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大祓百鬼夜行㉑〜無邪気のままに玩具を求め

作者：波多野志郎

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「大祓百鬼夜行もそろそろ大詰めじゃ」

　ガングラン・ガーフィールド（ドワーフのパラディン・f00859）はそう告げると、厳しい表情で語り始めた。

「UDC-Null……骸魂と合体した妖怪が、とあるUDC組織へと乗り込み、そこで保護されておるUDC-Pを取り込もうとしておるようなのじゃ」

　そのUDC組織は、とある倉庫に偽造している。だが、そこへやってきたUDC-NullをUDCのエージェント達は見ることができず大混乱に陥ってしまうのだ。

「UDC-Pを取り込まれないように助け、どうにかUDC-Nullを倒してほしいのじゃ」

　UDC-Null『無邪気』は、そこにいる古いブキリのオモチャが妖怪化したUDC-Pを取り込もうとしている。それを防ぎ、UDC-P達の協力を得て戦うとよいだろう。

　戦場となる倉庫には、偽装のためのコンテナなどが積まれている。『無邪気』はその偽装用のコンテナを振り回したり、投げつけたりしてくる。戦場そのものが向こうに有利だ、相応の戦術を練って対応する必要があるだろう。

「もちろん、UDCエージェント達も救う必要がある。混乱して戦場から逃げ出して、奥に籠城しておるのが不幸中の幸いじゃ。おぬしらがやってくればすぐに状況を理解し、何かの役に立とうとしてくれるじゃろう」

　特に戦場を制圧することができれば、メカニック達が超常光線砲「U.D.C（アンリミテッド・ディヴァイン・キャリアー）」を作ってくれる。これは後々の大祓最終決戦で役立つものとなるだろう。

「何にせよ、UDC-Pやエージェント達を救うためにも、UDC-Nullを倒してくれい」

第1章 ボス戦 『無邪気』

POW   :    あ　そ　ぶ レベル×1tまでの対象の【身体や建造物など】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。 SPD   :    ど　こ　か　な 【生物を見つけること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【恐怖を与え動きを封じる視線】で攻撃する。 WIZ   :    あ　れ　が　い　い 攻撃が命中した対象に【強い興味】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【自身から発生した複数体の分身】による追加攻撃を与え続ける。 イラスト：カス 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ど　こ　か　な　？

　ズン……！　とその外界から隠されているはずの倉庫が軋む。地震のように地面が揺れるのではない、建物自体が軋み揺らされているのだ。

「今回の相手は随分な力自慢のようですね。私も負ける気はしませんが――正直に競うのは別の機会にしましょう」

　倉庫の奥の通路へと、鞍馬・景正（言ヲ成ス・f02972）は迷わず走る。その隣で、ゲニウス・サガレン（探検家を気取る駆け出し学者・f30902）もしみじみと呟いた。

「無邪気さとは時に冷酷だ。何も気にしていないのだからね」

　空飛ぶエビの大群、星屑のランタンをもたせたゲニウスは、そのまま倉庫の方へと飛ばす。しばらくすると、野太い子供の笑い声と暴れるような轟音が倉庫の方から響いた。その音を聞きながら、最後に飛んでいこうとするエビにゲニウスは告げる。

「敵の気を引くんだ。でも、捕まるなよ」
「存在せえへんもんが存在しとる、アカンこっちゃなぁ」

　御魂・神治（除霊（物理）・f28925）は、渋い表情でそう言った。UDCの職員からすれば、ただ目に見えない脅威に襲われているのだ。対処不可能に陥っても当然というものだ。

「直接対峙するのは危なそうだね……」
『ナラマァ、カメラを人形に持たせて少し離れて戦いマショウカ。職員さんにカメラ借りないといけないデスカネェ……後、UDC-Pさんに肖像権の使用許可をもらいマスカ！』

　ジード・フラミア（人形遣いで人間遣いなスクラップビルダー・f09933）に、金髪の少女の球体関節人形――メリアの口が動き、そうジードに返した。奥の通路、扉を開けると驚いた表情の白衣の男たちが目を白黒させる。

「な！？　どうしてここが！？」
「私達は猟兵です、助けに来ました」

　景正の言葉に、ハっとUDC職員は息を飲む。今までの積み重ねがある、その言葉だけで十分だった。

「た、助かった！？」
「一体、何が起きているのか教えてくれ！　急に倉庫でポルターガイスト現象が――」
「時間があらへん。手短に説明させてもらうで」

　神治が、そう切り出す。UDC-Nullの存在、UDC-Pを取り込もうという目的、それを手短に説明をしている間に、結界術でブリキ人形のUDC-Pを取り囲んだ。

「叩き起こす必要がなかったんは、ありがたいで」

　そう神治がからかう。必要があれば、浄化の空砲を空向けて撃ちまくって職員らの混乱を鎮めるつもりさえあったのだ。それに比べれば、ありがたい限りだ。

「わ、私達にできることは、あるか……？」
「我々だって、UDCのエージェントだ。この世界を守る責務がある」

　混乱してはいても、彼等にも世界を裏から守っていた自負と誇りがある――UDC-Pも結界の向こうで、猟兵達を見上げた。

『ボ、クラモ、テツダ、ウ、ヨ……』
『ミンナ、ヨクシテクレタ、ダカラ……』

　エージェントやブリキ人形の言葉に、ジードとネリアが微笑み仲間達を見る。皆が、同じ想いだ――だからこそ、メリアは言った。

『力を合ワセテ、やっつケマショウ！』

●あ　そ　ぼ

　巨大な影が、倉庫の中でいくつも立ち上がる。無邪気――そう呼ばれる、子供達の思いの成れの果て。飛び回るフライング・シュリンプを追いかけていた無邪気だったが、ふとその動きを止めた。

『サァ！　新しい人形達よ　ワタシ達と遊びマショウ！！』

　物陰から、メリアの人形のおもちゃ箱（ドール・トイ・ボックス）によっていくつものブリキ人形達が溢れ出し、駆け出した。

『あ　そ　ぼ』

　それを見て、無邪気達が手を伸ばす――その刹那、倉庫が真っ暗になった。照明を切ったのだ。

『ど　こ　？』
『コッチはよく見えマスヨ？』

　影達が、手当たり次第に暴れ出し、人形に持たせたUDCエージェントから借りた暗視カメラ越しの映像を見てメリアが呟く。そして、景正が下段に濤景一文字を構えて駆け出した。

　――可能ならばそれで敵の注意を逸らして頂きたい。

　不意に鳴り響く、館内放送のＢＧＭ。音を頼りに動いたのだろう、無邪気がコンテナを倉庫の外壁にぶつけた。だが、見当違いの方向だ――その隙に、景正の地摺りの斬撃が影の一体を切り飛ばす！

『か　く　れ　ん　ぼ　？』
「似たようなもんや」

　森羅をすかさず抜いて、クイックドロゥ――神治の除霊弾が、影を穿つ！　そのマズルフラッシュを見つけ、無邪気の影達が動こうとしたその時だ。

「私のタコ型ガジェットよ、派手に墨を噴きかけろ」
『あ　う　？』

　タコ型ガジェットが、その墨によって影達の視界を塞ぐ。ゴォ！！　と無数の轟音。手当り次第に暴れる影達を猟兵達は容赦なく追い込んでいった。

●さ　よ　な　ら

　決して狭くないはずの倉庫が、悲鳴を上げる。それほどまでのいらだちが、暴れっぷりが繰り広げられていたからだ。

『ど　こ　！　？』

　無邪気は、手加減を知らない。ただ、暴れまわる――ジードとメリアはそれに巻き込まれないよう、物陰からカメラ越しにそれを見ていた。

『ソロソロ、頃合いデショウ！』

　ブキリ人形達が、無邪気の足元に集っていく。それに気づいた無邪気の影達が足元へとその手を伸ばした瞬間だ。

「今だよ」

　ジードの言葉に、メリアが無機物の人形化を解く――無数のコンテナが、膨れ上がっていった。

『ど　こ　オ　モ　チャ――』
「やれ！」

　そして、コンテナを手に取った影達の上から、ゲニウスの声にフライング・シュリンプが沈滞の投網を落とした。網に絡め取られ、暴れる影――ぶちまけられるコンテナ、その前に神治が逆重力障壁で受け止めて弾き返す！

「アンタの手の内、消させてもらうで」

　そこへ神治がすかさず封魔霊弾『斎戒』を撃ち込んでいく！　その銃声に重ねるように、上へと配置していたUDCエージェントとUDC-Pの銃器やオモチャによる一斉掃射が放たれた。

『ど　う　し　て　じゃ　ま　す　る　の　！　？』

　憤りの込められた無邪気の声、それを聞きながら景正が駆け込む。動きを封じられ、掃射に削られる無邪気の影へ、景正は濤景一文字を大上段に構えた。

「散れ、天暁の前の露が如く」

　天暁不露――景正の渾身の斬撃が、影を両断した。ズザン！　と消し飛ぶ無邪気の影――目に見えずともその気配を察したエージェント達が歓声を上げる。

『サヨナラ』

　そう、UDC-Pが言ったのを猟兵達は聞き逃さなかった。今、彼等に必要なのが自分達でないとするブリキ人形の、子供達への別れの言葉だった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年05月24日