清風故人に見える泥中之蓮
●鴉鷺の都
一宿一飯の恩義。
それはかつて梟門の都において幼子が見せた優しさに報いるために『祝恩大星』と呼ばれた伝説の英雄を模して創られた人型宝貝『宝貝太子』がもたらした平和というかけがえのない時間。
梟門の都は彼が没した後、長らく平和な時を謳歌した。
しかして、それはオブリビオンの存在に寄って脅かされる。
阿片撒き散らす蜂の群れ。
人の心を惑わす寵姫。
暴力装置と成り果てた武将。
それらはかつての『祝恩大星』に変わって猟兵たちが治めた。
しかし、また一度戦乱が梟門の都を襲う。
かつては敵対関係に在った都、『鴉鷺の都』は邪仙人たる『濁業仙人』たちによって再び戦乱の戦端を開かせようと武侠達を妖しげな術にて操るのだ。
「ひゃっひゃっひゃ。如何に過去の傑物たる人型宝貝とて、扱う者が邪悪に染まれば、此れもまた即ち悪。我等がユーベルコードにて悪意に染まりしかつての英雄を前に梟門の都の人心はどれだけの間保つであろうか。それは見ものである」
まるで物見遊山のように『濁業仙人』たちは笑っていた。
彼らの背後に立つのは、人界には見受けられない奇妙な人型の姿であった。
それこそが人型宝貝『宝貝太子』であり、かつては梟門の都において『祝恩大星』と呼ばれた英雄である。
「ボクが求められるのは戦乱の世ばかりなんだから、世に争いでもって満たすのは当然だよね」
彼の瞳はかつて戦乱から守った梟門の都があった。
「あれがボクが守った都だって言われても実感なんてないや。戦いはいいよね。豊かさをもたらしてくれる。今度は『鴉鷺の都』が良い目を見る番だよ。今まで平和を謳歌したのだから、もう十分だよね」
人の命は脆弱にして僅かな時間しかない。
だからこそ、もう十分だろうと『宝貝太子』は言う。
其処に在ったのはもはやかつての優しい瞳ではなかった。己の存在意義を満たすためだけに戦乱を呼ぶ凶器そのもの。
力の、道具の使い道を誤れば齎されるのは戦乱という名の非業のみ――。
●梟門の都
「お腹、空いているの?」
大丈夫? と小さな手が差し伸べられた。
池に咲く蓮の華の中に佇んでいた『宝貝太子』は頭を振った。
そうではない。
己にそういったものは必要無いのだと否定した。けれど、一人きり、親も兄弟もなく一人で佇む己に幼き少女は手を差し伸べたのだ。
身よりもなく、己がなんであるのかも知らされず。
ただそこに在るということだけがわかっている存在でしか無かった己に意味と意義を与えてくれたのだ。
彼女たちを守りたいと思った願いは、きっと間違いなんかではなかったのだ。
「ありがとう、『祝恩大星』。私の星。あの日、あなたに手を差し伸べたことが、私の人生の誇り」
大人になった少女は最早、少女と呼ぶべき風貌ではなかった。
老婆と呼ぶにふさわしい佇まいであった。
手を取る。己の身体は暖かさも冷たさも感じないけど、確かに生命の暖かさを己は知った。
あの日、あの時、己に意味と意義を与えてくれた少女は平穏のままに天寿を全うする。
己もまた同じように動きを止めるだろう。
己を突き動かしていたのが彼女だったのだから。
彼女がいなくても、己がいなくても、きっとこの都は長きに渡り平和を謳歌するだろう。
その遠き未来を思って、『宝貝太子』は眠りについたのだった――。
●そして星は凶星に転ず
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件は封神武侠界、その『梟門の都』と『鴉鷺の都』におけるオブリビオンの跋扈によって開かれた戦乱の平定です」
ナイアルテが告げる都の名を聞いたことがある猟兵もいるかもしれない。
かつて平穏そのものであった都であったが、オブリビオンに狙われ一時、阿片によって内側から食い破られんとしていた都の名である。
そんな『梟門の都』が再びオブリビオンの扇動によって戦乱に巻き込まれんとしているのだ。
「はい。現在の普の皇帝『司馬炎』によって統一された人界は、オブリビオンの脅威あれど概ね平穏。都同士の争いなど起こるはずもありません。ですが、オブリビオンは『鴉鷺の都』の武侠たちを洗脳し、『梟門の都』を襲わせようとしているのです」
邪仙である多くの『濁業仙人』たちは、妖術でもって『鴉鷺の都』の武侠たちをけしかけ、戦乱の火種を投げ込み、この世界を混乱に叩き落とし多くの人命を奪おうとしているのだ。
「今回の事件は、『梟門の都』に迫っている『鴉鷺の都』の武侠たちを無力化し、せまる邪仙『濁業仙人』を打倒し……そして、『梟門の都』において過去の英雄であった『宝貝太子』、『祝恩大星』を『梟門の都』の民に晒す事無く打倒しなければなりません」
必然、戦いは梟門の都の外壁の外としなければならないのだが、すでに梟門の都の中に『鴉鷺の都』の武侠たちが入り込んでいる。
武侠達の数は多く、猟兵に劣るものの、その数は脅威であろう。
彼らは洗脳されているがゆえに生半可なことでは正気を取り戻すことはないだろう。
これをいかにして正気に戻し、都の外に迫る『濁業仙人』たちと対峙しすることが、戦いの趨勢を決める鍵となるだろう。
「『宝貝太子』は『濁業仙人』たちを打倒した後に戦場に現れます。過去の化身、オブリビオンゆえに彼には生前の記憶はなく、ただ『濁業仙人』たちによって起動されたことにより邪悪に染まっています」
姿形はかつての『祝恩大星』と瓜二つである。
そんな『宝貝太子』を梟門の都の人々の前にさらし、倒すことは憚られる。
ゆえに都の外で決着を付けなければならないのだ。
「どうか、人々の心をかき乱すことなくオブリビオンたちの目論見を打破して頂きたいのです。かつての英雄の姿そのものの『宝貝太子』。それが悪に堕することは、人々の心にあった過去の英雄すらも貶めることになりましょう」
それだけはどうしても阻止しなければならない。
過去は過去。
けれど、今を生きる人々にとって、過去もまた己たちの礎である。それを根底から覆すことこそがオブリビオンの目論見であるというのならば、猟兵達はこれを覆さなければならないのだ。
ナイアルテは武運を祈るように、拱手でもって一礼し猟兵達を送り出すのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
封神武侠界において平穏な都『梟門』に迫る『鴉鷺の都』の武侠たちと『濁業仙人』、そして『宝貝太子』と戦い、過去に在りし英雄を守るシナリオになります。
●第一章
冒険です。
主戦場と為る都の外へと皆さんは向かわなければなりませんが、突如として来襲した『鴉鷺の都』の武侠たちが『梟門の都』に入り込んで人々を襲わんとしています。
彼らは邪仙たる『濁業仙人』の洗脳によって戦いに駆り立てられています。
彼らを(ある程度は)圧倒する必要があります。どのような手段でもってそれを成すのかは、皆さん次第となるでしょう。
●第二章
集団戦です。
戦乱を拡大させようと目論む邪仙『濁業仙人』たちとの戦いとなります。
彼らの数もまた多いです。
●第三章
ボス戦です。
邪仙である『濁業仙人』たちを打倒すると『宝貝太子』が現れますので決着を付けましょう。
彼の姿はかつて『梟門の都』において平和をもたらした存在がオブリビオン化した存在です。
過去の記憶はないようですが、邪仙たちによって悪に染まっています。
この姿を都の人々に見せること無く、素早く打倒しましょう。
それでは封神武侠界において戦乱の種を蒔き、人々の心を乱さんとするオブリビオンの目論見を打破する皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『立ち塞がる武侠達』
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POW : 圧倒的な力量差で武侠達を倒し、無力化する
SPD : 逃走するふりをして武侠達を引き付ける
WIZ : 説得や取引で武侠達を味方につけようと試みる
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「人とは愚かなものよな。見たいものだけを見て、聞きたいものだけを聞く。どれだけ聖人君子が告げる理が正しいのだとしても、上流の水が下流に流れていくように、上から下にと堕ちていく。我等の仙術はきっかけを与えただけにすぎぬ」
邪仙『濁業仙人』たちは妖術によって洗脳した『鴉鷺の都』の武侠たちが『梟門の都』になだれ込み、粗暴なる振る舞いをしている姿を城壁の外から眺めていた。
本来であれば自身たちも武侠に紛れて戦乱を拡大させるつもりであったが、武侠たちの働きを見て考えを改めたのだ。
「これであれば我等が直接手を下さずとも、梟門、鴉鷺の都は自ずと戦端を開く。かつての因縁。過去の精算を為した『祝恩大星』が偉業は此処で潰える。格も儚きものよな」
『濁業仙人』たちは己たちが起動せしめたオブリビオン『宝貝太子』をもって梟門の都に伝わる平和の礎となった英雄の存在を地に失墜させるために計略を巡らせた。
この『鴉鷺の都』の武侠達もそうだ。
彼らもまた洗脳によって己たちの都を守らんとしている。
「梟門の武侠何するものぞ!」
「音に聞こえし鴉鷺の武侠、我等の力を今示さん!」
彼の瞳に見えるのは、宿敵、怨敵。
しかして、それは妖術によりて見えるまやかしである。彼らの瞳には映らぬが、目の前にいるのは『梟門の都』の民。
戦う力を持たず、逃げ惑うだけの彼らを追い、洗脳された武侠たちが市中を嵐のように、それこそ黒き飛蝗のように往くのだった――。
荒珠・檬果
最近、この世界によく来るんですが…オブリビオンって迷惑ですよねってしみじみ思います。
さて、武侠さんたちは操られているだけのこと。であれば、ほぼ無傷でいきませんと。
禍根はどこにできるか、わかりませんからね。
七色竜珠を合体させて白日珠(複数の丸薬形態)へ。
ちょうどUCで憑依させる『司馬朗(※司馬炎の祖父・司馬懿の兄)』殿が向いてるんですよね。
『眠り病』をもたらし、さらに『洗脳を含む病』を癒しましょう。半ばマッチポンプですけど、許してくださいな。
まだ向かってくるなら、丸薬形態な白日珠投げつけますが。
なお、『慈狼将』は契約の際に私がつけました。発想は憑装とか魂縛とかと同じなんです。
過去の化身たちの目的がなんであれ、それによって人心が乱れ、人命が損なわれるというのならば、それを許しておけぬのが猟兵という存在であろう。
人の世は人によって。
神仙の世は神仙によって。
そうすることによって交われど成り立つ世界が『封神武侠界』であるというのならば、オブリビオンは過去の遺物にして異物。
交わらぬところに入り込み、人の心をかき乱す。
乱れた人の心は容易に戦乱を呼び、それこそがオブリビオンにとっての格好の餌であることを知る。
「最近、この世界によく来るんですが……オブリビオンって迷惑ですよねってしみじみ思います」
荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は邪仙によって洗脳された武侠たちが跳ねるようにして梟門の都の中を疾駆する姿を転移してすぐに見つける。
彼らは操られているだけ。
であれば、ほぼ無償で彼らを正気に戻さねばならぬ。
かつて戦乱の世にあって『梟門の都』と『鴉鷺の都』は敵対関係に在った。
けれど、過去において『宝貝太子』である『祝恩大星』によって二つの都には平和が齎された。
同じ戦い、戦乱によって齎されたものであっても、これだけ意味が異なるものであればこそ、猟兵として檬果は平和の意味を知るのだ。
「禍根はどこにできるか、わかりませんからね。推しの力借りて、いーきまーすよー!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
自身に慈狼将『司馬朗』を憑依させて戦うユーベルコード。
輝きの後にみちるはあらゆる病起こす暗き瘴気。
溢れる禍は大気に満ちれども、恵雨あり(イツクシミノアカシ)というように、彼女の手が掲げられる。
それはあらゆる病癒す甘き薬液の雨。
「半ばマッチポンプですけど、許してくださいな」
彼女の憑依した『司馬朗』がもたらす病は『眠り病』である。
暗き瘴気が武侠たちを取り囲み、その靄の如き中において次々と武侠たちが倒れる音を聞く。
全ての武侠が眠りに堕ち、それは決して覚めることのない眠りであった。
けれど、檬果の手にある甘き薬液によりて、あらゆる病。
即ち、洗脳を含む病全てを癒す薬液の雨は瘴気すらも祓っていく。
「おっと、靄の外にいる方々もこっちに来ましたか。ならば、お口に丸薬をしゅーと!」
彼女の投げはなった白日珠は、迫る武侠たちの口の中に投げ込まれ、彼らの洗脳を次々と説いていく。
あらゆる病と薬は表裏一体。
すぎれば毒。
されど、適したのならば薬。
彼女の立ち振舞は、大勢の武侠たちをしても一歩の引けを取ること無く。そして、瘴気と薬液の雨を自在に操る姿をして、人々は檬果をこう呼ぶのだ。
『慈狼将』と。
そう、それこそが二つ名にして異名。
彼女はその名を戴く。
しかして、彼女はこれが自分ではなく契約した魂魄の為した技であるがゆえに、複雑な思いでもって受け入れるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミアステラ・ティレスタム
何時でも何処の世界でも、犠牲となるのは力無き者
ならば世界は力有る者だけで廻るのでしょうか
否、力無き者が平和に暮らせるからこそ世界は廻る
力とは、其れを護るためにあるのではないでしょうか
戦いは唯々悲しい
だからわたしは己の存在意義を以て、安寧なる世界のために祈ります
洗脳された武侠達の心を鎮めましょう
彼等に浄化の慈雨を
慈雨とは恵みの雨
すべてを潤し、癒し、不浄なるものを洗い流しましょう
貴殿方の心に安らぎを、優しさを与えん
浄化の慈雨の範囲外の武侠達には、即席で調合した正気に戻す気付けの魔法のお薬と夜色星月の瓶の中身を合わせて発生させた大量の泡で洗脳を解除していきましょう
戦いを憎む者があるのであれば、それは喪うがゆえであろう。
生命を、人を、家を。
あらゆる存在は争いによって奪われる。理不尽極まりない現実が押し寄せるのは、争いが絶えぬからである。
『梟門の都』は長きに渡り平穏そのものであった。
それはかつての英雄である『宝貝太子』、『祝恩大星』が成さしめた偉業によってであった。
普の皇帝『司馬炎』によって乱世は統一されたが、しかいてオブリビオンの跋扈は平穏を許さぬと戦乱の火種を撒き散らす。
邪仙『濁業仙人』による妖術は『鴉鷺の都』の武侠たちを容易く洗脳せしめる。
彼らが目指すのは己たちの敵であるが、妖術によって遮られた瞳は『梟門の都』の力無き者たち……即ち民草へと振るわれようとしていた。
「どけどけ! 我等の敵を庇い立てするのであれば、容赦はせぬ!」
武侠達は逃げ惑う民草たちとの間に割って入ったミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)のさらりと流れるような青滲む白髪の美しさを知ることはなかった。
彼女の瞳が世界を見渡すように透き通るような水の色。
纏う水の香りは、はかなげながらも、その存在を知らしめるように彼らの前に天女と見紛うほどの美しさでもって対峙する。
「何時でも何処の世界でも、犠牲となるのは力なき者。ならば、世界は力有る者だけで廻るのでしょうか」
その問いかけは武侠たちに投げかけられたものであった。
武侠達は言わずとも力有る者たちである。
彼らが力を振るう理由は様々であるが、決してこのような蛮行を行うために培ったものではにないとミアステラは言う。
「否、力無き者が平和に暮らせるからこそ世界は廻る」
その瞳が妖術によって曇らされているのならば、その耳で聞くが良い。
彼女の玲瓏たる声はユーベルコードの祈りそのものであった。
「力とは、其れを護るためにあるのではないでしょうか。戦いは唯々悲しい。だからわたしは己の存在意義を以て、安寧なる世界のために祈ります」
溢れ出るのは、祈りの力にして、謐奏詩(メディテーション)。
彼女の祈りを受けて、天は涙する。
降り注ぐ慈雨は星の瞬きのようでもあり、あまねく武侠たちの頭上より降り注ぐ。
雨音はしとしとと音を立てる。
豪雨の如き雷霆ではなく、ただしとしとと衣を濡らすほどであった。
「全てを潤し、癒やし、不浄為るものを洗い流しましょう。貴殿方の心に安らぎを、優しさを与えん」
武侠達の瞳から妖術の靄が晴れていく。
慈雨とは恵みの雨。
浄化の力を持った彼女の祈りによって降り注ぐ雨は、悉く武侠たちを正気へと戻していくだろう。
しかして、『梟門の都』に入り込んだ『鴉鷺の都』の武侠たちの数は未だ多い。
慈雨の範囲外から次々とミアステラを排除せんと建物のあちこちを飛び越えてやってくるのだ。
「惑わされるな。妖術の類であろうが!」
ミアステラは瞳を伏せた。
彼女の手が手繰るのは即席であっても、着付けの薬液。
魔法の薬と夜色星月の瓶が合わされば、彼女の手の内にて振られる。音を立て、泡を立てるようにして混ざり合っていく薬剤は、蓋を拓けば大量の泡となって襲い来る武侠たちを優しく受け止める。
「思い出してください。貴殿方の胸にあるのは、確かに弱きを守り強気をくじく思い。しかし、それは妖術によって曇らされ、戦うべきを見誤っていることを」
泡に含まれた薬剤が彼らに掛かった妖術を根こそぎ落としていく。
活性する泡が全てを洗い流す頃には、武侠たちも正気に戻っているだろう。
ミアステラは見定める。
この騒乱の種をまいたであろう邪仙たちが座す城壁の向こう、荒野を。
そこに彼女の祈りは届かない。
だからこそ、彼女は歩みを進めるのだ。戦いは悲しいけれど。
己にその力があるのならば、振るうことに躊躇いはないのだと知らしめるように――。
大成功
🔵🔵🔵
源波・善老斎
邪なる術にまやかされているとはいえ、怨讐は易く拭えんか。
しかし祖曰く、「行善天拳を極めるには先ず危険を知るべし」。
即ち悪しき心を知ればこそ、善ならんとする高き志は生まれようもの。
ならば、正しき道を示すが我が務めなり。
武侠らを傷つけずに術のみを解く……然らば!
指にて沙げ故に還すべし……行善天拳奥義が一、【指沙還故】!
これにて彼らの秘孔を突き、悪しき気を打ち消すぞい。
肉体に作用する術ではないようじゃし、我輩の気まで流し込む必要はなさそうじゃな。
人数も多い故、手早くなさねばのう。
都同士の諍い、何が発端かは存ぜぬが、啀み合うことのなんと無益なことか。
よい機会じゃ……おぬしら、暫し考えてみるがよかろう。
邪仙の妖術に寄って瞳に映る者全てを己の敵と錯誤した『鴉鷺の都』の武侠達は『梟門の都』になだれ込む。
誰も彼もが己達の矜持のために敵対する悉くを打ち倒さんとする。
例えそれが、かつて敵対していた都の民草であろうとも、彼らの瞳には討つべき敵として認識されている。
「逃がすものか! 我等が怨敵!」
振るわれる刀の一撃が煌めく。
その凶刃は言うまでもなく戦う力のない者へと振るわれる。
彼らに刀の一撃を躱すことなどできようはずmない。
「指にて沙げ故に還すべし……行善天拳奥義が一、指沙還故(シサカンコ)!」
どこからともなく転移してきた瑞獣が如き姿をした存在が放つ指突の一撃が刀を振り下ろさんとしていた武侠の額に突き立てられる。
あらゆるものを魅了する魔性の指先。
それは源波・善老斎(皓老匠・f32800)の保つ指先、肉球の一撃であった。
柔らかであり、おおよそ肉体を破壊することなど不可能なほどの綿毛に触れたかの如き衝撃であったが、彼の指突の一撃はあらゆる状態変化を打ち消すのである。
これ即ち、邪仙の妖術によって洗脳された武侠達を正気に戻す破邪の拳。
「邪なる術にまやかされているとはいえ、怨讐は易く拭えんか。その心の奥底にある感情を制御できんとは」
善老斎は嘆いた。
市井の武侠達は未だ未熟そのもの。
だからこそ、邪仙に付け入る隙を与えたのだ。
その結果がこれである。
だが、祖曰く『行善天拳を極めるには先ず危険を知るべし』とあるように、悪しき心を知ればこそ、善ならんとする高き志は生まれるものである。
ならば、正しき道を示すのが善老斎の務めである。
「これに見えるはただの指突と侮ることなかれ。貴殿らを傷つけず、あやかしの術を解く……然らば! 知らぬ者は聞け! 知らぬ邪なるものは慄くがいい。これこそが『行善天拳』也!」
それは内力の循環を一定に保つ事により、体を平常に保つ気功の技である。
初撃を外せば、続く指突は決して当たらぬが、善老斎ほどの遣い手であれば、なんの問題があろうか。
凄まじい速度で武侠達の間をすり抜けるように駆け抜けていく姿は、まさに神速であった。
「ああ! あれこそが『行善天拳』! 人知れず世の危険から民を護ってきた護世の拳!」
『梟門の都』の民草は歓喜に震え、『鴉鷺の都』の武侠達は慄くだろう。
その号が何を意味するか知るからである。
人の世が乱れた時にこそ、その拳は唸りを上げるのである。
「ばかな! 何故『行善天拳』の遣い手が我等の邪魔を――!」
「都同士の諍い、何が発端かは存ぜぬが、啀み合うことのなんと無益なことか」
善老斎の指突の一撃が次々と武侠たちを正気に戻していく。
妖術に寄って乱された内力の循環をただし、彼らの心の近郊を保つ、まさしく活人の拳である。
呆然と見上げる武侠達。
彼らの瞳にはもはやあやかしの術による影響はなかった。
何故己達が此処にいるのかも定かではないようであった。それだけ邪仙の術は強力であったのだろう。
恐るべきは邪仙の術である。
しかして、彼らが武侠であるのならばこそ、善老斎は言葉を説かねばならぬ。
「よい機会じゃ……おぬしら、暫し考えてみるがよかろう。はるか昔の遺恨を今に繋ぐことの愚かさを。誰しもがつながりを絶って生きることは難しい。隣人の存在を知り、理解できぬからこそ刃ではなく言葉を交わらせることの意味を」
善老斎は颯爽と洗脳された武侠たちの凶行を止める。
それこそが『行善天拳』の在処であるというように――。
大成功
🔵🔵🔵
遥・瞬雷
邪仙ってのは厄介だねぇ。皆が平和に暮らす世の中の何が気に入らないのやら。
濁業を積み上げるのが目的なら、清業を重ねる為に永遠の修業に励む我ら正仙にとっては不倶戴天。その邪行、阻ませて貰おうか。
暴れる武侠達の前に立ちはだかる。さて、彼らも被害者か。無力化するには数が多いね。ここは一つ大聖の秘術を借りようか。
髪の毛を数本抜き取り、口に含んで噛み砕き吐息に乗せて舞い飛ばすと、無数の私の分身が現れる。秘術【身外身】。
更に【化術】の【仙術】でそれぞれが鋼鉄の鎖へと変化。武侠達に巻き付き【捕縛】していくよ。
洗脳されてたとは言え、後で皆に謝って貰わないとね。元凶を片付けてくるから大人しくしときなよ。
平穏こそが停滞であるというのならば、それは理を推し進めることにはならぬ。
他者の価値観を否定することこそが愚の骨頂であることは言うまでもなく。
善も悪も、光も闇も。陰陽が表裏一体であるがゆえに、正邪もまた切っても切り離せぬものである。
ゆえに人界であろうとも仙界であろうとも、その理は変わること無く。
『梟門の都』に押し入った『鴉鷺の都』の武侠達の根底にあるのは、乱世が平定されたとしても、残る過去よりの堆積たる遺恨禍根である。
「何が『祝恩大星』だ! 俺たち『鴉鷺の都』にとっては凶星そのもの! お前達『梟門の都』の連中が安穏と平穏を貪っている間、俺たちの祖先は割りを食っていたというのに!」
邪仙たちの妖術によって洗脳されているとはいえ、『鴉鷺の都』の武侠たちの根底にあるのは、やはり過去より続く遺恨であったことだろう。
人の心に大なり小なりある感情を逆なでし、ささくれさせ、惑わすのが邪仙『濁業仙人』の術である。
「邪仙ってのは厄介だねぇ。皆が平和に暮らす世の中の何が気に入らないのやら」
遥・瞬雷(瞬雷女仙・f32937)は妙齢の貴婦人が如き姿を武侠たちの前に晒す。
武侠たちの心にわずかに残った遺恨があれど、彼らはそれらを飲み込んで生きてきたのだ。
乱世は平定され、望んだ平和が訪れているのだ。
だというのにオブリビオンは、邪仙たちはこれをほじくり返し、傷をかきむしるが如き所業を行うのだ。
それを捨て置くことなど、彼女にはできようがない。
「彼らも被害者……だが、あやかしの術にて邪仙の濁業を積み上げる手伝いをするというのならば、清業を重ねるのは正仙のあ入り方。その邪行、阻ませてもらおうか!――出で来よ!」
瞬雷が己の御髪を数本抜き払い、その吐息でもって風に回せる。
それらは大聖の秘術を借り受けるものである。
輝くユーベルコードにして、術の名は身外身の術(シンガイシンノジュツ)という。
変化伸縮自在たる己の分身を仙術によって呼び寄せたのだ。
「さあ、我等正仙の不倶戴天の敵たる邪仙よ! 目を見開き見よ。人の心に在りし闇を煽るのならばこそ、人の光によりて心を晴れやかなるものになさしめることを!」
瞬雷が呼び寄せた分身たちが次々と高鉄の鎖へと変化し、彼らに巻き付いていく。
それはどんなにも剛力で鳴らした武侠達であっても引きちぎることなどできようはずもないほどに頑強なる鎖であった。
びくともせず、喚く武侠たちを前に瞬雷は言う。
「洗脳されてたとは言え、後で皆に謝ってもらわないとね」
それまでは大人しくしておきなよ、と彼女は一息で城壁の上へ、そして荒野の向こうへと飛び去る。
彼女は女仙である。
修行中の身であれど、彼女が相対するは邪仙である。
その邪仙さえ打倒してしまえば、あやかしの術にて洗脳された武侠達もまた正気に戻るであろう。
其れまでの間彼らには窮屈な思いをさせてしまうが、生命の奪い合いをするよりはマシである。
「ならばこそ、人の心こそが鋼鉄に勝る頑強さをもつ者と知るが良い!」
裂帛の声と共に瞬雷の声が荒野に鳴り響き、その正しき清業のあり方を知らしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
秦・美芳
【POW】
あいやー
もー、おぶりびおんは
本当にめんどーなことしかしないね
争いのない世界は無いかもだけど
でも理不尽な不幸はめいふぁんたちが許さないよ!
降魔の名を継ぐからには武侠たちとの戦いは真正面から
拱手しつつ立ち塞がるね
「降魔拳伝承者、秦・美芳。ここを通すわけにはいかないね!」
というわけで、せーの
【宝貝「雷公天絶陣」】を広範囲にどっかーん!
感電したところを攻撃を叩き込んで気絶させていくね
ふぅ、解決
え、伝承者関係なかった?
そーゆーことは気にしちゃだめようん
ここはめいふぁんにとっても武侠さんたちにとっても
命を懸ける場所じゃないね
事件が解決した後に正気に戻った武侠さんたちなら
ぜひ手合わせ願いたいよ!
かつて救った『梟門の都』になだれ込む『鴉鷺の都』の武侠たちの姿を見て、秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)は嘆いた。
己の力の至らぬを嘆くのではない。
人の世に人心が乱れることを嘆いたのだ。
彼ら武侠の心の奥底に在るのは、過去より堆積してきた禍根であろう。
それらは、本来であれば平定された乱世の後に来る平穏なる世においては沈んだまま浮かび上がることなどなかったはずだ。
しかして、それらはオブリビオン『濁業仙人』の妖術によって浮き彫りにされ、そして戦乱の火種として利用されるのだ
「あいやー、もーおぶりびおんは本当にめんどーなことしかしないね」
本当に面倒極まりないことをである。
誰が乱世を望むものであろうか。
人の世において争いは尽きることはない。それは争いのない世界を夢想することと同じである。
だが、オブリビオンのもたらす戦乱は理不尽なる吹こうそのものである。
ならばなんとする。
なんとするか、降魔拳伝承者!
「めいふぁんたちが許さないよ!」
美芳は『梟門の都』に降り立ち、民草を襲わんとしている武侠たちの前に降り立つ。
それは驚天動地の大立ち回りであったことだろう。
見目は齢十五にも満たぬ年端も行かぬ少女そのものであった。
しかして、拱手によって立ちふさがる姿は、まさしく威風堂々たるものであった。
「降魔拳伝承者、秦・美芳。ここを通すわけにはいかないね!」
堂々たる構えは、彼女がこれまで如何なる修羅場、鉄火場を渡り歩いてきたかを示すものであったことだろう。
その気迫は、見た目で判断するのは危険極まりないものであった。
「無頼のものでもなく、降魔拳の遣い手が何故、我々の邪魔をする! 伝承者としての問題ではないはずだ!」
刀や槍を持ち、武侠たちが無手たる美芳に襲いかかる。
だが、充填された輝きを放つのは、宝貝「雷公天絶陣」である。裂帛の気合でもって放たれた雷撃の一撃は、周囲に迫った武侠達全てを撃ち、その身を痺れさせる。
加減した一撃であれど、その身を麻痺せしめるほどの力。
動けなくなった武侠達の前に踏み込む美芳の拳の一撃が容易く彼らの意識を刈り取っていく。
次々と倒れ伏していく武侠たちを片付け、美芳は息を吐きだし拱手でもって一礼をする。
「ふぅ、解決」
だが伝承者は関係無かったのは気の所為であろうか。
そーゆーことは気にしちゃだめようん、と美芳は言うだろうけれど、ここは美芳にとっても武侠たちにとっても生命を懸ける場所ではない。
其れ以前に邪仙の妖術によって洗脳された武侠達との戦いは美芳の望むところではない。
この事件が解決したのならば、手合わせ願いたいとさえ思うのだ。
「だから、しばらく気絶しておくといいよ。まだ誰も傷つけていないのなら、ごめんなさいすればみんなきっとゆるしてくれるよー」
そんなふうに彼女は楽観的であった。
全てが万事そのように上手くことが運ぶとは限らない。
けれど、それでも美芳は信じている。武侠たちが何を思っていたのかを。きっと過去に積み上げられた先祖の禍根を晴らすためである。
ならばこそ。
「それは乗り越えてこそ。事件は解決する。おぶりびおんはぶっとばす。これで全部まるっと解決ねー」
美芳はそう言って、一足で城壁を飛び越える。
広がる荒野の先に見えるは邪仙の群れである。
相手にとって不足なし。
構えるは降魔拳。
宿る魔によって、邪なるを討つ拳は、今まさにうなりをあげるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
外邨・蛍嘉
傷つけずに倒す。うーん、この厄介さ。
でも、私にも出来ることがあるのさ。だから、ここに来た。
やり方は違うけれど…内容は先の猟兵に倣おうか。
【藤蛍】で強化した浄化と天候操作を活用して、浄化の雨を降らせよう。
こちらは私の専門だからね。だてに巫女のまとめ役やってないよ。
攻撃してくるのなら、結界術で防御したあと、藤色蛇の目傘で叩いて気絶させよう。
こうやって洗脳で望まない戦をするの、惨いからね。
だから、止められるときに止めるのさ。これも忍の役目ではあるしね。
『鴉鷺の都』の武侠達は、邪仙たちによるあやかしの術によって洗脳されているだけであって、本来彼らは『梟門の都』に押し入ることなどなかったはずである。
だからこそ、猟兵達は彼らを打倒すれど、生命を奪うことはない。
洗脳さえ解けてしまえば、例え過去に堆積した禍根があれど武侠達は分をわきまえて謝罪するだろう。
しかし、それを成さしめるために猟兵に必要であったのは、ある意味で忍耐と地道な作業であったのかもしれない。
「傷つけずに倒す」
それは言うは易く行うは難しである。
外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)は思わずそうつぶやいていた。
思わず厄介であると断じるのは時期尚早であろう。彼女が封神武侠界に転移してきたのは、彼女自身が自分にも出来ることがあると判断んしたからである。
だから来たのだと彼女は武侠たちがなだれ込んだ『梟門の都』において、藤蛍(フジホタル)の輝きを遍く全てに降り注がせるように力を振るう。
それは強化された浄化と天候操作の力。
降り注ぐ浄化の雨は、先んじた猟兵に倣うものであった。
あくまで武侠たちが洗脳されているというのならば、これを祓うことこそが先決である。
打倒は二の次。
「安らかなるを願うのは人の生では当然のこと。こちらは私の専門だからね。伊達に巫女のまとめ役やってないよ」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く限り、浄化の雨は降り止むことはない。
しかし、それでも浄化の雨を抜けて蛍嘉に襲いかかる武侠たちの姿がある。彼らは己の得物、刀や槍、戦斧といった仰々しい凶器でもって凶行に走った。
彼らは彼らの視界を覆う邪なる術によって、彼女を仇敵と思い込んでいるのだろう。
少しの浄化では、彼らの瞳を正気に戻すことは難しいのかもしれない。
「こうやって洗脳で望まない戦いをするの、惨いからね」
蛍嘉は優しく結界術で振るわれる凶器の一撃を受け止める。
彼らの義憤はきっと正しいものであるのだろう。
禍根、遺恨を振り払わんとする正しき心があるからこそ、その隙を邪仙に突かれたに違いない。
人の心がどれだけ平穏を望んでも、オブリビオンはそれを望まない。
戦乱を広げ、傷口を広げ、人命を失わせることばかり行っていく。しかして、それは止められることである。
「だから、止められる時に止めるのさ。平穏な世を取り戻すためには、惨さは必要無いことであるし――」
蛍嘉は手にした藤色の蛇の目傘を振るう。
その一撃は華麗なる舞いを踊るように、藤色の花びらが飛ぶように武侠達の首筋を、鳩尾を素早く叩き気絶させる。
瞬く間の早業であった。
「これも忍びの役目ではあるしね」
彼女は微笑む。
無益な殺生はしない。
止められるのならば止める。例えば、それが些細なことであったとしても、人心を乱す存在を知ればこそ。
「邪仙がどれだけの目論見を持っているのだとしても。降り止まぬ雨はない。雨がやんだあと、地は固まるであろうし、人の絆もまた固いものへとなるだろう。そして、空に虹がかかるように人の心にもまた架け橋が紡がれることを知れ」
蛍嘉は見つめる。
その先は荒野である。座す『濁業仙人』たちは、猟兵たちの到来を予見し、そして荒野にて陣を敷く。
どれだけ用意周到に根回しをしているのだとしても、猟兵はその名に恥じぬ働きをするのみである。
世界の悲鳴を聞き届け、人の生命を損なわぬようにと一直線に蛍嘉は城壁を越え、荒野へと向かうのだ。
己ができることをする。
ただそれだけのために荒野を駆けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・リデル
かつての英雄を以て災厄を齎さんとする。趣味の悪いことです。
それにしても梟門の都ですか。少々、縁があるようですね。
まずは洗脳された鴉鷺の都の武侠たちを解放しましょうか。
空から俯瞰して鴉鷺の武侠たちの場所を把握して急行。
(空中浮遊×念動力)
『蒼と青の奔流』の青い光の作用の一端、状態異常完全回復の効能で洗脳を解きます。
目が醒めましたか?(状況を把握させた後)
貴方達は邪仙により操られていました。被害者ではありますが、梟門の都の人にとっては加害者でもあります。謝罪しておくことを勧めます。
またこの後、元凶を叩きます。
鴉鷺に帰るのはそれが終わってからにするように。
かつて『梟門の都』には『宝貝太子』である『祝恩大星』と呼ばれる英雄が存在していた。
それは乱世において敵対していた都である『鴉鷺の都』にとっては、厄介な存在であり目の上のたんこぶのような存在であった。
しかし、彼の存在が長きに渡り対立関係に在った二つの都の間を取り持ち、仮初であっても平穏を実現したのは紛れもない事実である。
ゆえに邪仙たる『濁業仙人』たちは、かつての英雄を、そして今を生きる武侠達をもって戦乱の火種とする。
洗脳した武侠達は『梟門の都』に疑心を与え、蘇ったオブリビオン『宝貝太子』は堕落した英雄として民草の心の拠り所を破壊する。
「趣味の悪いことです」
かつての英雄を持って災厄を齎さんとする『濁業仙人』たちの目論見を知り、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は息を吐き出す。
どの世界にあってもオブリビオンの企みは悪辣なものばかりである。
取り分けて封神武侠界におけるオブリビオンの暗躍は、どれもこれもが人心を煽り、乱し、乱世へと戻そうとするものばかりである。
かつて『梟門の都』でもまたそうであった。
阿片による侵食、寵姫に寄る堕落、武将による破壊。
その事件に関わったステラにとって、『梟門の都』は縁があるといって差し支えのないものであったことだろう。
「まずは――」
そう、なだれ込むように『梟門の都』の街中を疾走る武侠たちを見下ろす。
彼らは洗脳されているだけであって、自ら望んで争いを起こそうとしているわけではない。
禍根が彼らの胸の奥底にしまわれているのだとしても、それは彼ら自身の力によって抑えることができるものなのだ。
「破壊と再生。本質は変わりません」
あやかしの術にて洗脳しているというのならば、状態異常を完全回復させる青い光をもたらせばいい。
彼女の瞳が蒼と青の奔流(ブルー・ライト)によって輝き、一瞬で武侠達に掛かった妖術の影響を取り払うのだ。
「――っ! なんだ、ここは……我等は戦場にあったのでは」
「ここは、『梟門』の!?」
武侠達は洗脳から解かれ、自分たちの置かれた状況に驚愕する。
洗脳された彼らにとって視界に映っていたのは、己たちが討つべき仇敵であった。それらを打倒せしめんと刀や槍を振るっていたのが、無辜なる民草に刃を向けていた事実に動揺が走る。
「目が醒めましたか?」
ステラは空より舞い降りて武侠達に状況を把握させる。
彼らにとっては驚愕しきりの光景であったが、『梟門の都』の民草にとっては恐怖の対象でしかない。
だからこそ、ステラは告げるのだ。
「貴方達は邪仙により操られていました。被害者ではありますが、『梟門の都』の人にとっては加害者でもあります」
それは如何なる理由があっても覆すことのできぬ事実であった。
被害こそ猟兵達によって食い止められてはいるものの、これが綱渡りであったことは言うまでもない。
だからこそ、ステラは動揺しきっている武侠たちに事実を受け入れ、そして何よりも礼儀を失することのないようにと言い含めるのだ。
「謝罪しておくことを勧めます。またこの後、元凶を叩きます。『鴉鷺の都』に帰るのはそれが終わってからにするように」
そうでなくても大立ち回りを演じた武侠たちを『梟門の都』の衛士がすんなりと帰すことはないだろう。
どちらにせよ、都の法と律に従う他ないのだ。
けれど、人は言葉によってコミュニケーションを取る生き物である。
ならば、言葉によって相互を理解するのもまた人の営みであろう。誤解なくわかりあえることが難しいのであれば、それらを乗り越えていくのが人の業というものである。
「それでは、参ります」
ステラが再び空へと舞い上がり、城壁の外である荒野に視線を向ける。
その先にあるのはこの事件の元凶たる邪仙たちの姿。
彼らこそがこの封神武侠界に戦乱の火種を蒔かんとする邪悪である。ならば、多少なりと縁の繋がった都を護るためにステラは流星のように青い光を放ちながら飛ぶのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
んー……撃退もだけど民に被害が出ないようにしないとだな…
…私は武侠とまともに打ち合えるほど近接戦闘には長けて居るわけでも無し…
…現影投射術式【ファンタスマゴリア】を使って人や道の幻影を出して武侠達を民の居ない場所へと誘導しよう
…そして【戦術構築:奸計領域】を使用…術式組紐【アリアドネ】を使って武侠達を拘束する罠を作成…幻影で隠して引っかけていくとしよう…
…動けなくなった武侠は洗脳状態にあるから…浄化復元術式【ハラエド】で洗脳を解除していこう…
…武侠達が冷静なら罠に掛けるのも苦労するのだろうけど…洗脳でそれを失っているのはやりやすい…
『鴉鷺の都』の武侠たちの瞳に映るのは仇敵であった。
「我等の前に姿を表すとは愚かなり! この刃の錆としてくれよう!」
彼らは彼らの矜持を傷つける仇敵を討つことに己の武を使う。
それはある意味で当然であったし、『梟門の都』と『鴉鷺の都』においては過去敵対していたという事実がある。
それをとりなしたのが『宝貝太子』である『祝恩大星』だ。
かの英雄の存在があったからこそ、『梟門の都』は長らく平穏そのものであったことは言うまでもない。
すでに英雄はなく。
同時に禍根も遺恨も時だけが癒やしてくれた。
けれど、どうしても人の心の奥底には小さな棘が残る。例え、乱世が終わったとしても、騒乱の傷跡は残る。
それを悲しいと思う気持ちもあれば、憎々しいと思うこともまた真であろう。
武侠たちの心は今、その小さな棘を邪仙である『濁業仙人』たちの妖術によって増幅させられ、洗脳されているのである。
「んー……撃退もだけど民に被害が出ないようにしないとだな……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は武侠たちの鍛え上げられた鋼のような肉体を見て、自分が彼らとまともに打ち合えることはないと判断していた。
できないことはないであろうし、一対一であれば遅れを取ることはないだろう。けれど、近接戦闘に長けているといえるわけでもない。
ならば、彼女が出来ることは現影投射術式『ファンタスマゴリア』によって人や道の幻影を生み出し、武侠たちを誘導させることであった。
「妖術によって洗脳され、普段の冷静さを発揮できないのであれば、幻影と気がつくこともできないだろう」
簡単なことであった。
本来武侠達は肉体のみを誇る者たちではない。
知略計略、武術内頸。
それらを兼ね備えるからこそ、彼らは武侠として将たる器にまで成長していくのだ。
洗脳という手段は、知という片翼をもいだにすぎないのだ。
「この地形なら…これが効果的か」
人の居ない細い路地に誘い込み、メンカルは術式組紐『アリアドネ』によって蜘蛛の巣のように罠を張り巡らせる。
細い路地に標的を追い込んだと思った武侠達は次々と『アリアドネ』によって足を、腕を、武器を取られたたらを踏む。
さらに、メンカルの戦術構築:奸計領域(ウェルカム・キルゾーン)は終わらない。
術式自体が三倍の効力を発揮するがゆえに、メンカルの手繰る術式はさらなる奸計でもって武侠たちを絡め取っていく。
「ぐっ! なんだこの糸は、何故切れぬ……!」
もがく武侠達。
彼らは妖術によって洗脳されているのであれば、同じく術式を操るメンカルにとって、それを解くことは容易いことであった。
「……やはりやりやすかった。冷静さのない相手であれば……」
メンカルが編みだす浄化復元術式『ハラエド』によって武侠達に掛けられた洗脳の妖術が解かれていく。
単純な妖術であるがゆえに効果は絶大であったのだろう。
けれど、武侠たちの力の半分である知を削いだだけにすぎないことをメンカルは見抜いていた。
「……普段の実力ならば罠にはめるのも苦労したところだろうけれど……敵はいかに邪仙と名乗っていたとしても、やはりこの程度……」
メンカルにとって、恐れるに足りない相手である。
己の利点のみを突き詰めるがゆえに強みを殺す。
それがわからぬ者たちに、その目論見を達成させることなどできない。
証明するようにメンカルは次々と武侠たちを罠に嵌め、浄化でもって洗脳を解いていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『濁業仙人』
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POW : 業雷衝
自身の【理性】を代償に、【業(カルマ)】を籠めた一撃を放つ。自分にとって理性を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 業濁瘴
【漆黒の瘴気】を解放し、戦場の敵全員の【生命力】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ : 呪仙痕
攻撃が命中した対象に【激痛を与える呪詛の刻印】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【刻印の拡大】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ひょっ! なんと! 一人の犠牲も出ていないと!」
「これは困ったの。例え猟兵が出張ってきたとしても、人命が一つでも損なわれておれば、それを戦乱の理由とするのが人間の愚かさであれば」
「僅かな綻びだけで我等の目的は達せられたというのにのぅ」
邪仙『濁業仙人』たちは『梟門の都』の城壁の外、荒野にありて宙に浮かびながら己たちの思惑、策略が思い通りにいかなかったことを嘆いていた。
「しかし、わずかでも二つの都の間に亀裂を生じさせたのは重畳であった」
「うむ、これにより人間どもにはいつまた乱世に戻るかも知れぬという不安の種を心に植えたようなもの」
「隣人が次の日には敵になるように。疑心に触れれば、人の心は容易く平穏を忘れる。なれば、我等は後ひと押しをするとしよう。不安を育てるのに必要なのは、やはり荒廃よ」
『濁業仙人』たちは荒野に舞い降りる猟兵たちを見やる。
数ではこちらのほうが圧倒的に上である。
なればこそ、彼らは嘲笑うのだ。
「猟兵たちよ。今更汝らが現れたとしても、もう遅い。不和の、不安の、恐怖の種はすでに蒔かれたり。後は『宝貝太子』による失意と絶望によりて二つの都を堕落せしめるのみ」
「汝らが思うよりもずっと人の心は不寛容である。あの武侠達は投獄されるであろうし、何より人の心にはやはり戦乱こそが似合いよ」
「人の世の理など嘯く愚かな民草には、滅びこそが似合う」
『濁業仙人』たちが群れをなして荒野に陣を敷く。
それは猟兵たちを悉く打倒し、己たちの目論見を完遂させるた、あらゆる濁業によって人界を混乱せしめんとする悪意の奔流のようであった――。
ステラ・リデル
ふふふ、みっともないですね。
策が成らず、それでも成果があったと言い取り繕う姿は滑稽です。
もっともオブリビオンである貴方達にはお似合いであるとも言えますが。
それでは戦乱の夢を見ながら骸の海にお還りなさい。
空中から見下ろし、百を超える魔法陣を顕現。
その全てから千を超えるあらゆる属性の魔力弾を射出。
魔力の暴雨により邪仙を滅ぼしましょう。
(『魔力解放Ⅲ』)
敵SPDUCの漆黒の瘴気は届く前に無数の魔力弾に含まれる浄化属性のものにより掻き消します。
邪仙たる『濁業仙人』たちの目論見は、例え猟兵たちが人命を損なわなかったのだとしても半ば成立しているようなものであった。
二つの都に残る禍根。
それは『祝恩大星』という英雄の存在に寄って楔となってつなぎ合わされているだけの仮初の平穏でしかない。
だからこそ、不和の種を蒔くことによって芽吹いた悪意の芽は徐々に人心の中にある悪意を吸って花開くだろう。
それを見越した計略であった。
しかし、猟兵たちの考え方は違う。
『濁業仙人』たちがどれだけ計略を練り、人の心の闇を突き弄ぶのだとしても、人の心はそう簡単に悪意ある者たちに容易く動かされるものではない。
ゆえに、彼らの計略謀略奸計の悉くを猟兵は打破するのだ。
「ふふふ、みっともないですね」
ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)はそう告げた。
彼女は滑稽なものを見るように『濁業仙人』へとユーベルコードに輝く瞳を向けた。
何を、と鼻白むのは『濁業仙人』たちであった。
「我等を嘲笑うか猟兵! 我等の奸計はすでに成っている。それを負け惜しみで汚すなど……!」
彼らの言葉をステラは否定する。
どれだけ言葉を弄しようとも、本来の目的であった洗脳した武侠達による『梟門の都』の襲撃は猟兵達によって阻まれた。
誰一人の生命を損なうこと無く打ち破られたのだ。
これを策が成らずといわずしてなんとする。
「それでも成果があったと言い取り繕う姿は滑稽です。背後に立つ誰かに対していいわけでも考えているのですか?」
ステラの言葉に今度こそ『濁業仙人』は肩を震わせ、その顔を真赤に染める。
羞恥と憤怒が掛け合わさったかのような顔の『濁業仙人』たちが瘴気を噴出させ、ステラを襲う。
それは生命力を奪う瘴気であり、『濁業仙人』たちの妖術、即ちユーベルコードに他ならぬ。
しかし、ステラは無数の魔力弾を解き放ち、浄化の力でもって瘴気を打ち払うのだ。
「我等を嘲るか! その思い上がりを――」
「いいえ、オブリビオンである貴方達にはお似合いであるとも言えますが。それでは――」
その瞳が今度こそ極大なるユーベルコードに輝く。
魔力解放 Ⅲ(フルバースト)。
それは一瞬で彼我の距離を詰めるほどの速度である。打ち払った瘴気、その間隙を一瞬にしてステラは詰め、百を超える魔法陣を顕現せしめる。
空に浮かぶ彼女が睥睨するは『濁業仙人』たち。
驚愕に見開く瞳は怯えか、それとも怒りか。
どちらにせよステラにとっては関係ないことである。
「――戦乱の夢を見ながら骸の海にお還りなさい」
指先に集まるユーベルコードの輝いは蒼き光。
展開された魔法陣が集束し、一点に集まって弾ける。瞬間、千を超えるあらゆる属性の魔力弾が射出され、膨大な魔力に寄る暴雨が『濁業仙人』たちを襲う。
「ばかな……我等が滅びる! 瘴気すらも浄化せしめる魔弾だと……! 如何なる、いや、膨大な力があれば――!」
そんな事が可能であるのだと『濁業仙人』たちは暴雨の如き魔力弾の雨に露と消えていく。
あらゆる瘴気も、あらゆるオブリビオンも、ステラの放つ蒼き魔力の雨の前には無力である。
抵抗などできようはずもない。
なにせ魔力弾は千を超える。
それらを交わして飛ぶことなど、雨風荒ぶ中を傘を差さずとも肩を濡らさずに走り抜けるが如く詮無きことである。
ゆえにステラは言うのだ。
「――滅びなさい」
決して彼らが見た戦乱の世に戻る夢は叶うことはないのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
ミアステラ・ティレスタム
わたしはヒトの強さを信じます
打ちのめされても立ち直れる、そんな強さを持つのがヒトの子
そして彼等は痛みを知るからこそ何処までも優しくなれる
手を取り合って生きて行ける
そんなヒトの子がわたしは好きだから
オブリビオンが悪意でヒトの世を乱すのなら、わたしは其れを清廉なる祈りを以て諸共に洗い流しましょう
纏う加護の水は自分を護るように自身の周囲に展開
激しい水流により攻撃を受け流しましょう
浮けてしまった刻印は即浄化して刻印ごと消します
隙を見て、なにものも逃れられない水の矢を放ちオブリビオンをまとめて殲滅しましょう
人を人足らしめるものはなんでろうか。
その姿形か。
それとも言葉を手繰ることか。
答えは否である。それは心があるということであり、その心こそがあらゆる可能性を内包したものであると知るのであれば、ミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)は邪仙『濁業仙人』たちの言葉に耳を貸す必要など無いと断じるのである。
「人心はもろく弱いものである。一度小突けばひび割れ、砕け散る。それのみ成らず、己でもって己を殺し、他者を容易に傷つけることさえも厭わぬ悪辣が人間の本性である」
『濁業仙人』たちは嘲笑う。
なぜなら、それこそが人の本質であり、悪性であるから。
変えようのない人の本質は、陰陽併せ持つがゆえに人は容易なるものに傾き流されていくのだ。
「即ち悪性こそが人の業よ。我等が小突くまでもなく、人は自堕落に成り果てる。平穏という甘露を感受したその日から『梟門の都』のものたちは負荷無き生活を送るがゆえに、堕落していくのだ。そんなものたちが寛容であるわけがない」
『濁業仙人』たちが放つユーベルコード、その激痛を与える刻印は一直線に対峙するミアステラへと疾走る。
しかし、それを隔てたのは水の壁、水の加護であった。
「わたしはヒトの強さを信じます。打ちのめされても立ち直れる、そんな強さを持つのがヒトの子」
彼女の瞳が見開かれ、ユーベルコードの輝きを知らしめる。
彼女は祈る。そうすることでしか見えぬ道がある。彼女はヤドリガミである。ヒトとは成り立ちが違うからこそ、ヒトを見た。
ヒトと同じ姿、ヒトと同じ色。
それらを持つからこそ、彼女は信じるに値すると邪仙たちの言葉を一蹴するのだ。
水の加護によって弾かれた刻印が霧散し、ミアステラの周囲に浮かぶのは創生されし数多の水の矢である。
「そして彼等は痛みを知るからこそ何処までも優しくなれる。手を取り合って生きていける。そんなヒトの子がわたしは好きだから」
だから、彼女は護るのだ。
己の力を持って、悪をなそうとするオブリビオンから世界を護る。
ヒトの世を乱すのならば、彼女の清廉なる祈りでもってオブリビオンの持つ悪意をこそ諸共に洗い流そう。
溢れる創生の水の矢は、必殺にして必中である。
「抜かせ! そのような戯言など、綺麗事にも劣ると知れ! 人の業! 人の過ち!人の傲慢を知ればこそ、汝の言葉がどれだけ空虚であるかわかろうものを!」
『濁業仙人』たちが放つ刻印と水の矢が激突し、互いの間に砕けて散る。
しかし、ミアステラの放つ水の矢はまさに激流が如き奔流となって、『濁業仙人』たちを押し流していく。
刻印は尽くが撃ち抜かれ、霧散していく。
「これだけの数を、討ち漏らさない、だと……! これが、猟兵の力だとでも――」
「いいえ。ヒトの子らの持つ優しさ、その写し鏡。わたしは世界を写す水鏡。祈りを以て終奏の時を齎しましょう」
ミアステラの奏でるは、終奏詩(カデンツ)。
祈りにして絶技。
絶技にしてヒトの光を映し出す水鏡そのもの。
ならばこそ、見よ。
『濁業仙人』たちが見上げる空に浮かぶは決して逃れられぬ水の矢であった。
「清廉なる水の流れに、その濁流をこそ押し流しましょう。行路は、骸の海。あらゆる水の流れが上流から下流に向かうように。下流より先に繋がるは海であることもまた道理であれば」
ミアステラが奏でる祈りは、ヒトの子らの正しきを愛する心を信じるものであった。
例え、『鴉鷺の都』と『梟門の都』がかつて敵対関係にあったのだとしても、今を生きる彼等ならば過去に因われず正しきを進むことができるはずだと、そう固く信じ、濁流を清流でもって押し流すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
荒珠・檬果
策はなってない気がするんですがねぇ?
私たち猟兵が、被害でないようにしたんですし。
たぶん、何か騒ぎがあった…で終わりそうな。
さてと、【兵貴神速】を発動。たとえ数がいようとも、これだけの騎兵はさばききれないでしょう?物量作戦ですよ。
私は赤兎馬に乗っていて。今の白日珠は水晶形態になってるので、そこからビーム打ちますし。
攻撃は、赤兎馬の機動力を生かした回避でどうにか、ですね!
さあ、赤兎馬、思うままに駆けてくださいな。私が合わせますのでね!
赤兎『心得た』
人心に亀裂を入れ、二つの都を切り離す邪仙『濁業仙人』たちの策略は猟兵たちの働きによって本懐を遂げる前に防がれた。
人命が一つでも損なわれていたのならば、彼等の目論見は確かに結実したのだろう。
しかし猟兵達は一つの生命も損なわずにことを成し遂げた。
武侠達は民草を傷つけず、また物的な被害はあれど洗脳は解かれた。
ならばこそ、一時であれ勾留される程度で済まされるであろう。
「策はなってない気がするんですがねぇ?」
荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は、『濁業仙人』たちを前にしてそう言い放つ。
自分たち猟兵が被害が出ぬようにと戦った結果である。
ならば、オブリビオンを打倒してしまえば恐らく、なにかの騒ぎ、小競り合いとして処理されるのが見えているような気がしたのだ。
「いいや、人の心は弱いものだ。どんな些細なことであっても不安は芽吹くもの。過去に因縁があるのならば、必ずそれは芽吹く。理由さえ見つけてしまえば、人は人を排斥するよう出来ているのだからな」
『濁業仙人』たちの瞳が『業』に輝く。
それは彼等の理性を失わせ、しかし凄まじき力を発揮させるユーベルコードであった。
ここに来て猟兵と対峙する以上、彼等の目的は猟兵を駆逐することである。
「オオオ――ッ!!!」
理性を失った『業』に塗れた『濁業仙人』たちが、その人智の及ばぬほどの修業によってたどり着いた肉体の練磨。
その結実たる拳を檬果へと放つ。
しかし、その拳が彼女を捕らえることはなかった。
「速さといったらこの兵種ですよね!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝いている。
凄まじい速度でもって白い光をまとった召喚騎馬兵が迫る『業』を纏う『濁業仙人』の体を吹き飛ばす。
それはどれだけ厳しい修行の果に得た力であっても、容易く弾き飛ばすものであった。
「ヌゥ――!」
それは、兵貴神速(ゴッドスピードストラテジー)を尊ぶが如く。
一瞬の間合いを詰め、次々と『濁業仙人』たちが騎馬兵によって吹き飛ばされていくのだ。
「さあ、赤兎馬。思うままに駆けてくださいな。私が合わせますのでね!」
檬果が駆る赤き毛を持つ汗血馬は、まるで兎が跳ねるようにして戦場を駆け抜ける。
心得たりというように赤兎馬が疾走る姿は、神速そのものである。
乗り手を選ぶように赤兎馬は『濁業仙人』たちの『業』すらも容易く蹄で踏み抜き、蹴り飛ばす。
その乱戦の如き中で檬果は水晶より光線を放ち、乱戦を制するのだ。
「我等の業が敗れるだと! そんなことがあってたまるものか。我等が修行、積み重ねた研鑽が!」
「正しき修行であれば、私もまた敵うべくもなかったでしょう。けれど、過ちを重ねた修練の果てに得るのは力ではなく滅びであると知りなさい」
どれだけ戦乱の世を望み、夢見るのだとしても。
決して見果てることができる夢ではないのだと知らしめるように。
赤兎馬は戦場に在りて、その存在を知らしめる。
駆け抜け、あらゆる業を振り払い、光線の輝きが煌めく度に『濁業仙人』たちを討ち貫いていく。
檬果は馬上にありて乱れ撃つ。
「我等の策が成らず、人の世が乱れることがないなどあっては」
「私たち猟兵がなんのために転移してきたと思っているんです。悪辣さを持って人を貶めるのならば、それ相応の報い。何一つ叶うことがないと知りなさい!」
炸裂した光線は業すらも振り払い、彼等の思惑が過ちに塗れていることを証明するように次々と『濁業仙人』たちを貫き霧散させていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
遥・瞬雷
人の本質とは善でも悪でもなく中庸。揺れ動く天秤の様なもの。乱世への不安が募る程、人は平和を求めるものさ。
お前達は人を見抜いているんじゃない、弱く邪であれかしと望んでいるだけだ。
「觔斗雲」で空を飛び敵の頭上を取る。
攻撃に対して「照魔鏡」をかざし【破魔】の【仙術】で跳ね返す。
その術、激痛の傷痕を刻む邪術「呪仙痕」と見破ったり!破魔の仙鏡の前にもはや無力と知るがいい!
天秤の悪の側に錘が乗れば悪に傾くのも人の業。ならばそれを取り除くが私達仙人の…猟兵の務め。
【三昧真火】の術で【属性攻撃】。降り注ぐ炎で邪仙を焼き払う。
陰陽五行の理を超えた、全てを燃やす真なる炎。その邪な仙術や魂ごと燃え尽きるがいいさ。
人は望むものを見て、聞く。
都合の悪い真実はいらぬと目をそらし、耳をふさぐからこそ真理より遠く離れていく。
それは人にとって必要な機能であればこそ咎めるに値するものではない。
問題はそこではないのだ。
一人の真実が遍く全ての生命の真実とは限らぬように。真理は一つなれど、誰しもが心に抱くものこそが光を放つものである。
「人は愚かだ。人は弱いものだ。脆弱で愚昧で、救いがたいものであるからこそ人界に争いは蔓延り、戦乱だけが禍根を残す。我等は、それらを容易く手繰ろうというのだ。それが人の真理であるぞ」
放つ呪詛の刻印が対峙する猟兵たちに迫る。
しかし、それらを不思議な雲に乗り躱す遥・瞬雷(瞬雷女仙・f32937)は邪仙『濁業仙人』に言い放つ。
「人の本質とは善でも悪でもなく中庸。揺れ動く天秤のようなもの。乱世への不安が募る程、人は平和を求めるものさ」
彼女の言葉は真理であったことだろう。
正しき行い。正しき修業を重ね、遠回りであっても、嘆くことはなく。そして険しい道のりであったとしてもためらいなく進んできたからこそ得た境地である。
ゆえに彼女に呪詛の刻印は当たらない。
彼女の女傑たる能力は、今更礫の如き刻印に阻まれることはない。
「ならばなんとする! 我等は人の本質を理解しているだけに過ぎぬ。どれだけ言葉を弄しようとも、それだけは変わらぬよ! 戦いがなくならぬようにな!」
瞬雷は遥か『濁業仙人』たちの遥か頭上を取り、雲の上から告げるのだ。
ならば聞け。
その抱える真理とやらが如何に脆弱なものであるかを。
流されるままに濁業に身を堕とすことを是とした者たちよ。
「お前たちは人を見抜いているんじゃない。弱く邪であれかしと望んでいるだけだ」
その言葉は核心をついていた。
善悪が人の心に同時に存在するのであればこそ、人の心には天秤の要たるものが存在している。
揺れ動く心の見せる様は確かに中庸である。
人は見たいものを見る。
ならば、邪仙もまた同様であろう。
「その術、その礫の如き呪詛! 激痛の傷痕を刻む邪術『呪仙術』と見破ったり! 破魔の仙鏡の前にはもはや無力と知るがいい!」
瞬雷が掲げるのは銅鏡。
破魔の力を持つ宝具は妖力を跳ね返し、真実を照らし出す。
ゆえに最早彼女に通じる術は『濁業仙人』たちにはない。
「馬鹿な! それなる破魔の仙鏡! 何故貴様が――!」
「天秤の悪の側に錘が乗れば悪に傾くのも人の業。ならば、それを取り除くのが私達仙人の……猟兵の務めと知れ。お前達の濁りに濁った瞳を開きみよ!」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
生み出されるは燃やし滅ぼすという現象を具現化した真の炎である。
「我求め願うは三味の真火 疾く有れかし!」
陰陽五行の理を超えた全てを燃やす真なる炎。
それらが燃やすと定めたのは、邪な仙術を手繰る『濁業仙人』の魂そのものである。
苛烈なる生き様をもって神仙の戸口にたどり着いた魂が見せる炎は、苛烈にして真。
ゆえにその術の名を三味真火(ザンマイシンカ)と呼ぶ。
吹き荒れる炎が荒野に降り注ぎ、悪しき魂を持ち、濁業に染まりし者たちを焼き滅ぼす。
人の天秤が傾くのなれば、等しきものをまた乗せることができるのが人の心である。
ゆえに瞬雷は『濁業仙人』たちの計略を一笑のもとに付すのだ。
「人の善なるかを信じるか! それが愚かだと――」
「それはお前たちの望みだと言った。人は愚かであろうと、愚かなままに真理に至るのだ。誰に教わるでもなく、己の足だけでそれを得ることができる。悪しき濁業に身を染めた者たちが、清業に邁進するものたちの足を引っ張ることなど言語道断だ」
瞬雷の炎が荒野にて濁業を清めるように吹き荒れ、邪仙の目論見を飽き尽くすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
源波・善老斎
人の悪なる心のみに目を向け、善なるに考え及ばぬはオブリビオンゆえか、はたまた……。
ともあれ、奴らの策も自ずと程度が知れようのものじゃ。
腐っても仙人じゃろうに、聞いて呆れるわい。
如何に威力を高めようとも、敵の攻撃は【軽業】で躱せばどうということはなかろう。
しかし、如何せん数が多い……ならば彼らの力を借りるとするかのう。
応えてくれるとは限らぬが、我輩が信じずしてなんとするか。
昂き声もて復び利しとなす……行善天拳奥義が一、【復利昂声】!
「鴉鷺の兵(つわもの)どもに問う、平和とは何ぞや!
おぬしらに高き志あらば、今こそ梟門を護るため共に立たん!
さすれば梟門の民も必ずやその義に報いてくれるじゃろう!」
人の心に悪を見出すのならば、それ即ち悪であろう。
だが人の心に善なるを見るのならば、それもまた善である。
陰と陽が隣り合わせにあるように人が人たらしめる理由はなんとするか。
人は獣ではない。
獣にありて人にないもの。
人にありて獣にないもの。
それは本能とは別に存在する理性であろう。理性があるからこそ、人は己の心の中にある悪を抑える。
堕落することを止めようとする。
けれど、悪がなければ、これもまた堕する一途になると知らなければならない。
ゆえに、源波・善老斎(皓老匠・f32800)は荒野にて、その信条を語るのである。
「人の悪なる心のみに目を向け、善なるに考え及ばぬはオブリビオン故か、はたまた……」
群れ成す邪仙『濁業仙人』たちが善老斎を取り囲む。
彼等の手に輝くのは呪詛満ちる刻印である。それは一度刻まれば、人の身であれば悶絶し息絶えるまで呪詛を肉体に満ち溢れさせ朽ちるまで魂を削る濁業である。
「我等を愚弄するか! 瑞獣風情が!」
「我輩は瑞獣ではないよ。その程度も看破できぬとは。腐っても仙人じゃろうに、聞いて呆れるわい」
如何に凄まじきユーベルコードにして妖術であろうと当たらなければ意味をなさない。
善老斎の見事な軽業の如き身のこなしの前には礫のような呪詛の刻印など刻むことなど能わず。
ひらりと躱す姿はしなやかな獣を見るようでもあった。
「こしゃくな! 逃げ回るばかりで我等を打倒できるものか」
「ふむ、確かに如何せん数が多いことは認めよう。ならば彼等の力を借りるとするかのう。応えてくれるとは限らぬが、我輩が信じずしてなんとするか」
彼が何をしようとしているのか、邪仙たる『濁業仙人』たちは理解できなかったことであろう。
息を吸い込む。
その所作にて彼等が理解したのは、内勁によって刻印に対する耐性をあげようとしたのであろうという予測だけであった。
しかし、それは過ちである。
ここに在るは『行善天拳』の継承者である。
ならばこそ、その練に練られた内勁による練気は言霊の力を増幅させた激励の声であった。
「鴉鷺の兵どもに問う、平和とはなんぞや! おぬしらに高き志があらば、今こそ梟門を護るために共に立たん!」
その声は荒野を超え、城壁さえも超え、梟門の都において猟兵たちが正気に戻した武侠たちの耳に確かに届いたのだ。
その問いかけはきっと、梟門の都に住まう者たちにも届いたことだろう。
平和とはなんぞや。
その問いかけについて彼等の心が既に応えを得ている。
奪い合わぬこと、殺さぬこと、謗らぬこと。謀らぬこと、不和ならざること。様々な答えが声を聞いた者たち全てに届いたことだろう。
ゆえに答えは一つでなくとも良い。
「さすれば梟門の民、鴉鷺の兵! その義に報いることじゃろう!」
裂帛の気合と共に善老斎は叫ぶ。
その叫びに呼応するように城壁を超えて飛び出すのは、鴉鷺の武侠と梟門の武侠たちであった。
彼等は並び立つ。
その光景に邪仙『濁業仙人』たちは己たちの策謀が水泡に帰したことを知るだろう。
これこそが、『行善天拳』が一、復利昂声(フクリコウセイ)!
声に応えし者たちの力を増し、人と人とを繋ぐ力にしてユーベルコードの輝きである。
「祝勝会は我輩の奢りじゃ! さあ、共に脅かす者どもを蹴散らそうぞ!」
善老斎と武侠達は駆け出す。
そこに梟門も鴉鷺もなかった。
あったのは志によってまとまった義士の集団だけであった。
どれだけオブリビオンが強大な邪仙としての力を持っていたとしても関係ない。
「ばかな……! 小奴らはただの武侠! 何故我等の刻印を躱せる!」
「簡単なことよ。濁業に堕すのではなく、平和の意味を知るからこそ!」
放たれた肉球の一撃が『濁業仙人』の体を頸によって爆散四散せしめる。
それは、人の心が見せた輝きであると言うように善老斎は武侠たちと共に『濁業仙人』たちを戦慄せしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
外邨・蛍嘉
【馬県さんち家】
人格:クルワ(男/鬼)にて行動。
実は『静かなる者』とは親戚(話してない)
サテ、行きマショウカ。ココに呼んだのは、理由がありマシテ。
【雨剣鬼の記憶・六出】。斬撃は、元から足元狙いデスヨ。湖に落ちてクダサイ。水上歩行するノデ、ワタシ達には関係ありマセン。
そして…ワタシ達に呪詛が効くと思っていたら、大間違いデスヨ。
ワタシは上から斬撃をお見舞いシマス。
エエ、これは同じ技。同じ血にて成せる技デスヨ。
ワタシは、家系図から消されマシタガ…。鬼になるというのは、こういうことデス。
馬県・義透
【馬県さんち】
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
私を指名されたので、きましたが…。浅はかな目の前の敵を片付けましょう。
【四天境地・水】にて…足元を湖へと。ええ、我らは水上歩行しますから…。
戸惑いながらも、上から射かけるのは止めません。
どうして、技の効果が同じに?
同じ血…六出の!?家系図から消され…なるほど、鬼を出すことを許さない家の一つ、でしたから…。
※
クルワが母方(六出家)の親戚だと、初めて知った
人と人とを繋ぐ縁は良縁悪縁奇縁と様々であろう。
その是非を問うことは当人たちが出来るものであって、他者が理解することではないであろう。
互いに猟兵であるという理解はあれど、何故己が呼び寄せられたのかを複合型悪霊であり、四柱として存在する馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の一柱、『静かなる者』は理解していなかった。
何故己が指名されたのか。
だがしかし、目の前にオブリビオンが存在するというのであれば、話は別である。
「浅はかな目の前の敵を片付けましょう」
然り、と外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)の中のもう一つの人格である『クルワ』がうなずく。
ここに彼等を読んだのは理由がある。
それを語るには未だ敵の数が多いことは言うまでもない。
吹き荒れる嵐のように礫として撃ち放たれる呪詛の刻印。それらは一度傷つけられれば、呪詛として体中を巡って激痛をもたらし、時間とともに拡大していくおぞましき妖術である。
ならばこそ、それらを受けることは致命を意味するであろう。
「サテ、行きマショウカ」
その瞳がユーベルコードに輝く。
振るった妖刀が妖しく影のような昏き色から蒼い光を放ち、斬撃を打ち出す。
それこそが、ユーベルコード、雨剣鬼の記憶・六出(ムツデノワザ)である。
「どこを狙っておる! 我等の力量すら測れぬか!」
『濁業仙人』たちが大地に刻まれた斬撃を見て嘲笑う。
しかして、その斬撃はもとより『濁業仙人』たちを狙ったものではない。
そう、斬撃刻まれし荒野から溢れ出るのは、雪解け水である。
たちまちの内に荒野は湖へと様変わりを告げる。
だが、それでもまだ足りない。『クルワ』の狙いがなんであれ、『疾き者』は猟兵として援護すべく瞳をユーベルコードに輝かせる。
その力の発露は奇しくも同じものであった。
四天境地・水(シテンキョウチ・ミズ)。
放たれる矢が大地に突き立てられ、やはり雪解け水が噴出し、湖を拡大させていくのだ。
「奇術の類であれば、他所でやってもらおうか猟兵……――なにっ?!」
『濁業仙人』たちは気がついたであろう。
何故猟兵たちが荒野を湖へと変えたのか。足場を不十分にするためか。否である。そんなことをする必要がない。
そう、この湖は生命力を吸収する湖である。
それが二つ重なればどうなるかなど、言うまでもない。そこに存在するだけで己達の体に巡らせた頸を奪われていく。
妖術、刻印、呪詛など練ることなど不可能であった。
「どうして、技の効果が同じに?」
『疾き者』は訝しむ。
邪仙たちよりも驚愕に満ちていたのは、皮肉でしか無かったが『クルワ』は静かに告げる。
「エエ、これは同じ技。同じ血にて成せる技デスヨ」
「同じ血……」
『疾き者』には思い至る節があったのだろう。
同じ血、六出の家系図から消された存在。
それが示すのは、『静かなる者』と『クルワ』が同じ血脈の中にある存在であったこという事実である。
悪霊となってから得た奇縁と言うべきであろうか。
「ワタシは家系図から消されマシタガ……鬼になるというのは、こういうことデス」
そこに如何なる感情が在ったのかは定かではないし、余人の預かり知らぬことである。
だが、『疾き者』は事情を知る。
鬼を出すことを許さぬ家系であればこそ、その真実は容易に推し量ることができよう。
共に湖面に立つ。
向き合うことはしないだろう。さりとて並び立つこともしない。
ならば、背を預けるにほかならぬ。
それ以上の言葉は不要であったことだろう。湖面に波紋が広がった瞬間、二つの波が合わさって複雑な紋様を描く。
「馬鹿なっ! こんな、この程度の術でもって我等がこうも容易く――!」
『濁業仙人』たちは生命吸収のちからを持つ湖においては、その力を十全に扱うことなどできなかったことだろう。
氷の矢が吹きすさび、蒼き残光が翻り、『濁業仙人』たちを尽く屠り去る。
彼等の攻勢の前に抵抗できる邪仙など存在しなかったであろう。
悪意を飲み込む雪解け水の湖は、静かな湖面を取り戻す頃には、すでに悪意ある『濁業仙人』たちの姿は解けるように骸の海へと霧散し消えていく。
二人残った湖面において、『クルワ』と『疾き者』は何を語るだろう。
初めて知った間柄。
それがこれから何をもたらし、何に影響を与えていくかはわからない。けれど、この邂逅が生み出す波紋は、きっと世界にとっては良きものであることを祈らずには居られないであろう――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
秦・美芳
だいじょーぶだよ
不安とかこわいとか心配とか
そんな気持ちがいっぱいあっても、人はだいじょーぶ!
希望があるかぎり、めいふぁんたちは生きていけるよ!
だからめいふぁんがやることはひとつだけ
これ以上おぶりびおんの悪いことは許さないよ!
でも数が多すぎるね?!
仕方ないからこーゆー時のめいふぁんはちょっとだけおおざっぱだよ!!
というわけでまたまた
【宝貝「雷公天絶陣」】を広範囲にどっかーん!
降魔拳の出番はもう少し後で!
敵の攻撃は回避できるといいなーと思いながら
当たると痛い痛いよ!?
呪詛には浄化
羽衣の力で刻印を浄化して痛み除去
もーおこったよー!
もう一回全力で【宝貝「雷公天絶陣」】どっかーん!
今度は手加減無しだよ!
邪仙『濁業仙人』たちは人々の中に不和と不安、そして奪われるかもしれぬという恐怖の種を植え付けただけであったのかもしれない。
それは一つの都ではなく、『梟門の都』と『鴉鷺の都』、二つ都を同時に戦乱へと導かんとする悪意。
しかして、人々の心にそれらがあるのだとしても、
「だいじょーぶだよ。不安とかこわいとか心配とか。そんな気持ちがいっぱいあっても、人はだいじょーぶ!」
そう言葉を持って感情を制する者がいる。
どれだけ心が弱りきったのだとしても。
どれだけ擦り切れてしまったのだとしても。
それでも声高々に叫ぶのだ。
人の生きる道を。人の生きざまを。
「希望があるかぎり、めいふぁんたちは生きていけるよ!」
秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)は荒野に立ち、言葉を紡ぐ。
二つの都の武侠達は声に答え、行動でもってそれを示した。どれだけ邪仙が人の心を見出そうとしたのだとしても、それでも人の心は折れることはないのだと希望でもって示すのだ。
「だから、めいふぁんがやることはひとつだけ。これ以上おぶりびおんの悪いことは許さないよ!」
すでに戦いの趨勢は猟兵に傾いている。
どれだけ数が多かろうが、こちらには猟兵の仲間がいる。
そして、武侠たちもまた加勢にきてくれている。ならば、負ける道理など無い。
「でも数が多すぎるね!?」
迫る『濁業仙人』たち。
その手に輝くは刻印の呪詛。激痛でもって肉体を破壊する妖術である。それらが礫のように美芳へと放たれる。
それらを巻き込ませるように美芳の瞳がユーベルコードに輝く。
こういう時に限って言えば、美芳は大雑把である。数が多いのであれば、広範囲で一気に殲滅すればいいと考えるのである。
手にした宝貝「雷公天絶陣」によって放たれた雷撃が雨のように呪詛を撃ち落とし、撃滅していくのだ。
「はい、どっかーん! 降魔拳の出番はもう少し後で! 邪仙なんて、これで全部いっそうだよー」
降りしきる雷撃。
しかし、その間隙を縫って呪詛の刻印が美芳へと突き刺さる。
「油断したな猟兵! 我等が研鑽練磨の日々を侮るからである! さあ、激痛に悶え苦しみ、じわじわと死んでしまえ!」
『濁業仙人』たちが嘲笑う。
美芳の体には無数の呪詛の刻印が刻まれている。拡大していく刻印が美芳の体に激痛を与える。
しかし、彼女の体は羽衣が如く軽く、そしてまた身につけた羽衣は浄化の力によって呪詛の刻印がそれ以上拡大させることを防ぐどころか、時が逆巻くように収縮して、完全に消滅せしめるのだ。
「な、なに……!? 何故、刻印が消える……!? 貴様、まさか!」
そう内勁によって体の中の呪詛をコントロールし、一箇所に集める。そして、一箇所に集めた呪詛は羽衣の力によって一気に浄化されるのだ。
「もー怒ったよー!」
当たると痛い。
けれど、呪詛の刻印は、そんな感想が出てこないほどに強烈な痛みをもたらすものであったはずだ。
なのに、美芳は宝貝「雷公天絶陣」を振るいあげる。
「今度は手加減なしだよ!」
さらにもう一度全力で振るう雷撃の力。
それは天を衝くほどの美芳の痛みに対する怒りでもって振り下ろされ、凄まじき雷撃の力でもって『濁業仙人』ごと呪詛の刻印を焼き払うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…いや…武侠をそそのかしたて襲撃させたのならまあ…不和も出来るかも知れないけど…
…やったこと洗脳でしょ…?我々がそれを治癒した上で事情を話してあそこの住人に任せたし…
…どうやってもそんなに悪いことにはならないよね…原因までわかってるんだし…
…まあいいや、どうせお前達が結果を見届けることは出来ない…
重奏強化術式【エコー】で強化した【神話終わる幕引きの舞台】を使用……呪詛を極端に減衰させて無力化しよう…
…うーん、ちょっとピリピリ来る程度だね…じゃあ……
術式装填銃【アヌエヌエ】に装填した浄化弾で濁業仙人達を射撃…
…浄化して倒していくとしようか…
「これでは我等の計画が台無しになってしまう……! ここまで来て」
邪仙『濁業仙人』たちは、己たちの目論見が尽く猟兵に寄って打ち破られたことに歯噛みしていた。
未だ数ではこちらが勝る。
けれど、猟兵達は『濁業仙人』たちを討ち滅ぼしていく。さらには『梟門の都』と『鴉鷺の都』の武侠たちをユーベルコードに寄って意志を一つにまとめ上げていた。
これでは不和どころではない。
不安も、恐怖も、何一つ人々の心の中に根付くことはない。
いや、そもそも芽吹くことなどなかったことだろう。
「……いや……武侠を唆しての襲撃ならば不和も出来るかも知れないけれど……面倒に思ったから洗脳なんていう簡単な手を取った……」
その声に『濁業仙人』たちは振り返る。
確かにそのとおりであった。
妖術と言えど、手にとったのは安牌であり同時に安易な策であった。
濁業に身をやつした者が取るのは、いつだって堕落の一手である。ならばこそ、彼等は洗脳という手段を手にしたのだ。
「我々がそれを治癒した上で事情を話して、あそこの住人に任せたし……どうやってもそんな悪いことに成らないよね……原因まで判ってるんだし」
だから、安易な策は簡単に覆るのだと、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『濁業仙人』たちの策を看破し、言葉でもって、それが成らぬことを持って突きつけるのだ。
「お前たちさえ居なければ、我等の策はなったのだ! どこまでも邪魔をしてくれる! 死ね!」
『濁業仙人』たちが次々とメンカルを取り囲み、呪詛の刻印を解き放つ。
それは激痛をもたらし、さらに拡大しては、その身を滅ぼす恐るべき妖術であった。
しかし、メンカルが何の策もなく敵の前に姿を表すだろうか。
それこそ浅慮であると言わざるを得ない。
「……まあいいや、どうせお前達が結果を見届けることはできない――人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
掲げ、集約されるユーベルコードの輝きが炸裂する。
それは世界法則を改変する数多の鍵剣である。
ここに整うは、神話終わる幕引きの舞台(ゼロ・キャスト)。
この場においてはあらゆる加護と呪詛が極度に減衰される結界へと変わる。ならば、放たれた呪詛の刻印など当たったとしても何の問題にもならぬ。
肌を焼く痛みにもならぬ痛み。
メンカルは重奏強化術式『エコー』によってさらにユーベルコードの輝き、鍵剣を巨大化させ、その力を増幅させていく。
痛みなど最早何も感じない。
「ばかな! 我等の練った呪詛が……減退……いや、消滅しただと!?」
呪詛の刻印をどれだけ放つのだとしても、その尽くが放たれた瞬間から霧散し、消えていくのだ。
「……無駄だよ。もう痛みも何もない。お前達の目論見は此処で完全に潰えたと思い知れ」
手にした術式装填銃『アヌエヌエ』の銃口が向けられる。
「まだ! まだだ! 我等の! 我等の計略がこんなことで!」
呪詛を展開し、メンカルの持つ術式弾の一撃を防ごうとする『濁業仙人』たちは、この結界の中が呪詛を減衰させるだけのものではないことを失念していたのだ。
加護も何もかも減衰させるのだ。
だからこそ、この結界に適応した者こそが、この結界においての王そのものである。
「……じゃあね。また、なんていわないよ」
放たれた弾丸が浄化の力を伴って『濁業仙人』たちを討ち貫いていく。
一射一撃のもとに『濁業仙人』たちは打ち倒されていく。彼等の呪詛による身体能力の強化や、邪仙たる力の基礎は、神話終わる幕引きの舞台においてはなんと無力なことであったことだろうか。
それを知ったところで、安易なる堕落の道を選んだ彼等にはメンカルの放つ弾丸を防ぐ術などなかったのだ。
これがもしも、清業を積んだ清廉なる仙人ならばこうはならなかっただろう。
「……せめて浄化によって濁業を清めるといい。世界は難しい。けれど、安易にはならない。己だけの価値観だけで完結しているから、流されていく。ならばこそ、そこにとどまり続ける意志だけが人を人たらしめる。不和も不安も何ものにも流されぬことこそが」
人の心の輝きであると知れ、とメンカルは術式装填銃の引き金を引くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『宝貝太子』
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POW : 火炎槍
自身が装備する【火炎の槍】から【燃えさかる仙術の炎】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【延焼】の状態異常を与える。
SPD : 風火大車輪
【脚部の車輪を起動させる】事で【空を駆ける天仙】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 乾坤一擲
【乾坤の円環】が命中した対象を爆破し、更に互いを【運命の縛鎖】で繋ぐ。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠エルシー・ナイン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
邪仙『濁業仙人』たちは尽くが滅び去った。
猟兵達は各々の持つ力でもって、人々に不安や不和に流されぬことを説いたことだろう。
二つの都の武侠達は手を取る。
どれだけ『濁業仙人』たちが戦乱の種を蒔いたのだとしても、それらが全て無駄出会ったことを知らしめるのだ。
しかし、猟兵たちの戦いは終わらない。
空より飛翔して荒野に降り立つ人影を見ただろう。土煙が上がり、その独特な人型のシルエットがオブリビオンであることを直感する。
「天に凶星、地に徒花。戦乱こそが生きるための意義であるのならば、ボクの名を知れ! 我が名は『堕讐凶星』! 全ての戦乱の源。全ての悪辣の源。我が槍、我が宝貝の全てを持って善なる者全てを尽く滅ぼそう!」
名乗りあげるオブリビオン『宝貝太子』。
その姿はかつての英雄の姿であれど、もはや内側にあるのは『濁業仙人』たちの悪意だけであった。
如何に『宝貝太子』と言えど、起動したものが悪であれば悪心に染まる。
かつては善なる者が触れたがゆえに、その心には善が宿った。それゆえに彼は平和を勝ち取るために二つの都の間に立ち、あらゆる災厄を、戦乱を沈めてきたのだ。
しかし、もはや善なる心を持つ最初の一人が死せれば、彼はもとの『宝貝太子』に戻る。
「ボクは代弁者に過ぎない。悪意を持って触れるならば悪辣を。恐れぬならば、打ち破ってみせるがいいさ! ボクは強いからね!」
何物にも染まる純粋さ。
器としての存在。
それが『宝貝太子』である。なればこそ、猟兵達は再び彼を破壊し、眠りに付かせなければならない。
かつて在りし英雄『祝恩大星』はすでに『堕讐凶星』へと成り果てたのだから――。
ステラ・リデル
成程、善悪は起動した者次第。あくまで道具であると。
ならば語るべきことはありませんね。
貴方を起こした者達は既に滅びました。貴方もまた再びの眠りにつきなさい。
千を超える破滅を齎す魔剣を顕現。あらゆる角度から宝貝太子を襲います。
乾坤の円環はこちらに届く前に魔剣で消滅させましょう。
(『破剣乱舞』)
それではさようなら、宝貝太子。いえ、堕讐凶星と呼びましょうか。
次に会う時は祝恩大星と呼べる存在であることを願います。
(帰る前に梟門の都によって鴉鷺の武侠たちのフォローをしておく予定)
オブリビオン『宝貝太子』は、あくまで器である。
そこに魂が宿ったように思えるのは、写し鏡のようなものであるからだ。
善なる者が触れれば、善なる義士として。
悪なる者が触れれば、悪なる悪漢として。
そういうふうに出来ている存在であるとしか言いようがない。例え、それがオブリビオン、過去の化身として蘇ったとしても、器に満たされたのが悪であれば、それは最早かつて在りし英雄である『祝恩大星』ではないのだ。
ゆえに。
「乾坤一擲の一撃! 先んずれば、ボクと君との間には切っても切れぬ運命の縛鎖が繋がれる!」
放たれた乾坤の環が凄まじい勢いでステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)へと放たれる。
その速度は音速を超えるものであり、駆け付けた梟門、鴉鷺の武侠たちがおののく。
放たれた乾坤一擲の一撃は、しかして彼女の前から霧散して消える。
何故、と問うまい。
それはまさに空前絶後の光景であった。
「終末に降り注ぐ、第二の騎士の刃、その身で受けなさい」
彼女が手にしていたのは触れた存在を消滅させる魔力で出来た剣であった。
ステラ自身には傷一つ無く。
瞳に輝くユーベルコードは、今も爛々と輝いている。
「なるほど、善悪は起動した者次第。あくまで道具であると。ならば――」
ならば語ることはないとステラは断じるのだ。
彼女のユーベルコードに輝くは天。
幾何学模様を描く魔力が千を超える破滅をもたらす魔剣を顕現させる。
天を埋め尽くさんばかりの剣の切っ先が『宝貝太子』、『堕讐凶星』へと向けられる。
「貴方を起こした者たちは既に滅びました。貴方もまた再びの眠りにつきなさい」
「そんなはずはない。ボクはボクを起動した者が存在する限り、動き続ける。ボクの前の存在がそうであったように。だから、ボクはまだ動いている。ボクの器に満たした存在が、まだいるはずなんだ!」
『堕讐凶星』が叫ぶ。
確かにそのとおりである。
『濁業仙人』たちは尽く討滅した。
しかし、まだ『宝貝太子』たる彼は動いている。
これが示す事実は一つしかない。
「まだ貴方を起動せしめた悪辣なる存在があると――ならば」
放たれた魔剣の群れが空を飛翔する『宝貝太子』を付け狙う。
放たれる乾坤一擲の環が次々と剣と対消滅を起こしていく。しかし、圧倒的な物量で攻め立てるステラと『宝貝太子』の間に横たわっているのは、果てのない消耗戦であった。
確かに一撃が強烈なものであろう乾坤一擲。
しかして、こちらは触れただけで存在を消滅させる魔力で出来た剣である。ステラの魔力が尽きぬ限り、この剣戟の雨は終わらないのだ。
「くっ……! しつこい!」
大地を舐めるようにして飛翔する『宝貝太子』を追って、次々と魔剣が大地に穿たれ、土煙を上げていく。
その向こうでステラの瞳が輝き、幾何学模様を生み出していく。
まだ終わらない。
千を越える魔剣を生み出してなお、尽きることのない魔力。
放たれる魔剣が『宝貝太子』を追い込み、空を飛ぶ彼と踊るように追い詰めていくのだ。
「破剣乱舞(ブレイド・ダンス)……それではさようなら、『宝貝太子』。いえ、『堕讐凶星』と呼びましょうか。次に逢う時は」
いや、それが叶うことはない。
それをステラは知るからこそ、言葉を飲み込んだ。
かつて『祝恩大星』と呼ばれた存在はもういない。
いないからこそ、梟門、鴉鷺の都において彼の名は英雄として人々の心の中にあるのだ。
ゆえに、ステラは梟門の武侠たちと鴉鷺の武侠たちが手を取り合って立ち上がった事実を見て好ましく思うのだ。
「『祝恩大星』! その名を持って人の心に篝火を灯す存在であったのならば――!」
次に出会う時にそれを望むのは、愚かなことではないと告げる。
放たれた魔剣が『宝貝太子』の体を貫き、大地へと失墜させ、ステラは『凶星』を滅ぼす力を振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
外邨・蛍嘉
【馬県さんち】
引き続き『クルワ』にて行動。
…サテ、指名した以上、最後まで組んでやり抜きマショウ。
ワタシが前に立ちますノデ、援護お願いシマスヨ。
アナタに傷がつけばイイ。そして、狙いを悟られずに行けばイイ。
攻撃は斬撃で弾き、時間凍結の隙に一つの斬撃を当てマショウ。
そこから、不幸は連鎖するノデス。斬撃も矢も、避けられなくなるデショウ。
悪辣なる意志でけしかけた存在を許すことはないデスネ。
…おそらく、ワタシ達のどちらかが、駆けつけるはずデスヨ。
馬県・義透
【馬県さんち】
引き続き『静かなる者』にて。
六出家、家系図が一部破れていたのですか、そういうことですか…。
ええ、指名された以上はやりきりますよ。
援護は任されました。
斬撃に紛れるように【四天境地・『雪』】の霊力矢を放ちましょう。
そう、真の狙いは時間凍結。溶けたときに襲いかかるは、不幸の連鎖。
絶えず私は矢を射かけましょう。クルワ殿の斬撃か、私の矢か…どちらかは必ず当たります。
ええ、そして。どちらかは必ず駆けつけますよ。こちらは四柱もいるのです、誰かが聞き付けますよ。そう、誰かがね。
猟兵のユーベルコードに寄って大地に失墜せしめられた『宝貝太子』、『堕讐凶星』は未だ消え失せることはなかった。
その器に満たされた悪意の源は未だ滅せられていないことを猟兵達は知る。
邪仙たる『濁業仙人』たちは全て滅した。
けれど、器に注がれた善意であれ悪意であれ、その源が絶たれぬ限り『宝貝太子』は止まることを知らない。
そういう存在なのだ。
「だから、ボクは世界に騒乱と戦乱を呼び込むんだ。そうあれかしと望まれたのだから!」
大地に失墜した『宝貝太子』は再び空へと舞い上がる。
その手にした環、乾坤一擲の一撃が猟兵たちを襲う。
「……サテ、指名した以上、最後まで組んでやり抜きマショウ」
「ええ、指名された以上はやりきりますよ」
外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)と馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その内なる存在と四柱の一柱たる『静かなる者』が共に並び立つ。
『クルワ』は背を預け、駆け出す。
彼、といっていいのかわからないが、それでも『静かなる者』は理解していた。
目の前を疾走る『クルワ』と名乗る猟兵。
その『クルワ』こそが六出家の抹消された存在であることを知る。ゆえに、ならばこそ彼はかの存在の背中を預かるのだ。
「乾坤一擲! 当たれ!」
放たれた環が『クルワ』に迫る。
凄まじき衝撃が受け止めた妖刀からビリビリと伝わってくる。骨がきしみ、肉を削ぐような衝撃。
それは言うまでもなく過去に有りて二つの都の間に起こった戦乱を沈めた英雄の力と呼ぶにはふさわしいものであったことだろう。
「受け止めたね! ボクと君の間には運命の縛鎖が繋がれた! 早々に引き剥がせないと知れ!」
「いいデショウ。ならば、その縛鎖、そのままにして引き受けマショウ!」
『クルワ』にとって、それは好都合なことであった。
『宝貝太子』の狙いが自身に定められているのならば、それを利用しない手はない。狙いをさとられぬというのならば、己の身を囮にすることに何のためらいがあろうか。
そして、背後より放たれる分裂する氷の矢が降り注ぐのだ。
「この程度の弓矢で――!」
だが、『宝貝太子』は知らない。
その弓矢は確かに自身で受け止めても、彼にとっては致命傷に成らないだろう。
だが、それはユーベルコードである。
「凍れ、そのままに」
四天境地・『雪』(シテンキョウチ・ユキ)。
時間凍結をもたらす弓矢は、『宝貝太子』の動きを止める。僅かな時間しか凍結させることができなくても、こと達人同士戦いにあっては、それが致命的になることは言うまでもないのだ。
瞬間、『クルワ』の放った斬撃が『宝貝太子』の体に傷をつける。
「時間凍結! この矢は受けてはダメだね」
斬撃が『宝貝太子』の外殻を切り裂く。だからこそ、彼は気がついたのだろう。『静かなる者』が放った氷の矢、それこそが起点となって己に時間凍結という決定的な隙を生み出すことを。
ゆえに、もはやこの手は二度と通じない。
「確かにそうでしょうとも。必ずどちらかは当たります。クルワ殿の斬撃か、私の矢か……どちらを選びますか?」
『静かなる者』の声が響く。
斬撃が『宝貝太子』を追い込んでいく。しかし、突如として彼の飛行能力を支える宝貝が煙を吹き出す。
「なっ……! なんで!?」
「ええ。それが連鎖する呪い。ワタシのユーベルコードです」
斬撃を受ければ、必ず連鎖反応するように『宝貝太子』は追い込まれていく。しかし、弓矢を受けては時間凍結によって決定的な隙を生み出されてしまう。
そうなっては、じりじりと消耗させられることは明白。
けれど、それを躱す術は『宝貝太子』にはなかったのだ。
「悪辣なる意志でけしかけた存在を許すことはないデスネ……おそらく、ワタシ達のどちらかが、駆けつけるはずデスヨ」
そう、封神武侠界において戦乱を呼ぶ存在を許すことはない。
例え、『宝貝太子』を倒したとしても、必ず悪辣なる意志は人々を戦乱へと導こうとするだろう。
ゆえに、二人は必ず駆けつける。
人のために、そして器として悪意でもって満たされたかつての存在を堕することなく止め置くことだろう。
「ええ、そして。こちらは四柱もいるのです、誰かが聞きつけますよ。そう、誰かがね」
降り注ぐ弓矢が『宝貝太子』の動きを止め、『クルワ』の斬撃でもって『宝貝太子』は胴を薙ぎ払われる。
その一撃は『宝貝太子』に注がれた悪意を霧散させるように。
天網恢恢疎にして漏らさず。
そう言うかのように、見逃すことなく叩き伏せるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
遥・瞬雷
人の心があると見えるならばそれは心を持つと同じ、と私は考える。
故に、作り物だとしても、他者の心を写したのだとしても関係ない。宝貝太子でも祝恩大星でもない、堕讐凶星という1人の倒すべき強敵として対峙します。
人知れず討つには派手な術は不向き。七星剣を構え【功夫】の技で立ち向かう。高速の攻撃を受け流しつつ反撃の好機を狙う。
目にも止まらない速さだけど、目にも映らないという訳じゃない。眼前をよぎる一瞬の好機を修行で鍛えた【瞬間思考力】で捉え【飛斬術】で攻撃。
間合い、命中率、刃が通るか…全ての過程を飛ばして【切断】したという結果を与える、【仙術】による因果律操作。
討つべき強敵として奥義にてお相手致します。
悪意が器に満ちたから悪に染まるというのであれば、それは心であると言えないのか。
器に満ちる心は偽物か。
答えは否である。
少なくとも、遥・瞬雷(瞬雷女仙・f32937)にとってはそうである。世の陰と陽の調和を保ち、清業を積む為に悪鬼邪仙オブリビオンと戦う彼女の瞳に映る『宝貝太子』は、人の心があると見れば、それは心を持つと考えるのである。
拱手でもって瞬雷は『宝貝太子』が立ち上がるのを待っていた。
目の前の『宝貝太子』が例え作り物だとしても、他者の心を写したのだとしても関係ない。
彼女の目の前に立つのは『宝貝太子』でも『祝恩大星』でもない。
『堕讐凶星』という一人の倒すべき強敵であった。
「わざわざボクが立て直すのを待つだなんて、見くびったのかな!」
風火大車輪が炎を噴出させる。
『宝貝太子』はその体全てが宝貝である。だからこそ、どれだけ傷つけられようとも、その力を常に十全に発揮することができるのだ。
噴出する炎と共に空を駆ける速度はまさに空を駆ける天仙そのものであった。
女仙である瞬雷は未だ修の最中にある者である。
そんな彼女の瞳の中にまばたきの間に姿を消すほどの超スピードで駆け抜ける『堕讐凶星』は捉えることはできなかったことだろう。
「いいや、見くびってなどいません。ただ一人の敵として、その力を前にして、私の力のすべてを持って討たせて頂きます」
拱手を瞬雷は解く。
その手に在るのは七星剣。
刀身に七ツ星の宿星宿り、輝きを放つ。
しかし、超スピードを誇る『堕讐凶星』を剣の切っ先が捉えることはできない。
「剣の一振りでボクを斬ろうだなんて、甘いよ!」
超高速の槍と環の打撃を躱しながら、瞬雷は気を伺う。
目にも留まらぬ速度。
だが、目に止まらぬ速度ではない。反撃の糸口が見えぬというだけである。
呼気を整える。
相対する『堕讐凶星』との力量差は圧倒的であった。
あれがかつて英雄とまで呼ばれた存在の力であるというのならば、己の修練が未だ足らぬことを瞬雷は自覚するだろう。
だが。
だからといって、己が退いて良い理由など何一つないのだ。
悪辣なる所業を重ねる者が人の世を、人界を乱すというのならば、これを討つのもまた女仙たる己の役目である。
ならばこそ、その瞳はユーベルコードに輝くのだ。
それは時と空の理を持って宿星を眩い輝きを放つ。星のきらめきは人の心の輝きである。
悪辣なる意志が人の心を蝕むというのならば、人の心の暖かさこそが人の世を平定するのだ。
瞬雷は敬意を払う。
間違いなく強敵。
「無駄だってば! どれだけ集中しようと――」
迫る槍の一撃が瞬雷の眉間に迫る。
このままでは彼女の頭部は柘榴のように弾けて吹き飛ぶだろう。そうなる未来は容易に予見できたし、『堕讐凶星』もまた同様であっただろう。
勝利を確信した。
しかし、瞬雷の瞳はユーベルコードに輝いたままである。
決して負けぬ。
かつて人の身であった女傑であるからこそ、彼女は知っている。どれだけ強大な敵であろうとも、人間は負けるようにはできていない。
故に、その一瞬、刹那に彼女は好機を見出すのだ。
「すでに斬っているからこそ、これ飛斬術(ヒザンジュツ)という――」
放たれた斬撃。
それは一瞬であった。すでに彼女の七星剣は鞘に納められて宿星の輝きは失せている。
「え――」
『堕讐凶星』は己の腕が切り落とされていることに漸く気がつく。
いや、他の誰も気がつくことはできなかったことだろう。瞬雷だけが知っている。
彼女のユーベルコードは時間と空間の因果を操る剣である。
間合い、命中率、刃が通るか否か。
それら全ての過程を吹き飛ばし、『切断』せしめたという結果だけを得る力である。
因果律操作とでも言うべき凄まじき力でもって『堕讐凶星』の片腕を切断したのだ。
瞬雷最大の奥義。
『堕讐凶星』を討つべき強敵と認めたからこそ、為し得た力である。
「そんな、ボクの腕がぁ――!」
『瞬雷瞬断』
その異名は人界に轟く。
曰く宝貝すらも切断せしめる。絶技魔剣として――。
大成功
🔵🔵🔵
荒珠・檬果
…利用された、ということですね。悲しきかな。
此度、憑依せしは『袁紹』殿。白日珠は弓へとなる。
放たれた無数の矢は、あなたへと降り注ぎます。
避けようとするでしょう、実際に避けるでしょう。ですが、そのような状態は続きませんよね。
その状態は、あなたに負荷がかかり続けると見ました。ですから…ええ、どこかで回避に狂いが生じたとき。
その時こそ、この矢はあなたに届き当たるのです。
範囲から逃げようとしても、これ有効射程距離が10kmと少しあるんです。
つまりは、逃げられませんよ。逃げる気はないでしょうが。
……便利なんですよねぇ、このUC……おかげで、袁紹殿に負担いってる面もあり。
猟兵の一撃に寄って『宝貝太子』の片腕が切断される。
吹き飛ぶ片腕。
その手が持っていた火炎槍を残った手でつかみ『宝貝太子』、『堕讐凶星』は叫ぶ。
「ボクの腕を! よくも! よくも!」
その言葉は凄まじい怨嗟であったことだろう。
これまで傷つけられることのなかった宝貝そのものな躯体は、それこそが彼の誇りであったことだろう。
片腕を失ったことは、彼にとって許しがたいことであった。
もしも、彼が『祝恩大星』であったのならば、片腕を失おうとも激高することはなかったことだろう。
しかし、起動した者いよって在りようを変える器としての存在であるのならば、彼の器の中に満たされたのは悪意そのものであったことだろう。
人界に戦乱をもたらそうとする邪なる考え。
オブリビオンの悪辣なる意志が彼を悪そのものとして顕現させるのだ。
「……利用された、ということですね。哀しきかな」
荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は、その有り様に嘆いた。
しかし、嘆いてばかりはいられない。
なぜなら己の身は猟兵であり、討つべき敵が目の前にいるのだから。
「箭、休むことなし(フリツヅケルモノ)」
憑依させるは、絹芳将『袁紹』である。
その瞳がユーベルコードに輝き、噴出する『宝貝太子』の脚部の環からの炎を見通す。
空を駆ける天仙となった『宝貝太子』の速度は凄まじいものである。
目で捉えることはできない。
けれど、当たりを着けることはできるのだ。
「速い……けれど!」
放たれる弓矢は雨の如く。
降り注ぐ尽くを『宝貝太子』は躱す。実際に躱す姿を見れば、檬果はそうなるとわかっていた。
超スピードで空を駆ける『宝貝太子』に追いつく術はないし、弓矢の尽くをまるで雷のように躱し続けるのだ。
「この程度の弓の腕で、ボクを捉えようなどと! 百年速い!」
「ええ、確かに貴方はカワ歯痛dけるでしょう。けれど、その状態……いつまで保ちますか?」
そう、今雷雨の如き矢を躱し続ける『宝貝太子』は腕を片腕失って隻腕である。
なればこそ、その躯体が天仙モードに入れば、体に負荷がかかることは当然である。
それに他の猟兵たちが消耗させているのだ。
なればこそ、そこにこそ檬果の勝機がある。
「嘘だ……! こんな、この程度の負荷でボクの身体が……!」
黒炎をあげる脚部の環。
前身が宝貝で構成されているからこそ、片腕を失ったことによって躯体のバランスを欠いたのだ。
そこに雨あられの如き降りしきる弓矢を躱し続ければどうなるかなど明白であった。
「必ず、回避に狂いが生じる。その時こそ、この矢はあなたに届き当たるのです」
檬果の放つ矢の一つが『宝貝太子』に激突する。
高速飛翔する躯体は、一矢であって当たれば体勢を崩すだろう。
しかし、放たれる矢は無数である。
これまで神がかった回避を見せてきた『宝貝太子』に襲いかかる膨大な数の矢。
「でも、射程範囲外にでれば――」
「いいえ、この矢の射程は10km。つまりは、逃げられませんよ。逃げる気はないでしょうが」
このユーベルコードは便利だと檬果はつぶやく。
その点で言えば、袁紹殿に負担が行っている面がないとも言い切れない。
けれど、それを構うことはないだろう。
なぜなら、この戦いはそういう戦いだからだ。
負担など二の次である。人の目に触れさせず、かつての英雄の器を討つ。故に、精算など度外視。
放たれる矢に追いたてられるように『宝貝太子』は次々と矢を受けながら、失墜していくほか無い。
常に翔び続けることのできる者などいようはずもなく。
さりとて、最後には失墜する他無い。
それを示すように檬果の放つ矢は、『宝貝太子』を大地に縫い付けるように放たれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
源波・善老斎
善悪は器物にではなく、その使い手にあるのは然り。
しかし、器物はまた長きを経て使い手の心を映すものじゃ。
義のために戦うでなく、戦いこそが意義と宣うならば、今や内に宿すは紛うことなき悪。
されど、その身に刻んだ魂まで穢してはならん!
ならば、これが我輩が尽くせる最大限の礼じゃ。
掌にて気を拉くべし……行善天拳奥義が一、【拉気掌】!
無論、倒すだけならば器ごと壊すが易かろう。
難儀は承知の上じゃ。
とはいえ、振るう危険に釣り合う義もなく、悪意のみを拠り所とするならば、その炎も威力は保てまい。
先刻の戦い、梟門と鴉鷺、二つの都の者が手を取り合うてくれた。
星は堕つとも輝きはこの地に健在なり。
ゆえに、安らかに眠られよ。
片腕を失い、矢によって地上に縫い付けられた『宝貝太子』、『堕讐凶星』は、その手にした火炎槍から炎を噴出させ火炎の術にて己を縫い止める矢の尽くを焼き払い、舞い上がる。
「片腕を斬ったくらいでいい気になるなよ! ボクにはまだ槍も乾坤環もある! まだ負けてなど居ない! ボクが負けない限り戦いは終わらないぞ! ずっとずっと戦い続けるんだ! 乱世だがボクの拠り所なのだから!」
その言葉を紡がせているのは、如何なる存在であったのだろうか。
『宝貝太子』という器にやどりし悪辣なる意志。
それは言うまでもなくオブリビオンである。
『濁業仙人』たちは尽くが滅ぼされた。
けれど、彼等ではなかったのだ。『宝貝太子』を起動させ、かつて英雄であった『祝恩大星』を悪なる者に変えたのは。
「善悪は器物にではなく、その使い手にあるのは然り。しかし、器物はまた長きを経て使い手の心を映すものじゃ」
源波・善老斎(皓老匠・f32800)は一歩を踏み出して言った。
そう、先刻の戦いにて『梟門』と『鴉鷺』の二つの都の武侠たちが手を取った。
例え、英雄たる『祝恩大星』が堕すのだとしても、その心に宿った輝きはこの地に健在である。
ならばこそ、『宝貝太子』は安らかに眠らねばならぬ。
かつての彼が為した平穏。
その平穏の意味は、必ずや安穏とした日々を送るだけに留まらなかったことを善老斎は知っている。
己の声に答えた彼等がそうであるように、誰の心にも善なる心はある。
その善こそが誰しもにある悪を正しく調伏せしめるのだ。
「義の為に戦うでなく、戦いこそが意義と宣うならば、今や内に宿すはまごうことなき悪。されど!」
善老斎は言う。
練りに練り上げられた内勁がほとばしる。
それこそが、彼のユーベルコードにして『行善天拳』!
「行善天拳の極意は活人なり! そおの身に刻んだ魂までは穢してはならん!」
剛ッ! とその身に秘めた生命の奔流が身体を抜けて外へと吐き出される。
その奔流は風を呼び、荒野に吹きすさぶ。
すでに火炎は吹き飛び、『宝貝太子』はたたらを踏む。
「これは! なんだ! ボクは知らない! こんな練りに練られた活気は……!」
どれだけ宝貝の火炎槍がもたらす火炎の術が凄まじいものであったとしても、善老斎の持つ内勁より噴出せし、生命の奔流はとどまるところを知らない。
「これが我輩が尽くせる最大限の礼じゃ。掌にて気を拉くべし……拉気掌(ロウキショウ)!」
放たれた掌底より放つ気功波の一撃が『宝貝太子』の躯体を撃つ。
しかし、その気功波は『宝貝太子』の躯体を破壊するものではなかった。
その生命エネルギーは、その器に満ちた悪意のみを破壊する。
「難儀は承知の上じゃ。だが義もなく、悪意のみを拠り所とするならば!」
「何を、こんな――! なんで、なんでボクの火炎の術がほどかれて――!?」
そう、その器の中に満ちた悪意が削られる。
ならば、術理を練り上げることなどできようはずもない。
悪意は気功波に攫われるようにして削られていく。
もはやどうしよもうないまでに『宝貝太子』の中にあった悪意は致命的な打撃を受けていたことだろう。
故に火炎の勢いも保てないでいた。
「安らかに眠られよ。貴殿が人々の心にともした炎は、確かに篝火となって存在している。拠り所を得た人々の心は乱世に染まらぬよ。人の心にそれをもたらしたのは、間違いなく貴殿。であればこそ」
もう役目は終えたのだというように善老斎は告げる。
懐かしい声が聞こえたような気がした。
それはきっと気の所為であったし、ありえないことであった。
『宝貝太子』は理解できない不可解な感覚に、己の放つ炎が削られていくのを感じ、呆然と立ちすくむしかなかったのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…起動した者によってどうとでも転ぶ…自意識はあれど善悪判断は使用者に委ねる…なるほど…兵器としては正しい挙動だね…
…今回はその純真さがこちらに矛を向けたわけだけどあくまで『正常な仕様』でしかない…
…つまり…良いも悪いもリモ…いやなんでもない。これ以上は危ない。
…さて、乾坤一擲の爆破は術式組紐【アリアドネ】を盾状に展開する事で防ぐ…だけだと…運命の縛鎖で繋がれる、と…
…ならば【尽きる事なき暴食の大火】を発動…縛鎖を導火線にして白い炎で鎖を焼き切ると共に宝貝太子…いや、堕讐凶星に引火させよう…
…1度灯れば存在を燃料として消えることのない白い炎に呑まれて1度骸の海へと還るって貰おうか…
『宝貝太子』の在り方は確かに兵器そのものであったことだろう。
あくまで触れ、起動させたものによって性質が真逆に転ずることも在り得る存在。されど、『宝貝太子』に宿る意志はそれに従うのだ。
善と悪を己で判断することはない。
それは生きているとは言えないのではないかと思える。
しかして、それは兵器としては正しい挙動であるとメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はうなずく。
「……ある意味で純粋……ただ、斯く在るべしと存在する器。今回はその純真さがこちらに矛を向けたわけだけどあくまで『正常な仕様』でしかない」
隻腕となった『宝貝太子』、『堕讐凶星』がぼんやりと、器の瞳をメンカルに向ける。すでに過去の化身、オブリビオンへと成り果てた彼にとって猟兵は滅ぼさなければならない存在である。
そこに最早善悪を超越したなにかがかったのかもしれない。
「器。ボクは器。この体に満ちる心を悪意と呼ぶのならば、ボクはこれを望んでいるのか」
あくまで兵器としては『正常な仕様』である。
けれど、メンカルは良くも悪くとも思っていた。
危うく鋼鉄の巨人的なものを思い浮かべたけれど、メンカルにとってガジェットがそうであるように、目の前の『宝貝太子』もまたこの封神武侠界においては同じようなものだ。
自律する器であれど、そこに写した悪意は鏡を写したように悪意なる者の存在をほのめかす。
「つまりは、君を動かすリモ……じゃない、悪意の主がいると、他ならぬ君自身が露見させているんだね……」
メンカルはそれを知る。
考えてみればそうなのだ。
かつて『祝恩大星』と呼ばれた英雄の器に入った善意は一人の少女の優しさであった。
しかし彼女が没したのと同時に『宝貝太子』は過去へなった。つまり起動をやめたのだ。
ならば、今の『宝貝太子』、『堕讐凶星』が動きを止めないのは、彼を起動させたのは『濁業仙人』ではない別の悪意なる存在である。
ならば猟兵達は必ず悪意の源へとたどり着くだろう。
「何を言っているの。ボクはボクの器の中にあるものに従う!」
放たれるは片腕から放たれる乾坤一擲。環の砲撃であった。
まさしく砲撃と呼ぶにふさわしい威力。けれど、隻腕となった彼の乾坤の環は一つ。
砲門を失った彼にとって、火力が半減したと言っても差し支えない。
メンカルが張り巡らせた術式組紐『アリアドネ』が盾状に展開され防がれる。しかし、それはもはや副次的なものでしかない。
『宝貝太子』とメンカルの間には『運命の縛鎖』が紡がれている。
どこまでも追いかけていく縛鎖によってメンカルは一直線に『宝貝太子』と繋がれるのだ。
これでは逃げることもできない。
「これで君は逃げられない! ボクと接近戦で君は戦えないと見た! ならば――!」
『宝貝太子』の槍がメンカルに迫る。
炎を噴出させて放たれる槍の一撃はメンカルの体を貫かんとして、それが為し得ぬと彼は知る。
噴出する白き炎。
全てを貪る尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)がメンカルから放たれる。
それらはあらゆるもの、如何なる存在をも燃料にする白色の炎。
例え、運命の縛鎖とて例外ではない。
まるで引火するように白き炎が『宝貝太子』へと走り、その体を焼く。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
その輝きを『宝貝太子』は……いや、『堕讐凶星』は見ただろう。
運命の縛鎖すらも燃焼させる白き炎は、吹き荒れるように飲み込んでいく。
「……一度灯れば存在を燃料として消えることのない白い炎……もう一度骸の海へと還ってもらおうか……」
悪意の器として、過去の化身として現れたことを惜しむことはない。
なぜなら、すでに過去の英雄たる『祝恩大星』は篝火として、人々の心に火をともしている。
だからこそ、どれだけ悪意が人々の心を乱そうとも、その心に宿った火を消すことはできない。
それをメンカルは知るからこそ、白き炎によって『堕讐凶星』を骸の海へと送るのだ――。
大成功
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秦・美芳
宝貝は道具
道具は使う人で変わる
仕方ないことね
でも道具が悪くなくて
突き動かしているのがヒトの悪意なら
それを止めるのもめいふぁんたち猟兵のつとめ!
降魔拳伝承者、秦・美芳。推参だよ!
炎はとてもやっかい!
でも炎は燃やすだけじゃなくて色々なモノを生むよ!
【天人飛翔】で炎本体をかわしたら
後は炎が生み出した上昇気流に身を任せるだけ
めいふぁんたち羽衣人の軽さなら
空まで舞い上がるのも全然難しくないよ!
間合いさえ詰められたらこちらのもの
炎にしても大車輪にしても
太子の攻撃は必ず攻撃の時に風が生まれる
その風に身を任せれば交わすのは簡単
【降魔点穴】
あなたはめいふぁんが止めてあげる!
器に満たされた悪意は目減りし、白き炎は決して傷つかぬ宝貝の躯体を焼く。隻腕となった『宝貝太子』――『堕讐凶星』は白き炎に巻かれた体を自切し、空へと舞い上がる。
未だ風火大車輪は残っているし、両腕を失ったとしても火炎槍は残っている。
それらを触媒として炎を噴出させるのだ。
「これが今のボクだ。満ちる悪意は減ったのだとしても、それでも、この根底に残るのはヒトの悪性! 故に――!」
火炎槍が大地に突き立てられる。
仙術の炎が荒野をなめるようにして広がり、『梟門の都』へと疾走る。
それらはあらゆるものを燃やすだろう。
かつての『宝貝太子』、『祝恩大星』が守った平和そのものを燃やさんとするような自滅的な攻撃であった。
その体は自壊寸前であった。
それでもなお、彼を過去の化身として起動させた何者かの悪意は底知れない者であったことだろう。
炎がまるで洪水の波のように『梟門の都』へと迫る。
人々は炎の津波を見ただろう。
吹き荒れる波の上には凶星。
だが、人びとが見たのは『大星』であった。
過去の化身が悪意を持って人びとに乱世をもたらすというのならば、今を生き、かつての英雄であった存在がもたらした篝火は決して潰えぬ。
「宝貝は道具。道具は使う人で変わる。仕方ないことね。でも道具が悪くなくて、突き動かしているのがヒトの悪意なら。それを止めるのも――!」
告げる言葉の主が炎に寄って温められた空気によって生み出された上昇気流によって、その体を遥か上空まで飛び上がらせる。
彼女の体は羽衣のように軽い。
故に、空気が上昇するのならば、それにならって舞い上がるのだ。
まさにそれは『凶星』を上回る星であった。
人々はその輝きを見るだろう。かつての英雄の輝きではなく、ユーベルコードの輝きであっても、その輝きを彼等はかつて見たことがあるはずだった。
長きに渡る平穏。
それを為した一つの善意の結実を。
そう、そのユーベルコードの輝きは猟兵たちが見せた輝きである。
「――ボクよりも高く! 星よりも高く飛び上がるか、猟兵!」
吹き荒れる炎が飛び上がった猟兵を狙って伸びるが、捉えることはできなかった。
彼女が羽衣人であるからこそ成せる技であったことだろう。
どうあがいても炎が星を掴むことができぬように。
舞い上がる彼女を捉えられる者など居なかったことだろう。
故に人々は星を見る。
「あなたはめいふぁんが止めてあげる!」
それは彼女の意志であったことだろう。
猟兵たちの総意でもあったし、過去の英雄を堕とさんとする何者かの悪意を挫かんとする者たち全ての願いでもあった。
両腕を失った『宝貝太子』の瞳に映るのは、やはり眩いものであった。
輝くユーベルコードは彼女の指先に集約される。
「君は――、君は、誰だ! ボクは知らない! 君を知らない! なんでボクの目に映るんだ」
まるで幻影を見るように『宝貝太子』は叫ぶ。
今や彼の視界にあるのは、かつての彼が救ったであろう数多の生命。
しかし、悪意の器となった彼には理解できないものであったことだろう。
だからこそ、猟兵の彼女は叫ぶのだ。
「降魔拳伝承者――秦・美芳(萌葱色の降魔拳伝承者・f32771)。推参だよ!」
放たれるは、降魔点穴。
前身が宝貝であろうとも、それが人型をしているのであれば秘孔は存在する。
そのユーベルコードの輝きが集約した指先の刺突の一撃が『堕讐凶星』の体に触れる。
それは刺突と呼ぶにはあまりにも優しい一突きであった。
しかし、流し込まれた闘気は経絡全てを巡って『宝貝太子』の体の内側から爆発せしめるのだ。
爆ぜた体は、霧散し消えていく。
「あ、あ――」
何事か最後に彼がつぶやいたような気がした。
けれど、それを知るのは今を生きる者たちではないだろう。
過去を夢に見た彼の最後が見た懐かしき幻影。
美芳はそれを陰らすことのないように、猟兵たちの総意でもって炎を霧散させ荒野へと降り立つ。
敵の首魁の名を知らしめることなく。
それがなんであったのかを人々に伝えることなく。
過去の英雄の名を堕することなく、ここに悪意を完全に打ち破ったと知らしめるのであった――。
大成功
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