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ソング・アウト・オヴ・スペース

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #栄華と破滅の歌姫 #スターライダー

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●宇宙探偵エドワードの独白
 あの『歌』が聞こえてからというもの、俺たちの船『ネオシカゴ』は変わっちまった。
 至るところに銀河帝国を讃える宣伝ビラがバラ撒かれ、誰も彼もが口を揃えて、自分のボスは銀河皇帝だけだと豪語する。
 確かに、『ネオシカゴ』は地獄みてえな船だったさ……何もかもが裏金に支配され、船長の利権を巡ってギャング同士が暗殺合戦を繰り広げる有様だ。巻き込まれた子供が泣かない日はねえし、時には泣けるだけまだマシなんて思えてくる事件だって起こったよ……だがよ。

 一体全体どこのどいつが、子供たちが銀河皇帝の肖像画を抱いて、立派な帝国兵になりたいだなんて口を揃える船にしてほしいと願ったよ?

 船内放送が語るところによれば、俺たちはもうじき歌声の主──『栄華と破滅の歌姫』のいる宙域に到達するらしい。そうなれば……俺たちはもう終わりだ。永遠に銀河帝国に忠誠を誓い続ける、銀河支配の尖兵にされちまうんだろう。
 助けてくれよ、大歌手『ローザ』。かつて『ネオシカゴ』の全てを魅了して、三大ファミリーの間に暗黙の和平協定さえ結ばせた平和の使者よ。
 過去の船長の誰より『ネオシカゴ』に安寧をもたらして、かつてはその功績を讃え、100ネオシカゴドル紙幣の肖像にさえ選ばれた偉人よ!
 確かにこの船はアンタのこともすぐ忘れ、あまつさえアンタの紙幣をプレミア価値の塊くらいにしか思わなくなった。だがよ、ここに本心からアンタの虜になった男がいる。いつだって俺の財布には、アンタにあやかろうとアンタの紙幣が入ってるんだ!

 女神よ、いま一度俺たちの船に奇跡を。
 宇宙からの歌により、俺まで魂を蝕まれちまう前に。

●奇跡の手段
「然るに銀河皇帝を骸の海に還した今も、『新生銀河帝国』を標榜する猟書家との戦いは続いておるわけじゃ」
 ヤクモ・カンナビ(スペースノイドのサイキッカー・f00100)がスペースシップ『ネオシカゴ』を襲った変化の影に見たものは、幹部猟書家『栄華と破滅の歌姫』の姿。自身の盟主『プリンセス・エメラルド』のために『帝国継承軍』を組織せんと目論む彼女は、遠く隔てた宇宙空間をも渡る洗脳の歌声により、『ネオシカゴ』住民を忠実な帝国臣民へと変えてしまった!
 その恐るべき射程を思えば、不用意に歌姫のいる宙域に近付けば、猟兵であろうとも洗脳されてしまうであろうことは想像するに容易かろう。実際、彼女を倒し、『ネオシカゴ』住民たちを歌の影響から解放しようと思ったら、何らかの歌声の中和手段を持たなくてはならぬのだ。

 実は、その手段は判っているのだが。
「どういった仕組みでそうなるのかまではさっぱり判らんが、洗脳を逃れた宇宙探偵エドワードなるスターライダーどのの様子を見るに、『ローザ・ノート』──『ネオシカゴ』史に残る大歌手を象った骨董品の紙幣さえ手に入れれば、洗脳音楽への対抗が可能じゃ! まずは『ローザ・ノート』を入手して、然る後に『栄華と破滅の歌姫』を打破されよ!」
 ……とはいえ問題は、「どうやって『ローザ・ノート』を手に入れるか」なんだけどさ。
 ヤクモはしばらく床を見つめたり天井の角を眺めたりしつつ考え込んだ後、ポンと手を打ってから猟兵たちに丸投げすることにした。
「まあ、稀少な品とは申せ、ある処にはある品のようじゃ。エドワードどのに訊ねれば心当たりくらいは教えてくれようから……後は、そこに乗り込んで“拝借”するだけじゃの」


あっと。
 レッツ、クライムアクション!

●第1章
 『ネオシカゴ』史に残る大歌手『ローザ』の描かれた古い紙幣を入手し、『栄華と破滅の歌姫』の洗脳歌への対抗手段としてください。洗脳を回避する方法そのものはもう判っちゃっているので、フラグメントで指定されている行動内容はあまり気にしなくてかまいません。
 入手方法は……ありそうな場所を襲撃し、“回収”すること。ギャングボスの私室、ブラックマネーに満ちた銀行の貸金庫、ギャングの隠れ蓑企業が運営する美術館……平和の偉人が眠るには相応しくない場所は幾らでもありますので、お好きな場所をお選びください。
 プレイングに『どんな場所を襲撃するのか?』『どんな敵・罠・障害等がありそうか?』『それらをいかに攻略するのか?』を具体的に指定しておくと、エドワードが下調べや事前工作をしやすくなるため、プレイングボーナスに繋がります。
 オブリビオンに洗脳されたギャングらを正面からぶちのめすのでも、怪盗のごとくスマートに盗み出すのでも、口八丁やら色仕掛けやらでまんまと騙し取るのでも。皆様のスタイルを見せつけてください!

●第2章
 無事に『ローザ・ノート』を手に入れたなら、あとは『栄華と破滅の歌姫』のいる宙域に向かい倒すだけ!
 本シナリオでの歌姫は、洗脳音楽が皆様に無効だと知ったなら洗脳歌を中断して攻撃に全力を傾けます……つまり、第1章で紙幣を手に入れていない方でも、安心して第2章にご参加いただけます。
 また第2章ではボスとの戦闘の代わりに、戦闘開始により洗脳歌の止んだ『ネオシカゴ』の治安改善を試みて下さっても構いません。洗脳歌が切れたマフィアたちが再び抗争の時代に逆戻りしてしまおうとするのを、少しでも防ぐことができれば……真の平和を願う人々の想いは逆に『栄華と破滅の歌姫』を弱体化させることでしょう!
 無論、連綿と続いた抗争の歴史に終止符を打つのは、困難な試みではあります。が、エドワードも協力してくれるので、力を借りると上手くゆきやすいでしょう。
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第1章 冒険 『洗脳音楽を破れ』

POW   :    洗脳音楽に耐える手段を探す/スターライダーに熱意を持って協力を求める

SPD   :    洗脳音楽の影響を避ける手段を探す/スターライダーと一緒に調査に出向く

WIZ   :    洗脳音楽の情報を集める/スターライダーの体験談からヒントを見出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

涼風・穹
プレミア価値のある紙幣なら売っているだろう
非合法かつぼったくり満載な悪徳店で大手の故買屋を紹介して貰う
そういう店なら騙そうと良心は痛まないし大抵のものは買えるだろうからな

門前払いされそうなら相手のポケットに金塊や宝石の欠片を放り込んでおく
《贋作者》謹製で作りは粗いけどな

そして売り物なら金塊宝石に成金趣味な宝剣でも最新鋭の武器からレトロな銃器まで何でもござれ
勿論《贋作者》謹製
これで『ローザ・ノート』と交換だ
真札か偽札かは歌姫の歌声を中和しているかで真贋確認をしておくけどな

交換後はさっさと逃げる
欲をかかれて殺されても敵わないし《贋作者》謹製の物品が俺の手を離れてどれだけの時間存在していられるかは…



 天にぽっかりと空いた採光窓から差し込む近隣の恒星からの光も、暗鬱な裏通りにまでは届いてこなかった。天を衝く古びた摩天楼の壁には、数え切れない銃弾の痕。船史上、どれほどの命がこの通りで奪われてきたものか、涼風・穹(人間の探索者・f02404)には想像するべくもない。
 だが、幾度となく激しいギャング同士の抗争の場になってきたという事実が、この裏通りが複数勢力の狭間に位置することを物語っていた。そういった場所には必ずあるはずなのだ――金さえ払うなら陣営を問わずに取引を行なう、中立勢力とも呼ぶべき商人の店が。

 厳しい用心棒たちの間を通り、分厚いシャッターを潜って店内を見渡せば、武器・電子機器・芸術品……雑多な品々が穹を出迎えた。
「アンタ、初めての客だな」
「ああ。ここなら何でも手に入るし処分できると聞いてな」
 穹へと値踏みするような目を向ける、店番の白髪交じりの男。店主か、それとも雇われか……いずれにせよ油断ならぬ人物であることだけは間違いあるまい。
「『ローザ・ノート』を。コイツで買えれば有り難いんだが」
 穹は強気に、武器の山を取り出してみせた。この店がぼったくり故買屋だということは承知の上だし、ゆえに騙そうとも良心は痛まない――が、かと言ってあまりに“物分かり”が良すぎても逆に企みを見抜かれるであろう。
「帝国の制式熱線銃か。どこでこれだけの数を手に入れた?」
 ざっと品定めした店番がぎろりと睨めつけるのを、不要な好奇心だとでも言いたげに睨み返す穹。
「まあいい、今はどこにでも欲しがる奴がいる」
 しばらくそんな穹をじっと見つめた末に視線を銃へと戻した店番は、熱線銃の山を丸ごとカウンターの内側へと仕舞い込むと、棚から額縁を取り出して穹へと放り投げた。
「確認してくれ。保存状態も悪くないはずだ」
「見た限りじゃ問題なさそうだな。それ以上はこの店を信じておこう」
 紙幣の歌声中和能力だけを確認し、そう言い残すと去っていった穹を見送った店主はまだ知らない……彼の手にした熱線銃が穹のユーベルコードで作られた贋作で、しばらくすれば時間と空間の彼方へと失われてしまうのを。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
酷い有様ですが、この洗脳を利用しましょう
オブリビオンは猟兵を識別できても、一般人は違います

3大ギャングと接触

私はかの翠玉の姫君より一任を受けた継承軍の使者です
船の三大勢力…帝国の傘下に円滑に加わる為には統治形態について極秘会談が必要…
ええ、ファミリーの皆様に席をご用意しました

(裏取り対策にハッキングで偽装情報用意)

姫君への献上品、忠誠の証として
歴史的遺物のローザ・ノートをお忘れなく

ボスや首脳陣、護衛が来たフロアにガス流し昏倒させ全員確保

これで会談の数日間はギャングは機能不全
さて、忙しくなりますよエドワード様
この船に振るう大鉈の刃を研ぐ為に
先ずは治安維持機構の腐敗の洗い出しです

2章に備え情報収集



 何者かが中立地帯であるはずの故買屋で、まんまとお宝をせしめてみせた――そのニュースは瞬く間に『ネオシカゴ』の裏社会を駆け巡り、事実上この船を支配する三大ファミリーのボスらを緊張させた。
「我らの船に反逆者が潜んでいるとは嘆かわしいことですな」
 忌々しげな顔を作った痩せぎすの男は、ルチアーノ・ファミリーのボス、サルヴァトーレ。すると葉巻を銜えた恰幅のいい男――ソンブレロ・カルテルのボス、カルロスが言葉を続けてみせる。
「愚か者は血祭りに上げねばならん。それが『翠玉の姫君』の望みだそうだからな」
 すると一体のウォーマシンが首肯した。
「ええ。皆様の働き次第では、今後の皆様の“席”の居心地も変わることでしょう」

 ここは『ネオシカゴ』で最もセキュリティの厳重な、高級ホテル最上階にあるレストラン。ワイン一杯ですら目の飛び出る金額を要求されるこの場所が、今宵は全てが貸し切りになっている。
 全ては、このウォーマシンが望んだことだ。洗脳を受けたボスらを集め、これからの統治について“通達”をするために。
 超然とした騎士姿で威圧するマシンに冷や汗をかきながら、最後のボス、応龍会のリチャードが引き攣った笑顔で頭をぺこぺこと下げた。
「ともあれ、まずはお探しの『ローザ・ノート』でっせ。まさか銀河帝国がこんな骨董品をお求めとは驚きですなぁ。やっぱり何かの作戦なんですかい? あっしらで良ければ他にも幾らでもご協力を――」

 ぶん、と長剣がひるがえり、お喋りなリチャードの前髪を数本千切り飛ばした。
「皆様の忠誠心は了解しました。追って、皆様に相応しい処遇が言い渡されるでしょう」
 ウォーマシンは淡々と台詞を綴り……それからこうも付け加える。
「では、皆様にもう一つだけ“協力”をお願いするとしましょう……その場から、決して動きませんよう」
 同時、辺りに白い煙が満ちる。はっと息を呑んだボスたち、付き添いの幹部や護衛たち……その場にいた者たちが次々に倒れ伏す!

 ――誰も動く者のいなくなったレストランフロアの中央で。
 ウォーマシン――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は祈るように俯きながら呟くのだった。
「帝国継承軍の使者を騙って麻酔ガスで不意打ちするなど、騎士道にもとることなど重々に承知です。しかし、それでも私はこの道を選びます……彼らに裁きを与えねば、オブリビオンの脅威が去っても腐敗した治安機構による脅威は残るのですから。
 さてエドワード様。警察上層部とギャングの蜜月の証拠は粗方ハッキングで押さえてはおりますが――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
ネオシカゴ…あの治安で悪いことで有名な…猟書家が狙う船には丁度良い船よね
まぁ、みすみすその活動を見逃すわけにはいかないし、頑張りましょうか


電子機器類はアベルで『ハッキング』
ABVDのバリア【オーラ防御】で攻撃を防ぎ
構成員をシルキーで『捕縛』&電撃で『気絶攻撃』
プチヘス達もスタン系武器で制圧を【集団戦術】

ということでギャングのアジトを正面から堂々と制圧し、海賊らしく『ローザ・ノート』を頂きに
貴方がボスね?宇宙海賊SkyFish団…お宝を頂きに参上ってね


あれよ…お父様だって昔荒れてた船をまともにしたし自分も出来るかもって…(わたしはマフィアのボスの座を乗っ取りましたの看板を持って正座)



 すなわち警察機構そのものを挿げ替えるほどの大鉈が、この船には必要だということだ。その大鉈の切っ掛けは、エドワードが常々追っていながらついぞ手に入れられずじまいだったもの。この船のどこにでも転がっておりながら、しかし蔓延る無数の悪意が、拾おうと思った者を揉み消してしまう。
 頷ける話だと言えた。『ネオシカゴ』なる危険な船があることは、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)の耳にまで届くほどだったのだから。
(だから猟書家が狙うのにも丁度良かったのでしょうね)
 ならば……自業自得として捨て置くか?
 そんなこと彼女にできるはずもない。彼女は、確かに宇宙海賊だ……だがそれは銀河帝国の側からSkyFish団を見た時の呼び方に過ぎない。
 彼女は偽りの平和を乱す者。奪われた真の平和を奪い返す者。
 ゆえに悪徳蔓延る『ネオシカゴ』においても、彼女は平和を奪い取ってみせよう!

「『ローザ・ノート』をいただきに来たわ! 貴方たちのボスはどこ?」
 ビルのエントランス扉がぶち抜かれるや否や、辺りにはギャングらの悲鳴が次々に響いた。ヘスヘスと鳴く二頭身ヘスティア型ロボットたちが、怒涛の勢いで雪崩れ込む。電磁警棒で全身を叩かれて、次々にドローンからの投網に絡め取られてゆく下っ端らの姿は、すっかり憐れみすら感じさせるほど。
「先生、何とかしてください! きっと反帝国の輩です!」
 泣きつかれた用心棒がレーザーピストルを抜き打ちするが……ヘスティアの額に風穴が開くことはない。レーザーはヘスティアの外套に隠れていた――というより外套を構成していた別のドローンが生んだ力場に跳ね返り、逆に用心棒のテンガロンハットを吹き飛ばす。

『お嬢様。目的の部屋までご案内いたします』
 優秀な『ティンク・アベル』は既にビルじゅうのセキュリティシステムを掌握し、『ローザ・ノート』の在り処を見つけ出してくれていたようだった。もう、監視カメラも電子錠も意味がない……今のヘスティアに歯向かうものは、ボスらしき男の震えた啖呵くらいだ。
「宇宙海賊SkyFish団……お宝を頂きに参上、ってね。安心して? 殺すつもりはないの……これからちょっとの間“協力”してくれればいいだけだから」

 この日からルチアーノ・ファミリーの傘下組織マーティン・ファミリーは、SkyFish団の下部組織として生まれ変わることになった。
「あれよ……お父様だって昔荒れてた船をまともにしたし、自分も出来るかもって……」
 後に説明を求められたヘスティアは、『わたしはマフィアのボスの座を乗っ取りました』の看板を持たされて正座しながらそう供述したという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
レアものの発見と回収だね。これは引きこもりなマニアの血が騒ぐよ!

『ローザ・ノート』の在処は【電脳潜行】で探してみよう。
かなりなレア紙幣らしいから、持っている人もある程度はわかるよね。

その中から、この人はローザファンやコレクターではなく、
投資目的だなって人を選んで、紙幣をいただいちゃおうかな。

電脳系のセキュリティを使っていれば、このまま解除できるから、
セキュリティに穴を開けておいて、その人のところへ忍び込んで盗み出しちゃうことにしよう。
運動に自信はないけど、人のいないときに普通に入って持ってくるならだいじょぶだよね。
「ちょっとだけお借りします、ね」

依頼が終わったら、返せるといいんだけど!



 そうしたギャングたちの阿鼻叫喚も、遥かなる摩天楼の高みにまでは聞こえてこなかった。
 瀟洒なスーツに身を包み、最高級フォワグラに舌鼓を打つ男が耳にするものは、優雅なジャズの生演奏と、手元の端末が頻繁に告げる株価情報くらい。いや……。

「ふむ? 今、物音がしなかったかね?」
 片眉を動かした男に対して付き従う老使用人は、気のせいでございましょう、と返した。
「本ビルのセキュリティが盤石であることは、旦那様もご存知かと。破れる者がいたとすれば銀河帝国のエージェントくらいでしょう。であればやはり、“気のせい”とすれば構わぬのです」
「そうであろうな。それが銀河皇帝陛下の深遠なるお考えなのであろうから」

 彼らがそんな結論に至ったことに、廊下をゆく菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はほっと胸を撫で下ろすのだった。
 危うく侵入がバレそうになってしまった緊張か、それとも単に引きこもりが珍しく運動したせいか。心臓は今も動悸して止まらない。
 が……決して悪い気分だとも思わなかった。マニア垂涎のレア紙幣『ローザ・ノート』まであと少し。主人の男にとってはただの投機対象でしかないかもしれないが、理緒もマニアの端くれとして、単に金目のものを見る目で『ローザ・ノート』を見られると思うと平静ではいられない。
(金庫の電子錠も……これでよし)
 解錠には銀河帝国並の技術が必要と言われた最後の砦も、理緒の過剰な没頭の結果、まるでパズルのように解けてしまった。重々しく、しかし音も立てずに開いた扉。中には……決して変質して価値が落ちぬよう、厳重に耐宇宙線ガラスで防護されている紙幣の姿。

 髪の一本一本に至るまでを精密なタッチで描かれた大歌手『ローザ』は、まるで何かを訴えかけるように口をOの字に開けていた。長い睫毛。微かに紅を帯びた頬。髪型も、化粧の仕方も、今となっては古臭さを感じさせはするものの、それでもはっきりと彼女が美人であったことを『ローザ・ノート』は物語っている。
 ちょっぴりと、罪悪感を覚えないでもない。でもそれが最低限で済むように、理緒はなるべくこのローザに金銭価値しか感じていないような相手を選んで盗みに入ったつもりだ。
 でも……まるで当のローザ自身が、理緒に正義を忘れるなと苛むような気さえする。だから……。

「ちょっとだけお借りします、ね」
 理緒は小声でそう囁いて、それから金庫室を後にする。
 この後、無事に全てを終えられたなら……必ずや返しに戻ると誓って。

成功 🔵​🔵​🔴​

メンカル・プルモーサ
……なるほど、ねぇ……ま、そんな骨董品で希少品なら裏での取引もしているだろうから…
…まずは裏の取引用のサイトの記録を探って(ハッキングも兼ねて)情報収集だね…どこがローザ・ノートを持っているか…
…ふむふむ……このリトル・サンフランシスコ一家が狙い目かな…幾つかローザ・ノートを買い取っている見たいだし…
…【想い交わる幻硬貨】を使って…一家の構成員…出来れば経理担当に…接触…『友人』の頼みという事でローザ・ノートが急に要り用になったという事で…買い取り交渉をしよう…
…お金ならまあ困ってないしね…とはいえ最初から出すと足下見られるから……適度に交渉をして確保にするとしよう…



 次々に起こり続ける事件。崩壊してゆくパワーバランス。この未曾有の争乱の中で、人々は密かに噂する。
 全ての事件の中心に、『ローザ・ノート』が関わっている。そして裏で手を引く者は、偉大なる銀河帝国に対し反旗を翻すものである、と。
 反逆者が何のために旧紙幣なんぞを集めているのか。それは『ネオシカゴ』の誰にも解っていない。ただ、『ローザ・ノート』の持ち主は狙われるという事実……それだけが人々の前に立ちはだかっている。

 次は自分が狙われるのではないかと怯え、銀河皇帝に祈りながら『ローザ・ノート』を手放す者。パニックによる急激な値崩れも反逆者の襲撃も一過性のものにすぎぬと楽観視して、この隙に買い集めようと目論む者。あるいは今紙幣を手に入れれば反逆者を返り討ちにし、帝国への忠誠を示せると期待する者。
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の『アルゴスの眼』には、裏サイトでもにわかに頻度を増した『ローザ・ノート』の取引履歴が並べられていた。
 売り。買い。売り。売り。買い。
 最安値の更新と反発を繰り返す取引相場は、予測困難であること甚だしい。だが別に、そんなものを見るために彼女はログをごっそりいただいてきたわけじゃない。
「……見つけた」
 眼鏡の上を青白く流れてゆく情報の幾つかが、同時に赤く書き換わった。メンカルが少しばかりその部分に意識を集中させれば……文字から新たに注記情報が伸びる。ネットワークアドレス。それから物理座標。
「……ふむふむ……このリトル・サンフランシスコ一家が狙い目かな……」
 想い交わる幻硬貨(ハロー・マイフレンド)。取引用アカウントに適度に取引ログを捏造したメンカルは、売り注文が出尽くして『ローザ・ノート』が市場から一掃された頃を見計らって、知己を装って直接の買付交渉を申し込んだ。
『友人に頼まれまして、どうかお買い集めの紙幣を融通してはくれませんか?』

『いくら君の頼みでも、安く売るわけにはゆかないね』
 メッセージを送ってしばらく様子を覗っていたメンカルの元に返信が来たのは、それからそう経たない頃のことだった。ファミリーがメンカル相手に利益を見込んだ証拠だ。相手は恐らくは彼らの幹部――それも、この買い集め作戦の責任者かそれに近い部類であろう。当たりだ。手早く返信を送る。
『では、幾らなら構いませんか? 1000ネオシカゴドル以内であれば有り難いのですが』
『1500NCD。紙幣を用いて君のご友人が得るであろう帝国への貢献度と比べれば、これでも安いくらいだと思うがね?』
 今度はすぐに返ってきたメールにメンカルはしばらく迷ったフリをして……それから、承諾の旨を送付した。別に金くらいなら幾らでも“作れる”わけだけど、だからってふっかけられる相手だって思われても良いことないでしょう?

 このリアリティ溢れる遣り取りの結果、『ローザ・ノート』が敵の手に渡ったことをリトル・サンフランシスコ・ファミリーはまだ知らない。そして、永遠に知ることもない……何故ならメンカルのアカウントには、どこにもハッキングの形跡なんて“残されていない”んだから。

 ……そして。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『栄華と破滅の歌姫』

POW   :    さあ願うのです、帝国による再統一を
【民衆の知る有名な歌姫そっくりな姿 】に変形し、自身の【四肢】を代償に、自身の【帝国復活を願い行動するよう洗脳する歌声】を強化する。
SPD   :    銀河再統一を果たせるのは帝国だけです
【銀河帝国による銀河再統一を願う歌 】を披露した指定の全対象に【帝国継承軍を支持し帝国の復活を願う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    抵抗する者は死し、賛同する者は生き残るでしょう
自身が【敵を蹂躙し味方を称賛する歌を歌って 】いる間、レベルm半径内の対象全てに【抗う心を砕き死に導く言葉】によるダメージか【従順な心を育み栄光へと導く言葉】による治癒を与え続ける。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠森宮・陽太です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 彼方より近付き来る猟兵の姿を、『栄華と破滅の歌姫』は冷たい表情で睨め付けていた。
 新生帝国軍に歯向かおうとさえしなければ、洗脳された挙げ句に殺されるなど、無様な最期は迎えなかっただろうに。
 無機質な瞳に浮かんでいた表情は、侮蔑か、それとも憐憫か。だがその瞳が驚愕に見開くまでに、そう時間は掛からない。

 何故ならば――……。
涼風・穹
ちょいとネオシカゴでのマフィア達のあらゆる戦闘行為に武力介入させて貰うとするか

『スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ』で現地へ急行
『イグニッションカード』から《起動》で『ズィルバーンヤークトフント』を召喚
陣営を問わずマフィア達の兵器を破壊する
あくまでマフィア達の無力化を目的にして必要以上の破壊活動はせず人殺しも可能な限りは避ける
キャバリアで介入すればそれだけで充分威嚇になるだろうしな
一通りの無力化が完了したのなら『ズィルバーンヤークトフント』を収納して『スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ』に乗り換えて次の現場へ向かうとするさ

少しでもマフィア達が大人しくなってくれれば御の字さね


トリテレイア・ゼロナイン
(エドワードに「子供達が泣かぬ船を」と命令を出させ)

不正に苦い思い抱く
若しくはマシな警察上層部や政治家と接触

洗脳解除直後の混乱
これはギャングとそれを利する勢力への好機です

失脚や拘束に必要な嫌疑?
あるではありませんか
銀河帝国への恭順…外患誘致という重罪が
洗脳で罪状が消滅しても余罪は十二分にあります
(取引言いくるめ誘惑悪のカリスマ早業)

電撃的に警察組織を再編成
ローザの歌を旗印にマスコミに政変リーク
市民感情も味方に(ブームの仕掛け人)
頭を失い麻痺したギャング一斉検挙

不正に目を瞑る時代は終わりを迎えました
市民を護る警官の誇り、今こそ取り戻す時です!

抵抗激しい拠点の制圧…
漸く騎士らしい行いが出来そうです



 ――その頃、『ネオシカゴ』を睥睨する摩天楼の頂上にて。

 穹は眼下の通りを見下ろしていた。
 どうやら、猟兵と歌姫の戦いが始まったらしい。不意に止まった洗脳歌。気付けば一網打尽にされていた三大ギャング。次にこの船で起こるだろうことは、穹には火を見るより明らかだ。
 後釜争い。
 恐らく、すぐに激しい抗争が始まるだろうということは、トリテレイアも解らなかったとは言わぬであろう――後に語るが実際に、彼はそれらも織り込み済みで荒療治を施すことにしていた――し、全く穹の想像通りだ。が、それはそうと自分の目の前で人死にが出るのは寝覚めが悪い。
 だから傍らで控える愛機、『スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ』に跨った。それから……何もない空中に向けてフルスロットル。目指すは今ちょうど真下に位置する交差点。右からは自動小銃を構えたソンブレロ・カルテルの構成員らが、左からは青龍刀を振り回す応龍会のごろつきたちが今まさに雪崩れ込もうとしている現場だ。
「洗脳が解けた途端にこれとは、穏やかじゃないな」
 両軍が激突せんとしたその瞬間、穹の宇宙バイクは両者の中央に着地した。
「何だテメェは。邪魔するつもりか?」
「相手が誰だろうと構わねえ、奴らと一緒に殺っちまえ!」
 出鼻を挫かれたギャングたちが息巻くが、本当に穹を邪魔だと思うなら気にせず蜂の巣にするなり切り捨てるなりすべきだったのだ。僅か余計な一言を吐き捨てるだけの時間があれば、穹は指の中のカードを天へと掲げることができるのだから。
 《起動(イグニッション)》――虚空より出現した白銀色の人形兵器は、現れざまの武装の一斉開放により左右のギャングらを等しく襲い始めた。
「げぇっ、まさかルチアーノの奴らか!?」
「ぎゃぁっ!? 殺され……あれ、死んでない?」
 大混乱に陥ったギャングらではあるが、不思議なことにキャバリアによる犠牲者は出ていない。むしろ、慌てた味方による同士討ちの方がよっぽど被害甚大だ……その同士討ちも、キャバリアが正確にギャングらの武器だけを破壊することにより急速に落ち着きを取り戻すのではあるが。
「大人しくしておきな。俺の『ズィルバーンヤークトフント』の威力と精密さは身に沁みたろう」
 武器を全て失ったギャングらは穹の警告を受け入れる他ないが、かと言って敵対組織が目の前にいる手前、逃げ出すことすらできぬままだった。無意味な睨み合いの時間だけが過ぎてゆく――否、それはギャングらにとっては無意味でも、穹にとっては好都合。
 遠くから、サイレンの音と明滅するランプが近付いてきた。船警だ。市民からは無能なギャングらの腰巾着と揶揄される彼らはしかし、今日ばかりは一帯をきっちりと包囲して、抗争に加わったギャングらを根こそぎ逮捕する――これで穹も安心して次の抗争現場にゆける。

 本来あるべき治安機構の姿を取り戻してゆく警察からは、すっかり腐敗が取り除かれたのであろうか?
「恐らくは、そうではないでしょう」
 険しい声色を作るトリテレイア。
「……ですが、エドワード様が命じて下さったからこそ、私は少しでもこの船をそれに近くなるよう変えることができるのです」
 自ら使用することは制限されている船内システムの完全掌握機能を人間であるエドワードに「子供たちが泣かぬ船を作るため」として承認させることにより、彼は警察から腐敗の回りきっていない部分だけを切り離して対ギャングの銀の弾丸とした。
 数は乏しく、しかし義憤には満ちた弾。彼らは同じくトリテレイアによりギャングと蜜月の関係にあったデスクを拘束されたマスコミによる喧伝により生まれた市民たちの声という追い風に乗り、多くの協力者たちの下で仕事を遂行する。

 ギャングに怯えない『ネオシカゴ』を。
 ローザによる平和を再び我が手に。

 どれがこれまで踏みにじられた者らの声で、どれがただ勝ち馬に乗っただけの者らの声だったのかは判らない。しかし“勝ち馬に乗る者たちが味方についた”ということは、今が“勝利目前である”という意味に他ならない。
「これまで全てが証拠不十分とされていた支配者たちは今、『銀河帝国への恭順』――外患誘致という見逃しがたき重罪の証拠を露にしました。確かに、洗脳されていたのは誰もが同じ……ですが彼らはただ軍門に降ったわけではありません。洗脳後も、自らの帝国内での地位を求めて密議をしていたのです! 洗脳から解き放たれた後、彼らの抗争が始まったのが何よりの証拠です」
 無論、既得権益を失うまいと足掻くギャングらは、最後まで抵抗を企てようとした。だが――恐らくはそれも風前の灯であろう。今回、いかに言葉を弄してばかりだったといえども、トリテレイアの本質は騎士なのだ。自らが導いた人々では抗いきれぬ巨悪がそこにあるならば、自らの血を流すのが騎士の務め。
 軍かと見紛うほどの武装で立て籠もるギャングらの頭上に、オブリビオンをも打ち砕く鋼鉄の愛馬の蹄が振り翳される。残された道は二つに一つだ……すなわち、降伏か、あるいは断罪か。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
歌姫は、他の猟兵の人が頑張ってくれるのを信じて
わたしはもうついででこの船の治安改善を…
SSWの住人としてはこっちの問題も放っておけないってね


船長の利権を巡っての争いなら、誰かこの船の外部の存在が船長より上の立場になれば暗殺もされず問題ないはず
裏金は資金の流れを『ハッキング』で調べて内部…は頼りにならなさそうだから外部の船の司法に頼るしか無いわね

まぁ、端的に言うとこの船の上の立場の船である程度清浄化するまで管理する感じ?洗脳対策になる『ローザ・ノート』の仕組みを解析、増産できるとなれば富は産めるし向こうにも悪い話じゃ…

(自身の故郷の船の連絡先を見て…ヨシ!)
なお、お母様にも思いっきり怒られました



 もっとも万が一ギャングが抵抗に成功としても、彼らが『ネオシカゴ』の覇権を握ることはありえないのだが。
 何故なら……船の頂点たるべき船長室の椅子には、どういうわけかヘスティアが座っていたから。なんで?
「だって、わたしも同じスペースシップワールド世界の住人だもの。利権を巡る船長の暗殺なんて、見過ごしてはおけないわ……ここで改革が上手くいったと気を抜いて、再び抗争の時代に戻ってしまわないように。
 外部の存在であるわたしが、船長より上の立場として影響を及ぼすことにするわ」

「お頭ァ! うちのシノギにも関わる話なんでアレでやすが、コイツが前回の船長選挙に関わる取引記録でやす!」
「素直に反省できるの偉い! ふむふむ……やっぱりその部分でそう資金が流れてたのね。分析ありがとうアベル。他の資料の精査もお願いするわ」
 ヘスティアと新生マーティン・ファミリーにより(時に非合法ハッキングも用いて)集められた裏金の流れなどの犯罪の証拠は、怪しい司法に裁かせるか数少ない清浄な司法に集中する仕事をさらに増やすかという究極の二択の中で、第三の選択肢『外注する』のため幾つかの信頼できる他のスペースシップへと送られた。
「こうすればこの船の浄化が進むまでの監督もできるし、人手不足も解消できる。報酬は、『ローザ・ノート』による洗脳対策の仕組みを調査できるということね……もしも解析して増産できるとなれば犯罪に頼らずとも富を産める特産品になるし、その仕組を共有して貰えるなら再生を手伝う側の船にとっても悪い話じゃないわ」
 ぶっちゃけ洗脳対策手段はシナリオ固有だから過信はできないんだけど、それでもグリモア猟兵の予知に引っかからなかった事件の中に同じ手が使えるものがあるかもしれない。
 効果としては、それだけでも十分だ。この世界を少しでも良くするコストとしては、紙幣一枚だなんていうのは驚くほど安い。

 素晴らしいアイディアを思いついてご満悦のヘスティアを更に喜ばせることに、彼女のAI執事は一通のメールの到着を告げた。
『お嬢様、早速、人材募集の打診に対する反応があった模様です』
「どこからの返答かしら? あら、このアドレスは……ヨシ!」
 それは忘れもしない故郷の船のもの。きっとわたしの活躍が母船にも伝わったのね……胸を膨らませるそんな期待は。

 絵本作家の表現力を駆使してこれでもかと書き連ねてあった、父親譲りの大立ち回りでギャングをまるっと手中に収めるどころかいつの間にか船を丸ごと支配するようになった娘に対する母の大目玉により、どん底まで萎まされることになったわけだが。

 そんな頃……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……歌で洗脳、ねぇ……わりと良くあるやり方ではあるのだけど…
…しかし…紙幣で防げるのは珍しいな…何かあるんだろうかこの紙幣…歌姫としての格の違いとか…?
歌だけで和平を結ばせたなら洗脳より数倍偉大だし…

…ま、分析の前にあの歌姫を倒す方が先だね…
…歌を武器にするか…一応耳栓はしてるけどどこまで通じるのやら…
…【夜空の光は全て星】を発動…星剣で歌姫を囲うように立体魔法陣を展開…
…静寂凍結術式【カリアッハ・ヴェーラ】…あらゆる振動を抑えることで立体魔法陣内の全てを凍結させる術式だよ…
…歌であり、音であるなら振動がなければ伝わらない…
…歌も凍る静寂の中で果てると良いよ…



「この歌は、心そのものを揺さぶる歌……何故心動かされぬのですか?」
 驚愕する『栄華と破滅の歌姫』の問い掛けに対しても、メンカルは眠たげにも面倒くさそうにも見える表情を崩しはしなかった。宙域全てに広がっていた洗脳歌が自身に集中したことが、揺り動かされる魔法陣の様子から見て取れる。周囲に纏った数十層にも渡る立体魔法陣のうち、最後の数層を除いた全てが激しく振動させられている……それは一見すると際どい拮抗にも見えるが、事実は“まだ数層も残している”のほうだ。
 運用試験は上々と言えた。恐らくは、歌姫はメンカルの計算を上回れはしまい。
 では次は……メンカルの口許が何やら動く。真空を貫いて自身の歌を届けられる歌姫も、他者の言葉を自分の許まで届けられはしない。

 だから彼女は、次に起こることを予期しきれなかった。
 今までメンカルの周囲に浮いていた魔法陣たちが、今度は自らの周囲に浮かび上がったことを。
 内を外に、外を内に……表裏を逆転させて自身を取り巻くそれらを、彼女の歌は貫けやしない……そればかりか。

「喉が、体が――」
 急激に自由を失ってゆく自身の体に彼女は気が付いた。自身の中から熱が奪われてゆく。自身がこの世に存在するためのエネルギーの全てが、魔法陣により吸い取られてゆく。
 魔法陣に囲まれた空間全てが、今や振動を拒否されていた。いかに真空をもものともせずに伝わる歌も、発声器官ごと凍結させられてしまえば聞こえない――。

「……歌も凍る静寂の中で果てると良いよ……」
 最後にメンカルが呟いた言葉も、絶対零度に凍結した歌姫に聞こえる由もなかった。氷像と化した歌姫に向けて追加の術式を書き加えれば、彼女はあっさりと砕けて四散する。
「……さて……と」
 これでようやく分析ができる。歌で洗脳、なんて手は割と良く聞くけれど、どうして紙幣で防げるなんて珍しい現象が起こったのだろう……?
 作りそのものは何の変哲もないとさえ言えてしまうような紙幣。けれどもそこに籠められた想いは、並々ならぬものであったことだろう。
「……つまり……歌姫としての格の違いとか……?」
 一旦分析の手を止めて、メンカルはふとそんな言葉を洩らすのだった。
 何か特別なメッセージを呼びかけたのでもなく、単に美声を披露しただけで自ずと和平をもたらしたローザ。
 ならば彼女の業績は、メッセージを強制的に植え付ける洗脳歌なんかより、遥かに偉大だったに違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
わたしは『ネオシカゴ』の治安改善に行こう。

洗脳音楽が止まったら、
紙幣をお借りしたところへ行って、協力をお願いしよう。

「あなたなら、マフィアさんにも顔が利きますよね」

『ネオシカゴ』が洗脳されていたことは、
いまなら気付いていると思いますけど、
わたしが洗脳されなかった理由が、これです。

と、お借りしていた『ローザ・ノート』を返して謝罪。

ローザさんの想いが、昔から変わらない想いが、
わたしたちを守り『ネオシカゴ』を助けてくれました。
だから今度はわたしが彼女の想いを叶える番です。

『ネオシカゴ』の平和にどうか協力を。

マフィアが再び抗争を始めてしまう前に、
ローザさんの想いを伝えてください

って、お願いしよう。



 かくして『ネオシカゴ』を取り巻く問題は、全てが解決したか、少なくとも解決する方向に向かいつつあったと言えただろう。
 ……いいや、まだ一つ残るものがある。それは犯人が自白しなければ、恐らくはしばらく明らかになることすらない問題。しかし理緒にとっては今何よりも重要な、この船を去る前に必ずしなければいけないことだった。

 猟兵から突然のアポがあったと秘書から聞いて、男は即座に幾つかの可能性を脳裏に描いた。
 ひとつ。銀河帝国に洗脳されたことを批判され、何らかの罪滅ぼしを求められること。
 ひとつ。ギャングを利用した脱税工作を見咎められて、処罰を申し渡されること。
 ……が、いずれにせよ碌なことにはならないだろうと言い逃れの術を幾つも想定していた男に対し……猟兵――理緒は彼女のほうこそ感謝と謝罪をしてみせたのだ!

「オブリビオンの洗脳に対抗するために、こちらを勝手にお借りしてしまいました」
 少し前まで、この船の誰もが銀河帝国に洗脳されてしまっていたこと。伝説の歌手ローザの紙幣が、人々の平和への願いから生まれたものであること。
 その平和への願いがまさか時を超えてオブリビオンの打倒に力を貸してくれるとまではさしもの男も思わなかったが、それと自分の『ローザ・ノート』がいつの間にか盗まれていたこと以外の理緒の説明は、男もよく理解していたものだ。
 そして理緒はこうも続ける。
「ローザさんの想いがわたしたちを守り、『ネオシカゴ』を助けてくれました……だから今度は、わたしたちが彼女の想いを叶える番なのです」

 つまりは、「自分はローザに恩返しするために『ネオシカゴ』を良い船にしなくてはいけないので、協力してほしい」ということだった。
「あなたなら、マフィアさんにも顔が利きますよね」
 黒髪の間から覗く真っ直ぐな琥珀色の瞳が男を射抜く。この娘は自分を責めることなく、しかし責任を果たせるかどうかと問うているのだ――実際に理緒にそのつもりがあったかどうかはともかく、男は忘れたはずの罪の意識に駆られてそう理解する。

「喜んで」
 最終的に男はそう答えて理緒に握手を求めた。
「戦争は確かに手っ取り早く金になる。しかし長期の投資をするのなら、平和であるほうが一番だ」
 表舞台から排除されたギャングらが、再び復興せぬように。
 そんな理緒の願いさえも利益の話として理解する男をやはり理緒は好きになれそうにはなかったが……それでも彼女に向けられた男の力強い瞳は、彼が決して嘘を吐くつもりはないことを物語ってくれているとは思えそうだった。

 今日よりスペースシップ『ネオシカゴ』は、きっと善き人々の船として生まれ変わることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月14日


挿絵イラスト