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大祓百鬼夜行㉕~虞姫大往生

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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 ――東京上空に広がっていく膨大な虞が、忘れられた幽世を蘇らせる。
(「愛しき世界、愛する世界。……ああ、」)
 今では失われてしまった、何処か郷愁を抱かせる風景が――泡沫のように生まれ、混ざり合い、そして音も無く弾けてまた生まれていく。
(「あなたを思う、私の愛は揺るがない」)
 渦を巻く虞の下、巨大な電波塔の天辺に立ち尽くしたまま、大祓骸魂と名づけられた妖しはうっとりと微笑み、少女の如くあどけない頬を朱に染めた。
(「……だから、私は帰って来たのです」)
 愛する為に。永遠にする為に。――あなたを、殺す為に。
 百鬼夜行を従え、生と死を繋ぎ、狂愛の彼岸花で満たして、この世界を骸の海まで送ってあげよう。
 鈍らの懐刀は、あとひと刺しで願いが叶うところまで来ている。だから、それは戯れのような問いであったのかも知れない。
(「猟兵たちよ、止められますか」)
 ――仰いだ空には雲の道。命がけで道を繋いで、此処まで自分を追ってきたもの達をも、過去と言う名の永遠に出来るのなら、なんと甘美なことだろうか。
 ああ、愛しい。愛しい愛しい。はやく――殺してしまいたい。
(「あなたを――あなたたちを、待っています」)

 いよいよ最終決戦の時が来たのだと、シーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)は厳かに告げ、UDCアースに向けて転送の準備に取り掛かる。
「決戦の舞台は、スカイツリー・ゲイン塔。其処に究極妖怪――大祓骸魂が居る」
 今まで蓄積された虞によって、東京上空にはカクリヨファンタズムの如き空間が広がっており――敵は、これまでの戦いで存在した『あらゆる手段』を用いて襲い掛かってくるのだと、彼は続ける。
「過去の思い出、追憶……そんなもので作られた幽世に相応しい決戦なのかも知れないが、それは此方だって同じことだ」
 ――つまり、此方も『あらゆる手段』で大祓骸魂に対抗することが出来るのだ。
 親分たちとの戦いのように真の姿を晒したり、仲間と連携したりも勿論、カードの弾幕を躱したりどこからか現れた子どもを救出するなど、冒険や日常の経験から体得したもので立ち向かっても良い。
「なんの手助けも無く、ただひたすらもがき苦しんで死ぬ……姿の見えない大祓骸魂との戦いは、或いはそんな結末を迎える筈だったのかも知れないが」
 しかし――助力を得て、猟兵たちは虞に対抗する術を得た。倒すべき敵を倒すべき存在として捉え、骸の海へと還す時が来たのだ。
「狂える愛は、世界にとって毒となる。……無慈悲に振り払うも、更なる狂気で立ち向かうも、皆の心のままに立ち向かってくれ」
 ――百鬼夜行も、そろそろ終幕となる。向こうが殺すのだと言うのなら、こう返してやるのも良いだろう。
「ならばお前も、死ぬがよい――とな」


柚烏
 柚烏と申します。こちらは『大祓百鬼夜行』の、『スカイツリー・ゲイン塔』のシナリオとなります。いよいよ、大祓骸魂との最終決戦となりますね!

●シナリオについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす特殊なシナリオとなります。なお、下記の内容に基づく行動をすると、ボーナスがついて有利になります。

 ※プレイングボーナス……(全ての戦場のプレイングボーナスから好きなものを選び、使用できます)

●シナリオの補足
 戦場のプレイングボーナスの詳細については、『大祓百鬼夜行』の説明を参考にしてください。なお、大祓骸魂を救うことはできません。

●プレイングにつきまして
 シナリオ公開がされたと同時に、プレイングを送って頂いて大丈夫です。完結を最優先に致しますので、今回は『成功判定以上の方6名様』で受付を締め切らせてください。内容に問題がなくても、人数を越えれば返金の可能性がありますので、ご了承のうえで参加頂けますと幸いです。

 カクリヨで一度やってみたかった弾幕系の戦闘、タイトルもそれっぽく、シューティングのようなスピード感が出せたらいいなと思っています。難易度は『やや難』ですが、ボーナスやユーベルコードを工夫して、最後にひと暴れしてみて下さい。それではよろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リア・ファル
(真の姿で戦う)
真の姿:SSWの戦艦(真の姿JCの戦艦)

全て過去にしてしまえば
終わりにして、今あるモノを永遠にすれば
悩み苦しむ必要はないだろう

だけど
理不尽に苛まれ、それでもなお
誰かの明日を願った、そんな想いが
ボクを創造したのだから

「機動戦艦ティルナノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!」

ヒトとモノの間に立つ者として告げよう
相互理解のないキミの愛は一方通行だ
世界に寄り添い生きる、それができてない

「多元干渉波動砲を使う! ターゲットロック!」
全力解析で、懐刀もまとめて、射線に入れる
(操縦、情報収集、砲撃、リミッター解除、推力移動)

【今を生きる誰かの明日のために】!


水鏡・多摘
…邪神、絶対に滅ぼさねば。
その想いは、愛は歪んでおる。歪んだ愛が世界を殺す前に我が終わらせよう。

これは虞をカード状にしておるのか。
刹那の間に思考し念動力で移動補助しつつ空中浮遊と空中機動で空中戦仕掛けつつ弾幕を回避。
撃ち落せるものには呪殺弾と破魔の力込めたブレスで迎撃しつつ回避できぬものはオーラと結界術で防御結界展開し防ぐ。
防戦一方では芸がない、UCで停止の呪詛込めた翼竜型式神を召喚しこちらの弾幕で切り開いた隙間を飛ばし大祓骸魂を狙わせる。
僅かにでも動きが止まったなら限界超えてありったけの魔力込めた停止の呪詛のブレスを叩き込んでやろう。

※アドリブ絡み等お任せ
ボーナスは"カードの弾幕に対処する"


ティオレンシア・シーディア
まったくもう…「愛」なんてハタめーわくなもので殺されたんじゃたまんないわねぇ。
「愛さえあれば許される」なんてのは幻想の最たるものだってのに。
…そう考えればある意味ものすごく「カクリヨらしい」のかしらねぇ。

「この戦争でやってきたことなら何でもあり」ねぇ。
…新し親分さんの時にはスペースの問題でできなかったけれどここなら問題なし。
建造費用は現代価値に直しておよそ3兆円(一説には15兆円)、強化するにも十分。
…うん、やらない理由はないわねぇ。
――お出でなさいな、


「戦艦大和」!


まあ、さすがに操縦はできないけれど上から落っことせば妨害程度にはなるでしょ。
その隙を縫って●轢殺最大戦速で○騎乗突撃かけるわぁ。



 ――愛しき世界、と彼の敵は言った。
 全てに忘れられた、大いなる邪神が一柱。神智を超えた虞にして、今は大祓骸魂の名を与えられしもの。
「……絶対に滅ぼさねば」
 東京のランドマーク――スカイツリーの最上部に君臨した、少女の如き姿の邪神を睨みつつ、水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)の肉体が神威を纏う。
 多摘は竜神だ。かつて地球に巣食う邪神を滅ぼしたものの、いつしか信仰が喪われて零落した神。
「その想いは、……愛は歪んでおる」
 吹き荒れる虞の中に、ふと彼の見知った――水底に沈んだ村が見えたような気もしたが、それも直ぐに知らない風景に塗り潰されて見えなくなった。
(「護れなかったもの。……ああ、そうだとも」)
 ――それでも今は、追憶に浸る時間は無い。荒ぶる神と化した多摘が、刹那のうちに空へ舞い上がっていけば、彼の行く手を遮るように虞が弾幕を成し、極彩色の花火となって夜空を彩る。
「……否。これは、無数のカードにしておるのか」
 それは見えざる闘技場で妖怪が操り出した、弾幕のカードのようなものらしい。大祓骸魂の放つその圧倒的な虞を、念動力で己の身を制御することで緻密に回避していく多摘であったが――高層建築の至るところで、着弾した虞が彼岸花に変わり、狂おしい赤で戦場を包み込んでいく。
「随分と、念の入った愛し方じゃが――」
「本当にね、まったくもう」
 そんな中、スカイツリーを射程に捉えた高層ビルの屋上では、赤に染まらぬ夜色の黒が、多摘に頷いて援護射撃を行っていた。
「重過ぎるのって、今どき流行んないし」
 ふんわり間延びした声が悪態を吐き、呪殺弾に合わせてグレネードを放つ。その酷く甘い響きに似合わぬほどの毒を、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は邪神に注いで、咲き乱れる彼岸花をげしげしと踏みつけていた。
「……『愛』なんてハタめーわくなもので殺されたんじゃ、たまんないわねぇ」
 そう言って、にこやかに微笑むティオレンシアだったが――細めた目の奥は笑っておらず、彼女は冷ややかな光を湛えたまま、百鬼夜行の群れへ銃口を向ける。
「『愛さえあれば許される』なんてのは、幻想の最たるものだってのに」
 ――酸いも甘いもかみ分けて、この世界で生きてきたティオレンシアだから、その危うさも知っている。まるで安酒のように酔って身を滅ぼすものの、何と多いことか。
「……そう考えれば、ある意味ものすごく『カクリヨらしい』のかしらねぇ。っと、」
「そうだね、悩み苦しむ必要はないだろう」
 ティオレンシアによって撃ち落とされた骸魂が、弾幕を巻き込んで消滅していく間にも、鈍らの剣雨はリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)の傍まで迫ってきていた。
「全て過去にしてしまえば。……終わりにして、今あるモノを永遠にすれば」
 ――ヤマラージャ・アイビー。『生と死を繋ぐもの』の名の通りに、時間をかければ誰であっても殺すことが出来る懐刀。緩慢に、それでも確実に訪れる死は、リアの渡ってきた宇宙そのものにも、いずれ到達するのかも知れないが。
「だけど――理不尽に苛まれ、それでもなお」
 滅びし人類の創造した精霊が、虚数空間にアクセスを行い、砂粒の如き可能性の中から『希望』を見出していく。
「誰かの明日を願った、そんな想いが。……ボクを創造したのだから!」
 直後、リアの輪郭を形づくるレイヤーが、高速で書き換えられていく。彼女のスペックを完全に無視した、あり得ない量のデータが送られ、それすらも完璧に処理して世界に現出させる。
「機動戦艦ティルナノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!」
 ――銀河の果てで消滅する筈だった、リアの母艦。それが現代の東京上空に姿を現すと、迫り来る『生と死を繋ぐもの』をなぎ払うように、光の剣が一閃した。
「……ヒトとモノの間に立つ者として告げよう。相互理解のないキミの愛は、一方通行だ」
「ああ、歪んだ愛が世界を殺す前に――我が終わらせよう」
 なおもスカイツリーの上空では、虞の渦が彼岸花を咲かせようと荒れ狂っているようだった。しかしそれも、宙を翔ける多摘が破魔のブレスをひと吹きすれば、忽ち枯れるようにして霧散していく。
「それに……『この戦争でやってきたことなら何でもあり』だって言うのなら。あたしも、やってみたかった事があるのよねぇ」
 その一方で――巨大戦艦と一体化したリアを、羨ましそうに見ているティオレンシアはと言えば、新し親分との対決を思い返しつつ、意味ありげな笑みを浮かべているようで。
(「あの時は、スペースの問題でできなかったけれど……ここなら問題なし」)
 無尽蔵にお金が湧き出す御殿にて、バブルの狂騒に浮かれ騒ぎ、金を使って使って使いまくる。その建築費用は、現代価値に直しておよそ3兆円(一説には15兆円)――とくれば、彼女にやらない理由はない。
「さぁ、――お出でなさいな、」
 ――直後。魔法のように東京上空に出現したのは、全長263メートルの超弩級戦艦。それは浮沈艦と呼ばれつつも海に消えた、悲劇の艦だった。

「『戦艦大和』!!! ……まあ、流石に操縦はできないけれど」

 それでも上から落っことせば、妨害程度にはなるでしょうと。気楽に呟いたティオレンシアは、百鬼夜行を巻き込みながら、大祓骸魂へ向けて轢殺のハンドルを切っていった。
「……キミは。世界に寄り添い生きる、それができてない」
 宙を舞う刀も迫る弾幕も、全部纏めて射線に入れようと解析を行うリアに続き、眷属竜の夜行を操るのは多摘だった。弾幕の隙間を縫って式神を飛ばし、ほんの僅かでも敵の動きを止めてやる――その隙に、限界を超えた魔力でブレスを吐き出し、停止の呪詛で望む永遠をくれてやろう――!
「我が恨み、報いを知れ……!」
「多元干渉波動砲を使う! ターゲットロック!」
 ――完全に硬直した大祓骸魂の目の前で、超破壊力を秘めたリアの主砲が、真昼のような光を放って空を貫いていった。

「今を生きる誰かの明日のために――この一撃よ、明日に届け!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

臥龍岡・群青
ああ、ああ!
わしもずっと貴様を恋い焦がれておった
大いなる邪神をこの手で殺せる時をずっと待ち侘びていた!
必ず殺してやろう、大祓骸魂!!

相手の呼び出すオブリビオンの大群に加え『かぐや姫の大群にも対処』しなければならんな
それならわしの得意技の出番だ

オブリビオンが到来するより早く大祓骸魂との距離を詰める
大祓骸魂、飛び込む妖怪にかぐや姫に対し、わしが出す答えは一つ
全てを押し流す暴力を――荒ぶる波の一撃で全て押し流す!

討ち漏らした相手も逃してなるか
荒ぶる神の身体を以て残った敵も切り裂くぞ
そしてこの刃は大祓骸魂にも叩き込む!

百鬼夜行も一人では成り立たないだろう
虚しく骸の海へ還るがいい
寂しく永遠を謳歌していろ


陽向・理玖
あんたが焦がれるその世界は
俺が猟兵になって縁を貰った世界
大好きな仲間がいるかけがえのない世界
そして
その世界をも守る為にこの世界のみんなは
我が身を顧みずに戦ってくれた

彼らを
仲間を信じてる
覚悟決め

変身し衝撃波前方へ目晦まし
残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る

連携意識し
遠距離戦得意な仲間の邪魔にならぬ様
ヒット&アウェイ

仮に俺が倒せなくても
仲間の誰かが決めてくれる
なら俺は少しでも道を切り開くッ!
集まる妖怪達を衝撃波で範囲広げてなぎ払い
届かせる!

死者は決して戻らない
生と死は決して繋がらない
あんたの思い通りにはさせない
動き見切り妖怪同士ぶつけ数減らし懐に肉薄しUC
けど俺は忘れない
絶対
拳の乱れ撃ち



 ゆっくり墜落していく戦艦のシルエットが、高層ビルに重なろうとした瞬間、無数の光に変わったそれは空へと舞い上がっていく。
 だが、ひとつの追想が終わったのだと胸を撫でおろすよりも早く、新たな幽世の風景が戦場を埋め尽くしていた。
「……来るか」
 ――光の欠片は、出鱈目に輝く竹林に。その竹の節からは続々と、光るかぐや姫の群れが現れて百鬼夜行に加わっていく。
「ああ、ああ!」
 スカイツリーの最上階までひとっ飛びに駆け上がる、その時間さえも惜しいと言わんばかりに――狂喜に満ちた臥龍岡・群青(狂瀾怒濤・f30803)の声が、唸りをあげる風に煽られて荒波の如く轟いた。
「わしもずっと、……貴様を、恋い焦がれておった」
 全てを抱み込む筈の穏やかな海は、今や大時化となり荒々しく牙を剥いている。もどかしげに塔体へ爪を突き立て、荒ぶる神の本性を露わにした群青は、ゲイン塔で待ち受ける大祓骸魂に向かい、波飛沫を叩きつけながらも咆哮した。
「大いなる邪神をこの手で殺せる時を、ずっと待ち侘びていた!」
 ――嘗て地球の邪神を滅ぼした、強き竜の血が沸騰している。同胞からも手を焼かれた、狂暴な奔濤で全てを押し流してやろうと、群青の手のひらから溢れた海水が夜空に舞う。
「必ず殺してやろう、大祓骸魂!!」
「――まぁ」
 竜神との戦に頬を染めつつも、邪神の娘は更に妖しを呼び集め、百鬼夜行を膨れ上がらせていく。先ほどの一撃で、かぐや姫の大群はだいぶ消し飛んでしまったようだったが――数の優位は揺るがない。
「あなたも、過去に。……永遠となってくださいますか」
 愛を乞うように大祓骸魂の唇が震えて、『生と死を繋ぐもの』をなぞる指先に、微かな紅が伝う。時間をかければ何でも殺せるのだと言う懐刀に、増幅した力を這わせていく虞神であったが――其処で、群青とは別の方向から衝撃波が起こって、百鬼夜行の群れが一気に散らされていった。
「あんたが焦がれるその世界は、俺が猟兵になって縁を貰った世界――」
 ――目晦ましの光が、瞼の裏までをも焼き尽くす中。残像を纏った、陽向・理玖(夏疾風・f22773)が一気に距離を詰めると、禍々しい力を纏う剣もろ共、大祓骸魂に向けて拳を叩きつける。
「大好きな仲間がいる、かけがえのない世界だ……!」
 地球と幽世。ふたつの世界を守る為、我が身を顧みずに戦ってくれたもの達がいて――そんな彼らの願いを受けて、理玖は決戦の地まで辿り着いたのだ。
(「彼らを、仲間を信じてる。だから――」)
 ――無限に成長する、最弱の竜神との戦いで得た力を意識しつつ、覚悟を決める。大波を操る群青と息を合わせ、彼女が全力で立ち向かえるように間合いを計る。
「そう、仮に俺が倒せなくても……仲間の誰かが決めてくれる!」
「任せておけ、わしの得意技を喰らわせてやるとしよう!」
 力技で押し切ろうと、なおも妖怪たちを差し向ける大祓骸魂に向けて、再び衝撃波を放った理玖だが――本命は、それでは無かった。ふたりの出した答えは、その目的は同じ――!

「俺は、少しでも道を切り開くッ! 届かせる!」
「全てを押し流す暴力を――荒ぶる波の一撃で全て押し流す!」

 ――大祓骸魂を、倒す!
 荒れ狂う群青の奔濤が、百鬼夜行も光る竹林も纏めて骸の海へ押し流していく中で、速度を上げた理玖が灰燼拳の乱打を叩き込み、大祓骸魂の肉体を破壊しつくしていく。
「……討ち漏らした相手も、逃してなるものか」
 全ての禍根を断ち切ってやろうと、鋭利な爪を一息に群青が振るえば、百鬼夜行の残党も忽ち斬り裂かれていき――やがて統制を失ったものは、その動きを上手く見切った理玖によって、同士討ちを誘われ消滅していったのだった。
「死者は決して戻らない、生と死は決して繋がらない。……あんたの思い通りには、させない」
 ――電波塔の天辺で身を守る虞も失って、力無く倒れ伏す大祓骸魂。長かった大祓百鬼夜行も、これでようやく終わろうとしているのだなと、暴れ尽くした感のある群青が溜息を吐いた。
「だが、百鬼夜行も一人では成り立たないだろう。虚しく骸の海へ還るがいい」
 寂しく永遠を謳歌していろ――続けた言葉に、荒ぶる神の身体が刃となって振り下ろされると、決別の拳を喰らわせた理玖が、平穏を取り戻した夜空を仰ぐ。
(「……けど、俺は忘れない」)

 ――絶対。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヲルガ・ヨハ
アドリブ可

愛し、いくさばを”おまえ”が駆る
われ懐くからくり人形が徒手空拳で
われは尾で薙ぎ、道拓く

嗚呼、同胞(はらから)よ
わすれられしものよ

【真の姿を晒す】

うら若き乙女の化生から
しなやかな銀の龍へと変ず
面紗で隠されしまなこから涙雨の降る
悪霊ゆえにこの身は崩れ
鱗とともにほろと消えゆく

わすれられ
わすれ
喰らい続けた末の
されど比翼たる”おまえ”だけ
霊体の内に匿い

【星火燎原】
浮かぶ追憶をもろとも喰らい
限界突破した神力で迎撃す

嗚呼、虞は避けまい
甘んじて受けよう

われはいくさがみであったらしい
ならば、いくさばに勝利を齎すが道理

『嗚呼、大祓骸魂よ
いとし強敵よ

われが
覚えていてやろう』

わすれるものか
なぁ、”おまえ”よ



 それは恐らく、いのちの終わりに啼き叫ぶと言う、鳥の歌のようなものであったのかも知れない。
(「愛しき世界、……永遠に、愛を。愛を、あいを」)
 どす黒い虞が白無垢を穢し、細い手足が土塊の如く崩れ落ちてもなお、大祓骸魂は世界へ愛を捧げながら、塔の天辺を彼岸花で埋め尽くしていく。
 ――それでも。星の如く地上に落ちてきた竜神が、白銀の髪をしゃらと鳴らして、邪神に問うた。
「愛しいか」
 狂気じみた愛が、ひとつ――またひとつ花ひらく中を、名も知れぬヒトガタが駆けて、その腕に抱いたあるじを護る。
「嗚呼、同胞(はらから)よ。わすれられしものよ」
 深紅に染まったいくさばで、月光を弾いて煌めくのは眩いほどの銀で。そのヲルガ・ヨハ(片破星・f31777)の尾が優雅にひと振りされると、足元の彼岸花が銀砂に変わって空へ散った。
(「……あと少し、あとひと刺しで叶うのに」)
 神智を越えた虞を、既に制御することも出来なくなった大祓骸魂が、血の涙を流しながらヲルガを睨みつける。その行く手に立ち塞がった彼岸花を、無造作に手折っていく下僕へそっと手を伸ばして、ヲルガは膨大な虞を避けること無く――その身で受けた。
「嗚呼……ならば、甘んじて受けよう」
 ――面紗越しにちらりと見えた、彼女の貌に宿っていたのは、歓喜であったか悲哀なのか。秘されたまなこからはらはらと、涙の雨が降れば忽ちその姿が変わっていく。
(「わすれられ、わすれ――」)
 うら若き乙女の化生を食い破るようにして、しなやかな銀の龍が生まれ、再構築されていく。だが、ヲルガはとうに悪霊となった身だ――溢れる神気は彼女の身を激しく灼き、ほろりと崩れた鱗が大祓骸魂と溶け合い、骸の海へ消えていった。
(「喰らい続けた末の、されど」)
 ――自らが生きる為に喰らい尽くした記憶では、傍らに佇むものの名さえ、もう定かでは無くなってしまったけれど。
(「……わらうか、おまえよ」)
 比翼たる『おまえ』に手を伸ばして、霊体の内に彼を匿い、浮かぶ追憶をもろとも喰らう。星火燎原の秘術によって竜神の神力を取り戻したヲルガが、いくさばに塒を巻きつけ、忘れられた邪神の墓標とする。
「そう……われは、いくさがみであったらしい」
 ならば、いくさばに勝利を齎すが道理であろう。指先で鮮烈な血化粧を施しながら、限界を超えた力を振るい――彼女を、骸の海まで送り届けてやろう。
『嗚呼、大祓骸魂よ。いとし強敵よ』
 ――狂い咲く花を踏みしだき、その愛に応えよう。
『われが、覚えていてやろう』
 燎原の火の如く燃え盛る、大祓骸魂のなきがらにそっと唇を寄せて、ヲルガは最期の別れを口ずさんだ。

(「わすれるものか――なぁ、”おまえ”よ」)

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月31日


挿絵イラスト