大祓百鬼夜行㉑〜いざ猫又サーカス!
●グリモアベースにて
「やあやあ皆さま、カクリヨでの戦いはいかがですか?」
猟兵たちの前に立ち、千束・桜花(浪漫櫻の咲く頃に・f22716)は手を挙げる。
「現地での戦いも大切ですが、その間にも骸魂と合体した妖怪、UDC-NullはUDCアースへの侵略を進めています! 無論、それを阻止するのも我々の役目でしょう!」
そう言って桜花は拳を握った。
「どうやらUDC組織のある拠点がUDC-Nullに襲われるようでして! 彼らの狙いは……UDC組織の拠点に保護されているUDC-Pのようです! せっかく友好的な関係を気付けているUDC-Pを骸魂に取り込まれてしまうのは……看過できませんよねっ!」
猟兵たちが到着した時点で、妖怪はすでに拠点に入り込んでいる。
そのせいでエージェントたちは、パニックに陥っているはずだ。
「この組織のエージェントには妖怪の姿は見えません! ですが、猟兵たちが来たらUDCに関する事件だろうと察して協力してくれます! 素早い撃退には、彼らの協力が不可欠でしょう!」
ユーベルコードを持たない彼らにも、できることはある。
道具の調達、拠点にある施設の使い方の説明、他のエージェントの救助。
上手く支持を出して協力してあげるといいだろう。
「ちなみにですが……彼らUDC組織を完全に助けることができれば、メカニック達が超常光線砲U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)を作ってくれます。もう名前からして浪漫がありますねっ!」
もし大祓最終決戦で照射すれば、猟兵たちにとって大いに有利に働くだろう。
その一つとして、今回のUDC組織救出作戦が行われるということだ。
「ではお送りします! ご武運を!」
るーで
●ご挨拶
ごきげんよう、るーでです。
超常光線砲U.D.C(アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー)めちゃくちゃかっこよくないですか?
ほ、ほしい……と思ったのでシナリオを出してみました。
他にもたくさんシナリオが出たら手に入るかもしれませんね!
●概要
ボス戦です。
プレイング次第ですが、敵が敵だけにコメディ色強めになるかな~と思います。
プレイングボーナスは「UDCエージェントと協力して戦う」となっております。
それではよろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『猫又ピエロ』
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POW : みんにゃウチのサーカスの一部になるんだニャー!
【命中した対象をサーカス道具に変えるボール】【触れた対象をサーカス用動物に変える爪】【配下ピエロに変える光を放つ二又尻尾】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 猫又サーカス団員スカウト(強制)コインショット
妖怪【猫又(ピエロメイクで浸食されている)】の描かれたメダルを対象に貼り付けている間、対象に【身体の猫又化+ピエロメイクや衣装での洗脳】効果を与え続ける。
WIZ : サーカスでは面白さこそ強さ!ウチに勝てるかにゃ?
【観客に変化し対象の面白さを審査するボール】を降らせる事で、戦場全体が【面白さに応じ強さが強弱変化するサーカス】と同じ環境に変化する。[面白さに応じ強さが強弱変化するサーカス]に適応した者の行動成功率が上昇する。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「九十九・サイレン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●猫又ピエロが通れば、そこはサーカス。
「にゃーんにゃーん、ここには面白さが足りなかったにゃーん」
UDC組織の拠点へやってきた妖怪が、堂々と通路を歩く。
カラフルな衣装と、ピエロメイク。
二股にわかれた尻尾から猫又だということはわかる。
「楽しい楽しいサーカスの時間にゃー!」
妖怪の通った後に、楽しげな声が聞こえる。
猫又ピエロの力によって、猫又ピエロに変えられてしまったUDCエージェントたちだ。
楽しそうにジャグリングをしているが、もちろん彼らの本心ではない。
身体を作り変えられ、衣装とメイクも変えられ、そして行動まで自由がないのだ。
涙のマークはメイクだけのせいではない。
(こんなの嫌……!)
ここに現れた妖怪の姿は、彼らには見えない。
突然起きた異変に、困惑することしか出来なかっただろう。
「さてさて、お仕事もするにゃ! ゆーでーしーぴー? はどこかにゃー」
他のエージェントを探しながら、猫又ピエロは拠点内を自由に歩き回るのだった。
ニクロム・チタノ
猫はいろんな所に出入りできるからね~ほんと神出鬼没だよ
厄介な能力も持っているし真っ向勝負は危険だね
ここは拠点のことをよく知ってるエージェントのヒトに拠点のこと聞こうかな
姉妹達を各場所に配置して準備完了相手はまだこっちに気づいていないみたいだし少し驚いて貰おうかな
今だよ各所の姉妹達
どこに逃げても同じ相手が出て攻撃してくるから混乱するでしょ
隠れられそうな場所は予め姉妹を置いているから逃げ隠れ出来ないよ
さあ追い詰めたよ、多勢で攻撃するのは少し気が引けるけどこれもお仕事
重力波で動きを封じながらお仕置きだよ
●姉妹たちのサーカス
UDC組織の拠点を、楽しげに進む猫又ピエロ。
エージェントたちからは姿が見えない彼女は、誰に憚られることもなく施設内を歩き回り、見つけたエージェントをサーカスの道具やピエロへと変えていく。
UDC絡みでも類を見ない不思議な現象に、エージェントたちは大混乱に陥っていた。
「ちょろいにゃ~、人間ちょろいにゃ~……って、そこに隠れているのは誰にゃ!」
メダルを指で弾いて物陰へと打ち出す猫又ピエロ。
「痛っ!」
メダルの飛んだ先、物陰から転がり出てきたのは、メダルの効果によって猫耳と二本の尻尾を生やし、ピエロの姿に変えられたニクロム・チタノ(反抗者・f32208)だ。
「おみゃーもピエロに加わるにゃー」
「わかったにゃー!」
猫又ピエロが指示を出すと、ピエロと化したニクロムはにこやかに敬礼して近くのボールでジャグリングを始めた。
満足げにその様子を見て、猫又ピエロはまた施設内を歩き出す。
「にゃにゃ! そこにもいるにゃ!」
続いてメダルを跳弾させて、通路の角に隠れた相手へと当てる。
乾いた音と共に小さな悲鳴が上がった。
相手がきちんとピエロになったことを確かめに、ピエロが角を覗き込む。
そこに居たのは、ピエロの姿になったニクロムだ。
「おみゃーさっきも居なかったかにゃ? まあいいにゃ、サーカスするにゃ」
「お任せにゃー!」
新しく生まれたピエロにも、サーカスに加わるように指示して、また施設を歩く。
それから新しい部屋へ入るたびに、通路の角を曲がるたびにニクロムをピエロへと変えていく猫又ピエロ。
「流石におかしいにゃ……さっきから同じ顔のやつばかりいるにゃ!」
普段あまり使わない頭を悩ませて猫又ピエロが顔をしかめる。
考え事をしながら進んでいると、封鎖された扉の前までやってきた。
「……っと行き止まりにゃ。別の道に行くにゃ」
猫又ピエロが振り返ると、ここに来るまでさんざん見かけたニクロムの顔が、そこにあった。
新しいおもちゃだと、猫又ピエロは口角を上げる。
「ピエロ、もう一匹追加していくにゃー」
「洗脳、強制変化。厄介な能力だね」
対して、ニクロムは冷静だった。
口を開いたのを皮切りに、角や物陰から次々にニクロムが表れる。
「だから真っ向勝負は避けさせてもらったよ。エージェントのヒトに拠点の構造を教えてもらってね」
通路を埋め尽くすように数十人のニクロムが立ち塞がり、妖刀を構えた。
「いっぱい!? 分身!? おみゃーたちもしかして……」
「そう、ボクたちは──」
「ピエロにゃ!?」
「違うよ。猟兵だよ」
「にゃんやて!」
「そういうツッコミづらいボケは良くないと思う」
猫又ピエロが近くの廃材を足場にして、壁を蹴ってニクロムたちを飛び越えようとする。
だが、廃材の影から飛び出したニクロムがそれを阻止した。
「にゃにぃーっ!?」
「そこにも姉妹を配置済み。そう簡単には逃さないよ」
脚を掴まれて、びたんと地面に落ちる猫又ピエロ。
そこに向けて、ニクロムの分身たちが重力波を叩きつける。
「それじゃあ、お仕置きだよ」
「にゃにゃっ! 身体が重くて──!」
突然の重力波で初動の遅れた猫又ピエロの胴へと、ニクロムの妖刀が閃めいて躍った。
大成功
🔵🔵🔵
空亡・劔
この最強の大妖怪を差し置いての大異変!
これはもう生意気過ぎね!
一般人がいる為に神殺しの大妖怪強制発動
攻撃力強化
に、人間に指示を出すのね…
ええと…此処の施設と捕まってる人達の居場所を教えて
あたしなら妖怪…ぬるだっけ?ってのは見えるから異常の中心さえ判れば突撃するわよ
という訳で人間に怖がらせたり驚かせたりするなら兎も角苦しめるなんてもっての外よ!
【戦闘知識】でその動きを【見切り】つつ周囲の状況を把握してUDCエージェント達にも猫又の位置を伝え
【残像】を残しながら接近
魔剣二刀による【二回攻撃】で【切断】よ
基本接近戦を仕掛けて猛攻を加える事によってエージェント達の行動をフォローするわ!!!
●道化妖怪征伐戦
「どうなってるのよこれ!」
人間の顔のついたジャグリングボールやピン。
やけに大人しい猛獣たち。
縦横無尽に芸を披露するピエロたち。
空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)が拠点へとたどり着いたとき、そこは小さなサーカス会場となっていた。
UDCエージェントとはいえ猟兵でない人間たちには、UDC-Nullの姿は見えない。
突如として発生した異変に、彼らはどうすることもできずサーカスの一員にされてしまったのだろう。
「人間に無理矢理こんなことをさせるなんて……!」
その赤い瞳に怒りを滲ませて、劔は施設を進む。
途中、小さな部屋で数人のエージェントが隠れているのを見つけた。
「あなたたちは無事みたいね。どこから異変が発生しているかわかる?」
「こ、この先からです……。本当にもう、何が起きているのかわからなくて」
震えた声で、エージェントは通路の先の扉を指した。
扉の向こうからは、猫のような高笑いが聞こえる。
「大丈夫、あたしなら妖怪……ぬるだっけ? ってのは見えるから、異常の中心さえ判れば突撃するわよ。あなたたちは……そこから遠ざかるように他の人にも伝えておいて」
エージェントにそう告げると、劔は扉を二振りの魔剣で斬り破り、部屋の中へと躍り出た。
突然の襲撃に、猫又ピエロは毛を逆立てて飛び退く。
「にゃにゃーん! びっくりしたにゃ!」
飄々とした態度の猫又ピエロに対して、劔は大きく踏み込んで接近戦を仕掛けた。
劔の振るう氷の魔剣を爪で受けて、猫又ピエロはにやりと笑う。
「おみゃーはにゃーのことが見えるのかにゃ! ということは猟兵かにゃ!」
「更に言うなら──」
間合いは適切。
白い長髪を揺らして、劔は魔剣へと力を伝えるために腰を捻る。
「──最強の大妖怪ね!」
薄っすらと妖気を纏う魔剣を逆から斬り上げ、追撃を加えた。
「あぶにゃーもん振り回すんじゃにゃーよ!」
後ろに跳んで連続攻撃を躱した猫又ピエロは、猫らしく壁を蹴って身軽に動き回る。
(……速い!)
劔の初撃を躱し、さらに室内を動き回る猫又ピエロの動きは、普段のふざけている態度からは想像できない。
だが実際に猫又ピエロは、劔の視線から逃れるように壁や天井を使って駆け回るのだ。
視線が、追いつかない。
「そこにゃーっ!」
劔にとってちょうど死角となる背後。
劔の後ろから飛びかかり、爪を突き出す猫又ピエロ。
声に反応して、劔は振り返る。
だが、猫又ピエロの動きは速い。
もはや避けることは敵わない。
「……っ!!」
そうして劔の胸元に、猫又ピエロの爪が突き立てられた。
「おみゃーは何の動物になるのがいいかにゃー。虎かにゃ、ライオンかにゃ、それとも熊かにゃー……って」
猫又ピエロが劔を何のサーカス動物に変えるか悩んでいる間に、爪を突き立てられたはずの劔の姿が、ゆらりと消える。
「にゃっ!?」
残像だ。
劔は、そもそも爪による攻撃を受けてなどいなかった。
猫又ピエロの背後に、何かが立ち上がる気配。
残像に気を取られている間に劔は猫又ピエロの背後に回り、魔剣を振りかぶっていたのだ。
「あんた、ふざけた態度の割にはちゃんと人類にとっての脅威だったわよ」
油断と驚きで身体が着いてこない、隙だらけの背中。
その背中を、より脅威の強い者を討ち滅ぼす効果の付与された劔の魔剣が両袈裟に斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
◎
「猟兵の上野・修介です。どうかご助力を」
調息、脱力、状況確認。
まず施設内の見取り図を見せて貰う。
敢えて敵前に身を晒して
「楽しませて貰おうか」
逃げる。極力広い場所に誘導。
動き回って狙いを付けさせない。或いはASペン投擲による視線・意識誘導を用いて攻撃回避に専念。
また時折茶々や合いの手をいれて盛り上げる。
「ブラボー」
十分に『楽しませて貰った』ら拍手を送る。
施設職員にも館内放送を通して拍手と賞賛を送ってもらう。
道化ならば賞賛と拍手は受けざるえないだろう。
そして報酬を受け取ったら退場するのが道理。
コインを道化に向かって放って、間合いを詰める。
「礼だ。受け取ってもらうぞ」
UCによる寸勁を叩き込む。
●たったひとりのためのサーカス
UDCによる事件が起こるのは、いつだって突然だ。
人間の都合を鑑みない彼らの行いは、日頃からUDCの存在を認知しているエージェントたちからも冷静さを奪ってしまう。
彼女は、デスクの下で息を潜めていた。
突如、周りの人々がボールやピンに変わり、知人の顔をしたピエロたちによってジャグリングされ始めたときは、自分の心が壊れてしまったのかと思った。
何度も自分の目を疑い、心を落ち着けてようとして頭を振った。
そうして目の前で起きていることが現実だとわかると、強い恐怖に囚われてしまった。
いまこの施設に、何かがいるのだ。
それに見つかったら、自分のあんな風にされてしまう。
震える肩を抱きながら、ガチガチと歯が鳴る口を塞いだ。
「あの、ご無事ですか」
声が聞こえると同時に、デスクの前に置いてあった椅子が引かれた。
見つかった。
恐怖と諦めがぐるぐると頭の中を回って、目を閉じる。
だが、何も襲ってこない。
おかしいなと思い、彼女は恐る恐る目を開く。
「猟兵の上野・修介です。どうかご助力を」
そこには、彼女に向けて手を差し出す上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)がいた。
落ち着いた様子の修介に、エージェントの女性は安心したように胸を撫で下ろす。
修介は彼女の手を取って起き上がらせると、フロアを見渡す。
「まずは状況の確認を」
女性は、同僚たちが突然サーカスの道具やピエロに変わってしまったこと、それが通用口の方から始まったこと、地下階へと向かっていることを修介に話した。
「俺にはUDC-Nullが見えていますので、敢えて身を晒して囮になります。その間に他のエージェントの救出と避難を」
修介は広げた施設の見取り図上で経路を指しながら、エージェントの女性と役割を分担していく。
緊急時にあってもこの冷静さは、修介の持ち味のひとつだ。
「わ、わかりました……!」
修介が妖怪のいる方へと向かうと、女性も反対側へと走っていった。
それから、修介が猫又ピエロを見つけるまで、そう時間はかからなかった。
近づけば、それだけでただのエージェントではないとわかる修介の落ち着いた立ち振る舞い。
「にゃーんだおみゃー。にゃーのことが見えてるにゃー。猟兵だにゃー」
「わかっているなら話は早い。ここはサーカスなんだろう?愉しませて貰おうか」
拳を握り、されど力まずに構える修介。
「にゃるほど、サーカスバトルということにゃ!」
「いや、違うが……」
猫又ピエロが嬉しそうに手を挙げるが、修介は首を傾げた。
「違うのかにゃ……じゃあにゃーが勝手にやるにゃ!」
一度残念そうに肩を落としてから、すぐにボールやピンを取り出した猫又ピエロ。
それらを頭上に放り投げて、ジャグリングを始める。
「おみゃーもここに加えてやるにゃー!」
そのうちのボールだけは、修介に向けて投げた。
ただのボールではない。
当たった対象を、サーカス道具へと変えるボールだ。
「それは……断る」
一瞬、ボールを叩き落とそうかと思った修介だったが、咄嗟に躱す。
ただのボールでないことを、本能で感じ取ったからだ。
弾力のあるボールは、避けられても壁や床を跳ねて猫又ピエロの手元へと戻っていった。
「避けるにゃー! それならボール増やしちやうにゃ!」
背後から手品のように出したボールを、その三次元ジャグリングに加える猫又ピエロ。
当然、修介に向かって跳んでくるボールも増える。
だがジャグリングである以上は、ボールの動きには規則がある。
どこかでバウンドしても必ず猫又ピエロの元へと帰るその動きを見切る修介にとっては、どれほどボールが増えようとも、回避することはそれほど大変なことではなかった。
「ブラボー。流石はサーカスだ。ここまで続けられるとはな」
ある程度攻撃を躱し続けたところで、修介は握っていた拳を緩めて、拍手送った。
「にゃ、にゃ!? よくわかんないけどありがとにゃー!」
突然のことに驚いた猫又ピエロは、ボールを受け止めて足元へと落としていく。
妖怪として、UDC-Nullとして暴れ始めてからは、人に姿を認識されないので初めてのことだった。
「それからこれは────」
ふ、と短く微笑んだ修介が、猫又ピエロへ向けてコインを弾く。
軽い音のあとにふわりと跳んだそれを、猫又ピエロがキャッチしたときである。
「礼だ。受け取ってもらうぞ」
一息に距離を詰めた修介。
人型の身体を持つ者にとって腕を振るうには、あまりに近すぎる距離。
拳を加速するには不十分なはずだが、修介にとっては十分だ。
強く床を踏みしめて、その反動が身体を伝っていく。
たった一寸の距離から打ち出された拳は、弾丸のように速く、砲弾のように重く────。
「にゃーーーっ!!!」
その拳が猫又ピエロの身体に触れると同時に、まるで爆発したかのように弾き飛ばされたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
卜一・アンリ
(『』は【指定UC】で召喚したカイムの発言)
超常光線砲…牡丹に載せられるかしら。
出番よカイム。場を【演技】で巻き込んで。
『レディース&ジェントルメン!』
『出演協力はUDC-Null猫又ピエロと猫又ピエロに変えられたエージェント二名様!始まるのは的当てショー、ご主人様は一列に並ぶピエロちゃん三名からUDC-Nullちゃんを見つけてBANG!』
『おいおい皆ピエロだ見分けつかねぇ!』
『時代は情報だ兄弟!エージェントちゃん、誰が本物ピエロちゃんか指差してちょーだい!』
悪魔憑きの拳銃で【スナイパー】。
エージェントに妖怪は見えないから指差されないのが当たり。
そもそも猟兵なら誰がオブリビオンかは一目瞭然よ。
●Pierrot de BINGO!
(超常光線砲……牡丹に載せられるかしら)
UDC組織の協力を得られれば完成するであろう対怪異用兵器を自前のキャバリアに搭載することを夢想しながら、卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)はこの拠点へとやってきた。
エージェントたちの流血こそないものの、道具や動物、ピエロに変えられてしまった者は多い。
猟兵たちがたどり着くまでに受けた被害は、十分に重いと言えた。
これ以上の被害を出さないためには、迅速に原因である猫又ピエロを排除する必要がある。
「出番よカイム」
トーの合図と共に飛び出したのは、道化師の姿をした悪魔カイムの分身たちだ。
猫又ピエロの回りを取り囲むように、道化師たちが配置されていく。
『レディース&ジェントルメン!』
カイムのひとりが、声を張った。
猫又ピエロの作り出したサーカス会場への飛び入り。
「にゃ、同業者かにゃ!」
狼狽する猫又ピエロに、カイムたちは笑う。
『出演協力はUDC-Null猫又ピエロと猫又ピエロに変えられたエージェント二名様! 始まるのは的当てショー、ご主人様は一列に並ぶピエロちゃん三名からUDC-Nullちゃんを見つけてBANG!』
手を掲げて語るカイムと、拳銃をくるりと回して構えて見せるトー。
それを見て、猫又ピエロは頷いた。
「ルールはわかったにゃー! 面白いからおみゃーに付き合ってやるにゃー!」
しめしめ、とほくそ笑む猫又ピエロ。
半分以上の確率で撃たれるのは罪なきエージェントだ。
猟兵が一般人を撃つだなんてそんな〝喜劇〟を、見逃せるはずもない。
『おいおい皆ピエロだ見分けつかねぇ!』
ぐるぐると回ってエージェントとの位置を変える猫又ピエロを見て、カイムが囃し立てる。
細かな差異こそあるものの、ピエロメイクにピエロ衣装。
見慣れた相手でもなければ、見分けることはできない。
『時代は情報だ兄弟! エージェントちゃん、誰が本物ピエロちゃんか指差してちょーだい!』
どこからともなく聞こえるドラムロールと共に、他のカイムの掛け声。
エージェントたちにお互いを指させて自分は適当に指せば、必ず二対一。
猫又ピエロが勝利を確信した瞬間だった。
「本物はこいつだにゃー!」
それが止むと同時に、猫又ピエロが勢いよく近くの元エージェントを指す。
その瞬間、トーの放った弾丸は指差している猫又ピエロを穿った。
もちろん、〝本物〟の猫又ピエロを、だ。
「……な、なんでにゃー!! 誰もウチのことは指してないにゃー!」
そう、猫又ピエロに変えられたエージェントたちは確かに本物を指さなかった。
いや、たとえ本体による催眠の指示がなくとも、指せなかったのだ。
「エージェントには妖怪は見えないから指されないのが当たり。そもそも猟兵なら誰がオブリビオンかは一目瞭然よ」
「そんにゃ……ずるいにゃー!」
「見えないのを良いことに好き放題していたあなたが言うのね」
悔しそうに泣く猫又ピエロの骸魂が壊れて、ただの猫の妖怪の姿へと変わる。
同時に、サーカス道具や動物、ピエロに変えられていたエージェントたちの姿も元に戻った。
「主役が退場して三流喜劇はこれでおしまい。再演の予定はないわ、二度とね」
拳銃の銃口から立ち上る煙を吹き消して、トーは誰にでもなく深くお辞儀をするのだった。
大成功
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