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全て、覚えてる……

#ダークセイヴァー #同族殺し

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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 建物は崩れ、動く者は誰もいない。
 そんな滅びた村を、1人の天使が歩いていた。
 拘束具で縛られた歩みは遅く、ちらりと崩れ落ちた屋根へと目を向け、
「あの人、は……背が、高かった……。」
 誰に言うともなく、呟いている。
 幽鬼のような足取りで、ふらりと歩きながら。
「この人、は……縫い物が、得意……。」
「あの人、は……子供、いっぱい……。」
「ここは……。」
 完全に崩れ落ち、土台の石だけとなった場所を見つめていると……オラトリオの姿をした死霊たちが周囲に現れた。
 皆、虚ろな目をして天使を見つめ、その手を伸ばし……。
「だめ……来ないで。」
 天使のつぶやきと共に額の邪眼が開き、周囲に血煙が上がる。
 それが晴れると、死霊たちは消えていた。
「来ないで……私に、近づかないで……。」
 呟きながら、天使は歩みを続ける。
 その先にあるのは、崩れることなく残る領主の館だけだった。

「えっと、集まってくれてありがとうございます。
 ダークセイヴァーで事件が起きてしまいました。
 すいません、手を貸してください。」
 グリモアベースに集まった猟兵たちへと、ピンクの髪を揺らして頭を下げた影山。
 その後ろの壁に映し出されるのは、拘束具に身を縛られながらゆらりと歩く天使の姿。
「えっと、ですね……この天使の方が、皆さんに助けてもらいたい相手、なんです。
 彼女は、間違いなくオブリビオンには違いないです。
 でも、彼女は別のオブリビオンである強力な吸血鬼を倒すために、この村にやってきました。
 今がチャンスなんです……同族殺しである、彼女に手を貸して下さい。
 敵意を見せたりあまり近づき過ぎたりなければ、私たちに攻撃してくることはない、ですから。
 よろしく、お願いします。」
 影山の手の中でグリモアが輝くと、崩れた村へとゲートが開く。
 道の先では、天使がオラトリオの亡霊に囲まれていた……。


ヨグ
 ヨグです、ダークセイヴァーの同族殺しの物語をお送りします。
 なお、オープニングで影山は天使と呼んでいますが、外見は扉絵に立つ少女の外見です。
 どちらかというと悪魔のようにも見える天使とともに、吸血鬼を目指してください。
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第1章 集団戦 『オラトリオの亡霊』

POW   :    おぞましき呪い
【凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    苦悶もたらす魔焔
【全身の傷から噴く魔焔 】が命中した対象を燃やす。放たれた【主すら焼き苦痛をもたらす、血の如く赤黒い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    汚染されし光条
【指先】を向けた対象に、【汚染され変質した邪悪なる光】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニクロム・チタノ
同族殺し、何があったか分からないけど今は協力させてもらうよ
彼女を援護して吸血鬼の館に行くよ!
周りに集まってる敵をなんとかしなくちゃ
敵が撃ち出す魔焔を重力波で防ぎながら距離を保ちつつ援護しようかな
敵が彼女に集中してるうちに敵の後ろに回り込んで切り込みながら彼女の道を開いてあげよう
研究所でお義母さんが言ってたね、旅は道連れなんとかって



「ここは……。」
 天使の少女が見下ろしたのは、道の脇で少し開けた広場。
 人が腰掛けられそうな丸太が一つ、転がっている……。
「歌、面白かった……。」
 ふらりと引き寄せられるように、少しだけ近づくと……周囲にまた、オラトリオの亡霊たちが現れた。
「やめて……みんな、近づかないで。」
 しかし、天使の声もむなしく響き……オラトリオたちは苦悶の声を上げながら、自身に付いた傷から噴き出す炎を天使へと浴びせかける。
 悲しみの声とともに天使の額の魔眼が開き、
「だめ、なのに。」
「……何があったか分からないけど、今は協力させてもらうよ。」
「……え?」
 不意に聞こえた言葉に天使が目を向ければ、蒼い炎を纏いながらオラトリオの背後に立つ、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)の姿。
 左手を天使に向けて広げれば、放たれた重力波によって、天使へと降り注ぐ炎の動きがピタリと止まった。
「私、に……?」
「そう。」
 そのままニクロムが右手で抜き払った妖刀で目の前のオラトリオを斬り払うと、天使は怯えた様に後退る。
「ボクはあなたを斬らないよ、安心して。」
「……違う、の。」
 天使が目をつぶって呟いた瞬間……周囲にいたオラトリオたちの姿が、魔眼に睨み付けられて固まっていた。
 恐る恐る目を開いた天使だが、しっかりとニクロムの目を見て言い放つ。
「近づいちゃ……だめ、なの。」
「……うん、わかったよ。」
 この子は、思ったよりも意識がはっきりしている……つまり、自分の制御できない力でボクを傷つけたくないんだ。
「でも、ボクも一緒に行くからね。……そういえば、こういうときの事を研究所でお義母さんが言ってたね。旅は道連れなんとかって。」
「……ありが、とう。」
 それでも、どこか寂しそうな笑顔を、天使は返してきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「天使でも悪魔でも奴ら(吸血鬼)を倒す為に
利用できるなら利用させて貰う。」
【天使】と敵の状況を確認。
「そしてあれは…。先ずあの亡霊を祓うのが先か。」
【天使】の行動を見てそれを補助し
道を拓く様に後方から真羅天掌を発動。
浄化属性の旋風を発生させ
敵の使う邪悪なる光を浄化し攻撃能力を奪う。

【天使】とは常に距離を保ち
能力や行動を観察。

敵が此方に向って来たら旋風をそちらへ向けるが。
「光を防ぐ風だけじゃ直接の攻撃までは阻めないか。
なら。」
とフレイムテイルから【除霊】の力を宿した炎を発し、
ダメージを与えると共に除霊。
「此処に留まっている理由は知らないけど。
邪魔をするなら逝って貰う。
せめて安らかに眠ってくれ。」


祝聖嬢・ティファーナ
WiZで判定
*アドリブ歓迎

『フェアリーランド』の壺の中から風/水/火の精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊,死神を呼んで“七色金平糖”を配って『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃をして『月世界の英霊』で艇の攻撃を空間飛翔して避けて敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化させます♪
猟兵の怪我人を『祝聖嬢なる光輝精』で治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します☆

機会を見て『聖精月天飛翔』で強化して『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます!

「天に仇名す哀れなる魂魄よ…“神様の花園”へ還り次なる循環を…♪」
と祈り/浄化/優しさ/奉仕を



「うーん……。」
 ふわりと浮かびながら腕を組んで唸っている、祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)。
 ふらふらと前を歩いている天使を少し離れた所から見つめつつ、
「手助けしてって言われたけど……あの子、だいぶ辛そうに見えるよね。」
「……確かにな。」
 目深に被ったフードの下で同意する、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)。
 視線の先の小さな天使の手足には拘束具、服の下から覗く肌は傷に覆われた姿は痛々しいほどで、
「だが、同情ばかりもしてられん。天使でも悪魔でも、奴ら(吸血鬼)を倒す為に利用できるなら利用させて貰う。」
「う、うん。そうだね、この世界を救うためだもんね。」
 そんな2人の前で、ふと止まった天使の周りに現れるオラトリオの亡霊たち。
 亡霊たちは虚ろな目で天使を見つめ、その指を天使へと向けていた。
「話しは後だ、先ずあの亡霊を祓うのが先だ。」
「うん!」

 周囲に現れた亡霊たちの視線を避けるように、天使は顔を伏せていた。
「……ごめん、なさい。」
 小さな呟きにも亡霊たちは動きを止めることなく、その指に妖しく紫に輝く光が湛えられていく。
 天使は身構えることもなく、祈りを捧げるように手を合わせ……その様は、攻撃に身を晒すように、
「当然、だよね……え?」
 しかし、亡霊たちの指から光が放たれる直前、天使を包むように暖かな風が巻き起こる。
 浄化の風に汚染された光はかき消され……驚いた天使が目を向ければ、広げた手を向けたフォルクの姿。
「何か事情があるのだろうが、まだ死ぬのは早いだろう。」
「だから手伝うよ! さぁみんな、天に仇名す哀れなる魂魄に、」
 ティファーナの周りに浮かぶ精霊たちが光の矢へと変わり、亡霊たちへと降り注ぐ。
 意思を持った矢は正確に胸を貫き、数体を残して亡霊たちがかき消えていった。
「神様の花園へと還り、次なる循環を与えたまえ!」
「此処に留まっている理由は知らないけど、邪魔をするなら逝って貰う。」
 残る亡霊たちへとフォルクは黒い手袋をした手を向け、その指を弾く。
 手袋に宿るラミアの吐き出す、除霊の力を持つ炎が亡霊たちを包み……炎と共に亡霊たちは消えていた。
「せめて、安らかに眠ってくれ。」
「あの……ありが、とう。」
 か細いが、しっかりとした声で感謝の言葉を言う天使へと目を向けると、軽く頭を下げている。
 そんな様子に、ティファーナは元気づけようと金平糖を取り出し、
「ううん、気にしないで! ね、これ一緒に食べ」
「……来ないで!」
「あ……う、うん。」
 思わず取り落としそうになった金平糖をしっかりと掴んだ。
 叫ぶ天使の声に驚いたのもあるが……ティファーナの動きを止めたのは、その額に開いた邪眼が天使と別の意思を持って睨み付けてきた事だった。
「ごめん、なさい。……でも、ダメ、なの。」
「わかった、近づかないと約束しよう。だが、君は何故彼女らの好きにさせようとしていた?」
 少し興味を持ったフォルクの問いかけに、天使は少し俯き……そのまま背を向け、領主の館へと向いて呟いていた。
「私、が……みんなを、殺した、から。」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミュー・ティフィア(サポート)
困ってそうですね。少しお手伝いしましょうか?

口調 (私、あなた、呼び捨て、です、ます、でしょう、でしょうか?)

基本的に誰に対しても友好的です。

時々うん、と相槌をしたり、敬語はやや崩れちゃったりします。

好きなものは紅茶です。
余裕があったら飲みたいです。

なるべくなら助けられる人は助けます。
復興のお手伝いとかは積極的に頑張っちゃいます!
現地の人達との交流やケアもしていきたいです。

もちろんオブリビオンや悪人には容赦なしです!
相手次第では手加減するかもしれないですけど。

ユーベルコードやアイテムは何でも使います。

いかなる場合でも公序良俗に反する事には関わりません。

不明点や細かい部分はお任せします。



 すでに人が居なくなって久しい村の中心に建つ、領主の館。
 石造りの館は元の姿を保ち続け……村で朽ちていく家々とは違い、今も住むものが居ることを示す光が漏れていた。
「……。」
 それを見上げる天使の前に降り立つ、オラトリオの亡霊たち。
 虚ろな瞳に見つめられ、それでも足を踏み出した天使に対し、オラトリオたちは手を向ける。
「ウゥ……。」
「ァアアア!」
「ごめん、なさい……。」
 そして、オラトリオたちが苦悶しながら身体から吹き出す血が赤黒い炎となり、天使へと襲いかかり……その炎が、綺麗な音色とともに放たれた一本の矢に切り裂かれた。
「……え?」
「困ってそうですね。少しお手伝いしましょうか?」
 弓を構えて元気に言い放ったのは、ミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)。
 振り返っていた天使がコクリと頷くのを確認し、次の矢を構えて放つ。
「迷わず成仏してください!」
「アアアアア!」
 放たれた光の矢がオラトリオたちを貫き、流れる血が炎となって燃え尽きていく。
「ありが、とう……。」
「え、ちょっと!?」
 呟きながらミューの制止も聞かずに、天使はオラトリオのあげる炎の中、館へと歩みを進めていた。
 その背中はまるで、自分は炎に焼かれることがお似合いだと言いたげに。
「あの子……大丈夫でしょうか。」
 心配とともに呟いた頃には炎は消え……開かれた館の入り口に、天使の背中が見えた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『狂喜と共に希望を断ち切る吸血姫』

POW   :    ほら見て、あなたの大事な者が壊れてしまうわ
非戦闘行為に没頭している間、自身の【持つ人形やぬいぐるみと、それを切断する鋏】が【対象の大切な者を切り裂く幻覚を見せる間】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD   :    ほら見て、あなたの大切な記憶が壊れてしまうわ
【言葉と共に動かす、人形やぬいぐるみ】から【対象の記憶にある、大切な者を想起する幻覚】を放ち、【徐々に大切な者の名前や容姿を忘れさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    ほら、見て……
自身が戦闘不能となる事で、【対象の大切な人が死ぬ間際を幻覚で見せて】敵1体に大ダメージを与える。【蘇りながら、対象の幻覚の中でモノローグ】を語ると更にダメージ増。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠影山・弘美です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 天使の少女と共に館へ入った猟兵たち。
「あら、お客さんなんて珍しいわね? ……あらあら。」
 黒いドレスの主人は笑顔のまま侵入者を見渡し……天使の顔をを見て笑みが深まっていた。
「あなた、久しぶりね? ふふ……ここの村を滅ぼして、まだ足りないものがあったのかしら?」
「ち、が……。」
「あの時響いたのは、ここの村人とあなたの悲鳴ばかり。怒る人もいたけど、あなたには同情する人たちばかりだったわ。……それでも、あなたは」
「……やめて!」
 叫ぶ天使の様子に主人は一瞬呆気にとられるが、ニヤリと釣り上がった口元には吸血鬼の牙が覗く。
「本当、可愛い子ね。そんなになってまで、私に刃向かおうというのだから。もっとも……あなたたちの力もあったのかしらね?」
 手の中で人形と鋏を弄びながら、主人は様子をうかがっている。
ニクロム・チタノ
そこまでだよ、オブリビオン
ヒトの傷口を抉るようなヤツは許さないよ、大丈夫ヤツのコトバに耳を貸さないで
ボクもこの思い貫くから
反抗の妖刀を解放する、反抗の妖刀は今までにない超重力を生み出すそのハサミを持った腕、動かせるものなら動かしてみな!
ヒトのココロを弄ぶようなヤツは我慢ならないんだよ!
その圧政ボクが叩き潰すよ!
反抗の竜チタノの加護と導きを


祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定
*アドリブ歓迎

『フェアリーランド』の壺の中から風/生命の精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊,死神を呼んで“七色金平糖”を配って『クリスタライズ』で姿を隠し『エレメンタル・ピクシーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃をします♪
『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔して避け、敵のUCを『月霊覚醒』で封印/弱体化させ、怪我人を『祝聖嬢なる光輝精』で治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します☆
機会や状況を見て『聖精月天飛翔』で強化して『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』で苛烈な猛攻を仕掛けます!

「魂魄を苦しめる行いには“天罰”を以て“神様の花園”へと還します…!」



「ふふ……それにしても、前に見た時よりも浸食が進んでるじゃない。」
「うそ……なん、で。」
 あっさりと天使に近づき、その頭を撫でる女主人。
 見れば、額に開いた魔眼が閉じていた。
「なんで? ふっふふ、私の力を忘れちゃったのかしら?」
「ひっ!?」
 目の前にぶら下げられた人形に、天使は怯えた声を上げていた。
 女主人はその人形の手首に鋏をあてた時、それから目を離せない天使は懇願するように手を伸ばし、
「や、やめ、て。」
「思い出せたようね?」
「……そこまでだよ、オブリビオン。」
 妖刀を引き抜いたニクロムへと笑みを向ける女主人。
 ニクロムの力で鋏を持つ手は超重力に押されながらも、本当に楽しそうに……まるで、怯えるネズミを前にしたネコのように。
「大丈夫、ヤツのコトバに耳を貸さないで。」
「ふふ、可愛らしいわね。あなた……いえ、紅明日香ちゃん?」
「な、」
 唐突に呼ばれた本名に、ニクロムの心にほんの一瞬の隙が生まれる。
 その隙を広げるように揺らされた人形が視界に入ると……ニクロムの姉妹、2966ナンバーズと、眼鏡をかけたクリスタリアンの女性が、優しく微笑みながら手招きをしている。
「う、そ……。」
「嘘なものですか。さぁ……もう戦わなくてもいいのよ。」
「あ……。」
 妖刀を持つ手から力が抜け、その手から転げ落ち……。
「目を覚まして!」
「んう!?」
 唐突に口の中に放り込まれた物に、反射的に口閉じたニクロム。
 その拍子に物が砕けると口の中に広がるのは、柔らかく甘い味……ふと気がつけば、視界に入るのは女主人と怯える天使、そして心配そうにニクロムを覗き込むティファーナだけ。
「安心して。金平糖、おいしかったよね?」
「……うん、ありがとう。」
「よかった、戻って来れたね。」
「あらら、やっぱり急ごしらえじゃ難しいわねぇ。」
 残念そうな女主人の声に、ニクロムの心に浮かぶのは苛烈な怒り。
「あなたみたいな子に幻覚を見せるのは難しくはないのだけど、邪魔が入ってしまったわ。」
「……許さない。」
「手伝うよ!」
「……あら。」
 一気に駆けだし、ニクロムの妖刀が放つ超重力に縛り付けられた女主人へと妖刀を振りかぶる。
 いつもよりも身体が軽いのは、ティファーナの周りに居た精霊たちの宿した加護のおかげで。
「ヒトのココロを弄ぶようなヤツは、我慢ならないんだよ!」
「きゃああああ!」
 一刀の元に斬り伏せる。
 さらに追いついた精霊たちが光輝の矢へと変わり、降り注いだ。
「魂魄を苦しめる行いには“天罰”を以て“神様の花園”へと還します……!」
 ティファーナの祈りの言葉とともに女主人の身体が崩れ落ち、散っていった。

「思ったより、あっけなかったかな。」
「そうだね?」
 妖刀を収めたニクロムがティファーナと共に天使を見れば、まだ自分の頭を抑えて震えていた。
「もう、キミをいじめるのは居ないよ、安心して!」
「違う、の……まだ、そこに居るの!」
「……え?」
 振り返った先にいたのは、笑みを浮かべた女主人の姿だった。
「ボクらが倒したはずなのに!」
「ふふ……そうね、倒されたわ。私はね、一部を残して死んで見せることが出来るのよ。それにしても、」
 ちらりとティファーナを見ながら、言葉を続ける女主人。
「全く、自然現象か信仰か……そういう物が姿をとった者は難しいわね。心の中が読めないわ。」
「褒めても何も出ないよ!」
「ふふ、そうね。でも、あなたたちもこれでわかったでしょう? 私には勝てないって。」
 そう言い放つ女主人だが……足下を見れば、その影が少し薄くなっている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
SPD

お初にお目にかかります、吸血姫様。
私は雑種のドゥルール。
僭越ながら貴女様を救済しに参りました

あ、ああっ……やめて……!
消えていく……私の愛しい子達が……!

……なんちゃって。
私の泣き喚く姿、楽しんでいただけました?

【呪詛耐性・狂気耐性】に加え『永遠の愛』で
守護霊の憑依【ドーピング】による繋がりと【気合い】が高まり
肉体も精神も超強化された私に幻覚は通じない

もっと甘く濃厚な悦びを教えて差し上げますわ♥

私もろとも彼女を【結界術】に閉じ込め
【誘惑・催眠術】のフェロモンを充満させて魅了。
名前を聞き出し、何度も彼女の名を呼びながら
唇を重ね、胸を擦り合わせ、お尻を愛撫して【慰め・生命力吸収】



「さて、と。じゃあ次は……あら?」
 カタカタ震える天使へと女主人が目を向けると、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)が間に立っていた。
 そのまま優雅に一礼し、
「お初にお目にかかります、吸血姫様。私は雑種のドゥルールと申します。」
「あら、珍しいわね。」
 ニコニコとした笑みは崩さず、女主人はドゥルールとその背後に興味を示していた。
「初めまして、雑種ちゃんたち。ふふ……あなた、たくさんの仲間を連れてるわね?」
「ええ。私は1人で生きることが出来ない、惨めな雑種でございますから。ですが、」
 顔を上げたドゥルールの目に映るのは、自分の周囲にいつもいる少女や女性の守護霊たち。
 ……やけに今日は、はっきりと彼女らが見える。
「僭越ながら、今日は貴女様を救済しに参りました。」
「あらあら……ふふ。それはまた、大きく出たのね。」
 女主人の口の端が、笑みの形に釣り上がる。
 面白い玩具を見つけた……そう告げる笑みの形に。
「でも、あなたのお友達はどう言うかしらね?」
「友達……ですか?」
「そう。例えば、そこの子たち。」
 手にした人形をドゥルールの前で動かす女主人。
 しかしドゥルールの目には、守護霊である別の少女たちに見えていた。
「私のような者を救うっていうあなたに、愛想を尽かさないかしら?」
「え……うそ、そんなこと……。」
 急に、必死の表情のドゥルールが手を伸ばし、誰かを引き留める様に叫び始める。
 女主人の手で動かされる人形を追うように……まるで、旧来の友人が自分を捨てて行くのに追い縋るように。
「私はそんなつもりは……待って! ねぇ! あぁ……嘘でしょ、消えていく……私の愛しい子達が……!」
「ふっふふふ……あっけなかったわね。」
 がっくりと肩を落し地面を見つめるドゥルールへと、ゆっくりと歩み寄る女主人。
「面白い物は見せてもらったわ。」
「……なんちゃって。」
「あら?」
 顔を上げたドゥルールの顔は、催眠術などかかっていない普段のもの。
 そのまま一気に、近づいた女主人を取り込むように自身の周囲へと結界を張っていた。
「私の泣き喚く姿、楽しんでいただけました?」
「ええ、すっかり騙され、た……わ?」
 ゆっくりと起き上がり、近づいてくるドゥルール……しかし、女主人の身体はしびれたように動かない。
「な、に……?」
「そういえば、まだお名前を伺っていませんでしたね。」
「待っ……むぅう!」
 黒いドレスの女主人を優しく抱き留め、その唇が合わせられ……その唇が自由になった時には、媚毒に犯されて呟いていた。
「カト、レア……よ。」
「ふふ……カトレア様、ですね。もっと、甘く濃厚な悦びを教えて差し上げますわ♪」
「あぁ……!」

 その場に響いていた、衣擦れの音と湿った音が止んだ。
「あ、あの……おわ、った?」
 思わず目を手で覆っていた天使が、恐る恐る指の間から目を開ければ……荒い息をついた女主人の姿があった。
「……まさか、あんな手を打ってくる猟兵がいるとはね。」
「ひうっ!」
 身を起こしながら呟く女主人の声に、天使はまた身を震わせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼面衆・幻黒(サポート)
我は鬼面衆・幻黒。滅ぼされし暗殺者集団「鬼面衆」の頭領だ。
戦闘時には鬼の形をした額当てと、首飾りが顔を覆い鬼面となり、持っている杖の宝玉が怪しく輝くと共に「鬼面衆の死霊」を召喚し、頭領の命令は絶対という「掟」と突出した【集団戦術】で敵に攻撃をするのだ。
里をオブリビオンに滅ぼされたのでオブリビオンに対し強烈な憎悪の念を持っている。
我自身は鬼面衆残って死霊を操る為に後方で待機して、直接攻撃することは、ほとんど無いのだ。
我自身は後方で死霊に指示を出し、直接的な攻撃はしないのだ。
口調:翁(わし、お主、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)
戦闘中は 頭領(我、呼び捨て、言い捨て)



「さて、次は……あら?」
 女主人が天使へと視線を向ければ、間に立つのは奇妙な面で顔を隠した男、鬼面衆・幻黒(滅ぼされし里の頭領・f32104)。
「まだ居たのね、猟兵さん。」
「ああ、ちと思うことがあってな。」
「……あらあら、時間稼ぎかしら?」
 幻黒の杖についた宝玉が怪しく輝くと、女主人との間に鬼面衆の死霊たちが現れた。
 その様に、天使も幻黒へと顔を上げ、
「あな、たは。」
「……お前さんは、奴を倒しにきたのじゃろう?」
「うん……でも、」
 不安げに答える天使の額には、閉じてしまった邪眼の瞼。
「刷り込みか催眠術か、その類いじゃな。それなら、わしの術でなんとでもなろう……だが、お前さんも限界が近そうじゃ。」
「……。」
 ほんの少しの間を置き、改めて幻黒を見上げる天使の瞳に宿るのは決意の光。
 自分の身より復讐を……それを見出し、幻黒は仮面の下で自嘲気味に笑みを浮かべていた。
「ふっ、愚問じゃったな。」
 杖を振るうと鬼面衆の死霊の1体が天使に宿り、その額にある邪眼の瞼が開いていた。
「わしらが援護しよう。お前さんは復讐を遂げよ。」
「……うん。」

「これだけ居ると厄介ねぇ……あら?」
 鬼面衆の死霊たちを前に、女主人は腕組みをしていた。
 特に攻撃してくるでもなく壁となっていた死霊たちが、唐突に女主人を囲むように飛び交い始める。
「ふふ、ようやく動き始めたわね。でも、」
 人形を手に女主人は笑みを浮かべ、死霊たちへと得意の催眠術をかけるべく言葉を紡ぐ。
「あなたたちの大事な主さん、前に立つ事はもう無いようね? 怖じ気づいているのかしら?」
 ざわめくような感情の波が死霊たちの間を駆けるが、それも一瞬だけ。
 死霊たちは手足を捕らえるように絡みつき、女主人をあっさりと拘束していた。
「くっ、やっぱり操られてる霊には効きにくいか。私もまだまだね。……あら?」
 ゆらりと、いつの間にか女主人の前に立つ天使。
 その瞳、そして邪眼に怒りを湛え、女主人を捉えていた。
「あなた……その力は、封じたはず。」
「……許さない。」
 改めて天使に催眠にかけようとするが、手足を封じられた女主人は身じろぎすることしか出来なかった。
 その間にも、女主人の身体が血煙につつまれていく。
「くっ……私も焼きが回ったわね。」
「これで、おしまい……。」
「あはは……でも、あなたも終わり、よ?」
 邪眼が怪しく輝き、笑い声を残して女主人の体が弾け飛び……周囲に血煙が舞っていた。
「……おつかれさん。」
 そのままぺたりと座り込んだ天使の背中へ向け、労うような幻黒の言葉が響いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『生獄のフェリックス』

POW   :    天魔蠢動
【体内から異形の悪魔細胞】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD   :    生獄の残滓
自身が【悪魔の肉体支配に抵抗して】いる間、レベルm半径内の対象全てに【禍き悪魔の血煙】によるダメージか【儚き天使の残光】による治癒を与え続ける。
WIZ   :    外法傀儡眼
【額に埋め込まれている魔眼の邪視】が命中した部位に【外法魔力】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
👑8
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ぺたりと座り込みながら、天使は女主人のいた場所を見つめていた。
「……みんな、やったよ。」
 ぽつりと呟く天使だが、その体が唐突に立ち上がり……猟兵たちへと振り返る。
 最初は驚いたような顔をしていたが、だんだんと諦めの表情へと変わっていった。
「もう……限界、みたい。」
 天使の瞳には、血の混じった涙が浮かんでいる。
 それが一筋溢れた時、額の邪眼が猟兵たちを睨め付けてきた。
「私じゃ、身体を、動かせ、ない……だから……。」
 私を、止めて……。
ラムダ・ツァオ(サポート)
A&Wの遊牧民出の自由人。
見た目からダークエルフと揶揄されることもあるが、当人は特に気にしていない。普段は外套と丸サングラスですっぽりと身体を覆っているが、外套の下はかなり身軽。
なお、見た目は怪しいがわりと気さくな性格。
臨機応変に動くが、完全勝利よりは条件達成を目指す。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.囮役としてボスの注意を引き付け、味方の攻撃を当てやすくする。
2.ボスの移動手段→攻撃手段の優先順で奪っていく。
3.仕留められそうな場合は積極的に仕留めに行く。
 (他に仕留めたい人がいればその手助け)

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。



「正直、あなたと戦うのはちょっとキツいのよね……けど、仕方ないか。」
 サングラスで自分の表情を隠しながら、こちらを向いた天使に気楽に話しかけるように呟く、ラムダ・ツァオ(影・f00001)。
 身体を覆う外套の下で脇差を抜き、
「最期に言い残す事があれば聞くよ?」
「……だい、じょうぶ。」
 言葉を返すのも辛いのか、天使はたどたどしい口調で返してくる。
 しかし、どこか晴れやかな笑顔をしていた。
「だか、ら……。」
「……解ったわ。」
 ラムダの見ている前で血の混ざる涙が流れるごとに、天使の周囲に血煙が満ちていく。
 命ある者を蝕む霧を切り払うのは、白鋼の煌めき……その刃が天使の目に留まる。
「あ……あぁ……。」
「……酷かも知れないけど、」
 白鋼の刃に悪魔に蝕まれた天使自身が映った時、ラムダのいる場所にかつての村人たちの姿が浮かぶ。
 かつて、天使が手にかけた者たちが。
「み、んな……。」
「もう、大丈夫よ。あなたは、これ以上苦しむ必要はないわ。」
 ラムダの言葉に呼応するように、天使の見ている者たちも同じように言葉を紡ぐ。
 抱き留めるように腕を広げた天使に向け、駆け寄ったラムダは脇差で袈裟懸けに斬りつけた。
「だから、これで終わり。」
 血の霧が満ちる前、離れるラムダの耳に天使の呟きが残っていた。
「ありが、とう……。」

成功 🔵​🔵​🔴​

祝聖嬢・ティファーナ
「慟哭を静寂に、悲哀を哀悼を…お祈り願います♪」
WIZで判定
*アドリブ歓迎

『フェアリーランド』の壺の中から風精霊,聖霊,月霊,戦乙女,天使,英霊,死神を呼んでバンシーも怯えているのを守りながら“七色金平糖”を配り、『エレメンタル・ピクシィーズ』で属性攻撃を『神罰の聖矢』で聖攻撃を仕掛け『月世界の英霊』で敵の攻撃を空間飛翔して避け『月霊覚醒』で敵のUCを封印/弱体化させます☆
猟兵の怪我人を『祝聖嬢なる光輝精』で傷を治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します♪

天使の面影を思い「哀しみにさよなら…」と言って
心を決意して『聖精月天飛翔』で強化して『叡智富める精霊』+『神聖天罰刺突』を


ニクロム・チタノ
わかっていたんだ、最後はキミを倒さないといけないって・・・ボクは猟兵だから、覚悟はある私は戦う
反抗の妖刀を開放する
毒と呪縛を身体に下ろして血を流しながら戦うよ
開放された反抗の妖刀は今までにない超重力を生み出す
せめてキミのままで逝かせてあげる
反抗の竜チタノどうか悲しい少女に反抗の加護と導きを



「……わかっていたんだ、最後はキミを倒さないといけないって。」
 呟きながらニクロムが抜き放つのは、反抗の妖刀と名付けられた妖の刃。
 握る手に力が篭もった時、ニクロムの腕から一筋の血が流れる。
「ボクは猟兵だから、覚悟はあるよ……私は、戦う。」
「今まで、よく頑張ってきたんだね。」
 ティファーナの持つ壺から、様々な精霊たちが現れる。
 彼らへ金平糖を渡していると、その中にいたバンシーが天使へ向けて叫び声を上げていた。
「この子の叫びは、キミを讃えるもの。キミは勇敢、神聖な人だって。」
「……そう、なんだ。」
「うん、ボクが保証するよ♪」
 満面の笑みを返すティファーナに、天使もつられて少しだけ表情が緩んでいた。
 しかし、額の邪眼はそんなティファーナを睨み付け、外法の魔力が襲いかかる。
「慟哭を静寂に、悲哀を哀悼を……お祈り願います。」
「行くよ、チタノ!」
 ティファーナの祈りとともに、周囲の精霊たちが光の壁となって魔力を退けていた。
 その間をニクロムが駆け……天使へと妖刀を振り下ろす。

「ごめん、なさい……。」
 しかし、予想外に機敏に飛び退き、天使は妖刀を避けていた。
 宿された悪魔の本来の能力、村人を殺戮し尽くした力だった。
「止められ、ない……の。」
「構わないよ。っつ!」
 ニクロムの持つ妖刀から、さらに力が解放される。
 さらに血が流れ、新たな痛みに吐息が漏れていた。
「それくらい、キミが強い事は分かってたから。」
「……あぁ。」
 妖刀を天使へと向けると、その小さな体が床に落ちた。
 超重力に捕らわれた身体からは、天使に宿る悪魔の最後の抵抗か、血の霧が放たれる。
「みんな、行くよ♪」
 しかし、その霧を引き裂くのは精霊たちの光の矢。
 彼らと共に飛び込んだティファーナは、天使の顔の前でいったん止まり、
「……やっと渡せた。」
「あ……。」
 天使の口に優しく放り込まれたのは、七色に輝く小さな金平糖。
 カラリと歯に当たる音と共に広がるのは甘い味。
「あ、まい、ね。」
「良かった♪」
 天使の表情が緩み、同時にティファーナは笑みを残して一度飛び退く。
 そして駆け寄る、妖刀を振りかぶったニクロム。
「せめて、キミのままで逝かせてあげる。」
 腕に滴る血とともに、床に膝をついた天使を袈裟斬りに斬りつける。
「哀しみにさよなら……。」
 そして、煌めく光の槍と化したティファーナが胸を貫き……天使の身体が塵へと崩れていく。
 それでも、天使が最後に呟いた言葉だけは2人の耳に響いていた。
「本当に、ありがとう……。」
 血の涙で頬を濡らしながら、笑顔のままで崩れていった。

「反抗の竜チタノ……どうか、悲しい少女に反抗の加護と導きを。」
「キミも無茶するね♪」
 自身に加護を与えた竜へと祈るニクロム。
 その腕に血が流れているのを見たティファーナは、癒やしの手を向けると同時に金平糖を壺から取り出していた。
「ね、これ上げる♪」
「……ありがとう。」
 口の中で簡単に溶け、爽やかな甘みが広がる。
 ……天使も最後に口にしたそれは、間違いなく幸せの味だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月07日


挿絵イラスト