大祓百鬼夜行②〜電竜神打倒の刹那に刃が閃く
カクリヨファンタズムの『大祓百鬼夜行』も終盤戦。
旗色が悪いと囁かれる戦況の中、3人目の妖怪親分の元へ雲の橋が掛けられた。
「その名は、竜神親分『碎輝』くん! 光属性主人公っぽい口調の、熱血系最弱竜神くんだよっ!」
グリモア猟兵の蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)が、頭上に輝くレモン型グリモアから、竜神親分『碎輝』の姿を投影してみせた。
「彼は今、目覚めたばかりで言葉通りの最弱の存在っ! けれど、すぐに世界の異変を察知した碎輝くんは、異常な成長度合いで現在進行系で強くなっているよっ! それは、みんなと戦っている最中も成長し続けるってことだよっ!」
まともに戦えば、通用していた攻撃が弾き返され、痛くも痒くもなかった彼の攻撃は即死レベルの超絶威力へと変わっていってしまう。
では、どうすれば碎輝くんに勝てるのか?
この疑問に、レモンが即答した。
「みんなで力を合わせて連携攻撃を叩き込めば、成長する前に碎輝くんを撃破できちゃうよっ! 上手くいけば、最低4人の連携攻撃で碎輝くんをノックアウトできちゃうかもっ?」
よ、弱い……!
たった4人の連携攻撃でダウンするのは、流石に貧弱すぎる気がするのだが。
だが、これは裏を返せば、ワンチャンスで撃破出来なければ、それ以降はどんどん成長して、身に纏う雷は激しさを増し、本人の身体的能力も劇的に強くなって、後続の猟兵は手が出せなくなってしまう事を意味する!
「なので、できるだけ気の知れた仲間と一緒に現場へ向かってほしいなって! 勿論、みんななら即興での連携もできちゃうはずだし、そのあたりの判断は各自に任せるねっ!」
レモンがグリモアでの転送準備を行っている間、投影された予知の映像では竜神親分『碎輝』の熱い言葉が流れていた。
「……という訳で、他の親分からも話は聞いているな?
無限に成長する俺と戦い、そして俺を超えてくれ!
昨日より今日、今日より明日……。
お前達は、今よりもっと強くなれる。無論、俺よりもずっと……!!」
七転 十五起
猟兵の皆さん、互いの心を重ねて、竜神打倒の一撃に命を懸けろ!
チャンスは一回きり、かつ連携が必須です。
なぎてんはねおきです。
●プレイングボーナス
他の猟兵と連携して戦う。
プレイング内容は、『他の猟兵さんとの連携』を意識してくださると上記ボーナスが発生します。連携を意識したプレイングならば、おひとり様での参加も可能です。
今回のリプレイは、プレイング4~6名分の描写量を絞るため、大人数の場合はプレイング内容とダイスの出目で採用を抽選させていただきます。御了承下さい。
●その他
コンビやチームなど複数名様でのご参加を検討される場合は、必ずプレイング冒頭部分に【お相手の呼称とID】若しくは【チーム名】を明記していただきますよう、お願い致します。
(大人数での場合は、チームの総勢が何名様かをプレイング内に添えていただければ、全員のプレイングが出揃うまで待つことも可能です。
それでは、皆様の華麗な連携攻撃を繰り出すプレイングをお待ちしておりす。
第1章 ボス戦
『竜神親分『碎輝』成長電流形態』
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POW : 成長電流放射
【黄金竜】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【状態から次第に強くなっていく電流】を放ち続ける。
SPD : 黄金竜神
【体に雷を纏う】事で【無限に成長を続ける黄金竜の姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 超電竜撃滅衝
自身が装備する【槍】から【無限に成長する巨竜型の雷電】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【感電】の状態異常を与える。
イラスト:108
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空亡・劔
共闘切望!
口惜しいけどあたしだけじゃ倒し切れないから協力は絶対よ!
この最強の大妖怪を差し置いての大異変!
もう激烈に生意気よ!
碎輝!あんたは無限に成長する最強かもしれない!
だがこの空亡劔もまた最強!
あんたが人類の脅威として立つならあたしはあんたを超えてやる!
【戦闘知識】で彼の動きを見据えその動きと癖を【見切り】
ちゃんと共闘猟兵に伝達!!
【天候操作】で雲一つない快晴!雷の発生しにくい天候にするわ「
【属性攻撃】で武器と全身に純水の氷属性を付与
あたしは最強の大妖怪よ!時刻みを使用するわ!
【二回攻撃】で魔剣による二刀で骸魂を中心に【切断】よ
基本攻撃は他の猟兵とタイミングは合わせるわ
目的を達すれば静かに…
シズホ・トヒソズマ
即興連携希望のソロ参加
一気に畳み込まないといけないとはまた凄い相手ですね。ですが彼もまた覚悟している。ならば応えないといけませんね
人形は◆早業で◆操縦
まずは少しでもあの速さを止めないと
クロスリベルで反応を強化
味方への攻撃を◆見切り
デザイアキメラでかばい◆オーラ防御◆盾受け
その隙にロミンの鎖で◆捕縛しUC効果を弱めて一時的でも速度をダウン
その隙にUC発動
バルバロス兄弟の力、オルキヌスの瞳を敵に使用
精神、肉体両面への退化を敵に与えます
貴方は成長し続け、私は凝視する事で退化させ続ける!
完全ではなくともこれで成長速度も抑えます!
皆さん、今です!
攻撃は攻撃手に任せ
退化の継続とロミンによる捕縛に集中します
ミスト・ペルメオス
共闘希望
機神黒鳥
愛機たる機械鎧を駆って参戦
竜神親分、凄まじいな。
その覚悟に称賛を。そしてあなたを超えてみせるッ!
念動力を活用し機体をフルコントロール。
スラスターを駆使して飛び回り、戦いつつデータ収集・解析。可能なら友軍と共有。
秒ごとに成長する竜神親分、その限りない強ささえ見切って捻じ伏せる!
――了解。仕掛けるッ!
【シュラウド・ジャンプドライブ】。サイキック・ゲート展開!
カシム君達と連携しつつ、ゲートを介しての擬似的な瞬間移動を繰り返すことで遠近問わない攻勢をかける。
弾幕を張って行動を制限、或いは生じた隙に砲撃を叩き込み、或いは追撃の接近戦を捻じ込んで。
無論、後で助けるつもりだが――竜墜としだ!
カシム・ディーン
共闘希望
機神黒鳥
キャバリア搭乗
お前…帝竜ですね(ぎらり
帝竜眼がお前を見ています(苛烈な眼光
「ご、ご主人サマ…?」
本来なら眼球を貰いたい所ですが…後で涙を寄越せ
【戦闘知識・情報収集・視力】
碎輝の動きと癖
更に猟兵達の戦力と能力把握
連携の為の情報を共有
【属性攻撃・迷彩】
光土属性を機体に付与
光学迷彩と共に土属性で電撃に対する耐性を高め
ミスト…往きますよ!
UC発動
ミストと息を合わせての連携攻撃!
すぐにでも仕留めるぞ!
出し惜しみせずに全霊の攻撃!
【二回攻撃・念動力・切断】
超高速で飛び回りハルペーによる超連続攻撃!
徹底的に刻む
骸魂が抜けたら
彼の鼻毛をぷちって抜いて流れる涙を採取
お前の力も使わせて貰います
ビスマス・テルマール
史上最弱から史上最強にレベルアップし続ける……容姿が正統派な割には相当アクが強いですね、あの人
●POW
他の猟兵の皆さんと『集団行動』で連携しつつ『オーラ防御』に『属性攻撃(大地)』を込め『電撃耐性&激痛耐性』で備え碎輝さんの攻撃を受け流し
『第六感&瞬間思考力』でヤバいレベルになりそうなのを『見切り』『残像』回避しつつ、皆が強力な一撃を叩き込むタイミングで『空中戦&推力移動』で駆け〈ジュリンプル・グレネドフォート&ディメイション・なめろうブレイカー〉の『一斉発射&弾幕』からの『早業』でUCの『2回攻撃&鎧無視攻撃&属性攻撃(大地)』を込めた
山河焼きバーガーの爆弾剣を
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
蒼・霓虹
……弱い竜神親分と聞いて何事かと思いましたが、成る程、とんだ食わせ者ですけど……親分と言われるだけはある。
[WIZ]
ならばその想いに応え
成長を越え畳み掛ける下地を
〈彩虹(戦車龍)〉を【悪路走破&推力移動】で【操縦】走行しつつ【第六感&瞬間思考力】で攻撃【見切り】回避
皆との連携を【集団戦術&団体行動】意識し
【高速詠唱】でUC発動
【オーラ防御&電撃耐性&結界術】込めた〈レインボークローバー〉【弾幕】を眷族達と一緒に竜神親分のUCを抑える感じで【念動力】展開
総攻撃の機を伺い
皆と合わせ【高速詠唱】〈アクアネオンストライク〉【弾幕&砲撃&レーザー射撃】を眷族達と【一斉発射】
[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]
それは、確かに貧弱だった。
集う猟兵達は、目の前の竜神親分『碎輝』の纏う線香花火めいた火花を散らす弱々しい電流に唖然としている。
「そんな顔するなって! お前達には、今日の俺を超えてもらわないと困るんだ! 昨日より今日! 今日より明日! さあ、成長する俺を超えてみろ!」
碎輝は途端、全身を黄金色に発電させ、周囲に稲光を撒き散らし始めた!
「黄金竜神のパワー、見せてやる!」
急激に力を増してゆく碎輝を前に、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)が思わず息を呑んだ。
「なるほど、一気に畳み込まないといけないとは、また凄い相手ですね。ですが彼もまた覚悟している。ならば応えないといけませんね」
「――竜神親分、凄まじいな」
ポツリ、と言葉を漏らしたミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)は、念動力で操作する全高9m程度の漆黒の人型機動兵器『ブラックバード改』の中心で、竜神の眩い雷電の輝きに目を細めた。
「――その覚悟に称賛を。そして……あなたを超えてみせるッ!」
普段、無口なミストが、ここまで感情を吐露するのは珍しい。
同行するカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、相棒の界導神機『メルクリウス』の操縦桿を握りながら驚いていた。
「まぁ、気持ちは分かりますがね? ――おい、碎輝。お前、帝竜ですね?」
唐突なカシムの質問に、碎輝は眉間にしわ寄せてみせた。
「は? なんだそりゃ? 俺はここで封印されていた最弱の竜神で……」
「嘘だッ! 帝竜眼がお前を見ています! 既にお前の分体から涙を採取しているのですよ!」
ドラゴン関係になると、カシムは人格が豹変する。
かつて、アックス&ウィザーズの浮遊大陸に現れた帝竜達をことごとく討伐し、その眼球を抉って結晶化させたマジックアイテムを所有しているカシム。どうやら、碎輝にも同じ帝竜の力をマジックアイテムから感じ取っているようだが……。
「いや、竜神違いだろ、それ。つーか俺も分体なんだよな?」
碎輝にバッサリ否定されてしまったカシムは唖然としていた。
「帝竜とか言われても、俺はずっと封印されてた身だからな? そもそも俺、UDCアースで封印されたから、アックス&ウィザーズって世界は縁がないんだよな。お前の因縁の相手が俺に似てるのか? よく知らないが。少なくとも“俺”じゃないことは確かだ」
『ご主人サマ? 過去作と今作では、同一名でも立ち位置が違うパラレル存在だから、その時の因縁をふっかけてもマスタリングされちゃうよ……?』
「お前、なんつーメタい角度からツッコミ入れるんだよ……」
メルクリウスの四次元ツッコミに、カシムはゲンナリしてしまった。
「あー、一気にやる気なくなりましたね。とはいえ、ミストの手前、バックれるなんて出来ませんからね……おい、碎輝。乗りかかった船です、後で涙を採取させろ。無限に成長する竜神の涙で帝竜眼を強化しますので」
「いや、だから言いがかりだと……ああ、分かった分かった! 勝ったら俺の涙をくれてやるよ!」
面倒くせー奴だなぁと竜神親分にウザがられるカシムであった。
このやり取りに横槍を入れたのは蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)だ。
「カシムさん、この会話も竜神親分の成長の時間稼ぎです! ……弱い竜神親分と聞いて何事かと思いましたが、成る程、とんだ食わせ者ですね。けど……親分と言われるだけはある」
「おっとバレちまったか。お前も竜神か? 参ったな、今の俺より強いじゃないか……!」
竜神親分が肩を竦めるも、蒼は強気な態度を崩さない。
「ですが、一瞬で成長するその実力は脅威です。ならばその想いに応え、成長を越え畳み掛ける下地を」
「霓虹さんも、みなさんも、そろそろ畳み掛けましょう! 時間が惜しいです! 成長する暇をこれ以上与えられません!」
予兆めいた瞬間思考力から危機感を募らせるビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、腰に装着したベルト型ドライバーに変身媒介である『なめろう料理カード』を挿入!
「先陣は私が! 変身ッ!」
『Namerou Hearts……Sangayaki Burger!』
謎の電子音声とともに、異空間から転送された特殊鎧装をビスマスは装着!
「鎧装転送! サンガヤキバーガー・マインブレイド!」
魚のすり身を焼いたパティをバンズに挟んだ、UDCアース日本の千葉県名物料理を模した重装鎧甲の防御力を頼りに、ビスマスが碎輝の電流を抑え込みに掛かった。
「ちょっと! 突出するなんて駄目よ!」
すかさずビスマスの後を追い掛ける空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)!
「口惜しいけどあたしだけじゃ倒し切れないから協力は絶対よ! だから、あたしにも先陣を切らせなさいよ!」
空亡は天候を操作し、辺り一帯を快晴に変えた。
「これで雷は発生しにくくなったわ! この最強の大妖怪を差し置いての大異変! もう激烈に生意気よ!」
「いや、この雷、俺が発電させてるんだよな? 天候は関係ないぞ?」
「きゃあっ!?」
バチバチッと自ら放電し始める碎輝の余波が空亡を襲う。
どうやら、何かを勘違いしていたようだ……。
「くぅぅっ! 本当に生意気よ! 碎輝! あんたは無限に成長する最強かもしれない! だがこの空亡・劔もまた最強! あんたが人類の脅威として立つなら、あたしはあんたを超えてやる!」
「いや、俺、人類の敵になったつもりはないんだが……ああ、オブリビオン化してるからってことか? ……いいじゃないか、人類の敵! そういうことにしてやるよ!」
碎輝は空亡の言葉を受け、更に成長を早める。それは次第に、人類を滅ぼしかねない魔王のような存在感を帯び始めている……。
ビスマスは脅威になりつつある黄金竜神の足止めを行うべく、周囲の岩を操作して壁を生成し始めた。
「高速で移動するなら、壁を作って移動制限! 同時に絶縁体代わりに岩で電撃を受け止めます!」
「あたしは純水の氷を纏うわ! ……寒い!」
纏っておいて後悔する、“世界最強(へっぽこ)”であった。
高速移動を仕掛ける碎輝は、周囲へ徐々に威力が強まる電撃を放ちまくるのだが、ビスマスの岩壁と空亡の純水の氷の鎧に電撃が阻まれてしまう。
「やるじゃないか! だが、俺の武器は電撃だけじゃない! これでどうだ!」
超高速移動からの……体当たり!
「「ぐわぁァァっ!?」」
ビスマスと空亡が吹き飛ばされた!
岩壁と氷の鎧を、碎輝は単純な加速力で増幅させた物理エネルギーと電撃の熱量で突破してみせたのだ。
「まずいですね、少しでもあの速さを止めないと……!」
すかさずシズホがリカバリーに入る。
「巨腕型強襲人形『クロスリベル』、出番です。『逆賊の十字架』を再現し、この場の移動速度と反応速度を操作しましょう」
拘束服のような衣装を纏ったサイドテールの少女人形をシズホが操れば、かつての戦争で猛威を奮ったメガリスの効果を再現してみせた。
それはつまり、猟兵側の移動速度と反応速度を向上させ、相対的に碎輝の超高速移動を克服するというものだ。
更に、シズホは別の人形を操作。
「鉄鎖拘束人形『ロミン』、あの竜神を封じなさい!」
それは『鉄鎖ドローミ』の力を宿した人形で、最大99mまで伸びる封印の鎖を放つ。
反応速度が向上したシズホは、この鎖を碎輝に巻き付けて成長を阻害しつつ移動速度を低下させた。
「な、なんだ? 力が抜けてゆく……!」
碎輝の纏う電撃の輝きが、急に弱々しくなっていった。
この隙に3体目の人形である『デザイア・キメラ』で、ビスマスと空亡を救助した。
「えげつないな、岩も純水氷も、単純な膂力と熱で潰されるのかよ」
カシムもメルクリウスに魔法で岩を纏わせようとしたが、作戦を却下せざるを得ない。
「ミスト、戦力分析はまだですか?」
「――まだ、だ」
ミストは焦らずに碎輝の戦闘力を見定め続けている。
だが。
(なんて馬鹿げた成長度合いだッ! こんなの勝てるのか……ッ?)
毎秒、碎輝の戦闘力が二乗ごとに増長してゆくさまを、ミストはグラン・デバイスで情報が見えてしまっていた。
スラスター推力で雷撃をどうにか回避しているが、圧倒的な成長率に思わず歯噛みしてしまう。
恐らく、拮抗状態は長く続かない。
焦るミスト。
攻撃のチャンスは一度きりだ。
タイミングがずれた途端、碎輝のパワーは一気に跳ね上がり、もはや猟兵では手が付けられないほどの脅威になってしまうだろう。
それが頭を過り、ミストの攻撃を躊躇わせていた。
「まだ抑え込みが足りませんか。でしたら、お任せ下さい……!」
その時、蒼が決死の覚悟でユーベルコードを発現させた。
蒼の眷属『虹色狛犬の軍勢』……彼女の眷属である蒼毛狛犬が虹色のアームドフォート付きの光学鎧装を着込み、集団となって碎輝へ襲い掛かる!
「砲撃、一斉射です!」
蒼の跨る彩虹と共に、総勢101匹の武装狛犬達の十字砲火が、碎輝の黄金色の成長電流の壁を突き破ってダメージを蓄積させてゆく。
だが、それすらも――。
「うおおぉぉぉぉーッ! 燃 え て き た ー ッ !」
逆境を跳ね除けようと、爆発的な成長を促すきっかけに過ぎない!
「多勢に無勢! 逃げ場なし! いいじゃないか! この状況をひっくり返す、俺のとっておきを見せてやる!」
手に携えている槍へ成長電流を集中させ始める碎輝。
その穂先が霹靂となって戦場全体へスパーク!
「乗り越えてみせろ! これがッ! “超電竜撃滅衝(ライトニングドラゴンブラスター)”だァァァッ!」
槍の穂先から放たれた、無限成長する巨竜型の電雷が戦場を飲み込んでいく。
このままでは、この場にいる猟兵全員が一瞬で炭化しかねない!
しかし、蒼は臆さずに砲口を向け続ける。
「させません! そのための手数、そのための弾幕です! 皆、やっちゃって下さいな……!」
掲げる魔法カードは、極限まで圧縮凝固された幸運をクローバー型の弾幕として放つもの。
攻防一体のそれらは、竜神親分の必殺の一撃という“災い”を遠退ける“幸運”の盾だ。
そして、蒼の使用した魔法弾幕は、率いる眷属達も使用可能だ。
「ば、馬鹿なッ!? ありえない! 成長した俺の“超電竜撃滅衝(ライトニングドラゴンブラスター)”が……虹色の盾みたいな弾幕に抑え込まれてるだと!?」
碎輝は自身のユーベルコードが完封されることに驚愕していた。
抑え込まれた電雷は、臨界点を超えて大爆発!
「ぐわぁァァッ!?」
くの字に身体を曲げたまま、碎輝が後方へ吹っ飛ぶ!
初めて猟兵が、碎輝を怯ませた瞬間である!
「今です! 人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
シズホがユーベルコード“幻影装身(アームドオブリビオン・ミラージュ)”を発現!
操作する人形から出現させた、幻影オブリビオンの名は……。
「バルバロス兄弟の力、オルキヌスの瞳を使います! 皆さん、私の視界に入らないようにお願いします!」
シズホはバルバロス兄弟が放つ凄まじい怨念に蝕まれつつも、気力で宿したオルキヌスの瞳を制御してみせる。それは、猟兵達をも苦しめた退化の眼差しだ。
「な、なんだ……!? 俺の成長が、止まった? いや、違う! 徐々にだが……“退化”しているぞッ?」
「その通りです! 貴方は成長し続け、私は凝視する事で退化させ続ける! 完全ではなくとも、今はこれで成長速度も抑えます!」
追い討ちとして、鉄鎖拘束人形『ロミン』の封印の鎖を再び碎輝へ巻き付ければ、みるみるうちに電撃の勢いが弱まってゆく!
「皆さん、今です! 私は碎輝の弱体化の維持に専念しますので、攻撃はお任せします!」
シズホの号令が、猟兵達の反撃の狼煙となった。
「あたしは最強の大妖怪よ! 我が身、我が真体は時を統べし魔剣なり! 今こそその力を解放せん!!」
空亡は超音速で空中を駆け抜け始め、殺神魔剣『空亡・紅』を最上段に振りかざす。
この動作に呼応してカシムとミストも動き出した。
「ミスト……往きますよ!」
「――了解。仕掛けるッ!」
黒と白の機体が、音よりも疾く戦場を駆け抜ける。
(アクセス……ッ!)
ミストが念じた先に出現した空間を繋ぐサイキック・エナジーのゲートへ飛び込む。
同時に、カシムはメルクリウスの機体を光学迷彩魔法で覆って姿を消す。
(背中がガラ空きだ……ッ!)
ミストはビームアサルトライフルで制圧射撃を行い、碎輝を釘付けにする。
そして絶えずゲートを利用したショートワープの連続で、碎輝をひたすら翻弄し続ける。
「無論、後で助けるつもりだが――竜墜としだ!」
「メルクリウス!」
「了解! 『速足で駆ける者(ブーツオブヘルメース)』だよ!」
ミストが操る機械鎧の手甲からビーム刃が振るわれ、カシムの合図でメルクリウスは一気にマッハ31の最大速度でビーム鎌剣ハルペーで掻っ切る。
更に……。
「あたしの最強の斬撃を喰らいなさい!」
空亡が『人類の敵』と定めた者へ放つ空間斬撃。
三方向同時に降り注がれた斬撃は、碎輝の成長電流を貫いて空中へ巻き上げさせた。
「そ、そうだ! その意気だ、猟兵! 俺を乗り越えろーッ!」
「弱音を吐かず、なおも成長を呼びかけるその態度……敬意を表して、今、倒します!」
ビスマスはドライバーの必殺ギミックを発動させる。
『Final Namerou Hearts……!』
謎の電子音声は必殺の印!
さんが焼き型鎧装の一部が展開し、中から巨大な包丁めいた斬馬刀が出現!
剣身には、バーガー型爆弾が装着されている!
「史上最弱から史上最強にレベルアップし続ける……容姿が正統派な割には相当アクが強いですね。ですが、今日の最強は、このわたしです!」
ビスマスは碎輝へ駆け寄る。
エビ型マイクロプラズマグレネード『ジュリンプル・グレネドフォート』と自身のアームドフォートを乱射しながら、爆弾を斬撃ごと叩き付けて起爆させた。
「山・河・爆・斬!」
碎輝の身体が爆ぜ、黒い煙を上げながら地面に叩き付けられた。
「がハッ!?」
遂に碎輝が膝を付く。それでも……。
「まだ、まだ俺は成長する……!」
纏う黄金の電流が、盛り返し始めたではないか!
「いけません! これ以上は抑えられません……!」
シズホの焦燥感が声に滲む。
ならば、と蒼が幕引きの為に選んだ魔法カードは……。
「虹色の絶対零度の水流を圧縮し、放つは輝く宝玉の弾幕。全てを凍て付かせ、浄化します! 虹水宝玉『ネオンアクアストライク』ッ! 超弾幕です!」
七色に煌めく宝玉を、眷属の狛犬達と共に乱射する蒼。
竜神親分を完全包囲した宝玉から絶対零度の超高圧水流が噴出すれば、四方八方からの水圧と瞬間冷凍が碎輝を襲う!
「……聖なる光と氷水は、内包する骸魂だけを凍て付かせるでしょう」
碎輝は全身を真っ白な霜で覆われてしまい、完全な氷像へ化してしまった。
だが、中から声が聞こえてくる……。
「見事だ、猟兵! 俺の負けだ……! 取り込まれた骸魂も破壊された! 俺のオブリビオンとしての力も失われた。つまり……『分体の俺は、このまま凍り付く』んだがな?」
だが、と碎輝は言葉を継ぐ。
「すべて終わったら、また成長して、この氷を溶かしてみせる! そして本体と合流する! これで『虞(おそれ)』がかなり削れたはずだ! あとは頼んだ、猟兵……!」
碎輝は氷の中で眠りに就いた。
猟兵達は、彼の覚悟を己の胸に刻み、次なる戦場へと赴くのだった……。
「いや、凍り付いたら、あいつの涙を採取できないじゃないですか!」
『ご主人サマ、ドンマイ☆』
ただ一人、自称天才魔術盗賊の少年が悲嘆に暮れていた事は、また別の話である。
成功
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