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2人の姫を分かつ死の罠

#ダークセイヴァー #第五の貴族 #異端の神々

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 ダークセイヴァーにある地底都市。
 そこは、地上世界に「紋章」と呼ばれる寄生虫型オブリビオンを撒いていた「第五の貴族」達のテリトリーだ。
 そこに、一人の女性がひたり、ひたりと音を立てて足を踏み入れる。
「うう、ああぁぁ……」
 『純血姫レヴリス・シルバームーン』はとあるオブリビオンに手をかけられた『異端の神々』と思われる。
 身なりの良いドレスを纏ってはいるが、彼女自身はすでに理性が存在せず、狂えるオブリビオンとなり果ててしまっている。
 オブリビオンは何かの折に地底都市への入り口を探り当ててしまい、そのまま中へと突入していく。おそらく、「第五の貴族」の力にひかれたのだろう。
「アッハ! アタシを殺しに来るって? 上等だ。全力でねじ伏せてあげるねぇ!」
 こちらは第五の貴族を名乗る割に、あまり知性を感じさせぬ女吸血鬼、「吸血猟姫ディアナ」だ。
 狂えるオブリビオンが自分の体をのっとって力を得ようとしていると気づいたディアナは、すぐさま地底都市に至る通路の間に死の罠の迷宮を作動させる。
 通路は瞬く間に迷宮へと変わり、辺りから紫色のガスが噴き出す。
「こいつは有毒ガスなのぉ、オブリビオンだっていちころよぉ!」
 地底都市の奥にある館でディアナはその迷宮内の出来事を高みの見物といった態度だ。
 しかしながら、レヴリスはそんなガスの中を強引にもがきながら先へと進む。
「ああぁ、うううぅぅ……」
 猛毒ガスに苦しみながらも、彼女は奥へ着実に進む。
 理性の無い彼女は考えることはない。狂えるオブリビオンが求めるのは、ただ「第五の貴族」の力のみだ。


 グリモアベースにて、忙しなく猟兵が行き交う傍ら、セレイン・オランケット(エルフの聖者・f00242)が数人を呼び止めていて。
「依頼をお願いしてもいいかしら?」
 セレインが行ってもらいたい場所はダークセイヴァー。
 第五の貴族がいる地底洞窟へと狂えるオブリビオンが踏み入ったというのだ。
 狂えるオブリビオンの狙いは、強大な力を持つ第五の貴族の体。
 その憑依が完了してしまえば、『狂える第五の貴族』が誕生してしまう。
「それだけはなんとしても、阻止しなければならないわ」
 ただ、第五の貴族も対抗策として、紫の毒ガスが充満した死の罠の迷宮を作動させてしまっており、まずはこの踏破が必須だ。
 狂えるオブリビオンはあちらこちらを彷徨っている為、踏破には時間がかかるはずだ。その間に、第五の貴族のいる地底都市へとたどり着きたい。
「まれに毒を噴き出すガス風船のようなオブリビオンが彷徨っているけれど、見た目に反して強敵だから相手にしないようにね」
 なお、迷宮は奥へと至るルートは一つではない様だ。
 できる限り、毒ガスの対策を行って迷宮内の敵を避け、最短のコースで地底都市へとたどり着きたい。
 奥へと至れば、狂えるオブリビオンの前に第五の貴族である『吸血猟姫ディアナ』を討伐したい。
「彼女は首に自作の紋章……寄生型の蛇の紋章を装着しているわ」
 こいつは銃を使った生き物を射殺を好む。かなりの難敵だが、紋章の影響でやや知性が低下する弱点があるのがわかっている。
「もう少し、吸血猟姫ディアナについては調べてみるわ。弱点がわかるかも」
 第五の貴族を無事に倒せば、迷宮を踏破した狂えるオブリビオン「純血姫レヴリス・シルバームーン」と交戦することになる。
 強引に迷宮を突破したオブリビオンは、迷宮の罠を破壊した事で小さな傷を負っているという。
 これも現状では情報が少ないようで、セレインは全力で調べるとのことだ。
「ともあれ、まずは毒ガスの満ちた迷宮の踏破をお願いするわ」
 続報は追って知らせてくれるそうなので、猟兵達は最初に死の罠の迷宮の攻略に着手し、奥にある地底都市を目指すのである。


 元々、ダークセイヴァーは厚い雲で太陽の光が地上にすら届かぬ世界。
 ならば、地底へと至る道もまた光源に乏しく、周囲は闇に包まれている。
 猟兵達は岩で作られた道を進んでいると、やがて明らかに人の手が入ったと思われる造りをした迷宮へと至る。
 そこに踏み入ろうとするのだが、空気が変化したことに気付く。
 光で照らせば、迷宮の中には紫色のガスが充満していた。これが毒であると気づくのに、そう時間はかからない。ガスには体力をすり減らすだけでなく、能力の低下ももたらす力もあるようだ。
 さらに前方には時折、ガス風船のような塊が浮かんでいる。
 このガス生命体は数こそ多くはないものの、見つけたものへと憑りつき、その体力を奪いつくす。見た目以上に手強い相手である上、後に控える第五の貴族や狂えるオブリビオンとの戦いを考えれば無駄な交戦は避けたい。
 躊躇している暇はない。できるだけ早くこの迷宮を踏破し、狂えるオブリビオンよりも早く、地底都市へ……第五の貴族の元へとたどり着きたい。


なちゅい
 猟兵の皆様、こんにちは。なちゅいです。
 当シナリオを目にしていただき、ありがとうございます。
 ダークセイヴァーの地底都市に通じる死の罠の迷宮。そこで待ち受ける第五の貴族、並びに迷宮を踏破する狂えるオブリビオンの討伐を願います。

 第1章:冒険シナリオ、死の罠の迷宮を踏破していただきますよう願います。
 こちらでは、触れるだけで体力を大きく削がれる毒ガスで満ちた通路を進みます。その中には毒を放つ強力な怪物も存在しており、そいつを避けるように進んでください。
 第2章:ボス戦シナリオ、「第五の貴族」である『吸血猟姫ディアナ』の討伐を願います。首に蛇の紋章が刻まれており、まともに戦っては勝ち目がありません。
 ただ、知性が大きく低下するデメリットがあるようですので、相手の裏をかいて攻撃を仕掛けることでプレイングボーナスがつき、有利に戦えます。
 第3章:ボス戦シナリオ、強引に迷宮を踏破してきた「狂えるオブリビオン」、『純血姫レヴリス・シルバームーン』の討伐を願います。
 理性もなく強力な相手ですが、毒ガスの通路を強引に突破した為、何らかの小さな傷を負っています。罠からその位置を推理し、その箇所を攻めることでプレイングボーナスがつきます。

 第1章は13日の執筆を予定しています。13日朝8時半までにプレイングを頂けますと幸いです。想定に参加人数が満たない場合、サポートの方の力をお借りしたいと思います。
 執筆後、加えて断章を執筆し、その最後で次の締め切りに関しまして記述させていただきますので、ご確認の上でプレイングを頂けますと幸いです。
 なお、第1章に断章執筆の予定はありません。OPの3つ目の章を断章代わりとしております。

 シナリオの運営状況はマイページ、またはツイッターでお知らせいたします。
 それでは、行ってらっしゃいませ。
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第1章 冒険 『死の罠の迷宮』

POW   :    防御力を活かし、強引に罠を突破する

SPD   :    罠を解除しながら迷宮を踏破する

WIZ   :    迷宮の隠し通路や仕掛けを暴く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雛里・かすみ(サポート)
 バーチャルキャラクターの戦巫女×UDCメカニックの女性です。
 普段の口調は「明るく朗らか(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
寝起きは「元気ない時もある(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

明るく朗らかな性格の為、
男女分け隔てなくフレンドリーに会話を楽しみます。
どんな状況でも、真面目に取り組み
逆境にも屈しない前向きな性格です。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


月詠・莉愛(サポート)
『あの……宜しくお願いしますね。』
 オラトリオのシンフォニア×聖者の女の子です。
 普段の口調は「丁寧口調(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」
 独り言は「普通かな(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

大人しくて口数が少ないですけど、心優しく
動物や植物などの自然が好きな少女。
争い事は苦手ですけど、依頼の成功の為なら戦う事も厭わないです。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 闇に閉ざされた世界のさらに地の底。
 強大な力を持つ吸血鬼「第五の貴族」の体を得るべく、狂えるオブリビオンが地底都市を目指している。
 第五の貴族も死の罠の迷宮を作動させ、その侵入を阻もうとしているが……。ともあれ、強大なオブリビオンの誕生だけは食い止めねばならない。
 その為には、先に第五の貴族を打倒したいが、相手が展開した死の迷宮を何とかしてスムーズに攻略したいところ。
「活路を開いておきたいですね」
 露出高めの衣装を纏う戦巫女、雛里・かすみ(幻想の案内人・f24096)が真っ先に突入していく。
「……毒ガスの迷宮……さすが、死の罠です」
 白い衣装に白い翼のオラトリオ、月詠・莉愛(銀の月を謳う・f16320)も名前に違わぬダンジョンに、少しばかり及び腰になっていた。
 それでも、先にかすみが入っていったことで、莉愛も意を決して紫色のガスの中へと飛び込んでいく。


 ただでさえ暗い世界で、地底に陽の光など届こうはずもない。
 吸うだけで体力をすり減らす毒ガスの充満した通路を、かすみは正面から突っ込んでいく。
「私の魂よ、覚醒せよ。そして底に秘めた多大な力を放出せよ!」
 全身を眩しく輝く後光で覆うかすみは自らの正義を貫く覚悟を強く抱き、目にも止まらぬ速さで死の罠の迷宮内を移動していく。
「…………」
 ガス風船にも似た敵がかすみを捉えようとするが、その速さもあって追いつくことができない。
 とはいえ、かすみ自身も無傷とはいかず。
「少し毒ガスを吸ってしまいましたが……」
 多少の困難など気に留めることなく、かすみはあくまでも前向きに死の罠にも立ち向かう。
 一方、追う莉愛もまたユーベルコードを使っていて。
「月よ、私を導いて下さい。そしてその力を私に貸して下さい」
 清楚で純粋なる歌姫となった莉愛は輝く月の魔力に包まれ、迷宮内を飛翔する。彼女もまたかなりの速度で迷宮内を移動していき、ガス風船の如き敵を躱していく。
 迷宮は確かに面倒な構造をしており、入る者を惑わせる。
 ただ、莉愛も速度でそれをカバーし、敵を振り切りつつ先へと進む。
 莉愛もまた毒ガスによってかなり消耗してしまうが、それでも体力が尽きる前に迷宮を踏破してみせた。
「これで、ルート確保できたでしょうか」
 先に到着したかすみと共に、莉愛は迷宮を振り返る。
 まだ、狂えるオブリビオンは迷宮を彷徨っているはず。後続の猟兵達を待つのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルド・シャルカ
死の罠の迷宮とは随分と仰々しい名前ですわね。
触れるだけで危険な毒ガスを撒いてある事を考えれば名前負けというわけでもなさそうですが。

ただ、こういう迷宮を通じて行き来する場合は安全を考慮した隠し通路や仕掛けがあるものですわ。私が守る遺跡もそうですし……例えば分岐路から見えるような露骨な行き止まりだったり、わざわざ行こうと思わない場所は怪しいですわね。

ふふ、普段は罠を駆使して侵入者を撃退する立場なのに、まさか罠を避けて踏破する側に回るなんて、楽しいですわね……


エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

オブリビオンも色々大変なのじゃなぁ。
『紋章』とか『第五の貴族』とかよく分らぬが、原因となる二体とも退治してしまえば問題も解決するじゃろう。
難しい話は面倒じゃから、とっとと片づけてしまうのじゃ。
さて、まずはこの迷宮を踏破しなければならないようじゃな。
とは言えまともに進む必要もあるまい、無機物である地面や壁を操作して押しのけて迂回して進むのじゃ。
迂回して行き道が長くなろうとも【マニトゥ】に騎乗して駆ければそれ程遅れる事もあるまい。
進路は精霊術士の力で精霊たちの声に【聞き耳】をたてて毒ガスの蔓延する場所を避けていくかの。
地底都市というくらいじゃから方向さえ間違えねば行き着くじゃろう


ローズ・ベルシュタイン
WIZ判定の行動
アドリブや他猟兵との協力歓迎

■心情
毒ガスですか、何とも物騒な仕掛けがされているのですわね。
ですが、私はそう簡単に毒にやられる訳には行きませんわ。

■行動
毒ガスは、水で湿らせたハンカチで鼻や口元を覆い、吸い込まない様に注意。
毒ガスが無い箇所で大きく息を吸っておき、毒ガスの出ている箇所は
【息止め】で我慢するようにしますわね。

迷宮は、隠し通路や仕掛けを暴く様にしますわ。
【罠使い】の知識で、隠し通路の場所や仕掛けに目星を付けておき
【野生の勘】で怪しい場所を調べますわ。

もし怪物に遭遇したら、夕暮れ時に薔薇は踊り咲く(UC)で
纏めて倒して行きますわね。


リーヴァルディ・カーライル
…狂えるオブリビオンより先に第五の貴族を討たねばいけない以上、
この程度の障害に手こずる訳にはいかないもの

一呼吸する間に駆け抜けてみせるわ、死の迷宮とやらをね

UCを発動して"御使い、地縛鎖、韋駄天、闇夜、
雨避け、毒避け、息止め、迷彩"の呪詛を自身に付与

周囲の毒ガスを遮断する●環境耐性の空気の●オーラで防御して全身を覆い、
さらに毒を吸わないように●息を止め、微量の毒は強化した●毒耐性で耐える

ガス風船状の敵は小石や残像のように自身の存在感を消す●迷彩を施し、
●闇に紛れて壁や天井を疑似空中機動の早業で駆ける●地形の利用法で切り抜け、
第六感を頼りに立ち止まらず●ダッシュで迷宮の最奥を目指すわ


ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
いいじゃない。スニークミッションね。

暗色系のマントで気づかれないようにしつつこっそり侵入。
[迷彩][目立たない][忍び足]で隠密行動よ。
[暗視][聞き耳]で敵の位置を知りつつ罠を回避。どうしても通れなさそうな罠はユーベルコード【クォンタム・ハンド】で、手近の他の罠や敵を押し付けて解除してもらうわ。

とにかく罠にも敵にも近づかない。回避するか、弓やユーベルコードで遠くから片付ける方法ね。
最悪、毒が出ても[毒耐性]もあるし、何とかなるんじゃないかしら?




 サポーター達が突入してすぐ、新たな猟兵らが迷宮の入り口に姿を現す。
「オブリビオンも色々大変なのじゃなぁ」
 金髪猫耳巫女姫、エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は自分達の知りえぬ敵方の事情を鑑みてしみじみと語る。
 紋章を使う「第五の貴族」と言われてもピンとこないエウトティアだが、そいつと「狂えるオブリビオン」の両方を退治すれば問題も解決するのだろうと簡単に状況について纏めて。
「難しい話は面倒じゃから、とっとと片づけてしまうのじゃ」
 それに同意するメンバー達だが、第五の貴族が敵除けにと作動させたものがまた面倒で。
「死の罠の迷宮とは随分と仰々しい名前ですわね」
 今回のが初依頼となる大柄な女性、ルド・シャルカ(遺跡の魔女・f33104)。
 彼女は上半身が人、下半身が蛇と蜘蛛という姿をしているのだが、現状、他の世界へと足を運んだことで仲間に気を使い、全身人の姿をとっているのはさておき。
 そんなルドは、改めて死の罠の迷宮と呼ばれる迷宮を外観から見回す。
「もっとも、触れるだけで危険な毒ガスを撒いてある事を考えれば、名前負けというわけでもなさそうですが」
「毒ガスですか、何とも物騒な仕掛けがされているのですわね」
 緋色のドレスに橙色の髪が印象的なローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)も危険視こそするものの。
「ですが、私はそう簡単に毒にやられる訳には行きませんわ」
 この程度の苦難など、ローズが二の足を踏む理由にはならず、できる限りの策を巡らしていたようだ。
「……狂えるオブリビオンより先に第五の貴族を討たねばいけない以上、この程度の障害に手こずる訳にはいかないもの」
 黒衣の銀髪ダンピール、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は倒すべき吸血鬼を見据え、まずは死の罠の迷宮に挑む。
 猟兵達が突入してから少しして、肩下くらいまで伸びた金髪を纏めたヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)がこの迷宮を一通り見回して。
「いいじゃない。スニークミッションね」
 そう呟き、彼女もまたその迷宮の踏破へとチャレンジするのである。


 紫のガスが通路を包み込む死の罠の迷宮。
 その攻略は個々で異なるが、リーヴァルディは突入前にユーベルコードを使っていて。
「一呼吸する間に駆け抜けてみせるわ、死の罠の迷宮とやらをね」
 リーヴァルディはユーベルコード【吸血鬼狩りの業・千変の型】を使用する。
「……術式換装」
 それによって、リーヴァルディは手持ちの『御使い』、『地縛鎖』、『韋駄天』、『闇夜』、『雨避け』、『毒避け』、『息止め』、『迷彩』といった呪詛を使う。
 そして、彼女はさらに毒ガスを遮断する【環境耐性】の空気の【オーラで防御】して大きく息を吸い込む。
「…………」
 毒を吸わぬよう【息を止めた】リーヴァルディは、多少体に触れてしまう微量の毒は強化した【毒耐性】で耐えきることにし、公言した通り一気に迷宮を踏破しようと移動し始めた。
(「ガス風船……あれが敵ね」)
 事前に聞いていた迷宮内の強敵、ガス生命体。
 見た目こそ強くはなさそうだが、その実並々ならぬ力を秘めているという。
 これに見つからぬ様、リーヴァルディは小石や残像と思わせるよう己に【迷彩】を施し、【闇に紛れる】。
 後は疑似空中機動の【早業】で壁や天井を駆ける【地形の利用法】でその場を切り抜け、リーヴァルディは【第六感】を頼りとして立ち止まらずに【ダッシュ】で迷宮を駆け抜けて最奥を目指す。

 続く、ルド、エウトティア、ローズはこの迷宮の構造を利用して攻略に当たる。
「まずはこの迷宮を踏破しなければならないようじゃな」
 しかし、こんな迷宮をまともに進む必要はないと判断したエウトティアは、ユーベルコード【掌の創造】を使う。
 迷宮の壁は石や岩など主に無機物で構成されている。
 エウトティアは地面や壁を自然物へと変化させた上で押しのけ、内部を通らぬよう迷宮を迂回して進む。
 後は、進路については、精霊術士の力で精霊達の声に【聞き耳】を立てる。多少毒ガスが漏れ出しそうな状況であれば、土の精霊達が教えてくれる。
「……ふむ、こっちかの」
 地底都市という名前もあり、方向さえ間違えなければ息つくだろうとやや楽観的に考えるエウトティア。
 それでも、多少、時間がかかりそうだと判断すれば、彼女は呼び出した『巨狼マニトゥ』に騎乗することで他の仲間から遅れぬよう移動していた。
 また、ローズはこの迷宮の隠し通路の場所、仕掛けを暴こうと動く。
 とはいえ、それまでの間、毒ガスにその身を晒さねばならぬこともあり、ローズもそ水で湿らせたハンカチを用意して鼻や口元を覆い、毒ガスを吸わない様気を付ける。
(「思ったより、毒ガスの無い場所がありませんわね……」)
 事前に大きく息を吸い、毒ガスの出ている箇所は【息を止めて】我慢していたローズは【罠使い】の知識を使い、ある程度隠し通路や仕掛けに目星をつける。
「ここでしょうか……」
 【野生の勘】を生かし、ローズは怪しい場所を探す。
 そこには、ルドの姿もあって。
「こういう迷宮を通じて行き来する場合は、安全を考慮した隠し通路や仕掛けがあるものですわ」
 自身の世界にある遺跡もそうだと主張するルドは毒ガスの対処なく突入していたが、あからさまに怪しい箇所へと一直線に足を向ける。
 入り口傍にある分岐路から見えるような露骨な行き止まりなどは、侵入者が視認するだけでわざわざ行こうとは思わない場所こそ怪しいと、ルドは考えていたのだ。
 2人が直感を働かせる壁の向こうには、毒ガスが入ってこない通路が隠されていて。
「さあ、先に進みましょう」
 普段は罠を駆使して侵入者を撃退する立場のルドだが、こうして罠を避けて踏破する側に回るとはと、この状況を楽しんでいた。
「これなら、怪物とも遭遇しないようですわね」
 ローズは一応、警戒だけは緩めぬようにし、ルドと共に通路を歩いていく。

 その間に、暗色系のマントを着込んでいたヴィオレッタが迷宮へとこっそり侵入する。
 スニークミッションと本人が謳うように、【迷彩】、【目立たない】、【忍び足】といった技能を働かせて、ヴィオレッタは隠密行動に臨む。
(「……敵がいるわね」)
 ガス生命体は通路に浮かび、侵入者を探す。基本的には狂えるオブリビオンを探して迷宮内を彷徨っているはずだ。
 【暗視】、【聞き耳】を使ってそれらの敵の接近を察しながら、ヴィオレッタはガスの噴射口も避ける。
 ただでさえ触れるだけで体力を削がれる毒ガスだ。【毒耐性】があるとはいえ、さすがに直接浴びるのは危険極まりない。
(「他の罠はないみたいね」)
 この迷宮を作った第五の貴族も、罠は毒ガスで十分と判断したのだろう。
 ヴィオレッタは一応最後まで自分の手が届かぬところにある罠を警戒し続け、迷宮の奥を目指すのである。


 サポーターに続き、迷宮を抜けたのはリーヴァルディだ。
「終わった……かしら」
 毒ガスがなくなったことを確認し、彼女はオーラを解いて息をつく。
 続いて、隠し通路を通って難なくゴールへと至ったローズとルドの2人。
「大したことありませんでしたわ」
「ええ、問題ありませんでしたわね」
 そして、少し遅れて迷宮の脇から壁が大きく変動し、狼に跨ったエウトティアが姿を現す。
「ふむ、思ったより遅れずにすんだようじゃのう」
 最後に少し時間をおいて、ヴィオレッタが迷宮から出てくる。
「少しばかり疲れたわね」
 毒耐性を持っている彼女ではあったが、それでも毒ガスの力はかなり強く、徐々に体力を奪われていたということだろう。無策であれば、ガスの中で倒れていたのは間違いない。

 さて、死の罠の迷宮を踏破した猟兵達が振り返った先。
 そこには、第五の貴族が待つ地底都市が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『吸血猟姫ディアナ』

POW   :    インビジブルハッピー
【銃口】を向けた対象に、【見えない弾丸】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    バレットパーティー
【血から無数の猟銃を生み弾丸】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ドレスフォーハンティング
全身を【これまでに狩った獲物の血】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイ・ノイナイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 死の罠の迷宮を越えた猟兵達は地底都市へ。
 暗がりの中、広い地底の空間の地面にいくつもの石造りの建物が並び立っているが、この場に吸血鬼や魔獣といった類は存在しないようだ。
 とはいえ、都市をしっかりと探索するとはいかない。
「アッハ! アタシを殺しに来るからって、わざわざアタシから出向いてやったってのにぃ!」
 なぜなら、第五の貴族は自ら都市の入り口近くまでやってきていたからだ。
「やってきたのは『異端の神々』だった奴じゃなくってぇ、猟兵じゃないのぉ! アッハハハ!」
 楽しげに笑っていたのは、獣の毛皮でできたマントを羽織った吸血鬼女性『吸血猟姫ディアナ』である。
 ディアナは担いだライフル銃をメインに使い、生ある者を片っ端から撃ち殺してしまう。首にマフラーの如く巻いているのは、自らが殺した獣なのだろう。なお、その血すらも彼女は自らの力としてしまうようだ。
「さてぇ、折角だからぁ、毒ガスで『アイツ』がくたばる間にぃ、アンタらで楽しませてもらおうかねぇ、アッハハハ!」
 姫と名前を冠している割に、相手は全く持って気品を感じさせない。
 『吸血猟姫ディアナ』は自ら作成した寄生型の蛇の紋章を首に刻んでいる。先程潜り抜けていた毒ガスの充満した死の罠の迷宮は、この蛇の毒を利用したものだったのだろう。
 そこで、猟兵達がこの地点まで到着したことで転移できたセレイン・オランケット(エルフの聖者・f00242)がこの場のメンバーへと呼びかける。
「あの第五の貴族……吸血猟姫ディアナは、蛇の紋章の力によって強力な毒を攻撃力に転化し、強化した弾丸を使ってくるわ」
 蛇の紋章の力は侮れない。しかも、獣の毛皮を使って首元を覆っており、紋章を外から確認することすら難しい。
 しかしながら、そんな紋章にも弱点が存在する。
「ディアナは蛇の紋章の力を得る為に、自らの知性を犠牲にしているようよ」
 トリガーハッピーであるディアナは相手を撃ち殺すことで快楽を得ている。それ以外のことは深く考える必要がないと判断したのだろう。
 しかしながら、彼女を倒す為には大いに利用できる部分だ。
「知的な戦いを心がければ、ディアナを倒す機会は必ず訪れるわ」
 相手の裏をかいて攻撃を仕掛けられれば、有利に戦うことができるはずだ。
 とはいえ、銃弾の殺傷力は並々ならぬものがある。敵の攻撃にはくれぐれも注意して討伐に当たりたい。
 また、ぼやぼやしていると、迷宮の中から狂えるオブリビオンが現れてしまう。
 力のみを求めるオブリビオンは第五の貴族であるディアナの体を奪い取り、『狂える第五の貴族』にならんとしているはずだ。それだけはなんとしても避けたい。
「それでは、皆、武運を祈っているわ」
 セレインが一度グリモアベースへと戻るところで、都市の方から声が聞こえて。
「もう待てないわぁ、そろそろ始めましょうかぁ」
 猟兵達は都市内へと突入し、呼びかけてきた吸血猟姫ディアナとの交戦を開始するのである。

(※相手の裏をかいて攻撃を仕掛けることで、プレイングボーナスがつきます)
(※第2章は、16日夜からの一括執筆を考えております。プレイングは16日22時まで受付いたします。
 2章からのご参加も歓迎です。メイン参加者の状況によっては第1章と同様にサポートの方のお力を借りる予定です)
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
「都市内部の射撃戦なら望むところね」
なにしろ隠れる場所がそこら中にあるから。

[迷彩]、[目立たない]で身を潜め、あちこちに[罠使い]で足止めの罠を仕掛けておく。
敵が知的でないというのなら、すぐに罠に引っ掛かりそうね。

動かないようなら矢で他の場所に音を立てて、罠に誘導しましょう。
弓は古めかしいけど銃と違って音がほとんどしないのよ?

動きが止まれば好機到来。
10秒間集中してユーベルコード【千里眼射ち】。
101レベルの二乗=10.2kmとまではいかないけど、敵が見えるぎりぎりの遠距離から射貫いてあげるわ。


ルド・シャルカ
狩った動物を首に巻くなんて随分と悪趣味な装いですわね、知性を犠牲にしているせいかしら、それとも元々かしら?

正面からぶつかれば勝ち目はないとの事ですから……少し嫌がらせを。
ひとまず建物を遮蔽物にしてライフルの射線から外れて、
UC【犠牲の磔柱】で戦闘力を減らしつつ【念動力】で飛ばした武器による【不意打ち】で【継続ダメージ】を狙いますわ。
相手の位置はわざと物音でもさせれば発砲音で教えて頂けるでしょうからね。

ええ、当然決して油断なくやらせて貰いますわよ。


ローズ・ベルシュタイン
WIZ判定の行動
アドリブや他猟兵との共闘歓迎

■心情
様々な獣を狩ってきたのでしょうか、おぞましいマフラーですわね。
私も拳銃を操る事が出来ますし、銃撃戦は負けませんわ。

■行動
風が導く薔薇の舞踏(UC)を使用して戦いますわ。
【スナイパー】で狙いを定めて敵の首元を狙い疾風を放ち、
【部位破壊】で蛇の紋章を撃つ様にしますわ。
【視力】で敵の蛇の紋章を探る様にしておきますわね。
疾風が外れても、地面に降り積もった花弁の上に立って戦闘力を高めますわ。

敵の攻撃に対しても、【見切り】で銃弾を避けたり
【盾受け】や【受け流し】で銃弾を弾く様にしますわね。


リーヴァルディ・カーライル
…愚かな。どれだけ強大な力を得たとしても、狩人が冷静さを失ってどうする?

…最大の武器を失ったお前に勝機など無い
ただ狩られるだけの獲物である事を教えてあげるわ

"霧の精霊結晶"を砕いて周囲を霧で覆い姿を隠し、
水の精霊を降霊した"精霊石の耳飾り"で得た第六感で霧中の敵の存在感を暗視して見切り、
"写し身の呪詛"の残像を囮に敵の攻撃を受け流しつつ死角から切り込みUC発動

…さあ、その身に刻め。これが吸血鬼狩りの業よ

全周囲から1090本の黒血糸を乱れ撃ち敵を捕縛して生命力を吸収し、
敵が纏う血を限界を突破して吸い尽くし敵UCの解除を試み、
紋章のある敵の首もとを魔力を溜めた大鎌で怪力任せになぎ払い切断する


エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

セレイン殿の助言によると、力は強いが知性に難があるとか、血に狂った獣は確かに恐ろしいが罠にかければ対処も可能じゃろう。
まず【精霊術士】の力で風の精霊の力を借りて【浄化の風】をおこし、匂いや音が届きにくい風下に陣取り石造りの建物の建物の陰に身を隠して機会を伺うのじゃ。
準備ができたら、風上側からマニトゥに襲撃してもらい、遮蔽を利用して射線を遮りながら適度に攻撃し注意を引くかの。
『吸血猟姫ディアナ』がマニトゥやお味方に気を向けている隙をついて、【追跡】する矢を連射し首元を狙うのじゃ。
お主に吹き込む風は外法を吹き払うもの、傷を負おうと【ドレスフォーハンティング】は使わせぬよ。




 毒ガスの充満した死の罠の迷宮を抜けた猟兵達が対するのは、「第五の貴族」。
 『吸血猟姫ディアナ』は嬉しそうにやってきた猟兵達を見回す。
「アッハ! やってきたのは猟兵じゃないのぉ! アッハハハ!」
 ディアナはやってきたのが猟兵の一団だったことに少し驚いていたようだ。
「様々な獣を狩ってきたのでしょうか、おぞましいマフラーですわね」
 紅のドレスを纏うローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)が端正な顔を僅かに顰めるのは、相手の首に巻かれたものにある。
 狐や狼と思われる顔のついたそれは、毛皮を繋ぎ合わせて作られたと思われるマフラーだ。
「狩った動物を首に巻くなんて、随分と悪趣味な装いですわね」
 一見すれば長身の魔女、ルド・シャルカ(遺跡の魔女・f33104)だが、その実とある世界におけるラスボスであり、本当の姿は蛇と蜘蛛が合わさった下半身を持つ遺跡の守護者である。
 そんなルドの目にも、ディアナの所業は低俗なものと映ったようだ。
「さてぇ、折角だからぁ、毒ガスで『アイツ』がくたばる間にぃ、アンタらで楽しませてもらおうかねぇ、アッハハハ!」
 笑うディアナを見据え、この場で最も小柄な褐色肌の少女、エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は事前に聞いた話を思い出す。
「セレイン殿の助言によると、力は強いが知性に難があるとか」
「知性を犠牲にしているせいかしら、それとも元々かしら?」
 明らかに知性を感じさせない物言いは、蛇の紋章による副作用によるところが大きいが、ルドは元のトリガーハッピーな性格も影響しているのではと推察する。
 作動させた死の罠の迷宮内に毒ガスを充満させていたのは、その紋章の力によるところが大きい。大方内部にいたガス風船の魔物もそれによって作られたのだろう。
 実際の戦いでは、その強毒は攻撃力に転化され、敵の持つライフル銃に銃弾として籠められる。
 その銃弾は恐ろしいまでの攻撃力があり、かすっただけでも致命傷、最悪戦闘不能に陥ってしまうのだとか。
「血に狂った獣は確かに恐ろしいが、罠にかければ対処も可能じゃろう」
 その脅威を十分に承知しながらも、エウトティアは知略で勝負すれば問題ないといつものように依頼に臨む。
「……愚かな」
 一方で、多くの活動をダークセイヴァーで吸血鬼狩りに割くダンピール少女、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそんなディアナの判断があまりに拙いと考えて。
「どれだけ強大な力を得たとしても、狩人が冷静さを失ってどうする?」
 狩っていたのが魔獣ならいざ知らず、さすがに狂えるオブリビオン相手では敗北も必至だったのだろうと、リーヴァルディは疑わない。
 ディアナにとっての本命……オブリビオンに体を奪われた異端の神々は狂えるオブリビオンとなり、死の罠の迷宮内を進んでこちらへと向かってきているはず。
 この両者がぶつかれば、ディアナは狂えるオブリビオンに体を乗っ取られ、狂える第五の貴族となり果ててしまう。
 そいつが地底都市へと至る前に、目の前の吸血鬼を撃破せねばならないのだが……。
「都市内部の射撃戦なら望むところね」
 少女の仮初の姿を持つヤドリガミ、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)が地底都市の街並みを見回すと、あちらこちらに石造りの建物が見られる。
 隠れる場所はそこら中にあり、戦場としては申し分ないとヴィオレッタは視認する。
 相手の獲物はライフル銃。なればこそ、拳銃『プリンセス・ローズ』を操ることもできるとローズは準備を整えて。
「銃撃戦は負けませんわ」
「アッハ、やれるもんならやってみなぁ!」
「……最大の武器を失ったお前に勝機など無い」
 ライフル銃を突き付けてくるディアナだが、その銃はおそるるに足りないとリーヴァルディは言い放つ。
「なにぃ……?」
 眉を歪めるディアナへ、リーヴァルディは霧の『精霊結晶』を見せつけて。
「ただ狩られるだけの獲物である事を教えてあげるわ」
 彼女はそれを砕き、周囲を霧で覆ってみせたのだった。


 リーヴァルディが展開した霧の中、ディアナが辺りを見回して。
「ちぃ、姑息な真似をぉ……」
 こちらの位置を目で捕捉しようとする敵は、適当に銃弾を放ってこちらを牽制してくる。
 その間に、リーヴァルディは水の精霊を降霊させた『精霊石の耳飾り』で得た【第六感】で、霧中にいる敵の存在感を暗視で【見切り】、飛んでくる弾丸を避けていく。
 ヴィオレッタもその霧を利用し、己に【迷彩】を施して【目立たぬよう】身を潜めながら【罠使い】の技能であちらこちらにトラバサミや地面に少し窪みを作るなど、足止めの罠を仕掛けていく。
「うぅ、何だぁ、これはぁ!」
 霧の方に意識を集中するディアナだ。足元への注意は疎かになり、それらの罠に引っ掛かってしまう。
 罠への誘導方法も想定していたヴィオレッタだったが、その必要はなさそうだ。
(「今のうちですわね」)
 まれに銃弾が飛んでくる霧の中で、ローズは自らに当たりそうな弾を【見切り】、拳銃を【盾として受け】たり、【受け流し】たりしながらユーベルコード【風が導く薔薇の舞踏】を使う。
「薔薇よ、風に乗りて舞い踊りなさい!」
 彼女は夕焼け色の薔薇の花弁を乗せた疾風を【スナイパー】技能を駆使して放ち、ディアナの首元のマフラーを穿つ。
 破れたマフラーの合間から見える首の右側にある蛇の紋章こそ、本命。ローズは【視力】を強め、その位置を捕捉して引き金を引く。
「正面からぶつかれば、勝ち目はないとの事ですから……」
 ルドはこの霧の中、少しディアナへと嫌がらせをしてやろうと、建物を遮蔽物としながら敵の射線から外れるように位置取って。
「うふふ……」
 彼女が使うは、犠牲の磔柱。現状戦う仲間達は万全な状態だが、彼らが倒れればこの戦場に髑髏の磔柱がそそり立つ。
 現状は保険にしかならないが、それでも相手が仲間を倒してしまえば、それだけで力を弱めることができる。
「ええ、当然決して油断なくやらせて貰いますわよ」
 その上で、ルドは【念動力】で不可視の魔法剣『贖罪の断頭剣』を飛ばす。
 ディアナは銃弾の発砲音で位置を示してくれる。ルドはその光や音、臭いを頼りとして、霧の中からディアナを【不意打ち】し、切りかかる。
「アハ、これしきでアタシを倒せるとでもぉ?」
 ディアナはさほど聞いてないという素振りを見せるが、ルドは幾度も切りかかることで【継続ダメージ】を狙い、傷を増やす。
 頃合いを見て、エウトティアは精霊術士の力で風の精霊の力を借りて。
「遍く精霊よ、風に宿り力を示せ!」
 エウトティアの巻き起こす風は、世の理に外れたものを浄化する。
 リーヴァルディの展開した霧もそれによって消えてしまうが、メンバー達はエウトティアの合図もあって、匂いや音の届きにくい風下へと移動し、建物の陰へと隠れる。
「アッハ、霧がなくなっちゃったけどぉ?」
 突然、視界が開けたことで、ディアナは状況の確認をとあちらこちらへと視線を向ける。
 その隙は、ヴィオレッタにとって好機。
「弓は古めかしいけど、銃と違って音がほとんどしないのよ?」
 『射貫き打ち抜く鋒矢』を手にして10秒間集中するヴィオレッタ。
 彼女の力であれば、10キロ離れた場所から敵を狙うことができるが、地底都市でそこまでは難しい
 その為、ヴィオレッタはできる限り敵から距離をとり、敵が見えるぎりぎりの距離から敵を射抜いて見せた。
「あぁ、もううっとうしいねぇ!」
 加えて、ルドの剣がなおも切りかかり続けていたことで、ディアナは苛立ちを隠さず、大声で叫ぶ。
 仲間達の間隙を縫い、ローズは敵の首筋にある蛇の紋章を【部位破壊】すべく狙い撃つ。
 幾度か弾丸を放てば、紋章にも命中する。それによって、目に見えてディアナが苦しむのが目にわかって。
「アッハ、でもぉ、私が傷つけばぁ、それだけ傷が私を強くするのよぉ!」
 ディアナが言っているのは、ユーベルコード【ドレスフォーハンティング】の力。
 ただ、エウトティアの吹かせる風はその強化すらも許さない。
「お主に吹き込む風は外法を吹き払うもの、傷を負おうと【ドレスフォーハンティング】は使わせぬよ」
 言い放つエウトティアは戦場に吹かせた風の来る方向から『巨狼マニトゥ』にディアナを襲撃させる。
 同時に、エウトティア自身は敵の隙をつき、手にする弓から【追跡】する矢を連射して敵の首元を狙う。
 メンバーがこぞって首を狙うことで、獣のマフラーが破れ、ついに蛇の紋章が露出する。
「ア、アタシのマフラーがあぁ!」
 その様子だと、ディアナにとっては相当お気に入りだったと思われるが、猟兵らは知ったことではない。
 『写し身の呪詛』の【残像】を囮としたリーヴァルディは敵の銃撃を【受け流し】、ディアナの死角から切り込む。
「……さあ、その身に刻め。これが吸血鬼狩りの業よ」
 エウトティアが風を止めたのを見計らい、リーヴァルディはユーベルコード【吸血鬼狩りの業・血葬の型】によって敵の全周囲から1000本以上の黒血糸で敵を拘束してしまう。
 それによって【限界を突破】してを吸収するリーヴァルディは血を纏おうとする敵にユーベルコードを使わせない。
 そして、仲間の攻撃によって露出した首目掛け、リーヴァルディは魔力を溜めた大鎌『過去を刻むもの』を【怪力】任せに【なぎ払う】。
 次の瞬間、ディアナの頭が胴体から離れて。
「アタシをぉ、よくもお……!」
 忌々しげに表情を歪めたのも一瞬のこと。
 すぐに吸血猟姫ディアナは首も胴体も爆ぜ飛び、その姿を消してしまったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『純血姫レヴリス・シルバームーン』

POW   :    第四の旋律・灼かれて滅せよ
【敵への憎しみから生み出される「灼滅の炎」】が命中した対象を燃やす。放たれた【憎しみの】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    第五の旋律・番犬の刃
【三つ首の番犬】の霊を召喚する。これは【牙】や【炎を吐くこと】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    終の旋律・忘却への道標
対象の攻撃を軽減する【天使の姿】に変身しつつ、【全てを忘れ眠るように命を奪う浄化の光】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はマヒル・シルバームーンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ダークセイヴァーにある名前もわからぬ地底都市。
 その場所では、「第五の貴族」である『吸血猟姫ディアナ』が猟兵達を待ち受けていた。
 いや、正確にはディアナはこれからやってくるモノを待っていたのだが、猟兵としてはこの世界の脅威となる吸血鬼を野放しにするわけにはいかず、速やかにこれを討伐した。
 猟兵一行が態勢を整える間に、そのディアナが起動させていた毒ガスの充満する死の罠の迷宮を、そいつは踏破してくる。
 この地へと至ったもう1人の姫……狂えるオブリビオンとなり果てた『純血姫レヴリス・シルバームーン』だ。
「うう、ああぁぁ……」
 『異端の神々』であったレヴリスは容姿こそ美しくあるが、狂えるオブリビオンとなり果てたことで完全に理性を失ってしまい、虚ろな表情で虚空を仰いでうめき声を上げるのみ。
 ただ、彼女もまた理性と引き換えに、強大な力を得ている。
 レヴリスは敵対する者にはかすかに記憶に残る歌を口ずさみ、【灼滅の炎】、【三つ首の番犬の霊】、【浄化の光】を使う。いずれのユーベルコードも、理性と引き換えに強い力で発動するはずだ。

 レヴリスがここに至った理由は第五の貴族の持つ力であり、相手を倒して体を奪い取り、さらなる力を得て『狂える第五の貴族』となることだった。
 しかしながら、先にこの場へと到着した猟兵達が第五の貴族を倒したことで、狂えるオブリビオンの目的は絶たれた。
「ああぁぁ、うあぁぁ……」
 猟兵としては、このオブリビオンが新たな獲物を探す前に倒さねばならない。
 『吸血猟姫ディアナ』が倒れたことで、死の罠の迷宮も徐々にその姿を消しつつあるが、レヴリスは先程まで強毒のガスが満ちたこの迷宮を彷徨っていた。
 強引に迷宮を突破しようとしていたレヴリスは何らかの傷を体のどこかに負っているはず。
 ただ、それがどこかはわからない。毒ガスによってダメージを受けているのは間違いないはずだが……。
 どうやら、これまで予知から助言をくれていたセレインが間に合わない為、その箇所は自分達で推理する他なさそうだ。
「うああぁぁ、あああぁぁぁぁっ……!」
 敵意を抱く猟兵達を、狂えるオブリビオン『純血姫レヴリス・シルバームーン』は直感で危険と判断したのか、戦闘態勢をとる。
 彼女が新たな獲物を見つける前に、猟兵達はその討伐へと乗り出すのだった。

(※狂えるオブリビオンは死の罠の迷宮に充満していた毒ガスによって、体のどこかに小さな傷を負っています。なお、傷は一つとは限りません。傷の位置を推理し、その箇所を攻めることでプレイングボーナスが付きます)
(※第3章は、21日昼からの一括執筆を考えております。プレイングは21日昼頃まで受付いたします。
 3章のみのご参加も歓迎です。メイン参加者の状況によっては第1章と同様にサポートの方のお力を借りる予定です)
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
毒ガスで傷ね…口、鼻、それとも目かしら?
はっきりしないから丸ごと狙ってみましょう。

地底都市の地形を活かして[迷彩][目立たない]で相手の攻撃の光の対象にならないことから始めるわ。
多少の被弾は[オーラ防御]で受け止める。

そして詠唱をして、敵の前面全てを含めるようにユーベルコード【ぶるー・インフェルノ】

どこかわからない弱点なら、可能性のありそうなところをすべて焼いてしまえばいいのよ。
はっきりわかれば後は[誘導弾]で矢の射撃の狙い撃ちね。


ローズ・ベルシュタイン
WIZ判定の行動
アドリブや他猟兵との共闘歓迎

■心情
死の罠の迷宮で苦しめられ、理性を失ったオブリビオンですか。
さぞかし苦しい思いをしたのでしょうね。
これ以上苦しまない様に、私達の手で引導を渡してあげましょう。

■行動
薔薇の刻印(UC)を使用して戦いますわね。
敵から距離を取りつつ、『プリンセス・ローズ』で敵を攻撃し
負傷させたらUCの効果で茨の刻印による追加攻撃を与えますわね。

敵が毒ガスによって受けた傷は、
恐らく罠の中を歩き回ったその脚かと予想し、脚部を【スナイパー】で
【部位破壊】しますわね。

敵の浄化の光には、忘れ眠らない様に【祈り】を捧げつつ
【オーラ防御】で守りますわ。


エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

触れるだけで体力を削がれる毒ガスの中を強引に突破してきたのじゃ、強大な力を得たとはいえさすがに少しは堪えておるじゃろう。
ここは立ち直る隙を与えず攻め立ててやるわい。
ビーストマスターの力で狼達を呼び出し、純血姫を取り囲んでじわじわと体力を削るように攻撃するのじゃ。
パッと見て傷の位置が分らぬという事は、衣服に隠された部位に傷を負っているのじゃろう。
狼達の嗅覚を頼りに血の臭いを漂わせている個所を重点的に攻めるのじゃ。
じゃが戦闘が始まれば純血姫も【三つ首の番犬】を呼び出して抵抗してくるじゃろう。
【三つ首の番犬】が呼び出されたらこちらもマニトゥを呼び出し対抗するかの。


ルド・シャルカ
あらあら、あの毒ガスの中を突っ切ってくるなんて中々の胆力ですわね。
流石に無傷とはいかなかったようですが……

UC【寵姫の瞳】で動きを止めその隙に傷の場所を探しましょうか。
抵抗される恐れがあるので、その場合は予想で行くしかありませんね。
毒ガスと考えれば眼や内臓、肌が露出した部位……そもそも触れるだけで体力を削がれる代物、ともなれば全身にダメージを受けていてもおかしくない気もしますが。

貴方を倒せば終幕ですわね……
ふふ、どうせ唄うなら鎮魂歌の方がよいんじゃないかしら。


リーヴァルディ・カーライル
…第五の貴族は既に討ち、お前の目論みは失敗に終わった

本来なら、これ以上傷口を拡げる前に撤退するのが常道なんでしょうけど…
そんな事を判断できる理性が残されている訳も無いか

敵のUCで召喚された番犬霊に"呪宝珠弾"を乱れ撃ち、
敵の支配を切断して闘争心を反転させ集団戦術を乱す同士討ちを試みつつUCを発動

超音波による反響定位を用いた第六感で敵の状態を暗視し、
積み上げた戦闘知識を基に体の何処かにある傷口を見切り、
敵の攻撃を超振動のオーラで防御して受け流しつつ他の猟兵達に位置を教え、
超音波を収束させた音属性攻撃の斬擊波で敵の傷口を攻撃する

…此処がお前の墓標となる。異端の神よ、眠りなさい。地の底で…




 主を失った地底都市。
 猟兵達は自分達が第五の貴族を討伐したことで、自分達が通ってきた死の罠の通路が消えていくことに気付く。
 そうなれば、内部を徘徊していた狂えるオブリビオンも地底都市へと至ってしまうわけで。
「ああぁぁ、うああぁぁ……」
 黒いドレスに、銀色の髪を揺らす白い肌の女性『純血姫レヴリス・シルバームーン』。
 その見た目だけであれば、美姫と形容してよい姿をしている。
 しかし、狂えるオブリビオンとなった彼女の振る舞いはもはや姫と呼ぶには程遠い。
「死の罠の迷宮で苦しめられ、理性を失ったオブリビオンですか」
 オレンジの髪と瞳を持つ令嬢、ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)がレヴリスの姿をじっと見つめる。
 苦しそうに呻くのは毒ガスの通路を通ってきた為か、それとも……。
「あらあら、あの毒ガスの中を突っ切ってくるなんて、中々の胆力ですわね」
 一見人の姿をしているが、その正体は遺跡奥を住処とするラスボス、ルド・シャルカ(遺跡の魔女・f33104)。その物言いもまた貫禄を感じさせる。
 狂えるオブリビオンとなったことで強大な力を得たレヴリスだが、毒ガスの充満した死の罠の迷宮を強引に突破しようとしたことで、体に小さな傷をいくつかつけているという。
「触れるだけで体力を削がれる毒ガスじゃ。さすがに少しは堪えておるじゃろう」
 小柄な金髪猫耳少女、エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)も倒すべきオブリビオンを前に、効果的にダメージを与えられそうな場所を探す。
「毒ガスで傷ね……口、鼻、それとも目かしら?」
 希望の宝珠を本体とするヤドリガミ、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)もまた、敵の傷の位置を探る。
 正面切って相手にすれば、返り討ちに合う可能性すらある狂えるオブリビオン。ここまでせねば、倒すことすら厳しい相手とあれば、やむを得ない。
「……第五の貴族は既に討ち、お前の目論みは失敗に終わった」
 そこで、銀の長いウェーブヘアを靡かせ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が敵へと呼びかける。
「ううぅぅ、うああぁぁ……!」
「本来なら、これ以上傷口を拡げる前に撤退するのが常道なんでしょうけど……」
 しかし、自ら判断できる理性など残されていないレヴリスは呻いて攻撃態勢をとる。それにに危険を察し、リーヴァルディも身構えていた。
 その姿に、ローズはレヴリスがさぞ苦しい思いをしたのだろうと感じて。
「これ以上苦しまない様に、私達の手で引導を渡してあげましょう」
「ここは立ち直る隙を与えず攻め立ててやるわい」
 同意するエウトティア。他メンバー達も散開し、攻勢に移ったレヴリスを迎撃し始めるのである。


「あぁ、ああああぁぁ……!」
 狂えるオブリビオン、レヴリス・シルバームーンは、元々探していた第五の貴族『吸血猟姫ディアナ』を発見できず、その前に立ち塞がる猟兵を敵視して襲ってくる。
 容姿を天使のそれへと変えた敵は自らの寿命を削りながらも、浄化の光を発してくる。
 無策で受ければ、その光は全てを忘れて眠るように命を奪われてしまう。
 その為、ローズは祈りを捧げつつ全身を【オーラ】で包んで身を守る。
 ヴィオレッタもまた先程と同じく、地底都市という立地を生かして自らに
【迷彩】を施し、敵の狙いから逸れるよう【目立たない】よう立ち回る。
 それでも煽りを受けてしまう分には、ヴィオレッタも展開していた【オーラ】で凌いでいた。
 ルドもまた敵の発してくる浄化の光を対処すべく、ユーベルコード【寵姫の瞳】でレヴリスを見つめて。
「さあ、大人しくするのです」
 ルドの視線は強い力を宿す。それで無意識にレヴリスが動きを止め、しばし相手の体に刻まれた傷の位置を探ろうとする。
 ただ、それも僅かの間の話。
「う、うぅ……!」
 さすがは強化されたオブリビオンというべきか。すぐさま自ら枷を外して自らの力を振舞おうとする。
「やはりですか。でしたら、予想でいくしかありませんね」
 とはいえ、この展開はルドも想定のうち。すぐさま態勢を整え直して次なる手を打つ。
「ああぁぁ、うああああぁぁ……!」
 アオオオォォォン!!
 元の姿へと戻ったレヴリスが一際大きな声で叫ぶと、虚空から姿を現した3つの首を持つ番犬の霊が猟兵達を狙って飛び掛かってくる。
 標的となったのは、エウトティアだ。
「そう来ると思ったのじゃ。……マニトゥ、お主の出番じゃぞ!」
 ガルルル……!
 すぐさまエウトティアも『巨狼マニトゥ』を呼び出し、さらにユーベルコードでマニトゥの力を強化する。
 三つ首の犬の霊とマニトゥがしばし互いを抑え合う。
 この場をエウトティア達が持たせてくれている間に、マスケット銃『吸血鬼狩りの銃・改』を手にしたリーヴァルディは犬の霊目掛け、『呪宝珠弾』を乱れ撃つ。
 アオオオォォォォ……。
 幾発かの銃弾を浴びた犬の霊。レヴリスとの支配を切断することができたリーヴァルディは相手の闘争心を反転させ、集団戦術を乱す同士討ちを試みる。
 それによって、レヴリスは自ら呼び出した犬の霊に襲われることとなる。
「どんな小さな傷も逃さない」
 さらに、リーヴァルディが使うのは、ユーベルコード【吸血鬼狩りの業・天響の型】。
 発する超音波による反響定位の能力を強化した彼女は、【第六感】でレヴリスの状態を【暗視】する。
 これまでに培ってきた【戦闘知識】を基にし、リーヴァルディは敵の体にある傷口を【見切っていく】。
「呼吸器、右腕と左の脛……」
 強化したレヴリスの体についた傷をリーヴァルディが仲間へと示すと、メンバー達はそれらの傷を狙い、本格的に攻撃を開始する。
「すべて焼いてしまおうかと思っていたけれど、場所が分かればこっちのものね」
 狙うべきは3ヵ所と見定めたヴィオレッタは詠唱を始めて術式の威力を高める。
「……全てを焼き尽くす星界の炎よ」
 ヴィオレッタの手から放たれた蒼炎属性の電離プラズマはレヴリスの胸部、右腕、左脛をピンポイントで狙い撃つ。
 多少レヴリスが逃れようと身を逸らして移動しようとしても、ヴィオレッタは『射貫き打ち抜く鋒矢』で放った矢を【誘導弾】として執拗に傷口を狙っていく。
「罠の中歩き回った脚……思った通りでしたわね」
 ローズもユーベルコードを使いつつ戦いを進める。
 彼女の【薔薇の刻印】は一度命中すれば癒えることのない傷を刻む。
 そして、茨の刻印によって、ローズは相手の体力を削り続けるのだ。
「貴方を倒せば、終幕ですわね……」
 全身に傷があるのではと考えていたルドだったが、敵もオーラなどを展開して己の身を守っていたのだろう。
 それはそれとして、ルドも内臓や肌を傷がつくポイントと見定めていて。
「ふふ、どうせ唄うなら鎮魂歌の方がよいんじゃないかしら」
 再び、ルドは相手をじっと見つめて動きを止めようとする。
 この場は仲間が攻撃を仕掛けてくれることもあり、彼女は足止めに注力していたようだ。
「う、うぅ……」
 動きを刹那止めた敵へ、リーヴァルディとエウトティアが同時に仕掛ける。
 エウトティアがビーストマスターの力で多数の狼を呼び出し、レヴリスを取り囲む。 
 狼らが爪や牙で徐々に体力を削る中、リーヴァルディは、超音波を収束させた【音属性の攻撃】で傷口を撃ち抜く。
「あぁ、うぅ……」
「……此処がお前の墓標となる。異端の神よ、眠りなさい。地の底で……」
 そして、傷が深まってきたところで、エウトティアが狼達へと呼びかける。
「今じゃ」
 血の臭いを漂わせる腕や脚を目掛け、狼らが一斉に喰らいつく。
「ああああぁぁ…………」
 毒ガスで体力が減っていたことも大きかったのだろう。レヴリスはついに意識を失ってその場に倒れ、ゆっくりと消えていく。
 オブリビオンの消滅を確認した猟兵達は一息つき、互いの健闘を讃え合うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月23日


挿絵イラスト