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雪月は夏を啼いた

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #魔鬼士 #マジックナイト #災魔の卵 #(涼)しい時間(脱字がMSコメにありました)

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#(涼)しい時間(脱字がMSコメにありました)


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●夢とはたった一日の現実
 アルダワ魔法学園から、遠く遠く海を超えた東の果て。
 東方諸島。
 そう呼ばれる独自な文化を築く島に置いて、魔導装置が"災魔"の出没を検知する。
「武を更に求めよ!我が戦闘に耐えうる武勇を示せ!」
 大声で叫ぶ。それは何処か。武を尊ぶ気風を強く持つ島に置いて、"重要文化財"としてたくさんの遺物を預かり、丁寧に飾っている美術館だ。
「俺の声が聞こえるなら!災害へ備え、嵐が来ると危機感に訴えかけよ!」
 ばたばたと、駆ける足音。不法侵入を果たした男は叫びながら。
 武術を尊び、この地よりアルダワの武術向上は目指されてきたともいう。
「お前達は既に強い! 故に、斃す価値がある!」
 定期的に武道大会が開催され、開催された数だけの優勝者がおりその数だけ、展示物が在る――その遺物の一つに目をつけて"災魔の卵"と融合させる男の姿。
 異常が瞬時に発生した遺物は、魔力を暴発させて周辺一帯を即座に凍らせた。
「時間の猶予はないぞ!これが島中を凍てつかせるが先か討つが先か、お前達の伝達力に掛かっているからな!」
 それはいつか何処かで名を捨てた、戦士の成れの果てである。
 優れた戦士よ、此処に集え。大量の災魔共を止めに動くが良い。
 訪れた者全てを乗り越えて――俺は更に上を目指すのだ!

●熱くて冷めた夏の日に
「強敵を求めて、強敵を呼ぶ戦士が居るらしいのだけど……熱い話だと思わない?」
 空裂・迦楼羅(焔鳳フライヤー・f00684)は強気に笑う。
「……順を追って説明するのだけれど、今回の騒動を引き起こしたのは"魔鬼士"と名乗る猟書家なの。優れた戦士との戦闘を求めての行動のようね」
 災魔の卵が使用されて、瞬く間に大量の災魔が発生した。
 目に留まった遺物は、――どうも異物の類であったようだけれど。
「災魔化したのは過去にその島で勝利した精霊術士が用いた戦術を元にした置物だったの。愛用していた武器の形を記録として遺したのだ、と聞いているわ?」
 精霊と契約し使役する者を讃える記念品。

 雪兎の杖の置物。

「雪兎の精霊と術士は仲が良かったのですって。精霊だって心はあるわ?きっと"術士"がどこまでも好きだったのね。生きる時間の流れが違うからいつか行く場所を失って……遺物の周囲に留まって居たのでしょう」
 精霊と置物は一緒に融合してしまい、災魔となった。
 だからこそ、起こったこと。
「精霊が司る属性は氷なの。こんな季節に、氷の精霊が実体化したらどうなると想う?」
 仕えた術者はその場におらず。人化の術だって持ったことがなかった。
 氷の精霊。人のぬくもりに恋い焦がれ、つい手を伸ばそうとするだろう。
 誰かも知れない誰かへと。
「……溶けてしまうのよ、兎ちゃんたちは雪そのモノの精霊だもの。自分の体が溶けてなくなってしまうまで氷の魔術を使い続けることをやめようとしないのだわ」
 魔鬼士は、雪兎たちの魔力を暴発させている。
 雪兎たちが魔力を使いたくなくても、消費させられていく。
「厭な戦わせ方をするものよね、……無理に雪兎と戦わなくても、勝手に消失してしまうモノを創るなんて」
 猟兵が向き合った時、雪兎は小さい雪の夢を見せようとする。夏場に現れてしまったが故に終わりを知っている雪の妖精の、夏場に起こすたった一日の雪の日を。
「現場に集まったマジックナイト達は、氷と炎の扱いに長けているわ?」
 現場の早期対処、もしくは……夢のような氷の優しい時間。
 どちらの対処を手伝って貰うと良い。
「魔力の暴走を起こしている雪兎の精霊はひと時だけでも誰かと居る時間を大事にしたいの。誰かを壊し尽くしたい、とは望んでいないのよ?」
 その時間も。あまり長く続くことはないけれど。
「精霊はほんとうは、人といるのが好きだから」
 "魔鬼士"という人も、酷いことをするものよね。
 戦いにくい方法を、こうして提示してくるんだもの。
「強さとは。誰かを犠牲にしても得るものだ。魔鬼士はそういう考えでいるようだから」
 示された強さ、もしくは戦わずに回避した姿を見て。
 戦いそのものを、仕掛けてくることだろう。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は猟書家の侵略に関わる感じの"二章編成のシナリオ"です。

 舞台はアルダワ学園から遠く離れた東方諸島。
 東方風といわれ、アルダワ世界でも田舎な方の島での出来事です。
 常に真夏な気候の暑苦しい島。雪が永く残れる気候をしていません。
 そんな貴方に不思議涼しいデイドリームを。
 シナリオの方向性は ほのぼの心情寄り > 殺伐 の予定。

●プレイングボーナス(全章共通)『マジックナイトの助力を得る』。
 もしくは、このシナリオに限り『章ごとの内容を全力で楽しむ』です。
 ボーナスの選択は、どちらか片方だけで、大丈夫。

●集団戦『『雪兎の精霊』スノーラビット』。
 実体は雪の精霊が元主の"杖"を依り代に大量にあふれ出て災魔化し、大量の雪を降らせて島中を氷の海に沈めようとしています。ほんとうはとても優しい雪兎さん。
 永遠に作り出す雪の中を、魔力が続く限りぴょんぴょんしています。島が死ぬほど熱いので、魔力を使い果たすか放置していると解けて居なくなります。
 ※フラグメントをそこそこ無視して、涼しい空間をお友達と楽しんでも構いません。しい時間を全力で楽しむだけで、戦闘をしていなくても構いません。
 ※キラキラ素敵な光景を見られたら、精霊達は満足して溶ける事を受け入れて消え去ります。

●ボス戦『魔鬼士』。
 雪兎達がいなくなると、戦いに望んだものを力で倒さんと標的を絞り襲ってきます。戦闘狂バーサーカー。戦うものは強者なり。
 強者、死するべし。災魔と大魔王の力まで求めた戦士の成れの果てです。
 彼を倒せば、杖の置物に融合していた卵が完全砕けて消え、平和になります。

●マジックナイト
 雪兎の杖を所持していた精霊術士の門下生たちです。
 スノーラビットは、優しい戦闘を行いますがその戦い方は"師匠"の戦い方と同じ。
 教えを学んでいるので、助力を頼めば応じてくれます。
 ただ、何期生なのかはわかりませんが、まだまだ色々未熟なようで、炎か氷、どちらかを直線上に放つ魔法しか使えないようです。
 武装はルーンソードを所持。武術方面はそれなりに秀でているようです。

 ゆっくりめな運用を予定しています。 全員採用が出来ない場合もありますが、途中参加、片方だけ参加は大丈夫な構えでいるのでご検討頂けましたら、幸いです。
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第1章 集団戦 『『雪兎の精霊』スノーラビット』

POW   :    人の温もりに触れた雪兎の最期
自身が戦闘不能となる事で、【心を通わせた】敵1体に大ダメージを与える。【対象に別れや感謝の言葉】を語ると更にダメージ増。
SPD   :    臆病な雪兎は物陰からこちらを見ている
肉体の一部もしくは全部を【雪うさぎ】に変異させ、雪うさぎの持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ   :    雪兎が見せる小さな奇跡
【舞降る雪】を降らせる事で、戦場全体が【ホワイトクリスマス】と同じ環境に変化する。[ホワイトクリスマス]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●雪月デイドリーム

『みて。みて。たくさん、ゆき、だよ』
『たくさん、あるよ。どんどんふらせるね』
 たどたどしく言葉を紡ぐ雪兎の精霊は表情も氷のよう。
 これは誰かの迷惑だ。それを分かっている精霊たち。
 力の制御が雪兎たちの意志ではなんともできない。なるようにしか、ならない。
『でも、なかなかぜんぶ、こおらないね』
『うん、すぐとけちゃうね。ここはあついね』
 氷の魔力を暴発させて使う個体がたくさんいても、島中を凍てつかせる為の術者はいない。あれは喚び起こし、使役しただけの戦士。
 雪兎の精霊は従っているわけではないのだ。
 無理やり災魔化したことで止められない魔力放出を、よその地域に持ち出さないようにこの場に留まっているだけ――。
『なにをいわれても、きえるまで、ここにいるよ』
『わたしたちのあのひとなら、きっとひがいをおさえるために、そうしたもの』
『うん、やさしいひとだったもの』
 誰か止めに来てくれたら、嬉しい。
 わたしたちの雪を見て。涼しい素敵の日をプレゼントするよ。
 少しだけでいいから笑って見せて?知らない貴方。
 誰かの楽しいだったら――うれしいな。
灰神楽・綾
【不死蝶/2人】アドリブ歓迎
ふふ、雪を見ていると去年のクリスマスを思い出すね
たくさん遊んだなぁ、あれから半年近く経つのかぁ
あの時のような気持ちで楽しい時間を過ごそうか
精霊たちもそれを望んでいるのなら

雪合戦もしたし、かまくらも作ったことがあるけど
実は雪だるまや雪うさぎって作ったこと無かったよね
雪遊びの定番なのに
というわけで早速雪玉をコロコロ転がしていく
…あれれ、意外と真ん丸に作るの難しいな…
歪に大きくなっていく雪玉を何とか調整しつつ
雪玉を重ねて、石や小枝をつけて、
最後にマフラーをかけてあげて…よし、完成っ
初めてにしてはなかなかイケてるかも

梓はどんなのが出来たー?
…う、うん、味があって良いと思うよ


乱獅子・梓
【不死蝶】アドリブ歓迎
もう6月だというのに雪が見られるとはなぁ…
美しい雪景色、だがそれは精霊たちが
望まず生み出してしまったというのがやるせない

うーむ、ただの雪だるまでは綾と被るし
俺は別のものを作りたいが何がいいか…
…そうだ!俺の愛竜、焔と零を完全再現した雪像を作ろう!
まずは胴体部分の雪玉を作って
そこに手足や顔部分をくっつけていって…
次に羽根をくっつけて…あ(ボキンと割れて落ちる
グッ、想像以上に難易度が高い…!
四苦八苦しつつ何とか完成へ

綾の雪だるまも良く出来ているじゃないか
フッ、俺の自信作、焔と零だ!
※客観的に見たら何だかよく分からない雪像が2つ
焔と零も喜んでくれているぞ(よしよし



●今日は素敵なホワイトクリスマス(虚言)

『ふわふわ、たくさん。たくさんゆきだよ』
『どんどんふるよ。つめたいね』
 くるくると、厚着姿の"雪兎の精霊"スノーラビットが遊んでいる。
 常世の暑さを諸共せず、凍れる雪の空間をふわりふわりと広げては、ちらりちらりと視線を送る。
 あそこに居る"人間"は、なんだか楽しそうに見えるのだ――。

「……ふふ」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が不意に笑ったのを、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はわからなくはなかった。
「もう6月というのにこの白銀の世界。……本当に雪だよな?」
「雪だね。うんうん、紛れもなく雪だよ」
 綾が早くも雪に触れて、暫く留まるだろう質量を手で確認した。
「年のクリスマスを思い出すね。たくさん遊んだなぁ、あれから半年近く経つのかぁ」
 指折り数えて、単純に考えてもはや半年。
 季節がぐるりと巡ったというのに、こんな事もあるものだ?
 首をわずかに傾げて、ふぁぁあと空へ雪をばらまく。梓へ降り注ぐ粉雪の量がちょっぴり増した。
 頭の上に雪を積もらせた梓の視界の隅で揺れる兎耳。
「此処の場合は美しい景色を――精霊たちが望まず生み出してしまったという話だな」
 ――ああ、なんともやるせない。
 眉根を寄せる梓に、綾はへらりと普段以上に楽しげに笑いながら言う。
「あの時のような気持ちで楽しい時間を過ごそうか」
 綾は梓の眉根を指で、ぐい、と伸ばしてやる。
「あの精霊たちはそれを望んでいるようだから」
 そんな顔は楽しそうじゃないからだめだよ、と。

「雪合戦もしたし、かまくらも作った事があるよね」
 雪遊びは数多くの経験があるものの、綾はまだ足りない遊びがあると思う。
 ――雪兎、とか作れるものなんだっけ?
 ――実は雪だるまは作った事なかった気がするし……。
 綾はころころと雪玉を転がして、早速始まりの雪玉を作り出そうと勇む。
「あるな。遊びの定番にはまだ手を出していない気も……」
 ――あれは、雪だるま辺りを始めたか?
 悪戦苦闘しているようで、上手く大きくならない様が見て取れる。
「俺は別のものを作りたいが何がいいか……」
「……あれれ、意外と真ん丸に作るの難しいなぁ…………同じ、じゃだめなの?」
「だめじゃあないが………そうだ!」
 ――俺の愛竜、焔と零を完全再現した氷雪なら同一にはならない!
 思いついたら即行動。梓のプランニングは完璧な形で作用する。
 いつも見る姿を模倣して、氷雪にするのだからなあに困る部分は何処にもない。
「まずは胴体部分の雪玉を作って」
 ぽんぽん。雪玉を上手いこと調節している姿を、綾も見様見真似で自分の雪玉(らしいもの)にも応用する。
 こういう時は、誰かがやっている様を真似るのが一番はやいのだ。
「ちょっぴり歪に大きくなってきたけど、うん。なんとか丸くなりそう……かな」
 少し角が無くなったような気がして、コロコロ転がす作業に綾は戻る。
 雪だるまにするならば、大きく二つの雪玉が必要だからだ。
 せっせと作業をしなければ。
 綾の背中を視界の隅に捕えつつ、梓の手元では――。
「……手足や頭部分をくっつける。それから、羽根を、くっつ、けて…………」
 モチーフは仔ドラゴンな二体なのだ。当然原寸での大きさが一番の理想。
 パーツとして細かくなり、翼の再現レベルは――。
「あ」
 高レベル再現を行おうとしたのがいけなかったのだろう、ポキンと割れて崩れてしまった。梓の思う再現度なので、本当に再現されていたかは、彼のみぞ知る。
「……グッ、想像以上に難易度が高い…………!」
 だが諦めない!四苦八苦、考察を交えて何度か試せば必ず結果になる。
 信念はとても硬い梓であった。

 一方そのころ順調に、鼻歌まで飛び出しながら二つ目のコロコロが理想に到達しそうな綾。大きめの上に小さめを重ねて、石や小枝を付けて、"雪だるま"らしさを飾り立てる。
「最後にマフラーをかけてあげて……よし、完成っ」
 ニ、三歩離れて、長めてそれから満足気に頷く。
「最初にしてはなかなかイケてるかも」
 背後に感じるのは梓の満足げな気配だ。
 どうやらあちらも完成に至ったらしい。
「梓はどんなのが出来たー?みせてみせて」
 振り向きながらの綾が見たもの。――それは。
「……フッさあ上から下までよく見てくれ。俺の自信作、焔と零だ!」
 ばーん。なんか丁度いい台の上に並んだ二体の雪像……らしいもの。
 客観的に言わせて貰えば、綾にはそれが"仔ドラゴン"なのだと言われてもよくわからない。
「……う、うん、味があって良いと思うよ」
「綾の雪だるまも良く出来てるじゃないか」
 お互いの作り上げたモノを褒めあう様はとても楽しげだ。
 きゅー、と鳴く声とガウと鳴く声が喜んでいる仔ドラゴンがいる。
「焔と零も喜んでくれているぞ」
 よしよしと頭を撫でて。梓も満足げ。
 綾が言葉を呑み込んだのに、気づかないのはきっと――楽しげを彩るほんの少しのスパイスだ。

『たのしそう、いいね。かわいいね』
『かわいいね。ゆきうさぎさんも、ならべておいていいかなあ』
 雪をたくさん降らせてよかった。様子を見ていたスノーラビットたちが、魔力切れを起こして消え去っていく。
 ほんの少し、不思議の冬の色を帯びた夏休み。
 雪だるまと、焔と零の雪像。その傍に――雪に埋もれるように雪兎が点々と並べられていた。
 全ての雪が溶け切ってなくなるまでもう暫く時間は掛かるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラング・カエルム(サポート)
「ほほう、私の力が必要なようだな。安心するがよい、私が来たならもはや解決したも同然だ!」
何かと首を突っ込みたがる。とても偉そうだけど人類みな友達だと思っている毎日ご機嫌ハイカラさん。
別に男に間違われてもなんら気にしない。そもそも自分の性別を意識していない。
別に頭が悪いわけもなく、むしろ回転は速い方だが、明後日の方に回転させる。
とてもポジティブ。人類みな友達だけど、悪いことした奴に叱るのも友達。なので誰にだって容赦もしない。容赦なく殴る。容赦なくUCも使う。だって友達だからな!



●兎の願いは

 ひょおお、と氷の魔法が展開されている。
 ぴょこぴょこと、彼女たちが杖を持って跳ねる度。
 着地地点に魔法陣が瞬時展開されて風が吹き荒ぶ。
「おお寒い」
 顔をパタパタを仰ぎながらのラング・カエルム(ハイカラさんの力持ち・f29868)。確かに気温は寒さに寄っている。だが天候まで操作できているわけではないのだ。降る雪と、既に積もった雪と。たくさんの氷。
『そうでしょ、さむいの』
『きらきら、さむさむ。たくさんなの』
 "雪兎の精霊"スノーラビットが作り続ける氷のワルツ。
 ラングはそれをみて、愉快な生き物を見ているようで、口元に笑みを讃えた。
「ほほう、私の力が必要そうだな。安心するが良い」
 もはや解決したも同然だ。と言わんばかりに雪の庭に踏み込んで。
 ラングは夏も近いのに本物の雪だと理解した途端、自然に笑い出す。
「……おお!」
 ご機嫌なハイカラさんは、さく、さくを真新しい雪の上に足跡の道を創り出して。
 誰も踏みしめた跡のない白い道を、満足げに見やる。
 雪兎の精霊達がすぐに雪を降らせるものだから、新しい道は直ぐに雪に埋もれてしまう。
「なにか、望みはあるか?」
 共に踊るか?と誘ってみるものの、魔法に長けているわけではない。
 精霊たちの混ざって飛び跳ねて、氷の道を歩くくらいがラングが今すぐ思いつくことだ。
『のぞみ?』
「そうだ。雪を降らせるのをやめることはお前たちの意志ではどうにもならないんだろう?」
 では今すぐ望むことはなんだ――ラングはそう、自信に溢れた表情で問う。
 何を返答したとして、可能な範囲で実現を目指す顔だ。
「お前達は儚い存在であると聞いた。なにか、その姿だから出来ることをしてみるのはどうだ」
『このすがた、だから?』
「そうだ。災魔だというのはひとまずその辺に投げておけ」
 からから笑って雪兎は変わりに、キョトンとした顔をしてみせた。
 心を僅かにでも通わせて、フードの耳を揺らした雪兎はポツリと。
『ひろいおそらをとびたいな』
『すごく、たかいところまで、とびたいな?』
 ぴょんぴょん跳ねるだけでは足りないと彼女たちは言う。
 兎耳では飛べぬ、空中へ、身を投げたいのだと彼女たちは言った。
「成程、それならば可能だ!」
 言うが早いが、ラングはがっ、と精霊の首根っこを掴み、ぶぅんと上空へ放り投げる。
 びったんびったんの応用だ。空を飛びたいと言ったな、では飛ばしてやろう。
 ユーベルコードを発動しているラングに、重さという概念はない。
 まるで紙でも掴んで投げるような軽い動作で、雪兎達を空に飛ばしてやった。
 わあわあ、と喜ぶ声。上空に飛ばした精霊たちは、恐れよりも喜びの声を上げていた。
 その中で、ラングが聞き取れた言葉は――。
『わあ、わあ!』
『びっくりしちゃった。でも、知らないヒトも、あたたかいね!』
『らんぼうさんでもきにしないよ。ねがいをかなえてくれて、ありがとう!』
 人の温もりに触れた雪兎の最期は。
 ありがとうを伝える事で、別れの言葉としたのだろう。
 降り注ぐ雪に身を溶かして、優しく綿雪を降らせた。
「だってなあ、――友達だからな!」

成功 🔵​🔵​🔴​

十文字・真(サポート)
14歳の中学生です。思春期なため女子に興味津々です
 基本の口調は「厨二(我、貴様、だ、だな、だろう、なのか?)」、素で話す時は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」です。当て字、横文字、妙に難しい言葉が好きです
常に厨二な感じで喋りますが色々未熟な為、時折素の口調が出てしまったり、「それ厨二?」な事を言ったりもします。笑い方は「くくく…」です
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●どうみても女子(チラッチラッ)

『ほうらみて、ゆき、だよ?』
 "雪兎の精霊"スノーラビットが視線を向けた先。顔を片手で覆い隙間から覗き込む十文字・真(十字神(クロス・ゴッド)・f25150)。
「そうだな!夏であるべき季節に冬の猛威を押し付けるその姿勢!――気に入った」
 精霊たちは災魔化しているとはいえ、止められない雪の魔力の暴走に対して笑う少年に脅威を持つ。
『あの、あの?』
「我は神(ゴッド)!愚かなる蛮行でも寛大な心で赦す十字神(クロス・ゴッド)である!」
『ほわいとくりすます、おきらいじゃあないですか?』
 舞い降る雪は止めどない。
 雪兎たちが杖を振るっても、飛び跳ねて遊んでも。
 靴が埋まる程度に雪が補充され続ける。
 空から降り注ぐ熱帯の気温のせいで白い世界は長続きしないのが欠点だ。解けて水になっては冷やされて、集団の精霊たちの魔力で瞬時に凍ってを繰り返す。
「笑止!ああ笑止だとも!……ッくくく、奇妙な事をいって笑わせてくれるなよ!」
 そのような光景を見て。
 真はひとりでに笑うのだから、雪兎達にもざわめきが走った。
『あれ?このひと、ふつうのひとじゃあない?』
 ホワイトクリスマスな様相に、幻聴だろうが鈴の音まで聞こえてくる。
 楽しむならば、かの聖夜のような静寂の空間までもが降ってくるというのに――神(ゴッド)は激しく笑うのである。
「迷える矮小でありながら群れでもある遣いの者共よ、はしゃぎ倒して転ぶなよ?俺、流石にどうしたら良いかわかんないからな?」
 ぴょんぴょん跳ねるブーツは軽く。フードの耳がぴょこぴょこ揺れる。
 みんなが一様に、真を見て、ぴたりと止まった。
「あ……いや違う、我のために踊り、我に最高純度の雪を納めるのだな!」
 両手を広げ、装着した自由自在の包帯を放ち、ぐるぐると巻きつけて、言葉通り雪兎たちを手中に納める。
 これは今転びそうだった個体の一時的に止めだだけだったりする。
 建前上は遠くに行かないように縛り付けた。
 だが、本当は転ばぬ先の杖ならぬ、怪我防止策というわけだ。
 厨二を抱える少年心というのものは、女子というものを気にかけてしまうものなのである!
『……?』
『……?』
 短く顔を見合わせて。
 今のは聞き間違いか?と雪兎の精霊達の顔が
 厨二病口調が突然、彼の素らしい口調に転がり、儚い身の心配までされた。
 動きを封じる
『わるいひとでは、ないです?』
「貴様、我のどの辺りが悪い物だと思ったのだ?」
 聖なる包帯における拘束など、言葉通りの拘束に過ぎない!
 故に我は助けの手など差し伸べては!いない!ポーズを決めて、流れるように雪兎たちの言葉をスルーする真はとても輝いていた。
『……そうですね、いいひと、なのでしょう!』
『ふしぎのおにーさんはゆきがすき。わたしたちは、とってもうれしい』
 ふふふと笑う雪兎達は、口々にいうのだ。

『ふしぎなであいができるから』

『ヒトというのはおもしろいのですよね』
 精霊視点ならではの少し外れた言葉を残して、タイミング悪く魔力を使い果たし体そのもを雪に変じさせて消えていった。
 残されたものは、まだ溶け切るには多すぎる大量の白い白い、雪ばかり――。

成功 🔵​🔵​🔴​

厳・範(サポート)
長年の修行で誘惑に強いお爺です。
食べ物に制限はありません。
話し方は古風です。

亡き親友との約束(世界を守る)で、封神武侠界のみで活動していましたが、『仁獣』性質と親友の幻影の後押しで決意し、他世界でも活動し始めました。
「放っておけぬのよ」

動きとしては、主にサポートに回ります。
【使令法:~】では、麻雀牌を利用して、対象生物を呼び出します。
【豹貓】は睡魔を呼ぶ、【胡蜂】は恨みの毒(理由は秘密の設定にて)という感じです。

また、半人半獣もしくは本性の麒麟形態だと、背に人を乗せることがあります。

なお、武侠の血が騒ぐと足技が出ます。

依頼達成のためとはいえ公序良俗に反する行為はしません。
あとはお任せします。



●やさしいたたかい

「武を尊ぶ島。そう噂に名高いそうだな、この島は」
 眼光鋭い厳・範(老當益壮・f32809)は寒さを意識したりしない。
 目の前で魔力を暴発させられている災魔化した"雪兎の精霊"は、"友"とこの地で武を魅せた存在であるはず。
「……さすれば、喚ばれた理由が望まぬものであったとして」
 真に持て囃された筈は最後に仕えていた本来の主だったとして。
 その者に力を貸した精霊であったはず。
「戦わぬ理由は本当に存在するものか?」
 災魔の卵は何に憑いている?模造された"杖"だ。
 主と戦った、形として遺るモノ。
『……そういわれるとなくは、ない、かな』
「だろう。ではわしが、相手となろうか」
 亡くした存在の大きさを変わらぬ。
 過去猟兵と雪兎、どちらにも傍に誰かが居て、――今は居ない。
 範には親友が、雪兎たちには精霊術士が。
 選ぶべき未来を共に歩くものは、――いないのである。
「この世界に訪れたのは初めて。しかし、……"武"というからには、生まれてこの方出たことのなかった"封神武侠界"とそうやることは変わらぬ」
 麻雀牌を指に幾つか挟み、半人半獣の瑞獣が敵対心を顕にする。
「常時氷を使い続けるおぬしらを、侮るわけではない。だが足元を縫い留められては困るでな」
『おにごっこ、だね』
『じゃあ、わたしたち、がんばってつかまえるね!』
 杖をぶぉんと振るい、差し向けた方へ強めの吹雪が吹き付ける。
 集団の兎たちが一斉に放つ雪の群れを、範はその背に誰かを乗せているかのような安定さを維持したまま、軽やかに躱す。
 災害に非ず。障害に非ず。
 黒麒麟の進む道を阻む強い、意志を感じられない範。
 ――ああ、精霊達が優しいというのはようく分かった。
 考え方が戦いに向いていないのだ。全く敵意の無い攻撃。
 子供のようで、遊ぶように魔法を扱う。
 止められない魔力の爆ぜる先を、操る事が出来ても――それだけだ。
「遊びか。どれ、わしの脚を止めるが早いか。おぬしらを止めるが勝負といくか」
 くるりと麻雀牌に描かれた絵を雪兎達に見せて、素早く"招来"と呟く。
「使う力を止められぬのなら、望まぬままに朽ちるだけ。ではわしは容赦なく眠りの向こうへ誘おう」
 使令法:豹貓(バオマオ)。
 麻雀牌を利用して、喚び出す98ものベンガルヤマネコの群れが脚が触れる雪に多少嫌な顔をしながらすっ飛んでいく。
 狙いは全ての個体が各雪兎の精霊"スノーラビット"へだ。
『わ、わ。はやあい!』
『わわ、ころんじゃうよ!』
 襲いかかった豹貓が、精霊たちを雪でふかふかな足元へ押し倒し体の上に座り込む。
 3,4匹の豹貓に乗られたら、普通の人間ならばもふもふの誘惑に負けて起き上がることさえやめてしまう。
 だが――豹貓は普通の猫でもない。
 くわああ、と欠伸を漏らす度、触れている"存在"にも眠気を移してくるのだ。
「お主らの氷や雪は、作戦の一つとして戦闘には使えるものだろう。だが――」
 睡魔属性を直接大量に浴びて、とろんと眠そうな顔をする精霊たち。
「戦いには向いておらぬ。道具としてしか、向いておらぬのだ。おぬしらは戦いたいわけではないと聞いた――ならばわしから贈るモノはひとつとなる」
 辛い、怖い、楽しい。それからそれから。
 否。どの感情で胸の内を溢れさせなくてよいのだ。
「"思い出"まではおぬしらを裏切らぬ。せめて眠るように"戻る"といい」
 自身らが発生させた大量の雪の中で、"主との再会"を胸に抱きながら。
 還るではなく、居たい場所へ戻るべきだと年の功から諭すのだ。
『わあ……おじいちゃん、やさしいね……』
『わたしたちの、あのひとみたい……』
 意識がすっかり眠りの向こうに落ちた個体の姿が雪兎姿に変わって――それから見えなくなっていく。
 範は寝言の中で確かに聞いたのだ。
 "ありがとう。わたしたちにやさしくしてくれて"。
 知らない誰かの温もりに触れた最期の言葉は、溶けてこの場所から居なくなってしまっても。
 大好きだった術士の元まで、彼女たち精霊を導くことだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『魔鬼士』

POW   :    災魔の邪眼
【敵の攻撃を見切った鋭い突き】【敵の回避を見切った力強い振り下ろし】【敵の反撃を見切った荒々しい薙ぎ払い】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    災魔の鎧躰
全身を【流れる災魔の血を活性化させ、禍々しい闘気】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃への高い耐性を得る。また、戦闘時間】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    侵略蔵書「大魔王の侵略」
自身の装備武器に【侵略蔵書から溢れる大魔王への恐怖】を搭載し、破壊力を増加する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は九頭竜・聖です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幹部猟書家"魔鬼士"

 ほのぼのとした幻の冬の時間はとても儚い。
 じわじわと熱量に負けて、降り注いだ雪も。溶けてすぐに凍らされた氷もどれもこれもが水へと変わっていく。
 涼めた時間は僅か。むしろ、凍えるほど寒かった、と思った住人も少なくない。
「何故、何故――戦わぬ!」
 全ての雪兎の妖精が沈黙し、静観していた男はついに痺れを切らした。
 見事な戦いが見れると思った。
 実力を実力で叩き伏せる、強者の戦いが此処に起こると想像していた。
「……災魔相手に戦う価値を見いださぬというのか?」
 笑止。笑止だ!なんと温い。
「必要な衝突を退けたことへ安堵するならば、――ならば正しく武器を持て。命を燃やせ。俺はこの地で最悪最強の嵐となろう!」
 戦士の成れの果て。もはや今更受け取る名誉もない。
 訪れし強者たちよ、雪兎とは比べ物にならない敵の存在を感じるがいい。
「――"優しさ"が強い等という精神論が!あってたまるか!!」
 男はなんだか暑苦しい気配を余計に熱く怒号として吐き出す。
「武は武で、雌雄を決するもの。この島はそういう場所だ!」
 脳ある鷹であるならば、得意な手法を示すべき場所は此処だ。
「誰からでも良い。掛かってこい。俺は優しさで退かぬ、敵対しないというのならばこの島から破壊の限りを尽し、殺してやろう!」
 侵略蔵書を手に、男は大きな槍を敵対者全てに向ける――。
灰神楽・綾
【不死蝶】
おやおや、血気盛んなのが出てきたねぇ
戦いが好き? 奇遇だね、俺もだよ
もはや自分のものか相手のものか分からない程の
血みどろの殺し合いは特に心躍るよね

でもそれは、相手もその気になって初めて成立する
あの精霊たちは戦いなんて望んでいなかった
そんな子たちに刃を向けるのは戦いではなく
ただの暴虐、蹂躙、いじめさ

でもお前なら心置きなく殺し合いに興じられそうだ

Emperorを構え、焔と共に敵へと突撃
勿論そんな単純な攻撃で仕留められるとは思っていない
今は敵を引きつけ時間を稼ぐ時
一撃一撃が重いけど武器受けや激痛耐性で凌ぐ

梓たちが隙を作ってくれたらUC発動
極限まで高めた渾身の一撃を喰らわせ後方へと吹き飛ばす


乱獅子・梓
【不死蝶】
ハッ、災魔と俺たちの戦いを高みの見物して
「強い大魔王様」のような気分でも味わいたかったのか?
目論見が外れて残念なこったな

焔を成竜に変身させ、綾と共に敵へと突撃
上空から体当たりやブレス攻撃を仕掛ける

焔と綾が敵の気を引いている間に
仔竜の零が低空飛行しながら敵のもとへこっそりと接近
焔が上空から攻撃していたのは零の接近に気付かれないようにする為だ
射程圏内に入ったら氷のブレス攻撃を浴びせ、UC発動!

綾と焔しか居ないと思っていたか?
俺には小さくても頼もしい仲間がまだいるんだ
独りで強さを追い求めてきたお前にはピンと来ないかもな

ほんの少しでも敵の動きを抑え込めれば
あとは綾が仕留めてくれるはずだ



●単騎より双騎

「おやおや、血気盛んなのが堂々と出てきたものだね」
 じわじわと雪が溶けていく様子を足元に感じながら、灰神楽・綾は敵対者を視界に写し込む。
 実に騒がしい存在だ。だが、強敵を前にした戦士としてならば、その行動は相応しいものだろうとも綾は思う。
『戦え、命を掛けて……!』
 ガッと禍々しい槍で地面を穿つのは、苛立つ様相。
 戦うつもりがあろうとなかろうと、魔鬼士には意味を見出す気がないらしい。
「ああ成程?そこまで戦いが好きなんだ?奇遇だね、俺もだよ」
 好戦的。決して悪い事ではない。
 ああ、だって――それは都合が良いことだ。
「みはや自分のものか相手のものか分からない程の血みどろの殺し合いはさあ、特に心躍るよね」
『ほおう?』
 侵略蔵書のページを捲り"大魔王の恐怖"の文字列をすくい上げて、槍の強化に力ある言葉を貼り付ける。

 猟兵が見て取れた文字列。アルダワ魔法学園、"大魔王"より"災魔"は発生するという話さえある。
 つまり元凶の力。
 大魔王がかつて晒したという大魔王第二形態『レオ・レガリス』。
 獅子がごとき王者の暴力属性が、組み込まれる。
 禍々しい獅子が如き赤黒いオーラが吼え叫ぶような、威圧感。
『――ォオオオ!!』

「血気盛んなのは良いことだけど一人で盛り上がるのはどうなのかなあ」
 表情を変えることはないが、内心は苦笑が漏れる綾。
 敵を映す瞳には戦闘狂の姿がよく映えた。
 獣ならば、此処にも居るぞ。
「相手もその気になって初めて成立するって思うんだよ――統率の不得意そうなお前には、何が視えていたんだか」
 貫き抉らんとする槍を、騎士は踏み込みの鋭さで猟兵の体を狙う。
 一度でも臆せば、五体満足では返さぬと、男の武術の冴えはぐんと上がっていて。
 槍を躱す、綾と乱獅子・梓に合わせ抉り取られた穴がそこら中に点在した。
 ――立ち回りにも超気にかけて、武を示すようにいうのか……!
「ハッ、災魔と俺たちの戦いを高みの見物して"強い大魔王様"のような気分でも味わいたかったのか?」
 睥睨し、望んだ結末が示されるのを期待して。
「あの精霊たちは戦いなんて望んでいなかったっていうのに。人選ミス、っていうんじゃない?」
 畳み掛ける問題指摘。
 男二人を相手にして、攻撃をひらりひらりと雪兎の精霊のように身軽に躱されては魔鬼士の怒りは際限なく吐き出される。
『それがなにか?敵対せずして戦いは起きず。きっかけなくして全力の敵意は向けぬだろう!』
 か弱い災魔が発生するなら、魔鬼士はそれでもよかった。
 戦い滅ぼす者を品定めする為、手駒として使えればそれで"レガリス"の属性――他の災魔を統率する力があるだけでどうとでもなると考えていたのである。
「分かってないねお前。ああいう子たちに刃を向けるのは戦いでなくてね」
 ただの暴虐、蹂躙――オブリビオンがやるような事に染まる。
 一方的なイジメだ。誰が好んで、行うものだろう。
「――でもお前なら、心置きなく殺し合いに興じてあげてもいいよ」
「全体的に、目論見が外れて残念なこったな」
 愛用のハルバードEmperorを携えて、言うが早いか綾が駆け出す。
 一時的に成竜姿となった焔が後を追いかけて、人懐っこい小竜が勢いよくブレス攻撃を投げかけた。
 挨拶代わり、には熱すぎる一撃。
 激しい炎を吐き出し、炎の中に突っ込んでそのまま体当たりを食らわすのだから人類とはやることが違った。
『ぐッ……!』
 重量級な体当たりをくらい、蹌踉めいたところを足元狙いで綾が薙ぐ。
 ハルバードが抉る一撃を与えると想いきや、槍を地面に突き刺し鎧の戦士に躱される。アクロバットな回避から、重い蹴りが飛んでくるのを風の音を耳に聞きながらギリギリで躱した。
 これらは勿論、単純な攻撃の連鎖でしかない。
 一撃一撃の敵の攻撃にキレがあり、首や胴。
 断たれては致命傷を負う箇所を、的確に壊そうとしてくるのだから魔鬼士のこれまでの戦闘というのは興味深い。
 狂うために戦士になったのか。
 命のやり取りに身を窶す為に、実力を付けたのか――わからなくなるほど。
 ――今はそれでいいんだよ。
 ――仕留められるとは思っていないから。
 敵を焔と共に引き付けて、"時間を稼ぐ"に留まる行動。
 身を抉るような敵意同士の斬り付けあいを見ながらも、梓は小竜姿の零を低空飛行させて飛ばしていた。焔が始終上空から攻撃しているのは、ド派手な火炎攻撃に紛れ、零の姿を隠すため。
「……そこだ、――氷の鎖に囚われろ!」
 焔と綾がタイミングよく離れた瞬間を狙った、零の氷のブレス攻撃が敵の背後を取った。浴びせかけられた絶対零度がただの冷気であるはずは無く――。
『……!』
 槍に纏わせた文字列が凍てつき、崩れ落ちていく。
 意味のない言葉と成り果てて、封じられる。
「貫通力の底上げはそこまでだ、綾と焔しか居ないと思っていたか?」
 攻撃の強化が封じられ、振り向きざまに戦士は梓の顔を見た。
「俺には小さくても頼もしい仲間がまだいるんだ。独りで強さを追い求めて来たお前にはピンと来ないかも知れないかもな」
『仲間など――己の力だけで十分だろう!』
「そうだね、そうかもね。でも、楽しい殺し合いの時間も、もうすぐおしまい」
 自分の力を過信していないのは、十分わかるけれど。
 自分のためだけの孤軍奮闘を、行っているのも分かるけれど。
「ねえ、槍で貫き穿つよりちゃんと――斬り合おうよ」
 己のヴァンパイアの血を一時的に強く働きかけて、赤に染まる魔鬼士の姿が想像できて口元をぺろりと舐める。表情が多く見える相手ではないが、鎧を赤に染めて沈めるなど愉快な話ではないか。
「ああでもごめん、俺は斬り伏せるけどね」
 極限まで高めた渾身の一撃を、魔神の如き速度で腹へと差し込み勢いをそのままに、乱暴に後方へ吹き飛ばした――!
 流血がぽたぽたと、水たまりを赤く染める。
「正々堂々ふっ飛ばされて、文句がある方が興ざめってもんだけどな」
 ――右も左も空も背後も、どこか一つしか見ていられないのか?
 良い意味で、戦闘を深く愉しんでいる存在なのはわかったが――梓の得た結論はやはり、"あれは残念な存在だ"という点に落ち着いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
 サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



●刃とは

「戦う力ばかりが、必要な場面というのはそう多くありませんよ」
 徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)が言えば重みが違う。
 サムライエンパイアの将軍。立場というものがある。
 戦う理由も、武器を振るう理由さえも。
「そうして伏している事があなたの"強さ"ですか?」
 千子村正権現に手をかけ、しかしまだ抜かない。
 倒れ込んだ魔鬼士に意志を問うのだ。
 戦う意欲が失せぬなら、直ぐに立て。
 意欲が削がれたのなら、その首を島の平和のために落とさんとすり為に。
『違う……!』
 瓦礫に埋もれた体を起こし、体に積もった砂利や木片に目もくれず。
『その余裕、実に腹立たしい!!――崩してくれよう!』
 侵略蔵書から溢れる大魔王への恐怖――"レオ・レガリス"のような王たる脅威を身に纏い。
 獅子が如く、大地を蹴って家光へと向けられるのは禍々しいオーラを纏った槍の先端。
 悪魔のような速度で接近するそれを家光は抜刀し、直撃を躱し大きく後ろに飛び退いた。
 敵対心の炎は健在のようで、優しさを由来とした雰囲気を弱さと男は断ずる。
『お前は斃す価値がある!殺すぞ、気を抜くな!』
 吼えるように大声を散らし、決闘に割り込むなと存在感を顕にマジックナイト達へと牽制を加えていく。
 勝負ごとに手を出すのならば、魔鬼士は殺害することに容赦などしないだろう。
 自身に大魔王への恐怖の一端"アンティーカ"の属性をも加え、全て地に沈めんとしかねない者だ。
「斬り結び斬り殺す、ような槍とは見えませんが……まあ良いでしょう」
 剣豪相手に、武器の強さ一つで挑まない貴方の攻撃方は策略を案じたものではない。言葉をかわしてみれば我を忘れるほど狂気を持っているでも白痴というわけでもなかった。猟書家幹部を名乗るだけあって――観察眼は冷静そのものだ。
 煽り、敵対させて攻撃の戦術を披露させようとしているのである。
「力技で刀を折られては堪りませんので――貴方には相応な"刃"を」
 剣術だけが全てでは有りませんしね。
 家光が選ぶ戦術は、召喚。
「さあ引き剥がせ、神話の獣!」
 その数はおおよそ100。神州因幡白兎殺に喚ばれ、沸き立つ。
 身に纏う漣が如き偃月牙。回転式刃を持つ、空走牙神。
 別の世界の言葉で鮫というが、鮫魔術士が使うような改造された存在ではない事が決定的な違いだろう。
 純正の牙の群れが魔鬼士に鋭い勢いで襲いかかる。
 それはもう鮫粒の大雨、と表現するのが良いだろう。
『生物兵器!?』
「そうともいいますが、攻め立てられて防ぎきれないのは"強い"という証明にはなりませんね」
 鮫雨に紛れ込み、構えを低く家光は白揃えを棚引かせ、煌めくサムライブレイドの一閃で鋭い疵を追わせて見せた。
 砕かれる鎧の隙間を、堂々正面から斬って削ぐ。
『ぐっ……!!』
「仰け反りましたね、踏ん張るなら此処を耐え抜くことです。踏ん張らないなら早く降伏し――その首を敗者として差し出してはいかがでしょうか。
 過去から沸き今で暴れる災魔としての行動は此処までということでいかがですか?
 静かな家光の瞳は見定めるモノの重さがあった。
 潔く暴れるのを諦め、骸の海へと帰還するのがいいでしょう。
 手傷を深く負ったとしてそう単純に終わらないのが――戦いというものだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

厳・範
お爺、何か一言いわねば気が済まぬ模様。

わしは麒麟でな。元の性質上、本来は戦いを好まぬのよ(お爺はどっかにいってるが)
彼女たちもそうであった。だから、ああしたのだ。

だがな、戦う必要があるとき、ある一つの武器を用いて戦うのも、また麒麟なり。

【声焔】を。この焔は彼女たちには熱すぎたが…貴様にならいいだろう。
どうやって鳴き声を見切るというのだ?
そして、麒麟の本気速度についてこられるのか、貴様は。
というか、そもそも見切りは一種の未来予測。八卦衣(現在手綱になってる)で見切りもうまく働かぬだろう?

血湧き、肉踊る戦いというものは、両者が望みて出来上がるものぞ。
隙があったら、前脚後ろ脚…とにかく、脚で蹴る。



●鬼如きが瑞獣に触れられるものか

「どれ。こちらを見よ、お若いの」
 隙を虎視眈々と狙うには、あまりに無防備に過ぎた戦闘方法。
 魔鬼士の戦闘は、お爺の目にはただただ若き小僧のそれに映った。
 故にそう呼称した。ただし武術だけはそれなりの純度を持って鍛え上げられたものであると理解もした。
 だからこそ、小童ではなく、若き者と。
 戦術を扱うに相応しい見かけ年齢を考慮して呼ぶに至った厳・範。
 声を掛けて注目を集め、敵対心をこれでもかと吊り上げる。
「倒れ伏するならば止めはせぬが、――わしは麒麟でな。元の性質上、本来は戦いを好まぬのよ」
 正々堂々戦えと。男の宣言は聞こえていた。
 強さを求める聲。封神武侠界にも挙がる、聲によく似た響き。
 しかし違う事は"殺す"が前提であること。
 災魔であり、猟書家幹部という立場を得た災魔には相手と切磋琢磨という言葉は存在しないらしい。
 血気盛んな方のこの瑞獣。ニィと一度だけ口角を釣り上げて、金の瞳を細める。
「己が喚び戦いに差し向けた"彼女(どうぐ)"たちもそうであった。だから、ああしたのだ」
 戦いとは血風の中だけに存在するものに非ず。
 戦いとは悪戯に精神を摩耗するだけのものに非ず。
 磨き挙げるべきは、――己が"事を成す"ために必要なぶんの証明。
『慈悲の念が兎を殺したのだ。真綿で締めるように』
「ほう。そのように映るか、貴様の驕った目には」
 ぎらりと、頭部を覆う敵の視線に殺意が宿るのを獣が性質が敏感に感じ取る。
 僅かに感じる視線の色は赤。災魔の邪悪に染まりきった呪詛の眼だ。
『それは力でも武術のそれでもない!俺の求める、鎬の削り合いではない!』
「はあ……戦う必要があるとき、ああする場面もあるものだがのう。どうにも視野が狭いようだ、――その幻獣を齧られたような装備では、見えるものも見えぬだろう」
 兜に対する指摘を一つ。
 魔鬼士が持つは槍と本、それからこれまでの経験(磨かれた実力)。それだけで切り抜けてきただけに、置き去りにしてきたモノの全てを見落としている。
「戦う必要があるとき示すのが実力と知れ。ある一つの武器を用いて戦うのも、また麒麟なり」
 静かに整えるように吐き出す息。
「さあ、わしが瑞獣たる意味を訊け!」
 声焔。黒い炎が燃えるように湧き上がる――いや違う。灰の頭髪が黎の鬣へと変じたのであり。
 見事な四足が黒麒麟が、蹄を鳴らし、槍が一撃より早く嘶くように声を張る。
『そんなもの、尋ねてどうなる。心の臓の位置をわかりづらくしただけだろう!』
「"爺"より硬い頭を持っているようだ、ほんに……解らぬ奴だな、周囲をよく見よと何度言わせる気だ!」
 災魔の瞳は――ゴゴウと燃える音を聞く。
 残雪を水に変える、熱量を含んだ炎に囲まれていた。
『……いつの間に』
 全ては鳴き声により巻かれた炎だ、声を聞かぬならそれでもいい。
 だが周囲に目をくれぬならば、丸焼けになる。鎧甲冑、そんな物に身を包んでいたら焼肉になるのが早いだろう。
「この焔は彼女たちには熱すぎたが……貴様にならいいだろう。さて、どうやって鳴き声を見切るというのだ?」
 ――既に見切り損なっているな、お若いの。
 金の眼を細め、黒麒麟は戦略の浅い部分を"聲"に乗せて指摘する。
『見切れぬならば、その胴をただ貫く事に赴きを置くだけのこと!』
 ユーベルコードを使用しようにも、声への見切り技等これまで披露したことがない。突撃槍を持ってして、獣狩へと戦士は挑む。瑞獣を討つ、それはそれで――経験したことのない、良い機会だ。
「浅はかだな……、麒麟の本気速度の疾駆についてこれるのか、貴様は」
 風を切り、軽やかに駆ける麒麟に槍の先が当たるとでも?
 瑞獣にして仙人、経験の多さはお爺に軍配が上がり、心の臓を破壊せんとする攻撃は尾にすら当たることは叶わなかった。
「長きを生きる武侠としてアドバイスをしよう」
『……何を、だッ…………!』
「見切りとは、一種の未来予測の術。誤作動させる敵対者相手に仕掛ける戦術ではないのだ」
 手綱化している、八卦衣が発揮する空間に作用する撹乱。
 想像した結果を"成功するはずのない"未来へ着地させる。
「そら、わしの声を耳が捕えている限り――」
 ――体ごと豪と燃えているというに、痛みの悲鳴もあげぬか。
「"鬼"ごっこは終わらぬし、遊びでしかない。血湧き、肉踊る戦いというものは」
 魔鬼士の背後に背面の黒麒麟が立った。お互いが背中合わせ、風と成って駆ける麒麟がどこにいるかを補足されるより早く。
「両者が望みて出来上がるものぞ。わしは特に望んではおらぬ、つまりこれは」
 "命を削る戦いではない"。
 なにか一言を言わねば気がすまぬ爺の言葉はどう届く?いや、恐らくは届くまい。
 反論を聞いたところで面白い返答は返らないだろう。
 そんな勢いの、後ろ脚での激しい蹴りが戦士を無様に張り倒すのだ。ただの馬よりも慈悲のある、麒麟の後ろ蹴りを喰らって焔の波の中に顔面から突っ込んだ模様。
 大人しく炙られて、何が悪く何が足らずか学ぶがいい。
 ――わし、この程度で授業料は、取らぬでな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クレア・フォースフェンサー
より強き者と戦うことで自らを高める――。
その考えは分からぬではないが、戦うことそのものが目的になっておるようにも見えるのう。

正面から戦って倒した場合、あやつは戦い自体に満足して死にゆくやもしれぬ。
戦いを望まぬ者をけし掛ける様な輩にそのような最期をくれてやる訳にはゆかぬな。
あやつには、己が力を何ら発揮できぬ戦いをくれてやろうぞ。

UCの力を込めた光剣を構えて接近。
こちらの攻撃を見切って躱す瞬間に刀身を伸ばし、敵のUCの源となる核を破壊しよう。

さて、邪眼も闘気も侵略蔵書も無しじゃ。
己が磨いた剣技だけの勝負とゆこうではないか。

もっとも。
おぬしがこの剣の間合いを掻い潜ることができればの話じゃがな。



●真っ向勝負の強さ

「強さとは、それこそ人によるものとは思わぬか」
 クレア・フォースフェンサー(UDCのエージェント・f09175)が得て来た経験は見た目に収まらない人間離れした力だ。
 ナノマシンで構成されている、等と見た目だけで判断できまい。
「より強き者と戦うことで自らを高める――まあわしも、その考えはわからぬではないが」
 喉を鳴らして笑うクレアに魔鬼士から返る言葉は訝しむ音を孕んだ。
『お前は相当の強者と見た。では、その考えとやらを聞かせて貰おう』
 敗戦を重ね、実力に撒かれ致命的な攻撃を誰にも与える事が出来ていない戦士へ送る言葉。
 それはクレアが与える刃の初撃によく似ていた。
「強者の首を捕る。戦うことそのものが目的になっているようにも見えるのう」
 実力を高め、斃し、己が目標へと突き進むだけの災魔。
 もはや戦士とは呼べまい。何かを守るわけではない。
『それが何だ。俺は成れの果て既に誰でもないのだ、還ってきた世界で再び力を蓄え、奮って何が悪い!』
「……っ、悪い事はないがのう?」
 自分という悪の気配を察知して強者を引き寄せるために精霊を手駒に使った男だ。
 本来は武術に長けた島で、一般的なマジックナイト相手に戦闘経験を貪り喰らうつもりだったのだろう。
 もし武道大会で優秀な成績を遺した"歴代優勝者"が現れれば。
 心躍る戦いが出来ると淡い希望を夢に見て。現実はこの通り。何処かで過去となった男が未来に夢見る通りにならない。
『悪いことではない。そうだ、これこそが今の俺の正義感!武器を取れ、武器を構え、俺を殺せ』
 さもなければ殺すぞ。殺気混ざりの禍々しいオーラが男から立ち上る。
 巨大な魔槍を強く握り、クレアが堂々たる戦術を繰り出すのを期待しているようでもある。
 ――強き者より戦術を学び、自身に活かそうとする。
 ――その姿勢は、良きものであるとは思うが……。
 クレアは考える。
 敵対する武器を構える動作からも見て取れる"正面から来い"という、逃げも隠れも許さない殺意のオーラ。
 ――斃す手段は幾つか思いつくが。
 正面から戦って倒した場合を考える。
 ――あやつは戦い自体に満足して死にゆくかもしれぬ。
 望み通り死線を掻い潜るならば。
 それなりに死ぬ事を受け入れるだろうが……。
 ――戦いを望まぬ者をけし掛ける様な輩にそのような最期をくれてやる和えにはゆかぬな。
 既に消え去った雪の精霊たちに理不尽を強いて、自分は望み通りの終焉を享受する。傍若無人とはこのことだ。
 ――あやつには過ぎた結末に過ぎるのう。
「己が力を何ら発揮できぬ戦いで、死をくれてやろうぞ」
 ――そも、わしに攻撃を見切る前提で攻撃を受けようとする姿勢が気に入らん。
 手は光剣を掴む。クレアの戦術を観察する邪眼がギラリと赤に光るだ。
 出方を伺う様がどうにも見て取れる――やられてから殺しの計画を立てようというのだ、あれは。
『さあ、見せてみろ』
「わしの剣術を避ける?ではやってみることじゃ」
 横薙ぎのように振るわれる剣の射程は、魔鬼士に届くかどうか――男は目測から判断し、一歩分飛び退く選択をする。
『その程度か!!』
「たわけ。剣を振るうだけが、技ではない!」
 振るった刃を躱したと男は思っただろう――しかし、瞬間的に伸びた刀身が見切った現実を断ち切るのである。
 見切れてなどいない。躱せてなどいない。
 腹を裂き、抉るようにして災魔の戦術を打ち崩す!
「剣が伸びぬと誰が決めた?残念じゃったのう」
 打ち砕かれる腹部の鎧は既に防具としての役目は果たしそうにない。
 他の猟兵にやられていた傷が大きく開き、血飛沫を派手に散らして。
 それでもざぁああと砂を踏み、男はその場に踏みとどまる。
『……残念?いや、その戦術は大いに面白い!』
「そうか、面白いなら良いが、正々堂々とは戦ってやらぬのでなぁ!!」
 クレアが斬ったもの。
 遮蔽無視の一撃であり、ただの斬り裂き攻撃ではない。
『だが、お前は何をした?』
「わしが斬ったのはユーベルコードを獲得した"経験"そのものじゃ」
 邪眼が発動して見切ることは出来ない。災魔としての闘気を活性化することも。慌てて捲る侵略蔵書の文字すら、魔鬼士には読み解けなかった。
 経験を断たれ、磨き上げてきた生前持っていた剣技だけが残されたのである。
『俺との一騎打ちに、ユーベルコードはいらないと?』
「己が磨いた剣技だけの勝負とゆこうではないか」
 ――その方が面白いじゃろ。
『上等だァ!!お望み通り、刺し殺してやろるからなァ!!』
 体の崩壊という破滅の道を歩きながら、戦いをやめようとしない戦士は強く土を踏み単体で行う渾身のランスチャージで踏み込んでくる。
「その刃が、わしに届くならよいがなあ……ッ!」
 まるで鞭でも振るうように、光の速度で伸びる刃が。
 正真正銘、純粋な剣技が戦士の腹を真っ二つに断つ。
「尤も、おぬしがこの剣の間合いを掻い潜るなど始めから出来はしないんじゃがな」
 手負いの戦士に押されるほど、冴えぬ剣技を持ち得ないクレア。
 相手は人型をしたオブリビオンだ。上と下の境目の"胴"をバッサリと断たれてはどうあっても絶える命運に流されていくだけ。幻の粉雪のように散りゆく男は、言葉通り"水のように"存在感を消していく。
 断末魔さえ上げる時間は無くぼとりと落ちた侵略蔵書が精霊が溶けた水の中に沈み、刻まれた経験の文字列が滲んで読めなくなっていく。
「おぬしがすべきだったのは、常に正攻法の戦いであるべきだったのう」
 災魔の卵を使った男の命が途絶えたならば。
 卵も活動をやめるだけ。ほうら空を見上げてみるといい。

 男の願いは叶うことはなかったが。
 この場を去った雪兎の精霊が精一杯の置き土産をしていったようだ。

 見上げると、空には――大きな虹が掛かっている。
 ギラギラ輝く真夏に近づくの太陽の中で何故か不思議の雪を、キラキラと宝石の粒のように降らしながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月16日


挿絵イラスト