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大祓百鬼夜行㉕〜あたら夜、永遠に

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行

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#大祓百鬼夜行


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 遊びましょう。謳いましょう。

 東京上空が幽世の色へと変化していく。
 骸魂に飲みこまれ強化された妖怪たちの百鬼夜行。
 妖怪電車が走れば『世界』がほつれて二つの世界が混じり合い、妖怪バスと乗り込んだお裁縫妖怪がそれを追う。

 愛しましょう。殺しましょう。

 愛おしき生体に惹かれ、永遠の海へと引きずり込もうとする妖怪たちが一人、二人と捕まえて竜神の霊山へ――追いかけて追いつめて、連ね鳥居を走らせた先に地獄の釜蓋が開く場所。出てきた骸魂が現の肉体を溶かし、人の魂を海に溶かす。
 大祓骸魂は声掛ける。
「さあ、自らの足でお逝きなさい」
 鬼のような大きな手を差し向ければ、翼の生えた小鬼たちの群れが人々を追う。
「連ね鳥居から出ては駄目。真っ直ぐに永遠へと走り、沈みなさい」

 貴方がたの進む先の時、過去の釜蓋朔日で、私は待ちます。


「とうとう姿を現わしたわね、大祓骸魂が」
 百鬼夜行もいよいよ大詰め。
 ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)が猟兵たちを出迎えた。
「今までの百鬼夜行では様々な事柄へと対処してきたわけだけど、大祓骸魂はそういったあらゆる手段を行使して襲いかかってくるみたい」
 東京スカイツリーの最上部に設置された、アンテナが収納された高さ約140mの巨大構造物、ゲイン塔。そこに大原骸魂が在る。
 膨大な虞によって混沌となった世界。
「オブリビオン化した妖怪たちに攫われようとしている一般人もいるわね。そういった被害を出さないためにも、一刻も早く大祓骸魂を倒してしまいましょう」
 そのためにも猟兵に駆け抜けていって欲しいところがある、とポノ。
 今、時間的に連ね鳥居の青白い鳥居は大祓骸魂のいる場所に続くものとなっている。
「死神の如き霊気の妨害はあるけれど一直線で大祓骸魂の元へ辿り着けるわ」
 気を抜かずに走っていけば、骸魂の溢れる場所へと出る。
 そこで待つ大祓骸魂。
 骸魂の元凶たる究極妖怪にして、UDCアースの大いなる邪神でもある存在は、UDCアースに対する絶対なる『愛』の元、世界を滅ぼさんとしていた。

 大祓百鬼夜行はオブリビオン化された妖怪たちが壁ともなるだろう。
 神智を越えた虞は、祓っていかねば世界を覆うこととなるだろう。
 懐刀『生と死を繋ぐもの』は、どこから飛来してくるかが分からない。一点へと集中し放たれるかもしれない。

「戦線は混沌としているけれども、そうね、懐刀について私から言えるのは赤い紐状の気配に注意、かしらね。繋ぐアイビーの詳細は不明だけど、単語自体の花言葉としては『永遠の愛』『不滅』といった意味があるけれど、『死んでも離れない』という意味もあるから――」
 運命の赤い糸といったところか。懐刀は必ず猟兵の身に到達すると考えた方が良い。
「……本当に、大祓骸魂はUDCアースのことが好きなのね」
 重すぎる愛だけど、とポノが呟けば猟兵たちも頷いた。
「けど、愛故に世界を殺す、というのはやり過ぎよね。大祓骸魂には、骸の海に流れてくるであろうUDCアースの時間を少しずつ愛でてもらう方向にシフトチェンジしてもらいましょう!」
 猟兵たちが行くのは混沌の戦場。
「健闘を祈るわ」
 そう言って、ポノは虞満ちる世界へと猟兵たちを送り出すのだった。


ねこあじ
 ねこあじです。
 今回はよろしくお願いします。

 プレイングボーナスは、一点で。
 『連ね鳥居を最速で駆け抜ける』こととなります。
 あとはガチンコ一発勝負といきましょう。

 採用はなるべく頑張るつもりですが、不採用出てしまったらごめんなさい。

 29日、土曜いっぱいでプレイングは締め切る予定です。
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第1章 ボス戦 『大祓骸魂』

POW   :    大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:菱伊

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーンハルト・ハイデルバッハ
とうとうお見えになりましたか、大祓骸魂様
ええ、これこそが好機。貴女様にとっての好機であれば、我々にとっても同じこと。救いはない、滅してご覧に入れましょう。

愛機ガイストリヒェに搭乗
『救済』を発動し、高速で鳥居の中を通り抜けながら進んでまいりましょう
「疾く行けと申されますなら、我が愛機に勝るものはなし!」
斥候と偵察を得意とする機体です故、逃げることは得手としてございますれば
大祓骸魂様と接敵いたしましたら、追尾レーザーで包囲攻撃と参ります
懐刀をいくら複製されましょうと、私のレーザーの全てを捌ききれるものか
「我が救済を以てして、貴女様に終焉を差し上げましょう」

アドリブ歓迎


鈴久名・紡
真っすぐに抜けて近付けるのであれば
それに越したことはないな

竜神飛翔使用
重ね鳥居は飛翔力の上がった状態で突っ切る
抜けると同時に先制攻撃
妖怪達には雷を、大祓骸魂には槍に形状変化させた葬焔を投擲
先制攻撃直後に天候操作で暴風を呼び
妖怪達を近づけさせない
吹き飛ばせない場合は念動力も併用する

以降は同じく槍に形状変化させた禮火に
氷結の属性攻撃を乗せて振るう

奪うばかりのそれは、愛ではないと思う
愛というのは……
無償で与えるものだと、俺は思ってるから
何にせよ、一方的過ぎやしないか?

敵の攻撃は見切りを用いて
空中機動やフェイントも駆使して回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぎ
負傷は激痛耐性で凌ぐ

骸の海へ、過去へ、還れ


フィオナ・ウンベカント
重ね鳥居の道は念動流星撃を発動して駆け抜けるとしよう。
カーブがあれば衝撃波を放った反動や、念動力の力場を壁のように伝うことで強引に曲がる。

大祓骸魂の元にたどり着いたら、駆け抜けてきた勢いのままに突っ込む!
念動流星撃自体の突進力に加え、
骸魂を祓う想像で進化したアリスランスのランスチャージ、
そしてサイキックのオーラによる護りの力が合わされば、
あの無数の懐刀を掻い潜って一撃を浴びせるには充分だ。

悪いね。ぼくには記憶がないが、ここはもしかしたらぼくの元いた世界かもしれない。
だからきみの言う「永遠」とやらにされては困るんだ。
その歪んだ愛ごと、破壊させてもらうよ。



 それは青白く輝く大きな鳥居の連ねであった。
「大した妨害も無く、真っすぐに抜けて近付けるのであればそれに越したことはないな」
 鈴久名・紡(境界・f27962)の言葉に頷きを返すフィオナ・ウンベカント(マスター・オブ・ジークヴァルト・f21922)。
「時は有限。最速で駆け抜けるとしよう」
 サイキックエナジーをより発露させたフィオナが念動流星撃を発動する。先に行く、と言い置いて飛翔した。
「疾く行けと申されますなら、我が愛機に勝るものはなし!」
 リーンハルト・ハイデルバッハ(黒翼のガイストリヒェ・f29919)の声が放たれて制圧用魔導兵器『救済』が発動した。サイキックで稼働するガイストリヒェ Sn-Vに搭乗したリーンハルトもまた黒い機械翼を使い、飛翔して連ね鳥居へと入っていく。
 目測からして機体も十分に入れる大きな鳥居の道だ。
 そもそも黄泉の道とされるこの輝く鳥居は概念でしかないのだろう。
「俺も行くか」
 そう呟いて完全な竜体へと姿を変えた紡が空を泳ぎ進むように、飛翔した。

 大きな連ね鳥居は曲道こそあれど十分に切り替え対応のできる広さでもあった。
 飛翔しながら念動力を周囲に張り巡らせるフィオナ。
 最速で進む方法を取った三人に、死神の如き霊気たちは声もその気を伸ばすことも叶わなかった。
(「抜けるっ!」)
 青白く輝く鳥居が途切れた先には彼岸の花が咲き乱れ、ヒトガタの符が舞う虞に満ちた世界。
 駆け抜けてきた勢いのままにその世界へと突っこんだフィオナの目が素早く白く輝く依代の円弧を辿った。その中心に大祓骸魂。
「お待ちしておりました」
 虞を伝い、電波化した大祓骸魂の声が大気に渡った。ぞくりとしたものがフィオナの背を駆け抜ける。
 空を切る音がしたかと思えば、フィオナの纏う破壊のオーラが懐刀の縁を断ち切っていた。
 くつりと嗤う気配が耳を嬲る。
「悪いね。ぼくには記憶がないが、ここはもしかしたらぼくの元いた世界かもしれない」
 過去の記憶がないフィオナは世界を渡る。今、破壊されようとする世界が彼女の故郷かもしれない。違うかもしれない。――知るための旅には、まだ世界が必要だ。
「だからきみの言う「永遠」とやらにされては困るんだ」
 白銀の槍は骸魂を祓う想像で進化したものへと変ずれば、対し敵の開かれた番傘が閉じた。
 アリスランスの長柄を然りと掴み、フィオナの流星の如き一撃が大祓骸魂を穿つ。
 バン! と返し開かれた傘が虞を放ち、間合いを抜けだそうとするフィオナの推進を阻害した。
「共に此処を故郷にすればよろしいのです」
 ねえ、と薄紅の唇が紡ぐ声。大気がまた震えた、その時。
「とうとうお見えになりましたね、大祓骸魂様。今こそ相見えの『時』です」
 数多の懐刀が数少ない猟兵へと向けられた瞬間、九〇〇もの光線が虞の世界を支配した。リーンハルトだ。
「ええ、これこそが好機。貴女様にとっての好機であれば、我々にとっても同じこと。救いはない、滅してご覧に入れましょう」
 リーンハルトの追尾レーザーは懐刀「生と死を繋ぐもの」の数を上回り、その一刀一刀を破壊していく。余したレーザーが大祓骸魂を包囲すべく弧を描き、敵へと迫った。
「我が救済を以てして、貴女様に終焉を差し上げましょう」
 一点へと集中したレーザーが世界を白く染め上げる。
「――永いこと 待ってはいたけれども 急くこともないのです」
 ざざ、と乱れた音声を――大祓骸魂の声をガイストリヒェが捉える。電界が構築され、電波の乱れが再び縁を繋ぐ。けれども虞の祓われ続ける世界は弱体しているようだ。
「揺蕩う時のなかの好機 刹那の逢瀬にゆるりと愛を育みましょう」
 大祓骸魂の言葉にオブリビオン化した妖怪たちが集まり、群れを成していく。
 虞で作った雲を纏い、大祓骸魂の周囲を取り巻いての百鬼夜行。
 そこへ天の雷が行列を貫いた。
 衝撃に吹き飛ばされる妖怪たち。
 その合間を鎌鼬が駆け抜けてそれが肥大すれば妖怪たちの群れはばらばらとなり、骸魂たちが祓われていく。
「奪うばかりのそれは、愛ではないと思う」
 竜神の姿で紡が言えば天啓とも思える音。その多くは大気に邪魔されてはいたものの、虞と狂った電波に満ちた世界で言霊として轟いた。
 大祓骸魂に向かって投擲された葬焔は槍状ではあったが、その本質は黄泉路を示す熱のない焔。骸の海へと通じる力を放ち、残滓が場を導く。
(「愛というのは……無償で与えるものだと、俺は思ってるから」)
「何にせよ、一方的過ぎやしないか?」
 氷る力を漲らせ、槍となった禮火が放たれた。
「愛しきUDCアースは 私たちを置いて行こうとしているのです――」
 時の流れの乖離。縋りついても進んでしまう世界。
 だから滅ぼさないと。
 注連縄を繰り、祈りと熱なき焔の残滓を払いのけた大祓骸魂がそう呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レジー・スィニ
【爪痕】

愛ね。俺にそれ聞く?
過度な愛は重荷になるだけだよ。
世界を愛しているとか、あまりにも壮大すぎて着いてけない。

俺は正義の味方でも、皆を助けるヒーローでもないの。
愛について聞いたんだからジェイもちゃんと応えてよね。

アハッ。一緒に死んだら離れないでしょ。
重いと思うなら違う所で死ねばいいんだよ。

アイツだけを殺すとかね。

ジェイってこんな奴にモテそうだよね。
扱いが上手いだなんてさ、俺は狡い事をしちゃうから嫌われる方。

それにこうやって、女の子に手も出しちゃうから
嫌われて当然だよね。

手元を狙って刃を振り払う。
手も武器も使わないよ。
これで十分。

はっきり言ったら?
お前は重くて俺の手には負えませんってね。


ジェイ・バグショット
【爪痕】
UDCアースのことが好きすぎるんだってよ
歪んだ愛ってヤツ?
俺にはよく分かんねぇわ。お前は?
普段はしない『愛』とやらの話

愛なんて不確かなもの信用出来ねェよ
だってほら、この女の『愛』なんて最悪だろう?

死んでも離れないなんて、重すぎて俺には受け止めらんねェわ
ハハ、違いない。あの女と心中だなんて御免だ
レジーは扱い上手そうだけどな

運命の糸の先が懐刀とは物騒すぎるな
第六感で刀が飛来する方向を察知しカウンターで弾く

ふはっ、容赦ねェなぁ
俺も勘違いされたくねェから
優しくなんてしねーけど

召喚した拷問具「荊棘王ワポゼ」の動きが加速
全ての刀を叩き落としていく

今晩くらいなら相手してやるよ
俺なりの『愛』ってヤツだ



 青白く光る連ね鳥居がレジー・スィニ(夜降ち・f24074)の灰髪を輝かせる。
 地は光に照らされ、多方面からの輝きが陰影の形を万華鏡のように変化させていた。
 そんな場所を軽やかに駆けながら――ふと、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)が口を開いた。
 なあ、とレジーを呼ぶ。
「大祓骸魂だっけ? あの女、UDCアースのことが好きすぎるんだってよ。歪んだ愛ってヤツ? ――俺にはよく分かんねぇわ」
 お前は? と尋ねるジェイのそれは明らかに暇つぶし的なものだった。
 延々と続く鳥居を行けば、普段はしない『愛』とやらを語ってみるのもいいかもしれないという気が起きたのだろう。
 気まぐれに。
「愛ね。俺にそれ聞く? 過度な愛は重荷になるだけだよ。世界を愛しているとか、そういうの、あまりにも壮大すぎて着いてけない」
 肩を竦めながらレジーは答えた。
「俺は正義の味方でも、皆を助けるヒーローでもないの」
 ふと、腰に在る妖刀駒吉の重さを感じる。
「愛について聞いたんだからジェイもちゃんと応えてよね」
 促しを吐けば、俺か、と呟きが返ってきた。
「愛なんて不確かなもの信用出来ねェよ。あの女の『愛』なんて最悪だろう?」
 ――愛するUDCアース あなたを永遠にしたい
 ――あとひと刺しで それが叶います
 猟兵たちの前に現れた大祓骸魂の姿と言葉がジェイの脳裏を過る。
「死んでも離れないなんて、重すぎて俺には受け止めらんねェわ」
「アハッ。一緒に死んだら離れないでしょ。重いと思うなら違う所で死ねばいいんだよ」
 アイツだけを殺すとかね、と、レジーが言う。
 青白く輝く鳥居が途切れる場所へと出れば虞の満ちる世界。
 ハハ、とジェイが笑う。
「違いない。――あの女と心中だなんて御免だ。レジーは扱い上手そうだけどな」
 お手をどうぞ、とひらり掌を翻すジェイ。
「猟兵たちよ 来ましたか」
 虞に吹き荒れる世界で、大祓骸魂の声が轟いた。
 どどん、と太鼓が鳴り妖怪たちの百鬼夜行がとぐろを巻く。
 虞に支配された世界は背骨も凍る冷徹な空気だったが、二人は気にも留めず駆け出した。
「この縁 確かなものとします」
 さあ、と空気が動き、懐刀「生と死を繋ぐもの」がジェイの元へと飛来する。
 僅かに見え隠れする赤の糸が陣を張るように多方面から訪れ、過ぎていく。
 鉄輪を振るいジェイは懐刀を弾いた。籠手のように扱い、違う鉄輪を繋ぐ鎖を鞭のように振るう。
 心の臓を狙った敵の一突きは明らかな殺意がこもっている。
 避けた先に狙ったような刀がジェイの腕を刺し貫いた。
「ふはっ、容赦ねェなぁ。俺も勘違いされたくねェから優しくなんてしねーけど」
 言葉紡げば上空に現れる紅い月。荊棘王ワポゼの動きが加速し、飛来する全ての懐刀を叩き落としていく。
 は、と揺れる呼気がレジーから放たれた。
「ジェイってこんな奴にモテそうだよね。扱いが上手いだなんてさ、解釈違い。俺は狡い事をしちゃうから嫌われる方」
 襲ってくる妖怪を体術でいなすレジー。手刀を翻し、くるりと妖怪を虚空で回した。
 そうして大祓骸魂との彼我の距離を詰める。立ち塞がる妖怪を足払いで祓い退けたレジーが、低めの体勢からばねを伸ばすように蹴りを放つ。
「それにこうやって、女の子に手も出しちゃうから嫌われて当然だよね」
 遠心を利かせた回し蹴りが番傘を飛ばして続き大祓骸魂を襲い、敵は千鳥足の如き歩みで後退した。
「今晩くらいなら相手してやるよ。俺なりの『愛』ってヤツだ」
 懐刀の縁を叩き壊しながら揶揄するジェイに、レジーは笑った。
「はっきり言ったら? お前は重くて俺の手には負えません、ってね」
「今宵限り 刹那の逢瀬ですが 忙しない小童たちですこと」
 変わらず読み取れない表情で大祓骸魂は呟くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナーバ・キャンサ
大祓骸魂はUDCアースが大好きらしい。僕には彼女の考えが理解できなかったから解説は有り難い一方、好きなものを自分の領域に引きずり込むって心理がわからないよ。
ただ僕は、好きな人(東方親分)が自分の命を賭けて守ろうとしたものを守るために戦おうと思う。

強い決意が胸にあるから妨害も気にせず連ね鳥居を駆け抜ける。

大祓骸魂の元に着いたら【霊木剣】で連続攻撃を仕掛けるよ。
紐状の気配に注意だっけ、大祓骸魂本人だけを見ず、別方向にも気を配ろう。
懐刀は普通心臓がある場所を狙ってくるかもしれない。姿を変えているだけのブラックタールは違う構造だから致命傷にはならない。
でもどこでも斬られれば痛い、だけど僕は止まらない。


箒星・仄々
妖怪さん方の覚悟に報いる為にも
大祓骸魂さんを海へお還ししましょう

召喚したランさんに騎乗して
連ね鳥居をGO!です
死神霊気さんを躱し迎撃しながら進みます

魔力の矢で虞を迎撃

彼岸花も炎で燃やし
水で押し流し
風で切り裂きます

この世界が大好きなら
世界を育む命と
世界の未来を信じて欲しかったです

虞迎撃の矢が変じた火の粉や水飛沫、突風で
視界を緋蒼翠と染め上げながら
更に風で巻き上げた彼岸花を宙へまき散らし
朱を混ぜながら
ランさん突撃

これはフェイントです

先にランさんから落下した私が
色に紛れて
ご自身の愛=彼岸花に見惚れておられる大祓骸魂さんへ
宙から魔力の矢を放ちます

終幕
鎮魂の調べ
海でアースの過去に抱かれて静かな眠りを


レテイシャ・マグナカルタ
アドリブ連携歓迎

行くぜ!
蒼い魔力をフィールドの様に展開して突風の様に突き進む
しゃらくせぇ!!
飛んでくる虞には気功の応用で身に着けた体内の魔力循環を全力で行い、魔術的な抵抗力を高める感じで弾き飛ばす心算

大祓骸魂にはそのままの速度で体当たりして吹き飛ばし、魔力を限界まで込めて蒼く発行する拳で真正面から殴り飛ばす
愛するモノを永遠に手元に置いときたい、って気持ちはわからなくはねぇよ
だけどなぁ、相手が望んでもいねぇのに強引に連れて行こうとするなんざ愛じゃねぇ、只の我欲だぜ!


水鏡・多摘
邪神は滅ぼさねばならぬ。
歪んだ愛に世界が砕かれる前に討伐せねばなるまい。
…連ね鳥居?
空中浮遊と機動で鳥居を潜って飛んでいけるかのう。
ダメなら全力ダッシュ。背後から感じる邪気には後方に破魔の結界を作り対処。
更に式神を符に降霊し背に乗せ後方警戒させれば対処できるじゃろう。
息も絶え絶えになっておるかは分からぬが終点で待つ者には全力を叩き込まねばな。
式神は周囲に散らし呪殺弾で牽制。
防御は結界宝珠でオーラ纏わせた結界を構築し懐刀の群を防ぐ。
ある程度こちらに刃が集中してきたらUC起動しこの場の他の猟兵、或いは式神に向けて転移し攻撃回避、そしてできた隙に全力の破魔のブレスを吹き付ける。

※アドリブ絡み等お任せ



「妖怪さん方の覚悟に報いるためにも、大祓骸魂さんを骸の海へお還ししましょう」
 青白く輝く鳥居を見上げて言った箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)の声は柔らかな音色のように穏やかだった。
「まずはこの連ね鳥居を抜けて行かなければですね」
「おう、かっとばして行くぜ!」
 レテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)は身の内から溢れ出る魔力を解放した。
 彼女を中心に放たれた蒼い魔力が鳥居の色に重ねられ、蒼い光の翼を背にレテイシャが浮かぶ。
「先、行くぞ!」
 障壁を纏ったレテイシャが鳥居の中を飛翔していった。
「元気ですねぇ。では、私たちも行きましょうか」
 ソードフィッシュのランさんに騎乗して、仄々が出発する。

(「大祓骸魂はUDCアースが好きらしい」)
 大祓骸魂から示された分かりやすい言葉の数々に、ナーバ・キャンサ(猫又もどき・f33334)は改めて妖怪たちの在り方を感じ取る。
 遥か昔は神も妖も人も親和していたかもしれないUDCアース。けれども乖離からの感情の飢餓で妖怪たちは幽世へと逃げ込んだ。遠く、彼の地への親しみを抱いたまま。
 けれども。
「好きなものを自分の領域に引きずり込むって心理がわからないよ」
 そう呟いて青白く輝く連ね鳥居を駆けていると、死神の如き霊気が語りかけてくる。
『猟兵さん、こっちにおいでよ』
『その先は危ないよ』
 だがナーバの耳は霊気の声を払うように動く。
(「ただ僕は、好きな人が自分の命を賭けて守ろうとしたものを守るために戦おうと思う」)
 そう決意を新たにしたところで、後方から霊気がことごとく祓われる気配を感じた。
「しゃらくせぇ!!」
 荒い語気が場を打ち、ナーバの耳と尻尾がぴっと立った。
 蒼の輝きが閃光の如く放たれた中心部にレテイシャ――ナーバと目が合った。
「お。お疲れさん」
 そう言って抜いていく。
 そんな彼女を追うように空中を泳ぎ進むのは水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)であった。
「さくさく行こうぞ。邪気がもうそこまで来ておる」
 多摘が破魔宿る結界を後方へと張り、霊気との彼我の距離を的確にしていた。
 彼の背にはヒトガタの霊符たちが警戒体勢をとっていた。
「飛んでいけるのなら、僕もそうしようかな」
 手のひらを合わせて烏天狗へと変化したナーバもまた飛翔し、行き合わせた仲間たちとともに鳥居を抜けていく。

「抜けたァッ!!」
 鳥居を抜ける瞬間、速度そのままに降下したレテイシャがその健脚で大地を叩き、跳躍した。
 彼女の目に映ったのは彼岸の花が咲き乱れ、ヒトガタの符が舞う、虞に満ちた世界であった。
「新たな猟兵たちよ」
 大祓骸魂の声が、わん、と場に渡った。電波と虞を伝い空気が震える。
 跳躍による加速を得たレテイシャが符の円弧の中心――妖怪たちをなぎ払い大祓骸魂へと体当たりをすれば、敵の鬼手が番傘をつまみ盾とした。
「ッ」
 叩きつける風の如く。
 番傘に弾かれるも着地の勢いで踏みとどまったレテイシャが片足を軸に動きを切り替えた。一歩踏み込めば魔力が吹き荒れて番傘を煽る。
 動線が開かれた。
 魔力を限界まで込め、蒼く発光する拳が大祓骸魂を撃ち抜いた。
「愛するモノを永遠に手元に置いときたい、って気持ちはわからなくはねぇよ、だけどなぁ!」
 手首をスナップさせた一撃が大祓骸魂を地面に叩きつける。
「相手が望んでもいねぇのに強引に連れて行こうとするなんざ愛じゃねぇ、只の我欲だぜ!」
 直ぐに鬼の手が彼女を掬い上げ、神智を越えた虞が放たれた。
「貴女は ただ待つだけの 耐える愛は経験したことがあるのですか」
 明らかに狂おうとしている世界を、ただ見守るだけの。
 究極妖怪の言葉が世界に響く。ゲイン塔を中心に、大祓骸魂の狂気じみた愛が侵食していく。
「この世界が大好きなら、世界を育む命と、世界の未来を信じて欲しかったです」
 緋、蒼、翠と三色の魔力の数多の矢が昏き時へ堕ちようとしている場を飛翔した。
 仄々は様々な冒険へと赴くなか、たくさんの生命を見てきた。聞いてきた。
 色々な形を持つ愛は幸せな時を刻み、進み、それが過去となり骸の海へと流れても蓄積していくものなのかもしれない。
 信じ切れなかった、彼女の咎。
 神智を越えた虞は目に見えぬもの。仄々は風で祓い、炎で浄化させ、癒しの水の矢で射貫く。
 虞が薄れれば敵の繰る懐刀の軌道が目についた。
「邪神は滅ぼさねばならぬ。歪んだ愛に世界が砕かれる前に討伐せねばなるまい」
 多摘から発された声はひとしお身にしみた後悔が僅かに含まれていて。
 雨にもならぬ音を受け、大祓骸魂の番傘がくるりと回った。
 龍の身をくねらせて虚空を行く多摘の背から符に宿る式神たちが飛翔した。撒かれた符は多摘の分身として呪殺弾を撃つ。
 牽制の攻撃に懐刀「生と死を繋ぐもの」が一本、また一本と多摘の方へ縁を紡ぎ始めた。
 敢えてゆるりと龍体を動かして、結界神珠で結界を構築する多摘。長き身の部位に溜まる霊力の輝きは星を宿しているかのようだ。
 多摘が懐刀を引きつけるなか、駆けていくのはナーバ。
 霊木から作られた木剣は知り合いの妖怪から譲ってもらったもの――ここは、妖怪たちが大切に想っている世界。東方親分の言葉に決起した妖怪たちが守りたいと思っている世界。
 応えたい、伝えたいとナーバが柄を握りこむ。
 場に満ちる虞からそれを読み取った大祓骸魂が呟く。
「守る愛 そう 私は無情な時を進む彼の世界を守りたい 縁が 繋がりました」
 ナーバの左胸へと飛来し刺し貫く懐刀。
「――ッ、残念。致命傷にはならないよ」
 一度引こうとする懐刀を胸に捕らえたまま、ナーバが跳ぶ。繋がった念動の糸が大祓骸魂の元へと彼を引いてくれた。
「ブラックタールだからとはいえ刺し貫かれれば痛い……だけど僕は止まらないよ」
 妖怪たちの愛が直接、大祓骸魂を討つためにも。
 猫又の姿を取るナーバが霊木剣を振るった。袈裟斬りから着地とともに返した一刀が横一文字を描く。
 その時、仄々の虞を迎撃する矢が変じ地平に突風を吹かせた。火の粉や水飛沫が乱舞し、視界が散る彼岸花の色へと染まる。
 緋、蒼、翠の魔力色に交わる朱。
 ナーバ、そして突撃してくるランさんへ番傘を張り防御する大祓骸魂であったが、ランさんの背に仄々の姿は無かった。
 瞬間、魔力の矢が敵を射貫く――前方へと注意を向けていた大祓骸魂の背を。
「静かな眠りへと還る一手です」
 空でランさんから降りて落下の最中にあった仄々が、現れた龍神の身体に乗った。
 生と死を繋ぐものを払い、転移した多摘だった。
「愛し子の郷を歪んだ愛に委ねるわけにはいかぬ」
 龍の鱗が開くが如くの覇気が多摘から放たれる。
 破魔を宿す全力のブレス攻撃が大祓骸魂へと叩きつけられた。

 祓われゆく虞。世界に根付くはずの彼岸花が少しずつ消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【電脳の箱庭】

そのヤンデレ的UDCアース愛は解らなくないけど、
家出中とはいえ、故郷がなくなるのは困るよね!

アイさん、冬香さんと頷き合ったら、
【リオ・セレステ】に乗って鳥居を駆け抜け……って、
なんで!? アイさんなんでダッシュ!?

私たち山道とかダメなタイプだよね!?
アクセル開けちゃったし、わたしももう止まれないし!

「アイさーん! オベイロン呼んで-!?」

冬香さんに続いて鳥居についたけど、
アイさんは追ってきていなくて……声、とどかなかったかー(汗)

なら、アイさんが来る前にダメージを与えて、
トドメをお願いしちゃおう。

冬香さんの蹴技に続いて、
【テスカトリポカの鏡】で妖怪もいっしょに攻撃しちゃうね!


アイ・リスパー
【電脳の箱庭】
「この重ね鳥居の先に居るのですね……。
今回の騒動の元凶、大祓骸魂が……」

霊山に伸びる重ね鳥居を見上げながら、仲間の理緒さん、冬香さんと視線を合わせて頷きます。
そして、全力疾走で重ね鳥居を駆け抜けて行こうとし……

「だ、だめです、理緒さん、冬香さん~。もう走れません~」

運動音痴が祟ってヘロヘロになり、仲間に遅れながらもなんとか大祓骸魂の元まで辿り着くのでした。

「くっ、戦いの前に私を瀕死にするとは、さすがは最後の敵だけあって、なんという頭脳プレイでしょうか」

ですが、そのような姑息な手段には負けません!
大規模攻撃用の電脳魔術【破砕領域】で飛来する懐刀ごと吹き飛ばしてあげますっ!


緋薙・冬香
【電脳の箱庭】
まさか、またここを走り抜けることになるなんてね
アイさん、理緒さん準備オッケー?
それじゃ早速……ってアイさん離脱早いわよ?!

ええい、仕方ない
【血統覚醒】で身体能力強化
理緒さん先に行って足止めしてるわ!
アイさんをよろしく!

大祓骸魂を見つけたら先手必勝!
百鬼夜行をジャンプで回避しつつ
大祓骸魂目掛けて【魅せる脚】の飛び蹴りを攻撃力重視で!
敵陣に飛び込んだら攻撃回数重視に切り替え
足払いや回し蹴りで周りの妖怪たちを気絶させていくわ
足が届かない場所は理緒さんにお任せするわね

真打は後からやってくるってね
アイさんのUCを感知したら巻き込まれないように理緒さんと素早く退避
アイさんトドメいっちゃって!



「この連ね鳥居の先に居るのですね……。今回の騒動の元凶、大祓骸魂が……」
 虞に満ちた世界はカタストロフへの道を辿る。
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は青白く輝く連ね鳥居を見上げ、息をのみ呟いた。その赤の眸には確かな決意。
「まさか、またここを走り抜けることになるなんてね。出る先は大祓骸魂の元だけど。アイさん、理緒さん、準備はオッケー?」
 緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)の言葉に、うん! と菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)。
「いつでもオッケーだよ。ヤンデレ的UDCアース愛は解らなくないけど、家出中とはいえ、故郷がなくなるのは困るから。みんな、頑張って行こうね」
 目と目を合わせて三人はしっかりと頷き合って、いざ、鳥居へ!
 だがしかし。
 スタートは同じ気持ちでも、現実の一歩目は大きく異なるものであった。
 六輪の装甲車となった空色のリオ・セレステに乗り込んだ理緒は、アクセルを開いたもの。
 冬香はモデル業を活かした健脚ぶりを魅せて、狩人たらん華やかな走りを。
 ――そしてアイは頑張った。彼女なりの全力疾走で連ね鳥居を駆け抜けて行こうとしたのだが……アイは極度の運動音痴であった。それこそ、生まれた初期に対地設定なんかがバグってたんじゃないかというレベルで。
 直ぐにヘロった。
「だ、だめです、理緒さん、冬香さん~。もう走れません~」
「えっえぇえぇぇ! なんで!? アイさんなんでダッシュ!?」
「アイさん離脱早いわよ?!」
「わたしたち山道とかダメなタイプだよね!?」
 理緒と冬香が驚愕の表情になる。いやまさかそんな、こんな事態になるとは。
 ええい、仕方ない、と冬香が迷いを捨てた。よくある事態だ。主に、学生のマラソンとかで。一緒に走ろうね♪ と言いつつも、自身のペースを崩さない女子の。
「理緒さん先に行って足止めしてるわ! アイさんをよろしく!」
「冬香さんそんな無茶振りを……っ! アクセル開けちゃったし、わたしももう止まれないし!」
 あわわ、と理緒が自身の身体を前後で右往左往。振り向いたり振り返ったり。だがリオ・セレステは無情に進んでいく。
「アイさーん! オベイロン呼んでー!?」
 という理緒の声は届いたのか届かなかったのか……。
 遠ざかる仲間を見送りながらも、アイは震える脚を懸命に前へと出す。

 鳥居の護道を抜ければより濃い虞。
「抜けたわね!」
 圧縮した大気を駆動力に――虞も巻き込んだ冬香の着地からの跳躍は、その身に纏わりつかんとする虞を払い、高く、空中へと。
 赤く渦巻く霧の中、彼岸の花畑が荒れた中、ヒトガタの符が白く輝き空を舞う。
「いらっしゃい 猟兵よ」
 空間のあちこちから渡るその声は大祓骸魂のもの。
「捉えたっ」
 跳躍の最中に冬香は空を蹴って方向転換。連なり舞う符の中心点へと飛び込んだ。
 レガリアスシューズを駆使し身を捻った冬香の身体はばねのように、そして魅せる脚はしなる鞭の如く。飛び蹴りが大祓骸魂へと放たれた。
「ッ」
 直撃の瞬間、番傘を閉じた大祓骸魂は崩された体勢を再び開いた傘で立て直す。
「ああっ大祓骸魂様ッ」
「虞が……!」
 オブリビオン化した妖怪たちが言葉を敵へと掛ける。
「ちょっと退いて頂戴、ね、ッ!」
 サッカーボールよろしく妖怪たちを蹴り上げ、または蹴り飛ばしていく冬香。片脚を軸にした回し蹴りからステップを踏みもう片方の脚へと軸を切り替えて。止まらぬ蹴撃を放っていく。
「冬香さん、はっやい……!」
 走行速度が一定の理緒とは違い、まさに空翔けるが如くの勢いで突き進んだ冬香。理緒が呟きながらも後ろを振り返る。――アイは追ってきていないようだ。
「あちゃぁ……声、とどかなかったかー。うん、じゃあ先にやっちゃおう」
 リオ・セレステと同期するLVTP-X3rd-vanの画面も並行して叩き、大口径主砲の発射形態へと移行する理緒。
「射線は……クリア! いっちゃえー!」
 最高値まで上げた主砲が光熱線砲を放った。周囲の虞がその衝撃に吹き飛ばされて大海を割るように妖怪たちが撃破されていく。
「…… ああ 骸魂 先に骸の海へと還るのですね――還りを 待っていて」
 祓われていく骸魂へ、美しき声を紡ぎ届ける大祓骸魂。
 霞を重ねたような虞を纏い、敵はゆるりと動く。
「逃がさないわよ」
 冬香が言うも、妖怪たちが壁となり立ちはだかった。

 どのくらいの時間が経っただろうか。
 輝く鳥居。その最後の柱へ手をついてへたりこむアイ。
「……くっ……、……戦いの、前に……私を瀕死にする、とは……さすがは……最後の敵だけあって――なんという頭脳プレイでしょうか」
 息も絶え絶えであった。
 けれども止まっていれば場の『空気』を読み取れる。彼女の馴染む電界を構築できる。荒い呼吸は直ぐにおさまった。
「ですが、そのような姑息な手段には負けません!」
 電脳魔術を発露させ、不確定性原理へ干渉するアイ。
「反粒子生成確認。反粒子ビームによる対消滅攻撃、開始します」
 懐刀とそれを伝う敵の念動力。広範に放たれた敵の力は、逆さに辿ってしまえば一点へと集中する。
「真打は後からやってくるってね。アイさん、いっちゃって!」
 そう声を上げが冬香が理緒と場を明け渡して後退する。
 その軌道で虞を灼き祓う反粒子ビームが懐刀「生と死を繋ぐもの」と縁を辿り、大祓骸魂へと到達した。
 瞬間的に破砕領域が鮮やかな図を描き、爆発する
 ――ああ これも縁 また 繋いでみせますとも――
 大爆発のなか、吹き飛ぶ虞に紛れて大祓骸魂の意思が電波に乗って木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

香神乃・饗
志崎さん(f17340)と
逃げ足には自信があるっす!
志崎さん、たすきいらないっすか?
鉢巻もあるっす!気合が入るっす!
カッコいいっす!

反射的に脱ぎ捨てられた羽織を受け取り畳んでた
は!準備できてるっす!
俺もいくっす!

全力で走るっす!
その上、香神写しで武器増やし
足に剛糸で苦無を括り付け一層早く走れる地形を作り利用し念の力も使い加速
誰よりも早く走るっす
強い意志で進むっす

接敵が近くなったら先手で敵の足をとめるっす
剛糸で跳べないように空に網を張り
婚礼衣装の裾でも苦無で地に縫い留めるっすか
しまっ!
攻撃が外れたふりのフェイントをかけ本命を隠し
志崎さん今っす!と目線で合図

死んでも離れないなら大人しく死んでるっす


志崎・輝
香神乃さん(f00169)と

走るのは嫌いじゃない
羽織は脱ぎ捨て
裾をたくし上げ
たすき、いる
ありが、鉢巻?ん、巻いてみる
襷で袂を留め額に鉢巻…いるかな?

香神乃さんは準備できた?
アタシ行ってくる

地を踏みつける一歩に力をのせて
空気抵抗すら吹き飛ばすよう
限界超えて更に加速して駆け抜ける

いた
呼吸は辛いけれど
まだ動けると限界を無視
一気に斬り込み接敵

手甲嵌めた手を強く握れば紫電が奔る
全力で放電させ
麻痺の力を纏わせ
女を護る力の全てを砕く
蹴撃織り交ぜ集まる妖怪を殴り伏せ強化を阻害

香神乃さんが作った隙を見逃さず
迅雷拳蹴撃で蹴り飛ばす
アンタ好き勝手しすぎだって

愛ってよくわからないけど
アンタのそれは独り善がりでしかない



 青白く輝く鳥居へ、次々と猟兵たちが入っていく。走るための準備もそれぞれだ。
 羽織を脱ぎ捨て、裾をたくし上げていた志崎・輝(紫怨の拳・f17340)は、あの、と声掛けた香神乃・饗(東風・f00169)へと振り返る。
「志崎さん、たすきいらないっすか?」
 そう言う本人は既にたすきを掛け終えたところであった。
「あ。たすき、いる」
 受け取り、ありがとうと言葉半ばで次がくる。
「鉢巻もあるっす!」
 鉢巻を頭で結びながらにかっと笑って言う饗に、僅かに目を瞠る輝。
「鉢巻? ん、巻いてみる」
 たすきで袂を留めて、額に鉢巻。
「ね、香神乃さん、……これいるかな?」
「カッコいいっす! 気合い入るっすよね!」
「う、うん、入る」
 額にぴしりと何かが嵌まればまあ確かに、と輝は頷いた。動きやすくなった体をほぐす。
「香神乃さんは準備できた? アタシもう行くけど――って」
「は! 準備できてるっす!」
 脱ぎ捨てた羽織を拾い畳んでいた饗の姿に、輝は「ありがとう」と今度はきちんと礼を言うことができた。

 青白く輝く鳥居の中は真白な道を走っているようだ。
 連なる柱で陰影が万華鏡のように変化し続けていて、熱なき焔のような色は黄泉の道なのだと改めて感じるほど。
 堅実に輝は走っていく。
 地を踏みつける一歩に力をのせて、前へ前へと。空気抵抗すら吹き飛ばすような意志を持ち。
 化身忍者である饗は何かを纏っている方が駆けやすいようだ。
 輝く視界に影を与え、遠心を振り切って走る。牽制にも見える彼の動きに死神の如き霊気はおいそれと近付けないようだ。
 輝の少し前を行っていた饗が「あ」と声を上げた。
「鳥居、抜けるっす!」
「……ん、あと少し――」
 ごう、と虞の満ちた世界は、狂った電波が吹き荒れていて先に到達した猟兵たちの手で彼岸の花畑が半ば朽ちていた。
 円弧に飛ぶヒトガタの符の中心点に、大祓骸魂は佇んでいた。
「いらっしゃい 新たな猟兵たちよ」
 ざざ、とノイズ混じりとなった声が虞を通じて場に渡った。
「縁を 繋ぎます」
 声が聞こえた刹那、苦無を持った饗が咄嗟になぎ払えば高らかな金属音。弾かれた懐刀「生と死を繋ぐもの」が軌道修正し弧を描いて饗へと向かっていく。
「っ」
 懐刀の飛来を受けながら饗が跳ぶ。
 一方、今までの走りで荒くなった呼吸が辛いもののまだ動けると判断した輝がやや前傾姿勢を取り、一気に接敵する。
「大祓骸魂様には近づかせぬ!」
 百鬼夜行を連ねる妖怪たちが壁になろうとするも手はある。
 輝が手甲を嵌めた手を強く握れば紫電が奔り、横撃ちに雷撃が翔けた。腕を振るえば広範ななぎ払い。
「うわぁぁ!」
「カミナリッ!!」
 妖怪たちを飲みこんでいた骸魂が祓われ、虚空で残滓の雷光が弾けた。
「怪我したくなきゃ退いて」
 振った手甲を翻せば、妖怪たちが払い飛ばされる。
 その時、たんっと張った何かを叩く音が輝の耳を打った。
 そこには敵の番傘を台に跳躍した饗の姿。一瞬目が合った。
 曲芸の如き軽やかな動きを見せる饗が鋼糸の網を構築していく。
 動けば動くほど、敵の傘は裂かれ、狛犬は砕けた。
 バラバラになった注連縄が辺りに散らばり、饗は敵の衣装の裾めがけて苦無を放てば、大祓骸魂が咄嗟に裾を捌いた。弾かれる。
「しまっ――」
 番傘は半ば下り、もう片手は婚礼衣装を掴む大祓骸魂。
「迎えにいかねば」
 饗が作った、敵が意識が逸らす一瞬を輝は見逃さなかった。
「アンタ好き勝手しすぎだって」
 雷電を纏った拳が一打、引き様に番傘を叩き退け、遠心を利かせた一打が大祓骸魂の胴へと入った。
 反射的に鬼の手が動こうとするも既に鋼糸で拘束されている。
 迅雷の正拳突きを放った輝が正中線を僅かに切り替えた。千鳥足の如き後退を刻む大祓骸魂へと片脚を軸に放つ右回し蹴りが撃ちこまれる。
「愛ってよくわからないけど、アンタのそれは独り善がりでしかないよね」

 ふ、と空気が嗤いに揺らいだ。
「いいのです これで」
 勝敗は決した。大祓骸魂は相変わらず淡々とした表情を見せ、消えていく。
「揺蕩う過去の海で 流れてくる愛しき時間を待ちます」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月01日


挿絵イラスト