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天の炎を払うべく

#クロムキャバリア #グラン=ルベレア戦争

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#クロムキャバリア
#グラン=ルベレア戦争


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●グラン=ルベレア戦争
 クロムキャバリア北部の小国、グランドールとルベレア。
 ルベレアの将校ロアルームによるグランドール国境線侵攻に端を発した二国間の緊張は高まり、表向きの平穏を保っていた両国は一触即発の関係性へと悪化していった。
 グランドールに捕縛されたロアルームを奪還すべく、彼の弟と称するディジードはグランドールに潜入するが、ルベレアでは同時に、ある事件が勃発しようとしていた。
「なるほど、それであいつらは兄さんを……」
 遠いグランドールの空の下、ディジードはトラックを走らせながら仲間の諜報員から受け取った情報に頭を掻いた。
 彼の乗るトラックの荷台には、じっと座るロアルームの姿があった。

●グウェン・ロゼッタの台頭
「今、我々がこのような苦境に立たされているのは……もとをただせば殲禍炎剣≪ホーリーグレイル≫が空を支配しているからであります!」
 ルベレア首都にほど近い広場に特設されたステージで、数多くの群衆に見守られながら女が天を指す。髪は長く、年は30半ばといったところか。皺一つない軍服の胸には、いくつもの勲章が輝き、彼女が数々の功績を残したことは誰が見ても明らかであった。
「ですから、我々は誓ったのです。あの忌まわしき殲禍炎剣を破壊すると!」
 その言葉に、群衆から歓声が沸き上がった。
「それを、私、グウェン・ロゼッタが行おうというのです!!」
 万雷の拍手に、グウェンと名乗った女は礼をする。

 そんな熱狂の会場を冷めた目で見つめる者達がいた。
「女狐め。ロアルームが居なくなった途端軍内を我が物顔で歩き回りよって」
 軍の上層部である。テレビ中継越しに忌々し気な顔を浮かべているが、同時に冷めた目つきでもあった。
「殲禍炎剣を墜とそうなどと。あんな大言壮語、民衆もすぐにハッタリだと気付いて醒めるだろうよ」
 しかし、その直後、上層部の目の色が変わる。
「その為に、我らは作り上げました! この新兵器を搭載したキャバリアを!」
 その宣言と共に、ステージの奥の幕が降ろされた。そこには、いくつもの小型キャバリアと共に、白い巨体が姿を現した。

「おい、まずいんじゃないのか」
「あぁ、あれは確かロアルームが研究していた……」
 にわかに会議室がざわつき始める。キャバリアの登場で説得力を増した演説だけではない。
 あの機体『ネハシム・セラフ』は、かつて小国家を一つ滅ぼしたとされたキャバリアだったからである。

「私の友、ロアルームはグランドールとの戦いに敗れ、この力を私に託しました!」
 グウェンは、ぐぅっと拳を握りしめて叫ぶ。
「我等が、ロアルームの遺志を継ぐのです!」

●国を滅ぼすもの
「……クロムキャバリアの一国、ルベレアが滅ぶ様子を予知しましたわ」
 エリル・メアリアル(孤城の女王・f03064)は集まった猟兵達に告げた。
「原因は、ルベレア国内で発生した殲禍炎剣≪ホーリーグレイル≫撃墜作戦によるものですわ」
 首謀者はルベレアの将校グウェン・ロゼッタ。彼女が率いるキャバリア部隊は殲禍炎剣を破壊することが出来ると主張し、民衆を扇動したのだ。
「そして、実際に作戦は実行され……殲禍炎剣の逆鱗に触れてしまった……」
 エリルが溜息をつく。殲禍炎剣を壊すことはどんな武装であっても、土台不可能だったのだ。
「ですが、この主張はこの世界の民衆にとってはとても甘美なもの。作戦を止めるには、首謀者が操る『オブリビオンマシン』を奇襲により武力で鎮圧すること以外に、もはや手立てはありませんの」
 オブリビオンマシン。この騒動も、やはりオブリビオンマシンによって思想が狂わされた者による事件なのだ。
「例え殲禍炎剣の破壊が不可能だと説得しても、民衆を納得させることはもはや不可能。圧倒的な支持という目くらましの前には、真実など無いようなものなのですわね……」
 そこまで話して、少しの沈黙が流れた。

「さて、実はこの事件を予見していた方々がいましたの」
 そう言ってエリルが見せたのは、かつてオブリビオンマシンに囚われ、グランドールとの戦争の発端を生み出した『ロアルーム大佐』の姿であった。
「正確には、彼の同僚ですわね。ロアルーム大佐がグランドールに捕えられた後、彼の元で研究されていた『殲禍炎剣』に関する資料、及び研究用のキャバリア全てが今回の首謀者、グウェンに接収されたことに危機感を覚えたようですわ」
 案の定、グウェンは手に入れたキャバリアで民衆を危険に晒そうとしている。同僚は、彼女の暴走を止める為、本来の責任者であるロアルームが民衆の前に出てくる必要があると考えたのだ。
 ロアルームは民衆からの人気も高く、彼が帰還したとなれば状況は変わってくるはずだ、として。
「民衆の前にロアルーム大佐が現れれば、きっと彼らは動揺するはず。その瞬間が、奇襲の狙い目となりますの」
 うまくロアルームの協力を取り付ければ、民衆の被害を最小限にしたうえで奇襲することも出来るかもしれない、とエリルは言う。
「現在ロアルームは脱走に成功し、ルベレア国内に潜伏していますわ。しかし、彼は以前の戦争から無気力状態……。民衆の前に、彼を説得する必要がありますわね」
 エリルは腕を組み、首を傾げた。
「ともかく……戦争に口を出す必要はないけれど、国が滅びるとあれば話は別ですわ。皆様の手で救ってきてくださいまし!」
 そう言って、エリルのグリモアが輝き始めた。

●英雄の帰還
 ロアルームは現在も国内で『憎きグランドールへ立ち向かった英雄』とされていた。
「君達が奇襲作戦に参加してくれる人達かい」
 町はずれのアジトの中、人のよさそうな青年が猟兵達を一瞥すると、奥へと通す。
 部屋には、じっと座ったまま俯くロアルームの姿があった。
「…………」
「この調子さ」
 青年が肩をすくめる。最悪、彼の助力無しで奇襲をしなくてはならないだろう。そうなれば民衆への被害も計り知れないが……。
 と言ったところで、ロアルームが口を開いた。
「……私は、何もかも間違っていた」
 ぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。
「国の為に行ったことは、国を危険に晒した。国の為の研究は、国を滅ぼそうとしている」
 その言葉には後悔の念が強く感じられた。
「私が動けば、また、何か過ちを犯してしまうだろう……」

「私に、英雄と呼ばれる資格はない……」


G.Y.
 こんにちは。G.Y.です。
 今回は、クロムキャバリア、その中でもルベレアが舞台となる物語です。
 過去のシナリオとリンクしておりますが、完全に把握する必要はありません。

 ロアルーム大佐という人物が、オブリビオンマシンに操られグランドールへ侵攻し敗北。
 その後、紆余曲折あって仲間の助力で脱走してきた、という程度の認識で大丈夫です。

 第1章はそのロアルームとの対峙です。
 ロアルームは戦争を起こした後悔から、非常にナーバスになっています。
 今回も自分が動けば事態を悪い方向に傾けてしまう、と考えているようです。
 なんとか説得し、奇襲作戦に協力してもらいましょう。
 彼は民衆から人気があるので、うまく行動して貰えば民衆への被害も最小限に抑えられるでしょう。

 第2章ではグウェン率いる量産型キャバリア軍団との集団戦です。
 殲禍炎剣を倒せると豪語しているキャバリアですので、全機撃墜しましょう。

 第3章では、首謀者グウェンとの対決です。
 当然彼女もオブリビオンマシンに思想を侵されています。キャバリアを破壊すれば、彼女を正気に戻すことが出来ますが、殲禍炎剣を撃墜できるという認識は残る可能性があります。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております!
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第1章 日常 『英雄よ、再起せよ』

POW   :    そんな大人、修正してやる!

SPD   :    キャバリアが隠してあるとくらい言ってください!

WIZ   :    とっておきのサラダを作る

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メルメッテ・アインクラング
極めて【落ち着き】穏やかにロアルーム様へ話しかけます

ロアルーム様、どうか協力して頂けないでしょうか
ここで動かなければ確実に沢山の犠牲者が出ますがまだ間に合います
これは貴方様にしかできない戦いであり、償いなのです

主張を覆す事は不可能……であれば、沿った形で対案を示すのはいかがでしょう
「『あのキャバリア(オブリビオンマシン)では殲禍炎剣を墜とす事は難しい
今はまだその時ではない。が、機は必ず訪れる
いつかそれを果たせるのが猟兵という存在であり、猟兵は何があろうと何度でも皆を守り続ける』
即ち、オブリビオンマシンの代わりに猟兵が新たな可能性となる、と。人々に語って下さいませんか
私達が皆様の希望になります」


嗣條・マリア
大佐殿。以前あった戦いは記録の上でしか知りませんし、あなたが犯した罪の重さも私は伝聞でしか知りません。
ですので、私が言えることは一つです。

英雄だとか、罪人だとか、そんなことは関係ありません。
牙を持つ者なら、持たない者に代わってその牙を剝く――
その責任を果たしなさい。

動かなければ救える命も救えませんよ
あなたも、私も。戦士なら今やるべきことはわかるでしょう


……知らない小娘に言われる筋合いはないかもしれませんね、すみません
ですが、貴方の周りに集まった方々ぐらいは救って見せては如何でしょう
私は私の手の届く全てを助けてこようと思いますので

傲慢ですか? ――暴君ですから


アレクシア・アークライト
この世界って、オブリビオンのことを秘密にしなきゃいけないなんてことはなかったわよね
なら、私が知っていることを全てロアルームに話すわ
信じるか信じないか、そして、国のために何か行動しようとするかどうかは彼次第ね

・自分達猟兵の多くは異世界から来た者であること
・世界を破壊しようとするオブリビオンという存在があること
・オブリビオンが関わる事件を予知できる仲間がいること
・この世界のオブリビオンはキャバリアとして存在し、人の心を操る力を持つこと
・操られていることを知っていたからこそ、ロアルームを助けることにこだわったこと
・今回の件も予知されたものであり、止めなければ殲禍炎剣によりルベレアが滅ぶこと


アリス・フォーサイス
オブリビオンマシンが絡んでいる以上、見過ごせないね。対処しようか。

ロアルームくんの今の状況では正統に説得しても難しそうだね。わかりやすく、怯える子どもとして庇護欲を刺激するか。

「おじちゃん、怖いことでもあったの?」
「『国を滅ぼす』ってホント?この国、消えちゃうの?」
「あのね、ぼく、この国大好きだよ。朝、みんなが元気いっぱいなところとか、丘から見下ろした景色とか。」
「最近ね。パパとママが怖い顔をするときがあるんだ。どうなるんだろう。」

よし、ここがたたみかけるところかな。ワンダーランドでこの国が殲禍炎剣破壊賛成派と反対派に別れ二分し、最後は殲禍炎剣に滅ぼされる光景を見せるよ。


御門・白
【SPD】

殲禍炎剣を墜とす
この世界に生きる人間なら、一度は夢想する
その実現の難しさを知っていても、夢を見たくなるほどに
……ただの夢想ならその方々の選んだ生き方
でも、それがオブリビオンの煽動ならば話は別

あなたがロアムール大佐ですか
若輩から恐縮ではありますが。あなたが目を背けているものを突きつけさせていただきます

……一度、英雄という役割を演じたあなたは、最早そこから逃げることはできないんです
なぜならあなたが望まずとも、人々があなたにそういう呪をかけているから

責任を感じているのは解る
自分に信頼がおけない気持ちも
でも……あなたを待つ人々の気持ちを信じてあげなければいけません
それがあなたの責任の取り方よ


シーカ・アネモーン
国の盛衰など興味はないが、民を扇動して無謀を煽るのは感心しない
一兵卒の私に、国をどうこうするという感覚はわからないが、人を動かせるのは人だ
人でなしの甘言より、人の道を説く方が、時には胸に響くものと信じている

あんたは自身が無いんだろう
国を滅ぼしかけた自分が、同じ轍を踏まんとしている者どもに言えた口は無いと思っている
そうじゃない。失敗したから言えることだってある筈だ
今度のは失敗できないぞ
それとも、あんたは故郷が好きじゃないのか?
裏切り者の謗りを受ける事の方が怖いか?
ほったらかしにするだけで、この国は滅びるぞ

心の限り、言葉を尽くせば、聞いてくれる相手は居る筈だ
この一兵卒も、盾の一枚くらいにはなる



●英雄の名
『我等は、いまこそ空を克服するのです!』
 垂れ流されるテレビ中継から、民衆に沸き起こる歓声が聞こえてくる。
 モニター越しの熱狂は、部屋の静寂をかえって際立たせていた。

 ――ルベレアの英雄ロアルーム。

 グランドールに大敗し、二国間の情勢を揺るがしてもなお、民衆の支持は厚く、彼らは英雄の帰還を待ち侘びていた。
『ロアルームの志を継ぐために!』
 壇上のグウェンが叫ぶ。敵もまた、ロアルームの影響力を利用している。
 だが。
「…………」
 当の本人、ロアルームは無気力に、その様子を呆然と眺めているだけであった。

●天の炎
「殲禍炎剣を墜とす……この世界に生きる人間なら誰もが夢想する。その実現の難しさを知っていても、夢を見たくなるほどに」
 御門・白(月魄・f30384)は湧き上がる民衆の姿に一定の理解を示す。
 殲禍炎剣さえ墜とすことが出来るのならば。空を取り戻すことが出来るのならば。
「……ただの夢想ならその方々の選んだ生き方」
 でも、と白は首を振りながら言葉を続ける。
「それがオブリビオンの扇動ならば話は別」
「オブリビオンマシンが絡んでいる以上、見過ごせないね」
 アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)も白の言葉に同意した。
「国の盛衰など興味ないが、民を扇動して無謀を煽るのは感心しない」
 シーカ・アネモーン(忘れられた刃・f32230)も淡々とした口調で言う。
 クロムキャバリアにおいては、それぞれの小国の動向や政治について、猟兵達が大きく関与する事例は少ない。あくまでオブリビオンマシンの被害を抑える為、『傭兵』的な役割を果たしている。
 この介入の結果がルベレアとグランドールの二国にどのような影響を及ぼすかは未知数だ。だが、何もしなければオブリビオンの手によって国が一つ消え、数百万の犠牲者が生まれてしまう。
「それを防ぐためにも……」
 メルメッテ・アインクラング(Erstelltes Herz・f29929)がロアルームを見返した。
 鍵は、この男が握っているのだから。

●償いのために
 心を閉ざすロアルームに、猟兵達が対峙する。
「あなたがロアムール大佐ですか」
 白の言葉に、ロアルームは反応を示さない。そんな様子に、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は半ば一方的に告げる。
「私達は猟兵。この件には『オブリビオン』が関わっているわ」
 クロムキャバリアの人々はオブリビオンマシンのことを感知することが出来ないが、猟兵達の登場によってその存在はある程度認知されている。その状況を確認するように、アレクシアはロアルームに言葉を続けた。
「この世界のオブリビオンはキャバリアとして存在して、人の心を操るわ。……あなたがそうあったように」
 だからこそ、猟兵達はパイロットであるロアルームを助けることに拘ったのだ、と付け加える。
 結果として、ロアルームは正気を取り戻すことが出来たのだが、その罪自体が全てオブリビオンマシンのせいで片付くわけではない。
 猟兵達しか認識できない以上、この世界の人にとって、オブリビオンマシンによる罪は、自身の罪。少なくとも、目の前のロアルームは、そう考えていた。
「大佐殿。以前あった戦いは記録の上でしか知りませんし、あなたが犯した罪の重さも、私は伝聞でしか知りません」
 嗣條・マリア(アストレア・f30051)は言う。
「ですので、私が言えることは一つです」
 一呼吸置き、告げる。
「英雄だとか、罪人だとか、そんなことは関係ありません。牙を持つ者なら、持たない者に代わってその牙を剝く――その責任を果たしなさい」
 ロアルームはこの国の者に乞われ、危険を冒してまで潜入した者達の手によって敵国からここまで連れてこられた。
 それが『勝手』であることは重々承知だろうが、そうしてまでロアルームを頼った者達の気持ちを汲み取ることの出来ない程、ロアルームも愚昧では無いはずだ。
 それでも立ち上がることが出来ない理由。
「あんたは自信が無いんだろう」
 それをシーカが突き付けた。
「国を滅ぼしかけた自分が、同じ轍を踏まんとしている者どもに言えた口は無いと思っている」
「……くっ」
 図星を突かれたか。ロアルームは眉間に皺を寄せ、猟兵達から目を逸らした。
「そうじゃない。失敗したからこそ言えることだってある筈だ」
 シーカの言葉を受けて、ロアルームの組んだ手は、少し震えているようにも見えた。
「だが……!!」
 怖いのだ。課せられた責任の重みに、ロアルームはまだ、向き合えずにいた。

●絶望の炎
「おじちゃん、怖いことでもあったの?」
 アリスは、無邪気な少女を装ってロアルームを見上げた。
 こんな場所に、何も知らない少女が紛れ込むはずもない。彼女も猟兵だと、ロアルームにも理解は出来たろうが、怯え、混乱した彼は、アリスの姿にこの国の子供の姿が投影されているように感じられていた。
「『国を滅ぼす』ってホント? この国、消えちゃうの?」
 アリスが怯えた目で聞く。ロアルームは、その瞳を逸らすことが出来なかった。
「あのね、ぼく、この国大好きだよ。朝、みんなが元気いっぱいなところとか、丘から見下ろした景色とか」
 ルベレアの街に住む、小さな子供達の顔が浮かぶ。本物か否かはもはやどうでもよく、ロアルームの心を揺さぶってゆく。
「最近ね。パパとママが怖い顔をするときがあるんだ。どうなるんだろう」
「そんな演技は、やめてくれ……っ!」
 ロアルームが首を振り、目をぎゅっと瞑る。責任から逃げるように、心の奥に感じるものを否定するように。
「……あんたは故郷が好きじゃないのか?」
 そんな情けない姿を晒すロアルームに、シーカが聞いた。
「裏切り者の謗りを受ける事の方が怖いか?」
「……それは……」
 目を開き、唇を噛みしめた次の瞬間。

 ――目の前に、火の海と化したルベレアの光景が広がっていた。
 原因は殲禍炎剣。破壊賛成派と反対派で二分した後、賛成派の手によって殲禍炎剣への攻撃が行われたのだ。
 結果、殲禍炎剣からの反撃が、ルベレアを襲ったのだ。
 それはアリスのワンダーランドによって生み出された、架空の光景であった。しかし、テレビから流れる演説が、見せられた光景をよりリアルに感じさせ、背筋をぞくりと震わせる。
「今の光景を見たか。ほったらかしにするだけで、この国は滅びるぞ」
「止めなければ、現実になるわ」
「……!!」
 シーカとアレクシアの言葉に、ロアルームが顔を上げた。

●希望の炎
「ロアルーム様、どうか協力して頂けないでしょうか」
 ロアルームに、メルメッテは落ち着いた口調で語り掛ける。静かに、穏やかに。優しく包み込むような声だ。
「ここで動かなければ確実に沢山の犠牲者が出ますが、まだ間に合います」
 まだ殲禍炎剣への攻撃は行われていない。しかし、それも時間の問題であろう。だからこそ、メルメッテはこう促す。
「これは貴方様にしかできない戦いであり、償いなのです」
「償い……」
 言葉を繰り返し、ロアルームの瞳に、僅かに光が灯った。その様子に、白が言葉を続ける。
「若輩から恐縮ではありますが。あなたが目を背けているものを突きつけさせていただきます」
 すぅ、と一呼吸置いてから、白はロアルームをまっすぐに見つめて言う。
「……一度、英雄という役割を演じたあなたは、最早そこから逃げることはできないんです」
 人は英雄を望む。救いを求める。それは本人達に関係なく纏わりつく。
「なぜならあなたが望まずとも、人々があなたにそういう呪をかけているから」
 そうして生まれた英雄の像は、真偽や実態に関係なく、信じたものによって真の英雄になってゆくのだ。
「責任を感じているのは解る。自分に信頼がおけない気持ちも」
 白はでも、と言葉を続け、語り掛ける。
「……あなたを待つ人々の気持ちを信じてあげなければいけません。それがあなたの責任の取り方よ」
 人々の為に、英雄として立ち上がること。
「責任……か。しかし、私にどうすれば良いと言うのだ」
 ロアルームが聞く。そこに、今までのような無気力さは失われつつあった。だが無力感は未だに消えない。彼一人で、何が出来るというのか。
 突然姿を現し、中止をするよう叫んだだけでは、事態の収拾はつけられないばかりか、かえって大きな混乱を生みかねない。
「……希望」
 メルメッテがぽつりと呟く。
「あのキャバリアでは殲禍炎剣を墜とす事は難しいです」
 テレビ画面に映る、グウェンの用意した白いキャバリア。それに付随する小型のキャバリアも、アリスが見せた光景へと導くことしか出来ない存在だ。
「ですが、機は必ず訪れます。いつかそれを果たせるのが猟兵であり、猟兵は何があろうと何度でも皆を守り続けます」
 ロアルームの瞳を見つめ、メルメッテは言葉を紡ぐ。
「即ち、あのキャバリアの代わりに猟兵が新たな可能性となる、と。人々に語って下さいませんか」
 次の言葉に、ロアルームは目を見開く。 
「……私達が皆様の希望になります」
 優しく、しかし力強い口調だ。彼女達であれば、それが実現できると信じることが出来そうであった。
 たった一人に全てを任せる……そんなこと猟兵達には出来やしない。
「心の限り、言葉を尽くせば聞いてくれる相手はいる筈だ。この一兵卒も、盾の一枚くらいにはなる」
 シーカが言葉を続ける。オブリビオンマシンを倒し、世界を救う。その為に出来る事は何でもやる。それが、猟兵という存在なのだ。

●英雄の復活
「動かなければ救える命も救えませんよ。あなたも、私も。戦士なら今やるべきことはわかるでしょう」
 ロアルームへ向けて、マリアが発破をかけるように言う。
「……知らない小娘に言われる筋合いはないかもしれませんね、すみません」
 そう謝りつつ、マリアはあまり悪いとは思っていないようだ。挑発するかのように言葉を続ける。
「ですが、貴方の周りに集まった方々ぐらいは救って見せては如何でしょう。私は私の手の届く全てを助けてこようと思いますので」
 手を広げてみせるマリアに、ロアルームは思わず吹き出してしまう。
「……ありがとう、おかげで目が覚めた」
 パンと頬を叩き、ロアルームが立ち上がる。その瞳には生気が宿り、先ほどまでとはまるで別人のように力強い表情をしていた。
 英雄が、復活したのだ。

 その姿に、アジトのメンバーから歓声が上がる。作戦はもうすぐに始められると、アジトがにわかに活気づきはじめた。
 そんな様子を眺めつつ、ロアルームはマリアへ冗談交じりに言う。
「それにしても……随分と傲慢なことだ」
「――暴君ですから」
 そう言いつつ、マリアはやわらかな笑みを返すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ハルピュイア』

POW   :    タロン・クロー
【猛禽類の爪を思わせる鋭いクローアーム】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    マルチプル・コンバット
【対キャバリア用三連装チェーンガン】が命中した対象に対し、高威力高命中の【無誘導式ロケット弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    ツインローター・アングルチェンジ
自身の【二基のティルトローター・ユニット】を【戦闘中に角度を垂直と水平のどちらかへ同時】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『さぁ、ロアルームの残した力が飛び立つ時です!』
 壇上のグウェンが民衆を煽る。その合図とともに左右で待機していたパイロット達が、小型キャバリア『ハルピュイア』へと乗り込んでゆく。
『これぞ我が自慢の空戦部隊! 殲禍炎剣を討ち滅ぼす為に旅立つ私達に、盛大なる声援を!!』
 大地が割れんばかりの声が響き渡る。その声を背に、グウェンも中央に鎮座したネハシム・セラフへと向かってゆく。
 その時であった。
『ルベレアの国民よ! この声が聞こえているならば、私の声を覚えているならば、ぜひ耳を傾けて欲しい!』
「……なに?」
 どこからか響く声に、グウェンが真っ先に振り向いた。
 突然の声は、低空より現れた飛行船より発せられていた。
『私はロアルーム。我が国の危機を聞きつけ、地獄より舞い戻ってきた』
 ざわつく民衆の姿を見て、キャバリアのパイロット達にも動揺が走った。
『残念ながら、その部隊では殲禍炎剣を墜とすことは出来ない。そこは危険だ。今すぐその場を離れるのだ』
 その言葉にグウェンがわなわなと拳を握る。
「狼狽えるな! 耳を貸すな! 私達は正しい! 私達こそが正義だ!!」
 激しい剣幕でパイロット達へと叫ぶグウェン。その言葉に応じた者は、ハルピュイアに乗り込み、ロアルームの飛行船へと向かってゆく。
 隊列が乱れ、パイロット達の士気が落ちている。敵は空を飛び、狙いは飛行船へと変わった。

 ――今こそ、奇襲のチャンスだ。
 猟兵達による殲滅作戦が今、開始される!
メルメッテ・アインクラング
BX-Bウイングで浮遊。敵との間に空から割って入り悠然と構えます
「操縦者情報秘匿、マイクオフ、全て確認済みです
参りましょう『ラウシュターゼ』様!」
主様の仰せの儘にBS-Fブレードビットを射出して【不意打ち】し、片手の人差し指を動かして『来い』と敵を【挑発】
飛行船から離れた位置へ飛び敵を誘導、戦闘致します

敵銃撃を【オーラ防御】。『殉心戯劇』で一気に距離を詰め剣でクローを熔斬、【切断】させて頂きます
敵への攻撃は全てコックピットを外し無力化に留めましょう

現在は方針により操縦者を明かせませんが、”希望”に相応しいのは私ではなく主様であると考えます
その姿を知らしめるべく清澄な剣戟を響かせて魅せましょう!



 迫りくるハルピュイア達に臆することなく、ロアルームは民衆に告げる。
『殲禍炎剣を墜とすことは出来ない……だが、希望はある』
「一体何を言っているんだ! 一つにまとまろうとしてた人間達を、敵国からのこのこと戻って来た奴がさぁ!」
 ハルピュイアの一機が先行する。クローアームを構え、飛行船へと加速してゆく。
 だが、ハルピュイアは近付くことすら出来ないままに爆散した。
『希望……その名は、猟兵という!!』
 爆炎の中から、白い影が姿を現す。背には紅き炎のようなサイキックエナジーの翼が広がり、見る者に神か、悪魔か、あるいはそのどちらをも想起させた。
「操縦者情報秘匿、マイクオフ、全て確認済みです」
 飛行船の前に立ちはだかったのは、メルメッテの乗る『ラウシュターゼ』。その機体を主と仰ぎ、自身がキャバリアに乗っていることを秘匿している彼女は、情報が遮断されたことを確認して改めて敵群を見る。
 ラウシュターゼの意志のまま、ブレードビットを放ち、メルメッテは言う。
「参りましょう。『ラウシュターゼ』様」

「なんだあのキャバリアは……猟兵だと!?」
 ハルピュイア達は突如現れた猟兵達に、警戒した様子を見せる。そんな彼らに、ラウシュターゼは手を前に出し、人差し指をくい、と傾けた。
 『来い』、と言っているかのような態度には自信が滲み出て、ハルピュイアのパイロット達を侮蔑するかのよう。
「……舐めるなよ!」
 頭に血が上ったハルピュイア達は、ラウシュターゼへと標的を変える。それを確認したラウシュターゼは、それらを誘導しながら飛行船から離れてゆく。
「流石主様です。これなら飛行船が被害を受けなくて済みますね」
 追いすがるハルピュイア達を尻目に、メルメッテは自身の座るシートから感じられる『意思』に強い多幸感を覚え。ラウシュターゼを称賛した。
 だが、ただ追われるだけでこの戦いが終わるわけではない。ラウシュターゼはハルピュイア達へと向き直り、力を集中させる。
「”希望”に相応しいのは私ではなく主様であると考えます」
 強い念動力が、ラウシュターゼを覆ってゆく。
 覆われたサイキックエネルギーが高熱を発し、強く輝いてゆく。ラウシュターゼを信じるメルメッテの強い思いが、その力を何倍にも引き出してゆく。
「その姿を知らしめるべく……清澄な剣戟を響かせて魅せましょう!」
 従奏剣ナーハを抜くとほぼ同時、ラウシュターゼが爆発的な勢いで加速した。
「えっ……!?」
 防御する暇もなく、ハルピュイアのクローを切り裂き、破壊する。
 コックピットだけは狙わないように、しかしキャバリアは完全に無力化出来るように。
 空中を縦横無尽に駆け巡るラウシュターゼの通った軌道上のキャバリアが次々と爆散する。
「うおおおおっ!!」
 ハルピュイアのやけくそ気味の銃撃も、覆われた念動力の前に意味は為さない。
 一刀のもとに切り伏せられ、炎を上げて落ちてゆく。
「素晴らしい……流石はラウシュターゼ様」
 華々しく散ってゆくキャバリアと、脱出し正気に戻ったパイロット達の姿を見て、メルメッテは恍惚の表所を浮かべるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御門・白
異形のキャバリアですね。
本気で空の戦をするつもりなのか、それともそういう振りなのか
……どちらだとしても、私がすることに変わりはないけれど。
行きましょうか、ツクヨミ。

【道術】で空を踏みしめて。まるでそこに確固たる足場があるように平然と迎え撃ちます。
ロアルーム大佐の船から離れすぎないように護衛に着きましょう。

用途に合わせて変形するキャバリアですか。なるほど、確かにただの戦場であれば便利に働くのでしょうね
……だけれど、あの「星」に手向かうにはあまりに脆弱。
たとえ振りだけででも、説得力が伴わない

夜を束ねた「網」を張って
敵の攻撃はおろか、敵機体自身も一網打尽

大人しくしていてください。
夜は眠る時間です



「異形のキャバリアですね」
 空を見上げ、白が呟く。敵対するハルピュイア達は小型かつ、コックピットとオーバーフレームのみで構成された機体は戦闘ヘリのような形状であった。
「本気で空の戦をするつもりなのか、それともそういう振りなのか。……どちらだとしても、私がすることには変わりないけれど」
 オブリビオンマシン、ツクヨミの中で白は少し悩む素振りを見せるも、白の中ではするべき事は既に決まっていた。
「行きましょか、ツクヨミ」
 そう言い、ツクヨミが跳ね上がる。その足に、あたかも地面があるかのように空を踏みしめ、ツクヨミは空へと『駆けあがって』ゆく。
「……下からっ!」
 ハルピュイアのパイロットが、足元より迫るプレッシャーにティルトローター・ユニットを傾ける。銃口を向け狙いを定めるが、ツクヨミは
臆することなく駆け上がる。
「用途に合わせて変形するキャバリアですか。なるほど、確かにただの戦場であれば便利に働くのでしょうね」
 ハルピュイアの変形する様子を冷静に判断し、白は呟いた。
 だが、放たれる銃弾も、機体の強度も。
「あの『星』に手向かうにはあまりに脆弱」
 本気か、それとも『振り』なのか。その判断はつかないが、明らかに説得力の伴わない機体を前にして、白とツクヨミは『夜』を束ね始めた。
「な、何をしているっ!?」
 飛行船を守るように立つツクヨミの手には夜の網。夜の闇を束ね、紡ぎ、そうして出来上がったそれを、白が放つ。
「―――……告げる。此処は我が統べる夜である。いそぎいそぎ、このことわりのとおりとすべし」
 戦場に『夜』が広がり始めた。ハルピュイア達を銃弾ごと包みこみ、締め上げる。
「大人しくしていてください。夜は眠る時間です」
 夜に飲まれ、機体が機能を停止する。そうして、白の生み出した夜は、戦場に静寂をもたらすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
 やっぱりぼくは、この世界ではキャバリアを壊すことしかできないみたいだね。

 飛行船の影からブライダルベールに乗って出現。あらかじめ取り付けておいたサイキックウイングを使って滑空しながら戦うよ。
 ビットで飛行パーツを狙い、飛行能力を奪っていこう。

 滑空しながらじゃあ、自由自在に動けはしないけど、サイキックウィングをうまく操作して、フェイントもいれつつ、避けていくよ。近づいた相手には大鎌で薙ぎ払いだ。



「敵機襲来、敵機襲来!」
 ハルピュイアに乗るパイロット達は、猟兵達からの攻撃に戸惑いつつも、迎撃態勢を徐々に整えつつあった。
「まずはロアルームを狙え! 飛行船さえ落とせば……」
 そう叫び接近するハルピュイア達が対キャバリア用チェーンガンの銃口を向ける。だが、その直後、どこからか飛来したビットがチェーンガンを突き刺し、爆破したのだ。
「やっぱりぼくは、この世界ではキャバリアを壊すことしかできないみたいだね」
 そう言って飛行船の影から現れたのは、アリスとブライダルベールであった。ブライダルベールから放たれるビットは、ハルピュイアの翼を次々と破壊し、墜落させてゆく。
「よいしょっと」
 当のブライダルベールはサイキックウイングを背に空中へと飛び降り、滑空する形でハルピュイア達へと近付いてゆく。
「あの飛行船を壊させたりはしないよ」
 グライダーのような滑空では、ハルピュイアのような飛行に比べ自由度は低い。だがサイキックウイングは風をうまく捉え、ビットでの攻撃を的確に与えてゆく。
「くそっ! キャバリアの防衛が厚い! 奴から狙え!」
 ハルピュイア達が空を切るアリスのブライダルベールへと狙いを変えた。放たれるチェーンガンの銃弾はブライダルベールを掠めるが、巧みな操作と予測を惑わす動きが、ブライダルベールをとらえきれない。
「近付け! 確実に当てて、ミサイルを……っ!?」
 気が付けば、ハルピュイアの眼前にブライダルベールが接近していた。
「幸福を届けに来たよ」
 大鎌を大きく振り上げ、薙ぎ払う。その一撃で、何機ものハルピュイアが撃墜されてゆく。
「さぁ、どんどん倒していこう」
 風をとらえてぐんと上昇したブライダルベールは、ふたたびビットを操作しながら、残るハルピュイア達へと狙いを定めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

嗣條・マリア
殲滅を開始します
一分の容赦なく、徹底的に
無理だというのは簡単ですが、それを言う悪者が居ないといけませんからね

私も、試させて貰います
並行世界の私の“声”から得る未来予測
現段階でどこまで通用するのか

まだ足りないとは思いますが、私も目障りな目の上の瘤を落としたいのは同じですから
……ここで負けるようでは、私自身もまだまだです

“声”による少し先の情報を元に、被弾せず、強引に敵の戦列を蹂躙します
射撃装備の貫通能力はキャバリア相手にも十二分
パイロットの命は取らないように致命打は避けましょう

さあ、貴方たちが本当に殲滅炎剣に届き得るか、私とタイラントが試して差し上げます



 空を舞うハルピュイア。そのさらに遥か上空には、殲滅炎剣が世界を見下ろしている。
「私も目障りな目の上の瘤を落としたいのは同じ」
 マリアはそれらをキャバリア『タイラント』の中から見上げ、武装を構えて呟いた。
「ここで負けるようでは、私自身もまだまだ。試させて貰います」
 そう告げ、赤黒い鋼鉄の塊が跳ね上がった。マリアがタイラントをハルピュイアの隊列へと強引に割り込ませたのだ。
「……何だっ!?」
「殲滅を開始します」
 軽量ライフル『エリミネーターII』を構え、マリアはハルピュイア達へそう宣告した。

 爆炎が空に舞った。
 ライフルから放たれた銃弾はハルピュイアの装甲を打ち砕き、撃ち落とす。
 パイロットの命は奪わないよう、慎重に。マリアは爆炎の中からパイロットが脱出してゆく様子を見届けると、次なる目標へと視線を移す。
「や、やらせるか!」
 ハルピュイアがタイラントへ向けてクローアームを伸ばす。強引に隊列に割り込んだタイラントに隙は多く、その位置はタイラントにとって死角となっている筈で、このクローアームは確実に赤黒いキャバリアの脇腹を抉り取る筈であった。
「――――“暴君”が通りますよ。道を開けてください」
「……っ!!」
 しかし、そこに脇腹は無く、代わりに銃口が向けられていた。
 どぉん、ともう一つ炎が弾ける。ハルピュイアは直撃を受け、地上へと落下していった。
「な、なんだあれはっ!!」
 ハルピュイアのパイロットが叫ぶ。その動きはまるで、未来の出来事を予測しているかのよう。
 ――いいや、実際に未来を予測しているのだ。
(「並行世界の私の“声”から得る未来予測……現段階でどこまで通用するのか」)
 落ちてゆくキャバリアを見下ろし、新たな声を聞く。その声に従い銃を向け、剣を振う。
 少なくとも、この有象無象には十分すぎる程の効果があったようだ。
「さあ、貴方たちが本当に殲滅炎剣に届き得るか、私とタイラントが試して差し上げます」
 それは不可能と暗に告げ、マリアはハルピュイアを殲滅してゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーカ・アネモーン
男を見せたな。結構なことだ
ならば、彼の意志に応えねばなるまい
敵の機体は、プロペラ機か
いい機体だ。空中での安定性は高いだろうな
だが、こちらも空戦機だ。易々と後れを取るわけにはいかない
プロペラ機ならば、水平移動と射撃の安定性は高いだろうが、上下に角度の付いた動きには素早く対応できるかな
極端に傾いた機動は行えまい
攻めるとすれば、上方か真下
コルセスカで牽制を行い、近づいてシールドかブレイドで攻撃する
推力機関を損傷すれば、満足に飛べまい
死にたくなければ脱出しろ
生きていかねば殲禍炎剣を落としになど行けないだろう

とはいえチェーンガンには注意だな。ベイツァーセルを起動
防御策は取っておくべきだな



「ろ、ロアルーム大佐が帰ってきたのか……?」
「グウェン様の言葉は嘘なのか?」
 戸惑う市民に向けて、ロアルームは演説を続ける。
『あの機体は確かに殲滅炎剣を滅ぼす為に研究された機体だ。だが、どれだけ改良を重ねようとあれを墜とすことが出来る代物ではないと断言しよう』
 ロアルームは無情な現実を突きつける。
「そ、そんな……」
「ばかな! そんなわけない!」
 ロアルームの言葉に市民は落胆し、反発する。一度信じた輝かしい希望を捨てるには、現実は苦すぎた。
『だが、希望はある』
 だからこそ、ロアルームは言葉を続ける。
『希望……その名は、猟兵という!!』
 その言葉と共に、飛行船の奥からキャバリアが現れる。その名はアンヘル。シーカの駆る、空戦型クロムキャバリアである。
「男を見せたな。結構なことだ」
 シーカは演説を続けるロアルームの飛行船を追い越し、ハルピュイア達へと向かってゆく。
「ならば、彼の意志に応えねばなるまい」
 そう言い、シーカはアンヘルの高度をぐんと落とす。突然の急降下に、ハルピュイア達の視界からアンヘルが消えた。
「なっ……くそっ!」
 ハルピュイアが急降下した標的を狙おうとするも、プロペラ機である機体は、その動きを十分に追うことが出来ない。
「やはりな」
 ハルピュイアの真下に陣取ったシーカが、無防備なハルピュイアにパルスマシンガン『コルセスカ』を放つ。
「死にたくなければ脱出城」
 その言葉よりまもなく、小さな破裂音と共に、ハルピュイアのプロペラが爆発した。
「極端に傾いた機動は行えまい」
 落ちてゆく機体をからパイロットが脱出する様子を確かめながら、シーカは次の機体へと狙いを定める。
「――っと」
 流石に殲滅炎剣を墜とそうと豪語する部隊なだけある、とシーカは感じ取る。仲間が一機撃墜される様子に臆するでもなく、しっかりとチェーンガンの狙いをアンヘルへと定めていたからだ。
「ペイツァーセル、起動」
 その言葉と共に、アンヘルの周囲の空間が歪む。チェーンガンの弾丸は、その空間に触れた途端、まるで反射するかのように吹き飛んでゆく。
「此方も空戦機だ。易々と遅れを取るわけにはいかない」
 コルセスカの連射で牽制を行いつつ、シーカは間合いを詰めてゆく。
 フェザーブレイドを抜き一気に加速すると、アンヘルはコックピットを外しつつも推力帰還のみを切り裂いた。
「ぐ、グウェン様っ! どうか悲願の達成を……!!」
 パイロットの叫び声が聞こえる。悲壮感漂うその声に、そのパイロットは敗北のけじめとして、心中を図ろうとしているのだとシーカは気が付いた。
「生きていかねば殲禍炎剣を落としになど行けないだろう」
「は……?」
 シーカから発せられた通信の内容は、殲滅炎剣を破壊する為の部隊を破壊する者の言葉とは思えない、と、そのパイロットは感じていた。
「いつかあれを壊す。だがそれが今ではないだけだ」
「…………!!」
 淡々とした言葉だ。だが、その言葉は確かに希望であった。
 燃えるハルピュイアから、パイロットが脱出する。いつかの未来、空を取り戻す時を夢見ながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ネハシム・セラフ』

POW   :    天使の梯子
【自身が殲禍炎剣にアクセスできる状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    廻転する炎の剣
【自身の翼から放たれた車輪状の炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【あらゆるものを焼き尽くす】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな
自身が【歌うような機械音を発し、翼が輝いている 】いる間、レベルm半径内の対象全てに【炎のように輝く翼】によるダメージか【機械音】による治癒を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は天音・優歌です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 すべてのハルピュイアが破壊された。
 白いキャバリア『ネハシム・セラフ』を護る盾は失われ、殲滅炎剣を破壊する作戦は挫かれたかに思えた。
『グウェン。大人しく投降しろ。今ならばまだ……』
 ロアルームの言葉を聞いてか聞かずか、グウェンは笑い、壇上から駆け出した。
「だが、まだこれがある! これならば!」
 グウェンがネハシム・セラフに乗り込む。何層もの巨大な翼が広がり、空へと舞い上がる。
「たとえ一機でも……ははは! 待っていろ殲滅炎剣!!」
 空を見上げ、グウェンは狂ったように叫んだ。

 例えたった1機であろうと、殲滅炎剣に刺激をすれば国に甚大な被害が被ることは間違いない。
 それを阻止するために、猟兵達は最後の戦いへと挑む。
メルメッテ・アインクラング
「ッ!……は、ぃ」主様より強制再接続を受けました
失礼致しました。私は主様の多幸感には焼かれないようにできています
『そうでなくては』。ええ、主様のメイドは務まりません

改めて空を睨み、参ります『殉心戯劇』!
ウイングを開き【空中機動】。空高く飛翔し正々堂々【空中戦】を行います
「はい、主様。希望の光は沈みません!」
敵の攻撃を【武器受け】しながら速度を上げ続け【限界突破】!隙を【見切り】敵の翼を剣の灼刃で【なぎ払い】です
相手コックピットは決して傷付けず、狙うは無力化のみ!

私の本当の幸せは、生きる事
それは主様からの『生きろ』というご命令を遵守する事でもあります
生きる世界を守る為にも闘志を滾らせて戦います!



「ッ! ……は、ぃ」
 メルメッテの目の焦点が一瞬ブれ、がくんと身体が跳ね上がる。
「……失礼致しました」
 ラウシュターゼからの強制再接続を受け、ぐ、と顔を引き締める。主の多幸感には焼かれない。
『そうでなくては』
 そう伝わってくる意志に、メルメッテはこくりと頷いた。
「ええ、主様のメイドは務まりません」

 改めて、天へと舞い上がるネハシム・セラフをラウシュターゼは睨みつける。
 あれが殲滅炎剣に届く前に倒さねばならない。メルメッテはラウシュターゼのウイングを大きく開き、一気に空へと飛翔する。
「……追ってくる!?」
 背後より真紅の光が迫る。それをグウェンは察知すると、急ぎコンソールを操作する。殲滅炎剣の一部へとアクセスし、超強化を図ろうというのだ。
 そうはさせまいとラウシュターゼがぐんぐんと速度を上げてゆく。
「……はい、主様」
 剣を抜き、加速を続けながら振う。
「うぅっ!?」
 何層にも分離した刃が一直線にネハシム・セラフの翼を貫いた。高熱の念力によって翼は溶解し、ネハシム・セラフはバランスを崩す。
 刃は即座に収縮し、ラウシュターゼの手元へと収まった。その時には既にラウシュターゼとメルメッテは間合いの中にいた。
(「私の本当の幸せは、生きること」)
 メルメッテに下された『生きろ』という命令。彼女にとっての幸せは、その命令を守ることでもある。
 メルメッテはネハシム・セラフを追い越し、白いキャバリアと、その下に広がる大地を見やる。
 ――『生きる』。その幸せを得るための世界。その姿を改めて目の当たりにすると、メルメッテの心の奥に闘志を滾らせた。
 狙うは、無力化のみ。
「希望の光は……沈みません!」
 メルメッテは灼熱の刃を振い、ネハシム・セラフの翼を切り裂いた。
「くっ、出力低下……っ!!」
 落下してゆくネハシム・セラフ。それをラウシュターゼは真紅の軌跡を描きながら追うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・フォーサイス
 さて、クライマックスだね。殲滅炎剣にたてつくことの無力さ、教えてあげるよ。見ている支援者たちにもね。

 装備していたサイキックウイングを、準備しておいてもらったEPメガスラスターに換装しなおすよ。

「よし、準備完了。クリア、いくよ。」
 実は空中戦も苦手じゃないんだよね。背後をとるような起動をとり、後ろから大鎌を薙ぎ払うよ。浅いかな。でも、まだまだだよ。ビット攻撃で動きを阻害しつつ。まわりこむように攻撃を加えていくよ。

 殲禍炎剣はこんなものじゃないよ。こんな実力で殲禍炎剣を落とそうなんてね。


シーカ・アネモーン
さて、大物が相手か……予想通りの展開だが、あれと戦うのか
かなりの性能を誇るようだが、こちらとて一人ではない
天使の格では劣るが、まあ木っ端ごときにもやれることはあるものさ
無駄とは思うが、一応、ここで矛を収めてもらうよう提案はしてみよう
国の中に余計な諍いを生むような真似は止せ

……まあ、引っ込みはつかないか
ならば、せいぜい国を背負うもののため、引き立て役にでもなってもらう

相手は火炎放射を使うか
変わった形状だが、それ単体で燃え続ける距離には限度があるはず
空中戦を仕掛けて延焼などさせぬよう上方をとり続けるしかないな
こちらは距離を取りつつコルセスカで引き撃ち
こちらに注意を引いて、ソードズレイヴで遊撃だ



 上空でいくつもの爆発が起こる。
 殲滅炎剣を目指すネハシム・セラフを追った猟兵達が、空中で交戦を始めたのだ。
「さて、大物が相手か……」
 シーカが空を見上げて呟く。展開の予想は出来ていた。戦う準備も万端だ。
 高い性能を誇るであろうネハシム・セラフであっても、敵は1機に過ぎない。対してこちらには、仲間達がいた。
「天使の格では劣るが、まあ木っ端如きにもやれることはあるものさ」
 シーカはアンヘルのセラフィックフィンを広げ、飛び上がる。
「よし、準備完了。クリア、いくよ」
 アリスはブライダルベールのサイキックウイングをEPメガスラスターに換装し、シーカに続く。
「クライマックスだね」
 ぐんぐんと加速してゆく二機のキャバリア。その先に、白の飛行型キャバリア『ネハシム・セラフ』がいた。
『まだ来るの!?』
 グウェンが背後から迫る機影に驚愕の声を上げる。さらに驚くべきことに、迫る敵機から通信が入ったのだ。
「国の中に余計な諍いを生むような真似は止せ」
 その声はシーカのものであった。
(「無駄とは思うが……」)
 そう思いつつも、これで矛を収めるのであればこれ以上の戦いは起こさずに済む。だがやはり、通信を受けたグウェンの回答は想定通りのものであった。
『うるさい! 私の力を認めさせ、私は英雄になるのです!!』
「……まぁ、引っ込みはつかないか」
 溜息一つ。そして迷うことなく機体をさらに加速させる。
「ならば、せいぜい国を背負うもののため、引き立て役にでもなってもらう」
 アンヘルはネハシム・セラフの上空を陣取り、コルセスカの銃口をネハシム・セラフへと向けた。
『どけぇ!!』
 グウェンが吼え、ネハシム・セラフが翼を広げる。その翼から車輪のように回転する炎が放たれた。
「変わった形状だが……」
 シーカはコルセスカでの銃撃を続けながら距離を取る。すべてを焼き尽くす炎とはいえ、空中では延焼するものもない。放たれた炎はアンヘルの脇をすり抜けて、遥か後方で燃え尽きる。
『もう一度っ……!?』
 翼から再び炎を放とうとしたネハシム・セラフの動きが鈍る。背後よりアリスのブライダルベールから放たれたビットが、ネハシム・セラフの行動を阻害したのだ。
「殲滅炎剣にたてつくことの無力さ、教えてあげるよ。見ている支援者たちにもね」
『……っ!!』
 挑発をするようなアリスの言葉に、グウェンはモニタに映された地表を一瞥する。
 そこにはルベレアの大地が広がり支援者達の顔など見えはしない。しかし、空を見上げ戦いの様子を見守っているだろう彼らを想像し、グウェンはぎりりと歯噛みする。
『無力だと、そんなことはない! 決してそんなことはっ……』
「殲禍炎剣はこんなものじゃないよ」
 縦横無尽に駆け巡るビットが、ネハシム・セラフの装甲を貫く。体勢を崩しながら放たれた炎の輪は狙いを大きく外し、その隙がさらに猟兵達へ追撃のチャンスを与えていた。
『くそっ、何で当たらない!?』
 コルセスカの銃撃に苛立ったグウェンは、アンヘルへと狙いを定める。
『今度こそ……!』
「今だ」
 心を乱し、注意力を欠いた攻撃であった。シーカは背部に格納された小型浮遊砲台『ソードスレイヴ』を放つ。
「ソードスレイヴ、アクティブ……行け!」
 その号令と共に、ソードスレイヴがネハシム・セラフへとレーザーを照射しながら突撃する。
『あぁっ!!』
 ずんっ、とソードスレイヴ自身がネハシム・セラフへと突き刺さる。ソードスレイヴは勢いのままに装甲を突き抜け、翼をもぎ取ると、ネハシム・セラフは体勢を崩し落下してゆく。
 その先に、ブライダルベールがいた。
「こんな実力で殲禍炎剣を落とそうなんてね」
 手には巨大大鎌。高出力のエネルギーが刃を形作り、ネハシム・セラフへ向けて薙ぎ払われる。
「幸福を届けに来たよ」
 大鎌の一撃が、ネハシム・セラフの装甲を切り裂いた。
『そんな、そんな!!』
 遠くなってゆく殲禍炎剣を見上げ、グウェンは悲鳴を上げるように叫ぶのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御門・白
御使い気取り?
殲禍炎剣はバベルの塔
そちらに属するほうが向いてそう
どちらにしても好きにはさせないけれど

だって。
空を目指す気持ちをオブリビオンごときに操作されて、好きにさせていいはずがないんだから
行こう、ツクヨミ。
あなたは「殲禍炎剣」が嫌い
そこは信頼してる

声。歌。キャバリアが奏でる聖歌
ツクヨミの装甲が灼ける
なるほど、そう言う攻撃ですか
……でも
私に、呪術戦を挑むのは愚の骨頂

……此処は天帝の宮である。
誰の赦しを得て、そのように空を舞う?

呪力をぶつけて、天使を地に縫い留めます

―――……思い出して
あの衛星はこれくらいでは堕ちない
あなたは知っている筈です
だから今は、屈辱に耐えて力をつける時
正気に戻りなさい



 猟兵達の攻撃により、ネハシム・セラフの翼はもがれ、傷付き、砕け散る。
『あぁ……』
 グウェンが空を見上げる。
 これよりもっともっと高くに殲禍炎剣が待っている。だが、無情にも機体の高度は下がり、ただでさえ遠いその炎が、もっともっと、遠くへと離れてゆく。
『嫌だ、いやだ……私は、行かなくてはならない……!!』
 決して掴めないそれに手を伸ばした、その時。

 ――聖なるかな。聖なるかな。聖なるかな。

『……!!』
 ネハシム・セラフに残された翼が赤く輝き、歌うように機械音を響かせ始めたのだ。
 その音は、砕けた装甲を塞ぎ、もげた翼を新たに生やし始める。聖戦はまだ終わらないといわんばかりに、歌は広がってゆく。
 これならば。グウェンとネハシム・セラフは翼を羽ばたかせて高度を上げてゆく。
「御使い気取り?」
 それを追うように、白が自身のキャバリア『ツクヨミ』と共に空を駆け上がる。
 ネハシム・セラフの姿を見据え、歌声のような音を聞く。
「殲禍炎剣はバベルの塔。そちらに属するほうが向いてそう。どちらにしても好きにはさせないけれど」
 そこまで呟き、白はツクヨミに一際強く、空を踏ませた。
「行こう、ツクヨミ」
 空を蹴ったツクヨミが、ぐんと加速する。目指すは歌声の主。ネハシム・セラフ。
「声。歌。キャバリアが奏でる聖歌……」
 その音は、ツクヨミに纏わりつくように響き、ツクヨミの表面を焼いてゆく。
「なるほど、そういう攻撃ですか」
 白は冷静に状況を分析する。奏でる機械音による呪術が、キャバリアをも破壊するエネルギーとなっている。
「……でも」
 無表情に淡々と白は告げる。
「私に、呪術戦を挑むのは愚の骨頂」
 その言葉と共に、白が呪いを紡ぎ始める。
「いそぎいそぎ、天帝の定めたるとおりとすべし」
『な、何っ!?』
 グウェンは突然響いたその言葉に驚愕する。白の言葉は空間を超越し、空全体に広がっていた。
「……此処は天帝の宮である。誰の赦しを得て、そのように空を舞う?」
『誰……誰って……!!』
 グウェンが混乱する。直後、ネハシム・セラフの高度が一気に落ちる。
『お、堕ちる!!』
 まるで地面に縫い付けられるように。呪力の楔が打ち込まれ、輝く翼も色を無くす。

 ――好きにはさせない。
 ――だって。
 ――空を目指す気持ちをオブリビオンごときに操作されて、好きにさせていいはずがないんだから。

 強い意志と、天帝の理がネハシム・セラフを支配する。
『遠くなる、遠くなる……!!』
 再び掴みかけたと思った。しかし、今グウェンとネハシム・セラフの身体は天からは程遠い、地表にある。地にへばり、翼を広げることすら能わない。
 その脇にすとんと降り立ったツクヨミと白は告げる。
「――……思い出して」
 諭すような声。しかし。
「あの衛星はこれくらいでは堕ちない」
 それはグウェンにとっては絶望の宣告だ。だが、それは、オブリビオンマシンに支配されたグウェンにとってのものだ。
「あなたは知っている筈です。だから今は、屈辱に耐えて力をつける時」
『うぅっ……!!』
 頭が割れるように痛い。そうだ。確かに知っている。
「正気に戻りなさい」
 その言葉に、救われたような気持ちすら覚える。だが、まだ認めるわけにはいかない。
『私は、私は空へ……空へ!!』
 オブリビオンの支配力は強い。治癒した翼は再び崩れ、機体は満身創痍。だが、完全な破壊を完了させるまで、グウェンを取り戻し、戦いを終わらせることは困難なようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
あのオブリビオンマシンに乗っている……いえ、乗らされている彼女
生身でキャバリアと戦うような猟兵には会ったことがないんでしょうね
私なんかには全く目を向けていない

生身の人間に何ができるとも思っていないんでしょうけど……
敵がパワーダウンしている今なら、近付くことができるかもしれないわね

・力場で周囲の空間に干渉して隠匿しつつ接近
・接敵できたなら力場の干渉を敵の周囲の空間に行い、殲禍炎剣へのアクセスを妨害
・UCを用いて敵の制御系にアクセス。コクピットハッチを開き、念動力でグウェンを引きずり出す
・UCで天候を操作し、最大規模の落雷を引き起こす

燃える蛇――
その名前のとおり、全てを灼いてあげるわ



 ネハシム・セラフは猟兵達の攻撃によって限界を迎えようとしていた。
『それでも、それでも……!』
 グウェンは空を見上げる。
 オブリビオンマシンに操られ、狂気によって突き動かされていながらも、動機そのものは『この国の為』に他ならない。
 例えその結果がこの国の崩壊を招くことになろうとも――。
「だからこそ厄介なのだけれど」
 アレクシアは空へと向かってゆくネハシム・セラフを追いながら呟いた。
 空へと舞い上がる天使は、地上には目もくれない。
 ましてや、キャバリアですらない小さな人間の姿など、グウェンにとっては羽虫にも等しいようだ。
「彼女、生身でキャバリアと戦うような猟兵には会ったことがないんでしょうね」
 足元に力場を形成し、アレクシアが跳ねる。アレクシアの眼前に、白く煌めき、燃えるように熱を発する装甲が迫る。
『……何!?』
 ようやく、グウェンが異常を感じ取る。ネハシム・セラフによる殲禍炎剣へのアクセスが妨害されたからだ。
『通信系統の異常? いえ、何かおかしい……!』
 ネハシム・セラフが思うように動かない。焦るグウェンがコンソールを操作し、異常の原因を探ろうとしたその時――。
 突如、コックピットハッチが開かれた。
 逆光に映るシルエットは人間のそれ。だが、そんなものがこんな空中に現れるはずがないというグウェンの中の常識と実際に目の当たりにした状況に、グウェンは混乱し、取り乱す。
『……そ、そんなっ!?』
「さぁ、出るわよ」
 強い風に髪をなびかせ、アレクシアが念動力でグウェンの身体を掴む。
「い、嫌よ! こんな――」
 わめき、暴れるグウェンを念動力で抑えつけ、アレクシアはネハシム・セラフから離れてゆく。
「空が、遠く……!」
 グウェンが肉眼で空を見上げた。
 その向こうにある殲禍炎剣。しかし、その視線も急に荒れ始めた天候によって現れた分厚い黒雲に遮られる。
「燃える蛇――」
 グウェンを連れたアレクシアが、主を失った天使を見つめる。
「その名前のとおり、全てを灼いてあげるわ」
 その言葉と共に、天空の黒雲から稲光が轟く。
「ギガボルト――!」
 落雷が、ネハシム・セラフを直撃した。電撃はネハシム・セラフの全身に巡り、内部の電子機器を破壊し、爆炎を上げる。
「あぁ、堕ちる……私達の、夢が……」
「夢はまだ、夢のままにしておきなさい」
 炎を上げて落ちてゆくネハシム・セラフを呆然と眺めるグウェンに、アレクシアがそう告げた。

 いつか。いつかは殲禍炎剣の脅威を終わらせる。
 その願いは猟兵達も同じである。

「けれど、今はまだ――」
 眼下に広がるルベレアの大地。猟兵達によって殲禍炎剣による滅亡を回避したその国を見下ろしながら、猟兵達はこの世界の行く末を強く案じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月07日


挿絵イラスト