても綺麗な、いわゆる高級品であったもの。恐らく元々屋敷にあったものを再利用したのでしょう。
 しかし、その他の家具と敷物は全て人でできていました。人だったもの、ではないのは、ふかふかの椅子からまだうめき声が聞こえてくるからです。
 花瓶に差された花は腐り果ててむき出しになった骨を綺麗に組み合わせて真っ白。
 そして、お茶菓子を作った人は、もしかしたら既にこの部屋の寛ぎのために。
 グリードはお茶菓子をもって部屋を出ました。
「案内してくれてありがとうねぇ。お茶菓子、いただいていくよぉ」
 こぽりこぽりと屋敷のあちこちから音がしていましたが当然従者には聞こえませんでした。

……さて、ここからは私コモフォが語らせてもらう。
 物語の登場人物から話しかけてくるのもまたこの屋敷の話には相応しいだろうさ。
 あのグリードは物見遊山で屋敷内をうろついていただろう。
 その辺りは自由にさせている。しかし奴の事だ。既に奴は、欲の塊の奴は、侵攻を始めているはずだ。
 奴の言葉を借りれば愉しく素晴らしい事だねぇ、とでも言っておくべきか。
 今から私は拠点と化した場所から博物館の罠を解除してくる。勿論破壊工作もだ。
 博物館の道筋など、客人が作り変えても気づかれないだろう。
 主人は顔を見せず、従者はただの人形の様だ。
 ああ、私にはこの物語の名前が分からない。
 グリードの奴、聞いていたのか聞いていなかったのか。

成功 🔵​🔵​🔴​

御伽・柳
行動:【WIS】
使用UC:【影の追跡者の召喚】

……皆、口々に言うのでしょう
「悪趣味な館だ」と
俺もそう思います、この館の主は狂ってる
だからこそ、俺は、その狂気を識りたいと思ってしまったんだ

とは言えども、無策で突撃するのはさすがに避けたい
なら俺が使えるものは……そうか、【影の追跡者の召喚】がありましたね
先に屋敷に入った猟兵がいましたね、彼を追わせて何かあった時にすぐに救援を呼べるようにします
……ある程度のグロテスクなものは平気です、【激痛耐性】はありますから
自分が食らうのも、見るのも、ある程度は大丈夫なはず

あとは……【情報収集】で、追跡者を通して見た道のりやあった物の情報をメモしておきます



【●●にむかうおはなし】
 御伽・柳(灰色の渇望・f12986)は考えます。
 彼は、考え続けます。
 猟兵達によって博物館の展示品の数々、美しさを騙るその狂気、残虐の存在を知っています。
 そして街の人含め全ての人がその屋敷を『悪趣味』であり『その屋敷の主は狂っている』と認識していることを彼は理解していますし、認識もしています。
 物語の表紙には狂っている館の主の話。自分も含め誰もがそう書き込むでしょう。
 しかし、どうしても。全てが狂気から始まるとしても
「だからこそ、俺は、その狂気を識りたいと思ってしまったんだ」
 自分の五感や心で感じ、狂気という言葉の中に何が潜んでいるのか見分けたい。
 口から御伽の声が出た時。その時が御伽の物語の始まりでした。
 物語の中身が血と肉と●と●●と●●に溢れていたとしてもそれを選んだのは彼自身です。 自ら進むのであれば当然結末は、となる所。
 ですが猟兵である彼は自らの手で物語を書き込み、そして結末を変えられる存在でもありました。

 御伽は何も考えずに屋敷に乗り込むつもりはありませんでした。
 無策での潜入で自分の目が、耳が潰れてしまえば狂気に至る事すらできないことは分かっているからです。
 屋敷内では既に猟兵達によって罠の解除や部屋の破壊が始まっている事を御伽は思い出しました。猟兵の力で常人には見えない存在――追跡する者を呼び出し、先に屋敷に入っていった猟兵を追わせます。
 猟兵達の情報と、追跡者の存在によって御伽は安全に屋敷の中を歩いています。
(この身になにがあろうとも、何を見ても、ある程度は大丈夫なはず)
 御伽がふと気が付くと、その扉はまるで自分を招き入れるかのようにありました。
 その奥には当然展示品があるはずです。そう、その扉を開ければ御伽の求めるものがあります。利き手は自然とドアノブに触れていました。

 その部屋は元の館の主人が使っていただろう、絵画を並べてある部屋でした。
 そして、絵画は当然そこに残っています。
 いいえ、それは絵画などではてありませんでした。
 人物画には生きた人間がそのまま埋め込まれ、風景には『人物ではなくなった残骸』が使われ、人間と一緒に縫いあわれていました。
 針と糸で無理やり笑顔を作らされたまま、元の屋敷の主人の妻役の女性は肖像画として座っています。当然描かれていない足先などありません。
 御伽はふらふらと、その血の匂いや、黒く変色している絨毯には何も感じずひときわ大きい絵に目を向けます。
 不思議なことに、絵画が喋っているのです。
「あなたはいい子ねぼうや」
「お母さん。ぼ、ぼ、ぼ、僕には才能があるのかな」
「ああああああああおまえおまえおまえはいい絵描きになるよ」
「ぼくのいえ、ゆうしゅうだからね」
 家族が睦まじく少年を取り囲み、その才能を褒めるために喋り続ける絵画の住人。
 才能があるね、そうだね、きっとあるよ、お前はいい子だから、才能があるから。
 御伽・柳は考えます。自分が見たかった、識りたかったものは何だったのでしょうか。
 絵の中の少年はきっとこれから才能を開花させてそして成功して希望に満ち溢れ。
 絵画の中にあるのは痛みではなく、愛と希望に満ちたものでした。その絵は恐らくはまだ幸せなはずなのに、痛みには耐えられるはずなのに、御伽は蹲ります。
 金のプレートに【幸福な一族に幸いあれ】と書かれているのには気が付かずに。 

 絵画が喋り続けている中御伽はふらふらと、この部屋の事も含め猟兵達に情報を伝えるために歩き出します。
 御伽はまだ、考えていられました。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【じゅうしゃのおはなし】
 屋敷の中、或いはどこかで頁が増えていく猟兵達の物語。
『ようこそ皆さん、博物館はいかがだったでしょうか』
 その声は響き渡ります。とても嬉しそうな声に反応したのか、篝火を持つ何か達が集まり始めました。
『わたくしは、貴方達をとても気に入りました。展示品として愛したいのです』
『それらは残念ながら皆様にはとてもお見せできなかった醜い物ですのでお気になさらないでください』
 篝火から覗く顔は人間ではありました。
 口から血を出し、目は白く濁り、或いは眼球など最初からなく、そしてすでに齧られ蝕まれ白い骨をむき出しにし。
『さあさ、こちらまでの案内として彼らと共に来てください』

 貴方達の物語に、勝手に書き込むことをお許しください。
 『それは既にこと切れた死体、そして、動かされている亡者』
 『彼、彼女。既にそれの元は分からず。しかしその手をとるということは、自分もまた亡者の一員になる。それだけは分かった。』
阿紫花・スミコ
「やれやれ。」
亡者達を見てわずかに表情を歪めるも、スミコは人形をを使って無慈悲になぎ払っていく。

世の中には手の届かない命もある

それが、スミコがこのダークセイバーで学んだことだった。

「なら、ボクとダグザは、手のひらでつかめるわずかな命を救っていこう、」

からくり人形ダグザの腰部の歯車がきしみをあげて回転する。同時に人形の持つ超重量のこん棒がうねりをあげて回転する。

スピニング・スイーブ

ボクの・・・いや、ボクらの手で、この狂気を終わらせてやる・・・!

(怪力、なぎ払い、フェイント)



【にんぎょうつかいのおはなし】
 蠢く亡者。
 阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)の黒い目は6つの篝火を視界に入れます。人が既に道具として、武器として、魂を失われても尚尊厳を奪われていること。
 その命を助けるために、いくら手を伸ばしても
「届かない、というのは十分に分かっていたんだけどね」
 自分はそれを学ば無ければ力を手にしていなかったのかな、とため息交じりに付け足します。阿紫花は篝火が燃え移りその無残な姿を晒す亡者達を見てわずかに表情を歪めました。
「なら、ボクとダグザは、手のひらでつかめるわずかな命を救っていこう」
 手はもう届かなかった。
 しかし、これから先誰かの手のひらを自分の手のひらで掴める。それが猟兵です。
 抱えたスーツケースの中から彼女の武器は現れ、そして立ち上がりました。

 この黒く塗りつぶされた世界では存在しない魔道蒸気機械。からくり人形のダグザの腰部の歯車がきしみをあげて回転し、動き始めます。
 亡者の群れは篝火をまるでダグザを崇めるかのように掲げながら近寄りました。
 ダグザが手に取るこん棒を掲げると、亡者は、考える脳みそも何もないはずなのにその場から下がります。
「成程……その火の影で、こちらの動きを読んでいたということか」
 ダグザ。阿紫花は優しい声で物言わぬ、しかし人の形をしたそれに声をかけます。
「ボク、ボク達の手で終わらせよう。この狂気を、そして、命を」
 その声に呼応するかのように、ダグザの手に掲げられた巨大なこん棒はぐるぐると回り始めます。その音はああわかったと返事をするかのようであり、篝火ごと重量と速度を持ったこん棒が全てを薙ぎ払い、潰しつくし。
 全ては終わりました。

『なんと素晴らしい!人形を通り越したその機械の美しさ!ささ、早くこちらに。動かして潰して砕いてみせてください!お2人の席はこちらにございます!』
 戦闘を見て興奮しているかの如く響く声に、阿紫花は暗闇の向こうを見つめます。
 ボクとダグザを、そして誰も。
 これ以上の展示品は作らせない、使わせない。
 その決意と共に暗闇の向こうへ行く人形遣いに幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘭・七結
表現する〝美しさ〟は表現者次第。
あなたの言うアート達を見てその凄惨さに圧倒されて、あなたの熱量はよく分かったわ。
悪趣味だと思うけれど、否定はやめましょう。
でも。あなたの作品に加わるのはお断りだわ。

あなた達、あの〝アート〟達の成れの果てなのね。
同情すれば引き寄せられてしまうでしょう。
無心で淡々と。亡霊たちを倒しましょう。
亡霊の持つ篝火の影に警戒しつつ【見切り】
味方を巻き込まないよう、イルルと五感を共有した際に発見した広い場所へ【おびき寄せ】、〝紅恋華〟。
亡霊もアート達も。弔いを込めて散らしてあげる。
さあ、ご覧あれ。

見ている?表現者。
これがナユの愛する〝美しさ〟よ。
あなたには理解できないかしら。





【しろとあかとせんけつのおはなし】
 蘭・七結(恋一華・f00421)の靡く髪の毛を4つの篝火が照らします。
 自分の代わりに屋敷へと乗り込んでくれた、あの子が見つけてくれた広間まで。時折くるりと振り返り、こちらまでいらっしゃいと返事などしない亡者へ向けて声をかけユイは亡者をおびき寄せました。

「あなた達、あの『アート』達の成れの果てなのね」
 広間までたどり着くと、今度ははっきりと亡霊にナユは語り掛けます。蠢く成れの果て。その黒衣の下は既に人の形ですらないかもしれません。
 これ以上目の前に立つ亡者の事を考えてしまうと、もはや終わってしまった彼らの事を考えてしまうと、それは同情になってしまうでしょう。
 ナユは理解していました。
 その心にナユは一度蓋を閉じました。手のような何かと篝火が自分を掠める中、体と魂が引き寄せられてしまわないように。
 そして『アート』が飾られている部屋に届くよう動きを躱しながら、ナユはすっくと立ち、足をそろえ屋敷の上に立ちました。
 篝火が彼女を照らす中、その瞬間だけ屋敷はナユの舞台へと変わっていました。
「亡霊もアート達も。弔いを込めて散らしてあげる。さあ、ご覧あれ」
 ナユの頭に飾られ、咲き誇る牡丹一華。ひらひら、ひらひら。花時雨が降り注ぎ、広間に隣接する展示室ごと亡者を貫き。
 そこには外套の残骸と、展示室から流れ出る鮮血が残されていました。
「見ている?表現者。これがナユの愛する『美しさ』よ。あなたには理解できないかしら」

『赤い赤い。その赤はこの屋敷に華やかさを与えましょう。そうですね、花咲き散らす乙女等いかがでしょうか。ああすいません、展示品のお名前は貴方様からお聞きしたほうがよろしいのでしょうか?』
 どこまでもかみ合わない、降り注ぐ声。展示室から滲み出す鮮血。
 『美しさ』を作り出すのはその『美しさ』を求める表現者によって異なり、『美しさ』は千変万化する生き物であるかのような存在。それは分かっています。
 この声の人物が表現したかったアート達を見てその凄惨さに圧倒されて、熱量を感じていたことをユイは認めていました。
 悪趣味だと思うけれど、否定はやめましょう。ユイは歩き始めます。
 君を愛す。あかい牡丹一花が語る言葉。
 鮮血を受け入れ、愛す華に幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロルフ・ロートケプヒェン
さっきのあの子は大丈夫だったろうか……って、心配してる場合じゃなさそうだな
おれ達を、展示しようだなんて良い度胸だ
良いぜ、特別におれ達の戦いっぷりをじっくりと見せてやる
次はお前にも見せてやるから、そこで待ってやがれ

あの炎には、出来れば近づきたくねぇな
少し離れた所から、緋色狼の咆哮で攻撃しよう

……既に死んでるやつに通じるかは分からねぇけど、『恐怖を与える』とかで一瞬でも敵を怯ませることに成功したら、武器での攻撃に切り替え『2回攻撃』

敵からの反撃は、『野生の勘』で察知し、飛び退いて回避

『捨て身の一撃』『鎧砕き』『傷口を抉る』『なぎ払い』で更に追い打ちをかけてやる!

真の姿→血染めのような赤い毛皮の狼




【けものとばけものにされたもののおはなし】
 あの子は大丈夫だっただろうか。3体の亡者と3つの松明。
その光に照らされながらロルフ・ロートケプヒェン(赤ずきんクン・f08008)は考えていました。
 ロルフは思考を切り替えました。今は目の前の亡者を屠るしか道はありません。
「心配してる場合じゃなさそうだな。おれ達を、展示しようだなんて良い度胸だ。良いぜ、特別におれ達の戦いっぷりをじっくりと見せてやる」
 物言わぬ亡者に、そして響く声の主にロルフは告げました。それにこたえる物はなく、応えたのは篝火の大きな揺らめきです。

「……既に死んでるやつに通じるかは分からねぇけど、やってみる価値はあるか」
 ロルフの手には禍々しいオーラを纏わせる『Mezzaluna』が握られていました。再びバラバラにされることに恐怖を覚えたのか、覚えていたのか、亡者は松明を落としながら逃げていきます。
 飛んでくる爪、腕だった何か、床に転がってもなお篝火から放たれる炎を肉切り包丁で受け受け流し、人狼の血がその動きを察知し避けます。
「2本もあれば、全て終わらせてやれるんだよ」
 ざくりざくり。その音ともともに篝火が段々と消えていきます。
 そして真っ暗闇の中、床に投げ置かれた松明に亡者の手が伸ばされようとしています。博物館には展示品のうめきや悲鳴、そして、亡者の這いずり周る音しか聞こえないはずでした。
 響き渡る咆哮。人ではなく、獣の咆哮。
 亡者の腕は咆哮に含まれた猟兵の力によって吹き飛び、そこには松明が1本残されていました。その松明が照らしたのは、まるで血を浴びたかのような、赤い赤い毛皮を身にまとった狼です。
 その赤き狼こそ、ロルフの真の姿でした。その足で松明を踏みつけた時全ては終わりました。

『そうだそうだあの時も沢山いました!しかし貴方様はじつに美しい!あかいあかい貴方様の声、爪、毛皮、全てを展示品にしたいのです!』
 暗闇の向こうから響く声にロルフはつぶやきます。そこで待ってやがれ。
 その血に流れる狼の、身にまとう装束の赤。全てを渡すわけにはいきません。
「爪で割いて、喰らって、狩ってやる」
 誇り高く、喉笛を噛み千切る獣に幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜


なるべく変装は解かないように、
こびへつらった口調はなるべく崩さない…つもりだけれども。
いつまで続けられるかねぇ?
無理になったらあっさりいつもの姿になるよ。

いやぁ、ありがとうありがとう。
熱烈な歓迎、痛み入るよ。
つまりはさ……こいつらを潰していった先に
ゴシュジンサマがいるんだろう?
願ったり叶ったりだ……ねっ!

狭い屋内だし、炎の動きに注意しながら
【グラップル】で接近戦を仕掛ける。
間合いを詰めて、懐に【漢女の徹し】を叩き込んでいくよ。
影に触れて先読みされるかもしれないけど、
それならそれで首根っこでも掴んで、
逃げられないようにしてからぶち込もうかねぇ?



【しんじつへとかけるおはなし】
 数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)は案内役にへらへらと笑いかけます。
「お、お話聞かせていただきました。へ、へへ、案内して頂けるようでこれは幸い」
 篝火を持った案内役が1人、数宮の鼻先が触れそうな位置まで顔を近づけました。
 顔は爛れ、裂かれ、あるべき球は既に数宮を見ていません。ヒューヒューと肺に残った息、いやすでに瘴気と化していたそれを真正面から浴び、数宮の顔から媚びた笑みは消えました。
「……ったく、しみったれた格好にくそったれな屋敷、それで案内役がこれか」
 亡者が新たに2人、数宮へとにじり寄ります。振り落とされた篝火で着ていた衣服が燃えはじめたのをこれ幸いにと数宮は彼らの合間を掻い潜り、暗闇から本当の自分の姿で現れます。
「いやぁ、ありがとうありがとう。熱烈な歓迎、痛み入るよ」
 その笑みは既に覚悟を決めた者の、真実へと歩む者のそれ。
「つまりはさ……こいつらを潰していった先にゴシュジンサマがいるんだろう?」

 数宮はまず、一体の亡者へと接近します。炎が揺らめく度に亡者はするりするりと数宮の拳を避けした。他の二体の亡者もまた同じく、まるで『生きている』かのような動きを見せています。
「間合いが詰められない……ってことは、そうか、その松明。大層なもんなんだろう、ねっ!」
 猟兵の力をもって力の込められた掌底が亡者の腹を叩きます。。何かがぼとぼと垂れおちる音がひびく中、数宮は亡者の首らしき部分を掴み上げ、ありったけの力を込めます。
 亡者がばたばたと手足を動かし、松明が足元に転がると、数宮は暗闇の奥へと思い切りそれを蹴り飛ばします。
 響く鈍い音、崩れる音、流れ出る何かの音、松明がめらめらと燃える音。
 全てが聞こえなくなった時、そこには数宮ただ1人が立っていました。

「案内役をよこしてくれるなんて願ったり叶ったりだったよゴシュジンサマ」
 数宮が暗闇の向こうへ声をかけます。
『出来損ないを勇ましく叩き潰してくれるとは、た美しい。最初から貴方様さえ来て頂ければ良かったのです』
 再び屋敷に響き渡る声。
 救いようがないねぇと一言呟き、数宮の姿は暗闇の向こうへ消えていきました。
 真実へ駆けだす者に幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・ルイゾン
アドリブ歓迎。

この博物館は主の愛の形なのですね。
それならば、きっと、醜いとおっしゃる彼らのことも愛しておられますでしょう?

フェイントを仕掛けて相手を撹乱しつつも攻撃はよく見て学習し
影に触れぬよう気をつけながら
第六感と視力、暗視、聞き耳を駆使し
ミレナリオ・リフレクションでの相殺や見切りを試みます。
隙があればカウンターから反撃へ転じましょう。

Chambre à Gazの毒を用いた鎧無視の属性攻撃に
Vierge de Ferで傷口を抉って生命力吸収しながら串刺しにする2回攻撃を重ねます。

少し苦しみましょうが、お赦しを。
あなた方を果ての幸福へ導くためでございます。
ですから、もう、よろしいのですよ。



【きゅうさいへとてをひくおはなし】
 シャルロット・ルイゾン(断頭台の白き薔薇・f02543)は、自分を囲む亡者の姿を見つめ、少し目を伏せます。
 今周りにいる9つの人は魂までも穢され、尚屋敷に囚われ、眠る事すら奪われている。屋敷に響いた声を聞いた時シャルロットは全てを理解していました。
 シャルロットは穏やかに、子供を寝かしつけるような優しい声で彼らに向け語り掛けました。
「少し苦しみましょうがお赦しを。あなた方を果ての幸福へ導くためでございます」
 まるで神に救済を求めるかのように、生きているかのように亡者達はその身を震わせます。しかし、この世界、この街、この屋敷では、安寧な眠りを与える者はシャルロット以外いませんでした。
 広間のあちらこちらから、8人の亡者がずるずると篝火を掲げながら集まります。
「……そうですか、どこまでも、悪夢を見させるのですね。死者に死者を呼ばせ、終わらせない」
 暗闇を照らす篝火。自分に降りかかってくる火の粉。腕だった、爪だったもの。
 増え続ける亡者、襲い掛かってくる彼らとの戦い。否、シャルロットの救済の物語が始まりました。

 亡者の群れを掻い潜りながらシャルロットは全身とその猟兵の力を駆使して彼らの動きを読み取ります。なるべく多くの人数を一度に、一撃の内に送れるように。
「これよりお見せしますのは2体の人形。毒の箱、そして鉄の聖母にてございます」
 からくり人形『Chambre à Gaz』が放つ毒で亡者の魂を縛る肉体が腐り果てれば、もう1体のからくり人形『Vierge de Fer』が聖母の顔で全てを串刺し。
 貫かれていく亡者の手を取りながら、シャルロットは声をかけました。
「ですから、もう、よろしいのですよ」
 その手が元型を留めなくなるのを、シャルロットは見て、見送りました。

『醜い物に価値を与える展示品。ああ素晴らしい!きっと貴方様の展示品は愛されるでしょう。さあさこちらへ!』
 シャルロットは思います。彼の愛は歪みきっていると。
 愛や美を口にしながら、その命を奪い、気に入らなければ醜いと烙印をおす。
 醜いと最期まで愛されなかったその塊はシャルロットにより救済されました。
 彼らの行く末は、物語達は幸福に閉じられたのです。
 そしてシャルロット暗闇の中歩みながら頁を進めていきます。
 救済へと誘う手に幸いあれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

柳沼・芽唯
【人格:ヤギ】
※基本的に人語を喋らずメーメー鳴くだけです。以下は声にならない心情・行動

あぁ、あの時と同じ。怖い。気持ち悪い。
こんなものを長く見せていたら、メイまで壊れてしまう。
メイが傷つかないように、全部きれいに片付けてしまわないと。

UC使用
影に触れぬよう素早く敵の懐に入り込み、助走をつけた【捨て身の一撃】で殴りかかる
それでも攻撃を避けられるようなら、隠し持っていたフック付きワイヤーで【だまし討ち】し、持っている松明を絡め取って弾き飛ばす
ただの獣と侮ったか?
ヒトとしての自我を喪ってしまった自分でも、かろうじて知恵までは狂気に沈めてはいないのだ



【ひとりとふたりといけにえのおはなし】
 柳沼・芽唯(サガシモノ少女とスケープゴート・f11582)は二本の足で立っていました。右足と左足で広間に立ち、5人の亡者が松明を掲げながら近づくのを黒い瞳で睨みつけ、呟きます。
「……メェ」
 もう1人の、メイがこの場にこれ以上いたらまた傷ついてしまう、壊れてしまう。あの時と同じ。怖い。気持ち悪いと泣いてしまうだろう、この先進めなくなってしまうだろう。
 だから、ヤギが全てを受け入れる。それがヤギの役目。
 猟兵としての力が今ヤギをこの場所に立たせそして周囲の空気を震わせています。
 メイはもはやヒトではありません。最期の時まで肉食獣と戦い続け2本の角で逆に襲い掛かる猛々しい雄山羊のヤギです。
 その決意を見る者も知る者もそして聞く者もこの広間にはいませんが、物語には書かなければいけません。
「メェ」
 メイまで壊れされるわけにはいかぬ。全部きれいに片付けてしまわないと。

 手負いでもない獣が何故ここまで殺気を放つことが出来るのか、きっと亡者が生きていたとすれば驚いたことでしょう。その殺気と共で亡者の群れの間を縫うようにメイは獣のように走り抜け、不意打ちを食らわせていきます。
 亡者がメイを生け捕るように『生きている山羊を捕まえるべく動く人間達』のように動くのであれば。
「……めぇ。めぇ」
 助走をつけた一撃で亡者の群れはなぎ倒されますが、それをひらりと避ける亡者もまたいました。
 それを見逃さないのが獣であり、そして、それに対処する知恵をまだ狂気の海の中に沈めてはいないのがヤギでありました。
 駆け抜けていた間に張り巡らしていたワイヤーを、ヤギは両手でつかみ取り、両手で大きく振り回しました。
 空中で切断される亡者、吹き飛ぶ松明。
 真の暗闇の中、雄山羊は全てを終わらせました。

『博物館を開きここまで素晴らしいお方をお迎えできるとは思っていませんでした。生ける動物そして人。愛してあげます。愛してあげます!』
 彼女は、彼女達メイとヤギは捧げられる贄ではなく猟兵です。
 その声の響く方に足を向け、物語を進めるために。
「……メェ」
 柳沼芽唯は先へと進みます。
 1人と心の獣に幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロウ・タツガミ
他猟兵と連携、アドリブ歓迎だ

【POW】

亡者には悪いが、その手をとることは出来んな

【戦闘知識】を用い、サカホコ(ハルバート)を手に亡者の相手をしよう。【先制攻撃】として【力を溜め】たレプリカの【投擲】で篝火を狙うか。あとは【怪力】を用いた【2回攻撃】を主体に【串刺し】を狙うつもりだ。敵の攻撃は【火炎耐性】とガンドレットによる【盾受け】で耐えつつ、近くに猟兵がいれば【かばう】つもりだな

数が増えてきたら、【黒帝九相】で無数の車裂きの車輪を飛ばし、まとめて攻撃させてもらうつもりだ。

先の博物館でも思ったが、どうも屋敷の主とは趣味が合わない様だな



【ちさびにまみれたせんしのおはなし】
 クロウ・タツガミ(昼行灯・f06194)の手には既に、ハルバードと姿を変えた翼の生えた白蛇のような小龍サカホコが握られていました。
ハルバードを地面に突き立て、クロウは漆黒の瞳で辺り一面に広がる篝火、そして篝火を灯す松明を振りかざす亡者を眺めます。その瞳には憐憫も、同情もなく、ただ1つの感情があるのみです。
「悪いが、そちらへ歩むつもりはない」
「その手をとることは出来ない、それだけだ」
その言葉に呼応するかの如く、自分へと振り下ろされた松明ごとハルバードが亡者を貫き串刺しにした時、頁はまた一つ増えました。

 クロウはその手に力を込め、槍に斧を重ねたハルバードを投擲します。
 亡者の服も、肉体も、そして松明もその勢いに吹き飛ばされ、風圧で広間を照らしていた篝火があっという間に消えていきます。
 まだ倒れていない亡者の持つ篝火。火はまるで意志を持っているかのように大きく揺らめき、赤々とした龍のようにクロウに襲い掛かります。
 シールドガントレッドでその火を薙ぎ払い続けるクロウ。しかし、一つの火の粉が彼の外套を掠めると、餌を貰い膨らみあがる様に火が外套を包みます。
「……っと、そういうわけか。その火は自在に操れると」
 軽く焦げた外套を片手ではたき、クロウは一度群がる亡者から距離を置きます。
 鳴き声を上げながら外套の内側から翼の生えた黒蛇が姿を見せました。クロウの、自分の寝床を、害する者があれば。
「ああ、お前怒っているのか。大丈夫、滅べば皆、九相に至る」
 マガホコの形が猟兵の力と共にその姿を変えていきます。
 無数に空中に浮かび上がる車輪。忌々しさすら感じさせる車輪に生えた棘。
 飛び交う車輪の回転は亡者を砕きます。逃げ惑う亡者を轢き殺します。複数の車輪の棘に手足だったものが引っかかり、四方から裂けていく亡者もいます。それは、亡者を乗せて走っていく見えない馬車の車輪でした。

「まあこれくらいなら何とかなるか……」
 クロウが黒い外套を掴み、確かめるとマガホコとサカホコが心配そうに見つめています。
「これくらいならまだ寝床にはなるさ」
 クロウは立ち上がります。つくづくこの博物館の屋敷の人間とは趣味が合わない。
「サカホコ、マガホコ、あともう少し付き合ってくれ」
 好きな酒を褒美にたらふく飲ませてやる、と苦笑しながら足を進めるクロウを追いかけるように2匹の竜は飛び立ちます
 彼らの姿は闇の奥へと消えていきました。
 その鉄をもって物語を進める者に幸あれ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

明智・珠稀
おや、美しいと称していただけたのは有難いですね、ふふ。
ならば、私たちの舞踏会もご覧いただきましょう。
しっかり見ていてくださいね、ご主人様…!
(UC【どちらがお好みですか?】で女明智と共に)

■戦闘
女明智は鞭を。
男明智は妖刀を手に、笑みと優雅さを纏い亡者へと。
「さぁ、踊りましょう、ふふ…!」
女明智が亡者へ鞭を巻きつけ、
独楽のように男明智へ亡者を放り
「もう…動かなくて良いのですよ」
死して尚罵倒される彼らに哀しみを感じつつ
タイミングを合わせ、踊るように亡者を斬り倒す

「愛していただけるのは幸福です。が、私は一人に縛られるのは御免です…!」
女明智や他の猟兵と協力し
「私達の手で閉館させてみせます…!」





【しんのびをもとめあうおはなし】
 変装用のローブを既に脱いでいた明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)は大変美しく、そしてまた猟兵の力で横に並ぶ女性の明智も美しい存在でした。
 美しい男女二人が広間にいるのであれば、広場はまさに舞踏会。5対の亡者、10体が蠢きながら迫ってくる中、二人はどちらもうっすらと笑みを浮かべます。
「美しいと称していただけたのは有難いですね、ふふ」
「ならば、私たちの舞踏会、ご覧いただきましょう」
 闇の向こうのご主人様、どうか我々の舞踏をご覧ください。
 どちらの明智が闇に向かって声をかけたのか。妖刀を手に持った男の明智か、鞭を手にした女性の明智か。
 その声に反応したかのように、舞踏会は始まりました。

 屋敷での舞踏会のマナーは、優雅に、そして美しく。
 薔薇の刻印の入った黒革の革鞭が亡者を何度も何度も打ち付けます。
 そして、従者を巻き付けクルクルと回転させるように女性の明智が空中に投げ出すと、紫にその刃が輝く妖刀【閃天紫花(センテンシケン)】を持った男性の明智が空中で何かをつかむようにもがく亡者に囁きます。
「もう……動かなくて良いのですよ」
 一撃のもと、その姿は暗闇の中へ消えていき、亡者は動かなくなります。二人の舞は、死して尚罵倒される彼らへのせめてもの慰め。
 優雅に美しく、そして心込めた舞踏会は二人の男女が息を合わせ、華麗に、そして確実に亡者を永遠の休憩へと送りだし。
「終わりましたね」
「ええ……これにて、お終いです」
 明智達を残して、舞踏会は終わりました。

『そうです。やはり貴方達は美しい!ずっとずっと私の元で、展示品として舞ってください。そのための新しい部屋も作りますゆえに!』
「愛していただけるのは幸福です、ご主人様」
 明智は答えが返ってこないのは分かっていましたが、その声が響く、闇の向こうへと声をかけます。
「私は一人に縛られるのは御免です」
「そして、愛を謳いながら愛無き者に対する仕打ち」
 明智の求める美は、この屋敷のどこにもありません。きっと、この闇の先にいる主人もけして愛も美しさも持ってはいません。
「哀しい館。美しさのない博物館」
「私達の手で閉館させてみせます……!」
 男女が二人、闇の中へ、その美しさは漆黒の向こう側へ。
 闇夜の中踊り進む者に幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

コモフォ・グリード
●コモフォ
グリードの侵食がそろそろ第二段階に入る頃だな…
後方ルートは開拓済み…後は前方の脅威を排除していけばいい…。

…私は糺し方を知っている…昔からやってきた事だ。
だから正す作業を進めよう…私が学んだ事を教えるだけだ。

……その目で私を見るな。
〔振り下ろされる音〕

●グリード
中々面白い展示物の数々だったねぇ~?
わしも芸術品を造って見たくなったなぁ~ちょうど素材もそこら中にあるしねぇ~。

この世に存在する全てには価値があると思うんだよねぇ
融けて皆が合わさればより純粋になれる。
〔その場でくるくる廻る音〕

お茶菓子をありがとうねぇ~
お礼にもっと良い物へ創り替えてあげるねぇ…ふふっ。
〔スライムが湧き上がる音〕



【おはなしをしんしょくされるおはなし】
 くるくる。くるくる。
 コモフォ・グリード(欲望喰らい・f05224)は廻り続けます。
 コモフォ・グリード、コモフォとグリード。
「この世に存在する全てには価値があると思うんだよねぇ、そうそう、博物館も従者の皆も価値がある!」
 楽し気に、幼子が笑いはしゃぐようにグリードが紡ぐ唄はどこまでも明るく。無邪気な響きがこめられています。
「融けて皆が合わさればより純粋になれるとね、わしはそうおもうんだよねぇ」
 お茶菓子のお礼をグリードはしなければいけないともグリードは思っていました。
 面白い展示品の数々を見せてくれたお礼も合わせ、廻るグリードはぱっとその動きを止め、闇の向こうへと問いかけます。
「素敵な作品を見せていただきましてありがとうございます。これはわたくしからのお礼でございます」
 こぽりこぽり。
「ささやかではございますが、わたくしからも芸術品をお見せしますので」
 そこらじゅうにいる亡者。素材は沢山あります。お礼として、もっともっともっといい物に作り変えてあげないと
「わしの芸術品、楽しんでいってねぇ」
 物言わぬ亡者たちは当然聞くこともできず。湧き上がる音には気が付かず。

 ぱちぱち。ぱちぱち。
 コモフォは目を開けます。床に広がるのは鮮血だったものと、侵食され変色されたなにか。
「ああ、これはフォードの方がやったのか」
 侵食は確実に。博物館の中で自分自身でもあるグリードの企みが進行されつつあることを、コモフォは目にし、猟兵の力でその力が増していることを肌で感じ理解しました。
 前方から迫ってくる亡者が3体。
「帰り道はすでにある。ならば、前に進むだけ」
 その手に取るのは処刑槌『月曜日の憂鬱』
 コモフォにとって、それはいつも通りの作業でした。正しく糺し、学んだことを亡者に教えなければ。
「……その目で私を見るな」

『いかなることも、貴方様を展示すれば元に戻るお話です。しかしわたくしには出来ない芸術品、それもまた飾りましょう』
 コモフォは正す作業を終えた後、再び屋敷に響く声の方へ武器を構えました。
「どいつもこいつも。こんな屋敷、物語。正すしかない」
 物語は確実に書き換えられ、そして猟兵の歩みと共に続きはどこまでも。
 侵食し書き換える者に幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイシス・リデル
わたしなんて展示しても、誰も喜ばないと思うけど
……ううん。他の展示品と同じぐらい趣味が悪い、って言うなら、そうなのかな
けど、あなたの思い通りになんて、なってあげないよ
言ったでしょ。わたし、おこってるんだから

組み立てたバラックスクラップで戦うよ
ごめんなさい。もうすぐ終わりにするから

ユーベルコードを使わない戦い方じゃ、苦戦したり、長引いたりしちゃうかも知れないけど
……うん、そうやって時間稼ぎをする、ね
この戦闘に敵の注意が向いてる間に、こっそり、他の展示品を回収するよ
収集体のわたしたちで、いっぱい集めるね
なんでもいいの。武器だけじゃなくっても
今はまだ、誰にも内緒だけど
「あとで」ちゃんと使うから、ね



【うつくしさのしんかをとうおはなし】
 アイシス・リデル(下水の国の・f00300)の手には【展示品】から持ってきた槍が一つ。
そして、心に抱くのは一つの感情。それは怒り。
「わたし、おこっているんだから」
「わたしなんて展示しても、誰も喜ばないと思うけど」
 いいえ、それは決して違います。あの博物館に展示されていたのは、展示させられていたのはそもそも。
「他の展示品と同じぐらい趣味が悪い、って言うなら、そうなのかな」
 アイシスは美しい物を集めるのが好きでした。それは、彼女自身が美しい物が何であるかを知っているからこそ、理解しているから出来ることです。
 見てきた光景、そして今手にしている槍は、かつ美しかった人を醜さで縫い付けていた針。
 にじり寄ってくる4体の亡者。彼らはにじり寄ってきます。
 松明から放たれる熱を感じ取りながらアイシスは持っていた槍をそっと床に置きます。
 この槍で奪われた美しさをまるで守るかのように、アイシスは亡者を見つめます
「……ごめんなさい。もうすぐ終わりにするから」
 その体からごぽり、と音がしたと思うと奇怪で、それでいて赤黒い彼女の武器が手に次々と現れます。
「ごめんなさい、少し、長くなってしまうかも」
 くみ上げられた『スプラッタースクラップ』を手に、亡者が次々と現れていく中、アイシスは亡者の群れへと飛び込んでいきました。

 その音はいつまでも長く響き。音が消え静寂が広間を包むまで随分と時間がかかりました。
「時間稼ぎ、にはなったかな」
 目の前に転がっている『スプラッタースクラップ』の色は赤と、黒へと変わっていく赤に染まっていきます。
「もってきたよ、わたし」
「大丈夫だよ、わたし」
 アイシスは猟兵の力を亡者には使わず、屋敷の中に対して使いました。
 わたしがわたしにお願いしたこと。展示品の回収。
「これで先に進めるかな、わたしたち」
「……うん、大丈夫だよ」
 なんでもいいの。武器だけじゃなくっても。アイシスの言葉にアイシス達はありったけの展示品を持ってきました。
「わたし、これをどうするの?」
 アイシスの問いかけに、アイシスは闇の向こうへと歩きながら、その手に槍を取り進んでいきます。
「今はまだ、誰にも内緒。でも、使わないといけないの」
 『あと』でちゃんと使うためにアイシスは展示品と共に進んでいきます。
 その過程で、多くの展示品の魂は解放され、美しさを取り戻したでしょう
 真の美を知り手にする者に幸あれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

向坂・要
展示物にならなかった…
失敗作、ってやつですかぃ

気に入ってくれたみてぇですけど生憎、オレは展示品に戻るつもりはねぇんですよ

それに、ここはオレの趣味じゃありませんしね

などと嘯き

案内役の従者に対し
主人までの道程に感謝して
お疲れさん、と返礼代わりに返すは焔纏いし翼持つ蛇
送り火に

道程や案内される間も周囲の様子など情報収集は欠かさず



【たっかんしながらそれでもまもるおはなし】
 向坂・要(黄昏刻・f08973)はその片方の、紫の目で。両の耳で、全てを見て、聞いて、闇の中に佇んでいました。
「なるほどなるほど、物語は侵食され、そしてまた解放へと向かう」
 自分でも意味の分からない独り言だと思いました。しかし、屋敷のあちらこちらから微かに響くうめき声が止む気配を読み取ったからです。
「そんでもって、展示物にならなかった……失敗作、ってやつですかぃ」
 恭しく礼でもするかのようにぎこちなく目の前で体を震わせる3人の亡者達。
 その1人の手を取り、べとべとと手につく何かの液体にも顔色一つ変えずに向坂は語り掛けました。
「あなた達が案内人ですね、ええ、声の主の……ご主人様の所までの案内を頼みますよ」
 向坂は、自分の発した言葉に反応したのか、闇の奥へと消えていく亡者の後を追います。
「……っとに、面倒くさく、醜い話もあったもんだ」

 広間を抜けた先は大きな階段がありました。タイル張りされた階段に引かれた真っ赤な絨毯。
 篝火があちらこちらふらつきながら辺りを照らすのを、一歩下がった所で向坂は見まわします。
 広い天井、金細工で描かれた華やかな模様が白い漆喰の壁を飾り、窓代わりに教会から分けてもらってあっただろうステンドグラスは曇り一つなく磨かれています。
(どこまでも、博物館らしく綺麗にしてたってわけか。人間の、何もかもを集めた箱庭。でも箱の中の展示品は、かつての俺ではない、っと)
 階段を登り切ると、その向こうには一際豪華な扉が見えます。
 亡者が扉をどんどんと、体当たりをしているのを見て、向坂は猟兵として、自分が像からヒトの型を得た証である力を解放しました。
 焔を纏い、翼を持つ蛇がぐるりと亡者達に巻き付きます。
「送り火の一つでもあげないとってねぇ」
 お疲れさん、と声をかけます。
 ヒトだったもの。炭になって消え散って行く者。
 軽い口調でしたが、向坂は人にお礼を言い、全てを終わらせました。

『おお。もうここまで来てくださった方がいたとは!もうすでに部屋も場所も設計図も見取り図もできているのです!さあさ早く来てください!』
「気に入ってくれたみてぇですけど。生憎、オレは展示品に戻るつもりはねぇんですよ」
 向坂は真っ赤な扉の向こうにいる主人に向かって呼びかけました。
 どすどす。ばたん。がちゃがちゃ。
『ああ漸く準備ができました!ささ、早くこちらに!』
 人に寄り添う者に幸あれ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『往生集め『エルシーク』』

POW   :    賢者の双腕
見えない【魔力で作られた一対の腕】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    蒐集の成果
自身が装備する【英雄の使っていた剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    幽暗の虫螻
【虫型使い魔】の霊を召喚する。これは【強靭な顎】や【猛毒の針】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルディー・ポラリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【物語の終焉のおとぎ話】
 猟兵達の前で扉は吹き飛びます。
「ああこれは申し訳ない!いやはや、この通りの体でございまして、この扉を開けるときはいつもこうして壊してしまうのです」
 聞きなれた声が響く中、猟兵達は大きな部屋の中へ入り、周りを見渡しました。
 美しいドレスを身に纏った彼女達は腐って衣服を汚さないように生きたまま、鉄の棘が足元を覆う中、震え立たされています。
 壁には、倒れてしまい使い物にならなくった者達がばらばらに、美しい髪飾りや、鞄、そして靴を履かされ絵画のように飾り付けられています。
 高い天井からはすでに白骨化した物が飾り付けられぶら下げられています。
 そこにはありとあらゆる物。人の叡智の結晶の本、勇ましき兵士たちの武器、そして衣類や装飾品。人の全てが集められていました。

 とてもとても綺麗に、大切そうに、どの蒐集品も丁寧な手入れがされた部屋の奥から。 大きな手と骨と化した山羊の頭、そして下半身のないそれはずるずると自身の白髪を引きずりながら猟兵達の元へ近づきます。
「改めましてご挨拶を。当博物館の館主、エルシークにてございます」
「このような醜い姿で申し訳ございません。美しさをただ求め私は生きてまいりました」
「ヴァンパイアに頭を下げ、往生集めなど罵られても、わたくしはどうしても集めたかったのです。人を、美を、全てを!」
 興奮し、体を持ち上げるエルシークからそれはぼとりぼとりと零れ落ちます。
「ああすいません。我が体にある醜きモノ。失敗作や出来損ないを動かすにはちょうど良かったのですが、お見苦しい姿での挨拶ご容赦くださいませ」
 屋敷全体に何故か響いた声、動いていた亡者達。
 猟兵達は全てを理解しましたし、理解ができませんでした。
「それではこれより、最後の仕上げを」
 往生集め『エルシーク』。彼はとてもとても楽しそうに――その笑い声は、蠢くそれから発せられていました。

 再度貴方達の物語に書き込むことをお許しください。
 
 何故ですと?
 蒐集したペンとインクをどうしても使いたかったのです。
 わたくし如きが、美しい物に触れてはいけないとは分かっていました。しかしどうしてもわたくし人の美に触れたかったのです。
 ペンの代わりにあそこの骨を、インクの代わりに出来損ないの血を使いますのでお許しください。
 それでは最期の物語を書かせて頂きます。
 この手からペンとインクが吹き飛ばされた時、わたくしの物語は終わってしまうのでしょう。
 しかしわたくし、物語の最後の一文はもう決めているのです!これだけは書かせてください!
『こうして猟兵、最も美しきモノは蒐集され、博物館にはより一層素晴らしい展示品が飾られました。』
柳沼・芽唯
【人格:ヤギ】
真の姿:ツノが生え、瞳が金色に輝く

獣となった我には芸術だの美だのはよく分からない
けど、これが醜く残酷なエゴの結果ということは本能で分かる
お前がこの屋敷の、最後の亡者となれ!

【捨て身の一撃】で突進し、拳で【グラウンドクラッシャー】
お前のような不愉快なモノ、この屋敷ごと破壊してやる!
襲ってくる腕は、避けきれないふりをしながらフック付きワイヤーで絡め取り【だまし討ち】
そのまま振り回してハンマー投げの要領でエルシークにぶつけてしまおう

さぁメイ、現実に帰ろう
この世界で見た全てはただの悪夢。
起こった全ては、全て我が受け止めるから



【終焉】
 柳沼・芽唯(サガシモノ少女とスケープゴート・f11582)。1人と雄々しき山羊と自分を狂気に沈めても尚立ち向かう1人。
 その物語はもうすぐ終わろうとしています。
 メイを狂気から守ってきたヤギには、芸術だの美だの歌うように歓喜しながら、どこからか声を出しているのかわからないエルシークの言葉は分かりませんでした。
 言葉が分からないのではありません。ヤギは獣、角の生えた獣。しかし、その心はまだ壊れていません。猟兵の持つ魂。黄金でできた彫刻品の間から出てきたヤギには角が生え、その瞳の色は彫刻品と同じ輝く金色。
 ヤギは真の姿を見せ、そして獣の本能でエルシークが笑い狂う場所へと足を向け、地面を蹴ります。
『ああ、分からない。判りたくもない。心が壊れ、姿すら変わっても、ヤギはヤギ。』
『醜く残酷なエゴの結果。お前はメイを傷つけた。狂った風がいかにヤギを包めども、この怒り、そして言葉の愚かさは本能で感じている』

「……メェエエエエエエエ!!!!!」
『お前がこの屋敷の、最後の亡者となれ!』
  吼えるヤギ。獣。
「人の心に美しき魂!それではまずは角をもっと増やして差し上げましょう!」
 醜き者の双腕が一対空中に現れます。腕の群れ、エゴと悪意の群れはヤギの突進を止めることなどできませんでした。
 自らの体など壊れてもいいと言わんばかりの一撃で、腕の一本がヤギの真の姿で露わになった角で貫かれます。
「痛い、痛いのはおやめ下さい!」
 知った事か。めぇと吐き捨て、腕の間を飛び移りながら自分を叩き落とそうとしてくる腕を避けます。
 しかし、所詮はヤギでした。その角をもぎ取ろうと手が角へと触れそうな、その瞬間でした。
「なにを!私の腕を物語を書く手まで!」
 駆け抜ける間に取り付けてあったフック付きワイヤー。既にヤギの片手にはその束が握られています。
 ヤギがワイヤーを振り回し、エルシークに、自身の腕を縛り纏めあげたたもの全てをぶつけます。絶叫と共に横倒しになるエルシーク。
 瓶が壊れインクに、砕ける筆。それは即ち【一人と二人と生贄の物語】の終わり。
「メェ!」
『お前のような不愉快なモノ、この屋敷ごと破壊してやる!』
 メイの拳が猟兵の力でオーラを纏い、再び手中にあるフック付きワイヤーが生きた触手のように揺れています。
「あ、あああああああああ!!!!」
 その拳は白骨化したしたヤギの骨を砕き、ワイヤーが零れ落ちていくエルシークの体をまとめあげ、そして切り刻みます。
 そして【一人と二人と生贄の物語】の書き手も、物語を書き記したものも。
 全ては無くなりました。

 さぁメイ、現実に帰ろう。
 この世界で見た全てはただの悪夢。
 起こった全ては、全て我が受け止めるから。

 博物館などメイの世界にはありません。ヤギだけが見て聴いて、そして破壊した。それだけでいいのです。
 ヤギの角が消え、まだ生きている人がヤギを見つめる中ヤギは答えます。
「……めぇめぇ」

【しょうじょのおとぎ話】
『こうしてはくぶつかんにいたしょうじょは、めぇめぇとないて、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 へんなの、と子供は呟き絵本を閉じ、歩いている大人たちの元へと駆け足で追いつこうと走り出しました。
 10人程の一団がこれからお屋敷を元に戻しに行くんだと弾んだ声でメイに声をかけます。メイは、お屋敷?と首を傾げます。
――いってはいけない。もう、我が壊してしまった物語だ。
 少しの頭痛。響く言葉。
 顔色わるいよあんた。ちょっとそこで待っていなと女性が、荷馬車に積んでいた葡萄酒入りの瓶を探しだし振り返ります。
 しかし、そこにはもう猟兵の姿はありませんでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロウ・タツガミ
他猟兵と連携、アドリブ歓迎だ

【POW】

さて、終章の始りと行くか、どちらの終わりかは綴られた物語だけが示すこととなるだろう

【戦闘知識】を用い、サカホコ(ハルバート)で戦わせて貰う。【怪力】を用いた【2回攻撃】で近接攻撃を行い。敵の剣はガンドレッドで【盾受け】、虫型使い魔は【力を溜めた】レプリカ【投擲】で迎撃を試みる。近くに猟兵がいれば【かばう】つもりだ

最後にこの建物がどうなろうと、物語の大筋には影響あるまい。【三位龍来】を用い、マガホコとサカホコに好きに暴れさせるか。

最後の一節は、こう書き換えさせて貰う
『こうして美しくも無い只の猟兵達は依頼をこなし、それぞれの物語へと旅立っていった』とな



【終焉】
 翼の生えた白蛇のような小龍サカホコ、同じ姿で黒蛇のマガホコ。
 龍を連れたクロウ・タツガミ(昼行灯・f06194)が部屋に入るとエルシークは歓喜し、その巨大な手を打ち鳴らします。
「ああ勇敢なる騎士様!貴方様の物語、わたくし書き上げております、今は醜き亡者を屠り」
「黙れ」
 クロウはそう一言いい、話を止めさせます。きょとんとした様子のエルシークなどクロウは目にもくれず、クロウは一歩一歩、近づきます。
「騎士でも戦士でも、なんなら神殺しでもいい。自分に名をつけるだけなら別に構わない」
 そのクロウの、どこか無機質な声に反応し、主人の周りを舞っているサカホコの姿がハルバードへ姿を変えます。
「いい子だサカホコ。マガホコ、お前の出番はあと少しだ」
 マガホコはしゅるりと自分の大切な寝床、クロウの纏う外套の内側に潜り込んいきます。
「神殺し!わたくしには考え付かない素敵なお名前!ああ、どこから書き換えればいいのやら」
「その必要はない」
「え?」
 ハルバードの槍先はエルシークに向けられます。
「さて、終章の始りと行こう。どちらの終わりかは綴られた物語だけが示すこととなるだろう」
 その言葉と共に、ハルバードがエルシークの傍で蠢いていたそれを薙ぎ払います。
「!!……ぅ。ぅ」
 エルシークの体を構成していたそれ、語り掛けていたそれ。葬られたそれをかき集めるかのように無様に這いつくばるエルシーク。
「漸くその口が利けなくなったのか。いいか、名前だけ付けてもいいといったが、物語は書かせない」
 お前には理解できないだろうがな、とはもはや声をかける気はクロウにはありませんでした。
 終章の始まり、そして【血錆に塗れた戦士の物語】はここに終わります。
 
 クロウを串刺しにでもしようと、切り裂こうともしたのか、部屋にあった無数の武器を握ったエルシーク。
 投げつけられる剣を最小限の動きでガンドレッドで受け止め、クロウはその攻撃をはじき返します。
 逆に力を込め、軽々と細剣を撫でるように 両手でかかえて漸く振るえそうなハルバードを正確に突き刺し、斧で引き裂き、腕も手もずたずたに。 その痛みにもだえ苦しむエルシークの顔にハルバードを振り下ろす直前、クロウは動きを止めました。エルシークは当然それには気が付きません。
 そうだ、最後にこの建物がどうなろうと、物語の大筋には影響あるまい。

 エルシークが見たのは巨大な2匹の竜、サカホコとマガホコ。
 そして、中央に立つのは白銀の角と、羽を持ち広げた姿の竜。
「酒、なくなっちまうか。まあいい、全部壊せ」
 3匹の竜によって、みにくいおろかな化け物は退治されました。
 ばりばり、ぼろぼろ、ぼりぼり。

『こうして美しくも無い只の猟兵達は依頼をこなし、それぞれの物語へと旅立っていった』
 とな、と独りごち。
 元のちいさな龍へと戻っていたサカホコとマガホコがぐるぐるとクロウの呟きに首を傾げます。
「全く、最初から最後まで趣味の悪い話だった。物語になってもなかったか」

【りゅうづれのおとぎ話】
『こうしてりゅうとけんをもったりゅうによってばけものはたいじされ、はくぶつかんはもとのおやしきになりました。おしまい。』
 活気づいた街の中、生きる気力を取り戻したのか広間では既に『博物館』から取り戻された品々が並んだ市場が出来ていました。
 並ぶ12本の見慣れぬ色の瓶。
 そこから漂う微かな匂いに外套の中で蠢くのが2つ。
「ああ、土産酒……といってもあの博物館にあった代物。霊酒よりかは不味いと思うぞ」
 その呟きを耳にした人は、呟いた誰かの姿を見た人はおらず。
 猟兵の姿は既に広場にはありませんでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロルフ・ロートケプヒェン
ごちゃごちゃうるせぇ、死に様を晒すのはてめぇの方だ
そして、お前のことは、飾ってもやらない

お前が集めた『美しいもの』として大事に扱ってきたものも、お前が『醜いもの』として切り捨てたものも、全部含めてここから解放して、弔う

その為に、おれ達はここまでやってきたんだ

お前が残したものも、お前自身も、すべて消えて何も無くなっちまえ!

真の姿(深紅の毛皮をまとった、狼の姿)に変身した上で怒号をあげて、相手に『恐怖を与える』

その隙に接近、『傷口をえぐる、毒使い、マヒ攻撃、鎧砕き』で更に追い討ちをかける
その後、『大きなお口のその理由は?』を発動

ヤツが跡形も残らないように、すべて、食らいつくしてやる





【終焉】
 『赤ずきんの一族』の四男ロルフ・ロートケプヒェン(赤ずきんクン・f08008)。 人の姿でありましたが、既にロルフの心は獣へと変わりつつありました。
「おれがここに来たのは、お前が集めた『美しいもの』として大事に扱ってきたものも、お前が『醜いもの』として切り捨てたものも、全部含めてここから解放して、弔うため」
 一歩一歩、ロルフは近づきます。
 美しさ、醜さ、それは所詮エルシークの歪んだ価値観が生み出し、烙印を押しただけ。
「弔う?『はか』という醜い檻から解放しても、醜いのは醜かった。あの従者をお見せして怒っているのでしょうか?」
 エルシークの腕が、指が、手招くようにロルフへと向けられていきます。
「ごちゃごちゃうるせぇ、死に様を晒すのはお前の方だ」
 そして、お前のことは、飾ってもやらない。
 そのためにやってきたのだから。ここまで来たのだから。
「まずはその口から縫い上げる所から始めてみましょう」
 飛んできた爪を躱し、豪華な衣装箪笥の影から現れたのはロルフであり、ロルフではありませんでした。
 部屋に響き渡る怒号。それは狼。緋色狼の咆哮。
――お前が残したものも、お前自身も、すべて消えて何も無くなっちまえ!
 その怒りは空気を震わせる力となり、エルシークの体に引っかかっていた本らしきものを吹き飛ばします。
「あ、ああああああああ!!!!」
 エルシークがあげた声は歓声ではなく、恐怖による絶叫。身の震え。転がるペンと本。
【獣と化け物にされた物の物語】はこうして未完のまま終わりました。

 血染めのような赤い毛皮を纏いし真のロルフ。空中から突然現れた一対の腕は狼をその掌で握りつぶそうと、そこら辺にあるモノをぶつけようとします。
 しかし、獣とただ愚かなだけの『真の化け物』では圧倒的な差がありした。
 部屋を縦横無尽に駆け回り、首と上半身だけのエルシークの喉首にロルフは牙を立てました。
 エルシークを覆っていたそれの装甲などひと払いすれば千切れ飛びます。
 そして自身の赤。毒々しさをそのままエルシークの傷を抉りながら与え続けると、そこらじゅうを滅茶苦茶にしていたエルシークの腕は消えていきます。
――大きなお口のその理由は?
 そのうなり声は、エルシークに問いかけているかのようでした。
 真っ赤な真っ赤な狼。その体が真っ赤な霧に包まれるとその姿がゆらりと現れます。
「い、痛いのは!砕かないでください!手を、目を!あああああ」
 エルシークの懇願する声はぷつりと止みました。
 大きな大きな狼さん、あなたが飲み込んだのは何ですか?

「跡形も残らないように、すべて、食らいつくしてやる。それだけだ」
 丸呑みにされたエルシーク。
 真の化け物を助けに来る物語などもうありませんでした。

【吠えるおとぎ話】
『こうしてみんなをたすけたあかいおおかみさんはいなくなり、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 赤い頭巾をかぶり、そこかははみ出す尻尾と耳は狼のよう。
 狼は悲しみに閉じ込められていた全てを喰らい尽くし、帰れる物、魂の帰り道を作り。
 帰らぬ人を家で待つ人が、ちゃんとその帰りを待てるようになった街。町の外へと続く階段の残り15段分を登ると。
 猟兵の姿はもう消えていました。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・ルイゾン
アドリブ歓迎。

ごきげんよう、主様。
美を求め、愛すること
それを否定は致しませんけれど。
人間は美醜を併せ持つから美しいのです。
美を愛するならば、何故醜さを恥じるのですか。

相手をよく観察し
フェイントで翻弄しながら
特に賢者の双腕へは第六感と学習力で警戒致します。
見切りを狙い、隙があればカウンターから反撃へ。
わたくし、お人形ですもの。
毒や痛みなどなんともございませんわ。(毒・激痛耐性)
主様へはUCを。

奪った命の数々。
人間の尊厳を踏みにじり、自由と平等を脅かしたこと。
主様、それが、あなた様の罪でございます。
わたくしは、本来、人間のために造られたお人形ですけれど
主様も果ての幸福へ美しく導いて差し上げますわ。



【終焉】
 シャルロット・ルイゾン(断頭台の白き薔薇・f02543)は恭しく屋敷の主人であるエルシークに礼をします。
「ごきげんよう、主様。美を求め、愛すること。それを否定は致しません」
「ああ美しい、やはり貴方はうつくしい。醜いあれもそれも全て片付けて、ああ貴方様の展示品の最初の仕事はそれですね!」
 エルシークの嬉しそうな声が、蠢くそれによって辺り一面から響くように聞こえます。
 シャルロットは思い出します。目の前の主人が美と対にしたと言っていた言葉『醜さ』
「何故醜さを恥じるのですか?」
「え?醜いものは存在してはいけないのです。わたくしは醜いのです。醜いものがあるのです。それだけのことです」
 さも当然のように言い放つエルシーク。シャルロットが聴き、対峙して来た物。いや、それは物ではなく者。
「結構です。これ以上、あなた様とお話をするために参ったわけではありません」
 たとえそれの書き手がエルシークである物語であろうとも、物語の終盤までシャルロットはエルシークの語る美醜を否定しませんでした。
 人間は美醜を併せ持つから美しい。そして美醜の先に必ず訪れるのは、一本の道。眠る様に、苦しませないように。
「シャルロット・アンリエッタ・ルイゾン、手を取り、看取り、尊厳を持って幸福へ至れるようにわたくしは存在しています」
 屋敷、『博物館』の中で奪った命の数々。人間の尊厳を踏みにじり、自由と平等を脅かしたこと。
「主様、それが、あなた様の罪でございます」
 美しく、そこに立つシャルロット。
 おおきなおおきな手がシャルロットをつかみ取ろうと、どこからか現れた手が握りつぶそうと動き始めても、シャルロットの微笑みは変わりません。
「始めましょう。罪ある者に、一撃をもって」
「一体何をおっしゃっているのです?美しい貴方様、貴方様!」
 すでに屋敷は、博物館はエルシークと対峙しているこの場はシャルロットの世界。それは即ち。
「わたくしは、本来、人間のために造られたお人形ですけれど。主様も果ての幸福へ美しく導いて差し上げますわ」
【救済へと手を引く物語】の書き手の手を引くことによって、物語は終わります。

 シャルロットはお人形。そう、わたくしはお人形。
 安らかな眠りを与えるためであれば、最期までもがき苦しみ、自分に爪を立てられ痛みを感じても、受け入れましょう。
 シャルロットの髪を引きちぎる様に動く手を躱し、時には傷を負いながら、シャルロットは自分の役目を果たそうとエルシークの元へ走ります。
「なぜに!なぜに!美しいものと醜いもの、それをただ分けただけなのに!」
 広場の中、中央に置かれた断頭台へと連れていかれる罪人は常に叫びます。乞います。痛みから逃れようとします。
「貴方の罪は既に決まっています。しかし、罪ある者が苦しみの道を歩む必要はありません」
 猟兵たるシャルロットの力。浮かび上がるその刃は一撃のもと、エルシークの思考を切断し、全てを断ち。
 そして、安らかな眠りを一瞬で与える物でした。

【ねむりのおとぎ話】
『こうしておにんぎょうがみんなをねむらせると、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 街のはずれ。即席で作られた18の木箱にそっと手を触れます。
 きっと街の人が即席で作った棺なのでしょう。その数はきっとこれからも増え続けます。しかし、お屋敷から出された人の、最期の夢を見る柔らかな棺はやがて作られなくなるでしょう。
 柔らかな風が真珠色の髪を流れる雲のように揺らめかせ。
 雲が形を変えるように、猟兵の姿もまた、形を変え消えていました。

成功 🔵​🔵​🔴​

コモフォ・グリード
●グリード
〔小さな拍手の音〕
わしも理解るよぉ~その気持ち
素敵な物を見るとわしはねぇ~欲しいと思っちゃう
だから世界を一つに纏めたくなるよねぇ~こんな風に
〔屋敷中が変貌を遂げて辺り一面に<芸術品の群れ>が零れ始める音〕
それとねぇ?わしも実は此処に来た時から決めてた事があるんだぁ~
〔宝玉飾りが鈍く輝く光る様子とあちらこちらから拍手が大きく迫り始める音〕
…ねぇ選んでよ、一緒に来るか、一緒に為るか…皆もキミを待ってるよ?
●コモフォ
(…奴の戯事等…私は理解るつもりは無い…アレは解するだろうがな)
…博物館での手厚い歓迎の数々に感謝しよう…
<礼拝>の時間だ…退場料はこれで払わせてもらう
〔渇いた破裂音の響き〕。



【終焉】
 くすくす。ぱちぱち。
 綺麗な綺麗な屋敷の主人、エルシークの館に笑い声と、小さな拍手が響きます。
 コモフォ・グリード(欲望喰らい・f05224)、コモフォとグリード。
 少女の無邪気さと、妖艶さが幾重にも折り重なったような声でエルシークに語り掛けるのは。
「わしも理解るよぉ~その気持ち。素敵な物を見るとわしはねぇ~欲しいと思っちゃう」
 くすくす、こぷこぷと音がします。彼女はコモフォ・グリード。
 彼女は、グリード。
「ああ美しき人様!わたくしの愛する芸術品!賢き展示品!さあさ、こちらへ」
『さあさこちらへ!』部屋中を這いまわっていた、エルシークの下半身を構成していたそれが一斉に羽を羽ばたかせ
「あ、がっ……」
「あーあ、喋れなくなっちゃったよね。そうだよね。わしが欲しいのは全部なんだよねぇ~」
 世界を一つに纏めたくなるよねぇ~こんな風に。その笑い声は崩れていく音にかき消されていきます。
 花も本も美も全ても、グリードの猟兵の力によって蝕まれ、飲み込まれ。
 ごぽりごぽり。
「ああ不思議!博物館の展示品、あっという間にわしの芸術品になってしまった!」
 わざとらしく手を叩き、自分の手足となった芸術品は手を選びました。辺り一面から拍手が広がります。
 慌ててエルシークが、自分の声を取り戻そうと使い魔を再び生み出そうとしますがばちんぐちゃりと叩き潰されます。
「……ねぇ選んでよ、一緒に来るか、一緒に為るか…皆もキミを待ってるよ?」
 侵食される綺麗な物、美しかった者、エルシークの目の前にあるのはキラキラ光る七つ宝玉の首飾り。
 【物語を侵食する物語】、それは書き手自身をも蝕んでいて、とっくに終わっていた物語であったかもしれません。
 ゴポリと音を立てて、本は飲み込まれました。
 
――ああ、またこれか。コモフォは目覚め、またうんざります。
 奴の戯言も戯事も、所詮はこの時のため。奴の快楽のための積み上げにしか過ぎない。
 物語?本が解けてもまだ目の前に化け物がいる。オブビリオンがいるならまだ私が語ってもいいだろう。
 エルシークといったか、アレがグリードと私を招いた。ならば感謝はせねばあるまい。
 ああどうした?そうか、喋ることが出来ないのか。でもまあ話は聞けるだろう。
「手厚い歓迎の数々に感謝しよう。私、いや、我々はまだ退場料を払っていなかったな」
「……展示品の中に、屋敷の中に礼拝堂でもあれば形にはなったかもしれないが。まあいい。それではこれにて」
 そうして6発の音、薬莢が転がる音すら飲み込み全ては終わりました。

【しんしょくのおとぎ話】
『こうしてはくぶつかんはしょうじょのもの。はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 今回自分の欲望がいくつ満たされたのか、彼女は考えていました。
 美味しいお茶に展示品。蝕むことが出来た数。合わせて13くらいがいいのかなぁ
 今回自分が何回うんざりしたのか、彼女も考えていました。
 悪趣味な展示品に、侵食。そして、どこまでも理解できなかった、屋敷で見てきた13の遺体や生きていた者達。
 合わせて26。数をお互いにあわせることは多分できないかもしれないし、そもそもする必要のないことかもしれません。
 屋敷へ乗り込む人は、数数える少女姿を見ることはできず。
 猟兵は笑い声を残し消えていきました。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘭・七結
美しいを愛で、醜いを廃する
あなた。とても、わかりやすいのね
〝美しいもの〟を求める心
あなたの熱意、よく伝わったわ
問い質すことも、同調もしない
ただ。その情熱がもっと別の形で昇華されていれば
あなたのことを、理解できたのかもしれない

ナユの物語はナユ自身が決める
たとえそれが幸せでも、不幸せでも
ナユの結末を、あなたに渡さない

ナユを形作るもの
ナユの物語の、要
それはもちろん、あなた
願うように。乞うように。『かみさま』と
〝かみさまの言うとおり〟
ナユの姿、あなたにはどう映るかしら

間合いを詰めてフェイント
見えない腕も、結末もなぎ払いながら
『彼岸』と『此岸』の双刀で、彼の者へ終焉を

さあ、バッドエンドを書き換えましょう



【終焉】
「美しいを愛で、醜いを廃する。あなた。とても、わかりやすいのね」
 エルシークの巨大な手が手招きする中、蘭・七結(恋一華・f00421)の声と共に赤い牡丹一花が揺れます。
「あなたの熱意、よく伝わったわ」
「……なんともありがたきお言葉、美しいお姿に美しいお声、その物語。もうすぐ終わります」
 さあさこちらへ、【展示品】へ。
 手招くエルシークに対し、ナユは問い質すことも同調もしませんでした。
 きっと、もしエルシークの抱いていた情熱、美をもとめる情熱がもっと別の形で昇華されていれば
 あなたのことを、理解できたのかもしれない。そう心の中でつぶやきます。
「美しいを愛で、醜いを廃する。あなた。とても、わかりやすいのね」
「あなたは、私の愛とは違う。美とも違う。あなたは、ナユの形を作ることすらできない」
 歌い上げるように、それはナユの口から語られる物語。
 ナユを形作るもの。ナユの物語の、要。中心、そこにいるのは。
 その場にいない何かに手を伸ばし、ナユは求め、乞います。
「ああ、かみさま。ナユの恋慕。求めたいのに、どうしていないの?あか、この屋敷にはあかがない」
 空中に差し伸ばされるナユの白い手。その手を取るものは屋敷にも、この世界にもいません。かつて手を取ってくれた人がいたのでしょうか?それとも、いたのでしょうか?
「壊れているのですか?展示品用に調整が必要ですね……ん?」
 エルシークは気が付きます。飾っていた紫水晶のような綺麗なナユの瞳が、あかくあかく赤く。鮮明な猩々緋の双眸へと変わっていくことに。
「そうね、かみさま。かみさまの言う通りです」
 その姿はユイであり、ナニカを宿したユイでもありました。猟兵である彼女の力。今もなおこの世界を蹂躙するそれを招き、かみさまとして受け入れ。
「ナユの姿、あなたにはどう映るかしら」
 ナユがその手に武器を持った時、【白と赤と鮮血の物語】は終わりを迎えます。そこにいるのはユイなのか。それとも。

 ナユが振るうのは双刀。かつて清廉な宿神が守護した鬼殺しの白刃『此岸』と嘗ての神聖さを奪略された宿主亡き白牙『彼岸』。
 美しい華である此岸が空中に浮かび上がる両腕をするりと撫でると、そこからまっかなまっかな赤が噴き出し。
 「……違う、これは。あかではないわ」
 悲鳴を上げ、のたうち回るエルシークの腕ごと此岸が薙ぎ払えば。
 「あか。綺麗な赤」
 ずたずた。ぼとぼと。ぼろぼろ。
 汚い音や醜いモノはユイの猩々緋の瞳には映っていませんでした。
「バッドエンドを書き換えましょう。ああ、もう終わっているの、ね」
 物語は書き換えられました。ユイと彼の人の手によって。ナユは猟兵として、最期まで結末を手放しませんでした。
 ナユの物語はナユ自身が決める。たとえそれが幸せでも、不幸せでも。

【かみさまのおとぎ話】
『こうしてはながまうとあたりはしずかになり、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 白い髪に美しい花をさす少女が一人。手に取った籠には咲いていた赤い牡丹一花でいっぱいです。
 いつの間にか咲いていたその赤を、少女は転がっていた籠の中に入れていました。
 きれいなきれいな赤は、おそろしい赤を自分の綺麗な赤で塗り替えました。
 もう誰も、黒くなる赤になる者はいません。
 街中にひらひらと舞うのは36輪あった牡丹一花の花びら。
 街の住民が綺麗なそれを見つけ、拾おうとした時。すでに猟兵の姿はなく。

成功 🔵​🔵​🔴​

阿紫花・スミコ
「美・・・ねぇ・・・。」
オブリビオンとわかりあうつもりもないけれど・・・あまりの価値観の違いに少しめまいを覚える。

からくり人形「ダグザ」で攻撃を行いながら、他の猟兵とも協力して戦いを進める。戦闘中はなるべく人形~人形の持つ巨大な棍棒~を敵に印象づけるようにして戦う。

攻撃のチャンスがあれば、そこで一気に畳みかける!

十分に人形を印象付けた後に秘密兵器で奇襲を行う。普段は隠ぺいされているガンハイダー(迷彩化ガンベルト)から精霊銃「アヴェンジングフレイム」を引き抜く。(早業)

「これでもくらえ!」

左手で撃鉄をはじきながら、6発の銃弾を相手に打ち込む。(ファニングショット)



【終焉】
 阿紫花・スミコ(人間の人形遣い・f02237)はダークセイヴァー、オブビリオンが既に世界を支配してきたことをその身で知っています。
 阿紫花は、この世界の理不尽さ、そしてなによりオブビリオン達の悪趣味さを知っていました。エルシークの部屋に飾られている全ては美しく。そして、人間を『美しい』と称し、どこまでも弄び。
「ヴァンパイアに媚び諂っていたオブビリオンもまた、所詮はオブビリオンだった……美、か」
 阿紫花は少し眩暈を覚えていました。最初から分かり合えるなんて思ってはいませんでしたし、そんな考えにたどり着くことも彼女は拒否していました。
 「所詮はオブビリオン、だね」
 彼らと自分達は、主人と玩具、或いはそれ以下。価値観の違いが今、阿紫花が歩む部屋の中で証明されています。
 そして、猟兵として目覚め、辿り着いた世界で手に入れた、ボクの大切な。
「ねえダグザ、これでお終いだ。最後だ。頑張ろう」
 阿紫花の声に返事をするように、ダグザの中の歯車がきしきしと音を立てて動きます。
「おやおや人形遣い様と人形様、これは2人と数えてよろしいのでしょうか?」
 理解できない相手、オブビリオン『往生集め』エルシーク。
「ボクは……展示品にもならない。そして、キミの作った博物館。全てを終わらせる!」
 からくり人形ダグザは何も語らず、巨大な棍棒でエルシークの足元を這いずり回っていたそれを潰します。
「がっあ、こ、声を」
 それと同時に、あんなにうるさく騒いでいたエルシークの声が小さく、そしてうめき声へと変わっていきます。
 【人形遣いの物語】はこれにてお終いになります。
 ダグザの巨大な棍棒が、エルシークの体を殴りつけ、体に引っかかっていたペンとインク瓶が吹き飛んだからです。

 声を上げず、そして正確にエルシークの体や腕を殴りつけるダグザ。
 もはや呻きにすらならない声をあげ、エルシークは空中にも1対の腕を呼び出します。
「ダグザ!キミが決めるんだ!その棍棒で、叩き潰せ!」
 阿紫花の叫び越えにその声を這いずり回るそれは、耳もないのに反応しダグザへその腕が伸ばされます。
 棍棒を奪い取ろうと殴りつけてくる拳、引き裂こうとする爪。それに耐えながら主人である阿紫花の操るままにエルシークを殴り続けました。
 その隙をつくのはとても簡単なことでした。
 ダグザがひきつけ、ボクが倒す。阿紫花はエルシークの元へ近づきます。
 エルシークが攻撃に夢中になり、そしてダグザの勢いに押され腕のへし折れる音を聞きながら。
 光学迷彩によってその銃は隠されていました。精霊銃『アヴェンジングフレイム』を引き抜き、銃口の先にはよろめくエルシーク。
「これでもくらえ!」
 左手で斬鉄をはじきながら、その6発の思いは綺麗な部屋の中の闇を貫きました。

【にんぎょうのおとぎばなし】
『こうして、にんぎょうがあばれ、にんぎょうつかいがうちぬき、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 この話も所詮、暗闇の中で起こった惨劇の一つとして、いつしか忘れ去られていくのでしょう。
 暗闇、黒い雲が街へと近づいていくのを人形遣いと、その傍には動かないからくり人形が1体見ていました。
 少女はからくり人形をそっと撫でます。いくつもの傷、戦闘で損傷した歯車達。
 治すまでにどれだけ時間がかかるかな。
 42時間も、なんてことだったら徹夜になってしまうね。
 そう物言わぬ彼に話しかけ少女はからくり人形をスーツケースにしまい込みます。
 さあ、いこうか。
 そうして、猟兵の姿は消えました。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイシス・リデル
……わたしにはわかるよ
どれだけきれいなものが好きでも、わたしはきたないから
わたしがきれいなものを触ったら、汚れちゃうから
だからせめて、きれいなものを守れたらいいなって
そう思ったから、わたしはここにいるの
あなたは……どうして、そうなっちゃったのかな

わたしに虫の猛毒は効かない筈だから、気にせず突っ込んでいくよ

集めてきた展示品を全部、わたしの武器に組み込んでおっきく、つよくするよ
剣でも槍でも、なんでもいいの
武器じゃなくったっていい、よ
重さも、硬さも、鋭さも
足りない分は、わたしの身体で補ってあげるから
あなたが今まで弄んできたきれいなもの、全部、あなたにぶつけるよ!



【終焉】
 アイシス・リデル(下水の国の・f00300)
 綺麗な綺麗なお屋敷の、一際綺麗なもので溢れた主人、エルシークの部屋。
「……わたしにはわかるよ。どれだけきれいなものが好きでも、わたしはきたないから」
 エルシークがその声には気が付かず、ああ黒いと手を鳴らしはしゃいでいます。
 アイシスは思います。この世に生まれてきたときの自分、姿、今の自分、欲しかったもの。
 それが今、アイシスのキラキラと光るオレンジの瞳には映り込みます。宝石に、フリルいっぱいのドレス。真っ白な肌で、微笑むお姫様のような【展示品】
 アイシスはきれいなものに触れるのを何より恐れていました。自分が触れたら、それはうつくしくなくなってしまう。
 きれいなものは、たいせつに。きたないじぶんでも、わかること。だから、それを守れたらいいなって。
「きれいなものを守りたかった。そう思ったから、私はここにいるの」
 アイシスが博物館に足を踏み入れた時、きれいなものがどうなっていたのか。
 全てを目にし続けたアイシス、きれいなものを集めてきたアイシス達。
 じゃらり、じゃらりと音を立てアイシスの元にアイシス達が集まります。集めてきた展示品。
 きれいだったものを、弄び、絶望させ、苦しませ、魂のおくのきれいなものすら蹂躙し。
【美しさの真価を問う物語】、そんなものを書いてまた、きれいなものを汚すのか、辱めるのか。
 アイシス達がアイシスの元に展示品であった武器や拷問具を渡します。
 「おやおや、黒い方、お気に召しませんでしたか?確かにあの刺し方では綺麗ではありませんでしたね。ああ申し訳ございません」
 エルシークが申し訳なさそうに頭を下げ、それと同時に床に蠢くそれから声が響きます。
「あなたは……どうして、そうなっちゃったのかな」
 アイシスの手には最初に抜きとった槍が一本。猟兵の力により、アイシスの『スプラッタースプラック』に組み込まれるかのように分解され。
 ぐさり。アイシスは一匹を貫きました。
「わたし、おこっているんだよ。だから、あなたはゆるさない」

 喋る手段を失ったエルシークは、その身を怒りに震わせ次々と召喚していきます。
 それはかみつき、抉られた肩からは焼けつくような痛みとともに侵食されていく何か。
 きっと毒なのかもしれない。そう思いながらも、アイシスの歩みは止まりません。
 屋敷の中でくるしめらててきたうつくしいもの。その全て。重さも、硬さも、鋭さも。
 足りない分は、わたしの身体で補ってあげるから。
「これが、あなたの弄んできたきれいなもの!」
 アイシスの怒りは一つの巨大な槍、正確には寄せ集めれた一撃がエルシークを押しつぶしました。

【びあつめのおとぎ話】
『こうしてくろいむすめがむすうのぶきをつかい、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 屋敷から次々に立って歩ける者や誰かの手を借りて出てくる者、そして屋敷に乗り込む一団が見えます。
 持ってきた51の武器は博物館、いや、屋敷の入り口にそっと置いておきました。
 その分だけ魂は救われ、その手には形はなけれども、猟兵の心の中にはキラキラ輝く魂が。
 屋敷の周りで人があわただしく、これから未来に向かって動き始めるのを見つめ。
 猟兵の姿はもうそこにはいませんでした。

成功 🔵​🔵​🔴​

明智・珠稀
(UC【どちらがお好みですか?】で女明智と共に)
ついにお会いできましたね、館主。
もっと違う世界で、違う条件でしたら
貴方と美について話し合うことも出来たかもしれません…
残念です。
貴方の物語のラストは書き換えてみせます。
そして、私達猟兵の始まりの物語としてみせましょう…!

■戦闘
男明智は妖刀を、女明智はサウンドウェポン【三味線】にて激しい演奏を
「少々この館には不釣り合いかと存じますが…これが私の生きる世界の奏でる音です、ご了承ください、ふふ」
妖刀で演舞を舞うように敵へ攻撃を仕掛ける
敵の攻撃には【オーラシールド】で防御
筆を折るかの如く、その大きな手を狙い
「もう収集する気力もなくして差し上げます…!」





【終焉】
 明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)と猟兵の力で傍らに寄り添い歩く女性の明智。
 うつくしい、うつくしい、とうっとりとした声が部屋の中に響く中、二人はエルシークの元に膝をつき、恭しく礼をします。
「ついにお会いできましたね、館主」
 同時に響く声、エルシークの歓喜は止まりません。
「ああ、ああ!何故二人、そして二人も来ていただけたのか!さあさ、さっそく舞ってください」
 明智達に警戒心を抱いていないエルシークに二人は微笑みます。
 女性の明智の手にはいつの間にか見慣れない、ヴァイオリンとも違う、木と皮でできたものが握られています。
 これはいったい、と館主が尋ねると、女性の明智は微笑みます。
「これは三味線、と申します。遠き遠き世界から、私の元へ参りました」
「そう、私達の舞。旅をし、美しい物を探し出し、ようやく見つけてまいりました」
「それでは舞と奏でられる音楽を、館主に捧げます」
「少々この館には不釣り合いかと存じますが…これが私の生きる世界の奏でる音です、ご了承ください、ふふ」
――もっと違う世界で、違う条件でしたら。
 貴方と美について話し合うことも出来たかもしれません。残念です。
 二人の明智は思います、しかし【真の美を求めあう物語】のラストが、血と肉と、そして人々の嘆きで終わるのであれば、それは美ではありません。
 べべん、べべん。
 聞いたことのない音にエルシークが拍手をした時、明智の手にしていた妖刀【閃天紫花】の刀身が、紫色に輝きます。
 それは、物語の終焉を告げる舞。

 三味線の形状をしたサウンドウェポンは、明智達の魂、眠れる美を増幅させ激しく鳴り響きます。
「お、お二方。その音その音は一度!」
 ようやくエルシークは気が付きます。二人から感じ取れるオーラ。自分を、屠ろうとしている。
 とっさのことに召喚し明智を切り刻もうとした蒐集品の剣を妖刀ははたき落とし、叩き折り。それはまるで演舞のようでありました。
 まず右腕、そして左手、絶叫と何かが噴き出す中、女性の明智の激しい演奏の中。
 混沌とした空間の中、明智は穏やかに微笑み、そして
「「もう収集する気力もなくして差し上げます……!」」
 響く二つの声、消えていく叫び声。
 その演奏を怯えながら見ていた【展示品】達。
「もう、ご安心ください」

【まいおどるおとぎ話】
『こうしてふたりのおどりこがよにもうつくしいまいをみせ、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 まいというのはダンスなのかな、そう思い女の子は絵本を閉じます。
 お父さんとお母さんと一緒に久しぶりにお出かけすることが出来て女の子はとても幸せでした
「まあなんて綺麗な方なのかしら!」
「是非とも今度、あの屋敷で舞踏会を開いた時に踊りましょう!」
 家族は皆、黒髪に紫の瞳の男性の周りに人だかりが出来ていることに驚きます。
 別の機会にと妖艶さを感じさせる笑みを浮かべ、去っていく男性。
 女の子はこっそりあとをつけます。いっぽ、にほ、さんぽ。
 57歩、女の子が彼に近づいた時、風が吹き思わず目をこすります。
「……あれ?」
 その後ろ姿はなく。猟兵は美を残したまま消えていました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜


ゴシュジンサマ、いやエルシークさんだったか。
悪いけどアタシとアンタの趣味はやっぱ合わねーわ。
自由を奪われ死に向かう時の輝きよりも、
生きる希望に満ちた輝きの方がアタシは好きだねぇ。
だからアンタの展示品の一つになるのも御免だね!

サイキックの電撃を両の拳に纏いながら前進する。
周囲の生存者が気になるけど、
変に意識すると危険が及びかねないので
まずはエルシークに集中。
受ける攻撃はなるべくサイキックブラストで迎撃するが、
少々の撃ちもらしも許容範囲。【激痛耐性】で耐える。
歩みながら聖句を唱え、
エルシークの眼前で【黄泉送る檻】の発動を完了させる。

エルシークの最期を見届けたら
すぐに生存者の救護を行うよ。



【終焉】
「街の人に美しいモノはもう残っていないと気にはなっていましたが、やはりそうでしたか!ああその姿のほうがお美しい!」
 自分の目の前で嬉しそうに、【展示品】の腕を軽くつかみ、ぽいと放り投げながらエルシークの笑い声が響きます。
 はあ、とため息をつきながら数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)は、もう媚び諂った笑みを浮かべることはありませんでした。
「ゴシュジンサマ、いやエルシークさんだったか。悪いけどアタシとアンタの趣味はやっぱ合わねーわ」
 この部屋、屋敷。それは美しい物で埋め尽くされていましたが、とてもそれは数宮にとって息苦しく、見るに堪えがたい物でした。
 部屋の隅で、美しいドレスを纏った【展示品】をちらりと眺め、そして、再び笑います。この部屋は息苦しすぎる。どこまでも、どこまでも駆けてきた先がこんなものかと数宮は呆れ、そして叫びます。
 「だからアンタの展示品の一つになるのも御免だね!」
 数宮の好きな物、愛していると綺麗だと思いたい物は自由を奪われ死に向かう時の輝きよりも、生きる希望に満ちた輝き。いくらエルシークが光るものをあつめても、美しい人を呼んでも数宮の求める綺麗なモノには決してなりません。
【真実へと駆ける】物語は、たどり着いた真実をきにくわんと猟兵が自ら破り捨てることにより終わります。

「これはこれは仕方がない。それではまず、標本にして観察することから始めましょう」
 エルシークの蒐集品、かつて名のある騎士達が彼に立ち向かい、そして奪い去った剣が空中を舞います。前進する数宮の手は猟兵の力により白く輝き、その体を貫こうとしてくる剣をその稲妻ではじき返します。
 怯えるように、息をひそめてこちらを見る【展示品】として置かれた彼女達。
 目が合った時、再び数宮は決意します。
 これ以上誰も、誰の心も魂も傷つけるわけにはいきません。
 一歩一歩近づきながら、数宮は唱えます。それは聖なる句。誰にも汚せない言葉。
「どうして、なぜわたくしのもとへ来てくれないのです!」
 業を煮やしたのか、自分の元に近づいてくる数宮にエルシークが手を伸ばした瞬間に、罰がくだされました。
「あ、熱い、ああ、焼け。あああああああああ!!!」
「ああ痛いだろうさ。お前が今まで皆に味合わせてきた、理不尽に押し付けてきた痛みが返ってきただけ」
 それは閃光の檻。光り輝く檻はエルシークの体を閉じ込め、そして、握りつぶしました。

 消えていくエルシーク。数宮はその姿をちらりと眺め、駆けていきます。
 部屋の片隅の、そして屋敷中の【展示品】を助けに行くために。 

【はやき物語】
『こうして、だれよりもはやく、すべてのためかけぬけたひとのてにより、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 部屋から助け出した女性から、礼を言われ渡された宝石で豪華に飾られたネックレスが今その手にあります。
 宝石の数、数えてざっと60個。ずっしりとした重さに、彼女は苦笑します。
 これはちょっと自分には、これから先駆けていく身には重すぎる。
 そういえば、と自分に不愛想ながら対応してくれた女主人を思い出し、その店の割れた窓からそっとそれを入れ、石畳を彼女は駆け抜けます。
 曲がり角を勢いよく曲がった時、猟兵の姿は消えていました。

成功 🔵​🔵​🔴​

向坂・要
お前さんは本当にヒトをアイしているんですねぇ…

ただ
アイし方が違うだけで

それはモノへのアイ
どこまでも一方的な
それが善か悪か
そんなものそれこそ千差万別でオレ1人の物差しで決めていい事じゃぁねぇでしょう

好きか嫌いか、てのはありますがね

「こいつはご丁寧に。歓待、いたみいりますぜ」

折角だ
その目に焼き付けて逝きなせぇ

大いなる精霊の加護を受け
白銀の毛並みの大狼は敢えて部屋の装飾品を傷つけぬ様、囚われ人の棘を砕く様に立ち回り

魔力の腕に対するは加護を受けた爪と牙

冥土の土産にと
傷跡で塞がれた瞳を開ければ黄水晶の瞳
陽の加護が導くは暉炎の業火

死者への手向け
葬送の炎

見切り
第六感
属性攻撃
フェイント
オーラ防御
毒使い



【終焉】
 向坂・要(黄昏刻・f08973)は、菫星蒼石の左目で招かれた部屋を眺め、ゆっくりとそこに飾られた展示品を眺めます。
「ああそのお声、最初に来てくださった方ですか!さあさこちらへ、どのような展示品にしようか、その物語を書こうか迷っておりました所なのです!」
 目の前に突然現れ招く手に、向坂は答えます。 
「こいつはご丁寧に。歓待、いたみいりますぜ」
 綺麗に並べられ、見る者を圧倒させるほど、全てがつまった部屋の中、向坂はゆっくりと歩みます。
 お前さんは、本当にヒトをアイしてるんですねぇ。それが、彼の中でのエルシークの評価でした。
 惨劇も慟哭も、憎しみや悲しみも、今まで目にしてきたものはなく。
 きっとそれはエルシークのアイの結晶なのかもしれない、そう思いながらついに向坂はエルシークの元へ。
「どうも、いいご趣味のようで、お招きありがたきに存じます」
「ありがたや!貴方様のような方に褒めていただけるとは!ああ、あそこらへんのモノはこの部屋にはもう必要ないですね。美しい貴方様がいらっしゃいますから!」
 手を叩き、歓喜するエルシーク。
 善であるか悪であるか。向坂は最初からエルシークを断罪する気はありませんでした。
 物をいかにアイするか。そんなものそれこそ千差万別でオレ1人の物差しで決めていい事じゃぁねぇでしょう。思わず心の中の自分に問いかけます。
「ああ、言い忘れてましたがねえ」
 部屋の空気の流れが変わっていきます。
「折角だ。その目に焼き付けて逝きなせぇ」
 【達観しながらそれでも守る物語】。それは達観すると勝手に書きこまれた向坂が大精霊の加護に覚醒し白銀の毛並みの大狼へと姿を変えたことによって終わります。
――誰が、達観なんぞしましょうかぃ。好きか嫌いかってことぐらいわかってもらえなかったんですかね?
 おおきなおおきな狼は、部屋の中を駆け立ち回ります。
 飛んでくる腕を避けながら、そして敢えて部屋の装飾品を傷つけないように。
 このままあのオオカミと、『ごしゅじんさま』がたたかえば、倒れてしまえば、あの棘で貫かれてしまう。
 震える展示品の前にしゅっとオオカミはたち、その棘を食いちぎります。
 ぐるる、とうなり声をあげ、彼女達が見たのは隻眼のオオカミ。しかし、そのうなり声はどこか優しい響きで。
 彼女達の姿が部屋の外へと消えていくのを見て、その牙と爪で狼はエルシークの腕を切り裂き、肉片に変えます。
「ああ!ああ!美しき者!美しい人!何故、どうして、いたい、いたい、痛い!」
 全ての手をなくし悶えるエルシークの眼前に、隻眼の大狼は喉笛を食いちぎろうととびかかりました。
――そうだ、冥土の土産をみせてやしましょうかねぇ。
 傷でふさがれた目が、さらなる痛みにもはやびくびくと痙攣するしかないエルシークを見つめます。
 陽の加護をうけ、形となった黄水晶の瞳。
 死者への手向けとして贈られる葬送の炎、暉炎の業火が全てを焼き尽くすまで、大狼は喉首に噛みついたままでした。

【そばにいるおとぎ話】
『こうしてみんなのそばにいることにしたものはみんなのためにとわらい、はくぶつかんはもとのおやしきにもどりました。おしまい。』
 ものっていつかこわれちゃうじゃん。男の子は絵本を投げつけるようにして男の子はたちあがります
 こらぼうや、いいかい。本やこの器だって、大切にしていれば心が宿るんだよとおばあさんはいいます。
 おばあさんは、おばあさんのおかあさんが買ったという人形を見せます。とても綺麗に磨かれています。
 78年間、これは私達の家を見守ってくれたんだよ。
 じゃあもうすぐお人形さんもこころをもつの?
 ああそうだよ、そして、見守ってくれる。
 大切そうに棚の上に、人形を展示する老女、本を拾い直す少年。
 開け放たれた窓から見えたその光景を眺めていた猟兵の姿はなく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月17日


挿絵イラスト