銀河帝国攻略戦⑨ ~激! ブーステッド魑魅魍魎大隊!~
●規則正しく整列暴走
スペースシップを攻め立てる、連中の動きは無軌道に統制が取れていた。
「エンペライダーズ〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉A1~A3分隊、左翼より回って目標のスペースシップを牽制せよ。――続けてB1~B4分隊、反対方向より後方に回って奇襲をかけよ。各自応答せよ!」
「こちらA1分隊、命令受諾――ヒャッハー!」
「こちらA2分隊、命令受諾――ンダコラァ!」
「こちらA3分隊、命令受諾――ヤッテヤンヨー!」
宇宙バイクに乗った三つの分隊が解放軍のスペースシップの左側へと走った。
「こちらB1分隊、命令受諾――スッゾコラァ!」
「こちらB2分隊、命令受諾――ナンジャワレコラ!」
「こちらB3分隊、命令受諾――イヤッハー!」
「こちらB4分隊、命令受諾――ジャンプシテミロゴラァ!」
続けて、四つの分隊がシップの後方へと回った。
エンぺライダース〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉は荒くれ者の集まりで知られるエンぺライダースの中でも規律が厳しいことで有名だった。
曰く、かの大隊では朝昼晩の三食の摂取が義務付けられている。
曰く、かの大隊では定時上がりが当然であり残業は怠惰の証とされている。
曰く、かの大隊では有休の消化は義務であり休日出勤は禁止されている。
曰く、かの大隊では育児休暇と育児手当が保証されている。
曰く、かの大隊こそは規則正しく統制の取れた愚連隊である。
――などなど。
見よ、徹底した規律によってもたらされる〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉の恐るべき連携攻撃を。
一糸乱れず整列しての波状攻撃が、スペースシップを襲っている。
働き甲斐のある職場によって培われた実力は、まさに本物の銀河の戦士と呼ぶに相応しい。
「銀河帝国の名のもとに、解放軍を駆逐せよ!」
「「「ガッテンショウチノスケ――――ッ!」」」
●というわけで助けに行ってね
「規則正しい愚連隊ってただの軍隊では?」
見た景色に、グリモア猟兵ルナンガ・ゼス(f05002)はそんな所見を述べた。
「まあ結局オブリビオンだからどんなホワイト企業に見えても過去の遺物なのよねー。じゃ、説明ねー。敵はエンぺライダーズっていう頭悪いライダー集団っぽいよ~。で、今回はその中のブーステッド魑魅魍魎大隊っていう頭悪い名前の頭悪いライダー集団をぶっ潰していこうぜー」
説明しつつ、ルナンガはニヘラと笑って髪を掻いた。
「ただこの連中、結構武装が重たいから、一撃に注意してねー。それとアタマ張ってるデッカイヤツがいるから、そいつ倒せばかなり楽になると思うよー。いうべきことはこれくらい、かな?」
うん、と、彼はうなずく。
「今回の戦争、今の戦況自体は悪くないみたいだから、みんなの活躍でさらに解放軍有利に傾くかもね。ちょっとだけ、歴史の勝者を作る手助けしちゃおーぜ? 何となくな未来のために、さ」
そしてルナンガは笑って猟兵達を送り出した。
音虫
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
どうも、音虫です。
今回は規則正しい宇宙愚連隊をぶっ倒してこの戦争を有利に進ませようというシナリオです。
敵さんはかなり統制が取れていますが、猟兵の皆さんであれば十分に対抗可能でしょう。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしています!
第1章 集団戦
『クローン重騎兵』
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POW : インペリアル・フルバースト
【全武装の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : コズミックスナイプ
【味方との相互情報支援】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【狙撃用ビームライフル】で攻撃する。
WIZ : サイキッカー拘束用ワイヤー
【アームドフォートから射出した特殊ワイヤー】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ファランス・ゲヘナ
【心境】
しかしこいつらに育児休暇と手当を申請するような事態があったのカ?
どう考えてもモテそうに見えないガ…。
【行動】
まあ、オレには関係ねーナ。
さて、宇宙バイク:龍星号に【騎乗】シ、【ダッシュ】で接近シ、愚連隊を確認…。
そして有効範囲に接近したら、UC:文明破壊砲を使用。
遠距離攻撃で愚連隊の密集地帯に照射ダ。
戦場の味方に連絡シ、射線上がクリアーなのを確認シ発射すル。
その後、懐から熱線銃:戦士の銃を取り出シ、【スナイパー】で射撃し【クイックドロー】で素早く【二回攻撃】ダ。
敵の攻撃は龍星号の足の速さと【見切り】【分身】で回避するナ。
ぴき~ん。オレの【第六感】が感じタ。右に回避ダ!
木目・一葉
愚連隊なのに規則正しい?
それって、愚連隊の要素いる?
しかし統率力は侮れない
気を引き締めて挑まないと
・戦闘
僕は【地形の利用】で宙域の巨大デブリに【目立たない】よう隠れる
敵部隊がそのデブリにさしかかれば『グラウンドクラッシャー』の地形破壊でデブリを破壊、周囲にその破片を撒き散らす
自分はその際また散らばった破片の一つに隠れ、フック付ワイヤーで他の破片を手繰り寄せて敵にぶつける、もしくは敵をワイヤーに引っ掛ける等して混乱させる
また隠れてる破片が破壊されたら、他の破片へと隠れよう
この時リーダーは、距離をとるなど他の隊員と違った行動をとる筈だ
それを見つけ、召喚した影の追跡者を接触させて『影人の涙雨』を放つ
猟兵が駆けつけたとき、敵の総攻撃が始まろうとしていた。
「A1分隊、左翼展開! 攻撃開始!」
「A2分隊、左翼展開! 攻撃開始!」
「A3分隊、左翼展開! 攻撃開始!」
そこにあったのは、前情報通りにやたら統率の取れた動きで真空中を走り回る〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉の姿であった。
「え、これ愚連隊? ……え?」
それを目の当たりにした木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)が思わずその名称に疑問を覚えた。
しかしそうしている間にも、〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉を構成する重騎兵はその砲口をスペースシップへと向けていた。
「あ、ヤバ!」
一葉が慌てて武器を構えようとしたその時、
「ハッ! やらせねぇヨ」
一条の流星が、〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉へと突っ込んでいく。
それは、宇宙バイクに騎乗した雄々しきブラックタール、ファランス・ゲヘナ(ブラックタールのスターライダー・f03011)であった。
「OK、間合いは把握シタ。――派手な開幕と行こうじゃねぇカ!」
彼が吼えて、宇宙バイクを旋回させる。
そしてバイクが敵分隊の群れからある程度離れたところで、光が降ってきた。
「うわ、わ!」
近くにあったデブリの陰に隠れた一葉はハッキリと見た。
それは、おそらくは光学兵器。いずこかより発射されたビーム砲であった。
敵集団の何割かを巻き込んだ光砲を見据え、ファランスは笑った。
「ハッ! 今日も奇麗にキマったナ。火砲支援感謝するゼ。オーバー!」
そして彼は不定形の懐からニュルリと銃を取り出し、
「オイ、そこのあんた」
「はい!?」
呼びかけられた一葉が、驚きに身を硬直させる。
その反応を見て少し意地悪げに笑いながら、ファランスは銃口で敵を示した。
「今からしばらくボーナスタイムってヤツダ。逃す手はねぇゼ?」
言うが早いか、ファランスは宇宙バイクをカッ飛ばして星となった。
残された一葉は彼が突撃していった方を見る。
なるほど、今の光砲によってシップ左翼に展開していた敵部隊の陣形が乱れている。
立て直す前に攻撃すれば、かなりのダメージを与えられそうだ。
実際、ファランスの銃撃によって敵重騎兵の何体かが爆光を巻き起こしていた。
が――
「……むしろ気になるのは」
一葉が振り向いたのは、左翼ではなく反対側。右翼に繋がる方角だ。
「B1分隊、A1分隊の援護に入る! イクゾコラァ!」
「B2分隊、A2分隊の援護に入る! シナセンゾテメェ!」
「B3分隊、A3分隊の援護に入る! イキガッテンジャネェゾガキャア!」
やはり来た。
敵が連携に長け、部隊として統制が取れているならば必ず別部隊がフォローに入るはず。その一葉の予想は見事に的中した。
「僕にとっては――」
彼女は、自分が身を隠していた大型デブリを思い切り蹴飛ばした。
質量の差からデブリは動かず一葉が宙に投げ出される。
だがそれでよし。
その身を弓なりに反らせてたっぷりと力を貯めこんでから、一葉は両手に握った巨大な戦斧を大型でぶりに叩きつけた。
「こっちの方がやりやすいかな、っとッ!」
重い一撃がデブリの一部を粉砕する。
勢いのまま、破片は高速で散って〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉に側面から襲い掛かった。
「ヌオオオオオ!?」
「ヤーラーレーター!」
「兄貴ィ! B1分隊の兄貴ィィィィィ! ――こちらB3分隊。B1分隊とB2分隊が敵の攻撃に被弾。被害甚大につき至急増援戦力を派遣されたし」
再び近くのデブリに隠れて、一葉は敵部隊を観察する。
「ちぇ、リーダーはこっちにはいなかったか」
一葉は小さく舌を打った。
できれば敵のリーダーを叩きたかったが、そうは都合よくいかないようだ。
「さて、今度は――」
戦場を移そうとする彼女の前に、ファランスの宇宙バイクが急停止。
「ヘイ、お嬢サン、どちらマデ?」
「敵のリーダーがいそうなところまで」
「ハッ、そいつは奇遇だナ。俺の目的地も同じだゼ。――乗りな」
「いいの?」
尋ねると、ファランスがニュルリと動いた。
あ、肩をすくめたんだな、と、一葉は何となくわかった。
そして一葉を後部座席にしっかり載せて、ファランスが宇宙バイクを発進させる。
「行くゼ、龍星号! 今、俺達は星になル!」
「わ――――ッ!?」
宙空に瞬く星となって、宇宙バイク龍星号は戦場へと駆けて行った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
胡・翠蘭
「クローンライダーの次は、クローン重騎兵?……コピー製品ばかりじゃなく、個性あるお客様はまだかしら」
【SPD】
宇宙バイクに跨って、機動力を上げていきましょうか
第六感、野生の勘を駆使して敵の攻撃を見切り、回避して疾走したいわね
あとは……バイクに乗っていると、爽快感と高揚感で……ふふ、悦くなっちゃうわね
その快楽を捧げて、ユーベルコードを発動させましょう
「ふふ……さぁ、初めましてのアナタ。未知の快感に、興味はお有りかしら?」
触手での攻撃メインで戦いつつ、打ち漏らしは宇宙バイクとガジェットで処理していきましょうか
クリューラ・センティファ
任務了解。作戦を遂行する。
宇宙バイクに【騎乗】し迎撃。
ロックオンされ難い様、戦闘機動で旋回しつつ、敵の攻撃を【見切り】ながら砲撃を加えていく。【スナイパー】の技能で一機ずつ確実に撃墜を狙う。集団戦が得意な相手ならまず確実に数を減らしていく。
仲間と連携し戦闘。【掩護射撃】で味方への攻撃を阻害、撹乱。
敵のアタマらしい戦力を発見したら【質点操作】で攻撃。無数の「体積を持たない質量」を射出、操作。引力でアタマ周囲の護衛の体勢を崩させ突破。アタマに質量を集中させ、極小の疑似ブラックホールを発生させ機体を抉り取る。
森・メメント
〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉って、言いにくい名前だわぁ。
頭悪いのは好みじゃないし、頑張って倒しましょっ。
【美しさの暴力】で召喚した二人に前衛に出てもらって、わたし自身は後方にいるわねぇん。
仲間との連携を第一に心掛けるわよぉ~。
ある程度、敵の数が減ったら、召喚した二人にアタマはってる奴の動きを牽制させて味方に倒してもらうわよぉん。
なんなら二人にトドメさしてもらってもいいしねぇん。
こっちに攻撃が来るようなら、敵を盾にして受けるわぁん。
頭悪くて統率が取れてるって事はぁ、結構仲間意識が強いのかしらん?
そうしたら敵を盾にしてれば攻撃しにくくなるでしょうし、いいわねぇん。
「ブーステッド魑魅魍魎大隊、ねぇ……」
宇宙を漂うデブリに背をもたせつつ、森・メメント(おかまの死霊術士・f12690)は未だ戦いが続く景色を眺めていた。
「――言いにくい名前ねぇ。頭が悪いし、好みじゃないし、世界観的にも何ていうかこう、無理矢理感がすごいっていうか、ねぇ?」
なかなかボロクソな評価であった。
「そうですわね――」
さらに、それに同意する者がいた。
胡・翠蘭(鏡花水月・f00676)である。
「どっちを見ても同じ顔。クローン重騎兵、でしたかしら? せっかくの戦場なのだから、お相手いただくにしてもコピー商品ばかりではやる気も出ないというものね。……個性あるお客様はまだかしら?」
翠蘭は言って、フゥ、と物憂げな表情でため息をついた。
「ああ、そうそう。そこも美しくないのよねぇ。量産品は便利だけど、やっぱりここは戦場だもの、雑魚ばっかりじゃつまらないわぁん」
分かる分かると、メメントも深くうなずいた。
「個性は任務遂行に必要か?」
この場にいる最後の一人、クリューラ・センティファ(Q・U・A・L・L・・f12129)がため息零しまくりの二人に正論をぶつけた。
「別にいらないわよぉ?」
「ええ、特には必要ではないわね」
そしてメメントも翠蘭も、彼女の問いかけに至極あっさり答えた。
「ただ、好みじゃない連中なら何の呵責もなくやっつけられるでしょぉ?」
メメントが己の美しさを誇示するようにポーズをとる。
「それじゃ、始めるわぁん」
メメントの左右両側に影が生じた。
それは彼の分身。彼と同等の実力を持った男女であった。
「はい、わたしの自慢のこの子達、貸してあげるわぁ。一緒に戦うなり盾にするなり、好きにして頂戴ねぇん♪」
メメントが言うと、男の分身が翠蘭の方に歩み出て、女の方の分身がクリューラの宇宙バイクへと乗り込んだ。
このユーベルコードは非常に便利だが、行使中は本体であるメメントが動けないというデメリットがあった。つまり彼はこの場でお留守番だ。
「助力感謝。……任務を遂行する」
ブラックタールのクリューラが宇宙バイクの機関部に侵入し、さっさとその場から飛び出していった。
「せっかちさんねぇ。もうちょっと遊びがあればいいのに」
見送ったメメントがそんなことを言う。
翠蘭はほんのりと口の端を上げた。
「戦い方も、戦いへの関わり方も、人それぞれということ。……さぁ、私達もイキましょうか、たくましいアナタ?」
メメントの分身を宇宙バイクに載せて、翠蘭がハンドルを強む握り締める。
そこに、メメントが尋ねた。
「翠蘭ちゃんの戦いへの関わり方ってぇ~?」
「もちろん、決まっているわ」
翠嵐が肩越しに振り返り、その艶やかな唇で応える。
「激しく、愉しく、悦ばしく、やがてこの身、風と果つるまで――」
宇宙バイクのエンジンが唸りを上げて、彼女もまた戦場へと飛び出していった。
「思ってたより情熱的な子、だったみたいねぇん」
やれやれと、メメントは肩をすくめたのだった。
――場面は最前線へと移る。
「ッテヤンゾ、ッコラ――――ッ!」
「ンゾッコラ――――ッ!」
「ンゾッコラ――――ッ!」
「ンゾッコラ――――ッ!」
〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉に属する四体の重騎兵が編隊を組んで宙を舞う。
彼らが声に出しているスラングは罵声ではない。
あれは大隊内で設定された、確かな意味を持った部隊内サインであった。
「「「ブッコロース!」」」
一斉突撃のサインを復唱し、四体の重騎兵がシップへと突撃していく。
だがその行く手を、翠蘭はあえて阻んだ。
「「「ドケヤアマコラ――――ッ!」」」
敵発見、排除開始。というサインの復唱であった。
四つの銃口が翠蘭の宇宙バイクに向けられた。瞬間、ハンドルを握る指先にまでチリリと鋭い感覚が走る。
そう、これだ。
翠蘭の顔に嫣然たる笑みが浮かび、彼女は舌先で唇を舐めた。
そして敵へと向かってフルスロットル。
大型で衝撃に強い宇宙バイクが、全速力で発進した。
〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉と翠蘭の相対距離があっという間に縮んでいく。
すでに敵の攻撃は始まっていた。
手に持った狙撃ライフルより翠蘭を貫く光が瞬いて、だがそれを軽々と回避する。
敵の武装はそれだけではなかった。
背には多種の火砲を備えたアームドフォート。全てが火を噴き彼女を狙った。
だが当たらない。
敵弾幕の間を縫って、翠蘭は超高速で戦場を走り抜ける。
チュイン、と、敵の弾丸が宇宙バイクをかすめた。
ここは戦場。一手間違えればそれだけで命など消し飛ぶ鉄火場だ。
だからこそ昂る。死と隣り合わせの、この場だからこそ。
「――フフ」
笑みは自然と漏れていた。頃合いだ。
翠蘭は己を満たす悦楽を対価に、その身から数多の触手を開放した。
「ッゾ、ダ、ガ……!」
「コノアマ……、ザッ、ガガ、ガ……!」
放射状に展開した触手が敵重騎兵を捕らえ、打ち据える。
「嗚呼……」
触手を介して伝わる破壊の感触に、翠蘭は切なく鳴いた。
鳴いて、そして己の眼前にいきなり現れた重騎兵を見て、硬直した。
「……あ」
ライフルの銃口はすでに翠蘭の眉間をロックしている。
駄目、かわせ、な――
思った直後に、ビームは彼女の脇を通り過ぎていく。
メメントの分身がカマしたドロップキックによって、重騎兵が吹き飛ばされたからだった。
まさに紙一重で命拾いであった。
「――助かりましたわ」
頬を伝う汗をぬぐい、翠蘭は息をついた。
メメントの分身はたくましいその大胸筋を主張していた。
そして、少し離れた宙域――クリューラの宇宙バイクが空間を疾走している。
「マテヤコンボケガ――――ッ!」
「コンボケガ――――ッ!」
「コンボケガ――――ッ!」
「コンボケガ――――ッ!」
敵機発見、直ちに排除する。
のサインを復唱しながら、四体の重騎兵が彼女を追った。
翠蘭のときもそうであったように、ビームに火砲、さらにはユーベルコードを封じる特殊ワイヤーなどを射出されて、クリューラへと押し寄せる。
しかしクリューラはバイクを思い切り横に振って、進行方向を強引に変えることによってそれらの攻撃を全て凌ぎ、さらにもう一度急カーブ。
重騎兵集団の側面をモロに突く形となる。
「照準、セット。……発射」
携行型のランチャーが空中に火花を咲かせた。
弾頭は重騎兵一体の腰部側面へと突き刺さって、人の形をした重騎兵がクシャリと横に折れ曲がる。
そして爆光が宇宙に瞬き、クリューラはそれを確認する前に発進していた。
「ヤッチマイナー!」
「バラシチマイナー!」
「ブッコロシチマイナー!」
内容不明のサインを復唱しながら、三体の重騎兵は再度彼女を追撃する。
戦い方はこれでいい。
こうやって、一帯ずつ確実に葬っていけば問題なく任務を達成できる。
クリューラはそう考えていた。
が、そのときふとバイクの同乗者が動くのが感じられた。
右手でどこかを指さしているようだ。
確かめるまでもなく、そこから迫る脅威を感じ取ることができた。
〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉の別動隊が接近しつつあった。
実際に大隊規模かどうかは不明だが、この部隊、それなりに数はいるようだ。
どうするべきか、思考は一瞬。
クリューラはメメントの分身を宇宙バイクの前に載せ換えると、そのままバイクを突っ走らせた。
彼女の宇宙バイクを狙って、二方向より重騎兵の部隊が肉薄してくる。
だがバイクは攻勢に回らない。
後方より重なる敵の攻撃を何とか凌ぎながら、さらに突っ走った。
すると、二方向から襲い来る重騎兵部隊が合流し、一つの部隊へと纏まる。
クリューラが狙っていたのは、その瞬間であった。
「質点操作、開始」
言った彼女はバイクではなく、重騎兵部隊が通り過ぎたデブリの上にいた。
宇宙バイクをメメントの分身に任せ、彼女自身は降りてここにいたのだ。
ちょうど敵部隊が合流するであろう予測地点に近い、この大型宇宙デブリの上に。
そしてクリューラの放った一撃が、空間に強力な電磁波を展開し敵重騎兵部隊を一網打尽にする。
「――突撃、今」
メメントの分身を乗せたまま、宇宙バイクが敵に突っ込んだ。
空気抵抗も存在しない場所での超高速の大質量攻撃。重騎兵部隊はひとたまりもなく全員粉砕された。
「任務達成、帰投する」
瞬く爆光を背に、クリューラはバイクでその場を後にするのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
虎熊・月霞
もー、なんでこいつ等帝国側に居るんだろ?こっち側に寝返らせればいい気がしてきたぁ……。
でも真面目そうだから裏切ったりしないかぁ……ホント何で帝国側にいるの?
まぁ来るって言うなら排除しないとだねぇ。んじゃーメンドクサイけどやるかぁ。
ちょうどキレイに『整列』してくるんだからぁ、順番に斬っていけばいいかな?
うーん、全体的に金属っぽいしー鎧砕きながら突撃を見切ってカウンター気味に攻撃当てれば行けそうかなぁ?
あと頭目っぽいのも居るんだっけ?うーん、そこらへんは第六感的な勘で何とかしよっか。
まー規則正しいならどこから指示してるかも分かると思うけどねぇ。
……正直面倒臭いから見つけたら誰かに丸投げしようかな?
四王天・焔
■心情
エンぺライダースか、
規則正しさは、焔も心がけているから
こんな相手には負けない様に頑張るよ。
■行動
SPD判定の行動。
ガジェットショータイムを使用して、
攻撃は主にこのユーベルコードで戦うね。
敵のリーダーに狙いを定めて、戦いに行くよ。
見切りを駆使して敵の攻撃を回避するようにし、
避けられない攻撃は盾受けで防御し、その後カウンターを試みるね。
敵リーダーに対しては、フェイントを織り交ぜ、2回攻撃で確実に
攻撃を当てていくね。
フルバーストに対しては、攻撃範囲外に退避し、
コズミックスナイプには、敵の死角となる箇所へ身を潜めてやり過ごす。
ワイヤーには、見切りで避けたり、盾受けで防御等行う。
柩屋・廟花
何だあれ…。よくわかんないしぃうるせえなおい。ま、いっか。叩き潰そう、謡様なら、私の王ならそうするよね?さあやろう。オラトリアだし空は飛べるのが救いかな?楽でいいね。っていうか凄くホワイトな環境だねぇ、猟兵より待遇良いんじゃない?いいなぁ、私も有給欲しいなぁ。まぁこっちは今、戦争中だし無理だろうがな…。行ってて悲しくなってくるぜおい。
戦闘開始だ、【ブラッド・ガイスト】行くよ。
…何であいつ等口調矯正されなかったんだろ…。
リリスフィア・スターライト
他の猟兵達やアドリブはOKだよ。
何だかノリノリな感じの軍勢のようだね。
エレクトロレギオンで機械を呼び出して
迎撃に向かわせて、その陣形を崩して
指揮官を狙える隙を作るようにしたいかな。
敵陣営の特徴や隙を分析して効果的に
レギオンに攻撃させるようにしたいかな。
指揮官を狙える状況であるならそっちに攻撃を集めるようにするよ。
「統制が取れているのか取れていないのかわかりにくい連中だね」
「銀河帝国も案外、俗な言葉を使うのかな?」
「A1~A3分隊、応答なし。B1~B6分隊、反応消失。C1~C3部隊、損傷甚大。直ちに撤退し、有給申請をだすように。活動中の残存部隊に通達。もうすぐ定時である。繰り返す。もうすぐ定時である。残業申請をしていない部隊は直ちに残業申請を行なうこと。当部隊では申請なしの残業は許可していない。申請していない部隊は直ちに残業申請を行なうこと」
「ホワイト企業かなぁ?」
敵リーダーの通信内容を聞いた虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)の感想は、至極当然のものだった。
「……確かに規律はしっかりと守っている。焔も規則正しい生活を心がけているから、負けるわけにはいかない」
「そこなの? 対抗するところ、そこなのぉ?」
妙な部分に対抗心を燃やす四王天・焔(妖の薔薇・f04438)に、月霞はその首をかしげてさせた。
「何だか分からないし、まぁいいや、潰そう」
そして柩屋・廟花(王の翼・暗黒の夢・f14142)は敵を見るなりこの即決。
「決断早いなぁ~」
月霞もちょっと驚く。
彼女達三人が敵リーダーを発見できたのは、完全に運によるものだった。
この宙域にほぼ同時に転移して、すぐに発見できたのだ。
「どうしようかぁ?」
「撃とう」
「叩こう」
「「「そうしよう」」」
そうすることになった。
なお、重騎兵長とも呼ぶべき敵リーダーは未だ残業申請の受理作業を行なっている。
つまりは無防備なのだ。
こんな大きな隙、突かなきゃ嘘である。
――とゆー感じで攻撃開始!
「めんどーだし一撃で片づけちゃう、よ!」
月霞が放つは野太刀の一撃。
雷電の速度で繰り出されるその刀閃は、命中すればさらなる衝撃を生み出す。
「それじゃあ焔も、って、ありゃ。デッカイドリルだなぁ」
焔もドリルを取り出して、高速回転を始めたそれで一気に突撃した。
「ブラッドガイスト、我が血を対価にして殺戮を此処に――」
廟花は己の武器に血を垂らし、力を開放。重騎兵長を背後から狙おうとする。
「――脅威感知」
だがいずれの攻撃が届くより先に、重騎兵長が反応していた。
「ヤラセッカコラー!」
背部アームドフォートから伸びたワイヤーが、月霞の刀に巻き付いた。
「わ、わ!」
そして引っ張られるがまま、彼女は宙空に投げ出されてしまう。
「隙あり――ッ!」
だが月霞へ意識を向けた重騎兵長の胸部に、焔がドリルをぶつけてきた。
「ナンボノモンジャーイ!」
防御形態に移行。という意味のサインを叫び、重騎兵長は何と超高速で回転する大型ドリルを両手で抱えて受け止めてしまった。
「わぁ、マ~ジで~?」
ドリルは回転し、重騎兵長の表面装甲をガリガリと削ってはいる。
おかげで火花が派手に散って焔は眩しさに目を細めた。
その額に、狙撃ライフルの銃口が突きつけられる。
「危ない……!」
死角から兵長を狙っていた廟花がそれを見てとっさに右足を蹴り上げた。
真下からの蹴りが銃口を上に弾く。
何とか焔の危機は脱したが、重騎兵長の視線が今度は廟花へと向けられた。
「ブチカマシテヤンヨー!」
重騎兵長、その場でブースターを点火。急加速。
いきなりスピードを増した金属の塊が廟花に激突した。
「あ……ッ!?」
ミシミシと自分の中から音がして、痛みと苦しさが一気に体を支配する。
激突の衝撃はそのまま勢いとなって廟花を吹き飛ばした。
そして、背後にはいずこかのシップから剥がれた装甲材が浮いている。
鋭くとがったその切っ先、このままでは廟花の背を貫くだろう。
だが廟花がその装甲材にぶつかる前に、いきなりそれが爆発した。
「おっと、大丈夫?」
誰かが廟花の身を受け止めてそう尋ねてくる。
「あ、ありがとう……」
礼を言って振り向くと、そこにはリリスフィア・スターライト(多重人格者のマジックナイト・f02074)が立っていた。
周囲に無数の小型兵器を従わせながら、リリスフィアは重騎兵長を見る。
「見たところ、あれがこの、ええっと……」
「〈ユナイテッドステイツ魑魅魍魎大胆〉だよぉ」
戻ってきた月霞がうろ覚えの部隊名を主張した。
「違う違う、〈ユニバーサルスタンピング魑魅魍魎ジャパン〉でしょ」
同じく戻って来た焔が、さらに混迷極まる部隊名を言い出す。
「……〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉」
「「それだぁ!」」
正解した廟花を、月霞と焔が指さした。
「魑魅魍魎だけははっきり覚えてるんだね……」
女子三人のかしましい会話を聞いていたリリスフィアが、妙なところに感心していた。
「ナメッジャネッゾー!」
虚空へと放たれるビーム砲。四人の目が重騎兵長へ注がれる。
「どうしようかぁ?」
「撃とう」
「叩こう」
「手伝うよ」
「「「「がんばろう」」」」
がんばることになった。
「舞って、エレクトロレギオン!」
リリスフィアの指示を受けて、周囲の小型戦闘兵器が一斉に散開する。
三桁近い数のそれが重騎兵長を取り巻いて、攻撃を開始した。
「ンダッコラー!」
重騎兵長は自身が持つ武装を全て展開し、一斉爆撃を行なう。
だが、さすがに一回では機械兵器を落とし切れない。
残った機械兵器の群れは重騎兵長の周囲を飛び回ってさらに牽制を重ねていく。
「チャンスでせーの、もういっかい!」
そしてできた死角へと、月霞が飛び込んでいった。
刀は、すでに鞘に収まっている。そこから一直線に駆け抜けて、
「紫電――」
抜き撃った一閃が、すれ違い様に重騎兵長の胴を薙いだ。
「――閃刃!」
巻き起こる二度目の斬撃に、重騎兵長はその身を大きく引きつらせた。
「続けていくよー!」
続いて、焔が攻める。
彼女が手にするドリル型ガジェットが、再び回転を始めた。
「くらえ、タネはないけど仕掛けはエグい、焔のガジェットショーターイム!」
突き出したドリルは、今度こそ重騎兵長の腹をブチ抜いた。
「ナ、ナン、ナンボノ……!」
勢いに身を激しく揺らしながら、重騎兵長がアームドフォートの砲塔を焔に向けようとした。
だが上から、今度は廟花が落下してくる。
彼女は砲塔の上に着地すると、そのまま駆けて重騎兵長に肉薄した。
「……先刻の仕返し。零距離、とった」
己の血によって増幅された武器の魔力を、廟花はそのまま重騎兵長に叩きつけた。
不可視の爆発がそこに生じ、重騎兵長は虚空へと投げ出される。
「追って、レギオン!」
すかさずリリスフィアが機械兵器の群れに命じた。
重騎兵長はそれに対するべく再び全武装を展開しようとする。
だが、装備の展開速度が遅い。
「ザザ……! ヤ、ラセッカ……! ガガ……」
声にも明らかにノイズが混じっていた。
追い込んでいる。
その実感を、四人の猟兵達は確かに得ていた。
だからだろう、リリスフィアはそこで少し焦ってしまった。
「レギオン、一斉攻げ――」
敵が攻撃態勢に入っているのに、防御を考えず攻撃を仕掛けたのだ。
一手早く重騎兵長がワイヤーを射出した。
「あ……!」
リリスフィアの右腕にそれが巻き付いた途端、重騎兵長を囲んでいた機械兵器の群れ停止してしまう。
それは、ユーベルコードの発動を封じる特殊ワイヤーだったのだ。
「あ、これもしかしてヤバ……?」
言ってる間に、敵全武装の矛先が彼女へと向けられる。
ビームライフルの銃口に光が灯るのを見て、リリスフィアは反射的に目を閉じた。
その耳に、声が届く。
「さーせーなーいー!」
焔であった。
彼女がドリルを思い切り突き出し、兵長へと挑みかかった。
しかし重騎兵長は動きを鈍らせながらも横にかわし、ドリルの直撃を避けた。
それでも高速回転するドリルがアームドフォートを削っていく。
削られた部分はまさにワイヤーが繋がっている射出装置であった。
アームドフォート、耐えきれずに爆発。
ワイヤーも千切れ飛ぶ。そこに、チャンスがやってきた。
「エレクトロレギオン!」
緩まったワイヤーをすぐに腕から外して、リリスフィアが手をかざす。
「一斉攻撃!」
機械兵器の攻撃が、重騎兵長に集中した。
小さな爆発が無数に起きて、重騎兵長の装甲を徐々に剥がしていった。
そして――
「猟兵よりホワイトな待遇など、滅びてしまえ」
露出した内部抗争へ、廟花が刻印による魔術攻撃をブチ込んだ。
ひときわ大きな爆発が起きた。
「…………ザッ・ガガッ……ブ、ッコロ……」
重騎兵長は武装の大半を失い、完全に機能不全に追い込まれていた。
しかし、まだ立っている。まだ戦おうとしている。
「大したものだと思うよ? でもこれで終わり。これで、トドメ!」
月霞の野太刀が、宇宙戦争真っただ中の虚空に奇麗な半月を描く。
刃は、重騎兵長の首を見事に刎ね飛ばしていた。
「爆発するよー!」
彼女の声に他三人が大慌てで離れ、そして重騎兵長は爆発した。
爆発は大きく、広がった爆炎が辺りを明るく照らし出した。
だがそれもしばしすれば止んで、終わったあとには何も残っていなかった。
「……勝っ、た?」
目を大きく見開いて、焔が重騎兵長のいた場所を凝視した。
よく見れば細かい部品が散っているが、ほぼ跡形もなく消し飛んでいた。
「うん、勝ったよ。私達の勝利だ」
リリスフィアが太鼓判を押すと、月霞達の顔に笑みが浮かんだ。
「「勝ったー!」」
「勝ったな、うむ……」
思わずハイタッチをする月霞と焔。廟花は腕を組んで一人で勝利を噛み締めた。
〈ブーステッド魑魅魍魎大隊〉全滅の報が入ったのはその直後のこと。
解放軍を狙ったエンぺライダーズの一部隊は、こうして猟兵の活躍によって撃退することができたのだった。
大成功
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