大祓百鬼夜行②〜いくぜ限界突破!
●
「昨日より今日、今日より明日!」
全身を輝かせる少年が電撃纏う拳を繰り出した。拳は立てられた板に当たり……そこにごくわずかな焦げ跡をつけた。
「よし、成長した! 昨日は焦げ一つつかなかったもんな!」
少年は満足げに自分の拳を見る。
「だが、一人でできることなんてたかが知れてるんだ。俺は強敵と……猟兵と戦いたい! 最弱の俺を躊躇なく踏み潰し、最強の攻撃を容赦なく繰り出され、完璧な策に嵌められ、完敗して……そして!」
再び両年はぐっと拳を握り、引く。
「そこから成長して立ち上がりたい!」
少年は拳を突き出し、また板に叩きつけた。
「戦うたびに、敗れるたびに……俺は強くなる! さあ来てくれ、強敵(とも)よ……!」
少年の前で、板の上全体が黒く焼け焦げていた。
●
「皆様方、お疲れ様にござる。本日も大祓百鬼夜行の依頼にござる!」
そういって一礼するグリモア猟兵シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)。
「本日相手取っていただきますのは、竜神親分『碎輝』殿にござる」
戦前より親分最弱と呼ばれていた彼。これはこの戦いは楽勝だろう……とムードが緩むが、シャイニーの表情は険しい。
「彼は前評判の通りとても弱く。たったの一撃で倒すこともできましょう……最初は」
最初? と首をかしげる猟兵にシャイニーは続ける。
「彼は『昨日より今日、今日より明日』をモットーとし、戦う程、敗れる程に強くなっていきます。その成長度合いは正に無限。瞬く間にフォーミュラすら凌駕する強さともなりましょうぞ。即ち彼は最弱にして、最強とも言えます」
たったの1、2戦で幹部級の実力は軽く得られるという。まるで楽観できる状況ではないと、猟兵たちも改めて気を引き締めた。
「しかし、彼がどんなに強くなろうと得られないものが一つあります。それは『数』。彼は戦いの間も成長しては行きますが、その成長を上回る連携をかけることで彼を一気に倒すことができましょう」
無論連携して倒しきれなければその分一気に成長してしまう。各々が磨いた腕をいかに活かしあうか、それが要となろう。
「もし共に戦場に来る仲間がいなくとも、己の得手不得手を自覚しそのように動けば、きっとその場に居合わせた方が当意即妙に答えてくれましょう。彼が無限に成長するなら、こちらは無限に広がる連携があり申す!」
縦に強くなる敵を横の強さで越えてくれ、そう言ってシャイニーはグリモアを起動する。
「他の親分や妖怪たちと同じように、彼は骸魂の影響で敵になっているだけであり本質的には味方と言える存在でござる。戦いの後、強くなった彼ときっと手を取り合う日がきましょう。その為に、よろしくお願いいたします!」
最後までお約束の展開となることを願いつつ、シャイニーは猟兵たちを送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。これぞまさに少年漫画の王道。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……他の猟兵と連携して戦う』
今回の敵である碎輝は無限進化形態をとっており、最初は超弱いですが猟兵が🔵を得る程に劇的に強くなっていきます。そのため連携をかけ、一戦の間に仕留め切ってしまうことが最良の対策となります。
このため、いただいたプレイングは可能な限り纏めて書こうと思います。単独参加者の方も他の方と連携が前提となりますので、それを意識してプレイングを書いていただくといいかと思います。
野良参加の場合『こういう戦法の人がいたらこういう風に合わせる』など書いておくとそれらしい人と連携を取らせます。
また、連携前提ということで単独参加でも、攻撃しない支援特化や最終的には捨て石になるようなプレイングも(チームを勝利させる意思さえあれば)今回はありとします。
今回はプレイングを纏める都合上、ある程度プレイングが集まってからの執筆開始、かつ執筆開始後はプレイング受付締め切りとさせていただきます。詳細はタグにて連絡いたします。
それでは、無限の連携を産むプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『竜神親分『碎輝』成長電流形態』
|
POW : 成長電流放射
【黄金竜】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【状態から次第に強くなっていく電流】を放ち続ける。
SPD : 黄金竜神
【体に雷を纏う】事で【無限に成長を続ける黄金竜の姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 超電竜撃滅衝
自身が装備する【槍】から【無限に成長する巨竜型の雷電】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【感電】の状態異常を与える。
イラスト:108
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
岩永・勘十郎
「さて、早いうちに倒してしまうぞ」
そう言って敵に挑む勘十郎。物凄い速度で移動する敵を目視で捉えるのは困難だ。故に鍛え上げた【瞬間思考力】を駆使。これの前では敵の動きは止まってるように見える。これで攻撃を【見切り】回避していく。
「さぁ、まだまだここからだぞ」
攻撃を受けたであろう仲間を見ると、勘十郎はUCを発動した剣で何と味方を斬り付ける。しかしダメージはない。味方のダメージを受けたという事象その物を削ぎ落す事でダメージを無かった事にしたのだ。回復や治癒より確実だろう。
味方の支援もきっと効いている。勘十郎はそのUCを纏った刀で敵を斬り付ける。【幸運】も味方してくれるはずだ。
鏑木・桜子
【アドリブ歓迎】
わたしの剣撃は山を切り裂き剣閃は岩をも叩き潰します。
あなたが幾ら成長しようとする前に倒す、或いはそうでなくとも五体満足で済まないほどのダメージを与えれば無駄というものです。
どうかお覚悟願います。
というわけやや誇張した脅しを入れ【剣刃一閃】による一撃必殺を狙うと見せかけつつ最初はわざと加減して徐々に速度を上げていく戦法をとります。
これにより相手の反応速度の成長を制限しつつ相手の意識を自分の攻撃の回避に集中させます。
散々脅しましたが幾らわたしでも龍神親分様を一撃で倒しきることは難しいでしょう。
わたしの真の狙いは「猟兵達」の「最大火力」を「一斉」に叩き込む隙を作ることです!
レーヌ・ジェルブロワ
アドリブや連携OKです
日毎に成長されるなんて見習わなくてはなりませんね。今は我々の成長のために、どうかお力をお貸しください!
この世に命を得たのも何かの縁…此の世界を救う為に、為すべきことを致しましょう。
精霊銃で対象を攻撃します。中長距離武器なので、仲間の皆さんの動きに合わせ、援護射撃をします。敵の隙を待ちましょう。
碎輝さんの攻撃は、メイスのLumièreを構え、光の精霊の力によるオーラ防御を展開。仲間の皆さんも守ります。
反撃に「裁きの光」を詠唱――狙うは碎輝さんです。頭上から降り注ぐ光の命中率は高いはず。
貴方を倒し、わたしたちは先へと進みます。
この世界を救うために。
蛇塚・レモン
連携なら任せてっ!
あたいは、同行するみんなを信じてるっ!
しっかりサポートするね!
まず下準備っ!
鏡盾を媒介に、全力魔法・結界術・オーラ防御の三重防壁を展開!
一瞬でいいから、巨竜型の雷電を足止めするよっ!
デカいし無限に成長するし、そういうのズルいから禁止~っ!
嫉妬の心が蛇神様の破壊念動波となって(衝撃波+念動力+範囲攻撃)、
雷電ごと碎輝くんを吹き飛ばすよっ!
あたいのUC効果は『対象の捕縛とUC封印』!
行使している間は毎秒寿命を削るけど
碎輝くんは完全に無力化するよっ!
みんなっ!
今のうちに総攻撃するよっ!
反動を継戦能力で堪えつつ
あたいも蛇腹剣で斬撃波弾幕を乱れ撃ち!
成長して勝つのは、あたい達だぁーっ!
村崎・ゆかり
無限に成長する相手か。成長はあたしたちの専売特許だと思ってたけど、こういう相手もいるのね。
「全力魔法」影の「属性攻撃」「結界術」「呪詛」を乗せて金光陣展開。
あたしの放つ金の光が生む影が、偽物のあなたになって襲いかかるわ。反撃してもいいけど、影を傷つけるとあなたにダメージが返るわよ。
本人が強くなればなるほど、偽物の影も強くなる。無限に成長する碎輝には最適な術式よね。
影の竜には碎輝の攻撃の出鼻を挫いてもらう。
その隙に、みんな彼への攻撃をお願い。あたしは金光陣の維持で精一杯だから。
碎輝の攻撃は、「電撃耐性」と「オーラ防御」で耐える方針。こっちの防御が持たなくなる前に、彼を討滅しないと!
セツナ・フィアネーヴ
戦うたび強くなり最弱から最強に至るもの、か…
勝負してみたいが…
(アリシア)『セツナ、実はそういうノリ好きですよね』
…そうか?だがやはり強者との戦いは成長の糧として……
『いや今はそれどころじゃ』
…分かってる。今は、奴を越え、その先へ辿り着かなくちゃ、だな
連携戦なら、サポート寄りに行動する。
『竜神機ケラヴノス』の《天候操作》の力で、奴の纏う雷を剥いだり、放たれた雷へ干渉し逸らしたり、アリシアの光での《目つぶし》を試みる
そして味方の大技に合わせるか、もしくはその前にUC
影より生じさせた6つの短剣を投擲し、UCの封印、もしくは奴の力の「衰退」を狙い、僅かな時でもいい、奴の力を削ぎ落す!
※アドリブ歓迎
カシム・ディーン
共闘連携希望
機神搭乗
お前…帝竜ですね
帝竜眼がお前を見ています
その目玉…(こほん)涙を寄越せ
【戦闘知識・情報収集・視力】
強化された視力とこれまでの戦いの記録からその動きと立ち回りの癖を分析し仲間にも伝達
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠
更に純水の膜でコーティングして電気を通さぬように
【スナイパー・念動力】
仲間の攻撃に合わせて死角から念動光弾を砲撃兵装から発射してその動きを少しでも止めて
UC発動
超高速で飛び回りながら
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
ハルペーによる連続斬撃
其処から更に鱗とか角とかも容赦なく強奪を狙う
戻らなかったら返して治します!
(ちゃんと生えたら回収
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
無限に強くなる、ですかぁ。
凄い方ですが、だからこそ手は抜けませんねぇ。
『FBS』を四肢に嵌め飛行、【紘器】を発動し『祭器』全ての複製を一気に、且つ大量に形成しますぅ。
『FMS』は『積層防御』と『障害物』として相手の機動の妨害に、味方の行動は阻害しない様注意しますねぇ。
『FSS』は私自身と味方の周囲に配置、シールドによる防御を固めつつ、炸裂弾に換装しての[爆撃]を。
『FBS』の複製は『FMS』と連動させ相手の動きを阻害しつつ、親分の死角からの斬撃を入れ、親分が猟兵に集中出来ない様にしますぅ。
『FRS』は[砲撃]による攻撃を中心に、味方に合わせて[援護射撃]を行いますねぇ。
居並ぶ猟兵たちの前、雷纏う一人の少年が怖じる様子もなく堂々と立っていた。
「来たな、猟兵! どいつもこいつも、強そうな面構えをしてやがる!」
その少年は金の体に同じ色の槍を携え、さらに角を生やして全身に電流を待とうといういかにも人外の存在であった。
「もう知ってるだろうが、俺は竜神親分の碎輝。最弱の妖怪親分だ!」
恥ずべきはずのその称号を、まるで己の誇りの様に堂々と名乗る少年、碎輝。その姿勢を笑う者は、この場には誰もいない。
「無限に成長する相手か。成長はあたしたちの専売特許だと思ってたけど、こういう相手もいるのね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)が彼が己を弱いという、その真の意味を見てそう言う。
「戦うたび強くなり最弱から最強に至るもの、か……勝負してみたいが……」
『セツナ、実はそういうノリ好きですよね』
そしてキャバリア『竜神機ケラヴノス』の中、セツナ・フィアネーヴ(災禍貫く竜槍・f26235)もまた彼の姿勢を好ましいかのように言い、友である精霊アリシアにからかうようにそう言われた。
「……そうか? だがやはり強者との戦いは成長の糧として……」
『いや今はそれどころじゃ』
続く言い合いの中で、セツナは碎輝を強者と評した。これは皮肉でも何でもない。
「日毎に成長されるなんて見習わなくてはなりませんね。今は我々の成長のために、どうかお力をお貸しください!」
レーヌ・ジェルブロワ(いやはての白薔薇・f27381)のその言葉が示す通り、碎輝は日ごと成長する者。いずれは最強へ至る弱者なのだ。
そしてその道程は、圧倒的な強者への敗北によって開かれる。それを望み、碎輝は己の持つ槍を構え一直線に猟兵へと突っ込んでいった。
「わたしの剣撃は山を切り裂き剣閃は岩をも叩き潰します。あなたが幾ら成長しようとする前に倒す、或いはそうでなくとも五体満足で済まないほどのダメージを与えれば無駄というものです。どうかお覚悟願います」
鏑木・桜子(キマイラの力持ち・f33029)が、身の丈以上の大太刀を一閃し、碎輝の突進を迎え撃った。それは自らの言葉の仰々しさにはとても及ばぬただの一薙ぎであったが、碎輝はそれにすら反応することができず来た道を戻るように跳ね飛ばされ、大の字に転がった。
「強い……いや、この程度も避けられない俺が弱いのか……!」
電流が倒れる体を取り巻き、それに充電されたかのように碎輝は跳ね起きる。その動きは僅かだが精彩を増したようにも見えた。
「さて、早いうちに倒してしまうぞ」
その動きを見た岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)は、無限の成長の名に偽りなしと確信する。故に、時を与えることは決してしてはいけない。その考えを裏付けるかの如く、碎輝の姿は猟兵たちの眼前で黄金の竜へと変じていった。
「いくぜ!」
直前の無謀な突進とは違う、高速での飛翔が勘十郎へと襲い掛かる。だが、相手が竜化出来るのは前もって知っていたこと。その高速の動きを『見る』のではなく瞬間的に『読む』ことで見切り、その軌道から先んじて身をかわすことで電流纏うその突進を外した。
勢いあまり後方に突っ込んで土煙を上げる碎輝。だが、この失敗もまた彼は糧とするのだろう。徐々に強くなっていく電撃がそれを物語っていた。
「さぁ、まだまだここからだぞ」
故に勘十郎も、ここからが本番だと確信する。
「連携なら任せてっ! あたいは、同行するみんなを信じてるっ! しっかりサポートするね!」
ならば、これ以上の敵の攻撃を十全に撃たせてはならぬ。相手が再びこちらを向く前にと、蛇塚・レモン(白き蛇神憑きの金色巫女・f05152)が己の鏡盾を媒介とし魔法、オーラ、結界と不可思議の力を三重に重ねた防壁を張り碎輝の攻撃を封じんとする。その防壁が出来上がるのと、竜の形をした雷電がそこにぶつかるのはほとんど同時だった。
「一つでも分厚いのが三つも……今の俺の力じゃぶち抜けない! また負けた!」
敗北を認めつつも、その声は明るい興奮に溢れている。彼にとって今日の負けは明日の成長の糧に他ならない。その明日に輝く目を、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)はキャバリア『メルクリウス』の中から剣呑に見た。
「お前……帝竜ですね。帝竜眼がお前を見ています。その目玉……もとい涙を寄越せ」
盗賊として強敵の宝や力を奪うことを目的に戦うことも多いカシムは、その輝く金の瞳もまた宝の一つとしてみる。
「俺は竜神親分さ。欲しかったら力尽くで奪ってみろ。そうされないために……俺はもっと強くなる!」
黄金竜のその体がメルクリウスに向け飛翔する。その動きを、カシムはこれまでの彼の動きと戦い経験から見極め仲間に伝える。
「どちらかと言えば性格的なものかもしれませんが、早いが直線的です!」
「……分かってる。今は、奴を越え、その先へ辿り着かなくちゃ、だな」
そしてその突進はセツナの駆るケラヴノスが受け止めた。だが力任せの防御ではない。天候操作の力を持って突進の威力を増す雷撃を削ぎ落し、裸となった竜の体のみを機体の力で捕まえた。そのまま力比べにいく……と見せかけ、アリシアが強烈な光を発し黄金の瞳を焼く。
「うおっ!?」
怯んだその瞬間、碎輝は地に叩きつけられた。だがバウンドするように跳ね上がり、再度の突進を試みる。
「無限に強くなる、ですかぁ。凄い方ですが、だからこそ手は抜けませんねぇ」
明らかに復活、そして反撃の速度が上がっている。これ以上相手を成長させては押し切られると、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が持ちうる兵装を【豊乳女神の加護・紘器】にて大量複製、一気に包囲殲滅をかけんとした。
盾と円盤に防御させ、砲撃能力のあるものは一斉に撃ちかけさせる。直接攻撃能力のある者は多数から襲い掛からせ敵の翻弄と狙いを定められない攪乱を行わせ、さらに防御しているものは時折動き障害物としての機能さえ持たせて相手を動けなくする。そして自分は空高く飛び、一切の反撃すら届かぬ所へと退避する。
ついにユーベルコードが投入され、一切の容赦のない勝つための戦術が碎輝をその場に釘付けにした。相手に何もさせず、圧倒的な物量と優位性からの完全な嵌め殺し。これを卑怯と呼ぶのなら、それは戦いを遊びとしか捉えぬ子どもの甘え。
その場が見えなくなるほどの無数の砲撃が碎輝を包み、竜となったその体さえ爆炎の中へと飲み込んだ。
「強い……強すぎる……! こいつの抜け方なんて一つしかない……俺はそれを……出来るようになる!」
その爆炎を切り裂くように、中から電流が迸った。赤い炎を金の光が切り裂き、黄金の弾丸のようになった竜がそこから飛び出した。
「なんて無茶苦茶な……」
圧倒的な包囲を抜けるために取った方法。それは力尽くで強引に抜けだすというもの。だが兵装たちの容赦ない攻撃は、彼にそれが可能になるほどの成長を齎した。それは奇しくもるこるの取った戦法がそれだけ強力だったことの現れ。
その突進を、レモンの張った防壁にレーヌがメイス『Lumière』を添えて自らのオーラを流し込むことで拡大。仲間全員を守る強固な防壁とすることでどうにか抑え込む。
「相当に成長したようね……でもその成長が仇となる。古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。光り輝くほどに影はより深く。濁気に沈む愚人の影よ、克己せよ。汝らの現し身に牙を剥け。疾!」
その防壁を超えるように、ゆかりが【金光陣】の光を放った。防御の光を乗り越え、碎輝の輝きさえ飲み込む強い光が相対的に彼を『影』とする。そしてその『影』は立ちあがり、黒き碎輝となって彼に襲い掛かった。
「反撃してもいいけど、影を傷つけるとあなたにダメージが返るわよ」
碎輝が無限に強くなれば、その影もまた無限に強くなる。成長を続ける碎輝にはこの上なく有効な戦法だ。
「なるほどな、強くなりすぎた力は自分の身を滅ぼすってことか……」
碎輝はまとわりつく自分の影を持て余し、攻めあぐねる。これは切り込むべき隙と、桜子が最初の一撃よりはるかに鋭い連続突き、そしてカシムがそれに合わせて死角から念動光弾を砲撃兵装から発射し、その動きを阻害していく。
「この連続、攻めるだけじゃだめだ……自分でも殺せないくらいの守り、それもいるんだ!」
力では対処できない状況に押し込まれた碎輝。その体をより強い電流が取り囲み、まるで鎧の如くその身を守った。そしてその守りを自らの力にするかの如く、その竜の体も固さを増し、そして自分に降りかかる攻撃を耐えながら強引に押し通った。
「こいつが俺の、黄金竜神!」
十全に成長した電撃が迸り、取り囲む猟兵たちをついに焼いた。カシムは機体に光と純粋の幕を作ることでそれを防ごうとするがその水さえも打ち砕くほどに電流は強く、さらに刀を伝い桜子の体にまで強烈な成長電流が通り抜けた。
「強い……!」
その威力に桜子の体がぐらりと揺れ、メルクリウスも一瞬機能がショートする。その二人に、勘十郎が駆け寄った。
「万有を返す!」
そして何を思ったか、ユーベルコードを込めたその刃で二人を撫で切りにした。刃は間違いなく二人を通り抜け、その体にある何かを切り飛ばす。
「回復や治癒より確実だ」
そして刃の離れたその体。それはたった今成長電流でつけられたはずの傷や損傷がなくなり、十全と言える状態がそこにあった。
事象や概念を切る【六道・龕灯返しの太刀】の刃。それが二人の負傷という概念を切り飛ばしたのだ。
まさに埒外の力を可能とするユーベルコードの面目躍如。その力はいかな碎輝とて見れど、学べど、容易に超えられるものではない。
何より仲間の傷を治す役目を持つ者がいるということは、他の者は身を盾にしての守り、反撃を省みぬ攻勢に出られるということ。
「今一度……斬る!」
桜子の、今度こその全身全霊の一撃【剣刃一閃】が、碎輝の体を深く切り裂いた。
「やっぱり強い……だが……耐えた! 俺は、成長したぞ!」
その一撃を踏みとどまって耐える碎輝。さすがの桜子もここまで成長した碎輝を一撃で倒すことは出来なかったか。だが、彼女の目に悔いはない。
「わたしの真の狙いは「猟兵達」の「最大火力」を「一斉」に叩き込む隙を作ることです!」
攻勢の時は来た。揺らいだ碎輝に影がしがみつく。それはこのチャンスを何があっても手放さない、その意思を体現するかの如くに。
「みんな彼への攻撃をお願い。あたしは金光陣の維持で精一杯だから。こっちの防御が持たなくなる前に、彼を討滅しないと!」
この戒めとていつまで持つか分からない。少しでも耐えるために自分の守りと碎輝の抑え込みに全力を尽くすゆかりの意思を無駄にせぬと、さらなる包囲が積み上げられる。
「ただの短剣だと……思うなっ!!」
衰退の災いを込めた黒き6本の短剣。セツナの【穿ち抉れ、衰退の短剣】が黄金竜の四肢と翼を射抜き、その力を奪いその姿を少年のものへと戻らせた。
「俺の明日が……奪われる……!?」
「僅かな時でもいい、奴の力を削ぎ落す!」
これで相手の成長と変身は一時的にでも封じ込められた。さらにレモンがそこに畳みかける。
「デカいし無限に成長するし、そういうのズルいから禁止~っ!」
嫉妬の心が雷竜の力をさらに剥がしていく。【戦闘召喚使役術式・大罪司りし蛇神は妬み嫉む】がその身を戒め、さらに積み上げた成長さえも奪い取っていった。
他者を羨む心は時に研鑽にもつながるが、相手の足を引くことで発現されることもある。だが、敵の力を奪うのは戦場において有効な手段。特に0からの積み上げの上に力を持つ碎輝の様な相手には効果抜群だ。
「みんなっ! 今のうちに総攻撃するよっ!」
寿命を削る反動を押し殺し、蛇腹剣を碎輝に打ち付けるレモン。
「成長して勝つのは、あたい達だぁーっ!」
乱れ撃たれる斬撃波の嵐。それに導かれるかのように、勘十郎の振り下ろした一刀が碎輝の体に再度深い傷を穿った。
さらには先に仲間の傷を切除した事象を切る刃、それが運良く残っていたか、碎輝に残っていた僅かな力さえも削ぎ落していく。
「運も実力のうち……いや、実力が運を呼び込むんだな。活かせるかは分からないが、学んだぜ!」
力を奪われれど心は成長する。なおも敵の力を褒める碎輝を黙らせるかの如く、るこるの操作する砲台たちが砲の雨をそこに降らせた。
「私一人を抜けられても、これだけの包囲は抜けられないでしょう」
今度は一人ではない。仲間たちの敷いた多重の戒めの中の砲撃である。さらに積み上げた力も、そこから成長していく電流も、今は封じられた状態だ。一人で離し得ない完全封殺。
他の仲間が力を奪い、点と線を攻めるなら、自分は圧倒的な数による面制圧。自在に動かせる兵装なればこそ、仲間の得意に合わせ柔軟に攻め方を変えられた。
そして、圧することができたのならばかけるべきは最後のとどめ。
「加速装置起動……メルクリウス……お前の力を見せてみろ……!」
【神速戦闘機構『速足で駆ける者』】、カシムの声に応えるかのように、メルクリウスが限界を超えた力を引き出し神速で碎輝へと切り込む。それは竜だった時の彼のゆうに三倍は超える速さで迫り、目にもとまらぬ速さでその槍を叩き落とし、角や鱗を切り落として奪う。
「戻らなかったら返してあげますよ!」
0では済まさない。力を封じたうえ、最弱であった時からあったものすら奪い取る。
そして、全ての力、全ての守りを失えば、最後に残るのはその核。それは通常なら命、あるいは魂とも呼ぶべきかもしれないが、この場においては違う。
「貴方を倒し、わたしたちは先へと進みます。この世界を救うために」
強い意思を込めた言葉と共に、レーヌがメイスを碎輝へ向けた。
「天の裁きよ、憐れみたまえ。恐怖に囚われし彼の者を」
天から注ぐ【裁きの光】が、碎輝を撃ちぬいた。それは曝け出された敵としての彼の核……即ち骸魂を過たず撃ちぬき、それを完全にその体から引きはがし光の中に消滅させた。
それと同時に全ての攻撃と戒めが解かれ、碎輝は天を仰ぐよう仰向けに倒れ込む。
「勝った……のか?」
「ええ、間違いなく……!」
セツナとゆかりはユーベルコードの維持を止め、状況を確認し合う。意識を失い倒れる碎輝の顔は何処か満足げで、まさに負けて悔いなしと言いたげな清々しさすら湛えていた。
「……切除の必要はないようだ」
勘十郎が刀を携え倒れる彼を見るが、その体に切除すべき傷は見当たらなかった。如何に強大となった親分と言え、その辺りは他の妖怪と変わらないらしい。
「これで後は起きるのを待つだけですかね」
「ええ。その時は正気に戻ってくれると思いますぅ」
切り取った角を手で弄びながら言うカシムに、本当の彼に戻った碎輝が起きる時を待てばいいとるこるも答える。
「もう少しです、前に進みましょう。願わくば、その時は彼もいっしょに」
「親分さんの名に恥じぬ……これもまたブシドーです」
個で強くなれど得られぬ『連携』に敗れた彼だが、その成長に向かって邁進し続ける姿勢は間違いなく本物。共に未来を作っていくべき仲間として先に歩んでいけると、レーヌと桜子も確信する。
「さー、大祓百鬼夜行もあとちょっと! 明日はもーっと、どでかい戦果をあげちゃおー!」
そしてレモンの掛け声と共に、猟兵は今日の戦いを終え、明日の戦場へとまた向かう。昨日より今日。今日より明日。少しずつ、猟兵は勝利に近づいているはずなのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵