THE・王道『銀行強盗?』
●デビルキングワールド内某銀行
「生ぬるい、なんて生ぬるいんだ」
銀行の中に新しく就任した支店長――オブリビオンの声が響く。
「株で金を巻き上げるだけなんて、なんにも楽しくなんてない。どうせならば、その金を奪ったあとに殺してしまえばいい、株など与えなくともいい。もらうものだけもらってしまえばいい。それが悪魔というものだろう?」
そう、ここはデビルキングワールド。悪事が好まれる傾向にある。
だが、今回のオブリビオンの声は明らかに一線を越えていた。悪魔達の絶滅を防ぐ為に制定されたデビルキング法と明らかに矛盾している。
「さあ、お前達。余所の悪魔から全てを奪うのだ。金だけではない、命まるごと奪ってしまおう。我々の名誉のためにも」
とても銀行の支店長とは思えぬ言葉に銀行員達は恐れおののき――歓喜の声を上げる。その裏にカタストロフの恐怖が控えているとはつゆ知らずに。
●グリモアベース
「そこのおにーさん、銀行強盗に興味はありませんか!?」
グリモアベースに物騒なワードが響き渡る。
目を輝かせながらそう問うのは、グリモア猟兵である一人のメイドだ。
「いえいえ、犯罪じょちょー? とかそういう訳じゃないんですよ。わたくしの予知がビビビビっときましてね。――ええ、そうです。今回の予知はデビルキングワールドなのですよ」
そこで猟兵のあなたは「ああ」と納得するかもしれません。もしかしたらデビルキングワールドについて知らないかもしれませんので、いまいちピンと来ないかもしれません。それを知ってか知らずか、メイドは話を進めていきます。
「銀行の支店長がオブリビオンになってしまった。といえば、まあ、なんとなく予想がつくでしょう? いくらデビルキング法があったとしても、相手がオブリビオンともなれば笑って済ませられるような事ばかりじゃあございません」
聞けば、オブリビオンが度を超えた『悪事』を働こうとしている予知を見たのだという。その結果、カタストロフを招いてしまう可能性があるともあれば、猟兵たちに声がけしてきたのも納得がいくというもの。
「そこで今回は猟兵であるあなたに、是非とも正統派な銀行強盗をしてもらいたいのです。かっこよく、クールに、華麗に、ファビュラスに……ファビュラスはなんか違うかもしれませんが。まあとにかく、悪魔達の心をガッチリ掴むようなスマートかつエレガントな銀行強盗をして、ついでにオブリビオンを倒してほしいって訳なんですよね」
メイドは元気いっぱい、といった様子であなたに笑顔を向ける。
あなたは今回の依頼を受けなくてもいいし、受けても良い。
もしその場に留まるのであれば、メイドは了承とみなし言葉を続けるだろう。
「ありがとうございます。銀行強盗するのであれば、まずは情報収集をしたりして計画を立てるのがよいでしょう。その際、お腹が空くかもしれませんので……僭越ながらわたくしめのほうでオヤツをご用意いたしました!!」
そう言い、メイドは右手にある謎の物体をあなたに差し出す。
「丹精込めて焼いたパイ(?)です。おかわりもたくさんあるので、気にせず持っていってくださいね!!」
ゴリラ
初めましての方は初めまして、そうでないかたはこんにちは。ゴリラです。
今回は『デビルキングワールドでオブリビオンが就任してしまった銀行を救うため、銀行強盗をしつつオブリビオンを討伐しましょう!!』というシナリオとなっております。
第一章 銀行強盗をするために町のみんなと交流し、銀行についての情報収集をしながら銀行強盗のプランを立ててください。このプランは後々の章で扱いますので、誰がやっても成功しそうな方法だと嬉しいです。
第二章 THE銀行強盗です。悪魔達が思い浮かべる銀行強盗は「全員倒して全部破壊する」なので、「第一章で挙げられたプラン」+「悪魔達を金を奪い逃走する」というTHE正統派が望ましいです。コテコテな方が悪魔達にとっては新鮮なので、きっと感激してくれます。
第三章 追ってきたオブリビオンといざ勝負です。周りには『悪事』を聞きつけた悪魔達が押し寄せ、大歓声の中での勝負となります。
第1章 日常
『異世界ってどんなワルい奴がいたっス?』
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POW : ●『あんまりワルいやついなかったよ』
SPD : ●『まあ、普通にワルいやついたよ』
WIZ : ●『(聞くも無残な内容)(凄惨な過去)』
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
書き忘れた補足がありますのでこちらに流します。
メイドのパイは触れて頂いても触れなくとも構いません。なんとなく描写が変わる程度と思って頂ければ幸いです。
因みにパイは画像の通りヤバいブツですので、食べる方はフレーバー(雰囲気)なデバフが掛かりますのでよろしくお願いします。(シナリオ侵攻に影響は出ません)
プリ・ミョート
かっこよく、クールに、華麗に、ファビュラスに、う〜ん。憧れの超絶ワルになるためにゃ、生半可な強盗じゃ務まらんわけだべな。四天王としてスカウトされるくらいの、ハデハデキラキラな悪事をやってのけるべ
メシでも食いながら頭さ悩ませるべ。頭脳労働もできてこそのワルだな、ししし! パイもいただくべ
こういうの定番は清掃員のフリして潜入して、どこに何がいくらあるとか、大ボスのオブリビオンがどこにいるとか事前に把握しとくといいんでねぇか? えっそれは怪盗だって? ムムム
じゃあトラックでも調達すっか。んまあトラックにはこだわらねえけんども、正面突破でいいんでねえかね。突っ込むぞ掴まれッ! みてえにな!
「う~ん。憧れの超絶ワルになるためにゃ、生半可な強盗じゃ務まらんわけだべな」
プリ・ミョートはいたく感心した様子でデビルキングワールドを歩いていた。
それは先ほど引き受けたかっこよく、クール且つ華麗で、ファビュラスな依頼が関係している。
デビルキングワールドで銀行強盗といえば『全員倒して全部破壊する』が定番なのだが、今回の依頼は少々毛色が違った。メイド曰く、情報収集を経てからの正統派・銀行強盗が好ましいときたものだ。
「清掃員のフリをして潜入……だと怪盗になっちまうべ。ムムム。……そこらへんは上手い具合に銀行強盗らしい行動をしてくれる他の猟兵に任せるべか」
プリは暫く考える。デビルキングワールドでの悪事は派手でわかりやすいものが好まれる。それを考慮するならば、そう――。
「……じゃあトラックでも調達すっか。んまあトラックにはこだわらねえけんども、正面突破でいいんでねえかね。突っ込むぞつかまれッ!! みてえにな!!」
車を使えば移動がグッと楽になるし、正面突破というのはやはり派手さにも繋がる。銀行強盗をする猟兵としても映画のようなワンシーンを演出できるのでさぞ楽しい事になるだろう。正に良い事ずくめである。
「まずはメシでも食いながら頭さ悩ませるべ。頭脳労働もできてこそのワルだな、ししし!!」
食事後、その辺に居た人と雑談がてら、車の調達ができるかどうか聞いてみるとしよう。悪事の片棒を担げるのであれば、歓迎してくれるに違いない。
「そうだ、パイを先にいただくべ」
プリはメイドから貰っていたパイを思いだし、懐から取り出した。
パイ(?)は明らかに食べても良いのか悩ましい形状をしているが、グリモア猟兵が用意したものである。命に関わるものでもあるまい。
一口。パイ(?)を口に含む。その瞬間、プリの眼前には走馬燈のような何かが駆け回った。懐かしいような、懐かしくないような。いやこれは悪夢か? 悪夢なのか? 判断に迷う景色が極彩色で描かれていく。
「……痺れるような悪事だべな」
形容しがたい余韻がプリの舌先に残った。
このパイが一番の悪事なのではないだろうか、そう思ったかどうかはプリのみぞ知る。
大成功
🔵🔵🔵
化野・花鵺
「正統派メイドさん…せぇふくからの銀行強盗依頼…しゅき🖤」
狐、珍しく依頼をほぼ聞いていた
「街角突撃インタビュー♪そこのカッコいいおにぃさぁん、お話良いかなぁ♪」
UC&化術で自分もピンマイクと腕章付け片手にマイク持ったボンキュッボンの街頭レポーターに
管狐達はカメラ等持って撮影
「しっつもんでーす♪最近面白い事件にあったことなぁい?自分ならどんな事件を見てみたいぃ?例えばこんな銀行強盗見てみたいとか自分ならこんな銀行強盗するぞとかでもオッケー♪」
「ふむふむ、ふむふむふむ♪」
「ありがとー♪放送は来週予定だからぁ、お楽しみにねぇ♪」
誘惑のせばちこーん(死語)とウインク
2時間程手当たり次第に情報集める
「正統派メイドさん……せぇふくからの銀行強盗依頼……しゅき🖤」
化野 花鵺はうっとりとした様子でメイドの依頼を聞いていた。
彼女にとって制服というのはカッコいいの代名詞である。そんなメイドが依頼を出しているともなれば、食いつくより他はない。
依頼を聞き終えた花鵺はウキウキとした気分でデビルキングワールドに降り立つ事になった。
「街角突撃インタビュー♪」
降り立った花鵺が始めたのは情報収集だ。下準備を行うにあたり、ユーベルコードと化け術を上手く兼ね合わせ、ピンマイクに腕章、マイクを片手にレポーターらしい姿に変化した。
あとは管狐たちにカメラや機材を持たせれば、どこからどうみてもレポーターご一行のできあがりである。
「しつもんでーす♪ 最近面白い事件にあったことなぁい? 自分ならどんな事件を見てみたいぃ? 例えば――こんな銀行強盗見てみたいとか、自分ならこんな銀行強盗するぞ!! とかでもオッケー♪」
ボンキュッボンのスタイルで迫れば大抵の悪魔達は面白いくらいに口を開いてくれた。
「やっぱり、面白くて珍しいものがいいよな」
悪魔達の答えは同じようなものであった。
デビルキングワールドにおいて、悪事というのは日常の一部である。裏を返せば、誰もが知っている定番が多いということだ。
銀行強盗であれば「全員倒して、全部破壊する」というお決まりの流れが存在している。派手さは充分だろう。見ている分にも、やられる分にも楽しい。
だが、望んでいるのはもっと見た事無い何かであると、花鵺は考える。
「ふむふむ、ふむふむふむ……ありがとー♪ 放送は来週予定だからぁ、お楽しみにねぇ♪」
ばちこーんとウィンクをし、インタビューを打ち切った。
やはり望まれるのは「全員倒して、全部破壊する」以外の何かである。
「よーし、他の猟兵たちと一緒に考えてみよー♪」
花鵺の明るい声が響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
●WIZ
ひゅー!銀行強盗だなんて、ギャングスターゲームみてぇじゃん!
んじゃ、下調べは入念にしておかねぇとな
あー、でも下手に聞いて回ると計画が漏れちまうかもしれねぇよな
じゃあ、ここはワルに憧れるガキ悪魔たちに聞いてみるかな
何かして遊んでれば、遊びに混ざってさりげなく聞く
ふふふ、さすがオレ様
完璧な計画だぜ
おーい、何して遊んでんの?
俺も混ぜてくれよ
そういやさ、あそこにでっけー銀行があんじゃん?
デカくなってワリぃこと出来たら銀行強盗してみてぇけど、真正面からカチコミしてぇよなー
とか言って、相手の反応を見ながら警備が手薄になるタイミングとか探ってみるぜ
そだ、これやるよ
貰い物のパイだけど皆で食ってくれよ
「ひゅー!! 銀行強盗だなんて、ギャングスタ―ゲームみてぇじゃん!!」
ウィル・グラマンはウキウキとした様子で今回の依頼を受けた。
よくあるオープンワールド系や、FPS系のゲームに出てくるような依頼ともなれば心躍るというもの。必ず今回の『ミッション』を達成してみせる。そう意気込み、デビルキングワールドの世界に降り立った。
「下調べは入念にしておかねぇとな。……あー、でも下手に聞いて回ると計画が漏れちまうかもしれねぇよな」
暫く悩みながら散策をしていると、空き地で数名の子供達が遊んでいるのを見かけた。
どの悪魔たちも楽しそうに『悪事』の練習をしている。
「……おーい、何して遊んでんの? 俺も混ぜてくれよ」
ウィルは子供達と同じような笑顔を浮かべ、その輪に混ざり込んだ。子供達は突然の来訪者に驚いたが、見目からするに同年代だと思い込み、遊びに加わえてくれた。
「そういやウィルはどういう悪事をしてみたい?」
遊んでいる途中、子供の一人がウィルに語りかける。
「あー、そうだな。俺がもしデカくなってワリぃこと出来たら銀行強盗してみてぇけど、真正面からカチコミしてみてぇよなー。銀行の警備が手薄になるタイミング狙ったりとかしてよ」
「えー、普通に全員倒せばいいじゃん」
「そうだよー、全部倒して壊せばいいのに」
「それじゃあ普通だろ?」
面白くない、そう付け足せば、子供達は首を傾げながら考える。
「警備が薄い……あ、銀行って昼休みになったら人減るよ。近くの食堂とか、銀行のやついっぱいくるもん」
「おー、んじゃあ俺がやるときは昼休みでも狙ってみるぜ。……そうだもらい物のパイだけど皆で食ってくれよ、俺はもう帰るから」
ウィルは去り際、貰ったパイ(?)を子供達に手渡した。
「ありがとー」
「いいの? やったー」
「さんきゅー」
子供達は嬉しそうにパイを受け取り、ウィルを見送った。
彼が去ってから数秒後、空き地からは「人でなしー!!」「まずい!!」「やられたー!!」など、至極楽しそうな悲鳴が上がった。
それを聞き、ウィルも同じくらい楽しそうな笑みを浮かべた。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
カタストロフなんて起こさせません!
銀行強盗を成功させましょう
辻の楽士として演奏を披露し人を集め
街の皆さんから銀行の評判や状況を伺います
沢山教えてくれた方には
感謝としてメイドさんからいただいたパイをプレゼント
…ちょっと心苦しいですけれど
きっと「こんなものを喰わせるとはなんて悪だ!」と
喜んで下さると思うんですよね…
銀行の警備体制とか出入口とか
自分の目でも確認しましょう
計画としてはシンプルにこんな風でしょうか?
警備が手薄なタイミングに突入して
凶器で脅し(或いは、その悪さで感動させて
金庫を開かせDを奪取
車両ないし各自の移動手段で逃走
事前に利用者として銀行にいる
というのもよいかも知れませんね
「カタストロフなんて起こさせません!!」
箒星 仄々は誓いを胸にデビルキングワールドへ降り立っていた。
オブリビオンによる魔の手からこの世界を守らなければならない。そう考え、まずは銀行の評判や状況を伺う事にした。
「私が奏でるのは聞くも無残なとある物語。悲惨な過去が付き纏うとある作家の曲でございます。どうぞお聞き下さい」
仄々は噴水のある公園で楽器の演奏を始めた。選んだ曲は『呪われた作家が遺した、身の毛もよだつような不気味な旋律』である。
真っ昼間の公園には相応しくない選曲であったが、これがどうして悪魔達には好評であった。おひねりに混ざり、お店の割引券や子供銀行の札が投げ込まれるのは彼らなりの『悪事』なのだろう。
演奏を終えた仄々はその場に残っていた悪魔に声を掛ける。内容は先ほどの演奏についてだが、自分が街に疎い身である事を含ませれば、様々な事を教えてくれた。
「この街といえば銀行が良い感じの悪事をくれるんだけど、最近支店長が代わったらしくて雰囲気がガラッと変わったかな」
聞けば、以前はデビルキングワールドらしい悪事が横行していたらしいのだが、最近はどうにもキナ臭い。悪事を好んでいるこの世界の住民ですら、一体どうしたんだと首を傾げてしまうようなものだ。
「正直、なんかでかいことしでかそうとしてるんじゃないかってワクワクしている」
少々的外れた感想ではあるが、変化はやはり支店長にあるらしい。
仄々は丁寧にお礼を良い、メイドから受け取ったパイを差し上げた。
心苦しい感情もあったが、パイを食った悪魔が百面相しながらもサムズアップしたので許される範囲の悪事であったらしい。
安堵し、仄々は一人、銀行へと向かう。
外観は至って普通、入り口にも警備員はいる。中は薄暗くてあまり見えなかったが、それなりの従業員が働いているようだ。
「……人が多いのなら、手薄なタイミングがいいかもしれません」
計画はシンプルなものが良い。大胆さや派手さが定番として根付いているのならば、それの真逆をいったほうが良いだろう。
「凶器で脅し、金庫を開かせDを奪取、用意した車両で逃走……ですかね」
事前に利用者を装い、銀行に潜伏する。というのも良いかもしれない。
ある程度の目星をつけ、仄々は他の猟兵に情報を伝えるため、その場を後にした。
大成功
🔵🔵🔵
アポリト・アペルピシア
クックック…依頼の内容は承知した。では早速現地へ…
む?我に捧げものとは殊勝な心掛けである
ありがたく頂くとしよ――
……はっ、ここはどこだ?我は何をしていた…?
それに心なしか身体が重く感じる…
わが身に一体何が起こったと言うのだ…?
そうであった、銀行強盗を行うのであったな。
どの様な手を採るにせよ、まず周辺の地理の把握は肝要。
下見も兼ねて、買収が可能な人物がいないか調査するとしよう。
作戦であるが、わが威容ではどうあってもこれから強盗に入りますと言っているようなものだ…
しかしそれを逆手に取って我のような目立つ存在が陽動をかけ、
警備が出払った隙を突いて本命が別ルートで行内へ突入するというのはどうだろうか?
「クックック……依頼の内容は承知した」
アポリト・アペルピシアは不気味な笑い声をグリモアベースに響かせた。
今回の依頼、銀行強盗が合っているかはさておき、悪事ともなれば魔王たる己にはぴったりではないか。その上、このメイドは貢ぎ物まで用意していた。その特殊な心がけは褒めるべきだろう、とアポリトは高笑いする。
「ありがたく頂くとしよ――」
パイを受け取った瞬間、信じがたい激痛が大きな眼を襲う。開いているのも辛いと、目を数度瞬かせると視界は急に暗転をした。一体何が、どうして。そう考える間もなく、アポリトの意識は混濁し、やがては呑み込まれた。
というのが数秒前の話である。
気がつけばアポリトはデビルキングワールドに降り立っていた。
「……はっ、ここはどこだ? 我は何をしていた……?」
手に持っていた筈のパイはなく、心なしか身体が重く感じる。パイに纏わる記憶も酷く曖昧なままだ。
「そうだった、銀行強盗を行うのであったな」
一体何が起こったのか分からぬまま、アポリトは調査へ赴く事にした。
「どの様な手を採るにせよ、まずは周辺の地理の把握は肝要」
アポリトは下見も兼ね、周辺の調査に乗り出した。
銀行のある場所は大通りに面している。逃げるにしろ、追われるにしろ、広い道路は魅力的である。ならばここは車での逃走が吉であろう。確か、他の猟兵が車の手配をしていたはずだ。
「なればそこは問題無い。邪魔にならぬよう、隣の店には金を握らすとしよう」
いくつかの店に「この時間は店を畳むが良い、我が野望のためにも」そう告げれば、店のものは二つ返事で了承してくれた。悪事の片棒を任され気分を良くしてくれたようだ。
「しかし問題は作戦、我が威容ではどうあっても、これから銀行に入りますと言っているようなものだ……」
ショーウィンドに移った己の姿は正に悪役。
ともなれば、それを逆手にとって陽動をかけ、警備が出払った隙を別の猟兵が突けば良い。そうすればメイドの言う銀行強盗にも繋がるであろう。
アポリトはそう考え、未だ抜け落ちた記憶にスッキリとしない思いを浮かべながら、別の猟兵にその旨を伝えに行った。
大成功
🔵🔵🔵
鍋島・小百合子
他の猟兵との絡み可
ふむふむ、銀行とは市井や権力を司る者らの金銭を管理する場所とな
そこを城攻めの如く強襲し今回の悪事を働かんとする賊を討つのじゃな
手早く事を運ぶのであればその銀行とやらの中の様子や警備の状況を探る必要があるであろう
なれば内部の様子はUC「煙人間変化」で煙状の体に変化したわらわで探り出してくるといたそう
煙に化けたとはいえ見つかれば厄介故隠密(忍び足、目立たない併用)を意識して行動
銀行内部の構造、特に警備配置と巡回経路を一通り把握
終わりに銀行周囲の地形も見て回り、襲撃後の逃走経路をある程度思い描けるようにす
調べ物が済めば他の猟兵と情報を共有し、銀行という城攻めに向けた計画を練る
「ふむふむ、銀行とは市井や権力を司る者らの金銭を管理する場所とな」
鍋島 小百合子はデビルキングワールドに降り立ち、街のあれこれを調べていた。元いた世界とは様々なもののあり方や作りが違うものの、いくつもの世界へ降り立った彼女からすれば応用の利く常識であった。強いて非常識を挙げるのであれば、悪事が歓迎されるという事くらいだろう。
「此度はそこを城攻めの如く強襲し、今回の悪事を働かんとする賊を討つのじゃな」
ならばやるべき事は決まっている。手早く事を運ぶのであれば、銀行とやらの中の様子や、警備の状況を探る必要があるであろう。小百合子はそう考え、件の銀行までやってきた。
大っぴらな潜入は危険が付きまとう。なれば、ユーベルコード「煙人間変化」で煙上に変化し、探りに行くのがよかろう。小百合子は身体を煙り情に変化させ、止まっていた換気扇より銀行内に潜入をした。
潜入した場所は給湯室であった。扉を開ければすぐに廊下がある。右手には窓口があり、左手側は曲がり角のせいで何も見えない。見つかれば厄介、故に隠密を心がけ曲がり角の方へと参る。曲がった先には応接室と警備室があり、その奥には檻がある。向こう側には金庫が控えていた。あまり複雑な建物ではないので、迷うことはないだろう。
しかし単純な構造故に、警備の目をかいくぐるのは中々に難しそうだ。押し入る際には必ず警備の者らとかち合う構造となっている。
「……ふむ」
そういえば、と猟兵の一人が囮を買って出た事を思い出す。大多数の警備はその者に任せ、僅かに残った警備のみを相手にすれば良いのではないだろうか。小百合子はぐるりと建物を見て回り、入ってきた換気扇より外に出る。
外は大通りに面していた。逃走経路の手筈は整えられていたので逃げるには然程苦労しないだろう。
「うむ、わらわにできるのはこの位じゃのう。……さてはて、此度の依頼はどうなるのか楽しみじゃな」
小百合子は煙人間変化を解き、他の猟兵の居る根城へと向かう。
後は各々が得た情報を纏め、最終案を詰めるのみである。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『デビルセキュリティ』
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POW : 叩き出す
【直線的な】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 作戦タイム
予め【今後の行動について仲間と相談しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ : 凶悪な仲間
【敵味方の区別なく暴れまわる仲間】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達の調査により、以下の案や手段が得られました。
・乗り込む手段と逃走経路は車
・正面突破でTHE・銀行強盗
・銀行内部の地図は把握済み
・陽動組と突入組に別れ、陽動組が警備を引きつける
・凶器で脅し、悪魔達を感激させながら金庫内のDを奪う
・お昼休みで人が少ない時間を狙う
こちらの手段を用いてデビルセキュリティを掻い潜り、Dをいっぱい奪ってしまいましょう!!
全員倒して全部壊す、は悪魔にとっての定番です。そうならないようにかっこよく、クールに、華麗に、ファビュラスに。そんなTHE・銀行強盗なプレイングを頂ければ幸いです。
鍋島・小百合子
SPD重視
他の猟兵との絡み可
今こそ銀行を攻める好機なり
総員突撃!
「我が薙刀の錆になりたくなくば大人しくしてもらおうかの!ほほほ!」
UC「群制御動陣」発動
104名の女薙刀兵を召喚し戦闘知識活用にて指揮
陽動組と突入組に半数ずつに分け、
突入組は金庫までの道の確保と道中の警備の無力化・金の運搬の援護、
陽動組はわらわと共に警備の制圧・監視も兼ねた金庫破りの時間稼ぎをそれぞれ指示(集団戦術併用)
警備以外にも客がいた場合は行動を起こさせぬよう捕縛
制圧後も警備や客が何かしでかさぬように各員で薙刀を突きつけては目を光らせ、怪しい動きがあれば問答無用で気絶させる
目標完了後は人質を捕縛状態のまま解放しつつ逃走
箒星・仄々
カタストロフを防ぐ為
銀行強盗を成功させましょう!
警備員さん含めて
怪我人が出ないように行動します
お昼休み時間に訪ね
口座開設について相談します
皆さんが突入してきましたら
覆面をし拳銃をつきつけます(玩具です
そう銀行強盗です(じゃじゃーん
金庫へ案内して下さい
抵抗したらわかりますね…?
警備員へも
バカなことは考えないでくださいね~
行員さんがどうなるかわかりますね
と脅します
もし警備員さん他が攻撃してきたら
UCでつるりと躱して
相手の摩擦抵抗を減じ立ち上がらないようにします
脅して金庫を開けさせ
持参したエコバックに金庫内の全てのDを詰めさせます
ふふ全部いただきますよ
皆さんと車に乗り込み逃走
さあ、いよいよですね
プリ・ミョート
陽動! ハデハデに強盗しちゃるべ! ヌワハハハ! 怯えろ怯えるけろ!
デビルガトリングを車上からブッパなして身悶えするべ。こういうのカ・イ・カ・ンって言うんだべ。わざと外しまくって相手を萎縮させまくってやるんだべ!
ついでに爆弾みたくどっきりグッズをばら撒いちゃる。こういうのはインパクトと畳み掛けが重要さね。ニュースになって新聞一面飾って、田舎のおっかあおっとおにまで届くといいな、おらの活躍! むふふ
アポリト・アペルピシア
ククク、近くの店は閉まっているな?
目出し帽も被り、準備は万端よ
む?魔王たる我の威容ではそんなもの無意味?
否!正しく銀行強盗である事を服装によって知らしめる事で、よりワルさが際立つのだ!
現場に着いたら手筈通り、我は警備を引き付けるとしよう。
「我は銀行強盗である!
大人しく有り金を差し出すが良い、さもなくばこれより全てを蹂躪する!」
真正面から堂々とそう叫べば、悪のカリスマでもある我に警備の目は釘付け間違いなし!
更には我が軍勢を呼び出し乱戦に持ち込む事で、突入組がより仕事をしやすいように仕向けてやろう
皆が首尾よくDを奪えたならば潮時であるな。
呼び出した軍勢を送り帰した上で、我も車に乗って脱出するぞ!
●デビルキングワールドの平和な昼下がり。
銀行の周りはとても静かであった。
いつもならば近くの店は呼び込み・声かけという悪事を重ねながら、自分の店を積極的にアピールしたり、行列を捌いたりと忙しい時間帯である。昼休みというのは店にとっても客にとっても戦場なのだから。
だというのに、今日に限って花屋も、食堂も、スーパーも、皆揃ってシャッターを下ろしている。
店が開いていないのならば余所にいくしかない。そう考えるのはみな同じである。やや不便ではあるが、少し遠くの場所を利用しよう。その結果、銀行の周りは閑静な住宅街のように静かであった。
それでも歩く人はいる。「なんか今日は静かだな」「車があんまり通らないな」「げ、この店休みか……ちょっとばかし歩くかな」など、皆一様に首を傾げていた。
そんな普段と比べて静かな通りにけたたましいブレーキ音が鳴り響く。
曲がり角から姿を現したのは一台の車だ。田舎で見るような白い軽トラがエンジンを唸らせ、ドリフトをかましながら大通りに突入してきた。運転しているのはデビルキングワールドで暇をしていた悪魔である。事前に銀行強盗の旨を伝え、快く運転者として今回の作戦に加わってくれた頼もしい味方でだ。
●こんにちは~、銀行強盗です。
「ほほほ!!」
「ヌワハハハ!!」
「ククク!!」
そのトラックの荷台から個性的な高笑いが上がった。
鍋島 小百合子とプリ・ミョート、アポリト・アペルピシアによるものだ。
「うむ、手筈通り近くの店は閉まっているな?」
アポリトは再び高笑いする。突入の邪魔となる人や車は臨時休業に伴い、別の場所に向かっていった。そのお陰か、悪魔達が大好きな路上駐車もなく、随分スッキリとした通りになっている。これならば多少危ない運転や突入をしたとして、被害は最低限に抑える事ができるだろう。
「…………しかし、荷台はなんとかならなかったのかえ?」
移動は順調であったが、如何せん荷台の座りごこちはよろしくない。段差やマンホールを超える度に、大げさなほど身体が上下に揺さぶられた。
「何言ってるべか!! これこそ銀行強盗の醍醐味だべ!!」
「そうかのぅ……?」
「んだんだ、おらのデビルガトリングだって喜んでるべ!!」
プリはジャーン。と効果音がつきそうな仕草で愛用のガトリングに頬ずりした。
喜んでいるのかどうかはさておき、いかにも銀行強盗らしい私物だ。きっと良い感じに働いてくれるだろう。これで暴れ回ればニュースになって、田舎のおっかあ、おっとおにおらの活躍が届くかもしれないとご機嫌であった。
「む……そろそろだな」
アポリトは目出し帽をかぶり、銀行強盗に備えた。場に合わせた服装というのはそれだけでプラスに働く。よりワルさが際立つだろうと高笑いを浮かべたのだが、端からみればやや可愛らしい出で立ちになっている。それを気遣ってか、はたまた気付かなかっただけなのか、誰もツッコミを入れることはなかった。
軽トラックは大げさなブレーキ音を立て、銀行の前で停車した。
ガラス越しに見える店内に人は疎らだ。昼休みも相まって、最低限の人数で回しているのだろう。
丁度良いタイミングだ。猟兵達はトラックの荷台から銀行の中に目をやった。
銀行の中には数名の客と、いつもよりは少ない銀行員が居た。その中に箒星 仄々の姿がある。彼は銀行の様子を探るため、先に潜入していたのだ。
口座開設のために訪れた体でカードを受け取り、順番を待つふりをする。
どのくらい待っただろうか、仄々は自分の番がきたと同時に、大げさに伸びをした。
同時に、銀行の窓ガラスが割れた。パリパリン、という音と共に奏でられたのは地を揺るがすような銃声である。
「怯えろ怯えるけろ!!」
トラックの荷台からプリがデビルガトリングをぶっ放したのだ。手に伝わる振動音に身悶えしつつ、ガラス以外の被害がでぬよう狙いを付けていく。
ガラスを狙ったのは威嚇であり、この店を狙っていますよ、という明確な宣戦布告だ。
「……我は銀行強盗である!! 大人しく有り金を差し出すが良い、さもなくばこれより全てを蹂躙する!!」
荷台から降り立ったアポリトは堂々たる声色を轟かせた。
その合間、ついでと言わんばかりにプリは偽物の爆弾を設置していった。
銃撃に悪党からの声明、そして偽物の爆弾。これだけ脅せば、警備兵はこぞって表に飛び出してくるだろうと狙いをつけての事だ。
暫くすると狙い通り警備兵達が外に出てきた。昼休みのせいで数はやや少なくなっているものの、たった数名の猟兵だけで太刀打ちできるような数では無かった。
「なれば……我が薙刀の錆になりたくなくば大人しくしてもらおうかの!! ほほほ!!」
小百合子も続いて荷台から降り立った。ユーベルコード・群生御動陣で召喚したを銀行をぐるりと囲むように兵員を配置する。
「乱戦ならば我が軍勢も負けてはおらんぞ」
アポリトもユーベルコード・炎の魔王軍を展開し配下モンスターを召喚した。
形勢逆転。大多数に取り囲まれた警備兵たちは思わず唾を呑み込んだ。
「汝、突入させるなら今だ」
「ほほ、言われなくともそうするつもりじゃ」
アポリトと小百合子は互いに頷いた。
小百合子は召喚した半数をその場に残し、残りの半数と共に銀行内へ突入した。後を追おうとした警備員を留めるようアポリトは高らかに笑う。
「ククク。……さあ、愚かどもよ、精々足掻――」
「――むふふ!! カ・イ・カ・ンだべ!!」
「待つのだ、今は我が口上を述べてただろう?」
「あ、すまねぇだ」
「ゴホンゴホン……さあ、愚かどもよ、精々足掻くがよい!!」
●銀行強盗が入店しました
小百合子が中へ突入すると、先に突入していた仄々が覆面姿でロビーに居た。
手には拳銃――の玩具を持ち、銀行員の傍に立っている。その奥には決して通しはしまいと、銀行内に残っていた警備兵達の姿がある。
「さて、我々は銀行強盗です。バカなことは考えないでくださいね~、銀行員さんがどうなるかわかりますよね」
と分かりやすい脅しをかけている最中であった。
「……おや、外はもう良いのですか?」
「よい、任せておる」
仄々が耳を済ませると、表側からは賑やかな音が鳴り響いていた。
「では金庫まで参ると致しましょう。お嬢さんもどうぞご一緒に」
仄々は毛繕いをしながら捕らえていた銀行員の中でも役職の高そうな女性を選び、紳士的に立ち上がらせた。
「わらわはこの場に残り、監視と応戦を請け負おうかのぅ」
小百合子は薙刀を構えた。キラリと薙刀の刃文が煌めく。
同時に彼女の召喚した兵員は警備兵たちに襲いかかった。その隙間を縫うように仄々が案内役の女性をエスコートする。
金庫までは一本道である。警備兵の多さに胡座をかいた設計なのだろうか。
道中で控えていた警備兵が飛び出してきたが、仄々のなめらかな毛並みに上手く攻撃を当てることができず、空振りするようにして尻餅をついていた。それを待っていたと言わんばかりに小百合子の召喚した兵員が襲いかかる。
そうして先へ進んでいくと、仄々と銀行員の女性は難なく金庫の前まで辿り着く事ができた。錠の掛けられた檻は銀行員の女性が解除してくれたので問題は無い。残るは大きな円状の扉のみである。
「こちらも開けて頂けますか?」
仄々はにこやかに玩具の拳銃を向けた。銀行員の女性は頷きながら震える。
それは恐ろしさからではない。女性は猟兵達が行っている斬新でスマートな銀行強盗に歓喜しているのである。
ギギィと重苦しい鉄の扉が開いた。その先に広がっていたのは大量のDである。
「どのくらい持ち出せばいいんですかねえ」
仄々は首を傾げながら、持ち込んだエコバッグを開いた。せっせと詰め込み、新しいエコバッグを開く。それを数度繰り返し、両手いっぱいにDの入ったエコバッグを掲げた。
「……お、重たいです」
仄々は尾でバランスを取りながら、よたよたと歩き出した。
●撤収ー!! 撤収です!!
「ククク、汝らの力はこの程度のものか!!」
アポリトの高笑いが銀行前に響く。嵐のような銃撃音も相まってか、ちょっとした地獄絵図のようだ。
それを受け、いつのまにか周りにはギャラリーが形成されつつあった。
「いいぞー!!」「やれー!!」「俺は銀行強盗に賭けるよ」「じゃあ俺は警備兵ね」
などと熱いエールやら暢気な会話が飛び交っている。
「おっかあ、おっとお。おら……おら……人気者だべ!!」
感極まったプリがその場で飛び跳ね、デビルガトリングで僅かに残っていた窓ガラスを撃ち抜いた。
「……む、そろそろ撤退しなければまずい」
思っていた以上にギャラリーの集まりが早い。そろそろ撤退しなければ逃げるのに苦労してしまうだろう。
アポリトが突入組に撤退の旨を知らせにいくべきか悩んでいると、銀行の中から乱闘を抜けた小百合子が現れた。その手には仄々が持っていたエコバッグがある。やや遅れ、幾分身軽となった仄々がそれに続いた。
「潮時であるな」
アポリトは先に荷台へ乗りこみ、荷台でデビルガトリングを踊らせていたプリに声を掛ける。
「退路を確保できるか」
「任せてくんろ!!」
プリはガトリングを観客ギリギリに向けて放った。黄色い声が上がり、群衆の隙間に道ができた。同時に小百合子と仄々が荷台に上がる。
「運転手さん、逃走タイムだべ!!」
プリの声を皮切りに、運転手の悪魔はアクセルを踏み抜いた。
ギュルギュルとタイヤが急回転する。エンジンが轟き、先ほど拵えた道に向かって飛び出した。車はそのまま加速を続け、アッという間に銀行が遠ざかっていく。
かくして猟兵達の銀行強盗は幕を閉じ――る訳ではない。
残るは諸悪の根源、オブリビオンの討伐が待っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ザ・スナッチャー』
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POW : シャドウ・スナッチ
【収奪の魔力】を籠めた【影の腕】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【存在強度】のみを攻撃する。
SPD : ボディ・スナッチ
対象の攻撃を軽減する【対象そっくりの姿】に変身しつつ、【対象と全く同じ能力】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : ブラッド・スナッチ
自身の身体部位ひとつを【対象】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ライカ・ネーベルラーベ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●おいでませオブリビオン
猟兵達が銀行から逃走すると、背後からおどろおどろしい気配が追従する。
背景が揺らいだかと思えばそこには影のようなオブリビオンが幾本もの手を踊らせ、軽トラを追いかけていた。
「返せ返せ返せ、それは私の金だ!!」
影の腕が軽トラのタイヤを強度を奪い取る。
嫌な音が響いた。タイヤはオブリビオンの攻撃に耐えきれず、パックリと裂けた。
ホイールがアスファルトによって削れてしまう。速度は落ち、運転手の悪魔は急ブレーキを掛けた。
「さあ、そのDを置いていって頂こうか」
影のオブリビオン揺らぐ。軽トラの前に立ちはだかり、あなたたち猟兵に牙を剥いた。
●マスターから
ボス戦です。銀行から然程離れていない大通りが戦場です。
少し遅れ、先ほどのギャラリーと、SNSやニュースで銀行強盗の騒ぎを聞きつけた悪魔達があなたたちを取り囲み、声援やらブーイングやら諸々騒ぎ立てています。
プレイングの文字数があまるようでしたら、手に入れたDの使い道を明記して頂ければちょびっと描写を追加致します。
悪魔達に還元しようと店で使うのも良し、銀行に返しに行くのも良し、こっそり懐にいれるのも良しです。
※ブーイングは2章で賭けに負けた悪魔達のものです。
箒星・仄々
カタストロフを防ぐため
海へお還りいただきましょう
ギャラリーさんに
攻撃の余波や流れ弾がいかないよう注意
竪琴奏で
旋律を世界の根源へと響かせUC発動
多量のDを魔力へ変換し
翠緋蒼に輝く三魔力で攻撃
敵の攻撃を業火のヴェールや流水の盾で受けたり
風に乗り回避
何にでも変化できる
影のような存在ですね
それなら…!
スナッチャーさんを取り囲んだ炎の渦を強く輝かせ
光で影を打ち消します
存在が薄くなった所へ
炎水風の魔力を叩き付けて粉微塵にします
終幕
不気味な旋律を奏で鎮魂とします
ギャラリーさんも喜んで下さるでしょう
Dはお返ししましょう
きっと
あれだけのことをしでかして盗んだのに
返すだなんて何て悪なんだ!と喜んで下さるはずです♪
プリ・ミョート
さぁ置いてってもらおうか、じゃねえべ! 欲しけりゃ力尽くで奪うってもんがワルだべさ
ゲェーッおらと同じ姿に!? なっても……まあ正直言っておめえ使いこなせんのか? 体の構造とか……こうやって手足ぶっこぬいて武器にするんとか、頭でわかってても勇気がいるべ!
こう言う大立ち回りができてこその大ワルだべ、いくべハデハデなロケットパンチ! だべ!!
アポリト・アペルピシア
私の金?
フハハハハ、奪ったのだからこれは既に我らの物よ!
欲しいか?どうしても欲しいのか?
よぉし、この金は汝らにくれてやる。好きにしろッ!
そう言いながら突然奪った金を集まり始めた野次馬共にばら撒く!
(ただし猟兵達の取り分は撒かずに充分に残しておく。)
これで奴は金に気を取られるか、怒り狂って向かってくるかの大体どちらかになるだろう
冷静さを失い隙だらけとなった者を御するのはそう難しくはない…
その身に我がUCの雷を見舞ってくれようぞ!
鍋島・小百合子
WIZ重視
この世界での流儀に従って銀行を攻め落としたまでぞ
猫に噛まれたと思うて諦めよ!
「通りで美味そうな看板の甘味処を見かけたのじゃ。用が終われば盗んだ金で鱈腹食わせるぞ。すぐにでも取り掛かる故さあさあ、働け」
魔に奉ずる一舞よりUC「魔眷属降臨」発動
呼び出したきめいえすの眷属を召喚しては奪い取った金を使って甘味処での豪遊を提案し協力を取り付け
了承されれば眷属とわらわとで追ってきた敵を打倒
眷属の剣技にわらわの薙刀の武技を併せるようにして攻撃(なぎ払い、乱れ撃ち、鎧砕き、集団戦術併用)
敵の噛みつき攻撃には薙刀での武器受けで防御しつつ受け流しては反撃の一撃を叩き込み(カウンター、咄嗟の一撃併用)
○決戦
「さぁ、置いていってもらおうか、じゃねえべ!!」
プリ・ミョートは頭を数度振る。
目の前のオブリビオンときたら全く以てこの世界の事を理解していない。
悪党には悪党らしい流儀と矜持というものがある。先の銀行強盗だって自分たちが思い描く銀行強盗を模索し、実行したのだ。
だというのに、目の前の悪党は自分が絶対強者だと言わんばかりの物言いをしている。おまけに「置いていってもらおうか」だ。
そんな振る舞いは悪党に相応しくない。そういうのは小ワルというものだ。
「欲しけりゃ力尽くで奪うってもんがワルだべさ!!」
「そうだ、よくぞ言った。……汝に悪党を名乗る資格はない」
プリの叫びに呼応するようにアポリト・アペルピシアが言い放つ。
デビルキングワールドの法に詳しい二人にとって、オブリビオンはこの地に於いて不相応な因子に思えたからだ。
我々は我々の流儀とルールの中で生きている。欲しければ奪え、それが嫌なら奪い返せ。悪党らしい所を見せてみろ。そのような想いを胸に、オブリビオンと対峙する。
「なんだと、貴様らッ!! それは私の金だ!!」
オブリビオンは声を荒げる。影の身体を揺らし、火事のようにふつふつと黒煙を燻らせる。
その頭部が沸騰した湯のようにボコボコと盛り上がり、徐々に形を変えていく。風船のように膨らんだ、かと思えばそれはしぼんだ。
現れたのはプリの布によく似たシルエットだった。
「ゲェーッ、おらと同じ姿に!? なっても……まぁ正直言っておめえ使いこなせんのか? 身体の構造とか……」
驚かせるのには十分な手法だが、即席の身体では上手く使いこなせやしまい。
「こうやって手足ぶっこぬいて武器にするんとか、頭でわかってても勇気がいるべ!!」
プリはユーベルコード・疾天八倒を発動する。同時に、オブリビオンの頭部に幾何学模様が浮かび上がった。
プリは身体を震わせる。するとプリの手足がボトボトと抜け落ち、布がぺたんと盛り下がった。しかし布は直ぐにふっくらと膨らみ、新たなる手足が布の隙間が生えてくる。
それを数度繰り返し、プリは大胆不敵に笑った。
「こう言う立ち回りができてこその大ワルだべ」
どうだ、真似できまい。
プリは抜け落ちた手足を拾い、攪乱するよう複雑に飛翔する。空中で何度も方向を変え、向かっていくのはオブリビオンの元だ。
「いくべ、ハデハデなロケットパンチだべ!!」
オブリビオンに向かって抜け落ちた手が投げられる。
「小賢しいやつめ!!」
オブリビオンの頭部がそれに合わせ、動く。布のシルエットが歪み、大きな口がロケットパンチを喰らった。だが、プリの手足は一つではない。
「次はロケットキックだべ!!」
今度は足が投げられる。咀嚼途中だったオブリビオンは反応が遅れ、もろにそれを喰らってしまった。
影がぐらりと揺れる。燻っていた黒煙が徐々に鳴りを潜めた。
「さて……私の金。汝は先ほどそう申したか? ――フハハハハ、奪ったのだからこれは既に我らのものよ!!」
オブリビオンとプリの様子を窺っていたアポリトが声を上げる。
奪われる方が悪い。それはこの世界の流儀ではないだろうか。そう言いたげだ。
「欲しいか? どうしても欲しいのか?」
アポリトが問えば、オブリビオンはプリに扮していた影を揺らめかせる。返答の代わりと言わんばかりにオブリビオンの頭部がぐにゃりと揺れた。先ほどのように歪み、膨らみ、しぼむ。そうして現れたのはアポリトを形取ったオブリビオンだった。
「今度は我か。それならば……よぉし、この金は『汝ら』にくれてやる。好きにしろッ!!」
アポリトはエコバッグに手を突っ込み、大量のDを抱え込む。そしてそれを思いっきり宙に放った。Dは風に乗せられふわりと天高く舞い上がる。そしてひらひらとその身を躍らせるようにして辺り一面に散っていった。
「――トリニティ・シンフォニー」
静かな場に箒星仄々の声が響く。
ユーベルコードを展開し、風の魔力を乗せて散らばっていったDをギャラリーの向こう側へと誘導した。
それに釣られるようにしてギャラリー達はさきほどよりもオブリビオンと距離を取る事になった。
「それは私の金だ!!」
オブリビオンが雄叫びを上げる。自らの金を奪われまいと、ギャラリーに視線を向けた。
「させはしませんよ。カタストロフを防ぐため――骸の海へとお帰りいただきましょう」
仄々は竪琴を構え直した。エコバッグに残っていたいくつかのDを魔力へ変換し、今度は炎の魔力を具現化する。現れた炎はギャラリーとオブリビオンとの間に壁を作るよう燃え上がった。
オブリビオンはたじろいだ。影が頼りなさげに揺れる。明るい炎のせいで影の維持がままならぬようであった。
「うむ、重畳。なれば、わらわも追随しようぞ」
鍋島・小百合子は扇子を片手に足先で地面をなぞる。着物の裾が優雅に波打ち、魔の僕へ捧げる舞が始まる。
「我は呼び喚く、深遠たる異界に存ずる魔の僕……来い!!」
彼女の声と同時に、悪魔が召喚された。
「…………」
悪魔はじっとりとした視線を小百合子に向けた。
かのものは喚び出されてもタダでは動きやしない。交渉の末、その内容を以て働きかけてくれるような悪魔であった。
「きめいえすの眷属よ、通りで美味そうな看板の甘味処を見かけたのじゃ。用が終われば盗んだ金で鱈腹食わせるぞ。すぐにでも取り掛かる故さあさあ、働け」
キメイエスの眷属は細剣を構えた。どうやら交渉成立のようだ。
「ではゆくぞ!!」
小百合子は薙刀を手にオブリビオンへ駆けた。それに合わせ、キメイエスの眷属も続く。
薙刀がキラリと輝き、オブリビオン――アポリトの形をした頭部へ振るわれた。
「何故だか我の頭部が狙われているようで心が痛いぞ!!」
アポリトの悲鳴が小さく響き渡る。
「……おらの姿じゃなくて良かったべ」
プリは安堵したようにそっと胸をなで下ろした。同時に、先ほどよりも悪党らしい動きをしているオブリビオンの事を少しだけ見直したくなった。
「……しかしこれならば、御しやすいであろう」
気分を切り替えたアポリトはオブリビオンをみやる。
オブリビオンは冷静さを欠いていた。
小百合子とキメイエスの眷属によってこちらの手が空いた。
ならばここは皆で畳み掛けるが吉。
「――行くぞ、汝ら」
アポリトは両掌をオブリビオンに向けた。両掌を縁取るようにしてパチパチと電気が生み出される。最初は小さく細い輝きであったが、それは徐々に肥大化していった。
「電流ですか。それならば私は……」
仄々は戦いによって形の崩れたアスファルトを水の魔力に変換した。変化した水滴は徐々に集まり、やがては水たまりとなる。仄々が竪琴の音色を変えると、水たまりは徐々にオブリビオンへにじり寄った。
少しずつ少しずつ距離を詰めていく。幸いな事に、小百合子とキメイエスの眷属のお陰で気付かれる事は無かった。
水たまりが足元まで到達すると、オブリビオンは水たまりを踏みつけた。跳ね上がった水分は意識があるかのようにその影へとひっついてしまう。
「よしよし、きめいえすの眷属よ。距離を取るがよい」
小百合子は仄々の操った水たまりを見届け、眷属とともに後退した。
オブリビオンが孤立する。
「今だ――その身に我が雷を見舞ってくれようぞ!!」
アポリトのユーベルコードが放たれる。狙いはオブリビオン、先ほどひっついた水滴たちだ。
電流は閃光を携え、龍のように身体をくねらせた。アポリトの手から離れてもその勢いは衰えずオブリビオンに直撃する。
電流が影を覆った。水滴がついた箇所から浸食するようにして、影全体に雷のような電流が駆け巡る。
「くっ。身体が痺れ――」
「ムフフ、おらの事わすれちゃいないべか?」
プリは落ちていた手足を拾い、渾身の力でそれを放った。
手足は影に呑み込まれる事なく、その身を貫く。
大きな風穴には、向こう側の景色が写っていた。
拵えられた傷口は塞がることなく、開けられた穴からどんどん裂けていく。
「私の金が、金が。折角集めたのに貴様らのせいで――」
「はて、わらわらはこの世界での流儀に従って銀行を攻め落としたまでぞ。猫に噛まれたと思うて諦めよ」
小百合子は扇子を口元に当て、消えゆくオブリビオンへ微笑んだ。
静かになった大通りにオブリビオンの悔しそうなうめき声が木霊する。
やがて、影は最初から何もなかったように、消え失せた。
==============================
○箒星仄々
不気味な旋律が大通りに奏でられる。
それは先ほど戦ったオブリビオンへの鎮魂だ。
曲が終わるとギャラリーたちはおひねりを残し、その場から姿を消していく。
暫くすると臨時休業していた店達が次々に開かれた。そのお陰で往来にも活気が出始めている。
「これで一件落着ですが……」
仄々は傍らに置いていたエコバッグをみやる。中には大量のDが入っていた。
「お返ししますか」
依頼の報酬として受け取ったものの、彼は返す事にしたようだ。
「奪ったDを返したら……あれだけの事をしでかしたのに、返すだなんて何て悪党なんだ。と喜んで下さるはずです♪」
ただただ暴れたかっただの、自分たちの考えた悪事を試したかっただの、悪魔達は良いように捉えてくれるだろう。
そうと決まれば善……いや、悪は急げである。
仄々はどっしりとしたエコバッグを持ち、件の銀行へと足を進めた。
○プリ・ミョート
プリは走っていた。
その手には新聞が握られている。見出しには『斬新な手口!? 突如現れた銀行強盗!!』と書かれていた。
デビルキングワールドの悪魔達にとって衝撃だったという書き出しから始まり、その手口や犯人のあれこれが書かれている。
添えられた写真にはプリを含めた猟兵達の姿があった。
「ムフフ、おらの事もかっこよく書かれてたべ!! はやくおっかあと、おっとおにも見せてやらねえと」
プリは駆けていく。なにもない田舎の一本道を。
息を切らしながら走ったその先にはプリの両親がいた。その手には彼女と同じく、件の新聞が握られている。
「おっかあ!! おっとお!! おらの活躍、聞いてくんろ!!」
片田舎の空に、プリの明るい声色が響き渡った。
○アポリト・アペルピシア
「ううむ、しかしこれはどうしたものか」
アポリトはエコバッグに詰め込まれた大量のDを眺めていた。
あの時、野次馬にばら撒いたDであったが、猟兵の取り分は残しておいたのだ。
きっちり四等分。そのうちの一つが今目の前にある。
「……どうしたらいいんだろう」
思わず素の声がこぼれ落ちる。
グリモア猟兵から依頼を受け、解決した。
それまではいい。だが、この大量のDをどうするかまでは考えていなかった。
「………………貯金だ」
たっぷりと時間をかけて導き出した答えであった。
とりあえず貯金しておけばいい。銀行に返すにしても、使い道を考えるのにしても少々時間を要しそうだ。それに預けておけば利息も貰えるじゃないか。
アポリトは実に庶民的な考えを浮かべ、どっしりとしたエコバッグをその手に持った。
○鍋島小百合子
「鱈腹食わせるとは言うたがのう……」
小百合子は眉を下げ、困ったように対面の者を見た。
向かいには召喚したキメイエスの眷属がお団子を頬張っていた。
テーブルの上には数十枚もの皿が積まれている。食べる速度が落ちる気配もないので、まだまだ食らうつもりなのだろう。
「些か食い過ぎではないかのう……なに、正当な報酬じゃと? ……まあ、それはそうなんじゃが」
それにしたってよく食べる。配膳してくれた女中の顔も引きつっていたように思えた。
「……まあ、よいか。ここに金を落としてゆけば、市井にも還元されよう」
金を奪われてしまった銀行は損をしているが、今回の件を戒めとし、身の丈にあった悪事を働くようになるだろう。そうすれば、オブリビオンはこの街での活動が難しくなる。良い事ずくめだ。
「…………しかし、足りるかえ?」
小百合子は足下に置いたエコバッグをみやる。
中には大量のDが入っていたが、目の前の悪魔がどれほど食らうのかは未知数であった。
大成功
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