8
最愛の妹桜の面影を訪ねて……

#サクラミラージュ #ひときわ傷ついた影朧 #断章作成後からのプレイング受付です

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サクラミラージュ
#ひときわ傷ついた影朧
#断章作成後からのプレイング受付です


0




「皆さん、ようこそお集まりくださいました。新米グリモア猟兵の、土御門泰花(つちみかど・やすか)と申します。よろしくお願い致します。……さて、早速本題です。この度は、少々変わった依頼かも知れません。」

 泰花は、優雅に一礼して猟兵たちへ挨拶すると、すぐに説明に移った。

「この度は、サクラミラージュでの出来事を察知したのですが……何と、雑踏であふれかえる帝都のただ中に、『ひときわ傷ついた影朧』が現れてしまうのです。」

 本来、影朧は皆、多かれ少なかれ傷ついて生まれる「弱いオブリビオン」だ。
 しかし、その中でもこの影朧は特にはかなく、弱く感じられるという。

「この影朧は、名を『姉桜』紅桜華と、おっしゃるようです。もともとは2本寄り添うように咲いていた桜の木の片割れで、数多の影朧を転生させてきたようなのです。……です、が。」

 泰花の柔和な表情が、少しばかり陰を帯びる。

「いったいどんな不幸に見舞われたのでしょうね……。その桜の木たちはやがて離れ離れに、寄り添ってきた仲を理不尽にも引き裂かれてしまったようなのです。」

 そして今回、その片方である『姉桜』紅桜華のみが、影朧となったようだ。

「この影朧は、大変強い『執着』を抱いている様子です。具体的には……『生き別れた妹桜と咲いていたあの地に戻り、面影を探したい』、と。そこで、折り入って皆さんに頼みたいことがあるのです。……この影朧とまずは交戦していただくところまでは、常の通りなのですが。」

 泰花の説明通り、常ならば帝都を脅かす影朧は即座に斬るのが掟。しかし、と泰花は続ける。

「今回ばかりは完全撃破するのではなく、帝都桜學府の目的である『影朧の救済』を優先するべきと判断致しました。この影朧は、そもそも特別にはかなく、弱く感じられる存在です。ですからどうか撃破ではなく無害化を意識していただいて、その上で、この影朧の『執着』を……皆さんのお力とお知恵にて、叶えて差し上げていただきたいのです。」

 この影朧は、倒してしまったからといって即死する訳では無いものの、もう長くはもたない様子だそうだ。そして最終的に「執着」を叶えた影朧は、光りながら消滅していくという。

「一般的に考えまして、影朧を連れて帝都の中を行けば大抵の皆さんは混乱し、大きな騒ぎとなってしまいましょう。猟兵の皆さんには、それを何とかしてなだめていただいて、影朧をできるだけ脅かさないようにしながら、『執着』が叶う場所へ……『妹桜と咲いていた地』へ、連れて行ってあげていただきたいのです。」

 泰花は、背後に映し出したサクラミラージュの風景を1度だけ振り返り、慈しむような眼差しで猟兵たちへ告げた。

「どうか、この影朧の『執着』を叶え、その束縛から解き放ってあげてください。……どうぞ、ご武運を。では、サクラミラージュへ……帝都の街中へ、転送致します。よろしくお願い致します。」


月影左京
 こんにちは、または初めまして。新米マスターの月影左京と申します。よろしくお願い致します。

 今回も、サクラミラージュでのお話です。
 悲しい運命の果てに影朧となってしまった桜を『妹桜と咲いていた地』に、皆さんのお力とお知恵を駆使して、無事に導いてあげてください。そして『妹桜の面影を探したい』という願いを、果たさせてあげてください。

 第1章は、帝都のただ中に突然現れてしまった影朧、「『姉桜』紅桜華」との戦いです。
 泰花は「撃破ではなく無害化を意識して欲しい」と伝えていますが、普通に倒していただければ自然と無害化します。

 第2章は、無害化した影朧を連れて帝都を歩きます。
 人々のパニック等を何とかしてなだめていただいて、影朧をできる限り脅かさないようにしながら、『執着』が叶う目的地へ向かっていただきます。

 第3章は、無害化した影朧の「執着」――妹桜と咲いていた地に戻り、妹桜の面影を探したいという願い――が叶う目的地でのひと時です。
 桜がよく見える古めかしい建物や庭園がありますので、影朧と最後の時を過ごしてあげてください。
 妹桜とはどんな思い出があったのか、どれほどの永い時を共に過ごしたのか……といった思い出話を聞いてあげながら辺りを散策したり、妹桜に似た桜を共に探してあげたり……色々できることはあると思います。

 皆さんの心のこもったプレイングをお待ちしております。
 私も精一杯、リプレイを書かせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。
47




第1章 ボス戦 『『姉桜』紅桜華』

POW   :    紅桜抽出
【対象一人の罪や後悔を抽出した桜茶】を給仕している間、戦場にいる対象一人の罪や後悔を抽出した桜茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD   :    紅桜手鞠
小さな【紅桜でできた球体】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【罪と記憶を浄化する揺り篭】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    相枝相遭
【対象の罪を吸い開花する紅桜の枝】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【罪の意識】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「きゃぁ……!?」

帝都の街中、それは突然に現れた。数々の悲鳴が響き、人々は恐れ逃げ惑う。

「……妹は、妹は……?」

雑踏であふれかえる帝都に突然現れたのは、ひとりの影朧。しかし、どこか様子が違う。

いかにもはかなく、弱く感じられるその影朧―― 『姉桜』紅桜華は、哀しみに満ちた瞳で、あちらへ、こちらへと、ふらり、彷徨う。

「……妹のいた『あの場所』……どこ……なの……?」
リンネ・ロート
こんなとき私はどうすれば……
そうだ、クルスならなんとかできるかもしれません
オルタナティブ・ダブルでクルスを呼び出し、接触を図らせましょう

(以下、人格・口調:三田クルス)
もし、君は紅桜華さんだね?
何かを探しているようだけれど……いや、誰かかな?
だとしたら私なら力になれるかもしれない
愚かな提案だと思うが、どうだろう
私も一緒に探させてもらえないだろうか?
この雑踏の中から探し出すのは困難だろう
一度静かな場所で落ち着いてみることを私は提案するよ
さあ、私の手を取ってくれたまへ
はぐれてしまうといけないからね

だますようで心が痛むけれど、人目のつかない目立たない場所へおびき出すよう促してみようか



(こんなとき、私はどうすれば……。)

 騒然とする街中に降り立ち、リンネ・ロート(愚かな星読み・f00364)は戸惑いながらも影朧の為に成すべきことを考えた。

(……そうだ、クルスならなんとかできるかもしれません。)

 クルスとは、多重人格の彼女の中にいる「もうひとりの自分」のこと。リンネは早速【オルタナティブ・ダブル】を発動し『三田クルス』という女性を呼び出した。

「もし、君は紅桜華さんだね?何かを探しているようだけれど……いや、誰かかな?」

 クルスは速やかに『姉桜』紅桜華へと語りかけた。紅桜華は、その声に足を止めて振り向く。

「……誰……?私の妹は、どこ……?」
「ああ、名乗り遅れたね。申し訳ない。私は三田クルス。私なら紅桜華さんの力になれるかもしれない。愚かな提案だと思うが、どうだろう?私も一緒に探させてもらえないだろうか?」

 クルスは積極的に対話を試みた。しかし、「ひときわ傷ついた影朧」である紅桜華は、少しずつ後退して行く……その瞳には、怯えのような色が見えた。

「……何故?……私に、どうしてそんなに近寄るの……?」

 紅桜華は、相手の積極的な好意の理由が分からない恐怖からか、クルスとリンネに向けて小さな紅桜でできた球体を放った。 しかし、2人はさほど苦労することなく避けることに成功した。事前の説明通り、本当にはかなく、弱い影朧だと実感するリンネ。

「怯えなくて良いんだよ。私は……いや、私たちは、紅桜華さんの妹さんを探す力になりたくて、来たのだから。その切実な願いを、是非とも叶えてあげたくて。」
「……私の、願いを?……そう、なの?……信じて、良いの……?」

 紅桜華は、クルスの礼儀と誠実さに、徐々に警戒を解いていった。それを見て、クルスはさらに続ける。

「この雑踏の中から探し出すのは困難だろう。一度静かな場所で、落ち着いてみることを私は提案するよ。……さあ、私の手を取ってくれたまへ。はぐれてしまうといけないからね。」
「……。」

 クルスが述べた手を、紅桜華はしばらく見つめていたが……やがて、そっと手を重ねてきた。

(だますようで心が痛むけれど、人目のつかない目立たない場所へおびき出すよう促してみようか……。)

 クルスは優しく紅桜華の手を引いて、人目をはばかることのできそうな場所を探した。紅桜華は、ひとまずは大人しくついてくる様子だ。
 リンネは、その間にどうしても混乱し逃げ回る帝都の人たちを、礼儀作法をわきまえた振る舞いでなだめ、落ち着かせながらクルスの後を追うかのように移動していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

李・玉明
この桜は……妹御と逸れてしまったのじゃな。
どうして離れてしまったのか、わからないけれど……妾も姐々たちがいるから、離れ離れになるその辛さは、よくわかるのじゃ。
……よし! 妾もお手伝いするのじゃ!

現れたばかりで混乱している様子なのじゃ。
まずは、落ち着かせるのじゃ。
暖かい歌を奏でて、聴き入ってもらうのじゃー。
(選曲は、親と子を歌うバラード。長閑な村で産まれた子を慈しむ、ゆっくりしたテンポの歌)

こんにちはなのじゃ、紅桜華!
お主のいきたいところまで、妾たちが案内するのじゃ!
だから、安心してほしいのじゃよ。

(他の方との絡みやアドリブは歓迎します。できるだけ優しく語り掛けます。よろしくお願いします)


涼場・応為
※共闘、アドリブ、NG含めてなんでも歓迎です。


いざって時用に現地に行く前に木工用ボンドを買っていこう。
桜の精の自分も桜部分の防腐応急処置に便利だし。

さて文房具屋から出てきたところ、既に確保されている様子。
今から斬りかかっても旨くいっているところに水を差すだけかな。

だったら探偵らしく口八丁で勝負。

「今、小耳に挟みましたが」と近づく。

「私探偵をやっております涼場と申します。今ちょうど広告のために無料キャンペーン中なので、ぜひその捜索お手伝いさせてください。損はさせません」

と名刺を渡しながら伝え、こっそり他の猟兵さんに目配せをしておく。

目的は信用獲得と同行。ダメだったら一時避難しよう。



(どうして離れてしまったのか、わからないけれど……妾も姐々たちがいるから、離れ離れになるその辛さは、よくわかるのじゃ。)

 事前説明を聴いて、李・玉明(豪華絢爛西欧天女・f32791)は思案する。親しんだ仲間、それも絆の強かった仲ほど、別離の辛さは増すものだ。

「……よし! 妾もお手伝いするのじゃ!」

 考えても、それだけでは影朧は救えない。玉明は意を決して行動に移すことにした。

 その頃、現場近くの文具屋に、涼場・応為(驚天推理の脳筋探偵・f27148)がいた。

(桜の精の自分も桜部分の防腐応急処置に便利だし……。)

 応為は、自身も桜の精ということから、万が一の時に何らかの役に立つだろうと、木工用ボンドを買い求めていたのだ。

 応為が店を出た頃、玉明も同じ現場へ辿り着いていた。
 そこは、影朧の突然の出没に人々が浮き足立ち、騒然としていた。いくらかは先行してなだめた猟兵がいるとはいえ、それで人々全員が落ち着いた訳でもない。

 2人はそれぞれ人々に対し、優しさを発揮したりうまいこと情報収集したりしながら、人々をなだめつつ、影朧―― 『姉桜』紅桜華の居場所を割り出した。

 紅桜華は、人目をはばかるような、街の隅に佇んでいた。しかし、やはり時間が経つにつれ、「執着」に突き動かされて……やがてその場を離れ、再び1人で妹桜のいた場所へ向かおうと踏み出した。

(ふむ。現れたばかりで皆混乱している様子なのじゃ。まずは、落ち着かせるのじゃ。)

 玉明は、影朧も人々も落ち着かせるため、温かな歌曲を選び、【ショウ・マスト・ゴー・オン】を発動した。奏でられるのは、親と子を歌うバラード。長閑な村で産まれた子を慈しむ、ゆっくりしたテンポの歌。
 猟兵にだけは、その行動を阻害しないよう気をつけつつ、影朧と人々を惹き付けるように歌を紡ぐ。
 やがて人々は影朧よりも玉明の歌に心を奪われ、いわゆるストリートミュージシャンのようにパフォーマンスを披露する彼女の前へ集まって足を止め始めた。
 独りでどこかへ向かおうとし始めた紅桜華も、玉明の歌声に心を強く震わせられて足を止めた。

(今から斬りかかっても旨くいっているところに水を差すだけかな。)

 応為は、そんな風に考えた。
 本来であれば、影朧である紅桜華を1度は「倒し」、無害化しなければならない。だから、戦闘する必要があるのだが……。

(だったら、探偵らしく口八丁で勝負に出ますか。)

 できる限り、まさに偶然、先ほどの猟兵とのやり取りを聞きましたという風に装って、応為は紅桜華へ歩み寄る。
 玉明の歌唱が終わり、人々が彼女に拍手したり投げ銭をしたりしている間に、応為は紅桜華へ話しかけた。

「今、小耳に挟みましたが……」
「……!?……誰?……何を、聞いたの……?……どうして、近寄ってくるの……?」

 紅桜華は、不意打ちされた思いなのか、またしても怯えて後ずさった。

「私、探偵をやっております涼場と申します。今ちょうど広告のために無料キャンペーン中なので、ぜひその捜索、お手伝いさせてください。損はさせません。」

 応為は、それでも対話を試みてみた。名刺を渡しつつ、うまいこと人々の間を抜けてこちらを伺っていた玉明へ、目配せする。玉明もそれを察知し、頷いた。

 しかし、紅桜華はそれでも、突然現れた新手の猟兵である応為を前に、不信感と恐怖を抱いているようだ。応為の罪の意識や後悔を汲み取り「応為の罪や後悔を抽出した桜茶」を彼女本人へ差し出した。

「……それなら……これ、どうぞ。楽しんで飲んでくれる……?」

 楽しんで飲めなければ、行動速度を5分の1に抑制されてしまうユーベルコードだ。しかし、応為には、見た目は愛らしい桜茶であっても、そこから過去の罪の意識や後悔を想起させられるお茶を楽しむのは……。
 応為は考え込みそうになって、そうだ、と【天気輪の柱(カンパネルラ)】を発動させた。応為が考え込む時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させることができるようにしたのだ。

「……楽しめないの……?」
「ん?ああ、いえ……いただきます。ありがとう。」

 応為は、考え込むのをやめないまま、ひとまず桜茶を紅桜華から受け取って時間稼ぎを試みた。
 応為が紅桜華の前で考え込んでいる間に、今度は玉明が紅桜華へ接触を図った。

「こんにちはなのじゃ、紅桜華!」
「……!……あなたも、誰、なの……?……どうして、私に近寄るの……?」

 明朗快活というよりは、努めて優しく声をかけたつもりの玉明だったが、それでも紅桜華は警戒してしまった。紅桜華は、玉明の罪を吸い開花する紅桜の枝を手に取り、玉明へ露骨に攻撃を放った。

「!」

 玉明は咄嗟に魔力を溜めると空中浮遊してかわした。

「お主のいきたいところまで、妾たちが案内するのじゃ!だから、安心してほしいのじゃよ。」

 着地しながら、玉明は再度紅桜華へ語りかける。

「……あなたも、さっきの人と同じことを言うの……?」
「そうじゃ。妾たちはお主を助けたくて集まって来てるのじゃ。この後も、まだお主を何とかしようとして集まってくる者がおるじゃろう。」
「……。」

 玉明の言葉を、紅桜華は不信感と信頼感との間に瞳を揺らしながら聞いていた。

「……。ご馳走様でした、紅桜華さん。さて、私たちにあなたの妹桜の面影を探すお手伝いをさせてください。」

 何とか桜茶を飲み干した応為も、器を返しながら紅桜華と玉明の傍へ近寄り、信頼を得ようとする。

「……ありがとう。」
 紅桜華は、玉明と応為の好意を信じ、そう、言葉を紡いだ。

 ――しかし、忘れてはならない。紅桜華の「執着」を叶えるには、まずこの段階で紅桜華と戦い、「倒す」必要がある。
 そうしなければ、紅桜華を無害化することはできず、「執着」の地へ誘導しようにも困難な事になってしまう。

 この段階で、紅桜華へ「倒す」ための攻撃をした猟兵は……まだ、誰もいない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アディリシア・オールドマン
ふむ。話はわかった。死なぬ程度に叩き潰せばよいのだな?
ならば、ダフネの出番はないな。お前では死ぬまで殺しにかかる。
『そう、だね……。でも、気を払ってね、アディ。彼女はとても弱ってるみたいだから』
うむ。

では、ダビッドソンを駆って轢くとしよう。
『轢殺ぅ!?』
何やら茶を飲ませようとするようだが、知ったことではない。
私の動きが遅くなろうと、ダビッドソンの足(車輪)は止まらんぞ。
なに、この女も影朧というオブリビオンならば、一撃で死ぬことはないだろうたぶん。
『何か考えはあるんだよね!?』
ない。あとはユイミンや他の猟兵たちが何とかするだろう。
私の仕事は、敵を無力化することまでだ。
(アドリブその他歓迎します)



「ふむ。話はわかった。死なぬ程度に叩き潰せばよいのだな?」

 事前説明を聴き、アディリシア・オールドマン(バーサーカーinバーサーカー・f32190)は端的にまとめた。

(ならば、ダフネの出番はないな。お前では死ぬまで殺しにかかる。)
(『そう、だね……。でも、気を払ってね、アディ。彼女はとても弱ってるみたいだから。』)
(うむ。)

 多重人格の彼女は、「もう1人の自分」であるダフネと言葉を交わす。
 ……ここまでは、なるほど頼もしい歴戦の猟兵たる風格を感じさせるやり取りだ。
 しかし。

「では、ダビッドソンを駆って轢くとしよう。」
(『轢殺ぅ!?』)

 思わずツッコミを入れるダフネ。それでもアディリシアは構うことなくダビッドソン――水さえあれば如何様にも走り続けてくれる鋼鉄の騎馬にまたがった。

 転送を受けて速やかに現場に着いたアディリシアは、何人かの猟兵に囲まれて戸惑いながらも佇む影朧『姉桜』紅桜華を見つけた。
 人目をはばかるようなその場所に、これまでの猟兵たちの奮闘もあって、どうやら――街中にしては、だが――戦いやすそうなところにいる。
 しかし、紅桜華は敏感にアディリシアに気づいた。

「……!?……誰?……あなたも、私の『願い』を助けに……!?」

 だが、ダビッドソンに騎乗したアディリシアの勢いは止まらない。
 慌ててアディリシアの罪や後悔を抽出した桜茶を振舞おうと支度をする間に……。

「……よく考えても分からんな。」

 アディリシアは思考を放棄し、【Daredevil(デアデビル)】を発動させた。
 可愛らしい桜茶を差し出そうと給仕の支度を始める紅桜華を、一気に轢く。それは、なかなかの重量がある攻撃だ。

「……きゃぁ!?」

 紅桜華は、可憐な悲鳴を小さくあげると地に伏した。

「私の動きが遅くなろうと、ダビッドソンの足(車輪)は止まらんぞ。」

 紅桜華の差し出そうとした桜茶をも轢いたアディリシアは、行動速度を落とされてしまっているが、アディリシアはまったく動じることなく、ダビッドソンを駆った。

(なに、この女も影朧というオブリビオンならば、一撃で死ぬことはないだろうたぶん。)
(『何か考えはあるんだよね!?』)
(ない。)

 慌てふためくダフネの問いには、簡潔明瞭な答えを返すアディリシア。さっきまで思考停止していたのだから致し方ないのだろうか……ダフネは呆れたのか、黙してしまった。
 そんなやり取りをしているうち、紅桜華はふらふらと立ち上がった。
 これまでの猟兵は信頼してきたが、今は、紅桜華はアディリシアにおののいている。

(ま、あとは他の猟兵たちが何とかするだろう。)

 ダビッドソンを制止し、アディリシアは紅桜華を観察する。
 怯えた瞳でこちらを見つめる紅桜華が、また何か……迎撃行動を取ろうとした途端。

「私の仕事は、まずお前を無力化することまでだ。」

 紅桜華へ捨て身の一撃を喰らわせ、同時に生命力も吸収する。
 紅桜華は、実にはかなく、弱い影朧とあって、これだけでもなかなか堪えた様子を見せている。様子からして、事前説明にあった通り、倒すのは他の影朧よりもずっと容易そうだ。

(『あ、あの!完全撃破はダメですからね!?』)
(無論、承知の上だ。ただ、とりあえずいつも通りに倒せば「無害化」できるのだろう?)

 ハラハラした気持ちを隠せないダフネに、アディリシアは平然と答えた。
 確かに、そうなのだ。1度は紅桜華を倒して「無害化」させないと、帝都の人々をいつかは恐怖や脅威に感じて攻撃してしまわないとも限らない。

「ま、何とかなるだろう。ここへ来る猟兵は、私たちだけとは限るまい?」
(『そ、それはそうかも知れませんが……こう、そのもう少し手加減というものを……』)

 アディリシアの楽観に、やや呆れ気味なダフネ。
 しかし、ふらふらと立ち上がる紅桜華は、確かに確実に生命力を削がれ、さらに弱々しく感じられるようになった。

 ――紅桜華の「無害化」まで、あと少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​

麻生・竜星
(無害化させるためとはいえ……流石に少し心が痛むな)

紅桜華の前に行くと、「すまないな」と小声で呟きUCを発動
うまく拘束できればそのまま体力ぎりぎりまで【生命力吸収】する
失敗した場合は、拳でみぞおちに【気絶攻撃】を狙い強めの一発を

「俺達は君との約束は守るよ。だから今はただ少し……眠っていてくれ」
意識がなくなりかける時に、優しくそう囁く



(無害化させるためとはいえ……流石に少し心が痛むな)

 紅桜華が、信頼して良いと判断したらしき猟兵たちの近くでふらつきながらもまだ何らかの行動に出ようとする様子を見つめ、麻生・竜星(銀月の力を受け継いで・f07360)は顔を顰めた。良心が痛むが、それでもやらなければこの後、帝都の中を連れ歩くうちに万が一、人々に危害を加えてしまう危険性が残ってしまう。
 彼は決意を固めると、まっすぐに紅桜華のもとへ向かった。

「……すまないな」
「!?」

 紅桜華が気づくより速く、竜星は小さく詫びると、咄嗟に【白蛇神の制裁(サーペント・サンクション)】を発動させた。
 オーブから放たれた白大蛇の配下――と言っても、よく見る蛇の大きさの、白い蛇だ――が紅桜華を的確に締め上げ、その動きを封じる。抗おうにも、紅桜華には為す術もない。

「俺達は君との約束は守るよ。だから今はただ少し……眠っていてくれ。」

 竜星は、ギリギリまで紅桜華の生命力を奪い、彼女が意識を失くす間際、優しく囁きかけた。
 紅桜華は、信頼と不信の間に瞳を揺らしながら竜星を見つめ、そのまま倒れこんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW   :    何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る

SPD   :    先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する

WIZ   :    影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その後、猟兵たちの間で紅桜華は再び意識を取り戻した。
 既に何らかの力を行使できる気配は無く、完全に無害な影朧となったようだ。

「……信じて、良い、のね……?」

 今ひとたび辺りを見渡した紅桜華は、幸いにも最終的には猟兵たちを信じることを選んでくれた。

「……早く、行きたい……。妹といた、あの場所へ……。」

 紅桜華が抱く「執着」は、力を失くした影朧となっても尚、彼女を急き立てる。

 しかし、帝都の人たちには、あくまでも影朧は影朧として見える。雑踏の中に踏み出して行けば、騒ぎ立つ人々が現れてしまうのは無理もないだろう。
 だがそれが紅桜華を脅かしてしまうと、何を引き起こしてしまうか分からない。
 ……彼女の願う場所へ導くまでには、まだ油断はならないようだ。
涼場・応為
※共闘、アドリブ、NG含めてなんでも歓迎です。


事件や先導は他の猟兵さんに任せて会話に混ざるとしよう。

まずは頂いたお茶のお返し。アイテムから冷えたサイダーを会話組全員に手渡しながら

「先程の桜茶美味しくいただきました。お礼にサイダーどうぞ。
ところで先程『妹』と仰りましたが……」

と他の方の会話を邪魔しないように、会話の結果で凹み過ぎないように気を付けて励ましながら『妹』というキーワードから情報を引き出しつつ目的地まで進もう。

もし危険が目前まで迫るようで他の猟兵さんが対処するならお願いしますが、いざという時は手首の鋼線射出機から地面を攻撃する形でユーベルコヲドを発動。鋼線を編みこんで壁を作って庇おう。


李・玉明
アドリブ、絡み、そのほか歓迎なのじゃ!

うん、大丈夫じゃ、紅桜華!
妾たちが一緒についているのじゃ!
さあ、帰ろう。お主の妹御と、共にいたところへ。

紅桜華の手を引いたり、身体を支えたりしながら歩いていくのじゃー。
焦ったり慌てたりしなくても、大丈夫なのじゃよ。お主の歩幅に合わせるからのぅ。
休憩時には、舞を披露して励ますのじゃ! 元気になってもらうのじゃ!
……姐々の乱暴で負った傷を治す狙いもあるのじゃが。ごめんなさいなのじゃ。

さ、もうひと頑張りじゃ。大丈夫、お主は孤独ではないのじゃよ。



「うん、大丈夫じゃ、紅桜華!妾たちが一緒についているのじゃ!……さあ、帰ろう。お主の妹御と、共にいたところへ。」

 紅桜華へ初めに声を掛けたのは、玉明。
 その声に、紅桜華はひとつ頷きを返した。

「……私の大切な妹。……共に咲いていたあの場所へ……一緒に来てくれる、のね……?」
「もちろんじゃ!」

 玉明は紅桜華の手を引いたり、身体を支えたりしながら歩いていく。もちろん、周りの人々が恐怖や奇異の目を向けてくるのは、かばったり優しく慰めたりしながら、紅桜華も人々も落ち着かせつつ進む。

「先程の桜茶美味しくいただきました。お礼にサイダーどうぞ。」
「おぉ、サイダーとな!ありがとうなのじゃ!」
「……?サイダー、というの?……桜茶の、お礼に……?」

 その傍で、応為は会話に加わっている猟兵全員と、紅桜華へサイダーを配った。
 年中桜が咲き乱れるサクラミラージュとはいえ、やはり夏に飲むサイダーは美味しいものだ。

「……不思議な、飲み物ね。でも、爽やか……妹にも、体験させてあげたかった……。」

 ひと口、口にした紅桜華は、ほぅと息をつき、呟く。
 紅桜華は、もう力をかなり消耗していることと、サイダーという初めての飲み物を味わいながら猟兵へついて行くのとで、自然と歩みが遅くなった。

「……あ、いけない……こんなに、ゆっくりしていては……」
「焦ったり慌てたりしなくても、大丈夫なのじゃよ。お主の歩幅に合わせるからのぅ。」

 表情を曇らせた紅桜華に、玉明は明るく声を掛けた。

「そう……ありがとう。」
「ところで、紅桜華さん。先程『妹』と仰りましたが……?」

 応為は、タイミングを見計らって紅桜華へキーワードを尋ねてみた。
 紅桜華の妹に関する情報を、少しでも引き出しながら目的地へ向かおうと考えてのことだ。
 もしかしたらそれによって、目的地へ辿り着いた後に、できることが増えるのかもしれない。

「……そう。私の、大切な妹。……ずっと、ずっと一緒に居たの。……何年なんて、数えられないくらい。……。」

 紅桜華は、素直に答えてくれたが、疲労したのか、不意にため息をもらした。

「うむ?紅桜華、疲れておるのう?まずは休憩じゃ!」

 玉明と応為は、あまり人目につかなさそうな場所を探して、そこにあるベンチで紅桜華を休ませた。

「妾の踊りで、元気になって欲しいのじゃ!」

 玉明は、紅桜華を元気づけようと【熱烈鼓舞絢爛舞踏(パッショネート・エール・グロリア)】による歌と舞を披露した。

(……姐々の乱暴で負った傷を治す狙いもあるのじゃが。ごめんなさいなのじゃ。)

 内心では紅桜華を「轢殺」せん勢いでやってきた身内が紅桜華に付けてしまった負傷に、負い目を感じながらも華やかに軽やかに舞う。

「……ありがとう。少し、元気が出たわ……。妹にも、見せたかったくらい。」
「喜んでもらえたなら何よりじゃ。」

 ふっと微笑んだ紅桜華に、玉明はにっこりと笑顔を向けた。

「……その、あなたの妹のこと、もっと聞かせてもらえませんか?」
「ええ……妹とは、すぐ側で寄り添って生きていたの。転生させた影朧も、数えられない……たくさんお話もしたわ。……でも、まだ……ここではあまり……。妹といた場所へ行く前は……。」

 紅桜華は、語るうちにまた少し表情を曇らせてしまった。

「ああ、ごめんなさい。辛い記憶まで思い出させてしまいましたね。お話を聞かせてくださって、ありがとうございます。」

 応為は、これ以上紅桜華を凹ませ無いよう、一旦ここで会話を区切ることにした。妹についての話は、それなりに聞き出せた。あとは、目的地に着いてから改めて聞けばいい。

 人目につかなさそうな場所を選んでいたはずが、気がつけばちらほらと人がこちらを見やっては小声で紅桜華のことを囁きあっていた。

「……っ!?」

 その声のひとつを聞いてしまったろうか。紅桜華は、怯えた風にひとつ身体を震わせた。
 他の猟兵たちが人々をなだめたり落ち着かせたりしてくれているので何とかここまで来たものの。それでも払いきれない人々がいるのは仕方の無いこと。

「安心してください、紅桜華さん。……人々の視線を遮りますから。」

 応為は、地面を標的として手首の鋼線射出機から鋼線を放ち、【プレシオスの鎖(ブルカニロ)】を用いた。鋼線は瞬く間に編み込みの壁となり、紅桜華を奇異の目をや噂話から防ぐ。これで、もうこの場では紅桜華が脅かされる危険性はぐっと減らせたろう。

「さ、もうひと頑張りじゃ。大丈夫、お主は孤独ではないのじゃよ。」

 紅桜華が落ち着きを取り戻した頃、玉明は紅桜華へ手を差し伸べ、誘った。紅桜華もそれに応じ、また歩を進め始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘇・燎(サポート)
<アドリブ・連携OK>

口調についてはステータス参照。
目上以外でも尊敬に値する人物については丁寧口調を使用する。

一旦物事を俯瞰で見、考えた上で、
一武人として自分をどう動かすかを考えて行動する。
非戦闘場面であれば、話を聞き出す、
周りを観察するなどの手段を駆使しての情報収集を、
護衛対象があれば対象の直衛に付いて行動する。
公序良俗に反する行為はしない。

戦闘場面では主に【軽業】【早業】【地形の利用】を用いて、
選択されたUCを活かせる戦局を組み立てた上で行動。
連携の場合は【戦闘知識】【集団戦術】を意識して動き、
他の参加者が動き易い状況を作る、アシストをする方向で
攻撃【体勢を崩す】【部位破壊】を仕掛ける。


麻生・竜星
★アドリブ、仲間との絡みOKです


とにかく、俺達を信じてくれて良かった


新しい道に入るときはそっと前に出てお願いを。
「この影朧の願いを叶えてやりたいんだ。そっと道を譲ってもらえないだろうか?」

街を歩いていて、何か言われたらゆっくりめの口調で相手に話しかける。
「彼女は無害だが騒がないであげてほしい。よろしく頼みます」

後は彼女が辛そうにしていたら励ましながら肩を貸してみよう
と思う



(とにかく、俺達を信じてくれて良かった……。)

 竜星は、紅桜華の様子を見て、そう胸を撫で下ろした。いかに無害化させる必要があったとはいえ、矛先を向けてしまったのだから恐怖される可能性も十分にあったからだ。
 彼はまず、紅桜華の周囲を観察し、新しい道に入るときはそっと前に出て人々へ温かな理解を求めることにした。

「この影朧の願いを叶えてやりたいんだ。そっと道を譲ってもらえないだろうか?」

 人々は、影朧が至近にいることに動揺しながらも、竜星が猟兵だと分かると、何だかんだと言っても理解を示してくれた。

 一方、竜星とは若干異なるアプローチで紅桜華の傍に護衛として付き添っている猟兵がいた。彼の名は蘇・燎(星火、曠原を燎く・f32797)。
 彼は【仙道・四知天眼(センドウ・シチテンゲン)】を用いて自身の情報収集の技能を補強し、紅桜華の周囲の状況や人々の反応だけでなく、すぐ側にいる紅桜華の雰囲気の変化にも注意を払っていた。
 竜星と共に人々の説得に当たることもあれば、時折、妹と引き裂かれた運命に思いを馳せて沈む紅桜華へ、思いやりの声を掛けることも忘れない。

「……そう、あなたもそう言ってくれるのね。……ありがとう。」

 紅桜華は、燎へもふわりと微笑んだ。
 初めのうちは、他の猟兵に比べるとあまり気持ちを表面に出すことの無い燎のことを不安そうに思っていた様子の紅桜華だったが、燎もまた自身の味方になってくれようとしているということを、これまでの彼の立ち居振る舞いから感じたのだろう。

 目的地まで、あと少し街並みを抜ければ……というところで、女性の声だろうか、小さな悲鳴が上がった。竜星が見遣れば、母親と子供がその声の主のようだ。影朧である紅桜華を前に、恐れ戦いてしまっている。このままでは、近隣で騒ぎを起こしかねない。
 そしてその声に、紅桜華は驚いて歩みを止めてしまった。

「驚かせてしまったようですね。ですが、彼女は無害な影朧だから、不用意に騒がないであげてほしい。とても繊細な存在だから……よろしく頼みます。」

 竜星が早速声をかける。最初のうちはそれでも恐怖していた母子だったが、やがてはある程度納得してくれたのか、何度か頷いてその場を離れてくれた。

「安心しろ、紅桜華。もう、目的地は近い。残りの行程も、俺たちが護衛する。」
「……そう、ありがとう。……いよいよ、辿り着けるのね……。」

 燎の端的な言葉掛けに、紅桜華は目を細めてお礼を述べ、行く先を眺めた。

 ――紅桜華の「執着」を叶えるまで、あと少し。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『悠久のときを超えて、遙かから』

POW   :    建物や敷地の隅から隅まで見尽くす、味わい尽くす

SPD   :    様々な場所へ移動して、時間を無駄にしないように過ごす

WIZ   :    一番良い場所を見定めて、のんびり過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 一行はやがて、街並みを抜けてひらけた場所へと辿り着いた。
 そこは、もう何年そこにあるのか分からないほど古めかしくも、風情のある佇まいを見せる邸宅と、見渡す限りの広々とした庭園があった。
 庭園には、何本もの桜の木が植えられ、競い合うように咲き誇っている。

「……あの子と、いた場所。……何もかもが、懐かしい……。」

 紅桜華は、ゆっくり歩を進め、辺りを見渡した。

「……妹と咲いていたここに、まだ、妹の……あの子の面影は、あるのかしら……。会いたい……たとえ面影だけであったとしても……。」
麻生・竜星
アドリブ&絡みOKです

(これは…タイムスリップしたかのようだな)
一瞬、その美し過ぎる景色を見入ってしまう

紅桜華の姿を見かけると、微笑んで話しかけて
「妹さんの面影は見つかったかい?」
ゆっくりと彼女の話を聞く
頷いたり微笑んだりしながら
「俺には…一緒に育った妹の様な存在の子がいるんだ。
そういう関係を俺達の世界では『幼馴染』っていうんだ」
彼女の話を聞いていて、いつも賑やかに自分のそばにいる幼馴染の顔を思い浮かべ、ふっと笑う

「君達は離れ離れになってしまったけど二人の絆は何があっても切れることはないと俺は思うよ」
と頷いて、心配しないで。と微笑む

(来世は二人で幸せであるように……)
そっと目を閉じてそう願った


李・玉明
共闘もアドリブもOKじゃ!

ここがお主の思い出の場所なのじゃな。
とても綺麗な場所なのじゃ。
紅桜華たち姉妹が離れてから、どれだけの刻が過ぎたのじゃろうな。
それでも、この場所が変わってなかったのはよかったのじゃ。

歩いて木を探すなら一緒に回るのじゃ。腰を下ろして眺めるなら一緒に座るのじゃ。
そして、教えて欲しいのじゃ。妹御はどんな方だったのじゃ?
人となりや、名前や見目や、好きなこと。いっぱい語ってもらって、聞き入るのじゃ。

……別れの時になっても笑顔で送り出すのじゃ。
少しでも心を癒せるように祈りつつ、優しく歌を送るのじゃ。
何度でも告げるのじゃよ。
安心して、もう大丈夫。もう、一人じゃないよ。
おやすみなさい。


涼場・応為
※共闘、アドリブ、(部分的な不採用や)NG含めてなんでも歓迎です。


とりあえず辿り着いたのかな。妹さんとやらはどうなったのかわからないけど、一通りのお仕事は終了としてお花見と洒落込もう。

残ったサイダーを呑みつつ探索。


もし妹の桜が見つかって万一傷を負っていた場合、そして傷口が腐っていなければ応急処置として、打刀で剪定して最初に買った木工用ボンドを傷口に塗っておく。桜なので後日癒合材を買ってきて塗布しよう。


転生をするのなら桜の精として手伝う。その場合

「もし覚えていれば、涼場でぃてくてゐぶおふぃすを御贔屓に宜しくお願いします」

と声をかけて笑顔で見送ろう。



(これは……タイムスリップしたかのようだな。)

 竜星はその美し過ぎる景色に、一瞬思わず見入ってしまった。
 同じように感じたのは、他の猟兵たちもだ。

「ここがお主の思い出の場所なのじゃな。
とても綺麗な場所なのじゃ。」

 玉明も、感慨深そうに辺りを見渡している。

(とりあえず辿り着いたのかな……?)

 応為はそう判断すると、ひとまずはサイダーを片手にぶらぶらと辺りを散策し、お花見をすることにしたようだ。
 勿論、ただそれだけではなく、もしも妹桜が見つかり、傷を負っていたなら、そして腐敗が始まっていないなら、予め買っていた木工用ボンドで「応急処置」をしようとも、考えてのことだ。

 紅桜華は、ゆっくりと広い庭園の中へ歩を進めた。

「妹は、まだここにいるのかしら……それとも……。」

 不安と郷愁を滲ませつつ、紅桜華はとある場所を目指していた。
 そここそ、妹桜と共に過ごしていた思い出の場所……だった。

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という言葉があるように、桜は切られてしまえば弱くなって、やがてはそこから腐敗してしまう。
 妹桜も、切られてしまえばやはり同じ運命を辿るであろう。
 そして、紅桜華が向かった先には、ただ生命力の強い草花たちが茂るばかり。
 歩いて木を探すなら一緒に回ろうと考えていた玉明は、寂しげに目を落とす紅桜華に目をやる。

(紅桜華たち姉妹が離れてから、どれだけの刻が過ぎたのじゃろうな……それでも、この場所が変わってなかったのはよかったのじゃ。)

 内心でそう思ったものの、紅桜華の表情を見れば、そこに居たはずの妹桜はもういないのだろう。悲しそうに、切なそうに、草花たちに埋もれるように遺された、寄り添うように並ぶ2つの大きな切り株の、片方の切り株を紅桜華はじっと見つめる。こちらもまた、隣の切り株と同じように生きてきた歳月を物語るがごとく、幾重もの年輪が見て取れた。

 そこへ、先ほどまで景色に見入っていた竜星もやってきた。

「妹さんの面影は見つかったかい?」
「妾も教えて欲しいのじゃ。妹御はどんな方だったのじゃ?」

 竜星と玉明の2人が紅桜華へ声を掛ければ、彼女は2人を見やり、ぽつぽつと語り出した。

――妹桜と共に生きた時間は、もう永くて数えきれないこと。
 心根の優しい子で、影朧を転生させる度、まるで涙の雫をこぼすように花びらを舞わせていたこと。
 仲の良い姉妹として、互いを愛称で呼び合って笑い合うほど、深い交流を持っていたこと。
 元気いっぱいなことが取り柄で、のびのびと枝を広げ、躊躇わずいつも満開に花を咲かせていた子だったこと。
 人懐っこい性格で、ここを訪れる客やかつての邸宅の住人が近寄って愛でれば、嬉しそうにその様を見下ろし、「人の言葉を話せたら良かったのに」と残念がっていたこと……。

 とめどなく続く紅桜華の話を、玉明と竜星は頷いたり微笑んだりしながら傾聴していた。
 まだ語り足りない様子の紅桜華に、玉明は手近な場所へ座るよう促し、3人で腰を下ろす。
 その視界には、満開の桜たちと、それをひとつひとつ愛でながらサイダー片手に歩く応為の姿が映った。

「実は俺にも……一緒に育った妹の様な存在の子がいるんだ。そういう関係を俺達の世界では『幼馴染』っていうんだ。」

 竜星は、紅桜華の話を聴きながら、話が一旦途切れた時に、自分自身の話もしてみた。語りながら、いつも賑やかに自分のそばにいる幼馴染の顔を思い浮かべふっと笑う。元気すぎて振り回されることもあるが、どこか憎めない魅力があって、どうにも許してしまう……そんな子のことを。。

「だから俺としては、君達は離れ離れになってしまったけど、二人の絆は何があっても切れることはないと俺は思うよ。」

 だからどうか心配しないで、と竜星は微笑む。

「そう、幼馴染……。それも、素敵ね。……あら?」

 不意に、紅桜華が語りをやめ、一点を見つめた。
 玉明も竜星も、何だろうと思い、同じ方へ視線を送れば……先ほどの古びた切り株から、まだ赤ちゃんのように細く弱い芽生えが。

「……あの子、今でも元気が取り柄なのは変わらないのね……。そう、またここに戻ろうと……。」

 紅桜華の姿が、徐々に光の粒を纏い始める。
 彼女の表情は、一筋の涙を頬に伝わせながらも、幸せそうに微笑んでいた。
 光の粒は、やがて静かに紅桜華を包み、その身体をも同じ光に変えていく。
 紅桜華は、「執着」を叶え、心満たされて消滅を始めたのだ。

 別れの時が来たことを悟りながらも、玉明は笑顔を保ち続けた。
 少しでも紅桜華の心を癒せるように祈りつつ、優しく歌を贈る玉明。【慈愛歌唱十分治癒(アフェクション・シンギング・エナフ・セラピー)】を利用しながら、紅桜華の心の奥底まで届くことを願って歌う。

「妾は、何度でも告げるのじゃよ。安心して、もう大丈夫。もう、一人じゃないよ。紅桜華……。」

 消えゆく紅桜華を前に、竜星もまた、目を伏せて祈らずには居られなかった。

(来世こそは、姉妹二人で幸せであるように…………。)

 紅桜華の変化に気づいた応為も、近くまで歩み寄ってきた。転生をするのなら桜の精として手伝いたい、そう考えてのことだ。

「……ありがとう、もう1度ここへ連れてきてくれて。……ありがとう、妹の面影を一緒に探してくれて。」

 まさに消滅せんとする紅桜華は、最後に猟兵たちへ心から幸せそうな微笑みを見せた。

「もし覚えていれば、涼場でぃてくてゐぶおふぃすを御贔屓に宜しくお願いします」

 ちゃっかり営業しながらも、応為もまた、笑顔で紅桜華を見届けた。
 紅桜華はやがて美しい桜色の光の粒に変わり、果てなき空へ、舞い上がり姿を消した。
「ひときわ傷ついた影朧」となった紅桜華は、しっかりと「執着」を叶えたのだ。

「おやすみなさいなのじゃ、紅桜華。」

 玉明は紅桜華の消滅した空を見上げ、最後の祈りを口にした。

 その後、猟兵たちは応為の提案というか要望というか、傷を負っていながらもまだ腐敗していない桜が無いか、広い庭園を見て回っていた。恐らくは、紅桜華とその妹のような悲劇を未然に防げたなら……という願いからの行動だったろう。

 ほとんどの桜は無傷で元気に咲き競っている。しかし1本だけ、戯れに手折られたのか……腐敗こそしていないものの、乱雑に折られたであろう枝を持つ桜を見つけた。
 応為はその枝を打刀で剪定すると、初めに買っていた木工用ボンドを傷口へ塗り込む。

「……これは応急処置ですから、また後日癒合剤を買ってきて塗ってあげるとしましょう。」

 今度こそ、ここに咲く桜たちが、紅桜華とその妹桜のような悲劇的運命に飲まれないように……。それは、紅桜華と短くも濃密な時間を共にした猟兵たちの願いであったことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月26日


挿絵イラスト