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愛宕連山補給基地撤退支援

#クロムキャバリア #日乃和 #人喰いキャバリア

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#クロムキャバリア
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#人喰いキャバリア


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●人喰いキャバリア
 百年もの戦乱が続く世界、クロムキャバリア。とある大陸の東洋に位置する島国の日乃和は、大陸側より押し寄せるキャバリアの軍団による大規模な侵攻を受け続けていた。
 発端は数ヶ月前。日乃和と海を挟んで隣接する国家の領内で大規模な遺跡群が発掘された。後に旧時代のキャバリア生産施設であると推論付けられたその自律プラントが調査中に突如として起動。無尽蔵に湧き出るキャバリアの群れは圧倒的な物量を以て数週間もしない間に国土の悉くを滅ぼした。蝗害の如きキャバリアの集団は隣国にも侵攻を開始。海を隔てた日乃和も被侵攻対象の例外では無かった。
 日付が変わるまでもう暫くといった深夜帯。日乃和西部に連なる山間部の盆地にある長閑な田園地帯が戦場と化していた。
「もう弾が無いと言うのに!」
 少女の焦燥した声が孤独なコクピット内に響く。機体が冠する名と対照的な白色のオブシディアンMk4がアサルトライフルを連続で撃ち放つ。銃口より吐き出された弾丸はいずれも迫り来るジャイアントキャバリアと思しき目標へと向かう。撃ち抜かれた頭部から柔らかな肉片が弾けると途端に動きを停止した。
「こちらフェザー01! フェザー05! 愛宕基地! 応答して下さいまし!」
 全周波数で発せられた呼び掛けを返すのは耳障りなノイズのみ。最後に聞いた通信は戦友達の助けを乞う悲鳴と断末魔、そして咀嚼される音。大陸側より海を越えて押し寄せてきたこのジャイアントキャバリア達は直接の意味で人を喰う。
 出立元の前線補給基地も音信が途絶えて久しい。レーダーに表示されるのは敵性反応ばかり。パイロットが行う再装填操作に従い白いオブシディアンMk4が最後の予備弾倉をアサルトライフルに装填した。
「やむを得ませんわね。後退して……」
 言葉が最後まで発せられる事は無かった。オブシディアンMk4を側面からの強烈な衝撃が襲う。機体は数回バウンドを繰り返した後、田園を盛大に削って停止した。パイロットの少女はぼやけた脳で必死に意識を繋ぎ状況を確認する。機体は行動不能となった。こうなってしまえばもう鉄の棺桶だ。急ぎ離脱しなければ。緊急脱出装置を作動させるよりも先に、鋼の軋む音がパイロットの聴覚を支配した。息を切るような短い悲鳴の後、強制排除されるはずだったコクピットハッチは外部からの力によって引き剥がされた。
 覗き込む白面。目と思しき二つの小さな黒点がこちらを見ている。
「やめ……!?」
 触腕がコクピット内に滑り込み、少女の身を絡めとると機体から引き摺り出した。少女は足掻くがジャイアントキャバリアは意に介さず、開かれた胸部に放り込むと何度も開閉を繰り返す。
 愛宕連山補給基地の防衛に当たっていた白羽井学園の訓練兵全滅の報が作戦司令部に届く事は無い。意図せず禁忌の箱を開いてしまった某国のように、悉くを食い尽くされた日乃和は国家の名を消失させるのだから。

●撤退支援
「……という予兆を見たの。じゃあ改めて、お集まりありがとう。お仕事のご案内を始めるわ」
 グリモアベースにて集った猟兵達を前に水之江が緩慢な動作で深く礼をする。手にした長杖を右から左へと静かに振るうと空中に三次元立体映像が浮かび上がった。どこか昇龍の風貌を感じさせる縦長な列島のようだ。
「今回のお仕事先はクロムキャバリア。場所はとある大陸の東にある島国、日乃和。現地時刻は深夜よ」
 島国の中央よりやや西側の箇所へ長杖の穂先を向ける。仮に日本列島に見立てるならば関西周辺の地点だろうか。
「ここの山岳地帯にある軍事施設、愛宕連山補給基地がオブリビオンマシンを含んだキャバリアの群れに襲撃される寸前なんだけれど、皆さんにはこの基地の撤退をお手伝いしてもらいたいの」
 現在日乃和の西一帯は大陸のプラントより湧いて出たキャバリアの大軍団による襲撃を受けている。日乃和側は侵攻を阻止するべく三重の防衛線を構築。第一防衛線の兵站を担っているのが愛宕連山補給基地だ。けれども既に戦線は広域に渡って瓦解寸前。愛宕基地はまだ余力を十分に残している内に第二防衛線の司令部まで撤退、戦力を再編して反撃に転じるのが目算となる。
「前線を抜けて来たオブリビオンマシンが攻め込んでくるから、まずこれをやっつけてちょうだい。田んぼで迎え撃つ事になるわ」
 基地がある山岳地帯の前方に広がる田園地帯。そこへ撤退を支援するべく最高司令部から遣わされた増援という扱いで猟兵達が展開する。
 作戦領域は見通しの良い平面な地形。田に水は引かれておらずキャバリアの足が取られるなどといった状況は考え難い。純粋な速力勝負の機動戦闘を行うには最適と言えるだろう。
「先客として愛宕基地管轄の白羽井学園のお嬢様方御一行が防衛に就いてるわ。まだ学生だからあんまりアテにならないでしょうけれどね」
 士官学校の生徒としてキャバリアの教練は受けているが、実力は正規兵未満といったところだ。幸いいずれも自らの力量は正しく認識しており勝手に突出して勝手に死ぬといった事態はほぼ無い。なお、彼女らにとって猟兵とは例に漏れず英雄視されるものであり、もし望めば援護行動程度なら快諾してくれるだろう。
「訓練兵に大事な補給基地の守りを任せるなんて、それだけ人手不足ってことかしらね。じゃあ次は敵の戦力についてね」
 立体映像として肋骨や全身の筋肉が剥き出しになった巨人が投映された。このオブリビオンマシン化したジャイアントキャバリアの撃破が任務の第一段階となる。
「自律プラントから湧いてきたキャバリアのひとつ、エヴォルグ壱號機『Swollen』ね。生体部品をたっぷり使ったキャバリアで自己修復と巨大化機能を持っているわ。格闘戦に優れていて三本腕から繰り出される打撃はいずれも強力……しかもタフだから倒すには結構時間が掛かりそうね。パイロットはたぶん居ない。もしくは生体制御部品に置き換えられてるかも。それと人間をもぐもぐ食べちゃうから夜食にされないよう気を付けて」
 既に最前線の兵士達を胃に収めて久しく、猟兵達と会敵する時点で通常のキャバリアの倍程度の体積に膨れ上がっているらしい。
「Swollenと交戦し始めた頃には愛宕基地の撤退が始まってるわ。その後は……はっきりとは視えなかったんだけれど、猟兵さん達も撤退する流れになると思うわ」
 どこへ撤退するのかは不明瞭だが山間部の自動車道を進む光景が浮かんだのだという。そしてその後都市に行き着くが、着いた先でまた戦闘が行われる光景も。都市での戦闘まで完遂すれば愛宕基地の撤退成功は確定し、最善の形で未来が落ち着くと水之江は語る。
「きっと愛宕基地からどうこうして下さいって指示が出ると思うから、それに従って動けば大丈夫よ」
 戦い逃げてまた戦う。これが現時点で判明している猟兵の動向の流れとなる。
 暫くの沈黙を置いて水之江が再度口を開く。
「説明は以上よ。始める前から負け戦みたいになっちゃってるけれど、猟兵さん達の働きがより善い結果に繋がる事は約束するわ。だからどうぞ何卒宜しく」
 水之江は猟兵達を前に淑やかな動作で首を垂れた。人喰いキャバリアの集団に土地と民を貪り尽くされんとする島国、日乃和。最悪の末路を回避するべく遁走の為に猟兵が獅子奮迅する。


塩沢たまき
 塩沢たまきです。宜しくお願いします。以下簡単な補足と注意事項となります。

●作戦目標
 愛宕連山補給基地の撤退支援。

●日乃和
 オブリビオンマシンを含むキャバリアの襲撃を受けている国。

●白羽井学園
 お嬢様だらけの士官学校。
 任官間近の訓練兵が白羽井小隊として愛宕基地の防衛に徴用されています。練度は正規兵未満。全員白いオブシディアンMk4に搭乗しています。武装はアサルトライフル、実体剣、盾。猟兵が援護要請すればよほど無茶振りでない限り喜んで応じます。放置してもたぶん勝手に生存します。

●第一章
 『ボス戦』です。
 通常の倍程度の大きさとなったジャイアントキャバリアを撃破してください。作戦開始時間帯は深夜となっていますが光源は照明弾などで十分確保されていますので、昼間のような感覚で戦って頂ければよろしいかと思われます。戦闘領域は山間に囲まれた広い田園地帯です。

●第二章
 『冒険』です。
 山間部の自動車道を辿り指定座標まで撤退してください。内地に浸透していた雑魚キャバリアとの遭遇戦などがあるかも知れません。

●第三章
 『ボス戦』です。
 敵キャバリアを撃破してください。戦闘領域は市街となります。

●その他
 今回の舞台はクロムキャバリアとなりますので、高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星『殲禍炎剣』にご注意下さい。
 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
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第1章 ボス戦 『エヴォルグ壱號機『Swollen』』

POW   :    負荷強化式『Swollen』
自身が操縦する【キャバリアが損傷時に負荷強化を開始。機体】の【損傷を瞬時かつ無限に修復と強化する】と【同時に使用数に応じ巨大化しサイズと戦闘力】を増強する。
SPD   :    圧縮解放式『Violence』
自身の【肥大した機体を極限まで絞り圧縮。3本の腕】から、戦場の仲間が受けた【か自身の負荷に応じた速度密度誇る、凝縮度】に比例した威力と攻撃範囲の【連撃を放つ。攻撃後5mの通常態に戻り熱風】を放つ。
WIZ   :    負荷最適解『muscular』
【負荷が掛かる事に負荷に適応した体】に変身する。変身の度に自身の【防御値、攻撃力値、状態異常耐性値、速度値】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●巨人
 愛宕基地の放棄と撤退開始に伴う防衛指令が下ってから数十分。白羽井小隊の束役を担うコールサイン、フェザー01にとってはもう何時間も待たされているように感じられた。当初与えられた任務は基地の直掩として前線で取り溢された若干数の敵機を迎撃するだけの手筈だった。頭数合わせの為に集められただけの元より戦力として期待されていない訓練兵達に、せめて戦場の空気に慣れさせておこうという上層部の意向が見え透いた任務内容。白羽井学園より徴用された年端も行かない女学生は口外せずとも皆々そのように認識していた。
 だが開戦ほどなくして流れてくる敵機は取り溢しでは済まない数まで増大し、認識の一変を迫られる。押し寄せる濁流に白羽井小隊は削りに削り取られ、30機程度に及んでいた白いオブシディアンMk4の集団も今では数機を残すところまで漸減させられてしまった。それでも全員が人喰いキャバリアの餌とならず生きながらえていた理由は、一重に運が良かっただけに他ならない。
 人間と蟷螂を融合させたような形状のジャイアントキャバリアが跳躍し獲物に襲い掛かるも、オブシディアンMk4の実体剣に腹を貫かれた。剣が突き刺さった箇所から緑色の液体を噴出させながら暫くもがいた後に動きを止める。剣を横に振るって死体を放り捨てたオブシディアンMk4のパイロットが、額から噴き出る大粒の汗を手で拭う。
「片付きましてよ」
 計器と目視で周囲を確認する。動体は僅かに残った友軍機のみ。後は人喰いキャバリアの死体が転がっているだけだ。今回は何とか凌げたが次はもう無いだろう。弾も推進剤も心許ない。事前敷設されていた補給コンテナも使い果たしてしまった。心身の疲労も既に限界を超えつつある。機体も損傷が蓄積し状態は芳しく無い。
 いつ途切れるとも知れぬ敵の群れ。時間の経過と共にじわじわと喰い殺されて行く学友達。西側の空が赤く燃えている様子から察するに、恐らく地獄と化しているであろう最前線。絶望ばかりの戦場に微かな希望があるとすれば、任務内容の変更を受けた際に聞いた最高司令部からの増援だろう。しかしそれは絶対に間に合わない。最高司令部が置かれているのは第三防衛線で、愛宕基地が兵站を担う第一防衛線からは直線距離でも数百キロも離れている。殲禍炎剣の照射リスクを無視して空から全速で向かって来たとしても何時間掛かるのか。到着までに訓練兵ごときが持ち堪えられる根拠などない。さしずめ士気を保つための出任せだと白羽井小隊の若過ぎる長は来るはずのない増援に期待など寄せていなかった。現実を再認識すれば途端に嗚咽しそうな悲壮感が腹から込み上げてくる。格式ある者として民草の防人となるべく自ら武の道を選んだ末路がこれか。誇りによって堰き止められていた死の恐れが決壊の兆しを見せる。
「もう、生きて愛宕連山を出られる事は無さそうですわね。けれどもし……」
 奇跡が起きて増援とやらが間に合うのであれば。そう言い掛けた時、愛宕連山一帯に地鳴りが響いた。
 地鳴りは一度二度三度と等間隔で続く。初めは隣山に展開しているらしい友軍の砲撃陣地からの支援砲火かと思われたが発想は即座に否定された。この連山一帯は平均標高が高く、殲禍炎剣照射警戒域の高度制限が厳しいため山を越えての遠投射撃は難しい。他に轟音の元となりそうな埋設された大型地雷はとっくに起動し切っている。ではまさか来るはずのない増援が間に合ったのかと楽観的観測が脳裏を過ぎったが、一瞬灯った希望は巨大な恐怖によって押し潰された。
「なんですの、あれは」
 何度目かの地鳴りと共に山間からゆらりと現れた赤い影。皮膚が無く肋骨と筋肉を露出させた巨人の姿が田園地帯に立っていた。その体積はオブシディアンMk4の倍かそれ以上。見た目と大きさ以上の威圧感を伴って、感情が窺い知れない白面の頭部が白羽井小隊へと向けられた。
「フェザー01から小隊各機、陣形変更、鶴翼……」
 奥歯が震え発声がままならない。生存本能が全力で警鐘を鳴らしている。あれには勝てない。絶対に殺される。逃げるにも背を向けた瞬間に凄惨な死が待っているような錯覚に晒されて身体が強張る。その場に居合わせた小隊の全員が同じ感覚を共有していた。
 一歩踏み込まれた巨人の足が田園を揺らす。キャバリア越しに重い振動がパイロットへと伝わり、恐慌に突き落とされる寸前の心を引き留めた。
「フェザー01より愛宕基地司令部へ、撤退準備の状況はいかがですの? 残り所要時間は?」
 生存するための最善を尽くすべく身体が勝手に行動した。あんな化物とまともに戦う理由など無い。そもそも任務内容は撤退するまでの時間稼ぎ。適当に牽制して逃げ回っていれば望みはある。
「こちら愛宕基地司令部。まだ一時間は掛かる。白羽井小隊は引き続き任務に当られたし」
 了解とだけ伝えると通信は切られた。この状況では長すぎる必要時間だが、未定と言われなかっただけまだ良いのだろう。少なくとも虚勢を砕かれずに済んだ。
「聞いていましたわね? あと一時間の辛抱ですわよ!」
 手の震えを操縦桿を強く握り込む事で誤魔化し、泣き出してしまいそうな声を無理に張り上げ、逃げ腰になりつつある小隊各員を励ます。さほどの効果は無いにしろ、何もしないよりは良い。もし弱音を曝け出せば自身の心が真っ先に折れてしまうのだから。
「こんな時、猟兵の方々が颯爽と駆け付けてくださればありがたいのですけれど」
 誰に聞かせるでも無い独り言。最高司令部の増援が間に合うよりもまずあり得ない御伽噺のような展開だとも重々承知していたが、彼らの存在を耳にした者達ならばそう思わずにもいられなかった。
 クロムキャバリアの各地で伝わる英雄達。力と希望の象徴。伝説などでは無く紛れもなく実在する戦闘集団、あるいは個。突如現れては鋼の悪を叩いて砕き去って行く。未来の防人となるべく武を磨いた少女達にとっては尚更羨望の対象となって然りだろう。縋る物無き今だからこそ、もし彼らがいてくれたらという都合の良い発想を思い浮かべずにはいられなかった。
「小隊各員へ! 鶴翼陣形で間合いを保ったまま集中攻撃! 相手が大きくても訓練通りにですわよ!」
 死にたくは無い。だがきっと生きて帰る事はあるまい。先立つ親不孝者を赦したまえとの懺悔を胸中に吐き出し、白羽井学園の少女達は恐怖を堪えて巨人へと対峙する。絶望を撃ち抜く理不尽の力がすぐ側まで迫っているとも知らずに。
ノエル・カンナビス
撤退支援任務。正面の敵を撃破。了解。

それだけ聞けば充分です。
まずは「5mの通常態に戻」って頂きましょう。

「エイストラより白羽井小隊、聞えますか。
 支援が来ます。逸らないように」

よそ様の軍にこれ以上語る必要もありません。
先制攻撃/指定UCを発動。
殲禍炎剣に捕まらない低空から接敵します。

私に対して『Violence』は意味を持ちません。
攻撃密度がどうであろうが、全周囲への面攻撃でもなく
高密度の攻撃だというだけならば、全て躱します。

通常態に戻って熱風でも吐いていて下さい。
こちらには火炎耐性もあります。

他のコードを使うまでは大きさも変わらないのでしょう。
鎧無視攻撃/貫通攻撃のプラズマライフルをどうぞ。


シル・ウィンディア
人食いなんて、そんな残酷なことさせてたまるかっ!
お姉さんたち、援護に来たよっ!!

近接型だからセオリーで行くなら射撃戦だよね
…いや、ここはこれで行こう

高度に気を付けて【推力移動】から【空中機動】に切り替えての【空中戦】
上空からホーミングビーム・ツインキャノン・ビームランチャーの【一斉発射】で攻撃

敵攻撃は【第六感】で殺気や敵意を感じて
敵の動きを【見切り】【残像】を生み出しつつ三次元回避!

しばらく攻撃を続けた後、お姉さんたちに援護を求めるよ
「ライフルで弾幕を張って一瞬気を惹いてっ!」

あさるとライフルの弾幕を確認したら地上まで降下して全速力で接敵してセイバーで攻撃後《指定UC》

さぁ、全部もってけっ!



●傭兵と閃光
 白羽井小隊が迎撃陣形を組み、赤い巨人へ通じるかも分からない集中砲火を浴びせようとした矢先、愛宕連山の夜空に霹靂が迸った。
「なにが!?」
 予期せぬ方角からの閃光と轟きに白羽井小隊の全員が怯え竦む。走る雷光の正体が荷電粒子だと理解したのはやや後だった。霹靂はSwollenの胸部へと命中し、青白いスパークを散らせて巨躯を大きくのけ反らせた。
「エイストラより白羽井小隊、聞えますか。支援が来ます。逸らないように」
 通信として伝わる淡々とした少女の声音。バイブロジェットブースターが発する独特な空気噴射音と振動波を引き連れながら、ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)のエイストラが田園を高速滑空する。白羽井小隊の隊長が所属と名を問うてきたがノエルは沈黙を返答とした。他所の軍とこれ以上語る必要もあるまい。敵味方識別装置を確認すれば分かる事だ。事態を察したのか定かでは無いが白いオブシディアンMk4達が一斉に後退し道を開けた。そしてノエルが先に通達したとおり、新たな支援戦力がエイストラに続き現れた。
「人喰いなんて……お姉さんたち、援護に来たよっ!!」
 シル・ウィンディア(青き閃光の精霊術士・f03964)が搭乗する白青の精霊機、ブルー・リーゼMk-Ⅱが愛宕連山の夜空を走る。エイストラの強襲を受け怯んだSwollenへ追撃を加える。単体目標を多重ロックオンしたホーミングビーム砲『リュミエール・イリゼ』を連続発射、並行して背面に搭載したツインキャノン『テンペスタ』の砲身を90度前方に倒すと縮退保持された魔力粒子を解き放つ。上空から立て続けに空爆を受けたSwollenの巨躯で大小の光が爆ぜる。しかしダメージに呻く様子はあれどまだ致命的な段階には至っていないようだ。
 目標より殺気が膨れ上がったのをシルが感じたのとエイストラが横方向へ短距離急加速したのは同時だった。Swollenが攻撃を受けながらも強引に二本の触腕と尾骶骨が進化したと思しき腕を伸ばす。動作は巨躯に似つかわしく無く速い。しかしそれ以上にブルー・リーゼMk-Ⅱとエイストラが速かった。
「うわっと!」
 ブルー・リーゼMk-Ⅱが背負うバインダー状の大型スラスターから噴射光を放ち、機体を上方向へと急加速させた。直後先程までいた場所を触腕が通り抜ける。エイストラも触腕を危なげなく回避、続けて迫る巨大な腕も掴まれる直前で身を翻して躱して見せた。
「ラグのお時間です」
 エイストラの動きを側から見ていれば、まるで呼吸をずらした社交ダンスのように思える。ノエルのユーベルコード、フォックストロットが実現する僅かなスラスター噴射と回避運動で生じた質量移動を次の動きに繋げる切れ目の無い流動的な動作。しなる触腕が次々と襲い掛かるが舞踏を演じるエイストラを掠めることすら叶わない。Swollenが繰り出す連続攻撃は全く意味を為していなかった。短時間で異常酷使されたSwollenの肉体組織が代謝を求め始める。
「目標の熱量増大、熱風来ます。退避を」
「え? わ、わかった!」
 ノエルより粛々とした口調で語られた通信を受けたシルはブルー・リーゼMk-Ⅱを素早く後退させる。熱風とやらがどこまで達しどれほどの威力かは定かでは無いが無駄に喰らってやる理由など無い。十分な相対距離を確保し終えたと同時に、Swollenが躯体よりガス状の何かを排出した。筋肉に蓄積した熱だろうか、異常な再生能力の代償だろうか、高温の排気は田園の草木を焼き払い瞬時に炭化させてしまうほどだった。勧告に従い後退したシルの判断は間違いなく正当であった。けれどその勧告を発したノエル本人はエイストラを下げるどころか動かす様子すら無い。
「危ない!」
 シルが叫びブルー・リーゼMk-Ⅱが手を伸ばす。
「問題ありません。こちらには耐熱処理が施されています」
 答えたノエルは変わらず涼しげだった。熱波に曝されたエイストラには損傷らしい損傷は見られない。
「目標の体積が大幅に減少」
 熱を排出しきったSwollenを見ればノエルの言う通り、キャバリアに乗ってしても巨人と形容できるほどの巨躯は5メートルほどにまで縮小していた。加えて動きも鈍っているようだ。この好機を逃すまいとエイストラはプラズマライフルを縮んだ巨人へと向ける。
 機体本体から供給される莫大な電力が荷電粒子に変換され、凄まじい熱量を纏う光の線となりSwollenの身を撃ち貫く。肉から骨までを溶解貫通されたSwollenが身悶えるが、穿たれた傷口はすぐに癒え塞がってしまう。
「再生能力は尚も健在ですか」
 ノエルはプラズマライフルへの電力充填完了の確認とトリガー操作を繰り返す。
「だったらもっと攻撃を集中させれば!」
 シルもテンペスタで砲撃投射に加わりながらも白羽井小隊の隊長機へと通信回線を開く。
「お姉さんたち、ライフルで弾幕を張ってっ!」
 先程まで呆気に取られていた隊長はシルの言葉ですぐさま我に返った。
「わ、分かりましたわ! フェザー01より全小隊各機へ! 小さくなった巨人へ撃ち方始め!」
 残存していた白羽井小隊の火線も加わる。それでもまだSwollenは耐える。再生能力を突破して痛打を与えるにはより強烈な攻撃が必要だとシルは思い立った。
「近付いてから浴びせる!」
 エトワールを抜刀しフルブーストでSwollenに突撃するブルー・リーゼMk-Ⅱの姿を確認したノエルは、言外で彼女が何を行うつもりなのかを察して火力支援を継続する。
 エイストラとオブシディアンMk4が展開する弾幕に紛れる格好でSwollenに飛び込みエトワールを左下から右上へと薙いで切り上げる。切り付けた箇所に魔力刻印が生じるのを見たシルはブルー・リーゼMk-Ⅱへ行使し得る全ての兵装の起動を命じた。
「ブルー・リーゼ、全開でっ!!」
 魔力刻印を攻撃地点としてリュミエール・イリゼとテンペスタが絶え間なく連続で撃ち込まれる。夥しい魔力の爆光が夜空までもを煌びやかに照らす。夜を裂く蒼の閃光が荒れ狂う中で、身に幾つもの穴を開けられた人喰いの巨人が痛みとも怨嗟ともつかない怒号を上げる。だがブルー・リーゼMk-Ⅱの飽和攻撃は止まらず、この間もエイストラのプラズマライフルは継続発射されたままだ。
 ブルー・リーゼMk-Ⅱとエイストラによって切られた先陣。白羽井小隊の少女達を残らず喰らうはずだった巨人は割って入った傭兵と閃光に打ちのめされ、荷電粒子と魔力粒子によって躯体を削り取られる羽目となったのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クネウス・ウィギンシティ
※アドリブ&絡み歓迎
「オーダーを受諾、目標確認」

【POW】

●戦闘
「アルゲス、戦闘モード」
自前のクロムキャバリアに搭乗して戦闘を行います。

敵キャバリアが見える攻撃に適した地点を確保(【スナイパー】)、UCを詠唱。
「GEAR:ARMED FORTRESS。脚部パイル打ち込み、肩部レールガン展開完了」
機体をその場に固定(移動力を半分)に火力(攻撃力)を5倍に。

「フェザー01、これより火力支援を行う」
両腕のRS武装の【弾幕】を敵キャバリアに浴びせ自己修復させ、両肩の-S武装の【砲撃】で敵の生体部品を焼き払う狙いです。

「熱で凝固なり変質してくれればありがたいですが」
弾は豊富にあるので、撃ち込み続けます。


トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗

(負け戦こそ騎士の…兵士の真価が問われますからね
この国に降り掛かった難を少しでも和らげるために…)

これより助太刀をさせて頂きます
巨人退治は騎士の誉れ、あの大型はお任せ下さい
その間に応急処置や機体のチェックを

サブアームのライフルで注意引き付け、敵の挙動や感覚器、間合いを瞬間思考力と情報収集能力で見切って把握
付かず離れず張り付き、小隊をかばい

さて、頃合いですね

自機ハッキングで自動●操縦プログラム作成
コンテナの煙幕手榴弾で●目潰しと同時、(限界まで四肢を降り畳んで搭乗していた)コクピットハッチ解放

Ⅳに【己】を投擲させ敵の頭部に取り付き
戦闘開始から充填していたUCの巨大光刃振り下ろし



●鋼鉄
 騎士にとって巨人殺しは竜殺しと並ぶ誉れ。騎士に限らずとも、大物取りは戦いの歴史に於いて常に栄誉ある功績だ。もし逆境の中で掴み取ったのであれば尚更となる。
「負け戦こそ騎士の……兵士の真価が問われますからね。エネルギー、充填開始」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が搭乗するキャバリア、ロシナンテⅣが機体の全長程もある大型実体盾を正面に構え、左右背後のサブアームが保持するライフルを倒すべき敵がいる方角へと向ける。ロシナンテIVのセンサーカメラが見据える先では、再度体躯を巨大化させた人喰いの巨人が緩慢な歩調で前へと進み、立ち昇る黒煙より姿を露わにしていた。あれこそが話しを聞くだけならば完全なとばっちりも良いところの降って湧いた国難の一部。機械の騎士は迫る不運を己が剣と盾で退けるべく、愛宕連山の田園にキャバリアを駆って馳せ参じた。
 そしてロシナンテIVの隣には青い単眼の黒鉄の人型機動兵器が立ち並ぶ。脚部の膝から下を覆う特に分厚い装甲板と左右の両背面に搭載されたキャノンとミサイルランチャーから重砲戦重視といった印象を受けるキャバリアだ。
「アルゲス、戦闘モード」
 クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)が自らの手で創り上げた機動兵器の名を呼べば、主に呼応して単眼の重砲機兵の心臓が強く脈動し唸りをあげる。
「フェザー01、これより火力支援を行う」
 スペースシップワールドでの技術将校として軍籍を持つ者らしく明確かつ簡潔な通達がクネウスより発せられる。
「助太刀をさせて頂きます。あの大型はお任せ下さい。その間に応急処置や機体のチェックを」
 極めて落ち着いた穏やかな口調のトリテレイアの声が続く。
「こちらフェザー01、支援に感謝いたしますわ。ですが、貴方がたは? 日乃和の部隊では無いようにお見受けしますが」
「我々は――」
 白羽井小隊の隊長からのやや震えを伴った通信にトリテレイアが応じるよりも先にSwollenが本格的な再活動を始めた。人間と獣を混ぜ込んだような咆哮をあげ、身体を揺らし触腕を伸ばす素振りを見せる。すかさずロシナンテIVが大盾を正面に突き出し、アルゲスが左右の両手でそれぞれに保持する長銃イーグルレイと重機関銃エクスパンドを即時射撃位置に構える。
「ご心配無く、皆イェーガーですので」
「あぁ!そんな、本当に……!」
 トリテレイアに代わりクネウスが続きを答えた瞬間、返って来た通信は涙混じりに掠れた酷く聞き取り難いものだった。
 フェザー01が絶望の中で最後に縋ったあり得ない希望。それが目の前のキャバリアとなって現実のものとなった。堰き止めていた悲壮感が別の形で決壊する。だが感情を発露してる場合では無い。今の自分達の存在は猟兵達の任務遂行をより困難にしているだけだと認識している白羽井小隊の隊長は、隷下の各員に急ぎ後退指令を下す。
「こちらは砲撃主体で行きます。前衛を任せても?」
 二本の内の一方の触腕が先端部を無数の触手へと拡散させ襲い来るが、クネウスは至って冷静な思考で照準を合わせるとアルゲスを介してエクスパンドのトリガーを引く。激しいマズルフラッシュが明滅するたびに弾体が高速射出され、触手を撃ち抜いては弾き飛ばして行く。そこへイーグルレイも攻撃に加わる。先端部では無く触腕本体を撃ち抜く。痛覚があるのか衝撃に怯んでいるのかは如何とも判断し難いが、触腕は蛇のようにのたうちSwollen本体の元へと素早く退散する。
「了解しました、共に幸運を」
 ロシナンテIVの頭部がアルゲスに向けられセンサーカメラが数回光る。前方へとスラスターによる推進移動を行い、来たるもう一方の触腕を盾で受け止める。こちらの触腕は先端が鉤爪状に変異していた。盾越しに伝わる激突の衝撃と盾の表面を削り取る耳障りな金属音。ロシナンテIVはより力強くスラスターを噴射すると推力を相乗させたシールドチャージで押し上げて払い退け、すかさずサブアームが保持するライフルのダブルトリガーで追撃を加えた。触腕先端部の鉤爪が千切れ飛ぶ。噴出した液体がロシナンテIVと盾を赤黒く汚染する。トリテレイアは構わずこのまま触腕も撃ち千切ってしまえと連射を続け、アルゲスが相手取った触腕宜しく本体の元へと縮退させるまでに追い込んだ。大元を叩くならば今が好機と見込んだクネウスが効力射撃の準備に入る。
「GEAR:ARMED FORTRESS。脚部パイル打ち込み、肩部レールガン展開完了」
 アルゲスの足が田園の土にめり込むほどに強く踏みしめられた。大地にアイゼンが打ち込まれ機体が砲台としてその場に固定される。機動性全般が死ぬが問題ではない。既に回避など不要。殺られる前に殺れる。
「サルンガ、発射」
 プラズマリアクターが生み出す莫大な電力により電磁加速された弾体が音速を優に超える速度で射出される。青い稲光が軌跡として尾を引き、弾体が人喰いの巨人の胴を貫通した。着弾地点の反対側から夥しい肉片や骨片が宙に散らばる。すぐに修復が始まるもピンポイントで重ねて連続発射されたタスラムが傷口を更に拡大させた。
「熱で凝固なり変質してくれればありがたいのですが」
 鋼鉄の技術者の目論見通り、レールガンとミサイルの連続攻撃を受け続けたSwollenの体組織は熱に炙られた事で重度の火傷状態となり、運動性を著しく損いつつあった。
「さて、頃合いですね」
 そこへロシナンテIVが続く。動作が鈍ったSwollenに肉薄しトリテレイアが即席で構築したモーションプログラムをロシナンテIVに走らせ自動制御モードへと切り替える。スモークグレネードを投擲し周囲を白煙で満たして巨人の視覚を潰すと、ここで見る者の目を疑わせる所業に出た。
「システム接続解除、ロシナンテIVよりパージ」
 敵の眼前でコクピットハッチを解放、機体の部品の一部として内部に格納されていたトリテレイア自身が放り出された。そこへロシナンテIVの腕が伸び、格納状態を解除したトリテレイアを鷲掴みにして間髪入れずにSwollenへ投げ付ける。
「刀身解放!」
 トリテレイアのマニピュレーターには動力炉直結型のフォースセイバー発振機が握られていた。交戦時より密かにずっとエネルギーチャージを続けていたものだ。振りかざすと同時に蓄積に蓄積を重ねた莫大な超高温エネルギーが極大の光刃と化す。縦軸への一閃。Swollenの肩口から股関節部分にまで光の筋が走ったかと思いきや直後に凄まじい勢いで鮮血の如き赤い液体が噴き出し雨となって田園に降り注ぐ。トリテレイアは身を捩るSwollenを足場として蹴り飛ばすとロシナンテIVの肩へと着地した。
 クネウスが穿ちトリテレイアが斬る。鋼のように堅く冷たい戦術が人喰いキャバリアに分を弁えさせ、血の代償を以て土に膝をつかせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

露木・鬼燈
地獄のような戦場も愛おしい。
僕はそう思うんだけど、ね。
まぁ、そこにいるのが年若い少女となると…
これを愛おしいとは思えないよね。
僕が戦場を楽しむためにも無事に返してあげないとね。
とゆーことで…アポイタカラ、突撃するっぽい!
と言え、敵機は巨大だから通常弾では厳しいかな?
ここはお馴染みの徹甲榴弾でどうだろう?
貫徹すれば爆発でそれなりにダメージは期待できるよね。
両手のマシンガンとフォースハンドのライフルに装填。
そしてどんな時でも安定する引き撃ちで削るですよ。
高機動射撃型の必勝の型なのですよ。
さらに秘伝忍法<飛槍>
下半身を狙って機動力を削ればさらに安全安心。
これでイケルイケル!



●傾鬼者撃つ
 ある羅刹は語る。地獄の形相の戦場もまた甘美だと。血潮が満ちて骨より肉が削げ落ちるまで続く死闘。戦い続ける喜びを知る者ならその中に愛しさを見出す場合もあるだろうか。
 赤鉄の鬼、アポイタカラを駆る露木・鬼燈(竜喰・f01316)も竜殺しの武芸者として戦いに生きる者だ。
「まぁ、そこにいるのが年若い少女となると……」
 余計な異物と見做すか命を賭すに値しない者と見做すか、はたまたそれ以外かは敢えて語らずとも、鬼燈は今この戦況を愛おしいと言及する気にはなれなかった。であれば少女御一行をさっさと返してやるかとアポイタカラの推進系に灯を入れる。
 竜にも劣らない体積を持つSwollenが、アポイタカラを新たな外敵或いは鬼燈を餌と認識したのか尾骶骨の成れの果てと思しき第三の腕を伸ばして掴み掛かる。
「食い付いたっぽい!」
 アポイタカラが軽快な動作で横へ身を逸らすと回避と同時に反撃の姿勢を露わにする。両腕のマシンガンとフォースハンドが携えるライフルを巨人へと向け、有無を言わさずトリガーを引き絞る。連射された弾体はSwollenの肉に深く食い込むと僅かな時間を置いて炸裂した。
「いい感じっぽい?」
 この図体に通常弾では効果は薄いだろうと予め想定していた鬼燈は、いずれの銃にも榴弾を装填していた。得られた結果は想定通りだったらしく、内部に浸透した後に爆発した榴弾にSwollenは明らかに苦悶している様子を見せた。
「このまま引き撃ちで削るですよ!」
 大抵の場面で有効な戦法。戦術も思考も無しに獲物を追い回す人喰いキャバリアが相手となれば尚更だった。アポイタカラが機体の正面を標的に向けたままバックブーストを開始する。Swollenはまんまと釣られて触腕と腕を伸ばしながら追い縋ってきた。アポイタカラは計四丁の銃器を撃ち続けつつ機体を左右に振って危なげの無い回避運動を取る。榴弾が炸裂するたびに僅かな怯みがSwollenの挙動を鈍らせる。一射毎の損傷蓄積度は決して多くはないものの、塵も積もれば山となる。広く平坦な田園地帯の環境を存分に活用し、アポイタカラは高速後退しながらも射撃戦で人喰い巨人の耐久度を確実に削り続けた。
「ついでに足も狙えば安全安心」
 榴弾が一定の効果を発揮する事を実践を以て確認した鬼燈は続く手を打つ。継続射撃の中でアポイタカラが片腕を振るうと、宙に夥しい数の機械式螺旋槍が出現した。
「飛翔せよっ!」
 鬼燈の言葉一つでそれらがミサイルのようにSwollenへと殺到する。幾何学的軌道で懐に滑り込むと、いずれも脚部を直撃し着弾地点を掘削。骨まで達するか否かという所で連鎖して爆発した。
 飛び散る肉片、脚部を崩され転倒したSwollenが地面を抉った。だがアポイタカラの榴弾連射も止まらない。身動きの取れない巨人が爆光の華に覆い隠される。
「よしよし、イケルイケル!」
 何一つ仕損じる事なく想定通りの戦果を得たアポイタカラ。悪鬼羅刹は手堅い戦術で着実にダメージを与えSwollenの生命力を削り取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルージュ・リュミエール
アドリブ&絡み歓迎

こういうのは久しぶりに見たな
魔王の軍勢にもこういうジャイアントキャバリアは結構混じってたな
さてと、流石に生身じゃキツ過ぎるな
出ろ!ソルフレアァァァ!!
招喚器インクルシオンを両手で掲げて、剣から炎が吹き上がってワ〇ルとかリュー〇イト的な召喚&搭乗シーン挟んで炎のソルフレア参上だ!

半人前以前の訓練生じゃ手に余るだろう
此処はアタシに任せな。なに、こういう手合いには慣れたもんさ
むしろ、今の最新機相手の方が勝手が分かんねぇからな
チッ、再生能力が強いな。だが、これならどうだ!
必殺ぅ!バーニングエンド・スラッシャァァァァ!!
真っ向から真っ二つにして切り口から炎が燃え上がって大爆発だ!



●炎剣
「こういうのは久しぶりに見たな」
 ルージュ・リュミエール(英雄の亡霊・f32238)が戦の火燐が散る愛宕連山の田園に立つ。記憶の中にある魔王と恐れられたオブリビオンマシン、その軍勢にもこういった下手物染みたジャイアントキャバリアが紛れていた。そしてその記憶は剣と心身にも刻み込まれている。故に決して過小評価して良い相手では無いという点も把握していた。
「流石に生身じゃキツ過ぎるな」
 山間部特有の冷たくほのかな湿り気を帯びた空気を、肺を完全に満たすまで吸い込む。両の脚でしっかりと大地を踏み締め腹筋に渾身の力を込めて空に吼える。我が半神の名を。
「出ろ! ソルフレアァァァ!!」
 両手で掲げた招喚器インクルシオンが豪炎を吹き上がらせた。炎は天を射つ程の火柱となってルージュの姿を完全に覆い隠すとより壮烈に肥大化、瞬時に収束すると炎のサイキックキャバリアの姿を採った。
「炎のソルフレア! 参上だ!」
 果たして現れた機械仕掛けの炎の魔神に、白羽井小隊のみならず人喰いの巨人の視線までもが張り付けとなる。
「此処はアタシに任せな! なに、こういう手合いには慣れたもんさ!」
 化物など斬って焼いて棄ててやると、ソルフレアはインクルシオンを抜き放ち切先をSwollenへ突き付けた。Swollenが剛腕を振りかざして真上から強烈に叩き付けるも、ソルフレアは跳躍して身を躱し、カウンターに一太刀を浴びせる。腕に刻み込まれた剣戟の一筋。なかなかに深い裂傷だが立ち所に修復が始まり傷口が塞がってしまう。まだ小手調べだとソルフレアがSwollenの触腕攻撃をすれ違うように続けて回避し、本体に接近すると二連の袈裟斬りで十字の切創痕を走らせた。しかしやはり腕の時と同じく修復が始まり決定打足り得る損傷には至っていないようだ。
「チッ、再生能力が強いな。だが、これならどうだ!」
 不意に横から迫った触腕を斬り払って輪切りにすると、ソルフレアは愛宕連山の夜空へ向かって跳躍した。天に向けて掲げられたインクルシオン。悪を灼き斬る正義の炎が刀身に集う。
「必殺ぅ! バーニングエンド・スラッシャァァァァ!!」
 落下に伴う加速を相乗させた真っ向縦斬り。燃滾るインクルシオンを止められるものなど無く、行手を阻んだ腕は一閃の元に切り捨てられた。Swollenの正中線を赤い軌跡が駆ける。切断痕から凄まじい熱が生じそれはすぐに炎となって燃え盛った。獄炎の剣戟一閃が迸った瞬間、Swollenの躯体の内部より発火が生じ大爆発が引き起こされた。
「これが! ソルフレアの力だ!」
 Swollenの巨躯が紅蓮の炎に包まれ火達磨となる。炎剣によって下された裁きが人喰いの巨人を焦熱地獄に叩き落とした。
「アタシに断てぬものナシってな!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

イザベラ・ラブレス
こちらマイティー・バリー、貴隊の援護に入るわ!

いわゆる遅滞戦闘ってやつね。
ならばいくらでも遣り様はありそうだわ

白羽井小隊、正面は私が受け持つ。貴女達はとにかく生き残る事を考えながら動き回りなさい!
絶対無理はしないでね!

図体がデカい上に再生力も高いらしいけど、170mmの連打を浴び続けても平気か試してやるわ!

事前に指定UCで炸薬量を増強して威力を高めた170mm砲弾による弾幕と、殲禍炎剣の迎撃高度に入らないように調整したツァーリ・ラケータの一斉発射で射程外からの迎撃を行う

接近してくるようであれば悪路走破で全力後退。零距離まで接近されたら30mm機関砲でカウンターを狙う

破損描写、アドリブ連携歓迎



●硝煙の鰐
「こちらマイティー・バリー、貴隊の援護に入るわ!」
 ワニを思い起こさせる頭部一体型のオーバーフレームに牙のノーズアートが目を惹く、重逆関節型のアンダーフレームを持つキャバリア、マイティー・バリーのパイロットであるイザベラ・ラブレス(デカい銃を持つ女・f30419)が白羽井小隊へと通信を送る。機体の重量に加え武装群で増した荷重を突き動かすべく、スラスターがパワフルに噴射光を吐き出し愛宕連山の田園を疾駆させる。
「こちら白羽井小隊、援護に感謝いたしますわ!」
 隊長機と思しき相手から通信が帰ってきた。やや遠方で睨み合う白いオブシディアンMk4とその数倍の体積はあろうかという赤い巨人。挨拶がわりにと三連銃身を持つガトリングキャノンを巨人に向け、一瞬の掃射を浴びせる。170mmという規格外に強力な弾体はSwollenの筋肉組織を確実に貫いた。そしてイザベラの狙い通り白面がこちらへと向けられる。
「白羽井小隊、正面は私が受け持つ。貴女達はとにかく生き残る事を考えながら動き回りなさい!」
 無理だけはするなと付け加えられた言葉にフェザー01が了解と短く返答する。Swollenが四つん這いの格好でマイティー・バリーへと走り迫る。
「図体がデカい上に再生力も高いらしいけど、これを浴び続けても平気か試してやるわ!」
 ただでさえ強力な170mmガトリングキャノンに、ユーベルコードで精製した特殊弾を装填する。イザベラが勧める本日とっておきの一撃。接近を試みるSwollenに対し再度三連装ガトリングキャノンを連射する。炸薬量を増した大型弾が命中するたびに赤い体液と肉体の一部が弾け飛ぶ。流石の巨躯であってもこれほどの大口径砲を喰らえば手痛いらしく、強力なストッピングパワーが生じてSwollenの足が著しく鈍くなる。直接接近から方針転換したのか、Swollenが二本の触腕を有線式誘導弾の如く素早く伸ばす。
「残念! こういうのもあるのよ!」
 そんな攻撃は初めから想定済みだと、サブのウェポン・セレクターを二連装30mm重機関砲に合わせる。マイティー・バリーの機首に搭載されたガンポッドがけたたましい音を上げながら高レートで弾丸を射出した。伸ばされた触手は一瞬で挽肉と化し、本体への撤退を余儀なくされる。
「さて! 仕上げは黒焦げバーベキューよ!」
 Swollenを三連装ガトリングキャノンでその場に磔にしたままランチャーシステムを叩き起こす。最後のとっておきは全四発。ミサイルの皇帝の名を冠する長距離多目的誘導弾。まさに化物には化物をぶつけるんだと言わんばかりのオーバーキルウェポンの照準を獲物へと重ね合わせた。白いガスを引き連れてSwollenと向かう四つの大型誘導弾。全てが同じタイミングで着弾したかと思えば木々を薙ぎ倒さんほどの強烈な衝撃波が田園地帯を舐めるように広がった。立ち上がる巨大な火柱。爆轟と炎の渦の中で、修復限界を超えた損傷を受けて身体を右往左往させ悶え苦しんでいる人喰い巨人の姿が見えた。
「ま! こんなものでしょうよ!」
 一部始終を唖然として見ていることしか出来なかった白羽井小隊の面々へマイティー・バリーがサムズアップする。重砲を携えた機甲の鰐が、巨人の喉元を喰いちぎった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

防人・拓也
愛機のリーパーキャバリアに搭乗。
「あれが敵か。まずは少女達の退路を確保するか」
と言い、ビームライフルをマグナムモードに切り替え、強力なチャージビーム弾を発射。敵の意識を自身に向ける。
「こちら、友軍機のリーパー。フェザー01、応答せよ」
と無線で少女達に話す。
返事が来たら
「無事で何よりだ。君達の援軍に来た。その陣形を保ちつつ、後退してくれ。敵の腕が飛んで来たら、集中砲火で時間を稼げ。その間に駆けつけて、防いでやる。君達には指一本触れさせないさ」
と言い、指定UCを発動。
敵の攻撃を予測しながら、スラスターを噴射して地面を滑走するように高速移動し、敵の攻撃を避け、少女達への攻撃を防ぐ。
アドリブ・連携可。



●刈り取るもの
 ここに至るまでの道中、最前線で人を喰らいに喰らって肥え太ったのであろうジャイアントキャバリア。オブリビオンマシン化しているという点も含んで白羽井学園から徴用された任官間近の訓練兵にはあまりにも過度な脅威であった。少女らが乗る白いオブシディアンMk4が剛腕に叩き潰されようとしていた矢先、巨人の横腹を強烈なエネルギーの奔流が直撃した。
 マグナムモードに切り替えられたビームライフルから発射したチャージショット。出所は防人・拓也(コードネーム:リーパー・f23769)が御する機体、CX-78-RC リーパーキャバリアだ。
「こちら、友軍機のリーパー。フェザー01、応答せよ」
「こちらフェザー01、リーパーへ、今のはそちらが?」
「無事で何よりだ。君達の援軍に来た。その陣形を保ちつつ、後退してくれ。敵の腕が飛んで来たら、集中砲火で時間を稼げ。その間に駆けつけて、防いでやる。君達には指一本触れさせないさ」
 拓也が訓練兵達へ口早に戦術の指南を与える。その間も再チャージしたマグナムビームをSwollenに叩き込んで否応無しに注意を引き付けていた。
「了解致しましたわ。ご厚意預かり、感謝を」
「それは生き残ってからでいい」
 白羽井小隊の各機は迎撃陣形を整えつつ後退を開始、油断無く盾を構えた状態でアサルトライフルの斉射を始める。その様子を確認した拓也もいよいよ本格的に仕事始めだとユーベルコードを呼び覚ます。
 五感と脳神経が研ぎ澄まされ、経験則と現状を視認し得た情報が死神の予測術として統合された。白羽井小隊かリーパーキャバリアを喰らうかで迷っているらしいSwollenの優柔不断な挙動を冷めた思考で読み取る。
「そうなるか」
 Swollenが行動に入るより先にリーパーキャバリアがスラスターを起動させた。先ほどまで立っていた地面をしなる触腕が殴打する。同時に一方の触腕が白羽井小隊達へと向かう。先の戦術指南に従い鶴翼陣形を維持したまま後退し、触腕に集中砲火を浴びせて迎撃している白いオブシディアンMk4達が見えたが、その上部に第三の腕が迫るのも見えた。
「しまっ……!」
 触腕の対処に集中し過ぎていたため反応が遅れた。剛腕が隊長機へと掴みかかる。もはや回避が間に合わない距離まで詰まっていたが、突如横から割り込んできたビームが腕を撃ち貫き、動作を強制中断させた。
「ありがとうございます、一度ならず二度まで……」
 リーパーキャバリアは指一本触れさせないとの宣言を有言実行し、マグナムモードのビームライフルを続け様に発射。再生速度を上回る威力のエネルギー兵器に射抜かれた腕は堪らず退散する。反撃にと触腕の突き刺しが迫るが滑らかなスラスター制御で左右前後へと動き回り回避。触腕は無意味に田の土を貫いた。
「後でいいと言ったはずだ。戦い、生存する事だけに集中するんだ」
「了解ですわ!」
 拓也の軍人調とした硬く抑揚の無い言葉が現在の白羽井小隊の面々にとってはこの上なく頼もしいものに聞こえた。リーパーキャバリアは語らず粛々と任務を遂行し続ける。拓也は死神の目で静寂に状況を俯瞰し、白羽井小隊の少女達を喰らわんとする巨人の魔手を寸前で刈り取ってゆく。オブシディアンMk4達の斉射とリーパーキャバリアのマグナムビームが何度目か交錯した後、遂に巨人は呻き声を上げながら地に伏すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
ひゃっはー!美少女お嬢様を助けるチャンスです!
「やる気マックスだねご主人サマ!メルシーもだけど!」(荒ぶる鶏立体映像

【戦闘知識・情報収集・視力】
敵の状態と小隊の状況把握
仲間と小隊とも情報共有

うわぁ…お前に次いでヤバそうな奴だな
「メルシーここまでヤバくないよ!?」

【空中戦・念動力・スナイパー】
低空を飛び回りながらも念動光弾を乱射して猛攻

UC発動
攻撃力強化
「一気に仕留める気だね?」
下手にパワーアップなんて面倒ですし

【属性攻撃・念動力・二回攻撃・切断】
バリアの属性を更に強化
纏ったまま接近し鎌剣での連続斬撃と共に凍結と毒も叩き込み更に抵抗すれば反射して燃やし

もう腹いっぱいだろ
眠って消えろ



●賢者石の神機
「ひゃっはー! 美少女お嬢様を助けるチャンスです!」
「やる気マックスだねご主人サマ! メルシーもだけど!」
 なにやら下心全開なカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)に対し、頭部に居座る鶏の立体映像が荒ぶる鷹の姿勢を取って答えた。光刃の鎌剣を肩に担いだ界導神機、メルクリウスが愛宕連山の夜空を引き裂いて飛ぶ。
「どーれどれ、あっちがお嬢様御一行でこっちがデカくて巨人でジャイアントなキャバリアってね。なるほどなるほど」
 すぐに状況に割って入るのではなく、殲禍炎剣の照射警戒高度を目一杯に使って舞台を俯瞰する。なすべき最善を洗い出し求められている役回りを割り出すべく冷静に情報収集に努める。盗賊の出であるが故に持ち合わせた観察眼が鋭く空間を精査した。
「にしても人喰いキャバリアねぇ。お前に次いでヤバそうな奴だな」
「メルシーここまでヤバくないよ!?」
 鶏が両の翼でカシムの顔面を叩いて抗議する。生態観察はもう十分だろうとメルクリウスを降下させ、いよいよ直接戦闘の領域へと躍り出た。高速接近する動体に気付いたのか、Swollenの白面がメルクリウスへと向けられた。同時に剛腕が掌を開いて掴みに掛かる。低空を飛ぶメルクリウスが右方向へと機体の舵を取ると、剛腕を寸前まで引き付けてから逆方向に切り返した。剛腕が風圧を伴って横を通り抜けてゆく。
「焦らず慌てず、まずは牽制っと」
 念動光弾の有効射程内にSwollenを捉え、目標を中心にした旋回機動を行いながら射撃攻撃を加える。精製されたと同時に次々と射出される光球の嵐。切れ目の無い猛攻を前にSwollenは条件反射での防御を余儀無くされた。念動光弾が剥き出しの筋肉に衝突しては体組織を巻き添えに爆ぜて消失する。損傷自体は与えているものの、穿たれた傷口が見る見る内に塞がり癒えてしまう。
「やっぱ再生するか。じゃあこいつでどうだ」
 メルクリウスが担ぐハルペーの光刃が脈動する。
「万物の根源よ……帝竜眼よ……竜の中の竜……世界を蹂躙せしめた竜の王の力を示せ……!」
 そうカシムが命ずると、ハルペーがより強い光の脈動で呼応した。ヴァルギリオスの力を宿すユーベルコードが光刃に複合属性の加護を与え、メルクリウスの全身には攻性防壁の守護を張り巡らせる。
「一気に仕留める気だね?」
 メルシーの問いにカシムは勿論と答えた。
「下手にパワーアップなんて面倒ですし」
 長期戦を得意とする再生怪獣に合わせてやる道理など無い。再生能力を上回る一撃を叩き込んで決めると方針を固めたカシムは、メルクリウスがヴァルギリオスの力を完全に会得した事を確認したのち、スラスターの出力を最大限に引き上げた。
 ハルペーを構えた格好で猪突猛進するメルクリウスにSwollenの二本の触腕と一本の腕が真正面から襲い掛かる。メルクリウスは構わずに速度を緩める事なく直進。獲物を捕らえようとした其々の腕は、折り重なる属性障壁に触れた途端に焼かれて感電し氷結した。
「もう腹いっぱいだろ。眠って消えろ」
 縦横無尽に繰り出されるハルペーの連続斬舞。切断痕が凍てついたかと思えば強酸の毒が爛れさせ、稲妻が迸って内部から火炎が噴出する。細胞組織を蹂躙し尽くされた患部は再生能力が皆無に近いまでに低下させられ、鮮血すら噴出させられずに長く大きな裂傷を残すばかりとなった。メルクリウスが最後の横薙ぎを払ったのち、Swollenは身の毛もよだつ咆哮をあげながら背を地面に伏すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
お嬢様の学園ですって!?素敵!なんだか興奮してきたでござるよ!!!

生身で小隊長機の上に乗って和やかに挨拶!どうもスーパーピンチクラッシャーでござる
ついでにこのままゆるゆる後退するよう指示を出しますぞ!今からやべーの出すから

バイオな敵に有効そうな【架空兵器】をインスピレーションで創造!こう明言するとアレでござるが赤くて…デケェ斧持ってて…腹からビーム出しそうな…
【巨大化】した敵と出したアレでロボットプロレスですぞ!目!耳!無いから目!耳もねーじゃねーか!
デカイ斧ブーメラン!必殺細胞に作用しそうな腹ビーム!

そうか…ユーベルコードとは…オブリビオンとは…(ドワォ)
いけねっちょっとトリップしてましたぞ



●名前を言ってはいけないスーパーロボット
「ハーイ、調子良ィ?」
「いやぁぁぁぁぁあッ!?」
 深夜の愛宕連山に少女の絶叫が児玉した。フェザー01の視点から見たコクピット内のモニター全面一杯に見ず知らずの色々と濃すぎる中年男性のデススマイルが表示されたのだ。その人こそがエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)であると知ったのは少し後になってからだ。
「機体に乗られるのはよろしいのですけど、メインカメラ前はお控えくださいまし」
「いやぁソーリーソーリー、お嬢様の学園なんて聞いて興奮しちゃってつい」
 エドゥアルトは突然現れた変なおじさんを振り落とさんと暴れたオブシディアンMk4をステイステイと宥めた後、諸々あって肩の上に行儀良く座っている。
「では改めて、どうもスーパーピンチクラッシャーでござる!」
「は、はぁ」
 フェザー01はこの変なおじさんも多分恐らくというより絶対猟兵なのだと頭では理解出来ていたのだが、些か出会い方がよろしく無かったため心では素直に受け入れられなかった。
 今現在Swollenの狙いは他の猟兵へと向いている。白羽井小隊はただ牽制射撃を行うもの足手纏いになりかねないという自認もあったが、エドゥアルトの勧めもあって目標から大きく距離を開けて後退していた。
「だいたいこんなもんでござるかな? お嬢様がたは動かないように! 今からやべーの出すから!」
「やべぇのって……一体なんですの?」
 エドゥアルト自身が既に何かとデンジャラスな気がしなくも無いがそれよりも危険なものが呼び出されると聞いて、白羽井小隊は皆々臨戦態勢のまま衝撃に備えて身体を硬らせた。
「バイオな敵と言えばやっぱアレでござるな! 赤くてでっかくてチェンジゲッ」
「それ以上いけませんわ!」
 言葉を続けさせてはならないとフェザー01が咄嗟に大声を張り上げ遮るが、少々手遅れだったようだ。虚空に電脳魔術めいた陣が浮かび上がり、ワープドライブアウトしたかのように巨大なスーパーロボット然とした機動兵器が出現した。
「ユーベルコードの力が集まれば百万パワー! てなわけで赤くてデカいやべーヤツでござる!」
「あわわわ、いけませんわ! あの亀の甲羅模様みたいな頭なんて殆どそのままじゃありませんこと!?」
「へーきへーきのモーマンタイ! バズリトレンディのネズミなマウスよりマシですよ」
「比べるところではなくってよ! あとしれっと余計に危ない事を言わないでくださいまし!」
 そうこう喚いている内にSwollenが地面を踏み鳴らして迫りつつある。空気が一変しオブシディアンMk4が一斉にアサルトライフルの照準を向けるも、エドゥアルトが召喚した赤いスーパーロボットが不要と言わんばかりに腕でそれらを遮った。
「まぁお嬢様がたは見てなさいって。ここから先はロボットプロレスですぞ! ポップコーンとコーラの準備をお忘れなく! 熱血必中ババンバン!」
 Swollenに勝るとも劣らない重量感のある振動を轟かせスーパーロボットが一歩を踏み込む。両手に携えた巨大な斧を大きく振りかぶると、距離を詰めつつあるSwollenに対して投擲した。
「トマホォォォク! ブゥゥメラァン!」
 空気を引き裂きながら高速回転する二つの斧がSwollenの左右の触腕を切除した。切口より赤黒い液体が吹き出し痛烈に身を捩る。スーパーロボットはその隙を逃さず更に接近、殴る蹴るの暴行による直接格闘を敢行した。因みに投げた斧は戻って来なかった。
「目だ! 耳だ! 鼻!」
「目しかありませんわよ!」
「こまけぇこたぁいいんでございますよ!」
 痛恨のアッパーカットがSwollenの胸を打ち据えた。巨躯が浮き上がるほどの打撃に堪らず呻きをあげる。ここでトドメだとスーパーロボットが腹部の大口径ビームキャノンを開放、僅かなチャージタイムを置いてライトピンクのエネルギー波が放出された。
「イェェェガァァァ! ビィィィム!」
 グリッドマップにするなら前方一マスの至近距離から発射されたエネルギー波にSwollenが飲み込まれる。深夜の田園地帯を眩い光が満たして視界の全てが白に塗り潰された。
 その時、エドゥアルトは宇宙の全てを知った。
「そうか……ユーベルコードとは、オブリビオンとは……」
「これが世界の意思……じゃなくて、わたくしまで引き込まないでくださいまし!」
「ドワォ!?」
 オブシディアンMk4のオーバーフレームを揺さぶった衝撃がエドゥアルトの意識を無限の力の彼方よりこちら側へと呼び戻した。進化の光と一体化してしまう危うい所を踏み止まり、改めて状況を確認する。先のビームの直撃を喰らったSwollenが地べたに身体を沈めていた。
「いぇい制裁完了!」
「もうめちゃくちゃですわ……」
 だが事実として人喰いの巨人に過度な痛手を与えたのに違いは無い。変なおじさんと危険過ぎるスーパーロボットの働き振りで、戦況は終息へとまた一つ駒を進めたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレーネ・ジルコニウム
【ガルヴォルン】
「白羽井学園の皆さん、よく持ちこたえてくれました。
我々、私設軍事組織ガルヴォルンが来たからには安心してください。
オブリビオンマシンは殲滅します!」

機動戦艦ストライダーの艦長席から白羽井小隊の皆さんに通信を送ります。

「皆さん、私が指揮を執りますので、無理せず戦ってください。
機体が損傷していたり、弾切れの人はストライダーで修理と補給を!」

【アドバンテージ・アンサー】による指示を出して援護に徹してもらい、傷ついた機体はストライダーで理緒さんに修理してもらいます。

「錫華さんとサージェさん、鳳凰院さんは白羽井小隊と協力し、敵の撃破をお願いします。
ストライダー、ミサイルで援護射撃を開始!」


菫宮・理緒
【ガルヴォルン】

ストライダーは久しぶりだね。格納庫、落ち着く!
整備班のみんなも元気っぽいね。

では今のうちに準備準備っ。

小隊のみんなのシャワーと軽食、それと機体の整備と補給だね。
オブシディアンMk4ならいろいろしやすいはず。

白羽井小隊のみなさんがストライダーに着艦したら、
小隊のみなさまには一時休息を。
その間にわたしは【モーター・プリパラタ】で機体の整備と補給だね。
「整備班のみんなもよろしくね!」

でも整備と補給だけじゃ、プリパラタの名が泣くね。
できる限りのチューンを施して送り出そう。

「機体のパワートリムを調整してあるから、最初だけ気を付けて!」
さっきよりは乗りやすくなってる、はずだからね!


支倉・錫華
【ガルヴォルン】

訓練中に最前線、しかも真っ当な相手でないのに、
それでも逃げないのは、眩しいね。

キャバリアはストライダーの『ナズグル』を借りよう。

「アミシア、小隊戦闘でよろしく」
『了解。ストライダーおよび、サージェ機、鳳凰院機とデータリンク』

突入のタイミングは少しズラしていくね。

相手の注意がサージェさんに向いた瞬間に、
ひりょさんとは逆方向からしかけられるといいな。

突入後は援護のミサイルを利用してサージェさんと合流。
【天磐】を手に【歌仙】で切り込んで、
お互いの死角を守るように連携して攻撃しよう。

ひりょさんのつけた傷をさらに広げたら、
サージェさんと敵を足止め。
大出力のビーム砲を叩き込んでもらおう


サージェ・ライト
【ガルヴォルン】
(先行突入します)

お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束の前口上

名乗りながら私参上
そんなわけで猟兵のお届けでーす!
かもんっ!『ファントムシリカ』!!

旗艦が来るまで私が囮になります
白羽井学園の皆さんは撤退準備を!
まだ油断はしないでくださいね!

ファントムクォーツユニット起動!
ついでに【百花繚乱】も展開!
多数の幻影とルベライトビットで注意をこちらに
ビット制御はミニシリカよしなに!

っと!ストライダー来ましたね!
大佐ー!指揮下に戻りますね!
錫華さんとのクノイチコンビお見せしましょう!
ひりょさんもよろしくお願いします!


鳳凰院・ひりょ
【ガルヴォルン】
学園の生徒さん達が戦ってるのか
助けに行かなくちゃな…
皆さん、今回はよろしくお願いします
飛び入りで合流させてもらった分、精一杯戦ってみるか!

ルクス・テネブラエで出撃
ビームシールドを展開し友軍を【かばう】ように【切り込み】戦闘に介入
敵に【シールドバッシュ】叩き込みながらUC『破邪顕正』発動
行動不能付与し、友軍の体勢立て直し時間稼ぐ

さらに【結界術】にて敵の周囲へ結界を展開
負荷を軽減させる効果を敵へ付与出来ないか試みる

友軍の援護射撃受けつつ、自身はテネブラエソードで接近戦
【全力魔法】力を注ぎ込んだ剣で敵を一刀両断、【貫通攻撃】
敵負傷箇所出来たらそこへルクスビーム砲の大火力ビーム叩き込む


メアリーズ・エリゴス
アドリブ歓迎

きひっ!これはまた破壊(アイ)し甲斐のある相手ですねぇぇぇ!
ちょっと予定より距離が離れていますけど、それならそれでやりようがあります
胸部メガビーム砲にロングビームライフルを変形させて接続しますよ
メインジェネレーター接続完了、エネルギー伝達異常なし

あぁ、あぁ、面倒ですが一応通達しますよ
白羽井小隊及び猟兵各員に告ぐ、指定射線上より退避されたし、繰り返す、射線上より退避されたし
指示に従わない場合の安全は……保証できませんよぉぉぉ!
くひっ、ひひっ!さぁ、私が殺(アイ)してあげますよぉぉぉ!【メガビームキャノン】発射ですっ!
理論上は別世界SSWの宇宙戦艦も撃沈可能なビームを放ちますよぉぉぉ!



●ガルヴォルン
 愛宕連山の田園地帯に出現した超大型のジャイアントキャバリア。猟兵達の苛烈な攻撃を受け続けてもなお、驚異的な再生能力によって尋常ならざる粘りを見せる。白羽井小隊にとって猟兵の介入により戦況は転覆に等しい好転に至ったが、危機を脱し切れたとはまだ言えない。
 鶴翼陣形を維持しながら斉射を加えつつ後退する白羽井小隊へ、Swollenの三本目の腕が叩き付けられようとしていた。だが予備動作に入った瞬間に頭頂部の白面へと無数の光弾が浴びせられ、眼を潰された人喰いの巨人が悶えて怯む。
「今のは誰ですの!?」
 自分達では無いとフェザー01が攻撃の出所を視線で探す。しかし発見するよりも光弾を浴びせた張本人達から名乗りの通信が入る方が先だった。
「誰だ何だと聞かれたら、答えてあげるが世の情け。一匹クノイチ、ファントムシリカ、お呼びとあらば即参上!」
 白羽井小隊の後方の田園に如何にもクノイチ然としたサイキックキャバリアが降り立った。この機体こそがサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の搭乗するファントムシリカだ。
「そんなわけで猟兵のお届け第一便でーす! 学生お嬢様は後退準備を!」
 何か問い質して来た白羽井小隊のオブシディアンMk4を飛び越えSwollenの前に立つ。
「もうちょっとでストライダーが来ますから! それまで私が囮になります!」
『ファントムクォーツユニットれっつごー』
『ルベライトビット、起動』
 サージェに頼まれるまでもなくシリカとミニシリカが各々の判断で兵装の機能を走らせる。生じたファントムシリカの幻影がSwollenの周囲を取り囲み、左肩部よりリリースされたスフィア状の自律攻撃端末が包囲陣形を構築した。
「さあさあさあ! クノイチの戦い振りをお見せしましょう!」
 ファントムシリカの跳躍を合図にビットと幻影による撹乱戦闘が開始される。Swollenの触腕がファントムシリカを貫くが幻影が霧散するのみ。百花繚乱でリリースされたルベライトビットが忙しく動き回り四方八方からビームを浴びせ続ける。そのままサージェが巨人を弄んだいたところで、大気を震わせる轟音が鳴り響いた。
「お? 来ましたね」
 ファントムシリカが撹乱を中断し後方に飛び退く。サージェの視線が向かう先には、宙に生じた転移門より艦首を覗かせるストライダーの姿があった。
「白羽井学園の皆さん、よく持ちこたえてくれました。我々、私設軍事組織ガルヴォルンが来たからには安心してください。オブリビオンマシンは殲滅します!」
 全帯域で発せられたセレーネ・ジルコニウム(私設軍事組織ガルヴォルン大佐・f30072)の通信。転移を完全に終え長大な船体を露わにしたワダツミ級強襲揚陸艦のストライダーへ、白羽井小隊のみならず人喰い巨人さえも眼を釘付けとされた。
「それでは皆さん全機出撃!」
 セレーネの指令に応じストライダーの甲板上で待機していた三機のキャバリアが空挺部隊宜しく降下を開始した。
「訓練中に最前線、か。しかも真っ当な相手でないのに、それでも逃げないのは、眩しいね」
 支倉・錫華(Gambenero・f29951)がストライダーより借り受けたキャバリア、ナズグルの頭部を白羽井小隊へと向けながら呟いた。国民性か慣習か、はたまた高貴な者が背負うべき矜恃か。判別の仕様が無いが、彼女らは訓練兵でありながらも既に一介の軍人なのだろう。
「間に合った……皆さん、今回はよろしくお願いします」
 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)のルクス・テネブラエが天使と悪魔の翼状ユニットを羽ばたかせ、しなやかな動作で田園へと舞い降りた。飛行型キャバリアらしく極低空に滞空しながら、白羽井小隊がとりあえず全滅はしていていない事を確認すると早る心を撫で下ろした。
「きひっ! これはまた破壊(アイ)し甲斐のある相手ですねぇぇぇ!」
 皮膚の無い巨人を見上げたメアリーズ・エリゴス(生体CPU・f30579)が歓喜に震えた甲高い声で語る。彼女が搭乗するキャバリアはロードガル。スペースシップワールドの技術を流用して改修が行われた機体で、見た目通りに重装甲かつ重火力を誇り質量も大きい。事実、ストライダーより降下し着地しただけで足が田園に深くめり込んでいる。
「大佐ー! 指揮下に戻りますね!」
 ストライダーと合流したファントムシリカも加わり、ガルヴォルンの機動部隊の展開が完了した。
「ストライダーより白羽井小隊の皆さんへ、私が指揮を執りますので、無理せず戦ってください。機体が損傷していたり、弾切れの人はストライダーで修理と補給を!」
「こちらフェザー01、ご厚意に感謝いたしますわ。隊の総残弾数がもう一割を切っていますの。機体の消耗も激しく戦闘機動に支障が出ていますわ。お言葉に甘えて下がらせていただきます」
 このお嬢様御一行は人喰い巨人を前に逃亡しない胆力を持ちながらも勇気と無謀を同じポケットに突っ込む愚か者では無い。兵士としての聞き分けはちゃんと出来ているらしいとセレーネは認識すると、白羽井小隊の後退に合わせ隷下のガルヴォルン各員へ指令を与える。
「錫華さんとサージェさん、鳳凰院さんは敵へ直接攻撃をお願いします。メアリーズさんはメガビームキャノンの発射準備を」
 各員が了解との応答を返して遂にガルヴォルンとSwollenの戦端が開かれた。ストライダーの多連装ロケットシステムより矢継早に発射された誘導弾がSwollenを直撃し、大きな爆光を開かせては巨躯を揺さぶった。
「アミシア、小隊戦闘でよろしく」
『了解。ストライダーおよび、サージェ機、鳳凰院機とデータリンク』
 怯んでる隙にとナズグルが接近を掛ける。隣にはエンジェライトスラスターを噴射して同様に疾駆するファントムシリカが並ぶ。
「先鋒はクノイチにお任せを!」
 そう言ってサージェは機体に地面を蹴らせると跳躍。Swollenの触腕が叩き落としに掛かるも横方向へのクイックブーストで回避しルベライトビットの集中攻撃を仕掛ける。
「飛び入りで合流させてもらった分、精一杯戦ってみるか!」
 ファントムシリカに気取られているSwollenの側面よりルクス・テネブラエがビームシールドを展開したまま突撃する。此方にも意識は向いているらしく、先端が複数の鉤爪と化した触腕が向かって来た。ルクス・テネブラエは回避行動には移らず寸前まで引き付けると、強烈な盾の打撃によって弾き返した。
「射程に入った! 幾多の精霊よ、かの者に裁きを……破邪顕正!」
 鳳凰院のユーベルコード、破邪顕正が生み出した半球体状の退魔結界がSwollenを空間から隔絶した。捕縛封印の圧に抗う人喰い巨人が頭部を振り触腕と剛腕でなぎ払おうともがこうとするが、重ねて展開された結界が封印をより強固なものとして強く硬く封殺し続ける。
「今なら!」
 近接攻撃に持ち込む好機を見出したルクス・テネブラエが標的に向かって急加速すると日本刀型の実体剣であるテネブラエソードを抜いた。刀身に禍々しい闇の波動を纏わせ水平方向に一刀を浴びせる。胴体部に横口を開いた切創跡を作ると加えて追撃を行う。
「ルクスビーム砲! 直撃でッ!」
 ルクス・テネブラエが肩に搭載するビームキャノンを収束モードに切り替え、間を置かずに発射した。高密度に圧縮されたエネルギーが光線となり、先程開いた切創跡より内部を貫き、複数の臓器を巻き込みながら背面へと抜けた。一連の攻撃を完了したルクス・テネブラエが両翼を羽ばたかせ即座に離脱。続く友軍の射線を確保する。
「次、行くよ」
 既に格闘戦の間合いにまで接近を終えていたナズグルが加速を掛けてSwollenに肉薄する。痛打を受けながらも触腕での刺突を試みるがファンクションシールドの天磐で巧みに受け流し、カウンターとして片刃の実体剣である歌仙で切り刻む。尋常ならざる再生力を持つため切った先から再生して行くが錫華は意に介さない。初めから承知の上であり狙いは細かいダメージの蓄積では無いのだから。視界外より鞭のようにしなる触腕が迫るもアミシアの眼がそれを監視している。
『回避運動を。ガイド出します』
アミシアのナビゲーション通りに錫華がナズグルを制動する。掴み捉え突き刺しに掛かっていた触腕はいずれも掠めもせずに宙を擦り抜けた。
「錫華さーん! 次のタイミングで!」
「わかった」
 Swollenの近場で跳ね回り撹乱していたファントムシリカがルベライトビットの集中射撃で白面の頭部を撃ち続ける。Swollenが眼を腕で覆うような挙動を取るのを見た錫華は、これ見よがしにナズグルを懐へと潜り込ませた。だが第三の腕が握り潰さんと掌を広げ眼前に迫って来た。錫華の感覚の中で時間の流れが何倍にも引き伸ばされる。アウェイキング・センシズによって研ぎ澄まされた思考が、反射的に歌仙をなぎ払わせた。巨人の指が赤黒い液体と共に宙を舞う。
「残念、全部見えてる」
 果たしてナズグルがSwollenの胴体部へと取り付いた。逆手に握り直した歌仙を先程ルクス・テネブラエが穿った傷口にマニピュレーターごと突っ込んだ。関節駆動部を回転させ体内を撹拌すると、ナズグルの腕越しに肉や臓腑、筋や骨が挽き回される感覚が伝わってくる。Swollenが激痛に咆哮し外敵を潰さんとするよりも先にナズグルが胴を蹴飛ばして離脱を図った。
「後は」
「きひひっ! 心得ておりますよぉ!」
 錫華の通信に遠方で待機していたメアリーズの上擦った声が応えた。紅の重キャバリアが両の足を田園に沈み込まんばかりにしっかりと踏み締めた。スカートアーマー裏に秘匿されていたサブアームで地面を掴み、衝撃を相殺するためのアイゼンとして機能させる。主兵装であるロングビームライフルを銃の形態から長大な砲へと姿を転じさせ、胸部で口を開けているメガビームキャノンに銃床部分をジョイントした。これでロートガル自身がひとつの巨大な砲座と化す。
「接続完了、エネルギー伝達異常なし」
 動力炉が脈々と生み出し続ける莫大な電力がコンデンサに蓄えられた後メガビーム砲の主機部分へと送り込まれる。過剰供給となったエネルギーが熱に変換され、各部のインテークより熱風となって排出された。それでも逃げ場を失った分はホースや関節部で時折スパークを散らせ、あたかもロートガルが帯電しているかのように血塊色の装甲を明滅させる。
「きひ、きひひひっ! 準備完了です。あぁ、どうしましょう? 早く撃たないと超過駆動し過ぎて吹っ飛んじゃいますよぉ!」
 インターフェース上での充填率が百パーセントを突破した。電圧負荷の耐久限界を超過した事を知らせる警報音がコクピット内にけたたましく鳴り響く。
「ひいっ! もう我慢なりません! 全機指定射線上より退避されたし!」
「全機散開!」
 メアリーズが湧き上がる劣情のままトリガーを引いたのとセレーネが指示を出したのはほぼ同時だった。ファントムシリカ、ナズグル、ルクス・テネブラエがSwollenから瞬間に大きく距離を離す。
「私が! 殺(アイ)してあげますよぉぉぉ!」
 メガビームキャノンモードのロートガルが遂に凶悪極まる真価を露わにする。縮退保持されていた莫大なエネルギーが変形したロングビームライフルを介して放出され、光の御柱となってSwollenへと向かう。計算上の出力で言うならば、スペースシップワールドの艦艇に使用されている超重装甲をも溶解貫徹するビームが、ルクス・テネブラエが切り開きナズグルが抉り拡大した傷口を起点としてSwollenの胴を直撃しそのまま貫いた。巨躯がくの字に曲がり、押し寄せる焦熱の光線に堪らず二歩三歩と後退りする。ひたすら前へ前へと蹂躙の限りを尽くしていた人喰いの巨人が、否応無しに後に引く事を強いられた。
 数秒間に及ぶメガビームキャノンの照射が終了し、乾き熱された空気にエネルギーの残滓が散って消えた頃、大穴が穿たれたSwollenの巨大な肉体が背中から地面へと倒れ込む。地鳴りが愛宕連山の田園全域に轟いた。

●インターバル
 フェザー01以下白羽井小隊の各員が着用する強化服は生命維持に関する優れた機能を有している。発汗時の吸水及び水分循環もその内のひとつだ。だが幾ら体温調整やその他諸々の性能が優秀とは言え、伴う不快感とはなかなかにして打ち消し難いものだった。作戦開始から数時間が経過し、常に戦闘の最中にあったフェザー01は肌や髪に纏わり付く汗に忌々しさを覚えずにはいられなかった。今すぐ強化服を脱ぎ捨て頭から冷水を被ったらどれだけ爽快なものか。もし叶えばそれだけであと数時間分の英気は養えるかも知れないと、置かれた状況からしてあり得ない願望を度々抱いていた。
「まさか、本当に水浴びできるなんて思いませんでしたわ」
 白羽井小隊はセレーネに促されるままストライダーに機体を回収された。そして格納庫で菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)からの出迎えを受けた後、話しに流されるままシャワールームまで通され念願叶い頭から冷水を思う存分浴びる事が出来たのだ。
 初めは戦闘中に、ましてや猟兵が戦っている最中に休んでなどいられないと具申した。しかし機体の損耗が激し過ぎてあと数分も動かしていれば使い物にならなくなるという診断結果と、そんな疲労困憊した状態で出て行ったところで何の働きも望めない。猟兵が戦っている今だからこそ休息を取り十分な補給を済ませて戦闘能力を回復させてから再出撃するべきだとの真っ当な意見を理緒から受けた。白羽井小隊の誰にも反論の余地などない。理緒の言う通り今出て行っても猟兵の行動を妨げるだけだと現実を理解し、ならば厚意を甘んじて受け全力で回復に努める選択を採った。
「ストライダーは久しぶりだね。格納庫、落ち着く!」
 ガルヴォルンの旗艦の格納庫内で、理緒はまるで久々に我が家に帰ってきたかのような安心感を覚えていた。忙しく動き回る整備班も変わらず元気そうだ。最高峰のメカニックとしての技能を用い、あれやこれやと手早く指示を下して行く。モーター・プリパラタは伊達では無い。
「じゃあアシストギアの設定はこれで。全機スラスターが焼けちゃってるから取り替えて。オーバーフレームもダメだね。股関節から下は丸々交換。推力バランスは標準より低めに抑えててね。このオブシディアン、高等訓練機をそのまま武装してるからあんまりパワフルにしちゃうと耐えられないよ。それとパワートリムの出力係数も注意して」
 手持ちのタブレット端末に送信された機体データを一瞥しただけでどこにどう対処するべきかの判断を次々に選別する。当の本人には慌ただしいといった様子は無く、至極落ち着いた様子で整備状況を俯瞰し携わる人員が効率よく働けるよう采配を降して行く。
「この短時間でもうここまで修理が? あぁ……わたくしのオブシディアン、こんなに綺麗にしてもらえて……」
 人喰いキャバリアの返り血と蓄積された損傷で無残な有様となった我が機体。それがシャワーを浴びて軽食を済ませて戻って来てみれば元の清楚な白を取り戻し見違えるようになった姿に転じていた。白羽井小隊の隊長が思わず感銘の息を漏らす。
「あ、小隊の隊長さま? もう少しで終わるから休憩しててね」
「かたじけないですわ。救援してもらった挙句にこれほどの厚い処遇をくださるなんて」
 深く頭を下げて礼をするフェザー01へ、理緒は構うことはないと手を振る。
「いいのいいの、そういうお仕事だし。それより大変だったでしょ? こんなボロボロの状態でよく戦えたね」
 フェザー01の脳裏に現状に至るまでの光景が一斉に呼び起こされる。押し寄せた人喰いキャバリアにコクピットをこじ開けられ貪り食われる学友達。寸前で救えたかと思いきや身体の半分を喪失し掠れた声で殺してと懇願する者を隊長の責務として介錯したのも一度二度では無い。駄目押しにあの巨人の出現。もし猟兵が叶わぬ願望通りに颯爽と現れなければ今頃は自分も奴等の餌となっていただろう。途端に堰き止めていた涙が滲みかけるも、頭を振るって気を保たせた。
「ん? チェック完了? わかった。じゃあ全機エレベーターデッキ前に回して」
 整備班からの報告を受けた理緒が白羽井小隊の隊長へと歩み寄る。
「オブシディアンMk4の全機の整備と修理、終わったよ。どうする?」
 理緒は無理に出なくとも良いとは語らない。モーター・プリパラタはいつも機体と共にあった。それはつまり戦う者達の宿命と矜恃へキャバリアを通して常に向き合ってきた事に他ならない。銃を再び手にした兵士が成すべき事をなすために、選び取る選択肢は既知している。無言で敬礼を返すフェザー01を見て理緒は静かに頷いた。
「大丈夫、オブシディアンMk4が守ってくれる。機体を信じて戦って」
 踵を返して駆け出すフェザー01の背中にそういえばと理緒が張り上げた声を飛ばした。
「パワートリム! 調整してあるから! 最初だけ気を付けて! 乗りやすくはなってるはずだから!」
「了解ですわ! お世話になりました!」
 小隊員を招集する声に格納庫を踏み鳴らす足音が続く。理緒が見送った先では完全回復したオブシディアンMk4達が駆動部を唸らせ起動を開始する光景があった。モーター・プリパラタの加護を受けた鉄の騎兵が行く。理緒の戦場はストライダーの艦内。傷付き倒れる寸前のキャバリア達を立ち上がらせ、今一度果たすべき使命を遂行するための力を与えた。訓練兵にして一介の軍人を乗せたオブシディアンMk4達がいざ再び愛宕連山の田園へと往く。力強く灯るセンサーカメラの光は、また戦いへと向かう事を叶えてくれた理緒への謝意なのだろうか。
「白羽井小隊が出るよ! リフトアップ始め!」
 艦内にキャバリア出撃シークエンスの警報音が鳴り響く。迫り上がる昇降機に乗った白羽井小隊の機体達へ理緒は人知れず言葉をこぼした。
「守ってあげてね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天城原・陽
【特務一課】
(初手、射程内に入った瞬間に狙撃砲による制圧射撃。それから通信を開き)
『こちら第三極東都市管理局戦術作戦部 特務一課。これより日乃和国への武力支援を開始する。オーバー』
(申し訳程度の通信をさっさと終え僚機に向けて)
「マダラ、キリジ。あんたらフォワード。ツートップよ。撤退は確定事項だから入れ込み過ぎんじゃないわよ。」

(フォワードが作った隙を逃さず狙撃を叩き込みつつ更に一手先の準備をする)
「二人とも5秒足止めしたら散開。ぶっ放すから。」
(狙撃砲モ-ドチェンジ。チャージ開始…5カウント)
「さぁ…地獄で悪魔がお待ちかねよ!」
(バスターランチャー発射。加粒子の奔流が放たれる)


キリジ・グッドウィン
【特務一課】
GW『(今回のキャバリア名、アドリブで)』で出撃
結構グロい色してんな。屠畜場とかあんな感じか?

了解、ギバ。テキトーにぶっ飛ばしてテキトーに下がればいいんだろ

UC【スカッシュ・フィストカフ】での先制攻撃。派手にぶちかまして相手の注意をこちらに向けさせる
行くぞマダラァ!暴れてやろうじゃねぇか!(陽動)

マダラが捕縛した敵を、RX-Aランブルビーストによるグラップルで相手の肉を削ぎ、爪の電撃によるマヒ攻撃で少しずつでも肉の鎧の自己修復を無効化
肉喰って肥えやがって…こいつは新手のデトックスってヤツだなァ
どっか開けとけばギバが勝手に撃ち込むだろ

うっし、ここまでだな。トドメは譲ってやるぜ


斑星・夜
【特務一課】

キャバリア:灰風号に搭乗

人喰いキャバリアかぁ、また嫌な相手が出てきたねぇ
……さすがにこれは見過ごせないよ

オーケーギバちゃん、任せて!
キリジちゃん、がんばろーぜ!
よーし、全員、無事に撤退させるよー!

キリジちゃんの攻撃に合わせて
UC『ブリッツ・シュラーク』を使用
雷の鞭で敵機を攻撃し、移動を阻害します

上手く行動を止められたらそこへ『RXSシルバーワイヤー』を射出
ワイヤーで腕と胸部をまとめて『捕縛』、そのまま敵機の『体勢を崩す』よ!
人を喰らう口なんて要らないだろ
……って事で!一体でも多くの敵機の動きを止めるよー!

トドメはギバちゃんにお任せ!
攻撃に合わせて回避するよ!



●極東より来る者
 深夜の田園地帯に立ち塞がる見上げんばかりの巨躯。骨を剥き出しにした肉の人喰い巨人が一足歩を進める度に大地が震え木々が騒めく。
 その巨人の頭部や胴体に突如として橙色の光が連鎖して炸裂した。Swollenが姿勢を揺るがされるほどの強烈な爆発は大口径砲の直撃によるものだ。
「こちら第三極東都市管理局戦術作戦部、特務一課。これより日乃和国への武力支援を開始する。オーバー」
 全帯域で抑揚の無い口調の通信が端的に放たれた。同時に戦闘領域に三つの機影が出現する。大部分を赤に染めた装甲の狭間から有機的なインナーフレームが覗く機体、天城原・陽(陽光・f31019)の赤雷号が二十二式複合狙撃砲を撃ち放つ。キャバリアの全長とほぼ同等の狙撃砲から続け様に射出される実体弾がSwollenを捉える度に大気が戦慄く。
「マダラ、キリジ。あんたらフォワード。ツートップよ。撤退は確定事項だから入れ込み過ぎんじゃないわよ」
 砲撃でSwollenを磔にしたまま、両隣後方に控える二機へと指示を与えた。特務一課には逆に攻め上がって殲滅してしまう戦略オプションも採れなくは無いのだが、ここはあくまでも任務目標である撤退支援を遂行する。
「二人とも5秒足止めしたら散開。ぶっ放すから」
「オーケーギバちゃん、任せて!」
 応答した斑星・夜(星灯・f31041)が搭乗する機体は灰風号。赤雷号に類似した意匠が垣間見えるジャイアントキャバリアだ。外観の印象に違わず赤雷号と系列を共にする修羅人だが、兵装の性格は逆を行く。近接装備やワイヤーを搭載しているところから攪乱に主体を置いた戦闘傾向が伺える。
「了解、ギバ。テキトーにぶっ飛ばしてテキトーに下がればいいんだろ」
 粗雑でいい加減といった口調でキリジ・グッドウィン(レプリカントの量産型キャバリア・f31149)も役回りを了承した。キリジが御する機体は硬質な黒鉄ほぼ一色で染め上げられている。背面に搭載された左右一対の強力な主機と脚部に懸架された増槽一体型のブースターが特徴的だが、アンダーフレームの脚の形状が左右で異なるという点も他に類が少ない目を惹く所だろう。
「よーし、全員、無事に撤退させるよー! キリジちゃん、がんばろーぜ!」
 斑星の声音は健康そうとは言えない容姿に反して気さくで和やかだ。
「行くぞマダラァ! 暴れてやろうじゃねぇか! 先手はアリシアで掻っ捌く!」
 一方のキリジは見た目通りといった様子で大雑把に荒々しく吼えては機体を急激に加速させる。機体名はこの場限りの仮初で、キリジはGW-4700031を戦場毎に異なる女性名で呼んでいる。
「人喰いキャバリアかぁ、また嫌な相手が出てきたねぇ……さすがにこれは見過ごせないよ」
 赤雷号の制圧射撃が続く最中、アリシアに続いて灰色号もスラスターに光を灯し加速する。前方では度重なる砲撃を受け続けても再生能力を以てなお踏み留まるSwollenの巨大な形貌があった。
「結構グロい色してんな。屠畜場とかあんな感じか?」
 キリジの言う通りSwollenの体色は肉の色そのものだ。何せ外皮が無く筋肉が剥き出しになっているのだから。そして再生能力の根幹となっているのは恐らく喰らった肉なのだろう。つまりSwollenの身体を構成しているのは人間の成れの果て。言わば人間の屠殺場が歩き回っているようなものとも言える。
 その肉色の人喰い巨人が接近する動体に勘付いたらしく、砲火を受けながらも触腕を伸ばし迎撃を試みる。
「触んじゃ、ねえよッ!」
 アリシアが腕を振るう。マニピュレーター自体が格闘兵装となっているランブルビーストが紫電を迸らせ、ひと撫で触腕を引き裂いた。
「おおっと、怖い怖い」
 高速で繰り出された触腕の刺突を、灰風号は可変式シールドのアリアンロッドで受け流す。シールドの表面を火花を散らしながら触腕が滑り抜けて行く。
「デカブツが! 余所見してんじゃねえッ!」
 全ての推進装置より噴射光を炸裂させ超加速するアリシア。Swollenに肉薄すると赤雷号の狙撃砲による支援砲火がぴたりと止んだ。
「これで……ぶっ潰れちまいなァ!!」
 質量に加速を乗せた鉄拳制裁、スカッシュ・フィストカフがSwollenの腹を打ち据えた。鋼の拳が叩き込まれた瞬間、紫の稲光が四方八方に炸裂してのたうつ蛇の如く暴れ回る。単純ながら重く派手な一撃が巨人を揺るがす。必然の結果としてSwollenは反撃を試みるべくアリシアに注意を向けるがそれはキリジの策略の内だった。
「ナイスキリジちゃん」
 側面に飛び込んだ灰風号が機体全体に雷を纏う。それを腕部に集約させると、長大な鞭状に形成しSwollenに打ち付けた。
「逃さないよ?」
 数回引き裂くような打撃を加えた後に巻き付け動きを拘束した。ブリッツ・シュラークの高圧電流がSwollenの筋肉から神経に至るまでを焼き続ける。
「キリジちゃん!」
「まかしとけってな!」
 アリシアがランブルビーストの関節を固定し、灰風号が拘束するSwollenを連続で引き裂く。散り踊る紫電。止まらぬ連斬が肉を削ぎ落として行く。
「随分肥えやがって……こいつは新手のデトックスってヤツだなァ」
 削がれた傷口が雷電で焼かれ組織を破壊する。結果として再生力が鈍らされたらしく、削いだそばから即回復とは行かなくなったようだ。これ見よがしにキリジはアリシアのランブルビーストの腕部に繋がる駆動部を高速回転させ、衝角の要領で腹を抉り込み穴を穿つ。これが後に天城原が放つ一撃の起点となる。
「そろそろギバちゃんに回してもいいかな?」
 5秒の足止めで十分にダメージが蓄積したであろうと判断した斑星は、灰風号にシルバーワイヤーを射出させた。ワイヤーは先のブリッツ・シュラーク同様Swollenに巻きつき腕と胸部を纏めて締め上げた。
「人を喰らう口なんていらないだろ? よいしょっと」
 ウィンチが盛大な稼働音をあげてワイヤーを力強く巻き上げる。
「大人しく寝とけ、よッ!」
更にアリシアの掌底打ちが加わったり、Swollenは田園の土に半身を倒す事態まで追い込まれた。
「うっし、ここまでだな」
「トドメはギバちゃんにお任せ!」
 灰風号が頭部を向けた遙か遠方では、携える長銃に破滅的な力を充填し終える寸前の赤雷号が在った。
 左眼を丸々覆う高感度複合センサーユニットのレンズの中で、標的を見据えた内部機構が精度を盤石なものとする。狙う箇所はキリジのアリシアが穿った穴。マニピュレーターひとつ分の直径だが赤雷号が携える砲があれば問題は無い。これから放つ攻撃を浸透させる起点とさえなれば良い。
「チャージ開始……5カウント」
 莫大なエネルギーを蓄えつつある二十二式複合狙撃砲のロングバレルが電光の迸りを纏う。臨界まで縮退保持した加粒子が遂に解き放たれる。
「さぁ……地獄で悪魔がお待ちかねよ!」
 充填時間を終え、天城原が裁きの判決を降す。満を持してバスターランチャーが咆哮した。青光の奔流が地表を焼き溶かし、空気中の水分と酸素の悉くを消滅させながら突き進む。アリシアと灰風号が緊急離脱したのと同時に万物を消し去る滅亡の光がSwollenの胴を呑み込んだ。灰風号の拘束により防御体制も取れず、アリシアが穿った穴より内部へ直接浸透を許した完全な直撃。再生能力も意味を成さない圧倒的な熱量。やがて数秒に及ぶ照射が終了した後に残されたのは、射線の形に大きく抉れた田園と焦熱の大気に舞い散る残滓の燐光。そしてバスターランチャーの光の中で半身を消失させた人喰い巨人。第三極東都市より来たる特務一課によって、生まれながらに罪を背負ったユミルの子は断罪を与えられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリア・ジェフティー
人を捕食するジャイアントキャバリア…
…なんでしょう、その話を最初に聞いた時は凄く胸騒ぎがしたんですけど
現物を見た今感じてるのは…これは、落胆?
…少し引っ掛かるところはありますが、自己分析はこの辺りにしておきましょう
さあ、あのデカブツを止めにいきますよ

標的は厄介な再生能力持ち
であれば、再生が追いつかない程の火力を叩き込むしかありませんね
超感覚による【第六感】と【操縦】技術を活かして敵の攻撃を回避しつつ懐へ飛び込みます

サイコアクセラレータ起動
擬似【瞬間思考力】を発揮して、敵を撃ち倒す無敵のパワーをイメージしますよ
散弾の子弾1発1発に、敵を消滅させる力を込めて…
…ありったけ、散弾砲を撃ち込みます!



●虚憶
 愛宕連山の山間にある田園地帯に現れた人間喰らいのジャイアントキャバリア。ブリーフィングでその話しを耳にした時、エミリア・ジェフティー(AnotherAnswer・f30193)は並ならぬ胸騒ぎを覚えた。脳の奥底の深淵、或いはテロメアに刻まれた記憶が遺伝子をざわめかせていたのだろうか。
 けれどもいざ現物を目の当たりにすれば、それらは途端に鳴りを収めた。引き換えに得た感覚は落胆。であればあの巨人は望む答えを持ち合わせていない、胸を騒がせた何かと一見すれば類似したものだったのか。
「……自己分析はこの辺にしておきましょう」
 成すべきは眼前の敵の撃破。記憶の淀みの引っ掛かりは消えないが、今はあれを始末する方が先だとエミリアはスロットルレバーを握り込んだ。
 Swollenの背面に生える第三の腕が伸長し、エミリアのセシャートを握撃で粉砕せんと拳を開き掴みかかる。見え透いた攻撃手段に対してエミリアはカウンターの戦術選択を採る。セシャートに水平二連の自動散弾砲であるスローターを構えさせ、トリガーを引かせた。二つの銃口より同時に拡散放出された多数のベアリング弾がSwollenの掌を直撃。大小の穴を開けた。しかし傷口は瞬く間に塞がり修復されてしまい、掴みかかる動作を止めるには至らなかった。
「やはりこうなりますか。なら、再生が追いつかない程の火力を叩き込むしかありませんね」
 その為にはもっと接近するべきか。スラスターを一瞬だけ噴射し、踵の装輪による短距離ローラーダッシュを掛けて腕の攻撃を擦り抜けると、続いて直進した。Swollenの攻撃は途切れない。セシャートに二本の触腕が襲い掛かる。
「攻撃は戦術思想も無く単純ですが、素早い上に一撃が重いですね」
 と言いつつもエミリアは特に焦りも見せず機体に回避運動を取らせる。まるで初めから見えていたとも言わんばかりにセシャートを右へ左へと軽快に滑走させては次々に連撃を繰り出す触腕を掻い潜って行く。
 視界外から剛腕による水平なぎ払いが来た。Swollenの挙動が始まるより僅かに先にセシャートが必要最小限の加速で細かく跳躍し、縄跳びでもしているかのように危なげなく回避してみせた。操縦技術も相まったエミリアの超感覚をセシャートが先読みし、人機が融合した驚異的反応速度を実現している。
「この距離ならどうですか?」
 回避運動を続けながら接近し、遂にSwollenの懐に飛び込んだセシャートがスローターを一射また一射と連続で脚に撃ち込む。だがやはり自己修復が凄まじく、一射目で削り取った肉が二射目の段階では殆ど回復してしまっていた。
「だめですか。サイコアクセラレータ起動」
 コクピットに搭載された、とある特殊装置が作動した事を知らせるメッセージがインターフェース上に表示された。エミリアの感覚と脳の思考速度が急激に研ぎ澄まされる。
 左右から殺気が迸った。意識を飛ばすよりに先にセシャートがそちらの方向へスローターの銃身を向けた。エミリアは操縦桿のトリガーをクリックする瞬間、撃ち出す弾丸にイメージを集約させる。求む想定は無敵の力。撃ち出す弾一発ごとにその想像の皮膜を被せるよう明確なビジョンを思考で構築する。
 スローターより発射された弾丸。遠目から見れば拡散ビームのように見えたそれは、エミリアが想像した通りの無敵の力を一発一発に纏った散弾だった。まともに浴びた触腕は着弾地点が消失したかのように弾け飛んだ。間髪入れず逆方向から迫る触腕にも撃ち込む。こちらも同様に吹き飛び、再生するにも肉体の組織自体が消失してしまった為復元の仕様が無い。
「行けますね。カッコいいところ、お見せしますよ。パワー全開!」
 サイコアクセラレータが増強した思考速度によって瞬時に想像された無敵の弾丸。それがヴィジョンリアライズによって実際に出力される。
 跳躍したセシャートがSwollenの胴や頭部へと立て続けにスローターを発射する。散弾に曝された箇所がそこだけ空間を千切られたかのように血肉を爆ぜさせ、砕けた骨片を飛び散らせる。そうして連射で穿った胴体部分の大穴に機体の腕ごとスローターをめり込ませた。
「ありったけ、撃ち込みます!」
 無敵の力の想像に明確な必殺の決意を乗せて、エミリアは前方へのクイックブースト操作と並行しながらトリガーキーを引いた。より鮮烈な爆光がSwollenの体内で炸裂し、力場でコーティングされたベアリング弾が背面から弾け飛んだ。連射は弾倉が空になるまで続いた。Swollenが低く悍しい唸りをあげながら、胴の大穴より体液を噴出させて背中から地面に倒れ込む。山を轟かせる地鳴りが過ぎ去った後、身を伏すSwollenの腹の上にはスローターを尚も突き付けたままのセシャートの姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレスベルク・メリアグレース
【渡り禽】
少女たちに襲い掛かる巨人——それを薙ぎ払う、殲滅の光

申し訳ありません、彼女たちを食らうのは貴方には上質すぎますので
そう呟くと同時、メリアグレース聖教皇国の当代の教皇が駆る伝説級のサイキックキャバリアが少女たちの前に盾となるよう光臨する
それはつまり、目の前に存在する自分達を庇った存在こそ、メリアグレース聖教の教皇その人という事

よく頑張りましたね、後はわたくし達にお任せください
優しく通信機越しに語り掛けると同時、『爆撃』を司る死の光が万物を食らう巨人を薙ぎ払っていく
そうして、本来あらゆる命を刈り取る死の光が少女たちを守る為に、祈りの体現者によって振るわれるのであった


数宮・多喜
【渡り禽】
いやはや、豪快なお出ましだぁ。
ま、それくらいやってやらないと戦況は好転しなそうか。
アイアイマム、思いっきり蹂躙しとくれや。
アタシはしっかり、取りこぼしを拾わせてもらうからさ!
通常通信と同時にテレパスでも通信網を構築し、overedで遊撃に回るよ。
"英霊"を飛ばして白羽井小隊の面々を『かばう』と同時に、弾幕の制圧射撃。動揺した子の戦意や敵意を頼りに、マルチプルブラスターの『範囲攻撃』やクローの『グラップル』でぶっ潰して回ってやらぁ!
そして最後の仕上げ。
フレスベルクさんとイヴェットさんの圧倒的な戦いぶりからくる高揚を共有し、味方を更に『鼓舞』するよ!
大丈夫、ここは突破できる戦場さ!


イヴェット・アンクタン
【渡り禽】
いきましょう、ギガント・バリスタ……白羽井小隊の皆様に、助太刀を。

両腕の弩砲から援護射撃を行いつつ【彼】……キャバリアにより、増幅させた聞き耳と視力で、情報収集。
隙を見てスティングランスを投擲し、その槍投げにより貫きます。
悪路をも走破する【彼】の脚力で駆けまわり、破壊工作を行い足場を崩す妨害も行いましょうか。
こちらに近づいて来たら、カウンターでランスチャージ。さらに頭部にある弩角から、砲撃による貫通攻撃を至近距離で撃ち込みます。

損傷を修復しようとも、その損傷が大きければ、動きは止まるはず……リミッター解除で出力をあげ、UCにて裂断させていただきましょう。



●レイヴンズ
 人喰いの巨人と猟兵達の戦いは熾烈の一言を極めた。殺しては再生しまた殺しては再生する。Swollenの急速治癒は確かに驚異的であったが猟兵達の壮絶な攻撃がそれを上回る。結果的に本来ならものの数分で餌となる筈だった白羽井小隊の各員もあり得ない粘りを発揮する事となった。しかしながらやはり訓練兵と規格外のオブリビオンマシン相手では末路は見え透いている。意図したものかは定かでは無いが、一瞬の綻びを突いて巨人の三本腕がフェザー01のオブシディアンMk4に襲い掛かった。
「くっ、回避が!」
 避けられないならば防御しようにも、二倍以上の体積を待つ巨躯からの攻撃を盾一枚で防ぎ切れるのかは不穏なところであった。三方向から迫る触腕と剛腕に貫通されるか殴打されるかの寸前で、一条の光が愛宕連山の田園をなぞり駆け抜けた。
 光がなぞった跡に膨れ上がる火炎。炎の壁となった熱波がフェザー01に迫っていた三本の腕を焼き千切った。
「申し訳ありません、彼女たちを食らうのは貴方には上質すぎますので」
 神職者の淑やかな声音。白羽井小隊の前方に、業火の裁きを下した神騎が降臨する。メリアグレース聖教皇国の当代の教皇であるフレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)が座するサイキックキャバリア、ノインツェーン。白羽井学園の少女達のためなら我が身を盾にするのも厭わんとばかりに人喰い巨人の前に立ち塞がった。
「いやはや、豪快なお出ましだぁ。ま、それくらいやってやらないと戦況は好転しなそうか」
 赤と黒を基調としたキャバリアのoveredが、神厳纏うノインツェーンを眩しそうに見遣る。数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が搭乗者を務めるこちらの機体は、直線が多い全体のフォルムから堅実な印象を受ける。踵部分のダッシュローラーによる地上滑走性能、デュアルクローと重ブラスターライフルで成る兵装構成からして、先述の印象は益々補強されているといったところだろうか。しかし一方で今は触れる由もない謎な内実もあるのだが。
「いきましょう、ギガント・バリスタ……白羽井小隊の皆様に、助太刀を」
 更にもう一機のキャバリアが並ぶ。イヴェット・アンクタン(ロックオン・サバイバー・f24643)のジャイアントキャバリアであるギガント・バリスタが、まさしく名は体を示す両腕の弩砲を油断なく即時射撃姿勢のままSwollenへと向けている。ジャイアントキャバリアらしい有機的なフォルムにバフォメットの意匠が垣間見える頭部が独特の異形さを醸し出す。
「危ないところでしたわ。救援に感謝いたします。三人がたは?」
「よく頑張りましたね、後はわたくし達にお任せください」
 フェザー01の問いに対し聖教の教皇は至極柔らかな口振りで答えを返した。メリアグレースの守護がある限り、死の恐怖をひた隠して戦い続けた若過ぎる防人達が怯える必要はもう無い。おぞましい人喰らいの罪科は最早死を以てのみ贖罪される。
「大丈夫、ここは突破できる戦場さ!」
 励ましの片手間に多喜はサイキッカーらしくテレパスでも意思疎通が可能な状態を構築する。聴覚に直接言葉を伝えているのだがあまりにも違和感がなさ過ぎて白羽井小隊の各員は気付いていないようだ。何にしてもこれで感覚レベルでタイムラグが生じない情報伝達が可能となった。
「目標がまた再活動し始めました……」
 イヴェットは彼と呼ぶギガント・バリスタの聴覚と視覚を介して人喰い巨人の様子をつぶさに観察していた。肉体を再生させノインツェーンの神罰から立ち直りつつある様子を認めると、有無を言わさず両腕の弩砲を交互に連射しながら前へと飛び出していった。
「では、死の裁きを。イヴェットさん、多喜さん、よろしくお願いします」
 ノインツェーンが神託を謳う祈りの姿勢を取った。機体に光の帯が巻き付くように集い、七色の粒子が足元より沸き立ち周囲を舞う。なんらかの詠唱状態に入ったようだ。
「アイアイマム、思いっきり蹂躙しとくれや。アタシらはしっかり、前座をやらせてもらうからさ!」
 サイオニッククローとマルチプルブラスターを構えたoveredがローラーダッシュで田園を走る。
「おっと、そうだった。一応これ置いとくよ!」
 overedが巨人への進路を保ったまま機体を反転させ、腕を薙ぐ。すると複数体の虚な霊体が白羽井小隊の面々の壁となるように出現した。もし流れ弾が飛んできてもこの英霊が守護してくれると伝えると再度機体を反転させ加速を強める。
「腕が伸びてから戻る間、大きな隙が出来ますね」
 ギガント・バリスタを叩き伏せんとするSwollenの剛腕が頭上より襲い来る。多喜の超感覚探知のナビゲートも受けてイヴェットは彼に回避運動を促す。剛健な脚力が生み出す目を見張るばかりの走破性で田園を駆け回り易々と躱して見せた。先程から伺っていた隙に反撃を挟み込む。Swollenの足元目掛けてスティングランスを投擲し足場を崩す妨害工作を試みる。弩砲の速射も重ねて撃ち込めば、Swollenの姿勢が大きく傾いた。
「多喜さん、接近を」
「さっすが! 任された!」
 絶好の攻撃チャンスに田園を爆走するoveredがマルチプルブラスターの駄目押しを加えた。射出した高電圧のエネルギー弾が足元を崩されたSwollenに次々に殺到する。三本腕を全て使用し立ち上がろうとしていたため、満足に防御体制も取れず直撃打を受け続けた。overedは制圧射撃を継続したまま急接近しサイオニッククローで巨人を引き裂きにかかる。
「ガラ空きだっての!」
 最大加速を維持したまま擦れ違い、後方へと抜ける。Swollenの肉体に突き立てられた二連の刃が肉と骨を強引に引きちぎった。単純だからこそ手痛い損傷は再生能力を以てしても看過出来るものではなかったらしく、重要な動脈でも切ったのか夥しい量の赤黒い液体が噴き出た。
「沈めましょう……ギガント・バリスタ」
 離脱したoveredの後に続いてギガント・バリスタが跳躍で接近し、運動エネルギーを維持した状態でランスチャージを繰り出す。悶えるSwollenに槍を突き刺したまま頭部にある弩角から連続砲撃。至近距離で浴びせられれば如何に副兵装と言えど威力は強烈だ。
「損傷を修復しようとも、その損傷が大きければ、動きは止まるはず……」
 イヴェットがギガント・バリスタの出力制限を切った。動力炉かはたまた声帯か、悪魔のような唸りが響き片目に強い光が走った。より大きな痛打を与える為に荒槍斬が叩き込まれる。ギガント・バリスタの限界を超えた渾身の槍刃縦斬りがSwollenの肩口から胴体までに太い裂け目を刻み込み、先のoveredの攻撃時に勝るとも劣らずな大量出血を強いた。
「いける! 効いてるよ! あと少しだ!」
 仕上げにと深夜の闇を晴らすばかりに力強く明朗な多喜の声がその場に居合わせた戦士達を例外無く鼓舞した。そして昂る戦意は意思の力となり、祈り謳うフレスベルクに破邪滅殺の最後の力を託した。
「殲滅を司りし八の尖光を迸らせる。これを弑し楔に繋げるは生命賛歌の裏返しとみなす。故に、究極の礼賛者を起動させよう」
 淑やかな詩歌がノインツェーンに満ちた神光を、生命根絶を司る絶滅の光へと転換した。機体の神々しさからは想像し難い恐るべき死の光が、無数の球体となってSwollenへと降り注ぐ。無慈悲な裁きが爆ぜては天をも貫く光の御柱となって立ち昇る。イヴェットと多喜によって多量に失血し再生能力を著しく低下させたところに重ねられた教皇直々の死刑執行に、遂に人喰い巨人は断末魔の咆哮をあげながら消滅という罪の代価を支払わされる事となったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『敵警戒線を突破せよ』

POW   :    対空砲火は覚悟の上、空中機動力と推進力を生かして強引に上空から突破する。

SPD   :    敵のレーダー施設や偵察型キャバリアを攻撃し、敵を混乱させてから突破する。

WIZ   :    隠密行動により、地雷原を巧妙に迂回して敵警戒線内へ浸透する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●不死身の巨人撃破
 愛宕連山の田園に出現した人喰い巨人。猟兵達に殺されては再生しまた殺されてを幾度も繰り返した末、最期は再生を司る体組織同士の共喰いが始まり自身を自身に貪られ骨格も残さず消滅した。人間を喰らい蓄えていた治癒のリソースを使い果たした上で更にダメージを重積された結果によるものだろう。田園の風景が一変するほどの壮絶な火力の押し付けは猟兵達の勝利で終息した。

●任務内容更新
 猟兵達が戦線を支え続けた事で愛宕連山補給基地の撤退は滞りなく進んだ。既に通信可能圏外となって久しいが、第二防衛線の司令部を目指して東進しているらしい。
 残された白羽井小隊には新たな指令が下されている。愛宕連山自動車道を東進し、臨時の拠点が置かれている藤宮市の駅前駐屯地まで撤退。補給と整備を受けた後に第二防衛線司令部に向かうようにとの内容だった。
 猟兵達にも白羽井小隊を介して文言を丁寧に変えただけの中身を同じくした要請が出されている。内実は撤退とは名ばかりで殿の依頼だ。仮に追撃して来る敵勢力が出現すれば迎撃を強いられるだろう。愛宕基地を撤退させる時間稼ぎはまだ続いているのだ。なお猟兵達への要請には白羽井小隊の護衛は含まれていない。ひょっとしたら初めから生きて帰れるとは思われていなかったのかも知れない。

●愛宕連山自動車道
 隣の県にある藤宮市を目指すには要請内容にもあった通り愛宕連山自動車道を進むのが最も早い。
 愛宕連山自動車道とは山間の狭間を縫うようにして開かれた高速道路だ。片側複数車線で横幅が広くキャバリアの移動にもなんら支障を来さない。必要ならば滑走路にもなるという。しかも有事真只中の現在は民間車両は一切通行していないため登りも降りも悠々使い放題だ。勿論道路交通法に従う必要は無いし料金所を無視して進む事も認められている。目的地までの道のりも標識の案内があるため迷う事は考え難い。もし標識が破壊されていたとしても白羽井小隊の道案内に従えば確実に辿り着ける。
 戦闘による被害は殆ど受けておらず路面状態は良好。今は夜明け前の最も暗い時間帯だが、照明が灯っているので視界も確保されている。ただし自動車道から外れればそこは人工的な灯が一切無い漆黒の山林。山中を強行突破すれば行軍速度は著しく低下するし、暗闇から飛び出して来るのは野生動物だけとも限らないだろう。

●道中遭遇しうる事態
 白羽井小隊からの情報によれば前線が瓦解してからもうかなり久しく、相当数の敵勢力が内地浸透を果たしてしまっているという。ともなれば撤退の旅路の途中で偶然出会うという場面もあるかも知れないし無いかも知れない。真相は特異点体質の猟兵各個人の行動に委ねられるところだろう。
 遭遇が予想される敵の戦力については、先に交戦したSwollenのような系統のジャイアントキャバリアが主流となる。流石にあれほどの戦闘能力を持つ個体が再度現れるとは考え難いが、機体構造の大部分が生体素材で人間を積極的に捕食しようとする特性は同様だ。形状は人型であったり昆虫型や動物型であったりと統一性が無いという。いずれも大多数の猟兵達にとって片手間に倒せる程度の所謂雑魚でオブリビオンマシンですら無い。
 とは言えその敵勢力も必ず遭遇するとは限らない。飛び出してきたタヌキやキツネとの出会いが精々で、何事も無く藤宮市までの旅路を終えられるという展開もあり得る。寡黙に道を進むだけでも要望の内容は履行される。
 そして道中には先に後退した日乃和軍が残していった補給コンテナや乗り捨てられたキャバリア等が散在している。漁れば弾薬や武装の調達は可能だろうし推進剤なども補給できるだろう。
 具体的な作戦目標は愛宕自動車道を進む事のみ。何が起こるか何も起こらないかは先述の通り猟兵の行動に委ねられている。

●撤退開始
「猟兵の皆様方、救援とご厚意を賜り心からの感謝を申し上げますわ。もし駆け付けてくださらなかったら、わたくしたち全員志し半ばで倒れていたに違いありません。本当に、ありがとうございま……した」
 最後の言葉には涙を飲んで堪える様子が垣間見えた。整然と列を正した白羽井小隊の残存兵を背後に並べ、フェザー01のコールサインで呼ばれる小隊長が猟兵達に最敬礼した。隷下の隊員達も動作を同じくして腰を深く折る。本来は人喰いキャバリアの餌となる未来が確約されていた少女達は、不死の巨人を無理矢理に死に至らしめ、田園地帯の全てを真っ黒に焼き尽くした猟兵達の力によって異なる分岐路を進んだ。戦いの舞台はまるで流星群が降ってきたのではと考えてしまうほどに地形状況が変貌し、大小様々なクレーターがいくつも出来上がっていた。
「わたくしたち白羽井小隊は、これより臨時駐屯地が置かれている藤宮市を目指して愛宕連山自動車道を東に進みますわ。県を跨ぐことになりますので、かなりの時間を要しますわね」
 フェザー01が殲禍炎剣が無ければひとっ飛びなのにと付け加えた。愛宕連山一帯は平均標高が高く、殲禍炎剣の照射警戒域までの天井が低い。ブーストを使ったジャンプは厳禁というほどでは無いが、低速飛行でないなら山を越えて真っ直ぐ進むというのは難しいようだ。
「猟兵の皆様方にも藤宮市に向かっていただきたいとの要請がありましたけれど、既に最前線のあちこちが全滅して内地に敵の浸透を許している状態ですわ。どれほどの量かは分かりかねますが、ここで迎え撃った分だけでも相当な数でしたの。道中はくれぐれもお気をつけてくださいまし。それでは」
 正直なところ白羽井小隊の隊長はSwollenを撃破した猟兵達に万が一が起こり得るとは考えていなかった。最後に軍人然とした敬礼を行うと、小隊員に向き直り総員搭乗せよとの命令を張り上げた声で下す。慌ただしい足音の後、駐機状態で膝を着いていた白いオブシディアンMk4が次々に起動音と共に立ち上がり始めた。
「白羽井小隊移動始め! 目標地点は藤宮市駅前駐屯地! 愛宕自動車道を進みますわよ! 警戒を厳に! 猟兵の方々にお救いしてもらった命、無碍に落としたら承知いたしませんわよ!」
 作戦に参加していたとある猟兵達の手厚い待遇により英気を取り戻していた白羽井小隊の身体と機体。だが死戦を抜けた少女の身に重くのし掛かる疲労が完全に癒えた訳ではない。苛烈な戦いを繰り広げた猟兵達も同じだろうか。今の現地時刻は深夜を越えて闇が最も深みを強める夜明け前。まだまだ当面深い眠りなど訪れる由もなく、黒い雲から顔を覗かせる瑠璃色の月が猟兵達を嘲笑う。愛宕基地の撤退支援はまだ続く。鋼の戦列が、山間に沿って伸びる自動車道を進む。任務は第二段階へと移行した。
シル・ウィンディア
お姉さんたちを無事に送り届けないとね
その為に、まだまだ頑張らないとっ!

飛んでいけたらいいんだけど、あれ(殲禍炎剣)があるからなぁ…
地道に行軍しますか

索敵を行いつつ、白羽井小隊より先行して進むね
道路の異常や周辺地域の確認
そして、不意打てそうな場所には最大限の警戒を払って移動だね

道が長いなら、シルフィード・チェイサーでシルフィードを呼んで、先行偵察だね

シルフィードの見た情報や手に入れた情報は
白羽井小隊やほかの猟兵さん達と情報共有だね


敵機が出てきたら、ビームセイバーで対処

遠距離に敵がいて、かつ単体でこちらに気づいてないなら
ランチャーの狙撃モードで撃ち抜くっ!

障害はできるだけ取り除いていかないとね



●先行する閃光
 日乃和側の大本営から送られた猟兵宛の要請には、白羽井小隊に関する扱いについては触れられていなかった。しかし愛宕基地の防衛に就いていた彼女らは愛宕基地の管轄下にある。つまり撤退を支援する対象の一部として認識したとしても拡大解釈とは言えないだろう。
「お姉さんたちを無事に送り届けないとね」
 シルが操縦するブルー・リーゼMk-Ⅱの頭部が横を向く。後方を進む白いオブシディアンMk4の戦列をセンサーカメラが捉えた。先刻の戦いも先陣を切って立ち回ったシルだが、まだまだ仕事は終わらない。頑張らなければと気合を新たにする。
 ブルー・リーゼMk-Ⅱの頭部を前方に向ける。コクピット内のメインモニターには山間に沿って緩やかな曲線を描く自動車道と、月光を受けてもなお真っ黒な広葉樹林の茂る山々が映像情報として出力された。見ていれば思わず溜息が漏れそうになるほどの標高を誇る連山に、これが無ければとシルは微かに肩を落とした。
「飛んでいけたらいいんだけど、あれがあるからなぁ……」
 空中戦に高い適性を持つブルー・リーゼMk-Ⅱなら本来一越え出来る山林なのだが、空で目を光らせる殲禍炎剣が邪魔をしている。結果として今のように地道に行軍を強いられているのだが、シルにとってもブルー・リーゼMk-Ⅱにとってもあまり面白い状況とは言えないかも知れない。
 愛宕連山自動車道はひたすらに長い。照明は機能しているものの、左右を暗い山に挟まれているので闇に取り残されたかのような錯覚を感じる。ブルー・リーゼMk-Ⅱはアスファルトに歩行音を響かせながらブラースク改を油断無く構え、いつ闇から飛び出して来るとも分からない敵を警戒する。今のところ気配は無く、自動車道は不気味なまでに夜の静寂を保っていた。やがて遠方が山に隠れて定かにならない大きなカーブへと差し掛かる。
「……不意打ちにはぴったりの場所だよねぇ」
 とてつもなく嫌な予感がする。
「風の精霊よ……ちょっと見てきて!」
 シルはブルー・リーゼMk-Ⅱの側近にシルフィードを召喚し、先行きの見通せないカーブの向こうへの先行偵察を命ずる。精霊はすぐさま命令を実行に移しカーブを越えた山影へと飛んで行った。シルフィードが視認した情報はリアルタイムでブルー・リーゼMk-Ⅱへと送られている。
「ほらやっぱり」
 カーブの先では人間に蟷螂を合体させたかのような風貌のキャバリアが日乃和の機体の残骸を漁っていた。数はひとつのみ。こちらには気付いていない。先手必勝するならば絶好の機会と言える。
「データリンクで共有っと。先に行ってやっつけてくるね」
 障害など早急に取り除くに越した事は無い。シルはブルー・リーゼMk-Ⅱを跳躍させる。スラスターを使用せず、アンダーフレームの関節駆動のみの機動でカーブの向こうにいる敵機を射線に捉えるべく移動を開始する。時間にして数秒とも掛けない内に蟷螂型のキャバリアをロックオン可能な位置取りまで到達した。
「きもちわる……」
 照明に照らされた標的を改めて近場で見たシルは反射的にそんな感想を抱いた。分類上はジャイアントキャバリアだと理解はしているのだが、外観はクリーチャーそのものだ。さっさと始末してしまおうとブラースク改のモードを狙撃に合わせトリガーを引いた。青白い光線が蟷螂型のキャバリアの頭部を撃ち抜く。目標は途端に挙動を停止したかと思えば、横倒しに転がった。
「こちらブルー・リーゼ、進路クリア」
 と言い終えた瞬間、すぐ横の山の生茂る木々の影から5メートルほどの影が飛び出してきた。シルは殆ど本能だけでブルー・リーゼMk-Ⅱにブラースク改を投棄させエトワールを瞬間抜刀し下から上へと切り上げた。両断される影。正体は先程撃ち抜いたキャバリアと同じ巨大蟷螂だった。
「じゃなかった!」
 もう居ないよねとエトワールを周囲の闇に突き付けながら警戒態勢を維持する。夜明け前の愛宕連山は暗い静寂を保っていた。
「今度こそクリア。あの気持ち悪いの、本当に急に飛び出して来るから気を付けて!」
 やがて足早に駆け付けつつある白いオブシディアンMk4達の機影が見えた。ブルー・リーゼMk-Ⅱは足元に転がる蟷螂型キャバリアを蹴飛ばし路肩に寄せた。愛宕連山の闇にどれほどの人喰いキャバリアが潜んでいるかは分からない。シルは先駆者としてその一端を駆除しつつ、愛宕連山自動車道を再び東へと進み続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クネウス・ウィギンシティ
※アドリブ&絡み歓迎
「捨てがまり、ですか」

【WIZ】

●撤退戦
「お先に失礼します」
機体に搭乗したまま小隊から離れ自動車道を隠密行動にて先行、先に脅威を排除する狙いです。

「光学迷彩を展開」
UCで機体を透明にし、『サーチドローン』を射出。遠隔【操縦】し、小隊が接敵する可能性がある敵機の位置【情報収集】。

「間引いておきますか」
発見次第、山中に突入。敵の目をこちらに誘導しつつ機体カメラ狙い(【スナイパー】)で短期決戦を仕掛け、仕留め次第自動車道へ戻ります。

「これでは使い難いですね」
道中のコンテナや機体から再利用出来るものは剥ぎ取り、ペイント弾で目印を作り道中に投棄。
「1人でも多く帰れると良いですが」



●不可視の狙撃手
 「捨てがまり、ですか」
 先を行くオブシディアンMk4の隊列を見たクネウスがアルゲスのコクピット内で静かに呟いた。
 小部隊をその場に留まらせ、追ってくる敵軍の侵攻を遅滞させて本隊を逃す戦術。残された小部隊はほぼ死が確約された捨て駒となる。愛宕基地の意図がどうであったにしろ、白羽井学園の訓練兵達を蜥蜴の尻尾切りに任命した結果は変わらない。猟兵宛の要請内容で白羽井小隊に触れられていなかった点からしても、少なくとも彼女らの生存を重視していたとは解釈し難い。直接問うた訳では無いが、当の白羽井小隊には捨て駒にされかけたという認識は無いらしく、格式ある者の義務といった様子でごく自然に受け入れていた。
 けれどクネウスは知っている。誇りに殉じようとした若い訓練兵達が差し迫った死に恐怖心をひた隠していた事を。
「お先に失礼します」
 重装甲を張り付けたアルゲスの足がアスファルトで舗装された自動車道を駆け出す。前を進む白羽井小隊を追い抜きもっと先へ、小隊をみるみる後ろに置き去りにする。隊列から離れると周囲は耳が痛くなるほどの静寂ばかりが張り詰めていた。走り進む自機が路面を蹴って着地する音以外には、虫の声も蛙の合唱も聞こえない。路肩に立ち並ぶ街灯が煌々と道筋を照らしているだけだ。
 やがてアルゲスは進路上への奥へと姿を消した。
「光学迷彩を展開」
 言葉通り姿を消したのだ。ユーベルコード、INVISIBLE-GHOSTによってアルゲスは光学迷彩の力場を全身と武装に張り巡らせた。無色透明となった状態で自動哨戒型飛行ドローンのD6IDを射出する。偵察機は周囲を俯瞰し動体の探索を開始した。程なくして巨大な蟷螂の姿を複数探知。ただの育ちすぎた昆虫なはずが無い。
「間引いておきますか」
 アルゲスは路肩を越えて道から外れ、漆黒の山林へと身を投じた。同時にD6IDの光学迷彩を解除。敢えて巨大蟷螂の眼前に躍り出させ注意を引く。狙い通り食い付いた目標を引き連れてD6IDが帰還してきた。
「攻撃開始」
 闇に溶け込んだアルゲスがイーグルレイより実体弾を発射。闇ばかりの空間に一瞬マズルフラッシュが走ったかと思えば巨大蟷螂の一匹が身体に大穴を開けられ吹き飛んだ。続く二射目も素早い。相手が反応するよりも先にクネウスは操縦桿のトリガーキーをクリックした。炸薬が爆ぜてイーグルレイのフラッシュハイダーが火を吹く。弾丸が残る巨大蟷螂の脳天を消し飛ばした。
「排除完了」
 光学迷彩を解除したアルゲスが自動車道へと戻ってきた。周囲を見渡せば来た道も進む道も冷たいまでの静寂さを保っている。動く物体は視認可能範囲内ではアルゲス以外存在せず、あるものと言えば先に狙撃で始末した巨大蟷螂の骸と半壊状態で放置されていた日乃和軍のキャバリアだけだった。その乗り捨てられたキャバリアにアルゲスは近付きライトブルーの発光を放つモノアイでスキャンを開始した。アサルトライフルと予備弾倉がまだ手付かずで残されている。
「これでは使い難いですね。分離させておきますか」
 擱座したキャバリアから保持していたままのアサルトライフルを剥ぎ取り予備弾倉もホルダーから取り外して道端に投棄する。加えて蛍光色のペイント弾を撃ち込んでおいた。これで後続の白羽井小隊も発見し易いだろう。
「1人でも多く帰れると良いですが」
 白いオブシディアンMk4達がやがて現れるであろう方向へとアルゲスがオーバーフレームを捻った。一寸隣は闇の愛宕連山自動車道。いつまた人喰いキャバリアが飛び出して来るかも分からない、死がありふれた世界。目的地に辿り着くまで何人が喰われるかまだ定かでは無いが、少なくとも襲い掛かるはずだった脅威の一端はつい先程クネウスに処理された。鋼鉄のエンジニアは多くを語らず粛々と任務を遂行する。アルゲスは東の方角へと機体を向けると、重厚な歩行音を響かせながら更に先へと進み続ける。愛宕連山の夜明け前は特に暗い。クネウスは少女達を生き残らせる途を見出すべく、黙して深淵を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『まったく…学生兵を殿とは…ふざけやがって……とりあえずお嬢ちゃんたちは全員救うとしますか!』

【戦闘知識】で戦場を見極めながら、自身の機体【特空機1型スターインパルス】をかり、相手の対空攻撃を【見切り】と【オーラ防御】で防ぎつつ先行するぜ
敵が潜みそうな場所に【制圧射撃】を加えつつ、遭遇した敵は【なぎ払い】と【鎧砕き】で切り捨て、UC【炎龍一閃】で殲滅するぜ



●流浪人
「まったく、学生兵を殿とは……」
 後方を往く白羽井小隊の列を横目で見たガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)はふざけた指揮を下す連中もいたものだと呆れ半分憤慨していた。
 殲禍炎剣の照射警戒域に達しない程度の高度から戦域を俯瞰視点で見ている特空機1型のスターインパルス。ガイはコクピット内のモニター型インターフェースに表示された戦闘領域の各種情報を確認する。藤宮市を目指して愛宕基地前の田園地帯を出立してからというもの、縦長に伸びた戦列は度々人喰いキャバリアの襲撃を受け続けていた。怪物紛いどもにゲリラ戦などという戦術思考が本当にあるのかは定かでは無いが、少なくとも散発的に不意打ちが発生している事実に違いない。
「とりあえずお嬢ちゃんたちは全員救うとしますか!」
 背面のブースターを噴射し急速降下して自動車道へと躍り出ようとした瞬間、照明一つない真っ暗な山林の間から5メートルほどの巨大な影が飛び出してきた。推進装置の音に気付いた蟷螂型ジャイアントキャバリアがスターインパルスを両腕の大鎌で切り裂かんと肉薄する。
「見切ってるんだよ!」
 スターインパルスが片刃剣の特式機甲剣『シラヌイ』を抜き放ち、すれ違い様に一閃。特殊超合金製の刃が闇に鋭敏に煌く。通り過ぎると大蟷螂は真っ二つに両断されていた。荒々しいブースターの噴射音に誘われたのか、樹木に取り付いていた大蟷螂が飛び付こうともするがスターインパルスはフィールドを展開して跳ね飛ばす。
「虫っころがぞろぞろと! そこかよ!」
 暗闇の山林に蠢く気配を感じたガイは、スターインパルスをその方向へと加速させ試製電磁機関砲1型の照準を向けた。フルオートで速射されるパルスマシンガン。空から降る銃弾の嵐に見舞われた大蟷螂の一群が立ち所に蜂の巣にされて行く。
「さて、一手……仕掛けるか!!」
 スターインパルスの攻撃はまだ終わらない。集中射撃を見舞った地点へ機体を突撃させ残存する敵機を殲滅する。シラヌイの刀身に緋色に揺らめく炎が宿る。着地と同時に放たれた炎龍一閃。数体の大蟷螂が木々ごと巻き込まれて炎の刃に切断され、立ち所に焼却処分される。虫型なので尚更よく燃えたらしい。後に残ったのは灰と煤だけだった。
「よし! 次だ!」
 スターインパルスは背面のブースターを起動すると、次なる標的を探して跳躍する。少女達の道を切り開かんと先んじて前へと進む。シラヌイの刀身はなおも冴え渡る光を湛えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

防人・拓也
白羽井小隊に追従して周囲を警戒する。
「やれやれ。先程の戦い、俺達の援護があったとはいえ、よく持ち堪えたな。経験や鍛錬を積んで行けば、きっと良いパイロットになれるぞ」
と小隊の皆を無線で褒める。
少女達の反応後に
「もし教官として君達を指導する機会があれば、俺が考え得る強くなるための3つの掟を教えてやりたいが…ま、今は無事に生き延びる事を考えよう」
と言う。
道中では暗視装置で山林の動きを警戒しながら進む。
「動物達が騒ぎ出したら、動きを止めてその方向を警戒しろ。近くに敵が潜んでいる可能性がある」
と小隊に伝える。
敵を見つけたら、ビームライフルで攻撃。近距離ではイーグルクローで蹴って斬る。
アドリブ・連携可。



●防人が進む
 愛宕連山自動車道を東進する白羽井小隊。白いオブシディアンMk4で統一された機体群に青い高機動型キャバリアが並走している。拓也が搭乗するCX-78-RC リーパーキャバリアだ。
「やれやれ。先程の戦い、俺達の援護があったとはいえ、よく持ち堪えたな。経験や鍛錬を積んで行けば、きっと良いパイロットになれるぞ」
「勿体ないお言葉ですわ。持ち堪えたと言ってもただ運が良かっただけですもの。それこそ、猟兵の方々がいらっしゃらなかったら今頃あの巨人の夕食になっていたでしょうに」
 白羽井小隊の隊長機が買い被りだと謙遜して頭部を振った。
「運も実力の内だ。あの強敵を相手にして無策に逃げ出さず、かといって無謀に挑まなかった冷静さは誇って良い。もし教官として君達を指導する機会があれば、俺が考え得る強くなるための3つの掟を教えてやりたいが……」
「猟兵の方からご指導を賜れるなら光栄ですわね。教官殿はあんな怪物との戦い方なんて教えてくださらなかったんですもの。して、掟とはなんですの?」
 続く言葉を言い掛けた拓也が、前に倒していた操縦桿を後に引いて機体を停止させる。腕と手のジェスチャーで待てとの合図を送り、白羽井小隊の全機が一斉に行軍を停止しアサルトライフルを正面に向けた。暫しの沈黙。張り詰めた空気に通信機のわずかなノイズだけが流れる。リーパーの暗視装置が睨みを利かせる前方数十メートル先の路肩で草木が揺れ動いた。敵の気配を察知したフェザー01がトリガーキーに指を乗せた。
「狐? ふう、脅かさないでくださいまし」
 路肩より家族と思わしき狐の一団が現れ、道路を横切ってゆく。緊張が解けて安堵した途端に拓也の怒号が飛んだ。
「銃を下ろすな!」
 肩を跳ねさせてフェザー01はオブシディアンMk4にアサルトライフルを射撃姿勢で構え直させた。直後に草木が大きく騒ぎ出し始め、狐が現れた路肩から四足獣型のジャイアントキャバリアが道路上へと飛び込んできた。
「なっ!?」
「全機撃て!」
 拓也のリーパーキャバリアが放ったビームライフルを皮切りとして白羽井小隊が一斉砲火を加える。反応する間も無く四足獣型キャバリアは挽肉と化してアスファルトの地面に身を落とした。
「息の根は確実に止める!」
 リーパーキャバリアは四足獣型キャバリアに飛び掛かると、まだ原型を留めていた頭部へイーグルクローを突き立てた。完全に機能停止した事を確認すると、骸を踏み付けながら白羽井小隊へと向き直った。
「動物達が騒ぎ出したら、動きを止めてその方向を警戒しろ。近くに敵が潜んでいる可能性がある。環境の変化にも気を配れ」
「了解ですわ」
「よし、進むぞ」
 白羽井小隊の面々は目の前での実践に冷や汗をかきながらも気を改めて藤宮市を目指し東へと進む。こうしてまたひとつ拓也によって生き残る術を伝授されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
行くでござるよーデュフフフ!(小隊長機の肩に乗りながら)

帰るついでにパワーレベリングですぞ!正規兵なんか目じゃないぐらいになりなさる
という訳で各機近寄ってくだされ!と呼び寄せた所で徐に機体と人員を【パンジャン】で爆破!
なんということでしょう機体は新品同然ピッカピカ!人も元気モリモリ!

道中雑談しつつ途中放棄された機体を見つけたら爆破修復!乗り換えでも機体が無い子が乗っても良いですぞ
拙者はいらね

敵を見つけたら基本は二人一組で叩き戦闘が終わったらまた回復
いくらでも戦っていいですぞ!やられそうでも拙者が代わりに撃ち殺すので安心!

何大人しいって?今は絆を深めるパートだから…
それに…お楽しみは次でござるヨ



●パンジャンおじさん
 歩行するキャバリアの肩の乗り心地とは如何なものだろうか。上下に激しく揺れる上に硬質で、快適とは真逆の位置にある事は想像に難くない。だが白羽井小隊の隊長機の肩に乗っているエドゥアルトは非常に機嫌が良さそうだ。
「行くでござるよーデュフフフ!」
 かれこれ数時間は揺さぶられているというのに疲労も痛みも感じている様子がまるで見えない。センサーカメラ越しに不穏な笑顔を視認したフェザー01は薄寒い気配を覚えていた。
「しっかしただ歩ってるのも暇でござるな」
 人喰いキャバリアが闊歩している山間部を進んでいるはずのに、エドゥアルトには全く緊張感が無い。それが良しか悪しかは個人の価値観に委ねられるところだろう。
「ああそうだ! 帰るついでにパワーレベリングですぞ! 正規兵なんか目じゃないぐらいになりなさる!」
「はい? パワー……なんですの?」
 聴き慣れない言葉に首を傾げるフェザー01へ、エドゥアルトは小隊に密集陣形を取らせるよう促した。なんのつもりかは分からないが、またスーパーロボットでも呼び出すのだろうかとフェザー01はやや嫌そうに従った。
「カモーン! ブレイブマイン・パンジャンドラム!」
「え? えぇぇぇえ!?」
 密集陣形を取った白羽井小隊をパンジャンドラムが取り囲んだ。あの妖怪珍兵器のパンジャンドラムである。白羽井小隊の隊長を含めた一部隊員もその存在と名前は知っていたようだ。
「ぱ……パンジャ……各機迎撃!」
「大丈夫だから! これはただのパンジャンだから! マジで回復するんでござるよマジで!」
「ただのパンジャンドラムで回復するってなんですの!?」
 超至近距離に出現したので結局回避も迎撃も間に合わずパンジャンドラムに激突され爆発四散、という事態にはならなかった。
「……なんで回復していますの」
「だから言ったじゃない」
 英国狂気のメカニズムによりオブシディアンMk4の損傷が見る見る癒えてゆく。ついでにパイロットにも効果を及ぼすらしく危険な薬を決めたかのように身体が軽くなった。
「一応感謝申し上げますけれど、こういう事は先におっしゃってくださらないと……」
「おおっとここでエドゥアルト選手が不法投棄キャバリアを発見! そこにパンジャンをシュゥゥ! 超! エキサイティン!」
 路肩で膝を着いていた日乃和軍のキャバリアを発見したエドゥアルトが再びパンジャンドラムを召喚して衝突させ、先の白羽井小隊の機体のように爆発修復した。
「さあさあ乗り換えでも武器強奪でもお好きにするがよいですぞ」
「ご自分で乗りませんの?」
「拙者はいらね」
 フェザー01がつまりまだ当分自機を指定座席にするつもりなのかと言い掛けたが、やれやれと肩を落として修復された機体からグレネードランチャーを装着したアサルトライフルを失敬した。
「お嬢様がた、後ろから敵が来ますぞ! 隣の人とペアを組んで! いなければおじさんがなってあげますぞ!」
「間に合っておりますわ」
 ふざけてはいるがエドゥアルトのオペレートは正確だった。追い付いてきたらしい敵の一団が現れたが十字砲火で難なく駆除。多少の損耗は生じたがパンジャンヒールで帳消しにされた。
「今回はスーパーロボットは使わないのですね」
「んん? また使って欲しいの?」
「いえそうではなく。先程より随分とお行儀がよろしいと思いまして」
「そりゃあね、今は絆を深めるパートだから……」
 エドゥアルトから形容し難い強烈な笑顔を返されたフェザー01の表情が引きつる。
「それに、お楽しみは次でござるヨ」
「はい?」
 不意に浮かんだ疑問符に対してエドゥアルトはもう何も答えなかった。黒い瞳は山間の向こう、藤宮市の方角を見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
さて、ヤバそうなのは迎撃できたが…次は撤退戦か
「ちゃんとお姉さん達を送り届けないとね☆」
おう、イロイロな歓待を受けるためにもな
「だねっ!」

UC起動

【属性攻撃・迷彩】
竜群に光水属性を付与して存在を隠しつつ水のヴェールで匂いと熱源も隠蔽

竜群は合体はまださせず散開

【情報収集・視力・戦闘知識】
出現している敵キャバリアの捕捉を優先
常にシーフフォンで情報を集め戦力も分析
戦力的に撃破が問題なさそうなら突撃

竜群
【捕食】
敵機は容赦なく食らいついて捕食して再生はさせない

小隊に迫る敵に対しては
此処はいいところ見せるチャンスですね
「頑張ろうね☆」
【二回攻撃・切断・念動力・盗み】
念動光弾乱射
それでも近づくのは鎌剣で切断



●竜を従えるもの
 無限とも思える再生能力を有した人喰い巨人との戦いは終わった。だが任務工程で言えばまだ第一段階を突破したに過ぎない。
「次は撤退戦か」
 相変わらず頭頂部に鶏の立体映像を載せたカシムは眼下の白羽井小隊達の動向を注視していた。戦況は安定しているとは言えど自動車道を挟む山々には内地浸透を果たした人喰いキャバリアが闊歩している。まとまった大部隊とは言えずとも、いつ何時不意を打ってくるか知れたものではない分正面切っての戦いより質が悪いとも言える。
「ちゃんとお姉さん達を送り届けないとね☆」
 カシムとメルシーことメルクリウスは既に作戦目的に白羽井小隊の少女達の護衛も含めているらしい。
「そうだな、さーて行くぞ」
 空中に止まるメルクリウスが機体を象徴する鎌剣を一回転させた後に全面の空間を引き裂くようにして振るった。
「万物の根源よ……帝竜眼よ……文明を構成せしめし竜の力を示せ…!」
 カシムの詩歌を受けて虚空よりかのダイウルゴスの小型版が召喚された。その数延百数体。更にその一体一体にメルクリウスが光の加護による不可視の迷彩と水の加護による熱と匂いの遮断効果をもたらす。
「よし、散れ!」
 カシムの一声で小型ダイウルゴスの群れは方々に散開した。それも闇雲に散らばるのではなく、カシムが収集した索敵情報を元に先んじて敵の所在へと回り込んでいるのだ。
 小型ダイウルゴスは人喰いキャバリアを見つけるや否や、組み付いて肉弾戦を仕掛けて動きを封じると強力な顎で生体部品を食い千切り始めた。再生能力を潰す事を意識しており、原型を留めないまでにひたすらに噛み砕いて捕食する。
「順調順調……なのはいいんだがヒマだな」
 カシムは戦況分析以外にやる事が無かった。何せ小型ダイウルゴスの数は数百にも及ぶのだから、頭上から見張って敵を見つけるだけで近場に展開した小型ダイウルゴスがあっという間に群がって喰い殺してしまうのだ。時々気紛れに念動光弾を放って直接手を下しているものの、夜明け前という時間帯もあってか欠伸が出てくるような退屈な仕事となってしまった。
「あ、やばいかも」
 鶏の翼がカシムの顔面を叩いた。余所見していた視線を鶏に促された先へと向ける。モニター上のサブウィンドウに白羽井小隊へ斜め後方より迫る蟷螂型ジャイアントキャバリアの姿が見えた。周囲にはすぐ駆け付けられる小型デミウルゴスはいない。
「待ってました!」
 カシムはブーストペダルを踏み込み機体を急加速させた。頭から降下して地面へ衝突する直前で機体の上下を入れ替え、白羽井小隊と大蟷螂の間に割って入った。
「此処はいいところ見せるチャンスですねっと!」
 獲物に向かって飛んだ大蟷螂をメルクリウスのハルペーが撫でた。右から左へと横一文字に真っ二つにされた大蟷螂は、体液を撒き散らして道路へと転がった。
「感謝いたしますわ、猟兵の方」
 迎撃しようとアサルトライフルを構えていた白羽井小隊の隊長機よりメルクリウスへ通信が送られた。
「いえいえ、後でイロイロな歓待を受けるためですから」
「だねっ!」
「……?」
 カシムのよからぬ気配を伴った期待に、フェザー01は首を傾げて頭の上に疑問符を浮かべた。後に界導神機の操者の望みは異なる相手により、白羽井小隊にも喜ばしくない形で叶えられる事となる。されどそれは目的地である藤宮市駅前駐屯地へ無事に辿り着いてからの話しだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
これだけの戦力だと護衛は十分だよね。
ちょいと街の中の探索に出かけようかな。
アポイタカラに搭乗していれば問題ない。
何かあればすぐに戻れるからへーきへーき。
探索して資源を、主に食料を回収してくるですよ。
この辺が放棄されたら無駄になるものだからね。
僕たちが有効活用してあげるですよ。
日持ちしないものは<医食同源>で兵糧丸に加工。
行軍中にもお手軽に食べられるのが兵糧丸。
資源を置きに戻った時に白羽井小隊に配るですよ。
体力も負傷も回復するからね。
強行軍によるペナルティとかも解消できるはず。
回収してきた甘味で士気が上がるのもいーかんじなのです。
僕はできる男なので戦闘以外でもイケルイケル!



●戦闘糧食三分調理劇
「これだけの戦力だと護衛は十分だよね」
 竜殺しの羅刹の口を以てして言わせる戦力過多。藤宮市を目指して愛宕連山自動車道を進むこの隊列は、本来逃れ得ぬ不幸を全力で叩き潰す猟兵の性質を体現したものであった。任務内容が撤退支援ではなく殲滅作戦であれば、人喰いキャバリアの群れを大陸まで追い返していたかも知れない。つまり一人ぐらい一時的に戦列を離れたとしても何ら不都合は生じない戦力数なのだ。
「各員、気を緩めないように! 猟兵の方々がいらっしゃるからといって甘く見て良いものではなくってよ!」
 白羽井小隊の隊長が空元気で声を張り上げて喝を入れる。人喰いキャバリアとの遭遇は散発的に継続しているものの、出会い頭に鬼燈を始めとする猟兵達が瞬殺してしまうため白羽井小隊はまだ弾を殆ど消費していない。ともなれば気が緩むのは無理も無い話しだろう。
「それにしても……はぁ、お腹空きましたわね」
 空元気の反動で生まれた脱力感が不意に本音を漏らさせた。最初の戦闘の夕暮れ時から夜明け前の今に至るまで、白羽井小隊はほぼ機体に乗り続けていた。途中何度か軽い食事を摂っていたが過酷な戦場でカロリーを消費し続けて来た少女の身にとって十分とは言い難い量だった。
「ん、隊長さんお腹減ったっぽい?」
 漏れた言葉を聞き付けた鬼燈がアポイタカラをフェザー01のオブシディアンMk4に横付けした。
「な? え? いえ、その、それは」
 独り言のつもりが鬼燈に聞かれていた事を知ったフェザー01が赤面しながらしどろもどろに応答した。通信が開きっぱなしになっていたようだ。気が緩んでいたのは小隊長も同じらしい。あんな喝を入れた後なので尚更決まりが悪い様子だった。
「じゃあ、ちょいと街の中の探索に出かけようかな」
「探索って……おひとりで? 列を離れるんですの?」
 アポイタカラに搭乗していれば人喰いキャバリアの10機や20機など問題では無い。すぐに戻れる脚の速さもあるから大丈夫だと鬼燈はフェザー01に近くに街が無いか尋ねた。
「それはまあ、猟兵様なら大丈夫なのでしょうけれど。ですがこの辺りの街となると難しいですわね」
 アポイタカラへ愛宕連山の三次元地図が送信されて来た。連山一帯は限界集落の農村が点在するばかりの田舎の中の田舎といった有様だった。ここから最も近い街と呼べる場所は未だ遠い目的地である藤宮市程度しかない。
「あぁ、でもあれならありますわね。この道は高速道路ですもの」
「ほーほー、なるほど」
 新たに送信された愛宕連山自動車道の全体地図を見て鬼燈が相槌を打つ。ここに行けば食糧を発見出来る目算は高い。しかも進路上の先だ。先に鬼燈が向かえば白羽井小隊が追い掛けてくるのを待っていられる。
「じゃあ行ってくるですよ」
「あの、やはりひとりでは!」
 後ろから掛けられた通信音声を置き去りに、アポイタカラは脚部のスラスターを噴射すると長距離跳躍。数秒もしないうちに白羽井小隊の視界から消えてしまった。
 長距離跳躍を繰り返す事数十回、暫く在って鬼燈は目当ての地点を発見した。
「愛宕サービスエリア到着っぽい!」
 愛宕連山自動車道に設けられた大規模な道路休憩施設。非常事態でなければ行き交う車やトラックが所狭しと並んでいたであろう広大な駐車場は、今や捨て置かれたトレーラーがぽつんと物言わず停まっているだけ。敵の気配が無い事を確認すると、鬼燈はアポイタカラを降り施設内部へと入って行った。
「電気は来てるっぽいー」
 売店や食堂が集約された施設内部は煌々とした照明が灯っていた。人気は全くなく荒れた様子も見受けられない。従業員達はきっと大急ぎで逃げていったのだろう。売店のコーナーを物色すると様々な食料品が平時のままで大量に残されていた。
「もったいない。僕たちが有効利用してあげるですよ」
 国が滅びるか否かの命運を握っている猟兵が持ち出すのだからお咎めは不問とされて然りだろう。鬼燈はその中でもより高カロリーで甘味を含んだ固形食糧を片手の籠に次々放り込んでいった。このぐらいで良いだろうと見切りを付けると、次は食堂の厨房へと向かう。
「お料理タイムはじめまーす」
 先程掻き集めた固形食糧を片っ端から開封し鍋へ放り込む。それを棒状の調理器具で叩き潰して少々の水を加えて煮詰め始めた。ユーベルコード驚異の調理技術、医食同源による極短時間の料理劇の末に完成したのは球状のドーナツにも見える兵糧丸だった。完成した時期に合わせてサービスエリアの駐車場に白いオブシディアンMk4が次々に進出して来た。白羽井小隊が鬼燈に追いついたのだ。
「ご無事ですか? って、この香りは……お料理でもされていたんですの?」
 周囲警戒の為に他の小隊員を駐車場に残し、フェザー01が鬼燈のいる施設内部に入ってきた。真っ先に芳しい香りに気が付いたらしい。
「正解っぽい! はいどうぞ」
「えっ? これは? 焼き菓子ですの?」
 鬼燈に差し出された甘い香り放つ兵糧丸を受け取ったフェザー01は胃が訴えかける食欲に従いついひと口勢いで齧り付いてしまった。
「あら美味しい。ドーナツですの?」
「兵糧丸ってやつなのです」
「兵糧? 時代劇に時々出るあの兵糧丸ですの? へぇ、これが」
 どうだと胸を張る鬼燈の目の前でフェザー01は一心不乱に兵糧丸を齧り続けている。お嬢様らしからぬ豪快な食いっぷりだがこの際格好はなりふり構っていられないとあっという間に丸々一つ食べ切ってしまった。
「ふぅ、ご馳走さまですわ。結構お腹に溜まりますよね」
「兵糧丸ですから」
 更に言うならユーベルコードによる特製品である。フェザー01は空腹が満たされるのと同時に精力が再び漲ってくるのを感じた。
「こんなに美味しいものをお作りになられるなんて、ご無礼かも知れませんけれど戦だけが専門じゃないのですわね」
「僕はできる男なのです」
そしてフェザー01は今置かれている状況を改めて思い出す。
「って、呑気にお食事している場合じゃありませんでしたわ。もし今敵が来たら……」
「じゃあ見張ってるっぽい。たくさんあるから他の人にも食べさせてあげるのです」
 水分も補給しておくべしと伝えると、鬼燈はアポイタカラのコクピットへと戻っていった。入れ替わりで白羽井小隊の隊員達が鬼燈特製の兵糧丸で消耗しきったカロリーを補給する。
 腹が減っては戦は出来ない。戦い続ける白羽井学園の少女達が甘味に顔を綻ばせる様子を背後に、食事の邪魔をするものは蹴って撃たれて三途の川だと言わんばかりのアポイタカラが仁王立ちする。藤宮市への道のりはまだ遠い。鬼燈の兵糧丸は白羽井小隊を無事生きて逃すための要素のひとつとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

中小路・楓椛
【渡り禽】

屋台モジュール【いほうんでー】、輸送モードに変形。
破損疲労等で高速自走困難なキャバリアから優先し回収積載し固定砲台として配置し、【すたりさん】に操縦を任せて集団で移動。
UC【とりにたてぃす】起動、電磁波出力制御子機「いるえうぃっく」神威召喚装備。
私は【谺】を狙撃砲形態に変形させ、先行した【クロさん】と知覚情報を共有し、寄って来た敵性体を移動集団全員で迎撃、動きが落ちたモノから複数の子機で囲みマイクロ波位相増幅による空間電子レンジで神経伝達組織と電装系を灼き無力化します。


捨て駒の件に関しては、後程纏めて清算させていただきます。必ず――ええ必ず、です。


フレスベルク・メリアグレース
【渡り禽】
学生を危機に晒して安全地帯から撤退を図るとは……恥を知りなさい
そう愛宕基地の司令部に詰問した後、メリアグレースはこの白羽井小隊への対応を糾弾すると告げて通信を切る

さて、言うべきことは言いましたし後はわたくし達が貴方達を護衛します
そう告げてノインツェーンを動かすと同時に到着する教皇直属の近衛騎士部隊のキャバリアが到着し、白羽井小隊を護衛していく

周りの安全が確保されている時は隊員のカウンセリングをUCで行い、心の傷を癒していく
生体兵器が飛び出した場合は帰天の異能で吹き飛ばし、そこを騎士団のキャバリアに止めを刺してもらいながら隊員に累が及ばないよう護衛して行きます


イヴェット・アンクタン
【渡り禽】
兵器であることを望まれた身として、思うとこはあれど……優先すべきは指令の遂行、皆さまの安全です。

弩の力を除けば、私と【彼】は特異な物を持ち得ませんので、索敵や迎撃の支援など、援護に回ります。
力場を作る補助機装を活かし、様々な場所を足場として、山林側を中心に隠密行動を取りましょう。
悪路は苦ではありませんしね。

私の得手は、工作と暗殺。
忍び足もかくやな静けさですばやく動き回り、視力以上に聞き耳を活かして情報を収集。
後は貫通攻撃になるよう、意識して援護射撃を実行。
銃と少し違いますが、UCも交えて敵機を穿ちます。

冷静?いいえ……じゅうぶん怒ってるよ。2度と彼女らに、こんなことは、させないから。


数宮・多喜
【渡り禽】
ま、色々思う所はあるけれど。
この現場でどうこう詰め寄るのもお門違いだろ。
フレスベルクさんを少し宥めつつ、
やる事やりますかね、っと。

帰路の露払いはアタシがやるよ。
Overedのデカい爪は伊達じゃないんでね、
道中の障害物を【道拓く爪】で弾き飛ばして整地するよ。
もちろんただ弾き飛ばす訳じゃない、
進路以外の脇道の入口へなるべく飛ばすように調整して、
即席のバリケードを構築する。
そうすりゃ、追撃の奇襲も受けにくいだろ?
そうして道を整えたなら、あとはひたすら『ダッシュ』あるのみさ!

アタシが怒ってないと思うかい?
大外れ、絶賛ブチ切れ中さ。
司令部でエライさんを直接ぶん殴らなきゃ気が済まないんだよ!



●怒れる鴉
 愛宕連山自動車道を東に進む白羽井小隊。教則書通りの綺麗な隊列の両翼を、異なる機種のキャバリアが自らを壁とするようにして列を連ねて並走していた。教皇フレスベルク直属の近衛騎士部隊。西洋の神殿騎士の意匠を取り入れた重装機兵達が規則正しく軍靴の音を響かせている。
「学生を危機に晒して安全地帯から撤退を図るとは……恥を知りなさい」
 少女達を捨て置いた愛宕基地の責任者達を後ほど詰問せねばと穏やかながら強かに重さを帯びた声音でフレスベルクは遺憾を顕にした。ノインツェーンは隊列の後方でそのままの意味通り見守るポジションを取っている。
「まあまあ、色々思う所はあるけれど、この現場でどうこう詰め寄るのもお門違いだろ」
 隊列の先を進むOveredのコクピットに収まる多喜が怒れる教皇を宥める。
「兵器であることを望まれた身として、思うとこはあれど……いま優先すべきは指令の遂行、皆さまの安全です」
 憤りは然りだろうが発露するのは事が済んでからにするべきとイヴェットは言外に思惟を含ませた。彼女が呼ぶ彼ことギガント・バリスタは多喜のOveredと同様に隊列最前線を務めている。
「そうそう、イヴェットさんみたいに冷静に……」
「冷静?」
 多喜の言葉にイヴェットの左肩が微かに跳ねた。
「いいえ……じゅうぶん怒ってるよ。2度と彼女らに、こんなことは、させないから」
「イヴェットさん、目怖いって」
 静電気に当てられたかのように髪が浮き立ち瞳孔を窄まらせた形相は中々に鬼気迫るものだった。
「捨て駒の件に関しては、後程纏めて清算させていただきます。必ず。ええ必ず、です」
「……楓椛さんもかい」
 妖狐である中小路・楓椛(ダゴン焼き普及会代表・f29038)の表情は狐そのものなので恐ろしいというものではないにしろ、愛らしいふわふわとした体躯からは明確な怒気の波が発せられていた。彼女はキャバリアが牽引するサイズの店舗、いほうんでーの上に居座っている。日乃和軍が乗り捨てたキャバリアを道中で回収、洋風女中の恰好をした自律稼働するヒトガタのすたりさんに操縦させ牽引している。
「多喜さんは構わないのですか?」
 楓椛が聞かずとも分かっていると言いたげに、緩やかな口調で問う。少々の間を置いて息を吐き捨てた多喜が問いに答えた。
「アタシが怒ってないと思うかい? 大外れ、絶賛ブチ切れ中さ」
 腹から込み上げる怒気。操縦桿を強く握り込んで逃してやる。
「司令部でエライさんを直接ぶん殴らなきゃ気が済まないんだよ!」
 Overedのコクピット内に拳を打ち鳴らす音が弾けた。つまり渡り禽は全員が怒っているのだ。兵とは言えまだ訓練期間中だった少女達を人喰いキャバリア闊歩する戦場に放り込み、露骨に使い捨てる作戦を思い付いたのは何処の何者なのか。戦いに死ぬのは国の防人を目指す者の宿命なれども、初めから生かして帰すつもりなど無い姿勢に憤りを覚えずにはいられない。もし要請内容に白羽井小隊の護衛も含まれていたのであればまだ言い訳の余地はあったかも知れないが、これでは後出しで弁解されても捨て駒に使った事実は覆らないだろう。
「つってもまずはやる事やりますかね、っと」
 ぶん殴りに行くにはまず目の前の仕事を片付けなければなと進路の先で道を塞ぐ障害物にOveredを横付けした。障害物とは横倒しになったトレーラーだ。東方面への登り車線を八割がた遮っている。
「どぉーりゃっ、安全第一っ!」
 Overedのデュアルクローがトレーラーに叩き付けられ金属同士の凄まじい衝突音が轟いた。トレーラーは路面との接地面からオレンジ色の火花を派手に散らせながらスライドし路肩まで吹っ飛ばされた。
「お見事」
 楓椛が肉球を打ち合わせて拍手の挙動を取る。
「さて、道も開けましたので次は私が。永久に横たわれるものは死せずして、奇異なる永劫のもとには死すら死滅せん」
 そう楓椛が呪言を詠めば電磁波出力制御子機のいるえうぃっくに神威を召喚し装備させた。
「クロさんは既に斥候として先に向かわせていますので、私は討ち手を務めましょう」
 対神霊絶滅神器である谺に狙撃砲の形態を採らせ、すたりさんが制御するキャバリアに搭載させた。程なくして先行偵察機の役割を担っていたクロさんより予想していた通りの悪い知らせが届いた。
「正面から敵の一団が迫っているようですね。ここで一旦足を止めて待ち構えましょう」
「そうですか。我が騎士達よ、止まりなさい。白羽井小隊の守りを厳に。後ろと側面はお任せを」
 楓椛の勧めを受けてフレスベルクが配下の騎士達を制し左右の山間へと機体方向を向けさせた。騎士団に囲まれていた白羽井小隊も行軍を中断する。
 程なくして前方に複数の敵影が見えた。だが狙いすました巨砲が口を開けて待ち構えている。楓椛の命を受けてすたりさんがトリガーを引けば遠方で爆光の華が広がった。間を置かずに爆光が続くも、敵群がなお強引に接近しつつある。しかし一定の位置まで辿り着いた矢先に途端に動きを鈍らせた。仕掛けていた「いるえうぃっく」が放ったマイクロ波位相増幅の網に引っ掛かったのだ。機体の殆どが生体部品で構成されている人喰いキャバリアは空間電子レンジによって内部機構から肉までを焼き切られて機能を停止した。
「次は横から来ます」
 イヴェットが短い言葉を放った瞬間、道路を挟む山林より複数のジャイアントキャバリアが出現した。皆最も密集した陣形を取っている白羽井小隊とフレスベルクが従える近衛騎士部隊へと殺到する。
「メリアグレースの加護よ」
 隊列の後ろに控えるノインツェーンから神光の如き眩い波動が生じた。波動は超常の力を伴って人喰いキャバリアの集団だけを弾き飛ばす。
「我が忠実なる騎士団達の裁きを」
 吹き飛び体勢を崩した人喰いキャバリアへ近衛騎士部隊が容赦無く断罪の一撃を下す。
「側面を抑えてきます……」
 ギガント・バリスタが山間部の山へと跳んだ。イヴェットは側面からの攻撃が熾烈になる前に多少間引いておくべきと判断したらしい。補助機装マウント・スクリューが生じさせた力場を足掛かりとして月明かりが差し込む山林を軽快に、されど隠密らしく粛々と駆け抜ける。無理に踏破しようものなら足を取られる環境だが、足場を自ら作り出しているため影響は無視出来る。
 視界の効かない山林ではあるが、ギガント・バリスタの集音センサーを用いれば索敵など造作も無い。歩行音から敵位置を割り出し、目視せず両腕の弩を撃ち込む。
「そこです」
 射出されたボルトは二本とも人喰いキャバリアの頭部を正確に射抜いていた。その後も山林の暗殺者と化したギガント・バリスタは次々に獲物を撃ち抜いて行く。
「イヴェットさん、そっちは?」
 多喜からの通信音声には派手な衝突音や爆発音が含まれていた。どうやら敵と交戦しながら道端の障害物を力業で撤去し続けているようだ。
「問題無し……私と彼はこのまま山林から援護を続けます」
「オーケー、じゃあこっちは道路を爆走させてもらいますかっとね!」
 木々の隙間から、Overedがコンテナを引き摺り回し群がる人喰いキャバリアを跳ね飛ばしている光景が見えた。イヴェットも自ら成すべき事を成すべくギガント・バリスタを走らせる。
 Overedの交通整理、楓椛の狙撃砲と空間電子レンジ、ノインツェーンの神光、ギガント・バリスタの暗殺術によって襲来した人喰いキャバリアの一団は滞りなく処理された。時間を置かずに行軍が再開される。目指す藤宮市はまだ遠い。だが怒れる鴉達の戦いにより着実に歩を進めるに至った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
多くの学友を目の前で喪ったばかりなのに、よく保ちますね。
安全になるまで折れずにいられれば良いのですが。

では負担を軽くしておきましょう。
パイロットの限界が来るまで飛べるバイブロジェット、
事実上無限の航続時間はこういう時のための性能です。
長駆先行して偵察に行きましょう。

尾根線などでは低速飛行で高空も飛べるエイストラは、
ただし騒音で敵を呼んでしまいますので、
自動車道から距離を取って、囮がてら飛んでいきます。
統合センサーの精度なら遠くからでも観察できますし。

敵がいれば低空から高速侵入してキャノンで対地攻撃、
至近から指定UCのHSFを叩き込んで粉砕します。
強行偵察にも程がありますが、まぁいいです何でも。



●羽音
 ノエルの搭乗機であるエイストラがバイブロジェットブースターの駆動音を立てて愛宕自動車道の低空を飛ぶ。多数の振動フィンによる衝撃波干渉で空気を加速噴射するこの推進装置ならば、空気さえ有れば実質無限に飛翔し続ける事が可能だ。確実な補給が見込めないこういった状況に於いては消耗度に従い戦術価値も増大するだろう。
「多くの学友を目の前で喪ったばかりなのに、よく保ちますね」
 下方の白いオブシディアンMk4の隊列を見て、ノエルは改めてここまでの彼女らの過程を思い出した。任官を間近に控えていたとはいえ訓練兵のまま実戦に投入、初陣で怪物紛いのキャバリアに学友を散々喰い殺された挙句なのにも関わらずよく心折れずに保つものだ。この調子が安全圏まで続けば良いのだが。
「負担を軽くしておきましょうか」
 エイストラが加速を強めた。自動車道からやや外れたルートを長駆先行し偵察を行う。広葉樹林の高さを基準とし機体の爪先合わせに高度を維持、空の監視の目に留意しつつ稜線に沿って飛ぶ。やがてエイストラに搭載されている統合センサーシステムが動体反応を探知した。木々の合間から時折見える姿は四足獣型。明らかにエイストラを追って来ている。
「やはりですか」
 バイブロジェットのけたたましい作動音に誘引されたのだろう。ノエルは予め想定していた通りの結果に動じるわけでもなく機体の向きを反転させた。元より騒音を利用して囮となる狙いだったのだ。
 敵を照準内に捕捉した途端にノエルは機体を急停止させ一瞬の間を置いてバイブロジェットの出力を引き上げると低空へと高速侵入した。距離が詰まる四足獣型キャバリアに対しエイストラの肩部にマウントされた大口径プラズマキャノンが超高圧縮された荷電粒子を放射した。光の波動の直撃を浴びた四足獣型キャバリアは身体部位の大半を消失させて骸と化す。だが敵はまだ残っている。今度は全方位より蟷螂型のジャイアントキャバリアがエイストラへ一斉に飛び掛かった。
「H・S・F、ラディエイション」
 ノエルが淡々とした声音で言い放った機体制動指令。エイストラより高硬度の衝撃波が全方位へと放射された。本来は誘導弾の迎撃などに用いられる近接防御用の兵装。けれども威力は凄まじく、周囲の木々は横倒しになぎ払われ敵機はミンチのように弾けて吹き飛ばされてしまった。
「強行偵察にも程がありますが、まぁいいです何でも」
 降り掛かる火の粉は払うのみ。これで多少は白羽井小隊への負担も軽減されただろうか。発生した強烈な衝撃波に釣られたのか、レーダー上で敵の反応がひとつまたひとつと増え始めた。エイストラはバイブロジェットより強烈な推進力を吐き出して山林より飛び上がる。頭上は闇で眼下も闇。夜が最も深まる夜明け前、羽音を靡かせたエイストラが冷たく湿った空気を裂きながら飛び続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレーネ・ジルコニウム
【ガルヴォルン】
「ストライダーはミスランディアが計算したルートを通って低空飛行モードで微速前進!」

殲禍炎剣対策として、山間を縫うように走る愛宕連山自動車道の上をストライダーに低空飛行させていきましょう。

「ミスランディア、光学迷彩を展開しつつセンサーで敵襲に警戒。ガルヴォルンメンバーと連携し、敵には対地ミサイルで攻撃してください」
『うむ、任せておくのじゃ』

AIに指示を出したところで副官席の理緒さんとお茶をして一休み。

「紅茶とマフィンですか、理緒さん、どうもありがとうござ……ってきゃあっ」

戦艦を襲った振動で艦長席から転げ落ち、頭から紅茶をかぶってしまうのでした。

『やれやれ、シャワーでも浴びてこい』


菫宮・理緒
【ガルヴォルン】

よし、わたしも艦橋にいこう。

「セレーネさん、艦橋入るね。できそうな仕事は……」

セレーネさんの副官?
もちろんいいけど副官って何すればいいのかな?

まずはメイド服? それと紅茶?
わかった。用意してくるね。

こほん。
お嬢さま、今日は良質の茶葉が手に入りましたので、
ストレートにしてみました。

お茶うけはマフィンで……、
はい。厨房に隠してあったのを見つけました。

と、楽しんでいたら、
振動によろけてセレーネさんに抱きついてしまい、
いっしょに紅茶まみれにー!?

お、お嬢様、拭くものとお着替えをお持ちしますので、しばしお待ちを!

お嬢様とシャワー、ですか?
わ、わかりました。お身体、洗わせていただきますね。


支倉・錫華
【ガルヴォルン】

引き続きナズグルに搭乗

わたしは殿をつとめようかな。
横や背後から攻撃されると、速度とルート削られるからね。

アミシア、ストライダーの後ろにつくよ。
山中からの反応に気をつけておいて。

あ、それと、生き残った人がいるかもしれないから、
白羽井小隊の人に、IFFのコード教えてもらっておこう。

情報はもちろんみんなと共有。
なにか反応があったら一番近いところへ向かうことにしよう。

敵なら近づかれる前に【FdP XFAM-120】で撃破、
味方機なら、ストライダーに収容してもらおう。
機体が動かないようなら、近くにいる人に助けてもらおうかな。

最悪パイロットだけでも脱出してもらうことにしたいな。


メアリーズ・エリゴス
アドリブ歓迎

あまり好みの任務ではないですが、任務は任務ですしねぇ
要請はなくとも護衛も任務のようなものでしょう?
移動自体はロートガルは飛行もホバーも可能な推力がありますから高速ホバー移動でいいですけど
護衛は頭数が……あぁ、そういえばありましたね、数
【ビットキャバリア】でロートガルの簡易無人機を多数起動して護衛と索敵や梅雨払いに使いますよぉ
簡易無人機といっても性能はそこまで変わりませんよぉ、流石に念動誘導式のサイコビットやマイクロミサイルはないですけど
っ、流石にこの数のビットキャバリアを扱うのは素面では負担が大きいですねっ
なら、生体CPU用薬物を使っちゃいますよぉぉぉ!
くひっ!効きますねぇぇぇ!!


鳳凰院・ひりょ
【ガルヴォルン】
アドリブ歓迎

引き続き自キャバリアで出撃
敵の奇襲に備え【暗視】モードで周囲を【索敵】しつつ進軍
飛行型の機体だが、この状況だ
地上を移動した方が得策だろう

道中に補給物資があれば今後の為、確保試み
ただし、周囲に敵影なく安全が確保されている場合のみとする
補給物資も大事だが、それを代償に味方を危険に曝してちゃ意味がない

敵と交戦状態に入ったらテネブラエソードで接近戦
【鎧無視攻撃】で一刀両断
万一周囲を囲まれた場合にはUC【絶対死守の誓い】を発動し攻防一体の戦いで味方を回復しつつ戦う

友軍の応援要請には直ちに応じ対応
【救助活動】は積極的に助力する
皆で無事に生き残る為にも必要な行動だ


サージェ・ライト
さーて、ちょっと出遅れちゃいましたねー
今からガルヴォルンに合流するのも時間かかりそうですし
いっそのこと、下を派手にいきましょうか

『ファントムシリカ』に乗ったまま
自動車道には上がらず漆黒の山林を強行突破
自動車道に近いと余波で迷惑かけちゃうかもなので
ちょっと距離を置きましょうかね

【ちまっとかぐや隊!】で呼び出した
ゲーミングカラーに輝くちまかぐや姫たちを
照明代わりに抱えつつ
ファントムシリカ、とっつげきぃー!

敵に見つかっても無問題
引き付けて倒すか車道から遠い位置まで誘導しましょう

途中で補給コンテナや乗り捨てられたキャバリアを見つけたら
がさごそ漁りまして
弾薬や武装は後で白羽井小隊に届けましょうかね



●艦橋の騒動
 殲禍炎剣、それは高速飛翔体を無差別に撃ち落とす暴走衛星。クロムキャバリアの空は常に殲禍炎剣に監視され続けており、照射対象の条件を満たせば例外無く鉄槌が下される。逆に言えば条件さえ満たさなければ空を行き交う事は決して不可能ではない。事実この世界では低速航行を基本とした飛行船が各国間の物流を支える一端となっている。
「ストライダーは低空飛行モードで微速前進! ミスランディア、目標地点までのルートの確認を」
 セレーネが座すガルヴォルンの旗艦ストライダーが、愛宕連山の夜空を低高度を維持しつつそこそこの巡航速度で進む。直下の自動車道には遮られた月光が長大な影となって落ちていた。
『真下の高速道路に沿って進むだけじゃな。途中トンネルに差し掛かる箇所は高度を上げる他あるまい。その時は牛歩で進む事になるがの』
 ミスランディアが三次元映像化した愛宕連山自動車道の地図を表示した。言う通り途中いくつかの長いトンネルがある。流石にストライダーで潜る訳にはいかないので、一時的に殲禍炎剣の照射警戒高度までの上昇を強いられる。その際には暴走衛星の検問に引っ掛からないよう十分に速度を落とさなければならない。
「自動車道の上を進んでいる間、殲禍炎剣の照射警戒域に入る可能性は?」
『無いな。今の高度は両隣の山々の標高より低い』
「では、トンネルに差し掛かるまでは駆け足気味で行きましょう。そして差し掛かった時の減速を加味して白羽井小隊との距離がプラスマイナスゼロになるよう航行計画の調整を」
『それが妥当じゃろうな』
 セレーネは重く凝った首を左右に捻り、肩を回した。先の人喰い巨人との交戦以来ずっと艦長席に座りっぱなしだったセレーネの身体は疲労と凝りが溜まっている。ついでに腰も痛んできた。側からすればただ座っているだけだと思われがちだが、艦長職とはそれでいて気苦労も嵩むし見た目以上に体力を消費する。セレーネの少女の身体には尚更重くのしかかっている事だろう。
『年寄りみたいじゃな』
「初期化しますよ?」
 心無しか口調も荒んできたかもとセレーネは内心で呟いた。ふと時刻を見れば深夜を過ぎた夜明け前。良い子は寝ている筈の時間だ。こんな時間に起きているのは泥棒か吸血鬼だけと相場が決まっている。
「セレーネさん、やっぱり疲れてない? 何か手伝えそうな仕事は……」
 艦長席のすぐ隣に設けられた副艦長席には手持ち無沙汰といった様子の理緒が行儀良く座っていた。格納庫での仕事を終えた理緒は取り敢えず艦橋に上がってきたが今のところ特にやる事が無い。元より理緒自身も副官の仕事をよく知らないというのもあるが、ミスランディアがなにかと優秀なためますます暇になってしまった。強引にやる事を見出すとすれば、セレーネが寝落ちしかけた時に揺さぶる役程度だろうか。それもひょっとしたらミスランディアが遠隔電気ショックでやってくれるかも知れない。
「えーと、今のところは大丈夫なので、レーダーの監視でも……」
『お茶でも淹れて来たら良いんじゃなかろうか』
 ミスランディアの何気ない言葉に理緒がそれがあったかと言いたげな表情をして立ち上がった。
「なるほど、じゃあ着替えて来るね」
 足早に艦橋を去って行く理緒。暫く間を置いてセレーネが呟いた。
「着替える?」
 お茶と着替えの因果関係について数秒間思考を巡らせていたが答えが出ない。まあ別にいいかと艦長席から一端降りると、防弾パッドを仕込んだ上体を大きく反らした。
「いだだだ……」
 長時間同じ姿勢を取り続けた腰に蓄積した疲れが痛みとなって解放された。
『よく伸ばさんとヘルニアになってしまうぞ』
「なりませんよ、まだ14なんですから」
 再び艦長席に腰を深く沈めたのと時を同じくして、艦橋のドアが開いた。
「お待たせしました、セレーネさん……じゃなくってお嬢様」
 扉を開いて現れたのはクラシックなメイドだった。それも茶器セットを載せたミールカートを押す完全装備の状態だ。なおミールカートとは旅客機内で機内食やドリンクを運ぶ際に使用される縦長のカートである。
「理緒さん?」
 セレーネの目が点となる。
「あ、あれ? 何かおかしかった?」
 お嬢様の反応が芳しく無かったため、何か仕損じたのかと理緒は不安を露わにする。しかし察したセレーネがそんな事は無いと宥めた。
「いえいえ、よくお似合いですよ」
 お褒めに預かり光栄と理緒は機嫌を良くした。改めて見れば基本的な意匠こそ模範的なメイドドレスだが、左のアームガードや両腰にぶら下げたポーチなどからはスペースシップワールド由来と思わしき技術の気配が漂う。右眼のモノクル型ディスプレイも相まって尚更だ。
「こほん。お嬢さま、お茶のご用意が整いました」
 理緒が西洋文化的な礼法で挨拶の動作を取る。
「ティータイムですか……ありがたいのですが、今は艦長の仕事を手放す訳には……」
『目の前のAIに任せればよいじゃろうに。小休止の番なぞどうと言う事はなかろうて』
 それもそうかとセレーネはミスランディアに指示を降す。
「ミスランディア、光学迷彩を展開しつつセンサーで敵襲に警戒。ガルヴォルンメンバーと連携し、敵には対地ミサイルで攻撃を」
 艦長の休憩中に横腹を突かれるのは面白くない。リスクを少しでも下げるために不可視モードの起動も命じた。外から見たストライダーが徐々に姿を消失させ始めた頃、セレーネは漸く人心地ついた。
「今日は良質の茶葉が手に入りましたので、ストレートにしてみました」
 紅色の温かな液体がポットよりカップに注がれる。白い湯気に乗って上品ながら主張し過ぎない紅茶特有の香りが艦橋に広がった。セレーネがそれを口に運べば、長期戦で疲弊しきった心身に茶葉の芳しい味わいが染み渡った。
「お茶うけはマフィンでどうぞ」
「あら、あったんですか?」
「はい。厨房に隠してあったのを見つけました」
 軽やかな口当たりと豊かな甘みが益々疲労に染みる。紅茶との相性も抜群に良い。
「美味しい、疲れが飛ぶ味です。理緒さん、どうもありがとうござ……」
 セレーネが礼を言い掛けた瞬間、何者かの衝突がストライダーの艦体を揺さぶった。
「ってきゃあ!」
「うわわっ!」
 理緒がよろけ反射的にセレーネに抱き付いてしまう。宙を舞うティーポット。蓋が飛び中を満たしていた紅茶が空中に撒き散らされる。艦長席からセレーネと理緒がセットで転げ落ちた。舞っていたティーポットより解き放たれた紅茶が二人の頭上から降り注いだ。
「うわっと! あっつ……くない」
 セレーネが一瞬感じた熱は錯覚だったようだ。元より飲み易い温度まで冷やされていたので、せいぜいぬるま湯を被った程度で済んだ。しかし二人とも仲良く紅茶まみれとなってしまった。
「お、お嬢様、拭くものとお着替えをお持ちしますので、しばしお待ちを!」
 とんでもない粗相をしてしまったと慌てふためく理緒とは対照的にセレーネは落ち着いていた。紅茶の後始末より先の衝撃の正体を明らかにせねば。
「大丈夫ですよ。ミスランディア、艦の被害は?」
『案ずるな、ロートガルが艦首に降りただけじゃ』
「あぁ、メアリーズさんの……あの機体、重いですからね」
 取り敢えず敵襲でなかった事に安堵する。次なる問題の紅茶をなんとかしようと立ち上がった。因みにポットは落下寸前でセレーネがファインプレーを見せて木っ端微塵の憂目を避けていた。
『やれやれ、シャワーでも浴びてこい。丁度いい鬱憤晴らしにもなるじゃろうて』
 どうせ着替えるならついでにどうだとのミスランディアの提案に、セレーネより先に理緒が反応した。
「お嬢様とシャワー、ですか?」
「いや作戦行動中なので流石にそれは……」
「大丈夫です! 白羽井小隊の皆さまも浴びて行かれましたから!」
 妙に目を爛々とさせ始めた理緒にセレーネは得体の知れない危機感を抱いた。
「このぐらい着替えて拭けばなんとも……」
『という訳で艦長をよろしく頼む。留守は任せるのじゃ』
「わかりました。お身体、洗わせていただきますね」
「なんで勝手に話しが進んでるんですか!」
 抗議するセレーネの肩を押して理緒が艦橋を後にした。場に残されたのはミールカートと芳しい紅茶の香りだけ。聞く者がいなくなった空間に艦の管制を司る人工知能の音声が響いた。
『おーい、後でこっちも片付けるんじゃぞー』

●ドラッグドライブ
 ストライダー艦橋での一騒動から時間をやや遡る。メアリーズのロートガルはストライダーの位置から見て前方の高速道路上で散発的に襲来する人喰いキャバリアを迎撃し続けていた。
「あまり好みの任務ではないですが、任務は任務ですしねぇ」
 先のSwollenと交戦していた時と比べて不満有り気な面持ちでロックオンサイトの中に捉えた四足獣型の人喰いキャバリアの様子を観察していた。相対距離はかなり開いている。四足獣型キャバリアは頭上へしきりに飛び掛かろうとしていた。肝心の頭上には一見何も無いように見えるが、光学迷彩を起動したストライダーが低速航行している。エンジン音に反応しているようだった。
「要請だなんてとんだ言葉遊びをしてくれますねぇ。結局は護衛も任務のようなものでしょう?」
 メアリーズが操縦桿のトリガーキーを軽く引き絞る。入力信号を受け付けたロートガルがロングビームライフルを発射した。単射モードで放たれた荷電粒子の塊が四足獣型キャバリアを貫き、一撃で機体の大部分を溶解消滅させた。
「はぁ、次から次と手間ばかり掛かりますねぇ」
 レーダーが反応するよりもサイコ・コントロール・システムが背後から迫る敵意を感受し搭乗者に伝達する。ロートガルが振り向き様にロングビームライフルを二連射した。遠方から接近しつつあった巨大蟷螂が立て続けに弾け飛んで消え失せた。
「護衛は頭数が……あぁ、そういえばありましたね、数」
 ふと何か思い立ったらしく、ロートガルの腰部側面のスラスターや背部のブーストポッドに光を炸裂させる。大質量の重キャバリアを淀みなく制動するパワー重視の推進装置達が一斉に吼え、ロートガルを力強く急上昇させた。着地地点は不可視の浮島。光学迷彩を起動させたままのストライダーの艦首だ。機体の重量から艦体を大きく揺るがすほどの衝撃が生まれた。
「きひっ!サイコ・コントロール・システム、フラッシュモード起動ですよぉぉぉ!」
 周囲にロートガルを模したと思しき無人機が多数出現した。無人機とは言うもののロートガルと装備構成はさして変わらない。誘導兵器を搭載していないだけの言わば量産型ロートガルと形容出来る機体だ。
 ロートガルが腕を伸ばすと呼応して無人機達はストライダーの艦首より降下、地上で散開して各々行動を開始した。後方や側面の山林から湧いて出てきた人喰いキャバリアが、道路に出るや否や無人機達からロングビームライフルの十字砲火を受けなす術なく大破に追い込まれてゆく。順当に推移する戦況。高みの見物を決め込んでいたメアリーズの頭部に、鈍く深い痛みが走った。
「っ、流石にこの数のビットキャバリアを扱うのは素面では負担が大きいですねっ」
 複数の機体を並列して複雑に制御するには何の代償も無しにとは行かなかったらしい。であれば身体の方を合わせるまでと圧力注射器を取り出し首筋に突き付けると、躊躇いひとつ見せずにトリガーを引いた。能力向上と極度の戦意高揚を促す依存性の高い劇薬。血流に乗り心臓を経て全身に広がり、やがて脳の中枢に達した。
「くひっ! 効きますねぇぇぇ!!」
 ロートガルが夜空に吼えるようなモーションを取ったかと思えば地上に飛び降り、偶々直下にいた人喰いキャバリアに全荷重を乗せて圧殺した。無人機の戦闘に釣られて出てきたのか複数の四足獣型キャバリアが飛び掛かるも、力任せに振り抜いたビームアックスソードで撫で斬りにした。真紅の悪魔が暴れ狂った後には死体しか残らない。なおもメアリーズは目に付く敵機を手当たり次第に殺し回るのだった。

●白と黒
 「派手な……」
 後方で暴れる赤い重キャバリアを横目に、鳳凰院のルクス・テネブラエは自動車道両翼を挟む漆黒の山林に警戒の目を光らせていた。道から一歩外れた先は闇。だが暗視モードを起動していれば恐るに足らない。もし暗闇から飛び掛かってくるものがいれば真っ先に気付けるはずだ。
「けど出てこないな。やっぱり大半がストライダーに引っ張られてるのか?」
 後方の空を航行するストライダーは光学迷彩で姿を隠蔽しているものの、複数の強力なエンジンが発する作動音は山をひとつ隔てた先まで聞こえている。人喰いキャバリアが聴覚に頼った索敵を行っているのかは不明だが、ストライダーが誘引している現状を見るに音に釣られている可能性は高い。
 なおルクス・テネブラエは白と黒の左右非対称の翼を持つ空戦キャバリアだが、今は陸路を進んでいる。空戦だからといって陸戦が出来ない訳ではないし滑空していれば本来の空戦能力を発揮する事も可能な筈だ。
「補給コンテナか」
 横倒しとなった長方形の物体を進路上に目視した。全長はキャバリアより少し長い程度だ。すぐに飛び付くような愚行には及ばない。敵がそばに潜んでいないとも限らないのだから。ルクス・テネブラエがキャバリアのスケールまで巨大化させた日本刀を油断なく構えながら、慎重にコンテナへと近付く。取り敢えず敵はいない。だが嫌な予感が急激に膨れ上がった。咄嗟に機体を滑らせコンテナの後ろへと回り込む。
 コンテナに背をもたれて腰を地に付けていた日乃和軍所属のキャバリア。そこへ大蟷螂が取り付いていた。
「やっぱりか!」
 テネブラエソードが闇に奔る。鋭い縦切りが大蟷螂を両断した。吹き出た体液がルクス・テネブラエを緑色に濡らす。
「パイロットは……だめか」
 ハッチが剥ぎ取られたコクピットブロックから、夜の闇の中であってもなお赤黒い液体が滴り落ちているのを見て、鳳凰院は顔をしかめた。しかし感傷に浸っている暇は無い。コクピット内に敵接近を知らせるアラートがけたたましく鳴り響く。
「今のでストライダーに惹かれた奴等がこっちに来たか……!」
 進行方向と左右両方の山肌より出現した人喰いキャバリアがルクス・テネブラエを取り囲んだ。焦らしながら距離を詰めるでも無く、各々食欲のままにコクピットをこじ開けようと飛び掛かる。一撃で殲滅する必要があると瞬時に判断を下した鳳凰院の行動は早い。
「光と闇の疑似精霊、力を貸してくれ!」
 機体を高速で一周旋回させる。払うように振るったテネブラエソードの剣刃から黒と白の螺旋の輪が生じ、波動となって広がった。波動を受けて吹き飛ぶ人喰いキャバリア達。いずれも深い刀傷より入り込んだ闇の精霊に内部を蝕まれ、もがく内にやがて絶命した。
「なんとななったか」
 しかし油断は出来ないとルクス・テネブラエはまだ刀を構え続けている。後続の友軍機の足を踏み鳴らす地響きが次第に大きくなってきた。合流するまでこのコンテナを見張っているかと状態を確認するべく背後を振り返った。
「あ……」
 日乃和軍所属のキャバリアの残骸、そのコクピット内を意図せず見てしまった。惨劇現場染みた血潮はそのままだったが中の骸は人の形を保ったままだった。鳳凰院はそれが先ほど放ったユーベルコード、絶対死守の誓いの光の疑似精霊がもたらした作用だと直感的に認識した。
 死者にせめて安息を。そう鳳凰院が願ったのかは他者には推察し兼ねるところだ。ルクス・テネブラエが頭部を向けた先では、淡い瑠璃色の光を放つ月が暗雲より顔を覗かせていた。

●ストライダーの背後にて
 藤宮市を目指し撤退行軍を続ける猟兵達と白羽井小隊から構成される縦長な隊列。その中のストライダーを中心としたガルヴォルンの列の最後尾、そこで錫華は買って出た殿役に従事していた。
 横や背後から攻撃されると進軍速度を削られるのは無論、分断されでもすれば尚更不都合な展開となり得る。ましてや図体の大きいストライダーに釣られてやって来る人喰いキャバリアも多い。
「アミシア、山中からの反応に気をつけておいて」
『了解……振動反応来ます、数は複数。うちひとつは日乃和軍のキャバリアの可能性大』
「IFFのコードは?」
『白羽井小隊です』
 どういう事だと錫華は首を傾げた。戦術データリンク上での白羽井小隊の位置を確認する。現在位置はストライダーよりかなり先行して進んでいる。田園を出立した時から機数も変動していない。つまりはぐれたり道に迷っていたりというケースではないようだ。そもそもこの直線道路では迷い様が無い。
「その接近中のキャバリアの位置、みんなにも回して。ストライダーにはミサイルの発射準備を。もしかしたら罠かも知れない」
 ナズグルはこちらに接近しつつある反応があった先へと射撃姿勢でFdP XFAM-120を構えた。弾数も確認して抜かりない。敵が出現すれば即1マガジン分フルオートで叩き込める。
『仮称身確認の白羽井小隊機、こちらからの呼びかけに応じません』
「だんまりじゃますます怪しいね」
『受信はしているようです』
「通信は遮断してない、聞いてはいるってこと?」
『そうなります』
 未確認機と敵反応の接近を知らせる警報が同時に鳴り響いた。山林を割って出現した機体。それは損壊著しい白いオブシディアンMk4とそれを追ってきた蟷螂型キャバリアだった。路肩から路上へと飛び出したオブシディアンMk4は着地を試みるもスラスターが満足に機能せず、頭から突っ伏す形でアスファルトを削りながら倒れ込んだ。その背後から巨大蟷螂が両腕の鎌を振り上げ襲い掛かる。
「だめだよ」
 アウェイキング・センシズによって生じた超常的な反射神経が、脳で思考するより先んじて錫華にトリガーキーを引き絞らせた。FdP XFAM-120からフルオートで発射される銃弾の雨が巨大蟷螂を穴だらけにしながら跳ね飛ばす。更に後を追って飛び出してきたもう一体の巨大蟷螂にも同様の末路を迎えさせた。間を置かずにナズグルをジャンプさせ、全荷重を掛けて巨大蟷螂の頭部を踏み潰した。
「他に反応は?」
 もう一体にはFdP XFAM-120のセミオート連射を胸と頭に撃ち込んだ。
『ありません』
 錫華はアミシアにそう、とだけ答えると体液を垂れ流す死体を路肩に蹴飛ばし、オブシディアンMk4へと慎重に接近した。センサーカメラに光は灯っているところからしてシステムダウンには陥っていないようだが動く気配が無い。相変わらず呼び掛けても返答しないため、直接接触回線を開くべくナズグルのマニピュレーターを当てがった瞬間、少女が震えながら読経を読んでいるような声が通信装置を介して錫華の耳朶に侵入した。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
 言葉を遮って話し掛けてもまるで聞く耳を持たない。ひょっとしたら耳を塞いでいるのではと考えていたところでアミシアがオブシディアンMk4の機体状態の解析結果を報告した。
『通信機能に異常を確認。送信に障害が発生している模様』
 聞く耳は持ってたが話す口が無かったのかとひとつの問題に納得を付けたが、まだ明らかにするべき重要な問題が残されている。
「それで、この機体は本当に白羽井小隊なの?」
『間違いありません。機体に登録されているコールサインはフェザー11となっています』
 錫華は改めて現在お守りをしてやっている白羽井小隊の機体数を数えた。何度確認しても一桁代しかいない。
「確か殆どの隊員は田んぼでの戦いでやられちゃったんだっけ?」
『そう聞いています』
「いま一緒にいる人達以外が、その全員?」
『それは不明です』
 薄らとだが錫華の脳裏にある仮定が浮かび上がってきた。
「……脱走兵?」
 無意識に言葉が溢れていた。
『可能性のひとつとしてあり得るかと』
 少し間を置いてアミシアが答えた。どうしたものか。白羽井小隊の隊長に伝えるべきところなのだろうが、肝心のパイロットがこの状態では如何とも仕方が無い。今もごめんなさいの念仏は続いている。PTSDでも発症したんだろうかという考えも浮かんだ。
「共有する情報は日乃和軍所属らしい人を助けたって事にして、取り敢えずストライダーに収容する?」
『現時点ではそれが宜しいかと。セレーネ大佐には先に伝えておきます。ナズグルも一旦補給のための帰投を推奨しますが」
 残りの弾薬とエネルギーはこれほどだと、機体ステータスがモニターに拡大表示された。殿として人喰いキャバリアを千切っては投げ続けていた消耗が数値となって現れている。深刻ではないが余力のある内に手早く回復するに越した事は無い。
「そうだね。じゃあこのオブシディアンを担いで戻ろう。昇降用のワイヤー下ろしてもらって」
 ナズグルはオブシディアンMk4の肩を庇うようにして立ち上がらせると、脚部のスラスターを起動させた。キャバリア1機分の重量が増加している筈なのだが、それにしては軽い。間近で改めて見ればここまで逃げて来れたのが不思議に思えるほどの損壊を受けていた。
 程なくしてナズグルは減速したストライダーに追いついた。風に吹かれて揺れている昇降用のワイヤーを掴むと、錫華はリフトアップの要請を出す。地上の愛宕自動車道が遠ざかってゆく。上を見上げれば月光満ちる夜空を足早に流れてゆく暗い雲が見えた。ガルヴォルンの殿を務めた最中、予期せぬ拾い物を得た錫華。白羽井小隊の貴重な生き残りを救ったとして多大な賛辞を受ける事となるのだが、それはまだまだ後の話しだ。

●山林で忍ばない
 錫華が展開していたガルヴォルンの隊列最後尾より更に後ろ、夜の深淵より尚黒い愛宕連山の山林の中を飛んでは跳ねてを繰り返して進む女性型キャバリアの姿があった。
「さーて、ちょっと出遅れちゃいましたねー」
『しちゃいましたねー』
『でも追い付けた』
 諸事情でストライダーより遅れて出立したサージェとシリカとミニシリカの三人乗りキャバリアのファントムシリカが、巨木の頂に器用に着地している。光学迷彩を起動しているストライダーの姿は目視出来ずとも、振動や集音そして熱量で正確な位置が特定出来ている。ついでに直下の道路上では時折ビームの光が迸っていた。
「おろ? 思ったより進んでなかった?」
『サボってたのかな?』
『違う。殲禍炎剣の照射警戒高度だから減速してるだけ』
 サージェがああそういう事情かと相槌を打つ。しかし追い付いたはいいがこの後どうするべきか。このまま帰還するという選択肢もあるのだが遅れて来た身の上もあってやや肩身が狭い。
「どうしましょう? 殿でもやる?」
『要らない。ナズグル単機で十分』
「あらそう? まぁ錫華さんの仕事を盗っちゃうのも悪いですけど」
 サージェは暫く腕を組んで唸りながら思案を巡らせる。パイロットに合わせてファントムシリカも同様のモーションを取っている。
「うーん、やっぱりストライダーに帰還する? でも何もしないままってのも……報酬カットの口実にされそうだし」
『山間部の遊撃でもしたら? ここからでも多数の敵機反応を感知できてる』
 ミニシリカの提案にそれだとサージェが顔を上げた。釣られてファントムシリカも頭部を上げる。
「なるほど、それなら潜めるしまさにクノイチの仕事!」
 思い立ったサージェの行動は早い。ともなれば人工的な光の無い漆黒の山林地帯を駆け抜けるべく照明を確保せねばとその手段を喚び出した。
「かもん! ちまっとかぐや隊! みんなせいれーつ!」
 巨木の頂より地上へと降りたサージェの周囲に大祓百鬼夜行で人攫いもとい手懐けたかぐや姫達が虚空より現れる。百を越えるそのかぐや姫は竹取物語の単なるヒロインでは無い。ゲーミングキーボードやゲーミングファンのように七色に光り輝く言わばゲーミングかぐや姫なのだ。色数驚異の1680万色が山林の暗闇も雰囲気も盛大にぶち壊した。
「これで暗い夜道も安心!」
 喚び出したゲーミングかぐや姫の何体かをファントムシリカが鷲掴みにして脇に抱え込む。側から見るとかぐや姫が可哀想に見えるが実際嫌がっているので本当に可哀想だ。
『目がチカチカするね!』
『虫が寄ってくる。寄ってきた』
 光に誘われた蟷螂型の人喰いキャバリアが有無を言わさず四方八方から襲い掛かった。凶刃がファントムシリカを狙うも鮮やかなステップを踏み身を躱す。代償にゲーミングかぐや姫を掠めた。何体かが泣き出した。
「おぅふ! ルベライトビットプリーズ! 早く!」
『あー! かぐや姫がー!』
『無駄に増やすから』
 最近はもうすっかり見かけなくなった回転するカカポのように七色に光るファントムシリカが飛んで回って大蟷螂の襲来を避け続ける。その度に大勢のゲーミングかぐや姫が命の危険に晒される。ミニシリカが制御するルベライトビットがファントムシリカを囮として大蟷螂を撃ち落として行くが次々と周囲から湧いてくるため切りが無い。
「こ、これはまずいかも!」
 いよいよ物量に押し込まれ始め危機を察したサージェは忍者の秘儀の解禁を決意した。
「サージェ流忍法その壱! 三十六計逃げるに如かず! ファントムシリカ、とっつげきぃー!」
 その場に居座り続ける理由は無いとサージェはファントムシリカのエンジェライトスラスターを作動させた。光輪の帯を潜り抜けたファントムシリカが急加速する。鮮やかな強い光が夜明け前の山岳地帯の木々をすり抜けて行く。誘引された大量の敵をミニシリカが管制するルベライトビットが漸減し続け、やがて一匹残らず駆逐し終えた。
「あら? もういない?」
 後方がやけに静かになった事でそれに気付いたサージェが遁走するファントムシリカを停止させた。
『大多数の敵を撃破。周囲の敵影極めて少』
「ミニシリカが殺ったの? いやぁ良い子良い子」
 やはりファントムシリカの周囲はゲーミングかぐや姫の影響で光が煩い。だが曲彩色の発光に照らされたキャバリアの影を捉えた。本来なら見落としていたであろう山林の最中に乗り捨てられた日乃和軍のものと思しきキャバリアは状態が良い。こじ開けられたコクピットは嫌な予感がするので見ないとして、使用可能な武装や弾倉を回収出来た。
「予期せぬ収穫ですねぇ、白羽井小隊に届けてあげましょうか」
『クノイチじゃなくてドロボーみたいだね!』
「うっさい! 消耗しましたしストライダーに行きますかー」
 ファントムシリカはゲーミングカラーに発光するかぐや姫達を引き連れ緩やかな速度で航行するストライダーの方角へと向かう。底が知れない愛宕連山の闇を越え、バーチャルクノイチはやはり言うほど潜まず戦線を走り去ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリア・ジェフティー
やー、学生さんなのにしっかりしてますね
…ま、この状況では気丈に振る舞わないとやってられませんか

他のジャイアントキャバリアとは既に交戦済みという話でしたよね
小隊の方達に出来得る限りの交戦データを融通して貰いましょう
移動がてら解析を行っておきます

さて…予想通りちょいちょい敵機の襲撃が来ますね
いちいち相手してたらキリがないですし、少しだけ本領発揮しちゃいましょうか

スクリーマー射出、【ジャミング】開始
生体キャバリア相手だろうと、【情報収集】が充分なら完璧に目潰しをしてみせますよ
念のため友軍に電磁【迷彩】を付与して味方同士だけ見えるよう透明化
これで周辺の敵機は五里霧中です
今のうちに一気に駆け抜けましょう



●スクリーマー
 内地浸透した人喰いキャバリアが彷徨く愛宕連山。白羽井小隊と猟兵達が目指す藤宮市までの道のりである愛宕連山自動車道もまた人喰いキャバリア共の餌場と化していた。予想はされていたが隊列は不定期的な襲撃に見舞われ続けている。戦闘に次ぐ戦闘で猟兵は兎も角白羽井小隊の訓練兵達は心身共に摩耗しているはずだったが、なおも心折れる様子は見せなかった。
「やー、学生さんなのにしっかりしてますね」
 白羽井小隊に随伴しているセシャート。エミリアが操縦桿のトリガーキーをクリックすればスローターより散弾が吐き出される。無数のベアリング弾は蟷螂型のジャイアントキャバリアを撃ち抉り、体液を散らせて吹き飛ばした。
「まだ任務が継続中ですもの。それに猟兵の方々に拾って頂いた命、粗末になんて出来ませんわ」
 フェザー01の優等生染みた模範解答だが、声音の縁には震えと疲弊が見え隠れしていた。白羽井小隊の隊長と隷下の隊員達が操る白いオブシディアンMk4も教則書通りの集団戦法で人喰いキャバリアを迎撃している。
「……ま、この状況では気丈に振る舞わないとやってられませんか」
 受けた教練の内容は不明だが、本来ならばまだ女子高生をやっているであろう歳の若過ぎる兵士達がこの状況下で平気でいられる筈がない。きっと本心では恐れや恐怖といった感情をひた隠しにしているのだろう。しかしそれをひとたび認めてしまえば膝が折れてしまう。今は無理してでも前に進み続けるしか無い。
「この気持ち悪いのは待ってくれませんから、ねっ!」
 背後から飛び掛かってきた大蟷螂にセシャートが回し蹴りを喰らわせる。横方向へ転がったところへスローターを二連射し息の根を止めた。エミリアは既にこの人喰いジャイアントキャバリアとの交戦経験があった白羽井小隊からデータを貰い受け、応戦の傍らで解析を行なっていた。見た目こそ生体部品をふんだんに使用しているキャバリアだが、内部機構には機械的部品も多く含まれているという点を実戦を以てして確認している。つまり電子戦が有効なのだと。
「いちいち相手してたらキリがないですし、少しだけ本領発揮しちゃいましょうか」
 個体としての脅威度はさしたるものではないにしろ、執拗なまでに無謀な襲撃を繰り返している敵機にいよいよ嫌気が差したエミリアは状況打開の一手を投じる。
「戦いっていうのは、撃った切ったのぶつけ合いだけじゃないんですよ。スクリーマー射出」
 セシャートの周囲に夥しい数の浮遊型ドローンが現れる。それらはエミリアの指示に従い隊を囲むように展開すると、電子阻害を及ぼす信号波を発し始めた。効力範囲内に足を踏み入れた人喰いキャバリアが、センサーの全てを狂わせられ途端に不可解な挙動を取り始める。恐らくは五里霧中の状態なのだろう。更に友軍機には光学迷彩の作用まで及ぼしてある。敵からすれば目隠しに耳栓までされた状態で透明人間を捕まえなければならない事態に陥っていると言える。
「これは? 敵の動きが……電子欺瞞ですの?」
 好機を逃さずブレードで斬りかかろうとしたフェザー01のオブシディアンMk4をセシャートが制した。
「今のうちに一気に駆け抜けましょう。全部相手してたら、弾が幾らあっても足りませんよ」
「ごもっともですわね。白羽井小隊全機へ! 攻撃止め! 走り抜けますわよ!」
「先導しますので後に続いてください」
 ターボローラーから火花を散らして疾駆するセシャートとそれに続くオブシディアンMk4達。遭遇する敵機はEP-F/NM"スクリーマー"の電子妨害領域に踏み入れた瞬間にこちらを見失う。エミリアによって難なく敵の渦中をすり抜けた白羽井小隊。藤宮市への距離がまた少し縮まったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イザベラ・ラブレス
SPD

んーまぁ、ほら。長く生きてりゃ貧乏くじの1,2本引くわよ。
つっても私もまだピチピチの20歳だけどネ!

さて、白羽井小隊の諸君!
貴女達は、生きて帰って偉くなってお姉さんに旨い飯を奢りなさい
これは命令です
守れなかったら不味い戦闘糧食をその口に突っ込むわ!

…と冗談を言いつつ小隊を守りながら進路を切り拓いていくわ

センサー系をフル稼働させて情報収集と小隊周囲の索敵
障害物は悪路走破で踏み潰し、敵機は見つけ次第170mmで狙撃
小隊のキャバリアに飛び掛かるのが出たら30mmで迎撃

後は行進ついでに戦闘知識で何処を警戒すれば良いかをアドバイスね

…あんな死地を生き残れたんだから、彼女達は絶対ビッグになるわよ



●歴戦の令嬢
 相変わらず戦術構想の欠片も無くひたすら特攻染みた襲撃を繰り返す人喰いキャバリア。それらを千切っては投げながらイザベラのマイティー・バリーと白羽井小隊のオブシディアンMk4が東へと行軍し続けていた。
「それにしても災難だったわね。初陣でとんだ役回り押し付けられちゃって」
 重装甲キャバリアが装備する、化物も泣いて逃げ出す大口径三連ガトリングキャノンがひと吼えすれば四足獣型の人喰いジャイアントキャバリアがミンチより酷い挽肉となって臓腑を路面にぶち撒けた。
「いえ、まだ未熟者ではありますけれど、命を賭して国と民を守護るのが格式ある者の務め。覚悟は致しておりましたわ」
「カクシキ、ねぇ」
 そう言えばこの少女達は良いとこ育ちのお嬢様方だったか。名門ラブレス家の令嬢であるイザベラには何か思う節があったのか、集団戦法で健気な迎撃戦闘を行う白いオブシディアンMk4達を人知れず横目で見つめていた。
「んーまぁ……そう気負わない方がいいんじゃない? ほら、長く生きてりゃ貧乏くじの1、2本引くわよ」
 イザベラが目を光らせている絶賛フル稼働中のセンサーが、小隊の側面より迫る複数の大蟷螂を捉えた。そちらへマイティー・バリーが二連装30mmガンポッドの水平掃射を浴びせる。大蟷螂は途端に穴あきチーズと化し緑の液体を噴出させ道路上に転がった。
「イザベラ様にもそういうご経験が?」
「そりゃあねぇ」
「歴戦の戦士といった貫禄ですものね」
「つっても私もまだピチピチの20歳だけどネ!」
 マイティー・バリーの重厚な逆関節アンダーフレームが人喰いキャバリアの骸を踏み潰し粉砕した。甲殻生物にも似た乾いた粉砕感が機体を通してイザベラに伝わる。
「さて、白羽井小隊の諸君!」
 敵の襲来が途切れた頃、マイティー・バリーが白羽井小隊へと向き直った。
「貴女達は、生きて帰って偉くなってお姉さんに旨い飯を奢りなさい」
「え、えぇ?」
 イザベラは困惑するフェザー01達に構わず「これは命令です」とマイティー・バリーの指差しもセットで通告した。
「守れなかったら不味い戦闘糧食をその口に突っ込むわ!」
「それは、御免被りたいですわね」
「だったらまずは生き残る!」
 マイティー・バリーが進行方向より一直線に向かってきた人型のジャイアントキャバリアへ三連銃身のガトリングを向けると躊躇いなく速射を見舞った。やはり今までの標的同様原型を留めない挽肉と化す。
「わかりましたわ。偉くなれるかどうかはまだ分かりませんけれど、叶った暁には美味しい焼肉店にご案内させていただきますわ」
「へえ? 案外肉食系なのね」
「お恥ずかしい話しですけれど、わたくしこう見えて食いしん坊ですの」
「それは結構。じゃあ今から食べ放題と行きましょうか」
 センサーが東方向より迫る多数の反応を捕捉した。小隊から中隊の間といった程度の規模だ。マイティー・バリーが全武装をその方角へと向けるのを合図として白羽井小隊が両翼に展開、自動車道の横幅いっぱいに隊列を広げた。
「……あんな死地を生き残れたんだから、絶対ビッグになるわよ 。来た! トリガー!」
 射程内に敵影の先鋒を見るや否やマイティー・バリーの機関砲が凄まじいマズルフラッシュを焚き、空の薬莢が宙を舞って道路上に散らばる。同時に白羽井小隊の全機が一斉砲火を浴びせた。銃弾と硝煙とオレンジの光で満たされた自動車道の一端。マイティー・バリーのガトリングキャノンは抗い戦う者達の咆哮をあげていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
今回は撤退戦になるのですね
いかな戦いでも最善を
やりますよ、「ブライト・ナイト」。

《戦士の手》と――ともに。

白羽井小隊より先行し進みましょう
天性の【野生の勘】、培った【戦闘知識】を
働かせつつ、敵のレーダー施設や偵察型キャバリアを
発見すれば、即破壊しますよ

友から贈られたこの「ブリッツ・ファウスト」で!
自慢の【オーラ防御】のオーラ光を錐状に拳に収束、
私自身の肉弾戦のスキルも生かしつつ攻撃

打ち込んだなら、そのまま距離を開けず
ラッシュを仕掛け、とどめに
特大のオーラ光を拳から打ち込み破壊

撤退を妨げるものを破壊すれば、引くのも容易ですよね
仮に白羽井小隊が危機に陥ることあれば、
【かばう】ことで道を切り開きます



●サヴェージ
 連なる山々を縫うようにして伸びる愛宕自動車道。時刻にして夜明け前。左右の路肩に等間隔で立ち並ぶ街灯がアスファルト固めの道を橙色に照らしている。
 撤退先の藤宮市を目指して進む白羽井小隊の隊列よりかなり距離を置いた前方。道の中央に威風堂々と佇む白き輝き纏う機体があった。ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)の搭乗する輝闘機『ブライト・ナイト』だ。
「やりますよ、ブライト・ナイト。戦士の手とともに」
 搭乗者の一挙一動を身体能力に至るまで反映する機体制御方式、ダイレクト・モーション・リンク・システム特有のコクピット空間の中でユーフィは深く呼吸する。日焼けした肌と相まって部族出身といった印象を受ける少女の体躯は、幼さを残しつつも鍛錬の末に強く硬く研磨された闘士の質感を醸し出していた。
 闘争の中で研ぎ澄ました勘が、数多の強敵とぶつかり合った事で蓄積された経験が、脳の中枢へと警鐘を鳴らす。敵が来る。数は複数。足音からして獣型ではない、恐らくは大蟷螂型の人喰いキャバリアだろうと戦慄く闘争本能が戦いの思考を最大限に回転させる。果たして左右を囲う山林の狭間より出現した蟷螂型のジャイアントキャバリア。ブライト・ナイトのコクピットを切り開きユーフィの鍛え抜かれた肉体を喰らわんと両腕の刃を振りかざす。
「ブリッツ・ファウスト!」
 鎌が振り下ろされるよりもブライト・ナイトの拳が奔る方が疾い。この作戦に於いて先陣を切ったシルより贈られた両手二対のナックル。纏った闘気を鋭い錐状に収束させ大蟷螂の頭部へと打ち据えた。闘気の力場は虫の殻など容易く穿ち、脳天を吹き飛ばす。ユーフィの攻撃は止まらない。
「まだまだ! 殴りっこなら負けません。勝負っ!」
更に迫る敵へと狙いを変えると神速のジャブを叩き込んで押し込み距離を詰める。敵を粉砕すればまた次の敵へ。ブライト・ナイトが腰を落として深い一歩を踏み込み、無防備な胸部に光拳のラッシュを仕掛けて反撃の隙間も与えず完封勝利する。だがそこに後方から殴打の拳が飛んできた。戦闘の音に釣られて来たらしい、人の形を模倣したジャイアントキャバリアがブライト・ナイトに肉弾戦を仕掛ける。ブライト・ナイトは片足を軸とした急速反転で背後に振り向くと回避ではなく防御を選択。連打される直線的な殴り付けを両のブリッツ・ファウストで受け止めた。
「軽いですね!」
 新手はユーフィを満足させる相手では無かったらしい。守りを固め連打を受け続けるブライト・ナイト。攻撃が攻撃に繋がる際の一瞬の隙を付いて強烈なアッパーカットを繰り出した。ジャイアントキャバリアが浮き上がるほどの強烈な一撃。そして必殺の拳が叩き込まれる。
「これが森の勇者の! 一撃ですっ!」
 アスファルトが割れるほどの踏み込み。光を纏った右の拳が宙に浮いたジャイアントキャバリアの胴体を捉えた。打突点の反対側より闘気が特大の光となって迸った。ブライト・ナイトの正拳突きが、ジャイアントキャバリアに大穴を穿つ。
「こんなものですか」
 倒れた敵機を前にブライト・ナイトが両の拳を打ち付けた。ユーフィが周囲を一瞥すれば、そこには敵の残骸が転がっているばかり。自動車道はまた夜明け前の静けさを取り戻していた。今回の障害はユーフィにとって物足りなかったかも知れない。だが戦いに抜かりも慢心も一切無い。いかな戦いでも最善を尽くす闘争に生きる蛮人の少女。彼女は戦士の矜持を以て、先行き暗い撤退戦の旅路に微かな光の兆しを見せたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天城原・陽
【特務一課】
斥候及び歩哨担当
頭部左目の複合センサと狙撃砲のセンサを組み合わせて、文字通り行軍の『眼』となって周囲警戒に当たりつつ、補給物資の探索も行う
「マダラ、キリジ。二時方向にコンテナが2基…それと…アンダーフレーム。損傷は激しくなさそうね。使えるモンは使っていきましょ」
(道中潜んでいる生体兵器に対して、先制狙撃のヘッドショット狙いや徹甲榴散弾の面攻撃で迅速に排除していく方針)

※思う事
作戦としては間違っていない。当初は白羽井小隊を捨て奸とし、全体の生存確率は大いに向上させる予定だったのだろう…ベストではないがベターだ…故に
「気に入らないわね。」
同年代の学兵が捨て石になるのは、反骨心が疼いた


キリジ・グッドウィン
【特務一課】
『アリシア』に搭乗

行軍中の補給物資回収担当。見つけ次第日乃和の車輛に載せていく

あー、マダラはそこにいろよ。オレ拾ってくから搭載だけ頼むわ。…アイツ、モテそうだよな

補給コンテナは人が相手じゃなければ意図的には手を付けねぇ物だろうし割と無傷かもな
乗り捨てられたのだって使えそうな所もあるだろうし、その辺を見極めてアームで解体
オーバーフレームの制御系統は死んでるけど、アンダーフレームそのものは割と傷んでない。上半身だけぶち抜かれて……ってとこだな。スラスターだけ剥いで持っていくか
ま、仲間が乗ってた機体を解体とか見たくねえってレベルかもしれないし一応?

おいギバ、今手開かねェからあっち頼む


斑星・夜
【特務一課】
キャバリア:灰風号搭乗

それじゃ愛宕連山自動車道を進んで、司令部まで辿り着こー!
何事もないのが一番だけど、どうかな

移動中は小隊の子達の移動に気をつけつつ進みます
疲れてると思うから、離れたり遅れたりしそうな子がいたらフォローしよう

さすがギバちゃん、良い眼をしてるなー、ふふ。
うん!オーケー、キリジちゃん!どんどん積んじゃうよー!

進みながらUC『小さなお星様』を使用
小さく歌を口ずさみながら、白羽井小隊の皆や、ギバちゃんキリジちゃんも癒します
この星の光さ、俺的には見た目も可愛いし、綺麗だと思うんだよね
だから疲労の回復もだけど、気持ちの面でもちょっとでも元気の足しになったらいいなって



●特務一課
 広葉樹林茂る山々。その谷間を縫って伸びる高速自動車道。夜明け前で一層闇深いアスファルトの地面に、左右の路肩に並んで立つ街灯がオレンジ色の光を落とす。時折そよく風が夜空に黒い輪郭だけを残す木々をざわめかせ、銃弾と爆裂の音を遠方より運んでくる。平日ならトラックや一般車が行き交う愛宕連山自動車道だが、今はすっかり交通量もなりを潜めてしまっている。車輌と言えば乗り捨てられたり横転している輸送車や走行車ばかり。獣以外で行き交うものがあるとするなら、数時間前より内地浸透を果たした人喰いキャバリアか、或いは猟兵達と白羽井小隊だけだろう。静寂と戦火の香りを残した道路が真っ暗な世界に一筋の光となって取り残されている。愛宕連山の夜はひたすら暗く、ひたすら深い。
 夜明け前の撤退路を東へ進むキャバリアの列。若干数の白いオブシディアンMk4で構成された白羽井小隊と赤雷号、灰風号、そしてアリシアから成る特務一課の混成部隊だ。列の先頭は天城原の赤雷号が担っている。
 赤雷号の複合感覚装置が遙か前方の闇に目を凝らしている間、天城原は後ろを進む白羽井学園の訓練兵達に対する愛宕基地の処遇を追思していた。
 司令部がどこまで予見していたか定かではないにしろ、白羽井小隊に先刻の大物を相手取らせ、遅滞戦術が機能している内に本命を撤退させる。作戦としての正当性はある。殿を立てるのは戦争のやり方としては決して珍しい部類ではない。さして役に立つでもない訓練兵のお嬢様数十人と引き換えに温存していた多量の戦力と物資を後方に逃し、全体として見た生存確率を大いに向上させる目算だったのだろう。勿論理想とは言えない。であって妥当ではある。訓練兵と基地戦力を天秤に掛ければどちらに傾くかは自ずと解るだろう。だからこそ。
「気に入らないわね」
 通信装置を経由して斑星と何やら和やかに喋っている少女達の声が聞こえた。捨て奸の役回りを与えられた同年代の学兵。猟兵の介入が無ければ生贄となっていた筈の彼女らは本来有り得なかった分岐路を進んでいる。いっそこのまま生かして彼女らの上司に送り返してやれば疼く反骨心も多少は宥められるだろうか。
 戦列の眼を司る赤雷号の複合センサーシステムが遠方に動体を捉えた。警戒を促すメッセージがモニター上に表示される。火器管制機能を狙撃モードへ切り替え、予め射撃姿勢で構えていた二十二式複合狙撃砲の照準装置を併用してロックオンマーカーの位置を調整した。
「全体停止。前方12時に敵。数は一……いや、まだ増える。先に一匹片付ける」
 キリジと斑星の応答を待たずに天城原は操縦桿のトリガーキーを押し込む。赤雷号が構える長大な狙撃砲が薬莢を吐き出したのと同時に、照準を重ねていた目標の頭部が弾け飛んだ。
「さすがギバちゃん、良い眼をしてるなー」
 間延びした斑星の声が聞こえた。赤雷号は狙撃砲に装填されていた弾倉を引き抜くとチャンバー内の弾丸を排出し異なる弾倉を再装填した。
 先程頭部を射抜いた人喰いキャバリアに続いて複数の動体がセンサー感知範囲内に出現した。発砲音に誘引されたのか相対速度と進路からしてこちらに真っ直ぐ向かってきている。天城原は黙々と赤雷号に再度射撃姿勢を取らせた後、またしてもトリガーキーを引いた。
「動くんじゃないわよ! 本命が外れるから!」
 強い発射反動を伴って二十二式複合狙撃砲が放ったのは徹甲榴散弾。やや斜め上に向けて発射されたそれは弧を描いて接近する敵軍に絨毯爆撃の如く降り注いだ。遠方で爆光が連鎖して輝く。重ねて加粒子モードに切り替えられた複合狙撃砲が熱線を照射する。鋭く研ぎ澄まされた光の筋が一射される毎に敵が一体頭部や胸部などの重要機関を撃ち抜かれて沈黙した。
 見敵必殺の面制圧により生じた爆煙が晴れた頃、複合センサーが捉えたのは山の合間の奥まで伸びて山陰に消える静穏な愛宕自動車道の有様だけだった。
「正面クリア。全体進んで良し」
 狙撃砲を肩に担いだ赤雷号が歩を進めるのに合わせてアリシアと灰風号、白羽井小隊が続く。絨毯爆撃の爪痕を越えた先に至った頃、程なくして赤雷号の眼が新たな物体を捉えた。
「マダラ、キリジ。二時方向にコンテナが2基……それと……アンダーフレーム。損傷は激しくなさそうね。使えるモンは使っていきましょ」
 藤宮市までは長旅になる。道中拾い食い出来る物資は使うに越した事は無いと後ろで控える特務一課の構成員に回収を要請した。いざ向かおうと動き出した灰風号をアリシアが手で制した。
「あー、マダラはそこにいろよ。オレ拾ってくから、お嬢様方を見といてくれ」
 アリシアは道中乗り捨てられた日乃和の大型輸送車の荷台を牽引している。これに拾った物資を集積しているのだ。なお牽引には灰風号より借り受けたシルバーワイヤーを使用している。
「そう? オーケー」
 白羽井小隊のフォローに専念している斑星の通信の後ろからは、女子高生染みた黄色い声がちらほらと聞こえている。
「……モテる奴には似合いの仕事だろうしな」
 何か言ったかと尋ねる斑星に何でもないと面倒くさそうに答えたキリジは、天城原より回収要請があったコンテナへとアリシアを向かわせた。
「あのゲテモノ連中、箱には手ェ出さねえのか」
 キリジはこれまでの交戦経験からして、人喰いキャバリアは肉は食っても弾薬や燃料には全く興味を示さない習性を持つ事に薄々勘付いていた。
「偏食ってやつか? ま、無傷でありがてぇこったな」
 二つある内の片方のコンテナは未開封の状態で蓋が閉まっていた。だがアクセスコードは白羽井小隊から受領している。アリシアはコンテナの端末にマニピュレーターを接触させると、直接回線でコードを入力し難なく蓋を開いた。
「おおっとこいつは満杯だな。丸ごと持っていくか」
 蓋は開封したままの方が取り出しやすいだろうとそのままにし、アリシアはコンテナを担ぎ上げる。関節駆動部がけたたましく唸りを上げた。そしてコンテナをそのまま輸送車の荷台へと積載し奥へ押し込む。続けてもう一方のコンテナも積み上げ回収を終えた。
「次はアンダーフレームだったな」
 アリシアが路肩で擱座している日乃和軍のキャバリアに接近する。案の定コクピットがこじ開けられており、オーバーフレームも著しく損壊していたがアンダーフレームは比較的状態が良好だ。
「上半身だけぶち抜かれて……ってとこだな。綺麗に中身だけ喰いやがって」
 月明かりが差し込んだ際に、血塗れのコクピットの内部を見てしまった気がするがキリジは構わず仕事を続ける。足回りのスラスターなら簡単に剥がせそうだ。軍に一般普及しているキャバリアは互換性が高い。パーツさえ取っておけば換装作業はさして難しくはないだろう。アリシアがランブルビーストを非活性化状態でスラスター周辺の溝に差し込み、器用に剥がして行く。アリシアの爪の鋭さは紫電を纏わずとも健在だ。
「丸ごと持っていきゃラクなんだがな。ま、仲間が乗ってた機体を解体とか見たくねえってレベルかもしれないし一応?」
 キリジはその言動から普段乱雑で適当な享楽主義者の印象が強いが、存外細やかな所で気を利かせる一面も時折垣間見せる。人の感情の動きを見るのが好きという側面が現れているのだろうか。道中斑星とお嬢様部隊の会話を聞いていた、或いは訊かされていたキリジは、彼女らのキャバリアに対する思い入れが決して浅くない事を知っていた。もし白羽井小隊の隊長がこの気遣いを知っていたらよくよく感謝していたであろう。そんな解体作業を進めていた最中に天城原より通信が飛んできた。
「逆方向にもアンダーフレーム。路肩から外れてる。そっちも回収よろしく」
「なんだって? おいギバ、今手開かねェからあっち頼む」
 流石のキリジも真後ろの路肩にまで手は届かないと手隙な筈の斑星へ応援を求めた。
「うん! 頼まれた、キリジちゃん! どんどん積んじゃうよー!」
 何故か斑星が頼んでもいないのに白羽井小隊の数機が灰風号に続く。ここまでの行軍過程の中で最も小隊員に気を遣っていたからだろうか。皆平等にしきりに話しかけ、弱っている様子があれば駆け寄っては励まし、遅れている者がいれば誰よりも先に気付く。不健康でやや畏敬を感じる容姿とは裏腹の思いやりのある気さくな斑星の為人が白羽井女子の一部に直撃したらしい。キリジの呟きは的を得ていた。
「いやいや、ひとりでへーきだって」
 どうしても斑星を手伝いたいらしい白いオブシディアンMk4に灰風号が身振り手振りで不要とアピールするもお嬢様方は食い下がる。これから日乃和の、しかも無惨な死体入りの機体の解体作業を進めるというのに。ならばせめて見張りを宜しくと伝えると、漸く諦めてくれた。
「あなたたち……はぁ、わたくしの隊の者が邪魔を致して申し訳ありませんわね」
「いいのいいの。……今日も、空に星が見えるかな」
 白羽井小隊の隊長からの通信に応じた斑星は上機嫌に小さく歌を口ずさみながら解体作業を開始する。すると開かれたままの通信回線から声が良いだのなんだのという密やかな喋りが聞こえてきた。どうやら白羽井小隊の隊員達らしい。愛宕連山の上空を漂う叢雲が過ぎ去り、月と星の光が漆黒の山間を微かに照らした。
「あら、星が……こんなに綺麗に見えるものなのですね」
 星明かりを受けて夜空を見上げるフェザー01のオブシディアンMk4へ灰風号の頭部が向けられた。
「この星の光さ、俺的には見た目も可愛いし、綺麗だと思うんだよね」
「可愛い……?」
 フェザー01がはてと首を傾げる。
「気にしないで、マダラのその歌にはちょっとね」
「あぁ、気にすんな。聴いてりゃいい。気が晴れる」
「そういうものなのですか?」
 天城原とキリジの通信に更に首を傾げたフェザー01だが、言われた通り静かに聴き入っていれば心無しが胸元の奥底が穏やかに癒されて行くような感覚を覚えた。人喰い巨人との交戦に続く長く険しい撤退行軍で擦り減らした神経と気力が、星明かりが照らしては傷を覆い隠してゆく。そこでやっとフェザー01は天城原とキリジが言わんとしていた言葉を察した。
「そうですわね、良い歌ですわ」
 特務一課と白羽井小隊が共有する通信帯域には斑星のささやかな歌声だけが澄み渡る。粛々と警戒監視を続ける赤雷号。アリシアと灰風号の解体作業の金属音が月と星が見下ろす静寂な愛宕連山に響く。猟兵達はそう遠くない頃合いに自動車道を進む撤退行軍を終え、目的地の藤宮市へと辿り着くだろう。そこまでの道程、白羽井小隊の気力と戦力を支えた一端には特務一課の果たした功績が在った事は言及するまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※Ⅳ搭乗

戦列最後尾、高いセンサー感度活かし情報収集しつつ単独で殿として行軍

山道から駆動音と生体機の稼働音
猟兵に該当音紋無し、白羽井小隊は前方
…崩壊した前線から撤退中の!

三か所に分散
内二つは発砲音も無し
間の悪さにも程があります…!

背部コンテナから己の盾剣射出
機体と別行動し二か所へ
自身は山道の木の幹踏みつけ推力移動で疾走
同時並行で敵排除

あと一機、この地形では私の合流が早い
『「護衛機に追従し友軍と合流を!」』

……
(コクピット食い破られた機体、そして生体機)
吐き出して頂きます

大盾殴打から剣で素早く解体

許しは乞いません
全て私の責任です

腹を裂き内容物から遺品回収

…せめて、騎士として送り届けさせて下さい



●朝露
 いよいよ長い夜が終わりを告げ始め、東の稜線が微かな青みを醸し出した頃。愛宕連山自動車道にて猟兵達と白羽井小隊が構成する縦長の戦列、その最後尾末端にてトリテレイアのロシナンテⅣは殿の殿を担っていた。道路の左右を挟む暗い山々から時折襲撃を仕掛けてくる人喰いキャバリアもかなり頻度を落としていた。先鋒の猟兵達が殆どを引き付け或いは駆除してしまったのだろう。故にトリテレイアは後方により注意を重く傾ける余裕があった。搭載している全環境適応型のマルチセンサーは魔力の類いという例外を除いて殆どの異変を察知できる。後方より敵が追い縋ってくればいち早く迎撃態勢を取り、もし困難ならば即座に先行する友軍へバケツリレーの要領で情報伝達が可能だ。
 そしてそれは、人喰いキャバリア以外がもたらす異変であったとしても変わらない。
「振動と音信に反応?」
 ウォーマシンであるトリテレイアはロシナンテIVと感覚レベルで情報を共有している。その有り様は搭乗と言うより合体と表現した方がより適切なのかも知れない。そのトリテレイア自身にロシナンテIVが察知した外部の異変が警戒情報として出力される。音信の反応は二つのパターンだった。一方は人喰いキャバリア特有の生体部品の稼働音、もう一方はキャバリアの関節駆動と推進装置の音だ。トリテレイアのコアユニットが取り急ぎ音紋パターンの照合に入る。
「猟兵の機体、並びに白羽井小隊とも該当無し」
 この時点ではグリモアベースより新たに増援として転送されて来た猟兵である可能性も否定出来ない。だが過去幾百の戦闘経験を蓄積したトリテレイアの記憶装置が分析統合する情報が警鐘を鳴らす。人間で言うならばとてつもなく嫌な予感がするといったところだろう。
「更に音源のひとつより射撃兵装の発射音を探知、これは……」
「誰か応答を! 助けてくれ! もう弾が!」
「崩壊した前線から撤退中の!」
 日乃和軍の生き残りは白羽井小隊だけとは限らなかった。全周波数帯域で発せられた酷いノイズ混じりの通信。発信源の方角が先ほどから探知していた音源の方角と一致した。自動車道より外れた山間からだった。それ以上の状況精査を待たずにトリテレイアはロシナンテIVのメインスラスターに火を入れる。地面を蹴飛ばしてブーストダッシュし山林へと飛び込んだ。
「音源は三か所に分散し内二つは発砲音も無し。間の悪さにも程があります……!」
 暗闇の山林をスラスターの光を激しく迸らせながらロシナンテIVが疾駆する。先程の通信主がどれに当たるかは判別し兼ねる。確かな事は要救助者は三方向に分散しているという点。ロシナンテIV単機では恐らく間に合わないだろう。トリテレイアは早々に常軌を覆す力の行使を迫られた。
「少し無理をすべき時ですね……それで済めば安いものですが!」
 トリテレイアはユーベルコードの力を以てして自身のジェネレーター出力を強制的に引き上げた。一時的な作用ではあるが、現在のトリテレイアの出力係数はキャバリアであるロシナンテIV以上の数値を発揮している。
「ロシナンテIV、パージ」
 コクピットブロックが解放され内部に格納されている形で収まっていたトリテレイアが排出される。瞬時に四肢を伸ばし本来のウォーマシン形態に変形、ロシナンテIVが持って行けと言わんばかりに背部コンテナよりトリテレイアの騎士剣と大盾を射出した。
「ロシナンテIVは遠隔制御モードへ移行し第一目標へ急行」
 救助の優先順位をつけるなら発砲音の無い反応元を先とするべきだろう。半自動制御状態となったロシナンテIVと別れたトリテレイアは、第二と設定した目標の元へと走る。質量こそ通常のキャバリアより二回り弱ほどコンパクトとなったが、ウォーマシンである自身の戦闘能力はキャバリアにも及ぶ。ましてやユーベルコードの出力増強作用も働いているのだ。トリテレイアは道を遮る木々を踏み付けると直後にクイックブーストを行い三角跳びの要領で加速を重ねながら山林を擦り抜けてゆく。
 集音センサーが感知する稼働音がより近くなってきた。通信チャンネルからは先程からパイロットの助けを求める悲鳴ばかりが送信されている。今は一声掛ける手間も惜しい。音源反応の元へと急行すれば、そこには蟷螂型の人喰いキャバリアに組み敷かれ、胸部に鎌を突き立てられる寸前の日乃和の機体があった。
「加速で……!」
 トリテレイアは自身の全高ほどもある重質量の大盾を前面に突き出し、クイックブーストの急加速を伴わせて叩き付けた。横から突っ込んできた物体に5メートルの大蟷螂が凄まじい衝撃を受け弾き飛ばされる。トリテレイアは反動の衝撃を推進力で相殺すると、仰向けになってもがく大蟷螂の頭部に飛び込み長剣を突き刺す。ここを潰せばこの人喰いキャバリアは機能を停止する。他の猟兵とも共有されている情報だ。大顎がトリテレイアに喰らい付こうとするもシールドで受け止める。盾の表面に大きな切削跡が刻まれた。長剣は大蟷螂の脳天を貫き緑色の体液を噴出させたのち機能を完全に絶った。
「ロシナンテIVも目標の救出に成功、あと一機!」
 視界の左上のサブウィンドウにロシナンテIVの視界情報が表示されている。ライフルのダブルトリガーで斉射を浴びせ難なく人間型の人喰いキャバリアを蜂の巣にしたようだ。
 最後となった要救助者の一機、この地形ではトリテレイアからの方が近い。
「護衛機に追従し友軍と合流を!」
 先程トリテレイアとロシナンテIVによって万事に一生を得た日乃和軍の機体にそれだけ告げると、トリテレイアはスラスターの光を炸裂させて再び駆け出した。最後の救出対象は道路上に出たようだ。木々を蹴飛ばして加速を繰り返し自動車道への復帰を急ぐ。木々の隙間から大蟷螂に追われるキャバリアの姿が垣間見えた。長剣を刺突の構えで正面に突き出しフルブーストを掛け身のまま飛び込む。一発の徹甲弾となったトリテレイアが大蟷螂の頭部に突き刺さった。加速と衝撃に縺れあったまま転がるトリテレイアと大蟷螂の死骸。
 死骸を蹴って払い退けたトリテレイアが見たものは、キャバリアのコクピットブロックに頭を突っ込み何かを咀嚼している四足獣型ジャイアントキャバリアだった。
 ウォーマシンにとっては名状し難い情報処理がコアユニットに渦巻き、重量を持って感情を発露させる機能へと流れ込む。火器管制が作動するよりも、戦術思考プログラムが走るよりも、先にトリテレイアの大盾が人喰いキャバリアに殴打を繰り返していた。
 完膚なきまでに潰れてひしゃげて横倒しに転がった四足獣キャバリア。まだ痙攣する四肢に無機質な光を宿す直剣が差し込まれた。機械騎士は語らない。コクピットを食い破られた機体が発する火花と、剣が肉を裂く音が周囲に木霊する。胃と思しき機関を切り開くと、食い千切られ噛み砕かれた肉塊が零れ落ちた。原型は留めていないものの強化服の一部が明らかな人間の残滓を醸し出していた。
 返り血にまみれた物言わぬ騎士が肉塊に手を入れ内部を探る。引き抜かれた籠手には、鎖に繋がれた小さな金属の板が握られていた。金属板には人間の名前と思しき文字列といくつかの数字が打刻されている。今やこれだけが救えなかった者を証明する遺品となった。
「許しは乞いません。全て私の責任です」
 甲冑より悔悟を含んだ声音が落ちた。大兜の隙間より覗く一眼が微かに光を弱めた。血みどろの騎士は直立したままに握る金属板をただ見つめている。ひとつも切り捨てる事なく救えたはずの理想。叶わなかった現実。その狭間で機械騎士は何を思うのか。答えは矛盾に懊悩し続ける者だけが知り得るのだろう。
「……せめて、騎士として送り届けさせて下さい」
 死にゆく者が遺したそれを強く握り込む。握り締めた指の隙間から決して零れ落ちないように。青みを増した東の空の下、山の稜線より朝焼けの色が染み出していた。
 夜明けを越える直前の放射冷却によって空気が冷たさを帯び始め、大気の水が機械騎士の装甲に付着し滴り落ちる。朝露が血を洗い流す。愛宕連山の夜明けは、誰の代わりに泣き続けているのだろうか。
 最後の死者を迎えて愛宕連山自動車道の旅路は終幕へと至った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『エヴォルグ弐號機『HighS』』

POW   :    蟲速一閃・邂逅斬
【レベルの二乗倍の速度まで加速する事 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【すれ違い様に手か足】で攻撃する。
SPD   :     最速保持機『HighSpeed』
【自機の最速の一撃 】で攻撃する。[自機の最速の一撃 ]に施された【速度制限】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ   :    霹靂閃蟲・飛蟲斬
自身に【空気の流れを感知する触覚の感知網 】をまとい、高速移動と【共に敵の攻撃を避け空気を切り裂き飛ぶ斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●愛宕連山自動車道踏破
 前線を抜け内地浸透を果たした人喰いキャバリアが潜む愛宕連山。その山間を走る長大な自動車道を抜けた猟兵達と白羽井小隊は、藤宮インターチェンジより一般車道へと降った。ここが要請内容にあった撤退先である臨時の拠点、藤宮市駅前駐屯地への玄関口となる。
 道中複数の猟兵によって積極的な護衛を受けた白羽井小隊は田園地帯出立時から人数を減らさずに道程を乗り越えた。道すがら物資の融通や心身の手当てを受けていたため機体と搭乗者の状態も良好である。武装に至ってはミサイルやグレネードから重機関銃などと訓練生らしからぬ豪快な有様となってしまった。
 猟兵側も弾薬や推進剤を幾らか補充出来ている筈だ。更に若干名ではあるが白羽井小隊の脱走兵と思しき者や最前線を支えていた日乃和軍部隊の生存者の身柄も確保している。
 自動車道では人喰いキャバリアとの少なくない遭遇戦があったものの猟兵と白羽井小隊共に被害と呼べるものは無い。進路上に擱座していた日乃和軍のキャバリアや補給コンテナから回収した物資もまだまだ潤沢にあり、戦闘能力に限って言うならば疲弊の色は希薄だろう。

●藤宮市
 藤宮インターチェンジより一般車道に降りたのち、マップデータか標識の案内に従うまま進み続けると盆地に広がる地方都市が現れた。この地方都市こそ撤退先となる臨時拠点が置かれている藤宮市であり、グリモアベースでのブリーフィングの内容が正しければ最後の戦いが行われる場所でもある。
 藤宮市は日乃和軍が展開する三つの主要防衛線の内、ひとつ目とふたつ目の中間地点に位置している。臨時で置かれた駐屯地は情報伝達や物資輸送などの面で両者間を中継する重要な橋渡しの役割を担っていた。
 愛宕基地の要請通りならば、まさにここ藤宮市の駅前駐屯地で補給と整備を受けた後に第二防衛線司令部へ向かう手筈となっていた。
「これは……どういう次第ですの?」
 フェザー01が搭乗する白いオブシディアンMk4がやっとの思いで辿り着いた藤宮市の入り口に立つ。声音には愕然とも絶望とも付かない色が滲み出ていた。
 銃創が刻まれたビルに崩壊した家屋。市街の方々から立ち昇る黒煙と火の手。若干数の人喰いキャバリアの死骸。居て然りな重要拠点を守衛していると思しき者の姿は無く、幹線道路の両傍或いは真ん中にキャバリアの残骸だけが物言わずに力無く倒れ伏している。いずれの機体も共通してオーバーフレームがなんらかの強い力で抉り切られており、アンダーフレームを残してコクピットブロックは食い破られていた。愛宕連山自動車道を進む中で似たような有様の機体を見た猟兵達もいるだろうが、藤宮市に散在する機体の残骸はより凄惨な損壊具合となっている。
「だめですわね。オープンチャンネルで呼び掛けても誰も応答してくれませんわ。藤宮市には一個大隊が常駐していましたのに」
 駅前駐屯地から離れすぎているという事は無く電子妨害が及んでいる可能性も限りなくゼロに近い。にも関わらず駐屯地司令部はおろか誰一人として白羽井小隊の隊長の通信に応じる者はいない。
「まさか敵の大部隊に襲撃されて全滅したのでしょうか? 考えたくはありませんけれど」
 田園地帯で交戦した大型種という例外を除いて、人喰いキャバリアの個々の戦力は決して高くは無い。任官間近の訓練兵でも相手取れるレベルであり猟兵にとっては片手間で処理出来る程度の雑魚だ。真の脅威は幾ら倒しても湧いてくる数の暴力にある。既に内地に浸透している人喰いキャバリアの数が相当な値に達しているらしい現状を踏まえるなら、大群が押し寄せ瞬く間に壊滅したという可能性は大いにあり得る。藤宮市で何があったのか。いずれにせよ直接確かめる以外に手段は無い。
「兎に角、言伝されていた通りに駅前へと向かいますわ。ここで何があったのか確かめませんと」
 日乃和軍の駐屯地となっている藤宮市駅前こそが猟兵達と白羽井小隊共通の目標地点。夥しい数のキャバリアの残骸を踏み越えながら荒々しい戦闘の痕跡にまみれた市街を進む。過程で発生して然るべき人喰いキャバリアの襲来は無く、市街には猟兵と白羽井小隊以外の動体は見当たらない。燃える火災の音と得体の知れない翅音のような振動音ばかりが聞こえる。やがて駅前へと到った時、猟兵達は本任務最後の障害を目の当たりにする事となる。

●怪虫
 やはりキャバリアの残骸が撒き散らされている藤宮市駅前。駅前のロータリーを利用した日乃和軍の臨時駐屯地には救護所のテントが複数棟設営されていた。そのテントの一つに真上から頭部を突っ込んでいる怪虫の後ろ姿があった。
「な……にを……?」
 銃を向ける白いオブシディアンMk4の搭乗者が震えた声を出し絞った。硬直した駅前の空間に、肉を咀嚼する粘液質な音が響いている。
 人体を基礎にカマキリとバッタとカミキリムシを闇雲に混ぜ合わせたような形貌の怪虫が一心不乱に救護所テントの中身を貪り喰らっていた。背後から窺い知れる図体はキャバリアの倍以上はあるだろうか、かなりの巨躯だ。
 肉の咀嚼音に紛れ、微かにだが人間のものと思しき呻きと止めて食べないでというか細い声が聞こえた。
「おやめなさいッ!」
 激昂に駆られたフェザー01が後先を考えず条件反射でオブシディアンMk4を介して小銃を撃ち放つ。鋼の弾ける甲高い音が跳ね返り、発射された弾丸はいずれも怪虫の甲殻に阻まれた。食事中だった怪虫の動きが止まり、頭部を救護所テントから引き抜いたかと思えばSwollenを想起させる白面が発砲者であるフェザー01のオブシディアンMk4へと向けられる。目に相当するらしい三角形の感覚器官が新たな獲物を捉えた。オブシディアンMk4が次の行動を取るよりも先に、まるで黒光りする不快虫の如き敏捷性で怪虫が肉薄する。巨躯からは想像し難い速度に白羽井小隊の隊長の反応が一手遅れた。腕部が変異した巨大な鎌がオブシディアンMk4に振り下ろされた。
「あぁぁぁぁぁあッ!!」
 間一髪でシールド防御が間に合うも、攻撃をまともに受けた盾は一撃でほぼ真っ二つになり盛大に後方に吹き飛ばされた。中身を食い損ねた怪虫はなおも追撃を試みるが、他の白羽井小隊の機体が放ったロケット砲や重機関銃の応射に曝され、再び凄まじい敏捷性を発揮し後方に飛び退くと翅を広げて飛翔。昆虫宜しくな動きで駅前ビルの側面へと張り付いた。その間に幸い盾を失い吹き飛ばされただけで済んだフェザー01のオブシディアンMk4が体勢を整える。怪虫は長い触覚をしきりに動かしながら首を高速で左右に傾げている。猟兵達と白羽井小隊の様子を伺っているのだろうが、白面の三角眼と動作が相まってせせら嗤っているようにも見えた。
「あれが、藤宮市の部隊を……!」
 顎周りにこびり付いている赤黒い物体からしてフェザー01の予感は恐らく的中しているだろう。垣間見せた戦闘能力からして大隊ひとつを食い尽くすのも不可能では無さそうだ。そして滲出した過去に対する抗体である猟兵達も敵の正体を察知していた。あの怪虫こそがオブリビオンマシンであると。予知にあった都市部での宿命、つまり本任務の実質的な最終撃破目標だ。
「猟兵の方々! お願いです! あれを殺してくださいまし! わたくし達ではどうにもなりませんの! もしあれを逃して通せば、日乃和が……!」
 白羽井小隊の隊長が様々な感情を巻き込んで半ば泣き縋るように叫んだ。戦う事が防人の義務なれど、先の一瞬で圧倒的な力の差を痛感させられてしまえば到底自分達の手に及ぶ相手では無いと否応にも現実を突き付けられる。これを殺せるのは猟兵達以外には絶対にあり得ない。一方の怪虫の興味は猟兵達に移り変わったようだ。せせら嗤う白面の大顎が軋む音を立てて打ち鳴らされた。

●任務内容更新
 猟兵側にとってはブリーフィングの中で予め想定されていた状況だが、撤退地点である藤宮市駅前駐屯地が壊滅したため怪虫のエヴォルグ弐號機『HighS』との交戦を余儀無くされた。この敵の撃破が未来を決める最後の分岐点となる。目標は敵の抹殺ただひとつのみ。

●戦域状況
 戦闘の舞台となる藤宮市はUDCアースの日本などでも見られる地方都市で、そこそこの背丈のビル群と背の低い商店や家屋などで構成されている。市中を走る道路の幅は狭かったり広かったりと一定ではないが、大通りならばキャバリアが戦闘機動を行う分の空間的余裕は十分確保されている。
 また、山間の盆地という事で殲禍炎剣の照射警戒高度の厳しさは愛宕連山自動車道より遥かに甘い。ビルより多少高く飛んだところで照射警報に煩わされる事は無いだろう。ただしこの環境条件は敵側にも該当する。

●敵戦力
 交戦する対象は虫型のジャイアントキャバリア、エヴォルグ弐號機『HighS』単機となる。内地浸透していた他の人喰いキャバリアは市内には見当たらず、骸だけが転がっている。
 性質は極めて獰猛。猟兵達をも捕食対象として認識しているらしく、喰える隙があれば決して逃しはしないだろう。鎌や顎に加えて鋸状の脚が特徴的な外観通りに近接戦闘を主体としており、さながら台所に出現する不快な昆虫宜しく凄まじいまでの俊敏さと翅を使用した飛翔能力を有している。小銃の弾を跳ね返したことから甲殻の硬度も相応と見て取れる。
 更に人間を散々食い尽くした為か体積が通常のキャバリアの倍近くまで膨れ上がっていた。結果的に体重増加によってあらゆる攻撃が重く強烈になっていたとしても不思議では無い。先に交戦したSwollenと同様生体組織をふんだんに使用したジャイアントキャバリアだが、再生能力の有無については現時点で判別し兼ねるところだ。

●戦闘開始
 最も暗い夜明け前が過ぎ、愛宕連山の空が青みを増してきた早朝の時間帯。崩壊した藤宮市に炎の燐光孕む冷たい風が吹く。猟兵達の成すべき役割は人肉を喰らいに喰らって肥大化した怪虫型キャバリアの完全抹殺ただ一点。この戦いで未来の分岐先が確約される。生存か虫の餌か、愛宕連山で繰り広げられた撤退劇の終着点は猟兵達に委ねられた。
ノエル・カンナビス
「エイストラより白羽井小隊へ。猟兵陸戦機の陰にいなさい。離れないように」

バイブロジェットでエヴォルグ弐號機と同高度か、やや上まで浮きます。
私が避けた攻撃が地上に及んでは困ります。

そして先制攻撃/指定UC。確実を期すにはこれしかありません。

範囲攻撃/キャノンによるおびき寄せ/第六感/見切り/操縦/空中機動/推力移動、
エヴォルグ弐號機の攻撃を可能な限り誘引し、攻撃目標になり続けます。
相手が停止したら貫通攻撃/ライフルで急所狙い。

真っ直ぐ突っ込んでくる気配があればカウンター/咄嗟の一撃/武器受け/
鎧無視攻撃/一斉発射/ミサイルの全弾ノーロック射撃で正面衝突狙い。

後は成り行きです。一歩も引きませんよ。



●翅
 バイブロジェットが放出した風圧がアスファルトに積もった塵を巻き上げ、エイストラに浮力を与えて飛翔させた。相対する巨大怪虫のHighSは背丈の高い駅前ビル側面に張り付いたまま、触覚をしきりに動かしている。バイブロジェットの噴射する圧縮空気の流れに反応しているようだ。両者の高度はほぼ同等。水平に直線で結ばれている。
「エイストラより白羽井小隊へ。猟兵陸戦機の陰にいなさい。離れないように」
 抑揚の無い口調でノエルが告げると、視界の外に控えていた白羽井小隊の機体が一斉に後方へと下がった。その動きに釣られたのか、白面をそちらへと向けた人喰い怪虫の挙動をエイストラのセンサーカメラが捉えていた。怪虫が翅を伸ばしたのと同時にノエルはサブのウェポン・セレクターをプラズマキャノンに合わせる。先手必勝。エイストラの背面ユニットに搭載されていた砲塔が正面への攻撃目標へと向けられ、青白い光の奔流を放出した。生じる反動はバイブロジェットの推進力で相殺する。HighSが翅を羽ばたかせるよりも先にエイストラの放った荷電粒子が直撃する方が僅かに早かった。HighSは胴に浴びせられた熱線に身を捩りながら強引に飛び立つ。
「耐ビームコートですか」
 プラズマビームは直撃とは行かなかったものの確かに命中した。しかしノエルは命中した瞬間、ビームが甲殻に沿って流れ拡散する様を見た。恐らくは表面に何らかのエネルギー偏向作用が働いているのだろう。だがそれも無限では無いはずだし先の攻撃も無駄ではなかった。命中箇所の色味と質感が僅かに変異している。
「誘いに乗ってくれれば良いのですが。私が避けた攻撃が地上に及んでは困ります」
 いよいよ飛び立ち獲物を空襲するHighSに対しエイストラはバイブロジェットからより強く空気を吐き出させ後方へと加速する。怪虫は自動車道を進む過程で遭遇した人喰いキャバリア同様の生態を持っているらしく、行動に戦術思想らしいものは見受けられない。獲物が逃げれば追う。ノエルの誘引は既に成功していた。
 バイブロジェットと虫の翅音が夜明けの空に鳴り響く。凄まじい加速でHighSが鎌を振り上げエイストラに接近を仕掛ける。エイストラは鎌のリーチが届く限界まで引き付けると横に瞬間加速して擦り抜けた。
「このまま誘引し続けます」
 二種類の推進装置を巧みに扱った舞踏の如き回避運動。HighSは一撃離脱し斬りかかるが、エイストラはまたしても間合いを見切って鎌が走る直前にクイックブーストし躱して見せた。
 そしてバイブロジェットの機体制動で反転、強烈な重力加速度がノエルの身体をシートに押し付ける。振り向き様に発射されたプラズマライフル。ハイチューンドエンジンから供給された電力を受けて放出された荷電粒子が旋回中のHighSを射った。貫きこそしなかったものの体勢は大きく崩され、飛行軌道が不安定なものとなる。加えてもう一射されたプラズマライフルが急所であろう頭部を命中した。白面の表面に衝突した荷電粒子が分散して流され、怪虫が苦悶に顎を軋ませる音を立てた。
 それでもHighSはエイストラに執拗に攻撃を加えようと直進してくる。ノエルをどうしても捕食したいのか頭部をプラズマビームで炙られ怒っているのか定かではないが、何にせよ喰われてやる理由などノエルには万に一つもない。バイブロジェットが出す騒音と独特な空気流動の影響もあってか誘引効果も継続しているようだ。
「正面から来ますか。なら一歩も引きませんよ」
 真っ直ぐ高速で接近するHighSに対しエイストラはプラズマライフルとプラズマキャノン、そしてキャノンと同じくバックユニットとして装備しているランチボックスを向けた。ノエルが指を乗せているトリガーキーを引くと、二本の荷電粒子の光線と単一目標を多重補足したハイスピードマイクロミサイルが立て続けに発射された。荷電粒子の後に小型誘導弾が次々に着弾する。青白い光が弾けて直撃したミサイルが生じさせた黒煙にHighSの姿が覆い隠される。まだ殺気は消えてない。ノエルはブーストペダルを限界まで踏み込むとエイストラの正面に加速させた。黒煙を割ってHighSが現れる。エイストラがバイブロジェットとノーマルブースターの両方の噴射光を靡かせ急速接近し腕を振るった。両者が交差した瞬間、エイストラの腕部に内蔵されていたビームブレイドの刃が一瞬煌めいた。HighSの顎が宙を切る。引き換えに腹部に刻み込まれた光の軌跡。HighSが身体を捩りながら呻きに近い甲殻の軋む音を上げ、獲物を追い回すのを一旦諦め市中へと降下して行く。
「どこへ行くんです?」
 機体を反転させたノエルが感情を見せない顔のまま淡々とトリガーを引く。エイストラのライフルとキャノンから放たれる青白い荷電粒子が右往左往しながら地に降りようとするHighSの背面へと冷徹に撃ち込まれる。
「……後は成り行きです」
 これ以上は無駄かとノエルはトリガーキーを押し込んでいた指を離した。HighSは地に落ちて建物の間を高速で這い回り姿を消した。ノエルが御するエイストラによって切られた初手。量の程は定かでは無いにしろ、怪虫が逃げ腰になる程度の損傷は確実に蓄積された。白と黒の装甲色のキャバリアは、振動する翅音を靡かせながら空中に留まっていた。その双眸はいまだ切られたばかりの戦端の先を見据えている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『速いな…だけど・・・ぶっとばす!!」
【戦闘知識】で相手の動きを見極め、【オーラ防御】を幾重にも重ねたシラヌイでの【武器受け】と【見切り】により最小限のダメージにとどめる。
【制圧射撃】による牽制と建物をうまく使い正面からくるように誘導。
UC【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】を起動と同時に自身の武装(パルスマシンガンとハイペリオンランチャー)を斉射することで相手にダメージを加えるぜ!!



●炎獄殺
 怪虫は獲物と見做したキャバリアから予想だにしていなかった反撃に遭い、地に落とされ這う這うの体で市街のビル群へと紛れ込んだ。体勢を立て直すという概念を持ち合わせているのかは如何とも言い難いところだが、やはり行動原理は見た目通りの肉食昆虫らしい。一時的に怯んで退散しただけのようだ。早くも次の獲物を探して触覚を動かしている。
「早いな……だけど……ぶっ飛ばす!」
 市街を這い回るHighSの後をガイの特空機1型『スターインパルス』が追う。背面から排出されるブースターの騒音に気付いたHighSがスターインパルスの方へと素早く旋回し翅を開いて飛び掛かった。肘から下が丸々変異した鎌の両腕が鋭い音を立てて空気を切る。
「食い付きやがったな!」
 ガイは愛宕自動車道を走る最中、この怪虫と類似した蟷螂型の人喰いキャバリアと交戦した経験がある。完全に同じ感覚とはいかずとも活かせる戦闘知識はある。
「すばしっこい奴に無理に合わせてやる筋合いは、ねえッ!」
 スターインパルスが刀身を重層にフィールドコーティングしたシラヌイを縦に振るう。攻撃が目的では無く刃を受けるための武器受け。剣速が最大に乗る瞬間を見極めた縦切りがHighSの鎌とぶつかり合った。甲高い音と激しい火花が散る。鍔迫り合いの衝撃をまともに食らい敢えて弾き飛ばされるスターインパルス。姿勢制御を取りつつも試製電磁機関砲1型をフルオートで速射し牽制、甲殻に弾かれるが構わない。地上から僅かに滞空した状態を維持し大通りと比較すると狭い道幅の道路に入り込んだ。HighSも衝撃を受けて地上に落ちると食欲のままに逃げる獲物を追う。
「間抜けが!」
 スターインパルスが曲がり角の先で待ち構えていた。正面にはHighSの姿。左右のビル側面を足場に這い回って高速接近してくる。目眩しにと試製電磁機関砲1型をフルオートモードで撃ちまくった。レティクルは頭部に合わせられている。銃弾が白面をノックし次々に跳弾するも流石に頭を撃たれてはただでは済まないらしく、鬱陶しそうに首を振る仕草を見せた。ガイはその一瞬で生まれた隙を本命の攻撃へ繋げる好機とした。
「我が刀に封じられし、獄炎竜の魂よ!! 荒ぶる紅蓮の炎となりて、すべてを灰燼と化せ!!」
 ガイの百花妖炎刀が熱の脈動を放ち、秘めた炎龍の魂を呼び覚ます。放出された熱は炎に転じてスターインパルスのシラヌイを携える腕に纏わり付く。前へと突き出された腕を触媒に九つの獄炎の渦となってHighSの身を捕縛した。意識を持っているかのように喰らい付く紅蓮の炎にHighSは悶えてのたうつ。虫型だけあって火が苦手なのかも知れない。
「遠慮すんな! こいつも持ってけ!」
 撃ち尽くした試製電磁機関砲1型に新たな弾倉を叩き込み、今まで温存していた試作型高圧縮重粒子砲、ドラゴン・ストライクを起動する。折り畳まれていた砲身が展開して銃身を伸長し、銃口より凄まじい光量の荷電粒子を吐き出した。未だヴリトラ・ファンタズムに巻き付かれているHighSへパルスマシンガンと竜殺しのハイビームキャノンが殺到した。横幅の空間が制限されている事もあって衝撃と熱量が拡散せずHighSへと叩き込まれる。轟音が波動となってアスファルト上の堆積物を吹き飛ばした。炎柱とビームと実体弾が混濁した空間の中で、のたうつ怪虫の姿をガイは目視した。
「人間を舐めすぎたな、虫野郎!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
目的が打ち砕くことであれば、迷うことありません
――いざ勝負です、『HighS』!

「ブライト・ナイト」のブースト全開での
【ダッシュ】で至近距離の戦いを挑みましょう

機体も私に似て頑丈です、そうそうやられないですよっ
敵からの攻撃は【見切り】直撃を避けたうえで
機体を包む【オーラ防御】で甚大な損傷を避け、
【カウンター】のナックルを叩き込みます

私自身の【功夫】をトレースする機体です、
近接戦こそ――特に大きな相手こそ燃えるもの!
【勇気】と【覚悟】とともに、
機体の関節部や急所を突く【鎧砕き】の
打撃を入れていく

相手の動きが鈍れば、今が決め時と
ビーム発生装置を全開、輝く拳での
《トランスバスター》で打ち砕きますッ!



●輝く拳
 ユーフィにとってこの戦いに一切の迷いは存在し得ない。喰うものと喰われる者が生存を賭けて戦う。我が鉄拳とブライト・ナイトに課す闘志は敵を打ち砕くことだけ。透き通った炎が胸中に灯る。
「いざ勝負です、HighS!」
 ブライト・ナイトが使用し得るあらゆる推進装置から光を放射し、爆発的な瞬発力を生じさせ打ち倒すべき敵へと果敢に突進する。対する怪虫のHighSも同様に、ブライト・ナイトに搭乗するユーフィを食出のある新鮮な肉と認識して顎を打ち鳴らしながら高速で道路を這い接近。双方の距離は数秒で縮まる。HighSが先に初手を打つ。ブライト・ナイトのオーバーフレームを食い千切らんと上体を起こし、大顎を開いて挟み込もうとした。
「思い切りは良くても、まっすぐ過ぎますね!」
 機体の左右より迫った大顎を、ブライト・ナイトはビームフィールドを纏ったブリッツ・ファウストで受け止める。挟み込む力が最大に乗る手前を見破った神業と言っても過言ではない防御術。密林に住む部族出身であるが故か、対人技術だけでは成し得ないであろうそれを培ったのは、あり得たかも知れない人間とは異なる強敵を相手取った経験だろう。
 大顎を受け止めたブライト・ナイトが強烈な蹴り上げを見舞う。甲殻を叩く衝撃音と共に頭部を下から上へと掬い上げられたHighSは後ろに仰け反るが、反撃に腕部がまるごと変異した鎌を突き出す。
「ブライト・ナイトは私に似て頑丈なので!」
 元より激しい格闘戦を想定しているブライト・ナイトだが、機体全体を包む闘気の障壁と相まってより強靭化しており、ビームフィールド発生装置を搭載しているブリッツ・ファウストは更に高い恩恵を受けている。その鋼の拳を用い、ブライト・ナイトは突き出された鎌の切っ先を片手の甲で滑らせた。
「そう簡単にやられないですよっ!」
 削り取られたフィールドが火花に近い明滅を繰り返しながら粒子となって空中に霧散する。ただで殴らせてやるほどユーフィは安く無い。もう一方のブリッツ・ファウストが捻りを加えた動作でHighSの顔面を横から打ち据えた。
「やはり大きな相手こそ燃えますね!」
 脳を揺さぶられ大きな怯みを見せたHighSに対し一歩深く踏み込む。徒手格闘が最も有利となる間合いに入った。ブライト・ナイトが操者であるユーフィの功夫式無呼吸連打を忠実に再現し隙間の無い格闘術を立て続けに叩き込む。自身を美味な肉と見做している巨大怪中を前に、ユーフィは恐れの色を全く見せないどころか闘志を煮え滾らせている。強敵との命賭けの戦いが勇気と覚悟を生んでいるのだろうか。
 HighSも懐に入り込んだブライト・ナイトを鎌や鋸状の足で捕えようとするが、関節部を狙った深く重い格闘連撃によって動作を阻止されままならない。並みならぬ硬度と靭性を持った甲殻が悲鳴に似た音を立て軋む。しかしユーフィにとってここまでの功夫連打はあくまで前段階。動きを鈍らせた好機を作り出し、本命の一撃を打ち込む。
「行きますよぉっ!」
 間髪入れる隙間も無いほどの止まぬ殴打の音が途切れた。ぐらりと傾くHighSの巨躯。藤宮市の時間が一瞬停止したかと錯覚するような静けさの中で、ユーフィは研鑽された自身の肉体の毛細血管から筋肉繊維の一本に至るまでに魂が無限に生み出す闘志を行き渡らせた。腰以上に届く長いツインテールの髪が騒めき立つ。肺の中の酸素を全て吐き出し、深く息を吸い込む。無理矢理に攻撃姿勢を取ったHighSが左右の鎌を同時に振り上げ突き立てんとするが、ユーフィの更なる踏み込みをブライト・ナイトがトレース方が素早かった。
「トランスッ! バスタァァァーッ!」
 ユーフィが咆哮し、ブライト・ナイトが動力炉を唸らせスラスターを最大噴射する。加速と重量そして闘志が乗算されたブリッツ・ファウストが、友に託された思惟をも巻き込んだ極光を纏いHighSの胴体へと打刻された。直撃の瞬間に生じた凄まじい衝撃波が、周囲のビル街の窓ガラスを全て破砕し宙に散らせる。
 打刻点より光が炸裂すると同時に、ブライト・ナイトの数倍の体積を持つHighSの巨躯が一直線に跳ね飛ばされた。そのまま背後のビルに激突して身体をめり込ませる。HighSは降ってきたコンクリートの雨と灰色の煙にまみれた先で、悲鳴とも呻きとも付かない顎を開閉する不快な音を木霊させた。
「これが森の勇者の、一撃ですっ!」
 ユーフィの動作に追従して打ち鳴らされる両のブリッツ・ファウスト。接触したフィールド同士が眩い輝きを弾けさせた。藤宮市を横切る幹線道路の中央に威風堂々と仁王立ちするブライト・ナイトの周囲には、砕け飛び散ったガラスの破片が白い光を反射しながら宙を舞っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
ここにいた人達…
…許さないからっ!

心は熱いけど、頭は冷静に…
生半可な威力では牽制にもならないなら!

ビームランチャーとツインキャノンをメインに攻撃
若干時間差をつけての偏差撃ちだね
当たって、怯んだら全射撃武装からの、一斉発射っ!!
ま、これで何とかなるな苦労しないよね

敵攻撃は、空中機動・推力移動をフル活用して、残像も生み出しての攪乱機動
バレルロールなども使って回避&ランチャーでの攻撃でカウンター

本命は、回避・攻撃時から詠唱を重ねて…
多重詠唱で魔力溜めを並行して行い、全力魔法で限界突破の《指定UC》!

あえて敵の懐に潜り込み、敵攻撃は致命箇所をオーラ防御で被弾覚悟だね

懐から上空に向けてUCを撃つっ!



●空戦
 HighSは身にかかるコンクリートの欠片を振り払い翅を開いて飛び上がる。地上にいては不利だと認識する程度の防衛本能はあるらしい。しかし空は空でそこを狩場とする猟兵が存在した。精霊機ブルー・リーゼMk-Ⅱも空の狩猟者に連なる一機である。
「ここにいた人達……許さないからっ!」
 操縦桿を握り締めるシルの空色の瞳に怒りが灯る。されども思考は氷の冷たさを維持して厳かに照準状況を確認しトリガーキーを押し込んだ。ブルー・リーゼMk-Ⅱの主力火器であるブラースク改が速射モードで魔力から変換されたビームを放つ。複数の光弾がHighSの甲殻に命中するも、コーティング剤に類似した表面層を僅かに削り取って粒子を飛散させるに留まった。
「生半可な威力では牽制にもならないなら!」
 先程の攻撃を受けたHighSが狙いをブルー・リーゼMk-Ⅱへと変えた。凶悪極まりない鎌を大きく振りかぶって音さえ置き去りにする速度で接近する。振り抜かれた凶刃はブルー・リーゼMk-Ⅱを引き裂いた。
「なんてね!」
 幻すら残すブルー・リーゼMk-Ⅱの加速。切り裂かれたのは残像だった。既にHighSの横腹側から後方へと擦り抜け大きく間合いを離したブルー・リーゼMk-Ⅱは狙撃モードのブラースク改と背部バインダーユニットにマウントした二門のテンペスタを、喧しい翅音を立てて飛び回る巨大怪虫へと向けていた。
 まずブラースク改が発射され、若干の間を置いてテンペスタが双発発射された。HighSは自身に向けられた一射目を相反する極の磁石のように避けるも、回避運動込みで偏差を計算して放たれていたテンペスタの光軸に直撃された。甲殻の表面をビームが流水のように迸る。飛行姿勢が崩れた。
「ここで!」
 単一目標を多重ロックオンしていたリュミエール・イリゼより指向性ビームが放たれる。そしてブラースク改とテンペスタから三つの光軸も伸びる。いずれもHighSを射止め青と七色の爆光を咲かせて姿を埋め尽くした。
「うわっと!」
 やはりHighSは倒れず諦めない。光の中を切り破って獲物を喰らわんとすれ違い様に鎌を薙ぎ払う。ブルー・リーゼMk-Ⅱは半身のスラスター制御でバレルロールを行い皮一枚で躱して即急旋回しブラースク改を発射した。既に方向転換を終えたHighSに命中するも甲殻に阻まれ致命打には至らない。しかしシルにとっては想定の内にある。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ……」
 HighSは外見通りに虫らしく戦術思想を全く感じさせない直線的な動きで一撃離脱を繰り返す。シルは詩歌を紡ぎながらブルー・リーゼMk-Ⅱに紙一重の回避に次ぐ反撃を繰り返させる。これはあくまでも言霊が完全に力を蓄積させるまでの手段に過ぎない。
「暁と宵を告げる光と闇よ……」
 幾度目かの同じ回避運動を終えた頃、ブラースク改の砲身が魔力由来の淡い発光を纏い始めた。それまで回避一手に専念していたブルー・リーゼMk-Ⅱの動きが反転し、自らHighSへと突入を敢行する。鎌が閃きフィールドコートされたブルー・リーゼMk-Ⅱの白い装甲が微かに削り取られる。その代償を支払って腹下へと潜り込みブラースク改を構えた。
「六芒に集いて! 全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 十分な時間を取って重ね唄い紡がれた詩歌によって蓄積された魔力が、砲身保護の目的で課せられた出力制限を解除したブラースク改より放射された。複合属性の混沌複雑とした光軸が至近距離からHighSへと叩き込まれる。キャバリアの倍以上の体積を重力に逆らい空へと押し上げる高密度の魔力ビーム。砲身の溶解を知らせる警報音が鳴り続けているがシルは構わずトリガーを引き続ける。HighSは離脱しようと手足をばたつかせるが暴力的なまでの出力で放たれたエネルギーに抗えず上へと押し流された。
 やがて長い照射時間を終えたブルー・リーゼMk-Ⅱのブラースク改は遂に銃身の半分が灼けて溶け落ちる寸前の状態に至った。主力兵装と引き換えに巨大怪虫に刻んだ損傷は大きく、空に於いても猟兵は狩る側の存在である事をシルは実践を以てHighSに叩き込んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
ま、新人に遅滞行動させてる時点で正規兵壊滅は予想通りでしたな
これぞ戦場!ようこそお嬢さん達(小隊長機の肩の上で)

拙者のシリアスシーンはここで終わり!お楽しみと言ったろ!
敵のなまら激しい挙動、機体の残骸、敵の死骸が揃った時…【物理演算の神】が降臨する!不要なオブジェクトは負荷になるんだ…お戯れのバグが来るぞ!

奇跡のカーニバル開幕だ!!敵の身体が異様に伸びたリ空中に固定されたり上半身だけ回転したり…ダハハハハッ不用意に動くからだ!
そういえば小隊長、君名前は?ちょっとアイツめがけて投げてくんない?投擲とバグでエグい加速した【流体金属】拳!からの張り付き!残虐行為手当は頂きですぞ!触覚全部折ってやる!



●ハヴォック
 猟兵とHighSの激突は初戦より勢いを急速に増していた。白羽井小隊の各員は自らの技量ではあの怪虫に及ぶ由も無い現実を叩き付けられ、猟兵の足手纏いにだけはなるまいと後方に下がりながらも警戒を緩めず各々銃火器の先端を向け続けている。
「ま、新人に遅滞行動させてる時点で正規兵壊滅は予想通りでしたな」
 エドゥアルトはいつの間にか隊長機の肩へと戻っていた。普通ならこの時点で色々問い質す所があるのだが、スーパロボットを呼び出したりパンジャンドラムを転がしたりする危険なおじさんには訊くまいとの呟きをフェザー01は胸中に仕舞い込んだ。
「ですが一個大隊がたった一機相手に全滅するなんて、まだ遽に信じ難いですわ」
「あり得ないなんてのはあり得ない、これぞ戦場! ようこそお嬢さん達!」
「こんな戦場、次回は御免被りたいですわね。次回があればですけれど」
 相変わらず狂ったように明朗なエドゥアルトと対照的にフェザー01の声と表情は重く暗く険しい。
「拙者のシリアスシーンはここで終わり! お楽しみと言ったろ!」
「……シリアスだった時がありましたかしら」
 何か思い閃いたらしいエドゥアルトが立ち上がった。危ないからせめて座ったままでいてくれと言う白羽井小隊の隊長へ大丈夫だ問題ないと告げると、途端に表情を厳かに硬めた。
「敵のなまら激しい挙動、機体の残骸、敵の死骸が揃った時……物理演算の神が降臨する!」
「物理演算の……神?」
 悪寒にも近い凄まじく嫌な予感がフェザー01の背中を這い上がった。聞き覚えの薄い言葉なはずなのに良く知っている気がする。動かす事が可能な万物に作用し、些細な切掛で荒ぶる神。今エドゥアルトを止めないと危険だと防衛本能が警鐘を鳴らす。
「詳しくは存じませんけれど、こんな残骸まみれの場所で降臨されたら非常に不味い神なのではございませんこと?」
「もう時既に時間切れ! 不要なオブジェクトは負荷になるんだ……お戯れのバグが来るぞ!」
 白羽井小隊の前にHighSが喧しく翅音を立てて飛来してきた時、それは起こってしまった。巨大な動体が飛行時に生じさせる周囲への物理法則。砕けたコンクリートやキャバリアの残骸が震え出したかと思いきや突如回転し始め、通常では有り得ない挙動で跳ね回りHighSを直撃した。
「奇跡のカーニバル開幕だ!」
「ちょっと! お止しになった方が!」
「いやぁもう止められないね! なにせこの神様は気紛れなもんで!」
 世界の根幹を司る不可視の神が藤宮市全域の空間を戦慄させる。荒ぶったオブジェクトが他のオブジェクトに衝突すると、連鎖的に物理法則の異常を引き起こす。四方八方から固定されていないあらゆる物体が飛び交いその内の少なくない数がHighSを直撃した。巨躯が大きくバランスを乱し地面に落着する。その動作すら物理法則を狂わせる切掛となった。やがて狂乱は物言わぬ物体に限らずHighS自身にさえ及ぶ。
「なんだか変な動きをしてるようなのですけれど!」
「ダハハハハッ! 不用意に動くからだ!」
 おぞましい表情でエドゥアルトが高笑いする。繰り広げられている光景はまるでMOD界隈が賑わいを見せる世界的に有名なオープンワールドゲームや15番目の名を冠するロールプレイングゲームで時折見られるバグのようだった。HighSが高速回転を始めたかと思いきや手足が水平線の彼方まで引き延ばされ、関節部が曲がってはいけない方向に曲がりだす。
「あり得ませんわ、これじゃ世界が破綻してしまったようではありませんこと……」
 白羽井小隊の隊長は人間の脳が認識可能な範疇を越えた事象を見た気がして、頭から血が引き目の前が眩む感覚を覚えた。しかし倒れてなどいられない。
「そういえば小隊長、君名前は?」
「ああもう、こんな時になんですの!? フェザー01だともう散々ご存知でしょう!?」
「コールサインじゃなくて! なーまーえー!」
 未だ荒ぶり続ける神によって物体が飛び交い続ける最中、エドゥアルトが声を張り上げて白羽井小隊の隊長機へ問う。
「そちらの? わたくしは東雲――」
 と言い掛けた途端に巨大な物体がエドゥアルトと白羽井小隊の頭上を掠める。損壊したビルの一部だった。
「きゃあぁぁッ!?」
「うおっち! いぇーいスリリング!」
「あれを殺す前にわたくしたちが死んでしまいますわ! 早く止めてくださいまし! よく分からない世界の不具合で殉職など、末代までの恥でしてよ!」
 壊れた物理法則によって吹っ飛んでいったコンクリートの塊は、痙攣のような挙動を取らされ続けているHighSに当たって砕けた。流石にこれは強烈だったらしくHighSが身を捻って呻く。なお、砕けた際に生じた無数のコンクリート片も神の怒りの対象物となってしまった。
「ほら結果オーライ」
「余計悪化してるのではありませんこと!?」
「じゃあそろそろ鎮まらせますか。ちょっとアイツめがけて投げてくんない?」
「はあぁ!? 今度は何を!」
「いいから早く! 伸びてる今がチャンスなの!」
 エドゥアルトはフェザー01の答えを待たずにオブシディアンMk4の肩から腕へと這って移動した。そして自らマニピュレーターに身体を預けて早く投擲すべしと身振り手振りでアピールする。
「分かりましたから! どうなっても知りませんわよ! 死んでも恨まないでくださいまし!」
 促されるままにフェザー01が搭乗するオブシディアンMk4は野球のピッチャー宜しくな挙動で大きく振りかぶってエドゥアルト本人を投擲した。マニピュレーターを離れた瞬間から荒ぶる物理法則に囚われたエドゥアルトは超高速で出鱈目な軌道を描きHighSの頭部へと激突、自意識を持った液体金属状の生命体であるオウガメタル・Spitfireを吸着グローブ化させ張り付いた。
「残虐行為手当は頂きですぞ! 前歯……はちょっと怖いから触覚全部折ってやる!」
 報酬明細にその項目があるのかは不明だが、兎に角エドゥアルトは有言実行を開始した。狂乱の物理法則と相まって激しく暴れるHighSの顔面に張り付いたまま、触覚に掴みかかり刃に変異させたオウガメタル・Spitfireで根本を殴り付けるようにして切削する。結局エドゥアルトの引き起こした神の怒りはHighSの触覚がへし折れるかどうかといった時点まで収まらず、行末を見守り続けていたフェザー01は認識の埒外の事象に酷く心を病んだとか病まなかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

防人・拓也
「…こちらリーパー。白羽井小隊に告ぐ。戦闘に巻き込まれないように注意しろ」
と無線で言い、指定UCを発動。
ライフルと盾をその場に捨て、ビームサーベル二刀流になり、敵の攻撃を避けながら高速で接近し、サーベルの間合いで斬り掛かる。防がれたら、一旦距離をとる。
その後、強烈なGにより吐血し、心配されても
「このシステムは限度を誤れば、操縦者が死ぬ代物だ。だが、心配するな。君達を守るため、死ぬつもりはない」
と言う。
「…リーパーキャバリア。もっと力をよこせ。奴を圧倒できる程に!」
と言い、先程よりも遥かに速い動きで接近。サーベル二刀流で斬り、止めにイーグルクローでサマーソルトキックで斬り裂く。
アドリブ・連携可。



●剣の舞
 藤宮市に展開する日乃和部隊を恐らくは単機で滅ぼしたであろう巨大怪虫。猟兵達との交戦を経てもなお食欲のままに市内を這い回って獲物と見做した白羽井小隊を追う。その巨大怪虫HighSの前に青いキャバリアが立ち塞がった。
「……こちらリーパー。白羽井小隊に告ぐ。戦闘に巻き込まれないように注意しろ」
 拓也はレーダーの表示上で白羽井小隊の各機が十分に後退した事を確認しつつ、接近するHighSを見据える。奴に生半可な攻撃は通用しない。ならば近接戦闘に持ち込む。それも超高速の。
 コクピット内のメインモニターにREAPER SYSTEMとのメッセージが流れ、同時にシステム音声でアナウンスが発せられる。リーパーの機体全体に赤い走査線が流れセンサーカメラが血の色に強く輝く。機動性と反応性を強制的に引き上げる機能が完全に立ち上がった事を確認した拓也は、兵装パージの操作を行った。
 リーパーはライフルとシールドを投棄するとバックパックに腕を伸ばした。迫るHighSが大鎌を振りかざす。リーパーは回避ではなく前進を選択、ブースターに噴射炎を吹き出させ突進する。交差するリーパーとHighSの大鎌。凶悪な刃は宙を切り、伸ばされていた両腕がそれぞれにビームサーベル発振機を掴んで縦に振り下ろした。発振機より生じたビームが刃に形成され怪虫を斬り捨てんとするがHighSのもう一方の鎌がそれを遮った。強固に耐ビームコーティングされているらしい鎌とビームの束が衝突しあって激しい明滅を繰り返す。拓也は側面から殺気が突き刺す感覚を受けて反射的にブーストペダルを踏み込んだ。バックブーストを掛けて後退した刹那、眼前を横切った鎌の閃きがリーパーの青い装甲を擦過した。搭乗者を顧みない瞬発加速に内臓を傷付けられた拓也の肉体が吐血という形で危険信号を発した。
「今の機動は!? ご無事なんですの!?」
 神速とも言える瞬間後退を見ていた白羽井小隊の隊長より通信が飛んだ。どうやら吐血した際のむせ返した音声まで聞かれてしまっていたらしい。
「このシステムは限度を誤れば、操縦者が死ぬ代物だ。だが、心配するな。君達を守るため、死ぬつもりはない」
 拓也は身を削らなければ倒せない相手と理解しつつも刺し違えるつもりなど無かった。自分が死ねば誰が後ろを守護るのか、兵士の背後に在る命はひとつふたつでは無い。あれを倒して生き残る。拓也のシンプルな生存本能と使命に機体が応えた。
「……リーパーキャバリア。もっと力をよこせ。奴を圧倒できる程に!」
 コクピットブロックの下方より轟くリーパーの唸り声を拓也は聞いた。ジェネレーター出力が再上昇する。片方のビームサーベルを逆手に持ち替えたリーパーが、全身のスラスターから光を爆ぜさせHighSに突入した。上体を起こして大きく開かれた顎がリーパーを噛み千切ろうとする。だがリーパーは腰を落として顎の挟み込みを躱し、直角的な連続機動でHighSの懐に入り込んだ。
「耐えられるか、だが……」
 リーパーが赤い軌跡を引きながら二本のビームサーベルを交差させ滑らせる。瞬時に繰り出された連撃が巨大怪虫の甲殻に灼けた切創痕を刻んだ。反撃の鎌が来るもリーパーは攻撃を潜り抜け側面へと脱すると瞬く間に剣戟を繰り返してゆく。その急激な加速と方向転換を繰り返すたびに重力負荷が拓也の身に重くのし掛かり、臓腑をますます痛めつける。
「その貪欲さを償え!」
 HighSより振り下ろされた両の大鎌をビームサーベルで切り弾き、大きく体勢を崩させた。脚部のスラスターより爆発的な瞬発力を生じさせ機体の上下を反転、HighSの頭部目掛けて痛烈な蹴り上げを見舞った。打撃に相乗して、リーパーキャバリアの膝から爪先に至るまでに装着されたブレードエッジが裂傷を残した。
 頭部へ二色の異なる激痛を与えられたHighSは、悶え足掻きながら巨躯を横倒しにアスファルトへと沈めた。着地したリーパーが巻き込まれまいとスラスターを噴射し後方に跳ぶ。巻き上げられたコンクリート片が及ぼす灰煙の中で拓也が見た巨大怪虫の白面には、鋸に切り付けられたような切削痕が縦に走っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【渡り禽】
つまるところはさ、
エライさん方も必死に交戦中だったわけかよ。
ここで情報が途絶えたんなら、そりゃ最前線も孤立するよなぁ。
中小路さん、事後の交渉にゃアタシも同席したいけどそれはそれ。
まずはあのデカブツを何とかしねぇとな!

白羽井小隊の白い機体を『かばう』様に立ち回りつつ、
ブラスターで『弾幕』を張って『援護射撃』する。
そもそも当てる為の攻撃じゃない、
行動範囲を狭める為の『制圧射撃』さ。
そうして周囲の電荷を高め、ブラキオンで動きが鈍るのを待つよ。
……弔いの聖句を唱えながらね。
奴が斬り込んで来ようとするその一瞬を見極め、『盾受け』しつつ……
【黄泉送る檻】の最後の一節を紡ぎ上げるよ!


フレスベルク・メリアグレース
【渡り禽】
オブリビオンマシンを確認、これを撃破します
UCを起動させ、生成したブラキオンを消費して『他に生成したブラキオンを用いて高速道具を使い、オブリビオンマシンに装着させて動きを止める』という行動を成功させます
絶対物質で出来た拘束具の強度は正に絶対。動きを戒めた所を他にも生成したブラキオン製の剣を作り上げて突き刺していきます
まだ動き回るようでしたらこの【生と死から解き放つもの】をブラキオンを用いて複製。悪縁と言う因果を断ち切る究極の藍なる刃、それを360前方から飛来させてオブリビオンマシンを機能停止に追い込んでいきます。
さぁ、罪深きオブリビオンマシンよ。その命、空へと帰りなさい。


イヴェット・アンクタン
【渡り禽】
訂正します。この現状では、あの状況も止む無しでしたと。
怒りは燻ぶっていますが、ここに新たな怒りの源がある以上、対象をしっかり見据えられそうです。
そも私は交渉に向かないゆえ、やることは1つ。
……この衝動は、もう押さえない。

聞き耳に頼りつつ情報収集しながら、【弩】の槍弾をつがえたままスティングランスを用いた近接戦で活路を見出します。
皆様の、援護射撃と連携するように動き、砲撃で破壊工作を行いつつ、ランスチャージや、貫通攻撃を。
角弩砲での不意打ち、補助機装を応用しての推力移動もおこない、追いつめましょう。
時に薙ぎ払いながら追跡し、暴れます。

UCは【彼】のリミッター解除と共に。削り飛ばせ……!


中小路・楓椛
【渡り禽】

オブリビオンマシンに対する攻撃の手数は揃っているようなので白羽井小隊の護衛兼ねて後衛へ。 【クロさん・谺・ろいがーのす】で、後ろに向かう斬撃を相殺しておきます。

【言いくるめ】

話は変わりますが…

この国と「猟兵」の折衝の窓口はどちらに? 無いなら国の上の方で交渉決定権をお持ちの方を可及的速やかに此方へ。

今回の件、外交上拙い事になりません?特に此方には…遺憾の意程度では退かない貴い身分の方も居られますし…此方は回収した機体群から抽出した政争的にかなりマズい指揮の「証拠」のコピーデータです、ご確認下さい。

さてさて…孤立無援の中猟兵と共に戦い抜いた白羽井小隊の皆様に、国はどう報います?



●重縛雷槍
 任務の第一工程の時点で既にその兆候は見られていたが、猟兵の戦力は敵に対して明らかに過多であった。徴用された訓練兵とはいえ本来なら愛宕基地の要だったはずの白羽井小隊が、火力支援どころか余計な手出しをすれば殆ど足手纏い同然となる程度には。故に猟兵側の勧めも受けて白羽井小隊の各機は後方に下がり周囲警戒に努めていた。
 その護衛兼後衛を妖狐の楓椛が担っている。HighSはよく動く猟兵に夢中らしくこちらへ接近してくる兆候は見られない。だが余念なくクロさんに二振りの大鉈『ろいがーのす』と狙撃砲に身を転じさせた『谺』を搭載させ防備を固めている。
「流石皆さんお強い。鬼神も斯くやといった戦い振りですね」
 語る楓椛が見た遠方では、ビルの向こうから爆発やビームの迸りが連続して光っては消えていた。夜明け特有の冷たい湿り気を帯びた空気に乗って様々な破砕音がここまで届く。
「そうですわね、愛宕連山で戦った後だというのに。けれど兵士として教練を受けた身としては、禄に手出しも出来ず恥ずかしい余りですわ」
 フェザー01は今の自分達は国を守るどころか、ただ出て行っても猟兵達の任務達成をより困難にさせるだけの存在に成り下がってしまったと自覚している。やれる事があるとすれば、こうして後方で銃を構えて形ばかりの警戒体勢を取り続けるだけ。格式ある家出身の者として、未来の防人を志し今まで磨いてきた武はあの怪物に対して無力だった。盾を砕かれた時、腹の底から湧き上がってきた怖気に気圧された自分を思い出すたび羞恥を抱かずにはいられない。操縦桿を握る掌から強化服が軋む音が聞こえた。
「話は変わりますが……」
 やや抑揚を抑えた声で楓椛が言葉を切り出す。
「この国と猟兵の折衝の窓口はどちらに? 」
「猟兵の方々との折衝の窓口……ですか?」
 楓椛の言葉に含まれた意味を測り兼ねたフェザー01が暫し言い淀んだ。
「詳しく存じませんけれど、恐らくは第三防衛線に置かれている総司令部にあるのではないでしょうか」
「そうですか」
 短く答えた楓椛が若干の間を置いて口を開く。
「今回の件は猟兵との外交上、心証に於いて拙い事になるのではないかな、と」
「その点に関しては謝罪の他ありませんわ。本当ならわたくし達が戦うべきところで……」
 フェザー01が勘違いを起こしている事を察した楓椛が違う、そうじゃないと首を振った。
「いいえ、愛宕基地司令部が貴女がたを事実上の捨て駒として起用した件についてです。特に此方には……遺憾の意程度では退かない貴い身分の方も居られますし……」
 楓椛を含む渡り禽の面々は、愛宕基地が白羽井小隊へ下した指令について程度に差異はあれど共通して憤りを覚えていた。訓練兵とは言え、年端もいかない少女達を人喰いキャバリア闊歩する山中に置き去りにして自らはそそくさと逃げ出した所業を見過ごしてやれるほどの寛容さは持ち合わせていない。出来ることなら後に然るべき場所へ直訴に出る用意もあった。
「捨て駒……ですか。確かに、そういった扱いでしたわね」
 沈静な口調でフェザー01が答えた。
「わたくし達も国と民を守護る兵士の端くれ。どのような形であれど、戦場で果てるのは覚悟しております」
 仕打ちに関して微塵も思うところが無かったと言えば嘘になるし、格好を付けてはいるが実際死を目の当たりにすれば酷く恐ろしかったと付け加えた。楓椛は沈黙し続く言葉を促した。
「ですけれど、今はこうして猟兵の方々のお荷物に成り下がってしまい、お恥ずかしい限りです……お心遣いに感謝致しますわ」
 それ以外に語れる言葉をフェザー01は持ち合わせていなかった。
「そうですか。此方は日乃和の機体群からコマンドログを抽出させて頂きます」
 先と変わらぬ口調のままの楓椛に対してフェザー01はコクピットの中でゆっくりと無言で首を垂れた。
「さてさて……孤立無援の中猟兵と共に戦い抜いた白羽井小隊の皆様に、国はどう報いますかね」
「中小路さん、それはそれとして、まずはあのデカブツを何とかしねぇと!」
 楓椛とフェザー01の通信に多喜が割り込んだ。現在Overedはノインツェーンとギガント・バリスタと共に最前線で巨大怪虫と交戦状態にある。
「つまるところはさ、エライさん方もこんな具合で必死に交戦中だったわけかよ!」
 そりゃあ愛宕基地に援護を回せない訳だと、市街を暴れ這い回るHighSに対しOveredがマルチプルブラスターより高電圧レーザーを放ち続ける。この攻撃は有効弾としてではなく、行動範囲を狭める為の支援及び制圧を目的としたものだった。周囲を電荷で満たして最終的に動きが鈍るのを待つ。電流が弾ける度にHighSは忌まわしそうに身体を捩る。鎌が繰り出されるがOveredはローラーダッシュで急速後退し間合いを離すと一旦建物の影に隠れた。機体の制動を行う多喜は先ほどから何かの聖句を口ずさんでいる。
「ここで情報が途絶えたんなら、そりゃ最前線も孤立するよなっと!」
 曲がり角で待ち構えていたがHighSは頭上より現れた。咄嗟にOveredを引かせる。先程までいた場所に鎌が深々と突き立てられていた。多喜はマルチプルブラスターの空になったエネルギーコンデンサの排出操作を行い新たなコンデンサを再装填する。動作が終わったのとHighSが鎌を引き抜いたのは同時だった。Overedは所謂引き撃ちの状態でマルチプルブラスターを連射する。銃口より稲妻に似た軌跡の光線が立て続けに放たれ、甲殻を擦過した電流が周囲の空間に蓄積されてゆく。
 ここは市街地。舗装された道路はOveredの機動性を最大限発揮するに申し分ない環境だ。追い縋るHighSより、なおも距離を維持して下がる。その側面よりギガント・バリスタが仕掛けた。
「……この衝動は、もう押さえない」
 イヴェットの明確な殺意を乗せた槍弾がギガント・バリスタの両腕部より立て続けに連射された。重質量の物体を無防備な横腹に受けたHighSが横倒しに転がる。
 Overedのブラスターによる支援を受けながらギガント・バリスタはスティングランスを構え突撃。マウント・スクリューで生成した足場を蹴り加速を付けて繰り出された重槍突撃が、HighSの腹部に突き立てられた。
「硬いですね」
 貫通には至らなかったものの内部に衝撃が貫通したらしくHighSが悶える。闇雲に振り回された大鎌をギガント・バリスタはスティングランスの矛先で受けて衝撃を逃し、頭部の弩砲で牽制射を浴びせたのちに槍を横に薙いだ反動を利用して切り下がった。
「さぁ、罪深きオブリビオンマシンよ。その命、空へと帰りなさい」
 荘厳な声音と共に教皇フレスベルクの裁定が下される。Overedとギガント・バリスタから幾らか離れた地点のノインツェーンの周囲に単一物質が次々に生じ始めた。
「我が願いを叶えし絶対なる単一物質。流れ出でし未知なるを創造し、形成し、衆生の願いを叶え給え」
 フレスベルクの詩歌に応じ、生成された絶対物質ブラキオンが姿を変貌させた。その形体は中世時代の西洋文化を醸し出す拘束器具だった。ノインツェーンが腕を振るって行けと命じれば、拘束器具群はまるでサイコ・コントロールされたドローンのように巨大怪虫の手足へと向かって枷の役割を発揮した。アスファルトの地面とコンクリートの壁に磔とされたHighSは顎を鳴らしながら暴れようとするが、絶対物質の拘束器具は生半に壊されるものでは無い。より拘束を強固とするべく、また後に続く多喜のユーベルコードの性質を引き上げるべくフレスベルクは更なる一手を打つ。
「生と死から解き放つものよ、生まれながらにしての罪人に痛みの罰を与えるべし」
 大祓骸魂の懐刀の対極たる万象を断ち切る鋭き藍色の懐刀。それをブラキオンで無数に複製し、拘束器具の時と同じくHighSへ全包囲より飛来させ突き立ててゆく。甲殻は貫けねども微かな関節の隙間や連続攻撃を受け脆弱化した箇所などに突き刺さった。
「多喜さん、黄泉送る檻を」
「よっしゃあ任された!」
 ノインツェーンの拘束の成功を見届けたOveredが接近を仕掛ける。HighSは拘束された状態で苦し紛れに鎌を突き出すが、Overedはサイオニッククローで受け流した。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...…」
 延々と唱え続けていた弔いの聖句が、遂に締めを迎える。Overedがサイオニッククローをマウントしている側の腕を前へ突き出し、マニピュレーターを開いた。
「収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
 最後の言葉が発せられると共にマニピュレーターが握り締められた。
巨大なサイキックブラストの檻がHighSの巨躯を丸ごと封じ込めた。加えて檻が触媒とした電流が各所に突き刺さったブラキオン製の刃を介して内部を灼く。
「イヴェットさん! 次!」
「リミッター解除。削り飛ばせ……!」
 多喜の叩き付けるような叫びにイヴェットが重く静かに答えた。ギガント・バリスタが蹲り、四肢を流れる力を声帯へ一極集約する。そして大気を揺るがすほどのおぞましい咆哮。地獄の悪鬼の如き絶叫と一緒くたに放たれたのは、多数の槍状砲弾だった。それらは全てフレスベルクと多喜によって二重の枷が付けられたHighSに殺到した。黄泉送る檻を潜り抜けた際に電流を帯びた槍がHighSに衝突しては青白い爆光を咲かせて炸裂する。絶対物質の拘束とサイキックブラストの檻に封じ込められた巨大怪虫は、極弦が生み出した雷の嵐の中で断末魔のような甲殻の軋む音を立てて足掻き苦しみ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【ガルヴォルン】

虫は苦手なんだけど、とは言ってられないね。

大佐、でるの?
ならわたしも最終調整に降りるね。

警報!?
取りつかれた!?

格納庫に入ってきた『HighS』にスティンガーが!
それに特殊部隊の人たちまで……。

ま、まずは大佐を!

格納庫の【リオ・セレステ】に乗り込むと、
サージェさんや特殊部隊の攻撃が作った隙をついて、
大佐を助け出すね。

『HighS』を叩き出したら、
呆然としてる大佐に話しかけるよ。

大佐、だいじょぶ……?
だいじょぶそうなら、艦橋に戻ろ?

虫もどきがあったまきた!

大佐、ミスランディア、ちょっと艦貸して!
ストライダーの主砲と【テスカトリポカの鏡】で、
『HighS』を灼き尽くしてあげるよ!


支倉・錫華
【ガルヴォルン】

引き続きナズグルに搭乗。

さすが生もの動きが変則的だね……って。

ストライダーの光学迷彩が破られた!?

あそこは、格納庫か……!
でも中には大佐もサージェさんも理緒さんもいる。
なんとか叩き出してくれるはず……!

アミシア、ヤツが墜ちてきたところを狙う。
【E.O.Dソード】使うよ!

みんなを信じてここはぐっと待つね。
『HighS』が叩き出されたら、

「アミシア!」
『落下地点・時間予測。スラスター、フルブーストいけます』

落下ポイントに全速で突撃。

サージェさんと入れ替わるようにして、
エネルギーソード化した歌仙を叩き込むよ。

その後は連携して接近戦なんだけど……。

なにあれ……え? 理緒さんがキレた?


セレーネ・ジルコニウム
【ガルヴォルン】
「街を壊滅させた敵ですか。私もキャバリアで出ます」
『戦艦の制御はわしとクルーに任せるのじゃ』

艦長席を降り、理緒さんと一緒に格納庫に向かいます。
ですが、格納庫に着いたところに響く警告音。

『敵が艦の外装に取り付いた!
格納庫のハッチが破られるぞ!』
「整備班は総員、格納庫から緊急退避!」

格納庫に侵入してきたHighSが、私が搭乗しようとしていたスティンガーを目の前で真っ二つに!?

「総員、戦闘準備!
あれを艦の外に叩き出してください!」

【特殊部隊】に命じ敵を格納庫から追い出そうとしますが……

「そんなっ!?
隊員達が私をかばって!?」

貪り食われる部下を見て放心した所を理緒さん達に助けられます。


ミスランディア・ガルヴォルン
【ガルヴォルン】
『藤宮市上空に到達じゃ』

ブリッジクルーと共に機動戦艦ストライダーを操縦し駐屯地へと辿り着いたが……現場は酷いものじゃ。

『セレーネよ、出るなら気をつけるのじゃぞ』

格納庫に向かうセレーネと理緒を見送るが、レーダーに高速飛翔体の反応じゃと!?
艦の外壁に取り付いた敵の鎌にハッチを斬り裂かれ、格納庫内部に侵入を許してしもうたか!

『セレーネ、理緒、いったんブリッジに戻るのじゃ!』

理緒とサージェに敵を叩き出してもらい、さらに錫華に追撃してもらおう。
部下の死を目の前で見て放心しているセレーネは後回しじゃ。

『理緒よ、ストライダーの主砲、預けるぞ!
全力で行くのじゃ!』

わしも緊急用ボディで補助じゃ!


サージェ・ライト
【ガルヴォルン】
取り付かれた!?マズイです!

大佐下がって!
『ファントムシリカ』緊急発進!
エンジェライトスラスター始動!
「強き一撃は悪意をも砕く! 参ります!」
スピアによる攻撃力重視【疾風怒濤】の衝撃と
スラスターの推進力で突撃!
ダメージと損傷は気にしてる暇無さげ!
とにかく動くところまで!

連続攻撃で『HighS』をストライダーから叩き出したら
私からも引き剥がすようにスピア投擲
錫華さんと入れ替わりで私は姿勢制御と着地&フローライトダガーに換装

支援します!
「私の刃は全てを斬り裂く!参ります!」
命中率重視の【疾風怒濤】を当てにいって
こちらに注意を引き付け攻撃のメインは錫華さんに
え?理緒さんキレた?


鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

キャバリアで出撃
コックピット内、携帯した飴を媒体に固有結界・黄昏の間を発動
【高速詠唱】【多重詠唱】で地と風の疑似背霊を同時召喚

風の疑似精霊の力で敵の感知網に干渉、わざと空気の流れを変更し敵をかく乱する
キャバリア周囲に地の疑似精霊の力で岩弾を多数生成、【破魔】を付与し【一斉発射】
テネブラエソードの闇の波動を衝撃波とし、【乱れ撃ち】で放つ
ついでにルクスビーム砲の拡散誘導型のビームも発射
敵が高速で動くなら、弾幕で勝負だ!数打てば当たるはず、当たらなくても相手の行動を少しでも阻害出来れば他の皆の助けになるはずだ

突撃されそうな場合はビームシールドを展開し前面へ射出、敵にぶつけ突進阻止



●天地
 藤宮市上空に虫の翅音が喧しく響く。それらとジェットエンジンやロケットモーターが吐き出す轟音が交差する。
 鳳凰院のルクス・テネブラエが機体の周辺に展開した岩石弾を連射する。放たれた質量物体は高速で飛び回るHighSに殺到して重い打撃を与えた。固有結界・黄昏の間によって召喚された風の疑似精が巨大怪虫の感覚器官、具体的には触覚に作用して整流知覚を阻害、挙動に鈍りが出たところへ地の疑似精霊が生み出した岩弾を投射したのだ。
 されどHighSは通常のキャバリアの倍以上の体積もあってかなかなかに倒れる素振りすら見せない。鳳凰院を獲物と認識してルクス・テネブラエに食い掛かる。風の疑似精の撹乱作用も効いているのか、大顎の狙いは粗末なもので、ルクス・テネブラエは軽々しく身を捻ると余裕をもって回避し振り向き様に抜き放ったテネブラエソードから闇のソードウェーブを放出する。命を蝕む漆黒の飛刃がHighSの背部甲殻に刻み込まれ霧散した。
「硬いな……!」
 敵が旋回を済ませる前に単一目標を多重捕捉したルクスビーム砲を放つ。指向性誘導弾が光の尾を描きながら空飛ぶ巨大怪虫に殺到して蛍光色の爆炎を咲かせた。致命打とはいかずとも目眩しになったのか、怯む様子が見えた。
「どっせーい!」
 そこへサージェのファントムシリカがエンジェライトスラスターを煌めかせて真上から突っ込んでくる。加速を伴ったまま両手で構えたセラフィナイトスピアの切先を身体ごとぶち当てた。金属が削り合うような甲高い衝撃音と火花が散った。貫きこそしなかったものの、背中にのし掛かった刺突衝撃と重量荷重にHighSは堪らず高度を落とす。
『りだーつ!』
 シリカに促された通りにファントムシリカは甲殻を蹴って跳び上がる。間髪入れずにHighSへルクス・テネブラエの岩石弾が降り注いだ。とても飛んではいられないとHighSはそのまま地上まで落下して行く。
「アミシア、ヤツが墜ちてきたところを狙う」
『歌仙、アクティブ』
 地上の市街では錫華が搭乗するナズグルが待ち構えている。HighSが落下してきたところをオーバードライブさせた歌仙で斬り刻む目算だ。そして現在出撃準備終了間近なセレーネのスティンガーとルクス・テネブラエ、ファントムシリカが集中攻撃を浴びせ動きを拘束。最後にストライダーの爆撃で仕留めるという戦術計画を立てていた。
『目標、再度飛翔する模様』
 HighSの挙動の変化に真っ先に気付いたのはアミシアだった。HighSは触覚をしきりに動かした後、何かに気付いたかのように顎を打ち鳴らして閉じかけていた翅を開いた。地上に落下する寸前でけたたましく羽ばたくと、凄まじい風圧でナズグルを煽り立て何も無い空の方向へと飛び去った。
「マズ、あっちは……」
 後を追って降下してきたファントムシリカの頭部が向いた先には、透明な浮島に張り付いているHighSの姿があった。
「ストライダーの光学迷彩が破られた!?」
 錫華がそう言葉を発した瞬間、HighSが張り付く何もない空間に火花が散るのが見えた。ストライダーを覆う不可視の障壁が暴かれ、藤宮市の夜明けの空に巨大な船体が姿を現した。
「あそこは格納庫じゃ……!?」
 ルクス・テネブラエも降下してきた時にはHighSの姿がストライダーに吸い込まれるようにして消失した。間も無く出撃してくる筈だった大佐達が危ない。ファントムシリカとルクス・テネブラエがフルブーストでストライダーへと急行する。格納庫内の虐殺劇は既に始まっていた。

●ジェノサイドマシン
 ストライダーの操艦権限をミスランディアに移譲したセレーネが、スティンガーの最終調整を行う理緒と共に格納庫へ降りたタイミングで、艦全体に極めて不気味な衝撃が走った。赤色灯が回転し凄まじい音量の警報音が鳴り響く。
『敵が艦の外装に取り付いた! 格納庫のハッチが破られるぞ!』
「なんですって!?」
 ミスランディアの声で最大音量の艦内放送が発せられた。驚愕するセレーネの目の前で、金属がひしゃげ切除される轟音が格納庫内に広がる。
「エレベーターデッキの上!」
 理緒が全てを言い終えるより先に外部装甲を食い破った巨大怪虫が言葉通りに降って湧いてきた。真下に居た何名かの作業員が逃げ遅れて潰されるのを理緒は確かに肉眼で視認していた。
「整備班は総員、格納庫から緊急退避! ミスランディア!」
『スティンガーを遠隔モードで起動するぞ』
 状況に対するセレーネの指示は迅速だったがHighSの次なる行動がより素早かった。早速手近な作業員に飛び付いて、鎌のような腕で串刺しにして顎に運ぶと、数回の咀嚼で胃に収めた。どうやら戦闘の最中に腹を空かせたこの巨大怪虫にとって、ストライダーは新鮮な生肉がたっぷり詰まった弁当箱に見えたらしい。
 頼みの綱であるキャバリアのスティンガーはHighSのすぐ側のハンガーに収まっている。現状でセレーネが搭乗するのは難しいと判断したミスランディアは、言われるまでもなく遠隔制御モードで起動を試みた。スティンガーが一歩踏み出すまでの所要時間はほんの数秒だったが、セレーネと理緒には途方もなく長い時間に思えた。
「あれを艦の外に叩き出してください!」
「エレベーターデッキに乗せて! オーバーライド全開でリフトアップ!」
 セレーネに続いて格納庫の業務を請け負っている理緒が指示を飛ばす。スティンガーがHighSを羽交い締めにしようと飛び付く。だが鋼鉄の床を踏み付けた音を察知したHighSが巨躯からは想像し難い俊敏さで振り向き、大顎でスティンガーの胴体を挟み込んだ。猛烈な圧力で金属が強引に押し切られる。セレーネ達の目の前で、スティンガーのオーバーフレームはアンダーフレームと別れを告げた。
『スティンガー、大破!』
 ミスランディアの音声が非情な現実を突き付ける。抗う術が消えた。スティンガーを真っ二つにしたHighSが緩慢な動作でセレーネと理緒に振り向いた。より美味そうな肉を発見したHighSは歓喜に顎を鳴らして飛び掛かろうと身を屈めた。だが突如各方面より伸びて来た鉄の火線に阻まれた。
「撃て撃て撃て!」
「艦内の被害は無視しろ! 大佐をやらせるな!」
 ガルヴォルンの特殊部隊員達が小銃や重機関砲で応戦する。だが猟兵でもないなら生身でキャバリアを相手取るなど自殺行為以外の何物でもない。ましてや敵は通常のキャバリアの倍の体積を持っている。健気な反撃は最初の数秒程度は牽制になれども、痒くすらない脅威と認識したHighSは再びセレーネと理緒を腹に収めようと距離を詰め始めた。
「ミスランディア! ルクス・テネブラエとファントムシリカは!?」
『あと30秒じゃ』
「くっ、万事休すですか!」
セレーネは理緒を庇いながらじりじりと後ろに下がるも、壁まで追い詰められてしまう。遂に凶悪な顎が二人を捉えようとした瞬間だった。
「危ない!」
 横からの強烈な衝撃が二人を大きく突き飛ばした。直後肉が潰れて骨が砕かれる音が聞こえた。セレーネが立ち上がって見たものは、数秒前まで特殊部隊員だった肉塊が冷たい床に散乱していた光景だった。
「そんな……隊員が、私を……」
 思考が重く淀む。以後は同じ事が繰り返されるばかり。無謀ながら果敢に挑む特殊部隊員達を片っ端からHighSが貪り喰う。どこの臓腑とも付かない赤黒く生臭い物体がセレーネの顔に飛び散って付着した。ミスランディアが何かしきりに話しかけているようだがまるで耳に入ってこない。そういえば理緒はどうしたのだったか。先程喰われていたような。
「大佐!」
 膝を折って茫然と立ち尽くすセレーネの元へ六輪装甲車が急行した。開いた扉から少女の手が伸ばされた。手の主は理緒、装甲車はリオ・セレステだった。血濡れのセレーネは伸ばされた手を無意識に掴むとそのまま車内へ引っ張り上げられた。
「サージェさん達がすぐ来るから! 逃げるよ!」
 リオ・セレステに勘付いたHighSが食事の手を止め、動く獲物を追い始める。格納庫内をアクセル全開で疾走するも距離はすぐに詰まってしまう。理緒が見るバックミラーの中で巨大怪虫の白面が一杯に迫った時、新たなキャバリアが格納庫内に侵入してきた。
「止せぇぇぇーッ!」
 HighSの背後よりルクス・テネブラエがフルブーストで我が身ごとショルダーチャージをぶちかました。途端にバランスを崩し縺れ合うように転倒する二機。追走してきたファントムシリカがHighSの前方に回り込む。立ち直る隙など与えない。セラフィナイトスピアを構えるのとルクス・テネブラエが横にスライドして道を開けるのは同時だった。
「強き一撃は悪意をも砕く! 参ります! だらっしゃー!」
 ファントムシリカが打突力に重点を置いた連続突きを繰り出す。エンジェライトスラスターを全開にし一気にエレベーターデッキまで押し込んだ。
「理緒さん! 上げてくれ!」
 ルクス・テネブラエも展開したビームシールドを押し付けて抑えに掛かる。
「リフトアップ!」
 理緒に応えてミスランディアが最大スピードでエレベーターデッキを上げた。三機は瞬時に甲板上に排出される。
「そのまま叩き落として!」
 地上で待機していたナズグルからの通信にファントムシリカは深い突き込みを繰り出す事で返答とした。HighSがストライダーから叩き落とされ、更に地面目掛けて押し通される。
「まだまだ! そにっくぶろー!」
 セラフィナイトスピアを投擲したファントムシリカが主兵装をフローライトダガーに切り替え疾風怒濤の攻撃を重ねて動きを封じる。落着寸前でルクス・テネブラエと共に離脱した。
「アミシア!」
『落下地点、時間予測。スラスター、フルブーストいけます』
 推進装置の出力を最大解放したナズグルが道路に降り積もったコンクリート片を巻き上げながら超高速で疾駆する。錫華の視線の先には間も無く地上に叩き付けられんとしているHighSがあった。
「E.O.Dソード使うよ!」
 ナズグルが装備する片刃の実体剣にエネルギーディスチャージャーが接続される。錫華がトリガーキーを引き続ければ歌仙が非実体の高熱の刃を纏う。地上を滑走するナズグルと空より落下して来たHighSの位置が重なり合った瞬間、錫華が鋭く叫んだ。
「斬る!」
 極限まで超高圧縮収束されたエネルギーを纏った歌仙が振り抜かれる。落下した衝撃でバウンドしてひっくり返ったHighSの足には一本の切創痕が刻まれていた。
「浅い?」
 HighSを擦り抜けたナズグルがクイックターンを掛けて機体方向を真逆に反転させた。強引な方向転換で生じた重力負荷に押し潰されそうになるも錫華はブーストペダルを踏み込む。ひっくり返ったまま踠いているHighSが出鱈目に振り回した大鎌を、ナズグルは跳躍して躱すと歌仙を左下から右上にと切り上げながらHighSの後方へと離脱する。先ほど切り付けた箇所に寸分も違わない一閃を浴びせた。
「もう一撃!」
 漸く体制を立て直したHighSが怒りに顎を打ち鳴らす。錫華は威嚇など知ったところでは無いと言った様子で冷静な機体制動に専念する。次で切り落とす。得られた加速を維持したまま大きく迂回して旋回しHighSの前に出る。向こうも急速に近付いてくるがナズグルは加速を緩めずそのまま突撃、繰り出された鎌を歌仙でいなして機体を捻り、流れる反転の動作でまたしても同じ箇所に剣撃を刻み込んで離脱した。HighSの脚に刻まれた箇所から夥しい量の緑色の体液が噴出する。相当な激痛が走っているのか、堪らず巨躯を横に転がし悶え始めた。一閃を以て擦り抜けた錫華は、次なる手を母艦に託す。
「ストライダー! 撃って!」

●重力砲
「大佐、だいじょぶ……?」
 理緒の問い掛けに対して艦長席に腰掛けた血濡れのセレーネは答えなかった。ただ呆然としているばかりで瞳の焦点も合っていない。格納庫での惨劇の後、理緒は放心した状態のセレーネを連れて既に艦橋に戻っていた。表情は非常に硬い。好き放題やってくれた虫もどきに酷く怒り心頭の様子だ。絶対に報復してやるとの意気込みを胸中に、艦長に変わってミスランディアへ攻撃指令を下す。
「大佐、ちょっとストライダー借りるよ。ミスランディア……主砲用意」
 理緒が発した声の先には見慣れない少女が背を向けて立っていた。この黒いショートヘアに猫の耳を生やした少女こそ、ストライダーの総合管制を司っていたミスランディア・ガルヴォルン(ガルヴォルンのメインサーバー・f33722)の緊急用義体なのだ。現在は心理的外傷により機能不全を起こしたセレーネに代わり艦橋に立っている。ミスランディアは戦況を映し出すメインモニターから目を離すと、ゆっくりと声を掛けられた方へと振り返った。
『超重力波砲を使うのか? いや待てそれは』
「主砲用意!!」
 如何とも仕様が無いほどに理緒の決意は固いらしい。ストライダーは深く溜息を吐くとやや首を振った。
『戦略兵器がどういうものか分かっておるじゃろうに。じゃが……』
 ストライダーの主砲の制御権限が理緒に移譲された。超重力波砲発射準備とのメッセージが艦橋のメインモニターに表示される。超重力波砲とはストライダーが秘匿していた禁忌の戦略級兵器であり、その威力は戦略兵器に相応しく治政的影響を及ぼすほどに達する。そんな危険極まりない兵器の制御権限が、激昂する理緒に託されてしまった。
『よいじゃろう、どの道奴を完全に仕留めるには使用も辞さないつもりじゃったからな。ただし、収束率は極限まで絞っておる。照射域はとーっても狭くなっておるぞ。理由は分かっておるな?』
 ミスランディアの表情には皆まで言うまいとの言外に付け加えられた意味が含まれていた。果たして主砲の制御権限を受け取った理緒は、その兵器にユーベルコード、テスカトリポカの鏡を反映させた。大口径主砲がより収束発射に適したロングバレルの砲塔に変形し、収束率向上に伴って単純威力も理想値の限界まで引き上げられている。
 屹立した主砲発射用トリガーを握り込み、地上でじたばたと踠いているHighSにターゲットサイトを重ね合わせた。
『理緒よ、ストライダーの主砲、預けるぞ! 全力で行くのじゃ!』
 渋っていた割りには乗りが良いミスランディアよりエネルギー充填率が臨界点を越えた事を伝えられた理緒は、なんの躊躇いもなく引き金を押し込んだ。
「逝っちゃえー!!」
 ストライダーの主砲より黒い波動が放たれた。データリンクを介して報告はすぐに地上部隊へと伝達される。
『ストライダー、超重力波砲使用しました。収束率は限界まで絞っているようですが』
「え……みんな散開して!」
 アミシアの状況報告に錫華は一瞬耳を疑ったが、嫌な予感が膨れ上がるのと同時に重力異常の警報音が響いた事から条件反射で退避判断を下した。ナズグル、ルクス・テネブラエ、ファントムシリカが一斉に方々へと散る。
 重力とは恐ろしいものだ。万物を逃さぬ呪縛。光も時間も、魂さえも捕らえられてしまう。HighSを黒く禍々しい細長な円柱の何かが押し潰した。巨大怪虫が地面にめり込み、軋む甲殻が歪んでへこみ始める。周囲のアスファルトや建物までもが巻き添えを受けて破砕されては地上に押し付けられてゆく。HighSのへこんだ甲殻が遂に耐久限界を迎え、決壊寸前のダムのように緑色の液体を漏らし始めた。そして超重力波砲の照射が終わり、圧縮されていた物体が反作用で引き戻されると水蒸気爆発の如き衝撃波が生じた。灰色の雲が立ち昇る。
「消えて、無くなっちゃえ!」
 怒りのあまり肩で荒々しく呼吸する理緒。彼女の両手はまだ主砲のトリガーを握り締めたままだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(完全に怯え猟兵に頼りきり
訓練兵に酷とはいえこの場を生き延びても、次は…)

白羽井小隊各機へ

皆様は御伽噺の騎士を震えて待つ姫君ですか?

違うと言うならば虚勢を張りなさい
援護を頼むとくらい言いなさい!

これから無力を噛み締めること
(揺れる認識票)
涙することも多々あるでしょう
ですが目前の現実に立ち竦んではなりません
逃げるにせよ戦うにせよ確と選択しなさい
明日の己と日乃和を守護するのは貴女達なのです!

物資はありますね?
指定ポイントへの飽和攻撃準備を

私は…昆虫採集に

近接戦闘でビル谷間に誘導
背部コンテナからUC射出し各所へ投擲
障壁で『虫籠』形成

…攻撃開始!

着弾見切り上蓋の障壁解除

爆炎晴れる前に突入
損傷部一刀両断



●騎士と姫騎士見習い
「……皆様は御伽噺の騎士を震えて待つ姫君ですか?」
 抑揚を抑えた中に、重みと硬質さを潜ませた声音。機械騎士の言葉は怖気に弱腰となった白羽井小隊各機へと向けられていた。
「え……」
 隊長機のオブシディアンMk4から零れ出た通信からは田園の初戦で垣間見せた虚勢に近い勇気の色は薄らいでいた。訓練兵には手に余る状況とは言え、一打で心を折られ掛けた白羽井小隊では仮にこの場を乗り切れても次は無い。生き延びて血反吐を吐くだけなら猟兵に縋りきりになるのも良いだろう。だが彼女らは日乃和の明日を担う防人なのだ。猟兵が到着するまでの間、死の恐怖に押し潰される寸前を必死に立ち堪えていた事も知っている。だからこそと再度トリテレイアは叱責に近い声音を突き付けた。
「違うと言うならば虚勢を張りなさい、援護を頼むとくらい言いなさい!」
 フェザー01が声を詰まらせた。だがしかし構わずにトリテレイアは続ける。
「これから無力を噛み締めること、涙することも多々あるでしょう。ですが目前の現実に立ち竦んではなりません」
 トリテレイアが握り締める拳の中で、細い鎖が通された小さな金属板が煌めいた。所持者の名前や数字の文字列が刻印された表面には、赤黒い血が乾いた状態でこびり付いている。理想では救えるはずだった命。現実では救えなかった命。必死に伸ばし抗うも掴めなかった手の証。トリテレイアにとっては恐らくこれが初めてではないだろうし、最後でもないのだろう。しかし懊悩せども立ち止まる事は許されない。さもなくば失意に追い付かれ飲み込まれてしまうから。だから立ち竦んではいられない。何かを救い守護る者ならば。
「逃げるにせよ戦うにせよ確と選択しなさい! 明日の己と日乃和を守護するのは貴女達なのです!」
 フェザー01以下白羽井小隊は機械騎士の言葉を呆然と聞き入っていたが、弾かれるようにして手放し掛けていた思惟を取り戻した。
 格式ある者は身を挺してでも果たすべき重責がある。ノブレス・オブリージュとして使い古された言葉だが、日乃和の国民性に根深く染み付いた精神。猟兵という埒外の力を目の当たりにしたことによる甘えか、或いは極限の状況に置かれ精神が磨耗した結果か、薄らいで行きつつあった自己に課した使命。それが機械騎士によって再度奮い起こされる。
「貴女達の事情について、私は曖昧に察する事しか出来ません。ですが守護る為に剣を取ると決めたのは貴女達自身の意志なのではないですか?」
「わたくしは……」
 暫くの沈黙が流れる。遠くの区画で爆轟が上がったのを合図とするように、トリテレイアのロシナンテIVは一歩フェザー01のオブシディアンMk4に歩み寄った。
「絶望を退ける勇気がある筈です。貴女達は愛宕連山の戦いで既にそれを示した。もう一度問いましょう、皆様は御伽噺の騎士を震えて待つ姫君ですか?」
 やや挑発的な抑揚を乗せた声音にフェザー01は瞼を伏せると大きく息を吸い込み、両眼をしかと鋭く光らせ口を開いた。
「格式ある者、武を以て民の防人となるべし。確かに姫は姫でも姫騎士でしてよ」
 確たる思惟を含んだ声音に最早言葉は不要と、トリテレイアに合わせてロシナンテIVが僅かに頷いた。防人の少女達は死の恐怖と怖気を虚勢で跳ね飛ばす。自分達がここで殺らねば日乃和に先は無い。怪物相手は想定していなかったにしろ、こういう時の為に訓練を重ねてきたのだと意志を含ませ、戦いを確と選択した白羽井小隊の各機が武器を構える。しかし勇気と無謀を同じポケットに入れて持ち運ぶ愚か者ではなく、自分達の練度で闇雲に出て行くだけなら猟兵達の任務達成をより困難にするだけとの自覚がある。何か策はあるだろうか。幸い武装類は重火力兵器が充実している。少ない勝ち筋としては火力の集中運用だろうとフェザー01は見当を付けた。
「騎士の方、こちらは手狭な場所に追い込んでの集中攻撃を行なってみようと考えておりますの。いかがでして?」
「物資はありますね?」
「はい、道中の多大なご厚意に預かっておりましてよ」
 白羽井小隊の各機が重機関砲が多連装ロケット、バズーカやミサイルなどといった高火力兵装を掲げた。
「指定ポイントへの飽和攻撃準備を」
 トリテレイアは白羽井小隊宛に藤宮市の地図情報を送信した。地図上の交差路にはマーカーが打ち込まれている。この地点に敵を誘引し火力の全力投射を行うのが狙いだ。
「了解しましたわ。して、騎士の方はどうなさいますの?」
 問いに答える前にトリテレイアはロシナンテIVを旋回させる。フェザー01に背を向けると、スラスターに光を灯した。
「私は……昆虫採集に」
「昆虫採取? あっ! ちょっと!」
 呼び止める声に構わずロシナンテIVは直進加速し大通りを駆け抜けた。左右のビル群が高速で前から後ろへと流れてゆく。交差点を曲り、やや狭い道へと進み暫く直進するとまた大きな通りに出た。
「目標確認……さて、大きな虫籠が必要になりそうですね」
 急停止したロシナンテIVが頭部を向けた先には、獲物を探して這いずり回る巨大怪虫HighSの姿があった。体積を比較するならばロシナンテIVの倍以上はある。白面の三角眼とロシナンテIVのバイザー型センサーカメラが交わった。だがHighSは動きを見せない。触覚をしきりに動かして様子を伺っているようだ。
「ウォーマシンは捕食対象外ですか。ですが!」
 ロシナンテIVは大盾を正面に構えて突進し重質量の打撃を見舞った。硬く重い反動が盾越しに跳ね返ってくる。HighSは顎を打ち鳴らして威嚇し大鎌を左右に振った。ロシナンテIVが後方に瞬間加速して一撃目を回避、二撃目は長剣で切り返した。これでHighSはロシナンテIVを食事を妨害する邪魔者と認識したらしく、またしても大鎌を横に薙ぎ払ってきた。
「白羽井小隊へ、こちらは昆虫の誘引に成功。指定ポイントにて待機を」
 角度を付けて構えた盾で受ける。表面を滑った大鎌が激しい火花を散らせた。ロシナンテIVが宙を長剣で切り払いつつ左右のサブアームが保持するライフルで牽制射撃を加えながら後方へバックブーストし続ける。大通りから下がりやや手狭な道路へと入り込むと、HighSも大鎌を振り回しながら後を追って来る。
「魔法の杖のように万能ではありませんが……発振器射出」
 誘引しながら後退する途中、ロシナンテIVはコンテナより杭状の何かを射出した。それらは敵へ向かうわけでもなく、周辺のビルや道路上に突き刺さると生半に抜け難いスパイクの根を張った。やがてロシナンテIVはHighSを引き付けたまま事前に指定した座標ポイントへと至った。
「虫籠起動!」
 先に打ち込んだ杭が点と線を繋ぎ合わせるようにして防御障壁を発生させ、HighSを封じ込めた。
「なるほど、これが昆虫採取ですわね」
 HighSを見下ろす位置取りでビルの屋上に登っていた白羽井小隊の白いオブシディアンMk4達が顔を覗かせる。バリアの虫籠に捕らえられたHighSは激しく暴れ回るものの、複数の発振器で形成された障壁は極めて強固らしく破られる気配は見受けられない。
「着弾の瞬間にバリアを一部解除します! 攻撃開始!」
 トリテレイアが発した号令に従い白羽井小隊が一斉に重火力を惜しみなく打ち込み始めた。宣言通り着弾の寸前でバリアは上蓋部分のみが限定解除され、そこからミサイルやグレネードが一点集中して注ぎ込まれる。バリアケージによって空間が手狭に限定されているためか、威力が余計に増しているようだ。爆炎の中でHighSが悶え黒煙に飲まれて消えた。
「これで致命打を!」
 咲く爆炎を割ってトリテレイアのロシナンテIVが突入した。狙うは飽和射撃で損傷し脆弱化した部位。ライフルの斉射も交えながら最大加速して剣の煌めきを迸らせる。真っ向から縦に振り下ろされた渾身の一刀。怯んだHighSを足場に蹴り付けロシナンテIVが離脱する。斬り付けられた甲殻の部位が大きく裂けて、夥しい緑の血を吹き出した。フェザー01のオブシディアンMk4の側に着地したロシナンテIVは、騎士がするようにして剣を払い刃に滴る血を落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリア・ジェフティー
あの機体じゃない
人の生気を感じられないこの光景も、合致はしていない
けど…少し思い出したわ
私は昔…アイツらみたいな存在に大切な何かを奪われていた
…よくも私の前で人を喰い殺してくれたわね

気に入らないわ
義憤に駆られているわけでも、正義を為そうとしてるわけでもない
これは唯の八つ当たりよ

牽制射撃をしながら全センサーを最大稼働
ビル群を利用して(【地形の利用】)敵の動きを制限して注意を惹き、此方へ突っ込んでくるタイミングを計測
…来たわね

ヴァーディクト・アンサー、起動
最大加速した動作で敵の攻撃を【受け流し】、腕を掴んで【グラップル】で地面に叩きつける
…捕まえたわよ、デカブツ
至近距離の散弾をたらふく喰らいなさい



●虚憶の答え
 藤宮市の街並みをすり抜けるようにして走るエミリアのセシャート。それを這いずって追う巨大怪虫HighS。後方を監視するサブカメラが捉えてモニターに出力されたその姿を見たエミリアの脳裏に、愛宕連山の田園で感じた既視に近い記憶が呼び覚まされた。
「だけど、あの機体じゃない」
 死ばかりが溢れて人の生気を感じられないこの環境とも合致はしていない。跳び付き距離を詰めたHighSが大鎌を袈裟斬りにするが、殺気が駆け抜けた瞬間に機体を逆方向へ滑らせ回避した。
「けど……少し思い出したわ」
 エミリアはかつて、たった今背後に追い縋ってきているような存在に大切な何かを奪われていた。むせ返る死臭。血と臓腑を掻き回して撒き散らし、真っ赤に染まった記憶の中で暗い憎悪が渦巻き始めた。
「……よくも私の前で人を喰い殺してくれたわね」
 奴の存在は非常に不愉快で気に入らない。記憶によって目覚めさせられた、腹の奥底から湧き出るこの感情は義憤や正義の類では無い。単に苛立ち八つ当たりしたいだけに過ぎないのかも知れない。だが、今ならばそれも許されるだろう。
 こいつは殺す。セシャートが速度を維持したままターンし、スローターの散弾を連続で浴びせた。無数の細かな弾丸がHighSの甲殻に着弾して甲高い音を立てる。怯みこそすれど決定打には至らないようだ。だがそれで良い。あくまで牽制なのだから。オウルアイが最大稼働し周囲の地形座標の三次元情報を収集し、敵の動きを抑制するのに都合が良いビル群の位置を割り出す。地方都市という環境条件が味方したのか、エミリアが望むポイントは容易く見つかった。
 HighSに背を向け大通りを駆け抜け、望みのポイントへ通じるやや手狭な横道へとセシャートを滑り込ませる。急激な減速と再加速にターボローラーが激しい火花を散らせた。HighSは左右のビル群を巨躯で削りながら無理矢理追い縋ってくる。エミリアの狙い通りの展開だった。一方のHighSだが、地形の狭さに動きを制限され苛立っているのか攻撃の鋭さにムラが出始めていた。遂に辛抱堪らなくなったのか飛び掛かって強引に距離を詰めようとする。それこそが予め計算されていた好機だった。
「……来たわね」
 評決の答えを下す。モニター上にWarning,Significant health hazards to the user can be expected.とのメッセージが流れたのと同時に、エミリアは四肢を流れるあらゆる神経がセシャートと合一化して行くのを感じた。そして流れる時間の一秒が何十倍にも引き延ばされてゆく。酷く緩やかにHighSの大鎌が振り下ろされる。エミリアには刃の軌道から飛び散るコンクリート片のひとつに至るまでが視えていた。操作入力を行うより先にセシャートがエミリアの思考を読んでプロミネンスリッパーを引き抜き防御を目的として構えた。刃と大鎌が擦れ合い黄金色の火花を散らす。僅かに軌道を逸らし大鎌を掻い潜ると、飛び掛かったHighSは自ら懐を曝け出した。プロミネンスリッパーを投棄したセシャートのマニピュレーターが大鎌を突き立てた腕を掴み、HighS自身の運動エネルギーをも巧みに利用した柔道さながらの背負い投げを繰り出す。セシャートの倍以上の体積を誇る巨大怪虫の身体が浮き上がった。背中からアスファルトの地面に叩き付けられたHighSに跳躍して取り付いたセシャートが、スローターの先端部を頭部と思しき白面に突き付ける。
「……捕まえたわよ、デカブツ」
 叩き込まれた新たな弾倉から送り込まれた散弾が、エミリアが押し込んだトリガーキーの動作入力指示に従って発射された。強烈な打刻音が響き渡る。怒りか憎しみか、八つ当たりの念を込めた弾丸が白面を削り抉る。記憶の深淵に在ったあの機体では無い。だが似ているだけでもぶち殺してやる相手としては十分だ。抹殺対象を見下ろすエミリアの瞳は鋼のように冷淡だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

露木・鬼燈
んーこれは手強そうなのです。
強敵との戦いは心躍るものなのですが…
なんか気分が盛り上がらない。
まぁ、そんな日もあるか。
そーゆー時は仕事として丁寧に処理するですよ。
硬くて速い上に再生するかも?
これは動きを止めて強力な一撃で処理する。
これが正解っぽい!
まずは脚と翅を潰したいところだよね。
とゆーことで、お馴染みの徹甲榴弾で部位破壊。
損傷させたところに硬化樹脂を充填したペイント弾。
僅かな時間でも動きを完全に止めれば殺れる!
天津甕星に攻撃を要請。
<破滅の枝>で縫い留めるですよ。
そして杭に刻まれたルーンの力で焼き滅ぼすっぽい!
どんなに頑丈でも内側から焼かれれば、ね。
徹甲榴弾のお代わりもくれてやるっぽい!



●鬼心躍らず
 戦禍に荒んだ藤宮市。夜明けの清々しさや静寂とは真逆の喧騒の最中、鬼燈の駆るアポイタカラが傷だらけの巨大怪虫と対峙する。散々他の猟兵に痛め付けられた身体の各所からは緑色の液体が染み出していた。されど未だ食欲を失わず、この期に及んで餌と見做した鬼燈を貪ろうとしている。
 「んー、これは手強そうなのです。が……」
 今一つ戦意が昂らない。繰り出された大鎌の縦振りをアポイタカラは横に跳躍して難なく躱す。巨大な怪虫、HighSの攻撃傾向は外観が示す通り虫そのものといった具合で、そこに明確な戦術思想や駆け引きがあるようには見受けられない。捕食行為の一環として単に暴力を繰り返すだけの相手は、武技を磨く竜殺の羅刹にはやや退屈なのかも知れない。
「まぁ、そんな日もあるか」
 であれば仕事と割り切って粛々と丁寧に処理するのみ。両のフォースハンドが携えるキャバリアライフルをHighSに向ける。オーバーフレーム目掛けて大顎が迫るがアポイタカラは脚部のスラスターより推進力を噴出させ跳躍。大顎が何もない空間を咥え込んだ時にはHighSの上部を取っていた。
「まずは翅を潰したいところだよね」
 下面にHighSを見下ろす格好となったアポイタカラがキャバリアライフルを左右交互に連射する。マズルフラッシュと共に放たれた数発の弾丸が翅に命中すると、貫通する事なく表面に食い込んだ。僅かな間を置いて着弾地点から電磁パルスを伴った爆発が生じる。ライフルに装填されていたのは徹甲榴弾だった。爆発が蓄積された損傷に連鎖し翅を破砕する。悶えるHighSを見届けずにアポイタカラはビル群の屋上へと着地した。後をすぐにHighSが追って来る。
「次は脚」
 巨大怪虫を正面に見据えたアポイタカラが直線にブーストダッシュした。表面が油染みた質感の大鎌が待ち受けるも、寸前まで引き付けて逆方向へ瞬間加速して掻い潜り側面へと出る。至近距離から連射されたキャバリアライフルの弾は片方の脚部に食い込み内部に充填されていた爆薬を炸裂させた。体積を支える脚が崩されたHighSの姿勢が大きく揺らぐ。敵の背面に出たアポイタカラはライフルに装填されている弾種を変更し、僅かに屈む動作の後に足の反発作用と推進装置の発動で大きく跳躍した。
「次は硬化樹脂を充填したペイント弾っぽい!」
 のたうつHighSの真上を取ったアポイタカラが翅にキャバリアライフルの速射を撃ち込んでゆく。標的が大きいため当てる分には全く苦労しない。鬼燈なら目を瞑ってでも当てられるかも知れないが。着弾地点に鮮やかな蛍光色の液体が広がり、時間を置かず硬化し始める。背中に異変を感じたHighSがアポイタカラに振り返り、大鎌を左右立て続けに突き出す。アポイタカラは刺突に合わせて機体を横へと弾くようにクイックブーストを行い、二撃目は急速降下で回避した。HighSの頭部が追う。顎の噛み付きを這うほどに姿勢を低くして躱した。その動作をHighSを中心軸とした横方向への旋回に繋ぐ。
「脚も固めるっぽい」
 無策に振り回される鎌を避けながらも先ほど徹甲榴弾で破砕した箇所へと集中的にライフルの速射を浴びせ続ける。蛍光色の液体が脚全体を覆うほどに広がって硬質化してゆく。HighSの旋回速度が明らかに鈍った。仕上げとばかりに脚とビル群の屋上を接着するように硬化樹脂剤入りのペイント弾を速射し続ける。HighSの巨躯がコンクリートに磔となった。
「じゅんびかんりょー」
 鬼燈の間延びした声とともに空から巨大な杭が降り注いだ。それらは身動きが取れないままのHighSの甲殻に深々と突き刺さって内部で枝上に変形、より凶悪に食い込むのと同時に緑色の体液を噴出させた。怪虫が痛みと怒りに首を激しく振る。
「滅びろっ!」
 HighSを突き刺す杭に刻まれた無数のルーンが煌き出す。すると杭全体から紅の業火が吹き出した。内部に食い込んでいる枝部からも同様に炎が溢れ、怪虫の体組織を内部から焼却する。如何に頑強な甲殻に身を包もうとも内部の弱さまでは守れない。
「徹甲榴弾のお代わりもくれてやるっぽい!」
 焦熱に顎を打ち鳴らし苦しみ踠くHighSに、最後の駄目押しとアポイタカラがライフルの連射を撃ち込む。ルーンの炎に内部から灼かれ、外部からは強力な電磁パルスを伴う徹甲榴弾の炸裂に見舞われる巨大怪虫に対し、鬼燈は極めて粛々とトリガーキーを押し込み続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メアリーズ・エリゴス
アドリブ歓迎

くひっ、これはこれは……
キャバリアというより他の世界でいう怪獣ですねぇ?
ですが、その人喰いによって染みついた怨念は凄いものですねぇ
うふふ、ふふっ、ひひっ!
私の身体を貸しますよぉぉぉ!
身に着けたT型サイコマテリアルが喰われた者達の魂と怨念を集め、私の念と共に増幅して
それによってサイコ・コントロール・システムがオーバーロードして、機能的に想定外な不可解な現象を起こしますよぉ!
ロートガルから紅い禍々しいオーラが吹き上がり、バリアになると共に機体性能と武器の威力を異常強化しますよぉぉぉ!
胸部メガビーム砲やロングビームライフルが砲口が溶けるほどの、ビームアックスソードは超巨大化しますよぉぉ!



●死愛
 藤宮市に展開していた日乃軍を喰らい尽くした怪虫型ジャイアントキャバリア。凄まじいまでの戦闘力と生命力を持ったこの半生体兵器にも、猟兵の苛烈な攻撃に曝され続けていよいよ終わりの予兆が見え始めた。されども未だ驚異的な粘りを見せている。
「くひっ、これはこれは……」
 荒廃したビル街の大通り。メアリーズが搭乗している血塊色の重キャバリア、ロートガルがロングビームライフルのトリガーを引いた。縮退保持されていた超高熱の粒子が収束バレルを抜けて銃口より放たれる。幹線道路を四つん這いで走りロートガルに接近するHighSへと黄金色の光軸が一直線に伸びて命中した。直撃したビームが甲殻の表面を擦過する。超高熱の粒子が耐ビームコーティングごと甲殻組織を抉り取った。度重なる凄まじい猛攻を受け続けたHighSの体組織は脆弱化が著しい。にも関わらず決して満たされない食欲を満たすために獲物を追って捕食行動を繰り返している。
「死ぬまで人を喰い続けるように出来ているんでしょうかねぇ? 兵器ですからねぇ……まぁ、兵器というより他の世界でいう怪獣ですけども。きひっ!」
 怪獣紛いのジャイアントキャバリアとの距離が零に詰まる直前、ロートガルのフロントアーマー股間部に収納されたサブアームがビームの束を発振させた。高速で振り下ろされた大鎌と光剣がぶつかり合い目を潰さんばかりの激しいスパークが明滅する。更にもう一方の大鎌がロートガルのオーバーフレームを引き裂くべく横から迫るが、殺気が膨れ上がるのを察した瞬間にロングビームライフルを投げ捨てて抜刀したビームアックスソードで受け止めた。重質量物体同士が鍔迫り合う。体格差でロートガルが押されるがブースターを起動して強引に踏み止まっている。HighSが首を伸ばし、ロートガルの眼前で顎を打ち鳴らした。
「おやおや怖い怖い、一体何人喰ったんでしょうねぇ?」
 鍔迫り合いの最中、巨大怪虫が今まで腹に収めた者達の怨嗟がロートガルを遡ってメアリーズのT字形のアクセサリに集約されてゆく。人の思惟を掻き集めて増幅するサイコ・マテリアルを介して、幾百幾千の死霊達がメアリーズの肉体に這い上がる。
「うふふ、ふふっ、ひひっ! 悔しかったんですか? 痛かったんですか? 怖かったんですか? でしょうねぇ。なら、私の身体を貸しますよぉぉぉ!」
 自身に流れ込む数多の感情を受け入れると、引き換えに劣情とも高揚とも付かない感覚が腹の底より湧き上がって来る。血の輝きを放つT字形のアクセサリに呼応するかのようにしてロートガルに搭載されているサイコ・コントロール・システムがひとりでに立ち上がった。呪詛や怒りといったあらゆる怨念を含ませた紅の殺気が明らかな力を持ってロートガルの全身を包み込む。ブースターの噴射炎すら血呪の色に転じ、鍔迫り合いで押されつつあったロートガルが逆に巨大怪虫を押し込み始めた。
「分かりますかぁ? この殺意(アイ)、ぜぇーんぶあなたに向けられたものですよぉ? まぁ虫にわかる訳ありませんよね。きひぃっ!」
 ロートガルの胸部の大口径砲に赤い粒子が集い始める。ほんの数秒の収束時間を置いてメガビーム砲が叫びを上げた。鍔迫り合いながら発射された収束粒子の軸はHighSの無防備な胸部を直撃した。
「まだまだまだまだ! 砲口が溶けるまでですよぉ!」
 元より太い光軸が更に一段もう一段と直径を増す。至近距離から照射された限界超過の高出力ビームの奔流にHighSは鍔迫り合いの状態を維持しきれず、後方へと押し流された。胸部に浴びせられたハイパーメガビーム砲が流水のように四散してゆく。ロートガルの胸部の砲口が溶け落ち照射が強制中断されたのと同時に、遂にHighSが背面のビルに叩き付けられてコンクリートの壁に身をめり込ませた。ビルの残骸が降り注ぎHighSの下半身が灰の瓦礫に埋もれる。
「この殺意(アイ)は……」
 胸部の砲口よりスパークを散らせるロートガルが、ビームアックスソードの鋒を空に向けて掲げる。すると機体より這い上がった血の色の不可解な力場が刀身に纏わり付き、刃を何十倍にも長大化させた。禍々しい光の御柱が藤宮市に立ち昇る。
「遊びではないですよぉぉぉ!」
 渾身の踏み込みを以て巨大な光刃が振り下ろされた。空気を灼き切りながら倒れ伏したハイパービームアックスソードがHighSの巨躯をビルごと飲み込んだ。刃に触れたコンクリートが瞬時に溶解して消え失せる。メアリーズが引き受けロートガルが増幅した光はHighSが自ら喰らった者達の怨嗟の紅。貪欲なる巨大怪虫は狂乱の少女が放った極太の一閃の中で断末魔に似たおぞましい音を軋ませるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天城原・陽
【特務一課】※作戦:市街地へおびき寄せワイヤーで拘束の後撃滅
(神経を通して愛機の意識が流れ込んでくる。嫌悪・軽蔑・殺意…そして義憤)…少しはらしくなって来たじゃないの赤雷号、私も同感よ
『アレ』は生かしちゃおけない、殺すわ。
(作戦開始。ブーストオン、空中戦に持ち込み。引き撃ちで市街地までおびき寄せる。低空飛行にて追いすがってくる敵へ弾をばらまきながら通信回線を開く)
『マダラ、彼我の距離は10m無いわ。10秒後に目標地点を通過予定…任せたわよ』
(灰風号が潜んでいる地点を通過。捕縛が成功したなら振り向きざま狙撃砲をぶち込みつつ)
「キリジィ!!!」
(トドメだやっちまえと言わんばかりに戦友の名を叫ぶ)


斑星・夜
【特務一課】
キャバリア:灰風号搭乗

大丈夫、あのクソッタレな化け物は俺達がぶっ飛ばすよ
だから君達は君達を守ってて、と白羽井小隊に伝えます

俺の役目は、あの羽虫の足を止める事だ
よっし、距離オーケー、ありがとギバちゃん!

ギバちゃんがおびき寄せてくれた敵の行動を予測しながら、
向かう先で『RXSシルバーワイヤー』でワイヤーを射出し、
ビルや建物等『地形の利用』をし、蜘蛛の巣のように張り巡らせます(※罠使い)

上手く引っかけられたら『ブリッツ・シュラーク』の鞭で叩いて動きを止め、
更にワイヤーを射出し『捕縛』して『体勢を崩す』
捕縛した状態でも逃げないように『怪力』で引っ張って踏ん張るよ

キリジちゃん、やっちまえ!


キリジ・グッドウィン
【特務一課】
アリシアに搭乗

あいつらの間で友情が芽生えたり青春してんじゃん。知らんけど
とりあえずぶっ飛ばして終わりにするぞ

"EPカルトゥーシュ"再接続。(頸椎部から髪や頭の先まで神経が張り巡らされる感覚)
機体とのレゾナンス値を引き上げリミッター解除 ──いつでもいけるぜ

赤雷号が誘導した『HighS』にBXS対装甲重粒子収束飛刀を何本か投擲し先制攻撃
威力には期待せず灰風号の作った罠に引っ掛ける為に誘導目的。あとは任せたぜ

ギバ、手前ェに言われなくてもわかってらァ!!
マダラァ!その虫取り網離すなよ!

捕縛された蟲を握り潰すつもりで掴み、腕部のレーザーガンによる零距離射撃
お前はこれでも喰ってろ!!



●赤雷と灰風と黒鉄と
 数多の猟兵によって撃たれ斬られ衝突され、ひしゃげて抉られた甲殻から体液を溢しながらもまだ動き這いずる巨大な人喰い怪虫。傷付くほど餌を求めるのか、一本だけ残された触覚を忙しなく動かし周囲を探っている。
 その巨大怪虫の様子を藤宮市の上空より赤雷号の左眼が凝視していた。機体を経由して映像に出力された光景を見る天城原へ、紅の修羅は己の激昂さえも繰り手へと伝えて流し込む。存在してはならないものへの嫌悪と軽蔑より生じた明確な殺意、そして義憤。赤雷号の動力炉が脈動する。
「……少しはらしくなって来たじゃないの赤雷号、私も同感よ。『アレ』は生かしちゃおけない」
 天城原は赤雷号から神経伝達で受け取った殺意をより強く深く滾らせた。殺す。絶対に殺す。人機の思惟が重なった。変わらぬ表情から冷徹無比な殺意が滲み出す。操縦桿を握る指の隙間から軋む音が聞こえた。
「大丈夫、あのクソッタレな化け物は俺達がぶっ飛ばすよ。だから君達は君達を守ってて」
 赤雷号の下方のビルの屋上にて立つ機体は、両肩部よりフレキシブルアームを介して半円形の大型シールドを搭載する灰風号。搭乗者である斑星も穏やかな口調の裏に静かな殺意を露わにしていた。怪虫は殺すし白羽井小隊には手を出させない。ここまでの過程で深からずも浅くない繋がりを築いた少女達をみすみす餌にくれてやる道理など万に一つも有り得ない。
「なーに青春してんだよ。とりあえずぶっ飛ばして終わりにするぞ」
 灰色号の隣に膝立ちの状態で待機しているアリシア。コクピットに収まるキリジの口振りは普段とさして変わらず乱雑かついい加減だが、手早く駆除したいという点では先の二人と同じ認識を共有しているようだ。そしてそれを実現する為の手段も用意していた。
「やるぞアリシア。カルトゥーシュ、再接続」
 身体が細長い何者かに侵食され、内部から神経が押し広げられるような感覚が頸椎部より浸透する。その感覚は四肢の隅々から爪の先端、脳に張り巡らされた毛細血管と髪の一本に至るまでに行き渡った。自身の全てを意識の制御下に置き、機体との同調が完全に成された上であらゆる出力制限を解除する。キリジが首を捻ればアリシアも首を捻り、アリシアが右のランブルビーストを開いて閉じればキリジも右手を開いた後に握り締める。融合し新たな複合生命体となったキリジとアリシアの間にタイムラグという概念は存在しない。
「いつでも行けるぜ」
 キリジの声が合図となり、赤雷号が背負う巨大なフライトユニットのエンジンがより強い蒼炎を灯す。
「作戦通り予定座標に引き寄せる。遅れるんじゃないわよ」
 スラスターの噴射炎を残して赤雷号はHighSが這い回っている方向へと飛び立った。灰風号とアリシアも同じく跳躍して各々異なる方角へと進む。戦端を切ったのは赤雷号の二十二式複合狙撃砲だった。HighSを射線上に捉えるや否や、容赦無くトリガーを引いて実体弾を撃ち込む。鋼が弾かれる甲高い音と共にHighSがのけぞった。すぐに体勢を立て直し、赤雷号の中にいる獲物の気配を察して貪欲に顎を打ち鳴らすと巨躯にあるまじき俊敏さで這い寄ってきた。赤雷号は機体の正面をHighSに向けたまま低空飛行を維持し、後ろへ高速後退する。
「食い付いたね」
 天城原は短い言葉と共にトリガーキーを押し込む。狙撃砲より射出された大口径実体弾がなんの戦術思想もなく突進して来るHighSの甲殻に着弾、表面を砕いて緑色の液体を撒き散らせた。しかし生じたストッピングパワーによって急激な減速が掛かるも、一度見つけた獲物を諦めるつもりはそうそう無いらしく追跡を続行する。地面を走りながら残された翅を開き、不安定な挙動で飛翔し始めた。スピードこそ目を見張るものがあるが、翅を大きく損壊しているため高度は低く抑えざるを得ないようだ。
「ナメんな! 私の方が上なのよ!!」
 更に速度を増加させ引き撃ちを続ける赤雷号は武装をギガントアサルトに変更、超高速連射される電磁投射弾をHighSの真正面から浴びせにかかった。連続しての被弾が目眩しになったのか、飛翔軌道がますます不安定化する。されどHighSはまだ追い縋る。双方の相対距離が極僅かにまで縮まっていった。
「マダラ、彼我の距離は10m無いわ。10秒後に目標地点を通過予定……任せたわよ」
「よっし、距離オーケー、ありがとギバちゃん!」
 天城原は斑星からの返答を受け取ると牽制射撃を中断、速度を維持したまま機体を180度反転させHighSに背を向けた。やや高度を下げて背丈の高いビル街の合間に伸びる幹線道路上へと赤雷号の機体を投じさせる。HighSが後を追う。ある地点に達した瞬間、突如として赤雷号が急上昇した。後方間近を飛翔していたHighSが何かに引っ掛かり空中で転倒する。
「ナイスギバちゃん! 捕まえたよ!」
 HighSが引っ掛かったものとは特殊材質の鋼線だった。赤雷号がHighSを誘引している間、灰風号はビル街を飛んでは跳ねてシルバーワイヤーを蜘蛛の巣状に張り巡らせていたのだ。ここは既に灰風号の仕込んだ罠によって狩場と化していた。蜘蛛が糸を張り哀れな羽虫を捕らえるのと全く同じく、灰風号によって巨大怪虫は糸に絡め取られてしまった。HighSが枷を解こうと暴れて踠くが、暴れるほどにシルバーワイヤーが絡み付く。鋸状の足も仇となっているようだ。怒りを露わに打ち鳴らす大顎で噛み切ろうとするが灰風号が自ら手を下して阻止に入る。
「だーめ、逃がさないよ」
 ビルの屋上に立つ灰風号の両腕が青白い雷を纏う。振りかざすとそれは超高圧電流の鞭、ブリッツ・シュラークとなってHighSに叩き付けられた。接触するたびに目を潰さんばかりのスパークが生じHighSが身を痙攣させる。なお一層激しく怒り狂い暴れるHighSが、纏わり付くワイヤーをビルのコンクリートごと引き剥がそうとする。
「逃さないって言ったでしょうが!」
 灰風号が追加でシルバーワイヤーを射出しHighSへ巻き付けた。
「もうちょっと、頑張って……ねっ!」
 強靭な膂力に灰風号の機体が引き込まれるが、駆動系の出力を最大まで引き上げて踏ん張り堪える。各関節から火花が散り始めた。灰風号の動力炉が唸りにも似た音を立て、片側のセンサーカメラに金色の光が強く迸る。
「大人しくしてなっての!」
 HighSの頭上を捉えている赤雷号が振り向き様に二十二式複合狙撃砲を撃ち込んだ。重い大口径砲の鉄槌に背面を穿たれたHighSは激痛と衝撃に一瞬動きを止めた。
「キリジィ!!!」
「キリジちゃん、やっちまえ!」
 天城原と斑星が同時に叩き付けるようにして叫んだ。黒鉄の装甲色の機体がビルの屋上よりHighS目掛けて飛び掛かった。
「わかってらァ!! マダラァ! その虫取り網離すなよ! 今ぶっ殺しにいってやるッ!」
 キリジが吼えるとアリシアはビームダガーを投擲した。ダメージが蓄積され脆弱化が著しくなった頭部の白面に重粒子の刃が深々と突き刺さった。その対装甲重粒子収束飛刀をグリップとしてHighSに直接取り付く。目の前に飛び込んできた異物を真っ二つにしようと大顎が左右より迫る。
「喰わせるかよ!」
 顎がアリシアを挟み込む速度よりも機体と合一化したキリジの反応と行動反映の方が早かった。ランブルビーストが大顎を受け止めて逆に外側へとこじ開ける。紫電が走るマニピュレーターを顎に食い込ませると、そのまま握り込んだ。
「喰われるのは……てめェの方だ!」
 宙を舞う二本の大顎。緑色の液体が夥しく噴出しアリシアの黒鉄色の装甲に吹き掛かる。大きく身を捩るHighSの口の中にアリシアは片腕を突っ込んだ。腕に牙が深々と食い込むも構わずランブルビーストを最大稼働させ中身を滅茶苦茶に引っ掻き回して撹拌した。アリシアを介してHighSの内部を抉り込む感触がキリジの神経に伝わる。そして頭部の奥底を握り潰すのと同時にレーザーガンの接射を叩き込んだ。
「お前はッ! これでもッ! 喰ってろッ!!」
 内部から放たれたレーザーがHighSの頭部を貫通する。シルバーワイヤーで拘束されている巨大怪虫の身体が一射毎に大きく跳ねて体液を吹き溢した。更に駄目押しにと赤雷号がありったけの銃弾を撃ち込む。アリシアは敵の体内を握り潰したまま振り落とされるのを必死に堪える。最後の一射の光が炸裂したのと同時に、HighSの口に突っ込んでいた腕を遂に喰い千切られたアリシアが振り落とされてビルに背中を叩き付けられた。
 口腔内を内部から外側へと撃ち抜かれ続けたHighSは頭を丸々喪失し、手足が力なくぶら下がった。幾百幾千もの人間を喰らい、戦闘に於いて驚異的な粘りを見せた巨大怪虫は漸く物言わぬ虫の死骸となった。
「終わった? いやぁキリジちゃん、ギバちゃん、お疲れ様」
 斑星が張り詰めていた肩の力を抜くと、灰風号がシルバーワイヤーを巻き上げていたウィンチの出力を切った。関節部からショートの火花を散らせている。巨大な虫の死骸は鋼線の蜘蛛の巣に囚われたまま宙に揺れ、緑色の体液を滴らせている。
「ったく、とんだ害虫駆除だったわね」
 緩やかな動作で幹線道路上に降りてきた赤雷号が、ビルに背を着けて腰を落としているアリシアに肩を貸した。狙撃砲と小銃型レールガンの砲身は赤熱化していた。
「あの野郎、最後の最後でアリシアの腕喰いやがった。しつけェばっかりのめんどくせェ奴だったな……」
 隻腕となったアリシアが赤雷号に肩を担がれゆっくりと立ち上がる。硬質な黒鉄色の装甲はHighSの体液にまみれ緑色に汚されていた。
「野郎? メスかも知れないよ?」
「知るかよ!」
 斑星とキリジの声を他所に赤雷号の頭部は東の空に向けられていた。左眼の複合センサーのレンズが愛宕連山の稜線を越えて姿を覗かせた太陽を照り返す。
 宵闇にも似た夜明けを迎えて緋色の朝焼けが藤宮市を照らす。戦場の香りを運ぶ火の燐光が赤く揺らめき、風に流されて彼方に消えてゆく。その先を見つめる天城原は密やかに言葉を溢した。
「これで終わりなら……ね」
 猟兵達が勝ち取った結果を賛辞するかのように、日乃和の朝日は輝かしい陽光を湛えていた。

●別れと終局
「猟兵の方々、愛宕連山から藤宮市に至るまで大変お世話になりました」
 巨大怪虫撃破から暫く間を空けて、藤宮市の駅前ロータリーに集合した猟兵達を前にして白羽井小隊の隊長が敬礼する。背後では隷下の隊員達が控え、更に後ろでは日乃和軍の兵員やキャバリアが忙しく行き交っていた。愛宕基地の撤退先となっていた第二防衛線から西進して来た一個師団がようやく到着したのだ。現在は市中に展開して制圧及び周辺地域の敵軍の掃討を行なっている。
「白羽井小隊は本来の命令通り、ここで補給と整備を受ける次第になりましたわ。その後は御偉方の指示待ちですわね」
 若い小隊長が徹夜明けの朝日に目を細める。顔には疲労と安堵が入り混じった表情が滲んでいた。
「猟兵の方々に救ってもらったこの命は、一人でも多くの市民を守るために使わさせていただきます。それが御恩に報いる事になるのかは分かりかねますけれど。本当にありがとうございました」
 いつぞやの田園地帯で見た光景宜しく、小隊長が深く首を垂れると隊員達も釣られて頭を下げた。
「それでは失礼致しますわ。さようなら、どうかお達者で」
 白羽井小隊は猟兵達に背を向けて去ってゆく。姿が見えなくなる途中で隊長が立ち止まり振り返ると、もう一度敬礼し再び背を向け歩き出した。白羽井学園の少女達にとって本来なら有り得なかった、明日という道へと。
 フェザー01の後ろ姿を見送ったのちに、日乃和の軍高官達に立ち会った猟兵達は多額の任務遂行報酬を受け取った。同じくして愛宕連山自動車道の過程で保護した日乃和軍兵士の身柄引き渡しも行われた。
 その際に白羽井小隊への運用について日乃和軍高官が詰問に遭う場面も見られた。一部の猟兵達は殴り倒すのも辞さない剣幕であったが、最終的には白羽井小隊各員の戦果と努力を鑑み可能な限りの誠意を尽くした待遇を約束するという形でひとまずの終着点を得たようだ。
 また、作戦目標である愛宕基地の撤退の成功も猟兵達の知る処となる。猟兵達と白羽井小隊が愛宕連山自動車道を進んでいる頃には既に第二防衛線司令部に到着しており、その後は第一防衛線奪還に向けての戦力再編を行なっていた。
 再編中に敵の大部隊の侵攻を受け戦線が瓦解寸前まで追い詰められたが、余裕を残して撤退していた愛宕基地部隊の潤沢な物資によって寸前で持ち堪え、第三防衛線より送られた大規模増援と合流し一転攻勢、そのまま藤宮市まで攻め上がって来たのが現在に至る経緯だという。
 戦況が動いていた時間帯としては第二防衛線で激戦が繰り広げられていた頃と藤宮市で猟兵達がHighSと交戦していた頃が重なっている。猟兵達がいなければ第二防衛線にSwollenとHighSが襲来し展開中の日乃和軍は全滅、第三防衛線にも甚大な被害が波及していたか或いは壊滅していただろう。猟兵達の戦いが未来の分岐を変えたのだ。
 斯くして此度の任務の全行程が完遂されたが、日乃和の情勢の先行きはまだ見通せない。だがその先が暗闇だったとしても、報われなかったとしても、猟兵達は追い縋る過去を倒して今日という時間を明日に繋げた。それだけは事実だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月16日


挿絵イラスト