大祓百鬼夜行㉕〜Drag on Catastrophe
●忘却の空
――5月末日、東京スカイツリー周辺。
最初の異変はSNS上で観測された。あっという間に広げられ、そして消えた写真の数々。そのどれもが、分厚い雲で真っ二つにされた東京スカイツリーを映していた。
別に不思議な写真では無い。現に悪天候時のスカイツリーには、まるで天と地の境目の様な大きな雲が纏わりつく様を見て取れる。だが今回、一時的とは言えSNS上を席巻したその写真は、明らかに普通とは異なっていた。
その写真は、雲から上の空が夜の帳みたいに黒々と広がっていたのだ。
その写真は、忘れていた何かを思い出させるようで、そしてそれは――。
――同日、東京上空。
『ヴィトール1よりHQ、目標上空に到達。まるで季節外れのゲレンデの様だ』
『HQよりヴィトール1、それを余り直視するな。配達後ただちに帰投せよ』
東京の空を戦闘機が飛ぶ。パイロットの眼下の発達した雲は、人知を遥かに超えた現象だった。それは積乱雲というより真っ白な平らな大地……地獄の最下層めいた恐るべき何か。中心には飛び出した東京スカイツリーのゲイン塔と、あれは……。
『パイロットさん、任務ご苦労です。ここまでで大丈夫』
『……あ、ああ。うっかりしていたよ。何だか死んだおばあちゃんの声が……』
不意に聞こえた少女の声に狼狽えるパイロット。幸い計器類は正常――だが、自分の目に映るモノが徐々に姿形を変えて、認識が、意識が、ああ、キャノピーに映るあれは!
『HQよりヴィトール1、繰り返す。配達後ただちに帰投せよ! これ以上いけない!』
『そうです。あれは人の手に余るモノ……後はお任せを』
『……ロジャー。頼むぜ、お嬢さん。ヴィトール1、UDC's Away!』
飛翔する支援戦闘機が懸架した巨大な装置を投下して、落とされた蜘蛛の様な装置がその脚を広げ着地――機械の中心で、鋼鉄を纏った少女が身体を起こす。
『UDC-P-CAREER、イグニッション。ミッションスタート』
あの怪異は、こちらにいてはいけないモノだ。かつて怪異だった少女は意を決し、託された願いを解き放つ。背負った巨大なパラボラ砲を正面のタワーに向けて、照準。
『ヒートプロジェクター最大展張。超常光線砲、照射!』
拡がるプラズマ――それが、最後の戦いの幕開けとなった。
「集まってくれてありがとう。とうとう最後の決戦だな」
グリモアベースは今回の戦争の決戦ともあってどこも忙しない。猟兵達へ一礼し、虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)はスクリーンに映った情報を説明する。
「敵は骸魂の元凶たる究極妖怪にして、UDCアースの大いなる邪神――大祓骸魂」
白無垢めいた少女の姿をした怪異/妖怪/邪神。形はともあれ、災厄の元凶たる彼女の力は計り知れない。それを討伐する事が本作戦の最終目的だ。
「東京スカイツリー上層部のゲイン塔に出現した奴を倒してくれ。転移先はそのままスカイツリー上層部。変質した雲が足場となっているから、難しい事は考えなくていい」
スカイツリーの上層部は今や異界と化していた。カクリヨファンタズムそのものとなり、やがては世界を覆い尽くすという――その前に彼女を止める必要がある。
「あとUDC組織から新兵器が投入される。そいつが雑魚の相手をしてくれるから、協力して戦ってくれ」
続けて表示されたのはUDC――完成したアンリミテッド・ディヴァイン・キャリアーを装備したサイボーグの少女だった。虞を祓う人類の牙を携えて、組織も本格的に介入している。少なくとも、大祓骸魂が呼び出す骸魂の妖怪くらいは相手に出来るだろう。
「よろしく頼むぜ、皆」
共に戦い、二つの世界を守って欲しい――蜘蛛の巣状のゲートから寒風が吹きすさぶ。凍てついた幽世の如き世界を止める為に、猟兵達は出撃した。
ブラツ
ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を及ぼす、
特殊な戦争シナリオとなります。
本シナリオは「大祓百鬼夜行」最終決戦です。
以下の点に注意する事で、非常に有利な状況になります。
●プレイングボーナス……UDC-Pやエージェント達と協力して戦う。
本シナリオではUDC-P『REM』というサイボーグが支援してくれます。
彼女は以下の過去作で保護・共闘したUDC-Pです。
『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=15788』
『https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=34852』
●補足情報
大祓骸魂を救うことはできません。
●今回の注意事項
開始と同時にプレイングを募集します。
今回は最低限の採用で同時描写し、早期完結を目指します。
その為、全てのプレイングが採用出来ない場合がありますのでご注意ください。
募集締切りはタグにて告知いたします。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
祓戸・多喜
世界をぶっ壊すなんて冗談じゃないわよ!
真の邪神だか何だか知らないけどアタシが守るんだから!
…元気してるみたいねーREMちゃん。
本当は戦ってほしくないけど…戦場に来るなら頼りにしてるわよ!
後方からの支援射撃中心。
序盤はいい感じの場所探しつつある程度こっちが体勢整えるまで破魔の矢を乱射し攪乱。
狙撃に集中できそうになったらUC起動し本気の支援モードに。
ありったけの矢をオブリビオン達に撃ちまくってやるわ。
万一突破されたらREMちゃん迎撃お願いね!
出来るだけ射貫き尽くすけど!
REMちゃんの状態には注意に気を配り無理をさせないようにするわ。
大祓骸魂の姿見えたら最大の一矢で狙撃!
※アドリブ絡み等お任せ🐘
月夜・玲
へえ?
UDCの組織にも面白いのが居るじゃあない
人が作ったにしちゃあ、なかなかやるじゃん
まあ素直に援護はありがたいし頼りにさせて貰うよ
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【断章・不死鳥召喚〈超越進化〉】起動
不死鳥108体召喚
40体にREMの指示に従って行動するよう指示
そいつらこき使っちゃってよ
その代わり、背中は任せたよ!
私は残りと共に大祓骸魂の元に
悪いけど、速攻を決めさせて貰うよ!
不死鳥達を連続して突撃
全てを斬り裂く蒼炎の翼、その身に刻んであげる
私も『斬撃波』を放ち、大祓骸魂に攻撃する暇を与えない!
不死鳥と連携しながら距離を詰め、剣の間合いに入ったら『なぎ払い』攻撃!
中小路・楓椛
●
夜空の星が輝く陰で怪異(ワル)の笑いがコダマして――
他の猟兵の皆様が最前線で頑張ると思われますので、私はREMさんの直衛に。
【ばーざい】全技能行使、【神罰・呪詛・封印を解く・限界突破】併用でUC【とりにたてぃす】起動、神威召喚。電磁波出力制御子機「いるえうぃっく」を装備。
超常光線砲の前方に複数の子機で疑似的な円筒粒子加速器(コライダー)を空間に形成、子機を使い潰す前提で限界以上に威力を増幅させます。
REMさんに集る雑魚を【クロさん・谺・ろいがーのす】で適時処理しつつ雑魚の密度が高そうな所をREMさんと共に殲滅して廻ります。
――ダゴン焼き屋、呼ばれてなくても(黒幕の面を眺める為に)参上です。
トリテレイア・ゼロナイン
素敵なドレス…とは申し上げたくはありませんね
そのような物は出番が無いことが一番望ましいのですから
…士気に関わりますので私の装備についてはノーコメント願います
(UCを装備し飛翔)
さあ、参りましょう
貴女の日常と世界を護る為に
蜘蛛型CAREERとワイヤーアンカー用い合体
更なる機動性とグラビティキャノンで強化
砲撃地点へ素早く移動し乱れ撃ちスナイパー射撃でレーザー照準
重力波解放で百鬼夜行を拘束
超常光線砲で残らず一網打尽に
見えましたね、あれが大祓骸魂です
…彼女の哀しい愛を終わらせなくてはなりません
少々、突撃にお付き合いをば
近接戦こそ騎士の華ですので!
突撃大盾殴打で弾き飛ばしレーザーロック重力波解放
発射を!
森宮・陽太
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
これまたひっでぇ雲だな…
鐘の音が聞こえねえうちにケリつけっか
REMが百鬼夜行程度なら相手できるといっても
数で押し寄せられたらどうしようもねえ
指定UCを高速詠唱し獅子頭の悪魔サブナックを召喚
サブナックにはREMの護衛に専念させる
サブナック、その少女(REM)をあらゆる攻撃からかばい、全て我が身で受け止めろ!
特に懐刀は絶対に通すなよ!
俺はREMの射線を遮らぬ様に雲に身を隠しつつ大祓骸魂の下へ
懐刀は軌道を見切りつつ雲の濃い部分に紛れて回避
力を溜めながらREMの攻撃を待ち
REMの攻撃と同時に至近距離からランスチャージでぶち抜く!
サブナック、受け止めた懐刀をコピーし連射しろ!
カイム・クローバー
思ったより早い再会だな。これが秘密兵器U.D.Cってヤツかい?
兵器を軽く叩いてREMと話す。あの妖怪達は任せて大丈夫なのか?俺は彼らを一人も殺させる気は無い。骸の海に還るのはアイツだけで十分だ。
魔剣を顕現して大祓骸魂に向き直る。
『誰でも何でも殺すことが出来る』ってのはふかし過ぎだろ。それに――多分、俺は殺せねぇと思うぜ?…試してみるか?
【挑発】しつつ、念力で操作される懐刀の前で身体を差し出す【悪目立ち】。
身体のあちこちに刺さるが――UCを発動。内に潜む『邪神の俺』が死を遠ざける。紫雷の【属性攻撃】を身体に纏わせ、刺さった懐刀を無効化して【焼却】。
(肩を竦めて)ご自慢の懐刀だったろうに。悪ぃな?
ミハエラ・ジェシンスカ
●
成る程、数は多い
正しく百鬼夜行(ワイルドハント)というわけだ
だが、意思統一がされなければ烏合の衆に過ぎん
【催眠術】を広域照射【精神発破】
本来は騙し討ちに使うものだが、こういう使い方もある
骸魂の敵意を爆破し、眠る妖怪どもの意識を呼び起こす
さぁ、お前達が世界を滅ぼさせまいと欲するのなら抗え、叛逆しろ!
完全に自由を取り戻せずとも動きは鈍るだろう
であればREM達でも対処は可能な筈だ
この場は任せ、敵首魁撃破に向かう
愛なんぞ私にはわからん
あまつさえそれ故に殺すなぞ
だが、忠誠ゆえに叛いた私とて奴を嘲えはしまい
それが持って生まれた使命か
はたまた自ら抱いた夢かまでは知らないが
接近戦から隠し腕を展開【騙し討ち】
水鏡・多摘
成程、協力して戦うか。
…勝つ為に協力者に犠牲が出る事は論外、全て守り抜き我らの勝利でこの塔を飾り付けてやろうではないか。
…間違っても我の血で染めてしまわぬようにせぬとな。
REMを始めとした後衛の支援を行いつつ力を蓄える。
符に式神を降霊、周囲の大気から仙術で霊力を吸収させ結界を構築・維持する端末とする。
妖怪達が一直線に突撃できぬよう結界術で壁を作り足止め、空飛ぶ相手は祟り縄でしばいて落とす。
空中浮遊、機動で空を飛びつつUCで音属性のブレスを浄化、破魔の力を乗せて放ち妖怪達を拘束する。
波状攻撃を仕掛けて来た場合も符や縄で牽制しつつUCのブレスで大祓骸魂ごと迎撃してくれよう。
※アドリブ絡み等お任せ
クネウス・ウィギンシティ
※アドリブ&絡み歓迎
「来たるべき決戦、戦場は此処でしたか」
【POW】
●戦闘・UC対策
「REM、妖怪の相手は任せました」
背中を任せるに足る以上、自分は攻撃準備に努めます。
ダメージ覚悟で自身を固定砲台とします、多少のダメージは自身の装甲の【盾受け】で受ける狙いです。
「GEAR:OD BUSTER CANON。オド・エネルギー周辺領域からチャージ開始」
妖怪はREMに任せ、「アームドフォート」の【エネルギー充填】。
妖怪達が大祓骸魂の元に集まる所を狙い(【スナイパー】)、収束させギリギリまでチャージしたバスターキャノンを【砲撃】する狙いです。
「充填完了、シュート!」
陽向・理玖
妖怪達だけに頼りっきりって訳にはいかねぇよな
やっぱ自分達の世界は自分達で守んねぇとだよな
乗りかかった船だ
最後まで手伝わせてくれREM
それに
俺にとっても大事な世界だからな
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らし残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
REMが戦いやすいよう
UC起動し
適宜距離取り立ち回る
それにしてもすっげぇ武器だな!
めちゃくちゃ頼もしいぜ
呼ばれた妖怪任せていいか?
限界突破しスピード上げ向かって来る妖怪衝撃波で吹き飛ばしつつ接敵
廻し蹴りや足払いでなぎ払い
邪魔な奴はまとめて片付ける
あんたがどんなに恋い焦がれようとお断りだってよ
返して貰うぜ妖怪達も
蹴りの乱れ撃ち
●Earth Light
REMの放った光が有象無象を飲み込む度、大祓骸魂はより多くの名もなき妖の群れを虚空から呼び寄せた。白き偽りの大地を黒が埋め尽くしていく。
『……!』
不意に大地を抉り飛び掛かった妖が彼方より飛来した一矢に射貫かれる。あと僅か遅れれば、津波の様な大群に呑み込まれていただろう――矢の放たれた方を向いたREMはそこに見知った懐かしい姿を見た。
「……元気してるみたいねーREMちゃん。本当は戦ってほしくないけど」
踏み込みが大地を揺らして、巨大な象の戦士――祓戸・多喜(白象の射手・f21878)が鼻を上げて嘶く。
『多喜さん!』
「でも、戦場に来るなら頼りにしてるわよ! さあ!」
ぎりりと剛弓を引き絞り、再び獲物を視界に納める多喜。
「真の邪神だか何だか知らないけど、この世界はアタシが守るんだから!」
再び一閃が妖を薙ぎ倒していく。超常を込めた破壊の一撃は風を裂いて、パラボラ砲を背負って駆け回るREMの道を切り開く。
『ありがとうございます! 私も、チャージさえ終われば……』
「夜空の星が輝く陰で、怪異(ワル)の笑いがコダマして――」
ふと、調子の良い呪文のような言葉が響く。びゅうと冷たい風が吹いて――途端、煙を吹いて力を溜めるパラボラ砲が、紫電を纏い再び強大な力を取り戻した。
「邪神の始末……ええ、ダゴン焼き屋、呼ばれてなくても参上です」
『楓椛様!』
ゆらりと星が瞬けば、牙なき人の涙を背負って狐が吼える。中小路・楓椛(ダゴン焼き普及会代表・f29038)は手にしたあらゆる武装の力を解き放ち――『ばーざい』全技能行使、『とりにたてぃす』起動、神威召喚。電磁波出力制御子機『いるえうぃっく』装備――REMが背負うパラボラ砲に超常の力を重ね合わす。
「お行きなさい。幕引きは人の手で、ええ」
超常光線砲の前方に展開した複数の子機が疑似的な円筒粒子加速器を形成し、射線上に数多の妖の姿を捉える。妨害に殺到する小物は楓椛の誇る神器の数々が容赦なく屠り、道々には名もなき妖の死骸が積み上がっていった。
「クロさん、程々に。ろいがーのす、自動迎撃。谺……全力照射」
禍々しい光と共にキャバリアめいた異形の巨人が拳を振るい、飛来した猛禽めいた鋼の刃は這いまわる妖を真っ二つに裂いていく。
『これなら……エネルギー充填、120%』
「背中を任せるに足る以上……私は私の務めを果たしましょう」
声と共に大地が再び揺れて、漆黒の装備を纏った機械の戦士が顕現した。
『クネウス様! はい、私は大丈夫です!』
「来たるべき決戦、戦場は此処でしたか」
クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)は背負った長大な砲――星や生物が発する自然エネルギー『オド』を収集、放出する超常兵装『GEAR:OD BUSTER CANON』を展開して、照準に倒すべき敵、大祓骸魂の姿を納める。
「GEAR:OD BUSTER CANON。オド・エネルギー周辺領域からチャージ開始」
「邪魔はさせないよ!」
合わせて多喜の剛弓が冴える。其は障害を除くもの――ありったけの矢が妖を撃ち抜いて、砲を構える二人の周囲に絶対安全な狙撃ポイントを形成する。
「世界をぶっ壊すなんて冗談じゃないわよ! まだまだ新作のスイーツも沢山あるんだからね!」
『その通りです! だから……邪魔しないで!』
圧縮された光が空間を歪ませて、必滅の力が世界を震わせる。
「直衛はお任せを。二人とも――今です」
「充填完了、シュート!」
そして世界を震わせた力は光となって、再び全てを白く焼き尽くした。
放たれた光が、REMの超常光線砲が妖の群れを蹴散らして、クネウスのバスターキャノンが開かれた道を突き進み大祓骸魂に強烈な一撃を喰らわせる。苦悶の表情を浮かべた白無垢はしかし……あろう事か、新たな力を解き放った。
『まさか、巨大化……!』
姿形はそのままで、最初は近付いて来たのかと思った。だがレーダーが示す相対距離は変化なく……奴は、あの元凶は、自らの体躯を自在に操り更なる力を解き放っていたのだと無慈悲な計測結果を指し示した。
「成程、神智を越えた虞って奴?」
不意に涼やかな声が耳に入る。途端、REMの周囲に青々と燃え盛る無数の炎の鳥が渦を巻いて顕現した。
「UDCの組織にも面白いのが居るじゃあない。人が作ったにしちゃあ、なかなかやるじゃん」
それは月夜・玲(頂の探究者・f01605)の超常――不死鳥の姿を持つ力のヴィジョン。総勢108の炎の群れは猟兵達を守る様に、並居る妖を蹴散らしながら見事な陣を築き上げた。
「そいつらこき使っちゃってよ。その代わり――」
内、40程の炎の鳥がREMを守る様に円陣を組んで、残る鳥達が玲を守る様に突撃陣形を構築。狙うはただ一人、巨大化した大祓骸魂のみ。
「背中は任せる。頼りにさせてもらうよ!」
『承知しました……私も、続きます!』
瞬間、爆音と共に青き風が戦場を貫いた。まるで槍の穂先じみた巨大な炎の塊は一直線に戦場を駆け抜けて、海を割った様に妖が続々と焼き飛ばされていく。更に。
「これまたひっでぇ雲だな……鐘の音が聞こえねえうちにケリつけっか」
ゆらりと空が歪むと共に、今度は獅子頭の悪魔と人の姿が戦場に姿を現わした。
「数で押し寄せられたらどうしようもねえ。サブナック、その少女を守れ」
『……御意』
森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は濃紺色の槍を雲の大地に突き刺して朗々と指示を飛ばす。炎の鳥と共に悪魔が剛腕を振るい、近付く妖を千切っては投げ飛ばす。彼女が要ならばそれを守り通し――この戦いに勝利する。
「その少女をあらゆる攻撃からかばい、全て我が身で受け止めろ!」
『……御意!』
ブンと鉾を振り回し、大祓骸魂とREMの間に割って入るサブナック。それを見やり加速する陽太も一路、大妖の元へと駆け出した。時折振るわれる強大な衝撃――懐刀の一撃を躱しながら、弾ける雲海を盾にして前へ、前へ。
「名前通りおっかねえ一撃だ……絶対にこれを通すなよ!」
陽太の叫びに無言で頷くサブナック。放たれた無数の懐刀を盾で防ぎながら、前進を試みるREMを炎の鳥と共に援護する。そして。
『ありがとうございます。機は熟しました!』
パラボラ砲が再びエネルギーの充填を終えて、超常の加速器が光の砲身を形成する。火を噴くアウトリガーがREMの巨体を宙に舞わせると共に、戦線は大きく前へと進んだ。
「サブナック! 合わせて力を解き放て!」
陽太の叫びと共にサブナックが大きな盾を天に掲げる。途端、無数の刃が虚空より姿を現わして――超常の複製が殺到する妖の群れを続々と断ち伏せていった。悪魔は受けた攻撃を自らの力として解き放つ。その超常が勝利への道を切り開いたのだ。
「思ったより早い再会だな。これが秘密兵器U.D.Cってヤツかい?」
『カイムさん!?』
それは唐突に姿を現わした。ニヒルな声色と共にカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、まるでREMに寄り添う様にパラボラ砲を片手で小突く。
「相乗りして早々悪いが、あの妖怪達は任せて大丈夫なのか?」
『はい。道を開くだけならば……ですが』
REMの答えにニヤリと返し、カイムは黒光りする魔剣を抜き放つ。
「オーライ。それじゃあ俺は、アイツを骸の海に還すとしよう」
REMの巨大なアウトリガーを足場に、カイムは前線へと飛び出した。もう彼女は一人でも大丈夫だ――何より、頼れる仲間がこれだけいるのだから。
「だな。妖怪達だけに頼りっきりって訳にはいかねぇよ――やっぱ自分達の世界は自分達で守んねぇとだよな」
不意に爽やかな風が、少年の声が響く。カイムが飛び出した直後、REMの傍らには陽向・理玖(夏疾風・f22773)の姿があった。
「乗りかかった船だ。最後まで手伝わせてくれREM……それに」
龍珠を弾いてドライバーにセット。理玖が放つ虹色の光が視界を染め上げる。
「俺にとっても大事な世界だからな――変身ッ!」
『ありがとうございます、理玖さん! 道は、私が……!』
そして光が渦を巻いて、龍を模した青い装甲へと姿を変える。そして理玖は青き衝撃と化して、REMの前へと飛び出した。それに合わせてパラボラ砲がガクンと首をもたげながら、再び超常の光を解き放った。
「なんと……すっげぇ武器だな! めちゃくちゃ頼もしいぜ」
光と共に直進する理玖。前には既にカイムの姿が――後れをとるものかと更に加速した青き龍は、途端、もう一つの龍の姿を垣間見る。
「成程、協力して戦うか……勝つ為に協力者に犠牲が出る事は論外、全て守り抜き我らの勝利でこの塔を飾り付けてやろうではないか」
『これも、理玖さんの……』
「いや、たぶん違う」
コホン、と龍は――水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は咳払いをして言葉を続ける。かつてUDCアースで邪神達を滅ぼした竜神達の一柱は、世界をあるべき姿へと戻す為に最後の戦いへ馳せ参じたのだ。
「間違っても我の血で染めてしまわぬようにせぬとな。少年よ、少女よ」
バラリと空中に符が撒かれ、それが力ある壁と化す。仙術にして結界術――前進するREM達を守る様に放たれた多摘の結界は防壁となって、合わせて放たれた祟り縄が喧しく飛び回る妖をしばいて落とした。
「我も力を貸そう。共に世界を取り戻すのだ」
龍が吼える。虞を知る古強者は、今度こそ人々を護る為に。
「矢張り、敵の数は無尽蔵……ですが」
リチャージを済ませたクネウスは再び砲を大祓骸魂へと向ける。射線上に味方は無く、妨害する敵も無い。味方が抑えきれている今ならば砲火を届ける分には造作ない。だが、最大出力では次が最後の一撃となるだろう。故に。
「こちらもまだ、十二分に戦えます」
捉えた二つの識別信号は、クネウスに勝利を確信させるに足る。だからこそ、絶対に外す訳にはいかないと揺れる照星に思いを込めた。
『敵中枢へ到達……超常光線砲、照射準備……!』
レーダーに感。これは味方機――REMのメモリに浮かぶのは、見知った機械の戦士達の名前。
「素敵なドレス……とは申し上げたくはありませんね。そのような物は出番が無いことが一番望ましいのですから」
『でも、お姉ちゃんとお揃いです。大好きなドレスですから!』
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の気遣いを嬉しく思いながら、己の誇りを語るREM。見ればトリテレイア自身も、随分と仰々しい重武装に身を包んでいた。
「……士気に関わりますので私の装備についてはノーコメント願います」
「お前がそんなタマかよ。ところ変われば何とやら、だな」
呆れた口ぶりでミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)が続く。ウォーマシンたる者、それを恥じてどうするのだと言わんばかりに。
「成る程、数は多い。正しく百鬼夜行(ワイルドハント)というわけだ――だが」
宙を飛ぶ三者は眼下で暴れる妖の群れを見やり、ミハエラは口元を歪ませた。
「意思統一がされなければ烏合の衆に過ぎん」
「十二分に勝ち筋はあります。さあ、参りましょう」
マシンの吹く火がごうと燃え盛る。加速する巨重達はゲイン塔そのものに匹敵する巨大な大祓骸魂の懐へと飛び込んで、トリテレイアが朗々と宣告した。
「――貴女の日常と世界を護る為に」
大祓骸魂は足掻き続ける魂達を見やり首を傾げた。何故私の愛が届かぬのだろう。何故これらは邪魔をし続けるのだろう、と。この世界を殺せば一つになって、皆一緒に、永遠になれるというのに。
『……それが可愛らしい、愛しい所でもありましょうか』
「冗談。そいつはストーキング行為って言うんだぜ?」
知らないのか? と言わんばかりにカイムが挑発を。手にした魔剣で懐刀を叩き落としながら軽口を叩く。
「現代のルールならば完全に罪人よ。愛は押し売りするもんじゃないわ」
不死鳥の炎が妖を焼き焦がして、飛翔する玲が大祓骸魂の五体を舐める様に燃やしていく。
「そう言う訳だ。とっとと留置所へ帰んな……骸の海っつうな!」
力を込めた二振りの陽太の槍が彼女の膝を突く。ぐらりと、山の様な巨体が傾いて忌々しげに手を振った。
「だから、あんたがどんなに恋い焦がれようとお断りだってよ!」
すかさず疾風がその手を打ち払って――理玖の連打が彼女をその場に縫い止める。龍の闘気は重なり合って、更に大きな力を発揮した。
「暴れるな。ここは汝のあるべき場所では無い」
多摘が吼える。放たれた超常の吐息が項垂れた頭を押さえつけ、彼女は自由を失った。
分からない。本当に、分からない。ブンと懐刀を振り回し、子供が駄々をこねる様に暴れる大祓骸魂。その一撃を受け止めたのはカイム――無数の刃を自ら喰らい、超常が返す刃を虚空に描く。
「……ご自慢の懐刀だったろうに」
悪いな。そいつはもう俺のモンだ。反撃の刃が彼女の両手を雲の大地に押さえつける。痛い――繋がれた死が止めどなく己の内より溢れ出でて。
「返して貰うぜ――妖怪達も!」
跳躍する理玖の無数の蹴りが彼女の全身を穿つ。痛い――これは、何?
『痛い、わ』
「そうだろう。それが生きるという事だ」
悠久の痛みを乗り越えた多摘が宣う。痛みの無い生など、愛などこの世には無い。
『痛……ァァァァッ!!!!!!』
その痛みが、世界に激震を走らせた。
「愛なんぞ私にはわからん。あまつさえそれ故に殺すなぞ」
飛翔するミハエラはのたうつ大祓骸魂を見下ろして溜め息を吐いた。その震えに合わせて殺到する無数の妖はされど、統制を失い共に暴れ狂うまま。
「言ったろう、烏合の衆ども……それでも生き足掻くというならば」
言葉と共に念波が妖の身に浸透する。それはミハエラの扇動、心を揺るがす叛意の兆し。骸魂の敵意を爆破し、眠る妖怪どもの意識を呼び起こす超常。
「お前達が世界を滅ぼさせまいと欲するのなら抗え、叛逆しろ!」
途端、決壊したダムの様に妖が一斉に大祓骸魂の足元に殺到する。これで条件は整った――後は本命を叩き込むのみ。
「忠誠ゆえに叛いた私とて奴を嘲えはしまい――それが持って生まれた使命か、はたまた自ら抱いた夢かまでは知らないが」
センサが味方機の機動を捉える。まるで巨大な甲虫めいたその姿を見やり、ミハエラも共に加速した。
「見えましたね、あれが大祓骸魂です……彼女の哀しい愛を終わらせなくてはなりません」
『ええ。恨みはしません。ただ哀しいだけ……歪んだ愛が、哀しいだけです』
トリテレイアの超重装備とドッキングしたREMは、バイザー越しに巨大な大祓骸魂を見据える。二つの超常を重ね最大の威力を放てるようになった超常光線砲も、恐らくは次の一射で使い物にならなくなる。
『照準クリア。全システム連動――行けます』
「では、少々、突撃にお付き合いをば――近接戦こそ騎士の華ですので!」
飛翔する巨鉄塊は更に加速して、遂に大祓骸魂の真上へと飛び出した。
「データリンク。照準補正、タイミング同調――」
端末を手際良く叩くクネウスが静かに呟く。サブモニタ越しに見える敵は炎と妖に包まれて身動きが取れる状況では無い。
「これで最後、でしょうかね」
「であれば良いのですが」
ぼそりと言葉を漏らす楓椛に応えるクネウス。何度も乗り越えた世界最後の日だ。此度も決して、最後にはさせないと決意を秘めて。
『エネルギー充填……300%! 超常光線砲、最終照射シーケンスへ!』
パラボラ砲がまるで巨大な花の様に広がって、空間の歪みが大祓骸魂の全身を包む。檻の様に稲妻が迸り、不思議そうな顔を浮かべる彼女を見下ろしてREMが宣った。
『皆の明日を、護る為に――!』
言葉と共に、紡がれた超常の力が解き放たれる。同時に巨大な光の束が一直線に――クネウスのバスターキャノンが側方より彼女を貫いた。頼みの綱の懐刀はもう無い。手足を穿たれ攻撃を躱す事すらままならない。地に倒れた巨体は猟兵達の成すが儘に屠られていく。
「悪いがこれで終わりだ。骸の海へ帰るといい」
「指向性重力波、解放!」
そして無色の超重が――トリテレイアの超常が大祓骸魂の脳天に叩き付けられた。その隙に赤黒い光剣の刃が、ミハエラの捨て身の一撃が彼女の首を切り落とす。
『あ、あ――』
「ゴメンね! でも、愛してくれたこの世界は!」
きっと私達が大事にするから。ごろんと落ちた彼女の首を剛弓の一閃が射貫く。今を生きるものの願い、祈り――全てを込めた、多喜の一撃が、執着という過去を永遠に断ち切った。
『任務、完了――』
外装をパージして雲の大地に降り立ったREM。もう直ぐここも元に戻る――ゲイン塔のハッチから中に入れば地上へ戻る事は出来るだろう。
『愛、ですか……』
それが何であるか、今はまだ分からない。
遠くを見やる視線の先――真っ白な日の光が、ゆっくりと差していた。
それは変わりない日常を、祝福するかのように。
大成功
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