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Second War

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●Bed of nails
 食糧、水、弾薬。グレネードを数個に望遠鏡。医療キット。
 思いつく限りの物資をバックパックに詰め込んで、男は立つ。
 拳銃を腰のホルスターに差し込み、次にぼろぼろに朽ちかけた写真立てを眺める。
 写真の中では、男女ふたりが互いに身を寄せ合って笑いあっている。
 男、チャールズは写真の中の『自分』と女を見て、目を瞑る。
「キャシー……今日も、安らかに」
 短く祈り、写真立てを倒す。
 最後にバックパックとライフルを背負い、チャールズは部屋の扉を開ける。

「……」
 通りに出て、まずチャールズに視線が集中する。
 何人かは視線を外すが、何人かはそのままチャールズを横目で見続ける。……侮蔑の意を込めて。
「……なんだ? ヤツは誰だ?」
 拠点に来たばかりらしい住人のひとりが質問を投げかける。その住人の肩を叩き、しっ、と口を鳴らす。
「あいつはチャールズさ。……あいつには、精々気を付けな新入り」
 飽くまで声を潜めるふりをして、住人は新入りに注意を促す言い方をする。
「あいつはな……レイダーの奴隷商に捕まった自分の奥さんを撃ち殺したんだよ」

 聞こえていた。
 だが、言う事は何もない。
「……」
 侮蔑や好奇の視線を潜り、孤独な奪還者は通りを抜け、拠点の外の荒野へ向かう。
 そう、言う事はない。
 自身が『妻殺し』である事は、紛れもなく事実なのだから。

●グリモアベース
「今回はアポカリプスヘルでの仕事だ」
 まとめた書類を眺めながら、萩原・誠悟(屑鉄が如く・f04202)は口を開く。
 資料の中には、今回の仕事に関係する拠点と、その拠点内の住人をピックアップした名簿が含まれている。
「この拠点は、特に住人達同士のいざこざや食糧不足などが深刻で、このままだと遠からず機能を失い放棄されてしまうだろう」
 日に日に減少する食糧、物資。それらは住人にストレスを与え、不和を煽る。
 そこで、と誠悟はひとりの男が写る写真を広げた書類の上に滑らせる。
「彼の名はチャールズ。この拠点の中において『妻殺し』と呼ばれている男だ」
 妻殺し。
 その言葉に、居心地の悪い沈黙の時間が流れる。
 ひとしきり反応を眺めた誠悟は、再び口を開く。
「彼はその昔、同じく奪還者をしていた妻、キャシーを奴隷商に拉致されてしまった。まあ、レイダーさ。当然、チャールズは仲間を連れて救助に向かった」
 しかし、と誠悟は言葉を切る。
「レイダーの勢力は、チャールズ達の予想をはるかに上回るものだった。そんなところに忍び込めただけでも奇跡だっただろう」
 そこで、ようやくチャールズ達はキャシーの姿を確認した。まさに奴隷として値を付けられるオークションの最中に。
「強大な敵拠点のど真ん中、疲弊した自身と仲間。ようやく姿を見た妻。……チャールズの結論は即座に出た」
 救助困難。
 それが、チャールズの出した結論であったという。
「キャシーを助けながらレイダーから逃れる事が不可能である事を悟ったチャールズは……遠距離から、オークションにかけられるキャシーを狙撃した」
 書類に目を伏せ、誠悟は息を吐く。
「その後は自身の行いを責める仲間を引き連れ、チャールズはなんとかレイダー達から逃れたようだ」
 そしてチャールズの行動は、その時連れていた仲間によって、拠点内に吹聴される事になる。こうして生まれたのが『妻殺し』というわけだ。
 それだけを聞くと、なんとも気が触れたような凶行だろう。
「確かに彼が妻を殺したのは事実だろう。……だが、果たしてそれだけが『真実』だろうか?」
 問いかけるような言葉を、誠悟は口にする。
「別の仲間は、彼らの事を『強く立派な奪還者夫婦』と評していた。能力の事もそうだろうが、そのニュアンスに『精神的な意味』を含んでいたとしたら」
 それは過酷なアポカリプスヘルにおいて、非常に重要な『強さ』となる。
「そして、彼がもし正常な考えで、それでも自身の妻を撃ったとしたら……そこに、どれだけの葛藤があっただろうか」
 私にはわからない、と誠悟は呟く。
「だが、もし……本当に彼の気が触れていなければ……こんな決断ができる男なら、リーダーとしての素質は十分ではないか?」
 最後の資料を並べて、誠悟は猟兵達を見つめる。
「諸君らには、是非ともこの男の本質を見極めてもらいたい」
 その事件の後、チャールズは誰とも関わり合いにならず、細々と奪還者として活動を続けているらしい。
 妻を失い、仲間に糾弾され、孤独に行動する沈んだ男。
「落ち込んでいる所に申し訳ないが、引っ張り上げるなら今しかない。よろしく頼む」
 最後の言葉で、誠悟は猟兵達の背を押した。


あるばーと。
 こんにちは。あるばーと。と申します。
 かなり久しぶりな執筆となりますのでお手柔らかにお願いします。
 執筆期間についてはマスターページをご参考ください。

●第1章:冒険
 奪還者チャールズを連れて荒野の踏破を目指します。

●第2章:集団戦
 奪還者チャールズと共にオブリビオンと戦います。
 チャールズを援護したり、戦い方の指導や共有などをすると、チャールズの実力が引き出せるかもしれません。

●第3章:日常
 拠点に帰還します。
 花を植えたり、拠点の課題の解決のついて話し合ってみるのもいいでしょう。

●奪還者チャールズについて
 中年男性で、熟練の奪還者です。
 特にライフルの技量が高く、狙撃の成功率も高い優秀な射手です。
 レイダーの奴隷商に捕まった妻、キャシーを葛藤の末に射殺して『解放』した過去があり、現在は射殺した事実のみが拠点内に広まってしまい、侮蔑の意を込めて『妻殺し』と呼ばれています。
 元々口下手であまり愛想は無い男でしたが、その経緯によって最近は生気のない沈んだ表情をしています。
 村八分のような状態になっていますが、チャールズの実力を今一度知らしめれば彼の名誉は回復される可能性があります。
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第1章 冒険 『長距離行軍、よーい!』

POW   :    険しい地形を装備や身体能力で踏破し進もう。

SPD   :    周囲の警戒を密にしつつ迅速に進もう。

WIZ   :    急がば回れ、適宜休息を挟みつつ進もう。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● Rocky road
 奪還者チャールズは、物資があると目されている地点に向かっていた。
 今踏んでいるルートは、その目標地点への最短距離とされている。
 しかし……チャールズ以外の奪還者の姿は見えない。
「…………なるほど」
 何故か、という疑問は眼前に広がる道を見て解消される。このルートは、あまりにも険しいためだ。
 高低差の激しい断崖が連続しているこの地形は、距離感を大いに狂わせて来る。
 奪還者の多くはこのルートを避けて迂回する事を選んだようだ。チャールズ自身、その判断は賢明であると思った。
「……行くか」
 しかし……この男、チャールズは進む。
 目の前のハードルを越えられると踏んだのか、それとも自身の命が軽いのか。それはもう本人にすらわからない。
 とにかく、奪還者チャールズはこの『茨の道』を進む事にした。
フラム・ストラトス
※アドリブ共闘歓迎

【悪のカリスマ】を放ち、ある程度心象を惹かれるようにしてから会話に臨むのじゃ。
地形自体は我【滑空】できるから問題ないのじゃ。
気を付けるとしたら奇襲じゃから【視力】全開であたりを見回しておくのじゃ。
ミミズクの首は180°回るからの、監視には向いてるのじゃ。

妻殺しと呼ばれておるお主に聞きたい。
奴隷にされて、永遠の苦痛を味わうことになる妻を開放するため、じゃよな?
お主が撃った理由は。
もしそうで、その判断を冷静に下せたというならば、我的にはリーダーの素質有と思うのじゃ。
ぜひうちに……じゃなくて、立ち直って皆を引いてみぬか?
中傷は我らが何とでもしてやろう、と【お誘い】してみるのじゃ。



●Look up at the sky
 段差を越え、崖を登り、そして降り。奪還者チャールズはゆっくりと、着実に歩を進めていく。
 やはり手間取ってはいるが、ペースは悪くない。地盤のしっかりした場所があれば休憩を入れても、おそらく釣りがくるほどだ。
 そうして考えているうちに、崖と崖の間にやや広めのスペースを見つけた。ここでなら、少し荷物を下ろして一息吐いても良いだろう。
「……」
 そのスペースに足を踏み入れ、チャールズはひりつく空気を感じ取る。
 ライフルを手に取り、チャールズは辺りを見渡す。
 敵であれば敵意や悪意、またそうでない者からも警戒心を向けられる事はこの世界ではよくある事だ。しかし、この空気はそのどれでもない。
 休憩するには、この異様な雰囲気を持つ存在を見つけなければならない。チャールズはライフルの安全装置を解除する。
「――安心するのじゃ、敵は居らぬよ」
 声のする崖の上。
 そこに、この空気を出す女性の姿があった。

 話しかけた瞬間、奪還者チャールズは手のライフルをこちらに向けてきた。すでに警戒していたとはいえ、かなり速い動作だ。
 フラム・ストラトス(魔導極めし有鳥天・f31572)は鳥類の特徴を持つ手をひらひらと振る。それに伴い、連動して背の翼もゆらゆら揺れる。
「ミミズクの首は180°回るからの、監視には向いてるのじゃ」
 フラムは得意げに首をくりくり左右に振る。
 その様子に、チャールズは視線は外さないものの、フラムに向けたライフルは下ろす。
 チャールズの様子にフラムは自身のラスボス、魔王としての存在感がしっかり発揮されていると認識する。警戒されていようが構うものか、だって悪のカリスマだもの。
 高低差の激しい地形ゆえに、ところどころにある岩場は遮蔽として効果的だ。それならば、奇襲する側はその岩場に身を隠してしまえばあとは標的を待ち構えているだけでいい。
 そこで、フラムは自身の滑空能力で先回りし、自慢の視力を持って偵察を完了しておいたというわけだ。
 そして、そうまでしてフラムが時間を稼いだ理由とは。
「妻殺しと呼ばれておるお主に聞きたい」
 対話。それがフラムの目的だ。
「……」
 チャールズの表情は変わらない。
 おそらく、これ自体は何度も似たような言葉を投げかけられて来たのだろう。
 ただし、その後に続く言葉は毛色が異なる。
「奴隷にされて、永遠の苦痛を味わうことになる妻を開放するため、じゃよな? お主が撃った理由は」
 グリモア猟兵のウォーマシンも言っていた事だ。
 そして、フラムがあえてそれを本人に訊いたのは……この男、チャールズの『本質』を確かめるため。
「……だったら、なんだ」
 フラムの言葉に、初めて言葉が返ってくる。
 素っ気ないようでその実、その一言に怒りとも悲しみとも取れない、もしくはその両方ともが込められているような、複雑な感情が垣間見えた。
 チャールズの言葉は肯定でも否定でもなかったが、フラムとしては問いに対する答えが否定でさえなければ対話は続けられる。
「もしそうで、その判断を冷静に下せたというならば、我的にはリーダーの素質有と思うのじゃ」
「……リーダーだと?」
 仏頂面だったチャールズの顔がわずかに怪訝な表情に変わる。
 フラムはその表情を無視……もとい、確認しつつ話をまくし立てる。
「ぜひうちに……じゃなくて」
 思わず自身の都合を滲ませそうになり、フラムはこほんと咳払い。
「――立ち直って皆を引いてみぬか? 中傷は我らが何とでもしてやろう」
「……」
 その誘いに、それまで警戒の視線を向けていたチャールズが目を背ける。
 チャールズの反応を見たフラムは、ここで背を向ける。この誘いに迷いがあるのなら、逆に言えば満更ではない部分もあるという事。
 これは飽くまでファーストコンタクト。話す時間はまだある。
「考えておくが良いのじゃ。それでは、またな」
 そう言い残し、フラムは崖から飛び立っていった。

「……」
 それは、再起への誘いであった。
 自身という男に価値を見出そうとする者の言葉が、チャールズの中で反芻する。
「冷静……か」
 息を吐いて、ライフルとバックパックを下ろす。
 腰はかけない。休憩は、立ったまま行う。
 岩場に寄りかかり、腕を組む。
「冷静なものか」
 妻を撃ち、レイダーから逃げ延びた後に待っていた、拠点住人達の非難。
 愛する者を撃った直後。怒りと悲しみ、後悔といった感情がない交ぜになっていた当時では口を開く事が出来ず。話せたとしても、言葉に出来たかは怪しかった。
 今でさえ、後悔は渦巻く。
 その選択を誤った事にではなく……『その選択をせざるを得なかった』という事に。
「……冷静なものか」
 チャールズは休憩中、翼を持つ女性にかけられた言葉を、何度も否定していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルゥ・グレイス
戦場でのトリアージは厳密に設定しておくべきだ。
それを無視して救えるなら英雄だが…誰もがそうあれるわけではない。わかりきった事実だ。
妻を殺そうが、ルールと損得で決断したのなら他者が否定できることではない。


UCを起動、礼装を接続し、広域探査ソナーに転用。
休息場所、通りやすい道を精査し、踏破可能性が最も高いルートを割り出す。

「本当にひどいルートだ。これなら迂回したほうがいいのはわかりきっているだろうに」
自分の実力に自信があるのなら構わないが、命を軽く見積もるのならいただけない。そういうのは素体原価700$の僕とかに任せる仕事で、実力ある人間が行うことではない。

彼に追従して話を聞きつつ、茨の道を行く。



●Pave the way
「そこは岩場に寄って……その足場は左側の方が安定しています。次は壁に沿って」
「……ああ」
 背後から聞こえてくる、進む道を指示する声に、奪還者チャールズは従い進んでいく。
 チャールズの背後に居るのは、フラスコチャイルドの少年ルゥ・グレイス(RuG0049_1D/1S・f30247)。先ほどから、チャールズに進む道の指示を出している者である。
(本当にひどいルートだ。これなら迂回したほうがいいのはわかりきっているだろうに)
 【七人の小人の標本】を搭載した広域探査ソナーへと転用した狙撃銃『灰骸の翼』によって、ルゥには大まかに地形が把握できている。
 確かに単純な直線距離では目標地点へはこのルートが一番近いだろう。しかし、実際の問題としてはこの道は険しい。
(自分の実力に自信があるのなら構わないが、命を軽く見積もるのならいただけない)
 チャールズの行動を不安視したルゥは、チャールズに追従し、進行ルートの指示を始めたのだった。
 しばらくの間こうして指示を出して来て、ルゥにはわかった事があった。
「……よし、ここからしばらくは道なりに。休憩場所に良い所があります」
「……ああ」
 先ほどと同じような返事が、チャールズから返ってくる。
 これは単なる生返事ではなく、聞こえてきた進行ルートの指示をチャールズ自身が吟味し、考えてから返ってくるものだとルゥは気付く。
 おそらくはこの男、たとえひとりであったとしても、少々時間はかかるが目標地点に進みはするだろう。
 それがルゥの指示によってルートの選択に確信を得る時間が短縮されている。
 以上の点から、チャールズという男がこのルートを進むのに相応の実力があるという認識をルゥは得る事となる。

「戦場でのトリアージは厳密に設定しておくべきだ」
 指示通りにチャールズが道なりに進み始めた時、ルゥは改めて口を開く。
 チャールズは振り向きかけたが、進行方向に向き直る。
「それを無視して救えるなら英雄ですが……誰もがそうあれるわけではない。わかりきった事実だ」
「……ああ、だが」
 飽くまで理屈として、ルゥはチャールズの判断に誤りは無かったであろう事を語っていく。
 そこへ、ようやくチャールズからのまともな反応が返ってくる。
「そうして、割り切れる者ばかりでもない」
 ルゥはここに来る前に聞いた、チャールズを非難する者達の存在を思う。
 確かにチャールズの言う通り、彼らの反応も普通と言えば普通だ。
「そうですね……ですが、ルールと損得で決断したのなら他者が否定できることではない」
 ルゥの言葉に、チャールズはついに足を止めた。振り向いたその目は、わずかに戸惑いの色が滲む。
 ルゥの淡々とした物言いに、仏頂面だったチャールズの顔は引きつる。
 そのうち、チャールズは大きく息を吐き、また黙り込んで道を進み始めてしまう。
「あと、こういう道は素体原価700$の僕とかに任せるもので、実力ある人間が進むものではないです」
 何食わぬ顔で、ルゥはチャールズの行動を咎める。
 先ほどの様子から、顔を向けていなかったとしてもおそらく話は聞いてくれている。
「……なんのジョークだ、そりゃ」
 くすりとも笑わず、それ以降チャールズは休憩地点まで足を止めなかった。

「ルールと損得。……そんな簡単には片付けられないな」
 チャールズのつぶやきは、崖の底に消えていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

東雲・深耶
愛しい者を亡くした、か…
母上を亡くした十歳の私を思い出すな…
そう呟いて崖の上からチャールズと合流する

ああ、この服装か?マリンルックは私の戦衣装なのでな
つまり、常在戦場だよ
そう呟いて崖から飛び降りるが着地は羽毛が布団に落ちるかの如く
目を丸くするチャールズの前で泰然自若な笑みを浮かべる
剣士は剣以外では死なない。それを極めるとこういった因果や現実の物理法則も歪められるのさ

同行する際はUDCアースにての山籠りの経験を生かして断崖を進んでいく
その間会話を挟んで心の距離を縮めていく



●Counseling
 高みから、歩く男を見下ろす少女がひとり居た。
 あの男こそ、グリモア猟兵の説明にあった者、奪還者チャールズであろう。
「愛しい者を亡くした、か……」
 男、チャールズの『これまで』を聞き、思いを馳せる。
 近しい者との死別は、この世界にあっては珍しくもない事なのはわかっていた。それでも、その悲しみに慣れる事は、おそらくない。
「母上を亡くした十歳の私を思い出すな……」
 幼き日の自身を浮かべ、東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)はチャールズとの合流に動き始めた。

「――先ほどからやたらと話しかけてくる連中が居るが、お前もその仲間か?」
「おそらく、そうだ」
 十分に近付いた所で話しかける機会を窺っていた深耶だったが、先に話しかけてきたのは、意外にも奪還者チャールズの方であった。
 チャールズは近付いてくる深耶の存在を察知していたようだ。隠れていたわけではないとはいえ、なかなか感が良いと深耶は感じる。
「……変わった恰好だ。ずいぶんと軽装のようだが」
「ああ、この服装か?」
 深耶は自身の身に付けるセーラー服の裾を広げて見せる。
 この衣装、実際にはただのセーラー服ではなく、神話級の聖遺物なのだが……一奪還者でしかない者に対して気が付けというのも酷な話か。
「マリンルックは私の戦衣装なのでな。つまり、常在戦場だよ」
 深耶は自身の立つ崖から、チャールズの前辺りに目掛けて飛び降りる。
 声こそ上げなかったものの、深耶のその動きにチャールズはびくりと身構える。
 加速する落下速度をそのままに、深耶は岩場に……ふわりと着地した。
 目の前の不可解な出来事に対して、チャールズの眉間にしわが寄る。
「そんなに不思議か?」
 平然とした様子で、深耶は笑って見せた。
「剣士は剣以外では死なない。それを極めるとこういった因果や現実の物理法則も歪められるのさ」
 実際には【誓天制地・唯一つの未来に殉じるは剣の道の果て】による異能の効果なのだが、それを説明するのも野暮と思い、深耶は口を閉じた。
 深耶は、その流れでごく自然に同行する空気を作っている。深耶自身は山籠もりの経験も豊富たため、その足取りも軽やかだ。
 常在戦場。曰く、『戦場にいる心構えや気持ちでものごとに当たれ』という古の武士とやらの心得があるそうな。
 チャールズは頭を掻き、首をひねる。
「……それが秘訣か?」
 滞りの無い深耶の足取りとマリンルックと呼ぶセーラー服装備。それらをチャールズはなんとかして結び付けたようだ。
「ああ、よければ道すがら指南しよう」
「……遠慮しておく。真似できそうにない」
 結局のところ、チャールズに出来た事は深耶の指南の申し出を断る事ぐらいであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
有事の際は制圧射撃やUC使用し作戦に参加した奪還者として真面目に行動

夜間見張り又は休憩の際にチャールズと話す

チャールズの目をまっすぐ見て
「私は奥様のキャシーさんの名誉を取り戻したいのです…戦って、貰えませんか」

「貴方とキャシーさんのお話は伺っております。貴方とキャシーさんの立場が逆だった時。私はキャシーさんも同じ事をしたと信じます。自分を救いに来て全滅したと言う生き地獄を味合わせるよりも、集った仲間を救いどんな汚名を着ても相手の心を守ったと。妻殺しという言葉は、キャシーさんに対する侮辱です。キャシーさんの名誉を回復して欲しいのです…だってキャシーさんは、まだ2度目の死を迎えていないのですから」



●Bonfire
 夜は更け、荒涼の地は静まり返る。
 今回のルートは、そもそもが足場が不安定であり、段差や崖が連続している。こんな道なき道を、陽の光のない夜に進むのはあまりにも無謀だ。
 そこで、チャールズは夜が明けるまで焚火をし、身体を休める事を選択する。
「貴方とキャシーさんのお話は伺っております。チャールズさん」
 そろそろ来る頃合いだとは思っていた。
 今日の進行、日の入りまでの時間に何度か現れた助っ人達。彼らは決まって、チャールズの『妻殺し』について言及していった。
 であれば、焚火を挟んで目の前に現れた桃色の髪の女性も、その関係者か。
 話したい事ではない。
 しかしせっかくつけた焚火を移動するのは面倒だし、何よりチャールズ自身も少なからず疲労がたまっている。
「……客の多い日だ」
 溜息を吐いて、チャールズはこの女性の話に耳を傾ける事にした。

 取り付く島がない事には、話が始まらない。少なくとも無視はされなかった事に桜の精の女性、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は安堵していた。
 これならば、きっと話を聞いてくれる。
「貴方はキャシーさんを撃ち、解放した。そして、それならば。貴方とキャシーさんの立場が逆だった時」
 口にしたのは大前提。逃れられない、今もなおチャールズを蝕む事実。
「私はキャシーさんも同じ事をしたと信じます。自分を救いに来て全滅したと言う生き地獄を味合わせるよりも、集った仲間を救いどんな汚名を着ても相手の心を守ったと」
「……」
 チャールズは、口を挟まない。桜花の話が、まだ終わっていなかったからだ。
「貴方が呼ばれている『妻殺し』という言葉は、キャシーさんに対する侮辱です。……私は奥様のキャシーさんの名誉を取り戻したい」
 ふと、チャールズが顔を上げる。
 妻殺し。それは、長らくチャールズに向けられ続けてきた仇名だ。そこには、チャールズに対する侮蔑の意が込められている。そこに、桜花の新たな解釈を提示する。
「キャシーへの……侮辱?」
 チャールズの瞳は揺れる。それは、チャールズが思ってもみなかった言葉だったようだ。
 そのチャールズの目を、桜花は捉える。
「――戦って、貰えませんか。チャールズさん」
 見つめる視線に、意思を込める。
 チャールズも桜花の目をしばらく見つめた後、溜息と共に視線を外す。
「…………俺は、しばらく休む。後は好きにしろ」
 そう言い、チャールズは焚火と桜花に背を向ける。
 目をそらされてしまったが、桜花の言いたかった事は、おそらく伝わっている。
 きっと、チャールズは戦ってくれる。桜花は、そう信じる事にした。

 妻が……キャシーが侮辱されている。
 そんな事は、考えた事もなかった。
 ずっと『妻殺し』は自身の事だけを指す言葉だと思っていた。
 それは違ったのだろうか?
 疲労と眠気で、上手く頭が回らない。考えが、まとまらない。
「……」
 しかし、こうしてキャシーの名前を出された以上。チャールズとしても足踏みはしていられなかった。
 キャシーのために、出来る事をしなければならない。
 それはチャールズの中で、密かに芽生えた『意思』だった。
 不意に、目の前に『花』が舞う。……こんな場所に、花?
 普通に考えればあり得ない状況で、何事かを調査する必要があっただろう。
 しかし、その『桜吹雪』は、見ているだけでチャールズの瞼を重くする。
「……キャシー」
 思考も、どんどん鈍くなる。
 焚火に照らされた花は、夜空を舞い、どこかへ飛び去って行く。
「……安らか、に……」
 それらを、最後まで見送る事なく。
 チャールズは意識を手放した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『フレイムアーミー』

POW   :    ファイアスターター
【火炎放射器の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【ゲル状の燃料を燃やすことで生じる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    トリプルファイア
【火炎放射器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    ヘルファイア
【火炎放射器の炎】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:松宗ヨウ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※プレイングの投稿を検討している参加者の方々へ
 土日に集中して執筆したいため、まことに勝手ながら募集期間を6/24~6/26もしくは6/30~7/3に定めたいと思います。
 MS側の勝手な都合で恐縮ですが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
●Flame army
 ほぼ直線距離をまっすぐに突っ切ってきたチャールズと猟兵達は、他の奪還者よりも先んじて目標地点に到達する。
 そこは、最近発見されたデパートの跡地。広大な敷地には、未だに物資が眠っているはず。……そして、それを知るのは何も奪還者だけではない。
「奪還者がのこのこやってきたぞ!」
 近付くチャールズ達に気付いて、声を上げる存在が居た。
 オブリビオン・フレイムアーミー。運悪く、彼らと同時期に到着してしまったようだった。
「よし、奪還者からも物資を奪うぞ!」
「まて、あの男見覚えが……思い出したぞ、あの時の『妻殺し』だ!」
 チャールズの眉が、吊り上がる。
 よもや、敵からもそのような呼ばれ方をするとは、さすがに思っていなかったようだ。
「ハッ、あの時自分の番いを撃って逃げ延びた臆病者が。殺されに戻ってきたようだな!」
 フレイムアーミーは、火炎放射器を手に取り、標的を定める。
 言わずもがな、目標はチャールズと猟兵達だ。
「一思いには死ねないぞ。苦しんで燃え尽きるが良い!」
 炎で気が大きくなっている敵を見据え、チャールズは静かに、自身のライフルを手に持った。
 戦闘、開始である。
御園・桜花
「そんなに炎がお好きなら。貴方達も、その炎で燃え尽きると良いでしょう」

UC「シルフの召喚」
シルフに背中のガスタンクから繋がるホースを背中のタンクごとどんどん両断させる
その後高速・多重詠唱で炎の精霊召喚して弾丸に炎の属性乗せ制圧射撃
行動阻害と漏れ出たガスの引火爆発を狙う
「その炎は私の願いから生じたもの。貴方達では消せません」


敵注視したまま
「蔑称の容認は、貴方が相手の考えを認めていると思われるのです。キャシーさんは、貴方に殺された可哀想な妻ですか?キャシーさんの為した事全てを、可哀想な女という言葉だけで括られて平気ですか。私は違うと思います。キャシーさんの名誉を取り戻して下さい、チャールズさん」



●Sylphid
 敵となるオブリビオン……フレイムアーミ―は『複数』。
 それに対し、チャールズは基本的に『単独』での行動を念頭に置いている。それでいくと、今回の状況はあまりよろしくない。
 まず、敵であるフレイムアーミーに発見された段階で、チャールズとは位置がやや近すぎる。
 チャールズの得物は狙撃用ライフルと拳銃が一丁ずつ。どちらで狙うにも難のある距離だ。無論、それは火炎放射器で戦うフレイムアーミー共も同じ事だが……。
「逃げ場はないぞ! おとなしく燃え尽きろ!」
「ああ! 燃料だってもったいないからな!」
 先述したように、あちらは数が多い。誰かがチャールズに追いつけば、他も次々とチャールズに追いつく。
 そうならないよう、チャールズは遮蔽を駆使して全力で逃げていた。どうにか距離が開けば、ライフルで応戦できるのだが……。
「――森の妖精、風の精霊。私の願いを叶えておくれ」
 ふと、聞いた声がした。
 遮蔽に背に、チャールズは声の主を探す。それは、先に会った『桜の精』。
「代わりに1つ、お前の気ままに付き合おう。おいでおいで、シルフィード」
 一瞬、強い風がふき抜ける。風が抜けた所の空間が歪んでいたのを、チャールズは目の当たりにする。と言う事は……と、風の向かう先にはフレイムアーミー。
 風は斬撃となりて、フレイムアーミーを斬り刻んでいた。
「ぐわぁ!」
「な、なにィ!?」
 不可視の刃に突然その身を刻まれ、フレイムアーミーは狼狽える。
 その様子を見て、彼女は歩み寄る。
「そんなに炎がお好きなら。貴方達も、その炎で燃え尽きると良いでしょう」
 厳しさを含ませる面持ちで、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はフレイムアーミーを見つめていた。

 桜花は【シルフの召喚】によって『風の精霊』の力を借り、フレイムアーミーに向けて風の刃を放ち続ける。
 それも、ただ闇雲に風の刃を飛ばしているのではなく、火炎放射器のタンクやそこから伸びるホースなどを的確に狙っている。
「蔑称の容認は、貴方が相手の考えを認めていると思われるのです」
 行動や視線に油断はなく、それでも言葉は明確にチャールズに向けられる。
 口数が少なく、口下手なチャールズも、反応せざるを得ない。
「また説教か。……事実だ、仕方ないだろう」
「キャシーさんは、」
 チャールズも遮蔽から半分身を乗り出し、ライフルで射撃を始める。桜花の意図を汲んだのだろう、チャールズも火炎放射器のタンクへの狙撃を試みている。
 戦いながら話す事は楽ではない。桜花は、切ってしまった言葉をもう一度言い紡ぐ。
「キャシーさんは、貴方に殺された可哀想な妻ですか?」
「――」
 チャールズから、言葉は返ってこない。
 訴えながら風の刃を飛ばす桜花に、黙々と聞きながらライフルを撃ち続けるチャールズ。返事はないが、反論もない。
「キャシーさんの為した事全てを、可哀想な女という言葉だけで括られて平気ですか」
 ……チャールズは溜息のようにも聞こえるように鼻で笑う。
「わかったような事を言う。だが……そうなのかもな」
 ふとバックパックに手を突っ込み、取り出したのはしわしわに折れた煙草。
 煙草を口にくわえ、火を点ける。
「キャシーを撃って帰った後……俺は脱力感に襲われた。今だからわかるが、あれは喪失感ってヤツだったんだろう。仲間から何言われるかもわかっていたのに、俺は……何もかも面倒になって、好きに言わせていた」
 煙を吐き、沈んだ顔は浮かび上がる。
「その結果がこれだ。俺が……キャシーを『可哀想な女』にしていたんだな」
 一時攻撃を止め、桜花はチャールズに駆け寄る。チャールズは駆け寄ってきた桜花に煙を吸わせないよう、やや顔を背ける。
 言葉は届いて、顔は上がった。
「キャシーさんの名誉を取り戻して下さい、チャールズさん」
 あとは、手を差し伸べるだけだ。
 桜花は軽機関銃を手に持ち、隣で構える。
「……ああ」
 それに合わせ、チャールズもライフルを構える。
 桜花とチャールズ、揃って撃ち出された弾丸は、桜花が召喚した『炎の精霊』によって炎を纏い。
「――あ」
 桜花の風の刃と、チャールズの射撃によって破損したタンクから、漏れ出たガスに触れ、引火する。
「ぎゃ、ぎゃあぁぁあッ!?」
 引火に爆発。それらが連鎖的に、次々とフレイムアーミーを飲み込んでいく。
 一様に悲鳴を上げて、爆発炎上するフレイムアーミー。それを見る桜花の視線は、やはり厳しい。
「その炎は私の願いから生じたもの。貴方達では消せません」
 つまり、この炎はすでにフレイムアーミーの物にあらず。
 炎にも強いはずのフレイムアーミーは、皮肉な事に炎によって余計に苦しむ形で倒されていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルゥ・グレイス
チャールズが瞬間的に激高しないか一瞬、目を向ける。

その様子が欠片ほどもないことに気づき、次の瞬間には発煙筒を投げる。
僕も彼も得物は遠距離用ライフル。こうも近くにいては勝ちの目はない。

彼は彼で最適解を取ると判断して、岩陰に。
狙撃銃の安全装置を外して機会を狙う。

相手が一瞬気を抜いた瞬間を狙って射撃。僕と彼のどちらかが確実に一人づつ仕留めていく。

膠着状態で埒が明かないと相手が判断し、広域を焼き払う選択をした瞬間、一気に駆ける。
躊躇なく炎に突っ込んで捕縛魔術を起動。残った相手を行動不能にする。

「さて、彼らをどうするかはご自由に。別に誰も見ていませんし、僕が吹聴することもない。どうぞ好きにしてください」



●Under the Red Sky
 フラスコチャイルドの少年、ルゥ・グレイス(RuG0049_1D/1S・f30247)はひとつの大きな懸念を抱いていた。
 それは、チャールズの事だ。まさか、オブリビオンにまで『妻殺し』をいじられるとは予想外だった。件の奴隷商レイダーと組んでいたのだろうか……。
 このような口を利かれては、心をかき乱されてしまったとしても不思議はない。チャールズのような沈んだ男であれば尚更だ。
 そう思い、ルゥはチャールズの様子に一瞬目を向けた。……そこには、相変わらず静かな様子の男が居た。
(よかった、大丈夫そうだな)
 ルゥは自身の懸念が杞憂であったと思い知り、即座に取るべき行動を算出し直す。
 この状況を切り抜けるに足ると導き出された道具は……発煙筒。
「なにィ!?」
 ルゥは、自身らとフレイムアーミー共の間に落ちるように発煙筒を放り投げる。
 思惑通り、フレイムアーミーとは煙によって領域が寸断される。
「……そう言う事か」
 チャールズは煙で身を隠すように後退する。その際、ルゥに対して目配せを行う。視線は装備の次に、ルゥの目に移動する。この一瞬で、ルゥの装備の確認まで済ませたようだ。
 そのままチャールズは駆け抜け、距離が離れた所の大きめの岩を遮蔽物として身を隠す。
(よし、そうしてほしかった)
 ルゥもまた、チャールズが隠れたのとは別の岩の陰に身を潜める。
 これは、お互いに持つ武器を把握した上での作戦だった。
 チャールズが持っているのは狙撃用のライフル。そして、ルゥ自身が持つ武器『灰骸の翼』もまた狙撃用の銃だ。近距離で猛威を振るう火炎放射器を相手に、この開戦距離は分が悪い。
 そこで、ルゥが投げた発煙筒だ。煙幕によって視界は遮られ、フレイムアーミーも軽々に煙の中には突っ込めない。そこで、足止めをしているうちにルゥとチャールズのふたりはまんまと距離を取る事に成功したのだった。
 チャールズが意図を汲んでくれるかどうかが、やや気がかりではあったが……概ねルゥの思い通りに事は進んでいた。
「くっ……距離を取らせるな、突撃だー!」
 焦ったフレイムアーミーが、煙の中を突っ切ってこちらに接近を試みる。
 ここで、まずはルゥが身を乗り出す。
「い、居たぞ。あそこに――」
 最後まで言わせず。
 ルゥの『灰骸の翼』の【或る弾丸の終末】による光線が、フレイムアーミーの個体を貫く。
「ひとりやられた!」
「くそ、囲め! あいつから始末――」
 また言いかけたフレイムアーミーの頭を、今度は横から銃弾が貫いた。
 ルゥとチャールズの狙撃が同時に命中。動揺したフレイムアーミーに、ルゥがもう一発光線を撃って岩陰から駆け始める。
 向こう側ではチャールズも別の遮蔽に移動を開始している。
 アサルトライフルやサブマシンガンのように制圧射撃に向いた銃が無い以上、これが取れる最善の戦略であった。
 警戒が薄れた敵から確実に撃ち抜き、警戒する敵をまた片方が撃ち抜く。的を絞らせない戦略。
 フレイムアーミーが痺れを切らすまで、そう時間はかからなかった。
「くそ、もういい! 全員、そこら中を焼き払え!」
 フレイムアーミーは手に持つ火炎放射器を巨大化させ、広範囲を焼き始める。
 一応、味方を燃やさないように配慮はしているようだが、それにしても範囲が広い。このままではルゥもチャールズも消し炭だ。
 そこで、ルゥは……対策に打って出る事にした。
「おい、待――」
 ルゥの出ようとしている行動を察し、チャールズが声を出す。が、その前にルゥは腕を交差してフレイムアーミーの炎の中に突っ込んでいった。
 服が焦げる。肺も焼けるため、息は止める。
「なッ――」
 炎の中を突っ切る少年の姿に……フレイムアーミーは、わかりやすく驚愕していた。

「……それで」
「ええ、捕縛しました」
 チャールズの問いにあっけらかんと答えるルゥ。その後ろには後ろ手に縛られ、座り込むフレイムアーミーの姿。
 縄で縛られているわけではなく、ルゥの行使した捕縛魔術によるものだ。
「さて、彼らをどうするかはご自由に。別に誰も見ていませんし、僕が吹聴することもない。どうぞ好きにしてください」
「……」
 ルゥの台詞にチャールズは溜息を吐き、頭をかく。ルゥの行動の意味を、今ようやく理解したようだった。改めて、ルゥに向き直る。
「こんな事のためにわざわざ危険をおかしてこいつらを捕まえたなら、もうするな。それに」
 拳銃を取り出し、一発。フレイムアーミーがひとり倒れる。
「……こいつらは、奴隷商についてただけの雇われだ。復讐する気はない。……わかったら、こいつらの始末を手伝ってくれ」
「……そうですか」
 ……遠まわしに心配されたような。
 そんな感覚を覚えつつ、ルゥとチャールズはひとりずつ、フレイムアーミーにとどめを刺していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

東雲・深耶
まぁ、私が言えることは一つ
燃え尽きると良い
そう告げて蒼灯を掲げ、その刀を基点とした空間火炎変換能力を発現させる
空間ごと炎に代わる剣を前に火炎放射器の炎など空間が火炎に変わる際の空間の変容に巻き込むことで封殺する

……何があって、最愛の者を撃ったかは聞きません
ですが、ただ確かな事は……知ったように愚弄の口を開く者にはそれなりの応報が必要という事であり、最愛の存在を愚弄された怒りは、真っ当に生きる者は晴らして当然の権利なのですから
そう告げて空間火炎変換能力をいったん解除し、虫の息のレイダーの四肢を時空間切断剣術で切り裂き封じる

後はお好きにどうぞ……そう言って刀を鞘に納めるぞ



●Revenge
「くそ、あんな助っ人が居るなんて」
 猟兵の介入により、チャールズへの攻撃が上手く通らないフレイムアーミーは苛立ちを募らせていた。
 ひとり、またひとりと倒されていく同胞。状況は、明らかに悪くなってきていた。
「火力を上げろ! こうなったら一気に燃やし尽くせ!」
 フレイムアーミーのひとりが声を上げると、他の個体も一斉に火炎放射器のスイッチを切り替える。可燃性のガスから『ゲル状の燃料』を放射するものへ。燃料を切り替えるスイッチだったようだ。
 今まで自分達が居た敷地にもお構いなしに、フレイムアーミーの炎は纏わりついていく。
「――空炎蒼灯・それは蒼き不滅の炎に空を変える」
 その炎に、真っ向から立ち向かう人間の女性が居た。
 青い炎の刃を構えると、同時にフレイムアーミー共の炎に異変が起こる。
「な……なんだ、この炎は!?」
 女性、東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)の持つ蒼炎妖刀・『蒼灯』と同様の炎がフレイムアーミーのゲル状燃料を燃やしていた。
 この炎は、フレイムアーミーの意思によるものではない。つまり、フレイムアーミーの意思では消せない。
 これこそは深耶の【空炎蒼灯・想焔は空を蒼く焼く不滅なり】による、青き『不滅の炎』だった。
「まぁ、私が言えることは一つ」
 一息吐いて、フレイムアーミーを見据える。
「――燃え尽きると良い」
 そう言って『蒼灯』を向ける深耶に、情けはなかった。
 一方、チャールズはの方も状況が飲み込めずにいた。
 今まさに接敵というところで、見覚えのある姿が割り込んできた。
 その女が青い炎揺らめくような奇妙な刀を掲げると、フレイムアーミー共の放つ炎が青色に変わる。この事態に、奴らは狼狽え始めたのだ。
「……何があって、最愛の者を撃ったかは聞きません」
 この状況を作り出した張本人は、フレイムアーミーに目こそ離さないものの、言葉はチャールズへ向けてくる。
「ですが、ただ確かな事は……知ったように愚弄の口を開く者にはそれなりの応報が必要という事であり、」
 深耶の青い炎により重傷を負ったフレイムアーミーのひとりに歩み寄り、『蒼灯』を向ける。
「最愛の存在を愚弄された怒りは、真っ当に生きる者は晴らして当然の権利なのです」
「や、やめ……あぁぁああ!?」
 青い炎は一度消えるが、深耶の敵意は収まらない。
 炎に焼けた身体を押して後ずさるフレイムアーミーを襲ったのは、一息に降りかかる斬撃だった。
 流派『空閃人奉流』、時空間切断剣術。
 その切れ味は、フレイムアーミーの四肢を一瞬でもぎ取るほどだった。
「後はお好きにどうぞ」
 深耶は『蒼灯』を鞘に収め、歩き去る。
 残りのフレイムアーミーも、どうやら青い炎によって甚大な被害を被っているようだ。
 つまり、復讐の時間は十分だ。

「……」
 拳銃を取り出し、四肢を切り落とされたフレイムアーミーに向ける。
 痛みにのたうち回る事もできず、うめき声をあげ、時折こちらに視線を向けてくる。
 こいつらの能力はこの火炎放射器によるものだけで、おそらく再生能力のようなものはない。
 で、あれば……この者には、最早何をする力も残ってはいないと言う事。
「……弾の無駄だな」
 チャールズが選んだのは、放置だった。
 放っておいても、遅かれ早かれこいつは死ぬ。ならば、わざわざ今撃たなくてもいいだろう。
 それに。
「こんな復讐に、意味はない」
 それは大勢を左右するものでも、誰かに望まれた行動でもない。
 まして、キャシーがそれを望むとはとても思えなかった。
「……敵もあと少しだな」
 拳銃をホルスターにしまい、ライフルを構える。
 助っ人の介入により、フレイムアーミーの数は順調に減ってきている。
 チャールズは再び、フレイムアーミーに相対するべく走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フラム・ストラトス
※アドリブ共闘歓迎

さて、試練の時間じゃぞチャールズ。
お主の力を見せてみよ。

我はあくまでもチャールズが全力を引き出しやすいように、間引きや抑えに勤めようぞ。
今回は敵は炎と油。ならば砂が一番じゃ。
水じゃと水蒸気爆発してチャールズ殿も危ないからの。
弾丸を風でおとせれば
それ視界不慮の砂嵐と、砂の刃を受けてみろじゃ!
いまじゃぞチャールズ、よき狙撃を見せておくれ!



●Sandstorm
「――全ては基礎より構築され、基礎なくして体はなし。廻る万象の方程式、導かれん解を識れ」
 羽がひらひらと宙を舞う。
 それらひとつひとつが魔力を帯びていき、その姿を変えていく。
 フラム・ストラトス(魔導極めし有鳥天・f31572)自身が操るその羽の姿は、本人の思うがままだ。
「今回は敵は炎と油。ならば砂が一番じゃ」
 羽は次々と風に乗り、その姿を『砂』へと変える。砂が風に乗るなら……そこに発生するのはひとつ。
「な、なんだ突然!?」
「砂嵐! 急に発生したぞ!?」
 フレイムアーミー共は思わず顔を腕で庇う。
 フラムの【虚数方程式・鶉】による砂属性魔法が、次々と風に乗って砂嵐を発生させていく。
 炎にとって、砂や土は天敵だ。燃えないし、燃えているところに降りかかれば火は消されてしまう。まして風もふいていれば、それは最早炎を通さぬ防護壁のようなもの。
「さて、試練の時間じゃぞチャールズ」
 フラムは『お膳立て』を終わらせ、当人の様子を窺うため視線を向ける。
 離れた位置を陣取り、やや高所からライフルを構えるチャールズの姿を、フラムは見る。
「お主の力を見せてみよ」
 その姿に、フラムは笑う。
 フレイムアーミーとは対照的に、チャールズは至って平静を保っていた。

「試練、か……なるほど」
 チャールズは、翼を持つ女性・フラムの言葉の意味を考えていた。
 意図的に砂嵐を起こせるような女だ。おそらく、フレイムアーミーを普通に相手してもまったく問題にはならないだろうとチャールズは思う。
 であれば、彼女の言う『試練』とはこの状況そのものと言えるのではないだろうか。
(この砂嵐のおかげで、火炎放射器は通りにくいが……逆に言えば狙撃の命中率も)
 風に大量の砂が舞う天候。撃った弾は風に揺れ、砂が纏わりつく。
 普段なら問題ない距離も、今はどこまでも遠くに感じるほどだ。
「……望むところだ」
 そう、これが『試練』。チャールズは照準器越しに標的を見る。
 ――一射目、左に3mずれる。
 二射目、今度は右に1m。
 続く三射目。命中。敵ひとりが沈黙。
「な……この砂嵐の中、当てやがっただと!?」
「くッ……狙撃手はあそこだ、行くぞ!」
 フレイムアーミーは倒れた同胞に動揺はしたものの、すぐにチャールズの位置に当たりを付けて行動を開始。すぐに進行を開始する。
 ――四射目、左に1m。そして五射目、命中。
「くそッこれ以上やらせるな! 行け、行け!」
 焦ったフレイムアーミー共は、さらに駆け足でチャールズに接近していく。
 砂嵐に慣れて命中率が上がってきたとはいえ、狙撃用ライフルでの殲滅には限界がある。
 一度後退も考えたチャールズであったが、その時、横から発生した砂がフレイムアーミーのひとりを『斬り付けた』。
「な、なんだと!?」
「チャールズ殿を立てているが、我の事も忘れてもらっては困るの」
 高所からフレイムアーミーを見下ろしているのは、他ならぬこの状況を作り出したフラムだ。数が多いと判断し、出て来たのだった。
「視界不良の砂嵐と、砂の刃を受けてみろじゃ!」
 フラムが背中の翼を羽ばたかせると、より一層砂嵐は激しさを増し、さらには砂の集合体が刃となってフレイムアーミー共を襲っていく。
 やはりひとりでどうにでもなるのでは、と思うチャールズだったが、先の言葉を改めて思い出していた。
 これは『試練』だ。
「まだまだ。チャールズ、もっとよき狙撃を見せておくれ!」
「狙撃が難しい状況を作り出しておいてその台詞とはな……」
 ふ、と笑った声は、砂嵐に飲まれて誰にも届かない。
 その後も、チャールズの弾丸とフラムの砂の刃は次々とフレイムアーミー共を倒していき。
 ……数十分後、ようやくすべてのフレイムアーミーが一掃された。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『この荒廃した世界に花を植えよう』

POW   :    花を植える為に荒れ地を耕したり瓦礫を撤去する

SPD   :    花を植えるのに適した場所を探したり、花壇を整えたりする

WIZ   :    花の種や苗を植えたり、水やりなどをしてお世話をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※プレイングの投稿を検討している参加者の方々へ
 土日に集中して執筆したいため、まことに勝手ながら募集期間を7/8~7/10もしくは7/15~7/17に定めたいと思います。
 MS側の勝手な都合で恐縮ですが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
●Triumph
「す……すごい物資の量だ!」
 拠点住人の歓喜の声が木霊する。
 奪還者狙いのオブリビオンを討伐したその後、チャールズ達はデパート跡地の探索を開始。
 そこには、かねてより期待していた通りの物資と……ひとつ、思わぬ『収穫』があった。
 当面の間、デパート跡地の安全が確保され、後からやってきた拠点の奪還者と連携し、物資を持ち帰ったチャールズ達はひとまず歓迎された。
 とはいえ、それだけで埋まる程、溝は浅くない。
 拠点の住人は最初はチャールズに対して礼を言うものの、その後は居心地が悪そうにチャールズを避けていく。
 ……それも、『妻殺し』が相手であれば、仕方のない事だ。割り切るしかない。
「……」
 しかし、今回は違う。
 チャールズは『収穫』を握りしめ、拠点住人達の前に歩み出る。
「……みんな、聞いてくれ」
 視線がチャールズに集中する。その感情は、聞こえるとは思わなかった声を聞いたという驚きが多くを占めていた。
 ひとまず呼吸を落ち着かせる。……このように人前で話すのは、久し振りだった。
「こんな世界だ。これまでに大事な存在を喪ったヤツは多いだろう」
 拠点の住人達は、黙ってチャールズの話に耳を傾けている。
 チャールズとしては野次が飛ぶ事も覚悟していた話題だったが、存外に静聴してくれている。
 それならと、チャールズは本題を切り出す。
「……みんなに頼みがある。これを植えるのを手伝ってほしい」
 チャールズは手のひらに握った『収穫』を住人達に見せる。
 それは、花の『種』だった。これは今回見つけた物資のおよそ三割を占めていた物だ。
「今まで俺を含めたこの拠点の住人には、そんな余裕が無かったかも知れないが……今回の探索で『こいつ』を見つけた今が、ひとつ頃合いなんじゃないかと思う」
 手向けようにも、花は無く。咲かせようにも、種が無い。
 それならそれで弔う方法はいくらでもあったが、それを満足に出来ている人間がここに、どれだけいる事か。
「俺達は、大切な人間の死を乗り越えなきゃならない。……だが、その死を悼む時間はあったって良い」
 ただ前に進むだけでは、感覚は麻痺し、そのうち命の重さを認識出来なくなる。
 たまには立ち止まり、過去を清算する事も重要だ。
「……俺も、今日はキャシーの事を考えるとするよ」
 そう言って、チャールズが住人達に見せたその顔は、穏やかだった。
 拠点住人の何名かは、チャールズに賛同。
 チャールズはその者達と、拠点に花の種を植える事にした。
フラム・ストラトス
※アドリブ共闘歓迎

カッカッカ、よかった良かったわ。
まだまだ溝はあるが、前には進んだようじゃの。
我らが試練乗り越えて、間違いなく我は確信したぞ。
お主は皆を引いていける、自信を持ってこれからは進むが良いぞ。
さて、では我も我でやるべきことをさせてもらおうかの。
種植えにある程度区切りがついたら、葬送を一曲弾かせてもらうのじゃ。
プロほどではないが、魔王の鎮魂曲は魂に染みるでな。
今この時は、苦難も災難も忘れて、我が曲に酔いしれておれ。
この世界の問題は、我らが解決してやろうぞ。
そしてその暁には我が国の一部を出兵させて侵……ゴホン!
援助させてもらうことにするからの!



●Applaud
「カッカッカ、よかった良かったわ」
 花の種を配るチャールズに、尊大な女性の声がかかる。
 その女性は身体のところどころに翼を生やし、さらに脚は猛禽類のそれを思わせる。
 ……そういえば、近くで話した事はなかった。
「……あんたか」
 その女性、異世界のラスボスにして魔王であるフラム・ストラトス(魔導極めし有鳥天・f31572)はチャールズの視線をかわすように笑う。
「まだまだ溝はあるが、前には進んだようじゃの」
「……助太刀には感謝しているよ。あんたが起こしてくれた砂嵐のおかげで偏差射撃の良い訓練になった」
 感謝と共に出た捻くれた物言いに、フラムはもう一度笑いに声を上げる。
「だが、我らが試練乗り越えて、間違いなく我は確信したぞ」
 荒地の進行、他の猟兵との連携。そして砂嵐の中での敵との戦闘。チャールズはそれら全てをこなして見せた。
 フラムの下す判断は『合格』であった。
「お主は皆を引いていける、自信を持ってこれからは進むが良いぞ」
「……」
 チャールズが拠点の住人を率いる。
 それは初めて会った時からフラムがチャールズに対して言い続けてきた事。
 村八分の自身に、そんな大役が務まる筈がないと、最初は思っていた。
 了解の言葉は出ない。……しかし、拒絶の言葉もない。それが、チャールズという男にとっての『了解』である。
 チャールズの眼を見て、フラムもその意思を感じ取ったのか、これまた満足気に笑って見せる。
「さて、では我も我でやるべきことをさせてもらおうかの」
「……? 何の話だ」
 うむ、とフラムは得意気に胸を張る。
「葬送を一曲弾かせてもらうのじゃ。プロほどではないが、魔王の鎮魂曲は魂に染みるでな」
「魔王の鎮魂曲」
 インパクトの強い単語を復唱するチャールズに、頷くフラム。
 こう見えて我はオルガンも嗜むのじゃ。
 そう言って、フラムは花植え活動中の住人達の中心に向かっていった。

「今この時は、苦難も災難も忘れて、我が曲に酔いしれておれ」
 フラムは自身の魔力を編み上げ、オルガンを作り出す。
 何事かと、拠点住人の視線がフラムに集中する。
「この世界の問題は、我らが解決してやろうぞ」
 住人達に対して高らかに宣言し、右、左へ、そして正面に一礼。
 腰に手を当て、胸を張る。
「そしてその暁には我が国の一部を出兵させて侵……」
 ゴホン!
 咄嗟に咳払い。ざわめく住人達。
「――援助させてもらうことにするからの!」
 満面の笑みで改めて宣言し、フラムはオルガンに向き合う。
 フラムのその姿を見て、言葉を聞いた住人達は、ぽつりぽつりと拍手の音が徐々に湧いていった。

「……油断ならないヤツだな」
 遠目でフラムの演奏を聴くチャールズの呟きを、聞く者は居なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルゥ・グレイス
すこし身の上話をさせてください。


隣で種をまきながら話しかける。

本物の僕はどこにでもある貧民街で生まれ、当然のように奴隷商に捕まりました。
そしてどこかへ売られる前に生体情報だけ回収されました。

知ってますか?生体情報専門のカルテル。
奴隷が売られる前に血液だけ採取して専門のカルテルに売却し、その生体情報はフラスコチャイルドの素体などに転用される。
多くの場合、700$程度の産業用として。

ここからが本題ですが。
貴方の奥方もそうした情報が売られている可能性がある。
つまり、奥方と同じ形のフラスコチャイルドがいる、作られるかもしれないのです。

探してみたいと思いませんか?
その為にもこの拠点を率いてはみませんか?



●Doppelgänger
「すこし身の上話をさせてください」
 種を撒きに屈むチャールズの隣に人の気配がやってくる。
 その声にも気配にも、チャールズには覚えがあったのだろう。一瞬視線を向けたものの、その後はまた手は作業に戻る。
 申し出を断られたわけではないと判断し、ルゥ・グレイス(RuG0049_1D/1S・f30247)再び口を開く。
「本物の僕はどこにでもある貧民街で生まれ、当然のように奴隷商に捕まりました」
 奴隷商。人を捕まえ、人を売る売人。
 それはチャールズにとっても因縁深い人種であった。
「そしてどこかへ売られる前に生体情報だけ回収されました。……知ってますか? 生体情報専門のカルテル」
「……何だ、それは」
 解らない単語が増え、チャールズが初めて声に出して反応する。
 単語もそうだし、何よりチャールズには、この話題の肝所が見えてこなかったのだ。
「奴隷が売られる前に血液だけ採取して専門のカルテルに売却し、その生体情報はフラスコチャイルドの素体などに転用される。……多くの場合、700$程度の産業用として」
「……お前もその値段ってわけか」
「ええ」
 先に聞いた時は何のジョークかと切り捨てたあの発言が、この話題に通じるものだったとは。
 貧民街など気になる単語はまだあるが、とりあえず話を進めようと、チャールズは黙って促す。
「……ここからが本題ですが」
 それを受け取ったのか、ルゥもまた話題を切り出す。
「貴方の奥方もそうした情報が売られている可能性がある。つまり、奥方と同じ形のフラスコチャイルドがいる、作られるかもしれないのです」
「――何?」
 それは、チャールズにとって寝耳に水な発言だった。
 妻と同じ姿をしたフラスコチャイルド。そんなものが存在しているかもしれないというのだ。
 考えた事もなかった可能性に、チャールズの頭が揺れる。
「ッ……だとして、どうしろって」
「探してみたいと思いませんか?」
 畳みかけるルゥの言葉。更なる驚愕がチャールズの顔に浮かぶ。
 そして、ルゥの言葉は続く。
「その為にもこの拠点を率いてはみませんか?」
 それは、この拠点の『リーダー』になる理由の提示だった。
 人探しも組織探しも、人手が必要不可欠な案件だ。拠点住人に協力を募れば、何かしらの情報は集まるかもしれない。
 しかし。
「…………キャシーは死んだ。俺が送った。キャシーの姿をしたフラスコチャイルドに会う気はない」
 キャシーと同じ姿をしたフラスコチャイルド……それが本当に居たとして、それはキャシーなのか?
 それを問うた時、チャールズの答えは『NO』であった。
「だが……そんなふざけたものを作る組織があるなら、野放しにはできない」
 勝手に自身と同じ姿の人間を作られる。その情報は、チャールズにとって何よりもおぞましいものに聞こえた。
 ルゥという目の前の『実物』を前にして、それでもその誰かの姿をしたフラスコチャイルドを、チャールズは受け付けられない。
「各拠点に情報を伝達し、注意喚起を行うべきだ。……話してくれるよな?」
 チャールズは有無を言わさぬ雰囲気を放つ。
 ルゥが思っていたものとは少し違うが、ルゥはそこにチャールズの『リーダー』としての片鱗を見た。
「……思ってたより冷静ですね」
 逃れる事を諦め、ルゥは降参とばかりに手を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東雲・深耶
花、か…
私も、母上が死んだ5月1日にはいつも献花を捧げていてな…

…聞き流してほしい
こことは違う平和な世界。
そこで11歳の誕生日を迎えた少女は、病弱な母と一緒に添い寝をしたのだ
その娘の母は幼い頃薬害事件に巻き込まれて、身体は弱かったんだ
遺伝や生殖には問題なく、娘を生むことが出来たが…日々弱っていった
少女はそんなことつゆ知らず、剣術の師範である母に甘えていてな、母上の三段突きをいつか自分も体得して見せると誓って、眠りについたわけだ…

…私の誕生日は、4月30日なんだ
そう呟くと同時、種を巻いていく

大切な人を悼むのは、胸が痛いよな…



●Mourn
「花、か……」
 種をまくチャールズや拠点住人の姿を、やや離れた所から眺める人間の女性が居た。
 女性、東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)はアポカリプスヘルの出身ではない。花には、ここの住人の誰よりも触れた経験がある。特に、年に一度は。

「私も、母上が死んだ5月1日にはいつも献花を捧げていてな……」
 そう言うと、深耶はチャールズの近くで種をまき始めた。
「……こことは違う平和な世界」
 深耶が話し始めた所で、他の猟兵達と同じく対するように、チャールズは作業をしつつ『聞き』の姿勢になる。
 そのつもりもないが、深耶もまた先の戦いで助力してくれた助っ人のひとり。無下にはできない。
「そこで11歳の誕生日を迎えた少女は、病弱な母と一緒に添い寝をしたのだ」
「……」
 生まれも育ちもアポカリプスヘルであるチャールズには、まずもって『平和な世界』が想像しづらいものがある。しかし、その上でも11歳の少女の誕生日プレゼントが『添い寝』であった事に、チャールズは多少疑問に思った。
 深耶の話は続く。
「その娘の母は幼い頃薬害事件に巻き込まれて、身体は弱かったんだ」
「……薬害事件」
 チャールズが聞いた事のない事件だったが、こことは違う世界の出来事である事を思い出す。
 ……『平和な世界』であってもそのような事件が起きるとは。浮かばれないものだとチャールズは思う。
「遺伝や生殖には問題なく、娘を生むことが出来たが……日々弱っていった。少女はそんなことつゆ知らず、剣術の師範である母に甘えていてな」
 剣術の話題で、チャールズは先の戦いで深耶が見せた凄まじい剣術を思い出す。
 敵の四肢を一瞬の内に斬り捨てるかの如き剣閃。深耶にそれを教えた人物なのだろうか。
「母上の三段突きをいつか自分も体得して見せると誓って、眠りについたわけだ……」
 少なくとも、その少女は母親の事が大好きだった。平和な世界がわからないチャールズでも、その程度は想像できた。
「……私の誕生日は、4月30日なんだ」
「……そうか」
 話の内容に合点がいくと、チャールズは自然と相槌を打っていた。
 誕生を祝われた翌日に逝った母親。悲痛な表情の少女が目に浮かぶようだった。
「大切な人を悼むのは、胸が痛いよな……」
 まかれる種に、沈む声。深耶は、母親を想い、それでも笑みを作る。
 母親と過ごした日々に対する懐かしさ、それを失った悲哀が入り混じった複雑な表情だった。
「……だが、必要な事だ。キャシーは……こういうのは嫌がりそうだがね」
「そうなのか?」
「湿っぽいのが嫌いらしくてな」
 チャールズの言葉に、深耶は思わずぷっと噴き出す。
 互いに『大切な人』の話をした深耶とチャールズ。その最後は、笑顔だった。
 ……何も、ずっと悲しい顔をしてなければならない事はない。
 こうして、笑いあいながら話す事が、あっても良いのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
UC「ノームの召喚」使用
スコップ不足考え皆が好きな場所に好きなように種を蒔けるよう、種蒔き前に地面を柔らかく掘り起こす手伝いをして貰う
種蒔き後持参したケータリングカーで寸胴鍋にスープを作成
ノームに手伝って貰いながら参加者に配布
拠点の人間で覗きに来た人間がいたら彼等にも配布

種を蒔き終わった場所で鎮魂歌と希望の歌を何曲か歌ってからチャールズの所へ

「…有難うございます。貴方がきちんと声をあげてくれたから。キャシーさんの名誉は、遠からず回復することでしょう。死者を知る全ての人が死に絶える迄、死者は2度目の死を迎えることがない。貴方の愛と悼みで、何時か貴方自身の痛みが癒されますよう…有難うございました」



●Second Life
「――おいでおいで、土小人。私の手助けをしておくれ。代わりに石をあげましょう。ざらざら渡す石ビーズ、その分手助けをしておくれ」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)の呼びかけに対し、どこからともなく大勢の土小人、『ノーム』が現れる。
 運び込まれた物資があるとはいえ、まだまだ『無い物』の方が多い現状。桜花はそれに対し『人手』でのカバーを試みる事にした。
 桜花の【ノームの召喚】によってやってきたノーム達は次々に地面を掘り起こしていく。
「いかがでしょう?」
「おお、助かるよ。ありがとう!」
 種蒔きに参加していた住人からは口々に桜花に対して感謝の言葉が述べられていく。思っていた通り、スコップなどの道具も不足していたようだ。
 ……種蒔きの手伝いはこんなもので良いだろう。
 桜花はノーム達に拠点住人の手伝いを任せ、次の準備のために『ケータリング用キャンピングカー』に乗り込んだ。

 しばらくすると、桜花のケータリングカー付近は香ばしい匂いが漂い始める。
 拠点住人の視線がケータリングカーに集中する。……ほぼ間違いなく、香りは『そこ』からだろう。
「みなさん、スープが出来ましたよ」
 ケータリングカーから寸胴鍋を持った桜花と、それに続いて何体かのノームも同じく寸胴鍋を持って降りてくる。
 塩胡椒で味を調えた野菜スープだ。
「順番に配布いたしますので、並んでくださいね」
 桜花が告げると、拠点住人達は挙って列を作っていった。
 ノームも居る分だけ分散はしているが、それでも行列だ。
「美味い!」
「あとでレシピをくれないか? 材料が揃った時の定番にしたい」
「ええ、もちろん」
 住人の申し出を桜花は快諾。こうして、スープは想定以上のペースで消費されていった。

「……よう」
 歩み寄ってくる桜花の姿を確認したチャールズは、今度は先に声をかけた。
 種蒔きも終わり、その後はいつも通りひとりで居たようで、今はスキットル容器に口を付けているところだった。
「飲んでいらっしゃるのですか?」
「ああ、物資の中にあってな。……拠点の連中には黙っておいてくれよ」
「まぁ」
 チャールズの言葉に、桜花は思わずくすりと笑う。それまでの堅物なイメージだったチャールズにしてはやんちゃな事を、と桜花は思う。
 しかし、今回の探索で骨を折った奪還者はチャールズなのだ。それならば、笑って許しても良いだろう。
「……キャシーが好きだった酒を見つけて、思わずな。そして、さっきまで聞こえていた歌はあんただろう?」
「聞こえていましたか。お粗末様です」
 笑って、ぺこりと頭を下げる。
 桜花の歌は『シンフォニックデバイス』を通して拠点内にもよく響き、とりわけ鎮魂歌や希望の歌は、桜花の歌唱力の高さも相まって多くの拠点住人の胸を打ったようだった。
 やや遠目から聞いていたチャールズも、密かにそのひとりとなっていた。
 ぐい、とスキットルを傾ける。
「……貴方がきちんと声をあげてくれたから。キャシーさんの名誉は、遠からず回復することでしょう」
 死者を悼む姿勢を見せたチャールズの姿に、彼を『妻殺し』と呼ぶ人間は少なくなっていく事だろう。桜花は、その姿に希望を見出していた。
「死者を知る全ての人が死に絶える迄、死者は2度目の死を迎えることがない」
「……それが、あんたの言っていた『二度目の死』ってヤツか」
「えぇ」
 以前のやり取りでも、桜花がチャールズに言い放った台詞だった。
 チャールズもその言葉の意味を考えていたようで、しかしその解釈には辿り着かなかった模様だ。
「貴方の愛と悼みで、何時か貴方自身の痛みが癒されますよう」
「……愛とか、よせよ」
 桜花の言葉に恥ずかしさが込み上げてきたのか、チャールズは頬を掻いてそっぽを向く。
 スキットルには口を付けない。……今日は、もう飲まないようだ。
 桜花も、もうこれ以上話す事は無くなった。
 姿勢を正し、チャールズに向き直る。
「――有難うございました、チャールズさん」
 どうかお元気で。
 最後にそう挨拶で締めくくり、桜花は去って行った。


「……いいだろ、酒。自慢しに来たんだ」
 ひとり、チャールズは小さな十字架の前に立つ。
 小さくキャシーの名が刻まれたそれは、墓標であった。
 遺体を回収できなかったため、形だけの墓ではあるが……チャールズの仲間のひとりが、建てておいてくれたものだ。
「……俺は、ひょっとしたらお前を忘れようとしていたのかもな」
 拠点住人に何を何度言われても、気にならなかったほどの喪失感。痛み、苦しみ。
 どうせ、逃げられないとわかっていても。どうしても忘れたかった。
「……俺は、もう少しこっちで足掻く。だから、そっちで待ってろ」
 飲みかけの酒の入ったスキットルを墓に添えるように置いていく。
 キャシーが好きだったウィスキーだ。
「花は……咲いたら、そのうち持ってくる」
 要らないよ、と言うキャシーの姿を浮かべたのか、途中で言葉を詰まらせる。
 そうだ。そういう性格だったな。
 だが、今日はチャールズが言った通り、死者を悼む日だ。
「キャシー……今日も、安らかに」
 いつも言っているはずのその言葉は、しかし口にした表情が違った。
 顔を伏せた沈痛な面持ちから、しっかりと顔を上げ、まっすぐに墓標を見つめる面構えへ。

 ……この後、チャールズが渋々ながら拠点の住人を引っ張る『実質リーダー』となるのだが。
 それはまた、別のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月13日


挿絵イラスト