●
親分の一人、碎輝が目を醒ました。
彼は最弱であると声高に叫ぶ。戦闘中に際限なく「成長」し続けるという。だからこそ、目醒めた直後、事態を把握した。
鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)は両の紺瞳に瞼を下ろし、溜息にも似た吐息をひとつ。
「えーとな、なんだっけ、【超電竜撃滅形態】だっけか?」
膨大な虞を身に纏い、一撃必殺の威力でもって猟兵へと牙を剥く。渦巻く虞の影響は碎輝だけではなく、相対した猟兵にまでおよび、窮地でなくとも「真の姿」へと変じることができる。
無邪気にして、凶悪。
ポジティブにして、危険。
一撃必殺と大仰ではあるが、それほどの力を有している。
【撃滅放電槍】の破壊力は凄絶の一言に尽きるだろうし、【サンダーエンブレム】の猛攻に耐えるのは至難を極め、【滅びの光】たるドラゴンブレスは、その名の通り、すべてを焼き滅ぼすだろう。
絶対に先手を取られる――過去の激戦を思い返し、口元を苦く歪めた――ことはないし、一撃必中というわけでもない。しかし碎輝とて本気でしかけてくる。生半可な覚悟で挑めば、返り討ちに遭う。無策では歯も立つまい。
「そんなんシャレになんねえだろ」
そうして、碎輝はこの戦いの「仕組み」を理解している。
大祓骸魂を斃すために、この戦いは必要だ。必ず彼に勝たなければならない。
「勝機? ンなもん、おめえらに俺がなにを言えって?」
誉人の掌上に蒼の光が、まあるく収斂していく。真中で咲くのは一輪のアネモネ。
「今まで散々な戦いを抜けてきたおめえらだ。【一撃必殺】ぐらいわけねえだろ」
彼は期待を込めて、頬に笑みを刻む。
碎輝が成長して手に負えなくなる前に、渾身の一発を叩き込んで倒す――実に単純明快。思わず笑ってしまうほどに。
「頼んだぜ」
グリモアが繋がる――紫電渦巻く、最弱封印の祠の前。
●竜神親分『碎輝』
カクリヨファンタズム最深層にある祠に封印されていたのは、最弱と謂われる竜神。
だが彼は「成長」して、事態を瞬時に把握し理解し、承諾した。
「いいじゃないか、燃えてきたぜ!」
勝気に笑む。戦意はぎらりと燃えて、煌然と紫電を奔らせた。
「俺の名は『碎輝』。親分なんて呼ばれちゃいるが、俺は生まれたばかりの竜神にも負ける、自他ともに認める最弱の竜神だ! 他の親分からも話は聞いているんだろう?」
彼は答えは待たない。
「無限に成長する俺と戦い、そして俺を超えてくれ!」
碎輝の纏う紫電は、彼の気迫に呼応するよう勢いよく爆ぜ、
「昨日より今日、今日より明日……お前達は、今よりもっと強くなれる。無論、俺よりもずっと……!!」
眩い雷の小花は、満開に咲き乱れる。
「さあこい、猟兵!」
藤野キワミ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「大祓百鬼夜行」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
====================
プレイングボーナス……真の姿を晒して戦う(🔴は不要)。
====================
当シナリオは「やや難」につき、難易度相当の判定になります。
藤野キワミです。
よろしくお願いします。
▼プレイング受付期間
・【OP公開直後】より受け付け開始。断章はありません。
・完結優先。
・受付終了は当マスターページおよびシナリオタグ、ツイッター(@kFujino_tw6)にてお知らせします。
▼お願い
技能の使い方は明確にプレイングに記載してください。
プレイングの採用の仔細、ならびに同行プレイングのお願いはマスターページにて記載しています。
そちらをご一読ください。
それではみなさまのカッコいいプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『竜神親分『碎輝』超電竜撃滅形態』
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POW : 撃滅放電槍
【紫電を帯びた槍】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : サンダーエンブレム
【加速度的に数を増す紫電の放射】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 滅びの光
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【雷】属性の【瞬時に成長し、自ら増殖するドラゴンブレス】を、レベル×5mの直線上に放つ。
イラスト:108
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シル・ウィンディア
成長を続けているのは親分さんだけじゃないよ
わたしも…
ずっと限界を超えてやってきたんだからっ!
真の姿を開放!2対の光の翼が発現し、体は青白いオーラで覆われています
それじゃ行くよっ!
【空中機動】で跳び回っての【空中戦】でヒット&アウェイを仕掛けるよ
遠距離は精霊電磁砲、近接は光刃剣と精霊剣の二刀流で切り付けるね
敵攻撃は【第六感】で殺気を感じて
敵の動きを【見切り】【瞬間思考力】で回避か【オーラ防御】を最適に選択
攻撃・回避時から詠唱を途切れさせずに…
【多重詠唱】で術式を重ねて
【魔力溜め】で放出する魔力量を増加させ
【全力魔法】で【限界突破】の《指定UC》!
これが、わたしの限界突破の一撃だーっ!!
●
「さあこい、猟兵! 成長する俺を超えてみせてくれ!」
碎輝は豪気に笑って、拳を握り固める。バチバチと雷花が迸って、シル・ウィンディア(f03964)の頬を掠めていく。
彼女の背には煌く双翼、その身は青白いオーラが包み、蒼瞳に力が漲る。
「成長を続けているのは親分さんだけじゃないよ。わたしも……ずっと限界を超えてやってきたんだからっ! それじゃ行くよっ!」
対の光翼が乱暴に空気を掻き混ぜ――瞬間、シルの躰はぶわりと浮かび上がり、一気に加速――手にした銀のロッドを振れば、光刃は目映く閃き雷花を切り裂いて、返す刃で碎輝へと肉薄――否、彼の操る槍は猛然と紫電を迸らせ、《光刃剣》を弾き返す。
「闇夜を照らす炎よ、」
瞬時に翼は空を打つ。詰めた距離を開けつつ、シルは《精霊電磁砲》へと魔力を装填――撃ち出すよりも速く碎輝は、シルとの距離を詰めてくる。
突き出されるのは、紫電を纏う槍。穂先はシルへと刺さる――ことはなく、《精霊剣・六源和導》の鎬地が受け止め、煌々と青白い光に包まれた。
「命育む水よ、」
シルの魔力は間欠泉の如く噴き上がり、徐々に、次第に、強大なものへと収斂。
詠唱に詠唱を重ね、術式はより強靱なものへ。それは、碎輝の猛攻の前に止まることはない。迫る彼の機微を敏感に感じ取れるほどに集中し、
「悠久を舞う風よ、」
繰り出される槍撃の悉くを凌いで躱す。
「逃げて躱して受けて! そうか、俺へ一撃を叩き込むための前準備か!」
一瞬の着地の後、軽やかに跳び上がって、紫電逆巻く閃槍――シルの詠唱はそれでも止まらない。
「母なる大地よ、」
「よしわかった、いいぜ、お前の全力と俺の全力、どちらが強いか勝負だ!」
大胆不敵に言い放って、碎輝は赤瞳を爛然と輝かせる。放出される紫電は、空気をひりつかせた。
「暁と宵を告げる光と闇よ、」
高まるシルの魔力は、無意識のリミッターをも壊して、溜まり続ける。青髪は光翼が混ぜる気流のせいで激しく乱れた。
「霹靂は天を裂き、地を揺らして、穿ち滅ぼす! 俺は最弱だ、そう、まだ弱い! だが!」
紫電を帯びた槍を地に刺す、雷電が四方に奔る――シルはそれを空中から見下ろし、
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
渾身の魔力が収斂して収束して、最頂点に到達する。
「滅びは、再生の始まりだ、そうしてまた強くなる!」
碎輝の息吹きが、放たれる――増殖し、溢れた力が地に落ちて、轟然と震撼、地響きは飛ぶシルの翼にも伝わる。
「俺を超えるより前に、燃えてくれるなよ! お前はもっともっと強くなるんだからな!」
碎輝の言葉とは裏腹に、なにもかもを滅ぼすような凶悪な光が、シルの目を焼く。
だが、シルの眼前に顕れ描かれる六芒陣もまた、赫然と輝き、解き放たれた。
「これが、わたしの限界突破の一撃だーっ!!」
空気の収束。光の暴発。熱波は肌を焼く。気流は乱れて、空中に留まることを困難にさせる。
「【ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト】!!」
二人の真中で、高められた力が真っ向から激突。一撃必殺を誇る碎輝のドラゴンブレスは、シルの極限まで高められた魔力と、抜かりなく込められたオーラの防壁によって、撃ち砕かれる。
「なに!?」
一瞬後、彼は蒼く煌く光に飲まれた。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
無限成長!
良いじゃない良いじゃない!
そんな相手とやり合えるのはいい教練になるね
さてとそれじゃあ
お互い本気で死合おうか!
●
真の姿…ね
とはいえ私はこの姿そのものが真の姿
ただ、処理能力と出力が上がるだけ
圧縮空間にアクセス、外装解凍
神器四刀流、行かせて貰うよ
先ずは『斬撃波』を4発、碎輝に放つ
どれか1発でも当たれば良いよ、それで『吹き飛ばし』て態勢を崩させる
そのタイミングで【Code:F.F】起動
高速移動で一気に接近
外装の腕が持つ剣で斬りかかりつつ、私は『エネルギー充填』
タイミングを見計らってエネルギー球を零距離からぶち込んで一撃で決める!
私も雷は得手の1つだからね
負ける訳にはいかないよ
アドリブ等歓迎
●
蒼い光に飲まれた一瞬、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、膨大な虞の影響を享受――その姿を真なる姿へと変じさせていた。
「圧縮空間にアクセス、外装解凍」
それでも彼女の見目になにやらの変化が起こることはない。ただ、処理能力と出力限界が向上するのみだが――それは、平時をはるかに上回る。
「それがお前の力か! そうして強くなるのか!」
楽しそうに笑った碎輝は、成長の為の破滅を撒き散らさんと、集中していく。瞬時に成長を繰り返し、増え続ける紫電纏うドラゴンブレスだ。
これが一撃必殺の大威力で打ち込まれると判っていても、玲とて高揚を隠さない。
二対の赤瞳の視線がぶつかり合って、一瞬の睨み合い――そうして、ふたりして同時に笑った。
碎輝と本気で戦えるのは、良い教練になる。玲にとっても、これを逃す手はない。無限に成長し続ける強敵に勝つ――いま、世界にとっても必要不可欠なことで、それを理解した碎輝も望んでいること。
本気で向かってくる。
「さあ、俺を超えてみせろよ、猟兵!」
「もちろん、お互い本気で死合おうか!」
抜刀し、両の手に一振りずつ神器を握る。
「神器四刀流、行かせて貰うよ」
「四刀流か、それは楽しみでしかねえな! 燃える!」
雷鳴は連鎖的に祠に轟き満ちていく。
紡がれ続ける成長を寿ぎ、飛躍を促す言葉はいよいよ呪詛じみてきて、玲は思わず苦笑した。
振り下ろせば、空を斬る――圧縮された空気は、凶暴な力を孕んで碎輝を裂かんと放たれた。
その、四陣。
すべての斬撃波が彼に届かずとも、ただの一度、彼に届けば隙が生まれる。果たして、碎輝は己の槍を横薙ぎに斬撃波を打ち据える――否、それは、玲の膨れ上がった力を内包した波動だ。インパクトの瞬間、碎輝の槍は大きく吹き飛ばされた。
驚きに目を瞠った。
【Code:F.F】が起動――さらなる力が解放されて、玲は一足の間に接敵、アームが持つ剣で斬りかかる。
「なるほど、だから四刀流! おもしれえ!」
紫電を凶悪に垂れ流す碎輝は、【滅びの光】を炸裂させる。
成長と増殖を繰り返す雷霆を孕むドラゴンブレスは、容赦なく玲へと迫る。
躱す間はない。
瞬時にエネルギーを充填――雷電が爆ぜる――神器で斬られようとも熄まない霹靂――刹那、鋭く限界まで踏み込んで高圧縮したエネルギー弾を碎輝へとぶち込む!
青白い雷花が咲いて、確かな手ごたえ。
彼はよろめき、一歩二歩と後退る。
「ははっ、なかなかどうして、……!」
玲が警戒を解くことはない。張り詰めた興奮の中で、
「私も雷は得手のひとつだからね。負ける訳にはいかないよ」
凛然と黒髪を掻き上げ、赤瞳を眇めて笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
【紫闇】
真の姿:ゴスロリ服に身を包み、金色の豊かな髪を三つ編みにした琥珀色の瞳を持つ少女
全身の至る所から刃を生やす事が出来る
フフ…この姿で魅夜と共闘するのは初めてね…
それでは、この美しい世界を舞台に踊りましょうか
UCを発動
無貌の人形達を召喚して親分さんの槍に対処
魅夜の結界で防げるように、私の人形達を向かってくる槍の盾にしましょう
こうすれば、私達の姿が見えにくくなるから、魅夜の残像もより効果的に写るでしょうね
攻撃を防ぎ、親分さんに隙が出来たら再度召喚した人形達と切り込み
広い攻撃範囲を持つ人形達の鉤爪と私の刃で攻撃を行うわ
先手を譲っていただいてありがとう、魅夜
さぁ、二人で竜神を超えましょうか
黒城・魅夜
【紫闇】
キリカさんとは親友ですが真の姿で共に戦うのは初めてですね
ふふ、お可愛らしいですよ
悪夢の中の希望という矛盾した本性を表す半仮面と
真紅の闇の中に半ば溶け出した半概念存在
それが私の真の姿です
親分さんの能力は単に初撃を避ければいいだけの話
「結界」を張って防ぎましょう
もちろん親分さんほどの方の槍、並みの結界では防ぎきれないでしょう
しかし一瞬でも力が拮抗した瞬間に「衝撃波」を放って目をくらませ
その隙に「オーラ」を展開し「残像」を投影
親分さんの攻撃をそちらへ「誘惑」します
さあ今ですよキリカさん、攻撃を
私も続きます
私の真の姿が示すもう一つの意味
それはすべての神の天敵ということです
竜神も含めてね、ふふ
●
友ではあるが、真なる姿をみせたことはなかった。キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は、高揚を滲ませ笑う。
「この姿で魅夜と共闘するのは初めてね……」
濃紫のゴシックロリータのドレスの裾を翻せば、金糸が如き豊かな髪も共に揺れる。緩く編まれた髪は、碎輝から発露する紫電を反射し、キリカの琥珀色の双眸をいっそう煌かせた。
「お可愛らしいですよ」
半仮面の奥で、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は艶然と笑む。
悪夢の中の希望という矛盾した本性を表すハーフマスクに、真紅が溶ける闇に在る半概念――魅夜は、蠱惑的に露出させた己の肌に指先を当てる。
「この姿で共に戦うのは初めてですね。楽しみでなりません」
「それでは、この美しい世界を舞台に踊りましょうか」
ふたりの視線が、碎輝へ絡む。赫々と好戦的に輝く瞳は、ふたりをしっかと見据えていた。
痩躯から漲る烈気は紫電を発露させて、固めた拳から雷花は激しく咲き乱れる。その姿、傷を負ってなお凛呼として強靱だ。
「ふたりとも強そうだ! 俺も負けてらんねえな!」
雷電が垂れる手は槍を握る――更に紫電は烈しく明滅した。
(「親分さんほどの方の槍撃、並みの結界では防ぎきれないでしょう――でも、」)
魅夜は、素早く結界を張り巡らせる。これで防ぎきれるとは思っていない。一撃必殺の威力は脅威そのものだ。躱してしまえばどうということはない。
躱すために策を練る。
「親分さん、呪われた人形達と一緒に最後まで踊りましょう」
「ダンスはあいにく専門外だ!」
剛力なる紫電帯びる槍を突き込まんと間合いを詰めてくる。
【désespoir】――無貌の人形たちは、碎輝との間に躍り出る。人形の妨害と、魅夜の結界に、碎輝は浮かべたままの笑みを更に深める。
「それで防いだつもりか!」
凄烈な雷撃が落ちる。大地は俄かに震撼し、人形が一体斬り伏せられ、魅夜へ迫る鋒鋩の雷花――爆ぜる一瞬、攻防の力は拮抗、その刹那、魅夜は不視の力の奔流を叩き込む。唐突な衝撃波に、碎輝は驚き、目を眇めた。
魅夜から発露するオーラは鏡のように、虚ろな彼女の姿を映していく。像を結んで揺らめいて。キリカに従う人形たちが、主らを隠すように盾となり、碎輝をいっそう惑わせる。
一瞬のうちに創り出されたトラップに、彼は果たして、声を上げて笑った。
「いいじゃねえか! その連携、見事なもんだ!」
獅子奮迅の勢いで人形を斬り伏せ、魅夜へと鋭い刺突――木っ端に砕けたのは、残像。
その衝撃は凄まじく、四方に散る落雷の凄絶さに、思わずキリカは瞠目し、余波で瓦解していく人形を見る。
ああ、一撃必殺とは、そういう力か――なるほど、あれは、ただではすまない。躱す他ない。
「さあ今ですよキリカさん、攻撃を」
魅夜の声が耳朶に滑る。
数秒を無駄にするところだった。絶望はいつも隣にある。キリカは体勢を低くして、再度人形を召喚する。それらの鋭く長い鉤爪が、一斉に襲いゆく。
「先手を譲っていただいてありがとう、魅夜」
人形の影に隠れるようにキリカは碎輝へと肉薄、その身から刃を生やして、彼の脚へと一閃。
「さぁ、ふたりで竜神を超えましょうか」
愛らしい姿とは裏腹に、力強い挑発を含んだ彼女の声音に、高揚を隠さず、肯く。
「キリカさんとなら、いかようにも」
続く魅夜は、鈎鎖を擲った。魔性の悪夢はするり心へと染み入る。
「親分さん、悪夢を見たことは?」
鎖に引き倒された彼の赤瞳が見上げてきて、言葉を口にする前に魅夜は艶然と笑んで続ける。
「今の私は、すべての神の天敵――竜神も含めて、ね」
命と引き換えに爆発的に膨れ上がった力は、操る鎖にも伝播――《呪いと絆》は、碎輝に絡みついた。
自由を絡めとられ動けぬ碎輝へと、キリカの刃が突き込まれる。確かな感触に、ぞくりと背が震える。
息を詰めて苦痛に耐え、拘束を振り払ってふたりから距離をとった碎輝から、ぼたりと血が落ちた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
香神乃・饗
真の姿は今の姿と変わらないっす
新しい主―誉人が、新しい真の姿を定義したっす
でも力はちゃーんとマシマシっす!
明日に進むのは俺も好きっす!きょうを越えて!力比べっす!
香神写しで武器複製
グラップルで近づき両手の苦無で殴り
時々周りから苦無で攻め
集中力削ぎフェイントしやすい地形を作るっす
サンダーエンブレムは苦無に剛糸を括り付け、糸の先を地に垂らし地形を利用して地に雷を逃して回避するっす
また、苦無を集合させて俺より大きい塊にして盾受けで雷を逸らすよう誘導するっす
電気を通し易い大きい物に引き寄せられるんじゃないっすか
苦無に括った剛糸の先が地面に向うとフェイントをかけこっそり碎輝に括付け暗殺っす
雷をお返しっす
●
香神乃・饗(東風・f00169)は、いつもの紅半纏を羽織り、梅鉢紋を背負う。燃える梅花の刻まれた苦無を両の手に握り締め、地下足袋で地をすれば、足裏に砂利が刺さる。
彼の姿は虞の影響を受けてなお変わらない――否、その姿が饗の真なる姿だ。
新たな主人が定義してくれた大切な姿だ。
『あの時』もらった言葉が、主の――誉人の声が饗の中で息づいている。だから見目に変化はなくとも、内に湧き上がる力は、万倍に漲り滾る。
「果敢じゃねえか! いいな、燃えるぜ! かかってこいよ猟兵、俺を超えて、明日をも超えてみせろ!」
碎輝の言葉に、肯く。
「明日へと進むのは俺も好きっす。きょうを超えて――」
この身に滾る力は、あるじが望んだもの――この握る手に溜まる力は、あるじがくれたものだ。
「力比べっす!」
どおっと雷霆が地を揺るがす。煌々と燃え盛るような雷撃が、碎輝の闘気に呼応するように落ちた。
傷は痛まないのか。傷まみれでなお快活に笑っている姿に、饗は奥歯を食いしばる。
九十余にコピーされた苦無は、ずらりと饗の周囲に展開。その手にあるのは、オリジナルの苦無二本――小細工はなし――否、小細工だらけの突進。
「きたきたきた! 俺も負けてらんねえ!」
煌然と碎輝の周囲に紫の雷紋が展開される。凄絶なエネルギーを内包して、一撃の内に饗を沈めてしまえるほどの威力が、そこで猛る。
あれに撃たれれば、ひとたまりもなく沈むのは、火を見るより明らかだ。
できる限り避けて、碎輝へと一発打ち込むことが望ましいか――饗はふんと鼻を鳴らす。
「厄介っすね!」
手足のように繰る苦無のすべては碎輝の集中力を削ぐための布石。
しかし、雷撃は容赦なく襲い来る。加速度的に増える放電撃から身を護るために、苦無を盾にする。広がるそれは、まさに傘――苦無の先に括り付けた剛糸は、鋲ごと地面へと突き刺す。
「これで、マシになるっすか!」
雷撃は加速し続けて止まることをしらないが、集めた苦無の盾は、避雷針となって饗を護り続け、地に刺した剛糸はアース線の役割を成す。
それでも肌は痺れ、引き攣るように痛む。
「もっとだ猟兵! そんなものじゃないだろう!」
「それが望みなら叶えてやるっす!」
盾に使っていない苦無が碎輝の死角から飛来、それを目の端でとらえた彼は、難なくひらりと回避すれども、一瞬饗から目を離した隙を見逃さなかった。
更に苦無を擲ち、大きく体勢を崩させる――彼の足首に剛糸が巻き付いた。
「なっ」
剛糸の先に括り付けてある苦無が、加速度的に数を増し放たれる紫の雷霆目掛けて奔れば、激しい光と音の奔流が響き渡る。
今まで地面へと流し逃がしていた雷電が、碎輝へと落ちたのだ。
「雷をお返しっす」
大成功
🔵🔵🔵
榊・霊爾
※真の姿=獣要素の強い八咫烏型鳥人
愚図っている暇はない、即終わらせる
この姿になるって事は仕事が相当なデスマーチって事だ
威力が延々と上がる攻撃、当たらなければいい
超加速には超加速で対応する
【残像】のデコイをばら撒きつつ、【見切り】で避ける
当たりそうなら白鶺鴒の【受け流し】で弾道をズずらして回避する
一瞬の隙を突いて一気に畳み込む
【集中力】を高め、『先触』の発動体勢に入る
攻撃を全て避けつつ、【ダッシュ】で一気に距離を詰め、
【存在感】を消した瞬間、鶚で【不意打ち】抜刀する
斬り捨てるのは骸魂だけさ
●
猛然たる雷光の濁流の中、榊・霊爾(あなたの隣の榊不動産・f31608)は、碎輝の纏う膨大な虞を受けて、その身を八咫烏へと変じていく。
(「この姿になるって事は、相当なデスマーチって事だ――」)
これほどの虞に身を巻かれた碎輝は、いかな力の持ち主か。あれを最弱のというのか。
否。
霊爾はかぶりを振って思考を散らす。
あれやこれやと愚図っているひまはない。碎輝が「成長」して手に負えなくなる前に決着をつけなければならない。
「終わらせる」
「……おお、おお! そうか!」
凄絶な雷電を返され打ち据えられてなお嬉しそうに、赤瞳を煌かせた碎輝は、霊爾を見つめた。
「俺だって成長する、お前は俺よりももっと強くならなきゃいけねえ!」
傷にまみれた碎輝は、その傷をものともせず饒舌に奮起する。
【サンダーエンブレム】が煌々と紫電を撒き散らしながら、加速度的に増殖。空気は爆ぜて、雷撃のすべては霊爾へと向かってくる。
霊爾の手が、腰に差してある刀の柄に触れる。
一刀で斬り伏せる。
距離を詰める。
思い描く軌跡は、高い集中の向こうで、成就する。
鯉口を切る――【抜刀】のモーションは多くない。霊爾の瞳は爛然たる碎輝を映し続ける。
疾る電撃は紫の残滓を振り巻いて、霊爾へと刺さる――否、それは歪んで消えた。
揺らめく残像が、そこここにあって、碎輝を惑わせる。赤瞳は楽し気に、それでもほんの少し尖りを含んで光った。
もはや止まらない雷撃は、加速度的に爆音に似た雷鳴を轟かせて、霊爾を狙い撃つ――抜き放たれた《鶚》ではなく、《白鶺鴒》。躱しきれなかった雷砲撃の軌道を僅かに反発させるよう逸らした。纏わりつく雷電を払って納刀。霊爾の集中は途切れない。
攻撃をすべて避ける気概は、研ぎ澄まされて――デコイにかかる雷撃を横目に、それでも肩に刺さる衝撃は、凄まじい余波――寸でのところで見切り躱す集中力は、息を詰めるような緊張の中で発揮される。
霊爾の目に映り続けるは、傷にまみれてなお立ち、喜色満面に笑む碎輝。
雷電の猛攻を抜けた瞬間、ちょうど【一分】――ダッシュで駆け、間合いは《鶚》のそれ。放たれた超速の居合は、碎輝の腹へと閃く。
「斬り捨てるのは骸魂だけさ」
一瞬の静寂のうちに、霊爾の声は静かにそれでもはっきりと響いた。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
これまでの親分も強敵ばかりだったが、竜神親分も負けず劣らずの強敵というか……。だが、勿論諦めるつもりはない。今の俺の全力であんたと戦おう
神刀の拘束を解いて、清浄なる神気を身に纏う事で真の姿へと変身(IC参照)
ちょっとした会話の間にも相手を油断なく見据える。碎輝の言動、性格、得物に使うUC。それら全てを見極めて――奥義【無極】
今の碎輝に対して有効な剣術、即ち矢継ぎ早の刀と斬撃波による連続攻撃で詠唱する余裕を与えない
碎輝が振るう槍は受け流し、放たれた雷は切り払って無力化しつつも即座にカウンター
相手に対応した剣技をその場で生み出す、というのはある意味あんたの進化に近いと言っていいかもしれないな
●
「これまでの親分も強敵ばかりだったが、竜神親分も負けず劣らずの強敵というか……」
碎輝のポジティブで、熱血な言動に、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、感心したように呟く。
それだけ傷にまみれても、成長を続け強く更に強く、純粋に力を求めて、強大になっていく。
強敵というか、難敵というべきか――否。なんであろうと鏡介が臆することはない。
「まだまだ! 見ろ、俺はこうしてまだ立ってるぜ、猟兵! なら、俺はまだまだ強くなれる。今日よりも明日、今この時よりも、一秒先だって、俺は成長をとめてやらねえ!」
「俺も諦めるつもりは毛頭ない。今の俺の全力であんたと戦おう」
挑発的に笑む碎輝は、鏡介の抜き放つ《神刀》を見つめる。
《神刀》の拘束は解かれる。白鞘から現れるのは妖しいまでに美しい刃紋――清浄なる神気を身に纏い、鏡介は碎輝を睨み据える。
心は不思議と凪ぐ。
碎輝の躰は傷にまみれていてなお、彼の烈気は衰えないし、紡がれる言葉は、鏡介の成長を心から望み、己の成長を歓ぶ言の葉なれど。
それを鏡介は聞き流す。
いま、出来得る最善の一手は、彼の虞を祓うこと――碎輝とのおしゃべりに興じている時間が惜しい。
油断なく見据えるのは、碎輝の言動に隠される隙、億る性格、解放のときを待ち侘びる雷電の威力。
間断なく放たれ、凄絶な威力で以て鏡介を焼き切るだろう雷霆は、紫に明滅する。
「俺はまだまだ成長する! お前は、俺を超えていかなきゃならねえ! もっと強くなってくれよ!」
「言われなくても、なってやるさ」
抜き身の《無仭》と構え、巡らせ続けた思考は、ひとつの解へと辿りつく。
「こい!」
瞬間、けたたましい雷鳴が耳を劈く。ドラゴンブレスが容赦なく鏡介へと放たれ、迫りくる。
「……――奥義」
現状、彼に対して有効な型、即ち、斬閃の応酬と斬撃波による矢継ぎ早な連続攻撃。攻勢に転じられぬように攻め続けること――碎輝にこれ以上の言霊を吐かせない。
接近を嫌がった碎輝の槍の間合いを抉じ開ける。炯眼は一分の隙も見逃さない。強烈な刺突、苛烈な薙ぎ、斬り上げ、すべてに雷撃が纏わりついている。斬り結ぶたびに痺れるような感覚――しかし、鏡介が臆することはない。
一直線に向かってくる雷撃を斬撃波で打ち払い、返す刀で斬り上げれば、槍は大きく撥ね上げられた。
烈声が迸る。
疾り抜け、擦れ違いざまに斬りつける。
「くっ、」
「……相手に対応した剣技をその場で生み出す、というのはある意味あんたの進化に近いと言っていいかもしれないな」
猛り狂う雷撃の嵐が熄む。
息をつめて衝撃をやり過ごす碎輝の背を見つめ、鏡介は、それでも気を張り詰めさせたまま、刀を構え直した。
大成功
🔵🔵🔵
護堂・結城
理解早すぎだろ。まぁそれでこそ親分か
他の竜神は見たことないし知らんけど、あんたも確かに強いわ
【POW】
真の姿は烏天狗もどきを使用
それじゃ、外道でなくとも全力で行くぜ
「我が身は毒水纏う氷烏なれば」
氷牙を速度を殺さない小太刀に変化し、UCを発動して暴風を纏わせる
「まっすぐ行って叩き切る…行くぞ」
片手に緑月を構え、雷の弾幕を作り紫電を誘導しながら突進
槍は緑月で弾き、更に前進、射程圏内に入ったら氷牙を大剣に変化させる
怪力任せに切断・貫通・風の属性攻撃を載せ、防御ごと切り裂けと早業で斬撃波を放つぞ
「一撃で決めないと更に成長とか、洒落にならんなほんとに」
…次は命のかからねぇとこで手合わせ願いたいもんだ
●
現状を把握して理解してみせた、並みはずれた「成長」に護堂・結城(雪見九尾・f00944)は、
「いや、理解早すぎだろ……まぁ、それでこそ親分か」
渦巻く虞の影響で、烏天狗のような躰へと変じていく最中に、口の中でごちた。
カクリヨファンタズムにいる四人の親分の一角たる碎輝だ――ともあれ、他の竜神は見たことはなく、よくは知らない結城だが、対峙してみて彼の強さを痛感する。
これまで凄まじい力を打ち据えられてきたというのに、彼の烈気は衰えていない。絶望もしていない。
「確かに強え」
「お前も強くなるんだ、今から! 俺を超えて! さらに強く!」
力強く笑む碎輝は、結城の言うところの外道ではないが、やらねばならない。
全力を賭して、戦わねば結城が落とされる。
お供竜の氷牙の姿は、小太刀へと変わって、颶風を巻き起こす。
「我が身は毒水纏う氷烏なれば――その身を喰らう牙であり、万象斬り断つ颶風の獄へ堕とす外道なり!」
翡翠の翼が暴風をとらえ推進力を得、携える《緑月》は、碎輝の手数を奪う雷撃を放ち続ける。
「まっすぐ行って叩き切る……行くぞ、氷牙ッ」
強く地を蹴って、鬼人の如き足捌きと、繰り出される槍撃の只中に驀地に駆けこむ。
「俺の一撃を受けてみてくれよ! さあこい、猟兵!」
繰り出される槍は、絶え間なく紫電を帯びて、結城へ迫る――鋒鋩に雷花が咲き乱れ、皮膚に花弁が触れる――弾ける熱は、刻み込んだ凄まじい笑みに覆い隠される。寸でのところで躱し、高速で斬り上げた槍をいなしたのは、《緑月》――烈しい衝突音と電花が舞って、結城はその場でくるりとステップ。碎輝の懐へと入り込む。
氷牙を掴む手に力を込めれば、小太刀から大剣へと変じる――結城の思うままの姿で、氷牙を一閃。
一撃で決めないと更に成長する碎輝を止める術は、実に単純明快。それでいて、骨が折れる。
凄まじい膂力に裏打ちされた斬撃波は、雷電を迸らせ、颶風を巻いて、風は無数の刃となって碎輝を切り裂き刻む。
苦悶の声を上げて、なお、熱い笑声を上げる碎輝は、結城の力に喜びを隠せない。
「すげえすげえ! あっさり超えてくる! 俺も負けてられねえ!」
「洒落にならんからなほんとに、やめてくれ」
ゆらりと、よろめく。痩身から噴く烈気は未だに衰えない――しかし、結城の一撃は確かに彼に届いている。
「……次は命のかからねぇとこで手合わせ願いたいもんだ」
結城の言葉に、彼は嬉しそうに笑った。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
こんな早く
二度目が来るとは思わなかった
只人じゃない事なんて
とうの昔に分かってる
それに…きっと
俺が何であれ
彼女もみんなも
信じてくれてる
なのに俺がいつまでも小さい事にこだわっていらんねぇ
あんたを超えて
この世界もUDCもみんなも守る
覚悟決め
真の姿解放
沸き上がる強大な力を衝撃波に変えぶつけ
UC起動
目で追えない速さに加速
ダッシュで接敵残像纏いグラップル
拳で殴る
二度目ともなりゃ頭の中も即クリアだな
間合いの違い考慮し戦闘知識で動き捕捉
槍の穂先見切り避け
読み切れぬ時は即座に衝撃波でオーラ展開し弾き
その隙狙ってカウンター
拳の乱れ撃ち
こんなとこで立ち止まってらんねぇ
あんただけじゃねぇ
俺は俺を乗り越え
もっと
強くなる
●
虞が纏わりつく。無性にざわざわと心が揺れる。落ち着かない――それでも、一等最初のあのときより、うんと心は凪いでいた。
思ったよりも早く訪れた二度目のこの機に、陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、そろりと息を吐く。
己が只人でない事なんぞ、とうの昔に知っていて、分かっていることだ。躰の真中から溢れてくる烈々とした力が、理玖を突き動かさんと渦巻く。
知っていることだ。
分かっている。
心にひっかかる小さな棘を自覚して、そっと、そっと息をつく。
(「それに……きっと――俺が何であれ、彼女もみんなも、信じてくれてる」)
理玖は理玖だ。
「なのに俺がいつまでも小さい事にこだわっていらんねぇ」
ぽつり呟く。
敢然と心を固める。
毅然と地を踏みしめて。
決然と拳を握る。
「あんたを超えて、この世界もUDCもみんなも守る」
強制的に引きずり出される姿に戸惑いを覚えないわけはない。それでも躰の奥から湧き上がる強大で強烈な力が、握った拳に収斂していく。
「俺は、覚悟を決めた」
「いいな、俺も覚悟しよう! お前の成長を見届けて逝く覚悟だ!」
碎輝は身の丈ほどの槍を構え、雷電を放出する。挨拶代わりに解き放たれた衝撃波は、満身創痍の碎輝に追い打ちをかけることもなく、槍の一振りによって相殺されて。
だが、それは、理玖が一歩を踏み出す時間に使われる――爆発的に加速して走り出す。目にも止まらぬダッシュは、七色の輝きの軌跡だけを描いて、碎輝へと肉薄、それでも紫電が奔る槍撃の一閃が、勇猛に理玖を貫かんと奔り――鋭く呼気、ただそれだけの動作で放たれる衝撃波は理玖を護る防壁へと変じ、突き込まれた鋒鋩から流れ込んでくる雷電のエネルギーは、咄嗟の盾を打ち砕く。
轟音、烈風、明滅――すべてが瞬く間に巻き起こって、さながら嵐だ。
『あの時』は難儀したが、さすがに二度目ともなると、頭の中はすぐにクリアになって、意識は冷静に冴え渡る。
鱗はぞわりと震えて、碎輝が体勢を崩したことを知覚する。
「こんなとこで、立ち止まってらんねぇ」
僅かに生まれた隙を逃さずに、理玖は握り固めた拳を、何度も碎輝へと打ち据える。
拳撃のラッシュは、理玖の覚悟した心の強さに比例する。
「俺が乗り越えるのは、あんただけじゃねぇ――」
碎輝の纏う虞すら殴り祓い、言葉にすればするほどに、理玖の心は固まっていく。
「俺は、俺を乗り越え、もっと、もっと、今よりももっと! 強くなる!」
ラッシュの最後に刺さった拳に、碎輝は吹き飛ばされる。
手にしていた槍はすでに理玖の足元に落ちている。主が手放してなお紫電を帯びる槍に触れぬよう、警戒を続ける。
しかし碎輝は、伏したまま起き上がれない。激しく咳き込んで、息は細く静かになっていく――そうして、ぱたりと動かなくなった。
「――っ、――っ……、」
肩で息をする理玖の総身からも力が抜ける。
見下ろした拳には、【龍神翔】の残滓で七色に輝く龍の片鱗――じわりと、それは、見慣れた理玖の拳へと戻っていく。
息はまだ整わない――それでも。
●
竜虎相搏ち、紫電奔り、地を穿つ――命を賭して、成長を繰り返した戦いは幕を下ろす。
碎輝の傷に塗れた頬には、確かな笑みが刻まれたままに。
大成功
🔵🔵🔵