ただ、本能のままに
●
ヒーローズアースのとある町。平和で穏やかな日常は突如として壊された。
『緊急事態が発生しました。市民の皆さんは落ち着いて大至急避難してください。繰り返します――』
非常事態を告げる警報が鳴り響く市街地へと歩く、漆黒の鱗に覆われた竜人の姿をした男がいた。
『壊す……コワス……こwaス……』
その体はとても大きく、全長は10mを優に超えていた。そして一歩進むごとに彼を包む鱗がぼろぼろ落ちる。同時に、彼が触れた草木は枯れ、地面はずぐずぐと腐っていく。
足取りは重く、しかし確実に。彼は今しがたから警報が鳴り響く町へと歩を進めていく。
「――そこまでよ」
男の進路を阻むように一人の少女が立ちはだかった。
「……あなたもきっと私と同じなのね。でも、この町を破壊するというなら……容赦はできないわ」
少女はしばしの間沈痛な表情で顔を伏せるも、すぐに片腕をカマキリの鎌の様に変形させ、男へと向け駆けだした。
同じ境遇の人をこれ以上、苦しめぬように――。
●
「緊急事態! ヒーローズアースにモンスターが出現しましたよぉ!」
巣飼・ハル(お天気アイドル・f33445)は慌ててグリモアベースに駆け込むと、息も整えず辺りにいた猟兵達へ声をかけ始める。
「ヒーローズアースにドン・ガルシアっていう猟書家がいるのだけれど、その人が超巨大バイオモンスターを市街地に送り込んで町を破壊しようとしているの! 侵入されたら最後、町は破壊されてめちゃくちゃうになっちゃうわ!」
壊人ヴァルニールと呼ばれるバイオモンスターは体長は10m前後の黒いドラゴニアンのような姿を取っている。非常に強い破滅願望を持っている彼はその巨体を生かした拳による攻撃を放ってきたり、壊したい感情を具現化した化身を操りすべてを破壊しようとするだろう。
そしてもう一つ大きな特徴がある。彼には触れたものは有機物、無機物問わず腐り落ちるような猛毒を身に纏っている。接近戦だとかなり不利を強いられることとなるため、戦い方にも工夫がいるだろう。
「現場には既にもう一人のバイオモンスターがいて戦闘を繰り広げているよ。決して弱いわけじゃないけど彼女一人だけじゃヴァルニールを倒せないの。早めに合流してモンスターを倒してちょうだい! そしてもう一点。このヴァルニールを町へと送り込んだ張本人、ドン・ガルシアの対処もお願いしたいわ」
ハルは大型タブレットを皆が見えるように画面を向ける。ヴァルニールと接敵するポイントから少し離れた所が黄色く点滅している。
「この黄色く点滅している部分がドン・ガルシアがいるポイントよ。ここは活動停止していたバイオモンスターの研究所だったんだけど……彼が再起動したみたいね。ヴァルニールを倒してからすぐに向かえば逃げられるってことは無いはずよ。
ドン・ガルシアはマフィアのボスなんだけど、同時に様々な姿に変える能力を持つヴィランよ。色んなバイオモンスターに変身して応戦してくるから注意してちょうだい。
2連戦はとても大変だと思うけど、よろしくおねがいします!」
説明を終えると、ハルはペコリと頭を下げたのだった。
遭去
●
遭去です。ヒーローズアースの猟書家『ドン・ガルシア』のシナリオを執筆させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
●1章
『壊人ヴァルニール』との戦闘です。10mくらいの巨体で触れたものを腐らせる毒が全身から出ています。
すでに戦っているバイオモンスターさんと合流できれば敵の弱点を教えてくれます。
●2章
猟書家『ドン・ガルシア』との戦闘です。
バイオモンスターや強化人間の研究で得られた財力や戦力で政治を裏で牛耳っていたマフィアのボスでした。
研究者としての一面も持ち、自在に姿を変えて戦ってきます。
1章のボスとは違う弱点を持っており、それをつくと少し有利に戦えます。
●冒頭のバイオモンスター
正義の心に目覚め、ヒーローになったバイオモンスターの少女です。この街の住人には恩義があるようで町を守るべく猟兵と一緒に戦ってくれます。
戦闘経験が豊富なので弱点を教えてくれるようです。
無口クールですが猟兵には友好的です。
第1章 ボス戦
『壊人ヴァルニール』
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POW : 塵拳
【瘴気を纏った拳】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 壊世
【破滅願望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ : 冥連
自身が【壊したい感情】を感じると、レベル×1体の【瘴気で作られた小型の分体】が召喚される。瘴気で作られた小型の分体は壊したい感情を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ナイツ・ディン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
名雪・瑠珠
猛毒を持つため接近戦は不利…ふむ、少々相性が悪いであるな
現場に着いたらまずは戦闘中の者に合流して協力を仰ぐのである
なに、弱点を看破しているであるか、ありがたい
それを聞き、わたしでも弱点を突けるなら積極的に狙って行くであるぞ
接近戦は危険ということで、今回は金棒に鎖を括りつけて鎖を振り回し、ユーベルコード・羅刹旋風を発動させてわたしの怪力と金棒の重量を活かした攻撃を仕掛けるのである
弱点にもよっては、わたしの戦意により高まった闘気を飛ばして攻撃することもできるであるぞ
平常心で戦闘し、敵とは距離をとるように立ち回ることを最優先する
急接近された等、緊急事態の場合は闘気を高めて(オーラ)防御である
国栖ヶ谷・鈴鹿
【POW】アドリブOK
【対巨獣戦用意!】
ぼくの出番ってわけだね。
現地のバイオモンスターのヒーローもいるって聞いたけど、あの子で良さそうだね。
「お待たせ!ぼくは猟兵の鈴鹿、ここからはぼくも加勢させてもらうよ。そうだ、君、名前は?」
弱点を聞きながら、連携も取りやすくしたいしね。
【戦闘】
弱点を聞き出したら、再開!
キャバリア阿穹羅とUCを組み合わせれば、10m級、体格差は問題ないね。
(曲面装甲の特徴的なキャバリアから、強化フレーム形態へ!)
街への被害の軽減と、接近戦能力を考えると、『属性攻撃』『武器改造』『レーザー攻撃』の組み合わせ、フロヲズンキヤノンで凍らせて一気にやっつけちゃおう!
壊人と一人の少女が交戦する戦場へと近づくフロートバイクがあった。
バイクには二人の少女が乗っており、前方の戦場を注視する。
「現地のバイオモンスターのヒーローもいるって聞いたけど、あの子で良さそうだね」
「そうか、では早速行くのである」
「じゃあ飛ばすから、舌かまないでね!」
運転席に乗る少女がグリップを捻ると、バイクは猛スピードで駆けて行った。
黒い鱗を持つ竜人、『壊人ヴァルニール』重い咆哮が響き渡ると同時に全身から毒霧が立ち込める。
『これ以上進めさせない……!』
少女は腕を鞭へと変え、壊人を打ち据えるが、鞭は毒霧に触れるとたちまち腐り始め、壊人の体に届くころには威力が減少していた。
『どうすれば……』
少女は汗をぬぐう。
弱点は分かる。が、自分の攻撃では相手に決定打を与えられない。
体が崩壊しているとはいえ、体力的にはあちらの方が上。このままでは自分は倒れ、町への侵入を許してしまう。
そんな時。突如、二人の間に大正浪漫を感じるフロートバイクが割って入ってきた。
「うん、間に合ったね」
バイクに乗るハイカラな少女が交戦していた少女へと笑顔を向ける。
「お待たせ! 僕は鈴鹿。バイクの後ろに乗っているのは瑠珠さん。ここからはぼくらも加勢させてもらうよ。そうだ、君、名前は?」
『あっ……私の名前……イノ』
「イノ! いい名前だね」
「うむ、共に倒すであるぞ!」
3人は頷き合うと国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)はキャバリアを展開、名雪・瑠珠(「ぽこーん!」募集中である!・f25092)はフロートバイクから飛び降りると壊人へと向け得物を向けた。
すべてを破壊するという意志しか感じられない瘴気を込めた渾身の一撃が振るわれる。
瑠珠は闘気を展開し寸でのところで回避。そのままいったん距離を取る。
「やはり、近距離戦は厳しいの……イノ、おぬしは何か分からぬか」
『うん。戦ってみた感じ、この人は足、特に足首が弱いみたい』
「そう聞いてしまっては積極的に狙っていくしかないのである!」
瑠珠は金棒に鎖を括り付け、念のためにオーラを込めるとそのまま金棒を振り回す。金棒も鎖もどちらもかなりの重さがあるがそんな事を感じさせない軽やかさだ。やがて周囲に暴風が生み出されると。
「――そこである!」
瑠珠は地面すれすれに金棒を振り回した。
地面すれすれの攻撃は地面の石を弾き、地面を削りながら壊人の足首へと見事命中し、鈍い音が響き渡る。
『ギャア嗚呼アAaaaaaaaa!!!』
一撃の痛みにその場に崩れ落ちる壊人。その隙を鈴鹿は見逃さない。
「よーしっ、一気に行くよ!……『SR-ARX01 阿穹羅』、強化フレヱム形態!」
鈴鹿の言葉に反応するようにキャバリアは動き出す。局面装甲が特徴の形から変形し巨大な大口径の銃へと変形する。
「目標補足、エネルギィ充填。発射まで3、2、1……」
銃口に青白い凍気が集まり始める。
「――フロヲズンキヤノン、発射!」
引き金を引く。同時に極太のレーザー光線が壊人の体を包み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神崎・伽耶(サポート)
『やってみなきゃわかんないしねぇ!』(明るくニヤリ)
アドリブ連携OK。
普段の口調は「庶民的(あたし、キミ、だ、だね、だろう、だよねぇ?)」です。
後先考えず、反射的に行動しますが、他の猟兵に迷惑をかける行為はあまりしません。
姉御肌で、一般人には優しく、時に厳しく接します。
行動原理は好奇心、攻撃よりは防御が得意で、遊撃的なポジションを好みます。
機動力、観察力を生かし、バフやデバフを多用し、トリッキーな攻めを得意とします。
思い付きで動く、常識のある奇人変人ムーヴで描いていただけると大変喜びます。
いっそNPCだと思っていただいてもヨシ!
よろしくお願いします。
「ふぅん、あの敵は足が弱いけど、接近すると危ないんだ」
神崎・伽耶(トラブルシーカー・ギリギリス・f12535)はバイオモンスターの少女、イノが見つけた弱点を教えてもらった。
『うん。でも近づくと瘴気によって毒に侵される……攻撃するならば遠距離から狙った方が良いと思う』
バイオモンスターの少女、イノは心配そうに伽耶を見やる。
決して伽耶の事を侮っているわけでは無い。しかし、近距離から攻撃を仕掛けるとなると普通よりもリスクが高い。それを心配しているのだ。
しかし。
「やってみなきゃわからないしねぇ!」
当の本人は明るくニヤリと笑みを浮かべると壊人の下へと駆けていく。それと同時に彼女を認識した壊人が腕を振りかぶる。
一歩、二歩。彼女が近づくのと比例するように、黒龍は狙いを引き絞る……30㎝内。どちらからの攻撃もたやすく当たる距離。いち早く動いたのは黒い竜。彼は壊人の瘴気を纏った腕が伽耶へと振り下ろした!
「あたしはさ、そんなに攻撃が得意じゃないんだよねぇ……でもできないとは言ってないよ?」
伽耶は先ほどまで猛進していたのに一転、軽やかにバックステップ。振り下ろされた拳をギリギリのところで回避すると、あらゆる呪詛を反射するという鏡の小手を装着した腕で押し込むように体当たりを繰り出す!
渾身の一撃を繰り出した後の無防備な壊人の体は呆気なくバランスを崩し、後方へと吹っ飛ばされた。
「ふふん、ざっとこんなものだよねぇ」
転倒し、数mほど吹っ飛ばされた壊人の姿を見て伽耶はいたずら成功とばかりに笑みを浮かべた。
成功
🔵🔵🔴
死絡・送
共闘アドリブOK
「腐食毒か、だがジガンソーレは腐らない!」
スーパーロボットジガンソーレに乗って出撃、毒耐性とオーラ防御で
自機の周りにフィールドを展開して耐える。
「日光消毒を受けて見ろ!」
と距離を取って、ルーチェ・デル・ソーレで焼却と貫通攻撃。
味方の状況を見てかばうや救助活動を行う。
いざとなれば、ユーベルコードの光子魚雷一万発発射!!を使用する。
荒れ狂う死毒の竜。しかし、いかに毒に身を犯されようと、破壊衝動を止める事は叶わない。現に今なお立ち上がり、街へと歩もうとする。
『あいつ……まだ……!』
イノがとどめを刺そうと腕を変形させる。
「やめておけ、イノさん。さっきの戦闘を見ていると刺し違えるつもりだろ」
『……っ。でもそうしなければアイツは……』
「まだ猟兵はいる。ここにな……来いっ、ジガンソーレ!!!」
死絡・送(ノーブルバット・f00528)の声に呼応し遥か彼方より飛来するは太陽を象ったパーツが輝くスーパーロボット『ジガンソーレ』!!
送は愛機に搭乗すると目の前の壊人に向き直る。
『あああああああああああコワス壊suコワスううううう!』
壊人は瘴気を纏う拳を振り上げてジガンソーレへと接近。
「腐食毒か、だがジガンソーレは腐らない!」
拳が当たるか当たらないか、ジガンソーレから太陽が如き光が発せられる。瞬間。拳が纏う黒き瘴気は瞬く間に霧散し、壊人の拳をも焼き尽くす!
『AAAaaaaaaaaaaaaaaaaあああああああああ!!!??』
とっさに距離を取る壊人ファブニール。その隙を送は見逃さない。
「今だ、ルーチェ・デル・ソーレ起動!」
ジガンソーレの胸部の太陽をかたどる紋様が輝くと胸部の真ん中が開き、光学兵器部位が露出する。
瞬く間に光学兵器部位へと太陽が如き球形のエネルギーが収束し、そして――
「全てを光に変えて消す!!光子魚雷、射て~~~~~~~っ!!」
一条の光――光子魚雷が壊人へと向けられる!
『ぐっ、うおおおオオオオオオ!!!!!!!』
光を破壊衝動の瘴気と毒で抑え込もうとする壊人。しかし、毒は瞬く間に日航が如き光に無毒化する。
瘴気も光を抑え込むが――拮抗はあっけなく崩れ瞬く間に壊人は光に飲み込まれる。
「貴様に恨みはない。だが、無辜の人々が住まう街を破壊するというのならば許さない!!」
――光子魚雷の光が収まる。
そこには先ほどまで満ち足りていた毒は消え去り――ただ、何かが町の近くまで歩いてきた形跡だけが残されていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ドン・ガルシア』
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POW : 巨怪君臨
【禁断の研究】に覚醒して【首のない巨人型バイオモンスター】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 捕食学習
自身の【変身したバイオモンスターの見えざる大口】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[変身したバイオモンスターの見えざる大口]から何度でも発動できる。
WIZ : 可愛い子供達
【かつて量産した強化人間やバイオモンスター】の霊を召喚する。これは【銃火器】や【ユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「音取・金枝」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
壊人ヴァルニールを倒した猟兵達は黙禱を捧げると、彼が来たという研究所へと向かい、扉を無理やりこじ開ける。
開けた先に見えるはコンクリートの壁。壁に沿うように立ち並ぶ機械たち。そして内側から壊れた形跡がある、人が入る位に大きな水槽。
「――やぁ、よく来てくれた猟兵諸君」
突如背後から男の声と拍手の音が響き渡った。
猟兵達が視線を向ければ六十歳は行っているであろう男の姿が入り口を塞ぐ様に立っている。
「先ほど君たちが倒したモノは自信作だったのだがね。先ほど君たちが戦ってくれたおかげで改良点がよく分かった。あとは君たちを使って改良品を作れば完璧なのだが――」
ちらりと男が猟兵達に嬲るように視線を巡らせる。
当たり前だが猟兵達には自身の身を実験体として捧げる者はいない。
猟兵達が得物を構えるのをて男はふっと肩をすくめると、そのまま懐に納めていた注射器を自らの腕へと突き立てた。
「良いだろう、猟兵諸君。いずれ来る世界のため、否、私のために。貴様らをサンプルにしてやろう……!」
男――猟書家、ドン・ガルシアは体の一部を変形させながら猟兵へと回線を告げた。
国栖ヶ谷・鈴鹿
連携OK!
【SPD】
研究者タイプってわけだね、ならこの『こんなこともあろうかと用意した装置』が役に立つわけだ。
ぼくのユーベルコヲドはとっておき、発動したら、多分ぼくの勝ちじゃないかな?
『……能力無効化、起動シマス』
……相手がこれを取り込んだら、本当の機能が発動。
能力は『無限演算』、つまり、際限なくループするプログラムを繰り返すわけ、途中で実行を破棄すればいいけれど、実行破棄まで時間があれば、こっちの攻撃を当てる時間は十分にあるよね。
レイザーから特殊属性弾頭、爆撃グレネイド、一斉発射まで速攻で決めさせてもらうよ!
迅速につつがない制圧も、特級パーラーメイドのお仕事だからね!
名雪・瑠珠
自らを改造することも厭わないとは…
自分の研究に自信があるという現れかもしれんであるな
金棒には鎖を繋げたままだが、まずは扱いやすいよう金棒の持ち手を掴んで殴りに行こう
様子を見て中距離のほうが良さそうなら鎖を持ち金棒を振り回す
遠距離でないと厳しいなら戦意を高めて闘気による攻撃である
いずれにせよ積極的に攻撃を仕掛けるである、守りはあまり得意でない
ユーベルコードの発動は相手の得意な戦法と弱点を見切ってから
ここぞというときまで行わない
発動するときは全力でぽこーん!(ジャンプして上段から相手を叩きつぶす勢い、怪力任せの攻撃)してやるのである
どんな姿になっても恐れぬ、わたしの闘争心は簡単には消えぬのである
『お前たちも実験のサンプルにしてやろう!』
得物を構えた猟兵達に向け、笑うドン・ガルシア。薬を打った彼の変化はこの直後に起きた。
体は肥大化し首から上は大きな灰色の肉塊に飲み込まれる。替わりに首の付け根部分が顎が如く変形していく。
これこそがドン・ガルシアの研究成果。禁断の研究は人間を人智の超えた怪物へと塗り替えたのだ。
化け物は声にならないくぐもった声で咆哮を上げると、その巨大な腕を振り下ろす!
「来た!」
「回避である!」
鈴鹿と瑠珠が横に回避すると一拍おいて轟音と共に拳骨が飛来。拳が持ちあがると、そこには小さなクレーターが生まれていた。
「自らを改造することも厭わないとは……。自分の研究に自信があるという現れかもしれんであるな」
『そうだとも、見たまえこの美しい肉体を。神の領域へと踏み入れた美の具現を。力ある猟兵達。貴様らも実験の後は同じようにしてやろう』
「お断りである。わたしはこの姿で満足しているのである!」
追撃してくる腕を瑠珠は決して怯まずに金棒で殴りつける。鈍い音を立てて腕はあらぬ方向へと曲がるがすぐに再生。再び瑠珠を殴りつけるも彼女は金棒でガードしながら後方へと跳んで回避する。
『弱点は……多分口か胸のあたりだと思う……』
「胴体が弱点という事か。しかしたどり着くにはちと骨が折れそうである」
バイオモンスターのイノの一言に瑠珠は少しばかし悩む。一対の腕の可動域は常人のそれを大きく超え、真後ろを取ろうと剛腕を難なく突き出してくる。それを潜り抜け攻撃するのは容易ではない。
「ならこの『こんなこともあろうかと用意した装置』が役に立つわけだ」
鈴鹿がにっと笑うと懐から四角い箱を瑠珠に見せるように取り出す。
「それはなんなのである?」
「ふふっ、それは開けてからのお楽しみだよ。瑠珠、片側だけでいいから腕を抑えてもらっていいかな?」
「うっ、気になる……しかし、策があるというならば乗るである。腕は任せろである!」
瑠珠は自身の下へ振り下ろされた腕を横に跳躍し回避すると、腕を金棒で叩きつける。地面へと打たれた腕は瑠珠の一撃で地面へと更にめり込み、固定化される。
その隙に鈴鹿はフロートバイクで腕を一気に駆け上がると、肩へと到達する。そして。
「お待たせしました。本日のおすすめ、お持ちしました!」
変身したドン・ガルシアの首の付け根部分に存在している洞のような口。すれ違い間際に先ほど手にした四角い箱を口へと放り投げた。
――装置が口へと落ちていく。
『……能力無効化、起動シマス』
無機質な声が怪物の体から聞こえると変化はすぐ様起きた。怪物の動きが止まると、巨大であった肉体がみるみる肥大化していくのだ。
『貴様ぁ……何を、した!?』
ドン・ガルシアの体より苦しむ声が響く。
「ふふん、キミを倒すための演算装置さ。見たところ気に入ってくれたようで何よりだ」
鈴鹿が投げつけたのは鈴鹿のテクノロジーの粋を集めた超技術機械。『無限演算』、つまりループを繰り返すように組まれたそれは再生を延々と繰り返すようになったのだ。
「といっても長くは持ちそうにないかな? ならさっさと仕留めちゃおう」
鈴鹿はすぐさま二丁の機関銃を取り出し銃口を化け物へと向ける。
「迅速につつがない制圧も、特級パーラーメイドのお仕事だからね!」
引き金を引くと数多の特殊属性弾頭が飛びだし、瞬く間にドン・ガルシアを火の海へと誘う。
一面は火の海へと変貌する。だが、それを恐れず火の海を裂いてドン・ガルシアの元へと駆ける一つの影があった!
「これで終わりではないのである!」
オーラで身を包みながら瑠珠は炎の中を駆ける。そして大きく跳躍、倒れこむ彼の数倍の高さまで飛ぶと金棒を振りかぶる――。
「全力で、ぽこーん!!」
重力が、否。瑠珠の全力が乗った金棒の一撃がドン・ガルシアの心臓を打ち据えた!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リグ・アシュリーズ
黒剣携えて、皆のところへ駆けつけるわ!
カマキリ腕の女の子に、カッコいいわね、それ!と声かけて並び立ち。
助太刀はいるかしら。要らないって言われても助けちゃう。
だって、私がそうしたいんだもの。
とびっきり痛いの、ねじ込んでやりましょ!
黒剣に奪命の刃を生やして斬りつけ、生命力を啜りとるわ。
何度も斬りつければ動きも鈍って、隙も生まれるはず。
それまでは女の子を守りながら戦って、
好機が訪れたら彼女へ呼び掛けるわ。
大きな怪物が相手でも、頭上のガードは疎かなはず。
確か、そこが弱点なのよね?
私の背中を踏み台に、女の子を空へ!
剣で斬りつけ敵を押さえながら大声で叫ぶの。
今よ!思い切り、お見舞いしちゃって!
火土金水・明
「これ以上、あなたの好きなようにはさせません。邪魔をさせてもらいます。」(念のため、少女さんに相手の弱点を教えてもらって攻撃をします。)
【POW】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【ねこねこ・ロックンロール】で、『ドン・ガルシア』を攻撃します。相手の攻撃には【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。(黒猫の姿は使い魔のクロにそっくりです。)
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
強力な攻撃を受けてなお、異形のバイオモンスターと化したドン・ガルシアはいまだ健在。
バイオモンスターの少女イノも猟兵達の手助けを行うが、なかなか一撃を加えることはできていない。
(『猟兵の……役に立たないと』)
自身の無力さに内心歯がゆさを感じる少女。
そんなことを考える少女の一瞬の隙を突き、異形の化け物が大きな腕を薙ぎ払う。
『――!』
逃げられない。僅かでもダメージを減らすために少女は身構えた。
「助太刀はいるかしら」
近くで女の声が聞こえた。その瞬間、何かがぶつかり合う鈍い音が響き渡る。
少女が目線をそちらに向けると、長い銀の髪を靡かせた女性、リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)が黒剣で受け止めた化け物の腕を押し返した。
「要らないって言われても助けちゃう」
『ありがとう……でも私がサポートする……』
「いいのよ。だって、私がそうしたいんだもの」
リグは言いながら黒剣を構える。
「とびっきり痛いの、ねじ込んでやりましょ!」
『……うん!』
リグのとびきりの笑顔にイノもわずかに笑顔をこぼした。
「これ以上、あなたの好きなようにはさせません。邪魔をさせてもらいます」
火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)はリグとイノに並ぶと目の前のドン・ガルシアを見やる。
「イノさんといいましたか。敵の弱点はお分かりですか?」
『うん……口から胴体の部分。さっき別の猟兵さんが傷をつけてくれたから分かりやすくなった』
少女が指さす先。首から胸のあたりに焦げ付き、何かによって大きくへこまされた箇所があった。
「なるほど。では一緒に参りましょう……クロ、行きますよ」
その言葉と共に現れたのは真っ黒な猫。主人の足元を何回がぐるぐる回り、赤い目で顔をチラと見やるとしかたないなぁとばかりにドン・ガルシアの方へと向いた。次の瞬間、その体はどんどん大きくなり、やがて3mは優に超える巨体へと姿を取る。
『お前ら猟兵が何人来ようと変わらぬ。実験体にしてくれる!』
巨腕を大きく振りかぶり、握りしめた拳で地面を大きく叩きつける。
猟兵達は散開するように散り散りに逃げた次の瞬間、彼女たちがいた場所は衝撃音と共に大きなクレーターを成していた。
「実験体とか、そんな事させないわ!」
リグはすぐに間合いを詰め、黒剣でその体躯を斬り付ける。
が、その体にはわずかな切り傷をつけるのみで終わった。
『私をおもちゃの剣で倒せると思ったかね』
「よそ見をしている場合ではないでしょう」
リグの反対側へと明と動きが連動した黒猫が回ると、ドン・ガルシアの腕を引っ掻く。可愛いみための攻撃に反してその一撃はその固い外皮を切り裂き、その腕の骨を露出させた。
うめき声を挙げながら男は黒猫を追い払うように腕を振り払う。
「残念、それは残像です」
黒猫は残像を残し、いとも容易く回避するとまた次の攻撃チャンスを狙うべく体勢を整える。
『小癪な……まずはおまえからだ!』
リグの攻撃より明と黒猫の攻撃が危険と判断したのか、腕を再生しつつ距離を取った黒猫へと執拗に攻撃を加えていく。
黒猫はひらりひらりとその攻撃を回避。だが、同時になかなか自身の攻撃を加えることができない。
その間もリグはイノと共に攻撃を継続。
面倒くさそうにたまに来る攻撃を受け流しながらも剣で切りつけていくが、その一撃は小さく傷もあっという間に再生していく。
命を懸けた攻防は長期に渡って続いていった――。
最初に変化を感じたのはドン・ガルシアの方だった。
何度目か分からないリグの一撃が腕を斬り付けるとその傷は再生していく。そこに違和感を感じた。
まずリグから攻撃を受ける回数が増えた。そしてその再生は先ほどよりもゆっくりで。
おかしい。持久戦となればこちらが有利。先に摩耗し疲弊した猟兵達をなぶり殺しにするくらいの生命力は蓄えているはずなのに、なぜ。
『お前……何をした?』
そして何より先ほどから攻撃、防御を行っているのにリグはまだ倒れないのだ。
「ふふっ、今更気づいたのかしら。ちょっとした細工をね?」
リグは悪戯がばれた子供の様に笑みをこぼす。
そう、黒剣に脱命の刃を生やして斬り付け、生命力を少しづつ奪っていったのだ。
「なるほど、小さな攻撃を積み重ねていった結果ですね」
明が、腕を振るう。それに連動して黒猫が男の背後より高速の猫パンチを繰り出す!
「そう、小さなことからコツコツと! ね。敵が明さんに集中していたのも助かったわ」
リグは黒剣を握り直すと黒猫の攻撃に呻くドン・ガルシアへ向け真っ直ぐに黒剣を振り下ろす。そして。
「今よ!思い切り、お見舞いしちゃって!」
リグの背中を踏み、少女が大きく飛びあがった。
腕を変形させ、蟷螂の様な腕へと変形させると化け物の首へとその刃を振り下ろす!
「イノさん、一緒に――!」
それに合わせるように明の黒猫も跳躍。その愛らしくも鋭い爪を胴体へと攻撃を加える。
少女と黒猫が音もなく地面へと着陸。それと同時にその体は真っ二つに割れた。
『ばか、な……私が、下等な奴らに……!』
大きな音を立て二つに分かたれた体が倒れこむ。
その体はあっという間にぐずぐずと腐り落ちていき――すべての反応が終わった時、床には何かがあった痕跡は残るものの、何も残ってはいなかった。
大成功
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