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孤独のミネット

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #シュナイト・グリフォン #スカイダンサー #ソリの日々 #宿敵撃破

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『遊園地の空を楽しもう!
 スカイダンサーも、それを見たい人も集まれ!』
 そんなチラシを手に、ソリはとある遊園地を訪れていた。
 平凡、どころかどこか古びた雰囲気の、敷地だけは広い遊園地。数少ないアトラクションもレトロな感じで、単純な動きのものしかなく。加えてキマイラフューチャーにしては色味も暗めで派手さがあまりない。
 しかし、チラシに誘われてか、あちらこちらでパフォーマンスをしているスカイダンサーの姿が見え。さらにそれに歓声を上げる客が、それなりに集まっている。
「これなら、皆を誘っても楽しんでもらえるかも」
 いつも誘ってもらってばかりだから、と。
 ソリ・テュードは、孤独だったテレビウムは、友人達の姿を思い浮かべ。
 連絡しようとスマフォを握りながら、近くの空を見上げた。
 そこで力強い舞いを魅せるのは、ヒョウのような黄色に黒いまだら模様が描かれた細い尻尾をくるくる揺らし、腰から生えたワシを思わせる翼も使って自在に空を駆ける、キマイラの男性スカイダンサー。
 思わず見惚れてその動きをテレビ画面な顔で追いかけていると。
 ちょうどパフォーマンスが一区切りになるところだったらしく。
 最後の大技をしゅたっと決めて、スカイダンサーが地面に降り立つ。
 周囲を囲んでいた観客から巻き起こる、大きな拍手。
 ソリも倣うように、パチパチと拍手を送り。
 そこに、スカイダンサーが駆け寄ってきた。
「ソリー! 見に来てくれたっしょ?」
「……え?」
 親し気に話しかけられて、思わずソリはテレビ画面をチカチカさせる。
 まだまだ友達の少ないソリにはスカイダンサーの知り合いなどいるわけもなく。そもそも男性の知り合いは、猟兵達を除けば、ホワイトライオンのキマイラと女装バーチャルキャラクターしかいないくらいなのだけれども。
 その特徴的な話し方に、そして、男性の顔を覆うジャングルの奥地が似合いそうなマスクには、すっごく覚えがあったから。
「……リディ?」
「そうっしょ! この身体の時に会うのって初めてっしょ?
 ダンスパフォーマンスする時は、いつもこうしてるっしょ!」
 陽気に話すヒーローマスクの少女、リディ・キュールの名前を半信半疑で呼ぶと、面白がるような笑い声が返ってきて。
 少女の身体でしか会ったことのなかった友人の思わぬ姿に、ソリはやっぱりテレビ画面をチカチカさせていた。

「ああ、ミネット。世界は悩みだらけだわ。ねえ、そうでしょう?」
 右の繊手で抱いた白猫にそっと頬を寄せ、女性は哀し気な声を零す。
 長く艶やかな黒髪を飾る花冠も、細やかなレースで縁取られた白いドレスに飾られているのも、真っ白なマーガレット。
「わたくしに、スピリチュアル団体『マーガレット』に悩みをおっしゃって?
 話すことで楽になれるわ。ねえ、ミネット?」
 その背に天使のような白い翼を広げ。
 白猫と同じ青い瞳を輝かせて。
 慈愛に満ちた微笑みを湛える美しい顔は、だがどこか虚ろで。
「……ああ、そうだったわね、ミネット。
 今は、悪の組織『絶対絶望パレード』だったのだわ。
 キング・ブレイン様の世界征服で、より多くの悩める方々を集められるの」
 優しく響く声も狂気に彩られて、歪んだ歓喜に弾む。
 袖口へと広がっていくレースのベルスリーブを揺らし、そっと左腕を掲げた女性は、周囲に集まっていた動物の着ぐるみ達をゆるりと見回して。
 長袖の先から覗く、白い毛に覆われた猫の手で、その肉球で、彼らを指し示すと。
「さあ、悩みを隠した方々の前で、スカイダンサーを惨殺していらして?
 世界に絶望をもたらせば、わたくしの元に悩みが溢れ出てくるわ」
 悪の組織の首領らしく、それでも穏やかで優しい口調で、命令した。
 まるでクリスマスツリーのように電飾やモール、ガーランドにリボンで飾り付けられ、パレード怪人となった着ぐるみこと『つよくてかわいいアニマルズ』達は。手に手に丸太を、鉄球を、ピコハンを持つと、女性の言葉に頷いて、遊園地へと散っていく。
 そう。ここは、怪しく輝く『絶望遊園地』。
 そこに誘い込まれたキマイラ達、そして特にスカイダンサーを狙って。
 女性は……『マザー・フルール』は白猫に頬を寄せ、麗しく微笑む。
「ふふ。どんな悩める方々がいらっしゃるのかしら。
 楽しみね、ミネット。わたくしの可愛い猫ちゃん」

「スカイダンサーが狙われている」
 集まった猟兵達を前に、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)はそんな端的な言葉から説明を始めた。
 猟書家『シュナイト・グリフォン』の意志を継いでか、悪の組織『絶対絶望パレード』の首領となったオブリビオン『マザー・フルール』。彼女は、秘密基地『絶望遊園地』にイベントと称してキマイラ達をおびき寄せると、華やかに死をもたらす配下のパレード怪人『つよくてかわいいアニマルズ』を放ったという。
「パフォーマンスを行っているスカイダンサーを観衆の前で惨殺し、世界に絶望をもたらそうとしているようだ」
 もちろんキマイラフューチャーだから、観衆には、その場に居るキマイラだけでなく、生配信を見ている視聴者も含まれる。
 そう考えると効率的な方法ではあるのだろう。嫌な効率ですが。
「任せたよ、猟兵」
 改めてぐるりと皆を眺めた夏梅は、にやりと笑い。
「もちろん彼もいるからね」
 馴染みのテレビウムの名を告げて、まただねぇ、と苦笑した。


佐和
 こんにちは。サワです。
 ミネットは、名前というより、猫ちゃんと呼びかけている感じです。

 ソリ君は、ごく普通のテレビウムです。
 何となく独りでいましたが、友達ができて一緒にいろいろわいわいやってる模様。
 今回は、思わぬ形で遭遇した友達の1人、ヒーローマスクの少女(身体は成人男性キマイラ)のパフォーマンスを見ています。
 ソリ君達について知りたい方は、タグを利用して過去の登場作をご確認ください。
 尚、未読で全く問題ありません。

 第1章は『つよくてかわいいアニマルズ』との集団戦。
 戦場はどこか寂れた遊園地となります。
 秘密基地『絶望遊園地』です。秘密どころかチラシで大公開しちゃってますが。
 そこでパフォーマンスをしているスカイダンサーが襲われていきます。
 スカイダンサーは、ソリの友達リディの他にも何人もいます。
 そのパフォーマンスの都合上、遊園地のあちこちに散らばっていますので、アニマルズもあちこちに散らばって襲い掛かっていくことになります。

 第2章は、悩みを求めてさまよい出てくる『マザー・フルール』とのボス戦です。
 戦場は同じ遊園地のメリーゴーランド近くとなります。
 相手の悩みにつけ入り優しく諭しつつ洗脳しようとする相手です。

 それでは、木春菊の白猫を、どうぞ。
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第1章 集団戦 『つよくてかわいいアニマルズ』

POW   :    丸太クマさん怪人・ウェポン
【丸太兵器 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    鉄球ワンちゃん怪人・ジェノサイド
【鉄球攻撃 】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    ピコハンウサちゃん怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ピコハン 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「さー、も1回踊るっしょ! ソリにも見てもらいたいっしょ!」
 そう告げて踵を返したリディは、先ほどまでパフォーマンスをしていた位置に駆け戻っていく。まだ集まったままだった観客達から、次が始まる気配を感じてか、歓声や拍手がまた巻き起こっていった。
 ヒョウの尾もワシの翼も、そもそも成人男性のしっかりした身体つきそのものも、ソリには未だ見慣れない、友人の声とのギャップに戸惑う姿だけれども。
 話しかけてくれた、陽気な声と優しさは、いつものリディそのものだったから。
 ソリも応援しようと、雄姿を見ようと、観客の輪の中に入って行く。
 くすんだ赤色のタコを模したアトラクションが、客もなく静かに止まっている前で。
 皆の注目を集めてリディが両手を掲げた。
 観客から喜びの声が巻き起こり。
 ライブ配信もしているのだろう、カメラを構えて準備を整えるキマイラの姿も見える。
 大人気のスカイダンサー。
 それが自分の友人だということを、じわりとソリは感じて。
「すごいなぁ」
 再び空へと舞い上がったリディを、憧れの瞳で見つめた。
 その近くに、電飾を身体に巻き付けた『つよくてかわいいアニマルズ』が迫ってきていることにまだ気付かないまま……
 
夜鳥・藍
スカイダンサーの方ってすごく華やかですね。私には……うん、とてもじゃないけどできないわ。人目を引くなんてとてもとても。
でもそうして人々に希望というのでしょうか、楽しませてくださる方を殺させはしません。
まして遊園地というこの場所で。たとえ古くとも子供心を楽しませてくれる場所なのですから。

まずは相手の攻撃を誘い、占い師の勘という第六感で回避に専念します。上手く回避さえしてしまえば以降の攻撃を受けずに済むと思います。
回避後はUC雷鳴を放ちます。

ところで電飾は直接体に巻き付けたら危ないのではないでしょうか?電気をどこから引っ張って来てるかはわかりませんが、その状態で切ったらどうなるのでしょうね。



 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が見上げた空に、鮮やかな赤いヒレが舞う。
 最初はドレスかと思ったほど、腰から長く揺らめく尾ビレは、時に蝶のように広がり、時に鳥の尾のように纏まり、しなやかなキマイラの舞いを彩って。その細い足の一部や滑らかな肩を覆う赤い鱗と、耳の代わりにリボンのように広がるこちらも赤いヒレも共に、美しく青空に映える。
 白い肌と長い白髪とのコントラストも見事な、金魚のキマイラの少女は、まるで水の中を泳いでいるかのように、自在に空を舞い飛んで魅せていた。
「……すごく、華やかですね」
 その容姿もさることながら、それを最大限に生かした空中パフォーマンスそのものに目を奪われて、思わず藍の口から感嘆の息が零れる。
「私には……うん、とてもじゃないけどできないわ」
 藍晶石のクリスタリアンとして、宝石のように煌めく宙色の瞳と、真っ直ぐな青みがかった長髪を持つ藍にも、静かな美しさがあるけれども。フードで顔までも隠してしまう程人見知りな性格で、何より他者の視線を怖く感じてしまうから。
 多くの観客キマイラの視線を集めて踊るスカイダンサーに、自身にはとても真似できない程に目立って人目を引いている存在に、もはや尊敬に近い感動を覚えていた。
 人々を楽しませ、希望を与える。
 こういった形でそれを叶えることは、藍にはできないから。
 だからこそ。
「……殺させはしません」
 その楽しみを、希望を護るべく。
 藍は、観客達の輪に近付こうとしていた着ぐるみの前に立ちはだかった。
「まして、この場所は遊園地……
 たとえ古くとも子供心を楽しませてくれる場所なのですから」
 着ぐるみは『つよくてかわいいアニマルズ』。スカイダンサーを惨殺し、この場に居る観客や配信を見ている者達に絶望を振り撒こうとしているオブリビオン。
 白い犬を模した彼らは、首元をピンク色のリボンで、そして身体中を巻き付けた電飾でピカピカと無駄に派手に飾った状態で、もこもこでファンシーな顔を藍に向ける。
 異様な輝きと共に、その手に振り回され始めたのは、鎖のついた鉄球。
 その姿に、ふう、と藍はため息のように息をついて。
 鉄球攻撃を誘うように飛び出した。
 次々と振り回され、投げ放たれる鉄球は、着ぐるみ姿で軽く見えがちだけれども。
 空気を裂く音は鋭く。占い師としての感で回避した藍のフードやシャツワンピの裾を、その重さが生み出す速さで起こした風で大きく揺らす。
 当然、藍が避けた先の地面にもめり込んで、重量を見せつけていた。
 だが、どんなに重くとも、当たらなければどうということはなく。
 そして、次々と放たれた鉄球は、その高速さゆえに、思わぬ藍の回避行動に対応するどころか連続攻撃を中止することすらできずに、ただただ外れていき。
 慌てて鉄球を引き寄せる犬の着ぐるみに、藍は静かに、刃渡30cm程の黒い三鈷剣を向ける。
「響け!」
 その銘を『鳴神』という神器は、藍の声に応えて百を超える数に複製され。雷が鳴り響くように、鋭い軌跡を描いて犬の着ぐるみ達へと飛来した。
 鉄球をまた振り回そうとする手を、慌てて避けようとする足を、次々と切り裂いて。
 白い着ぐるみが見る間に破れ、ほつれていく。
 その様子を油断なく見据えていた藍は、ふと、気が付いて。
「ところで、電飾は直接体に巻き付けたら危ないのではないでしょうか?」
 感じた疑問に少し首を傾げて見せた。
 ちょうどその時、電飾のライト同士を繋ぐコードを剣がかすめて。
 切れた勢いそのままに、切り口がくるんと白いアニマルズの身体に巻き付くと。色とりどりに光っていたライトが、一瞬、全て同時に強く強く輝いて。同時に、びくんっ! と身体を硬直させた着ぐるみは、灯りが消えると共に、その場にぱたりと倒れた。
 攻撃した神器の名にちなんだような、雷に打たれたようなその姿が消えていくのを見つめながら、藍は懸念が的中してしまったかと、俯き気味にフードで顔を隠し。
 ふと、疑問に眉を寄せる。
「そういえば……あの電飾はどこから電気を引っ張ってきていたのでしょう?」

成功 🔵​🔵​🔴​

物部・落雁
アドリブ/絡み 歓迎です。
「キミたちの踊りも見せてくれないかい?滑稽な場面も書きたいのでね」

ウィザードブルームに乗ったまま【挑発Ⅰ】で『つよくてかわいいアニマルズ』を集め【空中機動Ⅰ】で間を高速ですり抜けて同士討ちを誘います。

ある程度きぐるみたちが消耗してまとめて攻撃しやすくなったら
【ミゼリコルディア・スパーダ】でとどめを刺します。

「やはり君たちはコメディリリーフであってモンスターではない。弱すぎるからね」



 まるで水槽の中を泳ぐように、鮮やかな赤い金魚キマイラの少女が青い空を舞い踊るのを見つめ、物部・落雁(ハイカラさんの文豪・f33714)は頷いた。
「ふむ、いいね。これはとても美しい場面だ」
 魔法の箒に乗って足を組み、手帳に何やら書き留めながら、赤いヒレと白い髪を翻して観客キマイラ達を魅了する少女を黒い瞳で追いかける。
 こういった華やかで楽しい日常を経てこそ、その後に起こる事件が引き立てられるものだと、自分好みの展開を……好きなB級パニックホラーな物語を思い描いた文豪は。
 金魚キマイラのスカイダンサーに近寄ろうとしている『つよくてかわいいアニマルズ』の姿に気付き、箒をふわりと移動させた。
 観客や動画視聴者の前でスカイダンサーを惨殺し、世界を絶望に染める。
 グリモア猟兵から聞いた彼らの狙いは、落雁好みの展開ではあったけれども。
 落雁は、ピコハンを携えた笑顔なピンクウサギの着ぐるみの前に、その行く手を阻むように箒を滑り込ませると。
「キミたちの踊りも見せてくれないかい?」
 にっこりと、黒い瞳を歪めて笑った。
「滑稽な場面も書きたいのでね」
 そして魔法の箒で一気に加速すると、ウサギの着ぐるみの間をすり抜ける。
 慌てて避け、驚いたように振り返り。でもすぐに気を取り直したようにピコハンを掲げた着ぐるみ達へ、くるりと旋回した落雁は、再び飛び込んだ。
 挑発するように着ぐるみの目前に迫り。だが振るわれたピコハンが当たる直前で箒を操り急転回。追いかけるように振るわれたピコハンを誘導して、別の着ぐるみの前でまた進路を唐突に変えれば。振り下ろされた2つのピコハンが同士討ちを引き起こす。
「ははっ。いいねいいね。実に滑稽だよ」
 ぐちゃぐちゃとウサギの着ぐるみ達を引っ掻き回しながら、落雁は箒の上で楽し気に、陽気な笑い声を上げて。
 混乱がある程度のダメージとなったところで、見せつけるようにペンを走らせていた手帳をパタンと閉じて、着ぐるみから距離を取った。
 その周囲に生み出されるのは百本程の魔法剣。
 魔法の箒の上で組んだ足に肘を乗せ、前屈みになって手に顎を乗せた落雁は。
「さあ、そろそろ結末だ」
 物語の終わりを告げるように微笑んで。
 魔法剣で周囲に幾何学模様を描き上げた。
 複雑に飛翔した剣は、美しくも鋭く、着ぐるみ達へと向かい。
 一部は迎撃に振り回されたピコハンに相殺されつつも、ピンク色でもこもこの身体を幾つも貫き、倒していく。
 膝をつき、また地面に倒れ、消えていくウサギの着ぐるみを見下ろして。
「やはり君たちはコメディリリーフであってモンスターではない。弱すぎるからね」
 箒の上で肩を竦めると、気に入る事件ではなかったというかのように、あっさりと背を向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

真幌・縫
あの人が『絶望パレード』を受け継いだ人?
なんだろう…知ってる人のような…
でもまずはスカイダンサーさん達を襲おうとしてる怪人さん達を倒さなきゃ。

ぬいはスカイダンサーさんじゃないけど【ダンス】で【存在感】を出して【おびき寄せ】だよ!

つよくてかわいい…かわいい…?
…自称つよかわな怪人さん達にはおしおき!

UC【ぬいぐるみさん行進曲】
これが本当の可愛いだよ!



 きょろきょろと辺りを見回しながら遊園地を歩いていた真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)は、ふと、何かを感じて、振り返った。
 そこにあったのはメリーゴーランド。煌びやかな屋根の下で、舞台のように一段高くなった上で、沢山の木馬と時折馬車が並ぶ回転遊具。
 どこか古びた印象を持ち、キマイラフューチャーにしては落ち着いた色合いで。
 ちかちかとライトが瞬いてはいるけれども、動くことはなく。
 人だかりもなければ、スカイダンサーもいない。
 いるのはただ、大きな白い翼を広げた黒髪の女性だけ。
 木馬の1つに横向きに座った女性は、髪にドレスに咲くマーガレットの花を揺らし、抱いた白猫に話しかけているようだった。
 メリーゴーランドが動き出すのを待っているのか。
 それとも、他の何かを待っているのか。
 そんな女性を遠目に眺めながら、縫はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめた。
 それは、白い翼のついた灰色毛並みの猫のぬいぐるみ。いつも縫と一緒にいてくれる、大切な大切な『サジ太』。
 同じように白い翼を背に広げ、白い猫耳と白い猫尻尾を揺らした縫は、不思議そうに首を傾げ、柔らかな黒髪もふわりと揺らす。
「あの人が『絶望パレード』を受け継いだ人?」
 メリーゴーランドに座る女性に感じるのは、オブリビオンとしての存在感。
 でも、縫にはそれだけではなくて。
「なんだろう……知ってる人のような……」
 不思議な既視感にさらに首を傾げた。
 抱いたサジ太もちょっと傾いて、一緒に考え込んでいるかのよう。
 でも、女性の方は縫に気付かず。抱いた白猫から顔を上げぬままで。
 そこに、力強いギターの音に乗せて、わあっと大きな歓声が響いてくる。
 振り向くと、バーチャルキャラクターのスカイダンサーが空を舞うのが見えた。
 そして、その歓声に呼び寄せられるかのように、『つよくてかわいいアニマルズ』もスカイダンサーへ近づこうとしているのが見えたから。
「まずはスカイダンサーさん達を襲おうとしてる怪人さん達を倒さなきゃ」
 縫は踵を返して、女性に背を向けて、走り出した。
「ぬいはスカイダンサーさんじゃないけど……」
 アニマルズに接近した縫は、彼らをおびき寄せるように踊り始める。
 空を舞うようなすごいアクロバティックなものではないし、難しいステップでもないけれども。ふんわり柔らかな縫の纏う雰囲気に合った、可愛らしくも優しいダンスで、くるりくるりと存在感を紡ぎ出す。
「わあっ。可愛い」
「お人形さんみたい」
 ぽつりぽつりと、キマイラ達の目を惹いて。
 だからこそ、ピコハンを持ったピンクウサギの着ぐるみも近寄ってきて。
 アニマルズは無機質な笑顔そのままで、縫に向けてピコハンを振り上げた。
「つよくてかわいい……かわいい……?」
 オブリビオンの名前を呼ぼうとした縫は、でも途中で考えて。
「……自称つよかわな怪人さん達にはおしおき!」
 言い直しながら、うん、と頷くとユーベルコードを発動させる。
「さぁ、ぬいぐるみさん達! ぬいと一緒に戦って!」
 現れたのは、本当に可愛いぬいぐるみの群れ。
 ウサギにイヌにクマにと、どれもこれもつぶらな瞳を輝かせ、ころんとした丸っこい見た目と、ふわっふわの生地で、思わず抱きしめたくなっちゃうくらいの可愛さに仕上がっているぬいぐるみ達に、キマイラ達からまた歓声が上がり。
「せーの! 攻撃開始ー!」
 それが次々とウサギの着ぐるみへ飛んでいけば、そこはまるでおもちゃ箱。
「いいなー。私も可愛いに埋もれたーい」
 わちゃわちゃした光景に、羨望の声すら聞こえてきたから。
 ぬいぐるみの山の周囲をサジ太と一緒にくるりくるりと踊って回りながら、にっこりと縫は告げた。
「これが本当の可愛いだよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわあ、アヒルさんすごいです。
でも、アヒルさんってスカイダンサーさんでしたっけ?
あ、アヒルさん、他の方の演技の邪魔はしちゃダメですからね。

ふえ?あのいかにもクリスマスで地上を走り回りそうな動物の着ぐるみさん達もスカイダンサーさんなのでしょうか?
ふぇぇ、やっぱり違いますよね。
今日は美白の魔法の準備も万端です。
・・・ふえ?えっと、美白の魔法でどうやってあの鉄球を防げばいいのでしょうか?
ふええ、さっきあのテレビウムさんのお友達のヒーローマスクさんを見かけたのに、もしかしてテレビウムさんはここに来てないのですか?
いえ、ワンちゃん怪人さんに美白の魔法をかけて鉄球が滑って振り回せなくすればいいんです。



「ふわあ、アヒルさんすごいです」
 青空を見上げたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は思わずぱちぱちと両手を叩いていた。
 見つめる先で空を舞うのは、いつも一緒のアヒルちゃん型ガジェット。
 フリルのブラウスと意匠を揃えた白い前掛けを揺らし、驚くほど器用に小さな白い翼を羽ばたかせ、ずんぐりむっくりした白い身体をくるくると見事に回転させていく。
 その様子は、踊るというより弾むという感じで。急降下しつつも地面に激突はせず、空へ舞い上がりつつまた落下して、ハラハラドキドキするような白い軌跡を描いていた。
「落ちそうで落ちなくて面白ーい」
「ちっちゃいのが一生懸命に頑張ってるって感じで可愛くない?」
 不思議な動きはキマイラ達も引き寄せて。
 気付けばガジェットを囲むように、観客の輪ができていた。
 その人気っぷりに、フリルはさらに感嘆の声を上げ。
 予想もつかない縦横無尽さを、赤い瞳で追いかけると。
「あ、アヒルさん。他の方の演技の邪魔はしちゃダメですからね」
 気付いて注意を飛ばした、途端。
「……うひょわっ!? びっくりしたっしょ!?」
「ふえぇ、言った傍から邪魔してます……」
 ヒョウの尾とワシの翼を持つキマイラのスカイダンサーとあわや接触事故、という光景が飛び込んできて、フリルは困ったように大きな帽子のつばを引き寄せる。
 ちらりと帽子の陰から伺えば、キマイラの方が巧く場所を変えてくれたようで。ガジェットがまた空を独占して、自由に飛び回っていた。
 ほっとフリルは息を吐き。
(「でも、あのキマイラさんの顔……というかマスク……」)
 キマイラの顔を覆っていた、ジャングルの奥地が似合いそうな独特な雰囲気の仮面に、既視感を感じて首を傾げ。
 さらに、思い至った別の疑問に、また反対側へと首を傾げる。
「それと、アヒルさんってスカイダンサーさんでしたっけ?」
 細かい事は気にするな、とでも言うように、ガジェットがガアと鳴きました。
 そんなこんなで観客の注目を集め続けると。
 その中に『つよくてかわいいアニマルズ』が混じってくる。
 まずはそれにガジェットが気付いて、また鳴いて。その声を唯一理解したフリルも振り返ると、白い犬な着ぐるみの姿を見やった。
「ふえ? あのいかにもクリスマスで地上を走り回りそうな動物の着ぐるみさん達もスカイダンサーさんなのでしょうか?」
 犬の着ぐるみは、赤と緑でキラキラ煌めくモールを身体に巻き付け、金色のリボンをひらひらと飾って、確かにクリスマスカラーに彩られていたけれども。白い身体もまるで雪化粧のように見えてしまったけれども。
 そうじゃないだろうとツッコむように、鋭く響くガジェットの声。
「ふぇぇ、やっぱり違いますよね」
 分かってます、とフリルは慌てて頷いて。
 オブリビオンと相対すべくユーベルコードを発動させた。
 それは『しっとり艶々なお肌を守る美白の魔法』。
 肌をケアする蒸気で、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らすもの。
 それを見た犬の着ぐるみは、ぶんぶんと鎖のついた鉄球を振り回し始める。
 スピードと重さ、そこから導き出される破壊力を感じたフリルは。
 防御力を上げるわけでも回避率を上げるわけでもない、ただのスキンケアなユーベルコードを見るかのように、まじまじと自身の両手を見つめて。
「……えっと、この美白の魔法でどうやってあの鉄球を防げばいいのでしょうか?」
 思わず零れた呟きに、呆れたようなガジェットの声が重なった。
「ふええ、だってさっきのスカイダンサーさんは、あのテレビウムさんのお友達のヒーローマスクさんでしたよね!? ということは、あのテレビウムさんがここにまたいるわけで、テレビウムさんがいる時は美白の魔法を使ってばっかりだから、今回も美白の魔法を使えばいいということじゃ……」
 言い訳するようにあわあわと言葉を紡いだフリルは。
 そこで、ようやく、自分の思い違いに気付いてハッとする。
「もしかしてテレビウムさんはここに来てないのですか?」
 ……そっちじゃない。
 響いたガジェットの鳴き声の意味を、誰もが正しく理解した。
 そんなこんなで慌てふためくフリルに、だが犬の着ぐるみは構わず鉄球を振り回し。
 フリルに叩きつけようと振りかぶる。
 その時。
 つるっと着ぐるみな手から鎖が抜けて、鉄球が空高く高く飛んでいくと。
 重力に引かれて真下へ、鉄球を持っていた犬の着ぐるみの上へと、落下した。
 酷く鈍い音を立て、地面に沈む白い着ぐるみ。
 思わぬ展開に、フリルは赤い瞳を瞬かせて。
 気にせずガジェットがまた空に跳んでは落ちていって。
 キマイラ達の歓声が復活して。
「……ワンちゃん怪人さんの手に、美白の魔法がかかってたんですね」
 ようやく、摩擦を失くしてつるっつるになり、鎖を握っていられなくなった手に気付いたフリルが、納得したように手を打った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
可愛い着ぐるみ姿でも
やろうとしていることはエグイよな
文字通り猟書家の傀儡人形ってか
ソリやダンサーたちを守るぜ

攻撃
スカイダンスのBGMにぴったりの
とびっきりノリのいい曲を
ワイルドウィンドで奏でながら登場だ

パフォーマンスに合わせた
熱い熱い旋律を響かせるぜ

更に炎の翼で飛行
炎のラインを宙に描いてパフォに彩を添える

で獄炎を絡めたその音色は
着ぐるみたちを紅蓮に包み
一瞬電飾を点滅させながら
それよりも強く明るい輝きで
灰へ還すって寸法だ

中身があんのか判んないけど
紅蓮に包まれて眠れ

防御
ソリやダンサーらへの攻撃を
爆炎噴射で瞬時に移動し
身を挺したり
炎の渦で庇う

事後
そのまま演奏を続けて
怪人らの鎮魂曲とするぜ
安らかに



 ふんわりドレスのような、柔らかそうな布を幾重にも重ねた花のような衣装で空を舞っていたスカイダンサーの少女が、そのパフォーマンスを終えて着地する。
 お姫様のように優雅に一礼した姿に、囲んでいた観客から拍手が巻き起こった。
 そこに、力強いギターの旋律が響く。
 スカイダンサーも観客も驚き、揃って振り返った先に現れたのは、ワイルドウィンドを奏でながら笑いかける木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)だった。
 その曲はとびっきりノリのいい曲で。幾人かは自然と、そのリズムに合わせて自然と身体を動かしてしまっているほど。
 だからスカイダンサーも、その表情をワクワクしたものに変えて。
 ふんわりドレスを一転してタイトでポップなカッコいい印象の衣装に変えて。
 花のようなお姫様から、サイバーパンクな姫騎士に変身した、バーチャルキャラクターだったスカイダンサーは、再び空へと舞い上がった。
 先ほどのどこか優雅なものとはまた異なる、勇気を鼓舞し激しく戦っていくかのようなギターの曲に合った熱いパフォーマンスが繰り広げられる。
 それを見上げて、曲目に合わせてもらったウタは、今度はこっちが合わせる番だというかのように、スカイダンサーの動きに合わせて細かく旋律を調整し始めた。
 さらに、地獄の炎を生み出して、自身の背に炎の翼を広げると。スカイダンサーの周囲を飛び、宙に炎のラインを刻んで、パフォーマンスに彩りを添えていく。
 曲も炎も、ウタの全てがスカイダンサーの踊りを引き立てて、決して邪魔をしないように合わせられていた。
 さらに、地上を見下ろしたウタは、丸太を持ったクマの着ぐるみ達が近づいてくるのに気が付いて。電飾やガーランドを巻き付けたようなその姿に、瞳を細めると。
(「可愛い着ぐるみ姿でも、やろうとしていることはエグイよな」)
 その重量だけでも凶悪な鈍器になる丸太を持ち直し、笑顔の描かれた顔でスカイダンサーの動きを追いかけているクマに、ウタは苦笑を零し。
(「文字通り猟書家の傀儡人形ってか」)
 炎翼からの爆炎で瞬時に動きを変えると、『つよくてかわいいアニマルズ』に迫りながら、奏でる旋律を僅かに変えた。
 スカイダンサーが躍り続けるための曲はそのままに。
 そこに攻撃的な響きを混ぜて。
 地獄の炎を絡めた音色は、その紅蓮で着ぐるみ達を包み込む。
 身体に巻き付けられた電飾がチカチカと点滅するけれども、それよりも強く明るい輝きがクマを覆い、そしてその電飾ごと灰へ還していった。
 揺れていたガーランドも、手にしていた凶悪な丸太も、もれなく炎に覆われ。
 その炎の中で消えていく姿を、ウタはじっと見届けて。
「中身があんのか判んないけど……紅蓮に包まれて眠れ」
 一際激しくギターをかき鳴らし、アニマルズを送ると共に、スカイダンサーのフィニッシュを飾った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

遊園地!
まつりん、お弁当はサンドイッチと卵焼きにね、おにぎり(背負ったリュックを見せ)
んむ?空?
空のダンスパーティ!
行こうまつり…、あ、ソリ

ソリ、空見てる
ソリも踊りたい?ん、一緒に踊ろう
【どれすあっぷ・CBA】
縞Tシャツにジーンズのショートパンツ、羽のついたローラーブーツの衣装に変身!
ローラーで助走をつけ、その勢いでソリの腕を取り空中へジャーンプ

空から鳥瞰する良い景色…だが高い(急低下でピコハン躱す)
でもソリに空中ダンス楽しんでもらう為、がんばる(急上昇でウサちゃん巻き込み体当たり)
念の為ソリにはオーラ防御で落下しても安心

あ、まつりん!
ん、ソリ、あっちへダーイブ


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!

へえー、遊園地でスカイダンスかー。
おいらも混ざりたいなあ、踊ってきていいかなあ♪

あ、ソリがいた。お弁当一緒に食べよー!
え、あの兄ちゃん、知ってる人?
がおうの人じゃないよね? え、るっしょの子なの!?

ん?
なんか光った??
わわ、わんこ出た! くまーとうさーも出た!

みんなが危ない!
ぴよこひなこまっきー、出動ー!
ダンサーさんたちを守って!(ぽんぽんとテレポートしながら)

おっと、白わんこさん。おリボン、カワイイね!
鉄球は、電波塔の陰に隠れてやり過ごして。
撒き付いてうろたえたトコに、突撃正拳どーん!

アンちゃんからソリ受け取ってっと。
空旅、面白かった? よかったね!(にぱ)



「遊園地!」
 案内された場所そのものに顔を輝かせていたのは、木元・杏(シャー・オブ・グローリー・f16565)だった。
 いつもの物静かな表情ではあるけれども、金色の瞳はキラキラと輝いていて。
「まつりん、お弁当はサンドイッチと卵焼きにね、おにぎり」
 その背に負ったリュックを見せるように、くるんと向きを変えつつ肩越しに振り返る。
 ワクワクいっぱいの視線の先にいたのは双子の兄の木元・祭莉(マイペースぶらざー・f16554)だったけれども。その銀色の瞳は杏にではなく、上に向いていて。
「へえー、遊園地でスカイダンスかー。
 おいらも混ざりたいなあ。踊ってきていいかなあ♪」
「んむ? 空?」
 その視線を追うように顔を上げた杏の目の前には、一面の青いが広がり。さらに、ワシのような翼を生やし、ヒョウのような尻尾を揺らしたキマイラの男性が、舞っていた。
「空のダンスパーティ!」
 先ほどとは違う色に杏の顔が輝いて。ぎゅっと祭莉の手を引くと。
「行こうまつり……あ、ソリ」
「あ、ソリがいた」
 駆け出そうとしたその先に、友人のテレビウムの姿を見つける。
「やほー、ソリ。お弁当一緒に食べよー!」
「……え!? あっ、わっ……」
 手を引かれてというよりも手を繋いで一緒に駆け寄った祭莉は、ぼうっと空を見上げていたテレビウムに元気に声をかけ。驚いて振り返ったソリ・テュードは、見知った相手にテレビ画面をチカチカさせた。
 挨拶を交わし、再会を喜ぶその中でも、ソリはちらちらとスカイダンサーを気にしていたから。
「ソリ、空見てる」
「あの兄ちゃん、知ってる人?
 キマイラだけど、がおうの人じゃないよね?」
 双子も不思議そうに空を見上げ。そして祭莉は、種族からソリの友人の1人を思い出すけれども。彼はヒョウやワシではなく、ホワイトライオンのキマイラだったはず。
 違うよね、と祭莉がまた首を傾げた、その時。スカイダンサーの目の前を、白いアヒルさん型ガジェットが横切っていく。
「……うひょわっ!? びっくりしたっしょ!?」
「え、るっしょの子なの!?」
 上がった悲鳴と、その顔を覆っていた見覚えのある独特な模様のマスクに、祭莉は正解へと至り。驚くと同時に興味津々、楽しそうに笑った。
 ソリもこくこくと頷いて。
 その動作を別の意味に取った杏が、ソリに向けてしっかりと頷いた。
「ソリも踊りたい? ん、一緒に踊ろう」
「え? そういうわけじゃ……わわっ!?」
 勘違いを正す間もなく、杏は桜の花びらに覆われて。ふわりと花びらが舞い散ると。
 しましまのTシャツにジーンズのショートパンツ。肩口で揺れていた黒髪をぎゅっと縛ってキャップの下に纏めて。しましまの長い靴下の先には、羽の形をした飾りのついたローラーブーツ。
 そんな活動的な服装へとユーベルコードでどれすあっぷしたCBA(くーるびゅーてぃーな杏。ただし、当社比)の姿がそこにあった。
 唐突な、そして鮮やかな変身に、ソリはまたテレビ画面をチカチカさせて。
「ん。行こう、ソリ」
「うわわわわ!?」
 ローラーブーツで助走をつけた杏は、その勢いのままソリの腕を取り、共に空中へと跳び上がった。
 桜の花びらをまた舞い散らせながら、ユーベルコードの飛翔を魅せる杏。
 画面を白黒させるソリだけれども、その見事な空中機動に観客から歓声が上がり。
「ソリもやるっしょ! 負けてられないっしょ!」
 ヒーローマスクのスカイダンサーも、さらに力強くパフォーマンスを魅せていく。
 おおー、とそんな空を見上げていた祭莉だが。
「ん? なんか光った?」
 観客のその向こうに違和感を感じて、ひょこっと覗き見る。
 こちらに近付いてきていたのは『つよくてかわいいアニマルズ』。
 光ったのは、着ぐるみの身体に巻き付けられていた電飾でした。
「わわ、わんこ出た! くまーとうさーも出た!」
 だから祭莉は、慌ててユーベルコードを発動させる。
「みんなが危ない! ぴよこひなこまっきー、出動ー!」
 召喚されたのは戦闘用ロボット。
 雌鶏と向日葵と狼の姿を象った三体は、祭莉の前にずらっと並ぶと。
「ダンサーさんたちを守って!」
 指示に、その姿を消した。
 青銅色の雌鶏ロボット『ぴよこ』が瞬時に現れたのは、クマの着ぐるみの目前。いや、正確には、クマの着ぐるみが近づいていた観客キマイラのすぐ横で。
 任意の味方の元へテレポートできる、その能力を利用して割り込んだぴよこは。
 ガーランドで飾られた丸太が振り回されるのを、がしっと受け止めた。
 そんなぴよこのすぐ傍に、今度は黄金色の向日葵型ロボット『ひなこ』が現れ。
 ぴよこが動きを止めたクマの着ぐるみへと、どこか陽気に襲い掛かった。
 同じ要領で、鎖の付いた鉄球を振り回す犬の着ぐるみの前にテレポートしたのは、白銀色の狼ロボット『まっきー』と祭莉。
「おっと、白わんこさん。おリボン、カワイイね!」
 気を惹くように話しかけながら、祭莉は犬の着ぐるみの前を駆け抜けて。
 咄嗟に放たれた鉄球を、ひょいと電波塔の陰に隠れてやり過ごす。
 躱された鉄球は、だがその攻撃を止めることができないまま。
 ぐるぐるとポップでパンクな電波塔に巻き付いていく。
 狼狽え慌てる犬の着ぐるみに、まっきーが飛び掛かり。咄嗟に鉄球の鎖を手放し、飛び退いた犬の着ぐるみは、コードを引っかけられたことで電飾の灯りを消して。
 華やかさを失ったところに、突撃した祭莉の正拳が、どーんと突き刺さった。
 そんな地上の戦いを、空から見下ろしていた杏は。
「空から鳥瞰する良い景色……」
 と呟いたところで、思い出す。
 自分が、高い所が苦手だったことを。
 でも、自分から跳び上がっておいて、今更怖いとか言い出せず。
 現実や周囲の景色から目を反らし、パフォーマンスの一環のように誤魔化しながらの急降下。近づいた地面に、杏はほっと息をついた。
 その思いもよらない動きに、撃墜を狙っていたウサギの着ぐるみのピコハンを、綺麗に躱すことになっていたけれども。杏はそれに全く気付かぬまま。
「でも、ソリに空中ダンス楽しんでもらう為、がんばる」
 もう一度、気合いを入れて空へと舞い上がる。
 今度は急上昇となったその動きが、ウサギの着ぐるみへの体当たりとなって。
 巻き込まれたアニマルズが吹っ飛ばされていった。
「でもやっぱり高い……」
 そんなこんなで、祭莉が着実に、杏が巻き込み事故で、アニマルズを倒していき。
 ヒーローマスクのパフォーマンスも佳境に入り。
 戦いも踊りも終わりが見えてきた頃に。
「まつりん!」
 杏は、空から兄の名を呼んだ。
 振り向いた祭莉が、にぱっとおひさま笑顔を見せる。
「ん、ソリ、あっちへダーイブ」
「うわわわわ!?」
 そして杏は、ソリをぽーんと放り投げ。
 祭莉が危なげなくそれを受け取った。
 アクロバティックな光景に観客の拍手が巻き起こる。
 その歓声にすら、ソリは画面をチカチカさせて。
「ソリ、空旅、面白かった?」
「え……あ、はい……?」
 問いかける祭莉に、何が何だか、といった感じで頷くと。
「よかったね!」
 輝くおひさま笑顔の向こうで、ヒーローマスクも最後の大技を決めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マザー・フルール』

POW   :    猫はお嫌い?
【白猫】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    悩みがあるならおっしゃって?
【悩み相談】を披露した指定の全対象に【悩みを話して楽になりたいと言う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    マーガレットの花はお好き?
自身の装備武器を無数の【マーガレット】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は真幌・縫です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ソリもすごかったっしょ! 楽しかったっしょ!」
「え……あ、うん……?」
 駆け寄ってきたヒーローマスクのスカイダンサーに、リディに、ソリはふらふらしながらなんとか頷く。
 振り回された感の強い、空舞う一時だったけれども。今まで見た事も無い程高い位置からの景色が、自分だけでは決してできない動きが、観客から送られた拍手が、多くの喜びの歓声が、そして共に空を舞った少女の笑顔が。心地よかったのも確かだから。
 地面を踏みしめて、ほっとしたソリは。
 ようやく、そのテレビ画面にはにかむような笑顔を映し出した。
 けれども、その姿が唐突に、マーガレットの花に包まれ、消える。
「ソリ!? どこいったっしょ!?」
 リディも観客も、そして猟兵達も、慌てて辺りを見回すけれども。
 どこにもテレビウムの姿はなく。
 どうしよう、と困惑が広がっていく中で。
「さっきメリーゴーランドで、『絶対絶望パレード』を受け継いだ人を見かけたの」
 翼猫のキマイラの少女が口を開いた。

 猟兵達が目指すメリーゴーランドの前で。
「……あれ?」
 急に変わった景色に、ソリはまたテレビ画面をチカチカさせていた。
 わいわいと自分を囲んでいた友人や観客の姿も声もなく。
 急に1人きりになったことに戸惑い。
 そして、寂しさを感じて……
「いらっしゃい。悩める方」
 そこに柔らかく優しい声がかけられた。
 振り向いた先にあったのは、メリーゴーランドの木馬の1つに腰掛けた白い女性の姿。
 真っ白いレースのドレスに、真っ白いマーガレットの花を飾り。真っ白い翼を広げて、真っ白いマーガレットの花冠を被って。真っ白い猫を抱いた『マザー・フルール』。
「悩みがあるのでしょう? 遠慮なくおっしゃって?
 スピリチュアル団体『マーガレット』が……いえ、悪の組織『絶対絶望パレード』が、その悩みを聞いて差し上げますわ」
 ガラス玉のように酷く美しく輝く青い瞳にソリを映し。
 真っ白い毛に覆われた猫の左手をソリに伸ばして、優しく甘い声を紡ぐ。
「さあ、悩みを話して楽になりなさい」
 友達ができて嬉しい。
 毎日が楽しい。
 でも僕は、何もできないただのテレビウムだから。
 嫌われて、また独りになってしまったら……
「それが貴方の悩みなのね?」
 震えるソリの心に、じわりじわりと染み入ってくる柔らかな声。
「大丈夫。貴方は独りにはならないわ。
 わたくしの傍に居なさい。わたくしはずっとずっと貴方を傍に置く。
 わたくしのために居れば、独りになることはないの」
 優しく慈しむような声色は、ソリに纏わりつき、捕えていって。
「ねえ、ミネット。そうでしょう?」
 新たな傀儡に歓びながら、マザー・フルールは抱いた白猫に頬を寄せた。
 
フリル・インレアン
ふえ?おかしいです。
いつもならここで、どこかの謎の部屋に移動させられるのですが、今回はあのテレビウムさんだけが転送されています。
ふえ?イースターの時も謎の部屋じゃなかったって、そういえばそうでしたね。
幹部猟書家さんと引き継いだ人の違いなのでしょうか。
そんなことより、急ぎましょう。

え、えっと、ここはお悩み相談室ですか?
あ、アヒルさん、その猫さんに触っちゃダメです。
サイコキネシスで押さえていますから
その隙に・・・って、なんでアヒルさんもお悩み相談しているんですか。
それに私が全然お淑やかにならないことが悩みってどういうことですか?



「ふええ。ちゃんとテレビウムさんがここに居たはずですが、消えてしまいました」
 まだまだ空を飛びたそうなアヒルちゃん型のガジェットを抱え込んだフリル・インレアン(f19557)は、目の当たりにした光景に、おろおろと声を上げた。
 マーガレットの白い花に包まれて消えたテレビウム。
 そこに出たメリーゴーランドという単語を聞き、集まってきていた他の猟兵達と共にフリルも走り出しながら。
 ふと感じた疑問に首を傾げる。
「でも、おかしいです。
 いつもならここで、どこかの謎の部屋に移動させられるのですが、今回はあのテレビウムさんだけが転送されています」
 それはキマイラフューチャーで幾度となく猟書家と戦ったフリルの経験談。
 時に広く豪奢な部屋へ、時にお城の玉座の間へ、時に宇宙船の中へ。配下の怪人を倒した後は、お決まりのように、これからボスが出てきますよと言わんばかりの場所へと転移させられていたものだけれども。
 今のフリルは、ボスの元へ向かって自分で移動しているわけで。
 不思議そうに零した声に、手元のガジェットが一声鳴いた。
「ふえ? イースターの時も謎の部屋じゃなかったって、そういえばそうでしたね」
 フリルにしか分からない声で指摘されたのは、イースターのエッグハントイベントを狙ってきた猟書家『シャドウキマイラ』の意志を継いだオブリビオン。スタジオで欲望のままに撮影していたそこへ乗り込んで行ったのはともかく、体操服でうさぎ跳びをさせられたのは、忘れていたかったところだけれども。
 そういえば今回のボスも、猟書家『シュナイト・グリフォン』の代わりに活動しているという説明だったかと思い出し。
「幹部猟書家さんと引き継いだ人の違いなのでしょうか?」
 また、こくんと逆方向に首を傾げるフリル。
 本当にそうなのか、それともただの偶然なのか、答えが返ってくることはなく。
 フリルに向けられたのは、急かすようなガジェットの一声。
「そうですね。そんなことより、急ぎましょう」
 鳴き声に背中を押されるように、フリルはぱたぱたと遊園地を駆けた。
 そして辿り着いたメリーゴーランドにいたのは、白い女性。
 木馬の1つに横向きに腰掛けて。白い翼を広げ、白い服を揺らし、白い花を飾って、白い猫を抱いた、黒髪のオブリビオン『マザー・フルール』。
「悩みがあるのでしょう? 遠慮なくおっしゃって?」
 青い瞳で酷く優し気に微笑んで、慈しむように穏やかな声を紡ぐ。
「スピリチュアル団体『マーガレット』が……いえ、悪の組織『絶対絶望パレード』が、その悩みを聞いて差し上げますわ」
「え、えっと、ここはお悩み相談室ですか?」
 思わぬ光景に、フリルは赤い瞳を瞬かせた。
 その声に反応してか、テレビウムに話しかけていたマザー・フルールは、その話の合間に頬を寄せた白猫をフリルの方へとすっと差し出して。
「貴方達、猫はお嫌い?」
 囁いたその両手で……人と同じ右の繊手と、猫と同じ左の肉球で白猫を掴むと、ぽんっと放り投げるようにして放った。
 それはマザー・フルールのユーベルコード。
 白猫が命中した者に制約を与える能力だったから。
「あ、アヒルさん、その猫さんに触っちゃダメです」
 フリルは慌てて、白猫の動きをサイコキネシスで押さえる。
 対抗するようにフリルの手から飛び出していたガジェットへ、どこかじゃれつくように飛び掛かってきていた白猫の動きを、直接触らなければ大丈夫なはず、と止めて。
 ガジェットがマザー・フルールへ向かうための道を切り開いて。
「私が押さえていますから、アヒルさんはその隙に……」
「あらあらカナール。貴方にも悩みがあるのね?」
「……って、なんでアヒルさんもお悩み相談しているんですか」
 マザー・フルールの元へと辿り着くや否や、があがあと話し始めたガジェットに、フリルは涙目で抗議した。
「それに、私が全然お淑やかにならないことが悩みってどういうことですか?」

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
悩みを生み出す為に惨殺とは
らしい歪み方だぜ
遠慮なくぶっ飛ばす

ソリ
爆炎で一気に間合いを詰めて背に庇い
戦場から脱出を促す

ダチは一緒に居たいからダチなんだ
役に立つとか立たないとか関係ないぜ

そのままのソリでいれば
そんなソリを好きなダチと
きっとずっと一緒だぜ

戦闘
木春菊も白猫も
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払い吹き飛ばす

猫は好きだぜ
猫を投げる奴に
どうのこうの言われたくないけど

ルールを制限されても無視
受けたダメージで炎を噴出して攻撃に上乗せしたり
そのルール自体を焼却

地獄の炎に燃やせないものがあるって?

刃に刻まれた梵字を赤熱させて一閃
花びらごとマザーを紅蓮に抱き灰に返す

事後
鎮魂曲
安らかに

ソリ>
お疲れさん



 走る先にメリーゴーランドの華やかな装飾が見え。木馬の1つに腰掛けた白い女性と、その前に立ち尽くすテレビウムの友人の姿を認めた木霊・ウタ(f03893)は、地獄の炎を噴出すると、その勢いも得て一気に間合いを詰めた。
 酷く穏やかに優しい声で紡がれる、甘い誘いの言葉も吹き飛ばす勢いで。
 ウタは、テレビウムの……ソリの前に割り込むように飛び込む。
 あら、とどこかおっとりと驚いた女性、白いレースのドレスを纏ったオブリビオン『マザー・フルール』は、ウタと、そしてさらに近づいてくる他の猟兵達をちらりと見て。
「貴方達、猫はお嫌い?」
 抱いていた白猫を両手で放り投げた。
 マザー・フルールと同じ青い瞳を持ち、マザー・フルールのドレスのように真っ白な毛並みの猫は、放たれた勢いに加えて自らも猟兵達へと向かい跳び。
 迫り来るその姿が、触れた者に制約を課すユーベルコードを纏った白が、ぴたりと見えない力に止められたのを、ウタは見据えて。
「猫は好きだぜ」
 にやりと笑うと、加速に使っていた炎を今度は握り構える『焔摩天』へと纏わせて。
「猫を投げる奴に、どうのこうの言われたくないけどな」
 焔摩天の梵字が刻まれた巨大な刀身と共に、獄炎を薙ぎ放つ。
 炎の中に消えていく小さな白い姿を見送ってから、ウタはふっと肩越しに振り向いた。
 そこに立つのは、何度も会った馴染みのテレビウム。
 幾度も言葉を交わした大切な友人。
 そのテレビ画面が、戸惑うように揺れているのを見て。
「ダチは一緒に居たいからダチなんだ。
 役に立つとか立たないとか関係ないぜ」
 マザー・フルールに引き出された悩みに迷い、惑わされている姿に語りかける。
 何もできないただのテレビウム。
 ソリのそんな自己評価に、まだ自信は持てないかと苦笑しながら。
「そのままのソリでいれば、そんなソリを好きなダチときっとずっと一緒だぜ」
 それでもいいのだと頷いて見せた。
 ソリはどこかぽかんとした画面でウタを見上げる。
 傍に居てあげる、というマザー・フルールの甘い言葉とは違う。
 そうであればいいなと思うけれども、何の約束もない、願望でしかない言葉。
 でも、そんな不確かなはずの言葉の方が、じわりとソリに伝わっていって。
 ソリの心に希望が灯る。
 いや、元々灯っていたはずの希望が、戻ってきたというべきか。
 僅かな変化を感じ取ったウタは、再びマザー・フルールへと視線を戻し。
 ソリの希望を押し込め、悩みを引き出した相手を睨み据えた。
(「悩みを生み出すために惨殺までしようとするとはね。らしい歪み方だぜ」)
 共演したスカイダンサーも思い出せば、湧き上がってくる思いがあって。
 そんなウタの心に従って、剣に纏う炎の勢いが増す。
 刃に刻まれた梵字が、赤く赤く、熱に燃えて。
 さらに激しく、獄炎が燃え上がって。
 紅蓮の一閃が放たれた。
 地獄の炎に燃やせないものなど何もないと言うかのように。
 生み出された悩みごと。歪んだその思想ごと。
 白い姿は紅蓮に包まれ、舞い散ったマーガレットは灰に帰していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
悩みのまったくない人はいないでしょう。
でもだからと言ってそこにつけこむ事は許せません。

示したタロットは死神と戦車ですか。
ね、ソリさん。無理に、変わろうと、何かをできるようになろうとしなくてもいいんです。
確かに無力感に悩むでしょう。でも貴方は貴方のままでいいのだと思います。
そして寂しいのなら、一人が嫌ならそう言えばいいと思います。周りの方々がソリさんを厭うているのなら、初めからお声もかけませんしそばに居てくれないと思います。
好ましいと、そばに居てと思って下さるからこそ。だから大丈夫。

そうね、では一つアドバイスを。
地に足を付け、根付かせる。
根がしっかり張ってなければ新たに芽吹く事も出来ませんから。



 華やかな、でもキマイラフューチャーにしては地味なメリーゴーランドと、その木馬の1つに腰掛ける『マザー・フルール』。
 マーガレットの花を散らしたその白いドレス姿に、夜鳥・藍(f32891)は、シャツワンピについたフードの下で、名前と同じ色の瞳を細めた。
(「悩みのまったくない人はいないでしょう」)
 酷く優しい柔らかな声に。酷く空虚に響く慈しみの声に。
 テレビウムへと視線を移した藍色の瞳は、静かに、でも確かな拒絶の色を見せる。
(「だからと言って、そこにつけこむ事は許せません」)
 迷い戸惑うテレビウムへとゆっくりと近づきながら。
 藍はそっと、カードを2枚、取り出した。
 それは『アルケー』と呼ぶ、はじまりのタロットカード。
 引いたそれをちらりと見た藍は、炎の剣士の背を見上げるテレビウムに話しかける。
「ね、ソリさん」
 フードで顔を隠すほどに人見知りな藍だけれども。
 占い師としてならば、初対面でも話すことができるから。
 2枚のタロットの絵柄を、華やかに飾られた戦車と、鎌を携えた死神を見せながら、振り向いたソリに言葉を紡いだ。
「無理に、変わろうと、何かをできるようになろうとしなくてもいいんです。
 確かに無力感に悩むでしょう。でも貴方は貴方のままでいいのだと思います」
 THE CHARIOT……戦車。それはきっと、ソリが前へと進んでいる証。
 戦闘用ではなくパレード用の凱旋車の絵は、今のソリを肯定するものだと思うから。
「寂しいのなら寂しいと、1人が嫌ならそうなのだと、言っていいと思います」
 そのまま前進していいのだと、藍はソリの背を押す。
「それに、周りの方々がソリさんを厭うているのなら、初めからお声もかけませんし、そばに居てくれていないと思います」
 DEATH……死神。死や終わりの象徴であるこのカードは、だからこそ始まりでもある。
 悩むことで、新しい考えに触れ、そして変容していく。
 そんなソリの心の転機がカードに示されていると藍は感じたから。
「好ましいと、そばに居てと思って下さるからこそ。
 皆さんはソリさんの周りに居るのです」
 気付いてほしいと藍は願う。
「だから、大丈夫」
 見上げてくるソリのテレビ画面は、まだ揺らめいていたけれども。
 肯定する藍の言葉が、確かにソリを支えて。
 ソリの中に自信が芽生えたような気が、した。
 でもそれは本当に小さな小さなものに思えたから。
 だから藍は、そうね、と呟きながら、ふっと微笑む。
「では1つ、アドバイスを」
 タロットを神器『鳴神』に持ち替えて。
 歪んだ笑みを浮かべるマザー・フルールに向き直りながら。
 藍は、ぐっと両足に力を入れて、立つ。
「地に足を付け、根付かせる。
 根がしっかり張ってなければ新たに芽吹く事も出来ませんから」
 そして、ユーベルコードで瞬く間に複製された『鳴神』を、その名の如く操って。
「響け! 雷鳴(ブロンテス)!」
 炎の向こうの白いドレスを、撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

メリーゴーランド…ソリ、いた!
ソリ、誰でも、わたしも自分に自信なんて無い
嫌われる不安もある
こういうのおかあさん何て言ってたかな…、まりっじぶるー?(首傾げ)
ん、そんな時はお友達の顔を思い出して?

皆はソリにとってズッ友?
ソリは皆の事、好き?
嫌われるとかより、それが1番大事な事

ん、綺麗なおねえさん、ソリ返してもらう
お悩み?
…わたしの貯蔵庫のお肉は何故食べると減るのか
消費しても世界のお肉総重量は変わらないと聞く
ならばわたしが食べても世界的にはその分お肉は減らない。でも貯蔵庫のお肉は減る
何故?

悩むとお腹が減る
おねえさんにご退場頂く>【鎌鼬】

さ、ソリ!皆でお弁当食べよう


木元・祭莉
引き続きアンちゃん(f16565)と!

え、悩み?
うーん、悩み……
アンちゃんやソリ、何かある?(人に振る)

え。
なんで嫌われるの?
嫌われるようなコトしなきゃいいじゃん?

そうそう。
好きならだいじょぶだよ。
ほら、るっしょの子にもチョコもらったじゃん♪(ねっ)

嫌がられたら、すぐゴメンナサイ。
これでオッケー!
いけるいける♪(にっぱー)

おいらは……そう!
なんかね、すぐにね、威嚇してくるヤツがいてね……
強いんだけど! 頼りにはなるんだけど!(半泣き)

どんなヤツって……こんなヤツ!!
(メカたまこ召喚!)
(大爆走、蹴る突く雄叫び上げる)

……うん。
強いんだけどね。
おいら、どう付き合っていけばいいと思うー?(ご相談)



 友達ができて嬉しい。
 毎日が楽しい。
 でも僕は、何もできないただのテレビウムだから。
 嫌われて、また独りになってしまったら……
「え。なんで嫌われるの?」
 引き出された悩みに沈み、そして酷く優しく響く『マザー・フルール』の声に捕らわれかけていたソリにかけられた声は、心底不思議そうなものだった。
「ソリ、嫌われるようなコト、したの?」
 問いかけにテレビ画面をゆっくり向けると、覗き込むようにしてきょとんとした顔を見せていたのは木元・祭莉(f16554)。
「嫌われるようなコトしなきゃ嫌われないじゃん?」
 子供らしい単純で真っ直ぐな思考と、陽気で元気な笑顔に、ソリは目を細める。
 確かに、理屈としては分かるし、その通りだと思う。
 それでも、ソリには特別なことは何もできないから。
 友達でいてもらう自信がないから。
 眩しさから目を反らすかのように、またテレビ画面が俯きかけて。
 そこにそっと、木元・杏(f16565)も近づいた。
「ソリ。わたしも自分に自信なんて無い。嫌われる不安もある。
 それは誰でも……きっとまつりんも、そう」
 おっとりした声が紡いだ言葉に、驚いてソリは顔を上げる。
 猟兵達にも自信がない?
 こんなに人気者なのに不安に思う?
 信じられないような言葉に、ソリは杏を見て。祭莉の明るい笑顔を見て。
 飛び込んできていた炎が、ソリを護るように立ちはだかっているのを。
 大きな帽子の下で涙目になっている少女が、ガジェットに駆け寄っていくのを。
 ようやく気付いたかのように、ゆっくりと見回して。
「こういうのおかあさん何て言ってたかな……」
 考え込むような杏に、再び視線を戻す。
「まりっじぶるー?」
「それは違う気が……」
 首を傾げたことで肩口で揺れた黒髪に、思わずソリはツッコんでいた。
 反応がちゃんと返ってきたことに、ふっと杏は微笑む。
 マザー・フルールの酷く優しい甘い言葉から、ソリが戻ってきたのを感じて。
 捕らわれていた心がこちらを見てくれたと確信して。
 こくんと1つ頷いてみせると、大切なこと、と話し出す。
「ん、嫌われるって不安な時は、お友達の顔を思い出して?」
 杏に促されるままに、ソリがその脳裏に描いたのは。
 銀の髪をふわふわ揺らし、いつも笑顔でソリを誘ってくれるネコキマイラの少女。
 大柄で一見強面だけど、優しい瞳で見守ってくれるホワイトライオンのキマイラ。
 そして、ジャングルの奥地が似合いそうな独特な仮面と、聞き間違いようがない特徴的な語尾で楽しませてくれる、ヒーローマスクのリディ。
 独りでいたソリにできた、まだ数少ないけど大切な、友達。
「皆はソリにとってズッ友?」
 だから、続く杏の問いかけに、迷うことなく頷いて。
「ソリは皆の事、好き?」
 もう一度頷いたソリに、杏は笑顔をほころばせた。
「嫌われるとかより、それが1番大事な事」
 言われて、ソリははっと息を呑む。
「そうそう。好きならだいじょぶだよ」
 祭莉も、杏の横からにぱっと笑って。
「ほら、るっしょの子にもチョコもらったじゃん♪」
 思い出されたバレンタインデーの一幕は、大分惨劇だったけれども。
 チョコレートをもらえた、という部分は紛れもない事実だったから。
 ねっ? と笑いかける祭莉に、ソリはおずおずと頷いた。
「嫌がられたら、すぐゴメンナサイ。
 これでオッケー! いけるいける♪」
 祭莉のにっぱーと輝くお日様笑顔の隣で、杏もこくりと頷く。
 大丈夫と笑ってくれる双子に、また大切な友達である彼らに。
 ソリも、画面を戸惑わせながらも、こくりと頷き返せば。
 杏は、炎の向こうに立つマザー・フルールへと向き直り、キッと可愛く睨みつけた。
「ん。綺麗なおねえさん、ソリ返してもらう」
 ソリを護る炎の剣と並ぶように立ちはだかり、燃え消える白猫を見送れば。
 そんな杏に、マザー・フルールは青い瞳を細めて愛おし気に微笑むと、招き入れるかのように白い猫の左手を差し出す。
「さあ、ミネット。悩みがあるならおっしゃって?」
「え、悩み?」
「お悩み?」
 敵意に対して返ってきたどこか友好的な優しい声に、そして投げられた問いかけに、杏は、そして祭莉は顔を見合わせた。
 ユーベルコードの効果もあり、杏も祭莉も考え込んで。
「うーん、悩み……」
 ぐるぐるした祭莉は、その難問を、妹に放り投げる勢いで振る。
「アンちゃん、何かある?」
「……わたしの貯蔵庫のお肉は何故食べると減るのか」
 キリッと返ってきた言葉に、祭莉もマザー・フルールも目を瞬かせた。
「消費しても世界のお肉総重量は変わらないと聞く。ならばわたしが食べても世界的にはその分お肉は減らない。でも貯蔵庫のお肉は減る」
 その思考を話す杏の様子は真面目そのもので。
 トンデモ理論を真剣に考えていることが、誰の目にも明らかだったから。
「何故?」
「あらあら……」
 問いかけにさすがのマザー・フルールも、おっとりと驚く。
 微妙な空気の中で、あっ! と手を打った祭莉が声を上げ。
「そうだ!
 おいらはね。なんかね、すぐにね、威嚇してくるヤツがいてね……」
 思い至った悩みを、木元村の守り鶏である凶暴な雌鶏『たまこ』を説明して。
「強いんだけど! 頼りにはなるんだけど!」
 何か半泣きになってきました。
 それでも、食いしん坊な悩みよりは付け入り易いと思ってか。マザー・フルールは、マーガレットの花冠の下で酷く優しく微笑むと、柔らかな声を響かせる。
「そう。可愛そうなミネット。
 その子はどんな子なのかしら?」
「どんなヤツって……こんなヤツ!」
 そこに召喚されたのは、悩みとして話した雌鶏をモデルにした、ニワトリ型ロボ。
 白くふさふさな羽毛はないけれど、硬く輝く金属は、大きさも含めて寸分違わず、逞しい鶏を象って。本物そっくりの鋭い目を、キランと光らせ雄叫びを上げた。
 そして百を超えるその数が、一気に大暴走を始める。
 メリーゴーランドを埋め尽くすように走り回るメカたまこは、木馬を、馬車を、豪奢な飾り付けをされた床や柱や壁を、蹴って突いて大暴れ。
 もちろんその鋭いくちばしと力強い脚は、マザー・フルールにも襲い掛かり。
 舞い散るマーガレットの白い花びら。
「ほらね。強いんだけどね」
 分かってもらえた? とメカたまこを示す祭莉は、だが少しびくびくと怯えていて。
 自分が召喚し、操っているはずなのに、本物そっくりなその容姿に、いつ自分が威嚇されるのかと反射的に構えてしまっていたりして。
「おいら、どう付き合っていけばいいと思うー?」
 祭莉は結構本気でマザー・フルールに問いかけていた。
 しかし、大暴走メカたまこの群れに囲まれたマザー・フルールに、答える余裕はなく。
 さらにそこに、うさ印の護身刀を手にした杏が飛び込んでいって。
「悩むとお腹が減る。だから、おねえさんにはご退場頂く」
 これが肉を減らさなくてすむ答えの1つ、と言わんばかりに、ウサミミメイド人形と共に鎌鼬の素早い一撃を放てば、白い羽も舞い上がる。
 燃え上がる炎が、鳴り響く雷鳴が、続けて白い姿を撃ち抜き。
 青い空に、美しい虹が描かれると。
 メリーゴーランドからマザー・フルールの姿が消え。
 ソリのテレビ画面も、どこか晴れやかなものになっていたから。
 戦いの終わりを感じた杏は、ソリに手を伸ばして穏やかに微笑んだ。
「さ、ソリ! 皆でお弁当食べよう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真幌・縫
貴女のそれは優しさじゃない。
貴女はそれを分かっててやってる…。
マザー…私にあの花とぬいぐるみさんに溢れた箱庭をくれた人。
けれど一人は寂しいって気付いた時からぬいぐるみさんにもお花にも満たされない心の隙間ができた。
私は一人が寂しいってことも知らなった。
だから…ソリくんの寂しさは悪いことじゃない。
きっとそれも大事な気持ち

ソリくん…大丈夫。
ソリくんは一人じゃないよ。

お別れだよ。マザー…
そして『マーガレット』は今日でおしまい。
UC【虹色の魔法】!!

アドリブ歓迎



「それが貴方の悩みなのね?」
 メリーゴーランドへと駆け付けた真幌・縫(f10334)の白い猫耳に、じわりじわりと染み入ってくるかのような、柔らかな声が届く。
「大丈夫。貴方は独りにはならないわ。
 わたくしの傍に居なさい。わたくしはずっとずっと貴方を傍に置く。
 わたくしのために居れば、独りになることはないの」
 優しく慈しむような声色は、縫に向けられたものではない。
 孤独を恐れるテレビウムのソリへ示された、酷く甘い響き。
 それを縫は、知っていた。
 先ほど見かけた、というだけではない。
 相対することで確信に変わった、朧げな縫の既視感。
「マザー……」
 それは、独りだった縫に、花とぬいぐるみに溢れた箱庭をくれた人。
 その時も、この酷く優しく柔らかな、甘い甘い声を響かせていた。
 ソリの心を捕えたように、縫の心に纏わりついていた。
「ねえ、ミネット。そうでしょう?」
 穏やかな笑みを浮かべた女性は、抱いた白猫に頬を寄せる。
 それはソリに向けられた笑みであり。
 そこに駆け寄ってきた縫に気付いてのものでもあった。
 レースとフリルの揺れる真っ白いドレス。大きく広がる真っ白い翼。長い黒髪を飾るのは真っ白いマーガレットの花冠で。青い瞳は白い肌の中で輝く。
 ドレスのスカートに揺れる散りばめられたマーガレットも、抱いた猫も、そして差し出された猫と同じ左手も、全てが真っ白いオブリビオン『マザー・フルール』。
 人の悩みを引き出して、その悩みに寄り添う優しさを見せる、真っ白い花。
 けれども。 
「貴女のそれは優しさじゃない。
 貴女はそれを分かっててやってる……」
 ふるふると縫は首を横に振り、肩にも届かない短い黒髪を揺らす。
 縫がもらった箱庭は美しかった。
 色とりどりの沢山の花に溢れていて。様々な種類の可愛いぬいぐるみに囲まれて。
 どれだけ長い間そこに居ても飽きることのない、楽しさに満ちた箱庭だった。
 幾つもの花を眺め、摘み、花冠を作ったりした。
 幾つものぬいぐるみを抱き、並べ、話しかけたりした。
 けれども。
 そこで縫は、1人だった。
 それに気付いたある時。縫の心に隙間ができた。
 1人は、寂しい。
 縫が知らなかった感情。
 綺麗と可愛いに埋め尽くされて、隠されてしまっていた空虚。
 花が好き。ぬいぐるみも大好き。
 でも『好き』だけでは、気付いた隙間を埋めることはできなかった。
 それは縫が『独り』だったから。
「ソリくん。ぬいは……私は、1人が寂しいってことも知らなかった」
 だから縫は、ソリに語りかける。
 あの箱庭で初めての感情に気付いた自身の姿を重ね見ながら。
 揺れるテレビ画面に、銀色の瞳で微笑む。
「でも、寂しいって知ったから、友達ができたの」
 綺麗な花に溢れた箱庭で、可愛いぬいぐるみに囲まれて。知らないままだったなら、縫は、大好きの中でいつまでもふわふわと微睡んでいただろう。
 マザー・フルールの酷く甘い優しさの中で。幸せだと思っていただろう。
 でも、縫は知っている。
 友達と一緒に過ごす幸せを。1人では得られないより大きな幸福があることを。
 寂しいと気付いたからこそ箱庭を出た縫は、知っている。
「だから、ソリくんの寂しさは悪いことじゃない。
 きっとそれも大事な気持ち」
 ソリが心の隙間と向き合って、乗り越えたその先にあるものを。
 マザー・フルールの偽りの優しさに捕らわれてしまっては、決して得られないものを。
 縫は、知っているから。
 戸惑うソリの背を押すように。
 箱庭の中の自分の背を押すように。
 縫は、言葉を紡いでいく。
 そこにさらに重ねられていく、声。
『ソリは皆の事、好き? 嫌われるとかより、それが1番大事な事』
『そうそう。好きならだいじょぶだよ』
 ソリの悩みを解きほぐすように。
『ダチは一緒に居たいからダチなんだ』
 ソリの不安を打ち消すように。
『無理に、変わろうと、何かをできるようになろうとしなくてもいいんです』
 ソリの焦りを宥めるように。
 猟兵達がソリに寄り添い、共に居てくれていたから。
 そしてその言葉が、想いが、ソリの中に染み入っていくのを感じたから。
 縫は改めて、ソリに笑いかけた。
「……大丈夫。
 ソリくんは1人じゃないよ」
 テレビ画面に微かに、でも確かな希望が灯る。
 寂しさを知ったからこその幸せが生まれたことを、確かに感じる。
 だから縫は。
 大切な灰色翼猫のぬいぐるみ『サジ太』をぎゅっと抱いて、酷く優しい微笑みを浮かべるマザー・フルールへと向き直った。
「駄目よミネット。箱庭に戻らなきゃ。
 そこでわたくしが、ずっとずっと、優しく慈しんであげるわ」
 変わらない真っ白い姿。
 かつてはこれが幸せだと思っていた優しさ。
 でも縫はもうそれに捕らわれることなく。
 右手にサジ太を抱いて、左手をマザー・フルールへ差し出した。
「お別れだよ。マザー……」
 白い姿が、ニワトリ型ロボに囲まれ、黒髪の少女に切りつけられ。炎に包まれ、雷鳴に貫かれるのを見据えて。
「そして『マーガレット』は今日でおしまい」
 縫も、光の矢を放つ。
 七色に輝き、虹の属性を纏った矢は、無数に降り注いで。
 青い空に美しい煌めきが描かれた。
 幾つもの攻撃にぐらりと傾いだマザー・フルールは、傷ついた姿で空を見上げ。
 そこに縫が描き出した、虹色の魔法を青い瞳に映して。
「……そうなのね、ミネット。わたくしの可愛い猫ちゃん」
 ふっと微笑んで倒れ伏す。
 白い羽毛と白い花が、その周囲にひらひらと舞っていた。
 顔だけをこちらに向け、それ以上動かないマザー・フルールに、縫はゆっくりと近づいて。その青い瞳に映る自身の姿を見る。
 くせのある短い黒髪と、ぼんやりした銀色の瞳。白い猫耳と白い猫尻尾、白い翼を持つ翼猫と人間とのキマイラ。いつも一緒の灰色翼猫のぬいぐるみを抱いて、でも大好きなぬいぐるみに依存するのではなく、共に前へ進んでいく、真っ直ぐな姿。
 消えゆくマザー・フルールの青瞳が、嬉しそうに細められて。
「さようなら、マザー」
「ええ。さようなら、縫」
 マーガレットの花が舞い散る中で。
 白色翼猫は静かに青瞳を閉じた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月29日
宿敵 『マザー・フルール』 を撃破!


挿絵イラスト