大祓百鬼夜行㉒~よろしくお願対戦ありがとうございました
●最後にお前はニャンと言う
ここはUDCアースの廃テナント。
元はカードショップだったらしき店内に、跋扈するのは妖怪たち。
百鬼夜行の影響を受けた廃墟は、まるで幽世のよう。
何でもありが妖怪たちの流儀、
世界が滅びるきっかけがカードゲームだって可笑しくはない。
集まったのは、新し親分配下の妖怪たち。
親分考案のTCG『デュエリストブレイド』が今、彼らの間では大流行なのだ。
「デュエリストブレイド、あっそぼーぜー!」
「おうよ、ピョン吉! じゃんけんで勝った方が先攻な!」
「望むところだぜ!」
デッキを手に和気あいあいと過ごす妖怪たちは、戦争の最中でも楽しそう。
「「じゃーん、けーん、ポンッ!!」」
「あっはは、負けた負けたー! 先攻はお前に譲ってやるよ!」
「よーし、いくぜピョン吉! オレのデッキを甘く見るなよ!」
「そっちこそ!」
「じゃあ行くぜ……オレのターン!」
仲良く握手をかわし、先攻をとった妖怪は勢いよく山札に手を……。
「ドロー! 点火点火魂の灯火タップしてエナジー増強妖怪尻舐め小僧見参をプレイ真夏の階段をフィールドにセット誘発された能力で山札サーチ栄養ドリンクミナギルパワーZを装備品としてつけ子分召喚アプリ火鼠火鼠火鼠三体を生贄合体デイダラボッチ召喚特殊能力妖力発動で魔法カード地雷ワードに『ニャン』をセット最後にこのカード唱えて終わりだ『次にお前はニャンと言う』!!」
「……ニャン」
え。なにこれ。何が起こったの。
●とにかく速攻で勝負を決めろ
グリモア猟兵のリグは、『デュエリストブレイド』と書かれた謎のパンフレットを珍しそうに眺め、こう切り出した。
「カードゲーム、っていうの? お札を使った遊びがあるらしいんだけど……今回皆にはね、それを使って妖怪さんたちに勝ってほしいの」
本来UDCアース側に位置する廃墟は、新し親分直属の妖怪の手で見えざる闘技場(デュエルスペース)へと作り変えられた。
この廃墟内では不思議な力により、妖怪はカード勝負を通じた打撃しか受けない。
つまり、彼らお得意のTCGで勝負する他ない、という事だ。
「なんかね、ルールがめちゃくちゃ複雑みたいで……」
ぱらり、とリグが落とした蛇腹の説明書は裁定集なども含めて数十ページにも及び、見てるだけでも頭痛モノ。
だが、裏を返せばこれだけ複雑なゲームルール、存在しない戦術はないともいえる。
「それにカードでの戦いだから、妖怪さんたちとは直接戦わずに助け出せるわ!」
元より多くの敵妖怪は、倒しても骸魂と切り離して救う事ができるのだが。
今回は痛い思いもさせなくてすむので、武器を向けるのにためらいがある、という人でも安心してほしいとの事だった。
カード勝負を挑めばいいのはわかったが。
実際現地でどうすればいいかと聞かれ、リグはうーんと頭を悩ませる。
「そうね……皆にも思い通りのデッキが配られるから、カード集めの心配はしなくていいんだけど」
私も詳しくはわからないんだけど、と前置きした上で、リグはこう続ける。
「なんかね、すっごい一瞬で勝負おわってた」
え。
「相手の妖怪さんが何かする前にすごい勢いで、こう、バーッてお札の束をめくって、はい終わり、みたいな戦術が流行ってるっぽいの」
それってもしかしなくても、1ターンキルでは……!
説明しよう。
1ターンキルとは、交互に手番がめぐるカードゲームにおいて圧倒的速度でカードを使い、最初の番で決着をつける、恐るべき戦術の事である。
本来そんな極悪コンボが決まらないようカード設計者は心を砕いてるのだが、ごくまれーに偶然生まれては巷を恐怖に揺らがす友情ブレイカーな恐るべきアイツ!
それ、どうしろと――みたいな顔する皆の心中は、察して余りあるが。
「こっちも好きなカード使えるなら、同じ事やっちゃえばいいんじゃないかしら?」
つまり、やれと。カード初心者もいるこの場の面々に、1ターンで勝負を決めろと??
「じゃんけんで先攻後攻を決めてるみたいだから、そこさえこう……うまいことしてとっちゃえば」
しゅしゅっと何かを奪い取るジェスチャー。
あなたしれっと今イカサマ示唆しましたね??
「あ、もちろん私は豪運の持ち主だから! って正々堂々もアリと思うわ! 時には潔いのも気持ちがいいもの!」
もはや正々堂々が手段の一つでしかない――!!
もう、お判りいただけただろう。
混沌としたこのゲームの勝敗を握るのは、カードゲームの腕ではない事を。
「皆、行ってらっしゃい! 何としてでも先攻をもぎ取って、すがすがし~く決めてくるのよ!」
あっ、待ってリグ、まだ皆ルール詳しく聞いてない――。
理不尽そうな表情を浮かべたまま、キミ達は現地へと送られるのだった。
晴海悠
お世話になっております、晴海悠です。
今回はカード勝負で戦って頂く事になりますが。
誰が持ち込んだのか、厄介な1ターンキル戦術が横行してる様子。
なんとかこちらも速攻を仕掛けて、逆に勝負を決めてやりましょう!
『運営スケジュール』
OP公開時からプレイングを受付し、3名様の採用をもって完結予定です。
(先着順ではありません。また確約は出来ませんが、過去に受理できなかった方・カクリヨの戦争への参加回数が少ない方は若干優先したいと考えています)
『シナリオについて』
1章のみで完結する戦争シナリオです。
また、下記のプレイングボーナスに沿って行動すると、戦いが有利になります。
プレイングボーナス……デュエリストブレイドで勝負する(殆どのTCGのルールはこのゲームにも存在するものとする)。
『その他』
勢い重視のシナリオですので、相手の出方を伺うよりも、前のめりに自分がどうやって戦うかを書いて頂けた方が活躍しやすいと思います。
極端な話、使いたい架空のカード名をひたすら並べるだけでもオッケーなくらいです(リプレイ描写はアドリブで良ければ何とかします!)。
敵の速攻戦術(1ターンキル)は必ず成功するとは限りませんが、万全を期すためなんやかんやして先攻を奪う、ユーベルコードで相手を騙……げっふん! といった事も『OK』です。
なお、実在の商標やカード名を伏せる事無くプレイングに書いてしまうと、素敵プレイングでも採用できない場合がございます。伏せる・ぼかすのご配慮をお願いいたします……!
それでは、リプレイでお会いしましょう! よい子の皆、現実のカードで1キルとかやっちゃダメだぞっ。
第1章 冒険
『デュエルしようぜ!』
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POW : 魂のカードでデュエル!
SPD : 速攻デッキでデュエル!
WIZ : コンボデッキでデュエル!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
藍沢・織姫
事前に様々なカードゲームについて調べ(情報収集・世界知識・宝探し)、得た情報を元に…
念には念を入れ(ハッキングやジャミング、ドローン(ユーベルコード)も利用)こっそり相手の手元を覗く等して先攻を取りやすくします。
そして戦闘ルール「カード名を組み合わせておかしな文章を作り、上手くツッコめ」!(落ち着き・多重詠唱・第六感・暗号作成等も活用)
例:「光年」「機」「勝」それから…
「更年期障害のひどい森蘭丸」!
いや享年18!!男性でも更年期障害は起こるそうですけど18歳じゃ無理ですよね!?
例2:「A=A+1」
確かに数学の式としてはありえませんが…只の「Aの数値を1増やす」というプログラム文ですね。
藍色の翼をはためかせ降り立った少女に、妖怪たちはやんややんやの大騒ぎ。
「お、新たなチャレンジャーか!?」
「いいぜ、勝負しようぜ! デッキなら貸し出すからよ!」
彼らの呑気な様子に、藍沢・織姫(紺碧の歌姫・f03959)は軽くため息ひとつ。
「ほんとにこう、危機感がないというか……気が抜けますね」
いまの彼らは新し親分の配下、即ち骸魂と合体したオブリビオン側であるのだが、役目忘れてるんじゃないかというフレンドリーっぷりである。
だが、傷つけず倒せるなら気が楽というもの。今回の為に、カードのルールは一通り予習済みだ。
「ええ、いいでしょう。カード勝負、しましょう!」
明るく笑顔を見せ、織姫は貸し出されたデッキにいくらかの調整を施した。
マットを敷いて、準備は万端。となれば、あとは先手後手を決めるじゃんけん、なのだが。
(「確かここが最初の勝負所でしたよね……それなら」)
和やかムードに気を緩めず、こっそりドローンで相手の手元を覗き。
更にはぴぴぴと電波を飛ばしてお店のなぜか生きてる監視カメラをハッキング、可能な限り複数の視野で相手の挙動を逃すまいとして。
「じゃん、けん……ぽんっ!」
「ほっ……勝ちました、ね」
危うく二本指が出るのにパーを出しそうになったが、咄嗟に拳を握ってグーで事なきを得た。
山札は所定の位置に、互いに手札をもってお決まりのコール。
「デュエリストブレイド、レディ……ファイッ!!」
「よろしくお願いしますっ」
礼儀正しく告げて山札を一枚めくった織姫は、引いたカードに目を白黒。
(「あ……さっき何気なしに入れたよくわからないカードが」)
特殊ルールカード、『雑コラ選手権』。
カードをランダムに指定数引き、出てきたカード名を断片的に繋ぎ合わせてできた面白文章にツッコんで笑いを取れたら相手に笑った人数分のダメージが入るという、何ともまどろっこしいカードである! 多分公式大会では使えないとか注釈書いてる。
「え、えーと……雑コラ選手権、使います!」
カード効果の無茶ぶり感に戸惑いつつも引いたカードは「宿命の戦い」「いわれなき命題」「百年戦争」……。
「宿題百年請負人またたびの助!! ってどんだけ時間かけてるんですか!」
織姫のツッコミにぷっ、と噴き出す声が一人分。
あ、いま笑いましたね、ダメージ入りまーす!
しかし相手を初手で押し切るほどではなかったようで、このままだと織姫ピンチ!
「こ、こうなったら……もう一度行きます、『徹夜のリカバリー作業』!」
自身のライフと引き換えに使用済みカードを再使用し、再びカードをめくる。
「今度こそ……ええと」
これで倒せなければ万事休す! 願いを込めて引いたのは「紅閻魔」「輝く王冠」「猫又海賊バーソロミュー」……。
「閻魔王ソロソロおんもでたい……出ちゃだめーーっ!? ステイ、ステイホーム!」
ぷっ。く、く……。こみ上げる笑いは、とうとう堪え切れなくなり。
「ぎゃははははーっ!?」
その場にいた妖怪全員が笑い出した事で、オーバーキル発生。ゲームセット!
「あー、話に聞く閻魔王がなんだか身近に思えちまったぜ……おっと」
ふわわん、と。心満ち足りた妖怪の一人から骸魂が抜けだすのを感じ、織姫は「やりました!」とガッツポーズを決めるのだった。
成功
🔵🔵🔴
数宮・多喜
ワンキルなー。
結局の所最後の勝ち筋のどこかにゃ、
必ず魔法か罠カード経由するだろ。
出来れば最後に近いタイミングを待って、
手札からノーコストで出せる発動遅延カウンター魔法を出すよ。
とりあえず発動タイミングを2ターン後にできりゃいいさ。
次のターンが回ってくりゃ、アタシもやり様はあるんでね。
で、返しのターンでアタシは
「手札以外からのカードのプレイや能力発動を無効にする」罠を張って
素直に速攻モンスターを繰り出していくよ。
さっきの発動遅延も「手札以外」だから無効になるからね。
1ターンキルはこうやって凌がれると意外と脆いもんさ、
後はこのままボコられちまいな!
中身こそ持ち出され破損もあるが、廃テナントには今も硝子のショーケースなど、カードショップだった頃の什器が残っている。
ウェーブがかった髪を揺らし、現れた女性は店内を見渡して「懐かしいね、こういう雰囲気」と呟いた。
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)。
現代っ子である彼女は遊びの文化にも馴染みがあるが、いろんな遊びの流行り廃りを見届けた今となっては熱中するより傍観ポジションが多くなった。
「……ワンキルなー」
苦虫を噛み潰すような顔をする辺り、彼女も相手した経験があるのだろうか。
「こーみえて昔、アタシもちらっとは触った事あんだよ」
ポリポリと頭をかきながらカードの束を手にすれば、妖怪たちは早くも「ねーちゃん、やろうぜ!」と乗り気。
「仕方ねーか……一回だけな」
自分好みにカードを差し替えたデッキで、多喜は妖怪たちとの勝負に臨む。
じゃんけん……ぽんっ。
「あー、負けだ負け。先攻は譲ってやるよ」
ひらひらと面倒くさそうに手のひらかざす多喜に、ギャラリー含め妖怪たちはニヤニヤ笑顔。
「いいのか、ねーちゃん? 後悔すんぞ?」
「誰見てもの言ってんのさ。さ、始めな」
先攻を取られても余裕の多喜に、対戦相手は早速高速ドローで山札を掘り進めはじめる。
「点火、二枚ドロー! 点火、さらにドロー! 手札から妖怪おでん屋台をセット、これの効果で……」
カード効果を読み上げるだけで誇らしげな相手の顔を、多喜は表情動かさず眺める。時々手元に視線を落としながら、狙うは相手の切り札。
「行くぜ! 満を持して登場『爆裂! 特製練り辛子爆だ……』」
「はい、『差し押さえ』」
ぱんっ、と。コンボに割り込む一枚の魔法カードに、相手は目をぱちくり。
「カード効果よーく読みな。アンタがそれ唱えられんの、二ターン後な」
「きょえーー!?」
多喜の読み通り、大方のワンキル戦術は特定のカードをフィニッシャーにしている。どんなに怒涛の猛攻に見えても、その一枚さえ防げば戦術は瓦解するのだ。
「ま、まだだ! 二ターン後がお前の命日だー!」
「あーそうかい、そんじゃこいつ張るよ『手出し不要のデスマッチ』っと」
またしても見慣れぬカードに、今度はギャラリーも身を乗り出す。
罠カードに書いてある効果は、なになに、『手札以外からのプレイや能力発動を無効にする』……?
「さて。アタシに弾かれたアンタの魔法、ルール上は今どこにあるっけね?」
「あ……」
そう。先の魔法カードをよくよく見れば、そこには『ゲーム外に取り除き』の文言が!
場に出た瞬間から動ける速攻モンスターを並べながら、多喜の言うには。
「つまり、何時まで経ってもアンタの王子様は現れないってこった! そら、このままボコられちまいな!」
「ぎょええええーー!」
この後廃テナントには、ライフが空になるまでダイレクトアタックを受けるたび少年妖怪の悲痛な叫びが響いたという。
少年よ、負けを知って強くなれ。
大成功
🔵🔵🔵
藤原・忠重
【POW】
「カードゲームか。これでも現代っ子、馴染みはある」
「ルールも大体覚えたし、持てる最強のデッキで挑もうか」
「そういうわけで、フリーお願いします」
ジャンケンの結果、相手の先攻でゲーム開始。
相手ターン開始時に叡智の虚光神殿をデッキから場にセット。
相手クリーチャーの召喚時、虚数秘術・彼我自在法を発動して支配権を奪う。
更に虚数秘術・存在置換で奪ったクリーチャーを消滅させ、虚光神を召喚。
虚数秘術・虚光神理を発動。互いに虚数属性のカードしかプレイできなくなる。
ターン終了時に虚光神の特殊能力、無限虚光神へと無限進化。
無限虚光神が場に出たターンの終了時、ゲームに勝利する。
「対戦ありがとうございました」
座り心地の悪いパイプ椅子に、どかりと腰を下ろし。
藤原・忠重(じぶんだいじに・f28871)は妖怪たちの遊ぶカードを、興味深げに覗き込んだ。
「ほー、カードゲームか」
「にゃあん? おにーさん、はじめてにゃ?」
しゃかしゃかとデッキを繰る猫娘に問われ、「いや」と忠重は首を振る。
「これでも現代っ子、馴染みはある」
二つの束に分けたデッキを慣れた手つきでファローシャッフル、手元を見ずに横入れする忠重の手腕に妖怪たちの注目が集まる。
「ただ、このゲームは初めてだ。ルールを教えてくれないか」
「もちろんにゃ!」
集う妖怪も楽しみたい気持ちはあるのか、猫娘の解説に時折横から口出ししてコツなどを伝授していく。
「なるほどな……ありがとう。ルールも大体覚えたし、後は実戦といこうか」
対戦席に座り直し、妖怪のアドバイスをもらって自分用に組み換えたデッキを山札に置き。
「そういうわけで、フリーお願いします」
「こちらこそよろしくにゃ! ふふー」
初対面の人と接するかのような忠重の礼儀正しさに、相手の猫娘も嬉しそうに目を細めた。
じゃんけんの結果、忠重は後攻。
「ではわっちのターン……行くにゃ、行くにゃ~!」
早速猫娘が先手で勝負を決めようとしたところで、忠重が待ったをかける。
「おっと、先にこいつを出させてもらおう。『叡智の虚光神殿』、こいつは相手の番の開始時に割り込んでデッキから直接セットできる」
「な、何にゃ!? びっくりしたにゃ」
デッキから直接場に出る以外、何も効果のないテキストに猫娘は不思議そうな顔。構わず続けようとしたが、モンスター召喚時にさらに待ったがかかる。
「召喚にチェインして『虚数秘術・彼我自在法』を発動。そいつのコントロール権、こちらにもらうぜ」
ああっ、と猫娘が声を上げるのも束の間、奪った効果持ちモンスターのカードを忠重はつまんでみせ。
「『虚数秘術・存在置換』。こいつを生贄にして呼ぶのは、俺の切り札『虚光神』だ」
虚光神殿が場に出ていて、さらに存在置換をもってしか召喚できぬ特殊モンスターにギャラリーがどよめく。本来表に出てこれぬ虚数世界の神が、盤面に無数の手を伸ばしていた。
「こいつの効果を伝えておこう。虚光神の『虚光神理』は、互いに虚数属性のカードしかプレイできなくなる制限能力だ。俺の手札も大半は腐るが……猫娘の嬢ちゃん、あんたの手札には?」
「一枚もない、にゃ……」
「そうか」
きわめて限定的な代わり、ハマると強いコンボはあるもので。その後も引いたカードをことごとく打ち消し、忠重は虚光神を守り抜いていく。
やがて、神のカードの上に十分な量のカウンターが乗った。
「俺のターン、何もしない。ただターン終了時に虚光神は『無限虚光神』へと無限進化だ」
シールドから出してカードを反転させると、そこには世界を飲み込む禍々しき神の図柄。
異次元の神がもたらすのは特殊勝利の恩恵。耐久力を持たない代わり、ターン終了時まで場に残ればゲームに勝利する、賭けにも等しき効果だ。
「さあ、嬢ちゃんの番だ。今引いた手札でも、何もしないかい?」
「……う、ううっ、このカードで焼き尽くすにゃー!!」
苦し紛れに猫娘の出した鬼火のカードを、ただ一枚握っていた封印の壺で忠重が打ち消す。
「……ありません、にゃ」
「対戦ありがとうございました……いい勝負だったぜ」
握手の手を差し伸べる忠重は、カードプレイヤーの鑑のようでもあり。
「すごい、すげぇじゃねえか! あのカードが実戦で出るの、オレはじめてみたぜ!」
わっと押し寄せる妖怪たちからは賞賛の声。
いつの間にか、彼らの内から骸魂は抜けていた。
彼らから邪気が消えたのを感じ、猟兵たちは各々安堵に胸をなでおろす。
その後の時間の許す限り、今度は純粋なカード勝負に明け暮れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵