大祓百鬼夜行㉕〜思ふはあなたひとり
●狂い咲く曼珠沙華
「みなさん! ついに大祓骸魂(おおはらえむくろだま)の元へと雲の道が繋がりました!」
千束・桜花(浪漫櫻の咲く頃に・f22716)は集まった猟兵たちへと明るく声をかけた。
カクリヨファンタズムとUDCアース、二つの世界を巻き込んだ戦いも、ついにはフィナーレを迎えるのだ。
「場所は東京スカイツリー、その最上部にある巨大構造物ゲイン塔です!」
大祓骸魂は、UDCアースを愛している。
愛しているからそこ、壊す、否、殺すのだと言う。
既に大祓骸魂はその懐刀をUDCアースの喉元に突きつけていると言っても過言ではない。
猟兵たちの迅速な行動が必要だ。
「現在、大祓骸魂の膨大な虞(おそれ)によって、東京上空はカクリヨファンタズムが如き空間となっております!」
それはつまり、普段の東京では起こり得ないようなことでも、今の東京では起こってもおかしくないということだ。
例えば大量の妖怪が現れたり、不思議なテレビショーが始まったり。
大祓骸魂は、ありとあらゆる手段を用いて、猟兵たちのことを排除しようとするだろう。
ならばこちらも、この戦争で体得したあらゆる手段を用いて戦うべきだ。
「西洋親分と戦ったときのように、窮地でなくても真の姿に変身することができます! うまく活かしてみてください!」
空間が虞で満たされているのだろうか。
正確な原理は分からないが、猟兵たちにとっては有利に働く。
利用しない手はないだろう。
「大祓骸魂の虞は確かに強力でした。しかし、これまでの皆さんの活躍で十分に減らせています! 勝機が見えてきましたよ!」
興奮気味に拳を握る桜花。
最後に、と少し加えて息を整える。
「カクリヨファンタズムとUDCアースの存亡は皆様の手にかかっています! では、ご武運を!」
桜花は明るく敬礼して、猟兵たちを送り出すのだった。
るーで
●ご挨拶
ごきげんよう、るーでです。
大祓骸魂がめちゃくちゃ好みなので出してみました。
戦争もついに決戦を迎えてドキドキですね!
●概要
ボス戦です。
大祓骸魂の雰囲気に合わせてかなりシリアス寄り、かつ強敵なので苦戦風な展開になるかと思います。
プレイングボーナスは「真の姿を晒して戦う(🔴は不要)」となっております。
それではよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『大祓骸魂』
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POW : 大祓百鬼夜行
【骸魂によってオブリビオン化した妖怪達】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[骸魂によってオブリビオン化した妖怪達]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 生と死を繋ぐもの
自身が装備する【懐刀「生と死を繋ぐもの」】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 虞神彼岸花
【神智を越えた虞(おそれ)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を狂気じみた愛を宿すヒガンバナで満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:菱伊
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天御鏡・百々
◎
真の姿を晒すぞ
「https://tw6.jp/gallery/?id=68841」
神器は神そのものと成らん
親分を初めとした妖怪達の身を挺した献身に報いるため
我の全力をもってお主を討ち果たそう!!
「『至上の光』よ! かの邪神の虞を祓い給え!」
背負う神鏡からの目潰し10を兼ねた聖なる神光(神罰5)で
敵のユーベルコードを封じて90秒以内の短期決戦だ
光で怯ませたところに一気に接近
真朱神楽(武器)の刃には破魔117の力を乗せ
防御の隙間をぬっての(鎧無視攻撃15)
渾身のなぎ払い35だ!!
防御の必要があれば
神通力(武器)による障壁(オーラ防御120、結界術20)を使うぞ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
●未来を映せアメノミカガミ
「なるほど、まるで神域だな」
東京スカイツリー頂上付、ゲイン塔にたどり着いた天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、辺りに咲き乱れる彼岸花を見て呟く。
ここは東京コンクリートジャングル、その最高度である。
もちろん平素であればこんなところに花が、それも川辺に咲くはずの彼岸花が咲くはずもない。
大祓骸魂の力の、虞の一端だ。
「待っていました、猟兵たちよ」
彼岸花に囲まれて大祓骸魂が微笑む。
風が赤い波を作り、その中央に立つ大祓骸魂を讃えているかのようだ。
「相対すならば、こちらも神威を見せねばなるまい」
百々の持つ鏡が、強い輝きを放つ。
どこからか照らされた光を反射しているのではない。
鏡面そのものに、光が宿っているのだ。
「親分を初めとした妖怪達の身を挺した献身に報いるため、我の全力をもってお主を討ち果たそう!!」
百々が吼えると、その背後に百々自身よりも大きな鏡が現れた。
これこそが真実と未来を映す、天神鏡である。
同時に、百々の纏う衣も金色に輝いていく。
「ああ、あなたも愛しているのですね。世界を、人々を」
懐刀を取り出した大祓骸魂の紅が、少しだけ緩む。
その暁の如き瞳に映すものがなんなのか、百々にはわからない。
わかっているのは、いますべきことのみだ。
「『至上の光』よ! かの邪神の虞を祓い給え!」
百々が手を掲げると同時に、背負う神鏡から光が放たれた。
業も、災も、全てを照らす神光だ。
大祓骸魂が、わずかに目を細める。
「これは……私の虞が……」
その光を浴びた大祓骸魂の身体を覆っていた虞が、まるで照らされた影のように消えていく。
虞が消え去るのを確認すると、百々は朱色の薙刀を構えて大祓骸魂へと駆けた。
「消させてもらった。ほんの僅かな時間だがな」
肉薄し、薙刀を振るう。
大祓骸魂はその刃を懐刀で弾いて、眼前の百々へと突いた。
百々はそれを、神通力で受けて逸らす。
「生と死を繋ぐもの、か」
すぐ横を通り過ぎた刃を見送る百々。
傍まで寄った大祓骸魂は百々を目で追いながら浅く微笑んだ。
「知っているのですね、私の懐刀。あなたも、過去に、永遠にしてあげましょう」
「断る。我が身に映すは真実と未来のみだ」
更に繰り出される大祓骸魂の斬撃を、神通力によって弾く。
今の大祓骸魂は、虞の大半を失っている。
膨大な虞を纏った攻撃であれば、こうはいかなかっただろう。
神鏡によって作り出した攻撃の機会は、残り数十秒。
いつまでも受け続けることは、できない。
「このなまくらを、随分と警戒してくれるのですね」
百々にぴったりと肉薄したまま、大祓骸魂は懐刀を振るう。
薙刀の間合いにしないためだ。
おそらく、この虞の消失が一時的なものであることは、気付いているのだ。
それでも百々は神通力で作り出した気の壁で、丁寧に懐刀を防ぐ。
虞は無くとも、懐刀の持つ生と死を繋ぐ力は失われていない。
それは懐刀の放つ禍々しい神気を見れば、すぐにわかった。
「無論だ。だからこそ、時間をかけさせるつもりはない」
大きく後ろに飛んで、大祓骸魂から距離を取る百々。
百々の背負う神鏡が、今一度強く輝く。
「何を……」
大祓骸魂が再び目を細めたその瞬間に、百々は再び肉薄した。
今度こそ、薙刀の間合いである。
「過去の亡霊よ。永遠など無いと知れ」
「っ!!」
周囲の彼岸花ごと斬り裂く百々のなぎ払いが、大祓骸魂の紅白の装束をさらに赤く染めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◎
確かに利用しない手は無い
好まない姿であっても、この仕事の達成以上に優先するべきものは無い
真の姿を解放する(月光に似た淡い光を纏い、犬歯が牙のように変化し瞳が輝く)
懐刀は数に惑わされないよう突破する一点を意識、邪魔になる懐刀のみ対応する
射撃で撃ち落としたり、軌道を見切り回避を試みる
対応する懐刀を突破に必要な物のみに絞る事で、手数の差を埋めたい
懐刀を突破した勢いで大祓骸魂へ接近、ユーベルコードで反撃
避け切れない懐刀は致命傷を避ける部位で受けてでも、傷を負っても身体が動くなら構わず進み、大祓骸魂の喉元へ喰らい付く
ここまで力を尽くした妖怪たちに報いる為にも、全力を以てこの反撃を叩き込む事だけを考える
●月下沙華
彼岸花に満たされたゲイン塔にたどり着いたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、辺りの様子を窺う。
大祓骸魂の纏う膨大な虞。
制御も困難であろうそれは、猟兵にすら力を与えているように感じた。
シキの身体を、光が覆う。
月の光にも似た、淡い光だ。
同時に、犬歯が急速に発達していく。
人狼の、より狼に近い姿。
この姿であれば、いつも以上の身体能力を発揮できると、シキにも感じられた。
(あまり好まない姿ではあるが……)
普段であれば、シキはこの姿になることを避けていた。
不意に変身してしまう満月の夜など、人前から姿を消すほどだ。
だが、仕事となれば、とりわけ、世界の存亡がかかる強敵との戦いとなれば話は別だ。
自身の好き嫌いか、勝利か。
優先すべきことは、わかっている。
(確かに利用しない手は無い)
溢れる力を確かめるように強く握りしめ、シキはコンクリートの足場を強く踏みしめた。
「ああ、良い夜ですね、猟兵のお方」
ふと、彼岸花の花畑の中から声が聞こえる。
少しのあどけなさを残していながら、誰にも揺るがせないという強い意志を感じる声だ。
「あんたが大祓骸魂、か」
答えを聞く必要は、ない。
シキの全身が、尋常ではない虞を感じ取っている。
夜空に瞳の輝きを残して、シキは駆け出した。
「せっかちですね」
くすりと笑う大祓骸魂。
同時に、シキの視界を無数の懐刀が埋め尽くした。
おそらく視野の外にも、それは広がっているだろう。
「ああ、あなたにも差し上げましょう、私の抱擁を」
赤い瞳を細めて大祓骸魂が両手を広げる。
それが、一斉攻撃の合図となった。
大祓骸魂の念力によって、懐刀は縦横無尽に飛び回る。
シキを囲って、次々に飛来した。
「流石に、多いな」
シキの判断は、冷静だ。
全てを撃ち落とすには、全てを受け止めるには、弾丸も手も足りない。
必要な分だけを、撃ち落とす必要がある。
懐刀の位置から大祓骸魂のもとまでのルートを考え、その過程で自身に刺さるものだけを、だ。
一瞬で算出した経路を、その脚力で一瞬で辿る。
それだけだ。
「いくぞ」
大祓骸魂に向けてか、それともここまで力を尽くした妖怪たちに向けてか。
小さく呟くと、彼岸花を踏みつけてシキは駆けた。
大きく踏み込み、すぐに横へ。
短い距離を動いたら懐のホルスターから抜いた拳銃で正面の懐刀を撃ち落とす。
反動を膂力で抑え込み、また前へ。
進行ルートにあれば撃ち落とし、左右から飛来するなら躱す。
それを続けて、大祓骸魂の元へ。
シキの動きが加速するにつれて、思考も加速していく。
そこで、ふと気付いた。
懐刀が、多すぎるのだ。
正面のものだけ撃ち落とすことすら、ままならない。
(ここから先は、回避が、迎撃が、間に合わん────っ!)
ならば。
シキはそこから引かずに前に出た。
腕で急所をカバーし、大祓骸魂の喉元へと一直線に。
(もとより、ここまで来たらもはや躱すつもりはなかったんだ)
懐刀が次々にシキの身体へと突き刺さる。
「オオオォォォ……ッ!!」
刃はそれほど鋭くはないため、その傷ひとつひとつは深くない。
だが、血が流れるたびに生と死の境界が近づいていることを感じた。
致命傷を避けるために盾にした腕や背中には、奇妙な喪失感すらある。
それでも、シキの瞳は大祓骸魂の白い首筋だけを見つめていた。
大祓骸魂が眼前に迫れば、もはや前方に懐刀は無い。
傷を負いながらも前進を続けた者だけが得られる、その一瞬。
大祓骸魂の口元が、わずかに動いた。
────おいで。
その言葉に誘われるかのように大祓骸魂の白い首筋に突き刺さる、シキの牙。
同時に、シキの背中にも懐刀が幾つも突き刺さっていく。
ふたりの鮮血が、彼岸花をより赤く染めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
葬・祝
恋しい、愛しい、帰りたい、……ねぇ、君は君なりに故郷を愛したのでしょうけれど
カクリヨとUDCアースにとっては、君は破滅の足音でしかないですからねぇ
恋しさのあまりに喰い殺してしまう、なぁんて話もありますが、私たちは御免ですよ
真の姿へ戻りましょう
本来の厄災の青年の姿の更にその奥に秘されたそれ
瘴気と悍気を纏う、死した者へ
全身痛くて堪らないから、この姿、嫌いなんですけどね
まあ、傷のひとつやふたつ増えてもこの姿なら今更ですね
【誘惑、おびき寄せ】で攻撃を引き寄せ、タイミングを合わせて【カウンター、呪詛、生命力吸収、恐怖を与える、精神攻撃】+UC
数多の猟兵たちの声が、君の【慰め】となるよう祈っておきますよ
●鈴の音
ちりぃん。
まるで血のように赤く咲いた彼岸花の花畑に、鈴の音が聞こえる。
鈴の音が聞こえたら近づくなというのは、誰が言い出したのだろうか。
ちりぃん。
ゲイン塔で猟兵たちを待ち構えていた大祓骸魂が、顔を上げる。
危険を知らせるために、誰かが鈴を付けたのだから。
ちりぃん。
彼岸花の咲き乱れるこの場所に現れたのは、悪霊だった。
もし、鈴の音の方から近づいてきたときはどうすればいいのだろうか。
「災厄がその気になれば、どうにもならないのですけど、ねぇ」
鈴の主、葬・祝( ・f27942)は銀色の瞳にかかる黒髪を揺らして微笑んだ。
「きっとあなたも、その類の存在なのでしょう」
祝の声に、大祓骸魂は顔を上げる。
その赤い瞳に映るのは、少年の姿。
「恋しい、愛しい、帰りたい、……ねぇ、君は君なりに故郷を愛したのでしょうけれど、カクリヨとUDCアースにとっては、君は破滅の足音でしかないですからねぇ」
容姿は幼いながらも、達観したように大人びた言葉。
大祓骸魂が、くすりと笑う。
「可笑しなことを。あなたも愛おしい人には、同じではないのですか? あなたからは、此方側の匂いがします」
姿こそ人のようにしていても、祝は死者だ。
人に厄をもたらす悪霊だ。
それは祝自身が、一番わかっている。
「そうですねぇ」
無論、思い当たることもある。
常人が祝と長く共にあれば、意図せず相手に災厄が降りかかることになるだろう。
「──だからこそ、私は、私たちは御免なんですよ、恋しさのあまりに喰い殺してしまう、なぁんて話は」
祝は髪に付けていた鈴を外す。
辺りの彼岸花たちが、ざわめき出した。
小さな嗚咽と共に、祝の姿が、変わっていく。
肌は血の気が引いて青白く。
髪は傷んで艶を失っていく。
代わりに、その体から溢れる瘴気と悍気。
「やはり死人、過去の存在なのですね」
共に彼岸の者。
懐刀を握る大祓骸魂が、微笑んだ。
一歩、また一歩。
彼岸花の中を進む大祓骸魂。
対する祝は、動かない。
触れてもいないのに身体に傷が走り、血が流れる。
まるで、死したそのときその瞬間の姿だ。
(嗚呼、痛い。苦しい。そういえばこんな感覚だったでしょうか)
爪の剥がれた手を喉元に添える祝の前に、やってきた大祓骸魂。
「さて、私のなまくらは、あなたに効果があるのでしょうか」
大祓骸魂はその手にした懐刀を、まっすぐに祝いへと突き出した。
さくり。
物理的な切れ味は大したことないとはいえ、黒鉄色の刃は、容易に祝の肌を傷つける。
だが、祝はその刃を拒絶しない。
ただ死肉に、傷がひとつ増えただけだ。
「避けないのですね。たしかにこれはあなたを切断するほどの力はありませんが……」
返り血が頬についた大祓骸魂が、大きな瞳で祝を見上げる。
それを祝いが、虚ろな目で見返した。
「もう、手遅れですから」
じくり。
祝の掠れた声と共に、大祓骸魂の胸に痛みが広がる。
他の猟兵との戦いで負った傷がある場所だ。
傷は次第に熱を持ち、拡がり、周囲の肉を腐らせていく。
「これは……!」
さらに大祓骸魂を襲うのは、強烈な飢餓感。
渇いて、渇いて、今すぐに満たされたい衝動。
それが大祓骸魂の心を掻きむしるように苛む。
苦しそうに呻くと、大きく後ろへ下がって彼岸花の中へ。
(手傷は負わせましたけど、逃げられちゃいましたか……)
大祓骸魂が視界から消えると、祝は鈴を再び髪へと結いつける。
途端に、祝の姿は元に戻っていった。
祝が身体についていた血を拭うと、ひらりと舞い降りる秋色胡蝶。
蝶が祝の指に止まると、祝はそれを見て微笑む。
(心配いりませんよ、私は。あなたがいるんですから)
大祓骸魂が離れていったあとも、祝はしばらく彼岸花の中に佇んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
いやー随分と手子摺らせてくれたね
でも君も元を正せばUDCの親戚みたいなもんでしょ?
なら駄賃として、私の研究の為のデータになって貰うよ
さ、それじゃあ始めようか
決戦ってやつをさ!
●
圧縮空間より外装解凍
真の姿、解放
模造神器四刀流、これが私の今の全力
さあ、やろうか!
【偽書・焔神】起動
全ての剣に蒼炎を纏わせる
敵は妖怪軍団、相手にとって不足なし
四方に蒼炎を乗せた『斬撃波』を放って妖怪達を『吹き飛ばし』、蒼炎で『焼却』しながら突き進む!
更に『天候操作』妖怪達に対して強風を叩き付けて火災旋風を起こす!
そして接近したら4剣で『なぎ払い』からの『串刺し』のコンビネーションで攻撃
蒼炎で燃え尽きろ!
アドリブ等歓迎
●神器のカルテット
ゲイン塔に突如出現した曼珠沙華の花畑の中心。
大祓骸魂はそこに座り込んでいた。
祈るように指を組み、空を見上げている。
スカイツリーを中心に東京の空を埋め尽くす虞は、UDCアースの空をカクリヨファンタズムのように作り変えてしまった。
くしゃり、と葉の踏まれる音と共に、月夜・玲(頂の探究者・f01605)が辿り着いたのはそんな時だった。
「いやー随分と手子摺らせてくれたね」
青の交じる長い黒髪を揺らして、大祓骸魂の元へと近づいていく。
朱色に満ちたこの場所では、その髪がやけに目立っていた。
「お待ちしていました、猟兵よ。妖怪たちの相手はいかがでしたか?」
大祓骸魂が、懐刀を取り出しながら、玲へと語りかける。
対して玲は、肩を竦めて苦笑した。
「親分の方々から木っ端妖怪まで、よくもまあ色々揃えたもので」
これまで、それなりの数の相手と、幾合も打ち合うこととなった。
特に竜神親分との戦いは、苛烈だった。
多くの戦闘データが取れたのは良かったが……。
ここに来るまでの戦いを思い出して、ふと口元が緩んだ。
「でも君も元を正せばUDCの親戚みたいなもんでしょ? なら駄賃として、私の研究の為のデータになって貰うよ」
膨大な虞を持つ大祓骸魂のデータは、きっと新たな疑似邪神の開発に役立つ。
楽しみは、尽きない。
「さ、それじゃあ始めようか。決戦ってやつをさ!」
玲はそう宣言すると、空に手を掲げる。
何処からともなくやってきて、玲を包む白い光
それが形を作り、重さを作り、やがて玲の脚で、背中で、外装の形を確定させていく。
「待っていてはもらえませんか? ほんのあとひと刺しなのです」
大祓骸魂が、困ったように笑いながら呟く。
答えは、わかりきっている。
「そりゃあ、ダメでしょ」
両手と、バックアタッチメントから伸びるアーム機構。
合わせて四刀を握って、玲は大祓骸魂の元へと駆け出した。
「嗚呼、そうでしょうとも。あなたもまたこの世界を愛しているのでしょうから」
大祓骸魂が手を掲げると、彼岸花に覆われたゲイン塔から湧き出したのは、骸魂によってオブリビオン化した妖怪たちだ。
数百、数千とも思える妖怪たちが、突如として地面より出現したのだ。
「相手にとって不足なし!」
まずは一刀、力を込めて玲は振るう。
その刃が纏うは蒼炎。
全てを焼き尽くす、焔神の炎だ。
刃より放たれた炎の斬撃波が妖怪たちの先鋒を焼き、炸裂して妖怪たちを吹き飛ばすと共に炎を撒き散らした。
「次!」
反対の手で握っていた刀を振り、更に背中のアームも交差するように刀を振って、次々に斬撃波を飛ばしていく。
真っ向から斬り合っていては、いくら身体があっても足りないのだ。
幸いここには、燃えるものが溢れている。
(大祓骸魂はどこに……)
火の点いた彼岸花がちりちりと燃えていくなかを、玲は進む。
正面で玲を待ち受ける妖怪を背中のアームの刀でなぎ払い、横から飛び出してきた妖怪を手にした刀で貫いた。
オブリビオンと化した妖怪は、次々に現れる。
「キリがないな!」
玲が刀を掲げると、強風が巻き起こる。
これまで撒いてきた蒼炎を、その風で束ねた。
彼岸花を巻き上げる火炎旋風。
それが、妖怪たちへと向けられる。
「こういうときは、纏めて焼き払うに限る!」
立ち上る炎が、妖怪たちを、その骸魂を焼く。
その様は、まるで青い彼岸花のようだった。
「妖怪たちでは、相手にならないようですね」
炎の渦の中心に立っていたのは、無数の妖怪たちに隠れていた大祓骸魂だ。
「見つけたよ!」
標的が見え、邪魔者が居なくなったとあれば、やることはひとつだ。
大きく踏み込んで前へ進み、玲は四刀を片側へと構える。
身体全体を廻して、一息に薙いだ。
「……っ!」
懐刀を盾のように構えて受ける大祓骸魂。
斬撃は、浅い。
だが玲の攻撃はここで止まらない。
なぎ払いから更にもう半周、身体を廻す。
敵の体から刀が最も離れたその瞬間、力の方向をまっすぐに大祓骸魂へ。
つまり、至近距離における最長の加速を得た突きだ。
まっすぐに繰り出された4本の刃を躱すことはできず、大祓骸魂の身体へと突き刺さった。
刃から、蒼炎が大祓骸魂へと移る。
「───燃え尽きろ!」
玲が吼えると、まるで爆発が起きたかのように蒼炎が広がって、大祓骸魂を包み込んだ。
大成功
🔵🔵🔵
マリア・ルート
歓迎されない帰還、と言うべきか。
いいだろう、貴様がそれを受け入れられぬなら、私が嫌と言うほど教え込ませてやろう。
如何に数をそろえようとも、個の戦力で凌駕することもある。
(範囲攻撃)(なぎ払い)でプルガトリウムを振るい、煉獄の刃を炎の雨と化し降らせて(存在感)(精神攻撃)としよう。戦慄した者がいれば僥倖だ。
本命は大祓骸魂、隙を見て(オーラ防御)で防御しながら肉薄を図る。
肉薄したらプルガトリウムでホールドし、存分に焼き尽くしてやるとしよう。
貴様は現在(いま)を生きる存在にとって危険な存在だ。
故に斬る。焼く。処刑する。悪く思うな。
恨むなら存分に恨むがいい。この私を、そして貴様の運命をな。
●紅の華
「歓迎されない帰還、と言うべきか」
ゲイン塔に咲いた無数の彼岸花。
その中に溶け込むような赤い髪を揺らして、マリア・ルート(紅の姫・f15057)は前へ出る。
「嗚呼、どうしてですか? 私は世界を超えるほどにも、UDCアースを愛しているというのに。猟兵よ、私の愛をあなたに阻めますか」
懐刀を抱えた大祓骸魂が、自らに冷たい視線を向けるマリアに対して微笑む。
自らの愛を、花びら一枚ほども疑っていないのだ。
その独善的な愛に、相手の気持ちを推し量るつもりのない態度に、マリアは怒りを募らせた。
「いいだろう、貴様がそれを受け入れられぬなら、私が嫌と言うほど教え込ませてやろう」
炎を纏う剣プルガトリウムが、その心に呼応するかのように猛る。
周囲の温度が上がり、マリアの足元の彼岸花がちりちりと焼けた。
「なんて熱い愛……」
大祓骸魂の赤い瞳に、煉獄の炎が映る。
そっと小さな手を掲げると、周囲に現れたのは、無数の妖怪。
一匹一匹が、それなりの強さを持っているのは、マリアにはすぐにわかった。
だがそれでも、マリアの相手ではない。
「邪魔をするな……!」
炎剣を振るうと、妖怪たちとマリアを隔てる障壁となるように、炎の雨が降る。
最も近くにいた妖怪たちが短い悲鳴を上げて、その炎に飲まれた。
プルガトリウムの炎は、只の炎ではない。
妖怪たちも虞によって強化されており、多少の炎では焼かれない強さはあるはずだった。
にも関わらず、燃えたのだ。
「わかったか? 私に寄れば灰燼と帰すことになる!」
同胞と彼岸花を巻き込んで燃える煉獄の炎を、その中心で堂々と立つ残酷な紅の姫を見て、妖怪たちは一歩、また一歩と下がる。
大祓骸魂を守る壁となるべき妖怪たちが、マリアに道を開けたのだ。
「貴様は現在を生きる存在にとって危険な存在だ
マリアが、燃え尽きた彼岸花で作られた道を進む。
「故に斬る。焼く。処刑する。悪く思うな」
それを迎えるように、大祓骸魂が懐刀をマリアへと振る。
だがその攻撃は、マリアには届かない。
懐刀がなまくらだからではない。
マリアの纏う気が厚く、懐刀ではそれを貫けなかったからだ。
「どうして……私の愛は、こんなにも深いのに」
「恨むなら存分に恨むがいい。この私を、そして貴様の運命をな」
大きく振りかぶった煉獄の剣を、マリアは袈裟懸けに振るう。
炎が一閃、大祓骸魂の身体を通り抜けると、そこに天を貫く炎の柱が立つのだった。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
「猟兵、上野・修介」
生憎と、この身体はただの人間だ。
故に所謂『真の姿』という物を持ってはいない。
この拳を形作るモノに特別な事はなく、ただ鍛練と場数と意地の積み重ねがあるのみ。
いつだって、今持ち得る全てを用いて戦ってきた。
故に、今此処に立つこの姿こそが『己が真の姿』である。
故に、いつもと変わらず
――為すべきを定め、心を水鏡に
靴を脱ぎ、グローブを外し、バンテージを解く。
呼吸を整え、余分な力を抜く。
心身より余分なモノを排し、敵を『観』据える。
構えず、迎え入れる様に、自然体にて立つ。
狙うは相手の刃がこの身に迫る交差の一瞬。
その一瞬に渾身にて放つはただ一撃。
「推して参る」
●上野・修介という男
彼岸花に包まれて佇む大祓骸魂。
くしゃり、くしゃりと葉や茎を踏み分ける音で、大祓骸魂が顔を上げる。
そこに立っていたのは、顔に傷のある男だ。
「猟兵、上野・修介」
靴を脱ぎ、グローブを外しながら、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が名乗る。
バンテージを解いて、一歩前へ。
大祓骸魂の様子を観察しながら、細く長く息を吐いた。
「推して参る」
あえてその拳を握らずに立つ。
力めば力むほど、筋力による単純な攻撃力は上がる。
だが、修介が拳法に用いるのは、真逆の方法──脱力だ。
周囲の妖怪たちが、修介へと襲いかかる。
だが修介はそれでも、力を入れない。
軽く左右にステップを踏んで、状況を見る。
あくまで必要最低限の動きだ。
「あなたは……他の方のように姿が変わるわけではないのですね」
懐刀を取り出した大祓骸魂が、戦いになっても姿の変わらない修介を見て首を傾げる。
他の猟兵たちの戦いは、オブリビオンと同様に派手なものが多い。
炎を燃やし、雷鳴を轟かせ、土地すらも作り変える。
真の姿を晒したときは、完全に人外になる者すらいる。
「生憎と、この身体はただの人間だ」
修介のできることは、人間の範疇から一歩踏み出した程度。
ただそれを、人外に敵う領域まで極めただけなのだ。
「ただの人間が、私の愛を妨げようとするのですか」
眼前に立つ猟兵がただの人間を名乗ったことが気に触ったのか、大祓骸魂の眉間に小さなシワが寄る。
懐刀を握る手にも、力が入っていた。
彼岸花を揺らして、大祓骸魂が修介へと駆ける。
「ただの人間、だからこそだ」
修介は、依然として構えない。
まるで迎え入れるように、立っているだけだ。
ひたすらに、大祓骸魂の目を、顔を、手足を、観続ける。
そうして大祓骸魂が、手の届く範囲までやってきたその瞬間である。
(────ここか)
突き出された懐刀を、身体を傾けて躱す。
同時に深く腰を落として、ここに来て初めて力み、強く踏み込む。
地面から脚、腰それから上半身まで伝わる力。
間近に迫った大祓骸魂の身体に、瞬間的に加速した修介の拳が突き刺さる。
「く、ぁ……っ!!」
大祓骸魂の小柄な身体がくの字に折れて、空気が漏れた。
一瞬遅れて、大祓骸魂の身体が後方へと弾き飛ばされる。
再び細い息を長く吐く修介。
千切れた彼岸花の花びらが、塔の上から舞っていった。
大成功
🔵🔵🔵
霑国・永一
◎
やっとお出ましかぁ
頂上で余裕のお出迎え。慢心できるほどに強いわけだ。
っと、此方もタイムリミット。《俺》が出ちゃうや。任せたよ――
『待ったのは俺様もだぜ、ガキ!真の姿で強敵と戦えるこの時をな!』
さァて、狂気の禁癒を使って派手に飛び回るか!大祓骸魂は勿論狙うが、飛来する懐刀も銃撃で撃ち落としてやるぜ!高速飛行で囲まれねぇようにすんのと、塔の一部を盾にしたりしつつ攻める!
この銃撃での迎撃も本体狙いも防いだり躱したりの意思は盗まれる!大人しく受け入れてくたばれ!
ついでに傷は治らねぇからよ!お前の懐刀と同じでいずれは殺せる!だが俺様は悠長じゃねぇ、すぐ死ね!癪だがテメーに長期戦は俺様が不利だしな!
●狂気の弾丸
東京の空を埋める妖怪たち。
それが、大祓骸魂を守るために猟兵たちと戦っている。
激しい戦いの光が、音が、匂いが、ゲイン塔を覆っている。
だが、彼岸花が音を遠ざけているのだろうか、塔の最上部である戦場で、大祓骸魂のいるこの一帯だけがやけに静かだった。
花を踏む小さな音で、大祓骸魂は顔を上げた。
「待っていました、猟兵よ」
そこに立っていたのは、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)だった。
妖怪たちの目を盗み、ここまで抜け出してきたのだ。
「そういうときは、今来たところって言って欲しいな」
そういって、永一はへらっと笑う。
大祓骸魂は、わけがわからず首を傾げた。
「もうじき終わります。UDCアースの全てが、私の愛で」
懐刀を抱きしめて、永一に改めて告げる。
止めるのなら、今しかないと。
「っと、此方もタイムリミット。《俺》が出ちゃうや。任せたよ───」
永一が、瞼を下ろす。
一瞬置いて改めて目を開けたとき、永一の瞳は狂気に満ちていた。
『待ったのは俺様もだぜ、ガキ! 思う存分に力を振るえるこの時をな!』
「これは……」
目の前での豹変ぶりに、さすがの大祓骸魂にも困惑の色が見える。
警戒心のあらわれか、無数の懐刀が複製され、大祓骸魂を囲うように配置された。
『わけがわかんねえかぁ! そのまま死ね!』
永一が、空を駆ける。
音よりも速く、世界の壁を破壊するかのように。
大祓骸魂の懐刀が、それを迎え撃つ。
自身に向けて懐刀が飛来してきたことに気付くまで、永一は一旦空へと逃れた。
後からついてくる懐刀。
さらに加速して、引き離し、空に置いてきた。
素早く戻ってきた永一が、拳銃を大祓骸魂へと向ける。
───無音。
永一の手に返ってきた反動だけが、その攻撃を認識できていただろう。
自然に放たれた弾丸が、大祓骸魂の身体を穿つ。
回避も、防御も、行えなかった。
意識すらできなかった。
血が溢れてから、それが永一の弾丸なのだと、大祓骸魂は気付いた。
『俺様の弾丸はテメーの懐刀と同じで大した威力じゃぁない! だが傷は消えねぇ! 血は止まらねぇ! いずれは死ぬぜ!』
傷口を抑える大祓骸魂を見て、永一が笑う。
置き去りにした懐刀が戻ってくるまで、あと数秒。
『だが俺様は俺様は悠長じゃねぇ、すぐ死ね! ヒハハハァ!』
二度、三度、トリガーを引く。
飛び散った血が、曼珠沙華をより赤く染めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
◎
真の姿は半獣半人の人狼
愛するからこそ殺したい、だなんて
ああ、なんておぞましい愛(よくぼう)かしら!
今回の戦争は殺してもつまらない、復讐し甲斐のない相手ばかりだったけれど
あなたは楽しませてくれそうね?
降り注ぐ刃はなまくらで
すぐ死んでしまう事はないみたい?
ならやり方はあるかしら
【野生の勘】で致命傷だけは避けながら
【逃げ足】活かして立ち回る
切り裂き、突き刺し、打ち据えられて
【継戦能力】【激痛耐性】耐えながら
【雌伏の時】をじっと待つ
……やっぱりダメね
いくら【誘惑】してみせても
あなたはメアリを見ていない
あーあ、嫉妬しちゃう
メアリだったらいくらでも
その愛(よくぼう)に応え(ふくしゅうし)てあげるのに!
●偏愛
「愛するからこそ殺したい、だなんて」
両手を赤らんだ頬に添えて、メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)が震えながら声を上げる。
「ああ、なんておぞましい愛かしら!」
メアリにはわかる。
大祓骸魂の、独り善がりな欲望が。
そんな存在を、オウガを、メアリは今まで幾度も見てきた。
方向性は違えど、メアリの嗅覚は大祓骸魂を狩るべき存在だと捉えていた。
ここはスカイツリータワーの頂点ゲイン塔にして彼岸花畑。
大祓骸魂の虞によって辺りに咲いた無数の彼岸花が、メアリの足元でくしゃりと折れる。
「わかりますか、私の愛が」
「さあ? でも、今回は殺してもつまらない、復讐し甲斐のない相手ばかりだったけれどあなたは楽しませてくれそうね?」
メアリの手足が、少し膨らみ、ふさふさと短い毛が生え、獣のものへと変わっていく。
赤い瞳をぎらぎらと輝かせると、姿勢を低く。
それから、弾けるようにメアリは跳んだ。
大祓骸魂へ向けて、まっすぐに。
だが、大祓骸魂を守る無数の懐刀がそれをただ見過ごすことはない。
メアリの後を追い、行く先を塞ぎ、包囲していく。
獣化したメアリの脚力は大したものだが、その全てを避けられるわけではない。
「……ッ!」
黒い刃が、メアリの手足に刺さる。
それほど深くはない。
血も多くは流れていない。
(大丈夫。すぐ死んでしまう事はないみたい。これなら……)
ゲイン塔の上を駆け回り、大祓骸魂へと近づけるルートを探す。
その間にも、懐刀はメアリの脚に、腕に、腹に、小さな傷を付けていく。
致命傷だけは避けているのだ。
この小さな傷の累積は、メアリを死に追いやりかねない一方で、メアリに復讐心を与えていた。
「……やっぱりダメね」
大祓骸魂との距離を詰めている最中に、メアリがぽつりと呟く。
懐刀の嵐はメアリを傷つけている。
だが、大祓骸魂の愛は、UDCアースにだけ向いているのが、メアリにはわかってしまった。
「あなたはメアリを見ていない」
自身に向けられた敵意や殺意、嗜虐心が強ければ強いほど、メアリの復讐は甘美になる。
すかすかの気持ちの攻撃では、メアリが燃え猛るには不十分なのだ。
「あーあ、嫉妬しちゃう」
大きく息を吐いて、その動きを逃げから前進へ。
床を強く蹴って、今度こそ大祓骸魂へとまっすぐに跳んだ。
進行方向には、まだまだ懐刀がいくつも浮遊している。
「メアリだったらいくらでもその愛に応えてあげるのに!」
身体に刺さっていく懐刀も気にせずに、メアリはその鋭い爪で大祓骸魂を斬り裂くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ベアータ・ベルトット
◎
大好きなメルト(f00394)と
真の姿開放―あの娘の前で晒したくなかった、黒い機械狼の体
メルト、背中乗んなさい
FBを展開。赤霧の闇に紛れて存在感を殺し、暗視を活かしダッシュ
霧に翻弄されてる妖怪に接撃し、致命傷にならない程度に血肉を捕食して力を充填&更に霧を放出
敵の死角から牽制の銃弾を乱れ撃ち。疑心に陥らせ妖怪達の意思統一を妨げる
永遠に留めたいのは、変わりゆく者を愛し守り抜ける自信が無いから。それがアンタの虞でしょ
私達は違う。必ず生きて幸せになれるって―信じてる
殺す為に振るう刀を、守る為の刀で砕く
メルトの温もりが力になる。リミッター解除。呼吸を合わせ、BFの一刃を突き通す
私達の全力を―喰らえ!
メルト・プティング
◎
大好きなベアータさん(f05212)と、彼女の故郷を守る為に
ちょっとしかない勇気を、振り絞って
真の姿のベアータさん(カッコイイ!好き!)の背中に跨って、自分たちに向かう攻撃を【オーラ防御】【かばう】でガード
『プラズマバイザー』による【索敵】【情報収集】で攻撃に適したポイントを探り、彼女に伝えます
絶対に…生きて二人で、UDCに帰るんだから!
ベアータさんのリミッター解除に合わせて《貴女ノ傍ニ》を発動して、真の姿である不定形な流体状態へ
彼女の背から飛び降りて横に並んで、ふたりで思いっきり、とびっきりの一撃を
【リミッター解除】【念動力】、これがボクの、ボク達の!全力、全開!!
●守るべき世界
東京、スカイツリータワー上空。
無数の妖怪たちが、このゲイン塔付近でひしめき合っている。
「これは……大祓骸魂のところまで行くのは骨が折れそうね」
少し離れたところから妖怪たちの様子を窺って、ベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)が呟く。
「うわっ、そうですねぇ……逃げちゃダメでしょうか」
隣に立つメルト・プティング(夢見る電脳タール・f00394)は、バイザーにばってん印を映して肩を落とした。
こめかみに指を当てて悩むメルトに、ベアータがちらりと目を向ける。
ベアータには、手段がないわけではない。
真の姿になることだ。
だが、その姿を見せたくない相手がすぐ側にいる。
気持ちというものは思いの外強く自身を縛る。
世界のために晒したくない姿で戦うか、それとも他の誰かが倒してくれるのを待つか。
一瞬ベアータの脳裏に過ぎる、後ろめたい気持ち。
隣からの視線に気付いて、はっと顔を上げる。
メルトのバイザーが、ベアータの顔を覗き込んでいた。
「ベアータさん、行きましょう!」
メルトがベアータの手に自身の手を重ねる。
メルトは、あまり好戦的な人間ではない。
戦いではサポート係に徹する事が多いし、敵に追われて逃げることもある。
だが、この戦いはUDCアースを、ベアータの故郷を守る戦いだ。
メルトの心の中にあるひとかけらの勇気。
それが、ベアータへと伝わっていく。
一度大きく深呼吸してから、にっと口角が上がった。
両手で頬を張って、気合を入れる。
「……当然!」
ベアータのサイボーグの身体が、作り変わっていく。
機械混じりでありながらも女性らしさを保っていた外装を捨てて、機械を全面に出した姿に。
四足と、大きな口、黒く染まる装甲。
黒い機械狼へとベアータの姿が変わった。
これこそが、ベアータの真の姿だ。
「メルト、背中乗んなさい!」
「はーい!」
隣の相棒へと声をかけると、元気よく返事をしてその背に飛び乗った。
(う、うう~~~! かっこいい! かっこいいですよベアータさん!)
メルトが思わずその背中に頬ずりしてしまいそうな勢いでしがみつくと、狼となったベアータは戦場へと一気に飛び込んだ。
「撹乱する! メルトはルートと守りをお願い!」
「合点です!」
ベアータの身体から放たれる赤霧。
それが妖怪たちを包み込んで、二人の姿を隠す。
どこか、どこへ言ったかと、妖怪たちがざわめく。
黒い狼の姿は、相棒のタールの姿は、妖怪がいくら探せど見えない。
そんな中で、ある妖怪が気付いた。
隣に、後ろに、居たはずの妖怪がいない。
どこからか、攻撃を受けているのだ。
その妖怪のすぐ後ろで、光る青い瞳。
次の瞬間には、その妖怪の身体の一部がベアータによって食いちぎられていた。
「次はあっちです!」
プラズマバイザーに表示される情報から敵の位置をベアータに伝えるメルト。
妖怪たちのあいだを縫うように駆けて、ふたりが次々に妖怪を倒していく。
無論、全ての妖怪がふたりを見失ったわけではない。
牛の頭を持つ妖怪が大きな武器を振りかぶり、ベアータへと振るう。
それに気付いたメルトが前のめりになり、手を掲げる。
「ひゃあっ!」
妖怪とメルトの間で弾けるオーラ。
武器がメルトに届くまでの間に、ベアータがその妖怪を撃ち抜いて蹴る。
「メルト、大丈夫!?」
「大丈夫です! どんどん行きましょう!」
そうして駆け巡る間に、妖怪たちは何処から攻撃がくるのかと辺りを窺うのみになり、動かなくなった。
霧の中から脱出したふたりが、彼岸花畑へと降り立つ。
「待っていました、猟兵たちよ」
ふたりの前に立っていたのは、大祓骸魂だ。
懐刀を手に、微笑んでいる。
「私の愛が、愛ゆえに、UDCアースを殺すその瞬間を、どうぞ見ていてください」
大祓骸魂が握りしめた生と死を繋ぐもの。
ただの数振り、斬るだけで世界は終わるだろう。
「永遠に留めたいのは、変わりゆく者を愛し守り抜ける自信が無いから。それがアンタの虞でしょ」
そんな彼女に、ベアータが告げる。
ベアータには、守るべき相手が傍にいる。
背に乗せたメルトを視界の端に入れると、メルトは嬉しそうに頷いた。
「私達は違う。必ず生きて幸せになれるって────信じてる」
「やりますよベアータさん! 絶対に……生きて二人で、UDCに帰るんだから!」
ベアータの背から飛び降りたメルトが、バイザーを外す。
彼岸花のように赤い瞳が、大祓骸魂を捉えて離さない。
人の形をしっかりと保っていたメルトが、力を解放することで流体状態へと変わっていった。
「では……止めてみてください。私の愛を、世界を壊す愛を」
大祓骸魂が懐刀を構えて、二人へと向かった。
対して、ベアータも体内から刃を出してその懐刀と打ち合う。
「メルト! 動きを止めて!」
「はいはーい!」
大祓骸魂へと、メルトが溶けた両手を向ける。
赤い瞳が強く輝くと、大祓骸魂に念動力が放たれた。
大祓骸魂の華奢な身体に目に見えない力が加わる。
その間に、刀へ力を込めていくベアータ。
ここに来るまで戦った妖怪たちの血肉から得た生命力だ。
「ボクの、ボクたちの!」
「全力を────喰らえ!」
その刃を、大祓骸魂へとまっすぐに突き出す。
メルトの念動力に縛られた大祓骸魂に避ける術はなく、懐刀ごと、大祓骸魂の身体が貫かれた。
「あ、ああ……私の愛が、消えていく……」
ベアータが刃を引き抜くと、大祓骸魂は彼岸花の上へと膝から崩れ落ちた。
大祓骸魂は、元となった妖怪を助けることはできない。
動かなくなったその身体が、彼岸花の花びらのように散っていく。
渦巻くように天へと登っていく赤い花びら見送りながら、ベアータが人の姿へと戻った。
「この世界のことは、あんたの分まで愛していくからさ」
大祓骸魂の身体が消失すると、東京上空を覆っていたカクリヨファンタズムの空が晴れていく。
戦いが、大祓百鬼夜行が、終わったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵