大祓百鬼夜行㉕〜滅びのための愛など要らぬ
●愛ゆえに
その女は、これ以上にないほど愛に満ちた瞳で世界を見つめていた。
「愛しきUDCアース」
睦言めいて口にし薄く微笑む。
「愛するUDCアース」
あなたを永遠にしたい。
「猟兵たちよ、止められますか」
電波塔の頂上で、あなたたちを待っています――。
●愛など要らぬ
「重い」
一言、花葉・倖香(妖狐の陰陽師・f18910)が言った。
「重い?」
「愛が重すぎる」
「ああ……」
愛するからこそ滅ぼしたいとか確かにちょっと愛が重い。
「ま、その愛ごと大祓骸魂(おおはらえむくろだま)を討ってきておくれ」
場所はUDCアースの東京スカイツリー、その最上部に設置された、アンテナが収納された高さ約140mの巨大構造物。それが「ゲイン塔」だ。
そのゲイン塔に「大祓骸魂」が現れ、その膨大な「虞(おそれ)」によって、東京上空を「カクリヨファンタズムが如き空間」に変化させ、今回の戦争に存在した「あらゆる手段」を行使して襲いかかってくる。
「そこでこちらもあらゆる手段で対抗するってわけさ」
たとえば、真の姿を晒す、他の猟兵と連携する、カード弾幕をかわす、どこからか現れた子供を救出する……などなど。
それは、今までこの大祓百鬼夜行で猟兵たちが乗り越えてきた戦いだ。
任せてくれとうなずく猟兵たちに、よくぞ言ったとノリノリで応えるグリモア猟兵。
「で、だ。スカイツリーを訪れていた客なんかがこいつに巻き込まれ、大祓骸魂が呼び出した妖怪たちに襲われちまう。直接ゲイン塔にいたわけじゃないけどね。あんたたちには、これに対応してもらいたい」
「一般人に被害を出すな、ということか」
「そういうこと。だけど全員でなし、何千何万人ってほどじゃあないから、ヘタを打たなきゃ大丈夫さ」
物分かりが早いねえ、とニコニコする倖香。
しかし、すっと目を細めた。
「……ああ、それと。大祓骸魂は救うことができない。だから心置きなくぶっ倒していいからね」
もっとも、ことここに至り手心を加えようと考える者はいないだろう。
気が済むまでぶっ倒してほしい。
「じゃあ、あとは任せたよ。気合入れて行ってきな」
グリモア猟兵は威勢よく激励すると、猟兵たちを送り出した。
鈴木リョウジ
こんにちは、鈴木です。
今回お届けするのは、愛。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●東京スカイツリー、ゲイン塔
東京スカイツリーに現れた大祓骸魂は、その膨大な「虞(おそれ)」によって、東京上空を「カクリヨファンタズムが如き空間」に変化させ、骸魂によってオブリビオン化した妖怪達を呼び出し、今回の戦争に存在した「あらゆる手段」を行使して襲いかかってきます。
戦場はゲイン塔自身ではないので、立ち回るには充分な広さがあり、足場などの問題はありません。
ただし、東京スカイツリー内にいた観光客などをこの空間に閉じ込めてしまうので、どうにかして犠牲を出さないようにしてください。
このシナリオでは、『⑱ UDC-Nullの目覚め』に準じた以下のプレイングボーナスが存在します。
=============================
プレイングボーナス……襲われている人々が、妖怪に殺されないようにする。
=============================
なお、🔵が成功数に達すると判断して以降のプレイングの採用を見送らせていただく場合があります。
ご了承ください。
それではよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
|
POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜刀神・鏡介
大祓骸魂――この強敵を相手に一般人を守って戦えとは無茶を言ってくれる
だが、犠牲の上に成り立つ勝利は認めない――親分達にそう啖呵を切った以上、その無茶を成し遂げるしかないな
神刀の封印を解いて、銀色の神気を周囲に漂わせる――壱の秘剣【銀流閃】
邪を断つ神気が妖怪に憑く骸魂を祓い、癒しの神気は自身を含めた人々を守る
それでも抑えきれない分は神刀を振るう事で、更に斬撃波を発生させて妖怪を倒そう
幾らか落ち着いたなら、大祓骸魂の放つ虞を浄化の神気を込めた一閃で切り払い、或いは地面に咲くヒガンバナを神気によって浄化しながら、一気に切り込んでいく
周辺に漂う神気を刀身へと集中させて、渾身の一撃を大祓骸魂へと叩き込む
月夜・玲
UDCアースを滅ぼされるのはちょっと困るんでね、邪魔させて貰うよ
あ、もちろんカクリヨも…だけど
まだまだ研究したい邪神達が居るからね
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
守りながら…か
なら手数が必要かな
ちょっと無理しますか
【Overdrive I.S.T】起動
蒼炎の剣、雷の剣を2つ1組で運用
50組と私が観光客の保護に向かおう
残りは大祓骸魂に対して攻撃を仕掛ける
守備側は私も含めて前面に『オーラ防御』でシールドを展開
更に『武器受け』して攻撃を切り払って防御を固める
攻撃側は波状攻撃で突撃して斬りかかる!
此処には私と同じ強さの剣達が100組居る、守るも攻めるも自由自在!
アドリブ等歓迎
冬原・イロハ
連携・アドリブ歓迎
救助活動ですか?
お任せをっ
お給料の金貨を全部使ってUCで皆さんをお助けします
風属性にしたコインで制圧射撃ですー!
一般人の方に近付こうとする妖怪さんを撃って、動きを阻害
デコピンより痛いですよっ(と、額をバチーン!)
ささ、皆さん今のうちです。安全な場所へ
怖がったり腰が抜けていたりと、動けそうにない人は私が運んでいきますね
他の猟兵さんも色々手を打ってくれているはず
大祓骸魂さん戦では、風のコインで懐刀の動きを緩めてみます
斧を盾にしつつ叩き落としていきます
マヒ属性のコインを投擲、一撃離脱
骸の海にて、世界の時間が流されてくるのをお待ちくださいませ
お帰り、っていう待つ愛もきっとあるのですよ
生浦・栴
つまり心中か
計画的に的に行かぬ感情は面倒よな
討てるのであれば良しとしよう
居座り続けている姉弟子(あねうえ)の使い魔を媒体に
防壁魔法と結界術、鎮静効果だけの催眠術を多重に展開
済まぬが預かって貰えぬかと
守りの薄い客に猫を抱かせる
嫌な顔をするなフクロウ
後で何か馳走する
一般客に流れ弾が直撃せぬよう考えながら移動
挑発と云う名のおびき寄せ
「大祓骸魂」よ
此の世界は多くの生ける者に必要なので諦めよ
骸の海に還れば仲間が居ろう
それで満足しておけ
庇う者が多いので此方もUCで手数を増やすか
迎えはこの蝙蝠からの攻撃で
敵からの攻撃は下手に避けると面倒そうだ
オーラ防御を凹型に展開して耐える
折を見て凸型へ変形し跳返してみよう
杓原・潤
分かってる、どの世界だって大事だって事は。
でも……やっぱり自分の世界が危険になったら、気合いが入っちゃうよね!
うるうはUDCアースの魔法使い。
平和を守るのが使命なんだから!
まずはユーベルコードでサメを召喚するぞ!
こう言う時の【集団戦術】。
うるうのサメ達、妖怪や懐刀から皆を守ってあげてね!
後でスカイツリーのお土産食べさせたげるから!
うるうはテルビューチェに乗ってボスと直接戦闘。
虞はあえて受けて【オーラ防御】と【継戦能力】で耐えながら【時間稼ぎ】する。
受け止めている間はヒガンバナは咲かないはず。
必死で抵抗して気を引いている間に、召喚したサメを何匹か呼び戻して背中から襲わせちゃえ!
都槻・綾
そうね
「世界」とは
担う「ひと」が居てこそ
成り立つのだもの
例え世界を護れても
ひとを犠牲にしては虚しさが残る
だから
決して
誰のいのちも奪わせはしない
研ぎ澄ました第六感で
逃げ惑う人の声や
妖しの気配などを逃さず
対象の保護に疾駆
御無事ですか、との声掛けは穏やかに
間に割り入り
背に庇い
薄紗の如き柔らかなオーラを広げて護り抜こう
高速に紡いだ詠唱にて
喚び招くのは
色鮮やかな花嵐
薔薇の花筐
骸魂を断つ様を
ひとの記憶に残酷に焼き付けてしまわぬよう
花霞で目隠し
内緒ですよ、
薔薇の下では秘密は守られなくてはならないの、なんて
人差し指を口元に当てて
笑みを添え
突然の凶事に怯えてしまっているひとへ
安堵と
立ち上がる勇気を齎せたら良いな
水鏡・多摘
民草を巻き込むとは…いや、そもそも見ていないのか彼奴は。
どうせ滅ぼし永遠にする世界、早いか遅いかの違いしかないじゃろう。
だが世界は我等が守る。人々も当然救うぞ。
空中浮遊と空中機動で高所から状況を観察。
襲われそうな人を見つけたならその周囲に結界を張りつつ妖怪に停止の呪詛を乗せた龍符を放ち無力化。
もし数が多いなら我も結界に飛び込みつつUC起動、他の猟兵の元へ一般人ごと転移し危険から逃がす。
一般人は一か所に集め包み込む結界で纏めて守るようにし、護衛に式神をつけておく。
可能な限り一般人の安全を確保出来たら大祓骸魂に奇襲。
転移から仙術で練り上げた気を込めた火炎ブレスを喰らわせよう。
※アドリブ絡み等お任せ
メリー・ブラックマンデー
(アドリブ連携歓迎)
大祓骸魂はUDCアースを愛している。
その愛に偽りはなく、きっと愛する世界に生きる人もその愛の対象なのでしょう。
…だからといって!滅ぼしていい訳がないでしょう!?
犠牲になんてさせてやるもんですか。あたしは…生きて進み続ける人の姿が好きなんだから!
来なさい、【輪廻循環の麾下魔兵】!
襲われている人々のもとへ向かって!
傷ついているのなら再生属性で治癒、彼らを守ってあげて!
私は神器剣の<斬撃波>で集まろうとする妖怪を遠ざけるわ!
大祓骸魂から離れて弱まった妖怪なら、使い魔で対処できるはず。
任せられると信じてるから…私は彼女の討伐に集中できる!
『アトポロス』!<破魔>の力で切り伏せるわ!
談笑する人々、鬱蒼と蠢く異形の群れ、そして、その異形を従え薄く笑みを浮かべる女。
その異様な空間に気づいた数人がざわめきだす。
「え……なにあれ」
「なんかのイベント?」
「いや怖……」
トーンダウンして交わす会話を耳にして、周囲の人々にも不安が広がりつつあった。
女――大祓骸魂(おおはらえむくろだま)はやはり薄く笑みを浮かべ、慰撫するように両手を差し伸べる。同時に神智を越えた虞(おそれ)が滾り、妖怪たちの一部が人々へと襲いかかっていく。
怯えて竦む観光客を虞が喰らおうとした直前、づ、っと黒影が滑り込み、銀光がひらめいた。
「大祓骸魂――この強敵を相手に一般人を守って戦えとは無茶を言ってくれる」
舌なめずりをするようにヒガンバナが狂い咲くのを目の当たりにし、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が歯噛みする。
「だが、犠牲の上に成り立つ勝利は認めない――親分達にそう啖呵を切った以上、その無茶を成し遂げるしかないな」
無理、無茶、無謀。そんなものは、誓いを手放す理由にはならない。
「神刀解放。邪を絶ち、善を守護せん――壱の秘剣【銀流閃】」
神刀の封印を解いて、銀色の神気を周囲に漂わせ――白銀色に輝き邪を断つ神気が妖怪に憑く骸魂を祓い、月白色に燦く癒しの神気は自身を含めた人々を守る。
だとしても、すべてを倒しすべてを護りきれるわけではない。
それでも抑えきれない分は神刀を振るうことで、更に斬撃波を発生させて妖怪を倒そうとする鏡介の足元に小さな影が躍り出た。
「救助活動ですか? お任せをっ」
ちゃりんちゃりーん!
場違いに涼やかな金の音が響く。
そう、金……コインである。
冬原・イロハ(戦場の掃除ねこ・f10327)がアルバイトで一生懸命稼いだお給料の金貨を全部使って、観光客の方に近付こうとする妖怪を撃って、動きを阻害していく。
「デコピンより痛いですよっ」
額をバチーン! と打たれた妖怪が、あまりの痛さと勢いにひっくり返り、間近に見てしまった客が悲鳴を上げて倒れてしまった。
「ささ、皆さん今のうちです。安全な場所へ」
小さな身体でその人を助け、危険のない場所まで連れて行く。
他の猟兵さんも色々手を打ってくれているはず。
そう考えくるりと視線を巡らせると。
突然のことの連続で驚き足がすくんでしまっている少女に、生浦・栴(calling・f00276)が人間の娘よ、と声をかける。
「済まぬが預かって貰えぬか」
「え?」
不意に差し出された猫に戸惑う相手へ、今度は押し付けるように抱かせる。
これこそは居座り続けている姉弟子の使い魔。これを媒体に、防壁魔法と結界術、鎮静効果だけの催眠術を多重に展開する。
「嫌な顔をするなフクロウ」
後で何か馳走すると告げても、相変わらず愛想の悪い猫は不機嫌そうで。いつものことだと気に留めず。
つまり心中か、と大祓骸魂を顧み。
「計画的に行かぬ感情は面倒よな」
だが、まあ。
討てるのであれば良しとしよう。
猟兵たちの反駁に、大祓骸魂は笑みを崩さない。所詮は悪足掻き。この愛が果たされるまで、ほんのわずかにずれるだけだ。
「大祓骸魂はUDCアースを愛している。その愛に偽りはなく、きっと愛する世界に生きる人もその愛の対象なのでしょう」
薄笑みを前にしたメリー・ブラックマンデー("月曜日"がやって来る・f27975)が唇を引き結ぶ。
その愛は理解できる。しかし、しかしだ。
「……だからといって! 滅ぼしていい訳がないでしょう!?」
ああ、彼女のその名を知っているか。
日曜日にまどろむ誰もが恐れるもの。彼女こそは、世界の誰もがよく知り畏れる名だと嘯く、"月曜日"の竜神。
停滞せず前へ進み進歩を続ける者を援ける者。
「犠牲になんてさせてやるもんですか。あたしは……生きて進み続ける人の姿が好きなんだから!」
宣言するメリーに、大祓骸魂は静かに口を開く。
いいえ 犠牲ではありません
この懐刀で殺す 殺したものは過去となり 骸の海で永遠となる
永遠となることは 犠牲になることではない
実に独善的な嘲弄を、永遠なんて、と吐き捨てた。
「進化とは継承と変化の歴史。たかが雑兵と侮らないことね」
来なさい、【輪廻循環の麾下魔兵】!
叫声めいた詠唱に蛇の姿をした使い魔が現れるのを確かめる間もなく指示を飛ばす。
「襲われている人々のもとへ向かって! 傷ついているのなら再生属性で治癒、彼らを守ってあげて!」
即座に行動に移る使い魔をやはり顧みず、メリーは観光客目掛けて集まろうとする妖怪たちへ向けて神器剣を振るう。剣閃から放たれた斬撃波で妖怪を斬り払い、倒しきれずともダメージを与えていく。
攻撃を与えそこねた敵を追跡するが、しかしわずかに届かない。怯える観光客を妖怪が襲おうとした時。
その周囲に結界が張られつつ、妖怪には停止の呪詛を乗せた龍符を放たれ無力化された。
「民草を巻き込むとは……いや、そもそも見ていないのか彼奴は」
空中に浮き素早く高所から状況を観察していた水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)が龍符を手に歎息。
「どうせ滅ぼし永遠にする世界、早いか遅いかの違いしかないじゃろう」
驚く素振りを見せず笑みを湛えたままの大祓骸魂を一瞥し、うむ、と唸った。
「だが世界は我等が守る。人々も当然救うぞ」
たとえ民からの信仰を失えども、護るものはある。
大祓骸魂が、自身の周囲に集まり蠢く妖怪の一端を割いてけしかける。猟兵たちであれば対処のしようもあろうが、さりとて弱き者は多い。そうと判じた多摘も結界に飛び込みつつ、龍神転移結界を起動した。
「さあ飛ぶぞ。結界から出ぬように注意するがいい」
他の猟兵の元へ一般人ごと転移し危険から逃がし、一か所に集め包み込む結界で纏めて守るようにし、護衛に式神をつけておく。
「危険ゆえ、動かぬようにな」
「はいっ……!」
ふた柱の竜神により護られた人々は、いまだ状況が分からぬまま従うばかり。ただそれが一番安全だと理解して。
猟兵とオブリビオンの戦いなどちっとも身近ではない、か弱く脆く危うい、ただの人間たち。
そうね、と都槻・綾(絲遊・f01786)は首肯する。「世界」とは、担う「ひと」が居てこそ成り立つのだもの。
「例え世界を護れても、ひとを犠牲にしては虚しさが残る」
だから。
「決して――誰のいのちも奪わせはしない」
彼の周囲の空気が、凛と張り詰めた。
研ぎ澄ました第六感で、逃げ惑う人の声や妖しの気配などを逃さず対象の保護に疾駆する。
跳躍して距離を詰めた。妖怪が腕を振り上げて下ろそうとしたわずかな隙をついて観光客の身を掬い上げ、触れたか触れまいかの間に他の客たちの元へと押しやった。
「御無事ですか」
穏やかに声をかけると、玲瓏な青年の姿に戸惑いつつもぶんぶんと頷く。少々動揺が見られるが、まあ、無事だろう。
間をおかず放たれる攻撃に、再び間に割り入り背に庇い、薄紗の如き柔らかなオーラを広げて護り抜こう。
苛立ちも白けもなく、大祓骸魂は猟兵たちの抗う様を眺める。目を向けるのは紫の魔法使いにも。
「分かってる、どの世界だって大事だって事は」
ぎゅっと帽子の端を掴み、まっすぐに大祓骸魂を見据える杓原・潤(星と鮫の魔法使い・f28476)。
「でも……やっぱり自分の世界が危険になったら、気合いが入っちゃうよね!」
うるうはUDCアースの魔法使い。
平和を守るのが使命なんだから!
「うるうのサメ達、妖怪や懐刀から皆を守ってあげてね!」
力強く呼びかけて召喚したサメたちに、集団戦術の指示を行う。
大量のサメが突然現れたその様子を目撃した観光客たちが「サメ!?」「陸にサメ!?」と驚きざわめくが、それらが自分たちを守る存在だと理解すると幾分かトーンを落とす。
よしよし、そのままいい子でお願いね。
「後でスカイツリーのお土産食べさせたげるから!」
サメたちに約束し、テルビューチェに乗って突撃!
流星の如く向かっていく魔法使いの姿を視界に捉え、災いなる邪神はわずかにも表情を崩さない。
妖怪たちが少女と大祓骸魂とを隔てるのに遮られて一度距離をとり、もう一度突撃していく。
「UDCアースを滅ぼされるのはちょっと困るんでね、邪魔させて貰うよ」
言って月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、あ、もちろんカクリヨも……だけど、と続けた。
「まだまだ研究したい邪神達が居るからね」
赤い瞳を細め、《RE》IncarnationとBlue Bird、詩と力のふた振りを抜刀する。直後攻撃を仕掛けてきた妖怪の一撃をなぎ払うと、間髪入れず別の妖怪が繰り出した攻撃を滑り込んでかわし、体勢を整える。
「守りながら……か」
なら手数が必要かな。
「ちょっと無理しますか」
――システム、多重起動。負荷は完全無視。さあ、暴れ狂え!
【Overdrive I.S.T】起動とともに、雷を纏った百振りの剣と蒼炎を纏った百振りの剣が現れた。
蒼炎の剣、雷の剣を2つ1組で運用し、そのうちの50組と玲自身が観光客の保護に向かう。
残りは大祓骸魂に対して攻撃を仕掛け……しかし。
ガガガガガガガッ!
虞を繰り剣を防いで、邪神は薄ら笑みを深くする。
小手先の術で 私は止められない
だが、ただ一度防がれただけだ。攻撃がこれだけだとでも?
「此処には私と同じ強さの剣達が100組居る、守るも攻めるも自由自在!」
再び玲が放つ攻撃に重ねるように、鏡介が跳躍して大祓骸魂の放つ虞を浄化の神気を込めた一閃で切り払い、或いは地面に咲くヒガンバナを神気によって浄化しながら、一気に切り込んでいく。
「この刃が斬るは森羅万象の悉く――」
周辺に漂う神気を刀身へと集中させて、渾身の一撃を大祓骸魂へと叩き込む!
閃撃を防ぎきれずに呻きめいた音を吐き、邪神の懐刀を掲げたとともに、その周囲に数え切れぬほどの懐刀が現れた。
「させません!」
凶刃を狙い風のコインを投擲し、イロハが懐刀の動きを緩め斧を盾にしつつ叩き落としていく。加えてマヒ属性のコインを投擲して一撃離脱。
一般客に流れ弾が直撃せぬよう考えながら移動し、栴が挑発と云う名のおびき寄せを行う。
「「大祓骸魂」よ」
慇懃無礼に呼びかけるが、災いなる妖怪は応えない。
「此の世界は多くの生ける者に必要なので諦めよ」
骸の海に還れば仲間が居ろう。それで満足しておけ。
そう言われたとて得心するはずもない。
強かに攻撃を受け続けた大祓骸魂は、わずかに苛立ちを含んで虞を巡らせ迸らせる。観光客が巻き込まれようと元より構いはしない。もろとも狙い撃つのを、ある猟兵は防ぎある猟兵はかわす。
(「庇う者が多いので此方もユーベルコードで手数を増やすか」)
詠唱とともに死霊が姿を現す。迎えはこの蝙蝠からの攻撃で……。
楽団へそうするように手をかざし、蝙蝠を指揮する。
攻撃は下手に避けると面倒そうだ。判断し、オーラ防御を凹型に展開して耐え、折を見て凸型へ変形し跳返してみようとするが、あまり効果はないようだ。
虞をあえて受けて、潤はオーラ防御を展開して耐える。これは時間稼ぎだ。
受け止めている間はヒガンバナは咲かないはず。
果たして思惑通りか、花は増えていない。当たってはいないが外れてもいないからか。しかしその威力を受け止め続けるのは相当に胆力が必要だった。
いつまで 続けるのですか
私の愛を なぜ妨げるのですか
「っ……!」
必死で抵抗して気を引いている間に、彼女が召喚したサメを何匹か呼び戻していることに大祓骸魂が気づいた時にはわずかに遅く。背後に気配を感じたその時、サメが一斉に襲いかかった。
ゴアアッ!!
――……!
今度こそ確かに悲鳴を上げた災いなる妖怪を狙い、猛り狂うサメの群れの影からメリーが躍り出て白刃を閃かせる。
観光客を狙おうとする妖怪たちはまだ残っている。しかし、大祓骸魂から離れて弱まった妖怪なら、使い魔で対処できるはず。
任せられると信じてるから……私は彼女の討伐に集中できる!
「『アトポロス』!」
時計の秒針を模った片手半剣に叶う限りの力を込め、破魔の力で切り伏せる!
反撃に出ようとする邪神の死角へと転移した多摘が奇襲し、仙術で練り上げた気を込めた火炎ブレスを喰らわせた。
たまらずたたらを踏んだ大祓骸魂が見たのは、舞い揺れる数多の花びら。
「いつか見た――未だ見ぬ花景の柩に眠れ、」
高速に紡いだ詠唱にて綾の喚び招くのは色鮮やかな花嵐。
其は薔薇の花筐。
女の姿を覆い尽くし、愛憐と悲歎の声をも覆い隠していった。
猟兵たちのなかにはその様に思うことのある者もいただろうか。
妖怪たちも消えゆく。骸魂を断つ様をひとの記憶に残酷に焼き付けてしまわぬよう花霞で目隠し、
「内緒ですよ、」
薔薇の下では秘密は守られなくてはならないの、なんて人差し指を口元に当てて笑みを添え。
突然の凶事に怯えてしまっているひとへ、安堵と立ち上がる勇気を齎せたら良いなと思うたのだが。
死傷者こそはないものの、多くは絶句するか悲鳴を上げるのをかろうじてこらえているようで、……その、あれだ。
「……ちょっと、刺激が強すぎたかな」
ほつりと猟兵の誰かが口にした。
はらはらと落ちた薔薇の花びらが消えていくのを見つめていたイロハが、ふいと大祓骸魂のいた場所を見やる。
「骸の海にて、世界の時間が流されてくるのをお待ちくださいませ」
お帰り、っていう待つ愛もきっとあるのですよ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵