大祓百鬼夜行㉕〜いざ尋常に、愛を賭して
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UDCアース・東京スカイツリー。
高さ634mを誇るその電波塔は世界で最も高い塔と称される。
展望台に登れば多くの町の、人の営みを一望できる観光スポットとしても人気だ。
そんなスカイツリーの展望台よりはるか上、最上部に設置されたゲイン塔で白無垢を着込む少女が眼下に広がる夜の街並みを静かに見つめていた。
「愛しきUDCアース。私は帰ってきました」
小さく呟いた幼き声に滲むのは切望。執念。――愛。
「あなたを思う、私の愛は揺るがない。だから、私は帰って来たのです」
少女が持つ小刀の握りしめる力が強まる。
――懐刀「生と死を繋ぐもの(ヤマラージャ・アイビー)」。この刀に触れれば何人たりとも、世界であろうと死から逃れることはできない。
時間はかかった。だが、あと一刺し。あと一刺しの愛を囁けば、愛しの存在は骸の海で永遠の存在となる。
「未来などいらない。あなたを永遠にできるのならば」
少女の周りに膨大な虞が纏わりつき、世界を歪める。
「――猟兵たちよ、止められますか。
電波塔の頂上であなたたちを待っています」
妖艶に笑い虞を纏う少女の姿は残酷で、美しかった。
――少女の名は究極妖怪『大祓骸魂』。世界を、UDCアースを愛する神。
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「ついに大祓骸魂へと続く道が開かれました」
山本五郎左衛門、しあわせな王子さま、碎輝、バズリトレンディ――4人の親分から託された思いが大祓骸魂の元へと繋がった。
ならばやることは一つしかないだろう。猟兵達の視線にチャーリー・ライドゴー(ぶらり自転車週末紀行・f03602)は頷く。
「大祓骸魂はUDCアースの東京スカイツリーのゲイン塔――展望台よりも高いてっぺんの部分ですね――にて待ち構えています。
究極妖怪と呼ばれるように力は今までの比ではありません。しかし、纏う虞の力のせいか私たちは最初から真の姿で戦うことができます」
攻撃方法は三つ。
オブリビオン化した妖怪達を操る攻撃。
懐刀「生と死を繋ぐもの」を複製し念動力で操作する技。
そして神智を超えた虞をぶつけ、回避しても戦闘力を高める力。
「今まで以上の激戦となるでしょう。ですが、ここまでこれたあなた達ならば彼女を倒すことができると確信しております。……ご武運を」
遭去
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遭去です。ついに大祓骸魂戦となります。最後まで頑張って執筆させていきますのでよろしくお願いします。
●プレイングボーナス
山本五郎左衛門、しあわせな王子さま、碎輝戦と同様のものとなります。
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プレイングボーナス…… 真の姿を晒して戦う(🔴は不要)
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第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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董・白
※アドリブや他猟兵との連携はOKです。
【心境】
「ついにここまできました。親分さんを始め多くの妖怪たちの決意。無駄にするわけにはいきません。全力で…いきます。」
【真の姿】
封魂符を心臓に格納し、生前の姿で領主時代の豪華絢爛過ぎる正装姿で戦います。
実は割と不敬なんですけど、当時はそのことも知らない無知な娘でした。
【行動】
道術で強化した結界術で攻撃を防ぎつつ、破魔の霊符を投擲します。
骸魂によってオブリビオン化した妖怪達…あなた達の尊厳も、守って見せます。
宝貝「番天印」による必殺の押印でぶん殴ります。
4人の親分さん達の思いを込めて、今必殺の一撃です!!
夜刀神・鏡介
此処に来るまで、多くの戦いを乗り越えてきた……
託された思いを無駄にしない為にも、全身全霊で相手をさせてもらおう
神刀の封印を解いて、黒い神気を解放。それを身に纏って真の姿へと姿を変える(IC参照)――神刀に憑く悪霊の力、それを敢えて解放する
強化された身体能力を使って大きく跳躍。そのまま落下の勢いで大地に刀を突き立てる――肆の秘剣【黒衝閃】
その衝撃波で妖怪たちを吹き飛ばしてから大祓骸魂への道を拓いて一気に接近
大祓骸魂の攻撃を刀で受け流して機を伺い、隙をみつけて思いっきり空中に跳ね上げる。それを追いかけるように自身も跳躍して、再度【黒衝閃】
今度は大祓骸魂を刀で穿き、そのまま地面に叩きつける
月夜・玲
ふふん、激戦上等!
身勝手な愛を語るなんて傲慢が過ぎるね
ま、人の事は言えないかもしれないけどね
大祓骸魂もUDCみたいなもんと考えれば、私の研究材料だしね
さあ、踊ろうか!
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外装解凍
模造神器、リミット解除
さてと、四刀流で押し通る!
【Code:B.T】起動
4つ剣で近寄って来た妖怪達の手と足に斬撃を与えて操作
他の妖怪を押し倒したり、足を引っ掛けたりして転ばせて隊列を崩すし邪魔をさせて道を切り開く!
目には目を、操る力には操る力を
更に剣で『なぎ払い』、『斬撃波』を発生させて『吹き飛ばし』てしまおう!
大祓骸魂に接近出来たら『串刺し』にして攻撃
そして刺した部分に雷を流して爆破!
厄介な技ばかり使って!
お返しだよ!
久遠寺・遥翔
【真の姿で戦う】
この世界は俺の愛する人が暮らす世界だ
身勝手な愛で永遠になんてさせるものか
イグニシオンに【騎乗】
真の姿となりUCを起動
装甲を犠牲に攻撃特化の形態をとる
【戦闘知識】による予測を【視力】による観測と【第六感】で補正した心眼で敵軍の動きを【見切り】
【残像】を織り交ぜて回避
避けきれない部分は【オーラ防御】を【結界術】でコーティングした多重防御壁で受け薄い装甲を補いつつ
被ダメージは結界で受けた敵の攻撃から【生命力吸収】で回復
【空中戦】で碧き劫焔を纏った両掌による【斬撃波】【範囲攻撃】でその統率を乱つつ骸魂だけを【焼却】していくぜ
数が減り弱体化したら本体を焔の太刀で断ち切る
さよならだ
空亡・劔
最後まであたしは言い続ける
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての大異変とは生意気よ!
真の姿
赤き太陽を背にした姿
それは百鬼夜行の…
神殺しの魔王発現
この力の高まりこそがあんたの恐ろしさ
だからあんたを止める
【戦闘知識】で敵の動きと妖怪達の陣形の把握
【天候操作】で猛吹雪を発生させ視界も乱し妖怪の集合を妨害
更に【結界術】で結界を作り更に分断
超高速で飛び回りながら攻撃は【見切り】
【残像】を残して回避し避けきれない時は【念動力】による障壁で致命避
【属性攻撃】で氷属性を武器に付与しつつ氷弾で【弾幕】展開し動きを止め
二刀による【2回攻撃】で神をも殺す【切断】
撃破後
【天候操作】で太陽を昇らせる
百鬼夜行の終焉よ
ベルナデット・デメジエール
真の姿:
肌は亡者のごとく蒼褪め、
背に蝙蝠の翼を生やした吸血鬼と呼ぶに相応しい姿
確かに誰を好こうと貴女の自由。
ですが貴女の愛するUDCアースは、そこに住まう人間やわたくし達にとっても掛け替えのないもの。
それを身勝手にも手に掛けようなど、到底許される事ではなくてよ!
究極の妖怪だか知りませんが、わたくしが成敗して差し上げますわ!
膨大な虞は【オーラ防御】の魔術にて幾らかでも軽減しましょう
更に【目潰し】の赤い霧で視界を奪った上でUCを展開。
大祓を【串刺し】にして動きを止めたら、その首筋に牙を立てて【吸血】と【生命力吸収】させてもらいますわ。
貴女がここで斃れても、我が血肉となる…悪くない話でしょう?
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スカイツリー、ゲイン塔。地上より600m以上離れるこの場所は絶え間なく風が吹き抜けていく。
少女、大祓骸魂は絶えず笑みを浮かべる。その表情だけでも圧倒的なプレッシャーを放っていた。
「ついにここまできました。親分さんを始め多くの妖怪たちの決意。無駄にするわけにはいきません」
董・白(尸解仙・f33242)は封魂符を胸の位置に置くと封魂符は見る見るうちに心臓へと取り込まれる。心臓を中心にして肌の色が明るさを取り戻していくと同時に、身に纏う服も変わり青から黒に。金の糸で装飾され黒を基調とした豪奢な服へと変わっていく。
「此処に来るまで、多くの戦いを乗り越えてきた……
託された思いを無駄にしないためにも、全身全霊で相手をさせてもらおう」
神刀の封印を解き、刀から溢れ出る神気を纏い姿を変えたのは夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)。穏やかな表情はなりを潜め、赤い瞳が大祓骸魂を真っ直ぐと見る。
「この世界は俺の愛する人が暮らす世界だ。身勝手な愛で永遠になんてさせるものか」
『面白い事を言う人。身勝手ではない愛どこにあるの?』
久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)の言葉に大祓骸魂は表情一つ変えずに答える。
「確かに誰を好こうと貴女の自由。ですが貴女の愛するUDCアースは、そこに住まう人間やわたくし達にとっても掛け替えのないもの。それを身勝手にも手に掛けようなど、到底許される事ではなくてよ!」
ベルナデット・デメジエール(孤高なる夜の女王(自称)・f28172)が人差し指を突き立てた。
「身勝手な愛を語るなんて傲慢が過ぎるね。ま、人の事は言えないかもしれないけどね」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)が肩をすくめながら外装解凍し模造神器のリミットを解除していく。
突如ゲイン塔の一角で赤いオーラが放たれた。
「この力の高まりこそがあんたの恐ろしさ。だからあんたを止める」
短い言葉を紡ぎ剣を構える空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)。彼女が発するオーラは相対する敵の人類や世界を滅ぼす危険度が高ければ高いほど強くなる。
だからこそ、邪神の一柱であり、この世界を滅ぼさんとする大祓骸魂の力は恐ろしく高いのだと、彼女は分かったのだ。
『私を、私の愛を止めることができますか?』
大祓骸魂の笑みが深くなる。突如、彼女の周辺の虚空が割れ、何かがぼたぼたと落ちてくる。それは彼女の虞を、否、愛を纏い狂った妖怪たちの姿。粘度がある黒い液を纏いながらそれらは立ち上がるとそれぞれで不協和音を奏で始める。
「止めてみせる……」
猟兵達はそれぞれの得物を握りしめ、ゲイン塔の上を駆けだした。
――深夜二時のスカイツリー。誰も知らない、二つの世界をかけた戦いが始まった。
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真の姿を取った猟兵達が百鬼夜行の妖怪たちへと一撃を叩き込んだ。
一閃が、魔法が、打撃音が響き渡った。
が、その攻撃を喰らっても骸魂たちは倒れることなく、お返しとばかりに得物を猟兵達へと振るう。
(「固い
……!」)
大祓骸魂へ攻撃をするには周りにいる骸魂への対処は必要不可欠。しかし敵がとにかく強く、固い。
『どうしますか? ここで諦めます?』
「冗談、こんなに早くパーティを辞退するほど私たちはヤワじゃないですわ」
骸魂の中心から大祓骸魂が大量の虞を猟兵へと放つとベルナデットが展開した魔術で防ぐ。
「固いのならば無理に倒す必要はないわ!」
「ああ、退けるだけでいい!」
劔が天候を操り、超局所的な猛吹雪を吹かせる。
それと同時にオブリビオン・イグニスに乗った遥翔が空を駆けた。
空中を飛ぶ遥翔に対して骸魂は呪いを放つも難なく避けると百鬼夜行の妖怪たち数を把握していく。
「SYSTEM-IGNIS起動! 数は二十、三十……よしっ燃やすぜ!」
遥翔は、イグニスは正拳突きを繰り出すと碧き劫焔を纏った両掌から炎が衝撃波となり敵を包み込んでいく!
「敵が固い? ふふん、上等!」
敵が遥翔へと意識を向けた隙を突き、玲が4つの閃光をもって骸魂の中へと突っ込んでいく。
目の前の唐傘お化けの足を引っかけると、唐傘お化けは横にいた座敷童を巻き込んで転倒。隊列が乱れたところに衝撃波を纏った薙ぎ払いで吹き飛ばす!
『押さナいで!』『どうなってイるの!?』『痛イ!』
辺りは猛吹雪で視野が狭く、そして狭い戦場で一度ハプニングがあれば陣形が崩れるのはとても速かった。
「雑魚は散らした! あとは任せたぞ!」
玲の声に押される様に鏡介が走る。倒れる妖怪たちの合間をすり抜け、大祓骸魂へと接近していく。
「覚悟……!」
『一人で私をどうにかできると? 甘く見られたものね』
真っ直ぐに向かってくる鏡介へ大祓骸魂は懐刀をとりだす。
――懐刀「生と死を繋ぐもの」。鈍とはいえ時間をかけて何回もさせれば誰でもなんでも殺す妖刀。
懐刀が2本、4本、8本――無数に数を増すと鏡介目掛けて襲い掛かる。
鏡介を亡き者にするべく走る刀を弾き、軌道を変え――それでも鏡介は真っ直ぐに大祓骸魂の元へ走っていく!
「あなたの相手は鏡介さんだけじゃないわ」
言葉と共に大祓骸魂は肩部に小さな痛みを覚えた。
振り向くとそこにはベルナッドが大祓骸魂の首筋へと噛みつき、少女の血を吸い上げていた。
「ごちそうさま。貴女がここで斃れても、我が血肉となる…悪くない話でしょう」
大祓骸魂が振り向き様にベルナデットを振り払うも彼女はあっさりと離れる。
肌は亡者のごとく蒼褪め、背に蝙蝠の翼を生やした真の姿。口元を赤く染め笑うベルナデットはまさに吸血鬼と呼ぶにふさわしい、おぞましくも美しい姿だ。
「肆の秘剣【黒衝閃】――」
その声が聞こえた瞬間には、大祓骸魂の小さな体は上にと跳ね上げられていた。
跳ね上げた鏡介も跳躍し、大祓骸魂より高い位置に着く。
「神刀解放。剛刃に依って地を穿つ!」
神刀【無仭】が煌めく。森羅万象ことごとくを斬る刃が閃き、大祓骸魂を地面へと叩きつけた!
「妖怪の皆さん、待っていてください。……あなた達の尊厳も、守って見せます」
鏡介の上空より飛来するは自身より多きなハンコを持った白。
「4人の親分さん達の思いを込めて、今必殺の一撃です!!……宝貝「番天印」!!」
見る力を、道を見出す力を、成長する力を、祓う力を。彼女が全ての親分から、妖怪たちから託された力と思いを込め、白の一撃が叩き込まれる!
『まだよ、まだこんなものでは私の愛は抑えられない……!』
傷つき、立ち上がる大祓骸魂。しかし今度は玲の黒い刃が彼女の腹を刺し穿つ。
「疑神の雷、その身に直接叩き込んであげる……厄介な技ばかり使って! お返しだよ!」
黒い刃が青白く発光すると膨大な雷が大祓骸魂へと注ぎ込まれてた!
疑神の雷が、邪神の体を蝕み焼いていく。
『――ッ!』
虞を纏いながら刃から逃れ、雷の手から逃れる。
先ほどまで真っ白だった装束は赤く染まり、黒く焼き焦げている。
自身が呼び出した百鬼夜行も壊滅した圧倒的な不利。
それでも彼女は膝を折らなかった。愛のため。愛を賭してここにいるのだから。
「俺はこの世界で生まれた。人並みにはこの世界を愛している。が、世界を滅ぼすつもりも権利もない。
お前が愛をもって世界を滅ぼすと言うならば俺も身勝手に愛を貫き、お前の愛を貫かせはしない!」
遥翔の咆哮と共に、白きクロムキャバリアが持つ漆黒の刀身が炎を放ち、大祓骸魂の体に一閃が放たれる!
「そうよ、そしてあんたに言いたいことがあるわ……この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いての大異変とは生意気よ!」
凍てつく赤き太陽を背にした劔が風を従え大祓骸魂の懐へ突撃する。
「我が身、我が存在…今こそ、その意義を果たす時!我が名は空亡剱!世界の脅威を滅ぼす者なり!!」
紅と白い閃光が交差する。それは神をも殺す一撃。
『そんな……』
6人の攻撃を受け、大祓骸魂はついに膝をついた。
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『ああ、あと少しだったのに』
決着はついた。猟兵はついに究極妖怪『大祓骸魂』を討ったのだ。
大祓骸魂の体が徐々に崩れていく。
――突如視界が明るくなった。
「朝……」
白の呟き通り、そこには水平線の向こうから日が顔を出そうとしていた。
「私の魔法を使うべくもなく昇ったのね」
劔がやれやれと肩をすくめる。
暗い夜を裂き、白い日が昇っていく。その光景を大祓骸魂はしばし間見つめていた。
『……私の愛しのUDCアース。いかにこの身が滅ぼされようと私の愛は揺るがない。
あなたがいらっしゃるのを骸の海で先に待っております』
そう言い残すと少女は朝日に溶けるように消えていった。
――朝焼け四時のスカイツリー。こうして誰も知らない、二つの世界をかけた戦いは幕を閉じたのだった。
成功
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