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真田血風録~心なんて、凍て付けばよかった

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #真田神十郎 #剣豪 #上杉謙信 #魔軍転生 #心情系 #🔴が増えると女剣豪が死ぬ #マイ宿敵

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 放浪の女剣豪がいた。目的は復讐。
 父親を斬り殺した妖剣士を探して、今日も彼女は東へ西へ。
 しかし、未だに仇敵は見付からず、いたずらに月日が流れていく。
 彼女は、生まれつきの美しい純白の御髪をなびかせ、血風の中を舞う。
 どんなに敵を斬り伏せても、返り血の一滴も浴びない俊敏な身のこなしは異常だ。
 凍て付くように冷徹怜悧な剣筋は、人の心を捨て去ったかの如く迷いがない。
 付いた二つ名は『忌雪(いみゆき)』――それが不動・心春(ふどう・こはる)だ。

「貴殿が『忌雪』か?」
 赤備えの西洋甲冑を着込んだ、死人のような顔色の男から声を掛けられた。
 それを心春は無言で無視を決め込むと、今は荒れ果てた神社へ向かう。
 ……今までも、こうして果し合いを申し込まれてきた。
 だが、斬り捨てるたびに虚しさが心に降り積もる。
 しんしんと舞い落ちる雪のように、気付けば虚しさで心が埋まっていた。
「どこへゆく、『忌雪』? 我は貴殿に用があるのだ。おい、止まれ!」
「弱い奴を……相手取るなど、虚しい……」
 心春が漏らした嘆息の言葉を聞いた赤備えの男が、心春の行く手を阻んだ。
「待て。我が弱いと? それは聞き捨てならぬな? 我の赤備えを見ても、か?」
「……みな、同じような事を言って、あたしに斬られて、死んだ」
 もう、繰り返したくない、虚しい、関係ない奴は斬りたくないのに。
 男を避けて廃社へ向かおうとした、その時だった。
 一瞬で、周囲の景色が吹雪に覆われた。
「……妖術? 違う、これは……“ゆーべるこーど”……?」
 心春が愛刀の柄を握ったのとほぼ同時に、巨大な雪狛兎に騎乗した白亜の巫女達の薙刀が殺到する。心春は脇差も抜き祓い、どうにか初撃を刀の峰で受け流してみせた。
 身体が、勝手に反応してしまった。もう、心はとうに死にたがっているのに。
 その一連の動作に、赤備えの男は満足げに哄笑した。
「はっはははは! いいぞ! そうでなくては、勧誘する価値がない! 我は! 猟書家(ビブリオマニア)にして、幕府転覆を悲願とするクルセイダーの盟友! そして日ノ本一の兵! 真田神十郎! 『忌雪』殿、貴殿を殺し、オブリビオンとして蘇らせて配下に加えて進ぜよう!」

「猟書家『真田神十郎』がまた、剣豪さんを狙う予知を見たよっ!」
 グリモア猟兵の蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)は、過去に真田神十郎が起こした事件の資料を、グリモアベースに集まってくれた猟兵達へ配布した。
「今回も、魔軍将『上杉謙信』を超・魔軍転生させたオブリビオンの大軍勢が剣豪さんを襲ってるよっ! 周囲に局地的な吹雪を起こして、剣豪さんを逃げられないように包囲してるっぽいっ! もう初夏だけど、みんなは防寒対策はしっかりしてねっ?」
 そして、今回、襲われている剣豪の『不動・心春』は戦う事に疲弊しており、身を守ることに消極的だ。今は条件反射で身を守っているが、長くは持たないだろう。
「心春さんの心のケアも、みんなにはお願いしたいなぁって。彼女に生きる希望を思い出してあげてっ? みんな、よろしくねっ!」
 レモンがグリモアを輝かせると、サムライエンパイアへの転送が始まった……!


七転 十五起
 本シナリオは心情寄りの真田神十郎戦です。
 殺伐とした女剣豪の心に、希望の灯火を再び宿してあげましょう。
 なぎてんはねおきです。

●プレイングボーナス(全章共通)
 剣豪を守る(本人もそれなりに戦うことはできます)。

 ただし、本シナリオの女剣豪は、戦うことに疲弊して戦闘に消極的な態度です。
 🔴の数が増えるたびに女剣豪の心が脆くなり、自ら殺されに向かいます。
 彼女を奮い立たせる、叱責する、激励する等して、うまく焚き付けてください。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『『巫女雪女』寒珠』

POW   :    神威雪護装(ゴッド雪だるまアーマー)
無敵の【自身が奉る神に寄せた雪だるまの鎧】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    出でよ守護兎
自身の身長の2倍の【乗り換え可能な雪狛兎】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    猟氷封縛陣
【対象を飲み込む水を生む護符】が命中した対象に対し、高威力高命中の【水ごと氷結封印する氷の護符】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神代・凶津
襲われている剣豪の姉ちゃんに『結界霊符』を投げて結界術で護るぜ。

よう、剣豪の姉ちゃん。助太刀するぜ。ん?余計なお世話ってか?
なんだ、アンタ死にたいのか?・・・アンタの死んだ親父さんがそれを望むかね。
知ったような口を聞くな?おう、俺は何も知らねえよ。だが俺なら例え自分が死んでも相棒には生きていて欲しいがな。
そのまま俯いて立ち止まるか、立ち上がって進むかは結局お前さんが決める事だぜ。

炎神霊装でいくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」
高速飛翔しながら雪狛兎に乗った敵に炎刃を放って怯んだ所に炎刀で叩き斬ってやる。

「・・・あの人、立ち直れるかな?」
さあな、最後に決めるのはあの姉ちゃん自身だ。


【アドリブ歓迎】



『忌雪』こと不動・心春は、押し寄せる氷と斬撃を条件反射のみで凌いでいた。
(強い……勝てない……もうこれ以上の抵抗は、意味ないかな……)
 咄嗟に心春は雪狛兎の突進に身を投げ出す。
 あと少しで死ねる、と心春が確信した次の瞬間。
「よう、剣豪の姉ちゃん。助太刀するぜ?」
 朱塗りの鬼面を被った巫女が、結界霊符を心春に貼り付けた。
 すると、突っ込んできた雪狛兎に乗った雪巫女達の薙刀の一閃が、心春の目の前で弾かれた。まるで見えない壁に阻まれたかのように。
 神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は間一髪、心春を助け出せてホッと胸をなでおろした。
 しかし、心春は奥歯を噛み締めながら、迷惑そうに声を絞り出す。
「……助けてなんて、頼んでない」
「ん? 余計なお世話ってか? なんだ、アンタ死にたいのか?」
 飛び込んできた雪狛兎を結界霊符で発生させた見えない壁で押し留めた凶津は、ふと心春にとって急所となりうる言葉を口にした。
「……アンタの死んだ親父さんがそれを望むかね?」
「どうして、それを……? というか、あなたには関係ない……」
 驚きながらも、凶津を突っぱねる心春。
「知ったような口を聞くなッてか? おう、俺は何も知らねえよ。だが俺なら、例え自分が死んでも相棒には生きていて欲しいがな?」
 相棒……鬼面を被った神代・桜の身体がピクッと小さく動いた。
「……凶津、ありがとう」
「おう、相棒。俺達は2人で最強だ。今までも、そしてこれからもだ。桜が望むなら、俺はもっと強くなってやるぜ!」
 凶津の言葉に迷いはない。
 桜との相性の良さは、互いの信頼関係から生み出されている結果だと如実に言い表している。
 それを眩しそうに心春は見詰めていた。
「いいなぁ……でも、あたしには……」
「そうやって諦めるなよ。いいか? そのまま俯いて立ち止まるか、立ち上がって進むかは、結局、お前さんが決める事だぜ?」
 凶津は猛吹雪めいた敵軍の猛攻を押し返すべく、桜と意識と霊力を同調させてゆく。
「ブレイズフォームで行くぜッ、相棒ッ!」
「……転身ッ! 炎神霊装ッ!」
 途端、神代コンビの身体が真っ赤に燃え上がった。
 光熱と氷雪がぶつかり、水蒸気爆発の白い煙が辺りを覆い尽くす。
 その白霧を切り裂いて飛翔するは、背中に不死鳥の如き爆炎の両翼を背中に備えた神代コンビ!
 凶津と桜の巫女服の一部が、炎の橙色へと染まると、マッハ11に手が届きそうな超音速で戦場を駆け抜ける!
「おい、剣豪の姉ちゃんよォッ! 未来っていうのは、自分で切り開くんだぜ? こうやってなあぁァァァッ!」
 桜の両手には、迸る炎を掴んで生み出した二振りの打刀が握られていた。
 凄まじいスピードで炎の斬撃をこれでもかと放ち、上杉謙信が憑装している氷の巫女を圧倒していった。
 心春はその異次元の強さに目を奪われてしまう。
 自分により強い存在がいるという事実をまざまざと見せ付けられたことで、心春の身体に熱と力が戻っていく。
「あれが……猟兵なの? あたしも、生きていれば……もっと強くなれるかな……? もうすこし、生きてみても、いいのかな……?」
 神代コンビの勇姿に、胸の奥が熱くなるのを自覚する心春であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
やれやれ…死にたがりとか美人が台無しですね
「ご主人サマはそういうの無いの?」
冗談じゃない
死ぬなんぞ御免被ります
エロい事だってもっとしたいからな

UC即起動
【戦闘知識・情報収集・視力】
敵陣の状況と心春の立ち位置の把握

【属性攻撃】
炎属性を己とメルシーと心春に付与

おいおい心春さんよ
お前…なんでそこまで強くなったのか忘れてんのか?
許せねぇ奴がいるんでしょう?
断罪を下したい相手がいるんだろ?
その目的も果たさず果てるのか?
何…此処を切り抜けたら手伝ってやりますよ
僕ら猟兵ですしね?

【念動力・弾幕・範囲攻撃】
念動光弾による弾幕を広範囲に展開し殲滅
接近してきたのは
【二回攻撃・切断】
メルシーによる鎌剣斬撃!!



 燃え盛る戦場の影から、自称天才魔術盗賊のカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)、その相棒の銀髪少女メルシーが心春の護衛に付く。
 カシムは心春の顔を見るなり、深い溜息を吐いた。
「やれやれ……死にたがりとか美人が台無しですね」
「……え、び、美人……?」
 心春は復讐の剣に生涯を捧げてきた。
 故に、自身の顔立ちの良さとかめかしこむなど、着飾ることなど興味が持てなかった。
 そこへ真正面から美人と褒められた心春は、カシムからすすすっと数歩退いた。
「……そういうの、あたしよりも隣の人に言ってあげて」
「メルシーは世界一可愛いからね☆」
「ちょっと黙ってろ。おいおい心春さんよ。僕らは猟兵です。お前……なんでそこまで強くなったのか忘れてんのか?」
 カシムは周囲に炎の障壁を顕現させ、雪の巫女が放つ護符を焼き払う。これで心春もカシム達も、敵のユーベルコードを無力化出来る。
「許せねぇ奴がいるんでしょう? 断罪を下したい相手がいるんだろ? その目的も果たさず果てるのか?」
「うるさい……っ! ずっと探しているけど、見つからないのよ! もう疲れた……『忌雪』なんて二つ名だって、あたしは望んでなかったのに……」
「気休めですけど、僕らをまずは信用してもらえますか? 此処を切り抜けたら手伝ってやりますよ、僕ら猟兵ですしね?」
 カシムがメルシーと魔力を通わせ、戦闘モードに切り替わる。
「メルシー! 魔力を回すからお前も手伝え!」
「了解だよご主人サマ♪ 一緒に戦おうね♪」
 炎の障壁を纏った2人は、放たれる霊符を一瞬で灰へと変えながら、巫女雪女達を魔砲の念動光弾による弾幕でなぎ払い、鎌剣ハルペーの連撃ですれ違いざまに命を刈り取ってみせる。
 彼らの移動速度が時速540kmまで到達すると、たとえ上杉謙信であろうが何も出来ずに蹂躙されてしまう。
 もはや心春の肉眼では、カシムらの姿を肉眼で追うのが困難だ。
「やっぱり猟兵は強い……この強さがあれば、本当に父様を殺した奴を、見つけ出せるかも……?」
 心春は、カシムの戦いぶりに小さな希望を見出した。

「なんか今日のご主人サマ、普段と違ったね? ご主人サマはそういうの無いの?」
「冗談じゃない、死ぬなんぞ御免被ります。エロい事だってもっとしたいからな」
「だよねー☆」
 この本音は心春に聞かせないほうがいいだろうなぁと、メルシーは顔を上げ始めた心春を一瞥し、カシムに相槌を打った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
UC【錬成カミヤドリ】による【集団戦術】。
複製鎧で心春殿を【かばう】のと並行して敵を包囲し一体に対して多数で【グラップル】。
本体である自分は黄金魔剣で動きを止めた敵を複製鎧諸共【なぎ払い】【吹き飛ばし】つつ、心春殿を【鼓舞】しよう。


面を上げろ、不動・心春。

当方は貴殿の事情は大して知らん。
今日まで磨いた剣技と歩んだ旅路を、続けるか放り出すか。それを口出しする気も毛頭無い。

だが生を諦めるのは止せ。未来を諦めるのは止せ。
貴殿とて親がいたのだろう。心春と名付けた者が、その生命を望んだ者がいたのだろう。

面を上げろ、不動・心春!
その生命、此処で奴らに叩き売っていいものではないはずだ!



 戦場の真ん中で、青く燃える流動鉛の黒騎士の集団が巫女雪女に掴み掛かっては投げ飛ばす。
 だが、巫女雪女達も雪狛兎で黒騎士の集団を弾き飛ばし、戦況は一進一退の様相を見せる。
「錬成カミヤドリによる集団戦術が破られかけている……姿は違えど上杉謙信、侮れないか」
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は蒼炎を噴き上げる黄金の魔剣……ルパートの覚醒した真の力を振るうと、飛び掛かってくる雪狛兎を真一文字に切り裂いた。
 生命力を共有する巫女雪女はその体を蒼炎と流動鉛へと変換され、重力に抗えずに地面の染みへと成り果てた。
 ルパートは黒騎士の鎧のヤドリガミだ。
 ユーベルコードで自身の器物、つまりルパートそっくりの複製を104体出現させて操ることで、氷雪の巫女に憑装する上杉謙信に対抗していた。
 それでも上杉謙信は速度と突進を駆使して、ルパートの複製体を徐々に削っているのだ。
 幸い、ルパートもその辺りを織り込み済みで、心春を狙う雪狛兎には複製体を盾にして突進を防ぎ、敵の動きが止まったところを他の複製体が怪力で素っ首をねじ切ってみせた。
「面を上げろ、不動・心春」
 不意にルパートは心春へ声を掛けた。
 突っ込んできた雪狛兎を魔剣で受け止め、そのまま蒼炎で焼き払うルパート。
 彼は心春の顔を見ず、背中を向けたまま言葉を紡ぎ始めた。
「当方は貴殿の事情は大して知らん。今日まで磨いた剣技と歩んだ旅路を、続けるか放り出すか。それを口出しする気も毛頭無い」
「……そう。だったら……」
 放ってくれてもいいのに、と言葉を継ごうとした心春を敵の突進からかばうルパート。
「はああっ!」
 力任せに敵を叩き切りって流動鉛へと変換させると、ルパートは再び語り掛ける。
「だが生を諦めるのは止せ。未来を諦めるのは止せ。貴殿とて親がいたのだろう。心春と名付けた者が、その生命を望んだ者がいたのだろう?」
「それは……」
 今までとは明らかに違う反応だった。
 心春はそれまで無気力・無関心を貫いていたが、ルパートの言葉に対して明らかに動揺していた。
「お母様……黙って屋敷を抜け出したまま、ずっと便りを出していない。ああ、お母様、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「どうした? お母様とやらがいるなら、なおさら死ねぬだろうに」
「そうね……長らく音信不通だったし、厳しい人だったから、今のあたしを許さないと思うけど……」
 あまり心春にとって、いい思い出がないようだ。
 それでも、彼女の心に肉親への情を思い起こさせたルパートの言動は評価に値する。
「面を上げろ、不動・心春! その生命、此処で奴らに叩き売っていいものではないはずだ!」
「……そうよね。一応、生みの親で名付けの親に謝罪するまでは、野垂れ死んでいい道理はないものね……」
 心春はようやく自発的に剣を構えた。
 ルパートはそれを確認すると、彼女と背中合わせになって敵の猛攻を凌ぎ続ける。
 ようやく芽生えた心春の闘争心・生存欲求に、肉体なき黒騎士の鎧のヤドリガミは誇らしげに黄金の魔剣を振るい続ける……。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
あは、美女の集いだ
楽し気に参上だぜ

切り込んで心春の隣に立つ
仇討は肯定、怨敵を探す大変さに理解を示し稲荷巫女のお説教を始めるよ

仇討も半端、自ら討死希望とは侍としても半端、そもそも覚悟が半端だと諭すぜ
初めて刀を手にした時の『殺す覚悟』を思い出しな
親父さんと刀と―覚悟を抱いて挑んできた者たちを裏切るな

言い返したいなら言えよ
誰にも吐き出せずにいたならアタシが受け止める
剣士として楽しく手合せしたいんだ
親身にもなるさ

って、雪女の皆さん空気読んで欲しいな
アークウィンド振るって風の衝撃波で水を散らす
接近して稲荷符をおでこに貼り付け、呪詛を持って一発で命脈を断つよ

無暗に女の子は斬りたくねえんだ
神鳴はまだ抜かない



 吹雪の檻の中、女剣豪のもとへ新たな猟兵が駆け付けた。
 その者は愉しげに口元を上向きに歪ませ、灰色の髪を吹雪になびかせる。
「あは、美女の集いだ、絶景だ」
 巫女服を纏った妖狐の四王天・燦(月夜の翼・f04448)は、すぐさま心春の隣に駆け寄ると、放たれた敵の護符を風の衝撃波で吹き飛ばした。
 妖精の祝福を受けた風の短剣『アークウィンド』は、心春と燦が水の檻に囚われる前に敵の攻撃をひとつ残らず消し飛ばす。
「って、雪女の皆さん、空気読んで欲しいな。今から“稲荷巫女のお説教(セカイヲツムグウタ)”を始めるよ」
 ここに、ユーベルコードでの説教大会が開幕する。
 まず、襲い掛かってくる雪女達……上杉謙信の集団へ燦が一喝した。
「いいか、よく聞け。いくら仲間に引き入れたいからって、お前達はこの子の気持ちを無視しすぎなんだよ。殺してから蘇生させる? そもそもアタシ達が許さないとしても、そんな条件付きつけられて、素直に承諾する奴が何処にいると思ってんだ?」
 燦の怒声に、雪女達はびくっと肩を竦ませ萎縮してしまう。
 攻撃の手はたちどころに止まり、燦の説教に耳を傾け始めた。
「最初に言っておくが、アタシは猟書家の野望を見過ごすことはしない。でも、それにしたって、お前達は礼節が足りなすぎる。仲間になるにあたって、利点や長所、それを為すにあたっての代償など、前提がすっぽり抜けたまま勝手に話を進めようとするからややこしくなるんだ。かの上杉謙信が礼節を欠くとか、語るに落ちたな? そんなことじゃ、たとえ心春を仲間にしても、離反されるのが目に見えてるぞ」
 雪女達は困惑する。
 確かに仲間へ勧誘するなら、まずは心春にとってのメリットを提示すべき。
 それはかつての戦乱の世でも、調略の際に報酬を相手武将に提示することと同じだ。
 正論を突き付けられ、雪女達の中の上杉謙信が言い返せずにじっとその場で佇むしか出来ない。
 そして、説教の相手は心春にも及ぶ。
「仇討ち、大いに結構。そして、何処のどいつか知らない仇敵を探す労力は想像するに難しい。それは分かるさ」
 けどな、と燦はキッと心春の顔を鋭い目で睨み付けた。
「今の心春はどうだ? 仇討も半端、自ら討死希望とは侍としても半端、そもそも覚悟が半端だ」
「……そんなの、言われなくても……」
 悔しそうに奥歯を噛み締めながら、燦を睨み返す心春。
 燦はその態度に、思わずニタリと笑みが溢れた。
「少しはイイ顔するじゃねえか。言い返したいなら言えよ。誰にも吐き出せずにいたなら、アタシが受け止める」
「なんで……初対面の他人に、そんなこと言えるの?」
 心春は戸惑いながら、燦に向ける視線を揺るがせた。
 それは困惑か、あるいは警戒心からか。
 燦は心春の言葉に破顔しながら答えた。
「あはっ、それは当然、この戦いが終わったら、アタシは心春と剣士として楽しく手合せしたいんだ。だから、生きてもらわなきゃ困るし、親身にもなるさ」
「……なにそれ。自分勝手ね」
「そうさ、自分勝手に生きて何が悪いんだ?」
 燦の断言ぶりに、心春ははっと息を呑んだ・
「自分勝手に、生きる……ね」
「そうだ、心春だって仇討ちをするっていう自分勝手を今まで貫いてきただろう? ……初めて刀を手にした時の『殺す覚悟』を思い出しな。親父さんと刀と――覚悟を抱いて挑んできた者たちを裏切るな」
「そんなの、あなたに強要されたくない……けど」
 心春は薄氷のように透き通った刀身を翻すと、凄まじい殺気を全身から放ち始めた。
「……いいわ。久々に手応えのある相手がたくさんいるし、今日は聞き入れてあげるわ……」
「素直じゃねえな、あはっ」
 燦も四王稲荷符を懐から取り出して身構えた。
 次の瞬間、雪女達は堰を切ったかのように2人の元へ殺到してゆき、敵を凍結させるべく水と雪の護符を放った。
 だが、燦は再び逆巻く暴風を味方につけ、敵軍団ごと護符を寄せ付けない。
 そこへ斬り込む心春の太刀筋は時が止まったかと錯覚するほどの神速を誇り、瞬く間に3人の雪女達の首を刎ねてみせた。
「おお、心春は容赦ねえな。でも、アタシは無暗に女の子は斬りたくねえんだ」
 そう言葉を漏らした燦は、敵の放つ護符を掻い潜って肉薄する。
 雪女達の額に稲荷符を押し付ければ、彼女たちの命脈は符が宿す呪詛によって、あっけなく絶たれてしまった。
 ――決着は近い。

成功 🔵​🔵​🔴​

箒星・仄々
敵討ちを願う気持ちはよく判ります

けれどそんな人生を娘に送ってほしいと
父親が望むでしょうか

心春さんが希望をなくされているのは
敵を見つけられないから
という側面もあるでしょうが
復讐に人生を費やす虚しさに
心のどこかで気付いておられる為ではないでしょうか

心春さんには
自分自身の人生を送っていただきたいです

毛皮の帽子にマフラー、手袋、ブーツで防寒

竪琴の音色に魔力を織り混ぜ
吹雪を魔力へ変換

炎と風の魔力で焔の烈風を巻き起こし
護符や氷を燃やしたり
雪女さんたちを倒します

心春さん
お父上が望んでおられるのは
娘が笑顔で生を謳歌すること
生きて未来を創りあげていくことだと思います

むざむざ命を失えば
お父上を悲しませるのでは?



 これまでの猟兵達は、心春を奮い立たせるような言葉を投げかけてきた。
 心春も闘争心を掻き立てられ、自死を選ぶくらいなら戦う選択肢を取った。
 だが、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は他の猟兵とは毛色の違う言葉を彼女に掛けた。
「敵討ちを願う気持ちはよく判ります。けれど、そんな人生を娘に送ってほしいと、亡くなったお父上が望むでしょうか」
 箒星は毛皮の帽子にマフラー、手袋、ブーツで防寒しつつ、黒い猫毛を膨らませて丸々と着膨れしていた。
 だが、その言葉は心春の心を大きく揺さぶった。
「……の、望むに決まってるわよ。あたしの父様は、殺された。だから……無念を晴らしてほしいと、願ってるはずよ」
「ですが、それは心春さんの願望以外の何物でもありません」
 箒星は竪琴の音色に魔力を織り混ぜ、吹雪を魔力へ変換してゆく。
 彼のユーベルコード“トリニティ・シンフォニー”は有効射程圏内の無機物を炎・水・風の魔力へ変換してしまう。
 そして雪は……水分は無機物である。
 次の瞬間、吹雪の檻がたちどころに炎の大旋風に変換されてゆく。
 巫女雪女達が放つ護符から生成された水分も、一瞬で熱風に置き換わって跳ね返されてしまう。
 変換された水の魔力は更なる炎と風を生み出し、巫女雪女達はあっという間にその体を蒸発させて消えていった。
 勝敗は決した。
 あとは、心春の想いに熱を込められるかどうか。
「貴女が抱く感情の原因は……希望を見出せていない原因は、確かに仇敵を見つけられないからという側面もあるでしょう。ですが、復讐に人生を費やす虚しさに、心のどこかで気付いておられる為ではないでしょうか」
「知ったような口ぶりで……あたしに説教しないで……!」
 心春が箒星へ刀の切っ先を突き付ける。
「……なんなの、あなた達? 今までどれだけ……怒りと絶望を、あたしが乗り越えてきたか、知らないくせに……!」
「ええ、残念ですが私には知る由もありません。ですが、心春さん。貴女のお父上が望んでおられるのは、娘が笑顔で生を謳歌すること、そして生きて未来を創りあげていくことだと思います。これは、娘を持つ大抵の父親なら、願って当然の事柄です」
 竪琴の優しい音色が、心春の剣先に戸惑いを抱かせる。
 さっきまでの剣呑な怒気は立ち消え、代わりに自身が剣を振るう資格があるのかを悩んでいるように窺えた。
 箒星は、心春の顔をまっすぐ見上げながら告げた。
「むざむざ命を失えば、それこそお父上を悲しませるのでは?」
「あ、ああ……あなたは、残酷ね……ずっと、気付かないようにしてきたのに、今、ここでそれを突き付けるなんて……」
 心春はその場に泣き崩れた。
 それは冷徹怜悧な剣豪ではなく、寂しがりな年相応の少女の泣きべそ出会った。

「――こんな事なら、心なんて、凍て付けばよかった。そうすれば、悲しい事なんて気付かないままでいられたのに……」
「ですが、未来へ進むためには、凍てつく冬を乗り越え、春を待たねばなりません。貴女の名前のように……」

 黒猫の猟兵は、泣きじゃくる女剣豪の背をさすって気持ちをなだめてゆく。
「さて。心春さんが暖かい未来へ歩めるように、元凶をここで倒しましょうか」
 箒星が見据えるは、日ノ本一の最強を意味する赤備えを纏った槍の猛将。
 いよいよ、猟書家『真田神十郎』との直接対決が勃発する……!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『真田神十郎』

POW   :    不落城塞
戦場全体に、【真田家の城郭】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    神速十字斬
【両手の十字槍と妖刀による連続攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    侵略蔵書「真田十傑記」
自身が戦闘で瀕死になると【侵略蔵書「真田十傑記」から10人の忠臣】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠蛇塚・レモンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 赤備えの猛将は、祖父譲りの大千鳥十文字槍を掲げて名乗りを上げる。
「猟書家(ビブリオマニア)、真田神十郎ッ! これより、貴様ら猟兵と相対す! さあ、悔いの残らぬよう、全力で死合おうぞ!」
 裂帛の気合とともに、空いた手には禍々しい妖気を迸らせる呪刀を鞘から抜き払う。
 その呪刀を見た心春が叫んだ。
「まさか……あの刀は……! ねえ、あなた? 不動・曽祢近(ふどう・そねちか)って男の名を知らないかしら……!?」
「フドウ……? フドウ……ああ、思い出した。我に無謀にも果し合いを挑んだ愚か者だったか。弱すぎて、配下に加える気も起きないくらいで、貴殿に尋ねられるまで忘れていたがな? ……そうか、貴殿は、あの男の……」
「……そうよ、娘よ。つまり、あなたが私の仇敵……!」
 さっきまでとは一変して、心春は誰かが抑えなければ突出して相打ち覚悟で猟書家へ斬り掛かりかねない!
 猟兵達は上手く彼女をなだめて連携を図りつつ、真田神十郎を打破しなくてはならない。
 事態は急転直下。
 しかしとて、決着の刻は迫る――!
四王天・燦
騙し討ちで心春の足を払うぜ
アタシの素行が見えていたかい?
文字通り足元掬われるくらい熱くなってるよと諭す
ちと後ろで彼奴の力量・太刀筋を見極めな

アークウィンドを手に神十郎に挑む
下郎に神鳴を抜く価値や無し
それに刀を向けるのは心春の役目さ

槍には不向きな近接戦を挑む―とフェイントを入れて一気に背後までダッシュとスライディングで滑り込んで刺す
鬼さん此方

再び相対した際、短剣を投擲して意表を突くよ
十字斬の仕掛けが僅かに乱れりゃ充分
勇気を持って踏み込み、腕を取って人体破壊術に繋ぐぜ

投げから腕を極めてあわよくば踏み潰すよ
妖刀と侵略蔵書という小道具の分、心春と釣り合い取る為に腕の一本貰うぜ

そんじゃ心春しっかり殺りな


甘・エビ(サポート)
 シャーマンズゴーストのシャーマン×闇医者、93歳の男です。
 普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、覚醒時は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 苦難の果てにようやく見つけた仇敵を前に、先程までの陰鬱な態度が嘘のように怒り狂う不動・心春。
「父は、弱くなんかない……! あなたの悪行を噂に聞いて、その凶行を止めようと立ち向かった!」
「だが、我に返り討ちにされた。ならば弱い。記憶に留めることがなかったくらいにな?」
 神十郎が断言すると、心春はキッと眼前に仇を睨み付けた。
「取り消して……その言葉、今すぐ取り消してっ!」
 心春は大上段から愛刀を振り下ろさんと、捨て身の攻撃を試みる。
 けれども、心春の世界が次の瞬間、天と地面がひっくり返った。
「きゃぁっ!?」
「おっと!」
 地面スレスレで心春をキャッチしたのは、四王天・燦(月夜の翼・f04448)だ。
「心春、今、アタシの素行が見えていたかい? さっき、アタシが心春の足を払って転ばせたのさ」
 そんな素振りは全く認識できなかった。
 心春はただ目の前の敵だけを見ていた。見えてなかった。
 故に、初歩的な騙し討ちに簡単に引っ掛かってしまったのだ。
 なんて恥ずべき失態だろうか。
「ようやく理解してくれたみたいだな。今の心春は、文字通り足元掬われるくらい熱くなってるよ」
 殿方よりも爽やかかつ魅力的なオーラを醸し出しながら、燦は心春との顔の距離を縮めてゆく。
 そのまま互いの額同士がくっつく。
「……ほら、やっぱりすごい熱だ。ちと後ろで頭を冷やして、彼奴の力量と太刀筋を見極めな」
「は……はい……」
 まるで白馬に乗った王子様ならぬ白馬に乗った暴れん坊将軍様を見るかの如き羨望の眼差しを、燦に向け続ける心春が後方へ退いていく。
 その様子を、サポーターとして駆け付けたシャーマンズゴーストが眺めていた。
「どんな治療薬や術式よりも、色恋に勝るものはねぇな、全く……」
「サポート猟兵、来ていたのか。アタシはただ、全世界の女の子に笑顔を届けたいだけさ」
「すげぇ、心がイケメンすぎだろ……ああ、自己紹介がまだだったな。甘・エビ。エヴィと呼んでくれ」
 愛用のスケイルアーマーの上に白衣を着込む奇抜なスタイル。
 病を根絶したいという人々の願いで変質し、海から上がってきたシャーマンズゴースト。
 それが甘・エビ(甲殻類祈祷隊・f27126)だ。
「アタシは燦。四王天・燦だ。っと、そろそろ敵さんを構ってあげないと拗ねちゃう頃だね」
「誰が拗ねるか、痴れ者が」
 燦のからかいに神十郎が答えた。
「もう今生の別れの挨拶は済んだか? ならば、我が侵略蔵書『真田十傑記』でお相手致す!」
 神十郎が赤い表札に金の十字が描かれた侵略蔵書を開くと、中から真田家にかつて仕えた伝説の忠臣10人が召喚された。
 猿飛佐助、疾風の如き忍者で体術戦のスペシャリスト。
 霧隠才蔵、忍術を得手とする、伊賀忍者の頭領の弟子。
 三好清海入道、老獪なる剛力の僧兵の兄。
 三好伊左入道、快活なる豪傑たる僧兵の弟。
 穴山小助、かつて日の本一の兵を最も間近で支え続けた懐刀。
 由利鎌之助、その役割は影武者。神十郎と瓜二つの容姿を持つ。
 筧十蔵、真田と共に戦を勝ち抜いた忠義の猛将。
 海野六郎、真田家の重臣にして侍大将。
 根津甚八、もうひとりの影武者。
 望月六郎、爆弾作りの名手でゲリラ戦の天才児。
 そして、真田神十郎、祖父に日の本一の兵を持つ赤備えの猟書家。
 総勢11人が、猟兵達と心春へ襲い掛かってきた。
「ここはエヴィに任せてくれぃ!」
 エビはユーベルコードで古代の戦士を呼び出し、この大軍勢を抑え込みにかかった。
「数が多ければいいってもんじゃないぜぇ!」
 召喚された古代の戦士は勇猛果敢で、槍術だけではなく炎の魔法で真田十傑を寄せ付けようとしない。
 エビも医療ノコギリを振るい、これらに応戦していた。
「20日間連勤した戦士の実力を見せてやるぜぃ!」
 ブラックな労働パワーがノコギリに宿り、真田十傑を次々に斬り伏せていった。
 しかし、神十郎自身も心春へ向かって祖父譲りの十字槍と呪刀村正を高速で繰り出す奥義を披露した。
「神速十字斬! 貴殿の父が死んだ技だ!」
「アタシを無視しないでくれるなよ?」
 神十郎に凄まじい突風が横から吹き付けた。
 燦が握る風の短剣『アークウィンド』から放たれた旋風だ。
「下郎に我が奥の手たる神鳴を抜く価値や無し」
 燦は全力を出す必要がない、と神十郎へ宣告した。
「それに刀を向けるのは心春の役目さ、アタシはその介添えだ」
「ならば貴殿から斬り刻んでくれる!」
 神十郎の奥義は途中で中断が出来ない。そのまま燦へ武器を振り乱してきた。
 だが、それこそが彼女の狙いだ。
 神十郎の真正面へ突っ込む燦。
 自ら殺されに行くのか?
 否、神十郎の股ぐらへ滑り込むと、そこをくぐり抜けてみせた。
 通過する際に敵の股ぐらを風の刃で斬り付ける。
「どんなに鍛えても、ソコは脆弱だろ? 鬼さん此方、手の鳴る方へってね?」
「おのれぇ……!」
 急所の痛みを堪えて振り向く神十郎。
 だが、そこへエビのノコギリが飛んできて、神十郎の後頭部に直撃!
「ストライクだせぃ!」
「がっ!?」
 急襲でたたらを踏む神十郎。
 その隙に燦が“四王殺人剣『人体破壊術』(サムライ・マーシャルアーツ)”を披露!
「腕一本、いただくよ!」
 侵略蔵書を持つ腕をねじ切られ、風の刃で切断!
「心春! あとは殺れ!」
 燦の叫びに応えた剣豪少女は、裂帛の気合とともに赤き猛将を斬り伏せた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

箒星・仄々
何と猟書家が仇敵だったとは
なら遠慮はいらないですね

ここで決着をつければ
心春さんは何の憂いもなく
未来へ進んで行けるというもの

存分に助太刀いたしましょう

心春さんは
先程の皆さんからの声掛けにより
未来へ進む意志と覚悟を取り戻したはずです

だからほんの少し声をかけてあげれば
きっと大丈夫

受け継いだ剣の教えを次の世代へとつないでいくこと
笑顔で人生を全うすること
それが貴女が進むべき道です

つるっとして間合いに入り
連続攻撃をつるっと受け流し
槍や刀
或いは腕や足をぺろっとして
得物を取り落としたり
転んでいただきます

心春さん今です!

終幕
心春さんのお父上と真田さんへ
鎮魂の調べ

海で静かな眠りを

そして心春さんの新たな人生を祝す曲


ルパート・ブラックスミス
UC【信ずる者に殉ずる為の鋼姿】。
不動・心春に強化鎧に変形した己を装着、【鼓舞】しつつ戦闘能力を【限界突破】させる。

刺し違えるなどと考えるな。
先に言ったぞ。その生命、此処で奴に叩き売ってどうする。
お前の人生はお前のものだ。奴の付属品ではないぞ。

心春殿に冷静さを期待できん、敵UCの迷路を正面突破し真っ向から敵に【切り込み】、敵攻撃は強化鎧で【かばう】。
罠や弓矢があるなら青く燃える鉛の翼を展開による【衝撃波】で【吹き飛ばし】阻もう。

帰るまでがなんとやら。仇敵を討つ旅路だというならば、奴を斬り捨てそのまま帰路につけ。奴が過去に消えた後の未来を至極当然に歩め。
それがその生命に望まれた強さだろう。



 赤備えの猛将は千切れた己の片腕を掴むと、傷口に押し当てる。
 真田十傑達は主のである神十郎の傷を手当した後に消滅していった。
 十傑には法術や治療の知識に詳しい者たちもいるがゆえの応急処置だ。
「……くっ! 一応は神経が繋がったか。だが……」
 完全に治癒することは出来ず、神十郎の動きは精彩を欠く。
 これは猟兵達にとって好機だ。
「ならば此処は一度、籠城させていただこう!」
 だが、神十郎は戦場を真田家の城郭で出来た迷宮に作り変え、猟兵達と心春を閉じ込めてしまった。
「……逃げた。つまり、仕切り直さないと戦えないってこと。今なら、あたしでも奴を……」
 心春は今にも捨て身の攻撃を仕掛けようと息を巻く。
 だが、それをルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)が前を遮った。
「刺し違えるなどと考えるな。先に言ったぞ。その生命、此処で奴に叩き売ってどうする」
 西洋鎧の背中越しに諭すルパートは、先程告げた言葉を反復する。
「お前の人生はお前のものだ。奴の付属品ではないぞ。それに、黙って飛び出した母親の元へ帰るのだろう?」
「……それは、そうだけど」
 心春は言質を取られている手前、前に飛び出すことを躊躇わざるを得ない。
 そこへ箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が彼女の心に寄り添おうと声を掛けた。
「何と猟書家が仇敵だったとは。なら遠慮はいらないですね。ここで決着をつければ心春さんは何の憂いもなく未来へ進んで行けるというもの。ならば存分に助太刀いたしましょう」
 ただし、と箒星は心春に注文を付けた。
「先程、私からお伝えしたことを思い返していただきたいのです。亡くなったお父上は、貴女の幸せを願っているはずです。ルパートさんの仰るとおり、ここで刺し違えようだなんて考えはお止めなさい」
 箒星には確信があった。
 心春は猟兵たちの言葉で、未来へ進む意志と覚悟を取り戻したはずだと。
 故に、ほんの少しだけ毛を掛けてあげれば、きっと大丈夫だと。
「受け継いだ剣の教えを次の世代へとつないでいくこと。笑顔で人生を全うすること。それが貴女が進むべき道です」
 箒星はペロペロと顔を洗いながら心春へ進言してみた。
「……分かってるわ。けど……!」
 だが心春はそれ以降、押し黙ってしまった。
 納得したいが何処か心に引っ掛かるものがある。
 傍目からでも分かるほど心春は燻り続けている。
「仄々殿、せっかくの言葉だが、今の心春殿に冷静さを期待できん」
 ルパートは冷静に心春の心を読み取っていた。
 箒星のように心春の善性と理性をただ信じるだけでは、仇討ちをしようとする心春を抑えきることは出来ないと判断したのだ。
 そのクレバーな分析は箒星とは対極だ。
「とにかく、此処を突破せねば。心春殿、我が身を纏え。強行突破するぞ」
「……え?」
 ルパートの提案に、心春は思わずキョトンと呆気に取られていた。
 だがルパートはお構いなしにユーベルコードを発動させた。
「我が身は人に非ず。我が身は尊き魂を護る鎧也!」
 そのユーベルコードの名は『信ずる者に殉ずる為の鋼姿(フェイスフォワフェイス)』。
 黒騎士の鎧のヤドリガミであるルパートは、器物本体を常に剥き出しにして戦っている。
 ならば、それを第三者が纏って戦えたら?
 そんな疑問に結論を出したのが、このユーベルコードだ。
「……すごい。鎧が、変形してゆくわ……!」
 一度、空中でバラバラになったルパートは、心春の体型に合わせて各パーツを変形させてゆく。吸い付くようにバラバラだったルパートが心春と合着してゆき、みるみるうちに西洋鎧を纏った剣豪少女の姿が誕生した。
 更にルパートの持つ全技能を今や心春が使いこなすことが出来るまでに互いを同調させると、背中に一対の蒼炎の翼を出現させる。
「……あたし、空を飛んでる!?」
 これもユーベルコードの効果だ。その最大速度は、音速の10倍に手が届く。
 つまり、その速度で物体に衝突すれば……。
「ダメージは自分が引き受ける。壁を体当たりで突き抜けるぞ」
「強行突破ってそういうこと……っ? 待って、身体が勝手に……!」
 ルパートが心春の身体を動かし、蒼炎の翼を燃え上がらせながら直線の廊下を一気に加速!
 途中、罠が発動して槍や矢がルパートを纏う心春を狙ってくるが、超音速移動中に発生する衝撃波が罠を完全に寄せ付けようとしない。
 そのまま城郭の白漆喰の壁へ心春が突撃し、 凄まじい轟音を何度も響かせながら、目の前の壁を次々とぶち抜き始めた。
 なんたる力押し、単純な破壊行為。
 だが今はそれが却って心春の心情に寄り添い、彼女の冷静さを取り戻しつつあった。
「……すごい、ほんとにあたしの身体には怪我がないわ……!」
 どんなに頑丈な城壁を打ち崩しても、心春の肉体に打ち身や骨折のひとつも負っていない。それどころか、ルパートの猟兵パワーが宿り、かつてない全能感が心春の肉体を駆け巡る。
「これが我が身の真骨頂だ。そして、このまま城郭ごと猟書家を焼き払ってくれる」
 更に城郭の迷宮を蒼炎で火攻めにしてゆくルパート。
 立ち込める黒鉛が迷宮の至るところへ充満してゆくと、とうとう神十郎は燻し出されてしまった。
「ゲホッ! ゲホゲホッ! よもやこのような突破法を実現させるとは! 敵ながら天晴なり!」
 咳き込む神十郎の片腕は、布地で無理矢理に固定されていた。
 ルパートは心春に装着されたまま。剣を構える彼女へ告げた。
「帰るまでがなんとやら。仇敵を討つ旅路だというならば、奴を斬り捨てそのまま帰路につけ。奴が過去に消えた後の未来を至極当然に歩め。――それが、その生命に望まれた強さだろう」
「……あなたの考え、今なら直接伝わってくるわ。お願い、一緒に戦って……!」
「無論だ。参るぞ、心春殿!」
 即席のコンビは、十字槍を構える神十郎へ肉薄する。
 最上段からの斬撃を神十郎が槍の柄で受け止めると、時計回りに槍を操って心春の手元を外へ払う。
 がら空きになった心春の脇腹へ、繋がりかけた腕で掴んだ呪刀村正を鞘走った。
 これは……神十郎の奥義『神速十字斬』だ!
 その刀の軌道上に黒い影が飛び込んでくる。
 箒星だ、黒猫魔奏剣士が徒手空拳で突っ込んできた。
「此処は私が庇いましょう!」
「馬鹿め! むざむざ斬られに来たか!」
 神十郎は次の瞬間、二足歩行の黒猫の上半身と下半身がバラバラになる光景を目にする、はずだった。
 だがその手に伝わってくる感触は、一言でいれば異常であった。
 呪われた刀の刃が、箒星の肉を刻まずに黒い毛皮の上を滑っていったのだ。
 それどころか、黒い毛皮一本でさえ刃で断ち切れていない。
 ぬるぬるつるつるな黒猫の手触りに、神十郎は自身の刀と箒星を二度見してしまう。
「なん、だ……? 今の感触……何が起きた?」
 自分の腕の感触が不完全だからか、それとも当たりどころが悪かったのか。
 何れにせよ、放たれた奥義は途中で縦断することが出来ない。
「ならば我が槍で貫いてくれる!」
 今度こそと血気盛んに箒星の心臓目掛けて十字槍を突き出す神十郎。
 しかし、またしても十字槍の穂先は箒星に刺さらず、脇へ逸れていってしまう。
「……何故だっ!?」
 愕然とする神十郎。
 鍛え上げた奥義がちんまりとした黒猫に全く通用しないのだから、精神的苦痛は計り知れない。
「無駄ですよ、今の私の体表は摩擦抵抗力がほぼ皆無です。ツルツルで刃が立ちませんよ?」
 箒星はユーベルコード『猫の毛づくろい』を事前に行っていたのだ。
 思い返せば、心春と会話を交わしている間、箒星はしきりに顔を洗っていた。
 既にあの時から入念な準備をしていたのだ。
 足の裏以外をペロペロ舐めきった今の箒星には、物理攻撃が完全に通用しない。刃も通らなければ、銃弾だって今なら毛皮を滑ってダメージを与えることが出来ないだろう。
「それでは、真田神十郎さん、お覚悟!」
 箒星は細身の魔法剣でフェンシング刺突を連続で繰り出し、神十郎を攻撃!
 一方的な攻撃に、神十郎は守りを固めざるを得ない。
 その時、箒星は神十郎の股ぐらをスライディングでくぐり抜ける。
 すれ違いざま、彼の具足を高速で舐め回せば、神十郎は見事にすってんころりんひっくり返ってしまった。
「うおぉっ!? 何故だ、何故、立てぬっ?」
 具足の摩擦抵抗力をほぼゼロにされた神十郎は、しばらく自立することが困難な状況に陥る。
 ここが攻め時、箒星が叫んだ。
「心春さん今です! 亡きお父上の冥福のためにも!」
「箒星殿、でかした! 心春殿、今度こそ参るぞ!」
「……未来へ進むための、一撃を仇敵に……っ!」
 ルパートの力を全身に宿した心春は、青く燃え上がりながら天高く飛翔!
「「はあぁぁぁぁーっ!!」」
 気合一閃!
 そのまま太陽を背にして急降下、超音速からの大上段叩き斬りを神十郎へ見舞ってやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
とりあえず気持ちは分からなくないが落ち着けって、剣豪の姉ちゃん。
相討ちじゃ意味がねえ。完膚なきまでにぶちのめして、尚且つ剣豪の姉ちゃんが生き残らなきゃ親父さんが浮かばれねえぜ。
俺達も協力してやるからよ。言っただろ?助太刀するってなッ!

武器を破魔弓に替えて援護射撃を行い剣豪の姉ちゃんと連携攻撃だ。
式神【ヤタ】を剣豪の姉ちゃんに付けて敵の動きを見切り、剣豪の姉ちゃんに神速十字斬を仕掛けてきたら割り込ませて持たせた結界霊符で防ぐぜ。

敵の攻撃後に隙が出来たら封縛の矢を狙い射って弱体化させるぜ。
決めちまいな、剣豪の姉ちゃんッ!


【技能・破魔、援護射撃、式神使い、見切り、結界術、スナイパー】
【アドリブ歓迎】


カシム・ディーン
おい心春
お前のお父さんの剣術…教えってのは感情のまま切りかかって返り討ちに会う事か…?
違うよな
剣禅一如…だったか
須らく合理の技術だろ?
お前だけでも
僕らだけでも彼奴には勝てない
だから共に戦って下さい

「メルシーも今回はリベンジだぞ☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
真田の動きと癖
過去の交戦の記憶からの差異も把握

更に心春の技能把握

対十字斬
【属性攻撃・迷彩】
光属性を己達と心春に付与
光学迷彩を施すと同時に
動作が同じな立体映像を
前面に展開

UC発動
【武器受け・スナイパー・念動力】
真田の攻撃が心春に当たりそうな時は念動光弾で迎撃か庇って受け止め

【二回攻撃・切断・盗み・盗み攻撃】
心春と連携しつつ超連続斬撃
武器強奪



 いよいよ大詰め。
 真田神十郎の負った傷も深い。
「……あと少し、あと少しなのに……!」
 心春は斬り掛かりたい気持ちを必死に堪えている。
 先達の猟兵達の言葉を受け、どうにか先走らずに踏み止まっている状態だ。
 そんな彼女に朱塗りの鬼面の神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と、彼を被る相棒の神代・桜が声を掛けた。
「ちょっと待てって、気持ちは分からなくないが、とりあえず落ち着けって、剣豪の姉ちゃん?」
「……功を急いては事を仕損じます」
 心春は無言で頷くと、ゆっくり一歩後ろへ退いた。
 これを見た凶津が声色を明るくした。
「そうだぜッ! 相討ちじゃ意味がねえ。完膚なきまでにぶちのめして、尚且つ剣豪の姉ちゃんが生き残らなきゃ、親父さんが浮かばれねえぜ」
「……それに約束もしましたから」
「相棒の言うとおりだぜッ! 言っただろ? 助太刀するってなッ! 俺達も協力してやるぜッ!」
 神代コンビが破魔弓に武器を持ち替え、その身に宿す霊力を増幅させてゆく。
 その迸りは霊感がないはずの心春にも幾許か伝わっているようで、彼女の安心感を増していった。
 更に、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)も心春を試しすように問い掛けた。
「おい心春、お前のお父さんの剣術……教えってのは、感情のまま切りかかって返り討ちに会う事か……? 違うよな?」
「……当たり前よ。剣禅一如……それが父様の教えだったわ」
「それは須らく合理の技術だろ? いいか、心春? あの赤備えの真田は手負いだが、とても強い。お前だけでも、僕らだけでも、彼奴には勝てない」
 だから――。
 カシムと、その相棒のメルシーは、心春に頭を下げて願った。
「お願いします。共に戦って下さい。そして勝ちましょう」
「……お願いされたら、断れないもの」
 心春はようやく、柔らかい笑顔を猟兵達の前で見せてくれた。
「……こちらこそ、よろしくお願いします。指示は、任せるわ」
 完全に落ち着きを取り戻した心春。その剣気が心なしか徐々に冷え込み、近くにいるだけで肌寒さを感じる。
(……ご主人サマ、小春ちゃん、一般人だからユーベルコードも仕えないし技能も習得出来てないよ?)
 メルシーは自身の鑑定眼で心春をスキャンした結果をカシムへ耳打ちしていた。
(まあ、最初からアテにはしてねーです。むしろ一般人で猟書家に立ち向かった事が凄いですね……)
 心春の胆力の凄まじさを改めて感じ取ったカシムは、心春に光学迷彩魔法を施した。
「……身体が、透けてゆく?」
「おい、ちょっとこれからしばらく黙ってて下さい。囮を幻術で作りますから」
 更に心春の周囲に三次元ホログラムで出来た彼女の虚像を出現させる。
 この虚像は心春の体の動きをトレースし、まるで本物だと錯覚させることが出来るのだ。
「それじゃ、メルシー? 行けるか?」
「メルシーも今回はリベンジだぞ☆」
 前回、神十郎と戦った時は喉元を掻っ切られてしまったメルシー。
 だが、あれからカシムもメルシーも成長した。同じ轍は踏まない。
「っしゃァッ! 日ノ本一の兵、ぶっ倒してやろうぜ!」
 凶津の宣戦布告が先端となり、両者が一気に激突していく。

「このままで終わるわけには……ッ! 我が盟友クルセイダーの野望、この真田が実現させるのだ!」
 神十郎は負傷した腕を無理矢理に力を込め、十字槍と呪刀村正を構える。
 変速二刀流から繰り出される超高速の十文字斬り……神速十字斬で猟兵達を屠らんと突撃してきた。
「もはや我は止まらぬ! この命尽きる前に、貴様らの首を獲る!」
「やれるものならやってみやがれ!」
 カシムとメルシーも光学迷彩魔術を纏い、左右からのステルス挟撃を敢行する。
「今日はメルシーがキミを刈り取っちゃうゾ☆」
 透明化したビーム鎌剣は、赤備えの甲冑をガリガリと音を立てて斬り刻んでいく。
 そこへ、破損した真紅の鎧甲冑の穴を狙い、カシムが万能魔術砲撃兵装『カドゥケウス』の念動光弾を撃ち込んだ。
 一瞬だけ猟書家の動きが鈍ったその時、ホログラム心春が真正面から切りかかってくる。
「それは虚像! その手には乗らぬ……なにっ!?」
 虚像に気を取られた神十郎、突如として脇腹に激痛が走った。
「……捉えたわ、あたしの仇敵!」
 透明になっていた心春が、赤備えの鉄鎧の穴へ刀の切っ先を滑り込ませていたのだ。
「がハッ……な、なんのこれしきッ!」
 だが神十郎、踏み止まる!
 そのまま至近距離にいる心春へ呪刀を振り払った。
「あぶねえッ! いけ、式神【ヤタ】ッ!」
 凶津が放った霊符はたちまち三本脚の黒鴉の式神へと変化し、神十郎の顔を突っつき始めた。
 いきなり顔面を小突かれた神十郎は視界を遮られ、心春を斬り掛かることが出来ない!
 更に、放たれたもう一枚の霊符が結界を生み出し、十字槍の刺突を弾き返してみせた。
「……ありがとう!」
 心春はこの隙に神十郎から離脱し、敵の奥義の射程の外へ逃れた。
「この……駄カラスが!」
 霊符を叩っ斬った神十郎が周囲を見渡したその時、桜色の輝きを宿す破魔の矢が己へ向かって飛び込んできた。
「大人しく当たれやぁッ!!」
 立て続けに三本の矢を神代コンビが放つ。
 神十郎は避けることが出来ずに三本全てをその身に浴びてしまった。
 すると、途端に自身の体が鉛のように重く、力が指先から抜けてゆく異変を感じた。
「な……にっ……!? これは、ユーベルコードの……封印か!」
「今更気が付いたか、マヌケッ!」
「……封縛の矢。弱体化の三矢が全て当たれば、どんなユーベルコードでも効力を失います」
 凶津の煽りと桜の宣告に、神十郎は冷や汗が全身から溢れ出てくる。
「ぬかったか……! くっ! また“俺”は、負けるのか……!」
「そうです、負けるのですよ」
 カシムの言葉が、神十郎の死刑執行の合図となった。
「いくぞメルシー! 魔力と思考をリンクさせろ!」
「ラジャったよご主人サマ♪ ひっさーつっ! ロバーズランペイジー!」
 死の舞踏が如く神十郎の周囲を旋回しながら、マッハ32の超音速で砲撃と斬撃を繰り出す。
「グワアァァァーッ!?」
 断末魔の叫びと共にふっ飛ばされる神十郎!
「今です、心春! トドメの一撃を!」
「ヤッチマイナー☆」
 カシムとメルシーの合図を受け、剣豪少女の刀に冷気が纏う。
「真田 神十郎……貴様の罪を悔いて死ね……!」
 弾丸めいて飛び出した心春の牙突が、神十郎の心臓に突き立てられる。
 神十郎は口から大量の喀血をすると、心春の顔を見てニタリと笑みを浮かべた。
「……日ノ本一の兵たる我を討ったこと……末代までの誇りと、せよ……」
 神十郎の肉体と装備品は、あっというまに砂塵となって風に運ばれていった。
「待て待て待て! せめて何か戦利品を落とせって!」
 盗賊たる者、倒した敵の身包みを剥ぐのは当然の礼儀だと言わんばかりに、砂塵になってゆく神十郎の具足を必死に掻き集める。
 すると、メルシーがいい笑顔でカシムへ駆け寄ってきた。
「ご主人サマ! めっちゃ呪われた刀をゲットしたけど、いる?」
「いらねー! 絶対に常人が振るったら不定の狂気に陥るやつだろ、それ!」
 主を失っても、ドス黒い呪詛と妖気を撒き散らす深紫色の刀剣にカシムはドン引きだ。なんでお前は平然と持てるんだそれ、と。
「……例えるなら、ドブ川のヘドロを10年間熟成したあとに放射能汚染物資を混ぜた上に生ゴミと糞尿を一緒にミキサーに掛けたような、そんな代物ですね」
「相棒がそこまで言うくらいだ、かなりやべー奴だぜ、それッ!」
 普段は無口な桜が顔を青ざめながら思わず解説してしまうくらいの置き土産に、カシムはさっさと売り払うべきなのかしばし考え込む。
「ま、あの刀はともかく、これで清々したな、心春!」
「……本当に、ありがとう。此れで、お母様の元へ帰れるわ」
 そう告げる剣豪少女の顔に、ようやく“春”が訪れたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月17日
宿敵 『真田神十郎』 を撃破!


挿絵イラスト