大祓百鬼夜行㉓~マネーパワーウォーズ
●カルチャーギャップ強かったようです
「これは……何から話したものかな」
猟兵達が集まった時、ルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)は珍しく話の伝え方に迷っていた。
「ああ、うん。ええと、新し親分なんだけどね。予兆見た?」
説明もそこそこに、逆に何か訊いてくる始末である。
このエルフにしては珍しい事だ。
「特に後半がさ……言ってる事、全然判らなかった」
紅茶キノコとカスピ海ヨーグルトがどうとか言い出してた辺りだろう。
「負けても香水のせいって、なんで香水?」
そこもかー。
「まあ、うん。深く考えるのはやめる事にするよ」
さもありなん。
●世の中、金だ
「気を取り直して、新し親分『バズリトレンディ』だ。これまでの親分同様に、骸魂と合体してる……筈なんだけど何も変わってないとか言う親分だよ」
ある意味、規格外な存在である。
一体、どういう妖怪なんだろうか。謎である。
「だからかな? 大祓骸魂との最終決戦を可能とする技『虞知らず』を知ってて、授けてくれようとしてる」
つまり、この戦い避けては通れないのだ。
「で、やはりこれまでの親分同様、2つの形態を持ってる。これから行って貰うのは、バブル特化型『トレンディ形態』の方だ」
新し親分が『トレンディ形態』の拠点『バズリトレンディ御殿』は、無尽蔵に『お金』を噴出し続ける場所と化す。
イメージはバブル時代。
これ、通じるんだろうか。
「さておき、そのお金、新し親分じゃなくても使える。皆にも使える」
お金で買えるものをイメージすると、お金が消費される。そして引き換えにそのものが出現するようになっているというのだ。
しかもなぜか、消費金額に応じて使用者はパワーアップする。
武器として戦いに使えるものでも、戦いに関係ないものでもパワーアップする。
お金を使えば使うほど、誰でも姿がゴージャスになり強化される戦場――それが『トレンディ形態』の新し親分の『バズリトレンディ御殿』なのだ。
金銭感覚がおかしくなりそうな戦場である。
「当然、新し親分だってお金を消費してパワーアップして来る。つまり新し親分よりも高額なものをどんどんイメージして、お金を使って使って使いまくる必要があるんだ」
まさに札束で殴り合う戦いと言った様相になるだろう。
「新し親分がどんなものをお金で出現させるのか、私には想像もつかないけど。まあ、たまには大富豪気分に浸ってみるのも良いんじゃないかな」
なんて笑って言って、ルシルは新し親分の待つ戦場へ、猟兵達を送り出した。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
金かけたら強くなれる。せやな。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、『大祓百鬼夜行』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
㉓新し親分『バズリトレンディ』~トレンディ形態です。
恒例のプレイングボーナスですが、
お金で買えそうなものを買いまくりパワーアップする(買ったもので攻撃するのもOK)。
となります。
値段が付くものをイメージするだけでお金を消費して出現させられます。
そんなお手軽な買い物すると強くなる不思議空間。
それがバズリトレンディ御殿。
普段なら絶対買えないようなお高いものでも買えちゃいます。
しかもこれって新し親分の奢り同然では……?
なお版権的にあれなものは適当にぼかしますので、ご了承ください。
プレイングは今回は公開されたら受付です。執筆開始は、5/25以降になる予定です。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 ボス戦
『新し親分バズリトレンディ・トレンディ形態』
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POW : 竹やぶで拾ってきたわ!
【多額の現金】を籠めた【大きなカバン】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【戦闘意欲】のみを攻撃する。
SPD : 何があろうと戦い続けんと!
【栄養ドリンク】を給仕している間、戦場にいる栄養ドリンクを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : ワイちゃんと踊ろうか!
【召喚したミラーボールから光】を降らせる事で、戦場全体が【1990年代前半のディスコ】と同じ環境に変化する。[1990年代前半のディスコ]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:天城望
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ジャック・スペード
買い物をすれば良いんだな
では遠慮なく――
先ずはハイブランドのスーツ
アルスターのコートも一緒に
色はスイートグレーで
それから
真鍮のカフスに
灰のシルクネクタイ
黒い手袋はラムスキン
ボーラーハットはラビットファー
鐵と金のクロノグラフに
未だ、ひとつ足りないな
あんたは何か分かるか
――そう、靴だ
ブラウンに艶めく牛革の
ストレートチップ
此れだけ纏えば
男前に見えるだろうか
一瞬で着替え
それらを総て身に纏い
協力に感謝しよう
セニョリータ
礼に大輪の薔薇を受け取ってくれ
銀の弾丸を放って攻撃を
ああ……
俺はヒーローなのに
ヒトの金で私欲を満たして仕舞った
明日からはまた
ヒトの為に慾を棄て働こう
ところでコレ、着て帰っても構わないか
●ワイちゃんの紳士服チェック
「まずは……そうだな。ハイブランドのスーツを。色はスイートグレーで」
ジャック・スペード(J♠️・f16475)が思い浮かべたものを言葉に出してみれば、バサバサと噴水の様に湧き出す紙幣の一部が忽然と消え失せる。
次の瞬間には、ジャックの装いが光沢のある淡いグレーのスーツに変わっていた。しかもオーダーメイドしたかのように、ジャックの身体にピタリとあっている。
「……素晴らしい。では次に、アルスターのコートも……」
着心地に感動しながら、ジャックは次々と希望の品を言葉に出す。
上襟の部分が下襟よりも大きな独特なエリ型を持つコートをスーツの上に羽織り、首元は灰色のシルクネクタイで締めて。
左の手首に鐵と金のクロノグラフを付けたら、真鍮製のカフスで袖を止め、最高級のラムスキンの黒手袋を両手に嵌める。
頭に被るのは、ラビットファーの丸いボーラーハット。
「おっちゃん、大人やなぁ」
ジャックの着こなしに、新し親分も褒めずにいられなくなる。
「いや。まだだ」
しかしジャックはその賛辞に、首を左右に振った。
「未だ、ひとつ足りないな。あんたは何か分かるか?」
「誰に向かって訊いとる。ワイちゃんは、新し親分やで!」
唐突なジャックの問いかけに、しかし新し親分は不敵な笑みを浮かべてみせた。
「足元がお留守やないか」
「――そう、靴だ」
新し親分の答えに、ジャックは満足げに頷く。
「ブラウンに艶めく牛革のストレートチップが良いと思うのだが、どうだろう?」
「ストレートチップはええと思うけど、色はブラウンでええん?」
ジャックが続ける問いかけに、新し親分は異を唱えてきた。
「これまでグレーをベースに黒で合わせてるやん。足元にブラウンをワンポイントで入れるんもありやと思うけど、ここは黒にしといた方が、ワイちゃんは好みや!」
冷静な分析からのアドバイスかと思いきや、新し親分の好みが混ざってた。
「そうか。では――これでどうだろう」
しかしジャックはその言葉を素直に聞き入れ、シンプルな内羽根式でブラックのストレートチップシューズを足元に出現させる。
「協力に感謝しよう、セニョリータ。そしてどうだろう? 此れだけ纏えば男前に見えるだろうか?」
「バッチリや!」
訊ねるジャックに、新し親分も力強く頷く。
「これは、ワイちゃんも着替えんとあかんな」
言うが早いか、新し親分もグレーを基調とした色合いの、フォーマルドレス姿に早変わりしてみせた。
「どや!」
「ああ。良く似合っている」
誇らしげな新し親分に頷いて、ジャックは懐に手を入れる。
「ところでコレ、着て帰っても構わないか」
「ワイちゃんに勝てたらなぁ!」
新し親分が重たそうな鞄を振り上げた時には、ジャックは銀のリボルバー『Deus ex Makina』の銃口を向けていた。
「では、礼に大輪の薔薇を受け取ってくれ」
花開く薔薇妃――フロラシオン・ミ・レイナ。
銃口が火を噴き、銀の弾丸が新し親分の腕を撃ち抜いた。銀の弾丸が紅の蔓薔薇と咲いて、腕に絡みつかれて新し親分が鞄を取り落とす。
「見事や。持っていき」
一つ頷いて、ジャックは新し親分の前から踵を返す。
(「俺はヒーローなのに、ヒトの金で私欲を満たして仕舞った。明日からはまた、ヒトの為に慾を棄て働こう」)
しかしその胸中には――後悔が過っていた。
大成功
🔵🔵🔵
緋月・透乃
ひょえ〜不思議な親方がいるものだねぇ。私も予兆はよくわからなかったよ。まあ、UDCアース出身ではないしねぇ。
それにしても骸魂の影響を受けないとはある意味親分の中では最強なのでは?こりゃあ乗り越えるかいがありそうだね!
値段が高そうなものかー。
ひろーい土地と現代の最新技術を詰め込んだビルとか城とか遊園地とか買いまくって自分の街としてどんどん拡大させていこう。
更に、超高級なにんじんとか魚とか酒や珍味等もじゃんじゃん買って勝手にひとり大食いバトルもしちゃうよ!
そして重量105トンの金の像もいっぱい買おう!買い物と大食いをしつつ、この像を【ひょいっと】持ち上げバズリトレンディにガンガン投げつけていくよ!
●ゲームも嗜む新し親分
「あんたは、何を買うんや?」
「そうだねえ。ひろーい土地とか買える?」
新し親分の問いかけに緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)が答えると、カラフルで煌びやかな御殿だった場所が、何もない土が剥き出しの世界になっていた。
「おおー!」
「い、意外と現実的なとこきたな……」
透乃は本当に現れた土地に、新し親分は透乃の買ったものにそれぞれ驚く。
「本当に土地が買えちゃった。不思議な親方がいるものだねぇ」
「ワイちゃん、凄いやろ!」
透乃の素直な評価に、新し親分は鼻が高そうに笑みを浮かべる。
「うんうん、すごいすごい」
乗り越え甲斐がありそうだと、透乃は目を輝かせて、次に買うものを思い描いた。
「じゃあ、最新技術を詰め込んだビル!」
ドンッとビルが建つ。
「お! そう言う事か。箱庭型都市経営ゲームのノリやな!」
透乃が建てたビルを見て、新し親分も目を輝かせる。
「一時期めっちゃ流行ったもんな。ワイちゃんの都市作りの手腕みせたる! まずはライフラインを整備して……」
「じゃあじゃあ、お城!」
新し親分が堅実に発電所を建てるのを尻目に、透乃はドドンッとお城を建てた。
「む? セオリー無視とはやりよる……けど、ここはやっぱりマンションや!」
「人が増えるの? じゃあ遊園地!」
新し親分が建てたマンションを見て、透乃は近くに遊園地を建てる。
「遊園地! ちゃんとジェットコースターもあるやないか!」
それを見た新し親分が、またまた目を輝かせた。
「うんうん。遊園地言うたら、やっぱジェットコースターは外せんよな。一口にジェットコースターと言うても時代によって流行りはあるもんや。昔のジェットコースターは最近のほど傾斜もきつくなかったんやけど、コースターもどんどん新しくなって、段々とスピードも出るようになって――」
遊園地の中にあるジェットコースターを見て、新し親分は誰に聞かれるでもなく、勝手にジェットコースター語りをはじめていた。
「超高級なにんじんに魚に、お酒も!」
一方、透乃はそんなもの聞かず、ひとりで大食い大会をはじめている。
お互いに言いたいことを言って、やりたいことをやっている状況。だが、透乃はニンジンぼりぼり食べながらも、次に買うものを考える余裕があった。
しかしジェットコースター語りに夢中になっている新し親分は、それに気づかない。
「重量105トンの金の像をいっぱい!」
「へ?」
新し親分が気づいた時には、透乃が買った金の像が周りにずらっとそびえていた。
「ちょ、なんなんこれ!?」
「こうやって使うんだよー。こう、ひょいっと」
透乃が本当に、ひょいっと、金の像を持ち上げて、ぶん回す。
「なんでやー!」
まともに食らった新し親分が、お空に吹っ飛ばされた。
大成功
🔵🔵🔵
エルナリア・アリルゼノン
とにかく高価な物を買いまくると強化される…?
原理は不明ですが、面白い趣向ですね。
ではエルナも普段は決して出来ないような買い物をするとしましょう。
高価なものといえば、やはり兵器の類ですね。
UDCアースの最新鋭の戦車であれば、1台でも数億円レベルの代物です。これを爆買いするとしましょう。
この空間に配置できるだけの戦車を購入し、ハッキングして操作。新し親分に対し砲撃を行います。
この時消費される砲弾や燃料もタダではありませんから、それもどんどん購入して補充していきましょう。
そうそう、ついでに栄養ドリンクも買っておかなければ。
折角の兵器も彼女のスピードに追従できなければ宝の持ち腐れですからね。
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
…うん、もーこの際トンチキに関しては諦めるわぁ。なんか真面目に考えるだけ無駄そーだし。
高価いもの、高価いものねぇ…
…重機関銃(ごん)うわホントに出た。とりあえずゴールドシーンにお願いして並列処理で○弾幕張って…
ってことは…爆発しないミサイル(どん)わーやっぱ出たー…(民間人に巻き添えを出さない要人暗殺用にマジであります。お値段一発頭ざっと1000万円也)
ま、出ちゃったもんはしょうがないか。じゃんじゃん買ってどんどんぶっ放しちゃいましょ。
ただ高価いってことなら戦艦とか戦闘機も考えたんだけど…さすがにスペースがねぇ。
なんか自分も潰されそうだしさすがに自重したのよねぇ…
●戦いは数だって誰かが言った
「このお金でとにかく高価な物を買いまくると強化される……?」
ジャラジャラと貨幣が川と流れ、バサバサと紙幣が噴水の様に噴き出す、ある種異様な空間で、エルナリア・アリルゼノン(ELNA.net・f25355)が首を傾げていた。
「面白い趣向ですが、原理が不明ですね……」
「もーこの際、トンチキに関しては、諦めた方が良いと思うわぁ」
エルナリアの呟きに、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)
の甘い声が返って来る。
「なんか真面目に考えるだけ、無駄そーだし」
「それもそうですね」
達観したようなティオレンシアの物言いに、エルナリアも頷く。
「普段は決して出来ないような買い物をするとしましょう」
「そうねぇ……何を買えばいいか、迷っちゃうわぁ」
どんな高価なものを買えば良いかと、エルナリアとティオレンシアが相談を始める。
そんな2人に、新し親分が何故か物陰から視線を送っていた。
「やっば……脳が溶けるロリ声、キタコレ……!」
否。新し親分が視線を送り、聞き耳を立てているのは、ティオレンシアだ。
「なんでこんなリアル極甘ロリボイスの持ち主が、猟兵やってるん?」
見た目詐欺とも言われるティオレンシアの甘い声は、様々な流行に飛びついて来た新し親分の中の何かの琴線に触れていたようだった。
閑話休題。
「高価なものといえば、やはり兵器の類ですね」
「兵器ねぇ……重機関銃とか?」
エルナリアの呟きに反応して、ティオレンシアが脳裏に浮かんだものを口走る。
ごんっ、と2人の背後に何か重いものが落ちる音が響いた。
「うわホントに出た」
頭の中で思い浮かべた通りの重機関銃の出現に、ティオレンシアが若干引いたような声を上げる。
「これはすごいですね。弾薬もセットですから、すぐに撃てますよ」
一方、エルナリアは手慣れた様子で重機関銃を調べていた。
「そうよねえ。とりあえずゴールドシーン。弾幕お願い」
ティオレンシアがシトリンの付いたペンを引き抜き放ると、ペンに擬態していた鉱物生命体はその願いを叶えんと、重機関銃の引き金に巻き付いた。
「あ、もう1丁ください。エルナも撃ちます」
それを見たエルナリアも、自分の体格に良いタイプの機関銃を出現させ、やはり慣れた手つきで銃口を新し親分に向ける。
ドパパパパパッと、銃火が立て続けに瞬く。
「うわちゃちゃちゃちゃ!?」
突然始まった銃撃に、新し親分が流石に我に返って慌てて逃げだした。
「……爆発しないミサイル」
逃げ惑う新し親分を眺めながら、ティオレンシアが再び脳裏に思い描いた物を、口に出してみる。
「わーやっぱ出たー……」
ティオレンシアの前にどんっと現れたのは、一見普通のミサイル。
「ま、出ちゃったもんはしょうがないか。ぶっ放しちゃいましょ」
ティオレンシアがぽちっとスイッチを押すと、ロケット部から火を噴いてミサイルが新し親分目掛けて飛んでいった。
「容赦なぁい!?」
逃げる新し親分。ロックして追尾するミサイル。
その差が次第に縮まる中、シャキンッとミサイルの弾頭付近から刃の様なものが飛び出した。刃のようなものと言うか、刃だ。
「ちょ、あぶ、あぶな……すっごい丈夫な盾!」
迫りくるミサイルの刃を、新し親分は鉄板のような盾を咄嗟に買ってやり過ごす。
「あらー。防がれたわねぇ。まあいいわ。じゃんじゃん買ってどんどんぶっ放し――」
「あのー」
同じミサイルを再購入しようとしたティオレンシアに、エルナリアが声をかけた。
「その忍者ミサイルである必要、ありますか?」
爆発しないミサイルに刃の類がつけられているのは、巻き添えを極力出さない為にと開発された兵器だからだ。
だが今この場には、巻き添えになるような人も妖怪もいない。
「だから、このくらいしても良いと思うんです。――この空間に配置できるだけの、UDCアースの最新鋭の戦車をください!」
ドドドドドンッ!
一気に8台の戦車が、エルナリアの周りに現れた。
「戦車多ーっっ!? ……いや。そんなら、ワイちゃんは小型戦車や!」
その数に驚いて声を上げる新し親分だが、すぐに気を取り直し、やや小ぶりの戦車を1台だけ出現させる。
「ふ、ふーんだ。そんなに戦車買ったって、2人しかいないんじゃ動かしきれないんやないの? そ、それにワイちゃんの戦車の方が、機動性ありそうやで!」
小型戦車に飛び乗って、新し親分が勝ち誇ったように声を上げる。
「機動性……うっかりすると自分まで潰されそうで自重してたけど、戦闘機とか買ってもいいかしらぁ?」
「い、いやいやいや! 自重して正解や! やめとこ? な? な?」
ティオレンシアの甘い声のツッコミに、新し親分が必死で頷く。
「最新鋭の戦車って、コンピューターついてるんですよね」
そんなやり取りの間に、エルナリアは準備を進めていた。
エルナリアだって、新し親分が指摘した戦車の数の問題を考えずに、ただ配置できるだけの戦車を出現させたわけではない。
まとめて動かせる当てがあったから、これだけ出現させたのだ。
「こうやってハッキングしてやれば……砲撃だけ出来るんですよ」
エルナリアが呟いて端末を操作した瞬間、8台の戦車が一斉に砲火を放った。
「ちょ、待っ」
新し親分が慌てて飛び降りた直後、8発の砲撃を浴びた小型戦車が爆発し炎上する。
「ぐぬぬ! でもワイちゃん、まだ諦めんよ! まずは栄養ドリンク飲んで……戦車に対抗するには、ワイちゃんも対戦車ライフルを――」
「させないわよぉ?」
新し親分も反撃の糸口を探ろうとお金を使おうとするが、そうはさせじと、ティオレンシアが鉱物生命体と一緒に重機関銃を再びぶっ放した。
新し親分の手から栄養ドリンクの瓶が零れ落ちる。
「栄養ドリンクを飲む必要はなさそうですね……もう一発、斉射します」
新し親分に反撃の隙を与えまいと、エルナリアは再び8台の戦車を操作する。今度はその砲塔を、それぞれ別の方向に向けて。
「ま、待って待ってー!」
新し親分の懇願に返って来たのは、8発分の砲火の音。
着弾した砲弾から広がる爆炎が、新し親分を容赦なく飲み込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
バブル景気。かつてUDCアースのニホンで見られたという、
空前の好景気のこと…だったな。
さて、経済力で勝負といっても、何かルールを決めないと。
…そうだ!
「新し親分。私とレースで勝負してほしい」
そこに停められているヒーローカー「BD.13」を指さし、
親分に宣戦布告だ。かつてバブル時代にはスポーツカーが
飛ぶように売れたという…私の車もそれなりの値段だが、
親分の愛車はどんな感じかな。戦場効果で金にものいわせて
車のパーツを購入し、【アメイジングチューン】で魔改造!
栄養ドリンクを飲んだら、自身の《運転》で
限界までぶっ飛ばす!まるで空を飛ぶような加速だ!
●スピードスター
ライトアップされた、サーキットコース。
そのスタートラインには、僅か2台の車だけが並んでいた。
「どや! 金、かけまくったで!」
その片方――バンパーやタイヤのホイールをダイヤで飾った赤いオープンカーの運転席で、新し親分が既に勝ち誇った笑みを浮かべている。
「親分。愛車のカスタムとは組み合わせの妙技……女の洋服と同じさ。何でもパーツを付ければ良いというものではないのだよ」
言葉を返すガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は、優美な2ドアクーペの愛車『BD.13』に乗っていた。
「新し親分。私とスポーツカーのレースで勝負してほしい」
「ええで! 流行に飛びつくワイちゃんのスピード見せたる!」
何かルールを決めた方が良いだろうとガーネットが持ち掛けた勝負に、新し親分が二つ返事で乗った結果である。
勿論、どちらもバズリトレンディ御殿に湧き続けるお金を改造パーツやそれを取り付ける整備チームなどに使って、車を最大限に改造している。
「飲むか?」
「いただこう」
新し親分が差し出してきた栄養ドリンクをガーネットが受け取り、どちらからともなく小瓶と小瓶を打ち合わせる。
2人が飲み干すと同時に、スタートシグナルが点灯した。赤から黄へ、そして黄から青へと変わって――。
ブォンッ!
エンジン音を響かせ、最初に飛び出したのはガーネットだ。
アメイジングチューンで召喚したカスタムパーツで魔改造した『BD.13』の強化型エンジンが可能にした、ロケットスタート。
「まるで空を飛ぶような加速だ!」
かつてないスピード感を身体に感じて、ガーネットの口元に笑みが浮かぶ。
「お先やー!」
しかしその横を、新し親分の乗る赤いオープンカーが走り抜けていった。
ガーネットは愛車を持ち込んだが、新し親分は車自体を買っている。さらに御殿をサーキットにしたのも、新し親分だ。
ガーネットも惜しみなく改造にお金を消費したが、消費金額の桁が違う。その差が、車のスピードの差となって現われていた。
「くそっ!」
最初のコーナーに入る新し親分に離されまいと、ガーネットはさらにアクセルを踏み込んで限界まで飛ばそうとする。
スタートで先行出来た事からも、運転技術自体はガーネットの方が上だ。離されなければカーブで差を詰められるかもしれな――。
キィィィーッ!
「ん?」
アスファルトをタイヤがこする音が、車の中のガーネットにも聞こえる程に響いた。
新し親分の車が、ギュルルルッとスピンしている。スピードの出し過ぎで曲がり切れずにコントロールを失ったのだろう。そのまま猛スピードで壁に――。
ドーンッ!
壁に激突し、直後にはドカンッと爆発、炎上した。
「……」
思わずスピードを緩めるガーネットの前で、炎に包まれた車の中から、新し親分が焦げながらも出てきて、パタッと倒れる。
『止まるんやないで……』
「……ああ!」
微かに聞こえた新し親分の言葉に頷いて、ガーネットはアクセルを踏み込み、ハンドルを素早く切ってコーナーを走り去っていった。
新し親分の敗因。運転技術は幾ら金を使っても一朝一夕には買えない。
大成功
🔵🔵🔵
ニコリネ・ユーリカ
相棒の営業車Floral Fallalを[防具改造]し
ラグジュアリーな高級リムジンに乗って登場
オホホ、お金持ちは自分で操縦しないの
超美形なメンズの運転&エスコートで
私服チェックで番組最高額15臆円を叩き出し御殿に入る
貧乏花屋には夢の御殿ね
此処に住みたーい!
……なんて
おくびにも出さずに堂々としてるわ
最高級ミンクの毛皮をサッと脱いで
ちょい古臭いボディコン姿をお披露目
花で作ったオリジナルジュリ扇を翻し
ミラーボールの下で[ダンス]
3m超のお立ち台だって平気よ[地形耐性/環境耐性]
高みからバブリーな花扇を見せつけちゃう
親分が扇に惹かれた瞬間がチャンス!
90年代らしいポロリ覚悟のキャットファイトをするわ!
シキ・ラジル
新し親分さん、すっっっっっごく親近感あるー!今度キマヒュに来ない?
お金を使えば使うほど強くなるの?じゃあ何でも買っていいの!?やったー!!UC発動してミニシキちゃん達を呼ぶよ
みんなー何でも買っていいって!まず高性能のスピーカーが沢山欲しいよね。あと繋げる為のコードでしょ、音楽がよく聞こえる為のイヤホンでしょ。電源もほしいし、ステージにぴったりの可愛い服も買っちゃおう!
あ、洋服とイヤホンはアタシとミニシキちゃん全員分ね。
みんなちゃんと待ったー?それじゃあいっくよー!買ったスピーカーのスイッチ入れて…
みんなで「演奏」「パフォーマンス」して「衝撃波」を「一斉発射」しちゃえー!
リダン・ムグルエギ
流行、アタシも大好きな言葉よ
でもその流行は…宇宙規模かしら?
手始めに御殿の天井を買うわ
手元に引き寄せる事で穴を開け空を見せる
そして、アタシは買い占めるの
ミストレンディ、踊りましょう?
ボールよりも燦然と輝く球体の下で、ね
月の土地、90億エーカー分27兆円
これを購入し月そのものを呼ぶわ
それもただの月じゃない
キマフュのノリでカラフルな催眠模様に着色した衛星をね!
塗装費も上乗せしよっと
月さえも
宇宙さえも飲み込んで
アタシ達は未来の流行を生むわ
(月の下でダンスポーズを決めて
だから、後は任せて?
仕掛けるのは催眠模様入りの月を伴った精神攻撃よ
星ごと改築するキマフュの虞知らずなノリを見せつけ
圧倒しようと試みるわ
●舞い、歌え、月下のディスコテーク
「あ痛たたた……流石は猟兵、やな」
続けて炎に呑まれてあちこち焦げてる新し親分は、ひとまずバズリトレンディ御殿をサーキットから元のカラフルで明るい状況に戻そうとする。
「ん?」
元のカラフルで明るい空間に戻ると、シキ・ラジル(揺蕩う雷歌・f11241)がぢぃっと新し親分に視線を向けていた。
「近い、近い。……なんや?」
「新し親分さん、すっっっっっごく親近感あるー!」
訝しむ新し親分に、シキは目を輝かせてその両手を掴むと、握手の様にぶんぶんと上下に振り回した。
「今度キマヒュに来ない?」
「キマヒュ? 別の世界ん事か? 行けるなら行きたいもんやけど、ワイちゃん、こんなんでも親分やからなぁ……」
仮に世界を渡る術があったとしても、親分がそうそうカクリヨを離れるわけにもいかないと言う事か。
遠い世界を羨むように、新し親分は顔を上げて――。
「……ん? んんん?」
何故か――何故か、そこにある筈の天井がない事に気づいて、目を丸くした。
「ワイちゃん、うっかりしたかな?」
しかし新し親分が何度戻そうとしても、天井はぽっかりと開いたままである。
「何でやー!?」
「無駄よ、ミストレンディ」
夜空を見上げて頭を抱える新し親分の背中に、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が声をかけた。
「ここの天井、アタシが買ったから」
「ワイちゃんの御殿に、なにしてくれんねん!」
リダンがさらっと告げた言葉に、新し親分が思わず地団駄を踏んで言い返す。
「ええもん。ワイちゃんが、買い直して――」
「いいけど、諦めるまでアタシも買い戻すわよ」
新し親分は御殿を元に戻したいが、リダンにも天井を譲れない理由があった。
バズリトレンディ御殿の天井を巡って、新し親分とリダンの視線が火花を散らす。
そこに――ドルンッと重たいエンジン音が響いた。
「うん? この音って……」
「ワイちゃん、レースはもう勘弁やで……」
ゆっくりと入って来る、一台の高級そうな黒塗りのリムジン。リダンは聞き覚えのあるエンジン音に内心首を傾げ、新し親分はまたレースになるのかと顔を青くする。
そんな2人の横に、リムジンがほとんど車体を揺らさずに停止した。
運転席から、執事服を着た初老の男が無言で降りてきて、2人に一礼してから後部座席のドアを開く。
カツンッとハイヒールを鳴らしてリムジンから降りてきたのは、最高級ミンクの毛皮のコートに身を包んだニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)であった。
「あら? リダンさん?」
「はい、ニコ。随分とまあ、洒落込んだわね」
リムジン降りたらそこにいた知り合いに目を丸くするニコリネに、リダンが軽く片手をあげて返す。
「オホホ。リムジンに毛皮のコート。諸々、締めて15億円よ。これが私服金額チェック番組だったら、番組最高額じゃないかしら」
ニコリネはその15億の中で作った花で飾ったいわゆるジュリ扇を広げながら、セレブらしいつもりに笑ってみせる。
「15億……そのリムジン、もしかして……」
「あ、わかっちゃう? ええ、いつもの愛車よ」
金額と音で気づいたリダンに、ニコリネは笑顔で頷く。
そう。どう見てもリムジンにしか見えないこの車、ニコリネが花の移動販売に使っている愛車『Floral Fallal』を、この場の金にものを言わせて改造しまくった産物である。
5MT4WDをどう改造すれば、リムジンになると言うのか。
改造って言うレベルじゃない。もう車種すら違う。
「しかも自分で運転しないなんて、珍しいじゃない」
「オホホ、お金持ちは自分で操縦しないの。ねえ?」
ニヤニヤとした笑みを向けて来るリダンに、ニコリネは精いっぱいセレブっぽい仕草をしながら、傍らの運転手(雇った)に視線を向けた。
「Yus, M'Lady」
恭しく一礼した運転手は、そのままリムジンの傍に戻っていく。
「運転手ー! その手があったかあぁぁぁぁぁぁぁ」
「どしたの、これ」
「あー、さっき事故ったからじゃない?」
膝から崩れ落ちる新し親分に、ニコリネとリダンは互いに顔を見合わせた。
「ほんとに何でも買っていいんだね! やったー!!」
リダンの天井買いっぱなし。
そしてニコリネの、リムジンやら毛皮のコートやら運転手やら。
他の猟兵がバズリトレンディ御殿のお金で買って出現させたものを見て、シキは何でも買っていいんだと、ぱっと笑顔になる。
「レッツゴー! ミニシキちゃんズ!」
――アミィズ・マーチ。
そして何を思ったか、シキは小さな自らの分身――400体以上のミニシキちゃんを喚び寄せた。
「みんなー何でも買っていいって!」
何のためかと言えば、勿論、買い物の為だ。
「まず高性能のスピーカーが沢山欲しいよね」
シキが口に出すと、自宅で映画館並みのサウンドが楽しめるという触れ込みのサラウンドシステム対応のスピーカーが出現する。
「あと繋げる為のコードでしょ、音楽がよく聞こえる為のイヤホンでしょ」
アンプと接続用コード、ワイヤレスのインナーイヤホンが続けて現れる。
「電源も当然欲しいし、ステージにぴったりの可愛い服も買っちゃおう!」
大容量の持ち運び型バッテリーが現れて、白と赤を基調としたどこかで見たようなデザインの衣装が、一瞬でシキの身体を包み込む。
『オイ、アタシラも!』
『忘れんな!』
「勿論、わかってるよー! 衣装とイヤホン、ミニシキちゃんズ全員分ね」
ドサドサドサッ!
口やかましく訴えて来るミニシキちゃんズに応えてシキが言葉に出せば、シキの物とほぼ同じデザインでサイズをミニシキちゃんに合わせた衣装が400着超も出現した。
ちりも積もればなんとやら。
この時点で、シキの消費金額も結構なものになっていたのである。
「ねえ、親分さん」
シキがミニシキちゃんズの準備をしている横で、ニコリネは膝をついたままの新し親分に歩み寄って、声をかけた。
「私は、車や毛皮のコートを自慢しに来たんじゃないのよ?」
親分に告げて、ニコリネはミンクの毛皮のコートをバサッと脱ぎ捨てた。
「わぉ」
コートの下に隠れていたニコリネの服装――ボディラインを強調するかの様な、いわゆるボディコンに、リダンの口から声が漏れる。
「でもちょっと古臭くない?」
「昔に流行った服やな……良く憶えとるで」
「それは狙い通りよ」
昭和の香り漂うデザインに対するリダンと新し親分からのツッコミを、ニコリネは笑って返す。そしていつの間にか復活してた新し親分に向き直った。
「さあ、そしてミラーボールを出して頂戴。私は、踊りに来たんだから」
「ええやろ。ワイちゃんに踊りで勝負を挑んだ事、後悔させ――」
「待った、お2人さん」
今にもお立ち台に向かいそうなニコリネと新し親分に、リダンが待ったをかける。
「踊るならボールよりも燦然と輝く球体の下で、踊りましょう?」
御殿に湧くお金がごそっと減って――煌めく月が降って来た。
「な、なぁぁぁぁぁ!?」
驚く新し親分の目の前で、月が極彩色に染まっていく。
「月の土地、全部買い占めたわ! 締めて90億エーカー分27兆円!」
こうする為に、リダンは御殿の天井をまず買ったのだ。
月を買っても月が見えなければ、月をミラーボールの代わりにするなんて事は出来ないのだから。
「流行、アタシも大好きな言葉よ。でも、ミストレンディ。あなたの飛びついてきた流行は……宇宙規模かしら?」
「う、宇宙? いや、ワイちゃんかて、彗星ブームは知ってる……って、この状況で彗星買ってもどう対応すりゃええねん!」
どんどんカラフルになっていく月に、新し親分の思考が追い付かない。それはただ、色に目を奪われて圧倒されていると言うだけではなかった。
色は視覚に作用する。ある種の錯視の様に、色の塗り方だけで、人は形を見間違えるという事もある。
リダンが月をカラフルにしたのは、そこに催眠作用を持たせるためだ。
「さあ、月に近い高みで踊りましょう?」
ニコリネも月に合わせて、3m超の高さのお立ち台を、自分達の足元に出現させる。
(「高い服でも、美形なメンズの運転手でも、月だって買えちゃうなんて、貧乏花屋には夢の御殿ね。此処に住みたーい!……なんて」)
近づくカラフルな月を見ながら、ニコリネは胸中で呟き――生まれた欲を払拭するかのように、花のジュリ扇をバッと広げた。
そして――。
「みんなちゃんと待ったー? それじゃあいっくよー!」
ミニシキちゃんズ全員の準備を終えたシキが、スピーカーのスイッチを入れる。
「みんなで演奏だー!」
そして――スピーカーから、音楽が流れ出す。
「どう、親分さん。この扇は」
「花で飾るなんて、イケてるやない! ワイちゃんも欲しいくらいや」
ニコリネが掲げて踊る花のジュリ扇に、新し親分の視線が釘付けになる。扇を見上げると言う事は、その先の月を見るのと同じだ。
それはつまり、リダンが月に持たせた催眠がより深くかかると言う事。
「月さえも宇宙さえも飲み込んで、アタシ達は未来の流行を生むわ」
次第に足がうまく動かなくなってきた新し親分の前で、リダンがくるんとターンしてポーズを決める。
「だから、後は任せて?」
とんっと押されてよろけた新し親分が、お立ち台から落ちていく。
「みんな、最後のパフォーマンス、いっくよー!」
そこにシキとミニシキちゃんズが揃って声を張り上げた。
「あ……これあかん。避けられんやん」
落下する新し親分を、シキ達の声の衝撃波が容赦なく吹き飛ばした。
「あーあ。90年代らしいポロリ覚悟のキャットファイトを覚悟してたのに」
「いやそれは、やめときなさいよ。放送出来ない」
お立ち台から落ちて、途中で吹っ飛ばされて舞い上がって、また落ちて行く新し親分を見上げて、ニコリネとリダンがお立ち台の上で呟く。
そして――。
「なんや、圧倒されっぱなしやったなぁ。負けた負けた! 負けまくったわ! ワイちゃんの完敗やなぁ!」
落ちて大の字に倒れた新し親分は、カラフルな月を見上げて笑っていた。
大成功
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