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銀河帝国攻略戦⑧～レプタイル・カーニバル

作者：豊葦原中津国

　ついに『解放軍艦隊』と『エンペラーズマインド防衛艦隊』との決戦がはじまろうとしている。これまでの猟兵たちの活躍により、解放軍艦隊側の戦力は十分な状態で挑むことが出来るだろう。しかし、
「解放軍艦隊は、民間人が多数居住している移民船団で、大規模な艦隊戦の経験なんて勿論ないんだ」
　翡翠の瞳をきゅっと寄せてリィリィット・エニウェア（迷宮は爆発だ・f13106）が言う。
「だから、危ないのは開戦直後。出鼻を帝国の超兵器で挫かれたら、かなり苦戦することになっちゃうと思う」
　指を一本立ててくるくるしつつリィは続ける。落ち着かない娘である。
「戦争だからね、無傷で終わろうなんて虫のいいことだとは思う。でも！　だって！　出来る限りは助けたいじゃない？　」
　そしてカクン、と肩を落とす。
「でも、見ちゃった以上、あたしは助けに行くことが出来ないの」
　それはグリモア猟兵たちが、必ず直面する問題。予兆を見てしまった者自身は、直接その未来に干渉することはできない。
「だから、お願い！　助けに行ってあげて」
　敵は帝国軍が繰り出す巨大な恐竜型殲滅兵器と、その取り巻きである小型恐竜型メカだ。
「そいつらがね、こう……パレード？　みたいにずらーっと並んで突撃してくるんだ」
　それは確かに戦いの経験のない者がみたら慌てそうだ。
「電飾つけて楽し気な音楽でも鳴らせば、平気かもしれないけど、まあそんなことはしてくれないしね」
　肩をすくめながらそんなことを言う。そして、
「メカ恐竜をやっつけて、解放軍の人たちを助けて下さい。よろしくお願いします」
　深々と頭を下げるのだった。
「あ、出来たらドカーンと派手に爆破させてくれたら嬉しいな」

第1章 ボス戦 『デスモ・ブラキオス』

POW   :    CODE：Dino 【恐竜の本能 】に覚醒して【広域殲滅モード】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。 SPD   :    CODE：Raptor 【体から生み出した無数の小型恐竜メカ 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。 WIZ   :    CODE：Venom 【未知のバイオウイルス 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【ダメージを共有する状態】で繋ぐ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●Phase1．初撃

　宇宙空間に高笑いがこだまする。物理法則をぶっちぎって響き渡る。
「おーっほっほっほっ！　派手に吹っ飛ばせばよろしいのですわね！　」
　白磁の肌に赤い瞳。美しい白髪がなびき、ミルキーウェイを作り出す。
「それならワタクシにお任せですわ！　おーっほっほっほっ！　」
　声の主はキャスリーン・ジョイス（はぐれお嬢様純情派・f12803）ぱっと見はいいとこのお嬢様だが、立派な猟兵である。対面している者もいないのでボロは出ない。ボロが出ないので立派なお嬢様に見える。立派なお嬢様が高笑いをするのかどうかは、議論の余地があるかもしれない。その高笑いに対抗するかのように声が張り上げられる。
「フハハハ……我が名は、グランドフォースに導かれし、世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大幹部、マスター・カオス！！　グランドフォースの導きは下った！　」
　白磁の仮面は漆黒の鎧と共に。白のマントが宇宙すら包み込まんとする圧力を見せる。
「さぁ今こそ、銀河帝国にその風穴を開けん！　」
　力強く宣言するのはマスター・カオス（秘密結社オリュンポスの大幹部・f00535）だ。内容はともかく、戦闘経験のない解放軍に対し、猟兵ここにあり！　と宣言するのは意味のないことでもないだろう。少なくとも、初撃で心折られることはあるまい。自信満々に味方というのは寄る辺として頼もしいものだ。……二人がそこまで計算しているかはともかく。そこに、味方の識別コードを発する鎧装騎兵が接近してきた。
「皆、一旦そこで停止して。……大きいヤツを叩き込む！　」
　背部に接続された『ヴァリアブル・エクシード・ブースター』が轟音をあげて加速する。一気に先頭に躍り出て、さらに加速。レーダーの補足すら振り切って敵陣へと切り込んでいく。その身はまるで一振りの刃。
「巨大な戦艦が相手なら、こっちも奥の手を使うしか！」
　巨砲と化したアームドフォートを構えて、ターゲットは帝国軍戦艦。放たれるユーベルコードは【蒼き清浄なるセカイのために】。それが着弾すると【いつ見ても美しい人類救済の炎】が燃え上がる。
「ミディア・スターゲイザーの理想を掲げる為に…！　 銀河帝国攻略戦、成就の為に…！ 　エンペラーズマインドよ！　私は帰って来た！　」
　炎の中で崩れていく戦艦を確認した春日・釉乃（”CHIPIE”・f00006）は宙域から離脱していった。

●Phase2．策撃

　宇宙の闇の中に巨大な銀が姿を現した。四肢と長い首、長い尾。およそ宇宙を行くのに相応しい姿ではないそれはしかし、我が物顔で宙を泳いで行く。よくよく目を凝らすと、腹部の辺りから小型の恐竜メカが、ポロポロと零れ落ちるように生み出されているのが見える。進む度に戦力を増し、対象を蹂躙していく兵器。『デスモ・ブラキオス』は猟兵たちを認めると、咆哮をあげる。

　釉乃の一撃がこの宙域での開戦の狼煙となった。消えゆく炎を見つめながら零すのは【狼の巣】の二人だ。
「おー、派手にやったなぁ」
　と、楽しそうに言うのがチガヤ・シフレット（バッドメタル・f04538）
「リィの奴がドカーンと派手にとか言ったからか？　」
　と、眉を寄せるのがザザ・クライスト（人狼騎士第六席・f07677）だ。鋭い眼光が不満そうにも見えるが、内心では派手に行く気満々である。
「では、行きましょうか」
　ザザと共に前衛を務める夜舞吹院・兎鞠（明鏡華筏・f13330）も準備万端と声を掛けてくる。
「おっと、ちょっと待って欲しいな」
　そこに、ふわりとやって来る者がいた。先行していた歩・備忘録（歩く備忘録・f02523）である。
「突撃せずに、待ち伏せといかないかい？　」
「何か仕掛けたのか？　」
「ああ、ちょっと期待に応えようかと思ってね」
（「「爆破する気だ……」」）
　ともあれ、猟兵たちは備忘録の指示を受け、迎え撃つ体勢を整えた。

　デスモ・ブラキオスの巨体が、猟兵たちの元へと一直線に突き進む。備忘録の仕掛けた機雷原に突入するも、勢いは止まらない。発生する小型恐竜メカが相殺していく形になっているようだ。
「思ったよりダメージは与えられてないな……」
「いや、でもあれがなかったらかなりの群れになってるんじゃないかな」
「そうだな、小回りが効くのにウロウロされたら厄介だっただろう」
「まあ、じゃあ本命を一発」
　轟音が、宇宙を揺らす。

●Phase3．追撃

　デスモ・ブラキオスの勢いの乗った突撃は、備忘録の準備した本命の機雷で止められた。そこに仕掛けるのは上野・修介（元フリーター、今は猟兵・f13887）。喧嘩用のオープンフィンガーグローブをぎゅっと握り込み、急接近していた。
「相手の出鼻を挫いて先ず勢い絶つってのは、喧嘩も戦争も変わんないな」
　存分に出鼻は挫かれている。後はそのまま押し切るだけだ。捨て身の覚悟で接近するつもりだったが、取り巻きは引き剥がされ、隙も十分。共闘のありがたみを感じながら、デスモ・ブラキオスの巨体に攻撃を叩き込む。ユーベルコードは【基本の素手喧嘩術】。流石に、このサイズの相手との戦いに慣れているわけではないが、基本はどんな時にでも通じるから基本。まずは機動力を奪う、装甲の厚い部分は狙わない。そんな方針の元に打撃だ。何度もの攻撃で揺らいだ一瞬、大振りの一撃を加えようとした修平は、接近する気配を感じて攻撃を回避運動に切り替える。小型恐竜メカが再び生み出されはじめていたのだ。まとわりつくように、獲物を狙う狩人のごとく、【CODE：Raptor】は修平を追い詰めていく。そして、デスモ・ブラキオスが小型恐竜メカごと押し潰さんとしたとき、猟兵側の援軍も到着した。
「ここの護りは任せろ。神焔合体ッ！　ラグナ……ライザァアァアッ！！」
　掛け声とともに久遠寺・遥翔（焔黒転身フレアライザー・f01190）がアームドフォート・鋼翼魔装フェンリルと合体して巨大ロボ形態に変身する。そのままオーラの盾を生み出し、ブラキオスの巨体を受け止めた。
「私たちが盾となります、そちらは存分に攻撃を！　」
「まずは足を止めるぞ！　」
　そこに追いついて来た兎鞠やザザがさらに割り込んできた。マスター・カオスも意外と堅実にフォースセイバーで小型恐竜メカを切り払っている。
「ＯＫ！　ガンガン行こうじゃないか！　」
「我々は邪魔なヤツをぶっ飛ばしますわよ！　」
　勿論、チガヤとキャスリーンも派手に暴れて、破壊音と爆発のＢＧＭを奏で始めた。戦いは続く。

●Phase4．乱撃

　宇宙バイクが宙を舞う。不規則な軌道でかく乱したかと思えば戻り、引きつける。そうして小型恐竜メカを倒しやすいように誘導しているのは、クリューラ・センティファ（Ｑ・Ｕ・Ａ・Ｌ・Ｌ・f12129）。宇宙は彼女のフィールドだ。自由自在に駆け巡り、完全に敵を翻弄していた。機を見ての援護射撃も忘れない。
「子分を引き連れて来るなんて卑怯よ！　」
　そう言いながら子分こと小型恐竜メカにワイヤーを引っ掛けて、振り回す。敵が迫れば次の相手へワイヤーフックを切り替えて、不規則運動で回避する。身軽に宇宙空間を舞うのはベルリリー・ベルベット（ルーナフラウ・f01474）
「……なーんてね。皆まとめて、リリのショーのトリコにしてあげる」
　ウィンクひとつと共に投げキッス。相手が機械の恐竜でなければ、思わず戦闘中でも見惚れただろう。そして、見惚れなくとも十分な隙はできている。
『これぞ、世紀の大脱出ショー！　真っ二つにならないように、ちゃんと逃げてね』
　ベルリリーを中心に、時計の文字盤のように配置されてしまった小型恐竜メカは哀れ、真っ二つ。
「なんだかストレス解消になりそう、なんてね。……ご協力、ありがとー！　」
　敵の配置はクリューラの活躍もあってのこと。いつの間にか観客兼協力者になっていた彼女だったが、呼び掛けには答えず、次の敵へと向かっていた。芸術は、ちょっと彼女と相性が悪い。
　
　一方、本体であるデスモ・ブラキオスとの戦いも続いている。戦い自体は現状一進一退。しかし、防御を担当しているラグナライザーこと遥翔とザザ、兎鞠の三人の疲労の色が濃い。見た目通りタフなブラキオス倒しきるまで耐えれるかどうか。
「こっちも丈夫なつもりだったが、あっちも中々だな」
「このまま持久戦になると、厳しいか？　」
「では、突破口を切り開こう！　」
『全てを護ると誓ったのだ…そのためならどんな力でも受け入れよう！　』
　ユーベルコード【闇の解放（アンリーシュ）】を発動したセシリア・サヴェージ（狂飆の暗黒騎士・f11836）が参戦した。

●PhaseFinal．破撃

　鎧の力を解放し闇の化身となったセシリアは、一直線にデスモ・ブラキオスへと突撃を敢行した。発動中、寿命を削るこのユーベルコードは、その分強力な瞬発力を発揮する。その姿はさながら闇の弾丸。邪魔をしようとする小型恐竜メカはマスターカオスやベルリリーが切り裂き、チガヤとキャスリーンに撃ち抜かれる。
「火力はパワー！　弾幕はパワーですわよ！　フルファイアですわ！！　」
　それでも数に任せて肉薄するものはあり、ブラキオスに近づけば近づくほど、小型メカの密度は増していく。あわや、という瞬間突然、一体の小型恐竜メカが動きを止める。それはまるで弾かれたビー玉遊びの玉のように別のメカにぶつかり、ぶつかったメカはまた別のメカに……と連鎖していく。マスター・カオスの念動力による援護だった。
「簡単に力負けはしません！　」
　ついにセシリアがとりつくと、ブラキオスは当然ながら振り払おうとする。
『はぁあぁあッ、燃えろぉッ！　』
　熱光剣ヒートキャリバーと焔黒剣レーヴァテイン、遥翔の光と炎の二刀が叩きつけられた。たまらずのたうつブラキオスだが、しかし、まだ切り札を残していた。
　
「破損度許容範囲超過――【CODE：Dino】起動」

　【恐竜の本能 】に覚醒して【広域殲滅モード】に変形し、戦闘能力を爆発的に増大させるモードである。動きを封じようとしたセシリアとラグナライザーに、牙が、尾の一撃が迫る。
『――シッ！』
『己が身を戒める鎖を嗤え』
　ふたつの詠唱と共に、ブラキオスの巨体が揺らぐ。修平の拳がついに脚部の関節を打ち砕き、ザザの【束縛の鎖】が首を拘束していた。
「今だ！　大火力をぶち込んでやれ！」
『オーバーヒートするまでかっ飛ばして！　ぶっ壊れるまで止まれないよなぁ！』
　ザザの声に一番に反応したのはやはり相棒のチガヤ。高速移動でブラキオスの周りを舞う。何故か攻撃している様子はないが、縦横無尽に駆け抜けて行く。
『おいでませ、ガジェット！　』
　キャスリーンが呼び出すガジェット。使い方がわかるとは限らないものだが、今回はそれを見た全員が何だかわかった。
「ドクロマーク付きの樽のような……ばく、だん……？　」
　呟いたのは誰だったか。一斉にブラキオスから離れようとする猟兵たち。いや、一人だけ立ち止まる者がいた。
「相手が恐竜ならば、絶滅させるのに丁度いいものがあったな……」
　追い縋るブラキオスを見据えて言い放つ。
『彼方より来たれ、軍神マーズの槍先よ！　堕ちよ流星！　』
　かつて、地球という星に生きた恐竜たちを滅ぼしたのは降り注ぐ流星だったという。マスター・カオスがデスモ・ブラキオスを指さすと【プラズマを纏った巨大流星群】が彼方から飛来してくる。それは何度もブラキオスを直撃し、押し戻す。
「ぶつかる度に爆発が起きてるけど……」
「私の仕掛けたガジェット爆裂筒だな、なかなか壮観だろう？　」
「では、そろそろ爆散してもらうとしよう！　」
　軍神の槍がドクロマークを貫き……巨大な爆発が起きた。
　
●AfterPhase

「……はぁ。メカ恐竜は特撮映画だけでいいぜ」
　勝利の一服を吸いながらザザが呟く。
「まあ、俺たちが特撮映画みたいなもんだしな……敵もああなるんじゃないか？　」
　悟りを開いたような表情で応える者がいる。そんな中、スペースシップワールド出身者が言う。
「それに、ああいうの結構いるしな」
「えっ？　」
「えっ？　」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年02月09日