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大祓百鬼夜行㉑〜UDC-Null、襲来

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #UDC-P

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●陸の孤島よりSOS
 都会より遠く離れた新緑が生い茂り始めた山間部に、UDC組織の支部がある。そこはかつて、高度経済成長期やバブルの時代には『ハコモノ』と呼ばれる福利厚生施設…つまり保養所であった。バブルが弾けて所有していた企業の資金繰りが悪化した中で、たまたま縁があったUDC組織が表向きは保有している保養所のままでという条件で所有権を買い上げたのだ。
 元々は研修施設、それと幹部養成所も兼ねていたのか設備は中々と豊富で、辺鄙な場所に反して広大な敷地を有している。そして、去年より認知された友好的UDCである、通称UDC-Pの受け入れ先として、所員の数に反して宿泊施設を持て余している当支部に白羽の矢が立った訳である。この支部は対UDC用装備の研究開発を主に担う場所であり、世間とは隔絶されたここはUDC-Pの保護と秘匿するにあたりうってつけであったのだろう。

 ただこの支部には問題点が幾つかあった。ひとつは街より遠く孤立していること。最寄りの集落までには車で片道一時間を有する僻地で、当然ながら支部の近くにはコンビニなんて気の利いた物など存在していない。故に食糧事情は端的に言えば最悪であり、定期的な食糧物資の補給があるとは言えUDC-Pの受け入れに若干上乗せされた程度であった。
 しかしながら、陸の孤島と言えども周囲は自然の恵みに溢れる環境であるため、手の空いた人員で季節の山菜採りや禁漁期間を守った上での川魚釣りなど、長年に渡る涙ぐましい食糧事情の改善策が功を制してこの難所を乗り越えた。ついでにUDC-Pの協力も得られたので、最近は猪や鹿など動物性たんぱく質の調達が容易になり、同じ釜の飯を食べる気風の所員ならではで関係も良好である。

 閑話休題。UDC-Nullの存在を確認したUDC組織は、各支部に対UDC-Null決戦兵器である超常光線砲『U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)』の開発を指示し、ここの支部の責任者であり対UDC用装備の研究開発を任されている黒瓜・昭雄主任が率いる開発チームらが、試作品の完成にまで漕ぎ着けようとしていた。だが、あともう少しで完成となる矢先、UDC支部の電気設備が沈黙したのである。

「停電か」
「はい、配電設備に異常は見当たりません。どうやら、麓からこちらまで伸びている電線が断線したことによる停電のようです。現在復旧チームを現地に派遣しました」
 台風や大雪などの自然災害によって倒木が電線を切られたことは幾度なくあるので、所員たちは特に慌てた様子もなく復旧にあたっていた。だが、天気は快晴そのもので、日本晴れ続きもあり雨による土砂崩れの線も考えられない。UDCの襲撃に備えて各所に設けられたセンサーも反応がない。原因は何であるか黒瓜がタバコを咥えながら思案しようとしたその時、けたたましい警報が支部内に響き渡った。

「どうした!?」
「何者かが門を破壊して突破しました!」
「監視カメラの映像はまだか!」
「捉えました。……これは」
 停電によろ切り替わった非常用電源によりかろうじて生き残っている警備システムが捉えた映像に、所員たちは息を呑んだ。何も居ないのだ。だが、周囲の建造物が破壊され続けている様は、見えない怪物がこの支部を襲撃したとしか到底考えられない。

「どうやら目標は、UDC-Pたちが居留する施設に向かって行動をしているようです」
「すると、奴の狙いはUDC-Pか……。総員、第一種戦闘配備。急げ!」
 モニターには怪物の姿は映されていないが、アスファルトを砕いて残す足跡ははっきりと残されている。姿こそは見えないが、そこには何かが確かにいる。職員たちは、今まで自らが作り出した怪しげな試作品をそれぞれ持ち出し、見えない怪物の迎撃にあたろうとしていたのであった。


●グリモアベースにて
「UDC怪物ではないと証明されたものUDC-NullとしてUDC組織に呼称されてる骸魂に取り込まれた妖怪が、UDC組織に襲撃を行おうとしています」
 集まった猟兵たちを前に、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は緊迫した様子で、自らが予知した事柄を説明する。

「UDC-Nullに対してUDC組織が実戦投入に漕ぎ着けようと開発を進める、超常光線砲『U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)』の研究施設をオブリビオンが襲撃しようとしていますが、彼らの目的はそれではありません。そこで保護されているUDC-Pを取り込もうと襲撃してくるのです」
 彼らの意図は分からないが、何らかの思惑があってUDC-Pを狙おうとしている。人間との共存の道を選んだUDC-Pには依然と謎めいたものが多くある。仮にUDC-Pが骸魂に取り込まれれば、何が起きるかは未知数なのだ。

「問題は私たち猟兵であればUDC-Nullを視認できるのですが、ただの人間であるUDC職員たちには見えません。ですが、それでもUDC-Pたちを護ろうと、予知では決死になって戦おうとしようとしていました。残念ながら、そこから先のことは視えていません。UDC-NullがUDC支部を襲撃するのは、あともう少しになります。今転送すれば、襲撃された直後の施設内に転移可能です。どうか皆さんのお力をお貸しください」
 信子はUDC-Pの保護に纏わる事件に関わった経緯もあり、UDC-Pに対しては格別な思い入れがあるのだろう。それが彼女に、この予知を視させたのかもしれない。
 しゅるりと彼女のグリモアが宿る影が地面に伸びると、それがゲートとして形付けられる。影の門を潜る猟兵たちの姿を、信子は見守るように見送るのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 戦争も残り期間が一週間程となりました。
 まだまだ時間は残されているとは言えギリギリペースでもありますので、忙しい中でありますがペースアップして参りましょう。

●シナリオ概要
 UDC-Null……すなわち骸魂と合体した妖怪が、UDC組織に乗り込んで襲撃しました。UDC組織の拠点に侵入した妖怪は、拠点内を奥へと進んでいます。どうやら、拠点で保護されている「UDC-P(人間の害にならないUDC)」を取り込もうとしているようです。UDC組織のエージェントや職員たちは、妖怪の姿を見ることができずに大混乱に陥っていますが、猟兵達がやってくればすぐに状況を理解し、何かの役に立とうとしてくれます。戦場はOPでも触れましたが、人里離れた山奥にあるUDC組織の支部となります。妖怪にUDC-Pが取り込まれる前に、UDC組織のメンバーより支援を受けながら撃破するのがシナリオ内の流れとなります。

 よってプレイングボーナスは、『UDC-PやUDC職員と協力して戦う』、となります。UDC職員は奇抜なビックリドッキリな発明品で、UDC-Pはプレイング内で指定したUDC-Pが猟兵たちに何らかの手助けをしてくれるでしょう。

 それでは、UDC-Nullを迎え撃とうとするUDC職員たちにも負けない熱いプレイングをお待ちします。
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第1章 ボス戦 『精霊獣『キュウラー』』

POW   :    あの世からの暴れ馬
【蹄】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    気合いの入った精霊獣
【自由な発想による魔改造された精霊馬】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【怨霊を纒った炎】を放ち続ける。
WIZ   :    集合せし悪しき願い
【この世に戻り災いを振り撒きたいと願う怨霊】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[この世に戻り災いを振り撒きたいと願う怨霊]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。

イラスト:100

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鬼河原・桔華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

火土金水・明
「あなたに保護された皆さんを奪われる訳にはいきません。こちらも全力で邪魔をさせてもらいます。」「もちろん、取り込まれた方も助け出します。」(私が攻撃した場所をすぐにUDC職員さん達に攻撃してもらいます。)
【POW】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀色の疾風】で『精霊獣『キュウラー』』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも骸魂にダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



 UDC支部の金属で作られたゲートがひしゃげながら宙を舞い、重々しい鈍い音を鳴らしながら地面へと落ちた。UDC-Null…骸魂を取り込んだ妖怪、巨大なキュウリの精霊馬の姿をした精霊獣キュウラーは無貌の顔で周囲を見渡した。彼の目的はUDC-Pを取り込むことで、より強力なUDC-Nullへと成長を遂げようと生物的本能に従っていた。

「あなたに保護された皆さんを奪われる訳にはいきません。こちらも全力で邪魔をさせてもらいます」
 とは言え、相手の目的さえ分かれば対策は簡単だ。キュウリの怪獣がUDC支部を襲撃すると同時に火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、監視モニター経由で姿が見えないUDC-Nullの襲撃を目の当たりにしていたUDC職員たちが居る部屋へと転送された。彼女の説明により事態が分かった黒瓜主任は、唯一UDC-Nullの姿が視える猟兵とともに職員が随伴するように指示を下した。
 しかし、ただの人間であるUDC職員にはUDC-Nullの姿は視えない。様々なセンサーを複合した監視モニターでさえ姿を捉えれなかったということは、専用の観測機を開発されるまでは視ることは叶わないであろう。そこで、明は一計を案じた。

「いいですか? 私が攻撃した箇所を狙い撃ちしてください。相手は巨大なので容易に当たります」
 つまり、猟兵である明が攻撃した場所にUDC職員らが追い打ちを仕掛けるという作戦である。勿論、相手も攻撃を喰らえば反撃に転じるであろうが、攻撃を避ける指示も明が下すことになる。あまり近づいてもダメ、かと言って離れすぎてもダメ。そんな市街地のゲリラ戦さながらの攻防が、今始まろうとしていた。
 UDC職員は手にした試作の武器を手にしながら、固唾を飲んで何も居ない空間をじっと見る。透明な怪物の姿は見えなくても、舗装されたアスファルトの地面が次々と砕かれている様相から、そこに何かがいるのは明白である。今にも撃ちたい緊張感で手に汗がにじむ中、明は攻撃は今だと指示を下した。

「この攻撃で、妖怪を助け出す!」
 待ち伏せでの先制攻撃により、明は銀の剣を抜いてキュウラーへと駆け出す。これにより、相手の注意をこちらに引き寄せる事ができる。精霊獣は突如現れた猟兵を踏み潰そうと、太い前脚を振り上げて勢いよく下ろした。踏み砕かれたアスファルトの路盤として敷かれていた砂が舞い上がり、明の姿が粉塵で見えなくなる。だが、それを見守っていたUDC職員たちはどよめいた。彼女はキュウラーの脚を足場にして、砂塵の中から翔び上がっていた。

「残念、踏み潰したそれは残像です。さぁ、今です!」
 小さなビルほどあろうキュウリの怪物に、明は鈍色の軌跡を描きながら銀の剣を振るい払った。キュウリならではのゴツゴツとした体表に僅かな切れ目が走るが、魔力を込めた骸魂のみをダメージを与える一撃に、キュウラーが大きくのけぞった。僅かに付けた傷口に明がUDC職員から拝借した発光点灯するビーコンをねじり込むと、急いでそこから離れだす。
 そして、彼女と入れ違えになって、稲妻のようなものがキュウラーに浴びせられる。UDC職員が開発した試作型メーサー拳銃だ。稲妻状に蛇行するというエネルギーロスとジグザグ光線による思わぬ二次的被害発生問題で目下改良中であるが、威力に関しては申し分ないものである。その証左に、ビーコンを目標に浴びせられたキュウラーの体皮が焼け切り、体内の水分が一気に蒸発する水蒸気爆発で命中箇所が爆ぜるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜羽々矢・琉漣
暴走精霊馬……傍迷惑な!お盆はまだだよ!(おこぷん)


召喚したロボの装備はペイントミサイルの肩装備に、バズーカの腕装備。
ロボは自動操縦に任せて、ペイントミサイルで職員さんたちにも視認できるようにして、バズーカで脚を狙って体勢を崩させる。
俺は狙われにくくするために「Twilight」の【迷彩】で姿を隠しつつ、召喚したロボの陰から「Nigredo」の【呪殺弾】で脚を狙っていく。
脚が振るわれたら、ロボに掴まってロボの回避行動と一緒にその場を離脱。


あれだけの巨体だ、脚の一本でも大きく損なわれれば移動も困るはず……!



 キュウラーの爆ぜた表皮が晒されると、緑色の皮を挟んで瑞々しい白い身を覗かせている。こうしてみるとバカでかいオバケ精霊馬に過ぎないのだが、これでカクリヨファンタズムに繋がるこのUDCアースにまで進出し、UDC組織の喉元に刃を突きつけるまでに至った骸魂…UDC-Nullである。
 とは言え、先程の猟兵の援護をするべくUDC職員が放った一撃で分かったことがある。キュウラーの姿は一般人からは視認できないが、姿が見えないだけであって確かにその場に居るということだ。しかし、相手は透明な怪物だ。姿がキュウリの精霊馬そのものであったとしても、ここ妥尼智(ダニチ)山地に秘匿されたUDC支部へ行き着いた強大な骸魂に他ならない。

「暴走精霊馬……傍迷惑な! お盆はまだだよ!」
 そう怒りを顕にしているのは、UDC組織に所属している魔術師系ハッカーの夜羽々矢・琉漣(コードキャスター・f21260)であった。UDC組織出身の彼は、この支部の存在を当然ながら知っていた。あまりに辺鄙な環境のため、組織のメンバーからはやれ木を数えるのが仕事だとか、やれ島流しだとか比喩されているのが当支部である。
 とは言え、物心ついた頃から電子機器を自在に操っていたインドア派である彼からすれば、携帯電話が繋がるか繋がらないかの境目でもある退屈極まりない陸の孤島であったとしても、意外にとアウトドアを趣味とする職員の転属希望が多かったのもこの支部の特徴でもある。
 そんな都会からも人里からも離れた山の中の山の中ではあるが、裏を返せば守りに関しては盤石でもあり、山中の至るところには邪神の教徒や眷属であるUDCの襲撃に備えた警戒線が幾多にも張り巡らされている。
 だが、人目に視えない特性を活かしてキュウラーは、大胆不敵に正面突破を敢行した。転送されて聞いた停電も、アレが支部と人里を結んでる道路の電線を身体に引っ掛けて偶発的に起きたものだろう。

「……そうか。透明なら常に見えるようにすればいいのか」
 再び態勢を整えようとするキュウラーを前にしながらどこに居るのか慎重に伺う仲間のUDC職員らを見て、琉漣はある秘策を思い立つ。

「さぁ、染め上げてしまえ!」
 彼の手によって特別な魔改造が施されたタブレット端末状のデバイスに表示される複雑な電脳魔術式のコードを、ハッカー持ち前のタップ速度で一部修正を完了し終えるとSTARTのボタンを押す。プログラムが走りUC、戦闘式・機械蹂躙(コード・イェーガー)によってキュウラーほどの四脚型大型戦闘ロボットが召喚された。機械の獣はミサイルポッドとバズーカのような物が取り付けられていおり、琉漣が急遽変更したコードはこの装備の為であった。

 ──ドゥン!
 先手必勝とバズーカから砲撃が放たれた。しかし、自身と同じ体高の大型戦闘ロボットの出現に低く身構えたキュウラーが飛かかってきた。狙いが逸れた弾道は、キュウラーの背後にあった建物に命中し……カラフルな蛍光色に染め上げた。興奮したキュウラーは、背中に差されたマッチ棒の先端を激しく燃やして感情の昂りを示しつつ、琉漣の大型戦闘ロボットの背中に蹄を振り落として衝突した。揉み合う巨獣らを前にUDC職員が各々の武器を手に狙おうとするが、戦闘は激しく下手に撃てば味方である戦闘ロボットに攻撃が当たるのを怖れて躊躇ってしまう。
 だが、猟兵としてキュウラーが見える琉漣は狙撃に特化した長銃身の銃器を手にして狙いを研ぎ澄まし、腐敗・鈍化の呪詛の弾を撃ち放った。特製の呪殺弾を受けたキュウラーの体皮から白い煙のような物が立ちあがり、じわじわと腐食していく激痛に声無き叫びを上げるかのように仰け反る。

「今だ、反撃だ!!」
 琉漣の援護と指示を受けた戦闘ロボットは、仕切り直してキュウラーと距離を取ると同時にミサイルを一斉発射する。バズーカ同様にこれもペイント塗料が内風されたペイントミサイルで、命中すると爆風の代わりに塗料が飛び散って精霊馬の怪獣を染め上げた。

「こ、これは……ッ!?」
 ようやく初めてキュウラーの実像が塗料まみれになることに浮かび上がり、UDC職員たちにどよめきの声が起き始める。彼らは透明な怪物がどんな形状をしているのか、内心気になっていた。その場にいるのであれば、とした琉漣の機転で塗料を浴びせることでシルエットを晒したキュウラーを前にとあるUDCが叫んだ。

「まるでチョコバナナ…! そうか、あいつはバナナのような形をしていたのだな!!」
「えっ、ちょ、それは……」
 思いがけない回答に琉漣はアレはキュウリだと訂正しようとしたが、次々の確かにアレはチョコバナナだとか、何ヶ月も食べていないのに飯テロの精神攻撃を仕掛けてくるとはなどなど、UDC職員らは視えないUDC-Nullがバナナの怪物というイメージで浸透していくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

小泉・飛鳥
―――……やれやれ、こんな事態は避けたかったんだけれどな
とはいえ、やるべきことをしよう

職員さんたちの前に姿を見せて
猟兵で、君たちがいうUDC-Nullに近い生き物だ
苦労を掛けるね

君たちが守ろうと思っている者達を敵から遠ざける
敵を分断するから、協力してくれるかい
そう、ぺこりと頭を下げて

ありがとう
不可思議な状況は慣れているだろうが僕から離れないで

絵本を開く。さぁ、ここは魔女の森だ
敵を分断して、惑わせて時間稼ぎ
迷路の中では自由に走れないし、
……くふふ、怨霊を集める能力かいでも、君の位置を霊たちも見失ってるようだね

後はワンダーエッグで攻撃
職員さん達は僕が攻撃するところへ追撃してもらおう


シン・クレスケンス
【WIZ】
「おやおや、気の早いことで・・・」
精霊馬のような姿のUDC-Nullを見、現れるには時季外れだと苦笑。
UDC-Pの安全と支部の平穏は護ります。

僕の視覚情報をガジェットトランクの複数のホログラムモニターに魔術的な回路を通じて投影し、かつ声に出して指示することで、Nullの姿が見えない面々のサポートを。
僕自身の攻撃は【指定UC】で怨霊やNullを焼き、闇色の狼の姿のUDC「ツキ」にも皆を手助けして戦うよう命じます。
「手助けだと?面倒くせぇな」と舌打ちするものの、敵に向かって駆け出します。

猟兵達や所員とUDC-Pが共に戦っている姿を見て(共存、か。良い場所だな)と独り言。
優しく微笑みます。


シホ・エーデルワイス
アドリブ&連携歓迎

陸の孤島ですか
確かに物資の補給は難しいでしょうが
襲撃されても一般人を巻き込む可能性が低いのは利点でしょう
お陰で防衛に専念できます


不可視なら可視化するまでです

職員にコミュ力で作戦を伝え
庇う様に敵の前で立ちはだかり
蛍光塗料の目潰し誘導弾を撃って目印を付ける

敵が見えなくても塗料は見えるでしょう

更に敵の状態を伝えて味方を落ち着かせ鼓舞

怨霊は【終癒】で優しく語り掛け吸収

妖怪への攻撃は
暗視で骸魂のみをスナイパーによる部位破壊で浄化し不殺狙いの気絶攻撃


敵の攻撃は
第六感と聞き耳で見切り残像回避
当たりそうなら呪詛耐性のオーラ結界で防御


戦後
時間が許す範囲で破壊された設備を『聖紗』か【復世】で修復


魔女・ウィッチ
【おまかせプレイング】
「ほう…良いじゃろう。この偉大なる魔女である我が相手をして…話を聞きなさいよ!」

 西洋妖怪ウィッチの魔女×レトロウィザード、9歳の女よ。
「この偉大なる魔女の使い魔にしてやるわ。光栄に思いなさい!」

 普段着の魔女装束を着て、魔女箒に乗って空中浮遊しながら使い魔の黒猫をウィッチタクトへ変化させたら準備はバッチリね!
『にゃー♪』

 UCに魔力溜め、全力魔法、属性攻撃、毒使いを使用。
「麻痺属性魔法剣でハリネズミ状態にしてあげるわっ!」

 相手を使い魔にするのを目標に行動ね。ドジを踏んで意図せず他の猟兵に迷惑をかける事も有るかもしれないけど、わざとじゃないのよ!?
 あとは任せるわ!



 かくして透明の怪物は、塗料まみれとなってその姿を浮かべさせた。しかし、チョコバナナめいた姿となったキュウラーは意に介さないままUDC-Pを求めて進撃し続ける。

「おやおや、気の早いことで・・・」
 その姿にシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は苦笑を禁じ得なかった。精霊馬とチョコバナナは共に夏の風物詩。流石にいささ時期が早いのではと、くつくつ笑いがこみ上げてしまう。だが、そんなふざけた見た目とは裏腹に相手は強大な骸魂に違いない。背中に刺さされたマッチ棒のような物が爛々と燃える中、キュウラーはこの世に戻り災いを振り撒きたいと願う怨霊たちが集結させるための篝火とした。
 ごうっと風が突如吹き抜けると、渦を巻いてキュウラーの周囲を取り巻いた。エネルギー化した現世へ恨みを残して残留する悪しき思念体の残滓がバリアーとなり、自身の身を焼いたUDC職員の攻撃を遮り始めたのだ。

「―――……やれやれ、こんな事態は避けたかったんだけれどな。とはいえ、やるべきことをしよう」
 UDC職員の抵抗を物ともせずに進み続けるキュウラーの姿に、一見すると時計うさぎのようであるがその実はウサギの西洋妖怪である小泉・飛鳥(言祝ぎの詞・f29044)はため息を吐いた。可能であれば、UDC-Pの収容施設に近づけさせないまま倒せば理想的であったのだが、こうもなれば多少の被害は止む終えない。しかしながら、被害を抑えることはまだ可能なはずであると。
 その思いを胸にした飛鳥の目に、とあるUDC職員の姿が目に入った。もう打つ手がないと諦めかけた者であった。

「…取り込み中のところだけど、僕は猟兵で君たちがいうUDC-Nullに近い生き物だ。仲間が苦労を掛けてしまってごめんね?」
 突如掛けられた涼やかな声に、UDC職員ははっとしながら埋めていた顔を上げた。どうやら女性職員だったらしく、まだUDC組織に入って間もないのかパニックを起こしているようでもあった。飛鳥がUDC-Nullに近いと身内を明かすと、突発的に銃口を彼に向けようとしたからだ。しかし、そんな慌ただしい彼女を諭すかのように落ち着いた口調で彼は言葉を続けた。

「まずは落ち着こう。君たちが守ろうと思っている者達を敵から遠ざける。敵を分断するから、協力してくれるかい?」
 人と言葉を交わすを好み人に寄り添う妖は、何時撃たれてもおかしくない状況の中で臆せずに説得しながら頭をペコリと下げた。そんな毅然とした姿に落ち着きを取り戻して銃口を下ろしたUDC職員に対し、飛鳥は屈託のない笑顔で微笑んだ。

「ありがとう。不可思議な状況は慣れているだろうが、僕から離れないで」
 一方その頃、猟兵たちは未だ衰えぬキュウラーに対し阻止攻撃を続けていた。身を翻す巨体を、黒猫の使い魔を変化させた魔法の小杖を手にしながら魔女・ウィッチ(偉大なる魔女のサーガ・f33446)が魔女箒で潜り抜け、上空へと躍り出る。

「ほう…中々しぶといのぅ。良かろう、偉大なる魔女である我の使い魔にしてくれるわ」
 一見すると幼い外見ながらも威厳を持った大魔女のような口調だが、実のところは年齢相応の駆け出し魔女である。やがて全世界にその名を轟かす誰もが知る偉大なる魔女となることを夢見るウィッチであるが、まずは形から入るということであろう。だが、その実力は折り紙付きで、杖を振るえば痺れ薬をたっぷり塗ったUC製の魔法剣群が虚から顕現させて、キュウラーに向けて幾何学模様を描きながらその身を刻んでいく。そのうち多少は制御できずに周囲の建物に突き刺さったりガラスを破ったりしていた。

「ぐぬぬぬ…。中々やりおる。そうで来なくては、使い魔にしがいがあるのぅ」
 このように取り繕っているが、誰もそんなことは気にしてはいない。ウィッチが削り取った塗料に向け、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は蛍光塗料の目潰し誘導弾をキュウラーに浴びせかけて視認できる状態を維持させた。

「辺境の陸の孤島であれば確かに物資の補給は難しいでしょうが、襲撃されても一般人を巻き込む可能性が低いのは利点でしょう。お陰で防衛に専念できます」
 シホが語るように、このUDC支部は山中の奥深くに存在する。周囲には人家らしいものはないが、裏を返せば周囲への被害を考えずに攻撃に専念できる。UDC-PがUDC-Nullに取り込まれるという最悪の事態だけは避けれるのであれば、多少なりの施設への被害は止む終えないところでもある。
 事実、研究要員が主体で実戦経験には乏しいUDC職員らも、いくつか攻撃を外している。今しがたもミサイルらしき飛翔体がキュウラーが纏った怨念バリアーの影響で軌道を逸らされ、地上施設の一部を瓦礫に変えたばかりだ。こうなれば一々気に病むことはない。

「我々も負けていられませんね。ツキ、僕はUCの準備に取り掛かりますので、その間に皆を手助けしてください」
「手助けだと? 面倒くせぇな」
 シンが自身の魔術で従えさせる闇色の狼であるUDC『ツキ』が悪態を吐きながらも、キュウラーに向かって駆け出していく。

(ああ! これよこれ、こういう使い魔が欲しいぃ!!)
 その様子を羨ましそうに上空からウィッチが見下ろしていたが、よそ見をした彼女に向かってキュウラーは尻尾部分から生えているツル状の尻尾を別の生き物のように操り、魔女を地面に叩き落とそうとした。

「させません」
 タァンと乾いた音が響くと、振るわれた尻尾が爆ぜて千切れた部分が塵となる。ウィッチ同様に翼で飛ぶシホが、魔力を銀の弾に変換し発射する黒の自動拳銃での援護射撃でしなるツル状の尻尾を次々と撃ち千切っていった。


「おお! すまないの。我としたことが油断してしまったわ」
「いえ、当然の事をしたまでです。初陣だからと肩を張らず、相手の動きをよく見てくださいね」
「べ、別に油断したわけじゃないんだか……あっ」
「ふふ、無理に大きく見せなくても良いですよ?」
 思わず地が出てしまい赤らめるウィッチにシホが優しく微笑んだ。ぐぬぬとウィッチが頬をふくらませる様子がなんとも可愛らしかった。しかし、今は戦闘の最中である。このまま侵攻をさせ続ければ、相手の目標を達成されるのは時間の問題となりつつある。
 そんな中、UDC-P生活棟の前に一人の猟兵が立っていた。飛鳥である。

「無事に裏口からUDC-Pらが避難しましたし、もはやここはもぬけの殻。だけど、それに気づいて進路を変更されては困るから……さぁ、ここは魔女の森だ」
 彼は仲間の猟兵がキュウラーを足止めしている間、幾人かのUDC職員を連れてUDC-Pの避難を行っていた。既にUDC-Pはこの建物内には存在せず、あるのはこんな事もあろうかと研究開発されていたUDC-Pデコイ装置である。今の所、キュウラーの目を欺いているが、それも時間の問題でもあろう。
 ならばと、飛鳥は手にした絵本のページをめくった。そして、キュウラーの周囲に鬱蒼とした緑が広がった。否、飛鳥のUC『覆刻・魔女の棲む森(リヴァイヴァル・ヘクセンヴァルド)』により、感覚だけでなく異能での探査も狂わせる森を異空間内に作り出したのだ。

「迷路の中では自由に走れないし……。くふふ、怨霊を集める能力でかき集めようとしても、君の位置を霊たちも見失ってるようだね」
 踏み入った物を全てを迷わせる魔女の森。それはキュウラーが集める怨霊も例外ではなかった。無限供給されていた怨霊バリアーも、供給元が断たれてしまえばあとは消滅の一途を辿るのみである。

「怨嗟に喘ぎ苦しむものに安息を……。死してなお彷徨うものに道標を、旅立つ魂に救いあれ」
 鬱蒼と繁った木々により薄暗かった魔女の森へ光が差し込んだ。それは苦痛や負の感情を和らげる優しき温かな光であり、シホのUCにより作り出された浄化の光でもあった。これを浴びたキュウラーを取り巻く怨念の怨嗟が、次第に薄れて消えていく。残るは裸同然となったUDC-Nullの破壊あるのみである。

「おい、シン。まだか!?」
「そう急かさずとも、準備は整いましたよ? 皆さん、危険ですので離れてください。業火よ、我が命に従い、立ち塞がるモノを焼き尽くせ!」
 使い魔であるはずのツキに急かされながらも、魔術書を手にしていたシンは最後の詠唱を終えると深淵にて混じり合う『混沌』から抜き出され、魔術的に再構築されて世界に召喚された異界の炎がキュウラーを包んだ。灼熱の炎は塗料に含まれる油分を燃料としてキュウラーの身を焼き尽くしていく。巨獣が声無き断末魔を上げながら暴れるが、幸いにも飛鳥のUCによってUD支部へのさらなる被害が発生しないまま燃え尽きて塵へとなっていった。

『……いんやぁ~、すんげぇ熱かったべぇ。おいらの皿の水がなくなっちまうかと思っただぁ』
 塵の山からこんもりと何かが出てきたと思えば、その正体は黄色いくちばしが特徴的な河童である。

「あー…キュウリが好物だから、キュウリになったって訳かい」
 なんとも食い意地が張っている野郎だとツキが零す中、かくしてこのUDC支部に起きたUDC-Null襲撃事件という長い一日に幕が降りたのであった。








「よぉーし、そこだ。この瓦礫はあの建物の前に集めてくれ」
 陽が傾き始める頃、UDC職員らとUDC-P、それに有志の猟兵たちが総出となって被害を受けた場所の瓦礫を集めている。シホの申出によって時間が許される限りではあるが、UDC-Nullとの戦闘で破壊された設備の修復にあたっていた。

「主の…世界の記録に接続…検索…見つけました。これより転写し復元します」
 祈りを念じながらUCを発現させ、復元する光で瓦礫と損傷を受けた設備を照らすと瓦礫が減るのに合わせて設備が元の姿に戻っていく。
 そんな中、ウィッチはキュウリを片手にしながら河童に使い魔にならないかと交渉をしていた。だが、河童も河童で1日キュウリ10本の条件を提示していて、交渉は平行線を辿っている。そんな様子を、シンは遠巻きながら眺めていた。

(共存、か。良い場所だな)
 様々な種族で構成される猟兵、UDCの所員、UDC-P、そして骸魂に呑まれて救出された妖怪。互いに異なる存在が今こうして手を取りあい、一つの目標を果たそうとしている。魔導書を『理解』した為にUDCに憑かれ、元に戻る術を探して各世界を巡っている彼からすれば、そこはある意味理想郷でもあったのかもしれない。だが、それはそれでこれはこれという考えが過るが、その考えを振り払いながら彼は優しく微笑んだのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年05月29日


挿絵イラスト