大祓百鬼夜行㉑〜『平和』に捧ぐ
●『園子』の日常と、その崩壊
ハンバーグ定食を食べ終えて、デザートのパンナコッタに取りかかる。
ぷるんとしたそれを、プラスチックのスプーンで一匙すくって、口に運ぶ。
「……ん~~~!」
幸せそうな笑顔を浮かべた彼女は、『園子』。この施設に保護されているUDC-Pだ。
危険性の低さが確認されているため、こうして一日に三度、UDCエージェントたちと共に、施設の食堂で食事をとることが許可されている。普段の彼女の居場所は、ガラス張りの保護室の中だ。
「ごちそうさまでした」
メリケンサックを装着した両手を軽く合わせて、園子はトレイを持ち、片付けようとする。
その時、園子は、食堂の入り口に視線を向けた。
「……あなたは、どちら様でしょうか?」
彼女の瞳には、赤い髪の少女が映っている。
「アンネはね。貴女が欲しいのよ」
「……私が、欲しい?」
「おい園子、誰と話している?」
少女が答え、傍のUDCエージェントが声を掛ける――それらを聞いて、園子は叫んだ。
「敵性存在を確認しました!」
周囲のUDCエージェントたちが一斉に立ち上がった。混乱が始まり、警報が鳴り響く。
そんな中、園子は、隣の椅子の上に置いていたショットガンを手に取り、メリケンサックを外してテーブルに置いた。
「理解していました、いつかこんな日が来ることは。ですが、皆さんの平和のためならば――私は迷いませんよ」
●グリモアベース
「UDC組織の施設に、UDC-Null……つまり、骸魂と合体した妖怪が乗り込む。狙いは、人間の害にならないUDC、UDC-Pを取り込むことだ。この妖怪は、UDCエージェントたちには視認できない。現場は大混乱、ってわけだ」
宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は、真剣な表情で語る。
「けど、猟兵が到着すれば、UDCエージェントたちはすぐに状況を理解してくれるだろうし、役に立とうともしてくれるだろう。現場のUDCエージェントや、UDC-Pと協力して、妖怪を倒してくれ」
拓未は続ける。
「敵は、吸血夢魔姫『アンネローズ』っていう、赤い髪の少女妖怪だ。西洋妖怪『吸血鬼』の少女が、骸魂『サキュバスプリンセス』に飲み込まれたみたいだな」
それから彼は、述べた。
「UDC-Pは、『園子』。元はUDC『武装少女』の一員で、虐殺に加担させられそうなところを、猟兵の皆が救ってくれた。人を殺すことは恐れてたが、平和のためなら、力を振るうことに迷いはないみたいだぜ。ショットガンによる銃撃で支援してくれるはずだ。上手く連携して戦ってくれ」
グリモアを光り輝かせ、拓未は猟兵たちを、UDC組織の施設の食堂へと転送する。
「頼んだぜ」
その瞳には、信頼の色。
地斬理々亜
地斬です。
よろしくお願いします。
●プレイングボーナス
『UDC-Pやエージェント達と協力して戦う』
●補足
もし、この戦場を制圧することができれば、メカニック達が超常光線砲「U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)」を作ってくれます。これを大祓最終決戦で照射すれば、勝利時に獲得できる「祓」に+0.2点できます。
●UDC-P『園子』について
登場シナリオ:『武装少女の存在証明』( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=32606 )
彼女のショットガンは、ユーベルコードとしては威力が弱めですが、上手く連携すれば役に立ってくれることでしょう。
(ユーベルコード三種が使えるわけではなく、ショットガンによる銃撃のみが可能です)
●リプレイでのアドリブについて
アドリブ多め希望の方は、お手数ですが、プレイング冒頭に『◎』の記号をお入れください。
何もなければ、可能な限り、プレイングに忠実なリプレイに仕上げます。
●プレイング受付期間について
オープニング公開と同時に受付開始です。(断章投下はありません)
締め切りは、【5月23日(日)23:59】です。
採用人数は控えめの予定です。早期完結を目指します。
それでは、ご武運を。
第1章 ボス戦
『吸血夢魔姫『アンネローズ』』
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POW : アンネのお願い
【可愛らしいポーズからの「お願い」】を披露した指定の全対象に【この子の言う事を何でも聞きたいと言う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD : 変幻自在どろんチェンジ
【吸血夢魔姫『アンネローズ』の姿】【狼の群れ】【吸血蝙蝠の群れ】【魔性の霧】【これらに自在に変身する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : 紅薔薇の嵐
自身の装備武器を無数の【真紅の薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:蟹守
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルル・アークライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サンディ・ノックス
◎
園子さんの報告書は読んだことがある
普通の女の子でありたいと願うUDC-P、そんな印象を受けた
メリケンサックを外してショットガンを再び手にした彼女
一刻も早く危機を終わらせて普段の生活に戻してあげたいな
エージェント達には敵が俺と園子さんには見えていることを伝え、そこから敵の位置を想像して支援してほしいと頼む
園子さんには俺が前に出るから支援射撃をしてほしいと伝える
狙われている園子さんを出来る限り敵から遠ざけたいからね
UC発動
大量の小人達と共に敵を攻撃(俺は剣を振るう)
敵の攻撃で全部消されても気にせず再召喚
楽しそうに戦う小人を見て「敵」もこの戦いのために骸魂に飲まれた妖怪と思い出す
彼女も助けなきゃね
●火蓋は切られた
サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、園子に関する報告書を閲覧したことがある。
その時に受けた印象は、こうだ。
――普通の女の子でありたいと願うUDC-P。
それでも彼女は、再びショットガンを手にした。『戦うため』の武装として。
(「一刻も早く危機を終わらせて、普段の生活に戻してあげたいな」)
それが、サンディの望み。
転送が終わり、彼は、混乱の只中にあるUDC組織の施設の食堂に現れた。
「エージェントの皆さん。敵は、俺と園子さんには見えているよ」
サンディの穏やかな声が響き、UDCエージェントたちが冷静さを取り戻していく。
「……UDC-Nullか。分かった、俺たちはどうすればいい」
「俺や園子さんの動きから、敵の位置を想像して、支援してほしい」
「了解した」
エージェントたちが、各々の武器を構える。それを確認してから、サンディは園子に向き直った。
「俺が前に出るから、支援射撃をしてほしい」
「承知致しました」
こくりと小さく頷いて、園子はショットガンの安全装置を外す。
サンディは、アンネローズの前に立ちはだかった。
「どいてくれるかしら」
「どかないよ」
言ったサンディは、ユーベルコード、『解放・星夜』を発動。生物を模した、寒色の水晶……二頭身の小人たちが、召喚される。その数は、500体以上。
小人たちが撃つ魔力と、園子やエージェントたちが撃ち出す弾丸が、アンネローズの動きを阻む。その隙にサンディは、黒剣を振るった。アンネローズのドレスが裂け、白い肌に傷が刻まれる。
「何するの!」
表情を歪ませたアンネローズは、真紅の薔薇の花びらを無数に放つ。
小人たちが身を挺してそれを受け、全て消滅。サンディや園子、UDCエージェントたちには、敵の攻撃は届かなかった。
頓着せずに、サンディは小人を再召喚し、再び攻撃を行わせる。
楽しそうに戦う小人たちを見て、彼は思い出した。
(「彼女も、助けなきゃね」)
アンネローズを見据える。彼女もまた、この戦いのために骸魂に飲まれた妖怪なのだから。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
◎
園子様ですね
猟兵の一人として、UDC-Nullに対する護衛に付かさせて頂きます
よろしくお願いいたします
あの女性も形は違えど二つの世界の為に身を擲っているのです
彼女を骸魂より解放する為、ご協力願えますか?
援護射撃で制限された敵の移動予測地点を見切り、脚部スラスターの推力移動で接近戦の間合いへ
ご婦人の願いに応えるのは騎士の本懐ではありますが…
(アンネから園子をかばうように位置取り)
生憎、先約がありまして
それに私の思考は電子演算、その程度のクラッキングで干渉される訳には参りません
ワイヤーアンカーで捕縛し向上した出力で振るう剣を一閃
それに貴女の本命は背後の彼女
誰かれ構わずなのは少々慎みに欠けるかと
●護衛機
「園子様ですね」
「はい」
園子が見上げるのは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の巨体だ。
「猟兵の一人として、UDC-Nullに対する護衛に付かせて頂きます。よろしくお願い致します」
「はい。よろしくお願いします」
簡単に挨拶を交わしてから、トリテレイアはアンネローズを示す。
「あの女性も、形は違えど、二つの世界のために身をなげうっているのです。彼女を骸魂より解放する為、ご協力願えますか?」
簡潔かつ的確に、トリテレイアは説明を行った。
「承知致しました。もちろん、協力させていただきます」
園子が頷く。
「では、援護射撃をお願いします、園子様」
「承りました」
園子は、ショットガンでアンネローズを銃撃していく。これにより、アンネローズの移動は制限された。トリテレイアは敵の移動予測地点を計算し、脚部から展開したスラスターによる推力移動で間合いを詰める。
「そこの子を、おとなしくアンネに差し出して?」
アンネローズは、可愛らしいポーズをとり、『お願い』を口にした。骸魂由来の魅了の力だ。
「ご婦人の願いに応えるのは騎士の本懐ではありますが……」
トリテレイアは、園子をかばうように立つ。
「生憎、先約がありまして。それに、私の思考は電子演算。その程度のクラッキングで干渉される訳には参りません」
『式典・要人護衛用銀河帝国製ウォーマシン』である彼に、アンネローズのユーベルコードは通じない。護衛機と化している今のトリテレイアは、敵の超常の力も正面から捻じ伏せる域まで、強化されている。
「何で効かないのよ!?」
アンネローズは驚く。その彼女の体に、射出されたワイヤーアンカーが巻き付いた。
「それに、貴女の本命は背後の彼女。誰彼構わずなのは少々慎みに欠けるかと」
出力のリミットは解除済みだ。その腕でトリテレイアは、長剣を一閃する。
アンネローズは、胸から鮮血を迸らせた。
「……うるさいのよ、貴方」
アンネローズがトリテレイアを睨む。傷は、深い。されど戦いは、まだ続く。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
◎
いろんな所が巻き込まれてるねなんとかしなくちゃ
はじめまして園子さんボクは猟兵だよ、よろしくね
ボクはここを守りに来たんだ力を貸して
エージェントの皆さんここの地形を把握したいから説明お願いします
なるほど園子さんボクが囮になって相手の気を引くので後ろからショットガンで攻撃してください
大丈夫ボクは護りの蒼焔で体を防御できるので
ショットガンの奇襲で驚いてる隙に重力を掛けて反抗の雷装で攻撃してダメージを与えます
さあ反抗作戦を開始しましょう
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを
●反抗
巻き込まれている場所は、多数。ゆえに、自分たち猟兵がなんとかしなければならないと、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は決意を固める。
「初めまして、園子さん。ボクは猟兵だよ、よろしくね」
「よろしくお願いします。……お名前は?」
園子に尋ねられたニクロムは、こう答えた。
「紅明日香だよ。ボクはここを守りに来たんだ、力を貸して」
「はい、明日香さん」
園子が頷き、名を呼んだ。これは、ニクロムの本名。『仲間に呼んで欲しい名前』である。
ニクロムは表情を変えず、UDCエージェントたちに向き直る。
「ここの地形を把握したいから、説明お願いします」
「分かった。ここは食堂で、テーブルや椅子が多数並んでいるな。UDC-Nullがいるのはおそらく入り口付近で、園子との距離はあまり離れていないみたいだ」
「なるほど」
ニクロムは再び、園子を見る。
「園子さん、ボクが囮になって相手の気を引くので、後ろからショットガンで攻撃してください」
「え、ですが、それだと……」
「大丈夫。ボクは護りの蒼焔で体を防御できるので」
「了解しました。信じます」
ニクロムがアンネローズの前に立つのを、園子は見送る。
「さあ、反攻作戦を開始しましょう。どうか反抗の竜チタノの加護と導きを」
ユーベルコードにより、護りの蒼焔がニクロムの体を包む。
「邪魔よ。アンネのために、どいて?」
アンネローズは、ユーベルコードの魅了能力を用いる。自らの意思に反して動きそうになった足を、ニクロムはその場に留めた。
「反抗します」
ニクロムは、反抗の竜チタノによって選ばれた者だ。その加護を受けている自分が、オブリビオンの言いなりになるなど、あり得ない。
銃声が響いた。園子だ。蒼焔がニクロムに向かった散弾を燃やし、残りの弾丸がアンネローズへ向かう。
「きゃっ!?」
予想していなかった方向からの不意打ちに、アンネローズは驚く。
ニクロムは重力領域を展開し、反抗の雷装をアンネローズに叩きつけた。
「きゃああ!!」
スパークが起きる。確かな、手応え。
成功
🔵🔵🔴
ルネ・プロスト
◎
はろー、こんにちは。それともこんばんは?
憶えのある名を見かけたから様子見ついでに来てみたよ
君(敵)も彼方の為にお疲れ様。さ、それでは手早く済ませましょうか
敵の攻撃行動に合わせUC
片方のビショップは焔の結界で自陣を覆って護りに専念
敵UCも焼いて燃やして灰にして、全て全てを焼却してみせよう
もう片方のビショップは解放した浄化の力を『慟哭』に装填
憑き物は祓い清めるのが道理、そういうものでしょう?
ルネが言うのも可笑しな話ではあるけれど
園子や職員さんはポーン達と共に兎に角撃ちまくって
目的は敵の牽制と体勢崩し。中らずとも威圧できればそれで十分
敵が隙を晒せば『慟哭』から誘導術式を付与した浄化の魔弾を撃ち放つ
古明地・利博
◎
やあ、久しぶりだね、園子ちゃん。
あれから調子はどう?良さそうだね。
もう少しお話していたいけど、今はあれの対処が先か。
手伝ってもらえる?
……とは言ったものの、園子ちゃんに殺しをさせるのはなぁ。
それに奴はこの子にご執心らしいし、あまり近づけさせたくない。
まあ、援護射撃してもらおうか。それが一番ありがたい。
忌まわしき神卸で強化したらインファイトに持ち込もう。
防御より回避、回避より攻撃を優先。
相手が何か変な動きをしてきそうになったらショットガンを撃ってもらって軽い阻害をしてもらいたいな。
もしも、園子ちゃんを攻撃しようとしたら身を張って止めるよ。
私たちのしたことを無駄にしたくない。
●再会、共闘
ルネ・プロスト(人形王国・f21741)は、食堂の壁掛け時計に視線を向ける。昼の12時を回った頃だ。
「はろー、こんにちは。憶えのある名を聞いたから、様子見ついでに来てみたよ」
「やあ、久しぶりだね、園子ちゃん」
「あ。お久しぶりです!」
ルネと、その隣に立つ、古明地・利博(曰く付きの蒐集家・f06682)の顔を見た園子の表情が、パッと明るくなった。
「あれから調子はどう?」
「健康状態、精神状態、共に問題ありません」
「そっか、何よりだよ」
利博は園子と言葉を交わした後、アンネローズへと視線を向ける。
「もう少し園子ちゃんとお話していたいけど、今はあれの対処が先か。園子ちゃん、手伝ってもらえる?」
「承知致しました」
園子が、利博へと頷く。
ルネは、アンネローズへと言葉を投げた。
「君も彼方のためにお疲れ様。さ、それでは手早く済ませましょうか」
「ふ、ふふふ。そこの子はアンネのものにするんだから……!」
紅薔薇の嵐が、吹き荒れる。すかさず利博が、園子をかばうように前に出た。
「――君の楔を解くよ、僧正人形(ビショップ)」
ルネが、ユーベルコードを発動する。
『人形王国・駒盤遊戯・救世天使』。ルネの、二体の僧正人形が、聖炎を纏う熾天使と化す。
その片方が、焔の結界で自陣を覆った。薔薇の花びらが、全て焼き尽くされてゆく。ルネだけでなく、園子はもちろん、利博も、エージェントたちも、護られた。
「ありがとう。私も行くね」
ルネへと短く礼を述べた利博は、冒涜的な詠唱を行いながら前に出る。『忌まわしき神卸』により、人ならざるものが利博に宿った。血を流しながらも、利博は超強化される。
「アンネは、その子をもらうんだからね」
「ご執心だね。だけど、残念。園子ちゃんには指一本触れさせないよ。……私たちのしたことを無駄にしたくない」
利博は呟き、黒革のブラックジャックを取り出した。
「変幻自在どろんチェンジ……!」
アンネローズの姿が、四肢の先端から、霧に変わってゆく。
「園子ちゃん」
「はい!」
利博の声がけに応じて、園子がショットガンによる援護射撃を行う。アンネローズの肩が散弾で貫かれ、霧への変身は阻害された。
「くっ……」
「今だね」
チャンスは無駄にしない。利博は、ブラックジャックを思い切りアンネローズの頭部へと叩きつけた。
その頃。ルネの、もう片方の僧正人形は、自らの聖雷を、狙撃銃『慟哭』に魔法弾として装填していた。
「憑き物は祓い清めるのが道理、そういうものでしょう? ルネが言うのも可笑しな話ではあるけれど」
ルネは言う。自身が、死者の魂を宿したミレナリィドールであるがゆえに。
園子を護り、骸魂に飲み込まれた妖怪も救う。その意志を持ち、ルネは戦う。
「下がって」
「分かったよ」
ルネは、アンネローズの眼前にいる利博へと声を掛けた。利博は頷き、後退する。
「園子、職員さん、撃ちまくって」
「了解しました」
「分かった」
軽装歩兵の人形たちと共に、園子やエージェントたちが、弾丸をアンネローズへと降り注がせる。それはアンネローズへの牽制となり、体勢を崩す――利博による頭部への強打もあって、アンネローズは今、完全なる隙を晒していた。
「今ね」
誘導術式を付与した、浄化の魔弾。それが、『慟哭』より撃ち出される。
放たれた魔弾は、吸い込まれるようにして、アンネローズの胸を貫いた。
「あ……ぐっ……」
吸血鬼を飲み込んだ骸魂が、浄化されてゆく。けれど、執念により、骸魂はまだ踏みとどまっていた。
「しぶといね。すぐに楽にしてあげるから」
「そうだね。倒して、骸魂を浄化しよう」
利博がアンネローズを見て呟き、ルネが同意する。
利博はブラックジャックを手にして再び地を蹴り、ルネは魔弾の再装填を開始した。園子とエージェントたちが、その後方で武器を構える――決着まで、あとわずか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
狸塚・雅紀
一応ご主人様の力でこうなったんすけど割と近い境遇なんすかねー?と折角ならお近づきになりたいと狐塚人格のみ参戦。
気安くフレンドリーに挨拶して、アンネちゃんと対峙。
そーいえば職員さんは見えないんすよねぇ、古典的な手っすけど園子ちゃんに敵さんに消火器をぶっ放して貰って姿を見えるか試しますかね。ダメでも足跡で分かるようになるといいんすが。
薔薇に関しては【狐火乱舞】の炎で一気に燃やせば問題ないっしょ。後は皆さんが撃ちまくって貰い、俺も恨みはないっすけど炎を全突撃させますかね。
さて、終わったら話そうとするんすけど…素直に褒められたら真っ赤になりカッコつけて逃走。まだ女の子の心からの好意は慣れねーすっね…。
●純真
(「一応ご主人様の力でこうなったんすけど、割と近い境遇なんすかねー?」)
狸塚・雅紀(キング・ノーライフの従者・f29846)は思った。
より正確に言うなら、『狐塚雅紀』と『狸塚泰人』の二つの人格の内、今、この肉体を使用しているのは雅紀の方だ。
(「折角なら、お近づきになりたいっすね」)
園子を見やり、雅紀は駆け寄る。
「どーもっす、園子ちゃん。俺、狐塚雅紀って言うっすよ。よろしくっす」
気安く、友好的に雅紀は挨拶する。
「よろしくお願いします、雅紀さん」
園子からは、短いながらも丁寧な返事。雅紀はそれにスマイルで応じ、アンネローズと対峙する。
「園子ちゃん、あれぶっ放してもらっていいっすか?」
言い、雅紀が指さしたのは、施設の消火器だ。
「やってみましょう」
園子は消火器を持ち上げ、アンネローズへと粉末状の薬剤を噴射した。
「けほ! けほ! なんてことするのよ!」
粉まみれになり、咳き込むアンネローズ。
「これで見えるっすか、職員さん」
「いや。だが、足跡は見える」
「……!」
アンネローズは、しまった、という顔をする。
「やってくれたわね……!」
真紅の薔薇の花びらが、無数に舞う。
そこで雅紀は、ユーベルコードを発動した。84の幻惑の炎を放つ、『狐火乱舞』。炎が、花びらを燃やしていった。
「嘘でしょう? そんな簡単に……」
「現実っすよ、アンネちゃん。皆さん、撃ちまくっちゃってくださいっす」
「了解です」
「ああ」
園子のショットガンが、エージェントたちの武器が、火を噴く。無数の弾丸が、アンネローズを貫いてゆく。
(「俺も恨みはないっすけど」)
雅紀の狐火が、一斉にアンネローズに向かい、焼き尽くした。
後には、骸魂から解放された少女吸血鬼だけが残され、床に横たわる。
「終わったっすね、園子ちゃん」
「ええ、ありがとうございました。……雅紀さんを含めた、猟兵の皆さんのおかげです。――カッコ良かったですよ」
園子の言葉を聞いた雅紀は、たちまち真っ赤になった。
「と、当然っすよ! それじゃ!」
ろくに話もできないまま、格好つけて雅紀は逃走する。
まだ、女の子の心からの好意には慣れていない彼であった。
大成功
🔵🔵🔵