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大祓百鬼夜行㉒〜ずっと猟兵のターン！

作者：唐揚げ

●グリモアベース：予知者、クイン・クェンビー
「ねえみんな、デュエリストブレイドっていうカードゲームは知ってる？」
　藪から棒な台詞だが、どうやらこれが予知に関係しているらしい。
「実はこれ、妖怪たちもハマっちゃうぐらいめちゃくちゃ面白いんだって！
　それでね、新し親分直属のオブリビオンが、専用の決闘場を作り出したんだ。
　相手はデュエリストブレイドの複雑なゲーム内容を、完全に把握してるんだよ！
　だからみんなには、同じカードゲームでこのオブリビオンをやっつけてほしいの！」
　と、ここまではまあまともな話である。が……。
「え？　肝心のルール？　うーんとね、クインには全然わかんなかった！
　あ、もしルールがわかんなくてもね、イカサマしちゃえば問題ないよ！」
　仮にもヒーローとは思えぬイカサマ推奨発言が飛び出す始末。

　実際のところ、デュエリストブレイドはめちゃくちゃ複雑なゲームだ。
　なので、古今東西のTCGにあるようなルールはだいたい存在している。
　そしてユーベルコードでイカサマをしても、バレなければ問題はない。
　なお山札は事情で配布される。64枚1セット、挑戦者の思い通りのデッキが。
「ゲームで勝ちさえすれば、オブリビオンはやっつけられるよ。
　新し親分の居所に辿り着くためにも、絶対に敗けないでね、みんな！」
　クインはカードを人差し指と中指の間に挟み、ポーズを取った。
　なお、こいつはアホなので、カードゲームはトランプぐらいしかわからない。

第1章 冒険 『デュエルしようぜ！』

POW   :    魂のカードでデュエル！ SPD   :    速攻デッキでデュエル！ WIZ   :    コンボデッキでデュエル！ 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●カードたちの声が、お前には聞こえないのか！？
「とれーでぃんぐかーどげーむとやらに造詣は深くないのだが……」
　天御鏡・百々はその喋り方からしてわかるように、古風なヤドリガミだ。
　多分、カードというか札遊びというと花札とかそんな感じになりそうなやつだ。
　が、百々にはなにやら作戦があるようだ。それは一体……？
「ほう……そんな浅さで、この私に挑むつもりか」
　一方そんな百々と戦うのは、"決闘者"のオーラを放つ眼光鋭いオブリビオンだ。
「デュエリストブレイドは、初心者がビギナーズラックで勝てるほど甘くはない！」
「びぎなーずらっくになど頼りはせぬ。さあ、始めようではないか」
「その自信を粉々に打ち砕いてやる……デュエル！」
「すたーとだ！！」
　ｷﾝｺｰﾝ!　とどこかから鳴り響く鐘！　デュエル開始の合図だ！

（……さて、どうやら相手は、我の挑発に乗せられて気づいて要らぬようだ）
　実はこのやりとりの間、百々はあるユーベルコードを使っていた。
『神は万物に宿る』……自身の周囲の無機物を付喪神に変えるという術式だ。
　彼女が付喪神化したのは、自分のデッキのカードたちだけではない。
（オブリビオンよ……汝のかーどたちも、すでに我に声を届けているぞ）
　なんと、敵が用意したデッキのカードまで、残さず付喪神化していたのだ！
「俺のターン！　まずは一枚のカードを場に伏せ、さらにモンスターを防御表示でプレイ！」
　デュエリストブレイドには多彩なカード種類がある。そのひとつが「罠」だ。
　相手が攻撃や魔法カードなど、特定の行動を取った瞬間に発動できる。
　そしてカウンターあるいはインタラプトとして、相手の行動を潰すのが罠カードだ。
　さらに防御表示されたカードは、アタックするか相手の攻撃を受け止めるかするまで表表示にはならない。
　つまり普通であれば、どんなカードかを警戒することになるのだが……。
「……なるほど。汝の戦術は読めたぞ」
「何……？」
　オブリビオンは百々の言葉を訝しむ。
「ふん、ハッタリか？　面白い、ならば試してやる。ターンエンドだ」
　オブリビオンが伏せた罠カードは、「要塞潰しのゴブリンたち」というカードだ。
　これは「相手がアタックを行わないでターンを終える」ことで発動する。
　カードの効果は「相手がバトルフィールドに配置したモンスターカードをすべて破壊する」というもの。
　つまり相手が罠カードを警戒して様子見すると、せっかく充実させた場が根こそぎ破壊されてしまうのである。
　加えて防御表示で置かれたモンスターカードは「狡猾な大猪」。
　相手のバトルフィールドに一切のモンスターカードがないとき、大猪は防御表示から即座に攻撃表示に変わって強烈なアタックを仕掛けられる。
　しかもこの時、相手が罠や魔法カードを設置していても、大猪は「滅殺」の特性でそれを無視してしまう！
（生半可なアタックを仕掛けてくれば、大猪のパワーで潰す。だが様子見すれば、このコンボで場を空っぽにして叩き潰してやるぞ）
　余裕綽々な態度は、オブリビオンのブラフなのだ。対して百々は！？
「我のたーん！　まず、「千里眼の妖精」をぷれいし、防御表示のかーどを一枚おーぷんさせる！」
「なんだと……！？」
　百々が手札から出したのは、まさに大猪のようなアンブッシュタイプに突き刺さる妖精カードだ！　モンスターとしてのパワーは皆無だが効果は強烈。
　防御表示のままカードを表にさせることで、大猪の効果を潰せるメタカードである。
「そうはさせるか！　カウンタータイミングで「魔除けの木飾り」をプレ……」
「それでもんすたーの効果を打ち消し、だな？」
「！？」
　虎の子に用意していた打ち消しカードを先読みされ、オブリビオンは戦慄した。
　魔除けの木飾りは特殊な打ち消しカードであり、同じ打ち消し系のカードの多くに耐性を持つ。
　ゆえに早々潰されることはないとたかをくくっていたが……しかし！
「そこで我もさらにかーどをぷれいだ。「借り物好きのぴくしー」！」
「……そ、それは！」
「魔除けの木飾りは「たりすまん」種別のかーど。「借り物好きのぴくしー」が奪い取れる種別のかーど……そうだな？」
　ごくごく一部のアイテムカードに対して強烈な特効を持つ妖精カードだ！
　小悪魔めいた笑みを浮かべたピクシーが、古めかしい木飾りを奪い取ってしまう！
　そして打ち消しがなくなったことにより、千里眼の妖精の効果は通った。
　カードの裏側に身を隠していた大猪が現れ、アンブッシュ効果は無効化……！
「これにて憂いはなくなった。速撃効果を持つ「勇敢なる大鷲」をぷれい！
　速撃の効果により、ぷれいした瞬間に大鷲は攻撃を行う。罠は発動すまい？」
「き、貴様……！　初心者ではないのか！？」
　大鷲のパワーは低いものの、これでアタックは成立した。
「要塞殺しのゴブリンたち」は発動トリガーを失う。完全に百々が有利だ！
「我は嘘など言っておらぬ。だが、かーどたちが我に教えてくれるのだ。
　どう戦えばよいか、汝のかーどがどんな力を持つのか……すべてをな」
「か、カードの声など、そんなオカルトがありえるか！」
「妖怪の汝がそんなことを言うのか……」
　ツッコミはさておき、百々にはカードたちの声が比喩ではなく聞こえている。
　ついでに言うとドローもいじっている！　あからさまなイカサマだが、カードと心を通じあわせているのでヨシ！　正義だ！
「かーどの声が聞こえぬ汝では、我には勝てぬぞ！」
「カードに意志などない！　そんな非科学的なものを信じるかっ！！」
「骸魂に喰われた汝がそんなこを言うのか……」
　百々は若干困惑していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●ずっと猟兵のターン！
　デュエリストブレイドには、多彩な特殊デュエルルールも存在する。
　一切の制限なくありとあらゆるカードをぶち込める狂気のルールや、
　通常とは違った効果を持つカードで相手の意表を突き合うルール、
　はたまたその場でパックを剥いてデッキを作るドラフトルールや、
　ごく一部の指定されたカードしか使えないリミテッドルールなどである。
　その中に、「総力戦」と呼ばれる特殊なルールがある。
　これはひとりのプレイヤーを相手にふたり以上のプレイヤーがチームを組み、
　多数対単体という一見有利に見える状況でデュエルを行うものだ。
　しかしこの時、単体……ボスと呼ばれる……側は強力なアドバンテージを得る。
　総力戦独自のカードの使用制限撤廃や、莫大なライフポイント。
　さらにカードコストの踏み倒し、一部カードの効果の大幅強化などなど。
　なによりもチーム側の連携がしっかりしていなければ、逆に足を引っ張りあってしまうという、まさに仲間同士のコンビネーションが試されるルールなのだ！

「フハハハハハ！！　俺のターン！　「黄金超魔神ジャジャーブ」の効果発動！
　ジャジャーブのアタックはフィールド全体に作用し、かつパワーが劣るモンスターカードすべての特殊効果を無視する！　そして……二段攻撃だ！！」
「くっ……！　せっかく並べたモンスターが……！」
「……奴のこれまでのこんぼは、このためのものであったか」
　兎乃・零時、そして朱赫七・カムイのふたりは、敵の攻撃に歯噛みした。
　全身から神々しい輝きを放つ超魔神が六つの腕を広げると、頭部が激しく発光。
　溢れ出すオーラが、零時のモンスター軍団を一撃で吹き飛ばしてしまう！
　かろうじて耐えられたのは、効果ではなく「神」種別によりジャジャーブの攻撃に耐性を持っていた、カムイの『厄災の神』だけだ……！
「ふん、一匹だけ生き残ったか。まあいい、ダイレクトアタックは成立する。
　さあ、この愚か者どもに裁きをくだせジャジャーブよ！　二段攻撃ッ！！」
　発光するジャジャーブは片足を上げ、ズズン！！　とフィールドをストンプした。
　まさしく超越者の愉悦……！　その一歩はふたりにとって強烈な一撃だ！
　黄金のオーラが迸り、ふたりのライフをほとんど削り取ってしまう……！
「ほう、生き延びたか。まあいい、貴様らにはもう何も出来まい」
　オブリビオンはにやりと笑い、ターンエンドを宣言した。

　ジャジャーブはパワーもタフネスも脅威的、しかも多くのカード効果を無効化する「神」かつ「魔」の種別を持つため、生半可な除去カードでは無効化されてしまう。
　加えて先のモンスター破壊効果により、いくら防御用にモンスターを並べても無意味……！
「……でゅえる、なるものは初めてだ。だが、これはなかなか面白い」
　しかしその窮地にあって、カムイは不敵に笑っていた。
「そうだろう？　レイジよ。私たちのこんびねーしょんはここからだ」
「ああ……もちろんだ！　ライフなんて、もとからくれてやるつもりだったぜ！」
　零時はその言葉に頷き、山札に手を伸ばす。
「諦めの悪い奴らだ。いまさらカードを引いたところで何になる！」
「意味はあるさ――この一枚に、俺様はすべてを賭けるッ！」
　そして零時が引いたカードは……なんと、彼に極めて酷似したもの！
「来たな……一発逆転の切り札！　行くぜ、カムイ！」
「任せよレイジ。まず私は、唯一残った『厄災の神』を墓地に送る！」
「！？　せっかくの神種別のモンスターを自らトラッシュしただと……？」
　モンスターで耐えるつもりなら、自らモンスターを減らすなど愚の骨頂。
　だがカムイは、その効果によって手札から一枚のカードを出した！
「永続加護カード、『巫女の祈り』を発動！　この効果により、『厄災の神』は『約倖の神』へと転生、墓地から舞い戻る！」
「何ッ！？」
「さらにここで効果『倖約ノ言祝』発動……私たちには幸福が巡り、汝には神罰を結ぶ！」
　特殊なバフ効果により、零時とカムイは同時に多数の装備魔法カードを発動！
　神は『完全体禍津神』へと至り、ジャジャーブの威風を相殺した！
「幸福効果により速攻プレイした『見習い魔術師！』に、『藍玉の杖・改』を装備させ、『紙兎パル』と融合させるぜ！」
「い、一ターンの間にプレイと融合を同時に行うだと……！？」
「闇夜を越え、夜明けをもたらせ！　『勇気の魔術師ラビットジュエル』！！」
　召喚されたカードの効果により、零時のライフポイントは1に。
　だがラビットジュエルと禍津神の攻撃力は大幅に強化される。そう、ジャジャーブをはるかに上回るほどに！
「畳み掛けるよレイジ。――厄災に沈むがいい！」
「おうとも！　ぶちかますぜカムイ！　これが――」
　ふたつのカードの魔力が高まる！　これこそ総力戦独自の最強タッグ攻撃！
「「――共鳴撃衝（コラボシンクロ）ッッ！！！」」
「バ、バカなあああああっ！？」
　意趣返しの二段攻撃により、ジャジャーブ破壊！　増幅された攻撃によりオブリビオンのライフポイントは一瞬で0に！
　ふたりのコンビネーションは、黄金の魔神を打ち倒し骸魂をも滅ぼしたのだ！

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年05月26日