大祓百鬼夜行㉔〜ラブリー像へ声援を
喧噪とは無縁の丑三つ時。
常であればこの時間、人っ子一人いないはずの、UDCアースのとある大きな公道にて。
多数の人影が、声も出さず、絹ズレの音もさせず、一か所に集合しつつあった。
それは石像ゆえに言葉を発しない。
それは石像ゆえに衣服は風の影響を受けない。
ただ何某かの使命を帯びて、足のみを淡々と動かす。
主催と思われる、数多集まった石像たちと全く同じ姿形をした、けれど最も年数を感じさせる色褪せた石像が、無言で、やはり淡々と、石の下駄のみ響かせ高台に立った。
瞬間、それを合図に集合していた石像たちが、一斉に駆け始める。
互いを抜き合い、時にそのスピード緩め駆け引きし、時に控えめであった足音を大きく響かせ勝負に出たり。
そんな中。
長距離も後半に差し掛かった頃に、いくつかの石像の姿に異変が起こる。
ある者は頭からぴょっこり、獣耳をはやし。
ある者はお尻からふっさふさの尻尾を飛び立たせ。
先頭集団に近いほど、そんな特殊な石像がちらほらと見える気がした。
しかして、他の石像たちはそんな変化にこれっぽっちも気付かない。
視線は常に、永久に、手にある本へ注がれている、そんなポーズであるゆえに。
おかしな特徴持つ石像たちも、自身の変化にはとんと無頓着なまま。ただひたすらに、たまに石像なのに荒い呼吸を微か零しながら、我先にとゴールを目指していた。
●グリモアベースにて。
「全日本二宮金次郎選手権なるものの存在は、お聞き及びかと思います」
サティ・フェーニエンス(知の海に溺れる迷走っコ・f30798)なるグリモア猟兵が、集まってくれた猟兵たちへお辞儀しながら説明を始める。
最強の二宮金次郎、つまり優勝者は『祝祭具』となって、現在のカクリヨ戦争において多少の手助けとなってくれる。
けれど、と少年は続けた。
「どうやら“偽物”の二宮金次郎が紛れ込んだようです。
骸魂に取りつかれた妖怪が変化したものですが、彼らが優勝してしまうと骸魂たちの思うつぼ、というのもそうですが。UDCアースの各地で伝承を守っている二宮金次郎像たちの、折角の催しも台無しになります。それによってどんな影響が出るかも分かりません。
どうか、偽物を見破って骸魂を払っていただきたいです」
ふむ。
して。偽物を見破る秘訣は?
そんな視線をいくつか確認すれば、少年はそっと視線を逸らした。
「……申し訳ありません。僕の予知では、偽物が居る、という事までしか判断出来ませんでした。
ただ必ずどこか、違和感を覚えるはずだと。
正しい二宮金次郎像たちを観察すれば、偽物を見破れるとは……思います」
頼りっきりですいません。そう眉をハの字にしたまま、グリモアを輝かせた少年は知らない。
現地に赴いた先には、あからさまに『にせものだ』と分かる特徴掲げた像が待ち受けていることを。
解決させて戻ってきた猟兵たちから報告を受けては、『……僕はなんて役立たずな……まだまだ未熟だ……』と壁に手をついて大反省のポーズをするグリモア猟兵の姿が在るのは、もう少し先のこと――。
真白ブランコ
親分置いてこちらに飛びついてスイマセンデシタ。
懺悔がデフォMS、お世話になっております真白ブランコです。
つい衝動で(供述)
●骸魂に憑りつかれた動物妖怪たち【見破り方】
必ず石像な体のどこか一か所に、その動物妖怪の特徴が表れています。
狐なら大きな尾が、狸なら石の顔に黒いクマが浮かんでいるかも。
見つけたらば、こっそり耳打ちしてあげて下さい。「しっぽ出てますよ」等。
単純な妖怪であれば、それであっさり正体現して逃げ出します。
けれど、シラを切って無言で走り続ける者も当然います。
その場合、正体となる動物を称えてあげると良いでしょう。
「おれ、石像じゃなく狐になりたかったんだ。あの理知的でシャープな顔立ち、撫でたくなる尻尾……羨ましい」
「知ってる?狸って自分の縄張りに他の狸が入っても、ほとんど争わないの。臆病だっていうヒトもいるけど、優しくて平和主義よね。素敵」
etc。
たちまち取り込まれたはずの妖怪の魂が元気になって、マラソンから戦線離脱するでしょう。
漠然と、変化妖怪の代表的なのをイメージしていますが、思いつくままお好きな動物の特徴・語りをしていただいてOKです。
ウサギでも鳥でも犬でも猫でも。どの部位が見えているかその際ご記載下さい。
●プレイングボーナス……二宮金次郎に変装して敵の警戒心を解く。
喋りの途中で、ずっと石像人生であることをアピールしたり、
見た目に力を入れたり、
動きに周囲の石像マネした演技取り入れたり、
【二宮金次郎っぽさを一つ】ご記載あれば、判定はゆるゆる予定。
ただとりあえず、偽物へ語るのは小声の方が良いでしょう(他の石像は喋らない為)
●OP公開同時に受付開始~締切は翌日の正午頃を予定(後ほどMSページに記載)
締切までに成功度行かなかったら、サポート様にて完結予定(フルアドリブ犯行予告)
ご一考の程、何卒宜しくお願い致します。
第1章 冒険
『ニセ金次郎を見破れ!』
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POW : 気合いで正体を暴く
SPD : テクニックで正体を暴く
WIZ : 知恵で正体を暴く
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
榎・うさみっち
全日本二宮金次郎選手権とは???
そもそもナニソレというツッコミを許さないこの空気よ…!
ええい、郷に入れば郷に従えだ!
薪を背負って、本を持って二宮金次郎になりきるぜ!
え、サイズ感が全然違う?
僻地の二宮金次郎像はこういうのもあんだよきっと!
お、明らかに猫耳生えたやつ発見
猫耳二宮金次郎……うーん、萌えない
おいお前、そのフッサフサの猫耳…
もとはめっちゃふわふわもふもふの猫妖怪と見た
きっとさぞかし可愛い猫なんだろうな
いいのか?石像になってしまえば
その素晴らしいアイデンティティが失われるんだぞ?
可愛い女の子になでなでされることも
おやつを貰うこともなくなってしまうぞ?
思い出せ、お前のあるべき姿を…!
●
王道ファンタジーになくてはならない存在ともいふべきフェアリーたる自分なれば、大抵の非常識もとい非現実的な事柄も華麗に受け止められる自信があった――気がする。
しかして。
「全日本二宮金次郎選手権とは???」
そう。時には、誰もが飲み込んだ正論ツッコミが必要な時もある。
それはまさに今。
榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)様、とても正しい第一声を発した。心の赴くままに。
それでもそこはうさみっち様。転移前は思わず言葉にしたものの、現場にくれば猟兵としての数多の経験から瞬時に空気を読んだ。
――ナニソレというツッコミを許さないこの空気よ……!
読まざるを得なかった、ともいう。
なにせ周囲は本当に石像だらけ。それらが真顔で、真剣に、一斉にまさにスタートを切って走り出したのだ。茶々など入れられるはずも無く。
ええい、郷に入れば郷に従えだ!
判断力と順応力と開き直りは天下一品。任務の為用意されていた薪を背負い、本を開き携えて。恰好はばっちりと二宮金次郎になりきった。恰好は。
おい誰だ、『サイズ感が全然違う』なんて視線飛ばすヤツは! 僻地の二宮金次郎像はこういうのもあんだよきっと!
異次元からの視線にまで気付く。それがうさみっち様。
幸いか、街灯も乏しい真っ暗闇の行動なれば、シルエットさえ二宮金次郎然としていれば、周囲の本物たちは何も不思議に思わないようだった。
ぃよっし、確か偽物は先頭の方にいるって聞いたな……俺の駿足をもって追いついてや、……キッツイわ!
なにせ全長18.6cm。
羽根で飛べるにしても、あまりのインターバル差。
たとえ追いつけてもその頃には疲労困憊で、偽物に話しかけるどころじゃないのではなかろうか。
「ドラみっちカモン!」
うさみっちの倍はあるピンクドラゴンが『ふぎゃー』と応えたのへ、『しー!』と人差し指を立てながら。うさみっちはその背へひらりと跨った。
ゴー!
黙々と歩を進める石像たちの隙間を、こじんまりした影が風のように追い抜く。視線は本へ固定されている二宮金次郎たち、視野が狭いゆえか何も気付くことは無かった。
「お、明らかに猫耳生えたやつ発見」
さんきゅ、とピンクドラゴンを闇夜の空に待機させて。今まさに追いついたテイで、うさみっちは件の偽物の一体の傍へ寄る。
猫耳二宮金次郎……うーん、萌えない。
勤勉で真面目な姿勢の者に、ケモ耳が生えるとギャップ萌えを生む事もあるけれど。
なにせ相手は石像。表情も何も動かない石像。シュールさが増しただけであった。
「おいお前、そのフッサフサの猫耳……もとはめっちゃふわふわもふもふの猫妖怪と見た」
萌えたらちょっとくらい眺めていようかとも思ったのが、即、正体暴こうと口が開かれる。
突如話しかけられた猫耳金次郎、足は動かしたままで、しかし猫耳がぴくっと反応した。
よし、聞いてはいるな。
「きっとさぞかし可愛い猫なんだろうなー。
なのに、いいのか? 石像になってしまえばその素晴らしいアイデンティティが失われるんだぞ? 可愛い女の子になでなでされることも、おやつを貰うこともなくなってしまうぞ?」
ナ ン ダ ッ テ 。
そんな衝撃が偽金次郎の表情にありありと浮かんだのを見て、うさみっち様、トドメの王道台詞。
「思い出せ、お前のあるべき姿を……!」
キマった。
どろんっ、と煙の音を立てて、偽金次郎は三毛猫妖怪にその姿を戻すと、まじっとミニ金次郎を見つめてから。ぺっこりとお辞儀をしてレースから外れていった。
「ま、うさみっち様ほどじゃなかったな!」
本来のキュートな後姿を見送りながら。ドヤァと羽ばたく音が闇に響いた。
大成功
🔵🔵🔵
ゲニウス・サガレン
金次郎に変装し、周囲の像を観察しよう
お?尻尾出てるね
狸かな?
その横を並走し、耳元で以下の内容を囁きます
「これはとある世界で本当にあった話だ
校庭にある金次郎像に1cmカンチョーという技を決められたら百万円やるよ
そう言われ、実践して指の骨を折ったそうだ
私はこれを君に試してみたい
そのために海岸でカンチョーを鍛錬し、今では石灰岩に穴を開けられるまでになった
私はこの技をこう呼ぶ
UC(有情弔花)『アビスクラッシャー』
小便は済ませたか?
神様仏様にお祈りは?
個室トイレでガタガタ震えて穏やかなトイレットライフとおさらばする心の準備はオーケー?
ところで、狸って素敵だよね。あの丸っこさがね!」
※いろいろごめんなさい
●
「変装は得意だとも! え、今回はタコ墨は使えない? 闇に溶け込んで一際石像っぽさ増すと思うんだけどどうだろう、ダメかー!」
周囲に居る像たちをよぉっく観察してみれば、さすがに黒過ぎもよろしくないかと、ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は潔く薪を背負ったり本を取り出したり。
おっと図鑑は重たいな。
持って走るならばと、メモ帳なんぞをぱらりと片手で持ってから。
軽快に石像たちと走り出し程なくして。その持ち前の視力にて見えてきた、違和感ありありな二宮金次郎像を発見した。
「お? 尻尾出てるね。狸かな?」
それともアナグマかな? 尻尾に縞模様がない、ふむっ、狸決定! メイビー!
すかさずスピード早め、件の尻尾像へと身を並走させる。爽やかな笑顔で『やあマラソン日和だね』なんて切り出してから、ふとゲニウスはその表情を真剣なものに変えた。
「ところでブラザー……これはとある世界で本当にあった話だ。
“校庭にある金次郎像に1cmカンチョーという技を決められたら百万円やるよ”
そう言われた者がいた。そいつは張り切って実践して……指の骨を折ったそうだ」
未だ骸魂が全面に出ている偽金次郎、何を言っているんだ、という空気と共に聞こえないフリを決め込む様子。ゲニウスは気にせず続けた。
「私は、これを、君に、試してみたい」
言葉が届いた瞬間、にわかに偽金次郎に動揺が走った。
否、動揺なんて生易しい表現では無く、完全にゲニウスを二度見する勢いで視線を釘付けにしてきた。
「私の好奇心が荒ぶるんだ。ブラザー、分かってくれるだろう。我々のこの硬い体はやはりそんなものは受けつけないのか、はたまた、修行を重ねれば必殺技の如く効果を発揮するのか」
そのために海岸でカンチョーを鍛錬し、今では石灰岩に穴を開けられるまでになった。
引き締めた唇からそう重々しく紡がれれば、辛うじて読書ポーズ保っていた偽金次郎の体がプルプル震え出した。
「私はこの技をこう呼ぶ。ユーベルコード、有情弔花『アビスクラッシャー』」
技名まで囁かれて、狸しっぽがぶわっと毛羽立つ。
「小便は済ませたか?
神様仏様にお祈りは?
個室トイレでガタガタ震えて穏やかなトイレットライフとおさらばする心の準備はオーケー?
ところで、狸って素敵だよね。あの丸っこさがね!」
ゲニウスの瞳に、いつもの温かな人懐っこい光が戻っては、渾身の微笑みにて付け足した賞賛が織りなされるも。
すでに、狸妖怪ごと骸魂の心が折られた後だった。
ぽん、ぽぽぽんっ、という変化が解けた音と同時に、元の姿に戻った狸妖怪が、そしてそこにくっつくようにして風前の灯火な骸魂の残り香が、一目散に逃げ出すのだった。
「HAHAHA、どうしてか各方面にごめんなさいしたい気持ちになるね!
ご め ん な さ い 」
いえいえ。
大成功
🔵🔵🔵
アイグレー・ブルー
わたくしも二宮金次郎像殿に変身して参戦であります…!ブラックタールで良かったです(造形が不完全ではありますがそこはご愛敬という事でっ)走り方やポーズもなんとはなしに真似て形から入って参りましょう
普段柔らかいのに硬い演技とは難儀ですが頑張りますね(カクカク)
(あっ、あの丸い尾はまさか…!)
貴方はうさぎ殿ではありませんか?
うさぎさんのように様にぴょんぴょんと走れれば勝てましたのにうさぎ殿は凄いであります
それに、わたくしにもかわいいお耳があればよかったですっ
ふふふっ出ているのはお耳ではなくしっぽでありますよ、しっぽを掴みました
ちなみにわたくし、その気になればうさみみにも出来るであります
●
プラシーボ効果。
それは心根が純粋であればあるほど、効力を発揮するとかしないとか。
メタモル☆キャンディと信じて疑わぬブラックタールの身が、その可愛らしい飴を舐めればあら不思議。立派な二宮金次郎像の出来上がり。
少々ぷるんぷるん全体的に揺れているが。少々カクカク心許ない動きではあるが。
アイグレー・ブルー(星の煌めきを身に宿す・f20814)は確かに化けたのである。それは今後の自信へ繋がるまた一歩。
――普段柔らかいのに硬い演技とは難儀ですが……頑張りますねっ。
お勉強という名の努力は生まれた時から行っている。興味がある事を片っ端からマザーへ聞いて、その都度情報をもらい実践してきた。
もうマザーはいないけれど、アイグレーの生き方にしっかりと馴染んでいるのだ。
走り方……こうでしょうか。あっ、本の持ち方は像によってそれぞれ種類があるみたいですね。ならわたくしは、まだ片方の手が自由になるよう、片手持ちで……。
努力による姿形は完璧である。しかして先頭までこの姿勢で駆け抜けられるかと考えれば、それはNO。
はっ。今ならわたくしの周りには2体様ほどしかおりません。少々失礼して……っ。
暗闇の中でこっそりUC【バウンドボディ】発動。
二宮金次郎型となっているブラックタールの体を、前方へ伸ばせるだけ伸ばした後、両の足が浮かされる。瞬間、伸ばした先へ一気に伸縮し弾力のままに加速して、あっという間に先頭グループへ追いつけた。
ど、どなたの金次郎殿にも、見つかってない、みたいであります。
ホッと一息ついてから。
――あっ、あの丸い尾はまさか……!
再び金次郎然と身を引き締めて、ぽてぽてカクカク近づけば石の体からぴょっこんと毛玉の尻尾が丸見えの像を見つける。
「貴方はうさぎ殿ではありませんか?」
そっと小声で問いかけるも、相手は憮然としたまま黙々と駆けるまま。
「……うさぎさんの様にぴょんぴょんと走れれば勝てましたのに。うさぎ殿は凄いであります」
途端、まん丸しっぽがソワソワと動き出したのを見て、微笑ましそうにアイグレーは畳みかけた。
「それに、わたくしにもかわいいお耳があればよかったですっ。華奢な小顔に大きなお耳、これほど愛らしい方はいないと思うのでありますっ」
石像の頭から、みょきっとお耳も生えてきた。これ、これのコト? とアイグレー像へ傾けてくる。
ふぁ……キュンッとするのでありますっ。けれどまだ走るのやめないのですね……もう一押しでしょうか……。
「ふふふっ、さっきまで出ていたのはお耳ではなくしっぽでありますよ、まさにしっぽを掴みました。ちなみにわたくし、その気になればうさみみにも出来るであります」
言うが早いか、一生懸命固めていた体、その頭部を次第にふるふるゼリーのように震わせたかと思うと、
ぴょっこん!
月明り反射し煌めく、真っ黒なお耳。さながらイ〇バの黒兎像。
ついでに宝石の蝶たちを背景に背負えば、偽金次郎像からはすっかり敵意まで消え失せて。アイグレーとは逆にその姿を真っ白なウサギ妖怪へと戻し、機嫌良さそうに跳ねてどこかへ去っていった。
ちゃんと変化できるようになってから、いつか共演してみたいでありますね。なんて。
大成功
🔵🔵🔵
森宮・陽太
アドリブ連携大歓迎
い、いや、グリモアの予知は万能じゃねえ…
グリモア猟兵、落ち込むことはねえぞ…
ぶっちゃけ理解の域を超えた選手権だけどよ
偽物見つけないとだめなら手伝うか
背負子担いで灰色っぽい色の服着て
二宮金次郎像っぽい「変装」して紛れてやらぁ
さーて走りながらじっくり観察してやら……あ?
おいおい、どうして目の周りが黒くて顔が白い石像があるんだぁ?
ひょっとしてこれ、ぱんだ、とやらか…?
というわけでそっと小声で「白黒ぱんだ姿が目立ってるぜ」と耳打ちしてやらぁ
これでしらを切るようなら「ぱんだは笹の葉だけを食べるように進化した、素晴らしい生き物だぜ」と褒めたたえ…てるのかこれ?
…かおす、ってこのことか
●
「ぶっちゃけ理解の域を超えた選手権だとは思うんだよ」
ここにも、大変常識に則った一声発してる猟兵が一名。
持ち前の社交性と応用力に身を委ねた森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は、今や背負子担いで灰色っぽい色の上下服に全身包み、発した言葉とは裏腹にしっかり真面目に二宮金次郎像へと変装を完了させていた。
偽物見つけねーと大変な事になるってなら、手伝うか。
そんな気軽な思考で乗り出したわけだが、一度動き出せば成していく事に一切の無駄は無い。まず何からすべきか、その体はもはや勝手に陽太を動かす。
無意識下で足音も立てず軽快に走りながら、その深緑の瞳はつぶさに周囲を観察していた。そして、一瞬にして件の石像発見となった。
「……あ?」
思わずすっぽ抜けた声が漏れる。
おいおい、どうして目の周りが黒くて顔が白い石像があるんだぁ?
首から下は完璧な二宮金次郎。しかして、その顔はおしろい塗ったかの如く白く、反して石のはずの目の周囲は黒々と。
ひょっとしてこれ、ぱんだ、とやらか……?
顔だけシロクロの金次郎像。うっかり街灯に当たろうものなら、それはシュール通り越してホラーかもしれない。
これは本人?の為にも、早く気付かせてやるべきだろう。
得も知れぬ使命感が若干過れば、陽太はそっと、パンダ像へ耳打ちした。
「へい、白黒ぱんだ姿が目立ってるぜ」
微か、黒縁の中の瞳がクワッと見開かれたり。
コエーよ!
とは叫ばずに。それでもまだ諦めた様子見せず走り続ける石像へ、ふむ、と一度思案してから。陽太は内心の必死さ隠してもう一度囁いた。
「ぱんだは笹の葉だけを食べるように進化した、素晴らしい生き物だぜ。熊と違って他の動物の命奪うでもなく葉だけなんて、星に優しいエコ動物だよな。尊敬するぜ」
褒め称えてる。俺の持ちうる限りで、褒めてる、つもりなんだ。
つーか、そんな一部分だけ元の姿覗かせて。抵抗してんのか……。
それとも骸魂に飲まれるのを良しとしながらも、元の姿に未練があるのだろうか。
中途半端なことしてねぇで、捨てるなら捨てる、受け入れるなら受け入れるかすりゃいいのに。俺が今 “森宮 陽太”であるように。
――っていやいやいや、ねーよ。此処でシリアスとかねーよ俺!
首の一振りで余計な考え吹っ飛ばしてから。
ちなみにこれ以上の賞賛は厳しいぜっ。なんて、色々正直な心の声を響かせていれば、隣を黙々並走していた石像が、みるみると全身をシロクロ大熊へと変化させた。
どっしりみっちりとした巨体は、もはやレースに関心を失くしたようにのっそりと歩む。その横を、本物の金次郎像たちが気にするでもなく追い越していく。
……かおす、ってこのことか……。
ぱんだと石像の大群、それらが次第に遠くなっていくのを、遠い目で見つめる陽太がいるのだった。
――猟兵たちの苦労と大活躍により、一部の某フルマラソンは無事に終了したとグリモア猟兵へ報告が上がる。
そうして、独り大反省会へ入りそうな某少年の肩に、『いや、グリモアの予知は万能じゃねえ……落ち込むことはねえぞ』と慰めの言葉がかけられる事となったり。
そんな言葉をくれた己より経験豊富そうな相手を見上げると、ここぞとばかりに助言賜ろうと詰め寄るド真面目なグリモア猟兵により、暫し捕まる声主の姿があったとか。
大成功
🔵🔵🔵