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大祓百鬼夜行㉑〜家族を再び引き離させない為に

#カクリヨファンタズム #大祓百鬼夜行 #UDC-P

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「ぐっ……腕が斬られちまった、か……」
「……っ!なんて切れ味だ、特殊合金製のシールドが紙でも千切るかのようだぞ!」
 歪んでしまった『あの子』に操られた私の手で又一人、男の人が倒れ伏す。
「岡本は阿部を連れて救護班に下がれ!お前の傷も、塞がないと傷が開いちまうから足手まといだからな!」
「あのオブリビオン、接近戦は厳しい!抑えはミハラさんに任せるしかないが、其の分、銃での援護とかはしっかりやるぞ!」
 猟兵でもない彼等には私にダメージを与える事なんて出来はしないのに、彼等は決して諦めず、必死の思いで私に戦いを挑んでくる。
『無理はしないで下さい!此処は私が……っ!』
 そして、目の前の……恐らくは嘗て人間だった女性。
 ヒトの体に蛸の足を持つ女性が私の『鋏』を貝の棍棒で受け流しながら、そんな彼等に逃げる様にと訴える。
「確かにやばい状況だけど、あんた一人に任せてはおけないさ。
 折角、再会できた家族を再び離れ離れにするのは御免なんだよ、俺達は!」
「全くだぜ!こんな仕事やってたら踏み躙られちまう家族なんて沢山見るけどよお。
 だからこそ、あんた達みたいな再会できた家族が二度と引き離されるのは真っ平ごめんなのさ!
 隆景の旦那にゃ今度酒を一緒に呑む約束があるし裕君には虫取りに連れてってやるって約束したんだぜ?」
『皆さん……』
 そう言いながら彼等は死にそうな状況なのに必死に彼女の援護を行い続けていく。
 何て好ましい人達なのだろう。
 猟兵達の様に力を持たないのに必死に抗う彼等の生き様が、闇に触れながら其れでも善性を喪わぬ其の在り様は此の世界を去った身にはとても眩しく好ましい。
 ミハラと呼ばれる女性は異形に堕ちながらも人の心を喪わず、或いは取り返し、そんな彼らと共に外的たる私に対し必死に戦っている。
 会話を聞いている限り、夫と子がいる様だが彼女の在りようを見た限り、キキーモラたる私にとって何より好ましい『働き者の妻』であったのだろう。
 そんな彼等を彼女を私が共に在った、人々に服を仕立てるのに使った『此の子』で斬り殺す事が何よりも辛く……。
(早く……猟兵さん達……私を、私達を止めて……)
 二つの世界の破滅を防ぐ為に……此れ以上、此の子を命を斬り裂くのに使わせない為に……。

●グリモアベースにて。
「まあ、そんな状況な訳で……皆にはUDC組織の支部の一つを襲撃に来たシザーモラ、キキーモラが愛用していた鋏が変じた妖怪『網切り』の骸魂に憑りつかれた状態の人を止めてきてほしいんだなー」
 因みに倒したらキキーモラの方は解放されるみたいだから安心してねー、等とグリモア猟兵は集まった猟兵達に言い、更に説明を続けていく。
「シザーモラの攻撃方法は三つ。
 一つ目は手に装備した鋏による攻撃で状況に合わせて射程や護りを代償に切れ味や攻撃の速さを挙げて来る『鋏仕事』、彼女がゴミと認識した物を吸い込む竜巻によって敵をその家へと強制転移させる『お掃除』、あらゆる汚れを落とす洗剤の雨を降らせて周囲を洗濯機の中の水と同じ環境にしてしまう『お洗濯』の三つなんだなー」
 特にお洗濯は厄介で実質呼吸しにくい渦巻の中にいる様な状態に陥るのだという。
 そして、シザーモラについて説明を終えるとグリモア猟兵は今回の依頼の特記事項についても説明を開始する。
「で、此の襲撃を受けているUDC組織の支部なんだけど以前とある依頼で保護したUDCーPが一人いてね。
 皆にはUDC職員の人達や『彼女』と協力してほしいんだなー」
 彼女の名はミハラ。
 嘗てオブリビオン、『マリアネスの戦士』の一族に攫われ同族に変貌させられるが数年後に生き別れになっていた我が子との再会。
 正気を取り戻した彼女は他の『マリアネスの戦士』との逃走劇の末に猟兵達に助けられるのだが、その後は此の支部で保護されながら夫や我が子と共に過ごしていたのだという。
 職員達との仲も良好で色々と協力したりしてるんだとか。
「最近は力の加減も上手くなったし支部内でとはいえ裕君って言う息子さんにカレーを作ってあげたり本を読んであげたりと平和に過ごしてたらしいんだけど、今回の襲撃に合ってね」
 幸いと言うべきか夫の隆景さんと息子さんの裕君は遊園地に遊びに出かけていて巻き込まれてはいないようだが、ミハラさんはお土産話を楽しみにしていた所に此の襲撃である。
「ミハラさんは手に持っている棍棒で戦ったり、棍棒で武装した巨大蛸の幽霊を呼び出して戦ったりする感じだね。
 後は踊りを踊る事で敵に踊りたいという衝動を与えれるので此れをシザーモラの気を引くのに使うのも手かもしれないよ」
 但し彼女は其処迄強い訳でもないので主体で戦うのはかなり厳しい物があるとの事。
 UDC職員の手も借りれるが此れに関しては余計に言うまでもないだろう。
「何れにしても皆には如何にかして彼女を助けてきてほしいんだなー。
 又家族が別れる事になると悲しすぎるし……シザーモラの元になったキキーモラさんもそんな事は望まないだろうし」
 そう言うとグリモア猟兵は猟兵達を戦場へと転移するのであった。


久渓洞
 初めまして、或いはお久しぶりです久渓洞です。
 今回の依頼は戦争依頼、UDC組織の支部を襲撃に来たオブリビオンを倒すというお話です。
 プレイングボーナスはUDC-Pや職員と協力して戦う事。
 但しUDC-Pのミハラさんは集団的レベルの強さですし職員は銃や閃光弾などは持ってますが直接殴り合えるほど強くは在りませんが。
 皆様のプレイング楽しみにお待ちしております。

●ミハラについて
『母子を救え、異形の者となり果てても』にて登場。
 マリアネスの戦士というオブリビオンに嘗て攫われて同族に改造されるが我が子と再会し正気を取り戻しUDCーPになった女性。
 再会できた夫や子供との仲は非常に良好。
 依頼の内容は下記の物ですが見なくても必要な情報は既に依頼内にて記載しております。
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=24846
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第1章 ボス戦 『鋏妖精のシザーモラ』

POW   :    鋏仕事
自身の【鋏】を【斬撃形態】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD   :    お掃除
【自身がごみと認識した物を吸いこむ竜巻】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
WIZ   :    お洗濯
【あらゆる汚れを落とす洗剤の豪雨】を降らせる事で、戦場全体が【洗濯機の中の水】と同じ環境に変化する。[洗濯機の中の水]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:麻風

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠水貝・雁之助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イミ・ラーティカイネン
……ミハラの一件、報告書に目は通した。
せっかく再会し、仲睦まじく暮らしている家族だ……壊させはしない。

転移後迅速に戦場に突入、【たった一人の楽団】を発動
ホルンでも作って、それをミハラの盾がわりに使おう
「救援に来た。ここからは俺たちも共に戦う」
次々に楽器を作り、シザーモラを取り囲ませる。同時にUDCエージェントたちにも楽器をつけて守らせるとしよう
「水中でも音は伝わる。これだけ多ければどうなる?」
一斉に音波を発生させて波状攻撃だ。水中で波が生まれれば、回転の力も弱まるだろうと期待しよう
ついでにミハラに踊りを頼んでシザーモラの気を引いてもらおう
「音楽と歌は担当する。好きに踊れ」

アドリブ・連携歓迎



●ただただ願うは己を止める者が顕れる事。
(誰か!私を止めて!早く……誰か!!)
 そう心の中で願いながら私はミハラと呼ばれる女性へと鋏を振るう。
 本来なら善良な誰かの服を仕立てたり、修繕などを行う際に使う筈の其れを人を傷付ける事に使っている事が、そんな行為に大切な『あの子』が手を染める程に歪んでいる事が悲しくて誰か止めてと心の其処で叫んでいる。
 けれど、そんな願いは決して叶う事なく、私の鋏がミハラと呼ばれた女性の首を断ち切ろうとした時……突然出現した巨大な楽器が彼女の盾となり、ガギィ!と音を立てて私の鋏を防ぐのだった。

●音の洪水へと堕とされて。
(……ミハラの一件、報告書には目を通した。
 せっかく再会し、仲睦まじく暮らしている家族だ)
「……壊させはしない」
 そう決意と共に戦場に転移したのは麻呂眉模様のケットシーの青年、イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)。
 そんな彼の目の前には腕の鋏を以ってミハラに斬り掛かるシザーモラの姿があった。
「盛大なる音よ、今この一時だけ、俺の手で目覚めよ!」
『――――?!』
『此れは……?!』
 ガキィッ!そんな音を立てて突如出現したホルンにシザーモラの鋏は受け止められる。
 其れはイミの『たった一人の楽団』によって周囲の瓦礫から生み出された物であり、イミはシザーモラが戸惑ってる隙にミハラ達の元へと辿り着く。
「救援に来た。ここからは俺達も共に戦う」
「あ、あんたは……」
『ああ、助けに来てくださったのですね……』
 ほっと安堵する職員達やミハラに頷くとイミは其の侭、周囲の瓦礫をユーベルコードによってホルンやヴィオラ、ティンパー等の楽器へと変換。
 其の殆どはシザーモラを取り囲む様に配置しつつ、同時にUDCの職員達の身を護る為に残りは彼等の傍へと付けていく。
『――――――!』
 それに対しシザーモラは洗剤の雨を降らし渦潮の如き環境へとUDC支部を変貌させて抵抗しようとするが……。
「甘いな。水中でも音は伝わる。
 そして、これだけ多ければどうなる?」
『『『『『『『『『『VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!』』』』』』』』』』』
『グッ……ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”?!!!』
 イミの言葉と共にシザーモラを取り囲んでいた楽器たちは音を開放。
 音の暴力にシザーリオは晒されていく。
 其の猛威はすさまじく、更に決して止まぬ波状攻撃によって生じ続ける波は荒れた渦潮を緩めていく。
「さて、音楽と歌は担当する。
 好きに踊れ」
『は、はい!』
 イミの言葉に応えミハラは心を奪う舞を踊り出す。
 イミの楽団が奏でる荘厳な音楽に合わせた舞は美しくも気高く、異形の姿と相まって人の目を奪う代物に。
 そして、当然そんなミハラの踊りにシザーモラの目は彼女から離せなくなる。
 故に……シザーモラは動く事すら出来ず音の波、音の洪水へと叩き落され続けていくのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御倉・ウカノ
*アドリブ歓迎
判定:POW

あんたとは初対面だけど、随分いい母親やってるみたいだね。それをむざむざとやらせちまったら、猟兵の名折れってやつだ。あたしも手伝わせてもらおう。

とまあ、そんな啖呵を切った後に言うのもなんだが、ちょいと手伝ってもらいたくてね。あんたの踊りで奴さんの気を引いてほしいんだ。奴さんの気があんたに向かっていればあたしのUCで仕留めてみせる。危険な役目を任せちまうのは心苦しいが、あんたに怪我はさせないさ。絶対にね。

「護るべき相手を囮に使うのは気が引けるが…だからこそ、ここは確実に決めなきゃね。…やつを滅ぼせ!『天狗』!」


卜一・アンリ
もういいわ。ミハラさんは下がって頂戴。
職員さん、閃光弾はまだあるわね?

【ダッシュ】で一気に接敵し退魔刀を居合抜き(【クイックドロウ】)、【指定UC】。
狙うは繰り出される敵UCの鋏の刃。
刃毀れだらけにしてやるわ。攻撃回数が上がろうが私の剣に追いつけるかしら?(【部位破壊】【武器受け】【武器落とし】)

敵の攻撃【体勢を崩す】ことが出来たら、職員さんに閃光弾を放ってもらい更に怯ませ、私はその隙に懐に踏み込み拳銃の【零距離射撃】を【乱れ撃ち】。
視界が潰れていようがこの距離なら外しようがなくってよ。

えぇ、止めてあげるわ、妖怪さん。
オブリビオンに容赦するつもりは無いの、傷だらけになるのは諦めて頂戴。


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


何というか、よくよく面倒に巻き込まれる人だねえ。
さて、これも縁だし、何とかしようか。

相手の攻撃は洗濯機の中みたいにするねえ。
んー、ミハラさんに蛸の幽霊を出してもらって少しだけ時間を稼いでもらおうか。
蛸なら水中でもある程度動けるだろうし。
竜の肺腑があれば息は十分持つはずだから、その間に【巨身天墜】を使って、
渦の中でも壁や床に手足をついて動ける大きさまで巨大化しようか。
十分大きくなったら、そのまま殴って攻撃するよ。

まったく、誰も彼も無茶をするなあ。
あたしみたく頑丈じゃないんだから、危なっかしくて仕方ないよ。



●天狗とは猿田彦に通じ、舞はアマノウズメに通ずる。
「おっと、いいタイミングで来れたみたいだね」
 そう言いながら御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)はミハラの首に迫っていたシザーモラの振るう鋏を大太刀『伊吹』の刃によって受け止める。
「あ、貴方は……?」
「あんたとは初対面だけど、随分いい母親やってるみたいだね。
 それをむざむざとやらせちまったら猟兵の名折れってやつだ。
 あたしも手伝わせてもらおう」
 そう啖呵をきってウカノは彼女の存在に警戒心を強め僅かに距離を取ったシザーモラへと刃を向ける。
「それと……手前の主を乗っ取って望まぬ凶行を行わせるなんて道理に合わねえ真似も止めてやるさ」
 あたし等、猟兵達を信じて身を挺してくれたあんた等妖怪への借りもしっかり返さないといけないし、ね。
 そう言ってのけたウカノに対しシザーモラは腕の鋏で斬り掛かる事で返答。
 其の頬には己の意に添わぬ真似、人々を傷付ける事への悲しみの涙が一筋流れている。
『……この人も嘗ての私の様に意に添わぬ行いに手を染めさせられている…のですか……?』
「ああ、此の世界と彼女の世界、両方を破滅させようとする大ボスの首根っこを掴む為、敢えて骸魂って奴に体を乗っ取らせたって訳さ。
 あたし達猟兵が必ず勝利を掴み取ると信じた上で、ね」
 なら、その信頼に応えないとなんねえだろ?
 シザーモラの鋏と伊吹の刃を交わせながらウカノは己の背後にいるミハラの問いへと答えを返す。
『……でしたら、私も此の侭戦わせてください。
 此の世界は私の家族が生きる世界ですから』
「了解さ。
 あんな啖呵を切った後に言うのもなんだが、ちょいと手伝ってもらいたい事はあったんだ」
 そう言ってウカノはシザーモラと刃を交わした後、距離を取るとミハラにやって欲しい事を告げる。
『判りました。任せて下さい』
「……危険な役目を任せちまうのは心苦しいが、あんたに怪我はさせないさ。絶対にね」
『ええ、信じてます。貴方達猟兵に救われた時から、ずっと』
 そして、其の会話の直後にシザーモラがウカノに斬り掛かるが……。
『此方を…見なさい……!』
『――――――?!』
 其れは妖艶でありながら誰かを想う優しさも感じさせられる異形の舞。
 幾度見ようと見た者の心を、目を惹き付ける其れはシザーモラの目を捕らえて離さず、シザーモラは戦いの場でありながら動きを止めてしまう。
 そして、其れはウカノの狙い通りであり、此れからが本番。
「守るべき相手を囮に使うのは気が引けるが……だからこそ、此処は確実に決めなきゃね。
 こは流星に非ず。罪深き者共を討ち滅ぼす光なり。
 ……やつを滅ぼせ!御倉流巫女神楽『天狗』!!」
 詠唱と共に振るわれた大太刀『伊吹』から放たれた見えない刃は過たずシザーモラに過たず当たり……其れを道標として彗星の如き巨大な霊力がシザーモラへと降り注ぐ!
『―――――――――――――――?!!』
 そして、流星を束ねても足りぬ程の圧倒的な質量を有したすい星の如き霊力は舞に囚われて動けぬシザーモラを撃ち砕くのだった。

●剣と銃は鋏を砕く。
「ちっ!未だ止まらねえのか……!」
「自分の意思でないのなら余計に犠牲者を出させる訳にはいかねえんだ!絶対に生き残るし守り切るぞ!」
『ええ……!私の様な思いはさせられません!』
 自分の意思で犯した訳ではない、寧ろ本来なら犠牲者というべき立場でありながら罪の意識に囚われ続ける。
 職員達はミハラの苦しむ姿を観て、そしてミハラは己自身の経験で其の辛さをよく知っていた。
 だからこそ、彼等はシザーモラによる猛攻を必死に凌いでいた。
 そして、それは今こうして身を結ぶ事となる。
『――――!』
『っ!避けきれ……!?』
「させないわよ?」
 ミハラの首を刎ねんと迫るシザーモラの鋏であったがガギィと音を立てて退魔の刃が此れを防ぐ。
 現れしは卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)。
 幾多の戦場を歩みし歴戦のアリスである。
『あ、貴方は……』
「……消耗してるわね。
 もういいわ。ミハラさんは下がって頂戴。
 それと職員さん、閃光弾は未だあるわね?」
 アンリは今までの戦いで消耗している様子のミハラを一瞥すると其の侭シザーモラへと向き直りつつミハラや職員達へと声をかける。
『は、はい……暫く休ませて貰います……ね』
「ああ、閃光弾なら未だ未だ余裕はある。
 タイミングは如何する?」
「私が合図するわ。それじゃあお願いね」
 そう言うとアンリは退魔刀を納刀。
 其の侭、彼女に距離を取ろうとしていたシザーモラへと一気に接敵し……。
「刃毀れだらけにしてやるわ。
 どれだけ速いのかは知らないけれど……私の剣に追いつけるかしら?」
『――――――?!!!』
 其れは一瞬の攻防であった。
 目も止まらぬ速さで抜き放たれた刃はシザーモラの刃へと流星群の如く放たれ、金剛石すら斬り裂く刃をいとも容易く砕き斬り裂き壊していく。
「秘剣抜刀――剛の型、貴方は追いつけなかった様ね」
『――――?!』
 そして、其の侭、トドメとばかりにアンリは更に追撃の刃を振るってシザーモラを吹き飛ばしていく。
「今よ!」
「おう、了解だ!全弾ぶっぱなすぜ!」
『―――――――――?????!!!』
 そして、態勢を崩したシザーモラにトドメを刺す様に大量の閃光弾がシザーモラへと向けて至近距離で放たれ、彼女の視界は完全に喪失。
 目の痛みと周囲の状況が判らぬ混乱からシザーモラは大降りに欠けた状態の鋏を振るい暴れ出す。
 だが、歴戦の猟兵であるアンリにとって自身の視界も駄目になっていようが、そんな悪足掻きを往なす事等容易いもの。
「其れに視界が潰れていようが、この距離なら外しようがなくってよ?」
 そしてアンリは其の侭懐に踏み込み己が相棒、悪魔を宿す拳銃をシザーモラへと突きつける。
「えぇ、止めてあげるわ妖怪さん。
 オブリビオンに容赦するつもりは無いの、傷だらけになるのは諦めて頂戴」
『――――――――――!!』
 そして魔弾は撃ち放たれシザーモラを撃ち砕くのだった。

●そして最後に
『―――――』
『あと一押し、でしょうか……』
「此処迄犠牲なしに凌いできたんだ……皆、最後迄乗り切るぞ!」
「応!」
 誰も犠牲にしないし目の前の彼女の手を罪に染めさせはしない。
 そう決意し傷は負えども士気は高い状況で最後に現れたのは嘗てミハラを救った猟兵の一人、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)であった。
「何と言うか、よくよく面倒に巻き込まれる人だねえ。
 さて、これも縁だし何とかしようか」
『貴女は……?!お久しぶりです、あの時はありがとうございました!
 貴女のお陰で自分の力を過度に畏れずにやれてます』
 こうして彼女を止める為に戦えるのも貴女の教えのお陰です。
 嘗て自分を救ってくれた相手の来訪にミハラは驚きつつ、礼を言う。
 そんなミハラをペトは手で制し作戦について言い始める。
「あの動きからして相手は此処を洗濯機の中みたいにするみたいだね。
 蛸の幽霊を出すのお願いできるかな?」
 蛸なら水中でもある程度動けるだろうしね。
 そう言い終えた瞬間、シザーモラが動き始める。
『――――――――――――!』
「っと、やりだしたね。
 それじゃあ」
『はい、援護は任せて下さい!』
 シザーモラの叫びと共に周囲を洗剤の雨が降り注ぎ、水に満たされていく。
 普通の人間なら呼吸が困難になり戦闘等難しい状況であるが、ペトに備わった竜の肺腑は頑強にして強力無比。
 暴風の如き勢いで息を吐く事が出来、数日間無呼吸で活動可能な此の肺腑を有するペトにとって此の状況下での戦闘も余裕であった。
 とはいえ其の侭では流れる渦潮に巻き込まれ安定した戦い方等出来はしない。
 下手をすればペトの準備時間を稼ぐ為にシザーモラと今戦っている蛸達の足手まといにすらなりかねない。
 ならばどうするか。
「グルルルルルルルルル……」
『――――――?!』
『此れは凄いですね……凄く大きい』
 答えは感嘆。
 渦の中でも壁や床に手足をついて動ける大きさまで巨大化するのである。
 其の巨躯をもってすれば此の程度の渦潮に流される事等有り得はしない。
『―――――?!!』
「此の位じゃ流されはしないって」
 其の余りの大きさに焦ったシザーモラが渦の速さを速めるが其の程度では焼け石に水。
 余裕の表情でペトは蛸を相手取るシザーモラの所へと歩み出す。
 そして渦潮で駄目だと判断したシザーモラは逃げ出そうとするが……。
『やらせません!』
『『『―――――🐙!』』』
『――――!!』
 蛸の幽霊たちが此れを妨害。
 そして、そうこうしている内にペトがシザーモラの元に到達し……。
「此れで…終わり、だよ……!」
『――――――――――――?!!!』
 其の巨大な拳は過たずにシザーモラを撃ち砕き、骸魂に囚われたキキーモラは漸く解放されるのであった。
「……あり…がとう……ございました……」
「どう致しまして、かな?」
 そして、キキーモラは息も絶え絶えな状態でペトやミハラ達に礼を言って消えていく。
 後に残るのはやり切った事への満足そうな表情を浮かべるミハラや職員達。
「まったく、誰も彼も無茶をするなあ。
 あたしみたく頑丈じゃないんだから、危なっかしくて仕方ないよ」
 そして、無数の瓦礫と多数のけが人が散乱する惨状でも満足そうな彼等を見てペトはそう嘯くのだった。

●戦いを終えて。
 そして戦いは終わった。
 被害は多少出たものの人命の損失はなく、彼等の士気も上々であった。
 此れからの事に全く不安が無い訳ではない。
 だが彼等は信じている。
 猟兵達が此の世界ももう一つのせかいも救うだろうと言う事を。
 だから、微力な自分達は彼等を信じて抗い続けていくのだ、と―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月26日


挿絵イラスト