大祓百鬼夜行㉑〜発狂防ぐ、苦痛の仮面
大きな物音を聞きつけ、慌てて研究員たちが詰めていた部屋を開けたのは、フルフェイスマスクのような兜を被った少女。
「みなさん! どうしたんです……か?」
目に飛び込んできたのは、涎を垂らしながら薄気味悪く笑い続ける研究員たちの姿。
「ひ、ヒヒヒ……。」
「た、タソガレちゃん……にげ、ろ……!」
ただ一人、まだ目に光を宿した男が逃げるように促すが、タソガレと呼ばれた少女は部屋に入ってしまう。
「何が、あったんですか?」
「あらあら、まだ狂いきれてない人も居るみたいね。」
そんな声と共に薄らと姿を見せるのは、狐のような女性だった。
少女は全てを察し、石と化した右手を握りしめ、
「……あなたが、皆さんを!」
「そうよ。そして……、」
勢いよく叩きつけられた拳は空を切り、女性は1匹の狐の霊を少女へと乗り移らせる。
「うっ……なに、を……。」
「あなたを待っていたのよ。」
操り、自らの手駒にするために少女の頭の中に入り込ませた狐の霊だったが、
「う、っぐ……うぅああぁ!」
「……あらあら、思ったよりやるのね。」
苦悶の叫びとともに、少女の中からはじき出されていた。
「はぁ……はぁ……この、くらいでは負けません!」
「ふふ……どこまで耐えられるかしら、ね?」
ところ変わって、グリモアベース。
「……さて皆さん、今度の戦争の目的地はUDCアースです。
UDC組織の一つに、妖怪が現れてしまいました。
至急、退治をお願いします。」
集まった猟兵たちへと説明を始めたアトの手には、謎の金属質の仮面があった。
そして、壁に映るのは……少し造形が違うが、それを被った少女と狐の女性が対峙している場面。
「妖怪たちの目的は、かつてUDCの中でも人類を滅ぼす意思を持たない個体……通称、UDC-Pと呼ばれるモノたちです。
彼らを保護していたUDC組織の建物へと入り込み、UDC-Pを自らの手駒にしようとしています。
それは、なんとしても防がなくてはなりません……ただ、今回はUDC-Pの方のおかげで猶予がありそうです。
……この、妖怪と対峙している方が、今回皆さんに救って欲しいUDC-Pなので。」
そういうと、アトは手にした仮面を猟兵たちに見えるように持ち上げ、
「これは元々、黄昏秘密倶楽部という要注意団体が生み出している、黄昏の冠と呼ばれる洗脳装置です。
黄昏秘密倶楽部の教義は、痛みと苦しみをもって孤独な者たちを集めるもの……必然的に、この兜を被った方は強烈な痛みに苦しんで、その教義に洗脳されます。
しかし、このUDC-Pの方はこれを被ってしまったのに何故かその洗脳を受けず、普通の人としての自我を持っています。
現在は、UDC組織の中で仮面について調べることに協力し、時にはその力でUDCの鎮圧などにも参加しています。
本名などは私は知らなかったのですが、今はタソガレちゃんと呼ばれているのですね。
彼女の被る仮面のせいか、彼女自身に耐性があるのか解りませんが……今は憑依を免れているようです。
しかし、おそらく時間はありません。」
アトの手の上でグリモアが輝き、UDC組織の一室へとゲートが開く。
「皆さんは、あの妖怪を退治してください。
管狐の類いのようですが、詳細はよく分かりません。
タソガレちゃんも協力してくれるでしょう……彼女は、今は妖怪を触ったり殴りつけたりすることはできませんが、皆さんのやり方でコツを教えれば出来るようになるでしょうから。
それではよろしくお願いしますね。」
ヨグ
ヨグです、カクリヨファンタズムの戦争シナリオ第3弾となります。
UDCーPを狙った妖怪を、なんとか退治してください。
UDC-Pのタソガレちゃんは、以下のURLの過去に執筆したリプレイ『痛みと苦しみの先に』で保護された少女です。
元々は比較的大人しい女子高生でしたが、今は奇妙な仮面のせいで湧き上がる、強力な破壊衝動に悩まされています。
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=16075
このシナリオでは、以下の行動にプレイングボーナスが入ります。
是非ご活用ください。
=============================
プレイングボーナス……UDC-Pやエージェント達と協力して戦う。
=============================
第1章 ボス戦
『飯綱多摩緒』
|
POW : 飯綱の法
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【風】属性の【真空波】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD : 狐憑き
攻撃が命中した対象に【狐の霊】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【発狂状態に陥る精神干渉】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ : 飯綱使い
【かつて自身を使役した飯綱使いの幻影】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
イラスト:華月拓
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナギ・ヌドゥー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シホ・エーデルワイス
アドリブ&連携歓迎
怪異に巻き込まれても自分を見失わず
苦難に抗っている元人間のUDC-Pですか…
芯が強そうです
前世の死後
猟兵となり様々な苦難を乗り越えてきた自身と通じ親近感
多摩緒さんに憑りついている骸魂とUDCエージェント達に憑依している霊を
【終癒】で浄化
負傷などで戦闘が難しいUDCエージェントは『聖鞄』に保護
タソガレさんを無理に戦わせたくありませんが
彼女も何かしてくれるなら読心術で連携し庇ったり援護射撃でフォローし鼓舞
敵の攻撃は第六感と聞き耳で見切り残像回避
当たりそうなら呪詛耐性のオーラ結界で防御
戦後
タソガレさんを見ていてシロウサギのサチさんの安否が気になる
彼女もUDC-Pですし
大丈夫かしら…
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
ふむ、あの子がタソガレちゃんか
力を貸すよ、一緒にこの局面を乗り切ろう!
まず操られていると思われる職員達を【結界術】で作った【破魔】の結界の中へ押し込める
戦闘を邪魔や人質にされるのは避けたい所だ
その上で救急箱より絆創膏を一つ取り出しタソガレちゃんに貼り付ける
絆創膏を介し疑似精霊の加護でタソガレちゃんの力の底上げをする
その上でちょっとしたアドバイスもしておこう
俺の支援効果で普段よりも力が増しているはず、手のひらに意識を集中させるんだ
力が手に集まって妖怪と言えど殴ったりも可能になるはずだから
【破魔】付与の精霊の護符で飯綱使いの幻影除去試み
接近戦のタソガレちゃんを援護するよう立ち回る
「ほらぁ、あなたの中にまた一匹入っていくわよ? ……それにしても、」
「うぐっ、あああ!」
新たな狐の霊を入れられ、苦しむ少女。
本来の用途でない様だが、少女の正気が失われると仮面から与えられる苦痛が戻り、その痛みが少女の自我を保つ道標となっているようだった。
「難儀な子ね、早く狂っちゃえば良いのに。」
「……そうはいきません!」
「うわっと!?」
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)の撃ち放った弾丸に、音に驚いてのけぞった女性の前髪の先が吹き飛ばされていた。
「あっぶないわね!」
「その方を、連れて行かせるわけにはいきません。ここで、止めさせてもらいます。」
銃口を向けたシホから放たれる暖かい光が少女を包むと、苦しんでいた少女の声が止まっていた。
「ちっ、私たちに干渉できる人間か。」
「そうです。……いきますよ!」
「そうはいかないわよ!」
女性の横に術者の幻影が現れると、目に見えて素早くなってシホの弾丸を避けていった。
「う……ん。」
「大丈夫か?」
「あ、はい……大丈夫、です。」
かけられた声に少女が顔を上げれば、少女の被る仮面を覗き込んでいる鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)の姿。
少女の意識はしっかりしているのを確認し、鳳凰院は手にしていた救急箱から絆創膏を取り出しながら女性を指さし、
「君は、あいつが見えるが、触れないんだよな?」
「……ええ、残念ながら。」
「やはりそうか。」
悔しげに呟く少女の右手をとり、石と化している肘へと絆創膏を貼る。
すぐに右腕全体が暖かく感じ、力が沸いてくる気がしてきた。
「これ、は。」
「どうだい? これで、普段よりも力が増しているはずだ。」
「はい、そんな感じが……。」
「よし、それを感じながら手のひらに意識を集中させるんだ。力が手に集まって、あいつみたいな妖怪と言えど殴ったりも可能になるはずだから。」
「ありがとう、ございます。……これなら、私にも。」
少女は右手を握りしめ、聖別された弾丸から逃げ回る女性へと駆け出した。
避けたはずの弾丸が肩を掠めていた。
「ちっ……あんたの光は厄介ね。」
「気がつきましたか。」
少女を癒やしたシホの放つ光は、女性の纏う骸魂をも浄化していた。
「逃げてばっかりじゃだめね、早くしなきゃ。」
「そんなことは、」
「させねえよ!」
鳳凰院の手から飛んだ護符が操者の幻影に張り付き、少しだが動きが鈍る。
撃ち放たれたシホの弾丸を避けきれず、幻影がかき消えていった。
「うそ、そんなことが、」
「あなたには、負けません!」
「ぐはっ!?」
横から石の拳を叩きつけられ、女性の身体が吹き飛んでいく。
タソガレと呼ばれた少女は肩で息をつきながらも、自身の手に残る感触に思わず笑みが浮かぶ。
「や、りました。」
「よし、その調子だ。」
絆創膏を通した補助もあったが、あっさりとやり方を覚えた少女に親指を立ててみせる鳳凰院。
「ちっ……困ったわね、まさか私を触れるようになるなんて。」
少し困ったように様子を伺う女性へと銃口を向けながらも、女性と対峙する少女を見てシホの頭に浮かぶのは、一人の女性の姿。
「シロウサギのサチさん、大丈夫かしら……彼女もUDC-Pですし。」
UDC組織に監視されながらも、普通の人として郊外の家で暮らしているUDC-P。
妖怪たちからすれば狙いやすい気もするが、最悪の想定を頭から追い出して呟いていた。
「……後で、顔を見に行きましょうか。」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
POW
大胆に胸元を開いた狐ちゃん♥
負けてられないわ!
守護霊の【ドーピング】と『欲望解放』で全裸になり
愛欲に比例して超強化!
最大10600km/hで【空中戦】(室内だから低空飛行)
詠唱の時間も与えず【怪力・捕縛】で抱擁し
濃厚なキスで口を塞ぎ、詠唱を封じつつ
お互いの胸を擦り合わせ【慰め・生命力吸収・大食い】
【呪詛耐性・狂気耐性・気合い】で精神干渉も跳ね除け
逆に【誘惑・催眠術】で魅了♥
タソガレが割って入ろうとしたら
【念動力・ハッキング・全力魔法】で破壊衝動を性的衝動に変換。
禁酒・禁煙の際、別の物に依存が移るように
衝動を抑えるのは至難でも方向性を変える事は可能のはず
3人で仲良く遊びましょ♥
「こ、の!」
「ひっ! あっぶな……ちょっと、なんであんたそんなに好戦的なのよ!」
力尽くで振り下ろされる石の拳を躱した女性。
近づいてくる別の気配に目を向ければ、獲物を見つけたような目をしたドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の姿。
「あらあら、大胆に胸元を開いた狐ちゃんね♪」
「なによ、こっちは取り込み中! 邪魔しないで!」
振り払うように女性が腕を振るえば、風の衝撃波がドゥルールを襲う。
「いやん♪ ……大胆、ね?」
衝撃波を完全に躱しきれず、ドゥルールの服が千切れ飛ぶ。
……次の瞬間、女性は全裸のドゥルールに抱きしめられていた。
「え、ちょっ、なにこれんぅう!?」
困惑とともに暴れる前に、その口が柔らかい唇で塞がれ……離れた時には女性の瞳に霞がかかったようになっている。
「……ふふ、一緒に楽しみましょう?」
抱きしめる力に抗いきれず、女性はその獣の身体をなすがままにされていた。
「な……なんなの……?」
突然始まった情事に、少女は困惑していた。
「えっと……さ、さすがに止めた方が、いいのか、な……。」
「ふふ……邪魔はさせないわ。」
「あ、う……!?」
言葉と共に目に入ったドゥルールの瞳が妖しげに輝くと、少女の様子が変わっていた。
だが……ドゥルールの意図とは異なり、急に顔を押さえるように仮面を上から抑え、
「あ、あああ! い、たぃ……!」
「あら……悪かったわね。破壊衝動に悩まされてるっていうから、性的衝動にすり替えてあげようとしたのに。」
痛みなども含めて快楽へと変える程の魅了の力をもってしても、苦痛の仮面の衝動は取り除けなかった。
予想外の反応に力が緩み、
「隙あり!」
「……あらら、逃げられちゃったわ。でも、」
すり抜けた女性の残滓……骸魂の欠片を握りしめると、ドゥルールの手の中に溶けて消えていた。
「ごちそうさま……可愛かったわよ。」
成功
🔵🔵🔴
火土金水・明
「あなたにタソガレちゃんを奪われる訳にはいきません。邪魔をさせてもらいます。」「もちろん、取り込まれた方も助け出します。」(エージェントさん達に攻撃をする振りをしてもらい、そのタイミングで私が攻撃します。)
【POW】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【銀色の疾風】で『飯綱多摩緒』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでも骸魂にダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
二條・心春
UDCと共に戦うものとして、必ずUDC-Pの子は助けてみせます。これ以上苦しい思いはさせませんから!
まずはクラーケンさんを召喚しましょう。同じUDCがいた方がタソガレちゃんも心強いはずですから。クラーケンさんと一緒に彼女に協力してもらうようお願いしましょう。
私が拳銃での牽制射撃で敵の動きを制限して、クラーケンさんには麻痺の触手で動きを鈍らせてもらって戦闘力の低下を狙います。隙ができればタソガレちゃんに攻撃してもらいましょうか。動きも鈍らせて、こちらの攻撃が当たるのを見れば、コツを掴んでくれるかな?
あっ、やりすぎちゃうようならクラーケンさんに止めてもらいます。妖怪さんも操られてるだけですからね。
アレクシア・アークライト
その仮面を綺麗に外して持っていくっていうんなら百歩譲って協力してあげてもいいわ。
でも、彼女まで連れていくっていうんなら、彼女をここに連れてきた一人として見過ごすことはできないわね。
・念動力を用いて敵の周囲の空気の振動に干渉し、詠唱を妨害。
・力場で敵の攻撃を逸らし、緩和させつつ接近。力場を集束した攻撃を叩きつけ、骸魂を弾き飛ばす。
人を自分の手駒にしようとしていたんだから、当然、自分が相手の手駒にされることくらいは想定していたわよね?
でも、お生憎様。貴方のような手駒なんていらないわ。
ただ、私の糧になりなさい。
・UCで「捕食」を選択。サイ・ドライバーで骸魂を分解・吸収し、自らのエネルギーに変換する。
痛みは引いたのか、少女はゆらりと立ち上がり、
「と、とりあえず……あなたは倒します!」
「……無傷で、っていうのは難しそうね。操られてくれれば、お互い楽だったのに。」
「何を言って」
二人の間に風が吹いたと思えば、少女の髪の先が切断されて舞い飛ぶ。
「う、そ……。」
女性の放つ風の衝撃波は、易々と人の身体くらいなら引き裂ける。
祝詞を唱える女性からそれだけの圧を感じ、少女は思わず後ずさっていた。
「次は足よ。」
「ひっ!?」
空気の圧が高まるのを感じ、仮面の下で目をつぶってしまった少女だが……その身が切り裂かれることはなかった。
「ちっ、邪魔が入ったか。」
「ええ、間に合ったようで何よりです。」
「大丈夫ですか? タソガレちゃん。」
少女が目を開ければ、衝撃波を切り裂いた銀の剣を手に、間に立ちはだかる火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)と、心配そうに少女を覗き込む二條・心春(UDC召喚士・f11004)の姿。
「は、はい。私は、大丈夫です。」
「良かった……私たちが来たからには、あなたにはこれ以上苦しい思いはさせません!」
「そういうことです。ここは退いてもらえませんか?」
そんな明の問いかけにも、返ってきたのは舌打ちの音だった。
「邪魔しないで、猟兵たち……私たちには、その子が必要なのよ。」
「何で必要なのかは知らないけど、その子の仮面を綺麗に外して持っていくっていうんなら百歩譲って協力してあげてもいいわ。でもね、」
「あなた、は。」
横からかけられたアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)の声に、少女は聞き覚えがあった。
「彼女まで連れていくっていうんなら、彼女をここに連れてきた一人として見過ごすことはできないわね。」
少女をUDC-Pとして回収した、エージェントの一人。
そして、研究所内限定ではあるが少女が比較的自由な行動がとれる、今の待遇を上に進言した人物でもあった。
「お久しぶり、です。」
「久しぶりね。でも今は、敵に集中しなさい。」
「は、はい!」
身構えた少女と彼女を守る猟兵たちの姿に、女性は奥歯をギリリと噛みしめ、
「……やってやるわよ、何人こようとね!」
自身を操る操者の幻影を呼び出し、高速で祝詞を唱え始めた。
しかし、女性はいつの間にか自身の声が出ていないことに気がついた。
「念動力にはこういう使い方もあるのよ? それにしても、妖怪も呪文が必要とはね。」
アレクシアの力は女性の周囲の空気の振動を止め、その口から出た音は微かな吐息のみ。
そんな状況に、女性は風を操るのは諦めて爪を伸ばして駆け出し、正面に立つ明を貫いていた。
「とった!」
「残念、それは残像です。」
「くっ!? ああ!」
横から振られた銀の剣に、伸びた爪が砕かれていた。
さらに下からは、複数の触腕が伸び上がってくる。
「さぁ、クラーケンさん! 手伝ってください!」
「や、やめ……ぐあ!?」
二條の呼び出したクラーケンの触腕に取り込まれ、女性は吸盤に吸い付かれるごとに身体が麻痺していくのを感じる。
ぼやけた視界に、振り上げられた石の腕が映った。
「これで、終わりです!」
「ぐはっ!」
思いっきり少女に殴りつけられ、とさりと床に転がっていく。
もう、指一つ動かせない女性を上から覗き込むのはアレクシア。
「人を自分の手駒にしようとしていたんだから、当然、自分が相手の手駒にされることくらいは想定していたわよね?」
「ちっ……あんた、も。」
身動きとれない女性の身体がアレクシアの操る力場に包まれ、無理矢理起き上がらせられる。
覗き込む顔へと女性は嫌悪の眼差しを向け、
「あたしを、使うのね。」
「でも、お生憎様。貴方のような手駒なんていらないわ。」
「え、あああ!?」
内から破裂するように、女性の身体から骸魂が飛び散る。
残るのは、狐の妖怪が1体のみ。
「ただ、私の糧になりなさい。」
飛び散った骸魂は空中で分解され、サイキックエネルギーとしてアレクシアの身体へと吸い込まれていった。
「……終わりましたね。あなたも、お疲れ様でした。」
「はい。その、ありがとうございました。」
明に声をかけられ、少し息が上がったまま答える少女。
そんな少女を、狐の妖怪が親しげな目で見上げている。
「あら、なんだか好かれてますね。」
「え……あの、危なくは?」
先ほどまで戦っていた相手でもある妖怪に、少女が不審な目を向けるのは当然だろう。
だが、二條は安心させるように笑みを向け、
「敵意はないはずですよ。試しに撫でてあげてみては?」
「え、えーと……ひあっ!?」
少女が手を伸ばして触れると、狐の妖怪はするりと少女の身体の中へと潜り込んでいった。
「あ、あの、本当に大丈夫……なんですか?」
「ええ、タソガレちゃんの中が過ごしやすいみたいですよ。私もUDCと共に戦っていますし、同じように手伝ってくれるかもしれません。」
「そう、なんですね。」
手のひらを見つめて呟いていると、狐の妖怪がニョキと顔を出して頷いていた。
コミカルな動きに思わず笑顔になる少女。
「……UDC-Nullまで増えるのは、組織としては本意じゃないけど……まぁいいわ。」
少し呆れたように呟いたアレクシアの声が響くが……なんにせよ、UDC-Pである少女は猟兵たちの活躍で守られたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵