Raiders Quest?
●
『依頼受注済』
依頼人:『火炎大王』代理人。
内容 :大型戦車の完全破壊。
報酬 :ガソリン一年分、及び敵アジトへの一番槍の権利。
再三の警告にも拘らず『軍人宰相』の主力戦車が、我々の直轄地を通過した。
手段は問わない。人間狩りに出た時を狙い、破壊しろ。
いずれアジトも見つけ出す。捕虜ごと消し炭だ。
●
「これは『ヴォーテックス・シティ』の酒場に貼り出されていた依頼書よ」
煙草の匂いが染みついた一枚の貼り紙を、グリモアベースに集まった猟兵達とアメリア・バーナード(元穴掘り・f14050)が囲んでいた。
レイダー達の住まう超巨大都市、ヴォーテックス・シティ。そこを牛耳る「ヴォーテックス一族」はアポカリプスヘルの一強勢力だ。有力者達は当然のようにシティの外に直轄地を構え、そこで我が物顔をしている。
「でも、彼等も一枚岩じゃないみたい。直轄地でレイダー同士の抗争が絶えないそうよ」
一族内での発言力を増すために、醜い縄張り争いを繰り広げているという。悪の権化であるレイダー達が支配するからには当然の結果なのかも知れないが、何とも剣呑な話だ。
「それで、配下のレイダー達が通い詰める酒場にも、依頼が貼り出されてるって訳」
ただし今回の依頼を受けたのはレイダーでは無く、シティに潜入していた一人の猟兵だ。
依頼の内容を要約すれば……「対立している別のヴォーテックス一族の縄張りを荒らして来い」というものらしい。
「『火炎大王』と『軍人宰相』は、ヴォーテックス一族の有力者の呼び名ね」
火炎大王。多数の武装バギーと要塞を所有する、デスファイア・ヴォーテックス。
軍人宰相。複数の戦車軍団を所有する、ロンメル・ヴォーテックス。
「まぁ……今はどちらも気にしなくていいわ」
大事なのは「拠点(ベース)」への襲撃……少年兵狩りを未然に防げる事。
そして、猟兵が依頼を受けた事で、依頼主から敵の情報を手に入れる事が出来たという事。
詰まる所、いつものオブリビオン退治という訳だ。
「拠点は……街の廃墟ね。ビルがたくさん建ってたわ」
今まさに『暴走戦車』が、孤児達の潜伏する区画目指して進んでいる。
「暴走戦車の通って来た道は広いけど、遮蔽物になるビルの面積の方が圧倒的に大きいわ。市街戦ね」
依頼主の情報によると、オブリビオン化により独自の知性を得た暴走戦車は、無尽蔵の燃料と弾薬で、動く者全てを吹き飛ばそうとするようだ。
「暴走戦車には敵のアジトへの地図も積まれてるみたい。アジトは二度と使えないようにしておきたいけど、軍人宰相は善良な子供達を少年兵にしているそうだから、彼等が囚われてたら不味いわね……」
探索の後にガードマンを排除。その後、脱出と同時に爆破という形になるだろうか。
今回の抗争で軍人宰相側が勝てば、たくさんの子供達が少年兵にされてしまう。
だが火炎大王側が勝てば、子供達はその場で焼き殺されるか労働力にされるかのどちらかだ。
「いずれにせよ、見過ごす事は出来ないわ」
レイダー達の言う通りに動くのは癪ではあるが、依頼を受けるメリットが大きいのも事実。
「敢えて乗ってやりましょう。爆弾の用意は私もやっておくわ。レイダー退治、どうかよろしくね」
白妙
白妙と申します。
今回の舞台はアポカリプスヘル。
レイダー側の依頼に従い『軍人宰相』の戦車を撃破。
その後、『火炎大王』の動きを待たず、アジトまで破壊してしまうのが目的です。
●第1章【ボス戦】
依頼のターゲットである『暴走戦車』との戦いです。
敵が少年兵狩りを開始する前に割り込めます。
以下、依頼主からの情報です。
・『暴走戦車』は無人です。
・『暴走戦車』は基本的に動くもの全てを砲撃します。ただし捕虜候補の孤児達は傷付けません。
・『暴走戦車』は通常の戦車の弱点を概ね受け継いでいます。(装甲が厚いなど、一撃死を免れる程度には対策されています)
・『暴走戦車』は最硬部に秘密のアジトへの地図を隠し持っています。
●第2章【冒険】
地図の情報に従い、アジトへと潜入。探索します。
●第3章【集団戦】
守衛である有人機との戦闘です。
近くに囚われている少年少女を巻き込まないように戦いましょう。
●補足
3章の戦闘後、アジトは爆薬などで破壊してやりましょう。
今回のような、レイダー側の依頼で破壊したアジトの数が、後の戦いに影響を及ぼすかも知れません。
●プレイング受付開始について
全章、断章投下後となります。
何かあれば依頼タグやマスターページに記載致します。宜しくお願い致します。
第1章 ボス戦
『暴走戦車』
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POW : オーバーキャノン
自身の【戦車砲のうち1本】を代償に、【ビルを消し飛ばす程の爆発力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって戦車砲のうち1本を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 全門発射
【何本もの戦車砲から砲弾の連射】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : セメント弾
【主砲】から【速乾性セメントを詰めた特殊砲弾】を放ち、【空中で炸裂した砲弾から降り注ぐセメント】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
砲声が街を揺らせば、無人の建物が倒れ、粉塵と黒煙が上がる。
やがて煙を割って現れたのは――戦車のような巨大兵器だった。
キャタピラの軋む音を響かせ、周囲を見回すように6つの砲塔を動かすその姿は、絶望そのもの。
ゆっくりと、ゆっくりと。瓦礫に溢れた街を、圧倒的な質量で踏み躙りながら、我が物顔で突き進む。
やがて街の深部で停止した鋼の要塞は、全ての砲塔をたった一つのビルに向ける。
だが、そこに割って入ったのは――。
ノエル・カンナビス
(エイストラ搭乗、キャリアは待機)
依頼内容は戦車の破壊、「という依頼を遂行しろ」ですか。
同時に複数の依頼人からの仕事は請けません。
裏切る前提で依頼を請けることも出来ません。
今回の依頼主はあくまでも『火炎大王』代理人であって、
猟兵組織はその仲介者と見なします。
結果は同じ事かも知れませんが。筋は通させて貰います。
その後の仕事は別口です。宜しいですか?
ともあれ。
高空を飛べるというのは楽でいいですね。
真上から撃ち下ろしましょう。
誘導弾/一斉発射のミサイル群で目潰しを掛けたのち、
鎧無視攻撃/キャノンと貫通攻撃/ライフルの対地攻撃を
行います。
砲弾の連射って……そんな大きいのが当たるほど鈍くありませんよ。
「依頼内容は戦車の破壊、『という依頼を遂行しろ』ですか」
話を聞いたノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は、念押しするように、そう口に出した。
自分から猟兵の集団に属した積もりが無いノエルにとって、依頼を持ちかける人物は、誰であろうと等しく依頼主である。
「同時に複数の依頼人からの仕事は請けません。依頼主はあくまでも『火炎大王』代理人であって、猟兵組織はその仲介者と見なします」
依頼は依頼。
仮に複数のクライアントのうち一人がオブリビオンであったとしても、後々彼を裏切らざるを得ない事態に陥ることが確実視されるのならば、その依頼、一傭兵として請けかねる。
「結果は同じ事かも知れませんが。筋は通させて貰います」
背筋を伸ばし、淡々とノエルは続ける。
「その後の仕事は別口です。宜しいですか?」
碧色の瞳は、はっきりとした意志を示していた。
「ともあれ」
数分後、ノエルはアポカリプスヘルの空に居た。
汎用型のキャバリア エイストラに搭乗し、ビルの間を飛翔していた。
目の前の障害物が消えたタイミングで、機体はブースターの唸りと共に加速。ノエルの周囲では廃墟と化したビルが次々現れては消えていく。
「高空を飛べるというのは楽でいいですね」
暴走衛星の脅威が存在しない世界では、キャバリアは思う存分空を翔ける事が出来る。
表情こそ変わらないが、ノエルの様子はどこか楽しげだ。
だがその時、コックピットのレーダーが反応を示す。
「そこにいますね」
キャバリアを大通りの真上で滞空させたノエルの視界に、地上で動く褐色の点が飛び込む。『暴走戦車』だ。
「……」
操縦桿を倒すまでも無く、ノエルはデータリンクシステムを通じて指令を送る。するとたちまち箱型をした発射機 RS-Sランチボックスの蓋が音を立てて開き、現れた砲門から大量の高速ミサイルが撃ち出された。
重力を乗せたミサイル群はひゅるひゅると惑わすような軌道を描きつつも暴走戦車へと収束し――着弾。
もうもうと上がる土煙を盾に、すぐさまノエルは長大なプラズマライフルを取り出しつつも、肩の粒子ビーム砲を咆哮させる。
新たに上がる爆炎にライフルの照準を合わせ――引き金に機体の指をかけた。
だがそんなノエルの動作に割り込むように、地表を覆う土色の煙をハリネズミの如く突き破り、灰色の砲煙が幾つも生える。一拍遅れて響いて来るのは――遠く離れた機体すらも揺るがす砲声だった。
怒涛の全門斉射。だがミサイルと煙で視界を潰されたタンクの砲撃は照準が定まらない。
「そんなのが当たるほど――」
一足先にノエルは回避へと意識を切り替えていた。
迫る砲弾のうち最寄りの数発だけに注意を絞り、空中回避。
その社交ダンスを思わせるような動きには、呼吸をずらすような変則性が加わっている。
ノエルの瞬時の予測とエイストラの高出力、そしてバイブロジェットと標準ブースターの二つの推力が生み出す、独特の回避軌道であった。
砲声が止むや、急ぎキャバリアのライフルを担ぎ直す。
既に機体からの電力供給が完了しているのを確かめると同時、砲煙の中心目がけて引き金を引いた。
たちまち銃口から撃ち下ろされたのは、先程よりも巨大な粒子ビーム。着弾と共に土煙から数枚の鉄板が跳ね飛ぶのをノエルは見た。
やがて煙を割って敵がその威容を晒す。見るからに頑丈そうな装甲の上部には、ライフルのものと思われる巨大なへこみが出来ていた。
「まだまだこれからです」
鉄の要塞を追い、ノエルとエイストラは、戦火燻る空を翔ける。
成功
🔵🔵🔴
岩社・サラ
敵同士で潰し合いですか。なんにせよ敵の拠点を破壊するまたとない機会ですね。
「状況了解。これより対戦車戦闘開始します」
敵は装甲の厚い戦車ということですし、相応の火力を発揮できる対戦車用のミサイルランチャーで攻撃を行いましょう。
まずは目立たないように廃墟に隠れながら進み敵を攻撃できる位置まで移動します。
移動したらUCを発動し、破壊力を重視して攻撃します。
攻撃時はミサイルを戦車の上空に向かって放ち、誘導弾で装甲の薄い上部を攻撃する所謂トップアタックを重視します。
ミサイルを発射したら後は誘導弾が自分で目標に向かっていくので、撃ち終えたらすぐさま移動を開始し敵の攻撃を受けないようにしていきます。
レイ・オブライト
穏やかじゃあねえな
ってのは毎度のことだが。獣の争いに人間の子供を持ち出すのは違うだろう
この辺は無人か。あのメカが景気よく壊してるあたり少なくとも捕虜候補はいないと見て
ビルから飛び降りついでの『地形破壊』で進路妨害、こちらを障害と認識させ、なるたけ全力の攻撃を誘う
砲撃が行われれば【Haze】覇気+『念動力・オーラ防御』により砲弾を制御、静止させた上で殴り撃ち返す
といってもこれで壊れるちゃちな玩具だとは思っていない
本命は、煙や炎に紛れ飛び込んだ先での追撃だ。蓄積したダメージで歪みが出た箇所かハッチか覗き窓か、目についた箇所に打撃を加え『衝撃波』も込みの破壊を狙う
後がつかえてるんでな
※諸々歓迎
砲撃が建物を穿ち、砕かれた破片が爆風に舞う。その圧倒的なエネルギーの中央で、暴走戦車は前進を続けていた。
だがその近くの廃墟を伝い進む、一つの影があった。岩社・サラ(人間の戦場傭兵・f31741)だ。
(「敵同士で潰し合いですか。なんにせよ、敵の拠点を破壊するまたとない機会ですね」)
幾度もレイダー達のやり口を見ているサラにとって、今回の依頼はそれほど驚くべき内容でも無かった。
敵が一枚岩では無いならば、その綻びを利用しない手は無い。
(「……状況了解。これより対戦車戦闘、開始します」)
深呼吸一つ。サラが肩に担ぎ直したのは、対戦車ミサイルランチャー「ヘヴィランス」。目の前のオブリビオンに対しては、まさに特効兵器と言える代物だ。
とはいえサラが狙うのは一撃離脱。ランチャーにはロックオン機能が搭載されているが、確実に当てるにはもう少し距離を詰めたい。
あと十数メートル、どう近づくか。サラが思案を巡らそうとした時――敵の進路上で柱が崩れる音がした。
(「……あれは」)
時は少し戻る。
進軍する暴走戦車を間近に望める低いビルの屋上に、レイ・オブライト(steel・f25854)は立っていた。
(「穏やかじゃあねえな、ってのは毎度のことだが」)
レイダー達の同族争い。今に始まった事でも無いのだろう。だが。
(「獣の争いに人間の子供を持ち出すのは違うだろう」)
街に満ちている戦火と硝煙の匂いに、思わずレイはその目を瞬かせた。
暴走戦車はあちこちで動く鼠でも撃っているのか、辺りに不規則な砲撃を繰り返している。
だがよく見れば、レイから少し離れた一帯だけは無傷。そこに隠れている子供達にとって、この状況は恐怖そのものだろう。
「……」
タイミングを見計らい、前へ。
暴走戦車が目の前を通過しようとするタイミングで、レイはビルから跳躍。
落下の勢いを借り、練り上げた覇気を纏った渾身の蹴りを……先程まで居た建物の根元に叩き付けた。
着地から一拍置いて、暴走戦車の進路にコンクリートの柱がガラガラと崩落した。
途端に戦車が、ぎゅん、と全ての砲を土煙へと向ける。
徐々に煙が晴れていく中、真っ向から対峙したレイと鋼鉄の要塞は――互いの影を視認した瞬間にスタートを切った。
戦車は至近距離からの一斉射を。
レイは迎撃の構えを。
たちまち響く轟音。広がる炎の泉。
連続で爆ぜたのはレイでは無く――暴走戦車の方だった。
それどころかレイは姿を消していた。物理法則を無視したかのような現象を前に、暴走戦車の動きが止まる。
隙を逃さず、炎を割ってレイは肉薄。
「こっちが本命だ」
がら空きになった覗き窓に向けて凄まじいスピードの拳を撃ち込めば、叩き付けられた衝撃波が鋼鉄の車体内を幾度も反響し、暴走戦車の体力を一気に削り取る。
たまらず暴走戦車が後退の素振りを見せた、その時。
「射撃開始、目標を撃破します」
遠くの廃墟の裏手から急な発射音。同時に頭上で幾条もの白い線が暴れ始める。
それは戦闘の隙に移動を終えたサラが、ロケットランチャーから放ったミサイルであった。
ユーベルコード「マーセナリースキル『シャープシューター』」により強化されたミサイル群はバラバラに動きつつも、誘導機能によって地上の一点――暴走戦車へと収束していく。
着弾と共に二度目の大爆発が巻き起これば、数枚の鉄板が炎と共に焼け落ち、一本の砲門がゴトリと音を立てて地面に落下する。
トップアタック――正面からの撃ち合いを想定したが故に、全ての戦車が持つ構造的弱点である。
「こっちです」
今度はより近い場所から、レイへと向けたサラの声が響く。
「おう」
隠密に徹するサラの位置を掴める者はこの戦場には居ない。
炎と煙に紛れ、サラとレイは敵の射程から退避した。
後方からは怒りに駆られたかのような砲撃音が響き始めるも、それをサラは聞き流しつつ退路を辿る。
「ありがとよ」
「こちらこそ。畳みかけた方が良かったでしょうか」
「いいさ。どのみち後がつかえてる」
レイの呟き通り、これは攻勢の始まりに過ぎなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
形式上は破落戸の依頼を受けた形になるのが業腹ですが……
白いパイロットスーツに変身
身を隠しながら廃墟の隙間を縫って戦車へと忍び寄る(目立たない)
砲塔が自身とは別の方向へ向いた瞬間、ヘラクレスを召喚
天来せよ、鋼の大英雄――!
即座に乗り込み(騎乗)、砲塔がこちらを向く前に、【怪力】で砲身を捻じ曲げてへし折る(部位破壊)
折った砲身を棍棒のように戦車へと叩き付ける(重量攻撃)
戦車の上に馬乗りになり、【極鋼爆裂拳】で殴打、殴打殴打殴打殴打
殴って殴って殴り潰す
ぉおおおおおお!!
地図を発見したら奪い取るのも忘れないように
正直な所、業腹ではあった。
形式上とはいえ、破落戸からの依頼を請けるのだから。
おまけに普通の無頼漢ならばまだしも、レイダー達である。
慈悲深いシスターであるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)も、今回の依頼に対しては思う所があったに違いない。
「ですが……」
やはり、見過ごす事が出来なかった。
目の前の討つべき邪悪を、そして守るべき人々を。
廃墟の隙間から大通りを見れば、そこには敵の尖兵たる暴走戦車。
オリヴィアはその視線――否、射線を掻い潜るように廃墟の物陰を移動していた。
壁に素早く背中を張り付け、安全を確認して、伝うように次の建物へ。駆け出せば銀色の髪が翻り、廃墟の路地裏に僅かに落ちる日光を艶やかに照り返す。
その身に纏っているのは不思議と影に溶け込む純白のパイロットスーツ。体にフィットしたその服装は、オリヴィアの隠密行動の助けとなっていた。
手足を守るガントレットとグリーブもまた、所持者の意志に従うように、普段の神々しい輝きを抑えている。
戦車との距離を徐々に詰め、オリヴィアは機会の到来を待つ。
その時は意外なまでに早く訪れた。
オリヴィアの隠密に全く気付かない暴走戦車は、索敵するように砲を振り続け――とある瞬間に、全ての砲を反対方向に向り向けたのだ。
(「――今です!」)
ざ、とオリヴィアが大通りへ身を躍らせたのと同時に。
バチィ、と。辺りの魔力が爆ぜた。
戦車とオリヴィアを挟む位置に描かれるのは大掛かりな魔法陣。そこからせりあがって来るのは、巨大な存在感。
「天来せよ、鋼の大英雄――!」
オリヴィアの叫びと共に、存在感が大地を揺らして姿を現す。
それは、鋼の超人だった。
戦車よりも遥かに巨大なスーパーロボット。その名も、ヘラクレス。
オリヴィアが飛び乗るとほぼ同時、剛腕が迫る砲身の一つを受け止めれば、戦車は抵抗するように残りの砲身で殴打を繰り出してくる。
「……っ!」
それでも歯を食いしばってオリヴィアが耐えれば、彼女の戦意に感応するようにヘラクレスも砲身を締め上げ、凄まじい力を加え始める。
ギリギリ、メキメキ、と。鋼鉄の巨砲に罅が走り――遂に強度の限界を迎えた。
破裂音と同時に、圧潰。
止まらない。
激怒するかのような素振りを見せる戦車に叩き付けられたのは、根元から折り取った砲身を用いた、渾身の殴打。
その衝撃で平たい車体がバウンドし、土煙が上がる。
脱出の隙を与えず馬乗りになったヘラクレスは、剛腕を振りかぶり――刹那、豪速の拳を打ち下ろした。
「――ぉ」
殴打。
衝突音。同時に凄まじい衝撃が地形を抉り抜く。まだ終わらない。
殴打。殴打。
殴打殴打殴打殴打殴打殴打。
「――ぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!」
知らずオリヴィアは咆哮を上げていた。巨拳の驟雨が暴走戦車の車体をへこませ、装甲を破砕していく。
最早オリヴィアを止められる者はいない。いつしか金色の瞳に宿っていたのは闘志の炎。それに従い鋼の大英雄もまた、拳を振るい続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
バレッタ・カノン
【ホークと(f33658)】※初対面(呼び方:ロボ腕)
●POW
こんな玩具で子どもを拐かすとは不愉快な下衆め
あと私はお嬢ちゃんじゃない。バレッタだ
ロボ腕の潜入を支援、派手な行動で注意を引く
事前の打ち合わせ通り敵直上のビル上で待機
ロボ腕の合図で『徹甲弾』を敵の天板装甲へ【投擲】
すぐに飛び降り『PP-P1』を服用、UCの巨脚で徹甲弾の着弾点を踏み抜く【貫通攻撃】
天板が薄いのは定石だ
砲の動きを観察し得意の脚力で回避行動
『榴弾』で牽制し味方の内部工作の時間を稼ぐ
妙な声…あいつ道に迷ったのか?
一か八か、脱出孔が開くように敵の損傷個所に砲弾を投擲
合流後ロボ腕を背負い離脱
ん、寝言か?起きろ。背中に涎をつけるな
ホーク・ウィリアム
バレッタと(f11818)】※初対面(呼び方:お嬢ちゃん)
人間が相手って聞いてたのに戦車なんて聞いてないぞ
どうやってこんなやつ倒すんだよ
まあいい早いとこ片付けて先に進もう
うん!?子供が一緒に戦っているじゃないか!しかも強そうだ
よしあのお嬢ちゃんと協力して奴を倒そう
●戦闘方針
戦車を止めるには中の操縦室に入るしかない
入れそうな所を見つけて機械の腕の【鍵開け】機能を使って戦車内に侵入する
そのあと地図を探すぜ
入ったはいいが外に出る方法がわからなくなってしまいパニックになっちまった
内部から破壊できそうな所を探してユーべルコード【秘められし力】を発動し脱出を試しみる、この技の後は寝言を言いながら寝てしまう
車体を軋ませ、履帯を回し。鋼鉄の要塞が大通りを闊歩する。
その威容をホーク・ウィリアム(サイボーグ空賊団・f33658)は物陰から、信じられないと言った表情で見上げていた。
「あんなのどうやって倒すんだよ……」
それもその筈。ホークは相手が人間だと聞いていたのだから。
一見、享楽的な出で立ちのホークだが、その隙は意外な程に少ない。弱点だって強いて挙げるなら大時化の時の船酔いとトマトぐらいのものだ。
相手が人間ならば、問題無く相手取れるだけの実力はあるのだ。そう、相手が人間ならば。
なのに、転送された途端に目の前に現れた相手は、『これ』だった。
「……ま、まあいい早いとこ片付けて先に進もう」
請けてしまったからには仕方ない。
素早い切り替えを見せ、ホークは戦車の方へと駆け出す。
頼みの綱は、待機している筈の共闘者だ。
同じ頃。
「こんな玩具で子どもを拐かすとは」
不愉快な下衆め。直下を行き過ぎようとする暴走戦車に向けて、バレッタ・カノン(バレットガール・f11818)は吐き捨てる。
対戦車用の徹甲弾を傍に立てかけ、耐熱マントを靡かせながらビルの上から敵を睥睨する姿は、頼もしいの一言に尽きる。
だがバレッタはまだ動かない。
(「もうすぐ合図がある筈だ」)
ちょうどそのタイミングで、辺りに鋭い口笛が響く。
音の響いて来た方向に暴走戦車が砲身をぐるりと向けたのとほぼ同時。バレッタも動いていた。
ドワーフの中でも並外れたその怪力で、立てかけてあった徹甲弾を、担ぎ上げていた。
文字通り全身を使い――投擲。
その勢いのままビルから飛び降り地面に着地した瞬間。バレッタは投げた徹甲弾が、オブリビオンの装甲をへこませる鋭い音を聞いた。
天板が薄いのは対戦車の定石。弱点を突かれた暴走戦車はUターンに近いバックを見せ、バレッタへと向き直る。
「うおお!」
だがいつの間にか戦車の機銃の一つに、ホークがしがみ付いていた。
「……っ!」
その時、バレッタは薬剤 PP-P1をほぼ打ち終えていた。体内にある人造臓器『地獄門』を活性化させた状態で、振り回されているホークの元へと駆け出す。
砲撃の嵐を耐熱マントで切り抜け、敵の至近距離へと。
「うん? どんな相手かと思ったら強そうなお嬢ちゃんじゃないか!」
「……私はお嬢ちゃんじゃない。バレッタだ」
バレッタが片足を上げれば、即座に暴走戦車の真上に巨大な悪魔の脚が現れる。
「やれ。仕事の時間だ」
バレッタの踏み下ろす動きをなぞるようにして、巨大な脚が振り下ろされ、天板を再び傷付ける。
「っと。俺はホークだ。一緒にこいつを倒そうぜ!」
相次ぐ衝撃に耐えつつも、ホークは大きくへこんだ戦車とハッチの隙間に自身の機械腕を通す。
かと思えば、ピキン、と快音を立て。呆気なくハッチが開いた。ホークの機械腕は解錠機能付きだ。
「やっぱ戦車を止めるなら操縦室だ! ついでに地図も見つけてやるぜ!」
すかさず戦車内へと体を滑り込ませたホークを支援するように、バレッタが小脇に抱えた砲弾を戦車に向かって投擲する。
急ぎ回避行動を取る暴走戦車だが、履帯の間近に落ちた瞬間――炸裂した。
先程の徹甲弾とは違い、榴弾の破片と炎が辺りに撒き散らされる。
だが暴走戦車も負けてはいない。傷だらけの装甲を炎に現れつつも、反撃の連射を送り込んで来た。
立て続けに上がる土煙。バレッタは砲の動きを優れた観察力で見切り、巧みな足捌きで避けていくのだった。
それから1分程経っただろうか。
「……あいつ、まさか」
暴走戦車の内部に侵入したホークが出て来ない。
車体に空いた傷からは「これで……終わりだ……」などという呟きの後、何やら凄まじいスピードで暴れ回るような音が反響して来る。
どうやらパニックに陥ったホークが非常手段を取ったらしい。
バレッタの予感は、的中していた。
再度徹甲弾を天板にぶつければ、衝撃で開いたハッチからビーストモードを発動したホークが飛び出す。
「そろそろ退くぞ……ロボ腕」
「んが」
反動の睡魔に襲われかけているロボ腕……ホークを背負いバレッタは撤退。
「起きろ。背中に涎をつけるな……ん?」
バレッタの背中で寝言を言い始めるホーク。だがその手には、一枚の地図が握られていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シャルロット・シフファート
無機物なら、このUCに限るわね。
呟くと同時、周囲の無機物が迫り来る特殊砲弾も含めて純粋なエーテルとなる。
このユーベルコードは綾ゆる無機物を純粋なるエーテルへと変換する
その変換した純エーテルは属性魔術の媒介として、並ぶもの無き性能を発揮する!
さぁ、私の電脳精霊術を見るがいいわ!
周囲の大地を変換した純エーテルは土属性の魔術を発動させていき、巨大な土の壁を隆起させていく。
やがて、その壁は城壁となって砲台を形成。土属性の原子を媒介としてプラズマを生成し、それを砲塔から解き放って暴走戦車を薙ぎ払っていく!
バシャバシャバシャッ!!
跳躍したシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)の背後で響いたのは、火薬が建物を粉砕する轟音ではなく、粘性のある液体が強く叩き付けられる音だった。
「なるほど、変わり種ね」
廃墟の影に隠れたシャルロットが振り返れば、そこは酷い有様。
建物も、壁も、地面も。全てがどろりとした灰白色の液体に覆われていた。
セメント弾。おまけに速乾性らしい。
一発でも受けてしまえば、その後の運命は火を見るよりも明らかだろう。
そして前方では、シャルロットを捕捉した暴走戦車が、主砲をゆっくりと回転させていた。
「……でも、セメントも含めて、私の周りにある者全てが無機物。だったらこのユーベルコードに限るわね」
シャルロットの呟きを上書きするように。
ドンドンドン!!
砲撃音。だがほぼ同時、シャルロットの周囲の景色が、歪んだ。
身を隠す壁と廃墟、飛来するセメント弾から地面に至るまで、全てが混然一体となり、渦を巻き――純粋な輝くエーテル体と化した。
無垢であると謳う世界全ての無機――このシャルロットのユーベルコードの肝は、無機物を操作出来る事や純エーテルを作り出せる事よりも、それらを如何なる属性にも変換して形成し直せることにある。
変換先である属性は――土。
「さぁ、私の電脳精霊術を見るがいいわ!」
その言葉と共に純エーテルはシャルロットを守るように隆起し、巨大な土の壁を形成する。
再度主砲を咆哮させる暴走戦車だが、土の壁はセメント弾を受け止めびくともしない。
尚も変容を続ける土の壁は、やがて堂々とした城壁のような形を取る。
そこにいつの間にやら等間隔に生み出されていたのは、幾つもの砲台だ。
「プラズマ弾生成! 一斉射撃、開始よ!」
シャルロットの号令と共に、全ての砲が咆哮する。
魔素の燐光と共に砲口から放射されるのは、土属性の原子を媒介とした、プラズマの光条。
形勢逆転。たちまち暴走戦車の周囲で光柱が幾つも上がる。
シャルロットの形成した壁と弾幕を前に、暴走戦車は後退を余儀無くされるのだった。
成功
🔵🔵🔴
東雲・深耶
アドリブ歓迎
(深耶の性格:『悪の敵』の傾向在り)
レイダーとヴォ―テックス一族どもの依頼に乗るのは癪だが……
一度成功させたと思いあがらせて落とすというのは中々意趣返しとしては気が利いているかも知れん
そう言って巨大兵器の前に躍り出て、両脇に刺した二つの黒白たる世界最新の妖刀の内、白の方を抜き放つ
幹部級でもないレイダーにはやや過剰の様な気がするが……これを使うのは好きだしな
そう告げると同時、【ビルを消し飛ばす程の爆発】を起こした【未来】が消失――因果律ごと、切り裂かれる。
『白先』、未来を切り裂く妖刀だ
告げると同時に指を鳴らし、銀河最強のサイキックエナジーが斬閃の形となって巨大兵器を蹂躙していく――!
「レイダーとヴォ―テックス一族ども。奴らの依頼に乗るのは癪だが」
無人の街を蹂躙する暴走戦車。その進路に、一人の少女が躍り出る。
セーラー服を纏った凛々しい佇まいは、一見すると、どこかの高校の生徒会長といった趣だ。
「一度成功させたと思いあがらせて落とすというのは、中々意趣返しとしては気が利いているかも知れん」
だがその両脇に差した日本刀から発せられるのは、紛れも無い妖刀の気配。
そのうちの一振り 転生式次元干渉兵装・封縛刀『白先』を東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)が抜き放てば、日の光を刀身が眩く照り返す。
「とはいえ、幹部級でもないレイダーに、『これ』はやや過剰の様な気がするが……」
挑発とも取れる言葉だが、暴走戦車は答えない。残された四つの砲塔を静かに揺らすだけだ。
とはいえ、戦車自体の大きさに比例して、一つ一つの砲の大きさも凄まじい事になっている。そこから放たれる砲弾は、文字通りビルすら一瞬で消し飛ばしてしまうだろう。
「まぁいい。これを使うのは好きだしな」
そう呟いた瞬間――ぐるりと戦車が一本の砲を向けた。
一瞬。
暴走戦車は確かに見た。衝撃と共に己の砲塔がへし折れ、引き換えに深耶と、その後ろの廃墟が消し飛ぶのを。
そんな地獄のような光景を塗り潰すように――純白の斬線が視界を横断した。
気付いた時、全てが直っていた。
周囲も、砲も、建物も。全てが元通り。
ただ一つ、刀を振り抜いた姿勢の深耶を除いて。
「これが『白先』――未来を切り裂く妖刀だ」
す、と深耶が片手を上げて指を鳴らせば、たちまち虚空から半月状の光が現れ、鋼の装甲に傷を刻む。
時空間すらも断たんばかりの、サイキックエナジーの斬撃だ。
「まだ終わらないぞ」
深耶が呟く間も斬撃の発生は止まらない。
次々現れる光刃は逃げようとする暴走戦車を取り巻き、嵐の如き蹂躙を開始しようとしていた――。
成功
🔵🔵🔴
レテイシャ・マグナカルタ
アドリブ連携歓迎
●設定
シティに潜伏して奴隷救出と破壊活動を継続中
●行動
「弾薬と燃料が無尽蔵ってんならヤる事ぁ一つ、いや二つだ」
戦車の前に仁王立ち、異世界で学んだ気功の応用で呼吸と共に体内の魔力を練る
放たれた弾丸が自身に着弾しようとする寸前に魔力を込めた拳を突き出し、砲弾の端を殴りつける
上を向いた砲弾は何故か軌道を変えて戦車のキャタピラへと飛んで行き着弾
「撃ちだす大砲と足回り、両方ぶっ壊しゃ無尽蔵だろうがなんだろうが関係ねぇぜ!」
その後も砲弾を殴っては戦車に打ち返しつつ距離を詰めて、最終的には無事な大砲を直接殴り折り、キャタピラの中の車輪を殴り抜く
土埃の向こうからでもわかる程に、暴走戦車は弱っている。
だがそれでも暴走戦車は無尽蔵の資源を糧に、辺りに砲撃を撒き散ら続けていた。
その進路では、レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)が仁王立ちで待ち構えている。
「弾薬と燃料が無尽蔵ってんなら、ヤる事ぁ一つ……いや、二つだ」
呼吸を整え、丹田に意識を集中する。
剣と魔法の世界では、指先に魔力を集中する事を覚えた。そこに他世界で学んだ気功を応用する事で、レテイシャは体内の魔力を制御し、練り上げる術を身に着けていたのだった。
やがてレテイシャの体内に高純度の魔力が生み出された頃――目の前の土煙が晴れ、暴走戦車が姿を現す。
相次ぐ戦闘で二門の主砲を失い、あちこちに傷やへこみを作ったその姿は、満身創痍と言うに相応しい。
だがあくまで冷徹に、暴走戦車は残る四本の主砲の一つを向ける。
(「……まだだ」)
粉砕する鉄の砲塔。そこから轟音と閃光を纏い弾き出された弾丸は、ビルすらも消し飛ばす威力を秘めている。
だがレテイシャは目を逸らさなかった。
練り上げた魔力を右拳に込め、ギリギリまで引き付けていた。
そして直撃の寸前。
(「……今!」)
射線に掠らせるように――狙い澄ました正拳を、突き出す。
鋭く交錯する魔力と推進力。
刹那、大爆発。
爆ぜたのは、暴走戦車だった。
竜牙正拳突き――レテイシャの魔力を流し込まれた砲撃は進路を大きく変え、暴走戦車の方へと向かっていたのだった。
辛うじて正面直撃こそ免れたものの、その破壊力は暴走戦車の側面装甲を抜き、近くにあるキャタピラを大きく傷つけていた。
「逃がすか!」
炎を上げつつ後退を始める暴走戦車。それを追いレテイシャも駆け出す。
速射気味に放たれる砲撃。だがレテイシャが打ち返す度に、暴走戦車の車体には新たな傷が刻まれた。
そのままレテイシャは距離を詰め、渾身の力を込めた拳を、キャタピラから露出した車輪へと叩き込む。
「撃ちだす大砲と足回り、両方ぶっ壊しゃ無尽蔵だろうがなんだろうが関係ねぇぜ!」
ガシャン、と砕けるような音を立て、大量の部品が辺りに吹き飛ぶ。
兵器として脅威ならば、兵器としての機能を残らず潰してしてしまえば良い。元より無尽蔵の資源など、レテイシャの眼中には無かったのだ。
成功
🔵🔵🔴
ノエル・カンナビス
そもそも戦車砲って、真上に撃てるだけでも超レアもので、
そこまで高空には届かないんですよね。
というか、高射砲ですら真上には撃ちませんけれども。
自砲弾が自分に落ちて来るからで、その辺を気にかけずに
撃ってくるあたりが、さすがはアポカリプスヘルというか。
そういう後先考えなさは、嫌いではありません。
なかなか面白い方々のようですね。この地の住人は。
というわけで高空からゆっくり観察。
……ま、見ているだけでは仕方ないです。
戦車砲が全て水平を向いている隙を狙って垂直降下、
Eバンク電力を投入したインクリーザーで粉砕します。
仮に迎撃が間に合っても、セメントが降るよりも
私の降下速度の方が速いので意味がありませんよ。
単騎で地上を進む暴走戦車。
その様子を遥か上空から俯瞰する者がいた。
クロムキャバリア エイストラを駆るノエル・カンナビスだった。
「そもそも戦車砲って、真上に撃てるだけでも超レア物で、そこまで高空には届かないんですよね」
ノエルの言う通り、本来戦車の真上方向には、戦車砲で撃つべきものは存在しない。
人間で言えば死角に当たるからだろうか。暴走戦車は未だノエルに気付いてすらいないようだった。
「というか、高射砲ですら真上には撃ちませんけれども。自砲弾が自分に落ちて来るからで」
しかも砲弾に詰まっているのは大量のセメントである。もし撃とうものなら、高確率で自身を巻き込んでしまうに違いない。
だがこの暴走戦車の場合、撃てるなら躊躇い無く撃って来るのだろう。確証こそないものの、薄々ノエルもそんな気はしていた。
「その辺さすがは――」
アポカリプスヘルというか。呟き、ノエルがプラズマライフルの照準を覗き込めば、拡大された暴走戦車の姿が映り込む。
猟兵達との戦いで三門もの砲を失い、黒煙を噴き出し、満身創痍と言った様子だが、それでも真っ直ぐ大通りを辿っている。
どうやら自身が動ける限り、与えられた任務を果たすつもりでいるようだ。
「そういう後先考えなさは、嫌いではありません。なかなか面白い方々のようですね。この地の住人は」
世界が違えば、同じ機械兵器でも様々な点が違って来る。
事実、暴走戦車はノエルにとって、興味深い観察対象でもあった。
「……ま、見ているだけでは仕方ないです」
どうやら戦車は再び孤児達の居る区画へと侵入しようとしている。ゆっくり見ていたいが、そうもいかないようだ。
ノエルは動き、電力供給を済ませたライフルの引き金に指をかける。
同時にエイストラが急速降下を開始すれば、眼下の景色がみるみる狭まり始めた。
ライフルの射程に入る寸前、暴走戦車がようやくノエルの存在に気付く。
急いで砲を垂直から真上に起こそうとするも、その動作はノエルの降下スピードと比べ、余りに緩慢だった。
降下を済ませたノエルは、ようやく放たれたセメント弾を機体を僅かにずらして回避――そして。
「Eバンク・リリース。インクリーズ」
引き金を引く。
同時に、銃口から光の奔流が放たれた。
垂直に撃ち下ろされたのは高威力の増強粒子ビームが暴走戦車を直撃。天板を赤熱させる。
ビームの出力が終わったと同時、暴走戦車は動きを止め、内側から無数の光条を迸らせ始めたかと思えば――遂には、連続で大爆発を起こした。
そのまま暴走戦車は爆散。後に遺されたのは、鉄屑の山だけだった。
遅れて上空からは大量のセメントが落下して来るも、エイストラがすいと避ければ、それらは地上の残骸に向けてバシャバシャと降り注ぐ。
猟兵達の手で、暴走戦車は与えられた任務を果たせず、完膚無きまでに破壊されたのだ。
「任務完了です」
それを見届け、ノエルはようやく照準から目を離すのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『化学工場の探索』
|
POW : 厳重に封鎖された扉や隔壁を、力任せに破壊して探索を進める
SPD : 注意深く周囲を観察して危険を発見したり、発見した危険物質を慎重に確保する
WIZ : 工場を調査して予測される化学物質について予測し、その対策を準備する
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
地図を頼りに荒野を往く事暫し。
地平線に、何かが姿を現した。
円柱に無数のパイプが絡み付いた、巨大な建物……化学工場だ。
だが、放棄されて長く経つのだろう。全体が赤茶けた色に変わっている。
銀色に光り輝いていたであろう昔の面影は、今はもう無い。
見渡せば周りには荒野が広がるのみ。明らかに地図はこの廃墟を指し示している。
こんなところにレイダー達のアジトがあるのだろうか……?
警戒しながらも、猟兵達は敷地内へ歩を進める。
無人のエントランスへ足を踏み入れると同時に、強い匂いが鼻を突いた。
滴り落ちる謎の薬品が、部屋の隅で泉を作っていた。
冷静に、周囲を見渡す。
見上げれば、天井には配管。薬品は、劣化した接合部から滴り落ちているのだった。
風に回るダクトが影を落とすコンクリートの床一面には、崩れ落ちたパイプや瓦礫、そして訪れた者が残して行ったらしいガラクタが散乱している。
荒れ放題だ。
「見て」
ふと一人の猟兵が壁を指せば、工場内の見取り図があった。
地図に付属していた、一枚の紙と照らし合わせ、頷く。
紙の内容も同じ見取り図。ただし×印と、曲がりくねった3本の矢印が書き足されている。
工場の中央には、赤い×印。
どうやら矢印は、そこに至る3つのルートを示しているようだ。
第1のルートは屋内研究棟。
異常事態から職員を守る為だろうか。頑丈な隔壁があちこちで下ろされ、道が寸断されているようだ。
付近の扉も厳重に封鎖されている。だがその分、他の脅威は少ないかも知れない。
第2のルートは屋外通路。
頭上と側面を、錆びた鉄骨と配管、そしてタンクに囲まれた、狭い通路。
外気に晒されていたせいか、侵食は最も激しい。思わぬところに危険がありそうだ。
ところどころに薬品溜まりもある一方で、扉や隔壁の類は存在しない。
第3のルートは屋内プラント。
周囲から隔離されたこのルートは保存状態が良く、数ヶ所に隔壁が下りている以外に脅威は見られない。
タンクやパイプから漏れ出した危険な化学物質が、雨風に流される事無く、床面積の約半分を浸している事を除いて。
……崩壊しつつある化学工場は、今や、危険性を増した迷宮と化しているようだ。
だが、目指す場所に何かがある可能性は高い。
慎重に、猟兵達は探索を開始する――。
ノエル・カンナビス
戦車破壊の報酬、私の分はどこかの人類拠点にでも
送っておいて下さい。ガソリンは使い道がないので。
次のお仕事は、軍人宰相のアジトの破壊ですか。
こちらは猟兵組織からの依頼になりますね。
さてPOWです。
……探索……統合センサーで動力音やら生活音やら、
かなりまで判りはしますが。
連携がない以上、時間を掛けたくありません。
屋内研究棟を力ずくで押し通り、ついでに陽動役も
引き受けましょう。
騒ぎになって難儀するような友軍でもないでしょう。
隔壁だの扉だの、外で待たせたエイストラに
ぶち抜かせれば、棟ごと貫くトンネルが作れます。
え、やりすぎ?
そう言われましても、生身じゃ何もできませんよ私。
いちおう銃器はありますが――。
――コツ、コツ、コツ。
人気の無い空間を規則正しい足音が響く。
それは、一足先に化学工場の内部へと足を踏み入れた、ノエル・カンナビスのものだった。
「次のお仕事は、軍人宰相のアジトの破壊ですか。こちらは猟兵組織からの依頼になりますね」
他の猟兵と共に暴走戦車を破壊したノエルには、レイダー側から報酬を受け取る権利が発生している。だが火炎大王らしいというべきか、その報酬はガソリンだった。
既にノエルはその報酬を人類拠点へ配るよう手筈を整えている。使い道が無いからというのがその理由だったが、大量のガソリンは困窮に喘ぐ人々の助けとなるに違いない。
そして当のノエル自身は、既に新たな「仕事」へと意識を切り替え終えていた。
――コツ、コツ、コツ。
広い通路と空間が続く、研究棟。
保存状態こそ良いものの、周囲の扉は硬く施錠されており、奥に何か存在するのがわからない状態だ。
そのような状況の中、ノエルは自衛用のアサルトライフルを体に引き付け進む。そしてある地点で。
コツリ。と足を止めた。
目の前に立ち塞がるのは、シャッター。
「……」
厚みはかなりのものらしく、火器では歯が立ちそうにない。単純だが、厄介な障害だ。
(「センサーで先を確かめても良いのですが……」)
ノエルは高性能なセンサーシステムを所持している。それを使えば、動力音、生活音、その他にも様々な音が拾えるだろう。だが、実行には相応の時間がかかるようだ。
周囲を警戒してくれる味方が居れば話も変わって来るが、生憎この研究棟には、ノエル一人だ。
ならば、精度よりも速度。ノエルはプランBを実行に移す。
――ズシン!!
凄まじい音が響いたのは障壁のすぐ真横。
鉄筋コンクリートで出来た研究棟の壁が無残に圧潰した。
そこから姿を現したのは、クロムキャバリア エイストラ。
侵入して来る外気が多数の振動フィンに攪拌される中、エイストラはぐるりと方向転換。すぐさま肩部の粒子ビーム砲を咆哮させる。
閃光と破砕音。吹き飛ぶ隔壁を跳ね飛ばし、エイストラがブースターで突撃を開始した。
たちまち棟ごと貫くトンネルがエイストラによって形成され始める。探索と言うよりは、陽動だ。
「ちょっと派手にやり過ぎたでしょうか。とはいえ、騒ぎになって難儀するような友軍でもないでしょうし」
目指す先がわかっているのならば、そこまで道を拓くだけだ。遥か先のエイストラを追い、ノエルは奥へと歩を進めるのだった。
成功
🔵🔵🔴
レテイシャ・マグナカルタ
アドリブ歓迎
●第1ルート
忍び込むだけなら別な手もあるだろうが、事を終えたら捕まった子供や少年兵を連れ出さなきゃいけねぇ
帰り道の事を考えるなら、危険の少ない路を『開拓』しておいて損はねぇだろ
仮に音で侵入がばれたとしても、俺達が雇われレイダーだと思ってるならさらった子供達に人質の価値を見出しはしないだろうしな
というわけで魔力を手刀に集めて障害になる隔壁や扉を切り裂いていくぜ
一応、なるべく音を立てないように切り取った部分はゆっくり床に置いたり壁に立てたりしていこう
不気味なまでの静けさを保つ屋内研究棟の廊下に、レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)の足音が木霊する。
(「忍び込むだけなら別な手もあるだろうが」)
猟兵達の中でもレテイシャは身軽な部類に入る。そのアドバンテージを活かせば、レイダー達に察知されずに潜入する事も、十分に可能な筈だった。
だがそれでも、アジトの奥に囚われている少年少女達の事を、レテイシャは考えから外す事が出来なかった。
孤児院で育った仲間達はレイダー達の脅威に怯えていた。ならば、今まさに囚われている彼等の心境たるや。
「……」
無言のまま歩むレテイシャの視線は絶えず柱の陰へ注がれる。それはまるで、施設の奥から逃れて来た子供を、一人残らず見つけ出そうとしているかのようだ。
これからレテイシャがやろうとしている事は、己の意志で決めた事だ。そこに疑問は介在し得ない。だが完全な隠密を捨てている以上、その脳裏には、とある可能性がちらつかざるを得ない。
もしも、レイダーが子供達を人質に取ってしまったら――。
だがその可能性を、レテイシャはすぐさま振り払う。
(「連中は俺達の事を、雇われたレイダー達だと思う筈だ」)
抗争の真っ只中に居る軍人宰相の配下達にとって、侵入者とはまず誰よりも、敵対派閥の雇われレイダーである。猟兵達が代わりに雇われるなど、予測し得るだろうか。
つまり、配下達が猟兵達をレイダーと誤認するのは、極めて自然な流れなのだ。故にこの探索がどのような形で露見したとしても、子供達が人質に取られる事は、決して無い。
だが人質としての価値を見出されないという事は、庇われる可能性が存在しないという事でもある。
間違いなく子供達は乱戦に巻き込まれるだろう。ならば彼等の生存を確かなものとする為に、何が必要か。
「……こいつだな」
メインルートから少し外れた場所で、レテイシャは立ち止まる。
目の前には、コンクリートの隔壁が立ち塞がっていた。
拳を握り、軽く叩けば、ゴンゴンと重厚な音が返って来る。
「厚いな」
レテイシャならば、魔力を込めた拳でぶち破る事が出来る。だがもし実行すれば凄まじい音が響く上に、大量の瓦礫が発生する筈だ。速やかな撤退を視野に入れている以上、ネックにはなるだろう。
「……」
片手の拳をゆっくりと開き、目の前に構える。
手刀。呼吸を整えつつ、無意識に体の防御に回していた魔力を、指先から小指に沿うラインへと集中させる。
そして。
「――ふッ!!」
呼気は鋭く、斬り抜けるように。
放たれた横一閃が、隔壁に細い筋を刻む。
ズ、と軽く音が響いた後、分厚いコンクリートの壁はバランスを崩してぐらりと傾き――。
「よっ……と」
地面に倒れ込む。前に、レテイシャに受け止められた。
そのまま怪力で持ち上げ、ゆっくりと地面に下ろして側面の壁へと立てかければ、後には、真四角に切り開かれた道だけが残った。
レテイシャが出した答えは、脱出口。
敵になるべく気付かれないように、危険の少ない道を『開拓』する。
「ん、上出来だろ」
腰に手を当て、作業の出来を確かめる。
コンクリートの断面は鋭利な専用の機械で切り出したかのように滑らか。少し見ただけでは、それが隔壁の一部だったなど、誰も気づかないだろう。
さて、と呟き、レテイシャは奥へと進む。
大成功
🔵🔵🔵
岩社・サラ
第3ルート
アドリブ歓迎
放置された薬品が漏れ出しているのですね。どういった性質の薬品が流出しているか分かりませんし対策はしっかりと行っていきましょう。
まずは呼吸などで気化した薬品が体内に入り込むのを防ぐためにもUCのガスマスクを装備し状態異常(への耐性)力を高めておきます。
そして薬品との直接的な接触を避けるためにクレイゴーレムを召喚し肩に乗るなどして薬品と触れることがないようにしながら進んでいきます
隔壁に関しては岩蜥蜴をダクトや亀裂などの小さな隙間から隔壁の向こう側へと偵察に行かせて危険がないかを確認。
安全に進めるようならゴーレムに隔壁をこじ開けさせて進みます。
仲間の猟兵達とエントランスで別れ、無人の廊下を一人進む岩社・サラ(人間の戦場傭兵・f31741)は、漂って来た刺激臭に立ち止まる。
「……」
前方には、半ば空いた扉。どうやら臭いはそこから漂って来ているようだ。
距離を取ったまま、隙間から奥を覗き込む。
そこには広い空間があった。製造工場だろうか。立ち並ぶ機器の状態は良く、今にも動き出しそうにも見える。
それでも浸食の跡はあちこちに存在する。タンク同士を繋ぐパイプ。その錆びた接合部から、液体が滴っているのをサラは確かに見た。
その液体は、フロアの床一面を浸していた。
(「放置された薬品が漏れ出しているのですね……」)
安全の為に急ぎ駆け寄り、扉を閉めるサラ。
軽く周囲を見渡し、他の道が存在しない事を確かめる。
(「流出した薬品がどういった種類のものかもわかりませんし、気化してフロア内に充満している可能性もあります」)
歴戦の傭兵であるサラにとって潜入はお手の物だが、このルートを安全に踏破するには、何よりも薬品の対策が必要不可欠だろう。
「――」
サラが目を閉じ意識を集中すれば、ざぁ、と、屋内を吹き渡る風に、纏う黒衣が揺れる。
かと思えば、次の瞬間には、新たな武装へと形を変えていた。
ショットガン。ボディアーマー。そして、ガスマスク。
それは、屋内に突入する際の特殊部隊を思わせる、強襲用の重装備だった。
少しだけ扉を開け、深呼吸を数度。サラは自身の顔を覆うガスマスクが、薬品を完全にシャットアウトしている事を確かめる。
「……」
そんなサラを迎え入れるように、フロアの入り口横合いから姿を見せたのは、巨大な人影。
粘土と泥岩で出来た、クレイゴーレムだ。
足を浸す薬品を全く意に介さない様子で、のっしのっしとサラへと歩み寄ると、逞しい腕でひょいと持ち上げ、自身の肩へと乗せる。
「宜しくお願いしますね」
サラが方向を示せば、クレイゴーレムはそちらに向けて歩き始めた。
無人のフロアを、ゆっくりとした重い足音が横断する。
ガスマスク越しに俯瞰するサラの足元では、無数の機械が現れては消えていく。その設備の充実ぶりからは稼働時の賑やかさが窺えるが、今となってはこの場の虚しさを際立たせるだけだ。
「……」
サラは物陰に気を配りつつ、座ったままショットガンを半ば構えた姿勢を保ち、進む。
だが足元を浸す薬液をクリアした今、脅威はほぼ無くなったと言って良い。
ルートの終わり際になって、ようやくゴーレムは足を止める。
往く手を阻んでいたのは、鉄製の隔壁だった。
(「それほど厚くはなさそうですが、先の安全は確認しておきたいですね」)
サラが掌を上に向ければ、辺りに漂う土色の魔力の燐光。やがてそこには一匹の生物が現れる。
岩石で出来たトカゲの使い魔、岩蜥蜴。
するりとダクトに滑り込めば、たちまちサラの視界が暗闇に満たされ、すぐに明るさを取り戻す。
五感を共有した岩蜥蜴から送られてきた、視覚情報。それによると、このルートは完全に無人らしい。
「ご苦労様」
ややあって戻って来た岩蜥蜴を、サラは労わるように掌に乗せ、軽く撫でると、ゴーレムに簡潔な命令を下す。
「開けなさい」
泥岩の巨人がしゃがみ込み、シャッターと地面の隙間に指を入れた。
サラを落とさないよう、体全体を使って引っ張れば。
バキバキバキ!
甲高い音を立てて、シャッターは鉄屑と化した。
難無く隔壁を排除したサラとゴーレムがさらに進めば、やがて一つの小部屋が現れる。
床には、小さな階段が口を開けていた。
「……」
サラはゴーレムの肩から飛び降り、とん、と軽い音を立てて着地する。
探索は、終わりを迎えようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
大きい……これが貴族の屋敷ではなく、ただの工場ですか
世界間の技術格差を感じますね……
ヘラクレスで破壊しながら……だと、中の子供たちが危険ですね
一旦降りて、生身で行きましょうか
第2ルートを選択
鉄骨や配管、タンクに手をかけ足場にして進む(地形の利用)
【トリニティ・エンハンス】で身体に風の魔力を纏い、有毒な大気を防ぐ(毒耐性・環境耐性)
簡易救急セットで毒の種類を調査しておき、要救助者が被毒していた場合の対策も用意(情報収集・医術)
試験紙の色がこうで、こっちの薬で気泡が出たから、有効成分は……
思わぬ危険――足場が急に崩れたりしても、【第六感】と【幸運】により察知し、【ジャンプ】で安全な足場へ跳び移る
視界を埋め尽くす配管で構成された天井と壁面。
至る所に青空が覗く人工の迷路は何処までも途切れる事無く続いている。
「大きい……」
屋外通路を辿っていたオリヴィア・ローゼンタールは、思わずそう呟く。
「これが貴族の屋敷ではなく、ただの工場ですか」
オリヴィアは圧倒されていた。多くの鉄塔や建物が立ち並ぶこの施設の規模は凄まじく、ともすればこの場所が単なる生産施設であるという事実を忘れさせてしまう。
この工場を建てるのにどれだけの鉄が使われたのか。稼働させるのにどれだけの資材が使われたのか。想像もつかない。
「世界間の技術格差を感じますね……」
辺りを押し包むのは退廃と静寂。だがその性質は、かの世界とは大きくかけ離れたものである事を肌で感じ取ったオリヴィアは、微かな微笑みを見せる。
「……古いだけあって、足場も、良くはないですね」
狭い道の足元には大小様々な鉄骨と配管が縦横無尽に這い、それ自体が起伏に富んだ足場を構成している。オリヴィアはその上を、近くの配管を手すり代わりにして進んでいるのだった。
スーパーロボット・ヘラクレスで踏破すればあっという間の距離だが、今のオリヴィアは敢えて生身。囚われているであろう子供達の安全を慮っての事だ。何にせよ、自身が幼い頃より駆け馴れている、都市の闇のようにはいかないかも知れない。
勿論、相応の準備は行っている。
周囲を優しく包むそよ風は、トリニティ・エンハンスにより付与された風の魔力。それはオリヴィア自身の幅広い耐性と相俟って、屋外の有毒な大気を防いでいた。
「……っと、そうでした」
風に揺れる銀色の髪と、アンダーリムの奥で目をぱちくり。
オリヴィアは近くにあるタンクにカツカツと歩み寄ると、その傍へとしゃがみ込む。
タンクに付属した蛇口から漏れていたのは、発光性の液体。
オリヴィアはしゃがみ込み、肩にかけていた十字のデザインが染め抜かれた、ショルダーバッグを漁り始める。
そこから様々な道具を取り出し、並べ始めた。
施設に充ちる危険な化学物質。その正体を探る為だ。
オリヴィアが薬品に試験紙を浸せば、たちまちその色は鮮やかな青へと変わる。
「……強いアルカリ性……こっちの薬で気泡が出たから、有効成分は……」
風の加護に守られていた事で、オリヴィアは、化学物質の調査を滞り無く終わらせる事が出来た。それによると、やはり薬品には微量ながら毒性があるようだ。
(「屋外への退避は速やかに行う必要がありますね……」)
囚われている場所次第では、既に被毒しているかも知れない。もしそのような子供が居たら、オリヴィアの出番だろう。
立ち上がり、探索を再開するオリヴィア。だがそこから数メートル歩いた所で。
――ガコリ。錆びたボルトが外れたような音。
が、耳に届くのを待たず。
「っ!」
オリヴィアは前方へと身を翻していた。
風の魔力で衝撃を殺しながら数度転がると、片膝立ちの状態で、ピタリと動きを止める。
ば、と振り返れば、数秒前まで自身が居た場所に、大穴が開いていた。
穴の下には地下工場が存在しているらしく、多くの突起を備えた大型機械が並んでいる。一瞬遅れれば叩きつけられていただろう。
オリヴィアの優れた反応力が、緊急回避となって活かされたのだ。
(「……。脱出時にこの道を選ぶのはやめましょう。それがわかっただけでも……。……?」)
だがその時、オリヴィアの耳が違和を拾った。
下にある機械群から、微かな動作音が響いて来る。
(「全てではないでしょうが……レイダーが発電施設の一部を利用しているのでしょうか?」)
軍人宰相のアジトが此処にあるという情報が、オリヴィアの中で、ようやく信憑性を帯び始めた。
金色の瞳を引き締め、オリヴィアは先へと進む。
成功
🔵🔵🔴
レイ・オブライト
屋内研究棟
資料の残骸を踏み歩く
手の込んだシステムは中身を守ってくれたか否か、考えるだけ無駄な光景だが
この世界でこの程度の汚染はそう珍しくない『環境耐性』
なんにせよ人間が長居する場所じゃあねえ、とグリモア猟兵の言った善良な子どもとやらを思い返す
急ぐとするか
隔壁が閉じ他猟兵が通っていない路を選び取り零しのないように
『怪力』【一撃必殺】
どうせ後々壊すんだ。障害となるものを破壊し突き進む
多少雑でも渡る分にゃ問題ない『悪路走破』
頭上やらから崩れかかるものは鎖を『念動力・オーラ防御』で張り巡らせ、弾いて適当に積む。運が良けりゃ警備兵の追跡の邪魔になるだろう
兵と呼べるかは知らんが
さて、今日は何が出てくるやら
レイ・オブライトがフロアに足を踏み入れたと同時に、足裏に柔らかい感触が伝わる。
目を落とせば、古い紙束。どうやら残骸と化した資料のようだ。
「……」
ぐしゃ、と踏み付け、先へと進む。
研究棟。
大掛かりな警備システムが設置されているこの区画は、本来、工場の中でも特に守らなくてはならない場所であった筈だ。そして隔壁は、既に下りている。
にもかかわらず、床には様々なものが散乱し、争いの形跡もあちこちに残されている。
ここで何が起こったのか。
(「考えるだけ無駄な光景だが」)
言外の犠牲をレイが頭から振り払ったところで、問題の隔壁が姿を現す。
レイの居る場所から確認できるだけでも、いくつかは仲間の猟兵たちの手で砕かれている。だが断面の厚みから推すに、簡単には脅威を通さない代物のようだ。
それでも強いて可能性を挙げるなら、隙間からゆっくりと侵入する、化学物質による汚染がある。
アポカリプスヘルにおいてこの程度の汚染は珍しくない。レイのように環境に耐性を持つ者なら、充分に耐えられる濃度だ。
それでもレイは事前に聞いていた、助け出さなくてはならない子供達の話を思い出す。成長途上である彼等の体には、一層の毒だろう。
(「なんにせよ人間が長居する場所じゃあねえ」)
急ぐとするか。そう呟き、目前の壁へとレイは駆け出す。
瞬間、繰り出された拳が恐ろしい速度を纏い、コンクリートを粉砕した。
吹き飛ぶ瓦礫。舞い散る粉塵。その真っ只中を抜けたレイの視界には、また新たな、いくつかの障壁。
「――」
瓦礫と紙片を蹴立て、中央に向けて突進。そこで再び撃砕音が響く。
隔壁は各々の猟兵の思惑で破壊されており、そこには必然的に「取り零し」が生じる。
レイはそれを基準に破壊する隔壁を選択していた。自然、緊急時において最も判別し易いルートを辿る。
なおも繰り出される一撃必殺の拳が、目の前の壁を砕いていく。
だが、とある壁を駆け抜けようとしたレイの背中に、巨大なコンクリートの塊が、ぐらりと倒れ掛かる。
接触の直前――じゃらん、と宙で鎖が張る音。
強く弾かれた塊は、逆方向へゆっくりと傾き――やがて、ズン、と音を立てて倒れ込んだ。
ほぼ同時に最後の壁を破壊し終えたレイは、後ろを振り返る。
破壊の跡はジグザグに曲がりつつも、仲間の切り拓いた道を繋ぎ、一本の太い道を形作っていた。どうやら研究棟は脱出のメインルートになりそうだ。
辺りには大小の瓦礫が転がっているが、跨いでいく分には問題ないだろう。先程跳ね飛ばした塊も、部屋の中央で積み上がり、高めの障害物と化していた。上手くすれば敵兵が手間取ってくれるかも知れない。
(「兵と呼べるかは知らんが」)
ろくな相手ではないことは想像がつく。だがそれでも、未知のものは興味をそそられる。
「さて、今日は何が出てくるやら」
最後にそう呟き、レイは階段を下りるのだった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 集団戦
『ウォーキングタンク』
|
POW : 機銃掃射
【砲塔上部の重機関銃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 対猟兵弾
【対猟兵用の砲弾を装填した主砲(連続砲撃)】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : キャニスター弾
単純で重い【散弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
化学工場を抜けた猟兵たちの足は、地下へと向いていた。
階段を下り、入口を潜れば、そこにあったのは――コンクリート製の、広い空間だった。
高い天井。奥行き50メートル程、横幅15メートル以上。
壁には大きな排水口がいくつも空いている。おそらくここは、巨大な貯水槽だったのだろう。
頭上には電灯が設置されており、空間の両サイドに乱雑に寄せられたドラム缶や木箱を仄暗く照らしている。
そして辺りには、発電機のものと思われる稼働音が、ゴウンゴウンと響いている。
明らかな人の手による管理の形跡。
どうやら、化学工場の一部を拝借して作られたこの場所こそが、軍人宰相のアジトで間違いないようだ。
ふと、稼働音に混じって、すすり泣く声が聞こえた。
場所はフロア左最奥の角。
猟兵たちが警戒しながら近寄ると……そこには、ドラム缶に隠れるようにして、十人の少年少女が固まっていた。
地面から伸びた配管に、手首を手錠で繋がれている。
彼らが、浚われた少年兵候補だろう。どうやら、全員命に別状は無いようだ。
猟兵たちが安堵したのも束の間。
今度は入口から、ガシャガシャと足音が聞こえてくる。
『おい、どうする。どこにいねぇぞ……』
次いで、拡声器越しに言い合うような、男たちの声も。
『他の一族のヤツらか? 破壊工作ついでに、ガキどもを直接奪いに来た』
『いや……ロンメル様と俺たち守備隊しか知らねぇはずだぜ。ここは』
『おい黙らねぇか! どこのヤツらだろうと、アジトの場所を知られたからには、生かしておけねぇ』
声は徐々に近付き――やがて入口から、ぬっ、とその姿を現す。
それは、小型の戦車だった。体高にして約4メートル。
チカチカ瞬く赤いランプ。鋼鉄の身体。長い砲身。そして――鉄の腕と足。
有人兵器『ウォーキングタンク』。
男たちの声は、タンク部に乗り込み操縦している、レイダーのものだったらしい。
『いたぞ!』
『おい、後続を待とうぜ! 道が荒れてるんだとよ!』
『構うもんか! ロンメル・ヴォーテックス様の為に!!』
ガシャガシャガシャと、先行する六体のウォーキングタンクたちが、次々とフロアへ突入してくる。
膝と肘を直角に曲げて走る様子は一見コミカルだが、元々屋内を想定して作られたのだろう。その動きは機敏だ。
たちまち横一列の陣を作り上げ、その冷たい砲口を、フロアの奥へと向ける。
怯える様子を見せる子供たち。
だが、猟兵たちは、既に動きを見せていた。
ノエル・カンナビス
……。
なんだか空が見たくなりました。帰っちゃダメですか。
ダメですかそうですか。
ではバイブロジェットでブーストダッシュ、
先制攻撃/指定UCからの2回攻撃/切断/ビームブレイドで
一輌かち割って敵集団を突き抜け、後ろに回ります。
子供たちの方に流れ弾飛ばされても困りますしね。
後はチャンバラ映画のごとくばっさばっさと斬り倒し。
入り口から顔のぞかせる後続がいたらキャノンでズドン。
あちらはフォックストロット抜けませんから無敵状態です。
いえまぁ、キャバリアにタンクオーバー乗せたら大差ない、
というのは全くの事実ではありますが……。
もうちょっと真面目に生きた方がいいと思います。はい。
東雲・深耶
さて、貴様らには私のUCの実験台となってもらう
一言で言えば、ようこそ諸君。早速だが死に給え。という奴だ
刹那に『侵略機動』を用いて一人を世界そのものが高速回転する力場に巻き込む
おっと、重機関銃が子供達に当たっては事だからな
そう呟くと同時、『侵略機動』の力場が壁状になってレイダーと子供達との間に遮るように顕現する
フム、中々『侵略機動』は便利な力だな
そう呟くと同時、また一体を時空間切断剣術に『侵略機動』の力場を乗せて付与した斬撃がレイダーを両断する
世界そのものをチェーンソーにしているようなものだからな
この切れ味に満足しながら一人一人切り裂いていくぞ
『畜生、後続はまだかよ!!』
『良いじゃねえか! ロンメル様からの褒美は俺たちが頂いちまおうぜ!』
静かだったアジトが喧噪に包まれ始める。
拡声器越しに騒々しい会話を叩き合うのは、横一列に並んだウォーキングタンクの小隊。
彼らが思い思いに機銃や主砲を斉射すれば、壁には無数の弾痕が刻まれ始める。
だが猟兵側も負けてはいない。敵の矢面に立ち、機敏かつ正確な動作で射線を掻い潜るのは、汎用クロムキャバリア エイストラ。
「……」
そしてその搭乗者であるノエル・カンナビスは、コックピットで……天井を仰いでいた。
「なんだか空が見たくなりました。帰っちゃダメですか」
呟き。少し間を置いて。
「……。ダメですかそうですか」
すぐさま撤回。確かに今はウォーキングタンクたちが入り口を塞いでいる。外に出るのは難しそうだ。
だが隔壁で仕切られた研究棟に続き、今度は地下の貯水槽である。ノエルならずとも、この長く続く閉塞感は耐え難いものがあるだろう。
『なんだ貴様~! よそ見とは俺たちをナメてるのかぁ!』
『やれ! やっちまえ!!』
そんなノエルとエイストラへ向けて、六つの主砲が続けざまに咆哮を上げる。
対猟兵に特化した弾丸は甘くない。いかにキャバリアの鉄躯であろうと、体勢を崩せばただでは済まない。
だが最初の弾幕が通過する寸前――エイストラの巨体がぶれた。
『がっ!?』
瞬間、噴煙を切り裂き、灼熱のニ閃が煌く。
同時に一体のウォーキングタンクが横転したかと思えば、派手な大爆発を起こした。
『何っ!?』
「ラグのお時間ですよ」
黒煙を抜け敵後方へと出たノエルは反転。もう一体の主砲を斬り落とす。
『機銃だ、機銃を回せ!』
急ぎ応戦しようとするウォーキングタンクたちだが、ノエルに肉薄され既に数の利を失っている。
「これなら射線が定まらないでしょう。完全ではありませんが、流れ弾も減る筈です」
「そこは私に任せて貰おう。――さて、貴様らには私の剣術の実験台となってもらう」
『お、おい! また来たぞ!』
見れば、先程までノエルが居た位置に、東雲・深耶が立っていた。
「一言で言えば、ようこそ諸君。早速だが死に給え。という奴だ」
『何を~!!』
深耶の不敵な言葉に対し、一人のレイダーがぐるりと機銃を回し、赤熱した銃身を咆哮させる。だが。
「おっと、子供達に当たっては事だからな」
『……ごっは!?』
途轍もなく巨大なものに飲み込まれた感覚がレイダーを襲う。
同時に深耶の周囲を駆ける銃弾が、顕現した見えない障壁にぶち当たり――残らず消滅した。
『侵略機動』――限定的ながら対象を世界その物の回転に巻き込む、とある竜の力である。そしてそれを操る深耶もまた、生命体の埒外である猟兵に相応しい力量の持ち主と言える。
「フム、中々『侵略機動』は便利な力だな」
ならば実践とばかりに、深耶は居合の姿勢を取る。
刹那。
「――ふッ!!!」
鋭い鞘鳴りの音と共に、空間が裂けた。
万象を消滅させる力場が次元に干渉する深耶の居合に乗せて放たれ、目の前のレイダーを容易く両断した。
『!!』
「世界そのものをチェーンソーにしているようなものだからな……わかるか?」
果たしてその切り口は、深耶自身も満足するほどに凄絶なものだった。
卓越した技を見せた深耶へとレイダー達の注目が集まり、そちらへ向けて重機関銃が一斉射される。
だがその寸前で深耶が地面を蹴って姿を隠せば、今度は横合いからノエルが突っ込んで来た。タイミングを外して敵の間合いに踏み込み、腕部に内蔵されたビームブレイドを一閃。巻き起こる爆発と共にまた一体が倒れる。
「いえまぁ、キャバリアにタンクオーバー乗せたら大差ない、というのは全くの事実ではありますが……」
ノエルに翻弄されるウォーキングタンクたちも、上手く操れば、量産型と遜色ない働きを見せることが出来たかも知れない。だが一番の問題は搭乗者だろう。
「もうちょっと真面目に生きた方がいいと思います。はい」
再び力場を纏った深耶の居合が弧を描いて宙を駆け、一体を斬り伏せたのと同時、後ろの気配にエイストラも旋回。
入口に向けて肩の粒子ビームを放てば、ちょうど顔を出していた増援の一体が大きく爆ぜる。
待ち望んだ増援を前にノエルへと砲を向ける残存勢力だが。
「さて、次に斬られたい者はいるか?」
再び姿を現した深耶を前に、じりじりと後退を始める。
戦いの流れは、猟兵側へと傾いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オリヴィア・ローゼンタール
要救助者発見、負傷なし
しかし一部は恐怖と疲弊で動けない……
ヘラクレスを召喚
手錠を千切り(部位破壊)、動けない少年を一人か二人、脇に抱えて搭乗(救助活動)
ヘラクレスは私の意思に感応して戦ってくれるので操縦は不要
解毒剤と鎮静剤(医術)を染み込ませた布で少年の口元を覆い、【落ち着かせる】
一人乗りなので手狭ですが、我慢してくださいね
それと、今から少し揺れるので、私にしっかり掴まっていてください
タンクへ向かって吶喊(ダッシュ)
頑強な腕部を盾代わりにコックピットを護り、距離を詰める
そんな弾で貫けるほど、ヘラクレスの装甲は柔ではない!
【怪力】の【極鋼爆裂拳】で粉砕
残骸から砲身を拾い、棍棒代わりに叩き付ける
岩社・サラ
屋内戦向きの戦車ですか……長引けば不利になりそうですし、早急に制圧しましょう。
戦闘開始とともにクレイゴーレムを召喚し救助対象への流れ弾を庇わせます。
その後はグレネードランチャーで煙幕弾を撃ち込み敵の目を潰します。
煙幕を展開したら無差別に撃ち込まれるであろう反撃の音を頼りに目立たないように身を屈めて接近、十分に近づいたらUCで砲塔の上部に鉄腕の一撃を叩きつけます。
手足が生えていようが戦車であることに変わりはありません。暴走戦車と同じようにトップアタックは有効でしょう。
爆薬に関しては発電機があるならそれを動かす燃料も保管されていると思われるのでそういった物に戦闘知識に基づいて設置していきますね。
果敢に接近戦を挑む猟兵たちに対し、新たに駆け付けたウォーキングタンクの増援は、小回りの利く機銃で応戦することを選んだようだ。
数の優勢を取り戻した彼等が一斉に機銃を放てば、鉛の銃弾が壁や物資を容赦無く打ち据える。それは囚われた子供たちが身を隠すドラム缶すらも例外ではない。
騒音に怯える子供たちを安心させるように、オリヴィア・ローゼンタールは柔和な微笑みを浮かべ、そのうち一人の少年の頭を順に撫でてやる。
「大丈夫ですか?」
頷きを返す子供たち。だが、その瞳が恐怖に染まっていることは明らかだ。
囚われていた期間が長かったのだろう。皆、恐怖に反応し易くなっている上に、肉体的な疲労も激しい。
特にオリヴィアの抱き止める少年は症状が重く、歩くことすらままならないようだ。
(「負傷している子はいないようですが、全員まともには動けないでしょうね」)
その隣へ、銃弾を掻い潜るようにして、大型のミサイルランチャーを背負った岩社・サラが滑り込んで来る。
「敵の兵装は屋内戦向けです。長引けばこちらが不利でしょう」
砲火に晒されていてもサラの口調は冷静だ。端的に淀む事無く、現在の敵の戦力と布陣をオリヴィアへと耳打ちする。
「オリヴィアさんはその子だけでも。残りの子たちは私が何とかします」
重い足音が近付いて来る。だがそれは耳障りな機械音を伴うものではない。
果たして、ドラム缶越しに巨大な背中が二人の目前に立ち止まる。それはウォーキングタンクではなく、サラの使役するクレイゴーレムのものだった。
岩の体表では鉛の銃弾がしきりにぶち当たり、火花を上げている。流れ弾ならば耐える事が出来るだろう。
「……わかりました。お願いします」
オリヴィアが槍を構えて鎖に狙いを定めれば、次には、撃ち出された黄金色の穂先が一本の射線となって手錠を打ち砕き、少年を解放する。
その少年を抱きかかえ、オリヴィアは天井を仰ぐと。
「――出でよ、ヘラクレス!!」
ズン、と重い音を立て、コンクリートの屋内に巨大な影が落ちた。ウォーキングタンクたちやクレイゴーレムを遥かに凌駕するその巨体は、スーパーロボット・ヘラクレス。
『な、何だ!?』
オブリビオンたちが動揺する隙を突き、オリヴィアは素早く少年を抱えて搭乗席へと身を滑り込ませた。
それを見届けたサラは、人数の減った子供たちをゴーレムの真後ろに寄せる。
「心配しないでくださいね。大丈夫」
そう言い残すとサラは、ドラム缶に背中を付けた体勢で、ロケットランチャーの砲口だけをウォーキングタンクたちに向ける。
そして次の瞬間、耳を聾する噴射音。だが放たれたのはミサイルではなく、大量の煙幕を撒き散らす特殊弾だった。
炸裂と同時に白いスモークが敵陣を覆い、視界不良に陥ったウォーキングタンクたちが機銃を乱射し始める。だが当てずっぽうの射撃が少年少女を撃ち抜く事は無い。
『見えねぇぞ!』
『構うことはねぇ、全員やっちまえ!!』
(「そこですね」)
逆にその音を察知したサラが動きを見せる。
まるで影のように。
気配を殺し、上半身を屈め――流れるような動きで遮蔽物を伝う。
身を隠したまま敵の間近に滑り込んだサラは、素早く詠唱を終えると。
「――大地の力、鉄の巨腕。破壊せよ」
最後にそう呟いた時、白煙の中で暴れるウォーキングタンクたちの頭上に、巨大な魔法陣が展開される。
瞬間、そこから猛スピードで撃ち出されたのは、ヘラクレス以上の体躯を持った大型のアイアンゴーレムの、右腕だった。
手足が生えていようが戦車は戦車。圧倒的な質量の鉄拳を装甲の薄い上部に受け、数体のウォーキングタンクたちが、深緑色の機体を無残に圧潰させる。
『うぐぉ!?』
かろうじて避けたオブリビオンたちも、衝撃の余波で破壊される地形の中、陣形を組む事もままならないようだ。
その時、サラに呼応するように、ヘラクレスも前進を開始した。
コックピットでは、少年を優しく抱いたオリヴィアが治療を行っている。
解熱剤と鎮痛剤を染み込ませた布で口元を覆ってやれば、少年の瞳には安堵の光が宿る。それは、快方へと向かう何よりの兆しだ。
オリヴィアもまた、慈悲深い聖母の如き微笑みを浮かべる。
「一人乗りなので手狭ですが、我慢してくださいね……それと、今から少し揺れるので、私にしっかり掴まっていてください」
そう言って前を見れば、徐々に近づいて来るのは、姿を見せないサラと乱戦を繰り広げるウォーキングタンクの集団。
少年を驚かさないようオリヴィアが静かに眦を決せば、ヘラクレスは彼女の意志に従うように、転がっていたウォーキングタンクの砲塔を、ぎしりと掴んだ。
――次には吶喊。鋼鉄の肉体が刻む全力疾走に地下空間が震える。
『こっち来たぞ!』
『操縦席だ! 操縦席を狙え!』
斉射される銃弾。だがそれらは全て、盾と見紛うようなヘラクレスの巨大な腕に阻まれる。
「そんな弾で貫けるほど、ヘラクレスの装甲は柔ではない!」
オリヴィアがそう叫んだ時、少年もまた彼女の心に打たれるように、シスター服の端を、ぎゅ、と掴んむ。
刹那、巨いなる鋼の超人が砲塔を振り下ろし――本日二度目の巨大なエネルギーが、地下水槽の地面を粉々に破壊した。
(「そろそろ頃合いでしょう」)
オリヴィアがウォーキングタンクを圧倒する光景を確かめ、サラは暫し戦闘の中心を離れる。
煙の中を敵に気付かれないよう進めば、嗅覚が、とある違和感を拾う。
傍のドラム缶を軽く叩けば、一際厚い鉄板の内部に液体が満載された、重い音が返って来る。
(「ガソリン、ですね」)
機械には動力が必要だ。稼働している発電機の燃料もここに保管されているというサラの勘は、的中していた。
懐を漁るサラ。取り出したのは――爆薬だった。
彼我の位置関係、動き、残り時間。そういった諸々の要素を考慮しつつ、サラは爆薬をてきぱきと仕掛けていく。
(「後は敵を殲滅するだけ……」)
いつしか増援の足音は絶え、戦いの音は激しさを増している。
終わりが近いことを予感し、サラはオリヴィアが支える戦線へと舞い戻っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レテイシャ・マグナカルタ
アドリブ連携歓迎
敵が現れた瞬間にUCで子供達を守れる位置に立って右手を突き出しUC発動
立ち方は子供達に顔を向けられるように横向きに
真の姿の力が漏れ出して蒼い、蒼い光が包み込む
子供達を巻き込むあらゆる暴力を防ぎながら、安心させるために屈託なく笑いかける
オレはレテイシャ、奪還者だ。クソレイダー共からお前達の未来を奪還(うば)いに来たぜ
敵の事なら心配いらねぇ頼もしい奴らが揃ってるからな!
…しばらく外みてねぇんだろ?行こうぜ、綺麗な青空が広がってる
お前らの生きたい(行きたい)場所(ところ)へ、オレが連れて行くよ
レイダーが斃れた後は手錠を壊し、他の施設の情報があれば持ちだして子供達を連れて脱出だ!
数を減らされたウォーキングタンクたちだが、この場を引く様子は一切無い。
機銃を放ちつつも、小回りの利く鉄脚を駆使して地下空間を駆ける。
彼等が動けない少年少女たちに目を付けるのは、必然だったかも知れない。
数体のウォーキングタンクが至近距離まで寄った時、一人の少年が思わず悲鳴を上げてしまう。
『……!』
ウォーキングタンクが鉄の腕でドラム缶を殴り倒せば、たちまち恐怖に身を寄せ合う少年少女たちの姿が露わになった。
『そう言えばお前等も居たな! いずれ鍛え上げてやるつもりだったが』
『ああ、此処が危ない以上、奴等に渡してやる義理も無いな。……やれ!』
赤いランプがちかりと瞬くと同時に、重機関銃が一斉に火を噴く。
身を裂く銃弾から互いを庇おうと、互いを抱き締め合う子供たち。
だがその瞬間は何時まで経っても訪れない。
子供たちが恐る恐る目を開けた時……レイダー達の間に割り込む位置に、一人の少女が立ち塞がっていた。
右手を向けた姿勢で直立を保つ少女に、レイダーたちは明らかに動揺を示しているようだ。
少女の体からは神々しい蒼い光が漏れ出し、子供たちを優しく包み込んでいる。
真の姿の片鱗を現した、レテイシャ・マグナカルタだった。
子供たちに半身を見せていたレテイシャは、子供たちへと首を振り向ける。
「オレはレテイシャ、奪還者だ。クソレイダー共からお前達の未来を奪還(うば)いに来たぜ」
浮かべるのは、安心するような屈託のない笑顔。
激昂したレイダーたちがレテイシャの元にガシャガシャと集まり、機銃を並べて斉射し始めれば、たちまち耳を聾する轟音が包囲する。
「敵のことなら心配いらねぇ。頼もしい奴らが揃ってるからな!」
仲間の猟兵を信じて自身は子供たちの防御に徹する。それがレテイシャの選んだ役割だ。
彼女を支えるのは不壊を誓う固い意志。それを示すように、展開された巨大な魔力の障壁は、レイダーたちの殺意が篭った銃弾全てを防ぎ止めていた。
「……しばらく外見てねぇんだろ? 行こうぜ。綺麗な空が広がってる」
今頃は青空だろうか。それも赤く染まる日暮れだろうか。どちらにせよ、きっと心の底から素晴らしいと思える景色が、子供たちの頭上には広がっているに違いない。
「お前らの生きたい(行きたい)場所(ところ)へ、オレが連れて行くよ」
銃声に消え入りそうな呟きにも近い声量にも拘らず、確かな力の篭ったその言葉は、子供たちの耳に届く。
レテイシャは殺気を漲らせるレイダーたちに向き直り――眦を決した。
……結局、レテイシャは子供たちを守り切った。
レイダーたちは壁を破る事が出来ず、そのまま他の猟兵たちに駆逐されたのだった。
戦いが終わり体の自由を取り戻したレテイシャは、子供たちに駆け寄ると、手錠を素手で造作も無く壊して見せる。
驚く子供達にレテイシャは再び笑顔を見せる。だがその表情は先程よりも少しだけ柔らかさを帯びたもの。年下の兄弟姉妹に向ける姉のようでもあった。
「さぁ、脱出だ!」
子供たちを先導するように、レテイシャは駆ける。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・オブライト
その脚はなんかに役立ってんのか?
【Lava】電流鎖をいくらかずつまとめて宙でブレード状に
まず対猟兵弾を焼き切り
『念動力』により触れずに振り回し、なんたらセイバーの要領で『限界突破+属性攻撃(電気)』熱量を更に高め、戦車たちの溶断を狙っていく
ひとつ、逃げ回る芸でも披露してもらうとしよう
爆発するなら『覇気+オーラ防御』で押し返し後方へは届かんように。流れ弾や瓦礫にも同様に対処する
オレはオレで、必要があれば子を庇うのと半端に壊れた戦車を殴り潰すのと。一般人が来た道を通るにゃ酷だ、ついでで外壁か天井に穴でも開けとくか『地形破壊』。そろそろ時間なんでな
邪魔したな。親玉にもよろしく言っといてくれ
※諸々歓迎
ホーク・ウィリアム
子供達を見つけ出したのはいいが拘束されているし敵に囲まれて逃す事が出来ねぇ..。これはもう全員倒すしかねぇな。やってやるぜ!
まず[サイバーアイ]で室内の状況と敵のデータを分析。子供に危害が加わらない場所を割り出し[アイオロスの剣]で風を起こして敵を誘導。
敵の攻撃が子供達に当たったら困るからな。[さざなみの羽衣]で攻撃をかわしつつ、子供に危害が加わらない位置まできたらユーベルコード[ロイヤルストレートフラッシュ]で全体攻撃。お前の命を賭けな!!
戦闘後[鍵開け]で手錠の解錠を試しみる。
敵の主砲が火を噴くと同時。レイ・オブライトが遮蔽物に身を滑り込ませれば、たちまち背中で爆炎が巻き起こる。
増援が止んだとはいえ、依然として数で勝るウォーキングタンクが連続で放つのは、体勢の崩れを逃さぬ対猟兵弾。その一斉射は確かに脅威だ。だが。
(「……それ、なんかの役に立ってんのか?」)
レイの視線は、その機体の下から伸びている、鉄脚に向けられていた。
見るからに異彩を放つその兵装は、地形を踏破するには役に立ったのかも知れない。だが戦闘において有効利用された様子は、依然として見られない。
ウォーキングタンクたちが数を活かす為に横陣を崩そうとしないのならば、それは大きなアドバンテージを自ら潰している事になる。
「くそ! こいつはヤバいな!」
近くの物陰ではホーク・ウィリアムが子供たちの側にしゃがみ込んでいた。
レイが手元を覗き込めば、ホークは解錠を試みていた。自身の液体金属の左腕を即席の鍵へと変え、カチャカチャと動かしている。
すると澄んだ音と共に手錠が外れ、拘束から解放された一人の子供が、反射的に伸びをするように後ろへ背中を逸らす。
だがホークが手際良く数人を解放した所で……凄まじい揺れが背中で響いた。
振り返れば、近くの遮蔽物が跡形も無く吹き飛んでいた。至近距離からの散弾を受けたのだろう。散らばる残骸には無数の弾痕が残されている。
「応援、要るか?」
「……いや、まずは全員倒しちまおう。解錠はその後だ」
取り出した白銀の鎖を、握り込みざまにぎしりと砕いたレイに、ホークは不敵に笑い返す。
「よし、やってやるぜ!」
ホークの叫びと共に、二人は散開する。
『うわはははははは!! 我らが戦車隊の弾幕を前に恐れを成したかー!!』
物陰のひとつに身を隠すレイに向けて、対猟兵弾の一斉射撃が間断なく降り注ぐ。
その時、雷光を纏った巨閃が視界を駆けた。
『何っ!?』
軌道上の砲弾が宙で爆ぜれば、その爆風は全てウォーキングタンクの側へと向かい、戦列を大きく揺るがす。
立ち塞がるように滞空するのは、電流の鎖で構成された長大なブレード。
(「……。ひとつ、逃げ回る芸でも披露してもらうとしよう」)
一瞥を送るレイに呼応するように、ブレードはその輝きを増し、纏う稲光を強め始めた。
電流と熱量を高めている事は傍目にもわかるが、その際限の無い上昇ぶりは、レイダーたちの本能に警鐘を上げさせるに十分なものだった。
『お、おい……なんかヤバいぜ!』
『構う事は無ぇ、撃……』
言葉を発する前に、横薙ぎの二閃目が最前列の戦車を捉える。
深緑の戦車部に走るのは、溶断を示す灼熱色の斬線。
覇気で押し出せば機体は二つに分かれつつも後方へと倒れ込み、ウォーキングタンクたちのど真ん中で引火爆発を起こす。
悲鳴と共に後退する敵の戦列。応戦の射撃が放たれるも、その射線は全く定まらない。
間隙を縫い、稲妻の巨剣が一気に距離を詰める。
レイの意のままに、逃げ惑う敵の戦列に、再び斬線が刻まれた。
ホークが眼球に装着したサイバーアイを起動させれば、視界には室内の状況が大量に流れ込んで来る。
(「だいぶ距離を詰められたな……だが!」)
戦場の選定を素早く済ませ、アイオロスの剣を抜き放てば、その刀身が輝きを見せる。
するとたちまち巻き起こる横風がウォーキングタンクの戦列を大きく揺るがし、踏ん張る間もなく将棋倒しにした。
『な、何だ!?』
その射線へとホークが飛び出す。
『! 居たぞ! 逃がすな!』
連続する発射音。だが放たれたのは砲火では無く、固めて撃ち出される散弾だ。
頭を低くし駆けるホークの後方からは、重い銃撃が壁を粉砕する音が近付いて来る。その流れ弾の一つが――今まさに木箱の山に滑り込もうとするホークの胴を捉えた。
「!」
そのまま転がり込むホーク。だが体に痛みは無い。直撃部位を探れば、掴んだのは衣擦れの音を立てる布とひしゃげたキャニスター弾。見た目以上の強度を持つ羽衣が、弾丸を防ぎ止めていたのだった。
大きく首を捻って振り返れば子供たちは遥か遠く。それを確かめ、ホークは取り出したボトルシップを放る。
「ここなら良いだろう――お前の命を賭けな!!」
瓶が光に包まれたと同時、それは巨大な壁と化して戦場を覆う。
やがて雲と共に顕現したのは、飛行艇、シューティングスター号。
見上げるウォーキングタンクの一体が、爆炎と共に後方へ倒れ込む。船内からわらわらと現れたサイボーグ空賊の幽霊たちが、レイダーの間抜け面にロケットランチャーをくれてやったのだ。
なおも容赦無く撃ち下ろされるミサイルに、ガトリングの回転音まで混じり始めた。レイダーたちも砲撃とキャニスター弾を頼りに応戦するが、圧倒的な数と消耗の差を前に、次々と戦闘不能に追い込まれる。
ホークの切り札は、着実に敵を殲滅へと追い込んでいった。
「……よし、やったぜ!」
戦いも終わり、静けさを取り戻したアジトに、ホークと子供たちの歓声が響いた。
膝元には錆びた手錠の山が出来ている。たった今、全員の解錠作業が完了したのだ。
「……」
その間レイは警戒するように周囲を見渡している。
かろうじて秩序を保っていたアジトも、今やあちこちに破壊の跡を留め、酷い有様だ。
駆け付けたウォーキングタンクも、全機ひしゃげた鉄塊と化している。
その一つにレイは歩み寄ると。
「起きてんだろ?」
そう言うや否や。
『うがはぁ~!!』
唸り声ともつかない声を上げ、ごばぁ、と、残骸が立ち上がる。
だが捩れた砲口を回すより速く、レイの拳が炸裂した。
機体に拳型の陥没痕を作ったウォーキングタンクは派手に転倒し、今度こそ動かなくなる。
「そろそろ時間なんでな」
「おう。……立てるな? 脱出だ!」
自力で出口へと歩いていく子供たちを手助けするように、ホークが彼らの背中を押していく。
もうこの場には用は無い。既に仲間の猟兵が爆弾を仕掛け終えてている筈だ。
「邪魔したな。親玉にもよろしく言っといてくれ」
ホークと子供たちも去り、無人と化した暗渠にレイの呟きが掻き消える。
だが、それで終わりではなかった。
ややあって天井を揺らし始めたのは、破壊の音。
猟兵たちがその手で行う、道を切り拓きながらの脱出行。それが始まったのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
「……走れ!!」
エントランスを駆け出ると同時に、誰かの叫び声。
それに従うように全員が荒野を蹴り、建物との距離を全速力で離す。
最後の一人がフェンスの外へと出た瞬間――凄まじい熱と衝撃が背中を叩いた。
同時に全員が地面を踏み切り、大きく前方へと跳躍。
ある者は子供たちを庇うように、またある者はクッションになるように。頭と耳を塞ぐ姿勢でうつ伏せに倒れ込む。
続けざまに轟く爆音が止んだ頃、各々が身を起こし、振り返る。
そこには、もはや原形を留めていない程に破壊され、それでもなお小爆発を続ける化学工場があった。
文明に捨てられ、レイダーたちに悪用され続けたこの場所は、今ようやくその役目を終えたのだ。
瓦礫の山が火で炙られる様を、子供たちは食い入るように見つめている。
彼らは便宜を図られた上で元の生活に戻っていくのだろう。確かに一度囚われたことは不幸だ。だがそれでも、猟兵たちに救われた恩を、彼らは決して忘れないに違いない。
いつしか空模様は夕焼けを通り越し、夜の気配が漂い始めていた。
昏く優しい茜色に照らされる子供たちの横顔を眺めながら、猟兵たちもまた、束の間の安堵を味わうのだった。