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先駆けは贖罪か、エースの孤影

#クロムキャバリア #ACE戦記 #八咫神国

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●残響のエース
 これが遺伝子の見せる夢であると理解している。
 きっと己がクローンであるからだろうという理解はあれど、この記憶に己が従っているわけではないと『アイン・ラーズグリーズ』は知っている。
「あの空の向こう側を知っているか、アイン」
 フュンフ・エイルが云う。
「『殲禍炎剣(ホーリー・グレイル)』だろう。知っているよ。そんなことくらいは」
 何を今更と思う。

 あれがあるかぎり人は空を飛ぶことはできない。いや、厳密に言えば、高速飛翔体はなんであれ撃ち落としてしまうというだけだから、飛行船やある程度の高度を律すれば飛ぶことは可能だ。
「いいや、自由だよ。今は蓋をされているが。けれど、いつか必ず空を飛びたいな。気兼ねなく、何のしがらみもなく」
「そのまえに今は『バンブーク第二帝国』だろうがよ。『サスナー第一帝国』のあとを受け継ぐなんて輩が未だにいるとは思わなかった」
 己ではないアインの言葉が耳に響く。
 悪い冗談だ、と思った。『松(サスナー)』と来て今度は『竹(バンブーク)』なんて、どうかしいるネーミングセンスだと笑ったのだ。

「言ってくれるなよ。そんな事を言ったら次は『梅(シーヴァ)』が来てしまう」
 フュンフ・エイルが真顔で言う。
 冗談だよ、と告げた言葉は遠い未来に現実に為る。わかっていたのだろうか。

「――いつか、あの空を飛びたい。そんな日が来たのなら、戦争も何も関係なくなる。いまはそんなことばかり夢見てしまうんだ」
 フュンフ・エイルの言葉が嫌に耳にこびりついたのを、例えこれが遺伝子の見せる己ではない誰かのものであっても、『アイン・ラーズグリーズ』はきっと忘れないだろう――。

●はじまり
『セラフィム・リッパー』一号機が強奪事件。
 それは『グリプ5』においては『アイン・ラーズグリーズ』のスパイ行為の結果として語られるものである。
 結果として『セラフィム・リッパー』一号機は強奪され、二号機は小破。組み立て途中であった三号機は無事であったが、離反した『アイン・ラーズグリーズ』を追撃した『ドライ・ラーズグリーズ』と『フィーア・ラーズグリーズ』の駆る複座型キャバリアは返り討ちにあい、パイロットと機体は喪われている。

 上層部はこれを秘匿事項として以後、『アイン・ラーズグリーズ』を裏切り者として断定。
 今もなお、彼女の行方を追っている。

●殲禍炎剣
「『殲禍炎剣』の破壊は、遥か昔から人類の頭上に在って、自由という空を塞いできたものだ。だが、遂にその支配も終る。私達人類は真に自由な空を取り戻すのだ」
 ついに此処まで来たのだと『アイン・ラーズグリーズ』は胸に抱いた目的を成就させるために『八咫神国』の中心にて宣言する。
 本来、彼女は『グリプ5』を裏切り、その友好国である『八咫神国』にとっては身柄の引き渡しをしなければならない存在である。

 だが、彼女はあらゆる手段を持って、『八咫神国』の上層部を黙らせてきた。
 彼女の存在は『八咫神国』にとっても扱うことができないほどにじゃじゃ馬であったのだろう。
「何も案ずることはない。如何に暴走衛星『殲禍炎剣』の砲撃が強力であっても、こちらには強力なジャミング装置がある。これで私達は空を取り戻すだろう」
 彼女の背後にずらりと居並ぶ機動殲龍『空翔』が翼を広げる。
 その光景に民衆は熱狂し、声をあげる。これまで空を『殲禍炎剣』によって抑えられていたからこそ、人々は他の小国家と通信することもできず、仮初の友好と裏切りによって戦争状態へと陥っていたのだ。

 そう、『殲禍炎剣』さえなければ、戦争は終る。
 そして、空を取り戻せば他国とのやり取りも頻繁に行える。そうなれば、プラントの奪い合いも必要なくなるのだ。
 熱狂的な民衆たちに手を上げ応えたアインは、その場を後にする。
 自身もまたキャバリアで、『殲禍炎剣』を破壊するミッションに打ってでなければならない。
 そんな彼女の背後から声が投げかけられる。甘やかで、そして何処にでも存在していそうな希薄な声であった。まるで影が言葉を発したかのようにさえ感じてしまう。
「――でも大丈夫かい。そんなことをしてしまって。この国は『殲禍炎剣』さえ存在しなければ、他の小国家を圧倒する航空戦力を保有している。そんな国を、他の国が座して待つことなんてするかな?」
 今のうちに手を打たないといけないのではないかな? と影の声が微笑んだ気配がした。

「いらねぇよ。あんたの手なんざな。また『あの時』のようなことがあっては困るんだよ。だから、あんたの用意したマシンは必要ねぇ。わかってんだろうが。私にとってキャバリアはただの道具だ。どんなものであっても手足のように動かしてみせるさ」
 アインは信用していない、この声の主のことを。
 ただ利害が一致したから一時手を組んだのだ。
 そう、彼女は信じない。自分の力以外は。
「そうかい。それは残念だ。せっかく良い機体を用意したのに。君ならば使いこなせると思ったんだが……」
「必要無い。アンタも、その用意した機体とやらももうじき用済みに為る。空を取り戻してな」
「なるほど。ならば、武運を祈っておこう――」
 最後に影の声が笑った。
 それは、悪意に満ちた笑みであったが、そのことに誰も気がつくことはできなかった。そう、アインでさえも、そのおぞましき深淵を看破することはできなかったのである―――。

●希望
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア、以前『グリプ5』が疲弊した際に救援を送ってくれた『八咫神国』が『殲禍炎剣』の砲撃によって焦土と化す光景を、私は見たのです」
 それは彼女が予知した光景であった。
『八咫神国』において、一際強いカリスマを持った軍人『アイン・ラーズグリーズ』が『殲禍炎剣』を破壊せしめる『新兵器』でもって『殲禍炎剣攻撃作戦』を取ろうとしているのだ。

 これを行ったが最後である。
『新兵器』はまるで役に立たず、反撃の砲撃に寄って国そのものが滅びてしまう。
「アインさんは、それを知らないのです。できると信じていた『新兵器』こそが、おそらくオブリビオンマシンの影に隠れる何者かの手引なのでしょう」
 さらに悪いことにオブリビオンマシンにアインが乗り込んでしまったことによって、事態は悪化してしまっている。
 何がなんでも作戦を決行しようとするだろう。

「皆さんには、この『希望の軍』ともいうべきアインさんと同調したキャバリア乗りたちの戦力を殲滅しなければなりません」
 幸いに民衆たちは熱狂に飲み込まれているおかげで潜入することは困難ではない。
『希望の軍』は『八咫神国』にある天文台に陣取っている。夜襲かけ、『新兵器』と彼等のキャバリアを破壊することが今回の目的だ。

「……『殲禍炎剣』を破壊することは未だ可能ではありません。徒に刺激し、国が焦土となっては……」
 元も子もない。
 これを止めるため、民衆の熱狂に冷水をかけるような行いをしなければならないのだ。

 それがどんなに苦々しい行いであるかは言うまでもない。
 けれど、ナイアルテは滅びるよりはと猟兵達に望まぬ戦いを願い、頭を下げるしかなかったのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はクロムキャバリアにおいて『殲禍炎剣』を破壊する作戦を決行しようとし、逆に焦土と化してしまう『八咫神国』の未来を救うシナリオとなっております。

 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。

●第一章
 日常です。
 ターゲットである『殲禍炎剣破壊作戦』を行おうとしている部隊は民衆に支持されていますので、隠れること無く『殲禍炎剣』を観測するための天文台に集結しています。
 時刻は夜であり、奇襲には非常に有利な状況ですが、より成功率を高めるために集まった熱狂的な民衆に紛れて、人々になるべく被害が及ばぬように人々を遠ざけたり、もしくは部隊に装備されている『新兵器』を調べたりと、情報を集めるなど準備を行います。

●第二章
 集団戦です。
 民衆たちの熱狂的な万雷の喝采を受ける『殲禍炎剣破壊作戦』を行うキャバリア部隊である機動殲龍『空翔』との戦いです。
 作戦のため、全てに『新兵器』が搭載されておりますので、今後残ったそれを使って同様の作戦を立てたり、彼等に同調する民衆がでないように徹底的に破壊しましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 主謀者である『アイン・ラーズグリーズ』は残念ながら、オブリビオンマシンと気が付かずにオブリビオンに乗ってしまいます。
『自由な空を取り戻す』という狂気に取り憑かれた彼女の駆るオブリビオンマシンは、言うまでもなく彼女のエース中のエースとしての能力と相まって非常に困難な敵となってしまいます。
 マシンを破壊すれば、機動殲龍『空翔』のパイロットたちと同様に正気に戻すことができます。

 それでは戦乱続く世界、クロムキャバリアにおける皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『光る宇宙』

POW   :    星空を展望する

SPD   :    星空を撮影する

WIZ   :    星空を観測する

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かつて『八咫神国』は『グリプ5』の前身である『憂国学徒兵』と共に『サスナー第一帝国』と『バンブーク第二帝国』へと続く戦争を経験してきた古い小国家である。
 高度と速度に制限があれど空を飛ぶキャバリアを使う彼等にとって『殲禍炎剣』は己たちの頭上に蓋をする忌まわしき存在であった。それは他の小国家と比べれば、殊更根強いものであったことだろう。
 天文台が設置され、暴走衛星である『殲禍炎剣』を監視しているのもまた必然であった。
 そこに『殲禍炎剣』に感知されないという『ジャミング装置』がもたらされれば、『殲禍炎剣』を破壊しようという機運が盛り上がるのも無理なからぬことであった。

 夜だというのに天文台に居並ぶキャバリアを取り囲み、熱狂の渦に包まれている民衆たちがいる。
 彼等も、そしてこの『希望の軍』ともいうべきキャバリアパイロットたちも、それ以上に彼等を率いるカリスマである『アイン・ラーズグリーズ』も理解していなかった。
 その『ジャミング装置』が一切の役に立たない、ただいたずらに『殲禍炎剣』を刺激するためだけの存在であることを。

 猟兵たちが成すことはまず、奇襲を万全なものとすること。
 未だ作戦の決行までは時間がある。それまで星空が人々の熱気を飲み込むままに、情報を集め、または奇襲を有利にするための行動を取らなければならない。
『ジャミング装置』があるかぎり、人々は必ず再び『殲禍炎剣』の破壊を望むだろう。
 それが例え、己たちの破滅の道だとしても。
 抗えぬ自由な空、そして平穏への道をどうしても求めてしまうから。

 それが皮肉なことであっても、長きにわたる戦争に疲れ切った人々にとってはきっと希望なのだから――。
村崎・ゆかり
いよいよ『一番目』のお出ましね。『八咫神国』に潜んでいたとは、ふてぶてしい。

「目立たない」黒鴉の式を打って、「集団戦闘」の知識を元に、キャバリア部隊の布陣や『ジャミング装置』の外観などを密かに調査するわ。
戦力の規模や使用キャバリアの機種なんかも。
天文台の周辺地形の把握しなきゃね。待ち伏せがあるかどうか。
歩哨の巡回コースも把握したい。

偵察はこれくらいでいいか。

あとは「コミュ力」を使いながら民衆に紛れ、新兵器を使う部隊の邪魔になるから天文台から距離をとるように指示があったと、人から人へ伝えていければ。
嘘は言ってないわね。群衆の誘導はアヤメにも担当してもらいましょう。

気持ちのいい夢もいつかは終わる。



 黒鴉召喚(コクアショウカン)によって飛び立ったカラスに似た鳥形の式神が『八咫神国』の空を飛ぶ。
 夜であっても飛ぶカラスに似た式神は普段であれば、人々の目に止まれば怪しまれたことだろう。けれど、今の彼等は違う。
 今や熱狂的な支持と共に迎え入れられたカリスマ軍人……『アイン・ラーズグリーズ』の指揮する部隊に熱中している。

 確かに『殲禍炎剣』が破壊できたのならば、今までできなかったことが可能になる。
 長距離の通信。
 小国家間の交流。
 そして、空を自由に行き来することができる。
 そうなれば、今まで些細な誤解や行き違いから起こっていた戦争も収束していく。言ってみれば、クロムキャバリアに生きる人々にとって『殲禍炎剣破壊』は悲願でもあったのだ。
「見えぬ明日を明るく照らしてくれる篝火があれば、それに集まるのが人ってものよね」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は感覚を共有した式神から送られてくる情報を見定める。

『アイン・ラーズグリーズ』。
 これまで幾度も『グリプ5』周辺の小国家や、それに類する事件に関わりがあると思われてきたキャバリアパイロットの名だ。
 彼女がついに表舞台に出てきたことをゆかりはふてぶてしいと評した。
 これまで数多の事件の影にいた彼女がいよいよお出ましになったのだ。まさか『八咫神国』に潜んでいたとは思わなかったのだ。

 目立たない黒鴉の式神飛ぶ。
 機動殲龍『空翔』は天文台をぐるりと囲むように布陣している。
 天文台は元は『殲禍炎剣』の監視のために作られたものであると言われている。ならばこそ、ここで『殲禍炎剣』の動きを見定め、最適なタイミングで破壊作戦に乗り出そうとしているのは、当然であろう。
「それに人々にわざわざ演説ぶるってことは、民衆を盾にするつもりね……」
『八咫神国』としては、アインの存在を最早無視できない状態にある。
 友好国である『グリプ5』において彼女は指名手配犯だ。そんな彼女を匿っていたという事実は、友好に亀裂を走らせることにもなる。

「同時にこのムーブメント……民衆を扇動するカリスマ性。なるほど、国そのもの根幹がゆるぎかねないってわけね」
 だからこそ、この『希望の軍』ともいうべき存在は小国家を保つためには不穏材料にしかならないのだ。
「目立つように布陣しているのは、別に敵とかそういうものを意識していないからね。歩哨も最低限……なら、奇襲は簡単でしょう」
 偵察を終えたゆかりは、式神のアヤメと共に民衆に紛れ、声をかける。

「これより作戦行動に入る部隊の邪魔になるから天文台から距離を取るようにって言われているの。巻き込まれない内に」
 アヤメと共にゆかりは民衆を誘導していく。
 嘘は言っていない。
 これだけの民衆がいれば、飛び立つ際の衝撃や、万が一のことを考えると『希望の軍』であっても同じことをするだろう。

 それ以上に、ここはこれから戦場に為る。
 自分たちがそれをしなければならないという気負いはあれど、ゆかりはつぶやくのだ。
「気持ちのいい夢もいつかは終る」
 この熱狂的な未来への希望は、偽りのものだ。
 アインがこれをわかっていてやっているわけではなないようだが、それでも彼女がオブリビオンマシンに乗る未来が予知されている以上、これを止めなければならない。
 今もまだ空に跳ぶ『殲禍炎剣』をどうにかすることは、猟兵達でさえ叶わないのだ。

 だが、この国を焦土へと変える未来を防ぐことはできる。
 ゆかりの、その決意だけは揺らぐことのない確かなことであったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
『殲禍炎剣破壊作戦』かぁ…
うん。気持ちはわからなくもない…というか、異世界の空飛んじゃったからね。余計にこの世界の空の向こうをみたくなったよ。
でも、まだその夢は危ういね。絶対いつか殲禍炎剣は破壊するよ。
だから…今はまだ我慢して、お願い。

ボクは『情報収集』だね。
星空を撮影している人たちに紛れて潜入っと。
『リモート・レプリカント』でパールバーティを有効範囲ギリギリの位置から移動させて、周囲の人や部隊の注意を引くよ。
そのどさくさに紛れて施設に潜入したら、『ハッキング』して天文台のネットワークから『新兵器』と装備している『部隊』について調べるね。
『瞬間思考力』で必要な情報を一気に確認して、脱出するわ。



 暴走衛星『殲禍炎剣』の破壊。
 それはクロムキャバリアに生きる人々にとって、まさしく『希望』そのものであったことだろう。
 些細な行き違いで争いが起こるのであれば、人の思惑が瞬時に伝わらぬことこそが錯誤の原因だ。
 円滑なコミュニケーションが取れないからこそ、人は争う。
 いや、例え円滑なコミュニケーションが取れていたとしても、些細なことで仲違いをするのが人という生命であるのならば、『殲禍炎剣』は人と人との行き来を損なう最大の理由であったことだろう。

 その破壊が可能となったという言葉は、人々にとってこれ以上にないくらいの熱狂で持って迎え入れられた。
「うん。気持ちはわからなくもない……」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は異世界の空を知る猟兵である。
 このクロムキャバリア出身であるからこそ、異なる世界の空を飛んだ経験は彼女の心に深く刻み込まれていた。

 何処までも続く水平線。
 果てなどないかのような空。それは自分の遥か頭上にも広がっている。宇宙空間もまた知れば知るほどに、その先を望みたく為る。
 その希求こそが人を進化させてきた最大の要因であろうとさえユーリーは理解する。
「でも、まだその夢は危ういね」
 必ずいつか『殲禍炎剣』は破壊する。だから、今は堪えて欲しいとユーリーは思うのだ。

 必ず失敗すると予知された作戦を持って、国一つを焦土に変えるわけにはいかないのだ。
 熱狂する人々の合間を縫ってユーリーは天文台へと潜入する。
 彼女の脳波によってコントロールされた量産型キャバリアである『パールバーティ』がゆっくりと『希望の軍』に近づく。
 それは彼等を刺激するものであったが、注意をそらすためには必要なことであった。
 熱狂した人びとが『パールバーティ』に殺到する。
「なんだ、これ! 人が乗っていないぞ!」
「無人なのに動くわけ無いだろう! どこかにコントロールしてるやつがいるかもしれない、探せ!」
『希望の軍』のパイロットたちが騒ぎ立てるが、かえって熱狂的な民衆たちが壁となって遅々として『パールバーティ』へと近づくことができないのだ。

 その隙にユーリーは天文台へと潜入せしめ、ネットワークからハッキングし、『新兵器』の情報を引き出す。
 彼女はレプリカントである。
 だからこそ、瞬間的な思考などお手の物である。
「ふむ……ジャミング装置、なんだ。これで『殲禍炎剣』のレーダーをかき乱して、超高度で接近して直接叩く……だから、この『八咫神国』に保有されている飛翔能力を持つキャバリアが必要だったんだ……」
 ユーリーは、この『希望の軍』に配備されているキャバリアが全て飛翔能力を持っていることに合点が行く。

 だが、ジャミング装置が全く役に立たないことを猟兵の予知によって知るユーリーにとっては、これが確かに作戦の失敗の要因であることをしった。
「けど、このジャミング装置……」
 そう、ユーリーはこれまでの戦いで何度か関与した『グリプ5』の内情を知る。
 ジャミング装置。
 それを開発した大本の人間の存在を。
 天文台に残されているネットワークの情報をかき集めるだけかき集める。

 ジャミング装置事態は何世代も前のものだ。
 骨子と成っているジャミング装置は『グリプ5』に存在した幻影装置を元にして発展したものだ。
 開発者の名前は『ドライ・ゲイラヘズ』。
「……何世代も前の発展型……これでどうにかしようっていうのは」
 あまりにも時期尚早すぎる。
 これはまだ『殲禍炎剣』に届かない力だ。ユーリーはそれを知り、天文台から脱出する。

 大まかな情報は得られたが、これが後に『希望の軍』に同調する者たちへの説得材料と為るかどうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
んー気に食わないな
戦火を広げるオブリビオンマシンが自滅戦略?
私みたいに底意地が悪ければ、これを切欠に猟兵と国の分断工作でも仕掛けるけど…
オブリビオンマシンがそこまで考えてるかなあ…

ま、いいや
不相応な夢は覚めさせてやらないとね


民衆に紛れて行動
天文台の周囲の街頭とか灯りを天文台の近くから優先して距離を取り【Code:A.M】をこっそり使用して機能不全にしていこう

あー何か街頭の調子が良くないみたい
ちょっと明るい所まで皆移動してよ

徐々に天文台から人々を遠ざけよう
…最終的に派手にドンパチするんだし天文台も機能不全にしとこう
人の少ない所まで『忍び足』で移動
雷刃で天文台の周囲毎『なぎ払い』機能不全にしよう



 クロムキャバリアにおけるオブリビオンマシンの目的は言うまでもなく戦火の拡大である。 
 戦乱こそがオブリビオンマシンの目的である。 
 だからこそ、今回の『殲禍炎剣』を破壊しようとして逆に小国家が焦土と化すという予知は、月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとって不可解なものであった。
 戦火を拡大させるのが目的であれば、小国家に生きる人びとは生かさず殺さずが鉄則であろう。
 国としての体裁は形骸化しても、戦争状態を維持し続けさせるのが最も長く戦乱を継続させるコツであった。だが、今回の事件で小国家『八咫神国』は滅びるという結果が差し迫っている。

「んー気に食わないな」
 彼女のは自分を底意地が悪いと評した。
 もしも、自分がオブリビオンマシン側であるのならば、これをなんとするか。
 そう、これはきっかけに過ぎないのだ。
 民衆の目に猟兵達は『希望の軍』を打ち破る『絶望』の象徴として映るだろう。理屈ではない。
 どれだけ言葉を尽くしても、『八咫神国』の民衆にはそう印象付けられてしまう。

 そうなってしまえば、『八咫神国』はもう猟兵を頼ることはなくなってしまうだろう。上層部がそうでなくても、国の主体である民衆の信頼を失えばオブリビオンマシンの活動は容易になる。
「けど、オブリビオンマシンがそこまで考えてるかなぁ……」
 ずっと違和感を感じてきているのだ。
『グリプ5』を発端としたオブリビオンマシンの事件。
 その連続性。

『フュンフ・エイル』という名は、かつて『希望』の名であった。
 けれど、玲にとってその名は最早『呪い』の名である。彼女は見てきた。何度も、『フュンフ』という名を持つ存在がオブリビオンマシンによって執拗に窮地に追い込まれてきたのを。
 彼を取り巻く人間関係、周辺の環境、あらゆるものを持って彼の名を『呪い』に変えていく。
「ま、いいや」
 考えるのはやめる。今の彼女がやるべきことはたった一つである。

 熱狂渦巻く『八咫神国』の民衆たちに紛れて、彼女のユーベルコードを発現させる。
 それは特殊な稲妻とウィルスプログラムを込めた雷刃であった。
「蒼雷展開、これぞ機械を殺す蒼き一閃」
 放つは、Code:A.M(コード・アンチマシーン)。
 彼女の生み出した雷刃は、肉体を傷つけるものではなく、電子回路及びに制御プログラムのみを切り裂く一撃であった。
 その一撃は天文台首位の街頭や灯りを機能不全にして、光を奪う。
 そう、彼女の目的は簡単なものであった。民衆は言わば、『希望の軍』にとって生ける壁だ。

 きっと『アイン』はわかっていて民衆の好きなようにさせているのだ。
「あー何か街頭の調子が良くないみたい。ちょっと明るいところまで皆移動してよ」
 彼女の言葉に民衆はそれもそうだと移動を開始していく。
 その人の流れに逆らうように玲は天文台へと移動する。こっそりと、あくまでもこっそりと天文台へと近づく。
 手にした雷刃の力は未だ消えていない。
 ならば、天文台も機能不全にしておこうというのだ。
 放たれた一撃が天文台の一部の機能をシャットダウンさせ、一時『希望の軍』が混乱に陥ったが、他の猟兵が動きやすく為るきっかけを作ったと思えばいいだろう。

「……『呪いの名前』か。よく言ったもんだ。でも」
 それをさせぬのが猟兵である。
『アイン』が何を思って出奔したのかはわからないし、オブリビオンマシンとつながりが在るようにも思えない。
 ならば、『アイン』に繋がるのは、真なる黒幕であろう。
 その影を踏むことが叶うかどうか……それは、この後に控える一戦に掛かっているのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
今度は『八咫神国』……。
なかなか『アイン』さんを捉えきれないな。
実力とカリスマのある人がオブリビオンマシンと組まれると厄介だね。

でも今度こそ!
『八咫神国』を壊滅もさせないし、『アイン』さんも捕まえるよ!

情報収集ってことなら、得意分野だし、
わたしは『新兵器』の概要とスペック。
それとできれば、敵戦力の規模とかも調べておきたいな。

【電脳潜行】で通信ネットワークに入り込んで、情報を集めたら分析と整理。

それをいままでの『殲禍炎剣』の行動や攻撃から解析したスペックと比較して、
『この『新兵器』では破壊不能』であることをデータでまとめよう。

戦力や配備の情報は手に入ったらみんなと共有。
奇襲の参考にしてもらうね。



「今度は『八咫神国』……なかなか『アイン』さんを捉えきれないな。でも、今度こそ!」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、クロムキャバリアにおけるオブリビオンマシン事件の渦中にいるであろう『グリプ5』の指名手配犯である『アイン』の尻尾を漸く掴んだことに意気込む。
 これまで彼女が関わってきたクロムキャバリアの事件において『アイン・ラーズグリーズ』は幾度か存在を匂わせていた。

『グリプ5』の前身、『憂国学徒兵』の最初期のメンバーのクローンであると言われている『ラーズグリーズ』性を持つ数字で呼ばれたキャバリアパイロットたち。
 その一人である『フュンフ・ラーズグリーズ』の姉。
 それが『アイン・ラーズグリーズ』である。
「まずは情報収集から……こういうのなら得意分野だし」
 理緒は電脳魔術士である。天文台が一時シャットダウンした隙を縫って、ネットワークへと入り込み情報を片っ端から収集していく。

『希望の軍』である『アイン』が率いるキャバリア部隊に装備されているという『新装備』の情報は勿論のこと、打開hの編成や、規模まで理緒は電脳潜航によって、根こそぎ収集してきたのだ。
「『ジャミング装置』が、『新兵器』。なるほど、ジャミングで『殲禍炎剣』のレーダーに錯誤を起こして高速飛翔して直接叩く……」
 それに加えて、キャバリア事態にロケット燃料を満載したブースターを取り付け、『アイン』の駆るキャバリアで一気に『殲禍炎剣』を破壊するつもりなのだ。

「……もしも、もしも、だけれど……」
『ジャミング装置』が完璧であったのならば、おそらく『アイン』ならやれるであろうというのが理緒の分析の結果であった。
『アイン』ほどの技量があれば、それも可能かもしれない。
 ただし、『ジャミング装置』が完璧ではない。
 これでは『殲禍炎剣』のレーダーをかいくぐる事はできない。天網恢恢疎にして漏らさずではないが、『殲禍炎剣』のレーダーは、大雑把に見えて的を絞った性能をしている。

 まず第一に高度。
 そしにて第二に飛翔する速度だ。
 この『ジャミング装置』では、高度は騙し通せても速度で引っかかる。キャバリアをブースターで衛星軌道まで飛ばすというのであれば、なおのこと引っかかる。
「今はブースターに燃料を注入している段階……これを『殲禍炎剣』に狙われたら……」
 そう、それがおそらくグリモア猟兵が見たであろう予知の光景。
 他のキャバリア部隊にも装備されているのだろう。それらが撃墜されれば、周囲は焦土と化す。

 小国家事態が滅びることなってしまう。
 それだけは阻止しなければならない。理緒は即座に自分が得たデータをまとめ、他の猟兵たちと共有する。
 どちらにせよ、自分たちが彼等を打倒しなければならないのだ。
 奇襲し、即座に彼等を止める。
 そうしなければ、予知の光景は現実のものとなってしまう。

 むやみやたらに破壊してしまっては、それだけでも周囲の民衆に甚大な被害を与えかねないのだ。
「ここまで用意周到に計算されている……きっと『アイン』さんだけの思惑じゃない、何かもう一枚あるような気がするね」
 理緒は、一連の事件の背後にうごめく何者かの思惑を感じ取り、まずは目の前の危機を脱するために己の能力を惜しげもなく使うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
SPD

依頼内容はキャバリア群及び搭載兵器の破壊。
対『殲禍炎剣』作戦決行前に処理。了解。

愚行で滅ぶのも彼らの自由とは言え、存在するだろう
非賛同者まで巻き添えにするのは見逃せません。

「より成功率を高めるために集まった熱狂的な民衆」
については明確な敵軍協力者ですので、わざわざ攻撃も
しませんが、保護の必要も認めません。
参戦しないなら放置します。

さて。
奇襲の準備は公開情報だけで充分です。
しかし少々調べておきたい事があるので、
遠目で良いですので天文台を見に行きましょう。

敵基地に成り果てた天文台を残すべきか、破壊すべきか。
破壊すべきならば、その手段は。
インクリーザーで基礎を撃てば充分でしょうか……ふむ。



 グリモア猟兵の予知による事件の解決。
 それを依頼されたノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は冷静であった。
 彼女の瞳に映る熱狂的な民衆たちの姿は、熱に浮かされたようなものだった。誰も彼もが『希望』という名の言葉に踊らされている。

 それが例え可能であれ、冷静さを欠いたことによって滅びの道に足を踏み入れることなど枚挙にいとまがない。
 実にありふれた結果でしかないのだ。
「依頼内容の再確認。キャバリア群及び搭載兵器の破壊。対『殲禍炎剣』作戦決行前に処理。了解」
 ノエルにとって、それだけで十分だった。
 情報はそれ以上必要はない。

 この『八咫神国』と呼ばれる小国家の人びとが愚行で滅ぶのもまた彼等の自由とは言え、存在するだろうと考えていた。
 乾いた考え方であるという自覚はあるが、事実である。
 だが、彼等に巻き込まれる非賛同者たちはどうだろうか。
 彼等まで滅ぼされてしまうというのは、彼女にとっては理解し難いものであった。
 滅ぶのならば、個々で滅べばいい。

 だというのに、いつだってそうだけれど、愚者の行いは他者を巻き込むものである。
 ノエルにとって熱狂的な民衆とは、愚昧そのものであった。
 自分たちで考えているようで考えていない。
 カリスマ性を放つ軍人である『アイン・ラーズグリーズ』だけが、冷静であったとノエルは理解していた。
 彼女こそが、『希望の軍』の要であり、この作戦の立案者なのだろう。
 よく民衆というものを心得ていると実感できる。
 民衆たちをここに呼び寄せているのも、『八咫神国』の上層部が放つであろう鎮圧部隊から己たちの作戦を守るための壁とするためであった。
「……彼等は参戦しない。けれど、確実に作戦を結構するために利用されている。彼等の熱気こそが、同胞に対するカード……」

 ノエルにとっては、保護の必要のない存在である。
 こちらに攻撃を加えてこないのならば放置することに決める。自分に必要な情報ではないと捨て置くのだ。
「さて……しかし、一つ調べておきたいことがあります」
 彼女の瞳が見るのは、天文台である。
 遠目でもいいからと天文台に近づき、彼女は見やる。すでにあの天文台は『希望の軍』の本拠地のようになっている。

 彼等と戦う以上、あの天文台は重要な施設となり得るだろうかと他の猟兵からもたらされた情報を元に考えるのだ。
 もしも、こちらの戦いに支障が出るような施設ならば、今のうちに破壊しておけばいいと思ったのだろう。
「答えは否。やはりただの天文台。『殲禍炎剣』を観測するためだけの施設ならば……こちらの戦術に支障を与えないでしょう」
 ノエルは頷き、背を向ける。
 破壊するのは簡単だ。
 けれど、天文台がもしも、今後の『八咫神国』、ひいてはクロムキャバリアにおける戦乱において重要な意味を持つことがあるのならば、破壊だけが術ではない。

 自分にできることは戦うことだけなのかもしれない。
 けれど、ノエルはぼんやりと夜空を見上げる。
 あの空の向こうには『殲禍炎剣』が存在している。その空に彼女は何を思うだろうか。
 そのぼんやりとした表情からは読み取ることはできなかった。
 けれど、彼女は傭兵である。
 ならばやるべきことは一つである。依頼をこなし、目的を達成する。ただそれだけのために邁進するのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
まあ、ナイアルテが失敗するって言ってんだから失敗するんだろうが……
じゃあ、何で自信満々なんだ、あいつ等。
実証実験……は出来る訳ねーから、都合のいいデータ入れてのシミュレーションとかかね?

まあ、いいか。とりあえず、奇襲の下準備だな。
そうだな、オド(魔力)による『天候操作』で風雨を呼んでみるか。
熱狂的なギャラリーもある程度散るか屋内に入るだろう。
その後は希望の軍の配置を確認して決行を待つのみ、かね。
待ち時間はそれでも残ってる民衆に話しかけて与太話でもしながら時間を潰そう。

アドリブ歓迎です。



 小国家『八咫神国』の人びとの熱狂は凄まじいものであった。
 降り立った猟兵たちが見たのは天文台に集まる民衆と『希望の軍』と呼ばれるキャバリア部隊。
 キャバリアには『新兵器』として『ジャミング装置』とブースターが備えられている。遠巻きに見ても『希望の軍』は自信と希望に満ち溢れていた。
 その姿に違和感を覚えたのは、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)であった。
「グリモアの予知で失敗するって言ってんだから失敗するんだろうが……」
 そう、予知によって得られた未来の光景。
 それは『殲禍炎剣』の反撃に寄って焦土と化す『八咫神国』。
 人びとは焼け死に、大地は抉れ、国としての体裁を保つこともできなくなってしまった国は、残されたプラントを巡って周辺国の争いに発展するだろう。

 それは想像に難くない。
 ならば、この作戦が失敗する可能性をまったく考慮していない彼等の態度のほうが気になる。よほど『新兵器』というものに自信があるのか。
 実証実験ができるわけもない。
「都合のいいデータ入れてのシュミレーション……か?」
 いや、それだけでは彼等の態度は納得できない。
 アレクサンドルは考える。『新兵器』がどれほど強力なものであったとしても、それを裏付けるものがなければ人びとは動かない。

 人間とは得てしてそういうものだ。
 失敗のリスクがある以上、そのリスクを背負いたくない、もしくは最小限に留めたいと思うのは自然なことだ。
 ならば、この『希望の軍』を率いる『アイン・ラーズグリーズ』とはどんな人物なのか。
「奴らが自信満々になるほどのカリスマ……」
 となれば、彼女の技量であろう。
 エースの中のエースとまで呼ばれた技量の凄まじさが、彼等を納得させたのか。いや、それでもまだ弱いように感じたが、アレクサンドルは頭を振った。
「まあ、いいか。とりあえず、奇襲の準備だな」

 どちらにしたってやることは変わらないのだというようにアレクサンドルは、オド――魔力に寄る天候操作によって風雨を呼び寄せる。
 熱狂的な民衆たちであっても雨によって頭を冷やすことも出来るだろう。
 他の猟兵たちの働きによって民衆は、天文台から離れ始めている。ここにダメ押しの風雨が重なれば、人びとは屋根のある屋内へと戻っていくだろう。

 けれど、熱狂的な民衆とは、時として大きな生き物となる。
 雨や風がなんなのだというようにむしろますます熱狂的な存在へと変わる者たちだっている。
 アレクサンドルは、そういう民衆に話しかける。
「雨までふってきやがったぜ。濡れっぱなしで大丈夫かよ」
「ああ! 『希望の軍』の出立を見ないなんて選択肢はないよ。彼等は漸く、あの忌まわしい暴走衛星を破壊するんだ! 彼等を率いるのは、あの『アイン』だぜ? 『フュンフ・エイル』の再来とまで言われた!」
 民衆の一人が興奮したようにいう。

 そうか、ともアレクサンドルは思っただろう。
『フュンフ・エイル』の名前は『グリプ5』周辺においては、悪魔的な強さを誇った過去の英雄の名前である。
 たった8人のキャバリアパイロットたちでもって国を興した英雄。
 鮮烈なる強さは、今も伝説として語られるほどであった。その再来と呼ばれた『アイン』。彼女のカリスマこそが、この熱狂的なムーブメントを生み出しているのだ。
「これが人間の持つ力っていうべきかねぇ……」
 アレクサンドルは何を思っただろうか。

 一人の英雄が見せる力の残滓。
 現在に生きる人間に、それを見て重ね、己の願望を託す民衆たち。
 彼等の行いは人ならざるアレクサンドルにとって、如何なる意味を持っただろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語

殲禍炎剣を破壊するか、それが本当に正しいのかは分からないが今回は邪魔させて貰おう
戦闘じゃないが解析を頼んだぞ、Minerva

SPDで判定
俺も【情報収集】を行う
外套の【迷彩】を使いながら人の噂話を【聞き耳】
他にも【動物使い】で義眼と視界を共有したリンクアイを忍び込ませ【暗視】【視力】【失せ物探し】【忍び足】の力を使い、部隊の装備を確認
その情報は端末を通じてAIとに伝え装備を解析する
キャバリアには少し離れた所で隠れて待機し周辺状況を把握、特に狙撃に適した場所を見つけて貰う【地形の利用】



 暴走衛星『殲禍炎剣』。
 それはクロムキャバリア世界において、空に蓋をする存在であり、小国家同士の交流を阻む最大の要因である。
 高速飛翔体を即座に撃ち落とす存在は、空においては脅威でしかない。
 人びとは畏怖でもって空を見上げ、大地を這うように生活するしかない。迅速なコミュニケーションが取れぬ彼等は、些細な行き違いで争いを始める。
 それは有史以来、様々な場所と時でもって歴史として刻まれてきた事実である。

「『殲禍炎剣』を破壊するか……それが本当に正しいのかはわからないが、今回は」
 邪魔をさせてもらおうと、つぶやいたのは外套の迷彩能力によって人混みに紛れたルイス・グリッド(生者の盾・f26203)であった。
 天文台に集まっていた熱狂的な民衆たちは猟兵達の誘導や、呼び寄せられた風雨によって一時、その場を離れ始めていた。
 けれど、未だ雨風があろうが関係ないとばかりに天文台の周りに残っている民衆たちもいる。

 彼等は『希望の軍』が出立するまでは、てこでも動かないというように天文台付近に未だ多く陣取っていた。
 これをどうこうしようとするのは、骨が折れるとルイスは理解していた。
 戦闘補助のためにキャバリアに搭載されているAIとインカムでルイスは通信を行いながら、義眼のメガリスと視界を共有したリンクアイを民衆の中に紛れ込ませる。
『希望の軍』と呼ばれるキャバリア部隊。
 機動殲龍『空翔』。それはかつて『八咫神国』から『グリプ5』に救援として派遣され、オブリビオンマシンと化したことのなる機体であった。

『殲禍炎剣』の元という限定的ではあるが飛行能力を持つキャバリア。
 それが無数に配備されており、どうやら作戦の一貫なのだろうブースターの取り付けられた実行部隊と、それを護衛する機体とに分かれているようであった。
「……他の猟兵たちの情報から察するに、露払いの機体もいるってことか。ブースターは確かに重しににしかならないし、高高度を取るために仕方ないとはいえ無防備になるから、それを護衛する機体があるのも当然か」
 ルイスはリンクアイから送られてくるキャバリアのデータを、他の猟兵たちが得たデータと照合していく。

 確かに作戦としては悪くないように思えた。
 この『希望の軍』を興したカリスマ性を持つ『アイン』であれば、たしかに可能な作戦であると。
 けれど、他の猟兵がいうようにこの作戦は失敗する。
 肝心の『殲禍炎剣』のレーダーを錯誤させるための『ジャミング装置』が不完全なのだ。
 高度はごまかせても、飛翔速度で捉えられてしまう。
「逆に撃ち落とされ、燃料を充填されたブースターが引火して大爆発を興して、地上の『八咫神国』は焦土と化す……か」

 おそらくこれがグリモアがもたらした予知の光景なのだろう。
 ならばこれを止めなければならない。
 彼等は知る由もないし、きっとそれを説いた所で熱狂的なまでに盲信している民衆を止めれることはできない。
「なら、キャバリアを打倒してでも止めなければならないってわけだ……俺たちは『希望の軍』ならぬ『絶望の軍』として民衆に認知されてしまう」
 どちらにしたって損な役回りだ。
 人びとの怨みを買うかもしれない。

 けれど、未来の光景を見たという言葉はきっと誰も信じない。
 やってみなければわからないという言葉と熱意の前には、未来という不確定事項はあまりにも説得力にかけるものであったからだ。
「ままならないな……」
 だが、それでも。
 人々の生命が喪われてしまうことなどあってはならないと、ルイスは狙撃に適した場所を捜して回る。
 しかし、ここは天文台である。
 周囲より高台になっている場所は、必然的に天文台施設が建設され、残るは見上げる場所ばかりである。

「狙撃ポイントは見つけられず、けれど、彼等を打倒しなければならない……」
 不利な条件ばかりが重なる。
 ルイスは放り出すことはしない。それが『生者の盾』たる己に課せられた責務なのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
塞がれた空、か
山の上から眺める空の色は好きだし
飛行機の窓から見える雲海も好きだから
空を取り戻したいという気持ちは何となくわかるかな

少し離れた所から
ゴーグルの暗視機能を使って
周囲の建物や地形を見渡し
後の戦闘に活かせる様に把握しておこう
できれば最初の突撃の際に隠れて
機体を呼び出せる場所があればいいんだけど

後はUCで使い魔を呼び出し
数体で民衆達の方に近付いて
近くで相手の機体を見たり
戦闘が始まった時に民衆を守る為に待機したりして貰おうかな
シェルターや盾を創るのは得意だからね

おまかせなのですよー

後は相手の見張りや機体の配置から
迎撃布陣やトラップの場所を推測しつつ
鉑帝竜を呼ぶのに良さそうな場所に移動するよ



 ゴーグルの暗視能力の感度は良好であった。
 時刻は夜。さらに猟兵に寄る風雨が天文台の周囲をより薄暗くしていたし、熱狂的な民衆は未だ多く残っていたが、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は情報を集めるのに支障はないと判断していた。
 天文台は周囲よりも高い場所に備えられており、暴走衛星である『殲禍炎剣』を破壊するために飛び立つには好都合な場所と言えた。

 天文台はそもそも『殲禍炎剣』を観測するために設けられた施設である。
 破壊すべき対象との距離を少しでも近づけ、さらに動向を探るという意味では、これ以上ないくらいに合理的な布陣であると言えただろう。
「塞がれた空、か」
 晶は確かにと思う。
 山の上から眺める空の色の美しさを知っている。
 飛行機の窓から見える雲海も好ましいと思える。
 だからこそ、クロムキャバリアの人びとが空を取り戻したいと願う気持ちはわかるつもりであった。

 けれど、今はだめなのだ。
 彼等が熱狂的に支持するカリスマ性を放つ軍人『アイン・ラーズグリーズ』のもたらした『新兵器』はたしかに彼女の能力と合わせることで『殲禍炎剣』も破壊することは可能であると思わせるには十分なものであった。
 しかし、『ジャミング装置』が不完全である以上、『殲禍炎剣』の砲撃に寄って『八咫神国』は滅びてしまう。
 焦土と化した大地には一つの生命も残らない。
 例え、難を逃れたとしても、もはや国として形を保つことはできないだろう。
 そうなれば、残されたプラントを巡って小国家同士の対立は激化し、さらなる戦争状態へと突入することは明白だた。

「でも、やっぱり熱狂的すぎるな……ちょっとやそっとではあの人達は此処から離れてくれないか……」
 どうあっても人間の盾として民衆が敵に利用されてしまうことはわかっていた。
 ここまで周到に布陣を敷く『アイン』は猟兵たちのような傭兵存在が、この作戦を邪魔しに来るであろうことまで予測済みであったのかもしれない。

 ならばと、式神白金竜複製模造群体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ・レギオン)を呼び出し、彼女たちを民衆の中に紛れさせる。
「さあ、みんな。よろしく頼むよ」
「おまかせなのですよー」
 使い魔たちが民衆の中に紛れ、もしものときは盾やシェルターを作るように頼んでおくのだ。
 晶は己の機体が喚び出すに最適な場所を捜して移動していく。

 敵のキャバリア部隊の布陣を見るに、高高度へと飛び立つ部隊と、それを護衛する部隊とに円を描くように布陣している。 
 天文台という高台に展開している以上、高台からはこちらの行動は筒抜けだろう。
「厄介な場所に陣取ってくれたもんだね……」
 トラップの類はないようだった。
 敢えていうなら、民衆こそが壁であり盾。
 彼等をどうにかしようとすれば、必ず民衆の支持を喪う。だから『八咫神国』はうかつに手が出せないのだ。

 自分たちの信用を残っては、そもそも国として保てなく成ってしまう。
 天秤に掛けた時、どちらに重きが傾くかは言うまでもない。
「キャバリアの操縦技術も超一流。軍人としての戦術も一流と来たら……本当に厄介な相手だね」
 けれどやらねばならない。
 そうしなければならないだけの理由がある。
 徒に滅びの道へと足を進めさせるわけにはいかない。例え、それが予知という不確定な未来であったとしても、晶たち猟兵はその未来をこそ否定するために過去と戦うのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
UC即起動

世界の法則への反逆ってのは浪漫であり人足らしめてるものでしたか


「でもこういうのはちゃんと検証を重ねないといけないよね」(銀髪少女

UDCアースだと失敗を重ね続けて検証を重ねるらしいな

【属性攻撃・迷彩】
光水属性を己達に付与
光学迷彩で存在を隠して行動

【情報収集・視力・戦闘知識】
噂のジャミング兵器の捜索を行う
特に搭載されたキャバリアの構造も同時に把握
他にも仕掛けがないかだけは確認
それと新兵器の出所と此処までの経緯も

更にアインに付いても徹底的に調べ
とんでもない凄腕らしいですし
挑んでみるのも悪くはない
「大丈夫☆ご主人サマにはメルシーがついてるぞ☆」
最悪お前を自爆させて逃げるか
「やだ鬼畜☆」



 対人戦術機構『詩文の神』(メルシーマホーショウジョモード)。
 そのユーベルコードの名を知る者は、それがキャバリア兵器が人型へと姿を変えるためのものであると知る。
 銀髪の少女と共に『八咫神国』へと降り立ったカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)が見つめる先にあったのは、天文台と周囲に展開された『希望の軍』のキャバリア部隊であった。

「世界の法則への反逆ってのは浪漫であり、人たらしめてるものでしたか」
「でもこういうのはちゃんと検証を重ねないといけないよね」
 UDCアースであれば失敗を重ね続けて検証を重ねるらしいな、とカシムは言う。
 果たして、目の前の『希望の軍』は検証を行ったのだろうか。
 とてもではないが、それはないと思わざるを得ない。カシムにとって、『希望の軍』が起こす『殲禍炎剣』の破壊作戦は場当たり的なものであるとしか思えなかった。
 自分たちの存在を隠して行動するカシムたちは見上げる。
 キャバリアの背に搭載いされた巨大なブースター。
 燃料を充填したプロペラントタンクの長大さを見れば、たしかに高高度まで一気に飛翔することはできるであろう。

 だが、彼等が相手をするのは暴走衛星『殲禍炎剣』である。
 一定の高度と速度を持つ飛翔体を必ず撃ち落とす能力を備えた、百年に渡るクロムキャバリアの歴史においてこれを欺くことができた存在はいない。
『アイン』ならば、『前例がないから前例になるんだよ』と言うだろうが、カシムには賛同しかねる思いであったことだろう。
「ジャミング装置は……」
「こっちこっちー」
 メルシーが手招きすれば、キャバリアの機体の背面にジャミング装置が装着されているのを見つける。
 
 他に何か仕掛けがないかと訝しむが、そのたぐいのものは確認されなかった。
 この新兵器と呼ばれるジャミング装置の出どころは、他の猟兵が情報共有してくれたおかげではっきりとわかっている。
「ここでも『グリプ5』絡みというより、『憂国学徒兵』絡みってやつか」
 この一連のオブリビオンマシンの事件の渦中にある小国家。
 そして、その小国家にかつて居たという『アイン・ラーズグリーズ』。
 彼女は『グリプ5』と周辺の国において、英雄でもあり悪魔的でもあったキャバリアの操縦技術を持つ『フュンフ・エイル』の再来とも言われる存在である。

「挑んで見るのも悪くない」
 けれど、超一流のキャバリアパイロットでありながら、一流の戦術家でもある彼女は、いうなればとんでもない凄腕であると認識せざるを得ない。
「大丈夫☆ご主人サマにはメルシーがついてるぞ☆」
 能天気にメルシーが言うが、まあ、いざとなったら最悪メルクリウスを自爆させて逃げればいいかとカシムは楽観的であった。
 やだ鬼畜☆
 なんて声が聞こえた気がしたが、カシムは無視した。

 どちらにせよ、油断ならぬ相手であることは言うまでもない。
 カシムは天文台において、己が対峙する敵がおそらくこれまで以上に厳しい相手であることを認識し、戦いに備えるべく意識を集中させようとして、銀髪の少女に背中からのしかかられ、自爆宣言を撤回するまで邪魔されるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
『グリプ5』に尻尾を掴ませなかった長姉…オブリビオンマシンの影響無くば捕捉は叶わなかった筈
それが誰にとっての幸か不幸かは定かではありませんが…

止めなくてはなりません
マシンに煽られた挙句の一国の滅亡など、彼女に背負わさせる訳にはいかないのですから

事前にハッキングで『希望の軍』データベースに彼らの後援者の新しい連絡員として己を登録
野外に用意するスクリーン越しに軍に声援送る民衆…というプロパガンダ映像撮影の為、民衆に移動指示行う様要請

(外観に違和感覚えさせぬ猟兵の世界の加護は助かりますね)

アイン様の鶴の一声があれば皆様も従ってくれる筈…ご協力願えますでしょうか?

(仕掛けるのは避難が完了した後です…)



 天文台に布陣する『希望の軍』と熱狂的な民衆たち。
 猟兵たちの誘導や風雨によって一定の数は避難させることができたが、未だ多くの人々は熱狂の渦の中にいた。
 どれだけ雨が降ろうが、風が吹こうが彼等の瞳に映るのは希望だけであった。
 そう、暴走衛星『殲禍炎剣』の破壊。
 まさしく希望そのものであった。
 長きにわたる戦乱の世を終わらせられるかも知れないという希望は、未だ実現されていないが、それが可能かもしれないというか細い可能性であっても、人々の心に宿ったのは安寧への渇望故であったのかもしれない。

「ここまで人心が乱れていれば、たしかに盲目的にもなりましょう」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、その機械騎士としての姿を『八咫神国』の民衆の前に晒しても、違和感を覚えられないという猟兵としての特性に感謝しつつ、『希望の軍』のデータベースにハッキングし、彼等の後援者の新しい連絡員として己を登録して堂々と天文台に布陣するキャバリア部隊へと近づいていった。

 誰も彼を疑うことはしない。
 データベースには確かにトリテレイアのデータがあり、チェックされたとしても問題無しと判断されておしまいである。
 それが熱狂的な後援者の連絡員となれば、疑うこと事態が野暮であったからだ。
「こちらです」
 そう言って通された先にいたのは、『アイン・ラーズグリーズ』であった。
『殲禍炎剣』破壊作戦の前のブリーフィングを終えた後であったのだろう。彼女は一息付く間もないというように移動を始めようとしていた。

「あん? なんだそいつは」
「トリテレイアと申します。作戦遂行のために周囲に集まった民衆の数があまりにも多く、同時に風雨も突然出てきています。不測の事態に陥った際に、彼等に累が及ぶのは、私どもの主人の望むところでもありません」
 トリテレイアは他の猟兵が引き寄せた風雨を理由に、人の壁として機能している民衆たちをこの場から引き離そうと考えていた。
 けれど、アインは頭を振る。
「そんな必要はない。あれはあれで必要なことだ。民衆は溜まってんだよ。自分たちもまた『希望』を支えていると錯覚したいんだ。だから、集まってくる。その場に居合わせることが、何か大きなことを成し遂げることの力になるって信じているんだ」
 それは、とトリテレイアは食い下がる。

 これまで『グリプ5』ですら尻尾を掴むことのできなかった『アイン』を目の前にして、トリテレイアは引き下がることなど考えていなかった。
 オブリビオンマシンの影響がなければ補足することが叶わなかったというのは誰にとっての幸か不幸かは定かではない。
 けれど、この機会を逃してしまえば、きっと彼女の生命も喪われてしまうだろう。
 目の前に対峙していてわかる。
『まだ』彼女はオブリビオンマシンの影響を受けていない。
 思想を狂わされていない。

 ならば。ならば、何故彼女は国を裏切ったのか。
「なおのことではありませんか。国とは人。人とは国。民衆が傷つけば国もゆらぎます。『アイン』様なら、それはご理解頂けるはず。鶴の一声があれば、皆様も従ってくれるはずです」
 それに、とトリテレイアは代替案を出す。
 彼等の熱意を無駄にしない方策。作戦が成功した暁には、きっと国は体制が変わるだろう。
 そうした時に必要なのはプロパガンダである。

「野外に用意したスクリーン越しに軍に声援を送る民衆……そうした映像は、今後必要になるかと。不運にもこの風雨です。彼等の身の安全を守りつつ、彼等の希望を叶えるためには」
「……必要だって言いたいんだろう。わかっているよ。なら、任せた。上手くやれよ」
『アイン』は折れたというよりは、トリテレイアの言葉の裏を読んだようであった。
 猟兵の、トリテレイアの思惑を読んだ上で、それに乗っていると思われる言動。彼女は何かをわかっているのか。
 それとも、これもまた予定のうちなのか。

 どちらにせよ、トリテレイアは彼女一人に全てを背負わせるつもりなど毛頭なかった。
 この後、彼女がマシンに狂わされ、一つの国が滅亡するなどという無残なる未来を背負わせるわけにはいかないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
殲禍炎剣を壊す方法ねえ…本当に出来るんなら俺も協力したいくらいっすわ。
出来ねえからこっちにいるんすけど。

…ひとまず民間人の誘導っすね。『カサンドラ』。『ライア』の音量を調整して周囲に。
気づくか気づかれないかくらいの音量、破壊力も無いに等しいっすけど、一般人の思考に隙を作って
転移を拒否する時間と余地を与える前に【サイキック・ロード】でお帰りいただくには十分かと。

しかしまあ、大層な盛り上がり様で。こういう目をした人には覚えがあるっすよ。
浮かれ切ってるっつーか輝かしい未来を信じ切ってるっつーか。
…あの時俺の訴えを信じてもらうにはどうしたらよかったんだか。
…まあ、余計な追憶か。



 暴走衛星『殲禍炎剣』。
 それは長きに渡りクロムキャバリア世界の空を支配する存在の名である。高高度と高速飛翔の条件によって例外なく砲撃に寄って撃ち落とす空の上の悪魔。
 小国家同士のコミュニケーションの阻害。
 行き来を断絶させ、戦乱を長引かせ続ける原因の一つである。
 オブリビオンマシンの存在を人々は知覚できない。
 何故、あれほどまでに清廉潔白であった理想的な軍人が狂気に走るのか理由さえもわからぬままに戦争状態は終わりを見せず、絶えず小国家は滅び、興り、再び滅びるのを繰り返してきた。

 己の祖国が滅びた経緯を持つ、安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)にとって、それは追憶でしかない。
 けれど、今目の前の『八咫神国』はそうではない。
 変えられる未来が在って、それによって破滅が回避できるというのであれば、己が何を成すべきかを彼は知っている。
「本当に出来るんなら俺も協力したいくらいっすわ」
 ――出来ねえからこっちにいるんすけど、と彼は嘯いた。

 そう、このまま行けば確実に破滅へと進んでいく。
 だからこそ、熱狂的な民衆たちは風雨にさらされてもなお、この場にとどまり続けようとするだろう。
 もうじき戦場になるこの場所から、一人でも多くの民衆を遠ざけなければならない。
 彼等にも、そしてキャバリア部隊にも何の罪はないのだ。
「『カサンドラ』――」
 穣は己のサイキックキャバリアに命ずる。
『ライア』と呼ばれる音を介して思考に間隙を作る対人用兵器の出力を絞る。わずかに隙を作るだけでいいのだ。

 一瞬奇妙な音が民衆の思考を染め上げる。
 何も考えることの出来ない一瞬の空白。それは何かを拒否することもでいない彼のユーベルコード。
 サイキック・ロードが拓かれ、サイキックの竜巻が風雨にまぎれて民衆の一部を、彼等の居住区へと転移させる。

 彼等は熱狂的故に簡単にはこの場から離れることはないだろう。
 だから、拒否する暇も与えずにサイキック・ロードでお売り届けるのだ。
「しかしまあ、大層な盛り上がり様で。こういう目をした人には覚えがあるっすよ」
 彼の視界に映るのは、未だ残る熱狂的な民衆たち。
 浮かれきっているとひと目で分かる。
 彼等の目には輝かしい未来しか見えていないのだ。希望に満ち溢れ、安寧が続く未来。
 それだけが彼等の望みなのだ。

 この戦乱が続くクロムキャバリアにおいて、それは何にも代えがたい尊いものであるからこそ、眩い輝きに目がくらんでしまう。
 足元も見えなくなるし、悪意ある存在も見定めることができなくなってしまう。
「……あの時俺の訴えを信じてもらうにはどうしたらよかったんだか」
 追憶が彼の心をえぐるかもしれない。
 滅んだ祖国と『八咫神国』。
 どこに違いがあるというのだろう。あるのだとすれば、ボタンの掛け違いでしかない些細な間違いの連続であったのかもしれない。

 救えなかった国があった。
 けれど、救えなかったからといって、目の前の災から目をそらす道理など彼にはなかったし、持ち合わせてはいなかった。
 今彼の心をえぐる追憶を、余計なものだと言い切れるほどには、彼の心は強靭なものへと変わっていったのだろう。

 人は変われるし、変わることができる。
 不変の強さもあるだろうが、変わることで得る強さだってあるのだ。
 それを信じるからこそ穣は『こちら側』に立っている。きっとこの『希望の軍』を率いる『アイン・ラーズグリーズ』だって同じだろう。
 誰かのためにという信念を感じざるを得ない。
 それが誰のためであるのかはわからないけれど。
「それでも、これが余計な追憶だと言えるように、今を見定め続ける……」
 穣は風雨に吹きすさぶ夜空が徐々に明けるのを見上げた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸ぎゃあ!?(お約束をシリカに引っ掻かれて

アッハイスミマセン潜入捜査でした(汗)
やっぱりシリカのツッコミは落ち着きますね

さてさて私のクノイチ力なら民衆に紛れ込めるはずです!
そんなわけで民衆に紛れ込みつつ作戦のことを知らないふり
「ふむふむなるほどなるほど」
「もうちょっと詳しく知りたいです」
「あっちに人をダメにするネコがいるんですけど、そこでお話ししませんか?」
とシリカを巻き込みつつ
こっそり避難誘導といきましょう

あれ?シリカの視線が怖い?

※アドリブ連携OK



「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸ぎゃあ!?」
 開幕最速の勢いでお約束のばりぃ! が炸裂していたのは、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)である。
 久しぶりの白猫又シリカさんの爪の鋭さは絶好調である。
 なんでいきなりばりぃってやられているのかと言えば、潜入捜査であるからだ。
『八咫神国』に起こった一大ムーブメント。
『殲禍炎剣』破壊作戦を行うとした『希望の軍』に対して、これを止めるべく猟兵達は敢えて、彼等と戦うことになる。

 そのために必要な情報を集めるためにサージェは事前にキャバリア部隊の中に忍び込んでいたのだが、いつもの約束の前口上を抑えることができなかったのである。
 そりゃばりぃってやられるのもうなずけるものである。
 白猫又のシリカさんの苦労が伺い知れる。
 だが、サージェはどちらかと言えば、久方ぶりのシリカのツッコミに落ち着きというか、チルというか、なんかそういうのを感じていた。
 またばりぃってやられながらも、サージェは自身のクノイチちからをもって民衆に紛れ込む。
 いや、クノイチちからってなんぞやという意見はスルーしておく。

 だって聞かれてもわからないから。

「ふむふむ……風雨が激しくなってきたから、あっちで大きなモニターから『希望の軍』に応援を送る催しがあると。ふむふむ」
 他の猟兵たちの活躍に寄って、天文台の周囲には民衆の姿が徐々になくなりつつあった。
 ここはこれから戦場になる。
 そこに民衆が残っていたのなら、意図せぬ事故が起こってしまう可能性は多いにあるのだ。
 それを防ぐために多くの猟兵たちが情報を集める過程で彼等を天文台から引き離し続けていた。

「もうちょっと詳しく知りたいんですが、あの『アイン』って人は……」
「『フュンフ・エイル』の再来って言われている方だよ。すごいんだぜ、あの人! 一度戦う姿を見たことが在るけど、あれはほんとうにすごかった!」
 興奮気味に語る民衆の言葉に、『アイン・ラーズグリーズ』がどれほどの人気をこの『八咫神国』で得ているのかを知る。
 英雄の再来。
 それが『アイン・ラーズグリーズ』の正体なのだろう。
 だが、そんな彼女は予知によれば『まだ』オブリビオンマシンを受けていない。

 これらの作戦は全て彼女の意志で行っているということになる。
 ならば、何故今更オブリビオンマシンが関与してくるのだろう。
「予知だと、作戦は失敗するはず……なら、オブリビオンマシンの狙いは、『八咫神国』の破滅ではなくてあくまでおまけなのでは……?」
 サージェの言葉は核心をついていた。

「……あっちに人をダメにするネコがいるんですけど、そこでおはな……」
 あ、ダメですね、これは。
 サージェはシリカのにらみつける視線にビクリと体を震わせて、なんでもないでーすと愛想笑いをしてその場を後にする。
 ぴょんと、肩にシリカが飛び乗ってきた時には、爪が頭に突き立てられるのではないかとヒヤヒヤしたが、そうはならなかった。

「きっと狙いは『アイン』そのものですよ。オブリビオンマシンが邪魔に思う存在を消す。そうすることで戦乱が拡大する。それが本当のオブリビオンマシンの狙いなんです」
 シリカはこれまで多くの猟兵たちが集めた情報や、これまでの事件との関連をもって、そう結論づける。
『まだ』オブリビオンマシンに乗っていない『アイン』。
 ここから彼女の思想が、狂気に染まっていくというのならば、彼女の破滅こそがオブリビオンマシンの目的。

『八咫神国』を滅ぼすということ事態が、ただの目くらましにすぎないのだ。
「なら、やることは変わりませんね! 今までも、そしてこれからも!」
 サージェは風雨が収まった夜の天文台を駆け出す。
 作戦決行はもうすぐだ。ならば、彼女のクノイチとしての力の見せ所である。疾風迅雷のように駆け抜け、オブリビオンマシンと、その背後に存在する黒幕の企みを阻む。
 そのために彼女は一陣の風となるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『機動殲龍『空翔』』

POW   :    ブリッツウィング
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【ミサイルと機銃による追尾攻撃】を放つ。
SPD   :    オーバーブーストマキシマイズ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリアを更に加速。敵に近づき翼】から【敵機を吹き飛ばす衝撃波】を放つ。
WIZ   :    ダブルバレルカノン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【キャバリア】から【鋼鉄をも貫くビームカノンによる連続攻撃】を放つ。

イラスト:イプシロン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 人々はスクリーン越しに天文台に展開するキャバリア部隊『希望の軍』へと万雷の喝采と拍手を送る。
 その姿はまさに熱狂的であり、その熱気が風雨を退けたのだと、その場にいた民衆の誰もが思っていた。
 それが事実であるかはわからない。
 けれど、何処にでも居て、何処にも居ないような影の声の主はほくそ笑んでいた。

「熱気とは心地よいものだ。誰も彼もが同じ希望を見て、運命共同体になったことを誇りに思っている。人間は正しいことを愛する」
 当たり前のことだと、影の声は笑った。
 そう、人間は正しさを愛する。

 熱狂的な民衆たちの正しさとは何か。
「『殲禍炎剣』の破壊。それは確かに誰もが望むものだろう。窮屈な世界を覆う蓋。それを破壊する人類の救世主。その一翼を担う誇りに酔いしれている。誰もが正しいことをしていると思っている。己達に間違いはなく、己たちが正義だと信じている。だから」
 だから、己達と違う者を簡単に排斥できる。
 違うというだけで断ずることができる。
 そのためには何もかもが肯定される。

「だから、人間は間違う。心地よいことと正しさを履き違え、己の耳を塞ぎ、目を覆う。聞きたいものだけを聞き、見たいものだけを見る。不都合な現実から目をそらした先にあるのが、破滅であっても――」
 機動殲龍『空翔』が飛ぶ。
 ブースターを点火し、一路『殲禍炎剣』を目指して。
 そして、その周囲に護衛の機体が翔び、スクリーン越しにそれを見る民衆の熱気は最高潮になっていく。

 しかし、猟兵はそれに冷水をかけなければならない。
 熱にうだった頭ではなく、冷静に成った頭で考えなければならないと言うように、『希望の軍』に襲いかかる『絶望の軍』として猟兵達は、手の出せない高高度にまで機動殲龍『空翔』が到達するまでに、これらを打倒しなければならない――。
ユーリー・ザルティア
ふう。今回は民衆たちにとってボク達のほうが悪役かも知れないね。
でも…民衆が事実を知るときは彼らが死ぬとき…。新兵器の事実が明らかになるとき
希望が絶望に裏切る瞬間…。
どっちも絶望…か。でも死ぬよりまだ明日がある絶望の方がまし!!

いくよレスヴァント!!

愛機のレスヴァントで最大スピードで『空翔』に追い付いて『空中戦』開始だ。
オーバーブースト・ラストスパートを発動させ、先に上空をとって上から迎撃する。短時間だけど、一応殲禍炎剣を騙す技術自体はあるんだよね。

『瞬間思考力』で敵の攻撃を瞬時に判断しつつ『操縦』テクで敵の攻撃を回避しつつ敵をロックオン。アストライアによる『制圧射撃』で一気に撃墜していくよ。



 機動殲龍『空翔』に備え付けられたブースターが点火し、凄まじい噴射でもって機体を空へと浮かび上がらせる。
 それは人々にとって、待ち望んだ光景であったことだろう。
 誰もが願うことであった。
『殲禍炎剣』の破壊。
 それを成すことが、クロムキャバリアの明日を平和へと導くことだと、民衆の誰もが願っていた。
 しかし、猟兵達は違う。

 その飛翔が滅びの一撃を導くものだと知る。
 だからこそ、止めなければならないのだ。
「いくよレスヴァント!!」
 白いキャバリアが滑空する。その青白いソニックウィングがキャバリアの巨体を飛ばし、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)己の体にかかる加速の衝撃を受け止め叫ぶのだ。

 今回の戦いにおいて猟兵はきっと民衆の敵として瞳に映るだろう。
『希望の軍』にとっての悪役。
 しかし、これは見世物でもなければ、ショーでもない。
 これが現実なのだ。機動殲龍『空翔』が、『殲禍炎剣』のレーダーに引っかかった瞬間が、民衆の希望が絶望に変わり果てる瞬間である。
 護衛の『空翔』を躱し、レスヴァントが飛ぶ。
「飛べ…ボクのキャバリア…ボクと一緒に…トベ―――――ッ!!」
 オーバーブースト・ラストスパート。
 それは彼女のユーベルコードにして、レスヴァントとから放たれる特殊な粒子の噴射であった。

 高高度に到達しようとしている『空翔』の頭上を抑える白きキャバリア。
 その特殊粒子は僅かな時間であれど、『殲禍炎剣』に感知されなくなるユーベルコードの輝きであった。
「どっちも絶望だけれど、でも死ぬよりまだ明日がある絶望の方がまし!!」
 レスヴァントのマニュピレーターが『空翔』の機首を掴み、一気に下降する。
 機体はオブリビオンマシンではない。
 だからこそ、このような芸当が可能になる。ブースターを無理矢理切り離し、『空翔』の首根っこを掴んだまま、第一陣の攻撃部隊にアサルトライフルの銃口を向ける。

 それは一瞬の判断であった。
 判断を誤れば、己も、そして『空翔』のパイロットたちも死なせかねない。
 放たれた弾丸が『空翔』とブースターを繋ぐコネクタを貫き、機体を落下させる。十分に距離が取れた瞬間、ユーリーはブースターを貫き、空に爆発の花を咲かせる。
 これで第二陣が躊躇してくれれば儲けものである。
「誰一人として死なせはしないよ!」
 レスヴァントの機動性は随一である。
 さらにユーベルコードに寄って飛翔する速度もまた同様。しかし、モニターに映る特殊粒子の残量はわずかである。
 この高度であれば、確実に『殲禍炎剣』によって撃ち落とされてしまう。

 けれど、ユーリーはかまわなかった。
 限界のぎりぎりまで、ブースターを破壊され、落下する『空翔』のパイロットたちの生命を諦めない。
 彼女のレスヴァントが見せる白き粒子の軌跡は、夜空に流星のように駆け抜け、『空翔』のパイロットたちを次々と救い出し、大地へと降り立つ。
「第一陣はこれだけ……! でもまだ、飛ぶつもり……!?」
 そう、まだ『希望の軍』は諦めていない。
 猟兵たちが妨害してもなお、これを完遂せんと決死の覚悟で飛ぼうとしている。
 ユーリーのキャバリア『レスヴァント』も再び特殊粒子を出そうにも、すでに残量はゼロになっている。

 けれど、ユーリーは絶望なんてしていない。
 自分たち猟兵は一人ではない。
 どれだけこの事件の黒幕が一枚も二枚も上手なのだとしても、それでも諦める理由にはなっていない。
「ボクたちは生命を諦めない。それを教えてやるんだよ!」
 空には火線を引いて飛び立つ『空翔』。
 けれど、それをさらに迎え撃つ自分と同じ猟兵たちの姿を、ユーリーは見やり、絶望に塗れてしまうかもしれない未来を、そうならぬために託すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『空翔』が『殲禍炎剣』に捉えられる前に倒さないとダメってことだね。
あまり時間はないかな。

ここはあえて目立ってみるか。
どうも『もう一枚』の人は、ヘイトを猟兵に集めるのも計算ずくな気もするし、
引きずり出すには乗ってみるのがいちばんかな。

【ネルトリンゲン】で出撃して【フレーム・アドバンス】で、
『空翔』のスピードを『殲禍炎剣』のレーダーに捉えられないくらいまでダウンさせるよ。

これで諦めて降りてくれるといいんだけど、もし諦めてくれないなら、
【D.U.S.S】の衝撃波で『空翔』のブースターと駆動部を破壊していこう。

ここまでは『もう一枚』の人のシナリオ通り、かな?
でも、最後まで思い通りにはいかせないからね!



 機動殲龍『空翔』の第一陣は空へと飛び立った。
 しかし、猟兵の凄まじい加速と『殲禍炎剣』に僅かな時間であれど感知させぬユーベルコードの力によって、一陣は尽くが撃墜される。
『空翔』のパイロットたちも無事であったことに、ミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』の中で菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は胸をなでおろした。
「よかった……『空翔』が『殲禍炎剣』に捉えられる前に倒せて……」
 そう、今回の戦いにおいてスピードこそが重要である。
『空翔』のブースターが備え付けられている機体は、全体の半数。
 今のは第一陣である。
 それを感知されずにしのげたことは僥倖であった。
 あまり時間がないことには代わりはないが、第二陣がすでに飛び立とうと噴射を始めているのを、理緒は『ネルトリンゲン』のブリッジから確認し、即座に手を打つのだ。

「やらせないよ!」
 どうもこの事件の黒幕は、自分たち猟兵が動くのも織り込み済みであるように彼女は感じていた。
『八咫神国』のヘイト、それを猟兵という名の傭兵たちに集めることまで計算づくなのだろう。
 黒幕を引きずり出すためには、それに乗ってみるのが一番であると判断したのは、奇しくも『アイン』と同じ考え方であったことだろう。
「そのジャミング装置は確かに高度まではごまかせても――!」
 理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
 この『ネルトリンゲン』とブースターが装備された『空翔』とでは、速度が違う。今からでは間に合わないだろう。

 けれど、理緒のユーベルコードは違う。
 自身のコンピューターにキャプチャーした画像に納めた第二陣の『空翔』たちをトリミングし、同期プログラムに寄って現実と同期させる。
 そうすればどうなるのか。
「スローや一時停止もわたしの思いのままなんだよ!」
 その光景は地上でスクリーン越しに『希望の軍』の出立を見ていた民衆にとっては不可解な現象であったことだろう。

 カメラが故障したとしか思えないほどに、画面に映る『空翔』たちは動きを止めていたのだ。
 しかし、カメラに以上はない。
 どういうことなのだと誰もが驚愕した瞬間、『ネルトリンゲン』から放たれた超音波の一撃が『空翔』に備え付けられたブースターと駆動部を一気に破壊する。
 衝撃はによってブースターの装甲がひしゃげ、内部の燃料が一気に爆発する。これでは『空翔』は助からないだろう。
「でもね――! スローや一時停止が可能なら! 早送りだって可能なんだよー!」
 同期したプログラムが一気に『空翔』を『殲禍炎剣』に感知されるギリギリの高度まで加速させる。
 爆風が『空翔』を舐めるようにして吹き荒れるが、機体自体には損傷はないだろう。

 奇跡的な、いや、神がかった光景に民衆は歓声をあげる。
 けれど、『空翔』のパイロットたちは理解しただろう。これが自分たちの手柄ではないし、自分たちが何かをしたわけでもないことを。
 恐るべき理緒のユーベルコード、電脳魔術によって為されたことを畏怖し、『ネルトリンゲン』の異様に頭を垂れるように、次々と地上へと落下していく。
「これで諦めてくれた……?」
 彼等とて、別にオブリビオンマシンにとらわれていたわけでもない。
 ただ純粋に平和への道筋を見つけたいともがいて苦しんできた存在でしかないのだ。

 理緒は彼等が諦めてくれたことに安堵する。
 けれど、第二陣がそれで終わったわけではない。まだまだ諦めずに飛び立ち続ける『空翔』を見やる。護衛の機体も猟兵たちを排除しようと迫るだろう。
「ここまでは『もう一枚』の人のシナリオ通り、かな?」
 でも、と理緒は決意するのだ。
 最後まで思いどりにはさせない。この事件の黒幕の狙いは『アイン・ラーズグリーズ』そのものであることを、すでに猟兵は知っている。

 ならば、かの黒幕の思惑通りには決してさせない。
 理緒は己のユーベルコードの続く限り、この空域を支配し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
ありゃ、もう飛んだかー…
飛ぶ前にカチコミ掛けたかったけど、向こうの方が早かったか…
仕方ない、下から撃ち落とす…もとい斬り落とすか
なるべく死なないようには配慮するけど、死んだらごめんねパイロット君


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
System[Magic.Mirror]で空翔の位置情報をリアルタイムで捕捉
【Code:T.S】起動
最大サイズまで延長
下から『なぎ払い』、翼やブースターを斬る!
片手は空翔に対して攻撃を仕掛けつつ、もう片手は落ちてくる破片を斬り『斬撃波』で人の居ない所に『吹き飛ばし』てしまおう

うーん狙い辛い
でもまあ、下から剣が伸びてくるなんてビックリするっしょ?



 第二陣が空へと飛び立つのを見て、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は自分が一歩遅かったことを悟った。
 第一陣は猟兵によって防がれ、尽くを撃墜しつくしていた。パイロットたちは言わずもがな無事である。 
 それを喜ぶ暇もなく第二陣が飛び立っている。
 他の猟兵が動きを鈍らせてくれているおかげで、地上から見上げる玲にはよく『空翔』の機体の影が夜空を背にしていてもよく見えていた。
「ありゃ、もう飛んだかー……飛ぶ前にカチコミ掛けたかったけど、向こうのが早いなんて、予定通りいかないことなんていつもどおり」
 ならば、如何にするのか。

 そう、飛び立ってしまったのならば、撃ち落とせばいい。
 彼女の瞳がユーベルコードのに輝き、稲妻の如き蒼き雷光がほとばしる。
 この鋼鉄の巨人が闊歩する戦場にあって、玲は生身単身でキャバリアと渡り合うことのできる超常なる存在である。
 それを知ることができたのは、彼女と対峙したことのあるパイロットだけであったが、幸いなことにこの『八咫神国』において、彼女の存在を知る者はいない。

 いや、たった一人だけいたが、一連の事件の黒幕ともいうべき影の声の主は、玲をどうにかするつもりはなかった。
「――出力上昇、雷刃形成。Code:T.S(コード・サンダーソード)」
 つぶやく言葉とともに形成される雷刃。
 抜刀されし二振りの模造神器の力が出力を増し、蒼き雷光を纏って、周囲を昼間のように明るく照らし出す。
「鏡よ鏡、なんて柄じゃないんだけどさぁ――!」
 魔法の鏡の機能をプログラムし再現したシステムが玲に第二陣の『空翔』の位置を知らしめる。
 自動で周囲の情報を収集するシステムは、まさに魔法の鏡そのものであった。

 彼女の意識化に即座に可視化される『空翔』の姿。
 それを認めた瞬間、最大サイズまで延長された模造神器からほとばしる雷刃の刀身は、地上から上空を狙い撃つ高出力のビーム砲撃の如き一撃となって夜空にほとばしる。
 大気が歪む音が響いた。
 雷刃が音速を越えたのだ。空気の壁を突き破る轟音が、まさしく雷鳴の如く響き渡り、一瞬で『空翔』のアンダーフレームとオーバーフレームの翼を切り裂く。
「なるべく死なないように配慮するけど、死んだらごめんねパイロット君! って、他の猟兵の人救助よろしく!」
 私は、と玲の瞳がユーベルコードに輝き続ける。
 ブースターを繋ぐコネクターを狙った斬撃の一撃が、神速の如き閃光となって、『八咫神国』の夜空を何度も縦横無尽に駆け抜ける。

 ブースターが地上へと落下するまえに斬り裂き、爆風が吹き荒れる。
 それは民衆にとっては絶望そのものの光景であったことだろう。
 けれど、それでも玲は模造神器から放たれた雷刃を止めることはない。破損した機体の破片や、爆風そのものを斬撃波の一撃で切り払い、地上への被害を最小限に抑えるのだ。
「うーん狙いづらい」
 やってやれないことはない。
 けれど、どうにも狙いが雑になってしまうな、と傍から見れば十分すぎるほど精密な狙いであったにせよ、玲は自分の力が十全にふるえていないことにかぶりを振る。

「でもまあ、下から剣が伸びてくるなんてビックリするっしょ?」
 相手は飛び立つことしか考えていない。
 ならば、これを下から狙い斬ることなど容易であろう。
 彼女の力は、キャバリアこそがこの世界の主戦力にあって驚異的な人外の力として認知されることだろう。
 超常の人。

 これまで数多ものオブリビオンマシン事件において、彼女の存在はきっと『黒幕』にも伝わっていることだろう。
 どこか遠くで忌々しげな声が聞こえたかもしれない。
 それは猟兵という存在を民衆に悪しき存在として認識させ、そして『アイン・ラーズグリーズ』という存在を消し去ろうと画策した黒幕にとって、それ以上の存在としての存在感を示した玲という超常は、あまりにも強烈な印象を与える結果になる。
「なんでもかんでも思い通りにできるほど、世界は甘くはないよ」
 数多の敵があった。
 けれど、玲は微笑んで超常の力を振るう。

 蒼き雷光がほとばしり、暗雲を切り裂くように玲という存在は『八咫神国』の民衆の瞳に鮮烈なる存在として、あらゆる事柄を塗りつぶすほどに輝き続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
自分が善か悪かなんて関係無い。あたしたちはオブリビオンマシンを倒し、人々を救うだけ。

敵は天に昇るか。付いていくには、こちらも追随する必要があるわね。
機甲式『GDP-331迦利』でもって、「空中戦」といきましょう。
『迦利』に黒鴉を乗せて地上から制御。
あたしは熱狂する人々から距離をとって観戦する。

「レーザー射撃」の「弾幕」で牽制をかけ、「範囲攻撃」の「制圧射撃」。
摩利支天九字護身法で「オーラ防御」を機体先端に展開して敵群の中を突っ切り、撃破を狙えそうな機体があれば吶喊する。
機動殱龍を、一機でも多く沈めなくちゃ。
その間も、「一斉射撃」で敵の接近を阻む。

この辺のパイロットの熟練度はそこまででもないか。



『希望の軍』は混乱に陥っていた。 
 どこからともなく現れた猟兵達は、次々と飛び立とうとする機動殲龍『空翔』を撃墜して回っている。
 だというのに、パイロットを殺すことなく機体だけを破壊している姿は、彼等にとっては奇異なるものに写ったことだろう。
 そして、スクリーンでその光景を見る『八咫神国』の熱狂的な民衆は絶句していた。雷鳴の如きユーベルコードの一撃が『空翔』を破壊し、爆散する機体は絶望的な光景でしかなかっただろう。

 それ故に彼等の瞳には超常の存在が鮮烈に印象として刻まれた。
「自分が善か悪かなんて関係ない」
 そうつぶやいたのは、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)であった。
 彼女もまた猟兵の一人である。
 自身たちがオブリビオンマシンを打倒し人々を救うだけの存在であると彼女は定義していた。だからこそ、彼女はためらわない。

 ゆかりは熱狂的な視線をスクリーンに送る民衆から距離を取りつつ、己の意志で戦いに参じる。
 彼女のキャバリアは無人機、機甲式『GDP-331迦利』である。
 飛翔する逆三角形の人型ではない機体の形は、『空翔』へと追いすがり、レーザー射撃で牽制しながら次々と護衛の『空翔』を撃ち落としていく。

 本命のブースター付きをゆかりは後回しにする。
 すでに第二陣は他の猟兵に寄って撃墜されている。第三陣が飛び立つ前に護衛の『空翔』を撃ち落としておこうと思ったのだ。
「『殲禍炎剣』に感知される前に、ここで撃ち落とす。なら――オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
 彼女のユーベルコードが瞳に輝く。
 摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)によって堅牢なるオーラを纏った『迦利』が飛ぶ。

「させるものかよ――!」
『空翔』のパイロットが叫ぶ。
 凄まじい速度で翔び、一気に『迦利』との距離を詰める。衝撃波が翼から生み出され、その機体を襲う。
『空翔』のパイロットにとって、『迦利』が有人機ではないと思うことはなかったことだろう。
 それ故に衝撃波でもって機体の制御を喪わせ、叩き落とそうとしたのだ。
「そんな小手先で『迦利』が墜とせるものですか!」
 逆三角形の衝角にオーラが一点集約され、凄まじい勢いで迫る『空翔』の機体を貫く。

 オーバーフレームが吹き飛び、コクピットブロックが射出される。
「今は一機でも多く沈めなくちゃね」
 空を自在に飛ぶ『迦利』から再び牽制のレーザーが放たれ、周囲に集まってきた『空翔』を追い込んでいく。
 ひとかたまりになった『空翔』へと串刺しにするように突貫した『迦利』は爆風が吹き荒れる『八咫神国』の空を自在に駆け抜ける。

 それはスクリーン越しにもよくわかる。
 熱狂的な民衆のトーンが徐々に落ちていくのが、ゆかりにはわかった。
『希望の軍』、それは『八咫神国』の人々にとってまさに『希望』そのものであった。明日も戦いが続くかもしれないという絶望を断ち切る剣であったのだ。
 今、それが折れようとしている。
 スクリーンに映る光景は、あまりにも残酷な現実だった。

 戦いは終わらない。
 どうあっても、希望は芽吹かない。
 空を自在に飛翔し、護衛の『空翔』を次々と貫いて破壊してく『迦利』は、確かに絶望の象徴であったかもしれない。
「けれど、いつまでも打ちひしがれてうつむいている暇なんてないのよ。特にこの世界ではね」
 ゆかりは、言葉を発する代わりに力を振るう。

 確かに人々は一度は折れるだろう。
 けれど、生きるという戦いは終わらないのだ。
 生きている限り戦いは続く。他者を傷つけることではなく、己の心の戦いが続くのだ。
「生きなさい。例え、その道がどんなに険しくても――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

嗣條・マリア
“アストレア”、少し遅れましたが戦線に介入します

ジャンプユニットを最大出力で起動
『空翔』への近接戦を開始します

“タイラント”は空戦仕様ではありませんが……
敵を足場にしつつ、スラスターの出力に物を言わせて強引に上空に留まりましょう

そんな状況、空戦機から見ればいい的――かもしれませんが、暴君に触れることは叶いませんよ
“声”から伝えられる未来の情報から敵の攻撃を回避しつつ、近場の敵から敵へ攻撃を続けます
足場にもなりますからね。飛び石の要領です


希望を踏みにじるのは暴君の仕事ですから
徹底的に、蹂躙させてもらいますよ



『殲禍炎剣』破壊作戦の第三陣は飛翔する。
 ブースターが点火され、凄まじい勢いで飛び立っていく姿は圧巻であった。第一陣、第二陣と猟兵達はそれを阻止してきていたが、未だ残る機動殲龍『空翔』のパイロットたちは諦めていなかった。
 彼等にとって、この作戦を成功させることこそが正しい行いなのだ。
 明日を、未だ見ぬ平和を求めて戦う誇りを胸に、彼等はどれだけ猟兵達に襲撃されたとしても諦めることはなかった。

 その諦めの悪さ、平和への憧憬、そのために戦うという思いは尊ばれるべきものであったが、それこそが一連のクロムキャバリアにおけるオブリビオンマシンの主謀者の思惑の一つでしかないことを彼等は知らない。
 それを知る事ができたのは猟兵だけである。
 飛び立とうとしていた『空翔』へと凄まじい勢いで跳躍したのは赤い重装甲に身を包んだキャバリアであった。
「“アストレア”、少し遅れましたが戦線に介入します」
 そのコードネームを持つ猟兵の名は嗣條・マリア(アストレア・f30051)。
 兵器メーカー『ユースティティア・インダストリー』の代表でありパイロットでも在るコンツェルン会長の跡取り娘、その一人である。

 彼女の耳には声が届く。
 瞳に映るのは希望という名の明日へと足を踏み出そうと懸命に戦う『空翔』のパイロットたちの姿があった。
 彼等が『希望の軍』であるのならば、己達は彼等に敗北を齎す『絶望の軍』である。
 だが、それでもかまわない。
 この作戦が成功すれば、『八咫神国』は『殲禍炎剣』の反撃に寄って焦土と化す。
 そして、失敗したとしても希望の芽は摘まれることになる。
「希望を踏みにじるのは『暴君』の仕事ですから」
 
 だからマリアはかまわないのだ。
 己が恨まれようが、謗られようが、関係ない。
 スラスターに任せた赤い重装甲キャバリアが飛ぶ。
「あの装甲で飛ぶのか……! だが、このままやりすごせば……ぐあっ!?」
 飛翔を赦さぬとマリアの駆るキャバリアから放たれる電磁加速によって加速されたパイルバンカーの一撃が『空翔』の装甲を易易と貫き、ブースター付きの機体を破壊していく。
「くそっ! 一機やられた! 護衛機、何してる!」

 ブースター付きの『空翔』は高高度へと達するために無防備である。そのため、『空翔』の半数は護衛に回っていたのだが、他の猟兵達に気を取られ、また撃墜され数を減らしていた。
 その残った機体がマリアの赤いキャバリアへと迫る。
「この状況、空戦機から見ればいい的――」
 確かに彼女の機体は空戦機ではない。
 今もジャンプユニットを最大出力でもって機体を強引に飛ばしているだけだ。
 しかも、スラスターで今も上空に留まっているだけだ。
 少しでも出力が落ちれば、落下してしまうことは明白だった。今も徐々に高度を落としている。

「――あもしれませんが、『暴君』にふれることは叶いませんよ」
 迫る『空翔』の機体。
 放たれるミサイルと機銃の弾丸を躱しながら、落下していく赤いキャバリア。それを追って飛ぶ『空翔』は見た。

 "暴君の独立闊歩”(ヴォイド・トライアンフ)。

 それはまさにそう表現するしかないほどの行動であった。
 スラスターが噴き、一瞬で赤いキャバリアが『空翔』の機体を足蹴にして、空へと舞い飛ぶのだ。
 一瞬の交錯。
「――――“暴君”が通りますよ。道を開けてください」
 赤いキャバリアが飛び石のように『空翔』を次々と足蹴にして行動を上げていく。
 その瞳に映っているのはブースター付きの『空翔』だけであった。
 狙いは、『殲禍炎剣』へと迫る機体のみ。

 彼女が言ったのだ。
『暴君』の仕事は希望を踏みにじることだと。
 ならば徹底的に蹂躙しなければならない。ジャンプユニットがクールダウンを終え、再び、その機体を空へと跳ね上げさせる。
 その腕に装備された実体剣が『空翔』へと放たれ、まさに『暴君』の如き猛威でもって、その力を誇示する。

 赤黒い重装甲に包まれたキャバリア、そのコードネーム“タイラント”の名を知らしめるように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
地獄への道は善意で舗装されているだったか。
知恵のない善意は時として破滅を齎す。世知辛いねえ。
さあ、とりあえずは希望を絶望で塗りつぶしに行くか。

『スルト』に搭乗。『戦闘モードⅠ』の発動により超音速で空へ。

殲禍炎剣に引っかかる高高度に着くまでに殲滅か。RTAだな。

『瞬間思考力×見切り』で撃破数稼ぎの最適解を導き出し、至近距離に近づき『炎の剣』を振るっての撃破(翼狙い)をしつつ片手で強力な電撃衝波(属性攻撃:雷×範囲攻撃×衝撃波×全力魔法)による纏めての撃墜を演じます。

敵POWUCは『オド』により質量を持たせた(残像)で惑わして回避。



「地獄への道は善意で舗装されている、だったから――」
 力なき正義が正義たり得ぬのと同じように、智慧無き善意は時として破滅を齎す。
 それを世知辛いと思えるのは幸せなことであったのかもしれない。
『希望の軍』は今や多くの猟兵たちの蹴撃に寄って、その希望足り得るキャバリア部隊を喪いつつ在った。
 第一陣、第二陣と飛び立つブースター付きの機動殲龍『空翔』は尽くが一定の高度に達する前に撃ち落とされ、もしくは叩き落された。

 今は第三陣が飛び立ち、しかしてそれらを撃墜されていっている。
 たかだか十機にも満たない傭兵たちのキャバリアに圧倒される『希望の軍』は、今や混乱を極めていたと言っても過言ではない。
「世知辛いねえ。とりあえずは、希望を絶望で塗りつぶしてやるか――」
 漆黒のオブリビオンマシン『すると』が、その翼の如きユニットを展開する。
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、そのコクピットの中で瞳をユーベルコードに輝かせる。
 戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行した『スルト』の機体が発するのは黄金の魔力であった。

 暗闇の中にあっても輝く黄金の太陽の如き機体が、一瞬で音速へと至り空へと舞い上がる。
『殲禍炎剣』のレーダーに引っかかる高高度に『空翔』が到着するまでに、これらを殲滅しなければならない。
「まるでリアルタイムアタックだな!」
 迫る護衛の『空翔』から放たれたミサイルや機銃の掃射を一瞬で見切り、アレクサンドルは最短距離でもって護衛機へと肉薄する。

 残像を生み出すほどの速度で空を翔び、『スルト』の頭部が『空翔』の機首へと迫る。
 その機体のアイセンサーが妖しく煌めき、力を誇示するようでも在った。
「はやいっ……ヒッ!」
「安心しな。これ以上高く飛ばなければ、殺しはしねぇよ」
 翼をもぐように手刀の一撃が『空翔』の翼を破壊し、返す炎の剣が武装を叩き切っていく。

 爆発が空へと膨れ上がり、コクピットブロックが射出されたのを確認してアレクサンドルの瞳はいよいよもってユーベルコードに輝くのだ。
「なんなんだ、あの機体は! 悪魔じみた力を……!」
「まあ、間違ってはいねえが!」
『スルト』の手のひらから発せられた強力な電撃衝波が周囲に迫った『空翔』たちをまとめて飛行不能にし、次々と大地へと落ちていく。

「『アイン』はこれを見越して一気に戦力を投じるんじゃあなく、第一陣、第二陣と分けたな……」
 傭兵キャバリアの襲来をも見越した布陣であることをアレクサンドルは察する。
 敵の主謀者の狙いが『アイン』であるというのならば、『アイン』の目的は一体なんであったのか。
 国を裏切り、国を渡り歩き、そして今『殲禍炎剣』を破壊しようとしている。
 それはきっと善意であったのだろう。

 けれど、アレクサンドルは知っている。
 戦う力と智慧は切っても切り離せないものであると。
 間違いは正さなければならない。そのためにも、アレクサンドルはなんとしても『殲禍炎剣』に『空翔』を感知させるわけにはいかなかったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
明かりが少ないからかな
星空がとても綺麗だね

さて、違う光も見えてきた事だし
こちらもやる事をやろうかな

UCで鉑帝竜を飛竜形態に変えて接近
まあ、この形態は見た目あまり変わらないけど

敵機を発見したら背中のレールガンで狙撃
重金属塊をぶつけよう

敵がこちらに気づいて散開・迎撃しにきたら
ドッグファイトを挑もう

尻に付かれたら上昇しつつ翼を広げ急減速
追い越させて後ろから狙撃
コブラ擬きって言えるのかな、これ
頑丈で再生可能な鉑帝竜だからできる荒技だよ
…邪神の施し使わないと僕がGで死ねるけど

衝撃波での攻撃が来たら
神気と装甲で防ぎつつ
確実に数を減らしていこう

恨みはないけど
その希望を叶える訳にはいかないんだ
邪魔させて貰うよ



 クロムキャバリアにおける小国家は数あれど、人の生活圏は広くはない。
 生産の殆どをプラントに頼り切っている小国家は、必然的にプラントの周辺に生活圏が広がる。
 中心から遠のけば遠のくほどに人の生活の光はまばらになっていく。
 天文台もまたその一つであった。
 次々と飛び立ち、そして撃墜されていく機動殲龍『空翔』。それを為しているのが猟兵達である。
「灯りが少ないからかな。星空がとても綺麗だね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は小さくそうつぶやいた。
 晶の瞳に映る星空は、こんなにも綺麗であるというのに、今や夜空を染め上げるのはキャバリアの爆発の光だけであった。

「こちらもやることをやろうかな」
 式神白金竜複製模造体・改(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ・オルタ)が立ち上がる。
 飛竜形態へと姿を変えた『鉑帝竜』が勢いよく飛翔する。
 ユーベルコードに寄って強化された『鉑帝竜』は、その巨体であっても悠々と空を翔び、『空翔』の機体をレールガンで狙い、弾丸を放つ。
 重金属の塊である弾丸は、『空翔』の装甲では弾くこともできないだろう。

 一撃で爆散した『空翔』からコクピットブロックが射出されるのを確認し、晶は一気に加速する。
 互いに目的は一緒だ。
「ドッグファイトと行こうか!」
 衝撃波を伴い凄まじい速度で迫る『空翔』たち。
 それは晶の駆る『鉑帝竜』を如何にしてもブースター付きの第三陣として飛び立った『空翔』へと近づけさせぬという意志の現れであった。

 ここまで彼等は追い込まれている。
 だというのに希望を未だ捨てぬことは称賛に値する。
 衝撃波が超硬装甲の機体を揺らす。己の機体を追い越すほどの速度を誇る『空翔』を敢えて、追い越させる。
 翼を広げ、急減速した『鉑帝竜』がまるで空中で一回転するように機体を翻し、『空翔』の背を取るのだ。
「コブラ擬きって言えるのかな、これ」
 頑丈で再生可能な機体であるからこそできる荒業であった。

 そもそもこの急加速と急減速によって晶自身もまた邪神の施しがなければ、加速度Gによって内蔵をやられてしまうところであった。
「でも、それを今言ってる暇もなければ、時間もない」
 確実に敵機の数を減らしていかなければならない。
 恨みはない。
 そして、本当なら戦う理由なんて無い。轡を並べて戦うことだってできたかもしれない。
 けれど、それは叶わないのだ。
 
 この戦いの背後にいるであろう黒幕の思惑が、それをさせない。
 作戦が成功しても『八咫神国』は滅びる。失敗したとしても『希望の軍』は潰える。
 それがわかっているからこそ、晶は戦うのだ。
「その希望を叶える訳にはいかないんだ」
「何故だ、何故俺たちの邪魔を……! 明日の平和がかかっているっていうのに!」
 彼等が悪いわけではない。
 唆し、目論見、画策する者がいる。
 悪意を持って人々の希望を摘み取り、戦乱だけを望む者がいる。

 けれど、それを伝えて伝わることのない歯がゆさを晶は感じながら、絞り出すようにいうのだ。
「伝わらないから言わない……なんて、言い訳にもならないけれど」
 邪魔させてもらうよ、と重金属の弾丸が『空翔』を貫き、次々と護衛機を晶は撃ち落として、鉑帝竜の咆哮を轟かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語

希望を砕く悪役でも構わない、誰かを守れるなら喜んでなってやる
殲禍炎剣を何とかするのは今じゃないって事だ、今は落ちろ

POWで判定
まずは一度【威嚇射撃】を行い、敵を【おびき寄せる】
指定UCで義眼の藍の災い:圧壊【重量攻撃】を付与した弾丸をすぐに放てるように準備しながら、攻撃を風の【結界術】で防いだり【見切り】で回避する
一時的にでも攻撃が止まった瞬間を狙い、準備していた弾丸を【スナイパー】【全力魔法】【範囲攻撃】で放ち敵の行動を制限する【逃亡阻止】
【二回攻撃】で橙の災い:爆破【爆撃】を付与した弾丸を同様に撃ち攻撃する
必要なら【救助活動】を行う



 猟兵達と『希望の軍』との戦いは苛烈を極めていた。
 第一陣、第二陣と続くブースターによる高高度へと至らんとする機動殲龍『空翔』は尽くが撃墜された。
 さらに護衛機である『空翔』もまた次々と撃ち落とされている状況である。
 時間が経てば経つほどに事態は悪化してくのを、熱狂的な民衆たちは固唾を呑んで見守るしかなかった。
 声援を送れば送っただけ、『希望の軍』が奮戦し敵を巻き返すのだと信じて疑わなかったのは最初だけであった。

 彼等がどれだけ声援を送ったとしても、『絶望の軍』ともいうべき猟兵たちのキャバリアは『希望の軍』を圧倒していく。
 これが現実である。
 覆しようのない事実である。
 彼等は熱狂的であったからこそ、これまで無根拠な希望にすり寄っていただけなのだ。そのことを彼等は自覚したことだろう。
 理不尽という言葉が彼等の脳裏をかすめた。

「希望を砕く悪役でもかまわない」
 誰かを守れるなら喜んで悪役にでもなんにでもなってやろうじゃないかとルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は走る。
 地上に在りて、彼の姿は捉えがたいものであったことだろう。
 銀の銃兵と共に魔獣を構える。
 構えるはメガリスの銀銃。
 放たれる弾丸は、空に向かって放射状に伸びた。それは言わば威嚇射撃でもあったが、同時に彼の位置を教えるものでもあった。

「挑発的な射撃をして……! 位置を晒して空戦機キャバリアに勝とうなどと!」
 ブースター付きの機動殲龍『空翔』を護衛する機体が、反転し地上に存在する狙撃手を抹殺せんと迫る。
 地上に放たれるミサイルや機銃の弾丸がルイスを狙う。
 土煙が起こり、夜空の下ルイスの姿をかき消していく。送れてミサイルの爆風が吹き荒れ、彼の周囲が風に渦巻いていく。
 それが彼の張り巡らせた風の結界術であると知る者は多くはなかったことだろう。

「メガリスと魔銃のリンク強化完了、発射!」
 放たれるのは、強化属性弾射出(エンチャントバースト)によって強化された魔弾の一撃であった。
 義眼のメガリスが藍色の災いに輝き、圧壊の力を解き放って『空翔』の翼をひしゃげさせる。
 ひしゃげた翼で飛ぶことの叶わなくなった機体が墜落していくのを、ルイスは見ない。
 乱れ撃つ魔弾は、次々と彼の周囲を飛んでいた『空翔』を破壊し、地に失墜させるのだ。
「誰かを守れるなら喜んでなってやる。悪役だろうがなんだろうが……!」
「たかだか一機のキャバリアが……!」
「俺たちは『殲禍炎剣』を破壊するんだ……! 邪魔をするな、傭兵風情が!」
 罵倒の言葉がルイスに降り注ぐ。

 けれど、ルイスはもう覚悟を決めている。
 どれだけ悪役であると蔑まされようとも、謗られようとも、彼等の行いが彼等の滅びを齎すというのならば、それを防がねばならない。
 損な役回りであることなど百も承知である。
「『殲禍炎剣』をなんとかするのは今じゃないって事だ、今は落ちろ」
 放たれた橙色の輝きが放つ災いは爆風と成って、『空翔』たちの飛行を阻害し、次々と煽られるように失墜するのをルイスは義眼のメガリスで見ただろう。

 コクピットブロックが射出されているところを見る限り、救助の必要はない。
 けれど、仮に自分たちが救助した所で、彼等は納得しないだろう。彼等にとって自分たちは『希望』を摘む存在でしかないのだ。
「それでも。それでも決めたんだ。誰かを守れるのならって――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗

成功すれば『八咫神国』滅亡
失敗すれば落胆した民衆という次代の闘争の火種を残す
どちらにせよアイン様は…

この絵図を用意したモノに銀河帝国最上級諜報員並みの手腕だと賛辞を贈りたい程です
…悪辣な!

この戦場の為に用意したRBロングレンジビームライフルで地上から狙撃
出力向上させ射程五倍

故郷の宙間戦闘ではこれ以上の速度で射撃戦を行うのです
大気屈折率考慮に…そこです

銃身劣化による回数半減は背部コンテナから射出する予備バレル交換でカバー(継戦能力)

推力移動で地上滑走し攻撃躱し
サブアームのライフル乱れ撃ち
護衛機と攻撃撃ち落とし

何物にも縛られぬ自由得る為に空を目指す機影

もしや、彼女の行動の根幹は…



『殲禍炎剣』破壊作戦はほぼ失敗したようなものであった。
 数多の猟兵たちが傭兵として『希望の軍』に襲いかかる。機動殲龍『空翔』は第一陣、第二陣は全滅。
 全てが撃墜され、第三陣も壊滅的な打撃を被っていた。
 戦いの推移は確実の猟兵たちに流れが傾いていたのを、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が用意した巨大スクリーンを介して熱狂的な民衆は知る。

 あれだけ熱気に浮かされたようになっていた民衆たちは押し黙っていた。
 誰もが声を発することを恐れているようでも在った。
 彼等の希望そのものを猟兵たちの自身で摘み取らねばならなかったことを考えれば、この一連の事件の主謀者はわかっていたのだろう。
「成功すれば『八咫神国』滅亡。失敗すれば落胆した民衆という次代の闘争の火種を残す……」
 トリテレイアはどちらにせよ、『アイン・ラーズグリーズ』の命運が此処で尽きることを知る。
 それを知っているのはきっと猟兵の他には、この事件の黒幕であろう。

 この絵図を描いた存在。
 それはトリテレイアにとって銀河帝国最上級諜報員並の手腕だと賛辞を送るに値するほどであった。
 見事な絵図であったのだ。
 黒幕の標的が『アイン・ラーズグリーズ』である以上、これほどまで完璧に自身の存在を隠蔽したまま、事をなすということは謀略に長けたというには、あまりにも悪辣なものであった。
「……ですが、これを乗り越えてこその猟兵にして騎士。騎士らしい武装ではないどころか、メーカーの保証外使用……致し方ありません」
 トリテレイアは己を模したような白きキャバリア、『ロシナンテⅣ』に搭乗し、電子と鋼の武芸百般・設定変更運用(システム・マルチウェポンマスタリー・イレギュラー)によるロングレンジビームライフルによって地上から、ブースターを取り付けた『空翔』部隊の第三陣を狙い撃つ。

 放たれた火線は大気の屈折率を完璧に計算に入れ、一撃で『空翔』の機首を破壊し、コントロールを奪う。
 一瞬の刹那による砲撃。
 トリガーを引く自身の指先が熱を持ったような気がしたのは、トリテレイアの気の所為であったかもしれない。
 けれど、炉心に燃える騎士道精神がいうのだ。

 かの悪辣なる存在を赦してはおけぬと。
 必ずや敵を穿たねばならぬと燃えるのだ。

 故郷の宙間戦闘では、これ以上の速度で射撃戦を行うのだ。
 あまりの出力にロングレンジビームライフルの砲身が劣化し、歪む。それを背部コンテナから射出された予備バレルと交換し、再び構えた瞬間、地上より滑空する護衛の『空翔』が機銃とミサイルを伴って『ロシナンテⅣ』へと迫るのだ。
「これ以上やらせるものかよ! 長距離射撃戦用の機体だっていうんなら、この距離ならば!」
『空翔』のパイロットが叫ぶ。
 死なば諸共。
 その意志が見えて隠れる突貫であった。

「己の生命を厭いませんか!」
『ロシナンテⅣ』のスラスターを吹かせ、滑走するように地上を這う。ミサイルの爆風が機体を傾がせ、突撃してくる『空翔』の機体をサブアームに携えたライフルの乱れ撃ちによって失墜させ、さらにトリテレイアは上空を飛んでいくブースター付きの『空翔』を穿つのだ。
「くそっ……! なんで邪魔をする! 俺たちは明日の平和のために戦っているっていうのに……!」
 コクピットブロックから這い出したパイロットの瞳が『ロシナンテⅣ』を睨めつける。

 彼等の瞳には今、自分たち猟兵は『絶望の軍』としてしか映っていないだろう。
 それを咎めることも、訂正することも今はできない。
 まさにそのとおりであるからだ。自分たちが黒幕の絵図に乗った以上、そうなるのは避けられないことであった。
「彼等が求めるのもまた平和……何者にも縛られぬ自由を欲する……」
 トリテレイアは気がつく。
 そう、『アイン・ラーズグリーズ』の行動の根幹。

 これまで『グリプ5』から離反した存在でしかなかった彼女の行動の根本にあるのは、戦乱を求める心ではない。
 自由を得たいという思いでもない。
 己のことを省みぬ行いがあったからこそ、『八咫神国』のパイロットたちは彼女の意志に賛同したのだろう。

「『アイン・ラーズグリーズ』……あなたはもしや……!」
 そう、己のためではなく。
 誰かのために己の生命を擲つ存在であると、トリテレイアは確信するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
「ご主人サマ!スピード自慢だよ!今こそメルシー必殺の」
却下だ阿呆
あれはまだ見せるわけにはいかない
使うべき相手を違えるな

【属性攻撃・迷彩・空中戦】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠しつつ熱源も水のフィールドで隠蔽
【戦闘知識・情報収集・視力】
敵の陣形と動きの癖
何より前章の調査と共にジャミング装置と機体構造の把握
そして…殲禍炎剣の砲撃による人的経済的被害の起きない周辺地形も把握しておく

さて…敵が多く射程内に入れば
UC発動
【スナイパー・属性攻撃】
炎属性を強化しつつジャミング装置と制御装置のみを狙って破壊
パイロットの不殺徹底

ターゲットマルチロックというやつですよ
「種が割れただね☆」
何言ってんだおめー



 ブースターを取り付け、遥か上空に存在する暴走衛星『殲禍炎剣』を目指す機動殲龍『空翔』を護衛する同型機が凄まじい速度で迫りくる猟兵たちを迎え撃とうとしていた。
 ダブルビームカノンの威力は言うまでもない。
 鋼鉄すらも易易と貫く一撃は、猟兵たちの駆るキャバリアであっても防ぐことは難しいものであった。
 だが、その攻撃も敵と視認していればこそである。
「ご主人サマ! スピード自慢だよ! 今こそメルシー必殺の」
 そう血気盛んに言い散らしていたのは、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)のキャバリア『メリクリウス』であった。

 確かにあれをつかえば勝負は瞬時に付くだろう。
 けれど、使う相手が違うのだとカシムは『メルクリウス』を説き伏せる。
「却下だ阿呆。あれはまだ見せるわけにはいかない。使うべき相手を違えるな」
 そう、この後に控える存在をカシムは知っている。 
 エースの中のエース。
『フュンフ・エイル』の再来とまで言われた凄まじい技量を持つパイロットに己の手の内を晒すことほど恐ろしいことはない。

 光と水の属性を機体に付与し、光学迷彩によって存在を隠し、水のフィールドで隠蔽した機体を『空翔』は認識することは出来ないだろう。
 敵の布陣はすでにもうわかっている。
 第一陣、第二陣と細かく作戦部隊を分け、その護衛に半数を割いた鉄壁の布陣であった。
 しかし、第一陣と第二陣は猟兵達によって尽くを撃墜されており、護衛の機体も次々と破壊されている。

 だからこそ、カシムは潜み狙いを定めるのだ。
 機体を破壊するのもそうであるが、『新兵器』と銘打ったジャミング装置が残っていれば、それを使ってまた『希望の軍』に同調する者たちが現れるかも知れない。
 それは猟兵たちも、そして『八咫神国』にとっても捨て置くことのできないものである。
「……さて、タイミングを合わせろよ、メルシー」
 すでに『殲禍炎剣』の砲撃による人的経済的被害の起きない周辺地域の把握は終わっている。
 即ち、どこに砲撃されても被害を避けることはできないということだ。
 一撃も放たれてはならない。

「なら、無理を通すのが猟兵のやることだろうが!」
 炎の属性が強化されウィザード・ミサイルがユーベルコードに輝く。勝負は一瞬だ。
 自分の位置を悟らせぬままの不意打ちの一撃。
 この一撃を放った瞬間から自分たちの優位は消え去る。だからこそ、この一撃で必ず多くを仕留めなければならない。
 500を越えるウィザード・ミサイルが一瞬で放たれる。

「ターゲットマルチロックというやつですよ」
「種が割れた、だね☆」
「何いってんだおめー」
 そんなやり取りとは裏腹に膨大な火線を引いて放たれたウィザード・ミサイルが一瞬で『空翔』の護衛機の半数を撃ち落としていく。
 火球が『八咫神国』の上空に吹き荒れ、次々とコクピットブロックが射出されていく。
 すでに『ジャミング装置』とその制御装置の狙いはついていたのだ。
「何のために調査したんだって話ですしね」

 カシムは火球となって消えていく『空翔』たちを見やる。
 これでブースター付きの『空翔』を破壊することも用意となっただろう。けれど、それでも『希望の軍』は決して諦めないであろうことをカシムは知っている。
 皮肉にも彼等の心がこれで折れるわけではない。
 徹底的に機体を叩き、『アイン・ラーズグリーズ』を打倒しなければ、この戦いは終わらない。

 例え、それが『希望の軍』の敗北であったとしても、それを成さなければ、さらなる災厄が襲いかかるのだと猟兵達は知っている。
 けれど、それが『八咫神国』の民衆に伝わることはない。
 自分たちはきっと『絶望の軍』として彼等に認知されるだろう。それは致し方のないことである。
「けれど、滅びるよりはマシってね」
 どれだけ謗られようとも。
 これだけは言えるのだ。今日という日があったからこそと、そう言える日がきっと訪れるのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
ブースターで昇っていく機体には味方が群がりますし、
私は護衛機を殲滅しておきましょうか。
どのみち全部壊さなければならない機体です。

衝撃波応用技術では、当機が圧倒しているようですね。
擦れ違いざまのH・S・Fだけでも充分そうです。
遠いものをライフルで撃ちつつ突撃、近付いたら指定UC。

攻撃兵器として用いられる、超音速で広がる高硬度衝撃波は、
高速飛行で生まれる程度の衝撃波とは比較になりません。
大推力で突撃し、周囲の敵機を一網打尽に粉砕します。

……ま、上手に防げば胴体くらいは残るでしょう。
私は手加減しませんので。死にたくなければ頑張って下さい。



 第一陣、第二陣、第三陣と続いた『殲禍炎剣』破壊作戦の部隊は、尽くが猟兵に寄って壊滅させられていた。
 第四陣が飛び立つ意味は最早なかった。
 護衛の『空翔』もまた多くを失っており、戦いの趨勢は決したかのように思えただろう。
 これ以上の戦いは消耗するだけで『希望の軍』にとっては戦う意味のないものであった。撤退したほうが戦略的には正しいのだろう。

 けれど、彼等は諦めなかった。
『希望の軍』と呼ばれた名にふさわしい勢いで第四陣であるブースター付きの『空翔』たちが飛び立とうとしている。
 その護衛の為に飛ぶ『空翔』たちは、決死の覚悟で猟兵たちへと迫るのだ。
 機体の限界を越える突貫。
 殆どの機体が出力を上げ、猟兵たちを迎え撃たんとしているのだ。
「……どのみち全部壊さなければならない機体です」
 ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は『エイストラ』と呼ばれる汎用型高出力機を駆り、迫る『空翔』に真っ向から飛び込んでいく。

「飛び込んでくるかよ! 此処から先は行かせるか!」
 さらに加速した『空翔』の翼から放たれる衝撃並が『エイストラ』とノエルを襲う。
 だが、すれ違いざまに放たれた全方位に超音速で放射される高硬度衝撃波が、一瞬で『空翔』の機体をバラバラにしてしまう。
 かち合った衝撃波であったが、相殺されることはなかった。
「ばかな……! こちらが押し負ける!?」
「ハーデンド・ショックフロント……ラディエイション」
 振り向きざまに放たれるライフルの弾丸が、『空翔』の翼を貫き、一機、また一機と失墜させていく。

「衝撃波応用技術では、当機が圧倒しているようですね」
 攻撃兵器として用いられる、超音速で広がる高硬度衝撃波は、『空翔』が高速飛行することによって生まれる程度の衝撃波とは比較にならぬものであった。
 ならばこそ、ノエルは容赦をする必要性を感じていなかった。
 戦力で勝る存在が、格下の敵にできることなどそう多くはない。
 加減はできないし、するつもりもない。

 ノエルの瞳がユーベルコードに輝く。
 飛翔する『エイストラ』が大推力でもって戦場を駆け抜ける。
 敵機とすれ違う度に放たれる高硬度の衝撃波は、あらゆる敵を叩きのめし、失墜させていく。
 半数にまで減っていた護衛の『空翔』たちは、さらに数を減らすことになり、ノエルは残るブースター付きを他の猟兵に任せ、縦横無尽に戦場を駆け抜け『希望の軍』を混乱へと叩き落とす。
「死にたくなければ、頑張ってください……ま、上手に防げば胴体くらいは残るでしょう」

 圧倒的機体の性能差。
「くそっ……! 機体性能が違いすぎる……!」
 それによる完全上位互換の存在は、あらゆる点に置いて『空翔』を圧倒し続け、戦場にノエルの撃墜数をさらに刻むこととなる。
 彼女がそれに特別な感情を抱くかどうかはわからないが、それでも彼女の働きは、『八咫神国』の民衆に圧倒的な力の象徴として印象付けられるのだ。

「いいえ。パイロット技量の差でもあります。残念ですが、それは決して甘えぬ溝であると認識していただければ」
 だからこそ、抵抗は無意味であるとノエルは知らしめる。
 機体を捨てるならば、それで良し。
 それでもなお向かってくるのならば、機体は必ず破壊する。そうでなくても『新兵器』が摘まれた機体は全て破壊しなければならない。

 後にまた同じように『希望の軍』に同調した存在が現れぬようにと、ノエルは徹底的に叩くつもりである。
 それは変えようのない事実であり、同時にノエルの任務であるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
人の気も知らねえでカッ飛ばしてやがるっすね…
単にキャバリアを破壊するだけじゃ足りない。
自発的に諦めてもらえればいい、が…
…ああクソ、飛翔の阻止と新兵器利用の断念、
両方クリアする手はあるにはあるんだよな…!

空だ、キャバリア部隊が飛ぶ空を写せ『カサンドラ』!
『ジェード』を通じて上空に電脳空間を展開、
<ハッキング>で展開するのは【殲禍】の空だ。
実際のソレより低高度低速度でも発動する調整版。
これを躱し切れないようじゃ衛星破壊なんて夢のまた夢と納得してもらおう
…本物はこんな、キャバリアのみを狙う甘いもんじゃなく、地上と民を焼き尽くすんですから。



「急げ! 第五部隊は、第二部隊のカバーに回れ! 護衛の機体が足りないんだよ!」
「ブースター付きの『空翔』がまだ残ってる! 第四陣、行けるな!」
『希望の軍』と呼ばれたキャバリア部隊は、第一陣から第三陣まで猟兵たちの攻勢によって大打撃を受け、壊滅していた。
 本来であれば、第四陣は後詰でしかない。
 言わば保険的な戦力であったし、本命である『アイン・ラーズグリーズ』の駆る機体のバックアップを務める手はずだったのだ。

 けれど、猟兵たちの攻撃に寄って第一陣も、第二陣も、そして第三陣までもが壊滅してしまった。
「人の気も知らねえでカッ飛ばしてやがるっすね……」
 安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は虚空より現れた『カサンドラ』に搭乗し、戦局の推移を見守っていた。
『希望の軍』が諦めないことはわかっていた。
 彼等は自分たちのためだけではなく、誰かのための平和を誇りに戦っているのだ。
 誰かのために戦える者は、凄まじい力を発揮する。
 例え、それが虚偽に塗れたものであったとしても、人間の力の発露とは、ここまで高まるものかと穣は皮肉的な現実に頭を抱えた。

「単にキャバリアを破壊するだけじゃ足りない。自発的に諦めて貰えばいい、が……ああクソッ!」
 飛翔の阻止。
 新兵器利用の断念。
 その両方をクリアしなければならない。
 現状は猟兵に傾いているとは言え、この戦いが終わった後にまた同じようなことをする者たちが現れないとは決して言えない。
 いや、『ジャミング装置』や機体が残っていれば、確実にそれを行おうと思う者たちが出てくるのだ。

 誰かのために。
 その言葉を旗印に、そして平和のために善意でもって『希望』が昇るのだ。
「それが、根本的に間違っていると気が付かせなければ……!」
 穣は考える。
 そう、両方を同時にクリアする手を。
 彼の高度な情報処理能力を持つ演算が導き出した答えは、ただ一つであった。

「空だ、キャバリア部隊が飛ぶ空を映せ『カサンドラ』!」
 穣が叫んだ瞬間、『カサンドラ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 己が視た空間に電脳世界を展開する。
 それはブースター付きの『空翔』が目指す空そのものであった。違うのは、それが電脳空間が生み出した空であるということ。

 そして、その空は如何なる空かと問われたのならば、穣はこう応えるだろう。
「見飽きるくらいに見てきたものなんで」
 それは規定速度と高度に達した飛翔体に天からの砲撃を降らせる空。
 即ち、殲禍(センカ)。
 そう、このクロムキャバリアの空と同一なるものを本来の『殲禍炎剣』が蓋をする空の、さらに下に生み出したのだ。
「実際のソレより低高度、低速度でも発動する調整版っすよ。これを躱しきれないようじゃ――」

 ブースター付きの『空翔』が穣の生み出した電脳空間の空より放たれる砲撃によって、次々と破壊されていく。
 その光景は想像を絶するものであったことだろう。
 新兵器であるジャミング装置さえあれば、『殲禍炎剣』を欺くことができるはずだと彼等は思っていたのだ。
 けれど、それは調整した電脳空間であっても容易にはできず。
 そして、尽くが『殲禍』に感知され、砲撃を狙い過たず打ち込まれては撃墜されていく光景を、『希望の軍』と『八咫神国』の民衆に見せつける。

「暴走衛星破壊なんて、夢のまた夢……本物はこんな、キャバリアのみを狙う甘いもんじゃなく、地上と民を焼き尽くすんですから」
 だから、今は察して欲しい。
 自分が何故この光景を見せたのかを。
 熱狂に渦巻く頭ではなく、猟兵達が冷水を掛けて、冷静に成った頭で何度でも考えるといい。
 穣はそう思ったのだ。

「考える時間くらいは、俺たちがいくらでも与えてやるっす。だから、考えろ。決して考えることをやめるな。誰かのためだけじゃない。自分のためにも、何ができるのかを、何をしなければならないのかを、そして」
 何をしてはいけないのかを、もっともっと考えるべきだと穣は、見飽きるほどに見上げた『殲禍炎剣』の支配する空を、見上げつぶやくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
それでは改めて!
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束

フュンフさんの名前はいまだ英雄として通るんですねーさすが
それに例えられるアインさんはすごいのでしょう
でもその先に破滅があるなら見過ごせません
行きますよ!
かもんっ!『ファントムシリカ』!!

さてー
空中戦はとっても苦手な私たち!
前はスラスターで飛び上がりましたけど
今回はやめておいた方が良さそうです

というわけで地対空【快刀乱麻】で
下からばっさばさ叩き落としょう!
詠唱は短めに下から連射連射連射ー!

反撃はスラスター噴射で推進移動して回避です
負けませんよー!

※アドリブ連携OK



『殲禍炎剣』破壊作戦は完全に潰えた。
 けれど、未だ残る『空翔』を駆るパイロットたちは諦めていなかった。
 そう、彼等には最後の切り札が残っている。
『フュンフ・エイル』の再来と言われたエースの中のエース、『アイン・ラーズグリーズ』が残っている。
 彼女を少しでも確実に『殲禍炎剣』へと到達させるために、なだれ込んできた猟兵たちを止めようと『空翔』でもって決死の覚悟を示すのだ。
「これ以上は行かせるか……! あの人が、必ずやってくれる。なら、俺たちは生命だって惜しくはないんだ!」

 鋼鉄すらも撃ち貫くダブルビームカノンの砲撃が猟兵たちを襲う。
 爆炎が上がり、その中から現れたのは白と紫の機体であった。
「それでは改めて! お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、世に潜み……胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!」
 久しぶりに言えた気がします、と前口上に満足したのは、『ファントムシリカ』を駆る、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)であった。
 白猫又のアバターであるシリカが若干呆れている気がしないでもないが、今は木にしない。

 だって今回の戦いでもきっと機体を壊しそうだし、あとでばりぃってやられるだろうから、今だけは辛いことを考えなくてもいいのではないかとサージェは思ったのだ。
「それにしても『フュンフ・エイル』さんの名前は未だ英雄として通るんですねーさすが」
 そして、それに例えられる『アイン・ラーズグリーズ』もまた凄まじい技量を持っているのだろう。 
 確かに彼女の技量と装備さえ整えば『殲禍炎剣』だって破壊してみせるのかもしれない。
 けれど、その先にあるのが破滅ならば見過ごすことはできないのだ。
「行きますよ!『ファントムシリカ!」

 白と紫のキャバリアが戦場を駆け抜ける。
 空を飛ぶのではなく、地上を駆け抜ける姿は、まさに疾風のようであった。
 迫る『空翔』の放つダブルビームカノンの砲撃を躱しながら、そのアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 手にした緑色の光を放つビームダガーを振るい、巨大な三日月状のエネルギー波を上空に向かって解き放つのだ。
「そうるぶれいかーっ!!」
 きっとバーチャルキャラクター由来の彼女のデータの元となったクノイチの技名かなにかなのだろう。

 その裂帛の気合と共に放たれる斬撃は『空翔』の機体を一瞬で叩き落とし、散り際のダブルビームカノンの砲撃をスラスタ-噴射によって躱し、さらに返す刃でエネルギー波を放つのだ。
『負けませんよー! どれだけ邪魔をされたって、必ず叩き落として差し上げますから! あと、機体をなるべく壊さないように壊さないように……!」
 快刀乱麻(ブレイクアサシン)の如く、この絵図を描いた黒幕の思惑を切り裂くサージェ。
 それが本当に黒幕の思惑を切り裂くことに繋がっているかどうかはまだわからない。

 本当の標的が『八咫神国』でもなければ、猟兵でもないことを知ればなおのことである。
 黒幕の本当の標的は『アイン・ラーズグリーズ』である。
 彼女の存在が黒幕にとっては邪魔でしかないのだろう。
 もつれに縺れた思惑は、必ずやクノイチであるサージェが切り裂くだろう。
「これが、最後の一機!」
 放たれた三日月状の斬撃が『空翔』を叩き落とし、射出されたコクピットブロックが弧を描いて地上へと落下し、機体が爆散するのを背にサージェは『ファントムシリカ』と共に最後の敵を見定める。

 そう、『アイン・ラーズグリーズ』である。
 戦いの趨勢はすでに決した。
 けれど、オブリビオンマシンに乗った彼女を止めなければ、真に戦いが終わったとは言えない。
 狂気に囚われた彼女を救う事ができるのは猟兵だけである。サージェは、これより踏み入れる戦いこそが、これまでの戦い以上の激戦となる予感に震えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ブラック・クロウ』

POW   :    駆け抜ける黒い嵐
自身に【バリアにもなるオーラ・フィールド 】をまとい、高速移動と【それによって生じる衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    鴉の鉤爪
【腕部及び脚部の鉤爪 】による素早い一撃を放つ。また、【装甲をパージする】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    黒羽乱舞
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【ウイングユニット 】から【黒い羽状の無数の遠隔誘導ユニット】を放つ。

イラスト:key-chang

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルシー・ナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「姉さん! ダメだ、これ以上は!」
 ドライが叫ぶのが聞こえる。
 複座型キャバリアにはドライとフィーアが乗っている。わかっている。けれど、あのマシンは……。
 そう、暴走した『セラフィムリッパー』三号機は、己たちの知らぬ性能を発揮していた。
 暴走しつづけ、試験場を破壊へと導いた機体。
 それを止めるためにドライとフィーアは複座型のキャバリアで立ち向かっったのだ。
 けれど、圧倒的な性能を誇る三号機の前に敵うことはなかった。
「下がれよ、ドライ、フィーア。ケツくらいは持ってやるから……退けよ。たまには姉貴面させてくれ」

 死ぬのは恐ろしい。
 こんな感覚を覚えるなんて今までなかった。
 それほどまでに三号機は人外じみた力を発揮していた。これが『フュンフ・ラーズグリーズ』の本当の力、『フュンフ・エイル』の……『後継』の力なのかと身体が震えた。
 恐ろしい。
 怖い。
 どうしてこんなことに。
 そんな思いばかりが『アイン』の中に渦巻く。
 口をついて出た言葉は強がりであったが、どうにか震わせることはなかったように思えた。

 弟妹を助けることができる。
 己の生命の使い方としては上出来だと思ったのだ。
 けれど。けれど。どうしても怖いと思ってしまったのだ。
「姉さん、逃げて!」
 フィーアが叫んだ瞬間、三号機を抑え込んだ複座型のキャバリアが閃光の彼方に消えた。
 自分をかばったのだと理解した時、アインは己がどうしようもなく意気地のない存在だと理解してしまったのだ――。

 …
 ……。

「だから、あの時の二の舞はごめんなんだよ。ああ、そうさ。『自由な空を取り戻す』――そのために、私は戦うんだ。死んでしまったドライと、フィーア……そしてなによりも!」
 今はもう呪いの名前となってしまった『フュンフ』のためにも。
 戦いを終わらせる。
 必ず終わらせる。英雄には委ねない。この世界に生きる者として、己こそが戦いに終止符を打たねばならない。
 乗り込んだキャバリアが起動する。

 あの『黒幕』が用意した機体など信用がおけない。
 自分にとってキャバリアの性能など二の次である。己の手と足の拡張、それこそがキャバリアという兵器である。
 だからこそ、なんだっていい。 
『黒幕』の罠である可能性を廃した機体であれば、なんだっていいのだ。

 けれど、どこにでもいてもどこにもいない声の主が嗤う声が聞こえる。
「そうだね。君ならばそうすると思っていたよ、『アイン』。私が用意した機体には絶対に乗らないだろうとね。だからあえて用意はしなかったよ。君が、その機体に目を着けるなんて簡単なことさ。私の息が掛かっていないということが、君にとって重要なのならば、私以外の誰かが用意したものならば、君はきっと乗るってわかっていたよ」
「てめぇ――! まさか……!」
「少し骨が折れたがね。『八咫神国』。その上層部とコネクションがあってよかった。百年来の友人なんていうのは、とても大切にすべきものだとよくわかったよ」
「く、そったれ……! こんな、こんなことでッ!!」

 そう、初めから仕組まれていたことだった。
 彼女が選んだ『八咫神国』に残されてきた黒き機体。
『ブラック・クロウ』――彼女が最も警戒した『黒幕』の息が掛かっていないはずであったキャバリア。
 けれど、それを逆算されて先手を遥か昔から打たれていたのだ。
 そう、最初からそこにオブリビオンマシンは在ったのだ。

 狂えるエースが咆哮する。
 それは何処までも悲しく、そして、己の贖罪が果たされぬことを知っての慟哭であった。

 ブースターを取り外し、『ブラック・クロウ』のアイセンサーが煌めく。
 視線の先にあったのは『絶望の軍』。
 そう、猟兵たちを標的にした黒き旋風が戦場に吹き荒れるのであった――。
ユーリー・ザルティア
ふう、ホントまったく笑えない話だ。
そしてそんな話を利用する黒幕とやらはホントくだらない。
ま、その前にとりあえず…なんとか彼女を助けてやりたいものだよ。
骨折れそうだけど…やってみる価値はありそうだ。

レスヴァントで引き続き出撃だよ。
もう粒子は無い。高度とスピードには注意しないとね。ヤレヤレだ。

安全な低空での『空中戦』を挑むよ
さすがのエース中のエース。でもッ。
敵の機動を『瞬間思考力』で先読みし『操縦』テクでレスヴァントを回避させながら接近。
近距離のドッグファイトで機体を壊す。ワルツ・オブ・キャバリア発動!!
アストライアの『制圧射撃』とイニティウムによる『切断』攻撃でコックピット付近以外を破壊するよ!



『ブラック・クロウ』がエースの慟哭と共に飛ぶ。
 それはどうしようもないことであったのかもしれない。力在る者は力無き者のために。道徳倫理で解かれるようなノブレス・オブリージュは、綺麗事であると言う者がいるために、言葉は言葉にしかなりえない。
 けれど、力を振るう者がいつだってそれを言葉以上のものに変えてきたことは言うまでもないことである。
「完全なる空を、自由を、戦乱を終わらせる。必ず、終わらせる……ッ!」
 エース中のエースと呼ばれ、かつて敵国からは悪魔と呼ばれた『フュンフ・エイル』の再来たる『アイン・ラーズグリーズ』がオブリビオンマシンのもたらす狂気によって、『ブラック・クロウ』を駆り、猟兵たちへと迫る。

 その機体特性は言うまでもなく低空であれど、超高速戦闘である。
 エースの技量と相まって、その機動は変幻にして夢幻。自在にして、あらゆる戦術を凌駕するものであったことだろう。
「ふう、ホントまったく笑えない話だ。そして、そんな話を利用する黒幕とやらは、ホントくだらない」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『空翔』の第一陣を完璧なまでに退けた猟兵である。
 彼女の奥の手であった『殲禍炎剣』から感知されぬ特殊粒子は、すでに底をついた。
 すでに彼女の優位性は『ブラック・クロウ』を駆る『アイン』に対して何もない。
 ヤレヤレだ、と彼女は気乗りしない様子であったが、その瞳を見ればわかる。
 闘志が燃えている。
 ユーベルコードが輝いている。
 やってやれないことはないと、他ならぬ彼女自身が理解しているのだ。

 なんとかして『アイン』を助けたい。
 その一念がユーリーの心を燃やす。いつだってそうだけれど、エースをエースたらしめるのは技量だけではない。
 当然それは前提条件であろう。
 けれど、それ以上に必要不可欠なものがある。
「退けッ! 私の前を遮るな!」
 迫る『ブラック・クロウ』は音速を越えている。
 ソニックブームの如き衝撃波を伴って飛ぶ機体は、通常のキャバリアであれば、まるで止められないような尋常ならざる機体であったことだろう。

 だが、対する『レスヴァント』もまた並のキャバリアではなく、そしてそれを駆るユーリーもまたエースである。
「流石はエース中のエース。でもッ!」
 それに追従するのが『レスヴァント』である。
 ユーリーの瞬間思考が互いの手の内を探り、思考の中で何度も攻防が続く。敵の武装は腕部と脚部の鉤爪による四方からの近距離戦闘。
 速度で互いに互角であって手数で負ける。

「この機動についてくるとはやるようだがよッ!」
 四肢によるフェイントを交えた鉤爪の乱撃が『レスヴァント』へと襲う。
 繰り出される一撃一撃が致命的になり得る攻撃でありながら、そのどれもがフェイントの可能性を捨てきれない絶妙なタイミング。
 例え防がれたとしても次なる一撃が待ち構えている。
 だからこそ、ユーリーは己の思考をフル稼働させる。脳の神経が焼ききれるのではと思うほどの思考の加熱。

 目まぐるしく変わるモニターの光景。
「ジャケットアーマーパージ。高速起動モードへッ!」

 ――舐めるな。

 ユーリーの心にあったのは、それだけであった。
 ワルツ・オブ・キャバリア。
 それは踊るよな一撃であった。『レスヴァント』の装甲が排され、速度が一瞬『ブラック・クロウ』を上回る。
 上をとったと思った瞬間、アサルトライフルの銃口が火を噴く。
 しかし、この至近距離であっても『アイン』は銃口すらも己の機体の装甲の曲面を利用して弾くのだ。
「この距離でッ!」
「出来るんだよ、私は!」
 しかし、ユーリーは瞬時に理解する。

 これまで攻撃を完全に躱した『アイン』が遂に機体で攻撃を受け流したのだ。
 それはつまり。
「追い込まれてるってことでしょう! ぶっとべー!! ボクのレスヴァント!!」
 機体が限界を超える。
 アイセンサーが煌めき、その輝きを持ってユーリーのユーベルコードの真価を今ここに示すのだ。
 外部装甲を限界まで弾き飛ばし、それすらも弾丸に変えて『ブラック・クロウ』の機体を傾がせる。

 アサルトライフルをも投げ捨て、手にしたのはキャバリアブレードのみ。 
 だが、それでいい。
 限界まで機体を軽くした高機動モードは一瞬でも『ブラック・クロウ』の……いや、『アイン』の反射速度を上回るのだ。
「骨が折れそうだとか言ってらんない! やって見る価値があるっていうんならさ!」
 放たれた斬撃が『ブラック・クロウ』の肩部スラスターの一基を斬り裂き、その機体を失速させる。

 ユーリーは同じく失墜していく『レスヴァント』が機体の限界を越えたことを知る。
 けれど、それは同時に『エース中のエース』をも越えたことを示すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
タイプ・ブラック・クロウ、戦ったこともあるし、虚構世界の中で騎乗したこともある。
だから、基本的なところは分かってる。問題はエースの中のエースが搭乗したとき、そのスペックがどこまで引き出されるか。
やるしかないわね!

機甲式『GPD-311迦利』の高度を下げて、ブラック・クロウの迎撃に回す。「レーザー射撃」で牽制して、「オーラ防御」の防護をかけた先端で突撃。
アインはおそらくこの戦法も観測しているはずよね。だから通じはしない。これはあくまでも詭計の一環。
ブラック・クロウの衝撃波で損傷離脱すると見せかけて、上空に絶陣を敷く!
墜とすは星。「結界術」「全力魔法」破壊の「属性攻撃」「範囲攻撃」の天烈陣よ!



『エース中のエース』。
 その言葉の意味を村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は身を持って知ることになる。
 これまでクロムキャバリアにおいて『エース』と呼ばれるパイロットの駆るオブリビオンマシンは数多あれど、『アイン・ラーズグリーズ』の駆るキャバリアは別格であった。
 機体が、という意味でもなければ、機体性能を引き出しているという意味でもない。
 彼女はおそらくどんなキャバリアであれ、機体性能の限界を越えてくる。
 そういうパイロットなのだ。
「それが『エース中のエース』ってわけね!」
 飛翔する『ブラック・クロウ』。
 すでに猟兵のキャバリアによる一撃で、スラスターの一基を失っているというのに、失墜から機体を立て直し、再び高速で飛ぶ姿は流麗であった。

 一種の美しささえ感じさせる挙動はゆかりにとっては脅威そのものでしかなかった。
「戦ったことも在るし、虚構世界の中で騎乗したこともある。けど――!」
 己の操る無人機型のキャバリア、機甲式『GPD-311迦利』が『ブラック・クロウ』の鉤爪の一撃で体勢を崩すのを視た。
 互いに『殲禍炎剣』の砲撃を避けるために低高度で飛翔しているにも関わらず、『ブラック・クロウ』の攻撃は一方的に『迦利』に当たるのに、こちらのレーザー射撃が牽制にもなりえないのだ。

「なまっちょろい攻撃を! こっちの防御を見越した射撃なんざな」
 当たらないんだよ、と『アイン』が叫ぶ。
 狂気に侵されてなお、この技量。凄まじいと呼ぶにふさわしい。
 けれど、ゆかりは感じていた。

 あの『熾盛』には及ばない。

 そう、虚構世界にて対峙したキャバリアデータ。
 あの技量とは違う。
『フュンフ・エイル』の再来と呼ばれた彼女が、『フュンフ・エイル』とは異なるパイロットとしての素養も持っていることは疑いようがない。
「スペックを限界以上に引き出すのが、あなたの力だっていうのなら!」
 レーザー射撃が『迦利』より放たれ続ける。
 牽制でもなんでもない。
 彼女の言う通りだ。これで相手をどうにかできるとは思っていない。だから、これはあくまで詭計の一環でしかない。
「何を考えているか、わかるぜ。狙ってやがるし、誘っていやがるな。ならさぁ!」

 瞬間、『ブラック・クロウ』の機体を包み込むオーラ・フィールド。
 それは攻防一体のユーベルコードである。
 機体を防御すると同時に、攻撃へと転ずることのできるオーラ・フィールドは言わば矛と盾を備えた存在である。
 そこに矛盾は生じない。
 頑強なるフィールドと鋭き鋭角は両立するのだ。
「機体に乗らずに、己の身を守ることばかり考えているやつに負けるものかよ!」
『ブラック・クロウ』がその機体の名の通り、黒き弾丸となって『迦利』を吹き飛ばす。

「やはり、通じない……けどね! 墜とすは星」
 ゆかりのユーベルコードが輝く。
 鉄鉢によって空へと飛翔したゆかりが見下ろすのは、『ブラック・クロウ』の機体。
 必ず敵は、『アイン』は『迦利』から処理しようとする。
 クロムキャバリアにおいてキャバリアが戦場の主役であるように、脅威であるのは当然歩兵よりも戦術兵器であるキャバリアだ。
 だからこそ、『迦利』を先に破壊する。
 ゆかり自身には目もくれようとしない。それがわかっていたからこそ、ゆかりの瞳は空にてユーベルコードに輝く。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天より降り注ぐ先触れのかそけき光よ。滅びの遣いを導き、地上をなぎ払え。疾!」
 空に輝くは、天烈陣(テンレツジン)。
 如何に『ブラック・クロウ』が高速戦闘に長けた機体であったとしても、その速度は直線的なものである。
 虚構世界でも搭乗したことがあるからわかっている。
 どれだけ早くても、空を覆う面での攻撃には脆い。

 戦場と成った夜空から降り注ぐ光の流星雨が、凄まじい勢いで降り注ぎ『ブラック・クロウ』の機体を打ち付ける。
 それでもなお機体を失墜させないのは見事というほかなかった。
 しかし、それはマーカーでしかないのだ。
「てめぇ……! そっちが本命だって言うのか!」
「ええ、貴女は絶対にそうするってわかっていたわ。必ず致命傷にならぬ攻撃は機体で受ける。機体の制御を優先させる。それがかつての『フュンフ・エイル』との違い」
 そう、『フュンフ・エイル』は己の機体を喪うこと、体勢が崩れることを気にしていなかった。
 いや、厳密には、それすらも利用し即座に防御から攻勢に転じていた。

 だからこそ、彼と彼女は違う。
「さあ、受けなさい。この一撃を!」
 空に浮かぶ陣より現れるは燃え盛る巨大隕石。
 その大地を穿つ一撃が、『ブラック・クロウ』目掛けて墜ち、オブリビオンマシンの枷から彼女を解き放たんとえぐるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
つまるところ――

貴方はあくまでも『フュンフの再来』に
止まる人であって、フュンフそのものでもなく、
『フュンフすら超えたアイン』にもなれていないのです。

他人の名前で呼ばれている内は、一人前とは言えません。
それがあなたの正味の姿です。

先制攻撃/指定UC。
索敵/第六感/見切り/操縦/推力移動/空中機動。

遠距離はスナイパー/貫通攻撃/ライフル。
中距離は砲撃/範囲攻撃/鎧無視攻撃/キャノン。
近距離は咄嗟の一撃/一斉発射/ミサイル(ノーロック)。
距離が逆? いいえ、これが私の、私だけの戦術です。

エイストラは次世代技術のテストベッドです。
現用技術にそうそう圧倒はされません。
速度で勝とうと思ってはいけませんよ。



 ユーベルコードの輝き見せた巨大な隕石の落下は、『ブラック・クロウ』の加速をもってしても完全に躱すことは不可能であった。
 しかし、オーラ・フィールドと一部の機体装甲を切除することによって全壊を免れたのは『アイン・ラーズグリーズ』の技量があってのことであろう。
 機体の状態は万全とは最早言えない。
 スラスターの一基は破壊されているし、機体装甲のあちこちは剥離しかけている。
 だが、それでもなお機体を包み込むオーラ・フィールドは健在であった。
「チッ……! 機体フレームが無事であることが幸いか……だがよッ!」
 機体の速度は未だ衰えない。
 不完全ながらも機体は未だ動く。限定的な空戦機であることを考えれば、驚異的な耐久度であったと言えよう。

「つまるところ――」
 その声は全方位の回線……秘匿でもなければ味方間における周波数でもない、全てのレンジにおいて伝えられるノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)であった。
 彼女の駆るキャバリア『エイストラ』から発せられたことを知り、『アイン』は訝しむ。
「全周囲の通信……何を考えていやがる」
「貴方はあくまでも『フュンフの再来』にとどまる人であって、フュンフそのものでもなく、『フュンフすらも超えたアイン』にもなれていないのです」
 その言葉は挑発でもあり、事実でもあった。

 どれだけ『フュンフ・エイルの再来』と呼ばれた悪魔的なキャバリア操縦技術も、『アイン』というパイロットの素養を的確に示したものではない。
 どんなキャバリアですら機体限界を超えて駆動させる事ができ、同時に機体を保たせることにも長けている彼女の技量は確かに卓越したものであったことだろう。
 けれど、ノエルにとってそれはあまり意味をなさない。
 誰かの名前で呼ばれているうちは、一人前とは言えない。
 彼女にとって目の前に対峙している敵は『フュンフ・エイルの再来』ではなく、ただの『アイン』だったのだ。

「それがあなたの正味の姿です」
 まるでそれは社交ダンスを踊るかのような所作であった。
 フォックストロット。
 そのユーベルコードはっまるで呼吸をずらした家のような僅かな間隙。どれだけ『ブラック・クロウ』が高機動であったとしても、凄まじい加速と急減速、そして急旋回を可能とした機体であれど関係がない。

 攻撃とは即ち呼吸と呼吸を読み合うものである。
 互いに空中機動に寄って、両者の攻撃は決定的なものにはなり得なかった。
「そんなことはわかってんだよ! 誰がそう呼んでくれと頼んだ! 私の名前は――!」
 オーラ・フィールドが展開され、『エイストラ』の放つライフルを防ぐ。
 貫通する弾丸すらも『ブラック・クロウ』は機体を捻って躱す。砲撃の一撃が広範囲に爆風を吹き荒れさせ、その機体の体勢を崩す。
 だが、それでも『アイン』は機体を制御し、即座に飛び立つのだ。
「『アイン』だ。それ以上でもそれ以下でもない。ただ、この蓋をされた空を、その帳を、書き割りを切り裂かねばならないと感じた私だけの名前だ!」

 オーラ・フィールドによって黒い弾丸と化した『ブラック・クロウ』が『エイストラ』へと迫る。
 背後を取った瞬間、躱しようのない一撃を見舞おうとして、『アイン』は目を剥いただろう。
「このタイミングで――!」
 放たれたのは視さいrうであった。とっさの一撃。レーダーにも反応していないタイミングでノエルはミサイルの発射を敢行していた。

 機体のモニターには警告が鳴り響いている。
 本来の用途では扱うことのない武装の選択にエラーが出ているのだろう。適性距離ですらないと警告メッセージが出ているが、ノエルは気にしていなかった。
「いいえ、これが私の、私だけの戦術です」
『エイストラ』は次世代技術のテストヘッド機体である。
 現行の技術を使った機体にそうそう圧倒はされない。

 ならば、彼女を押しているのは何か。
 それは他ならぬ『アイン』の技量であろう。とっさに放ったミサイルの爆風ですら『ブラック・クロウ』はオーラ・フィールドを展開し防いでいるのだ。
「速度で勝とうと思ってはいけませんよ」
 呼吸が乱れている。
 ノエルは冷静であった。
 爆風吹き荒れる中を『エイストラ』がかき分けるようにして飛ぶ。肉薄するは『ブラック・クロウ』の眼前。
 互いのアイセンサーが交錯し、完全にノエルは『アイン』の呼吸を読み切っていた。

『ブラック・クロウ』の四肢は鉤爪の乱撃。
 放たれる全てがフェイントであり、本命でもあった。しかし、ノエルの瞳にユーベルコードが輝いている限り、その攻撃は意味をなさない。
「ラグのお時間です」
 読みきった呼吸。
 それさえわかれば、ノエルを捉える攻撃など放つことはできない。
 嵐のような舞踏をする二機のキャバリアが『八咫神国』の空に、付かず離れずの機動を行い、猛烈なる攻防を繰り広げる。

 フレキシブルアームが『ブラック・クロウ』の両足を抑え、互いの腕部が組み合う。
「それでは、さようなら」
 ラグタイムは終わりを告げる。
 そして、ずらされた呼吸の隙間を縫うように『エイストラ』の脚部が放つ蹴撃によって『ブラック・クロウ』は遂に大地へと失墜するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『アイン』さん、やっと見つけたと思ったら……。

『殲禍炎剣』を破壊したい、戦いを終わらせたい。その気持ちは本物だと思うし、
わざとエサに乗って、黒幕を引きずり出して倒す。その作戦もいいけれど……。

あの『装置』では『殲禍炎剣』の破壊ができないこと解っていたよね。
そして、猟兵が来るんじゃないかって、思っていたんじゃないかな?

なら、ここからの展開も解るよね。
あなたは死ねない。わたしたちが助けるからね!

【E.C.M】で電子機器をオーバーロードさせて、
『ブラック・クロウ』の内部機能を破壊していこう。

贖罪の気持ちがあるなら、めいっぱい生きることこそ贖罪だよ。
「あなたには、死ぬまで生きる責任があるんだから!」



 クロムキャバリアにおける『グリプ5』を巡るオブリビオンマシン事件の影にはいつも『アイン・ラーズグリーズ』の関与があった。
 関与はあれど、姿を見せることはなかった。
 猟兵達は彼女の存在を知れど、直接対峙したことはなかったのだ。
 しかし、今皮肉にもオブリビオンマシンによって彼女の存在は猟兵たちの知るところと為る。
「『アイン』さん、やっと見つけたと思ったら……」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は彼女の姿を認め、彼女の目的がなんであるかをようやくにして知ったのだ。

『殲禍炎剣』を破壊したい。
 戦いを終わらせたい。
 その気持ちが本物であることを知り、また彼女の弟妹たちを守りたいという願いが真実であることを知る。
 彼女がそのために今まで何をしてきたのかは伺い知るしかない。
「わざと餌に乗って、黒幕を引きずり出して倒す。その作戦もいいけれど……」
 それは否定しない。

 おそらくそれで可能であったのだ。
 本当に『ジャミング装置』が『殲禍炎剣』を欺くことができたのならば、彼女だけの力で持って『殲禍炎剣』さえも破壊することが出来たのだ。
「けど……」
「しゃらくせえ! この程度で私を墜とすと!」
 黒きキャバリアが飛ぶ。
 失墜した機体を立ち上がらせ、そのウィングユニットから射出された黒き翅のような遠隔誘導ユニットが理緒へと迫るのだ。

「あの『装置』では『殲禍炎剣』の破壊ができないこと解っていたよね。そして、猟兵が来るんじゃないかって、思っていたんじゃないかな?」
 理緒はそうであって欲しいと思った。
 自分だけの力だけでなんとかしようとするのではなく、自分たちを頼ってほしかった。
 誰かのために戦う者に、協力を惜しむほど自分たちは狭量ではないのだから。

「いいや。私は私だけの力で戦争を終らせる。それが先駆けたる私の役目だからだ。『今度こそ』――……『今度こそ』?」
 遠隔誘導ユニットが揺らぐ。
 何故、今彼女が揺らいだのか理緒にはわからなかった。
 けれど、たった一つだけ確かなことがある。
「ここからの展開がどうなるか、わかるよね。あなたは死ねない。わたしたちが助けるからね!」
 そう、彼女を助ける。

 オブリビオンマシンに呑まれたままになんか絶対にさせないと理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女は贖罪を求めている。
 心の奥底で、かつて為し得なかったことを、そして救われた生命の使い所を捜しているのだろう。
 だから出奔したのだ。
 誰にも頼らず、誰も犠牲にすることなく。

 かつての師でもあった『アジン』、『フルーⅦ』の動乱においても猟兵が彼を救うのだと知っていたからこそ、彼女は行動を起こしたのだ。
 それが綱渡りように危うい道であっても彼女は選んだのだ。
「なら、それに報いるためには! 潰させてもらっちゃうね」
 ミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』の電波妨害装置からノイズジャミングとディセプションが放たれ、遠隔誘導ユニットである黒き翅のような攻撃端末の動きを封じる。

 それが理緒のユーベルコードであるE.C.M(イー・シー・エム)の力であった。
 ノイズジャミングは一気に『ブラック・クロウ』に走り、その内部機構をきしませる。
 しかし、それでも『ブラック・クロウ』は飛ぶ。
 どこまで自由を求めるように、けれど、それは自分のための自由ではない。
『ブラック・クロウ』を駆る『アイン』の大切に思う者たちのために、この空を開放しなければならないのだ。
「贖罪など、私は求めてなんかいない。私に必要なのは――!」
 そう、罰だ。
 罪在りきというのならば、罰があって然るべきである。

 彼女の自罰的なまでの行動の全ては其処に帰結する。
 だからこそ、理緒は叫ぶのだ。
「あなたには、死ぬまで生きる責任があるんだから!」
 弟妹のことを思うのであればこそ。
 彼女は生きなければならない。どれだけの贖罪が必要であってもかまわない。彼女が大切に思う彼らは、きっと彼女が生きることを望むだろうから。

「あなたはお姉ちゃんでしょう――!」
 理緒のユーベルコードに輝く瞳が『ブラック・クロウ』を、『アイン』を真っ向に見据え、その辿るべき道を示すように煌めくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アレクサンドル・バジル
さーて、エースのアインちゃんの出撃か。
結局、オブリビオンマシンに乗ってるんだったな。
避けてたみてえだが黒幕が一枚上手だったと。
まあ、乗騎がオブリビオンマシンだろうが否だろうが、この戦場に出てきている以上、落とすことに変わりはないんだけどな。

『戦闘モードⅠ』の黄金を纏った『スルト』に乗り対峙。
ゴッドハンドの体術を『スルト・コックピット』の力で完全再現して疾風迅雷の攻めを。
敵POWUCの衝撃波を自機から発する衝撃波で相殺して接近。
オーラ・フィールドを収斂させたオドを纏わせた拳で突き破り、痛撃を与えます。(貫通攻撃)

ハハハ、今回は一杯食わされた見てえだが、生き延びたらそれを糧にするんだな。



 機体が軋むのを『アイン・ラーズグリーズ』は感じていた。
 並のパイロットであれば機体を放棄し、己の生命を守ることを優先しただろう。だが、彼女は止まらない。
 彼女が並のパイロットではないことを示すためでもなければ、『エース』であるからでもない。
 オブリビオンマシンに思想を狂わされてもなお、その胸に在ったのは姉であることへの矜持だけであった。
「そうだよ。私は姉だ。弟妹を守らなきゃならないんだよ」
 皮肉なものであった。

 彼女の存在は今まで猟兵達に捉えられることはなかった。
 クロムキャバリアにおける『グリプ5』を巡るオブリビオンマシンの事件に彼女の影は常にあれど、彼女自身と相まみえることはなかったのだ。
 けれど、オブリビオンマシンに乗ったことによって、彼女が猟兵の敵となったのは皮肉以外の何者でもない。
 ここまで至らねば線が交わることもなかったのだ。
「黒幕が一枚上手だったってわけだ」
 アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)に移行したオブリビオンマシン『スルト』のコクピットの中で腕を組む。

 その姿はトレースされ、『スルト』もまた腕組みをして大地に降り立つ。
 飛翔し、オーラ・フィールドを纏った『ブラック・クロウ』が凄まじい加速でもって同じオブリビオンマシンへと迫るのを彼の瞳が見つめた瞬間、凄まじい速度で『スルト』と『ブラック・クロウ』が組み合う。
 アイセンサーが工作し、互いのユーベルコードの輝きを持って己のが上であると知らしめるように腕部フレームが軋む音を聞いた。
「ハハハ、今回は一杯食わされたみてえだが、生き延びたらそれを糧にするんだな」
「誰にものを言ってるんだ? なあ、おい!」
『ブラック・クロウ』の脚部が跳ね上がり、密着した状態から『スルト』の頭部の顎を蹴り上げる。

 ぐるりと宙で一回転して、さらに振り下ろされる脚部の鉤爪の一撃が『スルト』のフェイスカバーを切り裂く。
「チッ――。完全に頭部を叩き潰すつもりだったが!」
『アイン』は驚愕してはいないものの、『スルト』の動きに素直に賛辞を送る。
 近接戦闘に置いて、ここまで必殺の一撃を躱されたのもまた、そう多くはない経験であったからだ。
「甘いんだよ、詰めがな!」
 アレクサンドルの瞳がユーベルコードに輝く。

 目の前の『アイン』は確かに強い。
 黄金の魔力が膨れ上がっていくのを感じる。強敵。己の動きを完全にトレースする動きでもって『スルト』が咆哮する。
 炉心が燃え、その魔力はさらなる力を齎す。
 機体の限界を越えて駆動させるのが『アイン』のパイロットとしての力であるというのならば、己もまたそうである。
「フィールドがあろうが、関係ねえ!」
 オーラ・フィールドを相殺しながら、『スルト』の放つ拳が『ブラック・クロウ』に迫る。

 互いの拳と蹴撃が躱され、しかし一進一退の攻防へと発展していく。
 オーラ・フィールドはすでに魔力を込めた拳でもって突き破られている。再度展開するには時間がかかるだろう。
「再展開――」
「それはさせねえよ。疾風迅雷とはこういうことを言うんだ!」
 黄金のオーラを纏った拳のラッシュが洪水のように『ブラック・クロウ』へと放たれる。
 息をつかせぬ連撃は、『ブラック・クロウ』の四肢を持ってようやくに五分である。

「――さらに上げてくぞ」
 そう、これまでアレクサンドルは拳だけで応対していた。
 そこに蹴撃まで加わればどうなるかは一目瞭然であった。
「機体を選ばないのは、大したもんだが……そんな空戦機で格闘戦をやってのけるのは無理があったな」
 アレクサンドルの『スルト』の拳が『アイン』の駆る『ブラック・クロウ』の片腕を粉砕する。

 オーラ・フィールドを収束させた拳とぶつかってもなお、アレクサンドルの魔力纏う拳の威力は凄まじく。
 片腕を奪うほどの一撃で持ってアレクサンドルは笑うのだ。
「次があるんなら、素面で戦ってみてえもんだな――」
 そうすれば、もっと爽快な気分であろう。
 そんな風に思うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
AIは女性の声で敬語

業腹だが黒幕の方が一枚上手だったと認めないといけないな
今のままでは贖罪も自由な空の奪還も行えない、頭を冷やしてこい

POWで判定
AIと一緒に【情報収集】しながら、敵の攻撃を風の【結界術】や【見切り】【早業】で回避
指定UCで藍の災い:圧壊【重量攻撃】を付与した弾丸を【全力魔法】【範囲攻撃】【貫通攻撃】で放ち、敵をオーラフィールドごと重力で押さえつけ攻撃しつつ【逃亡阻止】を行う
必要なら【二回攻撃】で橙の災い:爆破【爆撃】を弾丸に付与し攻撃する



 魔力まとう拳の一撃に寄って『ブラック・クロウ』の片腕が吹き飛ぶ。
 残骸が夜空に舞い、その破片がキラキラと星光を受けて煌めく姿はいっそ美しささえ感じさせた。
「まだ、だ……私が、この戦いを終わらすためには!」
『アイン・ラーズグリーズ』が折れることはない。
 今までも。
 これからも。
 ずっと彼女は一人で戦ってきたのだ。

 弟妹を守るために。
 ただそれだけのために。いや、違うなと冷静な彼女の心が何処かでつぶやく。
 それはいいわけでしか無いのだと。
 結局の所、これは贖罪に他ならない。己のために喪われた弟妹の生命に贖うために彼女は戦い続けた。
 残された弟妹のためにできることをしなければならない。
「なら、戦争を今すぐ終わらせてみせろよ!」
 己を止めるということは、即ちそういうことであった。
 慟哭の如き咆哮がほとばしり、オブリビオンマシン『ブラック・クロウ』のアイセンサーが煌めく。

 狂気に侵されているとは言え、彼女の力は本物であった。
「業腹だが、黒幕のほうが一枚上手だったと認めないといけないな……」
 オーラ・フィールドを纏い、攻防一体の弾丸と化した『ブラック・クロウ』を追ってルイス・グリッド(生者の盾・f26203)はつぶやいた。
 銀の銃兵では追いつけない圧倒的な速度。
 そして、攻防一体のフィールドを纏う『ブラック・クロウ』の一撃は体当たりそのものであったが、受ければこちらの機体がおそらく保たない。

 一撃でも受ければ自身の敗北に為ることをルイスは悟っていた。
 だからこそ、負けては居られないのだ。
 どれだけ力量差があろうが、負けてなどいられない。これが黒幕の描いた絵図であるというのならばなおさらのことである。
「贖罪……それが『アイン』、お前のやらねばならぬことであるというのなら――!」
 ルイスは叫ぶ。
 AIが警告を告げるがもう遅い。
 目の前にはオーラ・フィールドを纏った『ブラック・クロウ』の機影があった。


 一瞬の交錯の後に衝撃波でもって己の機体は打ちのめされるだろう。
 だからこそ、ルイスは覚悟を決める。
 見切ることは難しい。
 そして、受けることもできない。
 ならばどうするか。
「メガリスと魔銃のリンク強化完了、発射!」
 彼の義眼のメガリスがユーベルコードに輝く。
 銀の銃兵が構えた魔銃が藍色の災いに輝き、圧壊の強化属性弾射出(エンチャントバースト)によって打ち込まれた弾丸がオーラ・フィールドにぶつかって凄まじい重量を解き放ち、その動きを止める。

 飛翔する『ブラック・クロウ』の動きが止まる。
「――ッ! 弾丸に何か仕掛けやがったな!」
「オーラ・フィールドを展開している以上、躱す必要はないと判断したんだろうが、それが命取りだ!」
 銃兵の魔銃に次弾が装填される。
 一瞬の出来事であった。展開された藍色の災いに寄る圧壊。それはオーラ・フィールドを破壊するには居たらなかった。

 けれど、それで十分だったのだ。
 動きを止める、ただそれだけのためにルイスは一撃目を放ったのだから。
「今のままでは贖罪も自由な空の奪還も行えない……」
 ルイスは銃口を『ブラック・クロウ』へと向ける。
 その義眼が輝くのは橙色であった。
 トリガーを引く指に力がこもる。万感の思いを込めた一撃であった。
「頭を冷やしてこい」
 それまでは待っていてやる。
 そういうようにルイスは強化された属性を込めた弾丸を解き放つ。爆撃の如き爆発が『ブラック・クロウ』を飲み込み、『アイン』を囚えるオブリビオンマシンの狂気を薙ぎ払うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
色々事情はあるようだし
恨みがある訳でもないけど
放置できないから止めさせて貰うよ
悪いね

射撃で牽制しつつ接近
遠隔誘導ユニットが射出されたら
こちらもUCAV2機を複製創造し
ミサイルで迎撃
爆煙に紛れながら接近しよう

とはいえ中々勝負を決められないね
流石にキャバリアの操縦技術だけなら
相手の方が一枚上手かな

でも鉑帝竜はキャバリアの様な何かなんだ
突撃を躱されそうになる瞬間に
鉑帝竜の片足を神気で空中に固定し
それを軸に強引に回転
不意打ちで速度の乗った尻尾の一撃を叩きこもう

体勢が崩れたところにUCAVのミサイルと
レールガンによる全方位攻撃を行うよ

理不尽な事ばかりで同情するけど
黒幕をなんとかする為にも生きてて欲しいな



 色々と事情があるのだろうなと察することはできる。
 けれど、完全に理解ができるほど人間は簡単なものではない。
 胸の内側を覗き見ることができないように、人は言葉というコミュニケーションによって互いを理解し、そして理解しきれぬことを知る。
 どうあっても理解出来ない存在が隣りにいる。
 それを悲しむことはあれど、決してネガティブな意味ではないことを知ることができたのならば、人は真に理解を得たと言えるであろう。
「恨みがある訳でもないけど、放置できないから止めさせて貰うよ」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、試製竜騎「鉑帝竜」を駆り、『ブラック・クロウ』へと迫る。

 すでにスラスターを一基と装甲の一部を剥離、そして片腕を損失した『ブラック・クロウ』は劣勢と呼ぶにふさわしい状態であった。
 けれど、それを覆すのが『エース』であるのならば、『エースの中のエース』と呼ばれた『アイン』は機体の限界を越えて駆動させる。
「止める? 私を止めるといったな。なら――」
 こちらも容赦などしない。
 今の『アイン』にとって必要なのは『殲禍炎剣』を破壊し、自由な空を取り戻すということだけだ。

 本来の彼女であれば、確かにそれが最終目標であれど段階を踏み、確実にできるタイミングを見計らって撤退もするだろう。
 しかし、オブリビオンマシンによって狂わされた彼女はそれをしない。
 試製竜騎「鉑帝竜」から放たれた弾丸が『ブラック・クロウ』を牽制するが、まったく意に介さない。
 それほどまでの機動で持って距離を詰めてくるのだ。
「生ぬるい射撃で止められるものかよ! 『ブラック・クロウ』!!」
 ウィングユニットから射出された羽状の遠隔誘導攻撃ユニットが飛翔する。
 未だ数を減らしていない遠隔誘導攻撃ユニットは、晶へと迫る。オールレンジ攻撃とはよく言ったいものだ。
 遠近共に隙のない攻撃。

 ぐるりと機体を取り囲み、死角から攻撃を加える技量。
 さらにはそれらを操りながら、突貫してくる大胆さ。距離を取るという概念がないのかと思うほどであったが、晶は冷静であった。
 放たれたミサイルを遠隔誘導攻撃ユニットが斬り裂き、爆風が吹き荒れる。
「とは言え、勝負を決めきれないよね」
 互いの攻撃はどれも牽制のものばかりであった。
 晶は『アイン』の技量を警戒するし、『アイン』は見慣れぬキャバリアの特性を未だつかみきれていなかった。

 攻めあぐねた結果が、今の攻防であるのならば晶は意を決する。
 爆風の中をかき分け、一気に試製竜騎「鉑帝竜」が飛ぶ。
「その程度の動きで、こちらの虚を突いたつもりかよ!」
 即座に対応する技量が『アイン』にはある。
 しかし、試製竜騎「鉑帝竜」はキャバリアのような『何か』なのだ。
 厳密にはキャバリアではない。そして、それを駆る晶もまたただのパイロットではない。

 爆風に紛れた突撃をかわされた瞬間、神気によって固定された空間が機体の足を固定する。
 それを中心に強引に回転する。
 脚部のフレームがきしみをあげるが気にしていられなかった。
 不意打ちの一撃。
 普通のキャバリアでは不可能な挙動。
 たった一度の不意打ちだけが『アイン』を欺く事が可能である。二度目は絶対にない。必ず対応される。
「君の技量を信用しているのさ。悪いけれど!」
 そう、普通のキャバリアという戦術兵器であれば、人型をする意味は戦術を扱うという一点においてあらゆる兵器を凌駕する。

 だからこそ、攻撃の起点はオーバーフレーム、腕に限定される。
 だが、試製竜騎「鉑帝竜」は違う。
 その竜の名を持つ機体は、尾を持ち、回転に寄って得られた運動エネルギーそのままに一拍遅れて尻尾の一撃を『ブラック・クロウ』に見舞うのだ。
「理不尽なことばかりで同情するけど、黒幕をなんとかするためにも生きてて欲しいな。だって、君が生きているっていうことが、黒幕にとっては最大の誤算なんだろうし、ね――」
 その瞳がユーベルコードに輝き、試製火力支援無人航空機(ファイアサポート・ドローン)が展開する。
 複雑な幾何学模様を描き飛翔する小型ミサイルの群れが『ブラック・クロウ』を飲み込んでいく。

 爆炎が上がる中に消えた『ブラック・クロウ』。
 その姿を見て、晶は未だ見ぬ黒幕の思惑通りにことが運ばぬようにと、理不尽を打倒するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
【戦闘知識・情報収集・視力】
アインの技能と戦い方
今迄の動きを叩き込む

ようアインさんよ
僕じゃお前には勝てそうにない
僕一人じゃな
…メルシー
お前が神機というなら
奴に負けてはいないな
「勿論だよご主人サマ!メルシーは最強だぞ☆」
なら限界を超えて尽くせ
腕の差は性能差で埋めますよ

UC発動!
神速戦闘開始!
但し高度は注意!
【念動力・空中戦・武器受け】
念動障壁を纏っての機体制御で低空での超高速での旋回制動制御を可能と成す
敵の攻撃を回避しきれない時は鎌剣で受
【属性攻撃・弾幕・範囲攻撃・瞬間思考】
砲撃兵装からの光弾の弾幕を展開
どう回避して動くかも即座に読み切り
【二回攻撃・切断】
鎌剣での神速連続斬撃!

お前も猟兵になれ



 これまで猟兵との戦いによって『アイン・ラーズグリーズ』が駆るオブリビオンマシン『ブラック・クロウ』は消耗していた。
 それは間違いのようのない事実であった。
 片腕を喪い、スラスターを一基脱落させ、装甲は所々が剥離して焦げている。
 凄まじいミサイルの群れによる掃射の爆炎の中から飛び出した『ブラック・クロウ』の様相は、そのようなものであった。

 それを頭に叩き込み、これまでの彼女の操作技術や叩き方をもカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は覚え込む。
 結論は簡単であった。
 そう、己ではあの『アイン』に勝てそうもない。
 純然たる事実であったし、それを認めないことはなかった。認めなかったからといって、勝てる道理など何処にもない。
 界導神機『メルクリウス』のコクピットの中でカシムはつぶやく。
 ならば、どうするか。

「ようアインさんよ。僕じゃお前には勝てそうにない」
 それは敗北宣言であったし、そう聞こえたとしても仕方のない言葉であった。
 けれど、彼の瞳に合ったのは敗北を認める光ではなかった。
 そんなものは彼の中にはなかった。
 どれだけ実力差があろうが、そんなことは関係ない。これまで猟兵たちが己たちよりも強大な存在に勝ててきたのは何故か。
 簡単だ。

 一人ではなかったからだ。
「……メルシー。お前が神機というなら、やつに負けてはいないな」
 界導神機『メルクリウス』のアイセンサーが煌めく。
「勿論だよご主人サマ! メルシーは最強だぞ☆」
 その言葉を受けてカシムは満足気にうなずく。
 互いに限界を超えて機体を動かす能力を持つというのならば、あちらは人機一体にして一つ。
 しかして、こちらは神機一体である。

 ならば、己たちが負ける道理などない。
「なら限界を超えて尽くせ。腕の差は――」
 そう、性能差で埋めればいい。
 専用機でもなんでもない。キャバリアであればなんでもいいという『アイン』と、この機体でなければならないという思いは相反するものであったことだろう。
 どちらが勝つかどうかなんていうのは、もはや戦いの結果のみにて語るべきものであったことだろう。

 神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が輝く。
「加速装置起動…メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
 神速を信条とする機体が、さらなる加速を齎す。
 互いに速度を張り合うことは無意味である。さらなる上を行く『メルクリウス』のスピードは音速を超えていた。
 それほどまでの速度であれば、機体制御などできるわけがない。
 しかし、それを可能としているのが念動障壁である。
 低空での超高速での旋回制動は凄まじいものであった。あり得ない速度で曲がる機体を『ブラック・クロウ』は追うことができなかった。

 圧倒的な速度で迫る『メルクリウス』をまえに『アイン』は敢えて動きを止めた。
 追えぬ速度であるというのならば、追う必要はない。
「どちらにせよ、こっちを攻撃しなければならないってんなら、動くのは無駄だ。無駄な動きだ。なら、無駄な動きを削ぎ落とした先にあるのは」
『メルクリウス』の砲撃兵装から放たれた光たまの弾幕が、『ブラック・クロウ』へと迫る。

「あれを、動かないで躱すかよ」
「言っただろう。無駄な動きは、無駄を引き寄せる。無駄に弾幕を張るってことはよ、近づくなって言っているようなもんだぜ?」
『アイン』が迫る。
 光弾の弾幕はまさに空を埋め尽くすものであり、その間隙を縫う『ブラック・クロウ』の飛翔は最小限の動きで、総てを躱してくる。
 一直線にこちらに向かってくるような軌跡は、まさしく神業じみていたことだろう。

「けど、その動きはもう見てるってんですよ! アイン、あんたの動きはもうとっくにね!」
 そうカシムは見ていた。
 覚えていたのだ。彼女の動き、無駄のない動き。そのどれもが美しさを持つものであった。理想的な動き。
 だからこそ、わかるのだ。先読みでもなんでもない。情報の蓄積から導き出される結果の帰結。
「そう来るってね」
 こちらの死角を見きった動き。迫る鉤爪の一撃を鎌剣で受け止め、火花を散らしながらカシムは神速の斬撃を『ブラック・クロウ』に叩き込むのだ。

 装甲を引き裂き、フレームが露出する。
 それは言うまでもなく『ブラック・クロウ』への痛手であったことだろう。
 パイロットという点において己が負けていたのだとしても、カシムは己の駆る機体、『メルクリウス』は負けてはいないと自負している。
 それはメルシーにとって、この上ない主人の愛であったかもしれないが、それを言えばきっと面倒なことになると彼は理解しているからこそ、押し黙ったまま勝利を確信し……。

 そして、メルシーの狂喜するゆなけたたましい声に耳を塞ぐのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
悪いけど、誰かの掌の上で踊る時はスパイク履いてタップダンスするって決めてるんだ

出鱈目を入れて伏線を無視し、理不尽を詰め込んで世界観を壊した超展開を始めようか


納刀
剣はもう要らない
【Load[Summon Data]】起動
雷龍、不死鳥、機神…召喚
攻撃力全振りだ
雷龍最大サイズに設定、全龍で敵軌道上に『ブレス攻撃』
行動制限と可能ならそのまま捕縛
不死鳥達は見せつける様に空を飛び、そのまま敵機に突っ込み『焼却』
腕を『念動力』で浮かせて右腕とリンク
敵機をぶん殴る!

家出娘に満足なんてあげないよ
誰が描いた脚本かは知らないけど、王道な終わりは迎えさせてあげない
駄作でみっともない終わりこそやり直すに相応しいんだよ



 オブリビオンマシン『ブラック・クロウ』の機体が飛翔高度を保てず、一度大地に脚部を着ける。
 それはかの空戦機にとって屈辱以外の何物でもなかったけれど、それを駆る『アイン・ラーズグリーズ』にとっては、どうということではなかった。
 高度が保てぬのであれば、脚部は何のためにあるのか。
 アンダーフレームがただ攻撃の手段として扱われるのならば、人型である理由などない。
 そもそも人間の形をしている理由すら無いのだ。
 けれど、人の形をしている以上、翼無き人が翼を持ち、空を飛ぶというのならば脚部は再び飛び立つための補助輪のようなものであった。
「装甲は30%以上が剥離損壊……右腕部は欠損……スラスターも一基死んでるときているが……」
 それでも『アイン』は己の身を焦がす贖罪に押しつぶされそうになりながら、叫ぶのだ。

「このままやられっぱなしというわけにはいかねぇよな!」
 オーラ・フィールドが展開され、迫る猟兵たちの駆るキャバリアを駆逐せんと咆哮する。
 しかし、彼女の目の前に立つのは生身の人間であった。
 それを超常なる存在とクロムキャバリアの人々は知る。
「悪いけど、誰かの掌の上で踊る時は、スパイク履いてタップダンスするって決めてるんだ」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)であった。
 これまでクロムキャバリアにおいて、彼女の存在は超常として認知されていた。
 それは5m級戦術兵器であるキャバリアが絶対的な力の象徴であるが故に、鮮烈に人々の意識へと刻み込まれていた。

 それはこの一連の事件の主謀者である黒幕にとっては都合の悪いことであったことだろう。
 意図せずして、彼女の存在がカウンターとして成り立っていることは奇跡であったかもしれない。
「生身でキャバリアに向かってくるかよ……正気か!」
 そう、正気である。
 理由なんてもはやどうでもいい。
 玲にとって、目の前の『アイン』が如何なる理由を持っていたとしても、そしてこの物語がいかなる結末を描こうとしているのかも関係ない。

「出鱈目入れて伏線を無視して、理不尽を詰め込んで世界観を壊した超展開、はじめよっか!」
 手にした模造神器を納刀する。
 それは不可思議な光景であった。これまで彼女は模造神器を振るい、凄まじい超常の力でもってキャバリアをなぎ倒してきた。
 だが、ここに来て彼女は剣を納めたのだ。
 何故、と『アイン』さえも思ったことだろう。
「カメラはそのままにしておきなよ」
 もはや剣は必要無い。

 彼女の瞳が獰猛なユーベルコードの輝きを放つ。
「読み込み制限解除。さあお祭りといこう!」
 Load[Summon Data](ロード・サモンデータ)。
 それは12体の雷で構成された雷龍が『ブラック・クロウ』の軌道上に向かって雷のブレスを解き放ち、蒼炎で構成された不死鳥が空より睥睨し、空間を圧迫する。
 まさに空想が現実と化したかのような光景そのものであった。
 だが、それよりも何よりも。

 目の前にいる存在が『アイン』にとっては脅威であった。
 雷のブレスなど問題にはならない。
 空を塞ぐ不死鳥など恐ろしくもない。
 だというのに、目の前にいる超常存在――巨大な機械腕を振るいあげる玲だけが、『アイン』の背筋を泡立たせる。
 ぞわりと怖気が走る。
 一瞬でも気を抜いたら、『死』ぬと理解できる。
 不死鳥の炎が『ブラック・クロウ』へと襲いかかり、装甲を溶かすほどの熱量で持って襲いかかる。

 一気に加速し、オーラ・フィールドに包まれた機体でもって玲へと突貫してくる黒き弾丸となった『ブラック・クロウ』。
「家出娘に満足なんてあげないよ」
 煌めく玲の瞳がユーベルコードと念動力によって輝く。右腕に宿る巨大な機械腕が振るい挙げられる。
 彼女の力全てが機械腕に込められていくのを、『アイン』は感じた。絶対にあの一撃を受けてはならない。
 そう理解しているが、玲は笑ったのだ。

「誰が描いた脚本かは知らないけど。王道な終わりは迎えさせてあげない」
 そう、黒幕がどれだけ人々の尊厳を、意志を、想いを己の思惑だけで塗りつぶそうとしていたとしても、玲はこれを『駄作』と呼ぶ。
 みっともない終わりこそがふさわしい脚本であると笑い飛ばしたのだ。
「私は――!」
 そう、弟妹を想っての戦いであったのだろう。
 だからこそ、やり直さなければならない。玲はそう想ったのだ。そうすることができるのもまた人の強さであると。

「なんで、……!」
「それがふさわしいんだよ。みっともなくたっていい。誰もが見飽きたハッピーエンドくらいでちょうどいいんだからさ」
 放たれた鉄槌の如き機械腕の拳が『ブラック・クロウ』のオーラ・フィールドを貫き、その機体フレームをひしゃげさせながら、天を衝くように掲げられるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※Ⅳ搭乗
 
己が過去を半狂乱で叫んで…
機体の狂気に完全に呑まれておりますね

喪われたモノ全てに報いたい
ええ、理解出来ますとも
ですが貴女は一度立ち止まり、周りへの影響を顧みるべきでした
強き力には相応の責任がある故に

家出の時間はこれまで
故郷へ連れ戻させていただきます
…弁護はいたしますので

コクピットをアンダー・オーバーフレームで挟んだ構造がキャバリア基本設計
故に…

突撃を真正面から迎撃
相対速度を正確に計測し
タイミング見切り自機ハッキング
オーバー切り離し

機体上半身を質量弾としてぶつけ相手を減速
その陰から跳躍し踵落としで更に減速

オーラに弾かれた機体乗り捨てコクピットから飛び出しUC叩き込み
出力流し込み機体破壊



 どれだけ陰惨な過去があったのだとしても、それを身のうちに秘めることができるものこそが『エースの中のエース』であるというのならば、『アイン・ラーズグリーズ』は正しくそうであったのだろう。
 言い訳も何もない。
 厳然たる事実を見定め、己が何をしなければならないのかを理解する。
 だからこそ、彼女はこれまで汚名を着せられようとも、その意志を貫いてきたのだ。弟妹たちに誤解されたままでもいいとさえ想っていたのだ。
 彼らが生きて、そして平穏の中を生きられるのならばと。
 それは尊いことのようにトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は想ったかも知れない。

 けれど、半狂乱の如き様相を見せる慟哭は、あまりにも痛ましいものであった。
 オブリビオンマシンに乗ることによって、その狂気に飲み込まれたというのならば己が止めなければならないと彼は理解していた。
「喪われたモノ全てに報いたい」
 理解できるとトリテレイアは頷いた。
 巨大なる機械拳の一撃に寄ってカチあげられ、宙に浮かぶ『ブラック・クロウ」のフレームはひしゃげ、その機能を著しく損失させていた。

 しかし、それでもなお狂気に呑まれた『エースの中のエース』は、狂わされた思いのままに己の力の限界を超える。
「全てだと! 全てに報いることなんてできるわけないだろうが! 失って、失って、失い続けるのが戦いだというのなら!」
 咆哮が轟く。
 己の無力さを嘆くことさえできない。
 そんな暇すらない。感傷に浸ることも赦さぬ自己が、当たり前の人間のように振る舞えるはずがない。

 弟妹の屍さえも踏み越えてここに至っているということを誰が理解できようか。
「ですが、貴女は一度立ち止まり、周りへの影響を顧みるべきでした。強気力は相応の責任が在る故に」
『ロシナンテⅣ』を駆り、トリテレイアは疾駆する。
 彼女をここで取り逃がしてしまえば、『グリプ5』や周辺の小国家に遺恨を残すことは当然であった。
 同時に彼女が死す事もまた同様である。
 オーラ・フィールドが『ブラック・クロウ』が展開する。
 攻防一体の弾丸と化し、矛と盾を両立させる力。それは凄まじい速度を誇る『『ブラック・クロウ』と相性の良すぎるシステムであったことだろう。

 捕らえられない。
 機体の性能、パイロットの技量も相まって、機体自体が限界であったとしても凄まじい技量で持って、それを可能とするのが『アイン』であった。
「コクピットをアンダー・オーバーフレームで挟んだ構造がキャバリア基本設計……故に……」
 トリテレイアのアイセンサーが周囲の情報を読み解く。
 どこから己に突撃してくるか。
 死角からか。
 それとも正面からか。
 その駆け引きは、電脳に多大なる負荷を与えたことだろう。読みきれない。これが『エースの中のエース』と呼ばれる『アイン』の技量であるのかとトリテレイアは思い知るだろう。

 きっと機体を保つことを考えていては勝てない。
 しかし、生半可な策では食い破られてしまう。それをトリテレイアは自覚し、己のアイセンサーが告げるアラートによって思考を中断する。
 一瞬の、とっさの、というにはあまりにも確実性のない方法であった。
『ロシナンテⅣ』のオーバーフレームを切り離し、相対速度を一瞬の内に計算する。オーラ・フィールドに包まれた『ブラック・クロウ』は攻防一体の突撃を仕掛けてくる。
「なら、そうするよな! 解っているぜ……! 捨て身なんてものが私に通用するとは――思わないことだ!」
 切り離されたオーバーフレームを質量弾としてぶつけようとするトリテレイア。
 しかし、それを読み切った『アイン』が軌道を変える。
 機体を横にロールさせるように翻り、放たれたオーバーフレームを弾き飛ばして迫るのだ。

 減速したと、理解できたのは僥倖であった。
「ええ、確かに。敬意を評します。見事な技量。卓越したものであると――!」
 だが、これでは終わらない。終ることができるわけがない。
『ロシナンテⅣ』のアンダーフレームが踵落としの要領で脚部を振り上げる。もはや人型をしていないのであれば、その動きは人智を超えたものであったことだろう。
 放たれた蹴撃がオーラ・フィールドの展開を阻害する。
「奥の手……の一つに過ぎませんが」
 コクピットブロックから飛び出したトリテレイアの指先に集まるのは己の残存エネルギー全てを集約させた力場。

 それを一点集中させた鋼の手槍(スピアハンド・オブ・スティール)こそが、トリテレイアの持てる最大の一撃であった。
 放たれた一撃が『ブラック・クロウ』の機体装甲を貫きフレームへと到達する。
 触れるだけでわかる。
 この機体が禍々しい存在であることを。
 人の心を捻じ曲げ、人の心を弄ぶ機体。悪意を持って迫る罠の全てをトリテレイアは踏破する。

 いや、彼だけではない。
 数多の猟兵たちがそうであったように。
 ユーベルコードに輝く瞳が在る限り、猟兵は負けることはない。どんな悪辣さをも乗り越える。
 放たれた力場が『ブラック・クロウ』の装甲を内側から爆発で持って開放され、その機体を一瞬の内に爆散させる。
「騎士として。貴女の行いは正しかったのだと――」
 そう弁護するとトリテレイアは誓う。

 例え、それを彼女が望んでいないのだとしても。
 それでもトリテレイアは、猟兵達は『アイン』の贖罪を認めるだろう。
 たった一人でこれまで誰にも頼ること無く、そして、己の力だけで誰かを護ろうとした者を悪辣なる存在に断罪させてはならない。

 コクピットを抱え、ウォーマシンとしての身体の駆動をきしませながら、トリテレイアは地上に降り立つ。
 きっと猟兵がいるのならば、悪辣なる存在をもきっと排することができる。
 夜明けは近いのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月18日


挿絵イラスト