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【猟】書に潜む悪魔を見つけしは

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #書の悪魔ダンタリオン #迷宮大図書館

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●アルダワ魔法学園・研究棟5階、どこかの研究室
 アルダワ魔法学園の地下迷宮にて発見され、今も学生たちによる調査が進められている迷宮大図書館。
 そこから運び出された本は地上の学園、研究棟の研究室に運び込まれ、教員や研究者による解析、研究が行われていた。
 それらの、机の上に積まれた本の一冊が、かたかたと動き始める。そしてページの間から、ぬるりと這い出てくる者があった。
「ふふふ……侵入成功。学生の手を借りれば、この程度は造作も無いことですわ」
 それは女性だった。角と尻尾を生やした、豊満な肢体の女性が本の中から姿を現しているのだ。どう見たって生身の人間ではない。
 書の悪魔ダンタリオン。幹部猟書家の一人であり、本の中に住まう災魔だ。その彼女が、研究室に積み上げられた本を物色し、そのうちの一冊を手に取る。
「ああ、この本など良いですわね。さあ、目覚めなさい、古の災魔たちよ……」
 ほくそ笑むと、彼女は胸元から何かを取り出した。どどめ色をした卵型の物質を、本の表紙に押し当てる。と、本の表面がとぷんと波打った。卵を飲み込み、表紙が、ページが渦を巻き始める。
 そして。
「うわぁぁぁーん!!」
「えっ」
 本の中からぽーんと、大粒の涙を流しながらタマネギが飛び出してきた。
 タマネギ型の災魔で、悲しみの感情を糧にして生きるサッドニオン。それが、わらわら、わらわらと本から溢れ出し、研究室の外に飛び出していっている。
「嫌だぁー! もう食べられるのは嫌だぁー!」
「こんなところにいられるかー! 僕は帰るー!」
 そんなことを口々に言いながら、サッドニオンたちはぴょんぴょんと跳ねつつ研究室の外へ。それをポカンとしたまま見送っていたダンタリオンだったが。小さく肩をすくめながら息を吐いた。
「……まあ、いいでしょう」
 そう言いながら彼女が再び本の中に戻り、その本がどこかに消えていく中で。研究室の外の廊下では三人の学生が突如現れたサッドニオンたちに困惑していた。ケットシーが二人、竜派ドラゴニアンが一人。
「わっ、何だ!?」
「災魔だよ!」
「学園の中ですよぉ!? どうしてこんなところにいるんですかぁ!?」
 「バルテレミー班」の3年生、セヴェリ・ニクライネン、チータ・カスティス、パウリーネ・ヒーマンの三人だ。ちょうど本を運びに来たところなのだろう、手には沢山の本を抱えている。
 しかし災魔が出たとあれば容赦はしていられない。各々、すぐさまに武器を取った。
「くそっ、チータ、パウリーネ! 迎撃するぞ、構えろ!」
「オッケー! セヴェリ、援護よろしくね!」
「吹っ飛ばしてフライドオニオンにしてやりますよぉ!」
 これでもアルダワ魔法学園の学生、戦う力は持っている。ここで災魔を食い止めるべく、三人は魔法を放ち始めた。

●グリモアベース
「ヒーマン……過激なことを言うようになったな……」
 一方、グリモアベース。イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)はグリモアを内包したガジェットから映し出される映像を見ながら、困ったような笑みを浮かべていた。
 映像に映っている学生三人はイミとも馴染みが深い。色々と思うところもあるのだろう。
 そんな彼に何とも言えない視線を送る猟兵たち。と、集まったことに気がついたか、イミが映像を止めて振り向いた。
「ああ、先輩たち。アルダワの猟書家絡みで、一つ対応を頼みたい案件がある。お願いできるか」
 そう話すと、イミはグリモアから映し出す映像を再び最初から再生させた。暗い部屋の中、机の上に大量の本が積み上げられている様子が映る。
「アルダワ魔法学園の地下迷宮に、大図書館があったことを覚えているか? あそことあそこの書物は、学園の教師や学生が今も研究と探索を続けていて、その書物の一部を地上の学園に搬入しているんだが……その運び込まれた書物の一つに、猟書家幹部である災魔が取り付いていたらしい」
 そう言いながら、イミは進みゆく映像をある箇所で止めた。そこではちょうど、女性型の災魔が本から飛び出したところが映っている。その女性の顔を拡大しながら、イミが話す。
「書物から出てきた猟書家幹部は『書の悪魔ダンタリオン』。女性の姿をした悪魔の災魔だ。こいつがとある書物に『災魔の卵』を埋め込み、学園内に災魔を溢れさせている」
 そう説明しながら映像を進めると、映し出されるのは一冊の本だ。その本のタイトルを読み上げながら、イミが何とも言い難い表情をしている。
「で、その書物の名が……『食べられる災魔の調理法模索記録』でな……結果として、サッドニオンが大量に出てくる事態になっているんだ」
 その言葉に、猟兵たちが複雑そうな表情になった。確かにオブリビオンの中には、食べられたりおやつになったりするものもいるけれど。昔の人たちはそんな事を研究して本にまで残して、一体何をしようとしていたのだろう。
 ともあれ、結果としてサッドニオンは大量出現。アルダワ魔法学園の研究棟に溢れ始めている。素早い体当たり、涙や催涙ガス、強烈なネギの匂いを放ってくる攻撃、悲しみの力を集める小さな分身を召喚する行動を取ってくる敵だ。一体一体は弱いとは言え、注意が必要だろう。
 そして研究室の外の映像を映しながら、イミは話を進めた。
「現場にはたまたま居合わせた『バルテレミー班』の3年生三人が、既に戦闘に入っている。マジックナイトが一人、精霊術士が一人、シンフォニアが一人。それなりに戦力にはなるから、協力して災魔の退治に当たって欲しい」
 そこには剣を握るケットシーの女子、杖を手に魔法を放つ竜派ドラゴニアンの女性、その隣でシタールを手に演奏をするケットシーの男子が映っている。何度かイミの案内する依頼でも顔を見る、学生互助組織「バルテレミー班」のメンバーだ。
 彼らが、災魔を抑え込んでくれている。駆逐するまでには至っていないようだが、学生がいるといないとでは大きく話が変わってくる。
 イミが小さく笑いながら話を続けた。
「ダンタリオンが取り付いた本は、あちこち逃げ回るように移動しているようだ。先輩たちが災魔を片付けた頃には、大図書館に戻って隠れていることだろう。次の侵入と襲撃に備えてな」
 曰く、何らかの魔法を用いてさっさと迷宮の中に戻ったらしいとのこと。そうやって何度も学園内に侵入し、「災魔の卵」で災魔を発生させ、魔導蒸気文明の「災魔化」を狙っているのだろう。
「学生たちは、学内の構造や迷宮の地理には詳しい。大図書館の中についてもよく知っているだろう。ダンタリオンの潜む本を見つける手助けをしてくれるはずだ」
 迷宮大図書館は広大な場所だ。ここを日常的に調査している学生たちなら、きっと違和感にすぐ気付いてくれるだろう。そうすれば、ダンタリオンの隠れた魔導書を探すのに役立つはずだ。
 そこまで説明して、イミはグリモアから映す映像を消した。手元でくるりと回転させて、ポータルを出現させる。
「それじゃ、準備はいいか? 学園が災魔で埋め尽くされる前に、何とかしてきてくれよ、先輩たち」


屋守保英
 こんにちは、屋守保英です。
 久しぶりに新入生……だった3年生、優秀な方の三人組が登場です。
 彼らと協力しながら、学園内に潜む猟書家幹部を退治しましょう。

●目標
 ・書の悪魔ダンタリオン×1体の撃破。

●特記事項
 このシナリオは「2章構成」です。第2章がクリアになった時点で、シナリオが完成となります。
 アルダワ魔法学園の「骸の月」の侵食度合いに、成功数が影響します。

●戦場・場面
(第1章)
 アルダワ魔法学園、研究棟5階、教職員の研究室エリアです。
 教職員の研究室に運ばれた大図書館の本が災魔化し、サッドニオンを大量に発生させています。
 ちなみに災魔化した書物は、「食べられる災魔について」を記した本だったようです。
 学生三人は既に現場に到着し、協力しながら災魔を倒していますが、若干押され気味です。

(第2章)
 アルダワ魔法学園地下迷宮、迷宮大図書館です。現場までは学生たちが案内してくれます。
 書の悪魔ダンタリオンが大図書館の中に魔導書として潜んでいます。発見して攻撃することで、倒すことが出来ます。
 書の悪魔ダンタリオンを倒せば、災魔の卵を埋め込まれた本はもとに戻ります。

●学生
 セヴェリ・ニクライネン(ケットシー・男性・14歳)
 チータ・カスティス(ケットシー・女性・15歳)
 パウリーネ・ヒーマン(ドラゴニアン・女性・20歳)
 学生互助組織「バルテレミー班」に所属する3年生三人組。セヴェリはシンフォニア学科、チータはマジックナイト学科、パウリーネは精霊術士学科の所属。
 同期の中でも向上心が旺盛で、猟兵たちから様々な知識や経験を吸収したいと思っている。

 それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『サッドニオン』

POW   :    どれだけ皮を剥けば素早くなれるんだろう。
【体当たり】による素早い一撃を放つ。また、【皮を何層か剥く】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    君が泣くまで、僕らは泣き止まない!
【触れた者をネガティブ思考にする涙】【催涙ガス】【強烈なネギ臭】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    皆もこんなに悲しんでくれてるんだ!
戦闘力のない【小さな分身】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【周囲から集めた悲しみの力】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●勇者、来たる
「このっ、このっ!」
「行きますよぉ、えーい!」
 チータがショートソードを振るってサッドニオンたちを迎撃する中、パウリーネの精霊魔法が炸裂する。
 二人がダメージを負えば、セヴェリがすぐさま歌声を飛ばして回復を行う。
 少人数ながら、なかなかよくできた連携だ。好成績を修めているという話も頷ける。
 しかし、サッドニオンたちの数があまりにも多い。同数程度ならこれでも押し切れようが、数倍、十数倍。とてもじゃないが数の暴力のほうが強い。
 そして、そこに響く足音。回復を終えたセヴェリが目を瞠る。
「先輩たち! 二人とも、転校生が来てくれたぞ! 持ち直せ!」
「おっと、百人力ですねぇ!」
「よーし、ここから頑張っちゃうよ!」
 パウリーネも、チータも表情がぱっと明るくなった。ここから、反撃の時だ。

●特記事項
 ・学生三人の行動指針としては、チータが敵の牽制、パウリーネが大火力の魔法で殲滅、セヴェリが各々の支援、となります。
  プレイングで明記いただければ、特定の学生と明示的に連携することが出来ます。
火土金水・明
「ふむ、食べられる災魔ですか。昔の人も食通な方がいたのでしょうか?。」(チータさんとタイミングを合わせて攻撃を始めます。)
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡め【限界突破】した【銀色の旋風】で、『サッドニオン』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



●銀剣、奔る
 廊下にわらわらとタマネギが溢れ出す。今はまだ研究棟の5階の一部で抑えられているが、この先どうなるかは分からない。
 そんな中、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は大きな三角帽子を抑えながら現場に飛び込んだ。
「ふむ、食べられる災魔ですか。昔の人も食通な方がいたのでしょうか?」
 災魔を食べようという動きが古からあり、しかもそれを本にまで残すという好事家っぷり。よほどの好き者だったのか、あるいは求道者だったのか。今となっては知る由も無いが、興味関心は抱くというものだ。
 ともあれ、まずはこのサッドニオンたちを何とかしないとならない。前衛で一人奮戦するチータの横に、明が立つ。
「チータさん、援護しますよ」
「助かります! いっくぞー!」
 一人加われば、それだけ戦いは楽になる。チータも一気に動きが効率的になった。
 彼女と一緒に前に飛び出す明の前に、二体のサッドニオンが立ちはだかる。
「君が泣くまで、僕らは泣き止まない! うわぁぁぁん!!」
「びえぇぇぇ!!」
 大きな泣き声を上げて、涙を撒き散らすサッドニオンたち。天井付近からシャワーのように降り注ぐその涙が、ネギ臭さと催涙ガスと一緒に明を飲み込んだ。
 かと思いきや。彼女の姿はいつの間にかサッドニオンたちの背後にいる。
「残念、それは残像です」
「えっ!?」
 残像を残しての急速な回避行動。それによって完全に虚を突かれたサッドニオンが振り返るより先に、明の銀の剣が振り抜かれた。
「銀の剣は敵を討つ剣なり!」
 高速で一太刀、からのもう一太刀。流れるような二連撃に、サッドニオン二体の身体が真っ二つに切り裂かれた。
「ギャッ!」
「うぎゃっ!」
 断末魔の悲鳴を残して、その姿が煙のようにかき消えていく。一瞬で二体を倒してみせた明に、チータが感嘆の声を漏らす。
「はぇー、やっぱり転校生はすごいや……動きの質が断然違うもん」
「かなり場数を踏んでいますからね、それなりに動けますよ」
 小さな後輩ににこやかに笑いかけながら、明は改めて剣を握った。まだまだ敵の数は多いのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎

玉葱?
ん、なんとも活きのエエ、汎用性の高い野菜が現れたもんや
それに「食べられる災魔について」とな?これはぜひ読ませてもらわねば!
と言うわけで、食材獲得と書物救出のため、いざ助太刀いたす!
玉葱の分け前よろしゅうね?

ん、活躍や苦戦をする暇を与えへんかったらエエんやね?
最初からリミッター解除して確実に先制攻撃、UC展開
溢れんばかりの食欲に比例するような雷霆と火焔で
さっさと料理させてもらうで?

食べられるんはもう嫌、か
そうやね、そやろね……
でもごめん……美味しそうにしか見えへんねん!
(情報収集でレシピ検索

敵攻撃には見切りと武器受け、盾受けで対処

しもた…火ぃ通してもたら
ピクルスでけへん……



●火焔、迸る
「玉葱?」
 次いで戦場に飛び込み、敵オブリビオンの姿を見たクルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)の口から飛び出したのは、そんなシンプルな一言だった。
 タマネギだ。それがふよふよ宙を浮いて、涙と泣き声を撒き散らしながらわらわらと。実に大量だ。タマネギ畑だったら豊作だったろうに。
「ん、なんとも活きのエエ、汎用性の高い野菜が現れたもんや。それに『食べられる災魔について』とな? これはぜひ読ませてもらわなあかんね!」
 美味しいものと美味しいお酒には目がないクルル。美味しいもののお話とあれば興味を持たないはずがない。何としてでもこの事件を解決し、原因となった本を読ませてもらおう、と奮起する。
 そうして、ちょうど隣に立っていたセヴェリに微笑みかけながら言った。
「と言うわけで、食材獲得と書物救出のため、いざ助太刀いたす! ……玉葱の分け前よろしゅうね?」
「えっ」
 唐突に分け前の話をされて、一瞬演奏の手が止まるセヴェリだ。すっかりタマネギ収穫モードになったクルルの言葉を飲み込んだ彼が、コクリと頷く。
「まあ、別にいいけど」
「よっしゃ! 最初からリミッター解除していったるで!」
 その返答を聞いたクルルはますます意気軒昂、最初から全力全開だ。霊符を手に握ると、そこから雷と炎が迸る。
 攻撃が来る。それを感じ取ったサッドニオンたちが、次々に小さな分身を生み出し始めた。
「食べられるのはもう嫌だー!」
「悲しい……こんな悲しいことは他にはない!」
 口々に嘆きの言葉を吐き出しながらクルルに立ち向かうサッドニオンたち。それを見てこれまた嘆きながら、分身たちも涙を流している。
 その有様に、そっと目を伏せるクルルだ。
「食べられるんはもう嫌、か。そうやね、そやろね……」
 それはそうだ。野菜に意思があるのなら、食べられたくないと思うのは道理。
 しかし、しかしだ。クルルははっきり言いながら霊符を投じる。
「でもごめん……美味しそうにしか見えへんねん! コンソメスープにグラタンスープ、蒸しタマネギにグラタンに……あっ、ピクルスもええな!」
「「えぇーっ!?」」
 もう既に頭の中は食べることでいっぱい。どう料理してやろうかと思案を巡らせるクルルに、サッドニオンたちが抗議の声を上げるも。
 彼女の投じた霊符が、強大な炎の竜巻を発生させた。爆炎が激しく燃え盛り、皮がついたままのサッドニオンたちをこんがり焼き上げていく。
「ぎゃー!」
 そうして一つ、また一つと沈黙し、ただの焼きタマネギが大量に出来上がったところで、はたとクルルは声を上げた。
「あっ……しもた」
 その突然の言葉にセヴェリが小さく背筋を伸ばす。戸惑いがちに声をかけると。
「ど、どうしたんだ、ハンドゥーレ先輩」
「火ぃ通してもたらピクルスでけへん……」
 クルルは小さく肩を落としながら、焼き上げられたタマネギをカゴの中に取り上げていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バロン・ゴウト
それほど強い災魔じゃなさそうだけど、兎に角数が多いのが厄介だにゃ。
図書館に玉ねぎの臭いが染みつく前に敵を倒すのにゃ!

牽制役のチータさんと連携を取るのにゃ。
自分とチータさんに【オーラ防御】を掛け、チータさんを【盾受け】や【武器受け】で庇いつつ出来る限り多くの敵を【おびき寄せ】るように動くのにゃ。
敵が集まったら【全力魔法】の【アイリスの嵐】で敵を殲滅、残った敵も連携を取りつつ【串刺し】なのにゃ!

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。



●紫嵐、爆ぜる
 研究等の廊下を、バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)が駆ける。黄金のレイピアを鞘から抜き、しっかと握りながらバロンはサッドニオンがたくさんいる廊下に駆け込んだ。
「それほど強い災魔じゃなさそうだけど、兎に角数が多いのが厄介だにゃ。玉ねぎの臭いが染みつく前に敵を倒すのにゃ!」
 アルダワ魔法学園の生徒として、この自体を看過は出来ない。すぐにサッドニオンの前に飛び出したバロンを見つけ、チータが声をかけた。
「あっ、バロンさん! ちょうどよかった、こっち手伝ってー!」
「勿論なのにゃ! さあ、来いにゃ!」
 チータの傍に寄りながら、バロンが自身のオーラを彼女に分け与える。そうして彼女を庇うように立ち位置を取ると、それを見たサッドニオン二体が嘆き始めた。
「うぅぅ、次から次へとやってくるなんて、なんて悲しい!」
「負けるもんか、数だったらこっちだって負けないんだ! うわーん!!」
 泣きわめきながら、サッドニオンが分身を召喚し始める。戦闘力のない分身とは言え、数が増えてくると厄介だ。
 そして召喚を終えたサッドニオンが飛びかかってくる。ちょうどその飛ぶ先にはチータがいた。
「うわっと!」
「下がるにゃチータさん!」
 チータにサッドニオンの身体がぶつかろうかというところで、バロンが割り込んでレイピアで受け止める。その様に、またも嘆き始めるサッドニオンだ。
「くっ、庇うなんてリア充だ! 悲しい!」
「味方を庇うのは当然のことだにゃ! 悔しいならこっちに来るのにゃ!」
 挑発も交えながら、バロンはサッドニオンを押し返していく。そして緩急をつけて立ち回りながら、サッドニオンをたくさん集めるように動き回った。
 そして、十体かそこらが一箇所に集まったところで、バロンはレイピアを高く掲げる。
「よし……アイリスの花びらよ! 敵を討つにゃ!」
 と、そのレイピアが紫色のアイリスの花びらに解けて、廊下を吹き荒れるようにごうと舞った。その花びらに切り裂かれたサッドニオンが、次々に倒れ伏していく。
「うっ!」
「うわーっ!」
 その攻撃は他のサッドニオンにも及んでいる。アイリスの花びらの一撃を受けて、何十体ものサッドニオンが廊下に転がったのを見たバロンが胸を張った。
「どうだにゃ!」
「バロンさん、さっすがー!」
 その見事な殲滅に、チータも称賛を惜しまない。だんだんと、猟兵たちがサッドニオンを押し返しつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月凪・ハルマ
……いやこの玉葱、食用可だとしても
できれば食いたくないヤツじゃない?

◆SPD

数は力。個々が大したことなくても甘く見ちゃいけない
故に確実に殲滅させてもらう

って訳でパウリ―ネさん、ちょっと手を貸してもらえます?

まずはなるべく戦場全体を見通せる場所に移動
できるだけ多くの玉葱を視界に収めた後、【天津太刀風】発動
敵UCの催涙ガスやネギ臭も風で纏めて吹き飛ばしてやる
さらにその際、パウリ―ネさんにも同時魔法攻撃を要請して
一気に敵の数を減らす狙い

仕留めきれなかった玉葱には手裏剣の【投擲】
あるいは【忍び足】で死角から接近して旋棍の打撃で仕留める

敵の攻撃は【見切り】【残像】【武器受け】【第六感】で
回避を試みる



●烈風、吹き抜ける
 廊下にひしめき泣きわめくサッドニオンたちを見て、月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)はげっそりとした表情を見せていた。
「……いやこの玉葱、食用可だとしてもできれば食いたくないヤツじゃない?」
 こんなに泣きわめいて騒ぎ立てるタマネギ、食べられるとしてもやっぱり食べるのは気が引ける。こう、気分的に食べたくないではないか。
 しかし、パウリーネがきょとんとした顔をして首を振った。
「そんなことないですよぉ。迷宮にこもっている最中では貴重な、お腹にたまる食料ですから、結構みんな平気な顔して食べてます」
「えっ食べてるのか? アルダワの学生強いな」
 曰く、迷宮産の災魔で食べられるものは蜜ぷにとかひよこーんとか、色々といることはいるのだが、どれもこれもおやつ感覚で食べるもので、お腹を満たそうと思って食べられる災魔は多くないのだそうだ。
 アルダワ魔法学園の在校生となると、事故だの迷宮の構造変化だので数日地上に帰れなくなることも普通に有り得るため、生き延びるためにみんなサッドニオンも食べているのだそうだ。むべなるかな。
「うわぁん! 昔も今も、どうして僕たちは食べられる運命なんだ! 悲しい!」
 パウリーネの声が聞こえたか、サッドニオンたちの泣き声が一層激しさを増す。その声に耳を抑えながら、ハルマはぺろりと舌を舐めずった。
「ともかく、数は力。個々が大したことなくても甘く見ちゃいけない。故に確実に殲滅させてもらう……って訳でパウリ―ネさん、ちょっと手を貸してもらえます?」
「あ、はーい。了解ですよぉ」
 精霊術士のパウリーネに声をかければ、彼女も頷いて杖を握る。彼女の魔法も活用すれば、制圧力としては十分だ。
 後は、戦場を広く見渡せる場所がほしい。ハルマがきょろきょろと辺りを見回し、廊下の一箇所、構造上どうしても出っ張らざるを得なかったらしいパイプに目をつけた。
「ここからだと……ん、あそこのパイプの出っ張りの上しかないか。パウリーネさん、俺が合図したら同時に精霊魔法、発動をお願いします」
「え、分かりましたけど……パイプってあれですかぁ?」
 ハルマの視線を追って、パウリーネもそのパイプを見た。一応パイプの上部に空間はあるが、人一人が屈んでそこに乗っていられるか、という程度のスペースしかない。
「乗れます?」
「乗る。見ててみろ」
 首をかしげるパウリーネの前で、ハルマはたん、と床を蹴った。そのまま天井近くまで飛び上がり、件のパイプを両手で掴む。そこから反動をつけて身体を持ち上げ、パイプの上に腰掛ける形でスペースに収まった。
「よっと……」
「おぉ……すごいですねぇ。それじゃ、発動準備、いきますよぉ」
 するっと狭いスペースに収まったハルマを感心しながら見上げたパウリーネも、気を取り直して杖を構える。彼女の周囲で精霊たちがざわめく中、サッドニオンたちも動き出した。口から強烈なネギ臭と催涙ガスを放ち始める。
「くそぅ、こうなったらこの廊下まるごと、ネギ臭さで埋めてやるぅ!」
「逃げたって無駄なんだからなぁ! うわーん!」
 未だ泣き止まない彼らを見て目を細めながら、ハルマは収まったパイプの上から飛び出した。同時にパウリーネが杖を鋭く振る。
「よし、行くぞ――吹き祓え、風刃……!」
「風の精霊さん、どばーっとやっちゃってください!」
 次の瞬間、風の刃と暴風がサッドニオンたちを襲った。飛翔するハルマの視界に映る廊下、そのあちこちから風の刃が飛び、そこにパウリーネの放った風が吹き付ける。
「うわ――」
「わーっ!?」
 結果、サッドニオンたちは細切れに寸断されながら、吐き出した催涙ガスとネギ臭と一緒に廊下の隅まで叩きつけられ、そのまま窓ガラスを突き破って建物の外に吐き出されていった。
「ふぅ……だいぶスッキリしたな」
「いやぁ……やっぱりすごいですねぇ、一掃出来たんじゃないですかぁ?」
 かなりサッドニオンを片付けられた廊下に降り立ちながら息を吐くハルマへと、パウリーネは拍手をしながら頷いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎

ピクルスへの熱、冷めがたし
この胸の裡に燻らん……

と言うわけで
リベンジ!再チャレンジや!
(収穫済タマネギは設備の陰等安全そうな場所に

引き続き援護よろしゅう!
あ、パウリーネは火焔系はなるべく控えてくれへん?
ほら、アレや、後始末的に?

敵に警戒されとるやろうから
一瞬三人に敵の気を引いて貰い
迷彩+暗殺+忍び足で姿を周辺に紛れさせ不意討ち気味に攻撃

冷凍ならピクルスやサラダに使えるやろ?とUC展開
生命力吸収したら、瑞々しさがないシワシワのプーになってまう?
そっちの効果はそれこそ限界突破で頑張って抑え気味に

三人が危なそうなら
なぎ払い+吹き飛ばし+浄化+範囲攻撃と
武器受け+盾受け駆使しかばう



●氷華、咲き乱れる
「リベンジ! 再チャレンジや!」
「わー、クルル先輩、頑張りますねぇ」
 クルル、再びサッドニオンたちに立ち向かうの巻。先程収穫したタマネギは安全な部屋の中に置かせてもらった。
 サッドニオンでのピクルス作りに熱を燃やすクルルは、改めて学生たちの隣に立った。パウリーネが感心した表情で彼女を見ている。
 セヴェリとチータも驚くやら、呆れるやら。決意に満ちたクルルの顔を見上げながら口を開く。
「そんなにあれをピクルスにしたいのか、ハンドゥーレ先輩」
「サッドニオンのピクルスかー、そうやって食べたことないや、あたし」
 二人の言葉に、拳をぐっと握りながら微笑むクルルだ。
「したい! あ、パウリーネは火焔系はなるべく控えてくれへん? ほら、アレや、後始末的に?」
「了解ですよぉ。熱が通ったらピクルス出来ないですもんねぇ」
 ぼかして言うが、パウリーネはしっかり言葉の意味を捉えて笑った。セヴェリとチータも肩をすくめている。確かに、火が通ったらピクルスにはならない。冷たい状態で処理しないとならないだろう。
 ともあれ災魔は残りわずか、ここでしっかり決めたいクルルである。
「んじゃ、セヴェリとチータもお仕事頼めへんかなぁ? 私、一回出とるからあれも警戒すると思うねん」
 彼女の言葉に、すぐに頷くチータとセヴェリだ。その後ろでパウリーネも頷いている。
「囮ってことね! 分かったわ!」
「そのかわり、しっかり決めてくれよ」
 ショートソードを掲げるチータに、シタールをくいと持ち上げるセヴェリ。気合は十分だ。その反応にクルルも嬉しそうに笑う。
「ん! 残るサッドニオンはー……あぁ、あそこにおるんで最後やね」
 視線を向ければ、ちょうど廊下の隅の方に十体ほど、サッドニオンが固まっているのが見えた。研究室から溢れ出てくるのは止まったらしい。あれを片付ければ、ここでの仕事はおしまいだ。
「じゃ、行きましょうかぁ」
「ああ」
「頑張ろうね!」
 杖を持ち上げながら言うパウリーネに、セヴェリとチータも答える。意気揚々と歩いていく三人の後ろを、クルルは気配を殺しながら進んでいった。足音も立てないように歩いているから、サッドニオンたちがクルルに気づく様子はない。
 そのまま歩いていく三人の後ろから離れ、出っ張った柱の影になる場所で待機だ。学生三人はそのまま少々歩き、クルルからも見える位置でサッドニオンに声をかけた。
「ほらほら、そこのサッドニオンたち! あんたたちで最後だってんなら根性見せなさいよ!」
「仲間がいなければ戦う気も起きない、なんて腑抜けたことは言いませんよねぇ?」
「災魔の面汚しになるくらいなら、ここで俺たちに料理されるか?」
 明確な挑発だ。この言葉にサッドニオンたちも反応した。
「な……なんだとー!」
「馬鹿にするなんて許さないぞー! うわぁーん!」
 泣きながら小さな分身を生み出し、サッドニオンたちがこちらに駆けてくる。それを見て、学生三人ももと来た廊下を反対方向に走り出した。
 そうしてクルルの前を学生たちが通り過ぎ、サッドニオンがクルルの傍に近づいた時だ。クルルの握る薙刀が細かく解けていく。
「今やね。凍えよ、睡れ、地に堕ちよ――」
 それは生命力を奪う氷華。それがサッドニオンたちの身体を分身もろとも包み込み、体温を急速に奪い取っていく。
「う……!?」
「さ、さむい……」
 次々に動きを止め、活動を停止していくサッドニオン。それを拾い上げながら、クルルはほくほくと笑みを浮かべた。
「よし。これならピクルスやサラダにも使えるやろ。生命力吸収は……ん、いい感じに抑えられとるね」
 サッドニオンの表面をぐにぐに押しながら確認する。しおれたり、しなびたりしている様子はなさそうだ。
「生命力吸収の効果もあったの? そしたらサッドニオンたち、腑抜けたシワシワのプーになっちゃわない?」
「抑えているんなら大丈夫だろう……ともあれ、これで災魔の出現は止まったようだな」
 チータが不思議そうに言うのにセヴェリが反応する。ちらと研究室を覗き込んだが、静かなものだ。これで、この場は大丈夫だろう。
「じゃ、後は元凶の災魔をやっつけに行くだけですねぇ」
「そやね、ほな行こか!」
 パウリーネの言葉に、改めてクルルが頷く。こうして猟兵たちは学生たちの案内を受けて、地下迷宮の迷宮大図書館へと向かうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『書の悪魔ダンタリオン』

POW   :    あなたの技をお返しいたします。
【魔導書】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、魔導書から何度でも発動できる。
SPD   :    尻尾乱舞
【尻尾】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    レインボー・ロード
【七色の竜巻】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラウラ・クラリモンドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●悪魔、囁く
 移動用のポータルをくぐって到着した先は、見上げるほどの高さの棚に、無数の本がぎっしりと詰まった広大な空間だった。
「ここが迷宮大図書館ですよぉ」
 パウリーネがにっこり笑いながら、そう声を発する。ここで日夜、学生たちと教師たちは書籍や文献、魔導書を調査し、大魔王のことや災魔のこと、魔法のことを研究しているらしい。
 セヴェリが辺りを見回しながら、眉間にしわを寄せる。
「ここに、今回の事件を引き起こした災魔がいるということだが……」
「セヴェリ、しーっ。なにか聞こえるよ」
 と、チータが鋭い視線をしてセヴェリを制した。彼女の言う通り、どこからかくすくすと女性の笑い声が聞こえてくる。
「ふふふ、思っていたより早く災魔たちを片付けたようですね。ですが、私も同じように行くとは思わないことです」
「誰だ!」
 その声にまず反応したのはセヴェリだった。彼が発した声に、律儀にも謎の声は返事を返してくる。
「猟書家、『書の悪魔ダンタリオン』。この広大な大図書館の中から、書に潜む私を見つけ出すことが、あなたたちに出来ますか?」
 そう言いながら、ダンタリオンの声はどんどん小さくなっていく。くすくす声と一緒に聞こえなくなったダンタリオンの声。天井をにらみながらパウリーネが言葉をこぼす。
「書に潜む……ですかぁ」
「でも、ここ数ヶ月、あたしたち毎日この図書館に入って調べているもん! 変なことがあったらすぐ分かるよ!」
「そうだな。先輩、指示をくれ。俺たちならきっと、あいつの潜む書を見つける手伝いができるはずだ」
 しかしチータも、セヴェリも力強く猟兵たちに告げてきた。彼らの強力があれば、この広大な図書館の中で特定の本を見つけることも、きっと不可能ではない。

●特記事項
 ・セヴェリ、チータ、パウリーネの三名は引き続き登場します。プレイングで指示を貰えれば、その指示に従って大図書館の中を探索し、怪しい本のある場所を見つけてくれます。
  指示があれば戦闘にも参加しますが、猟兵たちより力は劣るため、援護に徹します。
バロン・ゴウト
これだけの本がある中からダンタリオンを見つけ出すのは大変なのにゃ……。
けど、ここにはバルテレミー班の3人の仲間がいるのにゃ。協力して見つけ出してみせるのにゃ!

敵は七色の竜巻を使って転移するみたいだにゃ。
だったら敵の通った道には、七色の魔力がうっすら残っているんじゃないかにゃ?
セヴェリさん達3人に、敵の通った痕跡がないか一緒に探してもらうのにゃ。
魔力の痕跡を追いかけて敵まで辿り着いたら、【金色の一閃】で敵の潜む書に攻撃し、目印として大きな傷を刻むのにゃ!

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。



●黒猫、辿る
「うーん……」
 大量の、とてつもなく大量の本、本、本。それらを見上げながらバロンは唸っていた。
 これだけ大量に本がある中から、一冊の本を探し出す。途方も無い。
 チータも困った表情をしながら、バロンの顔を見た。
「バロンさん、どうする?」
「これだけの本がある中からダンタリオンを見つけ出すのは大変なのにゃ……」
 彼女の問いかけに、バロンの耳がへにょんと下がった。心が折れそうになってしまうが、しかし。
 バロンは小さく頭を振った。自分が一人で探すのなら絶望的だが、ここには仲間がいる。
「けど、ここにはバルテレミー班の3人の仲間がいるのにゃ。協力して見つけ出してみせるのにゃ!」
 何度も依頼で一緒になって、顔を合わせたバルテレミー班の生徒たち。その3年生三人の顔を見ながら拳を握ると、パウリーネとセヴェリもこくりと頷いた。
「そうですよぉ、どーんと任せて下さい! 探すのは得意ですから!」
「ああ。それに、俺とチータは床に視点が近い。足元のものを探すのは得意だ」
 二人の頼もしい言葉に、バロンも気持ちを新たにする。そうして、三人に向き直りながら口を開いた。
「そうだにゃ。それじゃあ、皆さんにお願いがあるのにゃ」
 お願い。その言葉に学生たちの表情も固くなる。それを見ながら、バロンはさっと手を動かした。
「ダンタリオンは七色の竜巻を使って転移するみたいだにゃ。だったら敵の通った道には、七色の魔力がうっすら残っているんじゃないかにゃ?」
 聞くに、ダンタリオンのレインボー・ロードは七色の竜巻を放って、指定した対象を「棲家」に転移させる攻撃だ。その攻撃を自分に対して使い、竜巻を使って転移を行っている可能性は十分にある。
 ここは図書館だ。彼女にとっては、ここが棲家で間違いはないだろう。
「なるほどー、それを辿ることが出来れば、行き先が分かるってことだね!」
「七色の竜巻の対象を自分にする、ということか……可能性はありそうだな」
 チータとセヴェリが納得したように頷いた。すぐさまにセヴェリが愛用のシタールを取り出し、爪を右手にはめる。
「よし、探るぞ。俺が音塊を使って周辺の魔力を可視化する。パウリーネとチータとゴウト先輩は、それを頼りに探してくれ」
 つまり、細かな音塊を大量に放ち、それが吸い寄せられた魔力を見つける、という方針だ。これなら目で、魔力を追うことができる。
「了解ですよぉ」
「まっかせて!」
「分かったのにゃ!」
 パウリーネが、チータが、バロンが頷くと、セヴェリは細やかな手付きでシタールの弦をかき鳴らし始めた。大量に放たれる小さな音塊が、四方八方に広がっていく。
 それを見届けた後、三人は周辺を探索し始めた。床も、壁も、本棚も空中も。どこかに魔力がこびりついていれば、それがダンタリオンの移動によるものかが分かる。
 果たして数分後、チータが空中を指差して声を上げた。
「あ、見て! あそこに音塊が集まってるよ!」
「ありますねぇ。七色に輝いているように見えませんかぁ?」
 パウリーネも、音塊がたくさんくっついた魔力の痕跡に顔を近づけた。音塊に反射して散乱するように、魔力から発せられる光が七色に輝いている。
 間違いない、これだ。
「間違いないにゃ。あの魔力を辿るのにゃ!」
 バロンの声に従い、四人は移動しながら魔力の痕跡を探った。セヴェリも移動しつつシタールを弾き、音塊を次々放っていく。
 そうして十数分、魔力を辿りながら探し、バロンたちがやってきたのはとある大きな本棚の前だった。
 セヴェリが演奏の手を止めながら口を開く。
「魔力はこの辺りに続いているんだったか?」
「そうですねぇ……あっ」
「パウリーネ?」
 と、上の方の棚を見上げていたパウリーネが声を上げた。首をかしげるチータに、彼女は無言で人差し指を口の前で立てる。
 そしてパウリーネは、彼女の目の高さにある棚、そこの真ん中あたりに置かれた分厚い本を指差しながら、小声でバロンに囁いた。
「バロン先輩。ここの本、怪しくないですかぁ?」
 その本は、いかにも古そうな本だ。背表紙にはどこの文字ともしれない文字が刻まれている。見るからに魔導書、という雰囲気だが、それだけではない。何とも怪しげで、嫌な雰囲気の漂う本がそこにあった。
 これが、ダンタリオンの潜んでいる本で間違いないだろう。バロンも頷いて小声で返す。
「間違いないにゃ。パウリーネさん、そのままそーっと、そーっと下がるのにゃ……」
 彼に言われるがままに、パウリーネが数歩、足音を潜ませて後方に下がる。問題の本の場所まで障害物がないことを確認したバロンが、レイピアの鞘を捨てた。
「行くにゃ!」
 床を蹴って一気に飛び出したバロン。そのレイピアが深々と、問題の本の背表紙に突き刺さった。ガタガタと揺れた本から、ダンタリオンの声がする。
「ぐ……!? 私ではなく、私の潜む本の方を傷つけるなんて!?」
「本に傷がついていれば、目印になるはずだにゃ! そうしたら他の人も探せるにゃ!」
 するりとレイピアを抜いて棚から飛び降りるバロン。その方に、本から飛び出したダンタリオンが忌々しそうな瞳を向けると、彼女は七色の竜巻を本の周囲に生み出した。
「おのれ、猟兵! だが、次はそうはさせない……!」
 その竜巻が一瞬、びゅうと風切り音を鳴らす。次の瞬間竜巻は、小さくなって図書館のどこかに飛んでいった。

●特記事項
 ・猟兵の攻撃により、ダンタリオンの潜む魔導書の背表紙に穴が空きました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハンナ・レドウィッチ(サポート)
ふふん、どうやら大天才邪竜神様の手助けが必要なようね。
不要と言われても助けに行くから、安心して崇め奉りなさい!

超自信過剰なオラトリオの自爆魔法使い。UC大召喚を使用しない間(使用予定無し)、UCの成功率が下がる(お任せ)為、よく自爆して気絶します。
棒術に長け、マイケルくんでの接近戦が得意ですが見た目は若くてもお婆ちゃんなので腰に来ると戦闘不能に。
UCは選択した物を自爆を何故か恐れず強気で使用し、成功すると小躍りして喜びます。

接近戦ではマイケルくんで攻防一体の戦闘を行い、他猟兵と積極的に連携。
隙を見て、あるいは調子に乗ってUCを使用します。
アレンジその他全てお任せ致します!



●邪竜神、爆ぜる
 迷宮大図書館には、何人もの猟兵がやってきてはダンタリオンの捜索に参加していた。ハンナ・レドウィッチ(天災級自爆魔法使い・f31001)もその一人だ。
「ふふん、どうやら大天才邪竜神様の手助けが必要なようね。不要と言われても助けに行くから、安心して崇め奉りなさい!」
 自信満々に胸を張りながらそう言うと、ハンナはちょうど傍にいたセヴェリへと声をかける。
「そこの少年! この図書館には悪魔が潜んでいると聞いたけれど、本当ね!?」
 声をかけられたセヴェリが驚いた表情になると、すぐさまこくこくと彼女に向かって頷いた。
「あ、ああ、間違いない。本に潜んでいて、先程本の背表紙に深い傷をつけられたから、探せば見つかると思う」
 その言葉に、にやりと口角を持ち上げるハンナだ。相棒の箒、マイケルくんに跨って、一気に飛び出していく。
「了解よ! 行くわよ、マイケルくん!」
 図書館内を箒で駆け回りながら、ハンナは伝えられた「背表紙に傷のある本」を探した。飛び始めてしばし、とある本棚の前を飛んでいたハンナが声を上げる。
「背に傷のついた本、傷のついた本……あっ! マイケルくん、ストップ!」
 高いところにある棚の前で、ハンナは急ブレーキをかけた。その棚の上、隠れるようにして背表紙に深く穴を穿たれた本が収まっている。その本が、ガタガタと揺れ動き始めた。
「くっ、もう見つかってしまった! やはり印をつけられると厄介ですね……!」
「ようやく見つけたわよ悪魔! この大天才邪竜神様の力の前にひれ伏しなさい!」
 ダンタリオンが困惑した声を出す中、ハンナはびしりとそちらに指を突きつけた。
「いくわよ! 大天才、ウィザード・ミサーイル!!」
 そのまま、大天才ウィザード・ミサイルを放つ。
 のだが。盛大な爆発音を立てて、ハンナの身体が爆発した。
「えっ」
 自爆したのだ。そのことに素っ頓狂な声を上げるダンタリオンだったが。爆発と一緒に撒き散らされた炎が、ダンタリオンの本にも燃え移る。メラメラとページが萌え始めた。
「ちょ、いやっ、火、火がっ!? 魔導書に火がっ!?」
「うわっ、大きな音がしたと思ったらなんだ!? パウリーネ! 本棚の本を避難させろ!」
 爆発音を聞いてやってきたセヴェリも、本が燃え始めたことに慌てている。ハンナも自爆の衝撃から起き上がるや、本が燃えてしまわないように避難を始めた。そのスキを突いて、ダンタリオンは再び逃げていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

伊坂・和良(サポート)
伊坂和良の主人格には戦闘能力が無いので主人格での戦闘は行わないのでござる。
アイテム【多種多様の面】を付ける事で別人格を呼び起こし戦闘できるのでござる。
使用ユーベルコードは着けている面に対応しているので秘密の設定に(○○面装着時)と書いているのでお手数ですが見て頂けたら嬉しいでござる。
口調は主人格(わし、お前さん、ござる、ござろう、〜でござろう?)
天狗面(わし、お主、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)
ひょっとこ面(おいら、お前さん、だ、だべ、だべさ、だべ?)です。



●仮面、嗤う
 他方、多数の本を見上げながら、伊坂・和良(面の力を借りるオッサン猟兵・f22018)も顎に手をやっていた。
「ふむ……このような場面、どうなるかと思ったが。本を探すだけなら、わしにも出来そうでござるな」
 戦闘行為は主人格では行えないが、探索は別だ。探すまでなら面をかぶらなくてもできる。
 そして和良は視線を下に向けた。ちょうどそこにはチータが立っている。
「して、その本は背表紙に穴が空き、一部が焼け焦げた古い魔導書、ということで良いのでござるな?」
「そうだよーっ。さっきから紙の焼けるくさい臭いがしているから、こっちにあると思う!」
 チータも和良の言葉に頷きながら、その着物の裾をくいくいと引いた。彼女に連れられてついていくと、なるほど、確かに紙が焼け焦げたような臭いがうっすらと感じられる。
「この辺、なんか臭いでしょ? だからこの棚のどこかにあると思うんだ!」
「確かに。では、探すでござる」
 チータの言葉に頷きながら、和良は本棚を探し始めた。問題の本がないかどうか、細かくチェックしていく。
 そうしてしばらく探していると、なにやら怪しい雰囲気を発する本を棚の上の方に見つけた。
「むっ、あれなる本、面妖な雰囲気を感じるでござる。では……」
 それを確認して、和良は懐に手を入れる。そして天狗面を取り出し顔に装着すると、棒手裏剣を一本投じた。
「喰らえっ!」
「ぐっ!?」
 その手裏剣が、怪しげな魔導書の背表紙に突き刺さる。するとたまらず、ダンタリオンが本と一緒に飛び出してきた。
「バカな、もう見つかってしまうだなんて!?」
「わしに見つかったのが運の尽きよ。お主の命運もここまでじゃ!」
 姿を確認するや、和良に面の力が集まっていく。様々な面の力が彼に集まり、その身を蝕むと同時に力を飛躍的に高めていった。
 そこから投じられる多数の手裏剣。それがいくつも、ダンタリオンの身体に突き刺さっていく。
「くっ、なんという力……! 付き合っていられません、退却させてもらいます!」
「待つのじゃ!」
 たまらずに逃げ出したダンタリオンに、もう一本手裏剣を投じる。それが突き刺さるより早く、ダンタリオンは七色の竜巻になって姿を消してしまった。
「くっ、逃げられたのじゃ……じゃが、敵もだいぶ消耗しているはず」
 面を外しながら、和良は嘆息した。ようやく体を蝕む痛みから解放されて安堵しつつ、再び逃げたダンタリオンを探し始めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アーデルトラウト・ローゼンハイム(サポート)
ノブリスオブリージュを体現したような性格で優雅さや華麗さに拘る割になんでも腕力による力押しで解決しようとするギャップのあるキャラです。
戦闘ではセイクリッドダークネスを使うこともありますが基本的には素手による格闘戦や腕力を活かした力押しを行います。日常では貴族的な振る舞いをしようと心がけますが基本は従者に頼らないと生活力は皆無です。



●貴族、力を振るう
 アーデルトラウト・ローゼンハイム(デビル貴族・f32183)は優雅にドレスの裾をはためかせながら、図書館の通路を歩いていた。
「デビル貴族たるもの、書に親しむことは必然……その書を以て悪を為すというのなら、立ち向かうまでです」
 本を読むことは貴族のたしなみ。アーデルトラウト自身は脳筋で難しいことはあまり考えない質だが、それはそれ、これはこれだ。
 と、ちょうど別の通路からパウリーネが姿を見せた。アーデルトラウトの姿を見るや、通路の一方向を指差しながら言う。
「あ、ちょうどよかった! アーデルトラウト先輩、ちょうどあっちに悪魔の魔導書が逃げていったんです、追いかけるの手伝って下さい」
「分かったわ、任せてちょうだい」
 先導するパウリーネにアーデルトラウトもついていく。そしてやってきたのは本棚の多数並んだある区画だ。
「こっちに逃げていったのね?」
「そうです、たぶんこの辺に……あっ」
 アーデルトラウトが呼びかけ、パウリーネが歩き出そうとしたその時。彼女は不意に足を止めて屈み込んだ。
「どうしたの?」
「この、一番下の棚……ここに見つけました」
 彼女が指差したのは、一番手前の本棚の一番下の段、端っこの方だ。ここならば死角になって見つけにくいだろう、とダンタリオンは踏んだのだろう。
 しかし、こうして見つかってしまった。アーデルトラウトが本に手を伸ばす。
「これが悪魔の本なのね? 分かったわ」
「えっ」
 ダンタリオンが反応するより先に、アーデルトラウトの手が傷だらけの魔導書を掴んで振り上げた。そのまま、ばしんと床に叩きつける。
「せいっ!」
「ぎゃっ!?」
 叩きつけられた衝撃で本が開き、ダンタリオンが飛び出してきた。耐性は明らかに崩れている、その隙きを逃さずにアーデルトラウトは拳を打ち込んだ。
「手の届くところにいたのが運の尽きです。はっ!」
「ぐ……な、なんてことを!」
 その拳が、ダンタリオンの額に命中する。もんどり打って転がったダンタリオンは、そのまま通路の向こうに消えていった。しかしその動きはだいぶ覚束ない。
「だいぶフラフラになっていますね。もう一息でしょうか」
「そうですねぇ、追いかけますよぉ!」
 アーデルトラウトの言葉に頷きながら、パウリーネも動き出す。もう、相手は虫の息だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎

迷宮大図書館!
見渡す限りの本!
読書好きとしては狂喜乱舞、ずっとおりとうなる聖域!楽園!
酒と肴あったら永遠におれそう…

第六感で怪しそうな場所に当たりをつけ
危険なきようかばいつつ三人にチャックしてもらう

イヤイヤ、興味深ソウナ所バッカリ見テナイヨ?

当たり引いたら三人には援護して貰うべく後方へ
見切りで敵攻撃射線等分析
武器受けと盾受けとかばう駆使

敵UC?全力で抗うで?
棲家って何処?住民票のある場所?
て言うか、終の棲家にしたい所なら此処や!意地でも引き剥がされへん!
本ある場所で竜巻なんぞ起こさんとき、この紙魚もどき!

敵睨み付け
あらゆる技能とともにUC展開
天界・黄泉の本好きの怒り思いしれ!



●本好き、笑う
 一方。クルルは大図書館の中で瞳をキラキラと輝かせていた。
「迷宮大図書館! 見渡す限りの本! 読書好きとしては狂喜乱舞、ずっとおりとうなる聖域! 楽園!」
 古きも新しきも、様々な内容の本が選り取り見取り。これは本好きにとっては楽園だろう。クルルにとってはまさにそうだった。
「いやぁ……酒と肴あったら永遠におれそうやんなぁ……」
 舌なめずりしてしまうクルルに、パウリーネが苦笑しながら声をかける。
「クルル先輩、分かってるとは思いますけれど、ここ、飲食物持ち込み禁止ですからねぇ」
「モ、勿論分カッテルヨ? 本ノ傍デ飲ミ食イナンテシナイヨ?」
 その言葉にギクッとなりながら視線を逸らすクルルだ。口調がぎこちなくなっている辺り、考えていなかったわけではないのだろう。
 それはそれとしてだ。敵の命は風前の灯。とどめを刺すためにも動かねばなるまい。
「まあ、それはそれとしてだ。どう探す?」
「背表紙に穴が空いてー、本が焼け焦げてー……見つけようと思えば簡単に見つけられそうだよね?」
 セヴェリの言葉に、チータも頷いた。既に問題の本はボロボロ、目で見ればすぐそれだと分かるだろう。
「せやな。とりあえず探していこか」
 頷いて、クルルは三人の生徒を引き連れて本を探し始めた。
「うーん……」
 古代の魔術の本が集まる本棚を覗き込んでは唸り。
「ふむー……」
 地方の酒について記した本が集まる本棚を見ては唸りして。
 そして、セヴェリがクルルの服の裾を引っ張った。
「おい、ハンドゥーレ先輩。まさか自分の興味のある本の場所ばかり探していないだろうな?」
「イヤイヤ、ソンナコトナイヨ? ……ん?」
 セヴェリの言葉にもう一度クルルが四川を逸らした、その時。視線を逸らした先に、傷だらけで震えている本を発見した。
 途端にクルルの表情は険しくなる。学生たちに向かって手を伸ばし、後方に下がらせた。
「パウリーネ、セヴェリ、チータ。下がっとき……当たりや」
「おっと、了解だ」
「ここで引くとは、持ってますねぇクルル先輩」
「しっかり援護するから、よろしくね!」
 クルルの言葉に従い、三人は彼女から距離を取った。そして各々が武器を握る中、ダンタリオンが本棚から飛び出してくる。
「く、くぅっ! かくなる上は、皆まとめてここから追い出して差し上げます!」
 そうして彼女が放つのは七色の竜巻だ。しかし彼女自身を転移させるものではない、クルルたちに向かって放たれたものだ。しかし、クルルはダメージを一身に受けながらもその場に立っている。
「何言うてるん、全力で抗うで?」
「な……」
 まさか、全てのダメージを引き受けるとまでは思わなかったのだろう。実際、学生たちは竜巻の外に逃げ出している。この場に立っているのはクルル一人だ。
 そしてクルルはダンタリオンを睨みつけながら叫んだ。
「棲家って何処? 住民票のある場所? て言うか、終の棲家にしたい所なら此処や! 意地でも引き剥がされへん!」
 その気迫の籠もった言葉に、ダンタリオンも、竜巻の外の学生たちも目を見張った。
 その中で、一歩一歩、クルルは足を踏み出していく。鋭い視線をダンタリオンにぶつけていく。
「本ある場所で竜巻なんぞ起こさんとき、この紙魚もどき!」
「う……っ!?」
 途端に、ダンタリオンは後ずさった。が、その身体にまとわりつくように炎が、闇が覆いかぶさってくる。
 めらと、ダンタリオンの潜んでいた魔導書に炎が燃え移った。
「天界・黄泉の本好きの怒り思いしれ!」
 本が燃え上がると同時に、ダンタリオンの身体が闇に飲み込まれていく。苦悶の表情を浮かべながら、彼女の姿は闇に消えていった。
「あ、ああ……」
 そんな断末魔を残した瞬間、魔導書が一気に燃え上がる。そしてあとに残るのは、絨毯の焦げ跡だけだ。
 それを足で踏み均したクルルが、コクリと頷いて学生たちに振り返る。
「よし、これで終いや! 三人ともお疲れさんや!」
 にこやかな笑顔で振り返ったクルルに、チータも、セヴェリも、パウリーネもこくりと頷いて返した。
「うん、クルルさんもお疲れ様!」
「ああ」
「それで、どうしますぅ? もうちょっとここの図書館を調べてから戻りましょうかぁ」
 と、そこでパウリーネが人指し指を立てつつ言う。その言葉に一気に表情を輝かせるクルルだ。やはり、ここで本をちゃんと読んでいきたい。
「そやね、せっかくだからここの本読んで帰りたい!」
 そうしてクルルは本棚に向かっていく。その喜びぶりに学生たちも苦笑しながら、各々自分の読みたい本を探しに行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月19日


挿絵イラスト