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翼持つ盗賊王

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●強欲な者の巣
 薄汚れた服に身を包んだ盗賊の男が山の中を歩き、足早にアジトへ戻る。血糊で汚れた剣を破れた布で乱雑に拭い、捨てた。そして歩行のペースを落とさぬまま懐から金品を取り出し、口元を歪める。
 ――アイツら、いいモンもってやがった。
 太陽の光を浴びて輝く紅色の宝石。小粒だが縁を飾る細工はなかなかに上等そうだ。
 笑みはますます濃くなり、歯を露出させる。隙間の目立つ歯からくつくつと笑い声が漏れた。
 ――これならボスも満足するはず。
 盗賊はひと仕事終えたあとだった。行商人を道で待ち伏せして、馬を弓で射り、移動手段を奪い、風上から毒を撒く。弱ったところでトドメを差せば荷物が丸々手に入る。嵩張る荷物はすべて捨ててきたが、硬貨と宝石だけあれば充分だ。簡単な仕事で欠伸が出る。
 ――これで女でもいればな。
 金品が手に入ればボスに献上しなければならない。だがボスは女には興味を示さない。だから行商人の馬車に女がいれば自分の獲物にできたのだが。
 まあいい、次の獲物に期待しよう。そう思ってようやく到着したアジトは山の中腹にある、木材を組み合わせて作った建物だ。さっそく中へと足を踏み入れようとした、その瞬間。
 突如、咆哮がアジトに鳴り響いた。
「うぐッ…! こいつぁ…!」
 びりびりと空気が悲鳴を上げる。粗末な造りのアジトはそれだけで軋んだ。人間を殺しても何ら痛痒も感じない盗賊が、肝を潰してへたり込む。
「ぼ、ボス…!」
 彼の王の咆哮だ。ただの咆哮であるが込められた意思を正しく汲み取れた。すなわち、王は飢えていると。王は乾いていると。王は財を求めていると。王は全く満たされていないのだと。
 盗賊は震える手で懐から硬貨と宝石を取り出すが、無言のままそれを握りしめた。
 ――これっぽっちじゃ全然足りねぇ。ボスに殺されちまう!
「おい!」
 彼は声を張り上げた。アジトには同じく顔面を蒼白にさせた同類がいる。
「いまから行くぞ! ここから西にある一番近い村を襲う! 全員でだ!」
 アジトに住む盗賊は十数人に及ぶ。その全員が恐怖に支配されながら得物を用意し、慌てて出発した。
 やがてその地に残ったのは咆哮の主。彼らの王のみ。
 王は財の散らばる吹き抜けの間で、翼を広げて再び吠えるのだった。

●グリモアベースにて
「猟兵のみなさん、集まってくださりありがとうございます」
 白い軍服に包んだ少女はぺこり、最初にお辞儀をして、それから皆の目を見た。
 ヴィル・ロヒカルメというグリモア猟兵がオブリビオンの事件を予知したというのだ。
「みなさんに来ていただきたいのはアックス&ウィザーズ世界になります」
 剣と魔法と竜が軸となる世界。そこにはダンジョンから出現するモンスターや邪悪な魔法使い、盗賊や悪魔、そしてドラゴンといった多種多様なオブリビオンと、それに立ち向かう冒険者たちが主役になる場所だ。
「そこにある、盗賊団の討伐をお願いしたいんです」
 ひとことに盗賊団と言っても、少女の意味するところの盗賊は他の世界のそれとは少し違う。アックス&ウィザーズにおける盗賊とはモンスターと同じ扱いだ。人間が盗賊になると知性と協調性などが低下している代わりに、体力や荒野での生存能力が上昇しているというのだ。
「でも、注意してください。ただの盗賊団ではありません」
 グリモア猟兵の少女は表情を強張らせる。ただの盗賊団であればその世界の冒険者で対処できる存在だ。しかし今回はそう簡単な問題にならない理由があった。
「その盗賊団。ワイバーンが率いてるんです」
 ワイバーン。
 アックス&ウィザーズの世界の強者であるドラゴンの亜種。知能は低く、人語を解さないがその戦闘力は非常に高く、並の冒険者では歯が立たず餌にされてしまうだろう。
「アックス&ウィザーズの世界に馴染みのない人は驚くかもしれませんが、盗賊団を支配する個体が存在します。今回討伐する盗賊団はそういうものです」
 だから猟兵の出番だというわけだ。
「さて盗賊団の倒し方ですが、彼らは全員で付近の村を襲おうとするようです」
 彼らのアジトは山にある。ちょうど山から下りたところを迎撃するのがいいだろう。敵の数は十数人だ。集団戦になるのでそういう心積もりで準備を整えていくといい。
「あ、このときワイバーンが戦いに参加することはないので安心してくださいね」
 ワイバーンはアジトから動かないと、グリモア猟兵は断言する。だからここまではそれほど脅威にはならない戦いのはずだ。
 問題はその次。
「無事に盗賊団を倒せれば、そのままアジトでワイバーンとの決戦になります」
 巨体を生かした攻撃を仕掛けてくるだろう。それに空だって飛ぶかもしれない。他の攻撃手段も考えられるから、警戒が必要だ。
「強力なオブリビオンですので、気を付けてくださいね」
 グリモア猟兵の少女は目を伏せる。危険な戦いを依頼することに引け目があるようだ。このままではただ猟兵の不安を煽るだけかもしれないと思い、両手で握り拳を作る。
「で、でもそのワイバーンさえ倒せれば、盗賊団の溜め込んだ食べ物やお酒、あとはお金などを使って宴会ができますよ!」
 勝利の後に大宴会をするのは、この世界では当然のことですからねと付け加える。近くの村へ買い物してきたっていい。買い出しなら任せてくれと少女は言う。
「だから」
 言葉を切って、それから静かに頭を下げた。
「よろしくお願いします。皆さんならきっと勝てます」
 そういって、緊張の滲んだ声色で説明を締めくくるのだった。


鍼々
 鍼々です。今回もよろしくお願いします。
 この依頼はアックス&ウィザーズにおける盗賊団の討伐依頼となります。
 盗賊団のアジトの場所は既に判明しているので調査する必要はありません。
 どうぞ剣と魔法と竜のファンタジー世界をお楽しみください。
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第1章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「急げ、モタモタすんな」
 山中の木々の間を縫って進む盗賊が同僚に声を荒げる。口調は通常、仲間に向けるそれよりも随分と高圧的で刺々しい。あるいは彼ら盗賊は仲間へ向ける情というものが乏しいのかもしれない。
 薄汚れた靴で根を踏み土を踏み、盗賊たちは山の麓を目指す。
 麓からは草原が広がる。遮蔽物と言えばまばらに生える背の高い木くらいしかない土地で、多少の緩やかな勾配こそあるものの、見晴らしのよい地形と言っていい。
「おい、あれ…」
 だから、盗賊たちがある集団に気付いたのは麓についてすぐのことだった。
「冒険者か?」
 10代の男女が多くみられる集団。上は30ほどだろうか、下は年齢一桁。ほとんどが武器を所持している。
 おそらくは酒場で依頼を受けてきた連中だろうが、どうやら自分たちのことをただの盗賊団だと思っているらしい。
 盗賊の男たちに昏い喜びが湧いた。
 もしボスのことを知っているなら、自分たちに手を出そうとは思わないはずだ。冒険者ごときじゃボスに敵うわけがない。
 連中がその程度の冒険者なら。
「こいつら…」
「ああ」
 いいカモだ。身包み剥いで金目のものはボスに献上し、女は楽しませてもらおう。
 下卑た笑みを隠しもせず、盗賊は冒険者らしき集団を囲むように近づいて行った。
白峰・慎矢
竜が盗賊団のボスとは、変わった世界もあるもんだね。ま、何であろうと村の皆には指一本触れさせないさ。

集団戦なら、俺は錬成カミヤドリで自分の本体である弓を複製して、遠距離から一斉射撃で盗賊たちを攻撃しようかな。相手に囲まれないように、攻撃されないように牽制する感じで、殺れれば殺るけど、基本的にとどめは他の皆に任せるよ。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、ってね!」
敵に接近されちゃったらサムライブレイドで応戦することになるかな。
相手の攻撃は残像とか使って、上手くかわせると良いよね。
相手は焦ってるみたいだけど、こっちは冷静に、一匹ずつ倒していこう。


戦場外院・晶
【忍び足】で静々と歩きましょう、悪漢は弱者に寄るものです

戦う段になったら【祈り】を込めて語ります
「私達は猟兵です。悪を働く者を殺すことを生業とするもの……悔い改めて正しく生きると、この瞳を見て誓えるのなら、追いはしませんわ」

悔い改めて欲しいと思います、少しでも下賤の心を薄れさせ手を鈍らせる者がいればいいと思う自分がいます……やはり血祭りに上げてやりたい、と思う私で御座います

「悔い改めないなら仕方なし、ええ、仕方なし!」

かかって来た方の【手を握り】捕まえます
【グラップル】と【怪力】で瞬時に関節を破壊し戦力を奪いましょう

「……雄叫びより、悲鳴の方が素敵ですとも、いい声に免じて命までは取りませんわ」


日和見・カナタ
「竜は世界を巡り財宝をかき集める者──となると、珍しいお宝も期待ですますね!」

私は【SPD】を活かして戦います!
【ロケットパンチ】で石礫を投げている山賊たちまでの道を開けたあと、そこを駆け抜けて【アームガジェット】や【レッグガジェット】で彼らを殴りますよ!
攻撃するときは【属性攻撃4】で雷を付与して威力を上昇させます!

こちらへの攻撃はできるだけ避けますが、当たりそうなものがあれば腕や足で防ぎましょう!
もし金属製の武器を使っているなら、逆に雷を流しても良いかもしれませんね!



まず、ひとりの娘が集団を離れて盗賊へと近づいた。
 長い金髪と白い肌を持つ十代半ばの若い娘だ。名は戦場外院・晶(強く握れば、彼女は笑う・f09489)という。彼女は剣呑な空気を纏う盗賊に臆することなく、胸の前で両手を合わせて握る。
「私達は猟兵です」
 何を言い出すかと思えばと、盗賊たちが顔を見合わす。ピンとこない表情だが仕方がない。アックス&ウィザーズの人々に猟兵の知識はないのだ。ゆえに冒険者との区別がつかない。ゆえに侮る。
「悪を働く者を殺すことを生業とするものです」
 晶は紡ぐ言葉に祈りを込めて、赤い瞳で盗賊たちを見た。どうか己が所業を悔いて、改めてほしいと。
「悔い改めて正しく生きると、この瞳を見て誓えるのなら、追いはしませんわ」
 しん、と草原が静寂に包まれる。
 その後方で白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)が腕を組んでいた。赤い瞳に白い髪。いつも笑顔を浮かべていそうな青年だが、いまの表情は厳しい。
 やがて、盗賊が静寂を破る。笑い声だ。娘を世間知らずと嘲るような、品の悪さがありありと滲んだ笑い声だ。
「お嬢ちゃん」
 盗賊が懐から得物を取り出す。欠けた刃の目立つ、しかし重量のありそうな鉈。
「追うのは俺らのほうだぜ」
 濁った瞳にありありと欲望を湛えて、晶を捕まえようと手を伸ばし近づいたそのとき。
「……は?」
 ひとつの矢が盗賊の腕に突き立った。
 腕を抑えて蹲る同僚を尻目に、他の盗賊がざわめいて刃物を抜き駆けだす。彼らの視線の先は慎矢だ。
 慎矢は手に持った弓を複製して並べていた。その数は十余り。いかなる力か、矢を番えて弦を引き絞られた状態で宙に浮かぶ。そして一斉に放たれれば、たちまち矢が盗賊へ襲い掛かり、接近を止めてさらには包囲の展開を阻むのだ。
「殺しはしないよ。あまり、ね」
 現に、先ほどの弓の斉射は牽制を目的としたもの。胸や腹、頭などの急所は特に狙っていない。傷ついた敵へ積極的に追撃することなく、むしろとどめは他者に任せるつもりでいた。
 弓に矢を番える慎矢にひとつ思うところがある。
 見たところ、敵は普通の盗賊団に見える。特に竜の声で鳴かないし、口から火を噴くこともない。それでもこの盗賊団のボスは竜なのだという。
 ――変わった世界もあるもんだね。
 何であろうと盗賊には、村の人間に指一本触れさせない。複製全ての準備を済ませた慎矢は口元を歪めて笑みを作った。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、ってね!」
 二度目の斉射が盗賊へ降り注いだ。

「竜は世界を巡り財宝をかき集める者──となると、珍しいお宝も期待ですますね!」
 石を拾い礫としようする盗賊を見つけて、すかさずロケットパンチを放つ日和見・カナタ(冒険少女・f01083)は、盗賊たちの主に思いを馳せながらも、決して戦闘から手を抜かなかった。
 銅色の眩しい腕が、猟兵たちへ前進していた盗賊を押しのけて道を作る。所謂前衛に相当する連中は慎矢が押さえてくれている。だからカナタの狙いは後衛。つまるところ石礫で仲間を狙う連中だ。
 戻ってきた拳を回収するやいなや、四肢のガジェットから蒸気を噴出させて駆けだす。僅かな時間でトップスピードへ至ったのはサイボーグの面目躍如か、冒険心と物欲を燃料に変えて突撃した。
「な、なんだおまえ!?」
「サイボーグ、しらねーですか?」
 薄緑色のゴーグル越しに敵を見る、カナタ。溢れんばかりの自信を胸に拳を振りかざす。すると両腕の蒸気機関がたちまち電撃を帯びた。
「ちょ、ちょっと待――」
「待ちませーん!」
 電光を迸らせた拳が、盗賊の顔面に叩きこまれた。

 戦いの喧騒に囲まれながら、晶は静かに両手を力なく降ろした。
 悔い改めてほしかった。少しでも下賤の心を薄れさせ手を鈍らせる者がいればよかった。でも、現実はこうだ。誰一人そのようにはならず、こちらを手に掛けようとしてくる。
「悔い改めないなら……」
 ぽつりと、唇から言葉が零れ落ちた。
 改めないなら仕方ないのではないか。言葉を尽くしてもなお刃を向けてくるのなら仕方がないのではないか。だって、どうしても。
 仕方ないと胸の内で繰り返しているうちに、こちらへ手を伸ばしてくる盗賊が見えた。醜い怒りと欲望がその瞳に見える。
 ――だって悔い改めなかったのだから、血祭りに上げても仕方ない。
 秘めたる欲望を解き放つ大義名分を得て、晶はうっすら笑う。伸ばされた手をつかみ取り、瞬時に関節を極める。
「あぐっ!? ぐあああ離せ!!」
 耳障りな悲鳴に笑みを濃くして、そのまま力を込める。関節を破壊された男の声が響いた。
「……雄叫びより、悲鳴の方が素敵ですとも、いい声に免じて命までは取りませんわ」
 さて。次の悔い改めなかった者を探そう。それはどんな声で鳴くだろうか。

 いよいよ接近してきた盗賊を見て、慎矢は静かに弓を仕舞い、剣を取り出す。それもただの剣ではない、鋭い切れ味を誇りながらも美術品としての側面も持つ、侍の魂。サムライブレイド。
 慎矢は剣を構えながら、しかし鉈を振りかぶった盗賊に対しなんら防御的な行動をとらなかった。
 やがて盗賊の刃が彼の体を真一文字に通り抜ける。
「なに!?」
 顔を驚愕に染めるのは慎矢ではない。盗賊のほうだ。間違いなく致命傷を与える一撃であったのに、全く手応えがなかったからだ。そう、まるで霞でも斬ったような――。
 ズン、と衝撃が盗賊を襲う。
「え…?」
 体を斬られている。右肩から左の脇腹まで真っ直ぐに。傷口からはだばだばと赤いものが溢れ出て、間もなく死ぬのだなと盗賊は悟った。
「あ――」
 もはや言葉も出なくなった。剣を振り抜いた姿勢の慎矢だけが見えた。盗賊は意識が途絶える最後まで、彼が何をしたのか理解できなかった。

 かきん。甲高い音が響く。それはカナタの腕が刃を弾く音。石礫を蹴り上げる音。そのいずれも義手義足の装甲に傷をつけることは叶わない。
「やっぱり無駄ですね?」
 そう、無駄だ。盗賊の攻撃のほとんどを避けて、避けきれなかったものだけ手足で受ける。しかしその避けきれなかった攻撃ですら到底カナタを傷つけるに至らない。
「この、クソアマ!」
 絶望的な力の差を認められず、盗賊が乱雑に刃を振るった。一、二と上半身を捻って避けるカナタだが続く袈裟斬りは避けられそうにないと悟る。
 だから腕を翳して防ぐのだ。青白い雷光を纏わせて。
 盗賊の不幸は、猟兵の集団などという敵と戦いになってしまったことと、そして金属製の武器を使っていたことだったかもしれない。
 カナタの腕から盗賊の刃を伝わって、その全身を雷が駆け巡る。
「ア、ガガガガガッ!?」
 全身を痙攣させて倒れ込む様子に、カナタは満足げな表情を作った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都築・藍火
戦の常とは如何にうまく後衛を潰すかに尽きるのでござる。
集団戦とのこと故、拙者は砕天號を使用した巨大な弓による遠距離攻撃を行うでござる。
先ず距離のあるうちに先制攻撃を行い数を減らすべく努め、先頭が開始次第、敵の後衛を狙って弓での攻撃を行うでござる。
すべての敵が何らかの形で接近戦闘を行い始めれば、誤射を避けるため弓を仕舞い、槍での攻撃に移行するでござる。砕天號は上半身だけで二間に届くほどの大武者、槍を振り回せば当然味方も巻き込みかねない故、戦闘時は最新の注意を払い、刺突での攻撃を主とするでござる。


雨乃宮・いづな
「集団戦かあ。突っ込んでいきたい所だけどここは援護に徹しようかなっ!」
盗賊ねー。人を切るのに今更躊躇も無いし、あたしの報酬に化けてもらおうかなっ。

使用能力はSPDを選択。
逃げ足とダッシュで盗賊から距離を取りつつ、ユーベルコード『五百重波(イオエナミ)』で複製した刀を投射して味方の援護と盗賊の足止めを行うよ。
ある程度距離は取るけれど、あたしの方まで飛んでくる攻撃は見切りで回避努力。
攻撃してきた敵にはすかさずカウンター!からのマヒ攻撃と2回攻撃までおまけしてあげるっ。
相手の数が多いし無理は禁物だよね。とにかく相手の数を減らす事、それと村まで辿り着かせない事が重要かな。さ、頑張るよー?



「集団戦かあ」
 ひーふーみー、と敵を数えて、少女が耳を小さく動かした。頭から生える狐の耳だ。妖狐の名は雨乃宮・いづな(水縛鎖・f00339)という。
「突っ込んでいきたい所だけど…ここは援護に徹しようかなっ!」
 藍色の瞳に陽気さを滲ませていづなが考えを口にする。
 すると隣の少女が重々しく頷く。
「戦の常とは如何にうまく後衛を潰すかに尽きるのでござる」
 こちらの少女の頭に狐の耳は見られない。あるのは通常の人間の耳だ。都築・藍火(サムライガール・f00336)は大弓と大槍、そして剣と重装備でいながら重心を安定させて立っている。堂に入った立ちぶるまいから修行の量を伺わせた。
「ところで…」
 敵を視界に収めつつ藍火はいづなへ向く。人を殺す展開になるがいいかと気に掛ける素振りだった。
 それに対していづなは、
「盗賊ねー」
 気安い空気で藍火へ向く。同じく敵を視界に収めたまま。
「人を切るのに今更躊躇も無いし、あたしの報酬に化けてもらおうかな」
 って感じ?と続ける。腰に刺した大太刀と小太刀は本物らしい。それを扱う腕前も。
 なるほどと藍火は応える。気遣い無用というわけだ。
「であれば、さっそく始めるでござるか」
 盗賊たちの状況は、晶との問答を済ませて慎矢に射られたところだ。激昂してこちらを包囲しようと進んでくる。
 ――まずは距離のあるうちに先制攻撃!
 背から弓を取り出し構えて、口を開く。
『これぞ我が奥義が一、何かでっかい奴!!』
「なにかでっかいやつ?」
 硬い侍らしき口調から突然飛び出したラフな言い回しにいづなが思わず聞き返した。
 途端、ズズズと空気の震える重苦しい音を立てて鎧武者が藍火の背に召喚される。上半身のみの姿であるにも関わらず大きさはおよそ藍火の身長の2倍。空中に浮きながら、弓を引き絞る召喚主の動きを寸分違わず再現する。もちろん、鎧武者の獲物は藍火の持つ大弓をさらに倍の大きさにしたものだ。
「おお!」
 面白いものを見た。妖狐の尾がはしゃいで揺れる。
「……」
 息を殺して藍火が弦から指を離せば、勢いよく飛び出す矢がひとつ。そして同じ瞬間に放たれた矢がもうひとつ。鎧武者の放つそれは通常の矢とは比べ物にならぬ質量と速度を持ち、着弾地点をばらばらに打ち砕いた。そこには礫を投げる盗賊がいたのだが、もう跡形もない。
「すごいねぇすごいねぇ!」
 いづなが小太刀を引き抜いてそのままはしゃぐ。もはや敵を視界に収めることなく完全に藍火へ向いていたが、何も問題はない。突然いづなの手が閃く。紫電一閃。曇りなき小太刀の刃は弾かれたように迸り、するりと盗賊の額に収まった。
 静かに倒れる骸。その位置はいづなたちにほど近い場所だ。藍火の弓を脅威と判断して襲い掛かろうとしたのだろう。
 続けざまに飛来した礫は上半身を大きく反らして避ける。喉元を人間の頭ほどの岩が通り過ぎて行った。いづなは表情を変えず、瞬きひとつせず、重心移動によって反らしたままの体を捻って回転運動。くるりと一回転する要領でついでに手首を振れば、再び白刃が荒ぶる。首を半ばから割られた盗賊が虚ろな目で倒れた。
「なかなかの使い手でござるな?」
 藍火にいづながにっこり笑顔を向ける。親指と人差し指で銭の印を作った。
「安くないよ?」
「当然でござるな」
 さてこちらも負けてはいられない。藍火は再び弓を引き絞る。鎧武者の大砲とも呼ぶべき豪弓が再び得物を探した。
「相手の数が多いし無理は禁物だよね。さ、頑張るよー?」
 再度の藍火の射撃。地面と同僚が砕けるのを尻目に盗賊は続々と距離を詰めてくる。
 いづなの声に頷いて藍火が今度は大槍を構えた。鎧武者もまた同じ武器を持つ。鎧武者砕天號の大きさで槍を振り回せば、当然いづなを巻き込む。ゆえに戦い方は刺突主体。腰だめに身を低くして構えた。
 そんな藍火の配慮に、狐の少女は尾を揺らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロウ・タツガミ
咎人に与える容赦はない

武器はサカホコをハルバートの形にして持っていく予定だ。
複数に囲まれないように意識しながら、力を込めて確実に一人ずつ戦力を削ろうと考えている。他のメンバーの邪魔にならないようには気をつけるが、基本は力押しだな。

後衛に盗賊が斬りかかる姿を確認した場合は、ドラゴニック・チェインを使って、動きの阻害を狙わせてもらう。


アドニード・プラネタリア
賊に遠慮する意味はなし〜。

技能活用。
地形の利用1、身を隠せそうな所に移動する。

先手必勝!
ユーベルコード発動する。(全力魔法7)

後は、距離を取りつつ、衝撃波7、範囲攻撃7、破魔7で攻撃がメイン。

賊の数が減って来たら、前に出て行って、2回攻撃7、生命力吸収7で攻撃だ。
敵を盾にしたり(7)、盾7、残像7、見切り7で、きっと乗り越えられる。

仲間の猟兵が居たら、連携したいな。
器用貧乏な僕は最後まで、油断はしないよ。



『必神火帝、万魔拱服!』
 先手必勝。70を超える炎の矢が周囲に降り注ぐ。魔法を放ったのはアドニード・プラネタリア(天文得業生・f03082)だ。
 盗賊は10歳にも満たないであろう少年が凄まじい魔法を行使した衝撃に口を大きく開け、そのまま炎に巻かれた。炎の矢はあらゆる場所に等しく降り注ぎ、草原を焼いてゆく。水分を多く含んだ植物なのだろう、大火事になる恐れがない代わりに、もうもうと煙立つ。
「ええと、身を隠せそうなところ…」
 もともとなだらかな地形の草原だ。身を隠せそうな場所はなかった。だがアドニードの振りまいた炎によって状況は変わる。
 煙の濃い場所を見つけて隠れようと踏み込んだ、が。
「う、けほ、けほっ」
 煙い。それはもう尋常じゃなく。どこかに隠れるのは厳しいようで、少年は内心で肩を落とした。
 煙を突き破って盗賊が襲い掛かるまでは。
「おっと!」
「チィ!」
 バックステップで鉈の軌道を回避する。技術のない素直な軌道だったから割合余裕があった。すかさず少年は衝撃波を出して盗賊を吹き飛ばし距離を稼ぐ。
「その程度じゃ僕は倒せないな」
 続いて範囲を拡大した破魔の一撃。賊に遠慮する意味無しと容赦のない連続攻撃だ。
「このガキィ!」
 さらなる盗賊が背面から襲い掛かる。まずい。アドニードは反射的に地を蹴る。間に合うか。
 そのときだ。

「咎人に与える容赦はない」
 落ち着いた低い声がアドニードに聞こえた。
 直後に盗賊が爆発して、悲鳴を上げてのたうち回る賊が引きずられてゆく。見れば首輪と鎖のようなものが煙の奥から伸びていた。
 そして煙に飲み込まれた盗賊の悲鳴は鈍い音の後に途絶えた。
 やがて炎の燻る草を踏み締めて登場するのはクロウ・タツガミ(昼行灯・f06194)だ。血糊の突いたハルバードを肩に乗せる。
「サカホコ、この調子で頼む」
 あたかもこの場に第三者がいるかのようにクロウは口を開いた。アドニードにはあずかり知らぬことだが、ハルバードの正体は翼を持つ白蛇なのだった。同じく翼を持った黒蛇もいるが、いまは黒い外套の内側に潜り込んでいる。
 少年の視線がまずハルバードへ行き、そして次にクロウの、 右眼を縦断する傷に吸い寄せられた。
 その目を事も無げに受け取るクロウ。少年の無事を確認して次の盗賊を探す。が、再び少年へと視線が戻った。
 見れば、少年が自分の隣に立っているではないか。
「……」
「……」
 無言のまま交差する視線。お互いが意思を理解すると、クロウから先に口を開いた。
「自分は力押しで行く」
「僕はだいたい何でもできる」
 短い言葉のやり取りだが、ここに連携は為った。アドニードは器用貧乏のことは伏せておいたが、問題はないだろう。
 かくしてクロウは単独の敵を見つけては一息に距離を詰め、確実にハルバードを振り下ろしていく。クロウを狙う盗賊がいればすかさずアドニードが破魔の力で妨害した。
 二人で組になっている盗賊には二人で対処する。クロウがオーラによって爆破したのち首輪で引きずり寄せ、アドニードが衝撃波で動きを止めながら鎌を手に飛び掛かるのだ。
 ハルバードと鎌が振るわれれば血の花が二つ咲く。
 急造の連携攻撃だったが、お互いに領分を弁えた上での動きであるため、盗賊相手に十分以上の戦果を叩きだせる。
「やるな」
 偉そうなセリフが零れた。少年の声だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

襲祢・八咫
……やれ、忙しない。
烏よ烏、罪人は彼処だ。
その目玉を刳り貫き、肌を灼き、腸を啄んでおやり。

陽光を纏う三本脚の大烏と共に、盗賊共の始末と行こう。
それがオブリビオンの異形共でなくとも、人に仇なす盗賊風情であるのなら気にすることもあるまいよ。
おれはきらりきらりとしたものが好きでな。汚泥に塗れたものを磨くのも悪くはないが、磨こうとも雪ごうともどうにもならないものにまで、慈悲を掛けてはやれぬのだ。
さあ、疾く翔けろ烏よ。
餌場を好きに喰い荒らせ。
おれも、戦の心得はあるのでな。爪嘴はおれの一部と同じものさ。そら、烏共にもあるだろう?
帯に挟んでいた扇子に神通力を通して鉄扇へ、大烏と共に駆け抜ける。



「な、なんだこいつら…!?」
 もうもうと煙を立てる戦場。視界は悪いがこの状況は子供でもわかる。明らかな劣勢。むしろ全滅寸前の有様に盗賊が腰を抜かす。
 右を見ても左を見ても、無事な同僚なんていやしない。そこかしこで倒れているやつらはどれも、生きてるのか死んでるのか定かじゃない。
 冒険者とは一線を画す圧倒的な力。盗賊とて犠牲なく勝てるとは思っていなかった。ここまでの大敗を喫するとは夢にも思わなかった。もはや戦意などない。この修羅場からいかにして生き延びるか、それしか彼らの頭にはない。
 隠れ家に帰ることはできない。手ぶらで戻っては王に殺されるだけだ。かと言ってどこかの集落へ行くこともできない。盗賊であることがばれて自警団に殺される。
 進んでも戻っても命がないなら、もう逃げるしかないではないか。
「くそ、くそ…!」
 悪態をつきながらがむしゃらに走り出す。視界の端で同じく逃げようとする元同僚が見えたが、気にも留めない。盗賊同士の情などそんなものだ。逃げ延びようが野垂れ死にしようが関知するところではない。むしろ囮にでもなってくれればこちらの生存率が上がるから都合がいい。
 沸騰する思考で足を動かした盗賊は、突然ぱたりと足を止めた。
 目の前に、ぼうっとした様子の男がいたからだ。
「お前は…」
 あいつらの仲間か。そう問おうとした盗賊は慌てて口を噤む。薄紫色の服の小奇麗な男など明らかに盗賊の風貌ではないからして、当然元同僚であるわけがない。ならば冒険者のひとりに違いないのだ。
 一秒、二秒経ち、やがて男が口を開く。
「八咫だ」
 やた、とは名前だろうか。名前なんかどうでもいいと盗賊は歯噛みする。
 男は相変わらずぼうっとした空気で戦場を眺めていた。開いた目に力はなく、どこか眠そうにも思えた。
 …これは。
 ふと盗賊によからぬ思考が生まれる。
 これはひょっとして。このトロそうな奴ならやれるんじゃないか。
 盗賊は懐へゆっくりと手を伸ばす。掴むのは剣の柄だ。
 やがて男が首を傾げる。
「おれの名前を聞きたいわけではなかったか」
 男は無手。危機感の欠片もない。
「死にやがれこのマヌケが!」
 盗賊が距離を詰め、剣を抜き振りかぶった。

 かくして。襲祢・八咫(導烏・f09103)を襲う刃を止めたのは何だろうか。
 彼が腰に差した太刀か、帯に挟んでいた扇子か、あるいは淡い水色の宝玉が刃を止めたか。
 そのいずれもが否だ。
 凶刃を止めたのは、八咫の目と鼻の先に突如出現した三本脚の大烏。その鋭い嘴だ!
「な、なん――」
 予想もしなかった事態に驚き慌てる盗賊、だがもう遅い。眩い陽光が盗賊を灼いた。
 ぶすぶすと朽ちる骸を見下ろして一秒、二秒。八咫が口をひらく。
「やれ、忙しない」
 すうっと伸ばした右手の先に三本の脚が留まった。
「烏よ烏、罪人は彼処だ」
 八咫の唇が滔々と言の葉を紡いでいく。
「その目玉を刳り貫き、肌を灼き、腸を啄んでおやり」
 静かに右手を振りかぶり、
「さあ、疾く翔けろ烏よ」
 餌場を好きに喰い荒らせ。勢いをつけた右手から陽光纏った烏を飛び立たせる。
 敵がオブリビオンの異形共でなくとも、人に仇なす盗賊風情であるのなら、容赦など必要ない。
 八咫は帯に挟んだ扇子を取り出す。やがて少しばかり目を伏せたあと、一息に開くと、いかなる奇跡か、たちまち鉄の光沢を持つ鋭い扇となった。
 いざ、共に盗賊の始末と行こう。
 紫の髪を靡かせ駆けだすと、間もなく盗賊団は掃討された。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ワイバーン』

POW   :    ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


やがて、戦場だった草原は静かになった。
 それはすなわち盗賊団の全滅を意味する。対して猟兵たちの損害はなく大勝利と言えた。グリモア猟兵の言った、それほど脅威にはならないという言葉に嘘はない。
 むしろ本番はここから先である。
 盗賊団の王、アックス&ウィザーズにおける上位支配者層、竜の系譜に連なる大いなるもの。ワイバーンの棲む場所が山の中腹にあるという。広葉樹の生い茂る勾配を踏みしめていけば、やがて見えてくる粗末な造りの木造建築。これが盗賊団のアジトに違いない。
 開いたままの扉を潜り、足音を殺しながら進めばそこはもうもぬけの殻。グリモア猟兵の情報通り、ここに盗賊はいないのだろう。いるのはただひとつ、オブリビオンのみ。
 アジトの奥、奪った財を寝かせる間。吹き抜けとなっているそこで一匹のワイバーンが咆哮し、侵入者を睨み付ける。
雨乃宮・いづな
「後は本命のボスだけだね。ああ高く飛ばれると手のつけようも無い……訳じゃあないけど。さ、どうしようかな?」
高い所を直接狙うのは難しいし、攻撃のために降りてきた所にカウンターを合わせる作戦で行くよ。

フェイントを掛けつつ相手の攻撃を誘い、武器受けと見切りで相手の攻撃をいなしたら、即座にカウンター。
後ろ側へ回り込みながらユーベルコード『天駆翔』を連続発動して一気に相手の頭上を取るよ。技能のジャンプも忘れずにね。
自分の眼下に居る敵の事は分かっても、上からの攻撃ならどうかな!
2回攻撃と鎧砕きで狙うのは相手の翼。大太刀『無銘』と小太刀『止水』の連撃で、ご自慢の翼を切り飛ばしてあげる!


都築・藍火
奴は空を飛んでいる最中であれば飛竜の知恵により攻撃を当てられぬでござる。であればまずはそれを封じるべし
奴の飛竜の知恵は、眼下に居ない相手に対しては無力。であれば、奴の頭上から攻撃をすることで、「達人の智慧」の条件を満たすことが可能なはずでござる。奴の攻撃は必ず一度急降下せねばならぬ。であればそのタイミングに合わせ「ジャンプ」することで、奴の頭上を取り、矢を射掛け「達人の智慧」を使用するでござる。高さが足りなければ、辺りの木等に登る事も行うでござる
もし拙者狙いのワイバーンダイブがあれば、初撃を避けることで封じれるござるが、これは無理には狙わぬ
回避を封じれば後は砕天號(演出用)で矢を射掛けまくる


戦場外院・晶
欲望のままに世を乱す畜生……先の盗賊の、正に同類ですわ

「……なるほど、竜と聞いたときは心配でしたが、どうやら尻尾と爪が得物の様子」

となれば、私にも「手」はありましょう

飛竜が空から私や皆様を狙って降りてくるのを狙います

事前に衝撃波を放たれても我慢するしかございません……【オーラ防御】でみを固め、私自身が、屈せず動ける事を【祈り】ます

駆け寄り、飛びかかります

「……そこです」

迎撃は【奥義・不生】にて封じ密着いたしませばそこは肉と骨ある生き物でございます

「手羽先と変わりませんとも!」

【怪力】と【グラップリング】にて皮膜の翼を折り返し、爪脚を逆に曲げ移動を封じます

さて、もはや俎上の蜥蜴で御座いましょうや


白峰・慎矢
さて、じゃあ君を倒して、集めてきたお宝を奪わせてもらうよ。君だってそうしてきたんだろう、文句はないよね?

刀じゃ空にいる敵には届かないし、遠距離攻撃も当てづらいよね…なら敵の近接攻撃に合わせて刀で反撃しよう。敵の遠距離攻撃を受けないよう敵から目を離さずに動き回って、近接攻撃をしてきたら、「残像」でかわしたり、サイコキャノンを使って念力で攻撃をそらしたりした後に、隙をついて「剣刃一閃」を当てる感じだね。
基本的に相手の動き待ちになるから、敵の動きに異変があったら仲間の皆に知らせよう。こっちは多人数だから、しっかり連携できると良いよね。



「後は本命のボスだけだね」
 最初に口を開いたのは雨乃宮・いづな(水縛鎖・f00339)だった。
 でも、と眉をすぼめて続ける。高く飛ばれると面倒だ。手が付けられないわけではないが、限られてしまう。
 ワイバーンは飛竜だ。前肢がない代わりに、大きく発達した翼が備わっている。
「刀じゃ空にいる敵には届かないし、遠距離攻撃も当てづらいよね」
 白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)が同調する。赤い瞳に白い髪、笑顔の似合う青年だが彼の正体は古い弓のヤドリガミだ。その彼をして遠距離攻撃は難しいと言うのだから、実際に困難なのだろう。
 大弓を背に背負った武芸者風の少女もまた腕を組んで重々しく頷いた。彼女は別の観点から対空遠距離攻撃に意見を述べる。
 飛竜の知恵が問題なのだと都築・藍火(サムライガール・f00336)は言う。大空を舞い、狩りをする飛竜には自分の眼下にいる者たちへの動体視力と観察力に長けているだろう。ましてや敵はオブリビオン。通常の野生動物と同じように当てられるとは思えない。
「なるほど」
 いづなたちの話し合いに混ざる声。竜もまた欲望のままに世を乱す畜生ならば、盗賊とまるで同類だと静かな嘆息を挟んで、再び口を開いた。
「しかし竜と聞いたときは心配でしたが、どうやら尻尾と爪が得物の様子」
 敵はこちらを攻撃するとき、必ず接近する必要がある。戦場外院・晶(強く握れば、彼女は笑う・f09489)が薄く目を伏せた。視線の先には自分の手。そう、それならば自分にも手がある。
「で、あるな」
 それより先を口にする者はいなかった。皆、言葉にせずとも悟っていたのだ。すなわち飛竜が攻撃のため降下した瞬間こそが勝機であると。タイミングを合わせて敵の頭上から仕掛けようとする者がふたり。地上での迎撃を思い描くものがふたり。
 敵が竜といえど過小評価も過大評価もない。四人は冷静に戦いの大きな流れを予想し、己が役割を当てはめていった。

 ワイバーンの強さは、並の冒険者なら出会った瞬間に逃げ隠れしなければ、命を失う事になると言われている。知能は高くないらしいが、それはドラゴン全体と比較した場合での話であり、狩猟の経験からもたらされた飛竜特有の知恵もある。
 そのため、ワイバーンもまた己が寝床に姿を現した者たちを決して過小評価しなかった。人間が勝負を挑んでくるのは、自身を打倒しうる手段を用意してきたからだと理解しているのだ。飛竜の対応は早い。吹き抜けとなっている財の間を、翼で空気を叩き垂直に飛びあがった。巨大な翼が引き起こす風に無数の硬貨や宝石が飛散する。
「さて、じゃあ君を倒して、集めてきたお宝を奪わせてもらうよ」
 顔へと向かって飛んできた硬貨を一枚、慎矢は手で受け止めて、
「君だってそうしてきたんだろう、文句はないよね?」
 目を細めた。そして敵から目を離さず駆けだす。一か所に固まっていては敵の攻撃で一網打尽となりかねない、散開する必要があった。
 果たして上昇したワイバーンが仕掛けるのは衝撃波か飛び込みか。慎矢は刀を構えて待つ。敵の急降下に呼吸を合わせた。
 ひゅう、と風を切る音。翼を大きく広げる様子が見えた。衝撃波がくる、と誰もが身構えた。晶の反応が一番早い。両手で顔を守って身を固め、さらにオーラを纏わせる。全力の防御行動だ。彼女の姿に得物は見えない。彼女は無手でワイバーンへ挑むつもりなのだ。敵の遠距離からの攻撃には辛抱強く耐え、自分の手が届く距離まで近づいた瞬間、飛びかかる。それが彼女の唯一にして確実な勝機。衝撃波に対する防御の早さは、彼女の割り切りから来るものだ。
 やがてくる咆哮、そして爆音。
 風の大瀑布が部屋を滅茶苦茶に掻き回して視界を奪ってゆく。そのなかで、晶は歯をくいしばって耐えた。吹き飛ばされまいと身を低くして、暴威へ決して屈服しないことを胸に誓いながら、耐えた。
「く、うぅ……!」
 苦悶を噛み殺し、風が吹きすさぶなか薄眼を開ける。状況がわからない。唯一見えたのは影。あれは何だろうか、ワイバーンの足だろうか。
 直後、いづなが大太刀『無銘』と小太刀『止水』を握りしめる。およそ第六感とも呼ぶべき直感で自らを狙った爪の一撃を察知したのだ。地を蹴って爪の軌道から体を逸らしながら回転、鋭い爪の一撃を二刀にて受け流す。ほんの片足の爪先による攻撃だというのに、腕がしびれるほどの衝撃だ。巨大生物の質量はそれだけで凄まじい武器になる。真正面から受けようとすればたちまち刀が折れていたかもしれない、いづなの判断は正解だった。
 ――そして爪が来たなら、次はアレがくるよね。
 いまだ風の吹き荒れる視界で、ワイバーンが身を捩るのが辛うじて掴めた。地へ低く低く伏せるようにして毒の尾をやり過ごす。暴力が頭上を通り抜けて、風が耳を打った。
「ああびっくりした!」
 直撃すれば猟兵とて命が危うい、ワイバーンの攻撃はそれほどに苛烈だ。だが、こうしてやり過ごした。いづなはバネのように起き上がり反撃に転ずる。地を踏み空を踏み、さらに繰り返し空を踏めばやがて彼女は高く高く跳びあがるのだ。
 大空を舞う飛竜ならば、頭上を取られたことなどあるまい。彼女の業が、空中での連続する跳躍が、天駆翔が、この奇襲を実現する。
「自分の眼下に居る敵の事は分かっても、上からの攻撃ならどうかな!」
 二つの白刃が陽光に煌いた。翼を切り落とす軌道でワイバーンを狙う。
 ばき、めりめりべりべり。
「ばきぃ?」
 異音にいづなが表情を変えて刀を止める。音の正体は飛竜の尾にあった。いづなを狙った尾の一撃がアジトの壁を穿ち、そのまま翻って壁を柱を家具を悉く粉砕し薙ぎ払ったのだ。雑な攻撃だなと呆れるが、その意図に気付き表情を変えた。
 バラバラに砕かれた木材が風に浚われ、吹き上げられる。木片はやがて膨大な数の飛礫へに生まれ変わるのだ。つまり、ワイバーンの狙いはそこにあった。飛竜の巨体ならば風に舞う木片など雨粒ほどにしか感じないだろうが、人間にとってはそうもいかない。引き千切られた木材の断面は鋭利で、確かな殺傷力を持つ。敵は知っているのだ。体の大きさは力であり、己が雨粒ほどにしか感じぬものでも人間には脅威になると。
 いづなは煩わし気に無銘と止水を振るい、払う、打つ。叩き割る。この状況において、ワイバーンを上から襲うのは不可能になってしまった。
 藍火が駆ける。ワイバーンの攻撃に合わせて頭上を取ろうとしていたのは彼女も同じだ。辛うじて原型の残っていた戸を拾い、傘にして降り注ぐ木片から身を守る。ざっと周囲を観察するが仲間の姿が見えない。先の一撃で倒れたか、どこかに隠れているか、定かでない。飛竜のほうはというと、尾を振り回して廃屋をさらに崩しつつ、再び羽ばたいて宙へと舞い上がろうとしていた。
「思ったよりヤベーやつでござるな」
 己が部下だった盗賊たちの家を躊躇なく破壊した戦い方もそうだが、巨体の強みでこちらを押しつぶしてくるような戦い方もよくない。しかし、相手がまた降下攻撃を仕掛けてくるつもりなら、こちらも再びその直後を狙うしかないのだ。それが自分たちの勝機であるならば。
「いざ!」
 戸を放り捨てて弓を持つ。さあさご覧あれ、都築藍火の竜殺し。まずは敵の降下攻撃を見極めること。敵が大きく翼を開いたら衝撃波の合図。脚と尾を伸ばして来たら爪撃の合図。さあ果たしてどちらでくるかだ。
 頭上から天を引き裂くような咆哮が聞こえる。すわ衝撃波が来るかと思えば、敵の動作が見られる部位は尾と足。藍火は爪を立てて踏みつけに来た飛竜の一撃を転がって避けた。前回り受け身の要領で素早く立ち上がれば、次にやってくるのは尾による突き刺しである。これを跳躍して避けて、赤い鱗の上を駆けた。
 このときようやく、ワイバーンの顔に驚愕が浮かんだ。それまで絶対的上位者として暴君の振る舞いを見せていた飛竜が、はっきりと猟兵に脅威に思ったのだ。尾の上を突き進む藍火は敵を睨み付けながら再度の跳躍。彼女にはある確信があった。
「おまえ、自分の上から襲われたことはないでござろう?」
「あたしもそうだと思うよ」
 ワイバーンの頭上。同じく跳び出してきたいづなの姿があった。空を何度か蹴ったのだろう、彼女は藍火より幾分か高い位置にいる。頭は地に、足は天に、地表を頂く上下逆の姿勢で彼女は大太刀『無銘』を振り抜いた。瞬きの間に小太刀『止水』をさらに降る。剣閃が走り抜けるのは相手の翼。いかなる妙技か、ワイバーンの鎧と評される硬い鱗へ抵抗なく刃が沈み、滑らかな切り傷を刻み付けた。翼の根にほど近い位置を縦断する傷だがまだ足りない。切断には至らない。
 ワイバーンはたちまち絶叫し鮮血を噴出しながら暴れようとした。しかしそれを藍火が許さない。
「我が妙技、ここに大披露で御座る!!」
 空中にて弓を構えた藍火が番えた矢を放っていた。ワイバーンへ迸る矢はたちまち燃え上がり守護明神の形をとった。その両腕が首と翼を掴み、地へと押さえつける。

「頼もしいね」
 言葉と共に、突如地面に山積した木片が弾け飛んだ。現れるのはついいま蹴り上げたばかりという姿勢の慎矢で、彼は剣を片手にワイバーンへと駆け出す。もちろん地に押さえつけられたワイバーンとて抵抗をする。鋭い牙の噛みつきが、時間差で毒を帯びた尾が彼に襲い掛かった。
 状況が変わった。
「藍火さんが上手く押さえつけていて飛べないから」
 だから敵は牙と尾、そして翼と足の爪を動かす程度の攻撃しかできない。
 しかしワイバーンの牙が慎矢を捉えることはない。慎矢の体を手ごたえなくすり抜ける。毒の尾はというと、軌道を変えられてしまいやはり慎矢に届くことはなかった。残像と念力、その二つが慎矢の身を守る。だがワイバーンの抵抗はそれだけでは終わらなかった。禍々しいほどに鋭い爪脚が振りかぶられる。ワイバーンの巨体を想像すればそれはすさまじい破壊力を持った一撃だ。囮の残像を剥がされ、さらに念力の妨害を許さない致命の一手。
「……そこです」
 晶がいた。彼女は脚爪を振るうタイミングを見切り、それに最も力が入る直前の刹那を捕らえた。すなわち、関節を曲げて振りかぶられた足に拳打を浴びせてワイバーンを一拍怯ませ、その隙に素早く掴みかかったのだ。脚を逆に曲げ移動を封じようとする晶に対し、ワイバーンは力でそれに抵抗する。
 果たして竜の膂力に人間が対抗できるのだろうか。答えは否だ。竜と人間では生物の規格が違う。体格も体重も桁違いで、真正面から力比べをすればたちまち人間の体はバラバラに引き裂かれてしまうだろう。
「く、う――」
 晶から苦痛を乗せた声がこぼれ落ちる。めりめりみしみしと、全身が悲鳴を上げるのがわかる。それでも彼女はワイバーンの脚を押さえつけた。ワイバーンの喉からも苦痛を乗せた声が響く。
 それは如何なる事態か、飛竜と猟兵の力が拮抗したのだ。少女の体からは信じられないほどの怪力が発揮され、さらには関節を曲げて極めるという、彼女の培ってきた技術がそうさせたのだ。
「竜とて、肉と骨ある生き物でございます」
 肉と骨があるならば、関節もある。関節があるならば、極められる。絶望的な体格差を覆す、彼女のグラップリングの技術。やがてワイバーンから甲高い悲鳴が漏れた。片足の関節を奪われては堪らない。バランスを崩してたちまち地面に体を打ち付ける。
「さて、もはや俎上の蜥蜴で御座いましょうや。竜の翼など…」
 飛竜は空に舞う力を奪われて最早蜥蜴と変わらない。仕込みは済んだのだ。あとは捌くのみ。
「手羽先と変わりませんとも!」
 極めた関節へさらに力を加えた。悲鳴を上げる体で無理を通す。めりめりみしみしと互いから軋む音がした。耳をつんざくワイバーンの悲鳴が彼女の慰めだ。
 晶がふと、ワイバーンから視線を離す。やがてワイバーンも気づく。
 見れば、剣を持った慎矢の姿が目と鼻の先にいた。
 慎矢は地を蹴った。その蹴りを以って己を翼へと連れていき。やがて翼とすれ違う時、彼は両手の刃を閃かせた。
 ヤドリガミの青年が着地する静かな音の後、飛竜の悲鳴が響いて、続いて大量の赤い粘ついた液体がばたばたと落ち、地を汚した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

我人・百四子
ワイバーンを見るのは初めてだけど、なんて巨大なの……。
もし私が一人だけならとても敵わないわ。
でも私は一人じゃない。仲間と協力して必ず倒してみせましょう。

あの巨体で急降下なんてされたら大変だわ。
翼の付け根を狙って私のチャクラムで切り裂いてみるわ。飛べなくするのは無理にしても、飛行能力を落とせれば相手の攻撃をかわしやすくなると思うから。仲間と協力してできればなお良いわね。
「まずは相手の力を削ぎましょう。私のチャクラムが先導するわ」

仲間に傷つく人が出てきたら回復が必要でしょう。
物陰に隠れてユーベルコードで仲間を癒やすわ。


野良・わんこ
「こちとらスサノオだのイフリートだのと戦ってきたんです。いまさらワイバーンごときがなんぼのもんじゃーい!!」
ワイバーンダイブを影の追跡者を出して技能:残像と組み合わせ囮にして回避。爪の一撃が空振った瞬間にサイコキネシスで相手の翼を捻じ曲げる。
これによって相手は着地の勢いを殺しきれずに落下ダメージ!
そのスキにサイキックブラストを放って感電攻撃を行う。
「話の腰を折るのがわんこより上手いと思わないことですね!」
更に攻撃出来そうなら日本刀を抜いて斬りかかる。
「撫で斬りにしてやりますよ!!」



片翼を斬られたワイバーンが血を零す。飛竜にとってその傷は致命的だろう。肉も骨も断たれ、被膜によって辛うじて繋がっている有様では飛行など望めない。しかしケルベロスの拘束を振りほどいてなお暴れるワイバーンはやはり脅威だ。なぜならその膂力も巨体も、牙も爪もいまだ失われていないのだから。
 突如飛竜が身を屈ませ、片翼と脚を使って跳躍する。それは両翼が健在だったときとは比べるまでもない程度の上昇量だったが、地面を踏みつけて風を起こすには充分だ。着地と同時に空気を打つ片翼が風をいっそう暴れさせ、大量の木片を吹き上げた。
「う、くぅぅ…!」
 木片が当たらぬよう頭を抑えて身を低くした我人・百四子(ifの世界・f02684)は、不安に揺れる心を鎮めようとする。
 ――ワイバーンを見るのは初めてだけど、なんて巨大なの……。
 飛竜の戦い方は、巨大さと飛翔能力を生かしていて、暴力的で無慈悲な災害のようなものだ。百四子ひとりで勝てる相手かと言えば、とても敵わないと認めるしかない。だが、いまの彼女には同じ敵に立ち向かう仲間がいる。
 ――私は一人じゃない。仲間と協力して必ず倒してみせましょう。
 視界の端、風に吹き飛ばされころころ転がる少女が見えた。
「!」
 百四子は慌てて駆け寄る。半壊した家の柱に頭を打ち付けて、ぎゃー!と悲鳴を上げた野良・わんこ(灼滅者・f01856)のそばで膝をついた。
「大丈夫?」
「いだだだだだ!」
 わんこは後頭部を抑えて大袈裟に転がりまわる。見兼ねた百四子がわんこの体を抱き、壁の影に隠す。痛むという頭に手を添えると、暖かいどろりとした感触が百四子の眉を窄めた。
 もし私が慈母ならば、私はあなたを救いたい。
 少女へ囁いて、百四子が傷を癒す。みるみるうちに落ち着いてゆく表情を見て、金の瞳が安堵に揺れた。
「…もう平気かしら」
「百四子ちゃんありがとー!」
 ちゃん付けの呼び方に百四子はきょとんとする。彼女には自分が同年代に見えただろうか。
 わんこは咆哮しながら再び跳びあがるワイバーンに、うるせー!と怒鳴った。空飛ぶ蜥蜴めと怒り心頭である。
「こちとらスサノオだのイフリートだのと戦ってきたんです」
 彼女は日本刀を担いで駆けだす。故郷で巨大な獣と戦ってきたのだろうか、臆する様子は微塵も見られない。
「こんなもんいまさらですよ!」
 だらりと垂れさがる片翼と、大きく広げた片翼。不格好にも降下攻撃を再現する飛竜を睨みつけながら、わんこは己が分身を次々と生み出してゆく。その正体は残像だ。複雑に立ち位置を変えていけば、殺意の篭った脚爪が残像のあった場所を深く深く抉り取った。
 好機。わんこがワイバーンへと手を翳す。敵は着地寸前。脚の爪は空振りし不安定な体勢で着地をするだろう、だからその一瞬に。
「ワイバーンごときがなんぼのもんじゃーい!!」
 サイコキネシス。念動力による遠距離攻撃。狙いはワイバーンの健常な羽で、それを一息に捻じ曲げる!
「!?」
 飛竜が翼を襲う痛みと、崩れる姿勢に表情を歪めた。体を動かし着地の体勢を取ろうにももう遅い。羽で姿勢を直すこともできず、飛竜は羽を下敷きにして無様に真横から体を地面に打ち付けた。巨体に見合った凄まじい衝撃がワイバーンを襲い、地面を轟かせる。
「わんこの怒りはこんなもんじゃないですからね」
 次にワイバーンが見た光景は、謎の対抗心を燃やしながら真っ直ぐ近づいてくる人間の少女の姿。追い払おうと尾を翻すが、彼女はすかさずその尾に電撃を放つ。たまらず苦悶をあげてしまう。
「撫で斬りにしてやりますよ!!」
 わんこはさらに距離を詰め、白刃を鞘から抜き放つ。起き上がった飛竜の長い首が牙を剥いて迎え撃つ。
 そこへ突然一条の光が走った。
「私のチャクラムが先導するわ!」
 百四子の放ったものだ。それはワイバーンの目と鼻の先を通り抜けていく。彼女の狙いは飛竜にひとつだけ残った健常な羽、その根元。片翼でも未だ脅威ならば、さらに切り裂いて両翼使えなくしてやればいい。チャクラムひとつで鱗を持つ飛竜に付けられる傷は浅いものだが、その攻撃はわんこへ意図を伝えるに充分だ。
「これはさっきわんこを吹き飛ばした恨み!」
 跳躍したわんこが日本刀で百四子のつけた傷をなぞる。返す刀でもう一度。
「そしてこれは! ソシャゲのストーリーでさんざん話の腰を折ってきた恨みですよ!」
 さらに、縦斬り一閃。
 ワイバーンの赤い鱗は堅く、鋭い。日本刀の斬り付けでは切断までに至らないが、しかし噴き出す鮮血がダメージを物語った。
 着地しワイバーンへ振り向きながら彼女は得物を突きつける。
「話の腰を折るのがわんこより上手いと思わないことですね!」
 最後に得意げな顔で、わんこは刀の血を払うのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノノ・スメラギ
おやおや、出遅れてしまったね。下拵えは十全に終わってるじゃあないか。まだまだ元気そうだけど、後は捌いて終わりと行こうじゃないか。
シンプルに行くよ、VMAXランチャーのファイナルシーケンス、撃って、突撃して、アックスフォームで叩き斬るとしよう。
ガンナーズを展開してランチャーと一斉射撃しつつ空から突撃(空中戦)をかけるよ。重力加速も含めたパワーダイブでの斬撃はちょっと危険だけど(捨て身の一撃)、ボクは天才だからね! 朝飯前さ!
飛べなくなったトビトカゲの攻撃はナノメタルコートの防御耐性を対物モードにして(防具改造)、シールドデバイスでうまく受け流して(盾受け)見せるさ!



「おやおや、出遅れてしまったね」
 機械鎧に身を包む小柄な少女が瓦礫に脚を掛け、ワイバーンの様子を眺める。
 両翼をだらんと垂れて血を流したその竜は、もはや空を飛ぶことなどできないだろう。辛うじて跳躍したところで、取れる攻撃手段は少ないはずだ。しかし変わらず猟兵を睨み付ける目か、は戦意が微塵も失われてないことが伺える。
「下拵えは十全に終わってるじゃあないか」
 そう言いながらも、まだまだ元気そうだけどと口角を釣り上げる。特徴的なシルエットを持つ頭のセンサーデバイスが小さく揺れた。人によってはそのデバイスはウサギの耳に見えるかもしれない。
 ワイバーンはというと、長い首と尾を巡らせながら発達した両脚で地を踏みしめ、牙と尾の届く位置の猟兵へ暴力を振りかざしていた。動くたびに羽の付け根から体液がこぼれてゆくが、飛竜はまるで意に介さない。
 それは死の運命に抗い続ける竜だろうか。いや、違う。飛竜はいまだ自身の勝利を信じて力を振りかざしているのだ。
「捌いて終わりにしようじゃないか」
 ノノ・スメラギ(銃斧の騎士・f07170)は、得物を構えた。果たしてその銃の形をした得物の機能を正しく理解できるものが彼女以外にいるだろうか。得物の名は複合魔導デバイスVMAXランチャー、魔導技術と科学技術の申し子だ。銃の形をしているがその本質は極めて高い機能性から生まれる変形機能にある。
「シンプルに行くよ。……VMリアクター、第一限定解除。フルドライブ。ファイナルシーケンス…最初から全力全開だ!」
 全身の機器に魔力が充填し、機械鎧から小さな破裂音とともに飛行砲台デバイスを放つ。そして銃口をワイバーンに向け、ノノは一息に引き金を引いた。
 轟音。
 銃口から放出される大型魔力弾。飛行砲台も小型魔力弾を一斉に放ち、飛竜の姿を光で次々と飲み込んでゆく。
 弾着を確認、全弾命中。ボクは天才だからこれくらい朝飯前さと自画自賛して、直ちに次の段階へと移行した。VMリフターが魔力を吸い上げ、フィールドを展開したのだ。それはノノの体をひとつ上の次元へと押し上げる。これが意味するのは物理法則からの解放だ。
 風が前髪を吹き上げる感覚に心地よさを覚えながら、続いてノノはランチャーの機能をひとつ解放する。デバイス全体が光と熱を放ち、収束すれば斧の輪郭を取るのだ。VMAXランチャーアックスフォームとノノは呼んでいる。
 当然、ワイバーンもただ眺めているだけではない。
 大口を開け鋭い牙を晒し、高速で空から迫る死神を噛み潰さんと仕掛ける。ワイバーンのタイミングは完璧だった。猟兵の上半身を確実に牙で串刺しにする精確さで顎を閉じた。だが得られたのは肉を潰す感触でなく堅い板に阻まれる感触。浮遊装甲に施された人工知能が主の危機を素早く察知し身を滑り込ませたのだ。
「そら、ボクに掛かればこんなものさ!」
 やがてノノは勢いを殺さずに飛竜の胸まで到達し、その熱い胸板を袈裟に斬り裂くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花巻・里香
盗賊退治には乗り遅れてしまったけれど、まだ財宝狂いの竜が残っているのね。
それなら、からくり人形をクリスタライズの透明化で隠し、糸で罠を張りましょう。
一見非武装なことと疲労感に宝石の体を使った誘惑で、油断を誘い抵抗する間も与えずに蟲惑の小部屋へ送るわね。
蟲惑の小部屋はいつでも脱出できるユーベルコードだけれど、
煌びやかな宝石(に擬態した蟲達)の小部屋であなたはどうするのかしら?。
それに宝石蟲達に食べられる痛みと恐怖でパニック状態に、少しでも長く脱出の思考を奪ってあげる。
小部屋から脱出できても、他の猟兵の攻撃やからくり人形で更なる騙し討ちを仕掛けるわね。
小部屋の中で終わった方が幸せかもしれないわね。



花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)はふと考える。あの財宝狂いの竜が次に取る行動は何なのかと。彼女は人形遣いだ。得物は指から伸びる糸の先の、からくり人形である。花のようなドレスに身を包んだ人形を抱き寄せ、赤い目を細めながら罠を考えるのだった。
 ワイバーンは吠える。両翼と胸から血を迸らせて大きく仰け反って、吠える。飛竜は知らなかった。ここまで力を持った存在がいることを知らなかった。これまで飛竜が遭遇してきた人間と言えば、冒険者と盗賊がせいぜいで、いずれも尾を振るだけで潰れて死ぬ程度の生き物だったのだ。信じられないという思いを、零れ落ちる体液が否定する。傷ついた己に対して人間たちは健在で絶望的な状況だ。
 ワイバーンは唸る。縦に裂けた瞳孔の黄色の眼が、猟兵たちから外れて半壊したアジトへ向く。飛竜が敵から目を離したのはそれが初めてだ。視線はアジトの壁の最も崩れた場所に固定される。
 逃げるつもりだ、と誰かが悟った。しかしワイバーンの動きのほうが早い。
 翼を引きずり血液を零しながらも、桁違いの生命力で体を支え、脚爪で地を蹴り加速する。まさか人間相手に逃走することになるとは。ワイバーンの胸に宿る怒りと憎しみはどれほどのものだろうか。時間を掛けて集めた財を放棄して、飛竜の誇りである羽を奪われて、這う這うの体で逃げるしかないのだから。マグマのような怒りを咆哮に変えて、さらに地を掛ける。
 そのときだ。飛竜の逃走経路の途中に、赤い宝石を見つけたのは。煌めくその輝きは緋色にもピンク色にも見える。人間の装飾品より並外れて大きい財宝。人間のような輪郭が気になったが深く考える時間などない。せめてそれだけは回収しようと飛竜が首を伸ばした。咥えていけば、せめて傷が癒えるまでの慰みにはなるだろう。
 しかし。
 何か糸のようなものに触れた感触を覚えて、飛竜の視界は一瞬の間に異界へと塗り替えられた。
「……!」
 突然の、煌びやかな宝石の散らばる間に飛竜は呆けた表情を作る。これは幻覚か。否、両翼と胸の痛みが現実であると訴えてくる。傷ついた体を引きずり、厳しい目で周囲を観察する飛竜はやがて、違和感に気付いた。宝石が動いたのだ。ワイバーンは知らない、それが里香の仕掛けた、宝石に擬態する蟲であることを。胸に羽に集られ傷口を貪られれば、飛竜はたちまち絶叫あげて尾を振り回した。
 ばりんと何かが割れる音を立てて再び視界が塗り替えられる。次に飛び込んだ光景は半壊したアジトと散乱する硬貨に宝石。
 そして、まっすぐ目に向けて飛び込んでくる人形。
「小部屋の中で終わった方が幸せかもしれないわね」
 刹那、人形の腕が鎌を現し、飛竜の片目を抉った。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロウ・タツガミ
さて、ここからが本番かな

【POW】

メインで使う武器はサカホコ(ハルバート)だな。
まずは三位龍装で攻撃力を強化する。
【戦闘知識】により【地形を利用】した【先制攻撃】をレプリカを【投擲】することで行う予定だ。
その後は、翼を出し空を飛び可能な限り眼上から攻撃するつもりだな、翼竜より上空にいればある程度動きは制限できるのではないかな。
サカホコで【怪力】に任せ【2回攻撃】で攻撃するつもりだ。

攻撃は基本的にガントレッドで【盾受け】を行い防ぐ事を試みる。近くに猟兵がいれば【かばう】つもりだ

良いようにやられる訳にもいくまい

逃げられそうになれば、マガホコを縄に変化させ【ロープワーク】で動きの阻害ができれば良いが



「さて、ここが正念場かな」
 盗賊団のアジトは酷い有様だった。建物のすべてが半壊して木片が一面に散らばって、ところどころ血に塗れている。その上では両翼と片目を奪われた飛竜が全身を滅茶苦茶に動かし暴れまわっていた。尾が地面にたたきつけられるたび、土埃と木片が撥ねる。
 飛竜はもう敗北して死を待つ身だ。しかしがむしゃらにもがく手負いの獣でもある。息の根を止めるのは大きな危険を伴うだろう。
 あれを仕留めるには、充分な殺傷力と準備が必要だ。
 クロウ・タツガミ(昼行灯・f06194)が取り出すのは竜殺しと呼ばれる霊酒。それの入った小さな酒瓶だ。飲用だが消毒にも使える度の強いものである。
「酒は飲ませる、サカホコ、マガホコ、力を寄越せ」
 すると外套から翼の生えた黒蛇と白蛇が這い出る。二匹は開いた酒瓶の口に鼻を寄せ、匂いを嗅いだ。
 ワイバーンの絶叫が聞こえる。尾で散々に地面を叩いている。混乱の極みにあって、もはや狙うべき敵と瓦礫の区別もつかない哀れな飛竜だ。
「終わらせるぞ」
 翼持つ白蛇のサカホコがクロウの身長ほどもある槍斧へと変化する。黒蛇のマガホコは縄へと姿を変え、主人の腕に巻きついた。霊酒の力を借り、白蛇黒蛇を帯びればこれすなわち三位龍装。クロウは必殺の意志でワイバーンに臨むのだ。

 初めにクロウは武器を投射した。得物は彼がレプリカと呼ぶ小さなナイフだ。刃は白銀の軌跡を描きながらワイバーンの残った眼を狙う。しかしそれで敵の視界が完全に失われることはない。首を捩ればたちまち鱗が刃を弾くのみ。
 それくらいは織り込み済みだった。クロウは既に背から翼を出して空を切っている。敵の抉られた眼を利用し、死角から頭上を取るのだ。やがて白蛇の槍斧が高く振り上げられ、飛竜の首を割断せんと降ろされる。
 が、敵も易々と殺される気はない。毒を帯びた尾が迸り、クロウの腹を狙った。
「ぐッ!」
 衝撃が全身を走る。すかさずシールドガントレッドで受けていたが、腕の骨が軋んだ。手首から肘まで覆う金属板を付けていてもなお敵の攻撃は重く、宙にいた体は吹き飛ばされてしまう。
「マガホコ!」
 呼びかけに応じて黒蛇の縄が翻る。それはたちまち飛竜の首へと巻きつき、地面と激突する寸前だった主人を救った。
「おおおお!」
 普段は穏やかだろう男の口から雄たけびが飛ぶ。縄を強引に引き寄せ、ドラゴニアンの翼で空を掴み加速する。もう飛竜の首は目と鼻の先だ。
 全身の膂力を乗せた槍斧が振り下ろされた。竜殺しがここに成る。
 翼持つ盗賊王は、首を断たれて果てるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『荒野の大宴会』

POW   :    たらふく喰ってたらふく飲む

SPD   :    巧みな芸を披露する

WIZ   :    料理を準備する、冒険を歌にする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


盗賊王の死。それはこの地の束の間の平和と、蒐集した財の解放を意味する。
 飛竜の暴れた財の間は大半が瓦礫によって覆い隠されてしまったが、それでも木片ひとつ捲れば硬貨や宝石が見つかるだろう。猟兵たちはこれで買い物をしてもいい。また、半壊したアジトも探せば手付かずの食料や酒も見つかるだろう。
 今回の敵の情報を伝えたグリモア猟兵は、現場に送り出す前に言っていた。これらを使って宴会をしていいのだと。敵を倒したあとに宴会をするのは、この世界では当然のことなのだと。
 幸いここは木片のそこら中に転がる場所である。食べ物を焼く燃料には困らない。
 腹を満たしながら戦いの疲れを癒して、思い思いに羽を伸ばしていいのだ。
 夜が更けるまでまだ時間はあるのだから。
都築・藍火
肉! 肉!! 肉でござる!! よぉしロヒカルメ殿。一緒に肉を食おうではござらぬか!!
肉を焼いて焼いて焼いて食いまくるのでござる!
…………この竜、焼けば食えるでござるかな



●体は肉でできている
 討伐されたものの遺財は、果たして誰の所有になるか。
 答えは討伐者である。アックス&ウィザーズではこの傾向が強く見られる。
 都築・藍火(サムライガール・f00336)がひとつに纏めた長く艶のある黒髪を揺らして、倉庫と思しき部屋の木戸に手を掛けた。飛竜との戦いによってすっかり立て付けが悪くなってしまい、手で押そうが引こうがうんともすんとも言わない。仕方がないと槍の石突で蝶番を壊す。すると絶景が藍火の目に飛び込んできた。
「肉!」
 干し肉の群れだ。藍火の眼が輝いた。
「肉!!」
 大小様々な色と形の干し肉が桟から吊り下がっている。盗賊が自作したのか、どこかから奪ってきた食料なのか、いまとなっては知るすべもないが、腹に収まってしまえば同じである。それにしても驚くべきはその数。猟兵が集まって三日飲み食いしてなお残りそうなほどの量だ。
「肉でござる!!」
 藍火の機嫌は最高潮。肉をひとつひとつ指さし、あれは焼こう、煮るのもいい、生のまま食えるものはないか、食べ方を考えていくだけで涎が溢れてしまいそうだった。とはいえ、調理するにも器具がない。最悪木片を削って木串にするかと辺りを見回すと、彼女は丁度いいものを見つけた。即ち、食器を抱えたグリモア猟兵である。

 鉄網から脂が滴り落ちて、じゅうと音を立てた。石を積んだ即席の竈に、焼き肉が出来つつある。それを猟兵が囲み、皿を持って談笑していた。金網も食器もグリモア猟兵のヴィルが持参したものである。
 藍火はというと竈の真正面に座って、肉が焼けるのをいまかいまかと待ち焦がれていた。彼女の持つ皿は空でなく、さりとて焼けた肉が乗っているでもなく、金網のスペースが空き次第投入される予定の肉が山盛りになっていた。
「肉を焼いて焼いて焼いて食いまくるのでござる!」
 ヴィルが金網から焼けた肉を皿に移すと、すぐさま藍火は新しい肉を金網に投入。返す箸でヴィルの皿から焼肉を摘まみ頬張る。たちまち目を細めた。
「んん~!」
 火で溶けた脂が熱量と旨みになって舌の上に広がった。戦いで疲れた体に沁みる味だ。肉へ胡椒を軽く振りかけただけの、素朴で野生的な味わい。引き締まっていた干し肉だが、火によって脂が溶けて、ぷるりとした弾力を取り戻す。噛めば噛むほど口内で肉が弾んで味覚を彩ってくれる。この肉は干してからまだ日が浅いに違いない。焼く前が生に近かったから、だから柔らかく噛み千切りやすいのだ。
 グリモア猟兵がこれをどうぞと皿を差し出す。こちらにはよく乾燥した硬い干し肉があって、藍火は勢いよく頬張り食感の違いを楽しむ。焼いた肉とは違う、よく熟成した味わいに舌鼓をうった。
「これだけでも竜を討った甲斐があったというものでござるなぁ」
 顔を向けると、遠く見える飛竜の体。巨体に相応しい暴力の王だったが、いまは物言わぬ骸である。
 そういえば、と藍火は思い出したように箸を止めた。
「……この竜、焼けば食えるでござるかな」
 誰かがごくりと唾を呑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨乃宮・いづな
やたー!あたし達の大勝利だねっ!
何にしてもお金は大事だよね。それじゃあ早速お宝探しと行こうかな!

ワイバーンが集めていた硬貨や宝石類を拾い集めるよ。
いっぱい集めるよ。瓦礫に沈んでるとは言っても、量が量だしね!
……正直お金が有ればあたしは幸せなんだけれど、うーん。宴会も捨てがたいよね。

という訳で(懐に収める分は別として)用意しました各種食料!
飲み食いしつつ、一緒に戦った人達に挨拶回りでもしようかな。

後はそうだね、宴会芸としてユーベルコード『五百重波』を使ってソードジャグリングでもしようかな?
せっかく騒げる機会なんだし、楽しまなきゃ損だよね。いっぱい楽しむよー?



●盗賊王の遺財
 木板を一枚目くると、山吹色の硬貨をひとつ見つけた。雨乃宮・いづな(水縛鎖・f00339)は笑みを浮かべて拾い上げる。ずっしりと手に響く重みは、金貨の値打ちを示しているようだった。飛竜が倒されてからずっと拾い続けてきたのだから、その数は相当な量になる。戦いの勝利を一番喜んだ猟兵はいづなだったかもしれない。
 金貨の響く澄んだ音に狐の耳はぴくりと動き、小刻みに振られる尻尾は彼女の歓喜を現していた。
「これでひとつ、ここにもひとつ。大漁だね」
 豊作だねぇと、瓦礫をどかして盗賊王の遺財を探す。いまのところ金貨しか見つかっていないが、それだけでもかなりの量だ。持ち帰るのが大変だと嬉しい悲鳴をあげそうになる。
 お金さえあればあたしは幸せなんだ。懸命に財宝を拾い集めるいづなへ誰かが声を掛ければ、きっとそんな言葉が返ってくるに違いない。
「金貨以外はなかなか見つからないね」
 前髪が額へ貼りつくのを感じ、いづなは汗をぬぐう。屈んで瓦礫をどかしながら探し、拾い集めるのは結構な重労働である。
「あった、ここにもひとつ」
 元は柱だろう太い角材をどけると、半ば土に埋まった金貨を発見。目を細めてすかさず拾う。
「よしよしこれで…あれ?」
 見ればその硬貨、およそ真中が強い力で引き千切られていた。戦いの余波で傷ついたのだろう。無残な断面が飛竜と猟兵の戦いの激しさを物語る。
「あれ、あれあれ…?」
 心地よい疲労感と満足感に包まれていたいづなは、ここにきて突然表情を変えた。視線は金貨の断面に注がれたまま。
「これ…」
 メッキだ、と。蕾のような唇が呟いた。
「あーあ…」
 いづなの拾い集めていた硬貨は、表面こそ黄金色だが中身は青銅のそれであった。金ならいざ知らず、果たして青銅の価値は彼女の故郷ではいかほどだったか。骨折り損のくたびれ儲けという言葉が脳裏をよぎり、彼女は硬貨を放り捨てて項垂れた。
 が、視界の隅に紅色の煌きを見つけてすぐに飛びつく。
「宝石!もしかして紅玉!?」
 邪魔な瓦礫を蹴り飛ばして大粒の宝石がついた首輪を拾い上げれば、煌びやかな赤い輝きを放つそれに、やたー!と両手を挙げて飛び上がった。

 結局のところ。いづなが見つけたのは硬貨や宝石だけではなかった。盗賊たちの貯蔵した飲料も発見していたのであろう。容器に入ったそれを猟兵たちの元へ届ければ、脂の焼ける香ばしい匂いが鼻を包む。肉を焼いているのだ。
「あたしもまぜてまぜて」
 飲み物を見せつけながら輪に入れば、焼き肉の乗った皿と共に歓迎された。いづなが齧ると、熱い脂の旨みが舌に広がって食欲を刺激する。いづなは金だけあれば幸せになれた。けど、宴会に興味がないかというとそうでもない。芸勝負を申し込まれれば受けて立つ。
 腰から黒い刀と脇差をしゅらりと引き抜き、回転させながら宙へ放る。さらに放る。まだまだ放る。どこからか現れた刀が次々と放り上げられた。落ちてくる刀もすかさず取って投げる。
 最初は物珍しそうにいづなの芸を見ていた猟兵たちも、いづなの手を往復して宙で回転していく刀が十を超えると真顔になり、やがて十三に届くと歓声を上げた。
 刃も硬貨も宝石も。すべて宴の終わりまで焚火に赤く照らされ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花巻・里香
私は買い物のついでに宝石や装飾品を売りにいきましょ
硬貨を選ばないのは被害にあった人の遺品返還が一番の目的だからよ
念の為、宝石の体を隠し人間の姿に変装しておくわね

回収したものに、愛する人にプレゼントした一点物や家宝が混ざっていると良いのだけれど。
真偽の確認は必要でしょうけれど、無償では返却しないわよ
そのあたりの遺品買取は酒場で受け持ってくれるかしら?
よくある読み物ではギルドが遺品買取の窓口となるケースもあるようだけれど。
時間掛かることも多いでしょうから、その間はチョットした前金を確保して、こちらにしかないものを見て回るのもいいわね。
盗賊の影響があったのなら、出し惜しみせずに使いましょ。



 道を歩きながら往来の人を避けると、桃色の髪が揺れた。ふと鮮やかな紅色が目を引いたから、露天で林檎を指差して購入した。
 花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)が歩いているのは、盗賊団の拠点から一番近い町である。赤い瞳を街並みに彷徨わせながら再び歩き出して、手に持った林檎へそっと口付けた。すると林檎の姿はたちまち消える。里香の顔をすれ違う男が驚きまじまじと見たが、無視してそのまま通り抜けた。
 里香は手ぶらだが、買い物に来ていた。買ったものはすべてユーベルコードで彼女の庭園へと収納しているし、売る予定の物もそこにある。彼女は崩れたアジトから遺財を選んで町へ売りに来ていたのだ。
 足が止まる。
「ここね」
 蕾のような唇で呟いて、酒場の看板を見上げる。モンスターと戦う冒険者の屯する場所。戦力と情報の集積場。戸を開けて踏み込むと、そこかしこから話し声が聞こえた。やれどこかにゴブリンが出ただの、命知らずがどこぞの盗賊団を襲撃しただの。後者には聞き覚えがある。随分と耳の早いことだ。
「遺品の買取はここでしてもらえるのよね?」
 凛、と玉を転がすような澄んだ声に酒場の囁きが静まる。里香がカウンターに置いた品へ周囲の視線が集中していた。驚きながら頷く店員の前で、宝石や装飾品が照明を浴びて煌く。
 里香の持ち込んだ品々は、盗賊の被害者の遺品返還を目的として選んだものである。故に硬貨の類は見当たらない。この中に一点物や家宝があればいいのだけれどと彼女は想う。例えば愛する人への贈り物とか、親から子へと受け継がれたものとか。そういったものがあるべきところへ戻ればいい。
 里香のささやかな祈りをよそに、店内のざわめきが蘇った。襲撃された盗賊団の噂と彼女の出したものを結び付けてるのだろう。いかめしい男が質問を携えて歩み寄るのを視界の端に認めたので、さっさと前金だけ受け取り出口へと足を進める。買い取りに出した品の量を考えれば、査定に時間はかかるだろう。
 薄暗い店内から出て日光を浴びれば、襟から僅かに覗いた宝石の肌が赤く煌いた。そっと襟を正して隠す。
 せっかくだ。受け取った金でこの世界、この地方にしかないものを探そう。たくさん買い物をしよう。
 だって、この金もこの場所で循環するべきものなのだから。
「ねぇ。その焼き菓子、見せてもらえる?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
アドリブ歓迎

「この地へ降り立つのは初めてで新鮮だぜ。
酒や食材も割りとあるな。後で食うか。
この硬貨使えンなら、ちぃっと欲しいモンがあるンだが…見てみっか」

任務続きだったため暫しの休息を楽しむ
酒や竜の肉、野菜など貰い、硬貨を集める
その後、一人でぶらぶらと買い物へ
興味津々な様子で周囲見渡す
靴屋を見つけて中へ

「よぉ。このカネ全部使っていいから、俺に似合う靴寄越せや(強調)
任務続きで底がすり減ったり、ボロボロになっちまったから新しいのが欲しい。
…フン、及第点くれてやンよ(ニィ」
靴の詳細はマスターさんへお任せ

煙草か葉巻を売ってる店もあれば買っていき、一本試しに吸う
「ガキがいねェとこでしか吸わねェけどな」



 ざりり。
 靴底が砂利を踏む。随分とくたびれた靴だった。
 その主は休息のため町を訪れていた。彼は猟兵だった。任務によって様々な世界で戦ってきた。異端の神々と吸血鬼が支配する宵闇の世界も、邪神と狂気が社会の裏に潜む世界も、蒸気と魔法が幾重にも折り重なった迷宮の世界も、滅びた人類の英知が時を刻み続ける世界も、全ての地を踏みしめ、靴底を減らし続けてきた。落ちなくなった汚れもある。
「この地へ降り立つのは初めてで新鮮だぜ」
 左右で赤と青の瞳をもつ男性、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)はそして、靴底に新しい世界の大地を刻み付けた。ここはアックス&ウィザーズ。剣と魔法が怪物へ立ち向かう世界であった。
 漆黒の戦闘衣の上からでは目立たないものの、彼の懐は酒類と食料によって膨らんでいる。いずれも盗賊団の跡地で見つけたもので、あとで食べるつもりで持ってきたのである。
 クロウは歩きながら今度は硬貨を取り出し、目の上に翳す。出所は食料と同じ、盗賊団にあったものだ。陽光が表面を反射して黄銅色の輝きを見せてくる。
「この硬貨使えンなら、ちぃっと欲しいモンがあるンだが…見てみっか」
 言って、彼は道端の露店へ硬貨を渡す。彼の言う『ちぃっと欲しいモン』は鳥肉の串焼きではなかったのだが、ぶらぶらと歩いて買いものしながら探そうと思ったのである。つまるところこれは、観光だ。
 乾燥した香草の振りかけられた鶏肉を頬張った。すっと鼻を抜ける馴染みのない香辛料の風味だが、焼けた肉に滲む脂とほどよく馴染んで、しつこさのない濃厚な旨味を舌に広げてきた。
 知らず知らずのうち口元が緩んでいた。
 再び足を進める。
 すると葉巻を咥えた男とよくすれ違う気がして、クロウはその場で周囲を見回した。日に焼けたやせぎすの男が葉巻を扱う店をやっていた。露店で並べられた葉巻に見た目の区別はつかないが、いくつか種類が用意されているらしい。店主の説明からそのうち一種類を選んで硬貨を渡す。火を貰ってさっそく一本咥えてみれば、自然と口から音のない呟きがこぼれた。悪くない。
「まあ、ガキがいねェとこでしか吸わねェけどな」

 煙を吹かしながら歩くクロウが店の前で足を止める。本日これで何件目になるだろうか、彼の手荷物はすっかり増えていた。だが顔つきはこれまで露店を覗いてきたそれとは違う。ついに『ちぃっと欲しいモン』の店を見つけたのである。今度は露店ではない。煉瓦で組まれた立派な店である。
 靴屋。
 彼は靴を新調するつもりだったのだ。
「よぉ。このカネ全部使っていいから、俺に似合う靴寄越せや」
 戸を開けるなり声を掛け、卓上に硬貨の小山を作る。
「……」
 それを出迎えた男は、気難し気に客を睨み返す。騒々しいと言いたげだった。靴屋の店主は白髪交じりの、葉巻を咥えた老人だった。店主は硬貨に目もくれずクロウを睨み付けて、やがて口を開く。
「どこへ行く靴だ」
「どこにでも行く」
 クロウは店主の咥えた葉巻が、自分の買ったものと同じことに気付いた。趣味がいい。
「何をするための靴だ」
「何でもする。何でも戦う」
 ふん、と店主が鼻を鳴らす。葉巻の煙が僅かに鼻から漏れた。
「安くはないぞ」
「構わねェよ」
 今度はクロウが鼻を鳴らした。それでようやく店主は彼の置いた硬貨の数に気付くのだった。
 顎に手を添えて考えながら、店主はクロウの足元へ視線を注ぐ。
「随分と靴に無理をさせるやつだ。生半可な皮じゃお前には合わん」
 言って、店主は店の裏手に続く扉を開ける。
「火蜥蜴の皮だな。丈夫さと火への強さは保証するぞ。だが何より硬い。鎧にも使われるものだ、ヤワな鍛え方してるやつじゃ足のほうが負ける」
 それでいいかと視線で問いかけてくる老人に、クロウは口元を釣り上げながら答える。
「そんな皮で靴が作れんのか?」
 挑戦的な物言いになったが店主は同じようにニヤリと笑った。
「無理だな。…わし以外には」
「…フン、及第点くれてやンよ」
 杜鬼・クロウは猟兵だ。これまで様々な世界を歩いてきたし、これからも歩いてゆくのだろう。
 新しい靴で次はどんな世界を歩くことになるだろうか。
 クロウはまだ見ぬ世界に思い巡らせ、靴の完成を待つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月25日


挿絵イラスト