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手を差し出すは商売敵

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #スナーク症候群 #強化人間

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 ヒーローズアース、アメリカ・ロサンゼルス。
 有名なハンバーガーチェーン店の片隅にある席で1人の女が眉間を指で摘みながら目を閉じていた。
「おいおい、待ってないで先に食べてて良かったのに」
 向かいの席に笑いながら連れの男が座り、包み紙を剥がしながら食べ始める。が……女の手が一向に何にも伸びないことに手が止まった。
「おいどうしたんだ? ひょっとしてつき」
 男の額に赤い点が浮かび上がり、椅子ごと後ろに倒れ込む。女は聞こえるようにわざと大きくため息をついた。
「……もうちょっとデリカシーとか場所とか考えなさい」
 突然の出来事に辺りがざわめく中、立ち上がった男は謝りながら椅子を戻して座り直した。
「いつも通りの威力だから安心したぜ。で、そうじゃないならどうした?」
「……眠れないのよ」
 よくよく見れば、女の目の下にはクマが浮かんでおり化粧で強引に隠していた。
「なんだ? ひょっとして猟兵とかフォーティナーズに活躍の場を奪われて『廃業の危機!』とか悩んでんのか?」
「そんなんじゃないわよ……」
 笑う男の揶揄いを女は否定する。しかしその視線は窓の外にある、看板に大きく描かれたフォーティナーズを起用した宣伝に注がれていた。

 スナーク症候群。
 善悪の概念が複雑化した「均衡の時代」以降、幻の怪物が見えてしまうという「強化人間特有の」精神疾患である。
 その引き金となるのは……「倒すべき敵、掲げるべき正義を失った時」だという。
「そんな、スナーク症候群を利用して猟書家が何かをやろうとしているようなんですよね」
 ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう言いながら期間限定商品のハンバーガーにかぶりついた。
「怪物は所詮ただの幻でしかありません。ですが、それが『本人のいないどこか』で、実際に具現化してしまったんです」
 その怪物が暴れ出せば、もちろん周囲はタダでは済まない。しかしその場所は分からない。何しろ猟兵は「猟書家が動いた」という情報しか現時点で掴めていないのだから。
「で、最近調子を崩している強化人間さんがいらっしゃいまして。それが彼女です」
 そう言ってルウは手に持っているハンバーガーのロゴと同じマークが右端に印字されているプロマイドを差し出した。
「【レッドポインター】バレッタ・ポーリーン。視線に入った相手に赤い点をつけ、その場で倒れさせる超能力を使う方です。最近調子が悪そう、寝付きが悪いようだ、と同僚のヒーローの方々から相談を受けておりまして。ひょっとしたら、彼女が震源地の可能性があります」
 彼女が何に悩んでいるのかは不明であるが、彼女の不安を取り除かなければスナーク症候群の侵攻を止めることは出来ない。
「スナーク症候群によって産み出された怪物は患者と縁深く、かつ人気のない場所に現れる傾向があるそうです。今回の案件はバレッタさんの悩みを解決しつつ、彼女と関係ある場所に潜んでいるであろう怪物の討伐……となります。質問がなければこのまま彼女の働いている基地に向かっていただきます」
 ルウは最後の一切れを飲み込み、コーヒーで口の中を洗い流した。


平岡祐樹
 猟兵の快進撃はきっと、正の面だけではない。
 お疲れ様です、平岡祐樹です。

 今案件にはシナリオボーナス「強化人間『バレッタ・ポーリーン』を励ます、もしくは共に戦う」がございます。
 これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
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第1章 日常 『具現化した病の居場所を探れ』

POW   :    強化人間を悩ませる幻影を打ち消すよう、力強く元気づける

SPD   :    強化人間の負担にならないよう、言葉巧みに話を聞き出す

WIZ   :    強化人間の過去を調べ、その話を聞く

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミリアリア・アーデルハイム
同僚の方達からバレッタさんのこれまでの仕事ぶりと、現在の状況について訊いてみます。
フォーティナーズについても情報が欲しい所です。看板に使用されている位ですから、有名な方でしょう。街の噂好きそうな方にお話を聞いてみましょうか。

それらの情報をまとめた上で、バレッタさん本人に悩みを訊いてみます。
もしかして、眠れないのは悪い夢を見るからでは・・・。
身近な人に話しにくい事でも、関わりない他人にならば話し易い場合もありますし、心配事なども話しているうちに解決法に辿り着く場合もありますよ。
UC【生まれながらの光】浄化の祈り

バレッタさんのお話を否定せず、傾聴しましょう。



「あー、アーデルハイムのとこの子か! 大きくなったな!」
 バレッタの働く基地に入ったミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)が自己紹介をすると両親を知る年配のメカニック達がわらわらと集まってきた。それにつられて何事かと若手も集まってくる。
 これだけいれば聞きたい情報も聞けるだろう。
「最近、レッドポインターさんの仕事振りはいかがなんですか?」
「んー? 特に変わりねえはずだぜ。何かミスやらかしたこともねぇし、例のハンバーガーのとことも契約更新したはずだし」
「強いて言うなら最近厚化粧になったくらいか。新しい彼氏の趣味なのか知らんが」
「いやあれ、クマ隠しだろ? 近くでじっと見てたら分かるぜ」
 どうやらバレッタ自身大きな変化は見せてないらしい。それならば彼女が最近気にかけているらしいヒーローについて聞くべきだろう。
「でしたら今度はフォーティナーズさんのことについて……」
「あー、『どこにいるか分からない49′sよりすぐそばのフォーティナーズ!』か」
「やっぱ猟兵ならデビューまでの経緯は気になるわな」
 故郷コロラド州に広がる山脈の通称名をそのままヒーローネームとして用いている彼は、そんな挑戦的なキャッチフレーズを使いながらもきっちりと戦績を上げているという。
 そんな彼は美術館への襲撃を行なっていたヴィランの一味だったが、猟兵に引っ捕らえられて改心した過去があるという。
「やっぱ元ヴィランだった、ってんで風当たりは強いが……本人もそれが分かってるからか必死なんよな。その懸命さを買って、最近スポンサーさんがついてくれた感じだ」
「私のことで何盛り上がってるの?」
「お、一歩遅かったな。お前の話題はもう終わったぞ」
 メモ帳から顔を上げると、そこには長い銀髪の勝ち気そうな見た目の女性……バレッタの姿があった。オフなのか仕事がないからか、プロマイドの姿とは違う私服姿である。
「あ、バレッタさん! 初めましてミリアリア・アーデルハイムと言います。今日はバレッタさんとお話ししたいなと思って、こちらに伺わせていただきました」
 周囲の人に気付かれないよう、微弱な聖なる光を発しながらミリアリアはお辞儀をして早速本題に入る。
「最近悩んでらっしゃることがあると聞きまして。もしかして、眠れないのは悪い夢とかを見るからでは……」
「夢、ねぇ。私寝付きは良い方でね。夢はあまり見ないのよ」
 その言葉に周りの同僚達は互いの顔を見合わせる。寝付きが良いなら化粧で隠さざる負えないクマは出来ないのだ。
 すっとぼける気満々のバレッタにミリアリアはムキになりながらも話を続ける。
「身近な人に話しにくい事でも、関わりない他人にならば話し易い場合もありますし、心配事なども話しているうちに解決法に辿り着く場合もありますよ。どうか会議室とかに移ってゆっくりお話ししませんか?」
「……どうかしらね」
 バレッタは鼻で笑うと逃げるように背を向けて出て行ってしまった。その後ろ姿に同僚の男はため息をついた。
「あんな顔して心配するな、って言われる方が心配なんだがねぇ」

成功 🔵​🔵​🔴​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

「倒すべき敵、掲げるべき正義を失った時」に罹ってしまうスナーク症候群か…
人は目標や夢が見いだせなくなってしまうと凄く辛い日々を過ごす事になってしまうから…なんとか力になってあげたいな

彼女の過去の活躍について情報収集してみよう
その上で彼女の最後の活動がどうであったのか、それを知りたい所だ
その辺りがスナーク症候群発症のきっかけになってるんじゃないかな、と思うんだけど

情報を集めたら彼女に実際に会ってみよう
ズバッと聞くんじゃなくて彼女の心に寄り添う形で少しでも気持ちを軽減してあげたい所だ
そういった【心配り】や【優しさ】は自分なりには持ち合わせているとは思うから
相手を気遣う気持ちを忘れず対応



「『倒すべき敵、掲げるべき正義を失った時』に罹ってしまうスナーク症候群、か……」
 頼んだ紅茶を飲みながら、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)はマウスのホイールを回していた。
「人は目標や夢が見いだせなくなってしまうと凄く辛い日々を過ごす事になってしまうから……なんとか力になってあげたいな」
 目の前のモニターにはバレッタが活動を始めてから現在に至るまでの実績がこと細かく記されている。
 それによると彼女の実績はいわゆる食い逃げや痴漢だとかの軽犯罪者の確保が多く、ド派手な劇場型ヴィランに対する戦果は少なかった。
 確かに「狙った相手を倒して動けなくさせる」という彼女の能力はすぐに逃げ出そうとする者達には効果抜群だが、逃げず辿り着くまでに多くの困難がある相手には不向きであるから仕方ないだろう。
 だがその戦績を表すとすれば間違いなく「縁の下の力持ち」といったところで、巨悪も小悪党も取り逃さない彼女を応援、出資している企業はかなり多かった。
 一方でもう一つ特徴的なのは、彼女が捕まえた相手の多くが釈放後、同じような罪状で捕まっていることだろう。彼女自身が再び捕まえたケースがあれば他のヒーローが捕まえていることもある。最後の戦果もつい数日前の食い逃げ常習犯、しかもバレッタだけでも4回目の逮捕ときた。
 ただ少なくとも彼女が金のないごろつきを雇って悪事を働かせ、自作自演で評価を伸ばしていることは無さそうであった。
「バレッタさんに会いたくてわざとやってる……ってのはないな。懲役期間を抜いても2年前じゃ」
 特定の人物に会いたいがためにわざと何かを起こす人がいるのは知っているが、それにしては時が開き過ぎている。
 これらから連想される可能性は1つ。
「自分がどれだけ頑張っても無駄かもしれない、って心が折れかけている……?」
 ページが一番最後に達したところで顔を上げたひりょは慌ててカフェから飛び出した。
「こんにちは、バレッタ・ポーリーンさんですよね?」
「……ナンパはお断りよ」
「いやいやいや、ナンパじゃなくて……!」
 ズバッと聞くのではなく、彼女の心に寄り添う形で少しでも負の気持ちを軽減しようという心意気で話しかけた結果、勘違いされかけたひりょは胡散臭そうな目で見てくるバレッタの前で勢い良く首を横に振る。
「少しだけでも困っていることがあるなら打ち明けて欲しいな、と思って。ダメ、ですか?」
「……猟兵さんの手を煩わせるようなことじゃないわ」
 焦っても、相手を気遣う気持ちは忘れず対応するひりょにバレッタの目から疑いの気は晴れたが、それでもバレッタの心を温かな光が溶かし切るにはまだ遠く。
 無理矢理捕まえることは出来なかったひりょは、少しだけ疲れているように見える背中を見送るしか無かった。
「……強い方なんだな」
 でもいくら強くても一度折れてしまったら戻ることは難しい。まだ取り返しがつくことを祈りながら、ひりょはどこかへと連絡を入れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・シフファート
私が助演女優を飾るダークポイントをラスボスとした映画の広告を見上げている所に接触する

はじめましてかしら
そう言って貴族令嬢としても超一級の仕草でカーテシーを含めた礼儀をバレッタに
見上げていた映画の話題等でバレッタが身を引かないよう見極めて話を降っていき、アースクライシスを材料として切り込んでいく

…私が猟兵になったのはアースクライシスの途中から
初めて交戦した幹部級オブリビオンのダークポイントとの戦いは流石に恐れがあったわ
そう呟いてアースクライシスにて思った事を語る

あの戦いはヒーロー達がいたからクライング・ジェネシスの元に辿り着けたんだと信じている
その事に、感謝しているのよ
と言って励ますわ



 翌日、とある商業施設を訪れていたバレッタは指定の時間になるのを待ちながら、映画館の看板を仰ぎ見ていた。
「バレッタ・ポーリーンさん?」
 声がした方を向けば、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)が貴族令嬢としても超一級の仕草でカーテシーを含めた礼をしていた。
「はじめまして、かしら。隣に座っても?」
「ええ……今日、イベントの予定は無かったと思うけど?」
 バレッタがそう言うのにも訳があり、この映画館にはシャルロットが助演を務める映画のポスターが一番目立つ場所に貼られていた。
「映画、好きなのかしら?」
「家で見るのは。外で見ると、どうしても人目がね」
 現に、バレッタとシャルロットの姿に気付いた通行客が勝手に遠巻きで写真を撮り始めている。これも有名税だと諦めたシャルロットはその存在を頭の中から消した。
「その分だと『イェーガー・ザ・ムービー! エリア51潜入作戦!』とか『フライト トゥ ドゥームズデイ』もおうちで?」
「そうね、確かこれが3つ目だったかしら?」
 よく知ってらっしゃる、と感心しつつ、シャルロットはポスターを見上げる。
「ええ。ダークポイントとの戦いは流石に恐れとか怖さがあったわ。まだ猟兵になってから日も経っていなかったから」
「ああ、ダークポイントと戦った色んな人の証言をまとめて作られたのだったかしら」
「そう。あの戦いはヒーロー達がいたからダークポイント、ひいてはクライング・ジェネシスの元に辿り着けたんだと信じている。その事に、感謝しているのよ」
 そう言って微笑んだシャルロットの様子に、バレッタは彼女が目の前の映画の話をしているのではなく自分に対して話してかけているのだと気づいた。
「昨日といい今日といい……私程度を心配するなんて猟兵さんって案外暇なのかしら?」
 バレッタは今自分が猟書家の関わる出来事の真っ只中にいるとは気づいていない。もし知ってしまえば、より思い悩んでしまうかもしれない……いや、確実にする。
「騙す形になってごめんなさいね。昨日の2人から『普通に話すつもりで行ったら捕まえられない』って聞いてたから。映画をダシに使わせていただいたわ」
 だからこそ、今はまだ暇すぎる気紛れな猟兵を装った。こう見えても3本の映画に女優として関わっているのだ、これくらいの演技はお手の物だ。
「ひょっとしてこれ、あなたが書いた?」
 騙されたことに大きなため息をついてから、バレッタは宛名も切手も刻印も無い封筒を荷物の中から取り出す。見覚えのないそれにシャルロットの眉間には思わず皺が寄った。
「……いえ。ちょっと見せてもらっても?」
「……いいわよ?」
 訝しむバレッタをよそに、シャルロットは受け取った封筒を開き、中の書面を確認する。
 そこに書かれていた猟兵のマークと見覚えのある文体はシャルロットの危惧を解くに至ったが……代わりに別の問題が発覚した。
「ねぇ……ここは太陽の広場よ。月の広場は確か反対の建物だったと思うのだけど……」
 手紙から顔を上げたシャルロットの指摘にバレッタの顔はあっという間に真っ赤になって時計を確認し、真っ青になる。
 シャルロットは手紙を戻した封筒を差し出すと引き攣った笑みを浮かべて語りかけた。
「……案内、しましょうか?」
「だ、大丈夫だ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
行動【POW】
問題を解決せずに、ただ元気付けるだけじゃ付け焼刃の励ましにしかならないよね。
場所の連想をさせるのはリスクがあるかもしれないけど『悩みを解決するという縁が繋がった』という理由を付けて、ショッピングや食事のお誘いをしてバレッタちゃんにポジティブな気持ちで場所の心当たりの情報を引き出したいね。

得られた情報を手掛かりに、感覚共有した『忍法・繰り飯綱』を放ち【追跡】や【情報収集】で事件発生候補地周辺の情報を出来るだけ集めたいね。
犠牲者を増やさないって気持ちが先行して焦った状態で闇雲に動き回るより、慎重に動くところと大胆に動くところはしっかり判断するよう心掛けたいかな…。

アドリブ連帯OK



 その頃、月の広場の噴水前では政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)が渋い表情を浮かべながらバレッタを待ちぼうけていた。
 正々堂々な文面では恐縮されてお断りの返信が来てしまいそうだったので予告状風味にしてヴィランを装ってみたのだが……。
「……流石に昨日の今日じゃ疑われちゃったかしら」
 作戦が不発に終わったことを覚悟しつつ最寄りのカフェで何か飲み物でも買ってこようかと検討していると、息を切って走る足音が聞こえてきた。
「朱鞠さんですよね、お待たせしましたっ……!」
 準備運動もせず一気に走ってきたのだろう、バレッタは汗を拭わず、膝に手を当てて必死に息を整える。その様に朱鞠は困惑の眼差しを向けた。
「……名前、書いてなかったはずだけど」
「シャルロットさんに、教えて、もらいました……」
 何度か対面しているグリモア猟兵の顔が脳裏に思い浮かぶ。内心感謝していると、体裁を整えたバレッタは手紙の内容に踏み込んできた。
「それで、『悩みを解決するという縁が繋がった』……ってどういうことかしら?」
「どうもこうも、言葉以上の意味はないわよ」
 問題を解決せずに、ただ元気付けるだけじゃ付け焼刃の励ましにしかならない。
 今回はショッピングや食事をすることで、バレッタにポジティブな気持ちになってもらい問題の場所の心当たりの情報を引き出す心算であった。
「お金は下ろしてきたわね? 今日はヒーローを忘れて目一杯楽しんでもらうわよ!」
 そう言って朱鞠はバレッタの手を取ると服飾店が立ち並ぶ一角へと引き摺り込んでいった。
 そして高身長で細身のバレッタを有無を言わさず着せ替え人形にしていくことでこちらのペースに持ち込む。
 その合間合間に世間話の体で彼女の印象に残っていることを聞き出していった。気分が落ち込んだのを察したら次の服を矢継ぎ早に出せばいい。
 なお、事前に共有された彼女の実績から導き出された候補地にはすでに繰り飯綱を派遣してある。犠牲者を増やさない、という気持ちが先行して焦った状態で闇雲に動き回るより、慎重に動くところと大胆に動くところはしっかり判断する朱鞠らしい手だった。
「どう? 何も考えずに遊び倒した感想は?」
「考えず……というか考えさせる暇を与えませんでしたよね?」
 夕日が差し始めた頃、安過ぎず高過ぎもしないレストランのメニューを間に挟みながら2人は座っていた。
 この時間になれば、繰り飯綱達からも該当地の人通りの多さなどの情報が入ってきて候補地も絞られてきている。
「ええ、おかげで色々と本音が聞けて良かったわ」
 その言葉にバレッタの顔色が変わる。自分が何を口にしたのか覚えていない、といったところだろう。
 だが朱鞠はしっかりと覚えている。ヴィランを派手に成敗する猟兵や他ヒーローと違い、自分の活動はただのイタチごっこに過ぎないのではないか、と口走ったことを。
「遠い未来を見ろとはよく言うけど、目先のことだけに囚われるのも、時には大事かもしれないわね」
「……何か言いました?」
「いいや、何も」
 スナーク症候群を引き起こすような悩みはそんな一朝一夕で解決するような物ではない。
 今日はまだ顔合わせで留める気であった朱鞠はのらりくらりと追及を躱しながら運ばれてきた料理に舌鼓を打った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『スナーク症候群(シンドローム)』

POW   :    ブーステッド・キリング
【バールのようなもの】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    クルーエル・スパインズ
【有刺鉄線】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【自己を形成する要素】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    スナーク・リアライズ
攻撃が命中した対象に【「スナークが実在するのでは?」という疑念】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【姿の見えない「怪物スナーク」】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ネミ・ミミーニーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 レストランやバー、カジノが立ち並ぶ通りに面しているにも関わらず、人気のない裏路地。それがバレッタ・ポーリーンが最も星の数を挙げている場所である。
 ちなみにここはバレッタに限らず、多くのヒーローがお世話になっている無法地帯で、観光客は絶対に足を踏み入れるなと警告される場所でもあった。
 回収されていないゴミ袋が溢れ出そうな箱の横を、血に濡れたバールのような物を地面に擦らせながら男や女がごちゃ混ぜになったような見た目の存在がふらつきながら歩く。
 それこそ、バレッタから産まれた「スナーク症候群」。
 これまで捕まえたが、改心せずに再び同じ罪を犯した者達の特徴が寄せ集められたツギハギの存在。しかしそれらには共通している物があった。
「オナカ、ヘッタァ……」
 具現化された妄想はパーツのない顔から片言の言葉を発しながら美味しそうな匂いがする方へ進む。
 そしてその姿は猟兵だけでなくヒーローコミュニティも捉えていた。
「敵対的怪物の発生を確認、近隣のヒーローは現場に急行してください!」
 そしてそのコールを受けたヒーローの中にはバレッタの姿もあった。
シャルロット・シフファート
後で、猟書家対策の為に『猟兵の秘密結社スナーク』に関する映画でも作成しようかしら?
そう呟いて電脳精霊術を用いて光の体となり、光速の速度でスナーク症候群に一撃を加えてヒーロー達の前に参上する

しかし、スナーク症候群ね……『疾患』そのものが猟書家だなんて、猟兵もたいがいなのだけど、何でもありね
そう言って再び光速で戦場を駆け巡り、光線や光属性の魔術を行使していく
光速で動いているなら有刺鉄線を当てようがないでしょう!!
そう言って光速の速度を『突破』。特殊相対性理論に矛盾を生じさせて因果律を崩壊させ、その余波に猟書家を巻き込んで存在を抹消させていくわ



「……!?」
 バレッタを始めとするヒーロー達は怪物の見た目に思わず息を飲む。
 フランケンシュタインの怪物のように無理矢理繋ぎ合わされたわけでもなく、一切の矛盾がなく、その形で正しいはずなのに醜悪だと感じる。
 そのショックから行動が遅れてしまったヒーロー達に向けて、怪物は壁に張り巡らされた有刺鉄線を剥ぎ取るとそのまま叩きつけようとしてきた。
『過ぎたる魔術と科学、即ち叡智と技術はやがて魔の法の域に到達する。其れは因果を跳躍して理を紡ぐ超人の御業なり』
 しかしその鉄線は間に割って入ってきた光源に飲まれて消え失せる。
 光速の速度を『突破』したシャルロットによって生じた特殊相対性理論への矛盾で崩壊した因果律に巻き込まれ、消失させられたのである。
「こいつの前で怯んじゃうなんてね……。初見だろうから仕方ない面もあるけど、後で猟書家対策の為に『猟兵の秘密結社スナーク』に関する映画でも作成しようかしら?」
 そう言って微笑んだシャルロットの体は直視できないほどの光に包まれて……いや、光そのものと化していた。
 ヒーロー達は突然現れたシャルロットに潰されそうになった目を守るべく慌てて覆い隠す。対して怪物は効いていないのか、そもそも目がないのか平然とシャルロットの方をじっと見つめていた。
「しかし、スナーク症候群ね……『疾患』そのものが猟書家だなんて、猟兵もたいがいなのだけど、何でもありね」
 くるくると投げ縄のように鉄線を回す怪物に向け、シャルロットは呼吸を整えた後に光速の速さで体当たりを仕掛ける。
 それを正面から食らった怪物は鉄線と同じように消滅するはずだったが……地面を滑りながら振り返ったシャルロットの視界にはまだ怪物の姿はあった。
 光になろうとシャルロットの体はそこにあり、もしガラスや水の壁を通ろうとすれば屈折してしまい真っ直ぐ進むことは出来ない。
 しかし怪物の体をすり抜けたはずのシャルロットは「何の衝撃も受けないまま直進」してしまった。
「……まさか、ここには存在していないとでも言いたいのかしら?」
 幻影や身代わりの類を予測して眉間に皺を寄せたシャルロットは、目や口が無いにも関わらず、怪物がニンマリと笑い出したかのような錯覚を受けた。
 だがその手元から振り回されていた有刺鉄線の姿は消えている。
「……ここを管理している人には悪いけど猟書家からの災禍を回避するためにちょっとだけ涙を飲んでもらいましょう!」
 怪物は無かもしれないが、その武器を無から作り出すことは出来ずその辺から引き剥がしている。ならばその辺から武器を消す必要がある。
 そう方向を転換したシャルロットは光となったことによる身軽さを生かしてこの付近にある、主に防犯用や予備として設置されていた有刺鉄線やパイプ管などの武器に転用されそうな品々をまとめて分解していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
オブリビオンの術中で偶発的に生を受けた者に咎を問うのか?という悩みはあるけど…今止めないと世界が手詰まりになっちゃうからね。
私自身が咎を負う覚悟を決めて終幕させてあげないとね…。
彼女が戦禍をもたらすトリガーになる前に速やかに討たせて貰うよ…だって、狼狽えて迷っている時間が勿体ないじゃない。

戦闘【SPD】
『忍法・狐龍変化身』を使用して真の姿の足部分を再現して、仮初めだけど厄介な攻撃の回避に対して特化した強化状態で迎え撃つよ。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いシンドロームちゃんの体に鎖を絡めつつ【傷口をえぐる】で絞め潰すダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



 オブリビオンの術中で偶発的に生を受けた、世界に悪影響をもたらす者にも咎を問うべきか?
 これは恐らく、あらゆる猟兵に問いかけても明確な答えの出ない難問であろう。
 そんな悩みを抱えながら、朱鞠は自らの脚に青い狐火を纏わせていた。
「私自身が咎を負う覚悟を決めて終幕させてあげないとね……」
 もし彼とも彼女とも形容し難いこの存在がUDC-Pのように対話が可能で、条件によってはその力をコントロールまたは無力化することが出来るのであれば共存の道を選び、目指そうとする者の割合が多くなるかもしれない。
 しかし目の前にあるのはヒーローの記憶の残滓と欲望を無理矢理ジグソーパズルのように嵌め込み合わせたただの怪物でしかない。
 ならば、選ぶべき択は一つだけ。
『抑えし我が狐龍の力…制御拘束術第壱式にて…強制解放!』
 ヒーロー達のようにその異様な姿に気圧され、狼狽えて迷っている時間は勿体ない。今止めなければ、ヒーローズアースは手詰まりになる。
 怪物が戦禍をもたらすトリガーになる前に速やかに討つべく朱鞠は走り出した。
 蔓薔薇の様に棘が付いた拷問用の鎖を素早く取り出し、素手の怪物に幾重にも巻きつける。そしてそのまま強引に絞め潰しにかかる。
 しかししっかりと巻きついている感覚はあっても、肉や骨が潰れる感覚が一向に手元へやって来ない。
 まるで水を相手にしているかのような異様な感覚に朱鞠の眉間に皺が浮かんでくるとほぼ同時に怪物は自らの手が傷つくことを厭わずに鎖に掴みかかり、細い腕からは想像できないほどの力を発揮して強引に引きちぎった。
「イヤダ、ツカマリタクナイ」
「んなっ……!?」
 強化された脚の力で踏ん張ることで怪物の力に引き摺り込まれて倒されるまでには至らなかったが、怯んだ朱鞠に向かって怪物は両手に鎖の残骸を握りしめながらこちらに走ってくる。
「ハラヘッタ、オナカヘッタ」
「私の鎖を、拳鍔みたいに使うんじゃないよ!」
 棘が刺さっていた痕を全身に残しながらも一切効いていない様子の怪物はやたらめったらに振り回すが、無理矢理千切った故にその攻撃範囲は狭くただでさえ速い上に強化までしている朱鞠を捉えることは出来なかった。
「オカネ、ヨコセヨー」
 そう言いながら立ち止まった怪物は何も無い顔に鎖ごと腕を突っ込む。そうして抜かれた手の中には鎖は影も形も残っていなかった。
「食い逃げ犯の怪物らしく、顔全体が口ってオチかな?」
 朱鞠はボロボロになった鎖に替えて指の間に大量の手裏剣を挟み、構える。
「朱鞠さん、こちらへ!」
 そんな時、一進一退どころか何も進捗がない戦闘に一石を投じるように大人が3〜4人は余裕で入れそうなほど巨大なゴミ箱が飛んできて怪物を潰した。
 飛んで来た方を見れば、先程のシャルロットの光で戦闘不能になっていたヒーロー達が全身を使ってこちらに来る様に招いている。
 このままやり合っていても分があるのはあちら側。背中越しに聞こえる不気味な咀嚼音に後ろ髪を引かれつつも、朱鞠はヒーロー達の元へ駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミリアリア・アーデルハイム
彼らを一般市民に近づかせる訳には行きません!
えーと、お腹空いているんですか・・・

では、UCで「鶏と蓮根のつくね揚げバーガー 油淋鶏ソース」をできるだけ沢山作成
(UC効果繁殖選択、満腹美味属性、浄化神罰諸々を込めた呪殺誘導弾として)
屏氷万里鏡で防御しつつ箒で飛び、美味しい匂いで戦いやすい場所へ敵を誘導

バーガーを解放、誘導弾なので口に突っ込みますよ
味方の猟兵さんは絶対食べないで下さいね!

バレッタさん、彼らが居場所を作り、人の役に立ってご飯を食べていく方法を教えてくれるお手本になる方、例えばフォーティナーズさんと・・・出直しサポート組織を作るのはどうでしょう?及ばずながら私もお手伝いしますよ!



「バレッタさん!」
 凄まじい光に眩んだ視界に深緑色の人間が近づいてくる。その声にバレッタは聞き覚えがあった。
「確か、引退したヒーローの娘さん、だったか……?」
「はい、ミリアリア・アーデルハイムです!」
 改めて自己紹介をしたミリアリアはバレッタの両手をがっしり掴むと顔をギリギリまで近づけて強い口調で話しかけた。
「バレッタさん、あなたがいくら捕まえても改心できなかった彼らの居場所を作り、人の役に立ってご飯を食べていく方法を教えてくれるお手本になる方……例えばフォーティナーズさんみたいなヴィランから転向された方とか、依存症を克服した経験を伝える団体の方とかと、出直しサポート組織を作るのはどうでしょう?」
「……藪から棒になんだい」
 突然の申し出にバレッタは目を白黒させる。しかしあの怪物を弱体化させるにはバレッタの脳内に渦巻く悩みを解決させる以外の方法はないと、一度逃げられているミリアリアは攻勢を緩めなかった。
「及ばずながら私もお手伝いしますよ! 何ならもう調べてきました!」
 閃光の衝撃が弱まり、戻ってきた視界はミリアリアが取り出した大量の文字と写真に埋め尽くされていた。
「わ、分かった分かった! けど今はな……!」
「ハラヘッタ、オナカヘッタ」
 朱鞠と戦っている怪物が口走る。その言葉を聞いた2人は思わず怪物の方を見た後に互いの顔を見合わせた。
「……えーと、お腹空いているんですか」
「……かもしれない」
「オカネ、ヨコセヨー」
 そう言って朱鞠からぶんどった鎖を顔に運んで貪ったのを見て、疑惑は確信へと変わる。ミリアリアは持ち前の創造力を駆使して無から有を作り出し、一つの料理を形成した。
「『鶏と蓮根のつくね揚げバーガー油淋鶏ソース』の出来上がりです!」
 神の力で繁殖する力を持ったバーガーは手を動かさずともひとりでに増えていく。それを見つけたあるヒーローは異様な存在にも関わらず、美味しそうな匂いに釣られてふと呟いた。
「お、美味そうだな。一個食っても……」
「ダメです! 絶対に食べないでください!」
「えっ」
 ミリアリアが止めるのも無理は無い。このバーガーは対猟書家料理として、満腹美味属性に紛れて浄化神罰呪殺諸々を込めた超危険バーガーなのだから。
「朱鞠さん、こちらへ!」
 バレッタの指示を受けたヒーローによって投じられたゴミ箱によって朱鞠と怪物の間に壁が出来る。
 そこから発せられる残飯の臭いに反応して怪物が食事を始め、朱鞠が撤退して来たのと入れ替わりでミリアリアは屏氷万里鏡を展開しつつ、箒に乗って突っ込んだ。
「さあ、こっちです!」
 箒の後部に載せられたバーガーから発せられる美味しそうな匂いを嗅ぎつけた怪物の手から半分ほど齧られたリンゴの芯が落ちる。
 こちらに注目が来たのを確信したミリアリアはバーガーに込めた追尾弾の力を覚醒させ、怪物の顔面に撃ち出した。
 まるでブラックホールのようにバーガーを吸い込みながら、怪物はフラフラとミリアリアの後を追い出す。ミリアリアは上手く誘い出せたことに安堵しつつ、戦い易い広い場所へ飛んでいった。
 忍んだ爆弾が炸裂するのはもう少し後の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫(サポート)
飲酒・喫煙・性的描写はNGでお願いします。

●兵庫
『○○さんは□□と仰ってましたねー。せんせー』
『強襲兵の皆さん!』
『アンタなんかに負けるかよ!』

●せんせー
『アタシは○○と思うけど黒影はどう思う?』

紹介画像のせんせーはUCで召喚した抜け殻なので基本、兵庫一人で行動します。
誰にでも礼儀正しい元気で素直な子です。
会話と賑やかな場所が好きです。
人を傷つける奴は見た目関係なく怒ります。
「自分か虫を囮に使い罠を仕掛けて攻撃する」戦法を得意とします。
精神攻撃はせんせーが脳を弄るので効きません。
誰かを犠牲することが不可避なら、せんせーが意識を乗っ取って行動します。
よく使うアイテムは「皇糸虫」です。



 普段ならば遅めの食事やカジノから帰る人波があるはずの広場は、猟兵やヒーローコミュニティの手による避難誘導によって閑散としている。
 その中央に陣取っていた黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)はバーガーに釣られてこちらに向かってくる怪物を眉間に皺を寄せながらしっかり見定めていた。
 すでに相対した猟兵達から相手に物理も魔法もあまり効かなかったという報告を受けている。何か相手の攻撃を無効化するカラクリがあるのか、それとも本体が別に存在するのか。実際に戦ってみないと分からないことではあるものの、兵庫はふと思いついた候補を呟いていた。
「もし別に存在するとしたら、件のバレッタさん? の脳内とか、ですかね? せんせー」
 頭の内にいる先生に意見を求めるが、返ってくるのは唸り声のみ。長く生きてきた先生にだって未知の存在はいっぱいあるのだ。
「とりあえずまずは、腹から狙ってみましょうか!」
「ハラヘッター」
 あれだけのバーガーを食べて、出してないのだから溜め込む部位はあるのだろうと兵庫は何百個ものバーガーを食べてもなお次を望む怪物へ一気に距離を詰めてから警棒を振り切った。
 警棒は避けようともしなかった怪物の体にジワジワと沈み込んでいく。しかし軽そうに見える怪物の体は一切飛ばず、大して効いていないのか怪物を平然と警棒を手を伸ばしてきた。
 そして軽く触れただけで数十トンの重みにも耐えれるはずの警棒がミシミシと嫌な音を立て始めた。
 その異音に息を呑んだ兵庫は咄嗟に怪物を蹴り飛ばして距離を取ろうとする。しかしそうする前に明後日の方向から放たれた何かによって吹っ飛ばされた。
「ぐあっ……」
 派手に地面を転がされた兵庫の体はグラフィティアートが描かれた壁にぶつかってようやく止まる。するとその前にある街灯によって伸びた影から大量に、可憐で儚げに舞う蝶が飛び出した。
『支援兵の皆さん!ご足労頂きありがとうございます!』
 その姿を見た兵庫は弾かれたかのように起き上がる。対して怪物は突然現れた蝶に見惚れたのか、その場で立ち止まった。
 そこへ目掛けるように蝶の羽からひらひらと舞い落ちた鱗粉は被った怪物の体を仄かに輝かせる。さらに鱗粉はそれに止まらず兵庫と怪物の間に、透明で巨大な何かがいることを浮き彫りにした。
「まさか、あれが怪物の本体……!?」
 猟兵達と怪物との一部始終を見ていたヒーローからそんな声が漏れる。
 光の膜を被って実体化したような新たな存在は声も音も発さずじっと空を見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

バレッタさんと連携
彼女の能力は形勢逆転に繋げる一手になるだろう
無理はさせたくないけれど、今回の事でもう一度自信を取り戻してくれたら、嬉しい限りなんだが…

敵のスナーク・リアライズの初手の一撃は、当たるとその後の追加攻撃が厳しいので、回避を試みる
万一バレッタさんが狙われるような事があれば第一優先で【かばう】

初手を当てられて追加攻撃が来る場合、自身の周囲へ【結界術】で結界を生成
結界に触れた怪物スナークに対しUC『破邪顕正』を発動
怪物スナークへ行動不能を付与試みる

怪物スナークを封じたらその隙に敵へバレッタさんと共に肉薄
能力を使ってもらい身動きを封した所を【破魔】付与の携帯した刀で一閃



 蝶の姿が消え、興味の対象を失った怪物達はそれぞれ動き出そうとしたが、その頭部に赤い点が付くと同時に地面へ倒れ込んだ。 
「はやく! 体勢を立て直すか逃げて!」
 これこそ、あらゆる悪人も釘付けにする『レッドポインター』の真骨頂。しかし光の鱗粉を失ったことでスナークが姿を隠すと標的を見失ったポインターも消失してしまった。
「あっ!」
 再び自由となったスナークは喜び勇むように兵庫へと襲いかかっているだろう。だがその間にひりょが立ち塞がった。
 先程浮かび上がった体の特徴からスナークの攻撃は自らの肉体を用いた近距離の物に限られる。ならば攻撃対象の近くにいれば間違いなくこちらからの干渉も当たると予測立てたひりょは護符を翳し、叫んだ。
『幾多の精霊よ、かの者に裁きを……破邪顕正!』
 姿は見えず触れず音も聞こえないが、兵庫の体が一向に吹っ飛ぶ気配もない。
 スナークの無力化に成功したことを確信したひりょは足元に護符を貼りつけると杖の中に仕込んだ刀を抜きながら、倒れ伏したままの怪物にゆっくりと歩み寄った。
「あなたを祓っても、あれがいる限り次のあなたが生み出させることは分かっています。……ですが、どれだけいたちごっこになろうと俺達は出てくる度から叩き潰しますから」
 そう宣言し、怪物の背中に刀を挿し込む。
 刀身にびっしり刻まれた破魔の文字は体内のバーガーと反応し、凄まじいエネルギーを発生させ、怪物の体をもがき苦しむ間もなく一瞬で霧散させた。
 同時に護符から発せられていた結界も消え、スナークがこの場から消えたことを示す。するとコミュニティからの連絡が入ってきた。
「敵対的怪物の消失を確認いたしました、皆様お疲れ様でした!」
 その言葉にヒーロー達は緊張の糸を切って体を伸ばし、自宅や遊び先へ戻っていく。バレッタもその内の1人であったが、広場から出る前にひりょに呼び止められた。
「あ、バレッタさん! 足止めしてくれてありがとうございました。おかげで各個撃破することが出来ました」
「……ヒーローとして同じ目的の味方の援護をするのは当然のことよ」
「でも、あなたじゃなきゃ出来なかった」
 わざわざ感謝されるようなことはしてないとバレッタは肩を竦める。だがそのまま背を向ける前にひりょが口を挟んだ。
「どれだけ頑張っても無駄なんてことはないです、あなたがいなければもっと傷ついた存在がいたかもしれない。だから……」
「クヨクヨ悩んでないで目の前のことに集中しろ、って言いたいの?」
「……ソウデス」
 睨まれたひりょは縮こまりながら肯定する。するとバレッタはわざとらしく大きくため息を吐くと腕を組んだ。
「こういう仕事をやっている以上、いたちごっこになるのは覚悟の上! 私は私のやれることをやる! それがレッドポインターとしての意地よ!」
 そう一息に言い放ち、バレッタは今度こそ広場を出て行く。その顔には吹っ切れたかのようなサバサバとした笑顔が自然と浮かんでいた。
「……全然元気そうじゃないですか。誰ですか最近調子を崩しているとか」
 一方、取り残されたひりょは乾いた笑みを浮かべながらこの場にはいない人狼への文句を吐露するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月16日


挿絵イラスト