5
銀河帝国攻略戦⑧~獣、宙より来たる

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#スペースシップワールド
🔒
#戦争
🔒
#銀河帝国攻略戦


0




●戦闘宙域XXX-888
 AAAAAARRRRRRGGGGGGHHHHH――――!!

 真空すら震わせる遠大な咆哮。それはまさにオブリビオンの証。
 数多のスペースシップが対峙する宙域でひときわ異形を誇示する恐るべき鋼鉄の獣あり。
 デスモ・ブラキオス。ただでさえ巨大きわまるそれの、戦艦級個体だ。
「なんだありゃあ、あんなの倒せるのかよ!?」
 不運にもこの宙域にやってきてしまったスペースシップ〈レインフォース号〉。
 乗るのは誰も彼も、一線を退いた老人ばかり。
 だが彼らも老骨に鞭打ち、この一大決戦に飛び込んだのである。
 そんな船の年老いた乗組員の叫びは、無理からぬものだった。
「やれるかどうかじゃねえ、やるしかないんだよ!」
 気骨のある強面の老人が叫んだ。古びた船長帽を被った別の男が言う。
「そろそろ覚悟を決めるときかもしれんなあ、これは」
「いっそ特攻てか! ハハ、それで若者の道を開けるなら悪かないわい!」
 絶望と恐怖、そして怒りがないまぜになったことでの、向こう見ずな言葉。
 だが、彼らが身を投げた程度で何かが変わるはずがないのも、明白だった。

●グリモア猟兵より
「銀河帝国ってバカなんじゃないの!?」
 白鐘・耀は、戦況報告を聞くなり叫んだ。
 嘆息。そして頭を振り、猟兵一同を見やる。
「……そういうわけで、連中はこっちが混乱してる間に叩き潰すつもりみたいね」
 解放軍のほとんどは民間船で構成されている。
 ゆえに、このような大規模会戦では、練度と士気の差で遅れを取ってしまう。
 初動さえ切り抜ければあとは数の問題だ。逆を言えば、初動さえ挫かれてしまえば。
「私たちの目標は、こいつよ!」
 バン! と馬鹿げた大きさの機械獣の立体映像を指し示す。
「こうなると、二手に別れる必要があるわ」
 すなわち、外部と内部。
 敵の注意を引き寄せ、装甲を破壊し動きを鈍らせる第一部隊。
 破損箇所から内部に突入し、中枢を破壊する第二部隊。
「この状況だから、全体で作戦会議しているわけにもいかないわ」
 ことは一刻を争う。この状況で各自の判断に任せる、というのはリスクを伴うが……。
「私たちが退けば、せっかく集まってくれた人たちが犠牲になる。
 それだけは避けなきゃいけない。そうでしょ?」
 耀は答えを待つつもりはなかった。わかりきっているからだ。
 彼らの背中を押すように、火打ち石がカッカッと小気味よく鳴った。


唐揚げ
 遅かったなぁ! 唐揚げです。
 OP、いかがでしたか? エッ、読んでない?
 では一応まとめ……の前に大事なことを。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 はいOKです。では改めてまとめを。

●敵戦力
 『デスモ・ブラキオス』戦艦級(超つよつよ)

●備考
 猟兵の皆さんには二手に分かれていただきます。
 外部から攻撃を仕掛け、装甲・武装破壊や陽動を行う『第一部隊』
 内部に突入して、駆動機関や恐竜メカなどを破壊する『第二部隊』
 プレイング冒頭にどちらを希望するか明記してください(第一・第二などでOK)
 希望なしや一方多数の場合は、内容から適宜判断し振り分けします。
 合同プレイングは大歓迎です。希望部隊が別でもなんかうまくやれると思います。

 あ、あとOPの方々は特攻するかなーやるかーみたいな段階です。
 みなさんが頑張ればおじいちゃんたちは生き残ります。負けられませんね。

 では前置きはここまでにして。
 皆さん、いくつもの愛をなんかしつつよろしくお願いします。
533




第1章 ボス戦 『デスモ・ブラキオス』

POW   :    CODE:Dino
【恐竜の本能 】に覚醒して【広域殲滅モード】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    CODE:Raptor
【体から生み出した無数の小型恐竜メカ 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    CODE:Venom
【未知のバイオウイルス 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【ダメージを共有する状態】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナハト・ダァトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●戦艦級個体・コードネーム:"ザーヴラ"
 猟兵たちのなかには、同型オブリビオンと対峙した者もいよう。
 だが宙域を圧倒する巨体は、多くの者が知るどれよりも巨大であった。
 ディクタトル級巡洋戦艦と並ぶほどの、下手をすればそれを越えかねぬ異形。
 鋼鉄の龍はダークマターをも震わせる雄叫びをあげ、解放軍を恐怖させる。
 腹部ハッチから発進する無数の恐竜メカ。前線到達まではおよそ数百秒。
 迅速に、かつ確実に、この巨大鋼鉄龍を叩かねばならない。
 そのためには二面同時攻撃が必須。内外どちらも危険が伴うだろう。

 AAAARRRRRRRRGGGGHHHHH――!!

 龍が咆える。
 だがここで退くわけにはいかない。
 スペースシップを飛び出した猟兵たちの背後には、集いし人々の命がある。
 後退のネジを外し、おそろしの龍の逆鱗を叩け!
リグレース・ロディット
そうだよやるしかない。けどやるのは僕達。おじさんたちはもうちょっと待っててね!!かっこいいとこ見せるから!
【SPD/第一】UCの『凍血燃刃』で凍らせて邪魔するね。凍らせたらちょっと壊しやすくなると思うんだ。装備の『暴食紫炎』にたくさん血を吸わせておっきくして一気に薙ぐ。あ、もちろん皆の邪魔をしないようにやるよ。敵からの攻撃は『激痛耐性』で我慢する。そんな攻撃我慢できるもん……我慢できるもん!!
で、陽動……挑発?こっちだこっち。バーカバーカ。ええー?!僕みたいなガキも倒せないの?!本当に銀河帝国はバカなの?!ってやったら良いのかな……?頑張るよ

(絡み・アドリブ大歓迎)


春日・釉乃
こっちも奥の手を使うしかっ!

あたしは機械鎧『鶴姫』を着込んで鎧装騎兵姿となり、背部に接続した『ヴァリアブル・エクシード・ブースター』の[ダッシュ2]の力で一気に踊り出て、一撃離脱の戦法でユーベルコードの【蒼き清浄なるセカイのために】を使用。
機械鎧用の核バズーカを発射して、[鎧無視攻撃3]の破壊力で敵を一網打尽に追い込む!

「ミディア・スターゲイザーの理想を掲げる為に…! 銀河帝国攻略戦、成就の為に…! エンペラーズマインドよ!私は帰って来た!」

ある程度の損害を与えられたら、救済の炎を沈下させ…後続の友軍に残存戦力の掃討を任せて宙域から離脱するね。
あ…モチロン、他の方との連携やアドリブはOKだよ!


劉・涼鈴
【第一部隊】
おおおー! でかーい!
メカ怪獣だ!
プラモデルとか欲しくなるなー
頑丈そうだけど、ぶっ壊し甲斐があるね!
いっくぞー!

敵の攻撃は【気合い】で耐えて、【勇気】を持って【捨て身の一撃】で突っ込んでく!
とっつげきー!

くどーきかんとかは難しくてよく分かんないから、外からぶっ叩く!
デカすぎて格闘じゃあ厳しそうだから、自分の身長よりおっきい武器、【覇王方天戟】を使う!
【怪力】で【なぎ払って】、【鎧砕き】で装甲をぶち抜く!
おりゃおりゃおりゃー!

戦艦級ってくらいだから上に乗れるくらいでっかいんだよね?
敵+地面扱いにできるなら効果抜群!
戟を叩きつけて【グラウンドクラッシャー】で背中で地割れを起こしてやる!


青空・フィリア
初陣だ! 張り切るって飛ぶよ!

背中から機械翼を広げ、両腕両脚を機械のそれへと変化させて、宇宙空間を飛行

「船の中じゃ狭くて飛べないもんね。アタシは外からいくよっ!」

縦横無尽に空間を駆け巡り、恐竜型メカを攻撃

「いっけー! パッション全開! ガルダ・ストライク!」

情熱に任せて、まるでダンスを踊るように両手の機械爪で攻撃を重ねる

「絶対にみんなには手を出させないよ! この空はアタシが守るんだから!」

※アドリブや、他キャラとの絡みなどはご自由にお任せします!


柊・明日真
『第一』『アドリブ歓迎』
爺さん連中は引っ込んでりゃいいさ。
無茶すんのは俺達の役目だ。

さて、狙うなら足が妥当か…?
迷ってる暇もねえし、叩き易そうな辺りから行くか。
【怪力、鎧砕き】【烈震の刻印】で装甲を片っ端から叩く。
突入経路が確保でき次第、狙いを陽動、武装破壊に切り替えて攻撃継続だ。
【武器受け、見切り】で
致命傷を避け、多少の傷は【激痛耐性】で無視して押し通す!


ネグル・ギュネス
待った、爺さん達。
死ぬには、些か場所と時間が悪い、何故なら。
───俺達がいる。

【鳴宮・匡(f01612)】とバディを組んで行く
悪いが、この男と組めば、私は負ける気がしない!

【内部破壊班】として参戦する

巨大な敵、何するものぞ。
私は怯えぬ、機械だから。
刀を引き抜き、小型メカを【剣刃一閃】で、薙ぎ払う
隙は作った、デカブツをワンショットキル、頼むぜ?


内部の機関がある場所に辿り着けば、【カリキュレイト・アイ】で解析した後、【ハッキング】スキルを用いて、敵のメカの思考や指揮をめちゃくちゃにした後、破壊してやる

───な?
若造も、割と悪くはないと思わないか、爺さん。
【他者連携、絡み、アドリブ歓迎】


神元・眞白
【wiz/アドリブok/第1】
(民間船に乗り込んでおきます)
猟兵の存在を伝えながら、流れ弾というより流れメカを打ち落としておかないと。
外に出るのは飛威と符雨に任せて、飛威はザーヴラに。符雨は船の護衛に。
私は私でおじいちゃん達の相手を....こほん、外への支援。
戦いは数だけど、質の部分で見ないと。
中に行く人の為に陽動を最初は主に。
装備、部位破壊はその次に。

逆鱗っていうなら、顎下?
あの大きさなら貫通だったり、斬り落としはどうだろう。
でも飛威ならできる....?
威力、だから。うん


鳴宮・匡
『第二部隊』
◆ネグル(f00099)と協働
◆他連携OK・アドリブ歓迎

やれやれ、暑苦しいヤツだな
ま、でもお前の腕は信用してるし
信用されてるならその分は働かないとな

そんじゃ、やろうか
「前を向いて、生きる為にあらゆることをやれ」、だ

ネグルが斬り散らした撃ち漏らしを処理しながら内部を進攻
さっさと進路を開けて貰おうぜ
手間のかかりそうなデカイ奴へは【抑止の楔】
駆動部やセンサーを潰した後でコアを叩く

内部機関は【見切り】や【聞き耳】で得られる情報に
ネグルのハッキングから得られた構造解析も加味して
中枢に近い処や重要機関を優先して破壊

……あー、増援が来たらこっちで受け持つんで
そっちは任すぜ、「相棒」、なんてな


モリ・ダニー
第一部隊希望
居住可能惑星の無いスペースシップワールドで恐竜型戦艦とは銀河帝国にもふざけた連中がいるみたいだな
だがそういう馬鹿は嫌いじゃない、受けて立とうじゃないか。

さて戦車や装甲車なら比較的装甲の薄いを狙うトップアタックかボトムアタックを行うものだが、相手は巨大戦艦だ、どこを狙おうとカッチカチだ。
だったら、むしろ一番装甲の分厚いところを狙うとするか、装甲を厚くしているって事は火器や四肢、尻尾でのアクティブな防御がしづらい場所だってことだ。

これだけでかいとはずす心配も無い
ダニー!御代りでここ掘れワンワンだ!第二部隊のための花道を作ってやるとしようぜ。


ゴォグ・ツキシマ
【第一部隊】:POW
待たれィ、待たれィ御老人方!ここはゴォグらに任せられよ!
その心意気、猟兵が引き継ぐのである!

いやはや、これはまた何ともデカい!解体も一手間掛かりそうであるな!
このゴォグは、味方があのデカブツへ取り付く為の道を切り拓くとしよう!
【灰よ、灰よ!】をもって、敵の生み出した小型恐竜メカ、特に進路上の機体を排除するのである!
道が拓ければ、ゴォグも装甲の破壊に加わり第二部隊の突入口を作るのである!

もし味方に危機あらば、ゴォグがこの身をもって壁となろう!
この身を盾とすることに躊躇いはないのである!(技能:かばう)
さあ、さあ、覚悟せよ! 猟兵が来たぞ、おまえの敵が!


シーザー・ゴールドマン
【POW】『内部』(外部が手薄な場合はそちらでも構いません)
これはこれは。浪漫を感じるね。
――破壊しないといけないのが残念だ。
戦術
『シドンの栄華』を発動。
破壊の魔力を極限まで高めて[衝撃波]を放って内部を破壊して回る。
この際、[第六感]で効率的な破壊箇所が察せれればそこを重点的に。
接近した恐竜メカにはオーラセイバーを振るって対応
(2回攻撃、鎧無視攻撃、怪力、フェイント、カウンター、先制攻撃等)
防御面はオーラ防御、第六感、見切りに期待。

勇敢な老人諸君はこの戦場の事を孫などへの土産話とすると良いよ。



●宇宙船〈レインフォース号〉
 彼らはみな死に場所を求めていた。といっても、人生に絶望していたわけではない。
 どうせ死ぬなら、この命で何か大それたことを成し遂げたい。
 ただ、そんな益体もないことを考えていただけの、大馬鹿野郎どもだ。
「銀河帝国のくそったれどもに、目にもの見せてやろうじゃないか!」
「船長閣下がそうお考えならば」
 芝居がかった調子で掛け合い、船首を恐るべき機械恐竜に定める。
 そしてエンジンを全力前進――。
『待たれィ、待たれィ御老人方!』
 その時、いやに仰々しい男声が響き渡った。
 まるで内側で轟々と炎を燃やす炉のような、力強い音に、老人たちは怯んだ。
「だ、誰だぁ!?」
『ゴォグ・ツキシマである! その心意気、ゴォグらが引き継ごう!』
 言葉とともに、正面ビジョンに一機のウォーマシンがぬっと顔を出した。
 いや、それだけではない。宇宙空間に……人が、浮かんでいる? 生身で!
『爺さんたちは引っ込んでな、無茶すんのは俺たち猟兵の役目だ』
 赤髪の戦士……柊・明日真は、野性的だが力強い笑みを浮かべる。
 老人たちは知る由もないが、彼らは生身そのまま宇宙にいるわけではない。
 しかし、世界の住人からすればありえない光景と、その単語が彼らを騒がせた。
「猟兵だって? お前さんがたが、まさかあの?」
『そういうこと。かっこいいとこ見せたげるからさ、おじさんたちはもうちょっと待っててよ!』
 金色の瞳を持つ少年、リグレース・ロディットは自慢げに胸を張る。
 老人たちは困惑したように顔を見合わせた。
「しかしよ、いくらなんでもお前さんがたみたいな若ぇのを行かせるわけにゃ……」
『そういうの、年寄りの冷や水って言うんだぜ? 知らないの?』
 横から口を挟んだ黒髪の青年を、その隣に浮かぶ白い髪の男が小突いた。
『一言余計だ、鳴宮。……だが、死ぬには些か場所と時間が悪いのもたしかだ』
 なぜなら――猟兵(おれたち)がここにいる。
 ネグル・ギュネスのそんな台詞に、今度は鳴宮・匡が暑苦しいなと肩をすくめた。
 そして彼らは、老人たちの答えを聞くまでもなく飛翔していく。
「……すげえな、あれが伝説の再来か」
 誰かが呆然としたまま呟いた。
 彼らすら知らぬ太古の記憶が、その遺伝子から蘇ってきたかのように、胸が騒ぐ。

 だが、敵はそんな彼らを見逃してはくれない。
 猟兵たちが飛翔した直後から、あちこちにぽつぽつと爆発の輝きが灯る。
 その火線をかいくぐり、レインフォース号に迫る敵手がないわけではない!
「ってボケッとしてる場合じゃねえぞ! 面舵一杯!!」
「だ、だめだ、速すぎる!」
 数機の恐竜メカが、レインフォース号に吶喊を仕掛けてきた、まさにその時。
 ふわりと横合いから飛び込んできた一体の人形が、それを蹴散らしてみせた。
 然り、人形である。かくも自在に銃火器を操るのは人間業ではない。
「心配ない、あの子はこういうのが得意だから」
 ――それを手繰る者がいるとすれば、まさにそれは人外の技だろう。
 ゆえに彼女、神元・眞白もまた人形であった。ミレナリィドール。
「なんだお嬢ちゃん、いったいどこから!?」
「まさか、あんたも猟兵なのかぁ?」
 突如としてブリッジに現れた少女に、どよめく老人たち。
 眞白は無表情のままこくりと頷いた。
「符雨、そのまま船の護衛を。飛威はあの恐竜のもとへ向かいなさい」
 もう一体の人形・戦術器が現れ、こくりと頷き指示に従う。
「ここは私たちが守る。なんだったら話し相手にもなる」
「そ、そりゃありがてえが、大丈夫なのか……?」
 おずおずとした問いかけに、今度は眞白が人形めいて頷いた。
 そして正面ビジョンを指差す。宇宙の黒を貫くいくつもの鋭き光条。
「ここに来たのは、私たちだけではないから」
 いかにも、それこそこの場に集いし猟兵たちの、勇ましき後ろ姿であった。

●戦闘宙域XXX-888
 巨竜は憤っていた。戦艦級個体"ザーヴラ"は、それ自体が意思を持つ。
 ゆえに苛立った。無敵無双であるはずの己の歩み、蹂躙が、邪魔されたことに。

 AAAAAARRRRRRRGGGGGGHHHHHH――!!

 怒りは咆哮となり、空間を揺らす。
「おおおー! でかーい、それにうるさい! 本物のメカ怪獣だー!」
 キマイラの少女、劉・涼鈴は目をキラキラさせていた。
 デカくて強い恐竜、まさにロマンの塊。まだ12歳の少女にとっては夢のようだろう。
「住む惑星もないのに恐竜型メカとはな、銀河帝国にもふざけたやつがいるらしい」
「ほんとだよねー、デカくてぶっこわしがいが……うわ、わんこだー!」
 涼鈴はもっと目を輝かせた。なにせ相手は、そう、もふもふのサモエドだ!
 思わずもふりかけたところで、犬の額に巻かれたゴーグルがびよんびよん跳ねた。
「待て、ダニーを愛でるのはあとにしてくれ! こいつは俺の相棒なんだ!」
 いかにも、彼……否、彼らはふたりでひとりの猟兵である。
 合わせて名をモリ・ダニーと言った。ヒーローマスクなのだ。
「いまは戦闘中だ。あんなモノを作る馬鹿どもの挑戦を、受けて立ってやろうじゃないか」
「そっか、そうだね! よーし、いっくぞーとつげきー!」
 ギュンッとすさまじい速度で宇宙を駆ける涼鈴。
「元気な女の子だ。俺たちも行くぞ、ダニー!」
 オン! と勇気に満ちた吠え声で応じ、サモエド犬ダニーは宇宙を走る!

 そんな彼らを、さらなる加速で飛び越える二つの影あり!
 一人は日焼けした肌の眩しい、快活そうなサイボーグ。青空・フィリア。
 そしてもう一人は、長い黒灰髪をなびかせる鎧装騎兵。春日・釉乃。
 いずれも機械の翼と巨大ブースターを背負う、麗しの少女である。
「V.E.B(ヴァリアブル・エクシード・ブースター)の速度についてこれるなんて、やるね!」
 釉乃の言葉に、フィリアはにぱっと天真爛漫に笑った。手足の無骨さと対極的だ。
「ふふん、アタシの本気はこんなもんじゃないよ? 見せてあげるっ」
 機械翼が真空のなかで羽ばたけば、驚異的な加速を彼女にもたらした。
 迎え撃つのは恐竜メカの群れ。一機一機がそれぞれ彼女よりも巨大だ!
「船の中じゃ狭くて飛べないもん、張り切って飛んじゃうんだから!」
 だがフィリアはまるで舞踏のようにその間を飛び、巨大な機械爪で敵を切り裂く。
 彼女がステップを踏むたびに、爆炎が黒き虚空を焦がす。まさに天に舞う疾風!
「言うだけはある、か。けど、もう少し周りに注意が必要ね!」
 釉乃は愛刀『白雲去来』を霞の速度で鞘走らせ、フィリアの死角をカバーする。
 黒灰と金の軌跡が螺旋を描き、爆炎の徒花がそれを飾った。

 しかし敵は多い。倒せば倒すだけさらに現れる!
「キリがないね、こっちも奥の手を使うしかないか」
「ほう? 奥の手か。それも浪漫のある単語だね」
 釉乃の呟きに、いつのまにか居た赤服の紳士、シーザー・ゴールドマンが応えた。
 金の瞳が興味深げに彼女を見やり、そしてそびえる巨竜を見据えた。
「私は中から叩くつもりでね。彼らもそうなのだが、攻めあぐねているようだ」
 シーザーが親指で示した先では、ネグルと匡が敵群を相手に奮戦している。
「露払いをお願いしてもいいかね? お嬢さん」
 釉乃はやや思案したあと、頷いた。そこへ二人を狙い、敵メカが襲いかかるが。
「ダンスの相手はアタシだよ! パッション全開、ガルダ・ストライクッ!」
 フィリアがこれを撃墜。そして再び死の舞踏へと舞い戻った。
 再び紳士と騎兵は顔を見合わせ、頷く。そしてシーザーは巨竜へ突撃。
 一方の釉乃が、鎧装から取り出したのは……。

「むっ、あれは!」
 "それ"を遠方から目視したゴォグ、周辺で戦っていた猟兵たちに叫ぶ。
「皆、離れられよ! このゴォグも炎をもって道を拓くゆえ!」
 不穏な言葉に、猟兵たちは一斉に戦線を下げた。
 必然、敵の群れがそこに飛び込んでくる。雲霞の如き敵メカの黒!
「さあ、さあ、覚悟せよ! 分別! そして焼却! 緊急異能焼却炉、ハッチ開放ォ!!」
 ガギョン! と開かれた装甲の下、渦を巻くのは白熱化した炎!
 太陽のごとき輝きのそれが、炸裂を待ち望むかのように輝く。
 そして釉乃が取り出したもの。それは……。
「――バズーカァ!?」
 明日真は思わず素っ頓狂な声をあげた。さもありなん。
「おい、しかもあのマーク……」
「核ミサイルでも撃つつもりか!?」
 ネグルと匡が咄嗟に声を上げ、さらに後方で退いた。他の猟兵も後に続く。
 ターゲットスコープ越しに巨竜を見据え、にやりと笑う釉乃。砲口が敵を狙う!
「蒼き清浄なるセカイのために、エンペラーズマインドよ!
 あたしは帰……ってないか、えーとじゃあ、あたしが来た!!」
 決め台詞をトチりつつ、気を取り直してトリガーを引く。
「ゴォグが燃やすは龍の大群なり! 灰よ、灰よ!!」
 同時にメチャ熱い数千度以上の業火が、敵陣中央めがけて噴射された!

 AAAAAARRRRRRRGGGGGGHHHHHH――!!?!?

 龍は、ヒトの行いに恐怖した。
 猟兵ですら眼がくらむほどの、絶対の破壊がそこに生まれた。
 数百メートル、否、下手をすればキロ半径すら焼き尽くす火球が、敵を飲む。
 それはザーヴラ本体にまで届き、装甲を赤熱させた!
『……たーまやー』
 戦術器越しに眞白が呑気なことを言った。ほとんどの猟兵たちは唖然としているが。
「これでよし。いやー、いつ見ても綺麗ね、この核っぽい人類救済の炎は」
 っぽいってなんだ。真実は本人のみぞ知るところである。
 ともあれ強烈な報復兵器による一撃は、釉乃にとっても負担が大きい。
 放り捨てたバス―カは、過負荷により直後に爆散した。
「じゃああたし、ほかの宙域の援護に向かうから! あとよろしく!」
「ではこのゴォグが先陣を務めよう! 皆よ、ついて参るのである!」
 離脱する釉乃。反対に鏃となって炎が霧散しつつある宙域に吶喊するゴォグ。
「広くなって踊り放題だー! トップギアでいっちゃうよぉー!」
 まずフィリアがそれに続く。凝りもせずさらに現れたメカを切断、割裂、破斬!
 鋼鉄の爪と翼がダークマターもろとも鋼の恐竜を引き裂いていく!
「応よ。しかしどこを狙ったもんかね、やっぱ足か……?」
「いや、おそらくどこを狙おうとカッチカチだ。ならば逆に装甲が厚い場所を狙うべきだろう」
 開かれた戦線を第三手として駆けながら、明日真とモリがやりとりした。
「なら背中だね! あれだけおっきいなら私の出番だよ!」
 涼鈴が振りかざすは、恐るべき大きさを誇る万能武器『覇王方天戟』。
 だがそこへ、広域殲滅モードに移行したザーヴラの巨爪が降ってきた!
 ただのひっかきと侮るなかれ。大きさと質量はそのまま破壊力に転ずる。
 ビルほどもある太さの爪を避けるのは至難。だが!
「燃える痛みをその身に刻め! 凍血焼刃(フリーズ・ブルート)ッ!」
 リグレースの放った血の雨が爪に触れた瞬間、パキパキとまたたく間に凍りつく。
 さらに彼は恐るべき鎌『暴食紫炎』を振るい、爪を二本一気に叩き折った!

 GRRRRRRRR――!!!

 ザーヴラは怒り狂い、破壊された腕でリグレースごと周囲の空間を薙ぎ払う。
 かろうじて直撃は避けたものの、大質量ゆえリグレースのダメージは重い。
「ぐぁ……そんな攻撃、我慢できるもん! 嘘じゃないぞ!!」
 煩わしげに、龍の双眸がダンピールを見据える。それこそが彼の狙いだ。
 オブリビオンにとって、猟兵は天敵である。ゆえに注視する。してしまう!
「かっけえことするじゃねえか、だったらこっちの腕は俺の担当だなァ!」
 ザーヴラが振りかぶらんとしたもう一方の腕に、三日月型の戦斧が叩きつけられる。
 それ一撃で戦艦級個体の装甲を破壊できはしない。しかし明日真は怯まない。
「要は全部ぶっ壊しゃいいんだろ? クズ鉄にしてやるよ!」
 喰らえば即死もあり得る大質量をきりきり舞いでかいくぐり、一撃を叩き込む。
 また一撃を。さらに一撃を。ひび割れ、砕け、微塵と帰するまで!

 リグレースと明日真に腕部の対応を任せ、脇をくぐる猟兵たち。
 それを迎え撃つように、今度は巨大な尻尾が襲いかかってきた!
 回避行動を取るには距離が足りない。一方、先陣を切るは……。
「待て、正面から受け止めるつもりか? 無茶だ!」
 ネグルは思わず叫んだ。叫ばざるを得なかった。
「このゴォグ、この身を盾とすることに躊躇はない!!」
 雄々しき重機はただ轟きをもって応えた。
 ユーベルコードによる炎の噴射すら加速力に変換し、まっすぐに飛翔。
 3メートル近いそのボディすらかすむ尾を相手に……彼は、正面から激突!!
「ぬうううっ!! いやはや、これは解体に手間がかかりそうであるな……!」
 全身にヒビが走り、火花を散らしながらも呵呵と笑うゴォグ。
 手を伸ばしかけたネグルを、匡がその手首を掴んで制した。
「"前を向いて、生きる為にあらゆることをやれ"、だ。行くぞ」
 反論はなかった。猟兵たちは尾を伝い、そしてザーヴラの背面に到達する。
「これだけでかいと、外す心配も無いな。ダニー! あの子に合わせて、ここ掘れワンワンだ!」
 オン! とサモエドが気高く応える。涼鈴は頭上で方天戟をぐるぐると回す。
「じゃあ行くよっ、おりゃおりゃおりゃー!!」
 そして突撃! 目の前にそびえるは、鋼鉄扉よりも強固な背面装甲だ。
 だがそれゆえに防衛はない。すなわち、全力を以てユーベルコードを叩き込める。
 無重力空間かつ真空ゆえに、加速度は地上の比にならない!

 ――KRAAAAAAAAASH!!

 地面すら割り砕くほどの、覇王方天戟による捨て身の攻撃。
 ベキベキベキ! と音を立て、背面装甲に亀裂が走る。
「さあ御代りだ! やってやれ、ダニー!」
 オン! SMAAASH!!
 オン! SMAAASH!!
 一見ただの前足による犬パンチにしか見えないが、威力は甚大。
 そこへさらに眞白の戦術器・飛威が援護を叩き込めば……見よ。裂け目が!
「大したものだ。さあふたりとも、今度は私たちの番だぞ」
 にやりと笑うシーザーに、熱き二人の男が同時に頷く。
 彼らは一目散に敵巨体内部めがけ、全速力で突撃した。

●老人たちは見た
「す、すげえ」
 誰かが呻いた。それを笑うものは誰一人として居なかった。皆、同じ思いを抱いていたからだ。
 レインフォース号。他の民間船とともに、圧倒的な猟兵たちの戦いを目の当たりにしていた。
 時折防衛をかいくぐり船に襲いかかるものもあるが、これは全て戦術器が対応している。
「そう、あれが私たち猟兵の力。でも」
 遠くから戦闘を見やる。まるで黒い波のように、無数の敵メカが横列を形成する。
 その只中を、鋼色の風が舞うのが見えた。遅れて、爆炎の花が咲き誇る。おそらくはフィリアだ。
 光が描く軌道は、心の赴くままに舞い踊る少女のように天真爛漫で、自由奔放だった。
 
「この戦いは、私たちだけでは勝てないの」
 眞白は語る。老人たちは見る。
 戦艦を超える大きさを持つ鋼鉄の龍が、たった数人の若者に振り回されるさまを。
 爪が宇宙の虚空を切り裂く。小さな少年がかろうじてそれをかいくぐり、血をばらまく。
 傷跡が増えるたび、同じだけリグレースの火力は増した。装甲が凍りつくのが見える。
 そして長大な円弧を描く紫の炎。すなわち、彼が振るう大鎌『暴食紫炎』によるもの。
 冷却と焼灼という極端な温度変化により、強固な装甲はひび割れもろくなっていく。
 同じように、攻撃を恐れずひたすら巨大な戟を叩きつける少女の姿が見えた。
 ザーヴラが涼鈴に狙いを定めれば、リグレースが。
 リグレースに狙いを定めれば、涼鈴が。それぞれの獲物で、確実に外骨格を破壊しているのだ。
「だから自棄になってはダメ。戦いはまだこれからだもの」
 もう一方の巨腕はどうか。目を向ければ、その瞬間にまばゆい火線が巨腕を包み込んだ。
 ゴォグのユーベルコードによるものか。当然、ザーヴラは煩わしげにこれを払おうとする。
 その隙を狙い、赤い輝きが腕を駆け上り、戦斧を叩きつけるのが見えた。
 真空を伝い、ガンッ!!という重々しい轟音すら伝わってくるかのような一撃だった。
 担い手の明日真とて、ゴォグ同様無傷ではあるまい。それでもなお、斧は強く、重い。
「まさか、こんなすげえもんが見られるとは……」
「こりゃあ、生き急いでるのが恥ずかしくなってきちまった。なあ!」
 老人たちは顔を見合わせた。そして頷きあう。
 何故か? ……両腕にまとわりつく小蝿を撃ち落とそうと、巨竜が尾を薙ぐのが見えた。
 しかし大きくしなったそれは、まるで何かに引き抑えられたかのようにぴんと張り詰めている。
 彼らは知っている。恐ろしい直径と長さのそれを、たった一匹の……否。
 一人と一匹。ふたりでひとりの猟兵、モリとダニーが懸命に押し留めていることを。
 フォースセイバーの輝きが宇宙をかすかに照らす。勇気が湧いてくる光だった。
「ようし。面舵一杯! 全速前進だ!」
 突然船長が上げた声に、眞白は無表情のまま……いや、わずかに柳眉を驚きに釣り上げた。
「待って。あそこには――」
「お嬢さんも行かなきゃ、だろう?」
 老人たちがニヤリと笑う。そう、彼らはぎりぎりまで近づき眞白を送り届けるつもりなのだ。
「誓って危ないこたしねえよ。もう少し近くで見ておきてえのさ、このすげえ戦いをよ!」
 そして船は虚空を滑る。……巨竜に、それを咎める余裕は、もはや全く残されていない。

●"ザーヴラ"内部・第十四番通路
 ちりん――ザンッ!!
 軽やかな鈴の音は、剣閃を届ける兆し。ネグルの振るう『桜花幻影』の鳴き声である。
 無機質な連絡通路を、シーザー、ネグル、そして匡は猛然たる速度で突き進んでいた。
「数が多いな。当たり前だが中も広い、こんなオブリビオン見たことないぞ」
「いやまったく、浪漫に溢れる機体だな。破壊しなければならないのが残念だ」
 立ちはだかる無数の恐竜メカどもに片手を伸ばし、破壊の魔力を迸らせる。
 衝撃波めいたオーラは敵を、さらにはその奥から漂う未知のバイオウイルスすら退けた。
「さっさと進路を開けてもらいたいとこだが……どうしたもんかね」
 匡のため息混じりの言葉に、シーザーはあっさりとこう言った。
「では私が君たちを奥へ送り出そう。ああなに、無茶はせんよ」
 二人の何か言いたげな視線を飄々と受け流す。
「むしろ単独のほうが"やりやすい"くらいだ。君たちは二人のほうがいい、そうだろう?」
 これまでの戦いぶりから、シーザーはネグルと匡のコンビネーションを評価していた。
 ゆえの提案。二人に反対する余地はなかった。
「ならば任せよう。必ず外で」
「爺さんどもの代わりにくたばるなんざ勘弁してくれよな!」
 二人を見送り、襟元を正す。そして紳士が振り返れば、そこには新たな寄せ手の波。
「さて、私は私で破壊を続けるとしようか。諸君、私に勝てるかね?」
 不敵な笑みとともに、愛用のオーラセイバーを顕現させる。
 金色の瞳が不敵に輝いた。そこへ、恐竜どもが襲いかかる――!

 一方、二人は並み居る敵を次々に切り払い、いよいよそこへ辿り着いた。
 そう、デスモ・ブラキオスの心臓部、駆動機関のある制御室に。
 だが……なんたることか。
《――AAAAAAARRRRRRGGGGGHHHHHH!!!!》
 その前には、心臓を守るかのように小型のデスモ・ブラキオスが鎮座している!
 恐るべき咆哮。それを振り払うかのように、ちりん、とネグルの鈴が鳴った。
 同時に金色の瞳が輝く。いかにしてそれを破壊するかを分析しているのだ。
「……お前のあれなら、止められるな?」
 匡は肩をすくめた。がしゃり、と愛用の拳銃『FMG-738』を構える。
 ……そしてもう一方の手には、特殊型自動小銃『RF-738C』。
 拳銃を小型体へ。自動小銃の照準は、いましがた駆け込んできた出入り口へ。
 そこにはすでに、敵の大群が押し寄せつつあったからだ。
「お前の腕は信用してるさ。俺もそのぶん、働かないとな。そうだろ? "相棒"」
 ネグルは一瞬瞠目したあと、ふっと笑う。
 ――そして二人は同時に動いた。トリガを引く。刃を構え疾駆する!
《GRRRRRRRRRRRッ!!》
 BLAMBLAMBLAM! BRATATATATATAT! BRATATATATATAT!!
 片手で駆動部を狙った精密な銃撃を、もう一方では敵を薙ぎ払う火線を。
 匡の援護を受け、ネグルは走る。敵が牙を、爪を剥き出しにした。
 恐れはない。なぜならこの身は鋼鉄。ただ切り裂くのみ!
 麻痺しながらも、小型体の振り上げた牙が降ろされる。
 銃撃をものともせず、敵の群れが匡に襲いかかる。そして――。

●そして
 第一部隊もまた死闘を繰り広げていた。
 いかに猟兵たちが機敏かつ、装甲を砕くほどのユーベルコードを持っていようと。
 その質量は巨大。その威力は甚大。そして敵は堅牢。だが抗うしかない。
「ふん、僕みたいなガキも倒せないなんて、銀河帝国はほんとにバカばっかりだな!」
 流れ出た血を鎌に吸わせながら、リグレースは強気に言い放った。
「嫌いではないがな。あと少しだ少年、ダニーも踏ん張れよ!」
 モリの激励に、ダニーはオン! と力強く咆える。
「まこと解体に手間がかかることよ、だがこのゴォグ、まだまだ落ちぬのである!」
 ガキン! と両拳を打ち合わせ、ひび割れたボディに活力を漲らせる。
「そろそろ中のほうも心臓部を叩いてる頃だろ、できればタイミングを合わせてえな」
「だったらさ、私とあなたでどかーん!ってあいつをぶっ壊すのどうかな!」
 明日真と涼鈴は顔を見合わせた。然様、互いの武器を焦点を合わせれば、あるいは。
 リグレースとゴォグのユーベルコードも鍵になる。急激な温度変化は金属を脆くさせるのだ。
「なら、アタシが陽動するよ! 絶対に、みんなにこれ以上手は出させないっ」
 フィリアには情熱と怒りが溢れていた。爪が打ち合い、火花を散らす。
 そこへ遠巻きに近づいてきたレインフォース号。甲板に居た眞白が合流する。
「船のことは符雨に任せてあるから、大丈夫。私も手伝う」
 今は猫の手も借りたい状況だ。一同は余計な言葉なしに、頷いた。
 手順は整った。あとは兆しだ、ヤツの警戒と防衛網を崩す一手があれば……。

 その時!
「オブリビオンよぉ、今度こそあたしは帰ってきたぁー!!」
 颯爽たる声! そしてあれは、おお。他宙域の援護を終え、緊急帰還した釉乃!
 そして構えているのは、いかにも第二射である。鋼鉄の恐竜が雄叫びを上げた!

 AAAAAARRRRRRRGGGGGGGHHHHH――!!

「今度こそ、吹っ飛べっての!」
 ドウッ――KRA-TOOOOOOOOOOOOOOM!!
 発艦準備を整えていたメカ部隊が、救済の炎に呑まれて消える。
 いまだその残滓と熱波が漂う虚空を、痛みを噛み殺しまっすぐに駆け抜ける猟兵たち。
「まさに御代りだな、ダニー! かましてやれ!」
「今度のパートナーはわんこちゃん? 面白いね、じゃあ一緒に踊ろっか!」
 鋼鉄の翼持つ少女と、白き毛並みの雄々しき犬が舞い踊る。
 連鎖爆発する敵の群れをS字を描くようにかいくぐり、突然に左右二手に!
 そしてフィリアは左、モリとダニーは右。同時に巨腕を、高速連続攻撃で破壊した!

 ――GRRRRRRRRッ!?!?

「緊急異能焼却炉、ハッチ開放ォ! グッドバッド・インシネレィト! である!!」
 ゴォウッ!!
 がら空きの胴体、否、喉元を狙って吹き上がるゴォグの超高熱白炎。
 あまりの熱にゴォグ自身の装甲すらじりじりと焦げて融けかかる。捨て身の一撃だ。
「かっこいいとこ見せるって言ったからさぁ、これでも喰らえッ!」
 炎が途切れた瞬間、リグレースがそこへ飛び込んだ。
 ちりちりと熱波が肌を焦がす。目を開けているのも苦しいほどの状況。
 痛みをこらえる。そして、紫の炎を纏う凍れる刃が、喉元を横薙ぎに裂いた!
 急激な温度上昇からの、冷却。びしり、と逆鱗にヒビが走る。
 ザーヴラはそこへ、恐るべきバイオウィルスを口部から吐き出そうとする。が!
「飛威、行って!」
 戦術器が駆けた。人形ゆえの、人形だからこそ出来る戦術。
 すなわち、あふれかえる病原菌の只中に突っ込み、その根元を砕くことだ。
 巧みな攻撃はバイオフィルスの噴霧口を破壊。以て危険を排除する。

「纏めて……いや! 確実に、ぶっ飛ばすッ!! おぉらッ!!」
 右翼。飛び込んだ明日真の裂帛の気合い。
 鎧殻の戦斧に刻印が浮かび上がる。残る力を振り絞った渾身の一撃。
 烈震の刻印(ディザスタークレスト)の名に違わぬ、激甚たる致命打!
「いい加減に、ぶっこわれろぉーっ!!」
 左翼。ぎらりと輝く涼鈴の赤眼、そして振りかぶられる覇王方天戟。
 身の丈よりも巨大なそれに溢れんばかりの怪力を込める。みしりと柄が悲鳴を上げた。
 そして獣じみた膂力を叩きつける。まったくの同時に!

 ……KKRRAAAAAAAAAAAASSSSSHH!!

 その一撃は巨体を揺らした。そう、内部で戦う彼らにも届くほどの衝撃だった。
 予想外の振動を受け、敵の群れに僅かな、ほんの刹那の混乱が生まれる。
 シーザーはそれを、悪魔じみた第六感で見抜いていた。そして待っていた。
 匡は高感度センサーじみた聴覚と、寸分の狂いも見逃さぬ視覚によって捉えた。
 ネグルはただ、それを当然のものとして受け入れた。隙は生まれた。それだけだ。
 そして三人もまた、それぞれの力を炸裂させた。
 斬撃。必中の狙撃。そして破滅的なまでの膨大な魔力。
 それは鋼鉄の小型龍を心臓もろとも断ち切り。
 溢れかえるほどの敵影を、ただの一発の銃弾がまっすぐに劈き。
 数多の駆動機械もろとも、敵を、死の病を押し返し、吹き飛ばした。

 鈴が、薬莢が、オーラの刃の風鳴り音が、静寂に響いた。
 ……直後、デスモ・ブラキオスの巨体は!
 内外のあちこちで爆発を起こし、火花を散らし……雄叫びとともに、崩壊破滅した……!!

●獣去りて
「うおおおおおっ!?」
 巨大怪獣の爆発が虚空を揺らす。レインフォース号もまた大きく振動した。
「おい船長、よかったのか? やっぱり任せておいたほうがよかったんじゃねえのか!」
 ある老人が叫んだ。老いた船長は帽子をかぶり直し、叫んだ。
「バカ野郎! ワシらがここにいねえと、ええ? 誰があいつらを回収すんだ!」
「おお、戻ってきたぞ!」
 爆発炎上、砕け散って沈みゆく巨体を背に、傷つきながらも胸を張って猟兵たちが来る。
 これは戦いの終わりではない。むしろ始まり、いわば火蓋を切っただけのことだ。
 だが象徴にして切り札たる超巨大オブリビオンを失ったいま、帝国の足並みは瓦解同然。
「よおし、若造たちを回収だ! そして今度はワシらの番だぞ、わかったか!」
 レインフォース号の乗組員、否、その宙域に集った全ての"解放軍"が応、と吼えた。
 戦いはこれからだ。戦端は拓かれた。受け渡されたバトンを、勝利へ繋ぐ――。

「どこもかしこも大乱戦ね、まったく」
 ついに始まった会戦を、泡を食ったように退く帝国戦艦の群を見ながら、釉乃は言った。
「まだまだ踊り足りないよー、次々ぃ!」
「げ、元気すぎんだろ……いや、でもこっからだな。マジによ」
 腕をブンブン振り回すフィリアに呆れつつも、生来の体育会系である明日真は笑った。
 彼らを迎えるように、レインフォース号が近づいてくる。
「若造も悪くはない、そう思ってもらえたらいいんだがな」
「だからってあんな無茶はもう勘弁してほしいぜ。俺、疲れちまった」
 軽口を叩き合いながらも、ネグルと匡は笑いあう。
 中枢まで飛び込んでいた彼らが脱出できたのは、ひとえに第一部隊の働きあらばこそだ。
 強烈なクラックによって生まれた第二の出入り口がなければ。
 そして、それを見越したシーザーの破壊工作がなければ――。
「このゴォグ、意気軒昂である! 帝国のものどもを解体焼却するまでは戦うのである!」
「まだまだがんばろー、えいえいおー!」
「ダニー、戻ったらたっぷりご褒美をやるぞ。ナイスワークだ、相棒!」
 発奮するゴォグ。片手を突き上げてやる気十分の涼鈴。モリにオン!と応えるダニー。
「僕もちゃんと我慢したもんね、いたたた……」
「……えらい、えらい」
 痛みを耐え続けたリグレースと、それを無表情のまま称える眞白。
 一方で、赤服の紳士は何食わぬ顔で髪を撫で付け、軽く呟いた。
「勇敢な老人諸君には、いい土産話が出来たことだろう。うむ」

 いかにも、この戦いはこの世界で永遠に語り継がれるであろう。
 老人たちは確かに見届けた。鋼の龍を討ち取った猟兵たちの生き様を……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月07日


挿絵イラスト