大祓百鬼夜行㉕〜愛のままにわがままに
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「愛しい、愛しい」
少女の姿をした何かが、刃を胸に抱く。
「その全てを、私のものにしたい」
それは刃に指を滑らせる。その指には、一筋の傷もつかない。
「どれだけかけても、どれだけ待っても」
虞が世界を愛していけないなど誰が決めたのか。
「私はあなたを殺して、愛して、永遠に私のものに」
何も切れない刃を向ける。何よりも愛しいその先は。
「愛しいUDCアース。骸の海で、永遠にあなたを愛しましょう」
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「皆、お疲れ様。大祓百鬼夜行最後の依頼よ」
子豚・オーロラ(豚房流剣士・f02440)が集まった猟兵たちに語り掛ける。
「皆のお陰でついにスカイツリー・ゲイン塔への道が開かれたわ。ここの頂上に大祓骸魂がいる。皆にはここへ行って、彼女を倒してきてちょうだい」
それは大祓百鬼夜行最後の敵にして、この戦いを引き起こした首魁。
「彼女の目的は『生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)』という時間をかければ何でも殺せる小太刀で『UDCアースを殺す』こと。そうして骸の海で永遠に一緒になりたいみたいね」
その行動は愛ゆえという。様々な意味で途方もない、規格外かつ埒外の目的。
「世界ってなんだっけって思いそうになるけど、とにかく向こうは止められるものなら止めてみろくらいのつもりでいるみたいだから、お望み通り止めに行ってあげましょう」
これまでも規格外の相手を何度となく破ってきたのだ。今更訳の分からない言動をする小娘一人が何ほどのものか。それくらいの気概で行って欲しいと、オーロラは猟兵たちに言う。
「戦場はさっきも言った通りゲイン塔の頂上、東京の上空全体よ。彼女はここを『カクリヨファンタズムの如き空間』に変えて襲ってくる。具体的にどういう空間かというと、今回の戦争、大祓百鬼夜行の全てよ」
全て、とはどういうことか。
「空間の内情は不定。突然古臭いテレビ企画に巻き込まれるかもしれないし、開かない踏切でできた迷宮が現れるかもしれない。真の姿や連携の力が上がることだってあるし、もしかしたら大量の屋台料理やTCGが出てくる可能性もあるわ。この一カ月の経験、その全てが敵となり武器となる。そう思ってちょうだい」
カクリヨファンタズムの集大成だ。常識や整合性など捨ててしまった方が賢明というもの。幸い強い意志力があれば望みの戦場を引き寄せることもできる。己を最も活かす戦い方は何か。それを考え戦いに挑むべきだろう。
「今までの経験がものを言う戦いだけれどただ一つ、今までの戦場とは決定的に違うことがあるわ。それは大祓骸魂を救うことはできないということ。彼女は妖怪が骸魂を飲み込んだ存在ではなく、どちらかと言えば骸魂そのものに近い存在。それ故に彼女を倒すということはその存在を消滅させるということ。下手な情けはかけない方がいいわ」
本質的には味方とも言えた今までの相手とは違い、彼女は正真正銘の『敵』。やるかやられるか、そのどちらかしかない相手なのだ。
「最もそれは今までのフォーミュラ、それに普段相手にしているほとんどのオブリビオンと一緒。変に気にかける必要はないわ。そもそも余計なことを考えて勝てるような生易しい相手でもない。相手の心配をする前に、自分が生きて帰ってくることを考えてね」
そもそも相手はこの世界最強の敵。情けをかけてやろうなどと思う余裕自体がないことも十分にあり得るのだ。
「彼女の攻撃方法は持っている小太刀の複製を飛ばしてくることや、妖怪を召喚しての自分の力の上昇、そして虞による直接攻撃とフィールド制圧……本人のキャラの割に意外とやってくることは普通ね」
もちろんその威力はいずれも最上級。だが決して見切れぬ攻撃ではないはずと、オーロラは猟兵たちを鼓舞する。
「ここで負ければカクリヨファンタズムとUDCアース、二つの世界がカタストロフに巻き込まれるわ。それだけはさせてはならない。どうか皆、二つの世界を守ってきてちょうだい」
オーロラはそう言って、猟兵たちを東京の上空へと送り出すのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。他タイトル候補は愛を止めないで、このまま君だけを奪い去りたい、UDCアース心中等々。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)』
今回の戦争大祓百鬼夜行に存在したボーナスから、どの戦場のどのボーナスを選ぶのか一つだけ明記の上お好きなものを使用してください。鳴声が書いていない戦場のボーナスでもOKです。それに応じて戦場の様子も変化し、それに合わせたギミックも現れます。NPC的なものが必要なボーナスならどこからともなくNPCが現れます。
注意点としては、非戦闘系シナリオのボーナスを選んだ場合でも敵は普通に攻撃してきます。その場合敵の攻撃を躱しながらボーナス条件を満たすよう行動してください。
また難易度は『やや難』となります。選んだボーナス次第ではコミカル行動が必要になるかもしれませんが、それでも判定は厳しめに行きますので戦うことはお忘れなく。
6/1朝までの完結を目指しますので、状況によっては内容に問題なくても全てのプレイングを採用できず、また採用できても描写短めになる場合がありますので、ご了承のうえご参加ください。
それでは、この一カ月の集大成なプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
草柳・華穂
:プレイングボーナス:
大祓百鬼夜行㉔なんとかしてターボ移動しつつ戦う
〈ラビットサイクロン〉に乗って高速で動いてヒットアンドアウェイ
隙をついて【W・H・K】で攻撃よ
厳しい相手だけど、あたしの運転・操縦テクニックで十分こなせるはずよ
それにこのスペシャルマシンなら悪路走破も問題ないわ
有利な場所をつくってそこに立つならマシンで体当たりする覚悟
ヒガンバナだろうが何だろうが走破してはじき出してやるわ
多少えげつない手だろうと何でも使って勝つ
ダークヒーローらしくね
突如異界の如き空間と化した東京上空。だが、そこは猟兵にとっては大祓百鬼夜行最終決戦の地。怖じる者などいはしない。
この戦いに終止符を打つべく、まず一人の猟兵がその場所へと乗り込んだ。
サイドカー付きバイク『ラビットサイクロン』に乗り、まっすぐそこを走っていくのは草柳・華穂(強化人間のダークヒーロー・f18430)。目指す先はこの戦いの最後の敵である少女……大祓骸魂だ。
「私は私の愛する世界と一緒になりたい、ただそれだけ。邪魔をするなら、彼岸へ消えて」
大祓骸魂は優美さすら感じさせる動きでその指先を華穂へと向けた。そこから迸るのは、神智を超えた恐るべき力。即ち、『虞』そのもの。
明確な破壊の力とかした虞を、華穂は巧みにマシンを操りすんでのところで躱していく。そしてそのまま大祓骸魂へ詰め寄ると、バイクのハンドルを掴んだ状態で何とそのまま下半身を車体の外へと投げ出した。
「ウッドペッカー・ハンドレッド・キック!!」
すれ違う瞬間、その足先がキツツキの嘴の如く鋭く、何度も大祓骸魂に突き刺された。流石に大祓骸魂もその多くを手に持った小太刀と傘で受けるが、それでも体の何か所かを穿たれ、揺らぐ。
「木よりも花が似合いでしょう」
そしてそのまま離脱していこうとする華穂を、再び虞が襲う。その恐れを離脱しながら躱していくが、再度攻撃に向かおうと車体を反転させた瞬間、何か柔らかいものをタイヤが踏みつけた。
「……なるほど」
それは躱した虞が着弾した軌跡。そこを狂気じみて咲き誇る彼岸花が埋め尽くしていた。それは大祓骸魂の足元まで続き、そしてそこから再び虞が放たれる。
「愛は力になる。それを証明しましょう」
その虞は先のものよりはるかに鋭く、早い。さしもの華穂の操縦テクニックでも躱しきることは難しく、サイドカー部分に小さくない破壊がもたらされる。
「ヒガンバナだろうが何だろうが……走破してはじき出してやるわ!」
だが、それで回避重視に切り替える程慎重な手段はとっていられない。例え植物で敷き詰められた道だろうが、搭乗しているのは悪路走破はお手の物のスペシャルマシン。それに多少無茶な戦術をとる覚悟だって決めていた。
さらに放たれる虞がマシン本体も抉り、華穂自身の体さえ傷つけていく。それでも怯まず進む華穂を、大祓骸魂はその場から動かず待ち受けている。ヒットアンドアウェイの戦法を、相手は自身を強化した上で待ち受けるつもりのようだ。
「上等よ。私の辞書に慈悲という文字は……」
迫る虞の中、華穂はマシンのスピードを上げた。まるで彼女の軌跡をそこに描くかのように、後方にヒガンバナが無数に舞い散る。
そのまま放たれた虞を踏み越えるかのように、バイクの前輪を上げ、そのまま大祓骸魂の整った顔面にそこを叩きつけた。
「うぅぅっ……!?」
少女の顔を轢き潰す、一見すれば残虐極まりない一撃だが、ここはそんな甘い考えが通用するような場所ではない。
その効果のほどを示すかのように、大祓骸魂の足元に咲いていたヒガンバナがまとめて飛び散った。
「多少えげつない手だろうと何でも使って勝つ。ダークヒーローらしくね」
そのまま目いっぱいタイヤを回転させてから、一気に戦線を離脱していく華穂。その後ろに舞い続けるヒガンバナは、最後の戦いの始まりを告げる狼煙でもあった。
成功
🔵🔵🔴
ラモート・レーパー
「御隠居! 寝る時間ですよ!」
「我……久方ぶりゆえ顔を拝もうかと思ったが……再度眠れ」
真の姿を使用する。前者はカクリヨファンタズム、後者はUDCアースでの真の姿。元は一つの存在だった死神。
UDCの方が先陣を切り、カクリヨの方が後ろからUCを発動。欺瞞と手数を兼ねて12体のオブリビオンを召喚する。
オブリビオン達の攻撃の隙間からUDCとカクリヨのそれぞれが鎌を振るいダメージを与えていく。
「シルバー通り越してホワイトのうちに介護なんてさせないでくださいよ」
「眠れ」
最終決戦の相手たる大祓骸魂の前に、また二人の猟兵が現れた。
「御隠居! 寝る時間ですよ!」
「我……久方ぶりゆえ顔を拝もうかと思ったが……再度眠れ」
否、彼女たちは二人ではない。いずれもラモート・レーパー(生きた概念・f03606)、その真の姿であった。
本来発現には多少なりとの交戦や苦戦を必要とする真の姿。それを無条件で発現し、さらには強化さえ施す空間もまた、この大祓百鬼夜行に存在した戦いの一つであった。
そして真の姿とは何でも、いくらでもあり。分裂や世界毎の使い分けとて出来る者は出来る。とりわけ多数の真の姿を持つラモートの、UDCアースとカクリヨファンタズムにおける姿がここに顕現していた。
まず先んじて、UDCアースの姿の者が先制をかけた。大鎌を振るい、相手の視界を塞ぐように大ぶりの攻撃をかける。
「世界に依存するなら世界と共に亡くなりませ。さすれば愛するものの一部として愛しましょう」
傘をかざし、その大振りの一撃を受け止める大祓骸魂。一見木と紙でできているようなそれは重い一撃を楽々と受け止めるが、ラモートも攻撃を止めない。
次々と繰り出される斬撃は大祓骸魂をその場に釘付けにし、余計な行動を取らせようとしない。一方で大祓骸魂もまたそれを全ていなしダメージこそ負ってはいないが、自分からの攻めにも中々転じられないでいた。
「お願い。あの人を助けるために力を貸して」
そして後ろでは、カクリヨファンタズムのラモートが【悪霊の償い】を発動。籠に捕らえた骸魂を代償として捧げ、12体のオブリビオンとして召喚していた。
そして命令を受けた決死隊の如く、オブリビオンたちは大祓骸魂へと躍りかかっていった。前にいたラモートと並ぶように一斉に彼らは大祓骸魂に取り付き、遮二無二攻撃をかけていく。
「ああ、そう、そうなさるの……では、死にませ」
冷たくそう言って、大祓骸魂は手に持った小太刀『生と死を繋ぐもの』を放り投げた。それは数百もの複製となり、一斉に自身を取り巻く者に襲い掛かった。
それらは次々とオブリビオン、そしてラモートに突き刺さるがまるでダメージはない。それを無視して攻勢をかけ続け、相手の緩んだ防御の隙間から次々ダメージを与えていく一団。だが、その時は訪れた。
「なっ!?」
オブリビオンたちがまとめて倒れ、ラモートも膝をつく。生と死を繋ぐものはただの小太刀ではない。何も切れないが、時間に応じて何でも殺せる。そして複製を大量に作ることで、その時間を彼女は踏み倒したのだ。実力に応じて複製の数は増え、そして大祓骸魂はこの世界の誰よりも……最強クラスの猟兵よりもはるかに強い。ほぼ無対策で受けてしまえば、召喚された存在など瞬く間に消え失せる数を呼べるだろう。攻撃を散らすための欺瞞と手数。だが、真正面からぶつかってきたそれを乗り越える程に、大祓骸魂の出せる手数は多かった。それでもラモートだけは死なずに済んだのは、複製故ということもあるのか。
変わらぬ笑顔でラモートを見下し、とどめをかけんと全ての小太刀をそこへ向ける大祓骸魂。だが、ラモートもまた常の姿勢を崩さなかった。
「シルバー通り越してホワイトのうちに介護なんてさせないでくださいよ」
変わらぬ声を上げながら、無数の小太刀に埋め尽くされ消えていくラモート。これにて彼女の敗北か。否。
「眠れ」
相手の能力を失念していたのは大祓骸魂もまた同じであった。小太刀の群れと消えゆくラモートの後ろから、巨大な鎌が大祓骸魂をとらえ、その身を一閃した。
カクリヨファンタズムのラモート。彼女はただの指揮役ではない。配下、そして別の己さえもに紛れ、必殺の瞬間を狙っていた元は一つの死神。
意識の外からの攻撃を無防備に受け、ぐらりと揺らぐ大祓骸魂。一方体の半分を失ったに等しいラモートも、ここは一旦引くことを選ぶ。概念さえ覆す規格外のぶつかり合いは、ここに深い傷を残す痛み分けとなった。
苦戦
🔵🔴🔴
木霊・ウタ
13駄菓子兵器
心情
好きな相手と一緒にいる為
その命や未来を奪うってのは
よっぽど追い詰められ
思い詰めてるんだな
可哀そうに
けど海には一人で還ってもらうぜ
駄菓子兵器
ギターの弦を
音を増幅・強化する糸電話用の糸に変換
戦闘終了まではもってくれるだろ
熱い想いをこめてギターをかき鳴らし
歌い奏でる
『時は止まらず流れる
どんな悲しみも
受け止めて運んでくれるさ
だから手をつなぐよ
君と
ブレイクスルー!駆け抜けろ
心を開いて
ブレイクスルー!駆け抜けろ
想いはつながる』
旋律は拡がるまま
それが触れた虞を燃やし灰に帰す
彼岸花が咲いても
その愛ごと焼却
文字通り燃える赤で周囲を染め上げながら
大祓骸魂も紅蓮に抱く
事後
鎮魂の調べ
安らかに
骸魂を含め、オブリビオンは常に世界を破壊する方向にその思念を向けられる。
だが、結果を固定されれどそこへ向かう動機はそれぞれだ。
「好きな相手と一緒にいる為その命や未来を奪うってのは、よっぽど追い詰められ、思い詰めてるんだな。可哀そうに」
大祓骸魂のその動機は『愛』。その愛ゆえに相手の破滅を望む彼女を、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は憐み見る。
「けど海には一人で還ってもらうぜ」
それでも彼女を看過は出来ぬと、ウタは愛用のギター『ワイルドウインド』を構えた。
しかしそのギターは何処か様子がおかしい。見ればその弦は、全て細いただの糸に変えられていた。
この局面においてふざけているのか。否、そうではない。カクリヨファンタズムにおいて実は武器庫の役目を担っていた駄菓子屋。そこでは駄菓子や子どもの玩具が兵器としての力を持つ。その力を引き寄せ、糸電話の糸を音を増幅・強化するギターの弦へと張り替えたのだ。
そのギターをかき鳴らし、ウタは歌を歌う。
『時は止まらず流れる
どんな悲しみも
受け止めて運んでくれるさ
だから手をつなぐよ
君と』
その歌詞は、しかし大祓骸魂の心に届くことはなかった。
「流れてしまうなら命などいらない……どこに運んでほしくもない」
その演奏を中断させるかのように、虞を破壊の力として放つ。変わりゆくUDCアースを永遠に己に繋ぎ留めんとする彼女にとっては、停滞こそが望むものなのだろう。その虞はウタを直撃し、その体を大きく揺らがせる。
『ブレイクスルー! 駆け抜けろ
心を開いて
ブレイクスルー! 駆け抜けろ
想いはつながる』
それでもなお、歌い続けるウタ。糸電話の弦が本来出さないはずの音を出し辺りに響かせる。
だが、結局その歌は心を閉ざし、己の想いだけに縋る大祓骸魂にとっては不快なものでしかない。さらに虞を浴びせ、彼女はウタを仕留めんとかかった。
だが、強力な破壊の力を持つ虞を浴びせても何故かウタは倒れきらない。
「こいつのお陰でよく届くぜ」
今ウタがかき鳴らしているギターはただの楽器ではない。武器種の一つであるサウンドウェポンであり、さらにカクリヨファンタズムの兵器である玩具の糸を取り付けているのだ。いわば強化パーツを取り付けた武器を撃ち続けているに等しい。その音は虞とぶつかり、それを焼き尽くすことで己に届くダメージを抑えていた。
「嵐のお通りだ。ちょいと荒っぽいぜ? ……焔摩天、転生!」
無論このまま撃ち合っていれば地力の差でこちらが不利。故にここが攻め処と、ウタは【焔摩天W】を発動しその身を地獄の炎に包んだ。地獄の炎は独りよがりな愛を認めぬと言わんばかりに足元のヒガンバナを燃やし、さらに武器であるギターにさえ宿り燃える旋律を辺りへと響かせていく。
「黙りませ……そのような歌など、聞きたくもない!」
大祓骸魂もまた、一刻も早くウタを打ち倒さんと狂ったように虞を撒き散らす。人は図星を突かれた時に一番怒ると言うが、もしかしたら彼女もまた。
虞を叩きつけられたウタと、獄炎に捲かれた大祓骸魂がともに爆発するかのように互いにぶつけられたものを撒き散らせる。その余波で、辺りに裂いたヒガンバナが全てふきとび散った。
そしてその嵐が止んだ時、大祓骸魂はここまでで初めて体を折り、息を荒げていた。同時に膝をつくウタも自分の浅からぬ負傷と、炎と虞で弦の焼き切れたワイルドウインドをみてこれ以上の戦いは困難と察する。
よろりと体を起こし、戦いの果て彼女が安らかなることを祈り声だけで鎮魂歌を謳いながらウタは戦場を後にした。
成功
🔵🔵🔴
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘グロ×
⑮真の姿を晒して戦う
SPD
真の姿で背中に黒炎の翼。
守護霊の【ドーピング】で更に強化
人の世は私にとって憎悪の対象ですが
骸魂である貴女の想いを無残に散らせはしません
複製した短刀を念力で操る前に
【全力魔法・気合い】を籠め【念動力・ハッキング・マヒ攻撃】
時よ止まれッ!!
UCとしての時止めじゃないから効果は短いけど
強化された私の【ダッシュ】なら近づくには充分
骸魂そのものだから宿主から剥がす手間も無く『吸魂』
肉体を乗っ取ろうとしても
私の精神世界で猟書家・フォーミュラ級の霊達が
【怪力・捕縛】と【慰め・生命力吸収】で彼女を無力化
愛しき大祓骸魂様。
第2の骸の海(わたしのなか)で
永遠に貴女を愛しましょう
その超然とした態度と初めてお目見えした時の聴き取れぬ発言。そこから妖怪を超える超自然的存在にも思えた大祓骸魂も、連戦の負傷と疲労には勝てぬのかついに心身に乱れが見え始めた。
その彼女の前に、黒炎の翼を背負った女が現れた。
「人の世は私にとって憎悪の対象ですが、骸魂である貴女の想いを無残に散らせはしません」
ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)もまた、真の姿を現し、さらにそれを強化する戦場をこの場に引き寄せ大祓骸魂と向かい合った。
「別に人を憎んではいません、ただ……」
「時よ止まれッ!!」
その言葉に何かを返そうとする大祓骸魂。だが、それを言い切る前にすでにドゥルールは行動を始めていた。先制を行ってこないとはいえカクリヨファンタズム最強の相手に先を取れたのは、自己強化である真の姿を使える戦場を選んだ故と、語り掛けからの速攻という奇襲を選んだからか。真の姿で強化された力に己の従える守護霊を重ね、文字通りの全霊を込めて念動力による金縛りと麻痺の魔法をぶつける。
時間停止というのも半ばハッタリ。実際には相手の体と感覚を止めて相対的に時間が止まったように見せかけるだけの足止め術だ。
当然、大祓骸魂が本気を出せば簡単に振り払える。それでも、この一瞬。強化された力で相手に駆け寄る時間さえ稼げれば、まずはそれでよかった。
相手が聞かぬならばもう語る必要はない。大祓骸魂は手の自由を強引に取り戻し、懐の小太刀を握りしめてそれを複製し一気に自身にしがみついてきたドゥルールを殺しきろうとする。
「怖がらないで。私に憑いてきて」
そしてその前にドゥルールは【吸魂】を発動する。たった一手、脅かし同然の僅かな奇襲で得た一手が、ここまで常に後手に回ることを強要させた結果がユーベルコードを先にぶつけるという大きなアドバンテージとなってここで結実していた。
本来なら妖怪と骸魂を分離させ骸魂だけを吸収する技。それを骸魂そのものの彼女にぶつけたのだ。その結果はどうなるか。
「あなたの体で私を御しきれるとでも?」
大祓骸魂はドゥルールに対して憑依したのに近い状態となり、その精神世界内に入りこんでいた。もちろんこの状況はドゥルールが望んで招いたものだが、大祓骸魂にとっては敵の懐に入りこめたも同じ。当り前のことの様にその精神を乗っ取りにかかる。
せっかく得たアドバンテージを自ら手放すとは。そう内心で嘲笑いつつその精神を侵し、染めていく大祓骸魂。だが、その精神の奥からは彼女の知らぬ存在が次々と染み出して来る。
「骸魂、いや、これは……」
それはドゥルールが自らの中に吸収したオブリビオンたち。ここが精神世界ゆえにそれらはドゥルールの知るその姿のまま現れる。彼女に当てつけるかのように寄り添い合う王と桜、本を携えたカクリヨファンタズムですら見たことのない装いの者たち、そして全てを憂うかの如き神々しき裸体の男。ドゥルールの吸収した霊の中でも粒よりの者たちが大祓骸魂を取り囲んだ。
「そう。私はここにいてはいけないようです……いえ、私がここにいたくない。骸の海で、私は愛する世界とだけ共にあればいい」
己の骸魂としての力全てを持って彼らをはねのけようとする大祓骸魂。無数に分裂した小太刀が次々に周囲の者たちに突き刺さり、一定数を超えた者から消滅させていく。相手が吸収されたものゆえこの面子とも多対一で渡り合えるが、それでもただここに存在するだけで大祓骸魂の生命力と精神力は吸われていく。そしてそれを助けるが如く、霊たちの行動は殺すことではなくこの場に彼女をとどめ、慣れさせるかのような戦い方が多い。
だが、大祓骸魂を吸収するということは、彼女からの浸食もやりやすくするということ。少し気を抜けば完全に乗っ取られそうになる体を、黒炎の翼で自ら包みドゥルールは耐える。
「愛しき大祓骸魂様。第2の骸の海(わたしのなか)で永遠に貴女を愛しましょう」
吸収と浸食のせめぎ合い。それは双方のそれが限界を迎え分離するその時まで続くのであった。
成功
🔵🔵🔴
リステル・クローズエデン
何度でも、そう何度でも
僕は、お前を否定する
プレイングボーナス…… 真の姿を晒して戦う
真の姿
青白い肌と青い仮面の姿。
戦闘
視力、聞き耳で得た情報を高速思考で処理し
第六感もあわせて攻撃を見切り、
軽業、足場習熟、ダッシュや
迷彩、残像を組み合わせ、
受け流し、盾受け、武器落としで
かわし、弾きながら間合いをつめます。
オーラ防御で
かわせないものは受けるしかないか。
途中でユーベルコードを発動し加速。
【氷結呪縛の吹雪】を目潰しと武器落としを目的として放ち。
刀で鎧無視攻撃の斬撃をうちこみます。
攻撃後も即座にダッシュで離脱。
ついでに【氷結呪縛の吹雪】をもう一度、放ち
浮かぶ懐刀を凍てつかせ
他の猟兵への援護とする
ケイ・エルビス
アドリブ連携歓迎
⑤『連ね鳥居を最速で駆け抜ける』
プレイングボーナス活用
宇宙バイクを早業で加速させ
短時間に最高速680km/hまで叩きだし
フェイント交えた飛行と野生の勘、戦闘経験で
懐刀を回避しながら
アサルトライフルとブラスターで範囲攻撃、乱れ撃ちして時間稼ぎ
してこちらに注意を惹き寄せておく
他の猟兵等に配慮してタイミングを伺い、機を見て
トランシーバーで遥か上空の雲の上に迷彩、周回させておいた
輸送機「アトラス」を遠隔操作して
最高速780 km/hまで加速した急降下から
誘導ミサイルによる遠距離攻撃を
二回攻撃、範囲攻撃で発動
超高速連続攻撃で複数の懐刀を迎撃して爆破
大ダメージを狙う
ピンチの仲間には援護射撃
「何度でも、そう何度でも。僕は、お前を否定する」
青白い肌と青い仮面。リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)はその真の姿を見せ、その言葉通り何度となく大祓骸魂へと挑んでいた。
そして今度も、何としても相手を否定する。その一念の下、大祓骸魂へと彼女は向かっていった。
「何度も。そう。何度もやればうまくいくこともありましょう。そしてそれは、逆も然り」
握りしめた小太刀を放り投げ、無数に分裂させる。そのたちをリステルは徹底的に見て、動きを見切り、そして全てをかわしつくす。
もう何度となく繰り返したこと。そしてこれからも、彼女が完全に消え去るまで何度でも繰り返そうとすること。既に敵がどこを攻めてくるかも直感として察することができるし、この不可思議空間で足元を確かとし、あまつ自分を溶け込ませ自らの場所を相手に誤らせることもできる。
そしてもう一つ知っていること。この小太刀は基本的に相手を切れない。その時間が致死に達しない限り、ダメージを受けないまま戦えるのだ。故に避け切れないものは無理に回避しようとせず、オーラで叩き落として時間が来るのをなるべく遅らせる。
あとは、その時間が来る前に相手を倒しきるだけ。そのはずだったが。
「さて、もうそろそろ時間がくるころ。立ちあがれぬ敗北に沈みませ」
大祓骸魂は薄く笑って後ろを指さした。そこにあったのは、無数の連なった鳥居。
別の戦場にあった連ね鳥居。時間内に脱出できなければ中にいるものの命を奪う死の迷宮。彼女が待っていたのは生と死を繋ぐものの刻限ではない。鳥居がもたらす死の時を、ただ小太刀を舞わせ待っていたのだ。
リステルの心に焦りが生まれる。同じ相手と、同じ戦場で、同じように戦えば必ず勝てる。そうとは限らないと、目の前の少女の姿をした骸魂の嘲笑は語るようであった。
しかし、リステルはまた思い直す。この戦場を引き寄せたのは彼女ではない。彼女は相手に合わせ適宜戦場を書き換える、そんなことはしてこなかったはずだ。つまり、この鳥居を呼んだのは別の者。
「よっ、丁度退屈してたんだ。元気にしてたかい?」
連ね鳥居の中を、爆音を鳴らし宇宙バイクが高速で駆け抜けてきた。そのスピードは走るうちに跳ね上がり、瞬く間に時速680kmへと到達する。ここまで早ければ刻限がいかに短かろうと関係ない。死の迷宮はスピードを乗せるための加速道路となり、その勢いのままケイ・エルビス(ミッドナイト・ラン・f06706)は鳥居の迷宮から飛び出してきた。
スピードを乗せ、そのまま大祓骸魂へ突っ込んでいくケイ。
「もう少し待ってほしかったのですが」
鳥居を用いる相手がいたから便乗してハッタリをかました、ただそれだけの安い手は彼の出現で早々に暴かれ、大祓骸魂はやはり自らの手で戦うしかないとばかりに大量の小太刀をケイへと差し向ける。
超高速の移動ながら、巧みにバイクを操り刀を回避していくケイ。無論この数と彼女の力量、躱そうと思って100%躱しきれるものではないが、そこは何も切れないというその小太刀の特性ゆえ大きなダメージにはならない。
「こっちだぜ!」
そのまま大祓骸魂の眼前で急に方向を変え、彼女の周りをまわるようにしながらアサルトライフルとブラスターを撃ちかけるケイ。
それを追うように小太刀を追跡させるが、いかに高い力を持つ大祓骸魂とて超高速で動き旋回までするバイクを精密に追いかけるような操作はなかなか難しい。
そして、小太刀の多くがケイを追いかけたことで、改めてリステルの前が開けた。分散したことで躱さなければならない武器の数は大きく減っている。
「この身は刃……凍てつく青き呪いの刃……呪力……解放! アクセルモード!」
この数なら、全ていける。その確信と共に、【呪力解放・瞬撃斬空形態】を発動させた。刀の切っ先から氷結呪縛の吹雪が巻き起こし、牽制に残してある小太刀諸共大祓骸魂を包む。
「くっ……もう少し大人しくしていて欲しかったですが……」
歯噛みしながら顔を払う大祓骸魂。幸いダメージはない。これなら攻撃に残りを差し向ければ……そう考える顔の下、青白き刃が煌めいていた。
吹雪が視界を潰した一瞬。その僅かな間にリステルは高速移動で大祓骸魂の懐まで踏み込んでいた。それを自らの傘を叩きつけて防ごうとする大祓骸魂。だが、それをさせじと的確に撃たれたブラスターが傘の動きを揺らがせた。
「……斬る!」
そのまま刀を一閃し、無防備なその体を薙ぐ。鮮血を散らしぐらりとゆらぐ大祓骸魂。その姿を見つつ高速で離脱していくリステル。
そして味方が離脱したのを見たケイは、牽制と援護からついに攻撃を切り替えた。
「カードは揃った。「アトラス」、ショータイムだぜ!」
トランシーバーで何処かに指示を出すケイ。ゲイン塔よりもはるか高空。雲の上に周回させていた輸送機『アトラス』が、その指示を受け高速で降下を開始していた。
その速度は、バイクよりもはるかに速い時速780km。その速度で戦場近くまで突っ込んでから、アトラスはそこに大量の誘導ミサイルを一気に撒き散らした。
雲より高く飛ぶ鉄の塊に機械仕掛けの無慈悲な破壊兵器。それは彼女が否定した、変わりゆくUDCアースの象徴。
「あんなもの……皆殺しに!」
嫌悪と憎悪を込め、守りも忘れそこに生と死を繋ぐもの全てを差し向ける大祓骸魂。だが、それは今一度放たれたリステルの氷結呪縛の吹雪によってその動きを止められる。
「ありがとな!」
「仲間がいれば合わせる……当然のことです」
同じ戦場で同じ相手でも、仲間がいれば、違えば、その戦法は無限大。一人だけの愛の世界に閉じこもろうとする大祓骸魂には決して出来ないその支え。
そして心持たぬはずの兵器がまるでそれに応えるように、大祓骸魂に向けて何度も、広範に、相手の全てを否定するかの如く降り注いだ。
超高速連続攻撃の爆炎の中、複製された小太刀は全て砕け、そして懐に抱く本物にもひびが入る。
「いや……こんなもの……あなたではない……私は、あなたと、永遠に……!」
燃えゆく自らの体も顧みず、己の愛を叶えるためのそれを抱きしめて、大祓骸魂は炎の中消えていった。
大祓骸魂の消滅と同時に何度も姿を変えた空間が安定し、鳥居も真の姿も、全てはそこになかったように消えていく。
すぐにここもただの空へと戻り、二つの世界はまた正しく分かたれるだろう。
現世と幽世を繋ぐ戦いは、ここに終わったのだ。
成功
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