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大祓百鬼夜行㉑〜生首と馬と阿修羅だらけの基地

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #UDC-P

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#UDC-P


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●堕ちたヒーローは人々を変質させる
「ふふ、UDC組織かぁ……この世界の正義の組織なのね。私も昔はこんな感じで立派にヒーローしてたな……それが、妖怪になった上に忘れ去られてカクリヨの世界に……あんなに頑張ったのに、なんでこんな……だから、もういい。全部、全部滅茶苦茶にしてあげるわ」

 ある地下のUDC組織基地。その中を異様な姿の骸魂妖怪が闊歩していた。一見したシルエットは、下半身が馬、上半身が人間のケンタウロス。だがその首は取れて脇に抱えており、更にその背中からは4本の腕が生え、それぞれが武器を装備しているという姿だった。だがその姿をそこにいるエージェントたちが捉える事はない。彼らはそれを見る事はできないのだから。
 彼女はデュラケンタウロシュラ・エンプレス。元はヒーローズアースにてヒーローをしていた少女だったが、死亡し死後に妖怪化しデュラハンになった。そしてカクリヨに流れ着いたが、今回の騒動でケンタウロスの骸魂に憑りつかれ、更にその骸魂が取り込んでいた戦神アシュラの力まで混ざってしまった結果、3種が混ざったような姿になっているのだ。

「誰も見えはしないのね……ふん」

 そう言って彼女が武器や手足でエージェントたちにそっと触れる。エージェントたちは何に触られたのか、と不思議に思ったが、次の瞬間。

「え……きゃああああああ!な、なんで、私、私の身体を見てるのおおおお!?」

 ある女性は、首がぽろっと落ちて床を転がる。だが意識はあり命もある。だが、上手く動かせずに首を無くした体はうろうろと彷徨うばかりに。

「うわああああああ!?お、俺の下半身が馬にいいいい!?」

 ある男性は、下半身が馬になりケンタウロスのようになってしまう。こちらも足が増えて上手く動かせず、勢い余って走ってしまい壁に激突してしまう。

「?なんかやけに手にいっぱい触れるわね……え? な、なんで私の腕、増えてるのお!?」

 そしてある女性は、背中から4本の腕が生え、突然の腕の感覚に戸惑い、腕を壁にぶつけてしまい痛みに悶えている。

「アハハハ。私が変わっちゃった苦しみ、少しはわかってくれた?……さて、良い感じに混乱させた所で、UDC-Pを探しにいかないとね。悪い事するのって、キモチいい……きっとUDC-Pも分かってくれるはずよ……」

 何かが襲ってきたとは理解しつつも、姿が見えないので混乱している内に、更に変質させられていくエージェントたち。その中を悠々と歩きながら、エンプレスは目的の場所へと歩いていく。その眼からは、一筋の涙が流れていた。

●UDC組織大混乱
「と言う訳で、死傷者は出てないけどある意味同等みたいな状態になってる基地を救出に向かって欲しい!」

 九十九・サイレン(再誕の18不思議・f28205)は簡単に予知の内容を離してから、説明へと移った。

「場所はUDCアースの、とある地下のとあるUDC基地。そこにオブリビオン、デュラケンタウロシュラ・エンプレスが現れて、職員たちを次々に変質させながら、基地最奥に保護されているUDC-Pを取り込もうと進んでいる。皆にはUDC-Pに辿りつくまでにエンプレスを止めて貰いたい。

 彼女の経緯はさっき話した通りだけど、実は少し裏がある。彼女に憑りついた骸魂ケンタウロス、実は同じ世界のヴィランの魂なんだ。つまり彼女が悪堕ちしてるのもそのヴィランが生前の仕返し、あるいは混在する事でなってるみたい。だから彼女をこれ以上悪に堕とさない為にも、是非骸魂を倒して欲しい。

 でも敵は強敵だ。戦闘経験もあるし、アシュラの力も取り込んでるからね。でも場所はUDC組織。エージェントの人達なら基地の構造や設備も把握してるから、協力を申し出れば力になってくれるはずだよ。でも、エージェントの人達には敵の姿が見えないことには注意してね。
 それから敵の力で、首が外れても動けるデュラハン状態、下半身が馬になったケンタウロス状態、腕が4本植えちゃうアシュラ状態、それぞれにされてるエージェントの人達もいる。彼らは突然の変化に体を動かすのに不慣れだから動かないでもらった方が良いけど、もしも逆にその変化を利用できて、その体の動かし方に慣れさせることができたら何か使えるかもしれないね?
 後は、あえて敵が見えないエージェントの振りをすれば、相手が勝手にどれかの状態にしてくれるかもしれないから、それを自分自身で利用するのもありかもね。折角生えたものだし利用できるならしちゃいたいもんね。
 ちなみに敵さえ倒せばデュラハンの子も元に戻るし、変化状態も元に戻るから安心してね。

 それじゃ、職員の皆さんにUDC-P、そしてデュラハンちゃんも、皆纏めて助けにいってきてね!」

 サイレンはサムズアップすると、皆を地下組織内へと転移させるのだった。


タイツマッソ
 こんにちは、タイツマッソです。はい、趣味に走りました。
 今回も少なめの採用になると思いますが、親分戦の方を優先はするので、少々返却は遅くなるかもしれません。

 プレイングボーナスは『UDC-Pやエージェント達と協力して戦う』ですが、過去にUDC-Pを出していないので、協力対象はエージェントのみとさせて頂き、UDC-Pは描写しませんのでご了承ください。
 その代り、ボーナスに『敵に与えられた状態変化を利用する(猟兵、エージェントを問わない)』を付け加えます。状態変化は、首が取れますが体を動かせるデュラハン状態(首は浮遊はできず抱えて移動可能)、下半身が馬になり馬の脚力を発揮できるケンタウロス状態、基本の腕と同筋力・見た目の腕が4本背中から生えるアシュラ状態の3種です。

 プレイングはオープニング公開後から開始します。
 それではプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『デュラケンタウロシュラ・エンプレス』

POW   :    ウエポンブーストドライブ
【上半身の超光速回転や脚の車輪での高速移動】【ドリルランスや盾のレーザーコーティング】【鎖鉄球やメイス、カタールの高速振動・帯電】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ホイールナイト
【車輪に変形しての超光速回転突進】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ガーディアンヘッドボール
【球状になり超光速回転しながら飛ぶ頭】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、球状になり超光速回転しながら飛ぶ頭から何度でも発動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宝海院・棗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャーロット・キャロル

まさかヒーローが妖怪になっていたなんて……
これは放置できません!

まずは私服状態で潜り込んでエージェントの振り作戦でしょうか。アシュラ状態になれればグッドです。

変化した所でヒーローコスになって正体を明かして彼女の話を聞きましょう。忘れ去られてたと言ってますが私が知らないはずがありません!なんせ筋金入りのヒーローマニアなんですから!(彼女のヒーロー経歴等はお任せします)

とはいえそれだけでは止められないでしょうし後は実力行使あるのみです!

●アルティメットマッスルモードになって彼女と正面から激突です!
ウエポンブーストドライブの攻撃をそれぞれ増えた私の豪腕で受け止めてからのカウンターです!



●堕ちたヒーローを救う者

「どこよ、UDC-Pは……ん?」

 目当ての対象を探しに基地内をさ迷い歩くエンプレスの目に、一人の少女が飛び込んできた。高校生くらいの眼鏡をかけた外国人。私服だがここにいる以上はエージェントの1人に違いない。そんな彼女はきょろきょろと辺りを見回しながら不安そうに歩いていた。そしてその視線はエンプレスと目が合っても気が付く様子もなく虚空を彷徨う。

(コイツも見えていない、か)
「うう、皆さんどうしたんでしょうか、次々変な姿になって……特にあの腕がいっぱい生えた姿、あれだけは絶対なりたくありません!早く逃げないと……」

 少女の言葉にエンプレスは隠すことなく顔を顰めた。今の自分がまさにそれ、いや他の異形要素も入れれば更に酷い。そしてエージェントでありながら逃げようとするその言葉にも何故かイラついた。故に、自分に気が付かない彼女へと遠慮なく手を伸ばし触れる。そのイラつきが、自分に残ったヒーローとしての残り香とは気が付かずに。

「え、きゃああああ!私の腕が一杯ぃぃ!」

 エンプレスが増えた途端、少女の腕が背中から4本生える。しかも服の袖まで一緒に映えて破れない(ある意味親切仕様)。突然腕が生えてパニックに陥った少女を見てエンプレスは嘲り満足そうに笑う。

「あははは!ざまあみろよ。自分もその阿修羅姿になって私の気持ちを味わいなさい!この逃げ腰の似非ヒーローが!」
「…………いえ、逃げはしません。貴方の苦しみも全て、受け止めます!」
「え?」

 聞こえもしない筈なのに答えを返した少女の声にエンプレスが疑問を抱くと同時に、少女が来ていた私服をばっと脱ぎ去った。そしてそこにいたのは。

「マイティガール、特別版アシュラバージョン、登場です!」

 背中から4本腕を生やしたままヒロインコスチュームに身を包み、仁王立ちした少女――否、シャーロット・キャロル(マイティガール・f16392)の姿だった。

「なっ!私が見えるってことはまさか、猟兵!?」
「その通り!エージェントさん達の振りをしてここで待っていたのです!私の世界のヒーローが妖怪として此方の世界にいたと聞いて、放っておけませんでしたから!」
「私の世界……!?まさか貴方……!」
「はい!ジャスティス・ワンのいた世界、と言えば通じるでしょう!」

 猟兵や一部のオブリビオンの間ではヒーローズアース、で通じるが万一通じない可能性を考えて一番の有名人の名前を出した。エンプレスがはっとし、シャーロットを見詰めるが、それでも顔を振る。

「だから何よ!私は死んで、あの世界で忘れられた!だから忘れられた者達の世界で妖怪になって、こんな事になったんじゃない!今更放っておけないですって!?忘れた癖に、ふざけるなあああ!!」

 エンプレスが腕にそれぞれ武器を装備すると、四脚の車輪で高速移動しシャーロットへと怒りのままに襲い掛かった。その視線をシャーロットは真正面から見つめ返し受け止めた。彼女の怒りも、悲しみも全てを。

「ふぅぅううう! この溢れる力! この逞しい筋肉! これぞパワー!!! そして今回はそれが6倍! 【アルティメットマッスルモード】アシュラバージョン!」

 ポーズを決めると、彼女の細身の筋肉質な体が男性のボディビルダーもかくやという筋肉隆々の姿へと変化。そしてそれは背中に映えた腕も同様であり、筋肉を備えた6本腕を実現させる。

「ドリルランス!!」
「忘れ去られただなんて、そんなのは嘘です!」

 突き出された槍をかわすとその持ち手を1本の腕が掴む。

「それこそ嘘でしょうが!!シールドバッシュ!!」
「いいえ、嘘ではありません!だって!」

 ビームコーティング製のシールドが振り下ろされるのを、1本の腕が受け止める。

「うるさいぃ!メイス、鉄球!!」
「忘れ去られてたと言ってますが私が知らないはずがありません!なんせ筋金入りのヒーローマニアなんですから!」

 振り回されたメイスと鉄球も、腕をそれぞれ2本の腕が掴み振り回させない。

「っ!そんな、わけっ!電気カター」
「防衛騎士パラディウス!」

 帯電したカタールを、腕を筋肉の腕が叩く事で手元から吹き飛ばした。そしてエンプレスは、その名前に抱えた首の顔を呆然とさせた。

「な……どう、して」
「デュラハンになったと聞いて、それなら何かしら共通する要素があるのではと絞り込みました。首なし、妖精、騎士……そして貴方のその盾のエンブレム。それこそまさに、あのヒロインのエンブレムそのものです!」

 シャーロットは筋金入りのヒーローマニア。故に、例えマイナーであったり、人々が忘れたようなヒーローだとしても覚えていたのだ。

「ぐ……なら、わかるでしょ!?私がどんな扱いをされたのか!私は護ったのよ、なのに、なのに!!」
「確かに……貴方はある事件でヴィランから人々を護り、そして亡くなった。ですがそれは他のヒーローの手柄になり、貴方はただ意味なく巻き込まれて死んだ一ヒーローとして扱われて、人々は忘れていった……」
「わかっているじゃない!だったら、だったら私を止めるんじゃないわよ!!」

 残ったのは1つ。彼女は自身の首を腕で振りかぶり、それでシャーロット目がけて頭突きをしてきた。破れかぶれの、通用するかも分からない攻撃。シャーロットの筋肉の腕もまた同じく1つ空いている。それまでの攻撃と同じく、受け止める事は容易だった。だが。

「ぐっ!!」

 それを、シャーロットは受け止めた。彼女の、本当の怒りと悲しみの籠ったその一撃だけは。受け止めなくてはいけない、と思ったから。

「気づいて、下さい……なら、どうしてそれを私が知っているのか」
「え……あ……っ!?」
「貴方が亡くなって数年後……真実が明らかになったんです。貴方こそが人々を護り、そのヒーローはそれを丁度良く乗っ取っただけだった、と。何年も経っていたので、記事としては大きくは無かったです。でも、私は嬉しかった。貴方の功績が、ちゃんと評価された、ことを!」
「嘘、嘘、嘘嘘嘘!信じるものか!そんな訳!!」

 動揺した彼女を見て、シャーロットは拳を握りしめた。彼女に憑りついた骸魂。それにだけこの一撃が今なら届くと信じて。

「貴方が亡くなった時は、確かに貴方は忘れられたかもしれません。でも、人間は思い出せるんです!覚えていた人が頑張って、語り継いで時には真実を明らかにすることで!貴方は、決して1人じゃないんです!!受け取ってください、私の想い!!マイティ、スマッシュ!!」

 筋肉での全力の一撃が、エンプレスへと叩きこまれて大きく吹き飛ばされた。その一撃は確かに肉体へと響いた。だが、骸魂へとより大きく叩きこまれたに違いない、とシャーロットは感じた。

(まだ、彼女が正気を取り戻すには足りないかもしれません。ですが、きっといつかは……!)

 必ず彼女を解放できるはずだ、とシャーロットは吹き飛んでいった穴を潜り後を追いかけて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大神・零児(サポート)
人狼
妖剣士×黒騎士
30歳男
普段(俺、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)
怒った時(俺、てめぇ、か、だろ、かよ、~か?)

探索や調査、追跡等は内容に即した使えそうなUCを選択し、技能やアイテムも駆使
またマルチギアイヤフォンという通信機を仲間に配って即時情報共有も可能

戦闘の際は敵のUCにメタ、カウンター、一方的に攻撃ができるようなUCを選択又は状況を技能やアイテムを駆使して作り出し、マルチグレネードの機能を選択して使ったり、妖刀「魂喰」や黒剣「黒鞘」を駆使しての剣士の動き等で戦う

基本戦闘型キャラ
ギャグシナリオはツッコミのような立ち位置
自身に触れられる危険がなければお色気も少々いける

アドリブ共闘等可


紫野崎・結名(サポート)
音は、こころ。こころは、ちから。
今はたぶん、この音が合ってる…と思うから

音によるサポート、妨害、撹乱が好み
攻撃や運動は苦手、特に腕力はほとんど無いです
なので、キーボードも肩にかけます

ピンチは黒い天使、歩くのはセブンリーグブーツ、Float on soundをふわっと浮かべてキーボードを演奏
キーボードはスマホとつないで音源を自由に設定変更できるよ
動物の鳴き声にしたり、管楽器の音にしたり、弦楽器の音にしたり

食は細くてすぐお腹いっぱい
そして人見知り気味

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません



●歌声響くショッピングモール

「く、そ……」

 吹き飛ばされたエンプレスはその場で立ち上がった。ダメージは相当のようでよろめいてはいる。だが、それでもまだ戦闘は継続可能であるし、UDC-Pを捕らえるのにもまだ十分な余力が残っているのが見て取れた。

「嘘だ……あんなのは嘘!信じるものか、そんな簡単に!」

 先程告げられた真実も、嘘だと耳を塞ぐ。彼女はまだ骸魂にその身体を概ね支配されているのには変わりはない。

 そしてその姿を捉えた2人の猟兵がいた。

「まだ骸魂を祓うには足りないか……なら更に削ぎ落すまでだ。援護頼む」
「はい。音は、こころ。こころは、ちから。音のちからで、成して見せます」

 狼頭の剣士、大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)と、キーボードを抱えた少女、紫野崎・結名(歪な純白・f19420)だ。既にエンプレスの技も知り、対策の準備も終えていた。結名を残し、零児が妖刀と黒剣を構えて自らの技を解放する。

「お前は逃げ切れるか?【悪夢召喚「ゴーストタウン・アミーゴ横須賀」(ハンティングチェイス・ザ・ショッピングモール)】」

 零児の声と共に周囲の景色が一変していく。UDC基地だった場所はあっという間にショッピングモールの一部へと変化していき、そしてそこには次々とゾンビが現れていく。

「な、何よこれ!」
「お前はこのゴーストタウン・アミーゴ横須賀という迷宮に捕らえられた。言っておくが、ゾンビはここの職員が元とかそういう事はない。あくまで俺の力で作り出したものだ。さあ、行け!」

 ゾンビたちが走り出すとエンプレスへと一斉に襲い掛かる。モール中から次々と現れるその姿は敵にとっても脅威の筈。だが、エンプレスは余裕そうに不敵に笑う。

「物量作戦頼り?そんなの通じやしないわよ!【ガーディアンヘッドボール】!」

 エンプレスの身体と頭が1つにまとまったかと思えば、球状の巨大な頭に変わる。そしてその頭が高速回転すると、襲い掛かったゾンビたちをあっさりと弾き飛ばし、モールへとめり込ませて消滅させた。

「そしてこれでアンタの技は把握したわ。お返しよ!!」

 再びモール内にゾンビが現れる。だが、それは零児が出したものではない。今のはじき返しによりユーベルコードの力を得たエンプレスが技をコピー。迷宮はそのままに、走るゾンビを出現させる能力だけを得て自分の力として出現させたのだ。

「物量作戦も同じ技で仕返せば、後はこちらの地力勝ちよ!」
「……ふ、流石に歴戦のヒーローだ。相手の技にも冷静に即応する。ここまでは見事だ」
「っ!! 私の過去に、触れるなぁ!!」

 高速回転で突っ込んできながら走るゾンビたちも差し向けてくるエンプレス。逆転した物量差は零児を圧殺するかに思えた。

「だが、俺のみに注力したのが失敗だ」
『【なんとなく行う即興の演奏】』

 その声はショッピングモール内のあらゆる場所に設置されているスピーカーから発せられた。そして同じ個所から演奏が流れ始めた。誰が行っているか、言うまでもない。零児が気を引いた隙に、モール内の放送室の空間にまで移動した結名である。本来ならば戦場を離れるのは悪手だが、零児の造り出したショッピングモールという迷宮だからこそその演奏はそこからなら全域に届く。

「あ、ぐ、ああああっ!!」

 演奏が響き渡ると同時にエンプレスが苦しみ出した。そして周りにいたゾンビが両者が操る者全てが消えていく。

『今はたぶん、この音が合ってる…と思うから…幽霊、魂を祓う清める旋律…ゾンビは浄化して、貴方を支配する骸魂を苦しめる音…』

 彼女の巧みにその場に応じて奏でる音楽は骸魂であるエンプレスには特攻として働く。零児がゾンビを出し、それを敵がコピーするのも織り込み済み。纏めて消し去る事で戦力を引き戻す策だったのだ。

「良い歌だ。ああ、全身に活力が漲る!」

 そしてその音楽は共感した者に力を与える。音楽に聞き入り、戦闘力を引き揚げた零児がまっすぐに突っ込む。

「ぐ、く!でも、私の高速回転は続いている!弾いて押し潰してあげる!」

 苦しみながらもエンプレスは零児向けて突っ込んできた。巨大な質量とその回転力は、普通の太刀筋ははじき返しそのまま押し潰してしまうだろう。だが、零児には既にその攻略が見えていた。

「見切ったぞ」

 零児は跳躍しショッピングモールの壁を蹴ると、エンプレスの真上へと跳びあがった。そしてそのまま、刀を振り下ろしながら降下、エンプレスの頭上に刀を突き立てる。

「無駄よ!弾き飛ば……なっ!?」

 簡単にはじけると思った刀が、弾かれずにそのまま球体の上に止まる。そして、エンプレスの回転が徐々に下がっていく。

「な、なんで!?」
「確かに回転するもの事態に何かを差し込めばその遠心力に弾かれる。だが、その回転する中心点ならば弾く力は低い。そして中心点さえ力で抑え込めば、その回転もまた遅くなっていく!」

 中心を刀に抑えられたことで徐々に回転が収まり、回転力が下がっていく。まずいと思ったエンプレスは退避しようとするが、当然逃す零児ではなく、返す刀の黒剣を引き揚げられた力と共に振り下ろす。

「ぐ、があああああ!!」

 球体が斬り裂かれ、その姿がエンプレスに戻る。その前に零児が降りたち、結名の音楽が響く中で再び構える。

「さあ続けよう。お前の中の骸魂が消えるまでな」
『この音楽は霊を祓い…戦士を鼓舞する旋律…ヒーローであった貴方自身になら、きっと響く…』

 骸魂を弱らせていき、本当の彼女を引きずり出す。その為にも歌は奏でられ、剣は剣閃を描いていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

編堵・希亜(サポート)
「……なに?」
「そうなんだ。」
「私は、私だよ。」

囚人服のようなものを着て、いつも黒猫のぬいぐるみを抱えた女の子。口数は少なく、人見知りで猜疑心は強いものの、猟兵としての仕事をこなすためなら、それなりに人と付き合っていける。
甘い物が大好きで、食べればすぐに機嫌がよくなる。嫌いなモノは、かつて自分のいたアリスラビリンスの世界と、それを連想させるもの。

戦闘では、自分ではあまり戦わず、自身に宿るオウガの『カイ』を戦わせたり、ぬいぐるみをバロックレギオンとして相手を押しつぶしたりする。

『カイ』は上等なドレスを着たラミアで、少し高飛車な話し方。宿主の身は守り、敵には容赦がない。『さぁ、敵はどこかしら!?』



●ラミアと猫と囚人少女

「はぁ……はぁ……なんとか撒いたわ。こうなったら、猟兵なんて無視してUDC-Pを!そうすれば!」

 僅かな隙を突き、相手の迷宮から抜け出したエンプレスは目的地向けてケンタウロスの脚力を利用して疾走していた。度重なる攻撃により大分弱ってはいる。だが、妖怪としての生命力の高さによりまだ彼女は動ける状態だった。

 その彼女の前に、ふらふらと囚人服を纏い、黒猫のぬいぐるみを抱いた少女が現れた。彼女は編堵・希亜(蛇に囚われた少女・f19313)。出自不明のアリス適合者経験者であり、立派な猟兵である。

「どきなさいガキィ!」
「それは、ダメです……ここを守る仕事は、ちゃんとやります……」
「なら、吹き飛ばしてあげるわ!」

 エンプレスは大きな車輪へと姿を変えると、まっすぐに希亜へと突っ込んでいく。小柄な体など吹き飛ばすであろうその突進に対し、希亜はその場に立っていた。

「っ!」

 身がすくんだのか、という彼女に車輪が激突する。憐れ、希亜の身体が吹き飛ぶ、と思いきやそんな事はない。むしろ彼女の身体は、その後ろに現れた存在に抱えられ、車輪を止めるかのように留まっていた。

「な!?」
「さあ、仕返ししてあげなさい?」
「うん……お願い……」
 
 下半身が蛇である、いわゆるラミアの女性の呼びかけに希亜が応えると、彼女が抱えていた黒猫のぬいぐるみが車輪と化し、エンプレスへと思い切り回転激突したのだ

「な、まさか、技のコピー!?」
「その通り。ただ完全に脱力して受けないといけないの。だから、私が直前に出て抱え上げる事で立つ力も無しの完全脱力状態になったのよ。貴方の突進は無効になって、ぬいぐるみがコピーしてやり返す、立派な【仕返し】。味わって貰えたかしら?」
「あ、アンタは一体、ぐっ!?」

 車輪に吹き飛ばされたエンプレスの身体を、女性の尻尾が絡めとり捕縛する。

「私はカイ。この子と共にいるオウガ。短い間だけど、お見知りおき、をっ!」
「ぐはあっ!」

 そのまま尻尾を振りかぶり、壁へと思い切り叩きつける。丁寧で上品な仕草だが、れっきとしたオウガであるカイに当然容赦などはない。

「ここにいるUDC-Pは、守ります……アナタには、渡しません……」
「骸魂と言ったわね。ふふ、その魂の味だけでも、味わえるかしらね?」

 おどおどとしながらも毅然と見据える希亜の前から、ぬいぐるみ車輪が再び突進し、カイもまた舌なめずりしながら更にエンプレスへと攻撃を仕掛けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

紫・藍
演技派藍ドルな藍ちゃんくんでっしてー
職員に変装おびき寄せ!
変化させられたらアシュラな容姿さえも活かしたお洋服に早着替え!
ヒーローの変身のように、なのでっす!

藍ちゃんくんでっすよー!
腕が増えるということはその分楽器も沢山使えるということでっしてー
一人バンドパフォーマンスなのでっす!
職員の皆様に変わるからこそできることと変わっても可愛くあれることを示しつつ、歌うは祈りを込めた歌。
おじょーさんのことを語り継ぐための歌。
職員の皆様もどうかコールを!
喝采を!
皆々様と同じく人々の平和を守り戦った方が、見えなくともそこにいるのでっす!
見えずとも歌は届けられるのでっすから!
涙を虹に、笑顔をおじょーさんに!



●貴方を語り継ぐ歌

「はぁ……はぁ……まだだ、まだ……!」

 エンプレスは再び猟兵から逃れた。あともう少しでたどり着く。もう少しで、もう少しで……。何を為そうとしていたのかすら薄れゆく骸魂により消え失せかけて、それでも彼女は何かの為に進み続けた。このままでは消えたくない。何も残せないで、忘れられたまま、見えないまま消えたく。

「皆さん!ここで敵を食い止めましょう!姿は見えませんが、ですがあんな腕が多い姿に変えられた皆を助ける為にも、ここで!」

 あともう少しでUDC-Pのいる部屋という所で、職員たちがバリケードのように通路を塞ぎ展開しているのが見えた。そしてその中心には、それを指揮し鼓舞する女性職員が見えた。邪魔な者達、そしてその言葉にエンプレスは再び苛立った。

「あんな姿で、悪かったわね……!!」

 一気に近づき気付かないその職員に触れる。それが少し前のデジャヴである事には、その間に与えられたダメージにより気付くことはなく。

「きゃああああ! 私の腕が!」
「ふ、ふふ、ざまあ見ろ……そのままでずっと過ごしてろ……」
「――――いやいや、流石にずっとは遠慮させてもらいまっす!」
「え? わぶっ!」

 職員を阿修羅腕に変えた瞬間、突然変わった口調と共にエンプレスの顔に職員のスーツがぶつけられて視界が遮られる。

「私の声を……まさかっ!?」
「そのまさかでっす! 演技派藍ドルな藍ちゃんくんでっすよー!」

 スーツを顔から取り去ったエンプレスの前にいたのは、阿修羅腕にすらしっかりフィットしているヒーロースーツっぽいそれでも可憐な印象の服を身にまとったさっきの女性職員……否、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)の姿だった。ちなみにれっきとした男性である。

「しまった……また阿修羅腕を利用して攻撃を……!」
「いやいやでっす!立派な6本腕、できるのは攻撃だけではないでっす!」

 そう言ってマイペースなハイテンションで藍は手持ちの荷物から次々と何かを取り出す。それはギター、ベース、キーボード、ドラム、そしてマイク。それを腕でそれぞれ持ち、スティックを握り、マイクを握る。それは珍妙な1人バンドの様相。

「1人バンドパフォーマンスなのでっす! 心を込めて歌うのでっす! あなたに届けと歌うのでっす! 藍ちゃんくんでっすよー! 【藍音Cryね(アイ・ネ・クライネ)】!」

 エンプレスを差し置いて、藍は演奏を始めた。同時に複数の楽器を腕が複数ある事を利用しても難しいプレイをこなし、その歌は藍の願いのこもった歌。1つはその姿に既に籠っている。歌詞も織り交ぜそれを届ける。相手は藍の指示で展開していた職員たち。その中にはエンプレスに姿を変えられ、落ち込んでいたり現実逃避していた者たちもいた。だが、阿修羅腕で楽器を奏で、阿修羅腕でも可愛らしい衣装の姿でいるその姿は語る。『変わるからこそできることと変わっても可愛くあれること』。それを理解した首が取れた者が、ケンタウロスになった者が、阿修羅になった者が、立ち上がり、自信を持って職員皆と協力しながらバリケードに加わる。

「な、何よ……うるさい、ウルサイ、五月蠅い! 攻撃もしないで歌を歌うだけ!? ふざけるな……そんなので、そんなのでぇ!!」

 エンプレスにもまたその歌は影響する。だがそれがどんな物かは理解せず、あるいは目を知らし、エンプレスは再び腕に複数の武器を構えると藍向けて振り下ろそうとする。
 それに対し藍は防御はせず演奏を続行、間奏に入った所で。

「これはある世界の、戦い抜いた人の歌でっす! 職員の皆様もどうかコールを! 喝采を! 皆々様と同じく人々の平和を守り戦った方が、見えなくともそこにいるのでっす! 姿は見えなくても、歌は、声は、想いは届くのでっす!!」
「なっ……!?」

 振り下ろした腕が、藍の目前で止まる。藍の目が、真剣な目がエンプレスへと向けられて目が合った。
 藍は知っていた。エンプレスの正体を突き止めた者からその過去を。だからこそ作り上げた歌と演奏。彼女の為した事を、本来の世界では彼女が死んだときには伝わらなかった事を、この世界で。藍は新たに伝える事にした。吟遊詩人が語る英雄譚のように。歌にはそんな一面もあるのだから。

「凄いって、なんだか、伝わった……!」
「ああ、そんな人が忘れられるなんて、冗談じゃない!」
「私達も、称賛が欲しい訳じゃない。でも、だからって誰にも覚えられないなんて!」

 藍の歌はその祈りを届ける。だから歌詞だけでは伝わりにくい事もまた、職員たちに届く。エンプレスがヒーローだった頃の事実と顛末を全て届ける。そしてその共感は喝采とコールとなり、その空間を包んでいく。

「あ……なっ……!」
「……泣いているでっす」
「えっ……!」

 藍に指摘され、頬に手を伸ばせば、自分が泣いているのに気が付いた。称賛を得る為に正義を為した訳では無かった。ただただ、それがけなされ成果を奪われ忘れられカクリヨにて妖怪となった。それがただただ悲しかった。それが、元の世界では再認識されたことを告げられ、そして流れに流れてたどり着いた世界でこうして正義を為そうとする者達に、伝わって認識された。それに、彼女は涙を流したのだ。

「あれ? あそこ、誰かいるぞ?」
「本当だ。馬みたいな、阿修羅みたいな、騎士みたいな……」

 そして彼女の事が伝わった事により、その姿もまた職員たちには見えるようになっていた。それは藍の歌による理屈も条理も越えた効果によるものか、忘れられている妖怪は見えないというその条理が崩れた故の奇跡か。

「は、はは……そうか……忘れられても私、また、伝わる事はできたんだ……」
「そうでっす!忘れても人は調べたり、そしてそれを時に歌として伝えていくこともできるでっす!どんな姿になろうとも、貴方はヒーローで、それはもうこの世界に伝わったのでっす!」
「ああ……私、私……ああああああああああ!!」

 泣いて膝から崩れ落ちた彼女の体から、黒い靄が離れていく。それは彼女を苦しめたケンタウロス骸魂。苦しそうにもがくそれに、藍はトドメのフィナーレを放つ。

「それじゃあそろそろしめまっす! 涙を虹に、笑顔をおじょーさんに! おじょーさんから、とっとと離れて消えるでっす!!」

 演奏を締める楽器の音が鳴り響けば、骸魂はその姿を消していった。藍の【藍音Cryね】は悲しみを癒し、その原因--つまり骸魂のみに攻撃をする。それにより、攻撃する事無く、エンプレスを傷つける事なく、演奏と歌だけで骸魂だけを消し去ることができたのだった。



「あれ?姿が変わらないでっすね」
「みたいね……アイツの力だけ吸収しちゃったのかな。それとも、貴方が姿が変わっても出来る事があるって教えてくれたからかしらね」

 骸魂が消えた事で、エンプレス……いやパラディウスであり正気に戻った彼女だったがその姿はそのまま、デュラハンと阿修羅とケンタウロスが混ざった姿だった。だが彼女はもう気にしていない。姿が変わってもそれを利用して出来る事があると彼女にも伝わったからだ。ちなみに職員らは元に戻っている。

「これからどうするでっす?」
「……今まではあっちで腐ってただけだったけど、これからはカクリヨでもまだ妙な事があったら対処できるようにしておくわ。私の居場所はあそこだし、あそこでも自信を以てやっていけそう。貴方達にだけ任せる訳にはいかないし……それに、この世界にだってこの人たちみたいに立ち向かう人がいるんだしね」

 見渡した彼女は職員たちと顔を合わせる。恐らくこの奇跡も長くは続かない。大祓の影響が消え、世界が元に戻れば、また見えなくなってしまうかもしれない。だが、もう彼女は絶望しない。少なくとも覚えられた、それだけは確かなのだから。

「それじゃあ、それぞれ頑張る皆さんの為に、もう1曲バンドプレイで行くでっす!」
「……阿修羅腕、もうないわよ?」
「そうだったでーーーーっす!」

 藍のオーバーリアクションに、パラディウスも職員たちも笑う。例えまた見えなくなるとしても、この思い出は、記憶だけは、確かに残っていく。それだけは皆が確かに思う事だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月30日


挿絵イラスト