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大祓百鬼夜行㉕〜オペレーション・クロウジェム

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #プロジェクト・トライポッド

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●死者、蘇って生者と交わる逢魔が時
 UDCアース東京上空に広がるカクリヨファンタズムが如き空間。そこに佇む大妖怪・大祓骸魂。

「愛しきUDCアース。あなたを思う私の愛は揺るがない。だから私は帰って来たのです」

 親分達が大祓骸魂の喉元めがけて進撃し、麓では市井の人々がそれぞれの戦い方で立ち向かう。まさに総力戦といった様相を呈する中、さらに第三の勢力が大祓骸魂を止めようと立ちはだかった。

「おや、おやおやおや」
「随分とお楽しみのようであるな、大祓骸魂。だが猟兵達を甘く見ないほうが良いぞ?」

 そこに現れたのは、骸の海に還ったはずの銀河皇帝、リスアット・スターゲイザー。

「なるほど、現世と幽世の境界が曖昧になり、骸の海から抜け出してきたというのですか」
「もっとも、余が果たしてリスアット・スターゲイザー本人と言えるかどうかは怪しいがな。言わば現世に残った残留思念だ。貴様が作ったこの空間が消えれば、余もまた霞の如く消えるであろう」
「では、私に協力すると?」

 その言葉に、リスアットはふん、と鼻を鳴らす。

「戯けが。余はこのような下らぬことで現世に姿を現す羽目になった元凶を処しに来ただけだ」
「その不安定な状態で、私を討つと?」
「余だけでは不足だろうよ。だが、見よ」

 リスアットは、自分の背後を指し示す。そこには猟兵に討たれ、骸の海へと還っていった多くの亡者たちの残留思念が勢揃いしていた。ある者は猟兵との宿縁に従って戦い、またある者は戦争で多くの猟兵達と戦い、散っていった。他にも、生前において猟兵と縁の深い者や、猟兵が在りし日を強く思う者もその場にいる。

「皆、この巫山戯た空間で不本意にも形象を得た存在。我らは骸の海で眠りについていた。それをこのような形で起こされてしまえば、貴様の試みに憤るのもやむなし」
「なるほど。ですがあなた方の大半は、この2つの世界になんら縁は無いはず」
「故にこそ、この2つの世界を守ろうとする者に手を貸そうというのだ……そう、『第六の猟兵』達にな。貴様を討つのは死人ではない。生者たる猟兵である。我ら死人はただ、その後押しをするだけのこと」

 リスアットは、背後に控える亡者たちに向けて宣言する。

「我らはこれより第六の猟兵の剣となる! 生前の宿業を今だけは水に流し、この戦いを勝利へと導こうぞ!!」

 おぉ、と亡者たちは鬨の声をもって応ずる。今を生きる者たちへ、かつて生きた者たちが助力する。ここに、生死を超えた者たちの戦いが始まるのであった。

●オペレーション・クロウジェム
「皆様、最後の戦いですわよ」

 いつになくシリアスな雰囲気で、南六条・ヴィクトリア三世(株式会社UAI最高経営責任者(現職)・f30664)がブリーフィングを始める。

「UDCアース東京の、東京スカイツリーを大祓骸魂が占拠しましたわ。彼女の権能によって、上空はカクリヨファンタズムに似た空間が広がっておりますわね。現世と幽世の境界が曖昧となったことで、死人たちの残留思念が続々と目覚めておりますわ」

 ですが、とヴィクトリアは語気に力を込める。

「この死人たちはどうやら、不本意に目覚めさせられたことで少々お怒りのご様子。大祓骸魂に敵意を向けているようですわね」

 この死人の中には、猟兵と生前縁があった者たちが多い。さらには、これまでの戦争で猟兵に討たれたオブリビオン・フォーミュラや幹部オブリビオンも存在する。彼らは生前の因縁を忘れ、今だけは猟兵に力を貸す意思を見せていた。

「彼らは生前のようにユーベルコードを十全に扱うことができません。ですが、それでも我々猟兵と共に戦うとのことですわ。皆様は彼らの中から共に戦う者を選び、皆様なりの戦い方で彼らに挑むのです」

 それこそが、死者への手向けであると、ヴィクトリアは語る。

「奇跡的な機会ですわ。悔いの残らないように戦ってくださいまし!」

 ヴィクトリアはそう言うと、ポータルを開いて猟兵達を死者たちが待つ戦場へと送り込む。彼らに再び、安らかな眠りを齎すために。

  大祓百鬼夜行最終決戦計画「プロジェクト・トライポッド」構成作戦、作戦コード「オペレーション・クロウジェム」、開始。
 作戦目標──大祓骸魂の撃滅。
 交戦規定──全員生還。


バートレット
 どうも、バートレットです。

 いよいよ大祓骸魂との最終決戦です。6月1日を気持ちよく迎えるためにも頑張って倒しましょう。

 今回のプレイングボーナスは以下のとおりです。

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 プレイングボーナス……(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)
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 大祓百鬼夜行におけるすべての戦場のプレイングボーナスから、どれか一つ好きなものを選択してください。それがプレイングボーナスになります。どのようなプレイングボーナスがあるかは、戦争概要ページをご確認ください。
 また、本シナリオに限り、以下の行動からいずれかひとつを選択して行うと追加ボーナスを獲得できます。
・すでに死んでしまった猟兵にとっての想い人を一人選び、その人と共に戦う。
・撃破済みの宿敵を一人選び、その人と共に戦う。
・これまで開催された戦争イベントや猟書家の戦いで「撃破が明言された」幹部オブリビオン、オブリビオン・フォーミュラ、オウガ・フォーミュラから一人選び、その人と共に戦う。

 OP公開後、即プレイング受付を開始します。締め切りは5/29 21:00とさせてください。募集状況はタグでも確認できるようにしますので、合わせてご確認をお願いします。

 それでは、皆さんのアツいプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

董・白
※アドリブはOKです
【心境】
「ここまできました。親分さん達の覚悟…無駄にはしません。」

【行動】
指定:想い人を一人選び、その人と共に戦う
思い人:僵尸として蘇生した私を救出して、崑崙のお師様へ預けてくださった恩人の武侠様(性格などのイメージは三国志演義の趙雲な感じ/本人じゃないよ)


武侠様、まぼろしの橋ぶりですね。
色々語りたいですが、お願いします。この世界を救うため、守る為お力をお貸しください。
ですが、今度は私もご一緒に戦います。あの時のように守られているだけではもうございません。

道術で強化した結界術で攻撃を防御しつつ、破魔の霊符を投擲します。
七星七縛符発動します。動きを止めました。今です武侠様



●あの日から強くなった自分
「ここまできました。親分さん達の覚悟……無駄にはしません」

 オペレーション・クロウジェム。それは現世と幽世の境界が薄まったところを敢えて利用し、亡者や想い人の幻影と共に大祓骸魂に側面攻撃を仕掛ける、三種の神器に擬えた最終決戦計画「プロジェクト・トライポッド」の「勾玉」に該当する作戦だ。親分はすでに、「剣」たるオペレーション・キャリバーンのため、正面からの決戦を挑んでいる。

 董・白(尸解仙・f33242)は、この作戦において共闘したい相手がいた。それはかつて自分を助けた武侠。あの日自分を助けたこの武侠がいたからこそ、今の自分がある。

 果たして、武侠の男は目の前にいた。あの日と変わらぬ若さの猛々しい偉丈夫が、白を見下ろす。

「武侠様、まぼろしの橋ぶりですね」
「そうだな……あの時はろくに言葉も交わせなかったが。改めて、今伝えよう。壮健そうで何よりだ」

 とは言え、此度も長く言葉を交わすわけにはいかない。目の前には大祓骸魂。迫るは世界の終焉だ。

「色々語りたいですが、お願いします。この世界を救うため、守る為お力をお貸しください」
「無論だ、ここで引いては武侠の名折れ。娘よ、今は下がって──」
「ですが」

 庇護の対象をこの場から退かせようとする武侠を、白は手で制す。

「今度は私もご一緒に戦います。あの時のように守られているだけではもうございません」
「……ほう」

 武侠は目を細めた。なるほど、崑崙に住まうかの仙女は彼女を一廉の仙人へと育て上げたようだ。最早あの時助けた無力な姫君の姿はそこになく、今ここにいるのは仙術を操る戦士であると理解する。

「良かろう、ならば見せてみよ。修行の成果を!」
「はい!」

 一歩、前へ。武侠と並び立つ。この瞬間、2人は護り、護られる者から背中を預け合う者同士となった。

「正面からの親分との戦いに加えて、こちらも相手をせねばならないとは煩わしい。ですが、我が愛の前には無力と知りなさい、亡者たちよ!」

 大祓骸魂が手を大きく振れば、地が割れ、彼岸花が地割れに沿って咲き始める。だが、その動きを縫い止めるのが白の霊符と結界だ。地割れによる攻撃は結界の前で力を失い、大地に次々と霊符が突き刺さっていく。そして、その全てが煌々と輝きだした。

「七星七縛符、発動。枯れよ、邪なる彼岸花!」

 霊符から放たれた浄化の気が次々と伝播し、彼岸花はたちまち枯れていく。

「っ、陰陽道の術……!」
「地の利は決して得させません……武侠様」
「心得た! 一番槍の誉れ、ここに頂こう!」

 武侠が飛び出し、槍を回転させて切り込んでいく。大祓骸魂は直ちに対応しようとしたが、その目にも留まらぬ早業は大祓骸魂の反応速度の上を行った。

「っ……!」
「見よ、我が槍の冴えを!」

 かくして、白と武侠は攻防一体のコンビネーションを活かしながら、大祓骸魂への側面攻撃に成功した。そしてこれが、大祓骸魂の無力化の第一歩となったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東雲・深耶
成程、では貴公と共に…『鬼火』殿
そう告げて降臨するはかの七大海嘯『鬼火』のダッチマン公
元々、鬼火島はグリードオーシャンにてカクリヨファンタズムを司っていた模様。ならばこそ、親和性は非常に強いと言える

そうして、空間が変化した蒼き炎を持って時空間切断剣術を解き放ち、骸魂の浄化に特化した炎でオブリビオン化した妖怪達を鬼火殿と開放していく
元々この『大祓百鬼夜行』で飽きるほど骸魂の交戦記録はグリモア猟兵として手に入っていた。故に、時空間干渉によってその反転座標を有した攻撃を叩き込める!
かけた時間が武器なのは貴様だけではないぞ、『大祓骸魂』!
そう言って空間火炎変換式の時空間切断剣術を叩き込んでいく



●あの日の決闘を超えて
 ──ならば来るが良い、若き剣豪よ! 我が彷徨の終着点を見せてみよ!
 ──よかろう……この魔剣を以て、貴公の旅路に終わりを告げさせよう!

 あの死合いは今も、心に焼き付く程の戦いであった。

 羅針盤戦争における対七大海嘯特別作戦のひとつ、オペレーション・イチイバル。それは七大海嘯の「鬼火」頭目、フライング・ダッチマンと猟兵達の一騎打ちによる決闘であった。

 その戦いで、魔剣の流派たる「空閃人奉流」の使い手、東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)は見事、フライング・ダッチマンとの剣術勝負に勝利してみせたのである。

 そして、今。東京スカイツリーのゲイン塔に展開された現世と幽世の混在する空間において、彼女は再びフライング・ダッチマンと相対する。

「まさか、こうして再び見えるとはな、若き剣豪よ」
「私もだ、『鬼火』殿」

 もっとも、深耶は僅かばかりの予感はしていた。元々、ダッチマンが本拠を構えていた鬼火島はカクリヨファンタズムより剥離した大地がグリードオーシャンに落ちることで形成された島である。ある意味では、カクリヨファンタズムは彼にとってのホームグラウンドと言えるのだ。であるならば、この危機に彼が出てくる可能性もあるだろうと深耶は考え、事実その通りであった。

「しかし、その剣、僅か3ヶ月でさらに冴えを増したようであるな。それにどうやら……われの力も流派に取り入れたか」
「この『蒼灯』……ありがたく使わせて頂いている」

 深耶は一振りの剣を抜く。蒼炎妖刀・『蒼灯』、不滅を体現する想念を司る青き炎は、ダッチマンが振るう力と同等のものであった。

「ならば征くとしようか。此度は轡を並べて戦う立場。われの剣技と貴公の魔剣、揃えば敵は無し」
「あぁ、共に征こう、『鬼火』殿」

 ダッチマンはその権能を解放、怨念の蒼き炎を纏ってカットラスを抜くと、まずは大祓骸魂の直衛たる骸魂妖怪たちに向かって斬りかかる。深耶もこれに合わせる形で蒼灯を構え、時空間切断剣術を解き放つ。2人の剣刃が躍り、次々と骸魂妖怪たちはその身に取り込んだ骸魂を斬られ、浄化されていった。

「こちらの手元に残していた手勢がこうも損害を被るとは……!」
「覚悟の無き者にわれを討つことは不可能。骸魂を取り込んだ者を意思無き傀儡としたことが災いしたな!」

 焦燥する大祓骸魂に対してカットラスの切っ先を向けながら、ダッチマンは言い放った。これを受けて、大祓骸魂は懐刀「生と死をつなぐもの」を構える。

「ですが、貴方は所詮魍魎に過ぎません。羅針盤戦争当時と比してユーベルコードの力は弱い」

 大祓骸魂は断言する。故に、ダッチマンは自分には勝つこと能わず、と。しかし、『鬼火』の頭目はそれを一笑に付した。

「それがどうしたと言うのだ。今のわが身は魍魎で結構。貴公を討つのはわれに非ず。われを超えた剣豪だ」

 大祓骸魂はダッチマンのその言葉を聞いてすかさず深耶を見る。すでにそこには、時空間切断剣術の奥義の構えを取る深耶の姿があった。

「元々此度の戦争において、飽きるほど骸魂の交戦記録をグリモア猟兵として手に入れることができていた……」
「その交戦記録で私の位置を把握した……っ!? まさか!?」
「貴様は情報を我々に与えすぎたな! 時空間干渉によってその反転座標を有した攻撃を叩き込める! かけた時間が武器なのは貴様だけではないぞ、『大祓骸魂』!」

 蒼炎妖刀・「蒼灯」の蒼き炎が大きく燃え上がる。ダッチマンの炎すらも取り込み、それは大太刀を超えるほどの巨大で長大な刀身を形成しはじめた。

「われらの蒼き炎の剣が──」
「──貴様の虞を、愛を、全て焼き祓う!!」

 深耶が大上段より振るった蒼き炎の刀が、大祓骸魂の身体を捉え、その身に纏う虞ごと飲み込んでいった──。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
妻と共に眠りについていたのを起こされたのですから、さぞお怒りでしょう。貴方であれば必要あれば我々と手を組むことを厭わぬハズ。
ご協力頂けますか?『四の王笏』カルロス・グリードよ。

大祓骸魂、貴様は一方的な愛情の余り決して目覚めさせてはならぬものを目覚めさせた。
最早死を以て以外で罪を贖うことは不可能と知るがいい!

カルロスの白騎士の鎧の力を借り、UCが飛んでくるタイミングを演算、【見切り】回避。攻撃が一段落したところで百霊鎮守塔の浄霊結界展開装置を起動して敵の能力を抑制。
その怯んだ瞬間を狙い、【指定UC】を付与したライフルスピアの【砲撃・誘導弾】とカルロスの斬撃で【2回攻撃】!



●未来を操り、愛に殉じた男
 ──やってやる。やってみせる。電脳魔術士を舐めるなよ。
 ──貴様も……未来を読んでいるというのか!?

 89秒もの間、顕現させたラプラスの悪魔。それが、全てを決した。

 羅針盤戦争において強敵だったオブリビオンは誰かという問いに、「鮫牙」「舵輪」と並んで多くの猟兵が挙げる答えこそ、四の「王笏」であるだろう。その権能こそ、銀河帝国攻略戦で数多くの猟兵を苦しめた「白騎士ディアブロ」の再来そのものである「未来予知」である。返り討ちに遭った猟兵も少なくない中で、様々な猟兵が彼の未来予測を攻略するための方策を取った。

 その中で、電脳魔術士たる終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)がとった方策は、AIの計算速度を上を行くことだった。そして、その方策は成功に終わり、ここに勝者たる日明、敗者たる四の「王笏」ことカルロス・グリードという結果が残った。

 時を経て、大祓百鬼夜行において発令された最終作戦群、プロジェクト・トライポッドの構成作戦がひとつ、オペレーション・クロウジェム。その舞台となった東京スカイツリーにおいて、かつて生死を賭した戦いを繰り広げた二人が今、並び立つという光景があった。

「まさか、貴様と手を組むことになろうとはな。終夜・日明」
「僕も同感ですよ、カルロス・グリード。とは言え、利害の一致はあるでしょう」

 その巡り合わせの数奇さに、カルロスは嘆息する。対して日明は肩をすくめてみせた。

「妻と共に眠りについていたのを起こされたのですから、さぞお怒りでしょう?」
「確かに、我は最愛の妻共々眠りを妨げられた形にはなるのだがな。もっとも、その怒りをぶつけるために貴様ら猟兵と轡を並べる事になったのは、本音を言えば業腹だが」
「しかし、貴方であれば必要あれば我々と手を組むことを厭わぬ筈。改めて問いますが、協力して頂けますか?」

 その言葉に、カルロスはしばし瞑目した後、日明をまっすぐ見つめる。

「少し訂正が要るな。我は確かに必要とあらばかつての敵とも手を組むだろう。しかし、だからと言って無能と手を組む趣味はない。我を打倒してみせた貴様は手を組むだけの価値があると判断した、そこは覚えておいてもらおうか」
「それは重々承知してますよ。高評価痛み入ります」
「……それともう一つ。我を倒した際、貴様、かなり無理を通したであろう。いざ味方という立場であれをやられて死なれでもしたら、我は振り上げた拳を振り下ろす手段が無くなる。故に我の目の届く範囲で貴様を見張るしかあるまい、そう考えた末の結論だ」

 その答えにしばし目を丸くする日明だったが、やがてふっ、とひとつ笑う。

「……なるほど、夫婦って似るものなのですね」
「何か言ったか?」
「いえ、何も。……えぇ、そういう事でしたら問題ありません。宛てにさせてもらいますよ」

 骸の海から仮初の形象を得て蘇った彼は、妻と共に過ごしたことで幾分丸くなったのだろうか。そんなことを考えながらも、日明はカルロスと共に大祓骸魂攻略の策を練る。彼の提示した策は、《蠱毒》を使い相手の生存本能を刺激するものだったが、カルロスは日明の策を聞くとしばし腕を組んで考え込み、やがて口を開いた。

「その策、骨子は妻と戦った際の戦術の応用と見たが相違ないか? いや、妻が当時の状況を話していたのを思い出したのだ。基本的にはかなりの効果を期待できると思うが、ひとつ問題がある。妻のケースと比して、相手に確実に当てる上で大祓骸魂の機動力を勘案せねばならん。そこを解消する手段は用意しているのか? 未来予知だけでは限界があると思うのだが」

 流石に七大海嘯を纏めていただけあって、戦術に対しては的確な指摘を入れてくる。しかし、もちろん日明も何も考えていないわけではない。

「ご安心を。秘密兵器があります」

 日明はにっこりと微笑む。その「秘密兵器」の存在を聞いたカルロスは成程、と頷いた。

「で、あるならば問題はないな。良かろう、その策に乗った」

 策は定まり、彼らは大祓骸魂と相対した。

「貴方が選んだのは四の『王笏』……コンキスタドールと猟兵は未だ抗争中。にも関わらず手を組んだというのですか。随分と脆そうな同盟です」

 七大海嘯は斃れたが、未だコンキスタドールとの戦いが続いていることに、大祓骸魂は彼らの共闘が危ういものである事を嗤う。しかし、日明も、カルロスもその指摘には一切動じない。

「貴様には理解できんだろうな。あの戦場で我らは己の全てを猟兵にぶつけ、そして散った。未だ戦いを止めぬ者に比して、我らは既にこの結果を受け入れ、眠りについたのだ。それを邪魔立てする貴様を倒せるのならば、我らは喜んでかつての敵とも手を取ろう」
「そして何より、貴様は一方的な愛情の余り決して目覚めさせてはならぬものを目覚めさせた。かつて敵味方として戦った身であったとしても、この許されざる所業は義によって助太刀するに値する。最早死をもって以外で罪を贖うことは不可能と知るがいい!」

 カルロスと日明は揃って大祓骸魂を糾弾する。そこにはかつての敵味方を超えた、否、かつて敵味方として命のやり取りをした者同士だからこその結束があった。

「たった一人に対する愛が、世界そのものへの愛に勝てるものか!」

 大祓骸魂は一喝すると、懐刀「生と死をつなぐもの」を次々と複製して日明たちを包囲殲滅すべく周囲に展開する。一見すれば、避けるのは困難であったことだろう。しかし、ここにいるのは電脳魔術士と未来を見通す超AIの使い手。

「システム、起動! 未来演算プログラム、ニューロンインターフェースに接続! 日明、来い!」
「アイハブ! アクセス権限の付与を確認、シェイクハンド完了。ニューラルローカルネットワークオンライン、演算開始!」

 カルロスが白騎士の鎧の超AIを起動すると同時に、日明にシステムのアクセス権限が付与される。白騎士の鎧の超AIの演算結果を、カルロスと日明の2人が即座に共有できる状態が出来上がった。超AIはすぐさま2人に懐刀1本1本の軌道予測を伝え、日明とカルロスは未来予測に従ってただの一度の被弾もなく回避を続けていく。全く攻撃が有効ではない現状に焦れた大祓骸魂が攻撃手段を変えるべく射出を中断した時、カルロスは日明に反撃の一手を促す。

「ここだ、手はず通りに」
「えぇ、お任せを。百霊鎮守塔、起動! 浄霊結界展開!」

 次の瞬間、カクリヨファンタズムの百霊鎮守塔に設置されていた結界展開装置が作動する。結界展開装置はすでに妖怪たちの手によって大祓骸魂がいるUDCアースの東京スカイツリーを含む一帯に照準が合わせられており、たちまち大祓骸魂はその四肢に突如錘をつけられたかのような重圧に襲われた。

「なっ……虞が……!」
「如何です? 秘密兵器の威力は」
「首尾は上々と言えるだろう。及第点だ」

 ライフルスピアを構えた日明と、剣を構えたカルロスが大祓骸魂の前に立つ。これぞ日明の用意した「秘密兵器」。虞によって強化されている大祓骸魂だが、その虞を浄化する空間では強化が解除されてしまう。それを狙って、決戦前に日明が百霊鎮守塔の妖怪たちに予想会敵地点への照準と、戦闘中の結界展開を依頼していたのであった。この策を知るのは本人以外ではグリモア猟兵と結界展開を担当する妖怪たち、そして直前に知らされたカルロスのみという徹底した情報統制が功を奏し、大祓骸魂はこの攻撃を一切察知できなかったのである。

「さぁ、貴様の閉ざされた未来に絶望し──」
「──逃れ得ぬ死の恐怖に怯えろ」

 カルロスの正確無比な斬撃と、《蠱毒》を纏った日明の一撃が、大祓骸魂目掛けて閃いたのは同時であった──。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽殿蘇・燐
面白い方々
私は真の姿を晒しましょう。背中に黒い蝶の羽が生えるわ
…まだ、この姿を視聴者(大半は原作ファン)に見せるわけにはいかないから、事後動画報告ね

黒騎士アンヘル様、お力をお借りします
『黒揚羽』(原作ゲームのレベルダウンデバフ再現武器)により『妖怪達がオブリビオン化した』過去を一時的に焼却、そこへ【炎術:催眠蝶】による催眠で、妖怪達に離れるよう暗示を

アンヘル様。今の猟兵として未熟な私だと『能力強化という鍛練の過去経験』を封ずるに手が足りません。お願いできますか?

大祓骸魂。『麝香揚羽』により幻覚を見、さらには【炎術:催眠蝶】の炎属性攻撃で焼かれなさい
『芭蕉扇』による風で、近づけさせもしないわ



●過去を奪う黒の師弟
 銀河帝国二大巨頭──それは過去と未来を自在に操り、敵対者を葬る銀河皇帝直属の騎士を指す。未来を変える白騎士ディアブロ、過去を断ち切る黒騎士アンヘルの2名は、オブリビオンとして蘇ってからも今なお猟兵達の間で強敵と語り継がれるほどの猛者である。

 その片割れ、黒騎士アンヘルは今、もう片割れの力を受け継いだ四の「王笏」と猟兵が未来視能力を操りながら大祓骸魂を追い詰めているのを見て、ほう、と声を漏らす。

「ディアブロの力がこんなところで使われているとは。銀河帝国二大巨頭のもう片割れとしては負けていられんな……彼と行動を共にしている猟兵も見事に未来視を活かしている。そうは思わんか」
「えぇ、本当に面白い方々ですわ」

 アンヘルの傍らに佇む女性が、その言葉に頷いた。彼女の名は陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)。キマイラフューチャーに残されたとある和風RPGのラスボスを務めるNPCが、自我と猟兵としての力を得たバーチャルキャラクターである。現在は動画配信者として活動しているものの、今回オペレーション・クロウジェムに参加するにあたっては生配信ではなく、事後報告動画とすることを決めていた。

 その理由こそ、現在彼女の背中から広がる漆黒の蝶の羽根である。彼女の原作ゲームにおいて、この姿はラスボスとしての正体を露にした際に初めて明かされるものであるため、ネタバレに対する情報統制がどうしても必要となるのだ。

 何故アンヘルと燐が協力しているのか。それは、燐がアンヘルに依頼したためであった。燐の象徴たる黒い揚羽蝶は、一時的に過去を焼却する力を持つ。しかし、彼女は猟兵になってから日が浅いため、アンヘルと共に戦うことでその技を学ぼうと思ったのだ。

「さて……我らも大祓骸魂を討つべく動くとしようか。ただ、過去改変の技を教えるにあたって、まずは君の力がどのようなものかを知っておきたい。ちょうど今、大祓骸魂を守ろうとする骸魂妖怪たちが立ちはだかろうとしている……これをどう対処するか、君の腕前を見せてもらおうか」
「承知しました。では、私が主体で動きますので、アンヘル様はフォローをお願いしますね」

 そう言うと、まずは燐が前に出る。見定めるようなアンヘルの視線を受けながらも、彼女は黒揚羽を骸魂妖怪たちに向けて飛ばした。その鱗粉が火の粉となって妖怪たちに降り注げば、たちまち「骸魂を取り込んだ」という過去そのものが焼却され、一時的に正気を取り戻す。

「……あれ」
「私達、ここで何を……?」

 そこへ降り注ぐのは黒揚羽から放たれる声。

「聞きなさい。貴方がたは大祓骸魂に操られて傀儡になっていた。今ここは猟兵と大祓骸魂たちの戦場となっているわ。速やかにここから避難なさい」

 その言葉に、妖怪たちは驚く。

「っ、そうか大祓骸魂……!」
「決戦が行われてるってことは、猟兵さん達は無事彼女を見つけだしたんだな!」
「急いで逃げないと! 猟兵さん、頑張って……!」

 燐に対して口々に礼や激励の言葉を残しながら、急いでスカイツリーから離れていく妖怪たち。それを見て、アンヘルはなるほど、と頷く。

「戦うに至った過去、此度の場合は骸魂を取り込んだという過去……これを焼却したのだな。鮮やかな手並みだ」

 恐れ入ります、と燐はアンヘルの称賛を受ける。アンヘルはひとつ考え込むと、方針をまとめた。

「では、戦闘における効果的な過去の焼却の技を教えるとしよう。敵の力を完全に失わせるためには、心技体の3要素に関わる過去を奪う必要がある。戦うに至った過去を奪ったことで、『心』は無力化されるが、これに加えて戦闘経験を奪うことで『技』を、鍛錬経験を奪うことで『体』を無力化すれば、真に敵は全ての力を失うことになる」

 アンヘルが語る内容こそ、彼が扱う秘剣・過去喰らいの三呪剣の本質である。アンヘルは現在の燐がどこまで過去を焼却できるかを問うた。

「現在の私の能力では、戦闘に至る経緯、そしてこれまでの実戦における戦闘経験までが限界です」
「なるほど。確かに、『能力強化という鍛練の過去経験』はこの2つに比べて消去する範囲が格段に広がるものだ。良かろう、此度は鍛錬の経験の消去は私が行う。何か得るものがあれば幸いだ」

 かくして、2人は大祓骸魂といよいよ対峙する。すでに大きくダメージを負っていながらも、まだ戦意は衰えていなかった。

「未来の次は過去を奪う……そこまでして私の愛を否定しますか」
「世界を滅する愛を抱いた過去そのものが誤りだったのだ」
「貴方は言った、UDCアースを深く愛するがゆえに幽世を作り上げたと。UDCアースの記憶こそが此度の元凶。で、あるならば、その元凶を討つのみ」

 大祓骸魂は最後の抵抗とばかりに、懐刀を抜き放ってアンヘルと燐に迫る。

「私の愛は永遠、過去を否定した所で私の愛は揺るがない……!」
「永遠に続く愛……しかし、その永遠には始まりが存在する」

 燐は芭蕉扇を手にすると、強風を発生させて大祓骸魂の接近を妨害する。その隙に放つのは炎を纏った漆黒の揚羽蝶。芭蕉扇が起こした風に乗り、次々と大祓骸魂に纏わりついていく。

「さぁ、その愛の過去ごと焼かれなさい」
「くっ、揚羽蝶とて、この剣術で……!」

 懐刀を振るって一刀のもとに揚羽蝶を振り払おうとする大祓骸魂だったが、その時背中から斬撃を受けたことに気づく。たちまち、大祓骸魂は剣を持ったまま立ち尽くしてしまった。

「……何をした、黒騎士」
「貴様の剣術の記憶を斬った。最早まともに剣を振るうこともかなうまい」

 芭蕉扇による強風と揚羽蝶に大祓骸魂が気を取られた一瞬、アンヘルは背後に回り込み、鍛錬経験の記憶に斬撃を浴びせたのである。

「あ、あぁ、あぁぁ……私の幽世が、私の愛が、焼かれていく……!」
「幻覚を見ながら焼かれなさい、大祓骸魂」

 殺到する揚羽蝶が、大祓骸魂に幽世が炎で包まれるイメージを見せながら、彼女の体躯そのものも焼き尽くしていく。炎の中で、大祓骸魂が見たものは、微笑みながら佇む燐の姿であった──。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
へえ、流石は大祓骸魂の力が濃い所だ
面白い事も起こるもんだね
倒した亡霊共が手を貸してくれるなんて…ふむん
面白い…面白いよ!
じゃあ彼女の力を借りようかな
来なよ、悪名高き森焼きメイド!
チーフメイド・アレキサンドライト!


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
そしてアレキサンドライトと共闘
力、貸して貰うよクソメイド!
そのガトリングで敵の懐刀の迎撃宜しく!

【雷鳴・解放】起動
無数の懐刀はメイドに任せて私は高速移動開始
一気に懐まで潜り込んで、稲妻を纏った斬撃を零距離から放つ!
2剣による『2回攻撃』、これでメイドの射程まで『吹き飛ばし』て連携
ほれ行ったよ!
蜂の巣にしてあげて!

アドリブ等歓迎



●虞の森は焼け落ちた
 ──焔猛り、その骸魂を震わせて、すべてを侵食しなさい!
 ──成敗してあげよう、アレキサンドライト!

 エルフの森を焼き払い、世界樹を掌中に収めようとした者の野望は、あっけなく潰えた。

 迷宮災厄戦の後に各世界に現れた猟書家。各戦線が長きにわたって膠着状態に陥る中、アックス&ウィザーズ戦線を大きく動かしたのはチーフメイド・アレキサンドライトが計画した世界樹イルミンスールの奪取計画だったと言えよう。

 そのチーフメイド・アレキサンドライトにとどめを刺し、彼女の野望に終止符を打った者こそ、たった今息を切らせながらゲイン塔までやってきた月夜・玲(頂の探究者・f01605)であった。

「あのクソザコフリスビー、どこ行った……」

 別戦線であるオペレーション・スペキュラムにおいて玲が放ったベイスピナー、コメットスコーピオンは大竜巻を起こした挙げ句ゲイン塔まで飛んでいった。彼女はオペレーション・クロウジェムへの援護のついでにコメットスコーピオンを探そうとしていたが、何分勢いよく飛んでいったため行方がわからなかったのである。

「これをお探しかしら?」

 と、玲のもとに差し出されるのは当のコメットスコーピオンである。親切な人に礼を言おうと玲は顔を上げ、そして表情が固まった。

「……げっ、悪名高き森焼きメイド」
「……チーフメイド・アレキサンドライトと呼んでくださるかしら」

 コメットスコーピオンを差し出しながら、メイド服姿のクリスタリアンは自らの呼び名に対して不服そうに頬を膨らませる。そう、彼女こそ、玲がとどめを刺したはずの猟書家、チーフメイド・アレキサンドライトその人であった。

「……そうか、倒した亡霊共が手を貸してくれるってことは、当然あんたもいるわけよね」
「わたくし自身ここにいるのは不本意ですわ。貴方に討たれた後、骸の海で眠りについていたところを無理やり引きずり出されたのですから」

 利害は一致していた。で、あるならばと玲は共闘を持ちかける。

「それなら、力、貸して貰うよ。あいつの懐刀の攻撃が厄介なんだ。そのガトリング、飾りじゃないとこ見せてもらおうか」
「貴方がたとの戦いではほぼ飾り同然でしたわね……良いでしょう。今度こそわたくしのガトリングの威力、存分に発揮させていただきますわ」

 過去の遺恨は水に流し、アレキサンドライトが差し出すコメットスコーピオンを受け取ると、その手をそのまま握りしめた。

「拾ってくれてありがとうね」
「全く、無茶な改造しますわね。……どういたしまして」

 2人は握手を交わすと、大祓骸魂に向き直る。

「私の未来は閉ざされ……過去も焼き尽くされた……しかし、今ここに私は健在……!」

 その身体に炎の残滓を残しながらも、大祓骸魂は自らの周囲に懐刀の展開を続けていく。最早執念のみで動き続けるその姿にアレキサンドライトは嘆息した。

「……こうしてみると、哀れさすら覚えますわね。その愛だけを拠り所に、ここまで来たとは」
「あんただって、似たようなもんじゃない」

 玲の言葉に、アレキサンドライトは肩をすくめる。

「愛するお嬢──プリンセス・エメラルドのために働くのはメイドの使命ですわ。もっとも……大祓骸魂は、愛する対象があまりにも大きすぎ、そしてあまりにも破滅的すぎたのでしょうね」
「2つの世界をまとめて滅ぼすくらいのスケールだからね。さて……懐刀の迎撃は任せるよ」
「えぇ、思う存分暴れてきてくださいまし」

 今だけは、メイドとしての主人は玲であると、アレキサンドライトは言外に告げ、カーテシーの姿勢で玲を送り出す。玲は頷くと、愛剣たる「《RE》Incarnation」と「Blue Bird」の二振りの剣を抜刀し、駆け出した。

「まだ、邪魔立てするというか、猟兵──!」

 怒りのまま、懐刀を複製させて次々と玲めがけて殺到させる大祓骸魂。ダメージを負っているとは言え、未だに余力が残っていることに内心で玲は驚く。だが、その懐刀は次々とアレキサンドライトのガトリングに撃ち落とされていった。

「一振りたりとも届かせませんわよ、大祓骸魂!」
「野望を砕かれた猟書家風情が……!」
「おっと、本命はこっちだよ!」

 怒りの形相を驚愕で凍りつかせ、大祓骸魂は自らの懐に飛び込んできた玲に視線を動かす。

「私の愛を断ち切らせは……!」
「しないって? じゃあ……蜂の巣になってもらうかな!」

 玲が放つ稲妻を纏った2回の斬撃を受けた大祓骸魂。その体躯は斬撃の際に生じた衝撃波によって大きく宙を舞う。

「ほれ、行ったよ!」
「お任せを!」

 アレキサンドライトは玲の声に即応すると、ガトリングを腰だめに構え、正確に狙いをつけて空中の大祓骸魂目掛けて弾丸を続々と吐き出させる。空中で、大祓骸魂は弾丸の雨に捕らえられ、その身体を激しく躍らせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブ等も歓迎

②【他の猟兵と連携して戦う】

【オウガ・オリジンと共に戦う】

『オウガ・オリジンさん…貴女にもご助勢頂けるなんて…』

【POW】

敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】
【オーラ防御】で
状況により翼で飛翔
【空中機動】【空中戦】も使い
防御・回避

【第六感】等で
敵や場の状況を把握
他の猟兵さん達との
攻撃機会を見計らい

【結界術】で
大祓骸魂さんに
集まらせない様
骸魂妖怪の動きを制限

一斉攻撃の時には
【第六感】【早業】
【瞬間思考力】
声かけ等で
タイミング合わせ

ヴォーパルソードで
【破魔】【浄化】を込めた
【属性攻撃】をのせたUCを放ち
皆さんと一斉攻撃

『オリジンさん…今回だけは…お友達として…共に戦えたんですね』


朱酉・逢真
④暴獣
心情)こりゃまた派手なお祭りだァ。ひ、ひ。ならせっかくだァ、あいつを喚ぼう。いや、お喚びするって言ったほうがいいかね?
行動)よォ、オウガ・オリジン。いや、ここは"アリス"とお呼びしようか。お久しぶりィ。お前さん、毒茶扱ってたろ。(迷宮災厄戦⑱) ちょっくら世界を救おうぜ。ンで、今度こそみィんなから最高尊いって言われようや。
アリスに眷属《鳥》からデカい鳥貸して乗ってもらおう。虞避けるためだ。地形はアリスの紅茶と俺の羽根で汚染する。彼岸花も枯れるさ。アリスの呼んだ毒オウガに動き止めてもらったら、この邪神も殺した病毒の塊…俺が全力で突撃だ。俺は死ぬが奴も腐らす。あばよアリス、楽しかったぜ!


シャルロッテ・ヴェイロン
⑮いずれか

まさかあなたと共闘することになるとは思ってもみませんでした。
行きましょうか、「オウガ・オリジン」――いいえ、「はじまりのアリス」!

まずは真の姿開放、そして【指定UC】でさらに強化(【限界突破・リミッター解除】)。「虞知らず」を込めた【ATTACK COMMAND】を撃ちながら【空中戦】を仕掛けましょう(【先制攻撃・誘導弾・2回攻撃・一斉発射・乱れ撃ち・制圧射撃・属性攻撃・破魔】)。
オリジンには【現実改変UC】で敵UCの発動を妨害したり、雑魚敵の【蹂躙】などをさせてもらいましょう。

※アドリブ・連携歓迎



●わたしの、初めての友達
 ──ごめんなさい……私は……お友達なんかじゃ……。
 ──本当に、ずっと独りぼっちだったんですね。
 ──ああ、どうして、お友達じゃなかったの……? どうしてわたしには友達ができないの……?

 それは、とても痛ましい記憶。

 迷宮災厄戦の引き金となったオブリビオン・フォーミュラ、オウガ・オリジン。しかしてその正体は「はじまりのアリス」だった。残酷な現実に絶望し、心が壊れた彼女が作り上げた狂気の世界、アリスラビリンスにて、猟兵たちとの激闘の末に彼女は討たれた。最後の瞬間、彼女が渇望したのは、「友達」であった。

 時は流れ、大祓百鬼夜行が終息を迎えゆくUDCアース日本国、東京スカイツリーで。

 ゲイン塔に形成された空間の中で、アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は走っていた。

『……ここは任せるにゃ。アリス、お前さんはは亡者たちの下へ行くにゃ』
『えっ?』
『君にとっての……「友」があそこにいるにゃ!』

 東方親分、五郎左衛門の言葉が未だに頭に響く。

「まさか……あの人も、ここに……!」

 呼応するように、アリス適合者の猟兵、シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)も合流する。

「アリスさん!」
「あ……シャルロッテさん」

 アリスは、五郎左衛門の言葉をシャルロッテにも伝える。

「……わたしも、予感がしたんです。ここに来れば、あの人に会えるって」
「でも……わたしは、あの時、あの人を拒絶してしまいました……言われてここに来たものの、今更どんな顔をして会えば……」

 友達じゃない、そう言って突き放したあの時を思い出したアリスは、両手をぎゅっと握りしめる。

 その時であった。

「見つけた……猟兵ィィィ……!!」

 すでに満身創痍でありながらも、執念のみでアリスとシャルロッテに襲いかかる大祓骸魂。まだ少数ながらも残っていた骸魂妖怪たちと共に、2人へ凶刃を向ける。

「しまった……!」
「くっ、回避が間に合わ──」

 2人は思わず身構えるが、その攻撃をしたたかに受けてしまうかに思われた。だが、しかし、そこに割って入る影があった。

「……させないッ!!」

 鋭い声を上げながら、手にしたナイフで大祓骸魂の攻撃を弾き、そのまま吹き飛ばす。その姿に、2人は思わず声を上げる。

「まさか、貴女にもご助勢頂けるなんて……!」
「えぇ、まさかあなたと共闘することになるとは……!」

 その名を、2人は呼ぶ。

「「オウガ・オリジンさん……いえ、『はじまりのアリス』さん!!」」

 闇よりも深い漆黒に覆われた肌の上から、青のエプロンドレスを纏った少女。そう、彼女こそが、友を渇望しながら骸の海へと散った、原初のオウガことオウガ・オリジン……またの名を、はじまりのアリス──アリス・オリジン。

「……大丈夫?」

 オリジンは2人に向き直ると、彼女たちを気遣って声をかける。その声音には、かつてオブリビオン・フォーミュラとして敵対した当初の尊大さも、最期を迎える前に見せた精神の不安定さも感じさせない。まるで、どこにでもいるような普通の少女かのように思えた。

 だが、やはりオリジンにはどこかぎこちない様子がある。また拒絶されてしまうのでは、という不安が残っていたのだ。

「……全く、お前さん達は面倒だねェ」

 そこへふらりと姿を現したのは、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)。

「逢真さん……?」
「折角の派手なお祭りなンだァ、辛気臭ェのはナシにしようやお嬢ちゃん方。大方、喧嘩別れしたからお互い顔を合わせ辛ェ、ってェとこだろ?」
「うっ……」
「それは……まぁ、そうね……」

 逢真の指摘に、気まずそうに顔を反らす3人の少女。その様子を見て、逢真はただ笑う。

「なァ、今から友達になればいいじゃねェか。ひ、ひ。ンで、今からちょっくら友達同士で世界を救おうぜ。今度こそみィんなから最高尊いって言われようや」

 簡単なことじゃないか、と逢真は言う。彼の言葉は、3人の背中を強く押すように、各々の心に響いた。

「アリス・オリジンさん」
「は、はいっ」

 口火を切ったのはアリスだった。オリジンは思わず声を上ずらせて返事をする。

「私と……今から、お友達になりませんか?」
「……うんっ」

 彼女の表情は闇よりも深い漆黒に覆われて見えなかったが、アリスはその時、オリジンが確かに、花が咲くような満面の笑顔を浮かべていたと確信する。

「私も、貴方のお友達になってもいいですか?」
「うん……うんっ……!」

 シャルロッテも、アリス・オリジンと友達になりたいと告げる。オリジンはその言葉に感極まり、声を上ずらせた。

 シャルロッテも、確信していた。オリジンが、目尻に涙を浮かべながらも、華やかな笑顔を見せていたことを。

 ここに、2人の猟兵と1人のオブリビオン・フォーミュラは、かつてのわだかまりを乗り越え、3人の友達となったのである。

「さァて……そんじゃァいっちょ、世界を救いに行きますかァ」

 ぽん、と手を叩いて、逢真は吹き飛ばされた大祓骸魂を指し示す。まだ大祓骸魂は立ち上がるだけの気力を残していた。アリス、シャルロッテ、オリジンの3人も身構える。

「おのれ……長きにわたる私の愛に……たった今生まれたばかりの友情で立ち向かうと……!」

 その言葉に、オリジンは首を振った。

「たった今、生まれたばかりでも、わたしにとっては大事な友達なの!! だから……わたしの友達は、絶対にわたしが守る!!」

 オリジンは力強く宣言する。友を得たことが、彼女にさらに力を与えていた。

「それなら、貴女は私たちが守ります」
「さぁ、行きましょう……一緒に!!」

 アリスとシャルロッテもその傍に並び立ち、3人は地を蹴って駆け出した。

「骸魂妖怪たちよ、我が盾となれ!!」
「させませんっ!」

 大祓骸魂がけしかける骸魂妖怪たちを、アリスが結界を張って食い止める。そこに加わるのはオリジンの現実改変だ。

「皆が骸魂を飲み込んだという現実そのものを、無かったことにすれば……!」

 オリジンの力によって、たちまち、骸魂妖怪たちから骸魂が抜けていき、妖怪たちは気を失ってその場に折り重なるように倒れた。アリスの結界に守られているため、彼らには危害が及ばない。

「これでもう、貴女を守るものはなにも無い!!」
「雑兵を止めたところで、私自身はまだ戦える……!」

 大祓骸魂は、地面に懐刀を突き立てる。そこから広がるのは狂気じみた愛を宿す彼岸花。それに触れてしまえば、ただでは済まないことをアリスとオリジンは直感的に把握する。

「ならば、空中に飛び立てばいい……!」

 真の姿を解放し、その肌に電子回路を纏わせたシャルロッテは空中へと飛び立つ。自身の全てを0と1で構成された電子情報へと変えたシャルロッテは、その身体を再構築すると、「虞知らず」をデータ化した攻勢プログラムを瞬時にコーディングして大祓骸魂に向けた対地攻撃を行う。

「いいねェ、盛り上がって来たねェ! ……っと、オリジン、こいつに乗りな」
「ありがとっ!」

 逢真は眷属の鳥を出してオリジンを乗せると、鳥に変じた自分自身と共に空中に逃れる。アリスも、翼で飛翔して彼岸花が咲き乱れようとする地面から離れた。

 いつの間にか、大祓骸魂が形成していた空間は縮小し、元のUDCアースの東京の夜空を取り戻そうとしている。その中を、4人は舞っていた。

「あァ、そうだオリジン、お前さん、毒茶扱ってたろ」
「うん? そうだけど、それが……っ、ちょっと今、何か思い出しかけ──」

 その時、オリジンは目の前の男がどこかで見覚えのあることを唐突に思い出す。

 ──おっとォこりゃ残念だなァ! というわけでコクのないエビチリの刑だオラッ
 ──だからそれわたしが作っtギャー後味ただ辛い!!

「あぁーっ! あの時色々お見舞いしてきた猟兵!! 貴方だった!!」

 迷宮災厄戦当時、美しい花に満たされた国で、逢真に毒茶を飲ませようとしてコテンパンに返り討ちに遭った記憶が蘇り、オリジンは思わず叫ぶ。

「ヒヒ、ようやく思い出したってェわけかい。ほら、水に流すんだろ。俺達友達じゃァないか」
「どさくさに紛れて……もうっ」

 思い返せば、あれも楽しい思い出だった、とオリジンは思い返し、ふっと笑う。

「いいわよ、タイミング合わせてあの彼岸花を毒茶で枯らせばいいのね」
「話が早くて助かるッてェもンだ。行くぜ、せーのっ!!」

 2羽の鳥が、羽根と毒茶を次々と投下して、彼岸花を枯らせていく。最早、大祓骸魂に打つ手は残っていなかった。

 戦況を逐次把握していたアリスは、ここが一斉攻撃のしどころであると皆に伝える。

「今です、皆さん、とどめを!」
「了解です!」
「行くよっ!」
「ヒヒ、任せなァ!!」

 病毒の塊が降り注ぎ、大祓骸魂を侵していく。そこに虞を殺す攻性プログラムの一斉射撃が加わり、弾丸の雨の中、オリジンとアリスがそれぞれナイフとヴォーパルソードを片手に斬りかかる。すれ違いざまの一閃、大祓骸魂はついに倒れ、そして。

 別戦線、オペレーション・キャリバーンを担当していた猟兵達より放たれた光の奔流の中に、大祓骸魂は飲み込まれていった。

 亡者たちは、共に戦った猟兵に見送られながら、それぞれ骸の海へと還っていく。アリス・オリジンも例外ではない。

「……友達って、いいものね」
「はい、友達として共に戦えて……良かったです」

 と、その時、シャルロッテが逢真がいないことに気づく。

「あれっ? 逢真さんは?」
「本当ですね、いつの間に帰っちゃったんでしょうか……」

 その推測通り、逢真は、一足先に戦場から離脱していたのだ。

「お嬢ちゃん達の邪魔しちゃァ悪ィだろ。あばよ、オリジン。楽しかったぜ」

 そんな言葉を呟きながら、彼はスカイツリーを背に夜の東京の街並みに消えていった。

「折角ですから見送っていけばよかったのに……」

 残念そうに逢真がさっきまでいた場所を見つめながら、シャルロッテはつぶやく。だが、すぐにオリジンに向き直ると、握手を交わした。

「……まだ、猟書家は残ってる。私はもう応援しか出来ないけど……気をつけてね」
「えぇ、オリジンさんが安心して眠れるようにします」

 アリスは、消えゆくオリジンと共に握手を交わしながら、この言葉で別れを告げた。

「私達、ずっと……ずっと、お友達ですよ」

 オリジンはその言葉に、頷くとともに。
 東京の夜空へと、光となって消えていくのであった。

 ──大祓百鬼夜行、プロジェクト・トライポッド、全作戦終了。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月06日


挿絵イラスト